人工股関節用のステムの埋植方法および試整復部材
【課題】挿入されるステムの位置を挿入前に微調整可能にすること。
【解決手段】大腿骨(6)の髄腔部(6c)にステム(7)を挿入する凹部(11)を形成するラスプ(36)の外形よりも小さい外形を有する本体(22)と、本体(22)の外側面に設けられた羽部(25)と、本体(22)に設けられた骨頭支持部(28)であって、骨盤(2)の臼蓋(3)に回転可能に支持される骨頭部(31)が支持される骨頭支持部(28)と、を備え、ラスプ(36)で凹部(11)が形成される前に、ラスプ(36)により形成される凹部(11)よりも小さな凹部(11)が形成され、且つ、骨頭部(31)と臼蓋(3)との試整復を実行可能な試整復部材(21)。
【解決手段】大腿骨(6)の髄腔部(6c)にステム(7)を挿入する凹部(11)を形成するラスプ(36)の外形よりも小さい外形を有する本体(22)と、本体(22)の外側面に設けられた羽部(25)と、本体(22)に設けられた骨頭支持部(28)であって、骨盤(2)の臼蓋(3)に回転可能に支持される骨頭部(31)が支持される骨頭支持部(28)と、を備え、ラスプ(36)で凹部(11)が形成される前に、ラスプ(36)により形成される凹部(11)よりも小さな凹部(11)が形成され、且つ、骨頭部(31)と臼蓋(3)との試整復を実行可能な試整復部材(21)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工股関節用のステムの埋植方法および試整復部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、股関節に疾患がある患者に対して、人工股関節を適用する手術が行われる場合に使用される人工股関節用の部材に関して、以下の特許文献1〜4に記載の技術が従来公知である。
【0003】
特許文献1としての特開2010−51504号公報には、大腿骨(100)の内部の髄腔部(100a)に棒状のステム部材により構成された人工股関節用コンポーネント(1)が挿入されて埋植されると共に、人工股関節用コンポーネント(1)の外端の骨頭ボール部材(2)が、骨盤(101)の臼蓋(101a)に埋植された臼蓋カップ(103)に回転可能な状態で装着された人工股関節に関する技術が記載されている。
特許文献1記載の技術では、髄腔部の形状の個人によるばらつきを考慮して、人工股関節用コンポーネント(1)のテーパ状の面(16〜19)の軸中心線(C)に対する角度(D,E)を2度〜8度や0度〜3度の範囲で設定、すなわち、複数の角度のコンポーネント(1)を用意しておき、髄腔部の形状に適合させた状態で人工股関節用のコンポーネント(1)を埋植している。
【0004】
特許文献2としての特開2009−232899号公報には、大腿骨(5)の骨端領域(6)から骨幹領域(7)に向けて形成された窄孔(4)に挿入される人工股関節用ステム(1)の外表面に、窄孔(4)内での回旋を抑制するための突起(11,12)を多数設ける技術が記載されている。特許文献2には、ステムにほぼ等しい外形のラスプで予め窄孔(4)を形成しておき、作成された窄孔(4)にステム(1)を挿入することが記載されている。
【0005】
特許文献3としての特開2008−119051号公報には、大腿部に挿入される大腿骨用コンポーネント(1)が、骨盤に回転可能に支持される骨頭ボール(103)が装着される首部部材(11)と、首部部材(11)の嵌合凸部(11c)が嵌る嵌合凹部(12d)が形成されたテーパ部材(12)と、テーパ部材(12)の先端の嵌合凸部(12e)が嵌る嵌合凹部(13b)が形成された棒状部材(13)と、の3つのパーツで構成された構成が記載されている。特許文献3記載の技術では、首部部材(11)がテーパ部材(12)に対して嵌合凸部(11c)を中心として回転位置が調整可能な状態で支持される構成が記載されている。
【0006】
特許文献4としての特開2006−26411号公報には、大腿部の所望の位置にシャフト(11)を装着するための技術が記載されている。特許文献4記載の技術では、まず、シャフト(11)と同様の大きさのやすり(13)が髄腔部に挿入されて大腿骨内に凹部を形成し、次に、やすり(13)と同様の大きさのガイド本体(14)が大腿骨内の凹部に挿入される。そして、大腿骨内の凹部に挿入されたガイド本体(14)の外面に形成された平面部(37)にガイドされながら第2の器具(15)が大腿骨内に挿入される際に、第2の器具(15)に形成されたやすり状の機能ウェブ(31)により、髄腔部にトラック(溝)が形成される。そして、ガイド本体(14)および第2の器具(15)を大腿骨から抜いた後に、髄腔部に形成されたトラックにより、シャフト(11)のリブ(19)がガイドされることで、所望の位置にシャフト(11)を挿入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−51504号公報(「0028」〜「0036」、図1)
【特許文献2】特開2009−232899号公報(「0014」、「0027」、「0031」、図1〜図4)
【特許文献3】特開2008−119051号公報(「0024」〜「0031」、図1〜図3)
【特許文献4】特開2006−26411号公報(「0043」〜「0050」、図1〜図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(従来技術の問題点)
特許文献1〜4記載の技術では、ステムが挿入される凹部は、従来、まず、外表面に螺旋状の溝が形成されたいわゆるドリル状の部材であるリーマーを髄腔部に挿入して髄腔部に凹部を形成(リーミング)し、リーミングにより形成された凹部にステムと同様の外形を有し外表面にやすり状の加工がされた部材、いわゆるラスプを使用してステムと同様の大きさの凹部が形成(ラスピング)される。言い換えると、リーマーで荒削りをした後、ラスプでステムの形状に合わせた最終調整を行っている。
【0009】
ここで、人工股関節の手術がされる場合、大腿骨を上方から見た場合に大腿骨の頸部(骨頭)の軸が大腿骨の幹部の軸に対して前方に傾斜する角度である前捻角等の角度が、個人により異なることが問題となることがある。すなわち、ラスピングされた髄腔部にステムを挿入する従来の方法では、ラスピング時に形成された髄腔部の凹部に沿ってステムが挿入されるため、特許文献1,2,4に記載されているような一体形成のステムでは、ラスピング後に、挿入されるステムの前捻角の微調整が困難である。これは、ラスピング前の検査でラスプを挿入する角度を精密に検査、測定していても、個人差や測定誤差等があって完全には対応できず、複数の角度設定のステムを準備する必要があるという問題があった。
【0010】
仮に、一度ラスピングした後にステムを挿入して、前捻角等が合わなかった場合に、再度ラスピングを行うと、患者への負担が大きいと共に、2回のラスピングで形成される2つの凹部が部分的に重複するため、ステムよりも大きな凹部が形成されてしまい、凹部とステムとの間に隙間が形成されて、ステムの位置が不安定になり易くなる問題がある。
また、特許文献3に記載されている構成では、前捻角等の微調整が可能になっているが、複数のパーツに分割されているために、ネジの緩みや強度、耐久性に不安があったり、部品点数が多くなってコスト高や手術時の工程増加等の問題がある。
【0011】
前述の事情に鑑み、本発明は、挿入されるステムの位置を挿入前に微調整可能にすることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明の試整復部材は、
患者の大腿骨の内部の髄腔部に人工股関節用のステムを挿入するための凹部を形成するラスプの外形よりも小さい外形を有し前記髄腔部に挿入可能な本体と、
前記本体の外側面に沿って設けられ且つ外方に延びて形成された板状の羽部であって、前記本体が前記髄腔部に挿入された場合に前記髄腔部を削ることが可能な前記羽部と、
前記本体に設けられた骨頭支持部であって、患者の骨盤の臼蓋に回転可能に支持される骨頭部であり且つ前記ステムの骨頭部に対応する形状の骨頭部が支持される前記骨頭支持部と、
を備え、前記ラスプで前記髄腔部に凹部が形成される前に、前記髄腔部に挿入されて、前記ラスプにより形成される凹部よりも容積の小さな凹部が前記本体及び前記羽部により形成され、且つ、前記骨頭支持部の前記骨頭部と前記臼蓋との試整復を実行可能であることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の試整復部材において、
外端の形状が前記ステムの外形形状に沿って形成された前記羽部、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
前記技術的課題を解決するために、請求項3に記載の発明の人工股関節用のステムの埋植方法は、
患者の大腿骨の内部の髄腔部に棒状のリーマーを挿入して、髄腔部に凹部を形成するリーミング工程と、
人工股関節用のステムを挿入するための凹部を形成するラスプの外形よりも小さい外形を有する本体と、前記本体の外側面に沿って設けられ且つ外方に延びて形成された板状の羽部であって、前記本体が前記髄腔部に挿入された場合に前記髄腔部を削ることが可能な前記羽部と、前記本体に設けられた骨頭支持部であって、患者の骨盤の臼蓋に回転可能に支持される骨頭部であり且つ前記ステムの骨頭部と同一の骨頭部が支持可能な骨頭支持部と、を備えた試整復部材を前記リーマーで形成された凹部に挿入し、前記骨頭部と前記臼蓋との試整復を行う試整復工程と、
前記試整復部材が挿入された位置に前記ラスプを挿入して、前記ステムを挿入するための凹部を形成するラスピング工程と、
前記ラスピング工程で形成された凹部にステムを埋植するステム埋植工程と、
を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1、3に記載の発明によれば、ラスプの外形よりも小さい外形の試整復部材を使用して、試整復ができるので、挿入されるステムの位置を挿入前に微調整可能にすることができる。
請求項2に記載の発明によれば、ステムの外形形状よりも張り出している場合に比べて、ラスプで凹部が形成される際に、羽部の跡によりステムの位置が不安定になることを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の実施例1における患者の大腿骨部分に人工股関節が適用された状態の説明図である。
【図2】図2は実施例1における大腿骨の頸部の説明図であり、図2Aは頸部の骨切り前の大腿骨の説明図、図2Bは頸部の骨切り後の大腿骨の説明図である。
【図3】図3は実施例1における大腿骨のリーミングの説明図であり、図3Aは要部説明図、図3Bは要部斜視図、図3Cはリーマーの説明図である。
【図4】図4は実施例1における大腿骨の試整復の説明図であり、図4Aは試整復部材が大腿骨に挿入された状態の要部説明図、図4Bは図4Aを上方から見た要部説明図である。
【図5】図5は実施例1の試整復部材の説明図であり、図5Aは側面図、図5Bは図5Aの矢印VB方向から見た図、図5Cは図5Aの矢印VC方向から見た図、図5Dは図5Aの矢印VD方向から見た図である。
【図6】図6は実施例1の試整復部材のボディの説明図であり、図6Aはブレードが取り外された状態で図5Aの矢印VIA方向から見た図、図6Bは図6AのVIB−VIB線断面図、図6Cは図6AのVIC−VIC線断面図である。
【図7】図7は実施例1の試整復部材にハンドルを取り付ける説明図であり、図7Aはハンドルが取り付けられる前の状態の説明図、図7Bはハンドルが取り付けられた状態の説明図である。
【図8】図8は実施例1の試整復部材に骨頭を取り付ける説明図である。
【図9】図9は実施例1のラスプの説明図であり、図9Aは図4Aに対応する大腿骨にラスプが挿入された状態の要部説明図、図9Bは図4Bに対応する上方から見た説明図である。
【図10】図10は実施例1のラスプにハンドルを取り付ける説明図であり、図10Aは図7Aに対応するハンドルが取り付けられる前の状態の説明図、図10Bは図7Bに対応するハンドルが取り付けられた状態の説明図である。
【図11】図11は実施例1のラスピングの説明図であり、図11Aはラスプを大腿骨内に挿入する作業の説明図、図11Bはラスプを大腿骨から抜去する作業の説明図である。
【図12】図12は実施例1のステムの説明図であり、図12Aはステムが大腿骨に挿入された状態の説明図、図12Bはステムに骨頭部が装着された状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例である実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の実施例1における患者の大腿骨部分に人工股関節が適用された状態の説明図である。
図1において、患者の股関節1において、骨盤2の臼蓋3には、半球殻状の臼蓋カップ4が支持されている。大腿骨6に挿入されたステム7の上端には、臼蓋カップ4に向けて延びる骨頭支持部7aが形成されており、骨頭支持部7aには骨頭部の一例としての半球状の骨頭ボール8が支持される。したがって、骨頭ボール8が臼蓋カップ4に回転可能な状態で支持されることで、人工股関節4+7+8が構成される。
【0019】
(頸部の骨切りの説明)
図2は実施例1における大腿骨の頸部の説明図であり、図2Aは頸部の骨切り前の大腿骨の説明図、図2Bは頸部の骨切り後の大腿骨の説明図である。
図1、図2において、大腿骨6にステム7を装着する場合、まず、大腿骨6の検査を行って、図2Aに示す大腿骨6の頸部6aを切断する骨切り位置6bを確認、設定し、図示しないボーンソーを使用して、図2Bに示すように、頸部6aの骨切りを行う。
【0020】
(リーミングの説明)
図3は実施例1における大腿骨のリーミングの説明図であり、図3Aは要部説明図、図3Bは要部斜視図、図3Cはリーマーの説明図である。
図2,図3において、頸部6aの骨切りがされた大腿骨6に対して、大腿骨6の内部の髄腔部6cの拡大、形成を行うことで内部に凹部11を形成する作業であるリーミングが行われる。
図3Cにおいて、リーミングを行うためのリーマー12は、棒状のリーマー本体13と、リーマー本体13の基端部に連結されて施術者が把持して操作を行うための操作部の一例としてのラチェットハンドル14と、を有する。前記リーマー本体13は、中央部から先端部にかけて螺旋状の溝13aが形成されると共に、大腿骨6の髄腔部の形状に合わせて、先端に行くに連れて先細りになるようにテーパーが形成されている。
【0021】
したがって、図3A、図3Bに示すように、リーマー12を大腿骨6の髄腔部6cに挿入することで溝13aで髄腔部6cの内部を削ることができ、内部に凹部11が形成される。
なお、リーミングでは、最終的に使用するステム7の大きさよりも小さなリーマー12から使用し、順に大きなリーマー12を使用して、凹部11を拡大していき、最終的にステム7に対応する深さの凹部11を形成することが望ましい。
【0022】
(試整復の説明)
図4は実施例1における大腿骨の試整復の説明図であり、図4Aは試整復部材が大腿骨に挿入された状態の要部説明図、図4Bは図4Aを上方から見た要部説明図である。
図5は実施例1の試整復部材の説明図であり、図5Aは側面図、図5Bは図5Aの矢印VB方向から見た図、図5Cは図5Aの矢印VC方向から見た図、図5Dは図5Aの矢印VD方向から見た図である。
図6は実施例1の試整復部材のボディの説明図であり、図6Aはブレードが取り外された状態で図5Aの矢印VIA方向から見た図、図6Bは図6AのVIB−VIB線断面図、図6Cは図6AのVIC−VIC線断面図である。
【0023】
図3、図4において、実施例1では、リーミングが行われた大腿骨6に対して、ラスピング前に、大腿骨6の凹部11に試整復部材21が装着されて試整復が行われる。
図4〜図6において、実施例1の試整復部材21は、図4Bの破線で示すリーマー12の外形に対応し且つ図4Bの一点鎖線で示すステム7の外形よりも小さく大腿骨6に沿って延びる棒状の本体の一例としてのボディ22を有する。ボディ22の一端部である上端部には、大腿骨6の上端部の形状に対応した形状の台座部23が形成されており台座部23には、連結部の一例として、臼蓋カップ4側に向けて延びる連結シャフト24が一体形成されている。
【0024】
図6において、前記ボディ22および台座部23外側面には、大腿骨6の延びる方向に沿って、溝状の羽根装着部22a,22b,22c,22dが左右および前後に形成されている。各羽根装着部22a〜22dには、羽部の一例として、大腿骨6の延びる方向に沿って延びるボディ22よりも厚さの薄い板状のブレード25a,25b,25c,25dが前後左右の合計4つ一体形成されている。図4B、図5、図6において、実施例1の試整復部材21では、股関節の内側に対応する位置に配置されたブレード25aは、ステム7の外形に対応する形状に形成されていると共に、その他のブレード25b〜25dは、ステム7の外形に比べて一部が外側に張り出す形状に形成されている。また、実施例1のブレード25a〜25dは、下端が刃状に加工されており、髄腔部に試整復部材21が挿入される際に、内部を切削しながら挿入可能となっている。
【0025】
図7は実施例1の試整復部材にハンドルを取り付ける説明図であり、図7Aはハンドルが取り付けられる前の状態の説明図、図7Bはハンドルが取り付けられた状態の説明図である。
図7において、実施例1の試整復部材21では、連結シャフト24が、従来公知で市販されている後述するラスプの連結シャフトと共通の形状に形成されており、ラスピング時に使用されるハンドル26が装着可能になっている。したがって、ハンドル26の先端部に形成された図示しない凹部に連結シャフト24を嵌めた状態で、連結固定用のレバー27を図7Aに示す解除位置から図7Bに示す固定位置に移動させることで、ハンドル26が試整復部材21に固定、ロックされる。よって、ハンドル26を施術者が把持して操作することで、試整復部材21を大腿骨6内のリーマー12で形成された凹部11に挿入することができる。
【0026】
図8は実施例1の試整復部材に骨頭を取り付ける説明図である。
図8において、大腿骨6内に試整復部材21が装着されると、連結シャフト24からレバー27を操作してハンドル26が取り外され、骨頭支持部の一例としてのネック部28が連結シャフト24に固定される。次に、ネック部28の先端のネジ部28aに嵌る半球状のボール部29が固定支持され、ボール部29に、ステム7で最終的に使用される骨頭ボール8に対応する大きさの骨頭部の一例としての人工骨頭トライアル31が装着される。
したがって、人工骨頭トライアル31が装着された状態で、人工骨頭トライアル31を臼蓋カップ4に装着して、前捻角等の角度が患者の個人差に応じて適切な角度になっているか否かを試す試整復が可能になっている。なお、試整復で角度が不適切な場合には、逆の手順で、試整復部材21を大腿骨6から取り外し、試整復部材21の大腿骨6に対する角度を調整して挿入し、再び試整復することができる。
【0027】
(ラスピングの説明)
図9は実施例1のラスプの説明図であり、図9Aは図4Aに対応する大腿骨にラスプが挿入された状態の要部説明図、図9Bは図4Bに対応する上方から見た説明図である。
試整復部材21が挿入された試整復で患者にとって適切な位置が確認されると、試整復部材21が大腿骨6に挿入された角度に応じてステム7を挿入するために、ステム7の大きさに対応する凹部11に拡張する作業であるラスピングが行われる。
図9において、ラスピングを行うために使用されるラスプ36は、ステム7と同様の外形形状に形成されており、外表面36aに髄腔内を切削するためのヤスリ状の凹凸が形成されている。すなわち、図9Bに示すように、ラスプ36の外形は、ステム7に対応する大きさに形成され且つ、二点鎖線で示す試整復部材21のボディ22よりも大きな形状に形成されている。
【0028】
図10は実施例1のラスプにハンドルを取り付ける説明図であり、図10Aは図7Aに対応するハンドルが取り付けられる前の状態の説明図、図10Bは図7Bに対応するハンドルが取り付けられた状態の説明図である。
図9、図10において、ラスプ36は、試整復部材21の連結シャフト24と同様に構成された連結シャフト37が形成されている。したがって、図10に示すように、ラスプ36には、試整復部材21の場合と同様に、連結シャフト37にハンドル26が着脱可能に装着することができる。
【0029】
図11は実施例1のラスピングの説明図であり、図11Aはラスプを大腿骨内に挿入する作業の説明図、図11Bはラスプを大腿骨から抜去する作業の説明図である。
図11において、ラスプ36でラスピングが行われる場合、ハンドル26を施術者が把持してラスプ36を、大腿骨6の髄腔部6cに試整復部材21で確認された角度で挿入することで、ラスプ36の外表面36aで髄腔部6cが切削され、凹部11が形成される。このとき、図11Aに示すように、ラスプ36を大腿骨6に挿入して切削する際に力が必要な場合、ハンドル26の外端に形成された板状のフランジ部26aをハンマー38で叩くことも可能である。
図11Bにおいて、実施例1のハンマー38には、円柱状のハンマー本体38aの中央部にハンドル26の本体の幅に対応する凹部38bが形成されている。したがって、図11Bに示すように、ハンマー38の凹部38bでハンドル26を挟み且つフランジ部26aに接触させた状体で、ハンマー38を移動させることで、ラスプ36を大腿骨6から抜去するする方向に移動させることが容易になっている。
【0030】
よって、ラスプ36を大腿骨6に挿入することで、ラスプ36の外形形状に応じた凹部11が大腿骨6の内部の髄腔部6cに形成される。
なお、ラスピングも、リーミングの場合と同様に、最初は、最終的に使用されるステム7の大きさよりも小さいサイズのラスプ36を使用し、順にサイズの大きなラスプ36に替えていって、凹部11を少しずつ拡張していき、最終的にステム7に対応するサイズのラスプ36を使用して、使用されるステム7に対応する大きさの凹部11を形成するように作業することが望ましい。
【0031】
また、最終的に使用されるステム7に対応するサイズのラスプ36が大腿骨6に挿入された状態で、ハンドル26を取り外すと、ラスプ36の連結シャフト37に、試整復部材21のネック部28、ボール部29、人工骨頭トライアル31が取り付け可能になる。したがって、ラスプ36が大腿骨6に挿入された状態で、人工骨頭トライアル31等を取り付けて、臼蓋カップ4に装着する整復を一旦行って、ラスプ36で形成された凹部11の大腿骨に対する位置や角度が適切であるかを再度、確認することも可能である。
【0032】
(ステムの装着の説明)
図12は実施例1のステムの説明図であり、図12Aはステムが大腿骨に挿入された状態の説明図、図12Bはステムに骨頭部が装着された状態の説明図である。
図12において、ラスピングが行われて形成された凹部11に、人工股関節のステム7が挿入される。ステム7は、従来公知のステムを使用可能であり、ステム7を大腿骨6内での位置を固めるためのセメントを使用するステムでも、使用しないステムでも適用可能である。
図12A、図12Bにおいて、ステム7が大腿骨6に装着されると、ステム7の骨頭支持部7aに骨頭ボール8が装着され、骨頭ボール8が臼蓋カップ4に装着されることで人工股関節4+7+8が完成する。
【0033】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1の人工股関節4+7+8では、リーミング後、ラスピング前に、試整復部材21により試整復を行うことで、ラスピングされる位置や角度、すなわち、最終的にステム7が装着される位置や角度を確認できる。
ここで、実施例1の試整復部材21は、ラスプ36よりも小さなボディ22と、薄板状の羽部25a〜25dを有するため、角度が不適切で何度か試整復部材21の挿入、抜去を繰り返しても、ボディ22が通過する部分は、ラスプ36で後で削られる部分となりやすい。
【0034】
従来、ラスピングが行われた後に、患者にとって前捻角等が適切でないことが分かった場合、ラスピングで形成された大きな凹部とは別の凹部を形成する必要があってステム7の位置の不安定化に繋がり、やり直しがきき難い。これに対して、実施例1では、ラスピングでステム7に対応する程度の大きな凹部11が形成される前では、試整復部材21のボディ22およびブレード25a〜25dにより、ラスプ36で形成されるよりも容積の小さな凹部しか形成されない。したがって、試整復部材21で何度かやり直しをしても、試整復部材21により形成される複数の小さな凹部、すなわち、ボディ22やブレード25a〜25dの跡は、最終的にはラスプ36で削られてしまう領域に大部分が重複するため、結果としてステム7の固定に影響が少ない。よって、試整復部材21での試整復による位置確認は、やり直すことが可能であり、位置を精度良く確認することができる。
したがって、試整復部材21により、前捻角等の角度が患者にとって適切であるか否かを確認することができ、ステム7を装着する前に、ステム7を装着する位置の確認、微調整が可能になっている。
【0035】
また、ブレード25a〜25dが薄板状に形成されているので、ブレード25a〜25dが通過する部分は、何度か挿抜があった場合でも、ブレード25a〜25dの通過跡どうしが線で交差することはあっても、面で隣り合い広い穴となることは少ない。すなわち、ステム7が挿入された場合にステム7の位置が不安定になる程度の穴や凹部は、ブレード25a〜25dでは形成されにくく、ブレード25a〜25dの跡が、ラスピングで削られなくても、ステム7の位置を精度良く設定、固定することが可能になっている。
さらに、実施例1の試整復部材21を使用した場合、ステム7の位置を精度良く設定可能であると共に、ステム7を大腿骨6に装着した後で角度の調整をする必要が無いため、一体形成のステム7を使用することができる。したがって、一体形成のステム7を使用した場合には、強度や耐久性、信頼性が高く、低コストで施術時の工程も少ないステム7を、精度良く装着することができる。
【0036】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H04)を下記に例示する。
(H01)前記実験例において、リーミング後、ラスピング前に試整復を行う場合について説明を行ったが、これに限定されず、ラスピング前に試整復が行われれば、途中に追加の工程を行うことも可能である。また、試整復部材21のボディ22やブレード25を切削性能の高い刃状に形成することで、リーミング前に試整復の作業を行うことも可能である。
【0037】
(H02)前記実施例において、ボディ22の太さや長さ等、ブレード25の枚数や形状、大きさ、厚さ等については、実施例に例示した構成に限定されず、設計や仕様等に応じて任意に変更可能である。したがって、ブレード25の外形をラスプ36の外形よりも小さい形状としたり、ボディ22をリーマーよりも補足する等の変更が可能である。
(H03)前記実施例において、試整復部材21の連結シャフト24とラスプ36の連結シャフト37とを共通化して、共通のハンドル31やネック部28等を着脱可能に構成することが望ましいが、これに限定されず、別の形状とすることも可能であり、別の形状のハンドルを着脱可能にしたり、例えば、ラスプ36にネック部28等を装着不可能に構成する等の変更を行うことも可能である。
【0038】
(H04)前記実施例において、ネック部28等は試整復部材21と別体の構成を例示したが、これに限定されず、一体形成することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
2…骨盤、
3…臼蓋、
4+7+8…人工股関節、
6…大腿骨、
6c…髄腔部、
7…ステム、
8,31…骨頭部、
11…凹部、
21…試整復部材、
22…本体、
25a〜25d…羽部、
28…骨頭支持部、
36…ラスプ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工股関節用のステムの埋植方法および試整復部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、股関節に疾患がある患者に対して、人工股関節を適用する手術が行われる場合に使用される人工股関節用の部材に関して、以下の特許文献1〜4に記載の技術が従来公知である。
【0003】
特許文献1としての特開2010−51504号公報には、大腿骨(100)の内部の髄腔部(100a)に棒状のステム部材により構成された人工股関節用コンポーネント(1)が挿入されて埋植されると共に、人工股関節用コンポーネント(1)の外端の骨頭ボール部材(2)が、骨盤(101)の臼蓋(101a)に埋植された臼蓋カップ(103)に回転可能な状態で装着された人工股関節に関する技術が記載されている。
特許文献1記載の技術では、髄腔部の形状の個人によるばらつきを考慮して、人工股関節用コンポーネント(1)のテーパ状の面(16〜19)の軸中心線(C)に対する角度(D,E)を2度〜8度や0度〜3度の範囲で設定、すなわち、複数の角度のコンポーネント(1)を用意しておき、髄腔部の形状に適合させた状態で人工股関節用のコンポーネント(1)を埋植している。
【0004】
特許文献2としての特開2009−232899号公報には、大腿骨(5)の骨端領域(6)から骨幹領域(7)に向けて形成された窄孔(4)に挿入される人工股関節用ステム(1)の外表面に、窄孔(4)内での回旋を抑制するための突起(11,12)を多数設ける技術が記載されている。特許文献2には、ステムにほぼ等しい外形のラスプで予め窄孔(4)を形成しておき、作成された窄孔(4)にステム(1)を挿入することが記載されている。
【0005】
特許文献3としての特開2008−119051号公報には、大腿部に挿入される大腿骨用コンポーネント(1)が、骨盤に回転可能に支持される骨頭ボール(103)が装着される首部部材(11)と、首部部材(11)の嵌合凸部(11c)が嵌る嵌合凹部(12d)が形成されたテーパ部材(12)と、テーパ部材(12)の先端の嵌合凸部(12e)が嵌る嵌合凹部(13b)が形成された棒状部材(13)と、の3つのパーツで構成された構成が記載されている。特許文献3記載の技術では、首部部材(11)がテーパ部材(12)に対して嵌合凸部(11c)を中心として回転位置が調整可能な状態で支持される構成が記載されている。
【0006】
特許文献4としての特開2006−26411号公報には、大腿部の所望の位置にシャフト(11)を装着するための技術が記載されている。特許文献4記載の技術では、まず、シャフト(11)と同様の大きさのやすり(13)が髄腔部に挿入されて大腿骨内に凹部を形成し、次に、やすり(13)と同様の大きさのガイド本体(14)が大腿骨内の凹部に挿入される。そして、大腿骨内の凹部に挿入されたガイド本体(14)の外面に形成された平面部(37)にガイドされながら第2の器具(15)が大腿骨内に挿入される際に、第2の器具(15)に形成されたやすり状の機能ウェブ(31)により、髄腔部にトラック(溝)が形成される。そして、ガイド本体(14)および第2の器具(15)を大腿骨から抜いた後に、髄腔部に形成されたトラックにより、シャフト(11)のリブ(19)がガイドされることで、所望の位置にシャフト(11)を挿入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−51504号公報(「0028」〜「0036」、図1)
【特許文献2】特開2009−232899号公報(「0014」、「0027」、「0031」、図1〜図4)
【特許文献3】特開2008−119051号公報(「0024」〜「0031」、図1〜図3)
【特許文献4】特開2006−26411号公報(「0043」〜「0050」、図1〜図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(従来技術の問題点)
特許文献1〜4記載の技術では、ステムが挿入される凹部は、従来、まず、外表面に螺旋状の溝が形成されたいわゆるドリル状の部材であるリーマーを髄腔部に挿入して髄腔部に凹部を形成(リーミング)し、リーミングにより形成された凹部にステムと同様の外形を有し外表面にやすり状の加工がされた部材、いわゆるラスプを使用してステムと同様の大きさの凹部が形成(ラスピング)される。言い換えると、リーマーで荒削りをした後、ラスプでステムの形状に合わせた最終調整を行っている。
【0009】
ここで、人工股関節の手術がされる場合、大腿骨を上方から見た場合に大腿骨の頸部(骨頭)の軸が大腿骨の幹部の軸に対して前方に傾斜する角度である前捻角等の角度が、個人により異なることが問題となることがある。すなわち、ラスピングされた髄腔部にステムを挿入する従来の方法では、ラスピング時に形成された髄腔部の凹部に沿ってステムが挿入されるため、特許文献1,2,4に記載されているような一体形成のステムでは、ラスピング後に、挿入されるステムの前捻角の微調整が困難である。これは、ラスピング前の検査でラスプを挿入する角度を精密に検査、測定していても、個人差や測定誤差等があって完全には対応できず、複数の角度設定のステムを準備する必要があるという問題があった。
【0010】
仮に、一度ラスピングした後にステムを挿入して、前捻角等が合わなかった場合に、再度ラスピングを行うと、患者への負担が大きいと共に、2回のラスピングで形成される2つの凹部が部分的に重複するため、ステムよりも大きな凹部が形成されてしまい、凹部とステムとの間に隙間が形成されて、ステムの位置が不安定になり易くなる問題がある。
また、特許文献3に記載されている構成では、前捻角等の微調整が可能になっているが、複数のパーツに分割されているために、ネジの緩みや強度、耐久性に不安があったり、部品点数が多くなってコスト高や手術時の工程増加等の問題がある。
【0011】
前述の事情に鑑み、本発明は、挿入されるステムの位置を挿入前に微調整可能にすることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明の試整復部材は、
患者の大腿骨の内部の髄腔部に人工股関節用のステムを挿入するための凹部を形成するラスプの外形よりも小さい外形を有し前記髄腔部に挿入可能な本体と、
前記本体の外側面に沿って設けられ且つ外方に延びて形成された板状の羽部であって、前記本体が前記髄腔部に挿入された場合に前記髄腔部を削ることが可能な前記羽部と、
前記本体に設けられた骨頭支持部であって、患者の骨盤の臼蓋に回転可能に支持される骨頭部であり且つ前記ステムの骨頭部に対応する形状の骨頭部が支持される前記骨頭支持部と、
を備え、前記ラスプで前記髄腔部に凹部が形成される前に、前記髄腔部に挿入されて、前記ラスプにより形成される凹部よりも容積の小さな凹部が前記本体及び前記羽部により形成され、且つ、前記骨頭支持部の前記骨頭部と前記臼蓋との試整復を実行可能であることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の試整復部材において、
外端の形状が前記ステムの外形形状に沿って形成された前記羽部、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
前記技術的課題を解決するために、請求項3に記載の発明の人工股関節用のステムの埋植方法は、
患者の大腿骨の内部の髄腔部に棒状のリーマーを挿入して、髄腔部に凹部を形成するリーミング工程と、
人工股関節用のステムを挿入するための凹部を形成するラスプの外形よりも小さい外形を有する本体と、前記本体の外側面に沿って設けられ且つ外方に延びて形成された板状の羽部であって、前記本体が前記髄腔部に挿入された場合に前記髄腔部を削ることが可能な前記羽部と、前記本体に設けられた骨頭支持部であって、患者の骨盤の臼蓋に回転可能に支持される骨頭部であり且つ前記ステムの骨頭部と同一の骨頭部が支持可能な骨頭支持部と、を備えた試整復部材を前記リーマーで形成された凹部に挿入し、前記骨頭部と前記臼蓋との試整復を行う試整復工程と、
前記試整復部材が挿入された位置に前記ラスプを挿入して、前記ステムを挿入するための凹部を形成するラスピング工程と、
前記ラスピング工程で形成された凹部にステムを埋植するステム埋植工程と、
を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1、3に記載の発明によれば、ラスプの外形よりも小さい外形の試整復部材を使用して、試整復ができるので、挿入されるステムの位置を挿入前に微調整可能にすることができる。
請求項2に記載の発明によれば、ステムの外形形状よりも張り出している場合に比べて、ラスプで凹部が形成される際に、羽部の跡によりステムの位置が不安定になることを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の実施例1における患者の大腿骨部分に人工股関節が適用された状態の説明図である。
【図2】図2は実施例1における大腿骨の頸部の説明図であり、図2Aは頸部の骨切り前の大腿骨の説明図、図2Bは頸部の骨切り後の大腿骨の説明図である。
【図3】図3は実施例1における大腿骨のリーミングの説明図であり、図3Aは要部説明図、図3Bは要部斜視図、図3Cはリーマーの説明図である。
【図4】図4は実施例1における大腿骨の試整復の説明図であり、図4Aは試整復部材が大腿骨に挿入された状態の要部説明図、図4Bは図4Aを上方から見た要部説明図である。
【図5】図5は実施例1の試整復部材の説明図であり、図5Aは側面図、図5Bは図5Aの矢印VB方向から見た図、図5Cは図5Aの矢印VC方向から見た図、図5Dは図5Aの矢印VD方向から見た図である。
【図6】図6は実施例1の試整復部材のボディの説明図であり、図6Aはブレードが取り外された状態で図5Aの矢印VIA方向から見た図、図6Bは図6AのVIB−VIB線断面図、図6Cは図6AのVIC−VIC線断面図である。
【図7】図7は実施例1の試整復部材にハンドルを取り付ける説明図であり、図7Aはハンドルが取り付けられる前の状態の説明図、図7Bはハンドルが取り付けられた状態の説明図である。
【図8】図8は実施例1の試整復部材に骨頭を取り付ける説明図である。
【図9】図9は実施例1のラスプの説明図であり、図9Aは図4Aに対応する大腿骨にラスプが挿入された状態の要部説明図、図9Bは図4Bに対応する上方から見た説明図である。
【図10】図10は実施例1のラスプにハンドルを取り付ける説明図であり、図10Aは図7Aに対応するハンドルが取り付けられる前の状態の説明図、図10Bは図7Bに対応するハンドルが取り付けられた状態の説明図である。
【図11】図11は実施例1のラスピングの説明図であり、図11Aはラスプを大腿骨内に挿入する作業の説明図、図11Bはラスプを大腿骨から抜去する作業の説明図である。
【図12】図12は実施例1のステムの説明図であり、図12Aはステムが大腿骨に挿入された状態の説明図、図12Bはステムに骨頭部が装着された状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例である実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の実施例1における患者の大腿骨部分に人工股関節が適用された状態の説明図である。
図1において、患者の股関節1において、骨盤2の臼蓋3には、半球殻状の臼蓋カップ4が支持されている。大腿骨6に挿入されたステム7の上端には、臼蓋カップ4に向けて延びる骨頭支持部7aが形成されており、骨頭支持部7aには骨頭部の一例としての半球状の骨頭ボール8が支持される。したがって、骨頭ボール8が臼蓋カップ4に回転可能な状態で支持されることで、人工股関節4+7+8が構成される。
【0019】
(頸部の骨切りの説明)
図2は実施例1における大腿骨の頸部の説明図であり、図2Aは頸部の骨切り前の大腿骨の説明図、図2Bは頸部の骨切り後の大腿骨の説明図である。
図1、図2において、大腿骨6にステム7を装着する場合、まず、大腿骨6の検査を行って、図2Aに示す大腿骨6の頸部6aを切断する骨切り位置6bを確認、設定し、図示しないボーンソーを使用して、図2Bに示すように、頸部6aの骨切りを行う。
【0020】
(リーミングの説明)
図3は実施例1における大腿骨のリーミングの説明図であり、図3Aは要部説明図、図3Bは要部斜視図、図3Cはリーマーの説明図である。
図2,図3において、頸部6aの骨切りがされた大腿骨6に対して、大腿骨6の内部の髄腔部6cの拡大、形成を行うことで内部に凹部11を形成する作業であるリーミングが行われる。
図3Cにおいて、リーミングを行うためのリーマー12は、棒状のリーマー本体13と、リーマー本体13の基端部に連結されて施術者が把持して操作を行うための操作部の一例としてのラチェットハンドル14と、を有する。前記リーマー本体13は、中央部から先端部にかけて螺旋状の溝13aが形成されると共に、大腿骨6の髄腔部の形状に合わせて、先端に行くに連れて先細りになるようにテーパーが形成されている。
【0021】
したがって、図3A、図3Bに示すように、リーマー12を大腿骨6の髄腔部6cに挿入することで溝13aで髄腔部6cの内部を削ることができ、内部に凹部11が形成される。
なお、リーミングでは、最終的に使用するステム7の大きさよりも小さなリーマー12から使用し、順に大きなリーマー12を使用して、凹部11を拡大していき、最終的にステム7に対応する深さの凹部11を形成することが望ましい。
【0022】
(試整復の説明)
図4は実施例1における大腿骨の試整復の説明図であり、図4Aは試整復部材が大腿骨に挿入された状態の要部説明図、図4Bは図4Aを上方から見た要部説明図である。
図5は実施例1の試整復部材の説明図であり、図5Aは側面図、図5Bは図5Aの矢印VB方向から見た図、図5Cは図5Aの矢印VC方向から見た図、図5Dは図5Aの矢印VD方向から見た図である。
図6は実施例1の試整復部材のボディの説明図であり、図6Aはブレードが取り外された状態で図5Aの矢印VIA方向から見た図、図6Bは図6AのVIB−VIB線断面図、図6Cは図6AのVIC−VIC線断面図である。
【0023】
図3、図4において、実施例1では、リーミングが行われた大腿骨6に対して、ラスピング前に、大腿骨6の凹部11に試整復部材21が装着されて試整復が行われる。
図4〜図6において、実施例1の試整復部材21は、図4Bの破線で示すリーマー12の外形に対応し且つ図4Bの一点鎖線で示すステム7の外形よりも小さく大腿骨6に沿って延びる棒状の本体の一例としてのボディ22を有する。ボディ22の一端部である上端部には、大腿骨6の上端部の形状に対応した形状の台座部23が形成されており台座部23には、連結部の一例として、臼蓋カップ4側に向けて延びる連結シャフト24が一体形成されている。
【0024】
図6において、前記ボディ22および台座部23外側面には、大腿骨6の延びる方向に沿って、溝状の羽根装着部22a,22b,22c,22dが左右および前後に形成されている。各羽根装着部22a〜22dには、羽部の一例として、大腿骨6の延びる方向に沿って延びるボディ22よりも厚さの薄い板状のブレード25a,25b,25c,25dが前後左右の合計4つ一体形成されている。図4B、図5、図6において、実施例1の試整復部材21では、股関節の内側に対応する位置に配置されたブレード25aは、ステム7の外形に対応する形状に形成されていると共に、その他のブレード25b〜25dは、ステム7の外形に比べて一部が外側に張り出す形状に形成されている。また、実施例1のブレード25a〜25dは、下端が刃状に加工されており、髄腔部に試整復部材21が挿入される際に、内部を切削しながら挿入可能となっている。
【0025】
図7は実施例1の試整復部材にハンドルを取り付ける説明図であり、図7Aはハンドルが取り付けられる前の状態の説明図、図7Bはハンドルが取り付けられた状態の説明図である。
図7において、実施例1の試整復部材21では、連結シャフト24が、従来公知で市販されている後述するラスプの連結シャフトと共通の形状に形成されており、ラスピング時に使用されるハンドル26が装着可能になっている。したがって、ハンドル26の先端部に形成された図示しない凹部に連結シャフト24を嵌めた状態で、連結固定用のレバー27を図7Aに示す解除位置から図7Bに示す固定位置に移動させることで、ハンドル26が試整復部材21に固定、ロックされる。よって、ハンドル26を施術者が把持して操作することで、試整復部材21を大腿骨6内のリーマー12で形成された凹部11に挿入することができる。
【0026】
図8は実施例1の試整復部材に骨頭を取り付ける説明図である。
図8において、大腿骨6内に試整復部材21が装着されると、連結シャフト24からレバー27を操作してハンドル26が取り外され、骨頭支持部の一例としてのネック部28が連結シャフト24に固定される。次に、ネック部28の先端のネジ部28aに嵌る半球状のボール部29が固定支持され、ボール部29に、ステム7で最終的に使用される骨頭ボール8に対応する大きさの骨頭部の一例としての人工骨頭トライアル31が装着される。
したがって、人工骨頭トライアル31が装着された状態で、人工骨頭トライアル31を臼蓋カップ4に装着して、前捻角等の角度が患者の個人差に応じて適切な角度になっているか否かを試す試整復が可能になっている。なお、試整復で角度が不適切な場合には、逆の手順で、試整復部材21を大腿骨6から取り外し、試整復部材21の大腿骨6に対する角度を調整して挿入し、再び試整復することができる。
【0027】
(ラスピングの説明)
図9は実施例1のラスプの説明図であり、図9Aは図4Aに対応する大腿骨にラスプが挿入された状態の要部説明図、図9Bは図4Bに対応する上方から見た説明図である。
試整復部材21が挿入された試整復で患者にとって適切な位置が確認されると、試整復部材21が大腿骨6に挿入された角度に応じてステム7を挿入するために、ステム7の大きさに対応する凹部11に拡張する作業であるラスピングが行われる。
図9において、ラスピングを行うために使用されるラスプ36は、ステム7と同様の外形形状に形成されており、外表面36aに髄腔内を切削するためのヤスリ状の凹凸が形成されている。すなわち、図9Bに示すように、ラスプ36の外形は、ステム7に対応する大きさに形成され且つ、二点鎖線で示す試整復部材21のボディ22よりも大きな形状に形成されている。
【0028】
図10は実施例1のラスプにハンドルを取り付ける説明図であり、図10Aは図7Aに対応するハンドルが取り付けられる前の状態の説明図、図10Bは図7Bに対応するハンドルが取り付けられた状態の説明図である。
図9、図10において、ラスプ36は、試整復部材21の連結シャフト24と同様に構成された連結シャフト37が形成されている。したがって、図10に示すように、ラスプ36には、試整復部材21の場合と同様に、連結シャフト37にハンドル26が着脱可能に装着することができる。
【0029】
図11は実施例1のラスピングの説明図であり、図11Aはラスプを大腿骨内に挿入する作業の説明図、図11Bはラスプを大腿骨から抜去する作業の説明図である。
図11において、ラスプ36でラスピングが行われる場合、ハンドル26を施術者が把持してラスプ36を、大腿骨6の髄腔部6cに試整復部材21で確認された角度で挿入することで、ラスプ36の外表面36aで髄腔部6cが切削され、凹部11が形成される。このとき、図11Aに示すように、ラスプ36を大腿骨6に挿入して切削する際に力が必要な場合、ハンドル26の外端に形成された板状のフランジ部26aをハンマー38で叩くことも可能である。
図11Bにおいて、実施例1のハンマー38には、円柱状のハンマー本体38aの中央部にハンドル26の本体の幅に対応する凹部38bが形成されている。したがって、図11Bに示すように、ハンマー38の凹部38bでハンドル26を挟み且つフランジ部26aに接触させた状体で、ハンマー38を移動させることで、ラスプ36を大腿骨6から抜去するする方向に移動させることが容易になっている。
【0030】
よって、ラスプ36を大腿骨6に挿入することで、ラスプ36の外形形状に応じた凹部11が大腿骨6の内部の髄腔部6cに形成される。
なお、ラスピングも、リーミングの場合と同様に、最初は、最終的に使用されるステム7の大きさよりも小さいサイズのラスプ36を使用し、順にサイズの大きなラスプ36に替えていって、凹部11を少しずつ拡張していき、最終的にステム7に対応するサイズのラスプ36を使用して、使用されるステム7に対応する大きさの凹部11を形成するように作業することが望ましい。
【0031】
また、最終的に使用されるステム7に対応するサイズのラスプ36が大腿骨6に挿入された状態で、ハンドル26を取り外すと、ラスプ36の連結シャフト37に、試整復部材21のネック部28、ボール部29、人工骨頭トライアル31が取り付け可能になる。したがって、ラスプ36が大腿骨6に挿入された状態で、人工骨頭トライアル31等を取り付けて、臼蓋カップ4に装着する整復を一旦行って、ラスプ36で形成された凹部11の大腿骨に対する位置や角度が適切であるかを再度、確認することも可能である。
【0032】
(ステムの装着の説明)
図12は実施例1のステムの説明図であり、図12Aはステムが大腿骨に挿入された状態の説明図、図12Bはステムに骨頭部が装着された状態の説明図である。
図12において、ラスピングが行われて形成された凹部11に、人工股関節のステム7が挿入される。ステム7は、従来公知のステムを使用可能であり、ステム7を大腿骨6内での位置を固めるためのセメントを使用するステムでも、使用しないステムでも適用可能である。
図12A、図12Bにおいて、ステム7が大腿骨6に装着されると、ステム7の骨頭支持部7aに骨頭ボール8が装着され、骨頭ボール8が臼蓋カップ4に装着されることで人工股関節4+7+8が完成する。
【0033】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1の人工股関節4+7+8では、リーミング後、ラスピング前に、試整復部材21により試整復を行うことで、ラスピングされる位置や角度、すなわち、最終的にステム7が装着される位置や角度を確認できる。
ここで、実施例1の試整復部材21は、ラスプ36よりも小さなボディ22と、薄板状の羽部25a〜25dを有するため、角度が不適切で何度か試整復部材21の挿入、抜去を繰り返しても、ボディ22が通過する部分は、ラスプ36で後で削られる部分となりやすい。
【0034】
従来、ラスピングが行われた後に、患者にとって前捻角等が適切でないことが分かった場合、ラスピングで形成された大きな凹部とは別の凹部を形成する必要があってステム7の位置の不安定化に繋がり、やり直しがきき難い。これに対して、実施例1では、ラスピングでステム7に対応する程度の大きな凹部11が形成される前では、試整復部材21のボディ22およびブレード25a〜25dにより、ラスプ36で形成されるよりも容積の小さな凹部しか形成されない。したがって、試整復部材21で何度かやり直しをしても、試整復部材21により形成される複数の小さな凹部、すなわち、ボディ22やブレード25a〜25dの跡は、最終的にはラスプ36で削られてしまう領域に大部分が重複するため、結果としてステム7の固定に影響が少ない。よって、試整復部材21での試整復による位置確認は、やり直すことが可能であり、位置を精度良く確認することができる。
したがって、試整復部材21により、前捻角等の角度が患者にとって適切であるか否かを確認することができ、ステム7を装着する前に、ステム7を装着する位置の確認、微調整が可能になっている。
【0035】
また、ブレード25a〜25dが薄板状に形成されているので、ブレード25a〜25dが通過する部分は、何度か挿抜があった場合でも、ブレード25a〜25dの通過跡どうしが線で交差することはあっても、面で隣り合い広い穴となることは少ない。すなわち、ステム7が挿入された場合にステム7の位置が不安定になる程度の穴や凹部は、ブレード25a〜25dでは形成されにくく、ブレード25a〜25dの跡が、ラスピングで削られなくても、ステム7の位置を精度良く設定、固定することが可能になっている。
さらに、実施例1の試整復部材21を使用した場合、ステム7の位置を精度良く設定可能であると共に、ステム7を大腿骨6に装着した後で角度の調整をする必要が無いため、一体形成のステム7を使用することができる。したがって、一体形成のステム7を使用した場合には、強度や耐久性、信頼性が高く、低コストで施術時の工程も少ないステム7を、精度良く装着することができる。
【0036】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H04)を下記に例示する。
(H01)前記実験例において、リーミング後、ラスピング前に試整復を行う場合について説明を行ったが、これに限定されず、ラスピング前に試整復が行われれば、途中に追加の工程を行うことも可能である。また、試整復部材21のボディ22やブレード25を切削性能の高い刃状に形成することで、リーミング前に試整復の作業を行うことも可能である。
【0037】
(H02)前記実施例において、ボディ22の太さや長さ等、ブレード25の枚数や形状、大きさ、厚さ等については、実施例に例示した構成に限定されず、設計や仕様等に応じて任意に変更可能である。したがって、ブレード25の外形をラスプ36の外形よりも小さい形状としたり、ボディ22をリーマーよりも補足する等の変更が可能である。
(H03)前記実施例において、試整復部材21の連結シャフト24とラスプ36の連結シャフト37とを共通化して、共通のハンドル31やネック部28等を着脱可能に構成することが望ましいが、これに限定されず、別の形状とすることも可能であり、別の形状のハンドルを着脱可能にしたり、例えば、ラスプ36にネック部28等を装着不可能に構成する等の変更を行うことも可能である。
【0038】
(H04)前記実施例において、ネック部28等は試整復部材21と別体の構成を例示したが、これに限定されず、一体形成することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
2…骨盤、
3…臼蓋、
4+7+8…人工股関節、
6…大腿骨、
6c…髄腔部、
7…ステム、
8,31…骨頭部、
11…凹部、
21…試整復部材、
22…本体、
25a〜25d…羽部、
28…骨頭支持部、
36…ラスプ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の大腿骨の内部の髄腔部に人工股関節用のステムを挿入するための凹部を形成するラスプの外形よりも小さい外形を有し前記髄腔部に挿入可能な本体と、
前記本体の外側面に沿って設けられ且つ外方に延びて形成された板状の羽部であって、前記本体が前記髄腔部に挿入された場合に前記髄腔部を削ることが可能な前記羽部と、
前記本体に設けられた骨頭支持部であって、患者の骨盤の臼蓋に回転可能に支持される骨頭部であり且つ前記ステムの骨頭部に対応する形状の骨頭部が支持される前記骨頭支持部と、
を備え、前記ラスプで前記髄腔部に凹部が形成される前に、前記髄腔部に挿入されて、前記ラスプにより形成される凹部よりも容積の小さな凹部が前記本体及び前記羽部により形成され、且つ、前記骨頭支持部の前記骨頭部と前記臼蓋との試整復を実行可能であることを特徴とする試整復部材。
【請求項2】
外端の形状が前記ステムの外形形状に沿って形成された前記羽部、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の試整復部材。
【請求項3】
患者の大腿骨の内部の髄腔部に棒状のリーマーを挿入して、髄腔部に凹部を形成するリーミング工程と、
人工股関節用のステムを挿入するための凹部を形成するラスプの外形よりも小さい外形を有する本体と、前記本体の外側面に沿って設けられ且つ外方に延びて形成された板状の羽部であって、前記本体が前記髄腔部に挿入された場合に前記髄腔部を削ることが可能な前記羽部と、前記本体に設けられた骨頭支持部であって、患者の骨盤の臼蓋に回転可能に支持される骨頭部であり且つ前記ステムの骨頭部と同一の骨頭部が支持可能な骨頭支持部と、を備えた試整復部材を前記リーマーで形成された凹部に挿入し、前記骨頭部と前記臼蓋との試整復を行う試整復工程と、
前記試整復部材が挿入された位置に前記ラスプを挿入して、前記ステムを挿入するための凹部を形成するラスピング工程と、
前記ラスピング工程で形成された凹部にステムを埋植するステム埋植工程と、
を実行することを特徴とする人工股関節用のステムの埋植方法。
【請求項1】
患者の大腿骨の内部の髄腔部に人工股関節用のステムを挿入するための凹部を形成するラスプの外形よりも小さい外形を有し前記髄腔部に挿入可能な本体と、
前記本体の外側面に沿って設けられ且つ外方に延びて形成された板状の羽部であって、前記本体が前記髄腔部に挿入された場合に前記髄腔部を削ることが可能な前記羽部と、
前記本体に設けられた骨頭支持部であって、患者の骨盤の臼蓋に回転可能に支持される骨頭部であり且つ前記ステムの骨頭部に対応する形状の骨頭部が支持される前記骨頭支持部と、
を備え、前記ラスプで前記髄腔部に凹部が形成される前に、前記髄腔部に挿入されて、前記ラスプにより形成される凹部よりも容積の小さな凹部が前記本体及び前記羽部により形成され、且つ、前記骨頭支持部の前記骨頭部と前記臼蓋との試整復を実行可能であることを特徴とする試整復部材。
【請求項2】
外端の形状が前記ステムの外形形状に沿って形成された前記羽部、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の試整復部材。
【請求項3】
患者の大腿骨の内部の髄腔部に棒状のリーマーを挿入して、髄腔部に凹部を形成するリーミング工程と、
人工股関節用のステムを挿入するための凹部を形成するラスプの外形よりも小さい外形を有する本体と、前記本体の外側面に沿って設けられ且つ外方に延びて形成された板状の羽部であって、前記本体が前記髄腔部に挿入された場合に前記髄腔部を削ることが可能な前記羽部と、前記本体に設けられた骨頭支持部であって、患者の骨盤の臼蓋に回転可能に支持される骨頭部であり且つ前記ステムの骨頭部と同一の骨頭部が支持可能な骨頭支持部と、を備えた試整復部材を前記リーマーで形成された凹部に挿入し、前記骨頭部と前記臼蓋との試整復を行う試整復工程と、
前記試整復部材が挿入された位置に前記ラスプを挿入して、前記ステムを挿入するための凹部を形成するラスピング工程と、
前記ラスピング工程で形成された凹部にステムを埋植するステム埋植工程と、
を実行することを特徴とする人工股関節用のステムの埋植方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−165889(P2012−165889A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29372(P2011−29372)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(390034740)株式会社日本エム・ディ・エム (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(390034740)株式会社日本エム・ディ・エム (3)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]