説明

人工股関節のためのオフセット状再建顆キャップインプラントを構成するためのセット

本発明は、人工股関節のための関節頭キャップインプラントを構成するセットについて記述する。前記セットは、極領域(P)のみが所定形状に削られ、他の領域は単に軟骨剥離又はむき出しにしただけの股関節頭上に配置される薄壁の金属製キャップ(1)を有し、前記金属製キャップの壁は基縁部(2)の領域で断面の厚さが2mmから6mmまで次第に大きくなることにより、前記金属製キャップの外形が偏心し、前記金属製キャップの内部空間(I)は截頭円錐状で円錐が狭くなる領域により前記極領域(P)に連続する円柱状の赤道領域(Z)を有し、前記金属製キャップの壁にいくつかのボーリング空孔(4)が設けられ、前記ボーリング空孔(4)の軸は前記キャップ(1)の主軸(H)と平行である。さらに、前記キャップ(1)で前記ボーリング空孔(4)に、位置調整及び支持された状態で挿入される少なくとも1つの栓(5)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に股関節頭(head)の本来あるべき形状の生得関節面(articular surface)の代替表面としての、人工股関節のための関節頭キャップインプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるキャップインプラントの使用が増加し、キャップインプラントは股関節の加工又は調整された生得残存(residual)関節頭上に配置され、この位置に固定される。キャップインプラントは、(部分的に)加工又は調整された生得残存関節頭上に配置できる生得顆(condyle)の外形を真似て形成されるキャップから構成されている。
【0003】
安定した2次固定は、残存骨での安定骨部材の存在を条件とする。特許文献1では、大腿頚部において対応する削られた陥凹(milled-out recess)内部に配置される関節頭キャップに栓(peg)を取り付けけることが提案されている。この栓は、3次元の目の粗いメッシュ状の網目構造が設けられる表面を有し、その網目の内部及び間で周囲骨部材の骨小柱(trabeculae)が成長し、安定した2次固定を提供する。
【0004】
しかし、栓に空間を空けるための大腿頚部の削り加工(milling-out)を省略できる適応症(indication)がある。
【0005】
ここで、いわゆるレッグ−カルヴェ−ペルテス病について記述する。レッグ−カルヴェ−ペルテス病は大腿頭骨端の片側又は両側で無菌性の骨壊死(necroses)を引き起こす。この病気は特に4歳から12歳の男子に発症する(Pschyrembel Klinisches Woerterbuch, 第259版, 2002年発行, p.1285)。変形することなく治癒することができるが、関節腔の平坦化を伴う滑車状(trochleiform)又はキノコ状(fangiform)の大腿頭の可能性、又は、稀ではあるが扁平股(coxa plana)又は変形性関節症(arthrosis deformans)が残り得る。
【0006】
別の適応症として、例えば、関節頭で表面欠陥を引き起こす股関節頭での嚢(cyst)がある。
【0007】
一般に、関節頭の壊死(necrosis)は、関節頭を完全に切除し、患者に短茎状の内部人工器官(endoprosthesis)を提供することがまだ必要でない表面欠陥を引き起こし得る(特許文献2)。
【0008】
一般的に、そして、近年ますます認識されているが、後に矯正介入(corrective intervention)が必要な場合、短茎状から長茎状の内部人工器官まで、内部人工器官による修復(repair)の複数の段階に対応可能とするため、可能な限り長く、骨の(部分)切除の状態で待つことが好都合である。前述した内部人工器官の使用は、大腿頚部の完全な切除を要求する。
【0009】
既に記述した特許文献1に係る栓は、支持(bearing)及び固定機能を有する。しかし、この場合、加工又は調整された残存関節頭上で軸上に正確にキャップを配置することが問題となる。不正確な配置は、後まで広範囲な影響を与える。
【0010】
特許文献3では、薄壁の金属キャップを備える人工股関節のための関節頭キャップインプラントが開示されている。金属キャップは生得の単に軟骨剥離(decartilaged)又はむき出しにした(freshened)股関節頭上に配置され、キャップの極領域の中央部に略正確に配置されるガイドピンを備える。このインプラントの目的は、生得関節頭上で軸方向について正確なキャップ配置を可能にすることにある。これにより生得関節頭は大部分が無傷で(intact)残るようになる。
【0011】
特許文献4では、金属キャップを有する人工股関節のためのオフセット状再建(offset resurfacing)関節頭キャップインプラントが開示されている。金属キャップの壁は、基縁部(base edge)の領域で断面が次第に大きくなり、これにより外形が偏心している。このキャップインプラントの課題は、大腿頚部の内部へ応力が加わることである。すなわち、この文献からは、この種のいかなる情報も導き出せない。
【0012】
しかし、病患部画像又は消耗(wear-and-tear)状態のため、先行技術のキャップインプラントでの修復が最適でない適応症がある。例えば、股関節頭の不正確な配置が補償されなければならないであろう。また、極領域の損傷が大きい場合、又は、例えば(前述した)滑車状に変形を行う場合(ペルテス病)では、未だに損傷していない大腿骨の骨の内部で応力からの軽減を実現してもよい。また、手術の間に術者が位置調整(adjustment)可能としてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】独国特許発明第10218801号明細書
【特許文献2】欧州特許第0878176号明細書
【特許文献3】独国実用新案第202006017005号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1872745号明細書
【特許文献5】独国特許発明第102005011361号明細書
【発明の概要】
【0014】
したがって、本発明の目的は、前述した要求を満たす人工股関節のためのオフセット再建顆キャップインプラントを構成するためのセットを提供することにある。
【0015】
この目的は、請求項1の特徴を備えるセットにより解決される。さらに好都合な実施形態は、従属請求項に記述する。
【0016】
したがって、本発明に係るセットは、極領域でのみ所定形状に削られ、他の領域は単に軟骨剥離又はむき出しにしただけの股関節頭上に配置される薄壁の金属製キャップを有し、金属製キャップの壁は基縁部の領域で断面の厚さが2mmから6mmまで次第に大きくなることにより、金属製キャップの外形が偏心し、金属製キャップの内部空間は截頭円錐状で円錐が狭くなる領域により、極領域に連続する(基縁部側から見ると)実質的に円柱状の赤道領域を有し、金属製キャップの壁にいくつかのボーリング空孔が設けられ、ボーリング空孔の軸は前記キャップの主軸と平行であり、キャップのボーリング空孔に位置調整及び支持された状態で挿入される少なくとも1つの栓を有する。
【0017】
このように、生得股関節頭はいわゆる極領域及び赤道領域の2つの領域に分けられる。本発明のキャップは、赤道領域が大きな損傷を受けていない場合に使用できる。この領域は軟骨剥離又はむき出しにしただけである。これに対し、極領域は損傷を受けているため、フォーミングカッタの補助により変形される。すなわち、キャップの内部の截頭円錐形状で円錐が狭くなる領域に対応した截頭円錐状に変形される。キャップの内部への入口領域、すなわち赤道領域は円柱形状を有する。ここでは、キャップインプラントは、軟骨剥離又はむき出しにしたが損傷を受けていない生得股関節頭の骨と同一平面上(flush)に配置されている。ここでは、インプラントは特許文献5に係る再建インプラントとして作用する。
【0018】
壁の厚さが最大壁厚さまで次第に増加し、続いて基縁部の領域で部材の最小壁厚さに次第に減少することが原因の偏心を備える、特定の外形であるため、股関節頭の不正確な位置が補償可能となっている。
【0019】
発生する応力の損傷を受けていない骨組織又は大腿頚部への必要な伝達は、キャップの壁で骨ボーリング空孔内部に配置される栓により達成される。栓の挿入は手術の間の状況に適応可能となっている。残存生得関節頭に骨ボーリング空孔を対応させ、インプラントでは残存生得関節頭の内部に栓が挿入される。
【0020】
実際のキャップインプラントと同一の外形を有する“試験キャップ”を用いるため、股関節頭上に配置される金属キャップの位置を決定するために、術者は(残存)関節頭上で“試験キャップ”を回転させる。キャップの外形が偏心しているため、術者は関節頭の不正確な位置の補償をシミュレーションするために、“試験キャップ”を用いることが可能となる。この際、金属インプラントは、“試験キャップ”で最適と判明したのと同一の位置に配置される。
【0021】
栓と栓を被覆した(enveloping)骨部材との間の密接連結のため、栓は骨誘導(osteoinductive)コーティングを備えることが好都合である。例えば、コーティングは、ヒドロキシアパタイト等でよい。この目的は、栓部材と骨部材との間に永久的な密接結合を提供することにある。
【0022】
金属キャップは股関節頭上にセメント接着することが可能である。しかし、セメントを用いることなくキャップをインプラントすることも可能である。この場合、キャップの内部空間には、少なくとも部分的に目の粗いメッシュ状の3次元網目構造が設けられている。安定した2次固定のため、その網目の内部及び間で周囲骨部材の骨小柱が成長する。
【0023】
本発明は、図面に従った実施形態でより詳細に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】キャップインプラントを示す断面図。
【図2】図1のキャップインプラントの内部を示す図。
【図3】キャップインプラントを示す等角図。
【発明の詳細な説明】
【0025】
セットから構成されるキャップインプラントは、主軸Hを備える薄壁で金属製のドーム状キャップ1を有する。キャップ1の内部Iへの入口に近い領域を赤道領域Zで示す。キャップ1の赤道領域Zの内部は実質的に円柱状に延びている。生得股関節頭の赤道領域をいったん軟骨剥離又はむき出しにすると、この領域は、生得股関節頭の赤道領域と同一平面上に位置し、純粋な再建インプラントとして作用する。
【0026】
一方、キャップ1の極領域Pは、截頭円錐形状を有する。生得股関節骨はフォーミングカッタに従って加工又は調整しなければならない。キャップ1は股関節頭の生得極領域が大きく破壊され、又は、変形された適応症に用いられるため、治療では、特に極領域から応力が残存関節頭の骨又は大腿頚部に伝達されることを、保証しなければならない。これは、キャップ1の壁でボーリング空孔4に挿入される栓5により達成される。栓の軸は、キャップ1の主軸Hと実質的に平行になっている。
【0027】
前述した実施形態では、キャップ1の内部Iに、目の粗いメッシュ状の3次元網目構造6が設けられている。その網目の内部及び間で周囲骨部材の骨小柱が成長し、安定した長期間固定を提供する。これにより、セメントを用いることなくキャップ1をインプラントできる。
【0028】
図2及び図3では、目の粗いメッシュ状の3次元網目構造は省略されている。図3では、栓5、特に栓の先端部が、概略的に示されている。
【0029】
本発明の場合、明確な目的は以下の構成要素により達成される。
1.損傷を受けていない骨部材へ応力を伝達する栓
2.キャップの赤道領域での純粋再建構成要素
3.極領域でのキャップ1の内部の截頭円錐状構成
4.キャップ1の外形の偏心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極領域(P)のみが所定形状に削られ、他の領域は単に軟骨剥離又はむき出しにするだけの股関節頭上に配置される薄壁の金属製キャップ(1)を有し、前記金属製キャップの壁は基縁部(2)の領域で断面の厚さが2mmから6mmまで次第に大きくなることにより、前記金属製キャップの外形が偏心し、前記金属製キャップの内部空間(I)は截頭円錐状で円錐ガ狭くなる領域により前記極領域(P)に連続する円柱状の赤道領域(Z)を有し、前記金属製キャップの壁にいくつかのボーリング空孔(4)が設けられ、前記ボーリング空孔(4)の軸は前記キャップ(1)の主軸(H)と平行であり、
前記キャップ(1)で前記ボーリング空孔(4)に、位置調整及び支持された状態で挿入される少なくとも1つの栓(5)を有する、
人工股関節のためのオフセット状再建顆キャップインプラントを構成するためのセット
【請求項2】
前記栓(5)の表面には骨誘導コーティングが設けられている請求項1のセット。
【請求項3】
前記キャップ(1)の前記内部空間(I)には、少なくとも部分的に目の粗いメッシュ状の3次元の網目構造(6)が設けられている請求項1又は請求項2のセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−536520(P2010−536520A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522325(P2010−522325)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060997
【国際公開番号】WO2009/027325
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(509091354)エスカ・インプランツ・アーゲー (1)
【氏名又は名称原語表記】ESKA IMPLANTS AG
【住所又は居所原語表記】Grapengiesserstrasse 34, 23556 Luebeck, Germany
【Fターム(参考)】