説明

人工膝関節設置用の屈曲位バランサー装置及びジグシステム

【課題】大腿骨コンポーネントを大腿骨に高精度で取付けることを可能にする人工膝関節設置用の屈曲位バランサー装置及びジグシステムを提供する。
【解決手段】本発明は、人工膝関節を設置するために膝を屈曲位にした状態で使用される屈曲位バランサー装置及びそれを含むジグシステムに関する。屈曲位バランサー装置(6)は、脛骨取付け部(8)と、大腿骨取付け部(10)と、大腿骨取付け部を脛骨取付け部に対して移動させる移動機構(12)を有し、移動機構は、大腿骨と脛骨の間に所定の緊張状態を維持するロック機構(22)を有する。大腿骨取付け部は、孔あけガイド部(34)と、顆骨支持部(38)と、顆骨支持部を孔あけガイド部に対して回動させる回動機構(40)を有する。回動機構は、ロック機構によって大腿骨取付け部と脛骨取付け部の間を所定の距離に維持した状態で操作可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工膝関節設置用のジグ及びジグシステムに関し、詳細には、膝が屈曲位にあるときに使用される人工膝関節設置用の屈曲位バランサー装置、及びそれを含むジグシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
膝の軟骨がすり切れることにより変形性関節症又は慢性リウマチ等になった患者の治療に人工膝関節が使用されることがある。図12は、人工膝関節を設置した左脚の大腿骨及び脛骨を示す概略的な側面断面図である。図12に示すように、人工膝関節100は、脛骨Tの近位端部Teに固定される脛骨トレイ102及びサーフェスライナ104と、大腿骨Fの遠位端部Feを覆うように大腿骨Fに固定される大腿骨コンポーネント106とを有している。場合によって、脛骨トレイ102と脛骨Tの間にスペーサ(図示せず)が挿入される。大腿骨Fと脛骨Tとは、主に、その左右両側に配置された靭帯(図示せず)によって連結され且つ互いに引っ張られており、それにより、大腿骨コンポーネント106は、サーフェスライナ104に押付けられている。人工膝関節100では、膝を、曲げた位置(屈曲位)と伸ばした位置(伸展位)との間で動かすと、大腿骨コンポーネント106がサーフェスライナ104に沿って摺動する。
【0003】
図13は、人工膝関節を設置するために部分的に切除された左脚の脛骨及び大腿骨を示す概略的な側面図である。図13に示すように、脛骨Tの近位端部Teは、すり切れた軟骨を除去するために、且つ、脛骨トレイ102を脛骨Tに固定するための設置面、即ち、近位端面Tcを形成するために切除(骨切り)されている。同様に、大腿骨Fの遠位端部Feは、すり切れた軟骨を除去するために、且つ、大腿骨コンポーネント106を大腿骨Fに固定するための5つの設置面Fc1〜Fc5を形成するために切除(骨切り)されている。5つの設置面は、遠位端面Fc1と、遠位端面Fc1に対して垂直な前設置面Fc2及び後設置面Fc3と、遠位端面Fc1と前設置面Fc2及び後設置面Fc3との間の2つの傾斜設置面Fc4、Fc5である。
【0004】
脛骨Tの近位端面Tc及び大腿骨Fの遠位端面Fc1はそれぞれ、人工膝関節100を取付けた後の患者の身長が変化しないように、脛骨Tの近位端及び大腿骨Fの遠位端から予め決められた距離LT、LFのところに形成される。一般的に、脛骨Tの近位端面Tcは、脛骨Tの軸線に対して垂直に形成される。脛骨Tの近位端面Tc及び大腿骨Fの遠位端面Fc1を形成した後、膝が伸展位にあるときの靭帯の緊張状態(靭帯のテンション及び左右のバランス)を調整する。調整前の患者の脛骨Tの近位端面Tcと大腿骨Fの遠位端面Fc1は、左右の靭帯のアンバランスにより平行になっていないので、靭帯の軟部組織の一部を解放することによって、近位端面Tcと遠位端面Fc1が平行になるようにする。そして、例えば、適当な厚さのスペーサを脛骨Tと大腿骨Fとの間に挿入する。次いで、靭帯の所定の緊張状態を得るために、スペーサの厚さを増減させたり、更に軟部組織を解放したりする。
【0005】
次いで、膝を屈曲位にして、大腿骨の前設置面Fc2及び後設置面Fc3の位置を決定する。近年、大腿骨の前設置面Fc2及び後設置面Fc3を形成する際、膝が屈曲位にあるときの靭帯の緊張状態を確認するために、脛骨Tと大腿骨Fの間の隙間を調整することができるバランサー装置が用いられるようになってきた(例えば、特許文献1参照)。この場合、バランサー装置によって屈曲位における靭帯の緊張状態を確認し、必要であれば調節した後、大腿骨コンポーネント106のサイズを決定すると共に、大腿骨の前設置面Fc2及び後設置面Fc3の位置を決定する。
【0006】
また、大腿骨の前設置面Fc2及び後設置面Fc3の位置を決定する別の方法として、大腿骨Fの後部顆骨(内側顆骨後部Fp1及び外側顆骨後部Fp2、図1、図5参照)を基準にして、設置面Fc2〜Fc5を形成するための骨切りジグの設置位置を定め、骨切りジグを用いて、後設置面Fc3、前設置面Fc2を形成する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−75517号公報
【特許文献2】特開2011−78529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
日本人は、欧米人に比較して正座など膝関節を深く曲げることが多い。そのため、膝が屈曲位にあるときの靭帯の緊張状態を、膝が伸展位にあるときの靭帯の緊張状態に一致させることによって、人工膝関節を設置した後の違和感や磨耗を減少させることが特に望まれている。また、膝が伸展位と屈曲位の間で移動するとき、大腿骨と脛骨との間に、回旋運動が生じることが知られている。したがって、かかる回旋運動を考慮した上で、上記緊張状態を調整することが望ましい。
【0009】
特許文献1に記載されたバランサー装置では、大腿骨Fが、その中を長手方向に延びるロッドを介して支持され、上記ロッドを中心に回旋可能である。このため、人工膝関節術中に膝を伸展位から屈曲位にしたときに生じる回旋角度は、本来の回旋角度からずれることがある。言い換えれば、膝を屈曲位にしたときに大腿骨Fに本来の回旋角度が生じたとき、膝が伸展位にあるときに調整された靭帯の緊張状態に起因して、膝が屈曲位にあるときの靭帯の緊張状態がアンバランスになることがある。したがって、膝が屈曲位にあるとき、本来の回旋角度の下で靭帯の緊張状態を調整することにより、膝が屈曲位にあるときの靭帯の緊張状態を膝が伸展位にあるときの緊張状態に更に近づけることができる場合がある。
【0010】
特許文献2に記載された装置では、大腿骨Fの内側上顆Fs1と外側上顆Fs2を結んだ線を、遠位端面Fc1を含む平面に投影した線L1(図5参照、以下、「内外上顆連結線」と称する。)と、大腿骨コンポーネント106の回転軸線とが平行であることが好ましいとされ、膝が屈曲位にあるときの脛骨Tに対する大腿骨の回旋角度を調整可能である。しかしながら、本来の回旋角度の下で靭帯の緊張状態を調整できたとしても、内外上顆連結線と上記回転軸線が平行にならないこともある。したがって、膝が屈曲位にあるとき、本来の回旋角度の下で靭帯の緊張状態を調整することにより、膝が屈曲位にあるときの靭帯の緊張状態を膝が伸展位にあるときの緊張状態に更に近づけることができる場合がある。
【0011】
そこで、本発明は、膝が屈曲位にあるときの靭帯の緊張状態を、膝が伸展位にあるときの靭帯の緊張状態にいっそう近づけるようにして、すなわち高精度で、大腿骨コンポーネントを大腿骨に取付けることを可能にする人工膝関節設置用の屈曲位バランサー装置及びジグシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、人工膝関節を設置するために膝を屈曲位にした状態で使用される本発明による屈曲位バランサー装置は、脛骨の近位端面に取付けられる脛骨取付け部と、大腿骨の遠位端部に取付けられる大腿骨取付け部と、大腿骨取付け部を脛骨取付け部に対して脛骨の近位端面と垂直な方向に移動させる移動機構と、を有し、移動機構は、大腿骨取付け部と脛骨取付け部の間を所定の距離に維持するロック機構を有し、大腿骨取付け部は、移動機構に取付けられた孔あけガイド部と、大腿骨の後部顆骨を支持する顆骨支持部と、顆骨支持部を孔あけガイド部に対して回動させる回動機構と、を有し、孔あけガイド部は、脛骨の近位端面に対して垂直であり且つ膝が屈曲位にあるときの大腿骨の遠位端面に対向する対向面と、骨切りジグの設置基準孔を大腿骨の遠位端面に形成するために対向面に設けられた貫通ガイド孔と、を有し、顆骨支持部は、対向面に対して垂直であり且つ膝が屈曲位にあるときの大腿骨の後部顆骨に当接する顆骨当接平面を有し、対向面と垂直な回動軸線を中心に孔あけガイド部に対して回動可能であり、回動機構は、ロック機構によって大腿骨取付け部と脛骨取付け部の間を所定の距離に維持した状態で操作可能であることを特徴としている。
【0013】
このように構成された屈曲位バランサー装置では、患者の膝を屈曲位にして、脛骨取付け部を脛骨の近位端面に取付け、大腿骨の後部顆骨を大腿骨取付け部の顆骨支持部の顆骨当接平面の上に当接させることによって大腿骨取付け部を大腿骨の遠位端部に取付ける。移動機構を用いて、大腿骨取付け部を脛骨取付け部に対して脛骨の近位端面と垂直な方向(孔あけガイド部の対向面の方向)に移動させ、ロック機構を用いて、大腿骨取付け部と脛骨取付け部の間を所定の距離に維持し、それにより、伸展位において調整された靭帯のテンションと同じ大きさのテンションを屈曲位において付与する。大腿骨の回旋角度が適切に調整されていない場合、大腿骨の遠位端面と孔あけガイド部の対向面が平行にならない。ロック機構を用いて大腿骨取付け部と脛骨取付け部の間を所定の距離に維持した状態で、すなわち、伸展位において調整された靭帯のテンションと同じテンションで、回動機構を用いて、脛骨支持部を孔あけガイド部に対して対向面と垂直な回動軸線を中心に回動させて、大腿骨の回旋角度を調整し、患者の大腿骨の遠位端面と孔あけガイド部の対向面を平行にする。その状態で、対向面に設けられた貫通ガイド孔にドリル等を挿入して、骨切りジグの設置基準孔を大腿骨の遠位端面に形成する。その結果、膝が屈曲位にあるときの靭帯の緊張状態を、膝が伸展位にあるときの靭帯の緊張状態にいっそう近づけるようにして、すなわち高精度で、大腿骨コンポーネントを大腿骨に取付けることを可能にする。
【0014】
また、上記目的を達成するために、人工膝関節設置用の本発明によるジグシステムは、上述した屈曲位バランサー装置と、膝が伸展位にあるときに使用される伸展位バランサー装置と、を有し、伸展位バランサー装置は、脛骨の近位端面に取付けられる伸展位脛骨取付け部と、大腿骨の遠位端面に取付けられる伸展位大腿骨取付け部と、伸展位大腿骨取付け部を伸展位脛骨取付け部に対して脛骨の近位端面と垂直な方向に移動させる伸展位移動機構と、を有し、伸展位移動機構は、伸展位大腿骨取付け部と伸展位脛骨取付け部の間を所定の距離に維持する伸展位ロック機構を有し、伸展位バランサー装置の伸展位脛骨取付け部と、屈曲位バランサー装置の脛骨取付け部とは、脛骨の近位端面の共通の基準位置に対して位置決めされることを特徴としている。
【0015】
このように構成されたジグシステムでは、屈曲位バランサー装置の脛骨取付け部と伸展位バランサー装置の脛骨取付け部が、脛骨の近位端面の共通の基準位置に対して位置決めされるので、伸展位バランサー装置で達成した緊張状態と、屈曲位バランサー装置によって達成した緊張状態とを同じ基準で比較することができ、その結果、膝が屈曲位にあるときの靭帯の緊張状態を、膝が伸展位にあるときの靭帯の緊張状態にいっそう近づけるようにして、すなわち高精度で、大腿骨コンポーネントを大腿骨に取付けることを可能にする。
【0016】
本発明によるジグシステムの実施形態において、好ましくは、更に、トライアル装置を有し、トライアル装置は、脛骨の近位端面に取付けられるトライアル脛骨取付け部と、大腿骨に取付けられた大腿骨コンポーネントを摺動可能に支持するベアリング部と、ベアリング部を脛骨取付け部に対して脛骨の近位端面と垂直な方向に移動させるトライアル移動機構と、を有し、トライアル移動機構は、ベアリング部とトライアル脛骨取付け部の間を所定の距離に維持するトライアルロック機構を有し、トライアル装置のトライアル脛骨取付け部と、屈曲位バランサー装置の脛骨取付け部とは、共通の基準位置に対して位置決めされる。
【0017】
このように構成されたジグシステムでは、更に、大腿骨コンポーネント設置面を形成した後、大腿骨コンポーネントを大腿骨に取付け、脛骨の近位端面の上記位置決め部に位置決めされたベアリング部の上に載せ、膝を伸展位と屈曲位の間で屈曲させることにより、大腿骨コンポーネント(大腿骨コンポーネントと同じ形状を有する大腿骨コンポーネントトライアルを含む)をベアリング部の上で摺動させる。屈曲位バランサー装置の脛骨取付け部と伸展位バランサー装置の脛骨取付け部が、脛骨の近位端面の共通の基準位置に対して位置決めされるので、伸展位における靭帯の緊張状態と、屈曲位における靭帯の緊張状態とを同じ基準で比較することができ、更に、実際の大腿骨コンポーネントと同じ条件で、緊張状態を確認することができる。その結果、膝が屈曲位にあるときの靭帯の緊張状態を、膝が伸展位にあるときの靭帯の緊張状態にいっそう近づけるようにして、すなわち高精度で、大腿骨コンポーネントを大腿骨に取付けることを可能にする。
【0018】
本発明によるジグシステムの実施形態において、好ましくは、屈曲位バランサー装置の脛骨取付け部、及び、伸展位バランサー装置の伸展位脛骨取付け部は、共通の脛骨取付け部によって構成され、屈曲位バランサー装置の移動機構、及び、伸展位バランサー装置の伸展位移動機構は、共通の移動機構によって構成され、屈曲位バランサー装置の大腿骨取付け部、及び、伸展位バランサー装置の伸展位大腿骨取付け部は、共通の移動機構に取外し可能に取付けられる。
【0019】
このように構成されたジグシステムでは、屈曲位バランサー装置の脛骨取付け部と伸展位バランサー装置の脛骨取付け部が、共通の脛骨取付け部によって構成されるので、伸展位バランサー装置で達成した緊張状態と、屈曲位バランサー装置によって達成した緊張状態とをよりいっそう同じ条件で比較することができ、その結果、膝が屈曲位にあるときの靭帯の緊張状態を、膝が伸展位にあるときの靭帯の緊張状態にいっそう近づけるようにして、すなわち高精度で、大腿骨コンポーネントを大腿骨に取付けることを可能にする。
【0020】
トライアル装置を有する本発明によるジグシステムの実施形態において、好ましくは、 屈曲位バランサー装置の脛骨取付け部、伸展位バランサー装置の伸展位脛骨取付け部、及び、トライアル装置のトライアル脛骨取付け部は、共通の脛骨取付け部によって構成され、屈曲位バランサー装置の移動機構、伸展位バランサー装置の伸展位移動機構、及び、トライアル装置のトライアル移動機構は、共通の移動機構によって構成され、屈曲位バランサー装置の大腿骨取付け部、伸展位バランサー装置の伸展位大腿骨取付け部、及び、トライアル装置のベアリング部は、共通の移動機構に取外し可能に取付けられる。
【0021】
このように構成されたジグシステムでは、屈曲位バランサー装置の脛骨取付け部、伸展位バランサー装置の脛骨取付け部、及びトライアル装置のトライアル脛骨取付け部が、共通の脛骨取付け部によって構成されるので、伸展位バランサー装置で達成した緊張状態と、屈曲位バランサー装置によって達成した緊張状態とをよりいっそう同じ条件で比較することができる。更に、トライアル装置を、実際の人工膝関節を取付けた状態と略同じ状態で動かすことができ、より実際に近い状態で靭帯の緊張状態を確認することができる。その結果、膝が屈曲位にあるときの靭帯の緊張状態を、膝が伸展位にあるときの靭帯の緊張状態にいっそう近づけるようにして、すなわち高精度で、大腿骨コンポーネントを大腿骨に取付けることを可能にする。
【0022】
トライアル装置を有する本発明によるジグシステムの実施形態において、更に好ましくは、伸展位バランサー装置の伸展位大腿骨取付け部は、共通の移動機構に取外し可能に取付けられる共通のカップリング部分と、大腿骨と脛骨の間に配置される共通のアタッチメント部分と、カップリング部分とアタッチメント部分を連結する共通のアーム部分と、共通のアタッチメント部分に取付けられ且つ大腿骨の遠位端面に当接するスペーサと、を有し、トライアル装置は、共通のカップリング部分と、共通のアタッチメント部分と、共通のアーム部分と、共通のアタッチメント部分に取付けられ且つ大腿骨コンポーネントを支持するベアリング要素と、を有する。
【0023】
このように構成されたジグシステムでは、伸展位バランサー装置とトライアル装置との間の共通部分が増えることにより、トライアル装置を用いたとき、伸展位バランサー装置で達成した緊張状態と、屈曲位バランサー装置によって達成した緊張状態を、高精度に確認することができる。
【0024】
本発明によるジグシステムの実施形態において、好ましくは、移動機構は、脛骨取付け部よりも下方において脛骨に当接する補助支持部を有する。
【0025】
このように構成されたジグシステムでは、移動機構を脛骨に安定して取付けることができ、靭帯の緊張状態を安定して、調整及び確認することができる。
【0026】
本発明によるジグシステムの実施形態において、好ましくは、脛骨取付け部は、脛骨の近位端面の基準位置に位置決めされる位置決め部分と、位置決め部分から移動機構に向かって延びる支持アームを有し、支持アームは、位置決め部分を脛骨の近位端面に位置決めしたときに、脛骨の左方又は右方にずらされて配置される。
【0027】
このように構成された人工膝関節設置用ジグでは、支持アームが脛骨の中心から左方又は右方にずらされているので、支持アームが膝蓋靭帯に干渉せずに、第1の計測及び第2の計測をすることができる。
【0028】
本発明によるジグシステムの実施形態において、好ましくは、更に、人工膝関節の脛骨トレイを脛骨の近位端面に位置決めするための基準孔を形成するためのガイド孔を備えた脛骨テンプレートを有する。
【発明の効果】
【0029】
人工膝関節設置用の本発明による屈曲位バランサー装置及びジグシステムによれば、膝が屈曲位にあるときの靭帯の緊張状態を、膝が伸展位にあるときの靭帯の緊張状態にいっそう近づけるようにして、すなわち高精度で、大腿骨コンポーネントを大腿骨に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明によるジグシステムの脛骨テンプレートを示す斜視図である。
【図2】本発明によるジグシステムの伸展位バランサー装置を示す斜視図である。
【図3】図1の伸展位バランサー装置を示す側面図である。
【図4】本発明による屈曲位バランサー装置を示す斜視図である。
【図5】図3の屈曲位バランサー装置を示す正面図である。
【図6】本発明によるジグシステムの分解斜視図である。
【図7】図6のジグシステムの共通部分を示す斜視図である。
【図8】屈曲位バランサー装置の大腿骨取付け部の部分的な分解斜視図である。
【図9】図8の大腿骨取付け部の部分的な背面図である。
【図10】本発明によるジグシステムのトライアル装置を伸展位で示す斜視図である。
【図11】本発明によるジグシステムのトライアル装置を屈曲位で示す斜視図である。
【図12】人工膝関節を設置した大腿骨及び脛骨を示す概略的な側面断面図である。
【図13】人工膝関節を設置するために部分的に切除された脛骨及び大腿骨を示す概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明による人工膝関節設置用のジグシステム及び屈曲位バランサー装置の実施形態を説明する。本発明によるジグシステム及び屈曲位バランサー装置は、脛骨を基準として用いられる。以下、脛骨が延びる方向を上下方向と称し、脛骨における患者の前後方向及び左右方向をそれぞれ、前後方向A及び左右方向Bと称する(図1参照)。また、用語「遠位側」及び「近位側」を、患者の胴体に対して用いる。また、以下に説明する実施形態では、左脚を例示する。従って、用語「内側」及び「外側」はそれぞれ、左脚の右側及び左側に対応する。
【0032】
本発明による人工膝関節設置用のジグシステム1の好ましい実施形態は、脛骨テンプレート2(図1参照)、伸展位バランサー装置4(図2及び図3参照)、屈曲位バランサー装置6(図4及び図5参照)、及びトライアル装置60(図10及び図11)を有している。
【0033】
最初に、脛骨テンプレート2を説明する。脛骨テンプレート2は、図1に示すように、人工膝関節100の脛骨トレイ102のサイズ及び脛骨トレイ102の脛骨Tの近位端面Tcへの設置位置を決めるためのものであり、脛骨トレイ102のサイズに応じた複数のテンプレートが準備される。本実施形態では、脛骨テンプレート2は、連結アーム2aと、連結アーム2aの一方の端部に設けられた比較的大きいサイズの第1のテンプレート2bと、連結アーム2aの他方の端部に設けられた比較的小さいサイズの第2のテンプレート2cを有している。脛骨テンプレート2は、更に別のサイズのテンプレートを更に含んでいてもよいし、テンプレートごとに別体に作られていてもよい。
【0034】
脛骨テンプレート2により、脛骨Tの近位端面Tcに対する脛骨トレイ102の前後方向A、左右方向Bの位置が定められる。具体的には、各テンプレート2b、2cは、人工膝関節100の脛骨トレイ102を脛骨Tの近位端面Tcに位置決めするための基準孔(基準位置)Rを形成するためのガイド孔2dを備えている。基準孔Rは、人工膝関節100の脛骨トレイ102を位置決めして固定するための孔でもあることが好ましい。基準孔Rは、通常2つであり、ガイド孔2dに嵌合する径を有するドリルによって形成される。本実施形態では、第1及び第2のテンプレート2b、2cはそれぞれ、4つのガイド孔2dを有し、このうちの2つは、予備のガイド孔である。
【0035】
次に、伸展位バランサー装置4について説明する。後で詳しく説明するように、本実施形態では、伸展位バランサー装置4及び屈曲位バランサー装置6は、共通部分(脛骨取付け部8、移動機構12)と相違部分(大腿骨取付け部10、30)を含み、共通部分に対して相違部分を交換することによって、伸展位バランサー装置4及び屈曲位バランサー装置6が組立てられるように構成されている(図6参照)。
【0036】
伸展位バランサー装置4は、図2〜3及び図6に示すように、膝が伸展位にあるときに使用される。図3及び図6に示すように、伸展位バランサー装置4は、脛骨Tの近位端面Tcに取付けられる脛骨取付け部8と、大腿骨Fの遠位端面Fc1に取付けられる大腿骨取付け部10と、大腿骨取付け部10を脛骨取付け部8に対して脛骨Tの近位端面Tcと垂直な方向に移動させる移動機構12と、を有している。移動機構12は、脛骨取付け部8が固定される固定部14と、大腿骨取付け部10が取付けられる可動部16を有している。
【0037】
脛骨取付け部8は、図6及び図7に示すように、脛骨Tの近位端面Tcの基準孔R(基準位置)に位置決めされる位置決め部分8aと、位置決め部分8aから前方に向かって延びる支持アーム8bと、支持アーム8bを固定部14に取付けるための結合部分8cを有している。位置決め部分8aは、プレート状であり、基準孔Rに整列した孔8dを有している。孔8dは、ザグリ孔であることが好ましく、ヘッドを有するピン8e(図7参照)が、基準孔R及びザグリ孔8dに挿入されることにより、脛骨取付け部8が脛骨Tの近位端面Tcに位置決めされる。ピン8eは、位置決め部分8aよりも上に突出しないことが好ましい。上述したように、基準孔Rは、好ましくは、人工膝関節100の脛骨トレイ102を位置決めして固定するピンが挿入される孔であり、脛骨トレイ102に対する脛骨取付け部8の相対位置を再現できることが好ましい。支持アーム8bは、脛骨取付け部8を脛骨Tの近位端面Tcに位置決めしたときに、脛骨Tの中心から左方又は右方にずらされて配置されることが好ましい。結合部分8cは、ボルト8f(図6参照)によって固定部14に固定される。
【0038】
移動機構12の固定部14は、本体部分18と、前後方向Aに延びるように本体部分18の上部に設けられた前後方向孔18aに回転可能に支持された回転体20を有している。本体部分18は、後述する可動部16のスライドラック部分16aを上下方向Cに移動可能に受入れる上下方向孔18bを有している。回転体20は、スライドラック部分16aに作動的に係合するピニオン20aを有している。スライドラック部分16aとピニオン20aを係合させるために、前後方向孔18aと上下方向孔18bは互いに連通している。回転体20の先端部は、回転体20を回転させるための工具(例えば、トルクレンチ)が嵌合する凸部20b又は凹部を有している。回転体20のピニオン20aを回転させることにより、可動部16のスライドラック部分16aを固定部14に対して上下方向Cに移動させ、すなわち、大腿骨取付け部10を脛骨取付け部8に対して上下方向Cに移動させることを可能にする。
【0039】
移動機構12の固定部14は、更に、回転体20をロックすることにより、大腿骨取り付け部10が脛骨取付け部8に対して下降することを阻止して、大腿骨取付け部10と脛骨取付け部8の間を所定の距離に維持するロック機構22を有している。具体的には、ロック機構22は、回転体20の周囲に設けられた多数の引掛り部20cに係合可能な爪付きレバー22aと、爪付きレバー22aを枢動可能に支持する軸22bと、可動部16が下降することを阻止するように(即ち、可動部16を持ち上げた状態に維持するように)、爪付きレバー22aを引掛り部20cに向かって付勢するばね22cを有している。
【0040】
移動機構12の固定部14は、更に、脛骨取付け部8よりも下方において脛骨Tに当接する補助支持部24を有していることが好ましい。具体的には、本体部分18は、脛骨Tに向かって斜め下方に傾斜した底面18cを有し、補助支持部24は、底面18cから脛骨Tに向かって延びる延長要素24aを有している。延長要素22aは、底面18cに沿って移動可能であり、脛骨Tに当接した状態でノブ24bによって底面18cに固定されている。
【0041】
移動機構12の可動部16は、本体部分18の上下方向孔18bに受入れられるスライドラック部分16aと、スライドラック部分16aの上部に設けられた円形断面の前後方向貫通孔16bと、スライドラック部分16aに取付けられた目盛プレート16cを有している。目盛プレート18cは、その下部に設けられた上下方向目盛16dと、その上部に設けられた角度方向目盛16eを有している。上下方向目盛16dは、固定部14に対する可動部16の上下方向位置、すなわち、脛骨取付け部8に対する大腿骨取付け部10の上下方向位置を表すためのものである。上下方向目盛18dは、本体部分18に設けられた窓18dによって露出され、窓18dの縁に設けられた指示線18e(図7参照)によって指示される。角度方向目盛16eは、可動部16に対する大腿骨取付け部10の角度方向位置を表すためのものである。角度方向目盛16eは、固定部14よりも上に位置し、スライドラック部分16aの前後方向貫通孔16bに挿入された大腿骨取り付け部10のカップリングシャフト部分10cの先端に取付けられた指示体10e(図6参照)によって指示される。脛骨取付け部8の位置決め部分8aの下面8g(図6参照)と後述するスペーサ26の上面26aが平行になるとき、すなわち、脛骨Tの近位端面Tcと大腿骨のFの遠位端面Fc1が平行であるとき、指示体10eは零を示す。
【0042】
大腿骨取付け部10は、図6に示すように、移動機構12の可動部16に取外し可能に取付けられるカップリングシャフト部分10aと、大腿骨Fと脛骨Tの間に配置されるアタッチメント部分10bと、カップリングシャフト部分10aとアタッチメント部分10bを連結するアーム部分10cと、アタッチメント部分10bに取付けられ且つ大腿骨Fの遠位端面Fc1に当接するスペーサ26を有している。カップリングシャフト部分10aは、円形断面を有し、可動部16のスライドラック部分16aの前後方向貫通孔16bに嵌合し、それにより、大腿骨取付け部10は、カップリングシャフト部分10aを中心に回転可能である。アーム部分10cは、大腿骨取付け部10を可動部16に取付けたときに、脛骨Tの左方又は右方にずらされて配置されることが好ましい。ずらされる方向は、脛骨取付け部8の支持アーム8bがずらされる方向と同じであることが好ましい。アタッチメント部分10bは、プレート状であり、スペーサ26を位置決めするための突起10dを有している。スペーサ26は、大腿骨Fの遠位端面Fc1に当接する上面26aを有している。
【0043】
次に、屈曲位バランサー装置6について説明する。
【0044】
図4〜図5に示すように、本発明の実施形態である屈曲位バランサー装置6は、膝を屈曲位にした状態で使用される。屈曲位バランサー装置6は、脛骨Tの近位端面Tcに取付けられる脛骨取付け部8と、大腿骨Fの遠位端部Feに取付けられる大腿骨取付け部30と、大腿骨取付け部10を脛骨取付け部8に対して脛骨Tの近位端面Tcと垂直な方向に移動させる移動機構12と、を有している。脛骨取付け部8及び移動機構12は、伸展位バランサー装置4と共通の構成要素であるので、その説明を省略する。
【0045】
図4及び図6に示すように、大腿骨取付け部30は、孔あけガイドユニット30aと、顆骨支持ユニット30bを有している。孔あけガイドユニット30aは、移動機構12の可動部16に取外し可能に取付けられるカップリング部32と、カップリング部32に連結される孔あけガイド部34と、スタイラス部36を有し、顆骨支持ユニット30bは、大腿骨Fの後部顆骨Fp1、Fp2(図1、図5参照)を支持する顆骨支持部38と、顆骨支持部38を孔あけガイド部34に対して回動させる回動機構40と、を有している。また、顆骨支持部38と回動機構40は、支持ユニットを構成している。
【0046】
カップリング部32は、可動部16のスライドラック部分16aの前後方向貫通孔16bに嵌合するカップリングシャフト部分32aと、カップリングシャフト部分32aの反対側において前後方向Aに延びる取付けシャフト部分32bを有している。カップリングシャフト部分32aは、円形断面を有し、それにより、大腿骨取付け部30は、カップリングシャフト部分32aを中心に回転可能である。取付けシャフト部分32bは、非円形断面を有し、孔あけガイド部34に設けられた第1の取付け孔34aに嵌合し、それにより、孔あけガイド部34は、カップリング部32に対して前後方向Aに移動可能であるが、回転しない。カップリングシャフト部分32aの先端には、可動部16の角度方向目盛16eを指示する指示体10eが取付けられる。
【0047】
孔あけガイド部34は、図8に示すように、前方から見て十字形をなし、上下方向Cに延びる本体部分34bと、上下方向部分34bから左右方向に延びる腕部分34cを有している。本体部分34bは、上述した第1の取付け孔34aと、後述する回動機構40の突出部分40aに嵌合する第2の取付け孔34dを有している。第2の取付け孔34dは、非円形断面を有し、回動機構40の突出部分40aは、孔あけガイド部34に対して回転しない。また、孔あけガイド部34は、脛骨Tの近位端面Tcに対して垂直であり且つ膝が屈曲位にあるときの大腿骨Fの遠位端面Fc1に対向する対向面34eを有している。
【0048】
孔あけガイド部34の腕部分34cは、骨切りジグ(図示せず)の設置基準孔H(図5参照)を大腿骨Fの遠位端面Fc1に形成するために対向面34eに設けられた貫通ガイド孔34fを有し、かかる骨切りジグは、大腿骨コンポーネント106(図12参照)を大腿骨Fに装着するための設置面Fc2〜5を大腿骨Fに骨切りするためのジグである。ガイド孔34fによってあけられる設置基準孔Hは、通常2つであり、それにピン(図示せず)が挿入され、このピンは、骨切りジグ(図示せず)を位置決めするために使用される。貫通ガイド孔34fは、ドリルを案内するために円形の孔であることが好ましい。貫通ガイド孔34fは、予備を含めて複数設けられることが好ましい。
【0049】
スタイラス部36は、大腿骨コンポーネントのサイズを決定するのに使用される。スタイラス部36は、孔あけガイド部34の上下方向孔34gに摺動可能に嵌合する摺動部材36aと、摺動部材36aに受入れられ且つ上下方向軸線36bを中心に回転可能な回転部材36cと、回転部材36cの頂部の溝36dに摺動可能に嵌合するスタイラス36eを有している。スタイラス36eは、細長い板状であり、回転部材36cの頂部から大腿骨Fに沿って近位側A2に延び、大腿骨Fの前面Fa(図4参照)に当接するように下方に曲げられた先端部36fを有している。かくして、スタイラス36dは、孔あけガイド部34に対して、上下方向Cに移動可能であり、上下方向軸線36bを中心に回転可能であり、溝36dに沿って前後方向A(屈曲位における大腿骨Fの近位遠位方向)に摺動可能である。スタイラス36eの孔あけガイド部34に対する上下方向位置は、孔あけガイド部34に設けられた上下方向スロット34hの中に延びるように摺動部材36aに取付けられたピン36gと、上下方向スロット34hに沿って設けられた目盛34iとによって指示される。スタイラス36eの先端部36fの位置は、スタイラス36eに設けられた目盛36hと、溝36dに設けられた指示部36iによって指示される。大腿骨コンポーネント106のサイズは、目盛34i、36hから決定される。
【0050】
顆骨支持部38は、屈曲位にある大腿骨Fの内側顆骨後部Fp1(図1、図5参照)に当接する内側プレート38aと、大腿骨Fの外側顆骨後部Fp2(図1、図5参照)に当接する外側プレート38bと、内側プレート38aと外側プレート38bを連結するプレート状のブリッジ38cを有している。内側プレート38aの上面と外側プレート38bの上面により、対向面34eに対して垂直であり且つ膝が屈曲位にあるときの大腿骨Fの後部顆骨Fp1、Fp2に当接する1つの顆骨当接平面38dを形成する。また、顆骨支持部38、したがって、顆骨当接平面38dは、対向面34eと垂直な回動軸線44を中心に孔あけガイド部34に対して回動可能である。回動軸線44は、大腿骨Fの内側顆骨後部Fp1と内側プレート38aの顆骨当接平面38dとが当接する箇所に位置するのが好ましい。顆骨支持部38は、回動軸線44が位置する箇所に孔38eを有している。
【0051】
回動機構40は、本実施形態では、孔あけガイド部34の第2の取付け孔34dに前後方向Aに嵌合する突出部分40aと、突出部分40aに連結されたプレート部分40bとを有している。第2の取付け孔34d及び突出部分40aの形状は、突出部分36a及びプレート部分40bが孔あけガイド部34に対して前後方向Aに移動可能であるけれども、それ以外の相対移動及び相対回転移動をしないように定められる。プレート部分40bは、回動軸線44に位置する箇所に孔40cを有し、したがって、孔40cは、孔38eと整列している。ピン40dが、孔40c及び孔38eに挿入され、それにより、顆骨支持部38がピン40dを介して回動可能に孔あけガイド部34に取付けられる。
【0052】
回動機構40は、更に、回動軸線44と平行にブリッジ38cに取付けられるハンドルシャフト46と、ハンドルシャフト46を中心に回転可能にハンドルシャフト46に取付けられるハンドル48と、ハンドルシャフト46に対して偏心させてハンドル48に固定された円形輪郭の偏心カム50と、偏心カム50に嵌合するリング52aを有し且つそれから外側に向かって延びるリンクアーム52とを有している。リンクアーム52は、板状であり、顆骨支持部38とプレート部分40bの間に配置されている。
【0053】
リンクアーム52は、顆骨支持部38のブリッジ38cとプレート部分40bの両方に向かって延びるピン52bを有している。顆骨支持部38のブリッジ38cは、ピン52bを摺動可能に受入れる細長い溝38fを有し、プレート部分40bは、ピン52bを摺動可能に受入れる細長い溝40eを有している。細長い溝38f、40eは、ハンドル48を回転させたときに、孔あけガイド部34に対する顆骨支持部38の回動角度が変化するように、即ち、大腿骨Fの回旋角度が変化するように定められる。本実施形態では、ブリッジ38cの細長い溝38fは、顆骨当接平面38dとほぼ平行に延び、プレート部分40bの細長い溝40eは、外側から内側に向って斜め上方向に延びている。ハンドル48は、脛骨Tの近位端面Tcに対する顆骨当接平面38dの回動角度を指示する目盛48aを有することが好ましく、ブリッジ38cは、目盛48aを指示する指示部(本実施形態では指示線)を有している。回旋角度は、例えば、3度〜9度まで変化可能である。リンクアーム52の先端部は、ブリッジ34の外側部分16bに設けられた溝部38gに嵌合し、それにより、リンクアーム52は、ブリッジ38cに沿って揺動可能である。回動機構40は、ロック機構22によって大腿骨取付け部30と脛骨取付け部8の間を所定の距離に維持した状態で操作可能である。
【0054】
例えば、図9の(a)に示すように、ハンドル48の目盛48aを3度に合わせると、偏心カム50は、ハンドルシャフト46に対して外側(図9の左方)に位置し、リンクアーム52のピン52bは、ブリッジ38cの溝38f及びプレート部分40bの溝40eの最も外側に位置する。それにより、孔あけガイド部34に対する顆骨支持部38の回動角度が3度になる。また、図9の(b)に示すように、ハンドル48の目盛48aを6度まで回転させると、偏心カム50は、ハンドルシャフト46に対して上側(図9の上方)に位置し、リンクアーム52のピン52bは、ブリッジ38cの溝34f及びプレート部分40bの溝40eのほぼ中間に位置する。それにより、顆骨支持部38が孔あけガイド部34に対して回動軸線44を中心に回動し、孔あけガイド部34に対する顆骨支持部38の回動角度が6度になる。また、図9の(c)に示すように、ハンドル48の目盛48aを9度まで回転させると、偏心カム50は、ハンドルシャフト46に対して内側(図9の右方)に位置し、リンクアーム52のピン52bは、ブリッジ38cの溝34f及びプレート部分40bの溝40eの最も内側に位置する。それにより、孔あけガイド部34本体部4に対して回動軸線44を中心に回動し、孔あけガイド部34に対する顆骨支持部38の回動角度が9度になる。
【0055】
次に、トライアル装置について説明する。
【0056】
図6、図10及び図11に示すように、人工膝関節設置用ジグ1は、更に、可動部16に取外し可能に取付けられ且つ大腿骨Fに取付けられた大腿骨コンポーネントトライアル106’を摺動可能に支持するトライアル装置60を有していることが好ましい。トライアル装置60は、脛骨Tの近位端面Tcに取付けられる脛骨取付け部8と、大腿骨Fに取付けられた大腿骨コンポーネントトライアル106’を摺動可能に支持するトライアル支持部62と、トライアル支持部62を脛骨取付け部8に対して脛骨Tの近位端面Tcと垂直な方向に移動させる移動機構12と、を有している。脛骨取付け部8及び移動機構12は、伸展位バランサー装置4と共通の構成要素であるので、その説明を省略する。なお、大腿骨コンポーネントトライアル106’は、大腿骨コンポーネント106と同じ形状を有する試験用の大腿骨コンポーネントである。
【0057】
トライアル支持部62は、可動部16に取外し可能に取付けられるカップリングシャフト部分10aと、大腿骨Fと脛骨Tの間に配置されるアタッチメント部分10bと、カップリングシャフト部分10aアタッチメント部分10bを連結するアーム部分10cと、アタッチメント部分10bに取付けられ且つ大腿骨コンポーネントトライアル106’を支持するベアリング要素64を有している。カップリングシャフト部分10a、アタッチメント部分10b、及びアーム部分10cは、伸展位バランサー装置4の大腿骨取付け部10と共通の構成要素であるので、それらの説明を省略する。
【0058】
ベアリング要素は64、アタッチメント部分10bの突起10dによって、アタッチメント部分10bの上に位置決めされる。ベアリング要素64は、大腿骨コンポーネント106に当接する上面64aを有し、上面64aは、脛骨トレイ102の上に載せられるサーフェスライナ104(図12参照)の上面と同じ形状を有している。
【0059】
ジグシステム1の各構成要素は、滅菌装置(オートクレーブ)による滅菌を可能にする材料で作られるのがよい。かかる材料は、例えば、ステンレススチール材である。
【0060】
次に、本発明による屈曲位バランサー装置及びジグシステムの作用を説明する。
【0061】
脛骨Tのサイズに合ったテンプレート2b、2c、例えば、第1のテンプレート2bを選択する。第1のテンプレート2bを脛骨Tの近位端面Tcの上に置き、ガイド孔2dにドリルを通して、近位端面Tcに基準孔Rをあける。この基準孔Rを基準にして、脛骨トレイ102が位置決めされ、設置される。なお、この基準孔Rを用いて、脛骨トレイ102が脛骨Tに固定されることが好ましい。また、基準孔Rにピン8eを挿入することによって、伸展位バランサー装置4、屈曲位バランサー装置6、トライアル装置60が取付けられる。したがって、脛骨トレイ102、伸展位バランサー装置4、屈曲位バランサー装置6、及びトライアル装置60の脛骨Tへの取付け位置の間の相対関係は、たがいに再現可能である。更に、伸展位バランサー装置4、屈曲位バランサー装置6、トライアル装置60の寸法を適当に定めることにより、伸展位バランサー装置4、屈曲位バランサー装置6、トライアル装置60は、実際の人工膝関節を設置したときの靭帯の緊張状態を再現可能である。
【0062】
また、伸展位バランサー装置4の脛骨取付け部8及び移動機構12を組立てておく。具体的には、脛骨取付け部8をボルト8fによって移動機構12の固定部14に固定する。また、移動機構12において、固定部14の本体部分18、回転体20、ロック機構22、補助支持部24を組立てる。更に、ロック機構22の爪付きレバー22aを、ばね22cの付勢力に抗して回転体20の引掛り部20cから分離させた状態で、可動部16のスライドラック部分16aを、目盛プレート16cと共に、本体部分18の上下方向孔18bに挿入する。
【0063】
更に、大腿骨取付け部10を可動部16に取付ける。具体的には、大腿骨取付け部10のカップリングシャフト部分10aを、可動部16のスライドラック部分16aの前後方向貫通孔16bに挿入した後、カップリングシャフト部分10aの先端に支持体10eを取付ける。また、アタッチメント部分10bに、適当な厚さのスペーサ26を取付ける。それにより、伸展位バランサー装置4が組立てられる。
【0064】
次いで、患者の膝を伸展位にして、伸展位バランサー装置4を脛骨Tと大腿骨Fの間に配置する。具体的には、脛骨取付け部8の孔8dを基準孔Rに整列させ、ピン8eを孔8d及び基準孔Rに挿入し、脛骨取付け部8を脛骨Tの近位端面Tcに取付ける。また、脛骨取付け部8の位置決め部分8aが脛骨Tの近位端面Tcに押し付けられた状態で、補助支持部24の延長要素24aを脛骨Tに当接させ、延長要素24aを本体部分18の底面18cにノブ24bによって固定する。それにより、移動機構12等の重さで、脛骨取付け部8の位置決め部分8aが脛骨Tの近位端面Tcから離れて、伸展位バランサー装置4が傾いて取付けられることを防止する。脛骨取付け部8の支持アーム8b及び大腿骨取付け部10のアーム部分10cが、脛骨Tの左方又は右方にずらされて配置されるので、膝蓋靭帯に干渉せずに操作出来る。なお、配置作業をしにくい場合、いったん、大腿骨取付け部10を可動部16から取外したり、膝を屈曲位にしたりしてもよい。
【0065】
トルクドライバー等を、回転体20の凸部20bに係合させて回転させることにより、ピニオン20a回転させ、スライドラック部分16aを介してカップリングシャフト部分32aを持上げ、大腿骨取付け部10を大腿骨F遠位端面Fc1に接触させ、更にそれを持上げる。ロック機構22により、回転体22は、大腿骨取付け部10を下降させる方向に回転することが阻止され、大腿骨取付け部10を持ち上げた状態に維持する。所定のトルクで大腿骨取付け部10を持上げたところで、大腿骨Fと脛骨Tの間の隙間と靭帯の緊張状態(テンション及び左右のバランス)が所定の値になるように、靭帯を調整する。大腿骨Fと脛骨Tの間の隙間は、上下方向目盛16が参考になり、靭帯のテンションは、トルクドライバー等により定められ、靭帯の左右のバランスは、角度方向目盛16eが参考になる。
【0066】
伸展位における靭帯の調整が終了したら、伸展位バランサー装置4を取外し、次に使用する屈曲位バランサー装置6の準備をする。まず、屈曲位バランサー装置6の大腿骨取付け部30を組立てておく。次いで、伸展位バランサー装置4から大腿骨取付け部10を取外し、その代わりに、屈曲位バランサー装置6の大腿骨取付け部30を取付ける。具体的には、カップリング部32のカップリングシャフト部分32aを、可動部16のスライドラック部分16aの前後方向貫通孔16bに挿入した後、カップリングシャフト部分32aの先端に支持体10eを取付ける。
【0067】
次いで、患者の膝を屈曲位にして、屈曲位バランサー装置6を脛骨Tと大腿骨Fの間に配置する。具体的には、伸展位バランサー装置4の配置と同様、脛骨取付け部8を脛骨Tの近位端面Tcに取付け、補助支持部24の延長要素24aを脛骨Tに当接させ、延長要素24aを本体部分18の底面18cにノブ24bによって固定する。変形例として、伸展位における靭帯の調整のあと、脛骨取付け部8及び移動機構を患者に取付けたまま、伸展位バランサー装置4の大腿骨取付け部10だけを取外し、その代わりに、屈曲位バランサー装置6の大腿骨取付け部30を取付けてもよい。なお、配置作業をしにくい場合、いったん、カップリング部32、孔あけガイド部34、スタイラス部36、および顆骨支持ユニット30bを互いに取外してもよい。屈曲位バランサー装置6を脛骨Tと大腿骨Fの間に配置すると、孔あけガイド部34の対向面34eは、大腿骨Fの遠位端面Fc1に対向し、大腿骨Fの後部顆骨Fp1、Fp2は、顆骨支持部38の内側プレート38a及び外側プレート38bの顆骨当接平面38dの上に載る。
【0068】
トルクドライバー等を、回転体20の凸部20bに係合させて回転させることにより、ピニオン20a回転させ、スライドラック部分16aを介してカップリング部32を持上げ、大腿骨取付け部30を持上げる。ロック機構22により、回転体22は、大腿骨取付け部10を下降させる方向に回転することが阻止され、大腿骨取付け部30を持ち上げた状態に維持する。顆骨当接平面38dの上に載っている大腿骨Fの回旋角度が、望ましい回旋角度でないと、大腿骨Fの遠位端面Fc1と孔あけガイド部34の対向面34eが平行にならない。その場合、上述したように、ロック機構22により大腿骨取付け部30と脛骨取付け部8の間を所定の距離に維持した状態で、すなわち、伸展位において調整された靭帯のテンションと同じテンションを付与した状態で、回動機構40により、大腿骨の回旋角度を変更する。具体的には、回動機構40により、脛骨支持部38を孔あけガイド部34に対して、対向面34eと垂直な回動軸線44を中心に回動させる。大腿骨Fの遠位端面Fc1と孔あけガイド部34の対向面34eが平行になった状態が、望ましい大腿骨の回旋角度になる。目盛48によって指示された回旋角度が通常の範囲よりも異なる等の場合、靭帯にテンションを付与することと、回旋角度を変更することを繰返し行ってもよいし、伸展位の靭帯の緊張状態を再度調整してもよい。大腿骨Fの回旋角度の変更により、膝が屈曲位にあるときの靭帯の緊張状態を、膝が伸展位にあるときの靭帯の緊張状態にいっそう近づけることができる。
【0069】
次いで、対向面34eに設けられた貫通ガイド孔34fにドリル等を挿入して、骨切りジグ(図示せず)の設置基準孔Hを大腿骨Fの遠位端面Fc1に形成する。設置基準孔Hは、異なるサイズの大腿骨コンポーネント106、すなわち、そのための骨切りジグに共通の孔である。かくして、膝が屈曲位にあるときの靭帯の緊張状態を、膝が伸展位にあるときの靭帯の緊張状態にいっそう近づけるようにして、すなわち高精度で、大腿骨コンポーネントを大腿骨に取付けることを可能にする。
【0070】
また、スタイラス部36を用いて、大腿骨コンポーネント106のサイズを決定する。屈曲位における靭帯の確認が終了したら、屈曲位バランサー装置6を取外し、設置基準孔Hを用いて、骨切りジグ(図示せず)を大腿骨Fの遠位端面Fc1に取付け、大腿骨Fの遠位端部Feに、設置面Fc2〜Fc5を形成する。それにより、大腿骨Fの遠位端部Feに大体骨コンポーネント106を取付けることが可能になる。
【0071】
また、次に使用するトライアル装置60の準備をするために、屈曲位バランサー装置6から大腿骨取付け部30を取外し、その代わりに、トライアル装置60のベアリング部62を取付ける。具体的には、カップリングシャフト部分10aを、可動部16のスライドラック部分16aの前後方向貫通孔16bに挿入した後、カップリングシャフト部分10aの先端に支持体10eを取付ける。
【0072】
トルクドライバー等を、回転体20の凸部20bに係合させて回転させることにより、ピニオン20a回転させ、スライドラック部分16aを介してカップリングシャフト部分10aを持上げ、ベアリング部62を持上げる。ロック機構22により、回転体22は、大腿骨取付け部10を下降させる方向に回転することが阻止され、ベアリング部62を持ち上げた状態に維持する。膝を伸展位と屈曲位の間で移動させ、靭帯の緊張状態を確認する。ベアリング要素64が、実際の人工膝関節100の脛骨トレイ102のベアリング面と同じ形状を有しているので、実際の人工膝関節を設置したときと同じ条件で、靭帯の緊張状態(ギャップ)を確認することができる。
【0073】
従来のバランサー装置のベアリング部(脛骨トレイ)は平面形状であったため、本発明のように大腿骨Fの遠位端部Feに大腿骨コンポーネント106を取付けてベアリング部の上に載せた状態で、膝を伸展位と屈曲位の間で移動させると、大腿骨コンポーネント106がベアリング部の上を前後方向Aに滑ってしまい、実際の人工膝関節を設置したときと同じ条件で、靭帯の緊張状態を確認することは不可能であった。
【0074】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0075】
上記実施形態では、ジグシステム1は、脛骨テンプレート2、伸展位バランサー装置4、屈曲位バランサー装置6、及びトライアル装置60を有していたが、特許文献1及び2に対して、膝が屈曲位にあるときの靭帯の緊張状態を、膝が伸展位にあるときの靭帯の緊張状態にいっそう近づけるようにして大腿骨コンポーネントを大腿骨に取付けることができれば、脛骨テンプレート2及びトライアル装置60は選択的要素である。
【0076】
上記実施形態では、伸展位バランサー装置4、屈曲位バランサー装置6、及びトライアル装置60において、脛骨取付け部8、移動部材12が共通部品であったが、それらが異なる部品で構成され、ジグシステム1が、別々の伸展位バランサー装置4、屈曲位バランサー装置6、及びトライアル装置60を有していてもよい。
【0077】
上記実施形態では、伸展位バランサー装置4の大腿骨取付け部10及びトライアル装置60のトライアル支持部62において、カップリングシャフト部分10a、アタッチメント部分10b、及びアーム部分10cが共通部品であったが、それらが異なる部品で構成され、大腿骨取付け部10及びトライアル支持部62が別のユニットとして構成されてもよい。
【0078】
上記実施形態では、脛骨Tの近位端面Tcにあけた基準孔Rを基準位置としたが、基準孔Rにピンを挿入し、そのピンを基準位置としてもよい。また、基準孔Rは、人工膝関節100の脛骨トレイ102を位置決めすることができれば、脛骨トレイ102を固定する孔でなくてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 人工膝関節設置用のジグシステム
2 脛骨テンプレート
4 伸展位バランサー装置
6 屈曲位バランサー装置
8 脛骨取付け部
8a 位置決め部分
8b 支持アーム
10 大腿骨取付け部
10a カップリングシャフト部分(カップリング部分)
10b アタッチメント部分
10c アーム部分
12 移動機構
22 ロック機構
24 補助支持部
26 スペーサ
30 大腿骨取付け部(伸展位大腿骨取付け部)
34 孔あけガイド部
34e 対向面
34f 貫通ガイド孔
38 顆骨支持部
38d 顆骨当接平面
40 回動機構
44 回動軸線
48a 目盛
60 トライアル装置
62 ベアリング部
64 ベアリング要素
100 人工膝関節
106 大腿骨コンポーネント
106’ 大腿骨コンポーネントトライアル
F 大腿骨
Fc1 遠位端面
Fe 遠位端部
Fp1、Fp2 後部顆骨
R 基準孔(基準位置)
T 脛骨
Tc 近位端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工膝関節を設置するために膝を屈曲位にした状態で使用される屈曲位バランサー装置であって、
脛骨の近位端面に取付けられる脛骨取付け部と、
大腿骨の遠位端部に取付けられる大腿骨取付け部と、
前記大腿骨取付け部を前記脛骨取付け部に対して脛骨の近位端面と垂直な方向に移動させる移動機構と、を有し、前記移動機構は、前記大腿骨取付け部と前記脛骨取付け部の間を所定の距離に維持するロック機構を有し、
前記大腿骨取付け部は、前記移動機構に取付けられた孔あけガイド部と、大腿骨の後部顆骨を支持する顆骨支持部と、前記顆骨支持部を前記孔あけガイド部に対して回動させる回動機構と、を有し、
前記孔あけガイド部は、脛骨の近位端面に対して垂直であり且つ膝が屈曲位にあるときの大腿骨の遠位端面に対向する対向面と、骨切りジグの設置基準孔を大腿骨の遠位端面に形成するために前記対向面に設けられた貫通ガイド孔と、を有し、
前記顆骨支持部は、前記対向面に対して垂直であり且つ膝が屈曲位にあるときの大腿骨の後部顆骨に当接する顆骨当接平面を有し、前記対向面と垂直な回動軸線を中心に前記孔あけガイド部に対して回動可能であり、
前記回動機構は、前記ロック機構によって前記大腿骨取付け部と前記脛骨取付け部の間を所定の距離に維持した状態で操作可能であることを特徴とする屈曲位バランサー装置。
【請求項2】
請求項1に記載の屈曲位バランサー装置と、
膝が伸展位にあるときに使用される伸展位バランサー装置と、を有し、
前記伸展位バランサー装置は、脛骨の近位端面に取付けられる伸展位脛骨取付け部と、大腿骨の遠位端面に取付けられる伸展位大腿骨取付け部と、前記伸展位大腿骨取付け部を前記伸展位脛骨取付け部に対して脛骨の近位端面と垂直な方向に移動させる伸展位移動機構と、を有し、前記伸展位移動機構は、伸展位大腿骨取付け部と伸展位脛骨取付け部の間を所定の距離に維持する伸展位ロック機構を有し、
前記伸展位バランサー装置の伸展位脛骨取付け部と、前記屈曲位バランサー装置の脛骨取付け部とは、脛骨の近位端面の共通の基準位置に対して位置決めされることを特徴とする人工膝関節設置用のジグシステム。
【請求項3】
更に、トライアル装置を有し、
前記トライアル装置は、脛骨の近位端面に取付けられるトライアル脛骨取付け部と、大腿骨に取付けられた大腿骨コンポーネントを摺動可能に支持するベアリング部と、前記ベアリング部を前記脛骨取付け部に対して脛骨の近位端面と垂直な方向に移動させるトライアル移動機構と、を有し、前記トライアル移動機構は、ベアリング部とトライアル脛骨取付け部の間を所定の距離に維持するトライアルロック機構を有し、
前記トライアル装置のトライアル脛骨取付け部と、前記屈曲位バランサー装置の脛骨取付け部とは、脛骨の近位端面の共通の基準位置に対して位置決めされることを特徴とする請求項2に記載のジグシステム。
【請求項4】
前記屈曲位バランサー装置の脛骨取付け部、及び、前記伸展位バランサー装置の伸展位脛骨取付け部は、共通の脛骨取付け部によって構成され、
前記屈曲位バランサー装置の移動機構、及び、前記伸展位バランサー装置の伸展位移動機構は、共通の移動機構によって構成され、
前記屈曲位バランサー装置の大腿骨取付け部、及び、前記伸展位バランサー装置の伸展位大腿骨取付け部は、前記共通の移動機構に取外し可能に取付けられることを特徴とする請求項2に記載のジグシステム。
【請求項5】
前記屈曲位バランサー装置の脛骨取付け部、前記伸展位バランサー装置の伸展位脛骨取付け部、及び、前記トライアル装置のトライアル脛骨取付け部は、共通の脛骨取付け部によって構成され、
前記屈曲位バランサー装置の移動機構、前記伸展位バランサー装置の伸展位移動機構、及び、前記トライアル装置のトライアル移動機構は、共通の移動機構によって構成され、
前記屈曲位バランサー装置の大腿骨取付け部、前記伸展位バランサー装置の伸展位大腿骨取付け部、及び、前記トライアル装置のベアリング部は、前記共通の移動機構に取外し可能に取付けられることを特徴とする請求項3に記載のジグシステム。
【請求項6】
前記伸展位バランサー装置の伸展位大腿骨取付け部は、前記共通の移動機構に取外し可能に取付けられる共通のカップリング部分と、大腿骨と脛骨の間に配置される共通のアタッチメント部分と、前記カップリング部分と前記アタッチメント部分を連結する共通のアーム部分と、前記共通のアタッチメント部分に取付けられ且つ大腿骨の遠位端面に当接するスペーサと、を有し、
前記トライアル装置は、前記共通のカップリング部分と、前記共通のアタッチメント部分と、前記共通のアーム部分と、前記共通のアタッチメント部分に取付けられ且つ大腿骨コンポーネントを支持するベアリング要素と、を有することを特徴とする請求項5に記載のジグシステム。
【請求項7】
前記移動機構は、前記脛骨取付け部よりも下方において脛骨に当接する補助支持部を有することを特徴とする請求項2〜6の何れか1項に記載のジグシステム。
【請求項8】
前記脛骨取付け部は、脛骨の近位端面の基準位置に位置決めされる位置決め部分と、前記位置決め部分から前記移動機構に向かって延びる支持アームを有し、
前記支持アームは、前記位置決め部分を脛骨の近位端面に位置決めしたときに、脛骨の左方又は右方にずらされて配置されることを特徴とする請求項2〜7の何れか1項に記載のジグシステム。
【請求項9】
更に、人工膝関節の脛骨トレイを脛骨の近位端面に位置決めするための基準孔を形成するためのガイド孔を備えた脛骨テンプレートを有することを特徴とする、請求項2〜8の何れか1項に記載のジグシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−230(P2013−230A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132418(P2011−132418)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(505351979)バイオメット・ジャパン株式会社 (6)
【Fターム(参考)】