説明

人工芝生

【課題】芝葉間に設ける粒状体層を、均一な厚さに形成、維持できる人工芝生を提供する。
【解決手段】第一の芝葉と、これより上端を低く植設された第二の芝葉とを設け、この第二の芝葉を均一な長さのストレート状に植設させると共に、この第二の芝葉の上端に至るまで粒状体を充填させて粒状体層を形成させる。
第二の芝葉を均一な長さのストレート状に植設させるので、人工芝生全体に亘って基布から第二の芝葉の上端までの高さが均一に形成される。そして、この第二の芝葉の上端に至るまで前記粒状体を充填させて前記粒状体層を形成させるので、粒状体層の厚さが均一に形成される。
また、ストレート状に植設された第二の芝葉の上端に至るまで粒状体層が形成されるので、この第二の芝葉が粒状体層を構成する粒状体の移動を抑え、人工芝生の使用の過程において粒状体層の厚みの変動を抑制させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製繊維等からなる芝糸により形成された芝葉の間に砂などの粒状体を充填した人工芝生に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基布に合成樹脂製繊維を芝糸としてタフティングマシンを用いて多本数植設して芝葉を形成し、この基布の裏面にゴムラテックス等のバッキング材を塗布して上記芝糸を固定し、この植設された芝糸間に砂等の粒状体を充填して粒状体層を設けた粒状体入り人工芝は、各種スポーツ用競技場等の表面材として広く使用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、合成樹脂製の捲縮パイル糸が短い芝葉で全面に植毛される中に、10〜20mm間隔で長い芝葉が配列され、短い芝葉が3mm以上で、かつ短い芝葉と長い芝葉との差が5mmないし15mmの人工芝を敷設し、芝目の中に砂を散布したことを特徴とする砂入り人工芝グランド、の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2587571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示される人工芝生は、巻縮パイル糸で形成された短い芝葉の圧縮回復性によってクッション性を付与されているが、反面、このクッション性によって芝葉の間に充填させる砂などの粒状体により形成される粒状体層の上面が不安定な状態となり、施工時に粒状体層を均一な厚さに形成させることが困難になるという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、芝葉間に設ける粒状体層を、均一な厚さに形成、維持できる人工芝生を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る人工芝生は、基布に芝糸がカットパイル状に植設されて芝葉を構成し、前記植設された芝葉間に粒状体が充填された粒状体層が設けられた人工芝生であって、
前記芝葉が第一の芝葉と、該第一の芝葉より上端を低く植設された第二の芝葉とを備え、
該第二の芝葉が均一な長さのストレート状に植設されていると共に
該第二の芝葉の上端に至るまで前記粒状体が充填されて前記粒状体層が形成されていることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る人工芝生によれば、第二の芝葉を均一な長さのストレート状に植設させるので、人工芝生全体に亘って基布から第二の芝葉の上端までの高さが均一に形成される。そして、この第二の芝葉の上端に至るまで前記粒状体を充填させて前記粒状体層を形成させるので、粒状体層の厚さが均一に形成される。
また、前記第二の芝葉が第一の芝葉より上端を低く植設されるので、この第一の芝葉が粒状体層の上面より突出して芝葉として視認される。
また、ストレート状に植設された第二の芝葉の上端に至るまで粒状体層が形成されるので、この第二の芝葉が粒状体層を構成する粒状体の移動を抑え、人工芝生の使用の過程において粒状体層の厚みの変動を抑制させる。
【0009】
また、前記第一の芝葉及び第二の芝葉が、複数の芝糸が束ねられた芝束から形成されるように植設されれば、第一の芝葉より低く設けられた第二の芝葉の上端が上方より視認し易くなり、粒状体層を形成する際の施工が容易に出来るので好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る人工芝生によれば、芝葉間に設ける粒状体層を、均一な厚さに形成、維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る人工芝生の実施の一形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
本実施形態の人工芝生は、ポリプロピレン製の平織りの織布を用いた基布2にポリエチレン製の芝糸31,33をカットパイル状に植設して芝葉を形成し、基布2の裏面からウレタン樹脂等のバッキング材5を塗布して芝葉3を固定している。これを、基礎層4に敷設した後、その上方から散布機によって粒状体を散布し、植設された各芝葉の間に充填して粒状体層1を形成している。
【0013】
基礎層4は、地面上に透水性のアスファルトコンクリートを打設して好適に形成可能だが、これに限るものではなく、地面そのものであってもよく、地面上に非透水性のアスファルトコンクリートを打設するなどして形成してもよい。
【0014】
また、本実施形態では基布2にポリプロピレン製の平織りの織布を用いているが、これに限るものではなく織物、編物、不織布等、芝葉3が植設されるものであれば何でもよい。
【0015】
基布2に植設されて形成される芝葉3は、第一の芝葉32と第二の芝葉34を備えている。
第一の芝葉32は、ストレートのカットパイル状に植設されており、基布2から第一の芝葉32の上端までの高さが基布2全体において均一となるように、植設された根本から上端までの第一の芝葉32の長さが等しくなるように形成されている。
また、ここで言うストレートのカットパイル状とは、各芝糸が巻縮等、曲がりぐせが付いた様に加工されていない状態を意味しており、立設した芝糸が自重で撓むような変形や、植設工程の際についた芝糸の捻り等は許容される。
また、本実施形態の第一の芝葉32は、芝糸31が10本1束で植設されてその根本が束ねられた芝束から形成されており、各第一の芝葉32がそれぞれ間隔を開けて配設されるように列状に植設されている。
【0016】
第二の芝葉34は、基布2から第二の芝葉34の上端までの高さが前記第一の芝葉32よりも低いストレートのカットパイル状に植設されており、前記第一の芝葉32と同様に、基布2から第二の芝葉34の上端までの高さが基布2全体において均一となるように、植設された根本から上端までの第二の芝葉34の長さが等しくなるように形成されている。
また、第二の芝葉34も第一の芝葉32と同様に、芝糸33が10本1束で植設されてその根本が束ねられた芝束から形成されており、前記第一の芝葉32の間に第二の芝葉34が配設されるように列状に植設されている。
図1において、第一の芝葉32及び第二の芝葉34がそれぞれ5本1束に図示されているが、これは図を簡略しているものである。
【0017】
本実施形態の第一の芝葉32と第二の芝葉34とを構成する芝糸31と芝糸33は、それぞれポリエチレンで形成させているが、これに限るものではなく、これ以外のポリプロピレン等のオレフイン系合成樹脂やポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル等の適宜合成樹脂材料を好適に用いることができる。また、芝糸31及び芝糸33の材質や色、断面形状等を、それぞれ同じにして第一の芝葉32と第二の芝葉34とを形成させても良いし、異ならせても良い。
【0018】
粒状体層1は、人工芝生の表面に配置された上層11と、上層11の下の下層12の二層構造となされている。上層11は、熱可塑性エラストマーの粒からなる上層弾性粒状体で構成されている。また下層12は、SBRの粒からなる下層弾性粒状体に硅砂を配合して構成しており、前記下層弾性粒状体100重量部に珪砂100重量部を配合させている。
本実施形態では、下層12に利用する下層弾性粒状体としてSBRの粒を用いているが、これに限るものではなく、EPDMなどの合成ゴムや天然ゴムの粒を単体または組み合わせて用いてもよく、廃タイヤの粉砕物などのリサイクル品や、エラストマーなどを選定または組み合わせて用いてもよい。また、本実施形態では下層弾性粒状体と硅砂とを配合して下層12を形成しているが、これに限るものではなく、下層弾性粒状体と硅砂とをそれぞれ単体で用いてもよく、また下層弾性粒状体と硅砂との配合比率を変化させて調整してもよく、下層弾性粒状体と硅砂以外の小石や陶器の粒、樹脂ペレットなどの粒状体を選定または組み合わせて用いてもよい。
また、本実施形態では、上層11に利用する上層弾性粒状体に熱可塑性エラストマーを用いているが、これに限るものではなく、SBR、EPDMなどの合成ゴムや天然ゴム、廃タイヤの粉砕物などのリサイクル品の粒を単体または組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本実施形態の粒状体層1は、植設された前記第一の芝葉32及び第二の芝葉34の間に、粒状体層1を構成する粒状体を充填させて形成されており、上層11の上面が第二の芝葉34の上端に至るように形成されている。
従来、芝葉3間に粒状体層1を形成させる工程を行う際には、粒状体層1の厚みが不均一にならないように、人工芝生の複数箇所で充填させた粒状体層1の厚みを計測して、その結果をもとに粒状体層1の厚みを調整していく作業を行う必要があった。しかし、上記のように、粒状体層1の上面高さを第二の芝葉34の上端を目安にして形成させることで、前記のような粒状体層1の厚みの測定や調整の作業を行うことなく容易に、基布2全体において均一に形成させることができる。粒状体層1の厚みが均一になるように、第二の芝葉34の上端に至るまで粒状体を充填させるので、粒状体層の上面高さが第二の芝生34の上端と略同じとするのが好ましい。また、粒状体層1の上面から第二の芝葉34の上端が僅かに突出する程度は許容される。
【0020】
また、粒状体層1における第二の芝葉34や第一の芝葉32の埋設部分が、各芝葉3間に充填された粒状体の移動を抑制するので、人工芝生を使用する過程での粒状体層1の厚みの変動を小さなものにできる。
また、第一の芝葉32や第二の芝葉34をストレート状に形成させることで、使用過程における各芝葉3の変形を小さくでき、各芝葉3の間に充填された粒状体の変位を抑制させて粒状体層1の厚みの変動をより小さくできる。
また、本実施形態のように上層11や下層12を備える等、粒状体層1が複数の層から構成されて形成されている場合には、粒状体層1の厚みの変動のみならず、粒状体層1を構成する各層の変位、変形を抑制させて、粒状体層1の構成をも維持できる。
【0021】
本実施形態では、芝糸31と芝糸33とが異なる芝束を形成するように植設させてそれぞれ第一の芝葉32と第二の芝葉34を形成させているが、これに限るものではなく、芝糸31と芝糸33とが一つの芝束に混在されるように植設されて、第一の芝葉32と第二の芝葉34とが一つの芝束で構成されるように形成させてもよい。しかし、このように形成させた場合には、芝糸33が芝糸31の間に埋没してしまい、第二の芝葉34の上端が上方から視認されにくいものとなされ、粒状体層1の形成作業の効率を低下させる。このため図1に示すように、第一の芝葉32と第二の芝葉34とが、それぞれ異なる芝束から形成するように植設させるのが、好ましい。
また、第一の芝葉32の上端の高さを、第二の芝葉34の上端の高さより8mm以上高く形成すれば、第一の芝葉32の間から第二の芝葉34の上端を視認しやすくなるので、好ましい。
【0022】
本実施形態では、第一の芝葉32及び第二の芝葉34を、それぞれ芝糸31、33を10本1束にした芝束から形成させているが、これに限るものではなく、各芝束を形成する芝糸31,33の本数を10本以外にしてもよいし、第一の芝葉32と第二の芝葉34を構成する芝糸の本数をそれぞれ異ならせて設けてもよい。
また、本実施形態では、第一の芝葉32の間に第二の芝葉34を配設させて、それぞれの芝束を略同数に形成させているが、これに限るものではなく、第一の芝葉32と第二の芝葉34の数を異ならせて設けても良い。
【符号の説明】
【0023】
1 粒状体層
11 上層
12 下層
2 基布
31 芝糸
32 第一の芝葉
33 芝糸
34 第二の芝葉
4 基礎層
5 バッキング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布に芝糸がカットパイル状に植設されて芝葉を構成し、前記植設された芝葉間に粒状体が充填された粒状体層が設けられた人工芝生であって、
前記芝葉が第一の芝葉と、該第一の芝葉より上端を低く植設された第二の芝葉とを備え、
該第二の芝葉が均一な長さのストレート状に植設されていると共に
該第二の芝葉の上端に至るまで前記粒状体が充填されて前記粒状体層が形成されていることを特徴とする人工芝生。
【請求項2】
前記第一の芝葉及び第二の芝葉は、複数の芝糸が束ねられた芝束から形成されるように植設されていることを特徴とする請求項1に記載の人工芝生。

【図1】
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【公開番号】特開2011−106189(P2011−106189A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263530(P2009−263530)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】