人工関節用コンポーネント
【課題】人体の左右での骨長差を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることができ、表面置換型コンポーネントの取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工関節を実現することができる人工関節用コンポーネントを提供する。
【解決手段】複数のコンポーネント(1a、1b、1c)は、カップ状の外側の形状が同じに形成されるとともに、カップ状の内側の内面形状が異なるように形成される。複数のコンポーネント(1a、1b、1c)は、いずれかが選択して用いられるとともに、それぞれの内面形状が、半径寸法が同じ球面の一部を形成するように設けられる。複数のコンポーネント(1a、1b、1c)のそれぞれにおける球面(12a、12b、12c)の径方向における中心位置は、互いにずれた位置に位置するように設定されている。
【解決手段】複数のコンポーネント(1a、1b、1c)は、カップ状の外側の形状が同じに形成されるとともに、カップ状の内側の内面形状が異なるように形成される。複数のコンポーネント(1a、1b、1c)は、いずれかが選択して用いられるとともに、それぞれの内面形状が、半径寸法が同じ球面の一部を形成するように設けられる。複数のコンポーネント(1a、1b、1c)のそれぞれにおける球面(12a、12b、12c)の径方向における中心位置は、互いにずれた位置に位置するように設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工関節において用いられ、カップ状に形成されるとともに関節における一方の骨に対して設置され、関節における他方の骨の骨頭表面を置換するように配置される表面置換型コンポーネントが摺動するように配置される人工関節用コンポーネントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、股関節等の関節に異常が認められた患者に対して、人工股関節等の人工関節を適用し、関節の一部又は全部を人工関節で置換する人工関節置換術が行われている。そして、上述したような人工関節においては、関節における一方の骨に対してカップ状のコンポーネントが設置され、他方の骨に対しては骨頭の一部又は全部を置換するコンポーネントが用いられる。
【0003】
骨頭の全部を置換するコンポーネントとしては、骨の髄腔部に挿入される棒状に形成されたステム部材と、ボール状に形成されてステム部材のネック部に連結される骨頭ボール部材とを有するコンポーネントが用いられる。このようなコンポーネントとして、特許文献1の図8や特許文献2において、人工股関節において用いられる人工股関節用大腿骨コンポーネントが開示されている。このようなコンポーネントにおいては、関節側に配置される骨頭ボール部材は、骨盤の寛骨臼に設置されたカップ状のコンポーネントに対して摺動するように配置される。そして、人体の左右で骨の長さ寸法の差(骨長差)が生じてしまっているような患者に対しては、ステム部材に対する連結位置を変更可能な骨頭ボール部材を用いることで、その骨長差を補正しつつ適当な筋肉の緊張を得ることが可能なコンポーネントを用いた人工関節置換術が行われることが一般的である。尚、この場合、ステム部材のネック部に連結する骨頭ボール部材の位置を変更可能なように、骨頭ボール部材に形成される連結穴の深さ寸法が異なる骨頭ボール部材が複数準備されることになる。
【0004】
一方、関節における一方の骨に対してカップ状に形成された人工関節用コンポーネントが設置され、関節における他方の骨に対してその骨頭表面を置換するように配置されるとともに上記の人工関節用コンポーネントに対して摺動するように配置される表面置換型コンポーネントが設置される人工関節置換術も行われている。特許文献1の図1及び図2においては、カップ状の人工関節用コンポーネントと表面置換型コンポーネントとを備える人工股関節が開示されている。このような人工関節が用いられることで、例えば骨頭部分の損傷の程度が軽度の場合には、手術の際における骨頭部分の切除量の少量化等を図ることができ、骨温存の観点において非常に有用な人工関節を提供することができる。また、前述したような骨頭ボール部材を用いた人工関節の適用が必要な段階の前段階としての人工関節の選択肢を拡大することができる。
【0005】
特許文献1に開示されたようなカップ状の人工関節用コンポーネントと表面置換型コンポーネントとを備える人工関節においては、上記のように、骨温存の観点で有用な人工関節を提供することができる。しかし、この人工関節においては、前述したステム部材及び骨頭ボール部材を有するコンポーネントを用いる場合のように、人体の左右での骨長差を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることが可能な人工関節を実現することが難しい。
【0006】
上記に対して、特許文献3に開示された表面置換型コンポーネントは、カップ状の人工関節用コンポーネントに対して摺動するとともに骨頭を置換するように配置され、表面が置換される骨頭に対して内側の取付面において嵌合するように取り付けられる頭部が設け
られている。この頭部には、骨頭の周囲に沿って延びるように形成されたスカート部が設けられ、スカート部の内面と上記の取付面とによって、表面が置換される骨頭に対して嵌合するように取り付けられる。そして、この表面置換型コンポーネントにおいては、頭部の厚み寸法を変更して設定することができるとともに、表面が置換される骨頭に対してスカート部にて嵌合して固定されることになる。このため、頭部の寸法構成を変更した表面置換型コンポーネントを用いることで、人体の左右での骨長差を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることが可能な人工関節を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−137267号公報
【特許文献2】特表平8−503859号公報
【特許文献3】特開2009−160300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3に開示されたような表面置換型コンポーネントを有する人工関節を用いることで、人体の左右での骨長差を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることができる。しかしながら、特許文献3の表面置換型コンポーネントの場合、骨頭に嵌合して取り付けられた状態では、骨に対するコンポーネントの取り付け箇所の端部となるスカート部の端部の近傍の骨において、応力集中を招いてしまい易いという問題がある。このため、表面置換型コンポーネントの取り付け箇所の端部の近傍での骨折(大腿骨用の表面置換型コンポーネントの場合であれば大腿骨頚部骨折)の発生を招き易いという問題がある。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、人体の左右での骨長差を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることができ、表面置換型コンポーネントの取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工関節を実現することができる人工関節用コンポーネントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための第1発明に係る人工関節用コンポーネントは、人工関節において用いられ、カップ状に形成されるとともに関節における一方の骨に対して設置され、関節における他方の骨の骨頭表面を置換するように配置される表面置換型コンポーネントが摺動するように配置される人工関節用コンポーネントに関する。そして、第1発明に係る人工関節用コンポーネントは、カップ状の外側の形状が同じに形成されるとともに、カップ状の内側の内面形状が異なるように形成される複数のコンポーネントを構成可能に設けられ、前記複数のコンポーネントは、いずれかが選択して用いられるとともに、それぞれの前記内面形状が、半径寸法が同じ球面の一部を形成するように設けられ、前記複数のコンポーネントのそれぞれにおける前記球面の径方向における中心位置は、互いにずれた位置に位置するように設定されていることを特徴とする。
【0011】
この発明によると、表面置換型コンポーネントが摺動するカップ状の人工関節用コンポーネントが、外形が同一で内面形状が異なる複数のコンポーネントとして設けられ、人工関節置換術の際には、これらの複数のコンポーネントのいずれかが選択して用いられる。そして、複数のコンポーネントのそれぞれの内面形状が、同一半径の球面の一部を成すように構成される。これにより、複数のコンポーネントのいずれの内面形状においても、表面置換型コンポーネントが摺動する摺動面である球面の半径が変わることがないため、表面置換型コンポーネントの円滑な摺動動作を確保することができる。そして、更に、複数のコンポーネントのそれぞれにおいて、内面形状の球面の中心位置が互いにずれた位置に設定される。このため、複数のコンポーネントのうちから患者の状況に応じた適切なコン
ポーネントを選択して設置することで、人工関節用コンポーネントに対する表面置換型コンポーネントの位置を人工関節置換術を行う術者が所望する位置に設定することができる。よって、本発明の人工関節用コンポーネントを用いることにより、人体の左右での骨長差を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることが可能な人工関節を実現することができる。また、本発明の人工関節用コンポーネントを用いる場合、摺動する相手側の表面置換型コンポーネントとして、特許文献3に開示されたような骨頭に嵌合して取り付けるためのスカート部が設けられた表面置換型コンポーネントを用いる必要がない。即ち、骨頭表面を置換するように取り付けられる表面置換型コンポーネントとして、骨への取り付け箇所の端部において応力集中を発生させ易い構造の表面置換型コンポーネントを用いる必要がない。これにより、本発明の人工関節用コンポーネントを用いることで、表面置換型コンポーネントの取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工関節を実現することができる。
【0012】
従って、本発明によると、人体の左右での骨長差を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることができ、表面置換型コンポーネントの取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工関節を実現することができる人工関節用コンポーネントを提供することができる。
【0013】
第2発明に係る人工関節用コンポーネントは、第1発明の人工関節用コンポーネントにおいて、前記複数のコンポーネントのそれぞれにおける前記球面の中心位置が、同一直線上に沿って配置されて互いにずれた位置に位置するように設定されていることを特徴とする。
【0014】
この発明によると、複数のコンポーネントの内面形状において、位置が互いにずれるように設定される球面の中心位置が同一直線上に沿って配置されるよう設定される。このため、人工関節置換術を行う術者が、複数のコンポーネントのうちから患者の状況に応じた適切なコンポーネントを選択して設置するに際して、人工関節用コンポーネントに対する表面置換型コンポーネントの位置についての検討及び調整をより容易に行うことができる。
【0015】
第3発明に係る人工関節用コンポーネントは、第1発明又は第2発明の人工関節用コンポーネントにおいて、前記複数のコンポーネントは、それぞれ一体に形成された部材として設けられていることを特徴とする。
【0016】
この発明によると、複数のコンポーネントがそれぞれ一体形成された部材として設けられる。このため、人体の左右での骨長差を補正して適当な筋肉の緊張を得ることができ、表面置換型コンポーネントの取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工関節を実現できる人工関節用コンポーネントにおいて、更なる構成の簡素化を図ることができる。
【0017】
第4発明に係る人工関節用コンポーネントは、第1発明又は第2発明の人工関節用コンポーネントにおいて、前記複数のコンポーネントのそれぞれは、カップ状に形成されて前記一方の骨に対して固定される第1コンポーネント部材と、前記第1コンポーネント部材とは別体のカップ状に形成されるとともに前記第1コンポーネント部材の内側に固定される第2コンポーネント部材と、を有し、前記第1コンポーネント部材と前記第2コンポーネント部材とが組み合わされることで形成されることを特徴とする。
【0018】
この発明によると、複数のコンポーネントのそれぞれが、第1コンポーネント部材と第2コンポーネント部材とが組み合わされることで形成される。このため、第1コンポーネント部材と第2コンポーネント部材との組み合わせ形態を種々設定することができる。こ
れにより、一方の骨に固定される第1コンポーネント部材と、表面置換型コンポーネントが摺動する第2コンポーネント部材とのそれぞれにおいて、所望される特性が付与された人工関節用コンポーネントの組み合わせを容易に実現することができる。
【0019】
第5発明に係る人工関節用コンポーネントは、第4発明の人工関節用コンポーネントにおいて、前記第1コンポーネント部材は、前記複数のコンポーネントにおいて共通して用いられる1つの部材として設けられていることを特徴とする。
【0020】
この発明によると、第1コンポーネント部材が複数のコンポーネントにおいて共通する1つの部材として設けられ、内面形状が異なる第2コンポーネント部材がそれぞれ組み合わされることで、複数のコンポーネントがそれぞれ構成されることになる。このため、第1コンポーネント部材及び第2コンポーネント部材が組み合わされて構成される人工関節用コンポーネントにおいて、部材点数の増大を第1コンポーネント部材の共通化により抑制でき、構成の簡素化を図ることができる。
【0021】
第6発明に係る人工関節用コンポーネントは、第4発明又は第5発明の人工関節用コンポーネントにおいて、前記第1コンポーネント部材と前記第2コンポーネント部材とが、種類の異なる材料で形成されていることを特徴とする。
【0022】
この発明によると、第1コンポーネント部材及び第2コンポーネント部材が種類の異なる材料で形成される。このため、一方の骨に固定される第1コンポーネント部材と、表面置換型コンポーネントが摺動する第2コンポーネント部材とのそれぞれにおいて、所望される特性を付与できる材料の種類にそれぞれ独立して設定することができる。
【0023】
第7発明に係る人工関節用コンポーネントは、第6発明の人工関節用コンポーネントにおいて、前記第1コンポーネント部材は金属材料で形成され、前記第2コンポーネント部材はセラミックス材料で形成されていることを特徴とする。
【0024】
この発明によると、一方の骨に固定される第1コンポーネント部材が金属材料で形成されるため、第1コンポーネント部材において骨に固定される外面に対して、骨に対する固定性能を向上させるための表面処理を容易に施すことができる。例えば、アパタイトコーティング処理や、溶射処理、粗面化処理、等の骨に対する固定性能を向上させるための表面処理を容易に施すことができる。そして、表面置換型コンポーネントが摺動する第2コンポーネント部材がセラミックス材料で形成されるため、内面形状の球面に鏡面加工等の平滑化処理を施すだけで、表面置換型コンポーネントの円滑な摺動動作を確保する構造をより容易に実現することができる。
【0025】
第8発明に係る人工関節用コンポーネントは、第4発明乃至第7発明のいずれかの人工関節用コンポーネントにおいて、前記第1コンポーネント部材の内側と、前記第1コンポーネント部材の内側に固定される前記第2コンポーネント部材の外側とには、互いに係合し合う係合部がそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0026】
この発明によると、第1コンポーネント部材及び第2コンポーネント部材が、互いに係合する係合部を介して固定されることになる。このため、第1コンポーネント部材の内側及び第2コンポーネント部材の外側に係合部を設けるという簡素な構成によって、第1コンポーネント部材と第2コンポーネント部材との結合強度を容易に向上させることができる。
【0027】
第9発明に係る人工関節用コンポーネントは、第3発明の人工関節用コンポーネントにおいて、前記複数のコンポーネントのそれぞれは、金属材料で形成されるとともに前記表
面置換型コンポーネントが摺動する内側にセラミックスコーティングの層が設けられていることを特徴とする。
【0028】
この発明によると、複数のコンポーネントがそれぞれ金属材料で一体形成された部材として設けられ、構成の簡素化が図られる。そして、金属材料で形成されるため、骨に固定される外面に対して、骨に対する固定性能を向上させるための表面処理を容易に施すことができる。そして、表面置換型コンポーネントが摺動する内側にセラミックスコーティングの層が設けられるため、表面置換型コンポーネントの円滑な摺動動作を確保する構造をより容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、人体の左右での骨長差を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることができ、表面置換型コンポーネントの取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工関節を実現することができる人工関節用コンポーネントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係る人工関節用コンポーネントを示す断面図である。
【図2】図1に示す人工関節用コンポーネントが人工股関節において用いられた状態を示す断面図であって、大腿骨及び骨盤の断面の一部とともに示す図である。
【図3】図1に示す人工関節用コンポーネントが人工股関節において用いられた状態を示す断面図であって、大腿骨及び骨盤の断面の一部とともに示す図である。
【図4】図1に示す人工関節用コンポーネントが人工股関節において用いられた状態を示す断面図であって、大腿骨及び骨盤の断面の一部とともに示す図である。
【図5】図1に示す人工関節用コンポーネントにおける複数のコンポーネントの形状について説明するための模式断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る人工関節用コンポーネントを示す断面図である。
【図7】図6に示す人工関節用コンポーネントが人工股関節において用いられた状態を示す断面図であって、大腿骨及び骨盤の断面の一部とともに示す図である。
【図8】図6に示す人工関節用コンポーネントが人工股関節において用いられた状態を示す断面図であって、大腿骨及び骨盤の断面の一部とともに示す図である。
【図9】図6に示す人工関節用コンポーネントが人工股関節において用いられた状態を示す断面図であって、大腿骨及び骨盤の断面の一部とともに示す図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る人工関節用コンポーネントを示す断面図である。
【図11】図10に示す人工関節用コンポーネントが人工肩関節において用いられた状態を示す断面図であって、上腕骨及び肩甲骨の断面の一部とともに示す図である。
【図12】図10に示す人工関節用コンポーネントが人工肩関節において用いられた状態を示す断面図であって、上腕骨及び肩甲骨の断面の一部とともに示す図である。
【図13】図10に示す人工関節用コンポーネントが人工肩関節において用いられた状態を示す断面図であって、上腕骨及び肩甲骨の断面の一部とともに示す図である。
【図14】変形例に係る人工関節用コンポーネントにおける複数のコンポーネントのうちの1つのコンポーネントを示す断面図である。
【図15】図14に示すコンポーネントにおける第1コンポーネント部材と第2コンポーネント部材とを示す断面図である。
【図16】変形例に係る人工関節用コンポーネントにおける複数のコンポーネントのうちの1つのコンポーネントを示す断面図である。
【図17】図16に示すコンポーネントにおける第1コンポーネント部材と第2コンポーネント部材とを示す断面図である。
【図18】変形例に係る人工関節用コンポーネントにおける複数のコンポーネントのうちの1つのコンポーネントを示す断面図である。
【図19】図18に示すコンポーネントにおける第1コンポーネント部材と第2コンポーネント部材とを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、人工関節において用いられ、カップ状に形成されるとともに関節における一方の骨に対して設置され、関節における他方の骨の骨頭表面を置換するように配置される表面置換型コンポーネントが摺動するように配置される人工関節用コンポーネントとして広く適用することができるものである。
【0032】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る人工関節用コンポーネント1を示す断面図である。本実施形態では、人工関節用コンポーネント1が人工股関節(本実施形態における人工関節)において用いられる場合を例にとって説明する。図2乃至図4は、人工関節用コンポーネント1が人工股関節において用いられた状態を示す断面図であって、大腿骨100及び骨盤101の断面の一部とともに示している。
【0033】
図1乃至図4に示すように、人工関節用コンポーネント1は、人工股関節において用いられ、カップ状に形成されるとともに股関節における一方の骨である骨盤101に対して設置される。そして、人工関節用コンポーネント1は、股関節における他方の骨である大腿骨100の骨頭100aの表面を置換するように配置される表面置換型コンポーネント102が摺動するように配置される。尚、本実施形態では、人工関節用コンポーネント1と表面置換型コンポーネント102とによって人工股関節が構成されている。
【0034】
ここで、表面置換型コンポーネント102について説明する。表面置換型コンポーネント102は、図2乃至図4に示すように、骨頭表面部102aと軸状部102bとを備えて構成されている。この表面置換型コンポーネント102は、生体埋植用に医療機器としての認可承認を得たチタン合金、コバルトクロム合金、ステンレス鋼などの金属材料により形成されている。
【0035】
そして、表面置換型コンポーネント102の骨頭表面部102aは、骨盤101に設置される人工関節用コンポーネント1に対して摺動する球状外面102cが形成された半球殻状の形状に形成されている。この骨頭表面部102aは、大腿骨100の骨頭100aの表面を覆うように配置される。また、表面置換型コンポーネント102の軸状部102bは、骨頭表面部102aの内側における球状外面102cの頭頂部分の裏側に対応する位置から突出して延びるように形成されている。そして、この軸状部102bは、大腿骨100の骨頭100aに埋植される。
【0036】
本実施形態に係る人工関節用コンポーネント1は、図1に示すように、カップ状の外側の形状が同じに形成されるとともに、カップ状の内側の内面形状が異なるように形成される複数のコンポーネント(1a、1b、1c)を備えて構成されている。そして、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)は、図2乃至図4に示すように、いずれかが選択して用いられる。また、各コンポーネント(1a、1b、1c)は、例えば、生体埋植用に医療機器としての認可承認を得たチタン合金、コバルトクロム合金、ステンレス鋼などの金属材料により形成されている。
【0037】
複数のコンポーネント(1a、1b、1c)は、それぞれ半球殻状に形成されたカップ状の部材として設けられているとともに、それぞれ一体に形成された部材として設けられている。各コンポーネント(1a、1b、1c)には、骨盤101の寛骨臼101aに対して固定して取り付けられる取付面(11a、11b、11c)が設けられている。そし
て、各コンポーネント(1a、1b、1c)において、カップ状の外側の形状であるこの取付面(11a、11b、11c)の形状は、半径寸法が同じ半球面として形成されている。即ち、コンポーネント1aの取付面11aと、コンポーネント1bの取付面11bと、コンポーネント1cの取付面11cとは、同一半径の半球面を成す同じ形状に形成されている。尚、各取付面(11a、11b、11c)には、骨盤101の寛骨臼101aに対する固定性能を向上させるための表面処理が施されている。例えば、アパタイトコーティング処理や、溶射処理、粗面化処理、等の骨盤101に対する固定性能を向上させるための表面処理が施されている。
【0038】
また、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)のそれぞれには、表面置換型コンポーネント102の球状外面102cが摺動する摺動面(12a、12b、12c)が設けられている。そして、各コンポーネント(1a、1b、1c)において、カップ状の内側の内面形状であるこの摺動面(12a、12b、12c)の形状は、半径寸法が同じ球面の一部を形成するように設けられている。尚、各摺動面(12a、12b、12c)には、鏡面加工等の平滑化処理が施されている。
【0039】
図5は、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)の形状について説明するための模式断面図である。尚、図5では、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)の断面を仮想的に重ねた状態で模式的に図示している。この図5に示すように、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)において、各取付面(11a、11b、11c)は、同一の半径の半球面として設けられている。
【0040】
また、図5に示すように、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)において、各摺動面(12a、12b、12c)は、半径寸法(R1、R2、R3)が同じ球面の一部を成すように形成されている。即ち、摺動面12aの半径寸法R1と、摺動面12bの半径寸法R2と、摺動面12cの半径寸法Rcとが、同一となるように(R1=R2=R3となるように)構成されている。また、図5においては、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)のそれぞれにおける各摺動面(12a、12b、12c)としての各球面の径方向における中心位置(C1、C2、C3)を黒く塗りつぶした小さい丸印で図示している。複数のコンポーネント(1a、1b、1c)においては、各摺動面(12a、12b、12c)における上記の各中心位置(C1、C2、C3)は、図中において一点鎖線で示す同一直線L上に沿って配置されて互いにずれた位置に位置するように設定されている。
【0041】
尚、図5において、上記の直線Lについては、各取付面(11a、11b、11c)及び各摺動面(12a、12b、12c)の頭頂部分の頂点を通過する仮想の直線として図示している。そして、上記のように、各摺動面(12a、12b、12c)としての各球面の中心位置(C1、C2、C3)が直線L上に沿って互いにずれた位置に位置するように設定されていることで、各コンポーネント(1a、1b、1c)における各摺動面(12a、12b、12c)の頂点の位置での深さが異なるように設定されている。即ち、コンポーネント1aに対して、上記の深さが、コンポーネント1bでは両端矢印D1で示す深さ寸法だけ深くなるように、コンポーネント1cでは両端矢印D2で示す深さ寸法だけ深くなるように設定されている。
【0042】
図2はコンポーネント1aが選択されて人工股関節が構成された場合を示しており、図3はコンポーネント1bが選択されて人工股関節が構成された場合を示しており、図4はコンポーネント1cが選択されて人工股関節が構成された場合を示している。前述のように、各コンポーネント(1a、1b、1c)において、各摺動面(12a、12b、12c)の頂点の位置での深さが異なっている。このため、人工関節用コンポーネント1では、いずれかのコンポーネント(1a、1b、1c)が適宜選択されることで、人工関節用
コンポーネント1に対する表面置換型コンポーネント102の位置が調整可能なように構成されている。
【0043】
本実施形態によると、表面置換型コンポーネント102が摺動するカップ状の人工関節用コンポーネント1が、外形が同一で内面形状が異なる複数のコンポーネント(1a、1b、1c)として設けられ、人工関節置換術の際には、これらの複数のコンポーネント(1a、1b、1c)のいずれかが選択して用いられる。そして、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)のそれぞれの内面形状が、同一半径の球面の一部を成すように構成される。これにより、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)のいずれの内面形状においても、表面置換型コンポーネント102が摺動する摺動面(12a、12b、12c)である球面の半径が変わることがないため、表面置換型コンポーネント102の円滑な摺動動作を確保することができる。
【0044】
また、本実施形態では、更に、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)のそれぞれにおいて、各摺動面(12a、12b、12c)として設けられた各内面形状の球面の径方向の中心位置(C1、C2、C3)が互いにずれた位置に設定される。このため、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)のうちから患者の状況に応じた適切なコンポーネント(1a、1b、1c)を選択して設置することで、人工関節用コンポーネント1に対する表面置換型コンポーネント102の位置を人工関節置換術を行う術者が所望する位置に設定することができる。よって、人工関節用コンポーネント1を用いることにより、人体の左右での骨長差(本実施形態では、脚長差に対応することになる)を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることが可能な人工股関節を実現することができる。
【0045】
また、人工関節用コンポーネント1を用いる場合、摺動する相手側の表面置換型コンポーネントとして、特許文献3に開示されたような骨頭に嵌合して取り付けるためのスカート部が設けられた表面置換型コンポーネントを用いる必要がない。即ち、骨頭表面を置換するように取り付けられる表面置換型コンポーネントとして、骨への取り付け箇所の端部において応力集中を発生させ易い構造の表面置換型コンポーネントを用いる必要がなく、通常よく用いられる形態の表面置換型コンポーネント102のような形態のものを用いることができる。よって、人工関節用コンポーネント1を用いることで、表面置換型コンポーネント102の取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工股関節を実現することができる。
【0046】
従って、本実施形態によると、人体の左右での骨長差(脚長差)を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることができ、表面置換型コンポーネント102の取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工股関節を実現することができる人工関節用コンポーネント1を提供することができる。
【0047】
また、人工関節用コンポーネント1によると、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)の内面形状において、位置が互いにずれるように設定される球面の中心位置(C1、C2、C3)が同一直線L上に沿って配置されるよう設定される。このため、人工関節置換術を行う術者が、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)のうちから患者の状況に応じた適切なコンポーネントを選択して設置するに際して、人工関節用コンポーネント1に対する表面置換型コンポーネント102の位置についての検討及び調整をより容易に行うことができる。
【0048】
また、人工関節用コンポーネント1によると、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)がそれぞれ一体形成された部材として設けられる。このため、人体の左右での骨長差を補正して適当な筋肉の緊張を得ることができ、表面置換型コンポーネント102の取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工股関節を実現できる人工関節用コン
ポーネントにおいて、更なる構成の簡素化を図ることができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係る人工関節用コンポーネント2を示す断面図である。本実施形態では、人工関節用コンポーネント2が人工股関節(本実施形態における人工関節)において用いられる場合を例にとって説明する。図7乃至図9は、人工関節用コンポーネント2が人工股関節において用いられた状態を示す断面図であって、大腿骨100及び骨盤101の断面の一部とともに示している。
【0050】
図6乃至図9に示すように、人工関節用コンポーネント2は、人工股関節において用いられ、カップ状に形成されるとともに股関節における一方の骨である骨盤101に対して設置される。そして、人工関節用コンポーネント2は、股関節における他方の骨である大腿骨100の骨頭100aの表面を置換するように配置される表面置換型コンポーネント102が摺動するように配置される。尚、本実施形態では、人工関節用コンポーネント2と表面置換型コンポーネント102とによって人工股関節が構成されている。
【0051】
図6に示すように、人工関節用コンポーネント2は、カップ状の外側の形状が同じに形成されるとともに、カップ状の内側の内面形状が異なるように形成される複数のコンポーネント(2a、2b、2c)を構成可能に設けられている。そして、複数のコンポーネント(2a、2b、2c)は、図7乃至図9に示すように、いずれかが選択して用いられる。
【0052】
この人工関節用コンポーネント2では、複数のコンポーネント(2a、2b、2c)において、第1実施形態の取付面(11a、11b、11c)と同様の形状に形成される取付面15と、第1実施形態の各摺動面(12a、12b、12c)と同様の形状に形成される各摺動面(16a、16b、16c)とが設けられている。但し、各コンポーネント(2a、2b、2c)のそれぞれが、第1コンポーネント部材13と第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)とが組み合わされることで形成されている点において異なっている。尚、以下の説明においては、骨(100、101)及び表面置換型コンポーネント102については、第1実施形態と同様に構成されるため、図面において同一の符号を付すことで説明を省略する。また、複数のコンポーネント(2a、2b、2c)については、第1実施形態と同様の形状に形成される取付面15及び摺動面(16a、16b、16c)に関しては適宜第1実施形態の説明を参照することで説明を省略し、第1実施形態とは異なる構成について説明する。
【0053】
複数のコンポーネント(2a、2b、2c)のそれぞれは、第1コンポーネント部材13と第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)とを有し、第1コンポーネント部材13と第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)とが組み合わされることで形成される。尚、コンポーネント2aは第1コンポーネント部材13及び第2コンポーネント部材14aが組み合わされることで形成され、コンポーネント2bは第1コンポーネント部材13及び第2コンポーネント部材14bが組合されることで形成され、コンポーネント2cは第1コンポーネント部材13及び第2コンポーネント部材14cが組み合わされることで形成される。
【0054】
第1コンポーネント部材13は、カップ状に形成されて一方の骨である骨盤101に対して固定される部材として設けられ、複数のコンポーネント(2a、2b、2c)において共通して用いられる1つの部材として設けられている。尚、図6では、各コンポーネント(2a、2b、2c)においてそれぞれ第1コンポーネント部材13を図示しているが、人工関節用コンポーネント2においては、第1コンポーネント部材13は、1つのみ設
けられている。この第1コンポーネント部材13は、金属材料で形成されており、例えば、生体埋植用に医療機器としての認可承認を得たチタン合金、コバルトクロム合金、ステンレス鋼などの金属材料により形成されている。
【0055】
また、第1コンポーネント部材13には、第1実施形態の各取付面(11a、11b、11c)と同じ形状に形成され、骨盤101の寛骨臼101aに対して固定して取り付けられる取付面15が設けられている。そして、取付面15には、骨盤101の寛骨臼101aに対する固定性能を向上させるための表面処理が施されている。例えば、アパタイトコーティング処理や、溶射処理、粗面化処理、等の骨盤101に対する固定性能を向上させるための表面処理が施されている。
【0056】
各コンポーネント(2a、2b、2c)における各第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)は、第1コンポーネント部材13とは別体のカップ状に形成されるとともに、第1コンポーネント部材13の内側に対して固定される部材として設けられている。そして、各第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)は、セラミックス材料で形成されている。このため、第1コンポーネント部材13と第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)とは、種類の異なる材料で形成されていることになる。尚、各第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)は、第1コンポーネント部材13の内側に対して、球面同士での嵌合により固定されるように構成されている。
【0057】
また、各第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)には、第1実施形態の各摺動面(12a、12b、12c)と同じ形状に形成され、表面置換型コンポーネント102の球状外面102cが摺動する摺動面(16a、16b、16c)が設けられている。各コンポーネント(2a、2b、2c)におけるカップ状の内側の内面形状となるこの摺動面(16a、16b、16c)の形状は、半径寸法が同じ球面の一部を形成するように設けられている。そして、各コンポーネント(2a、2b、2c)における各摺動面(16a、16b、16c)としての各球面の径方向における中心位置は、第1実施形態の各摺動面(12a、12b、12c)と同様に、同一直線上に沿って配置されて互いにずれた位置に位置するように設定されている。このため、人工関節用コンポーネント2においても、第1実施形態と同様に、各コンポーネント(2a、2b、2c)における各摺動面(16a、16b、16c)の頂点の位置での深さが異なるように設定されている。尚、各摺動面(16a、16b、16c)には、鏡面加工等の平滑化処理が施されている。
【0058】
図7は、第1コンポーネント部材13に第2コンポーネント部材14aを組み合わせたコンポーネント2aが選択されて人工股関節が構成された場合を示している。また、図8は、第1コンポーネント部材13に第2コンポーネント部材14bを組み合わせたコンポーネント2bが選択されて人工股関節が構成された場合を示している。また、図9は、第1コンポーネント部材13に第2コンポーネント部材14cを組み合わせたコンポーネント2cが選択されて人工股関節が構成された場合を示している。前述のように、各コンポーネント(2a、2b、2c)において、各摺動面(16a、16b、16c)の頂点の位置での深さが異なっている。このため、人工関節用コンポーネント2では、いずれかのコンポーネント(2a、2b、2c)が適宜選択されることで、人工関節用コンポーネント2に対する表面置換型コンポーネント102の位置が調整可能なように構成されている。
【0059】
本実施形態によると、表面置換型コンポーネント102が摺動するカップ状の人工関節用コンポーネント2が、外形が同一で内面形状が異なる複数のコンポーネント(2a、2b、2c)として設けられ、人工関節置換術の際には、これらの複数のコンポーネント(2a、2b、2c)のいずれかが選択して用いられる。そして、複数のコンポーネント(2a、2b、2c)のそれぞれの内面形状が、同一半径の球面の一部を成すように構成さ
れる。これにより、複数のコンポーネント(2a、2b、2c)のいずれの内面形状においても、表面置換型コンポーネント102が摺動する摺動面(16a、16b、16c)である球面の半径が変わることがないため、表面置換型コンポーネント102の円滑な摺動動作を確保することができる。
【0060】
また、本実施形態では、更に、複数のコンポーネント(2a、2b、2c)のそれぞれにおいて、各摺動面(16a、16b、16c)として設けられた各内面形状の球面の径方向の中心位置が互いにずれた位置に設定される。このため、複数のコンポーネント(2a、2b、2c)のうちから患者の状況に応じた適切なコンポーネント(2a、2b、2c)を選択して設置することで、人工関節用コンポーネント2に対する表面置換型コンポーネント102の位置を人工関節置換術を行う術者が所望する位置に設定することができる。よって、人工関節用コンポーネント2を用いることにより、人体の左右での骨長差(脚長差)を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることが可能な人工股関節を実現することができる。
【0061】
また、人工関節用コンポーネント2を用いる場合、摺動する相手側の表面置換型コンポーネントとして、特許文献3に開示されたような骨頭に嵌合して取り付けるためのスカート部が設けられた表面置換型コンポーネントを用いる必要がない。即ち、骨頭表面を置換するように取り付けられる表面置換型コンポーネントとして、骨への取り付け箇所の端部において応力集中を発生させ易い構造の表面置換型コンポーネントを用いる必要がなく、通常よく用いられる形態の表面置換型コンポーネント102のような形態のものを用いることができる。よって、人工関節用コンポーネント2を用いることで、表面置換型コンポーネント102の取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工股関節を実現することができる。
【0062】
従って、本実施形態によると、人体の左右での骨長差(脚長差)を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることができ、表面置換型コンポーネント102の取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工股関節を実現することができる人工関節用コンポーネント2を提供することができる。
【0063】
また、人工関節用コンポーネント2によると、複数のコンポーネント(2a、2b、2c)のそれぞれが、第1コンポーネント部材13と第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)とが組み合わされることで形成される。このため、第1コンポーネント部材13と第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)との組み合わせ形態を種々設定することができる。これにより、一方の骨である骨盤101に固定される第1コンポーネント部材13と、表面置換型コンポーネント102が摺動する第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)とのそれぞれにおいて、所望される特性が付与された人工関節用コンポーネント2の組み合わせを容易に実現することができる。
【0064】
また、人工関節用コンポーネント2によると、第1コンポーネント部材13が複数のコンポーネント(2a、2b、2c)において共通する1つの部材として設けられ、内面形状が異なる第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)がそれぞれ組み合わされることで、複数のコンポーネント(2a、2b、2c)がそれぞれ構成されることになる。このため、第1コンポーネント部材13及び第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)が組み合わされて構成される人工関節用コンポーネント2において、部材点数の増大を第1コンポーネント部材13の共通化により抑制でき、構成の簡素化を図ることができる。
【0065】
また、人工関節用コンポーネント2によると、第1コンポーネント部材13及び第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)が種類の異なる材料で形成される。このた
め、一方の骨である骨盤101に固定される第1コンポーネント部材13と、表面置換型コンポーネント102が摺動する第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)とのそれぞれにおいて、所望される特性を付与できる材料の種類にそれぞれ独立して設定することができる。
【0066】
また、人工関節用コンポーネント2によると、一方の骨である骨盤101に固定される第1コンポーネント部材13が金属材料で形成されるため、第1コンポーネント部13において骨盤101の寛骨臼101aに固定される外面に対して、寛骨臼101aに対する固定性能を向上させるための表面処理を容易に施すことができる。そして、表面置換型コンポーネント102が摺動する第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)がセラミックス材料で形成されるため、内面形状の球面に鏡面加工等の平滑化処理を施すだけで、表面置換型コンポーネント102の円滑な摺動動作を確保する構造をより容易に実現することができる。
【0067】
(第3実施形態)
図10は、本発明の第3実施形態に係る人工関節用コンポーネント3を示す断面図である。本実施形態では、人工関節用コンポーネント3が人工肩関節(本実施形態における人工関節)において用いられる場合を例にとって説明する。図11乃至図13は、人工関節用コンポーネント1が人工肩関節において用いられた状態を示す断面図であって、上腕骨103及び肩甲骨104の断面の一部とともに示している。
【0068】
図10乃至図13に示すように、人工関節用コンポーネント3は、人工肩関節において用いられ、カップ状に形成されるとともに肩関節における一方の骨である肩甲骨104に対して設置される。そして、人工関節用コンポーネント3は、肩関節における他方の骨である上腕骨103の骨頭103aの表面を置換するように配置される表面置換型コンポーネント105が摺動するように配置される。尚、本実施形態では、人工関節用コンポーネント3と表面置換型コンポーネント105とによって人工肩関節が構成されている。
【0069】
ここで、表面置換型コンポーネント105について説明する。表面置換型コンポーネント105は、図11乃至図13に示すように、骨頭表面部105aと軸状部105bとを備えて構成されている。この表面置換型コンポーネント105は、生体埋植用に医療機器としての認可承認を得たチタン合金、コバルトクロム合金、ステンレス鋼などの金属材料により形成されている。
【0070】
そして、表面置換型コンポーネント105の骨頭表面部105aは、肩甲骨104に設置される人工関節用コンポーネント3に対して摺動する球状外面105cが形成された半球状の形状に形成されている。この骨頭表面部105aは、上腕骨103の骨頭103aの表面を覆うように配置される。また、表面置換型コンポーネント105の軸状部105bは、骨頭表面部105aにおける球状外面105cの頭頂部分の反対側に対応する位置から突出して延びるように形成されている。そして、この軸状部105bは、上腕骨103の骨頭103aに埋植される。
【0071】
本実施形態に係る人工関節用コンポーネント3は、図10に示すように、カップ状の外側の形状が同じに形成されるとともに、カップ状の内側の内面形状が異なるように形成される複数のコンポーネント(3a、3b、3c)を備えて構成されている。そして、複数のコンポーネント(3a、3b、3c)は、図11乃至図13に示すように、いずれかが選択して用いられる。また、各コンポーネント(3a、3b、3c)は、例えば、生体埋植用に医療機器としての認可承認を得たチタン合金、コバルトクロム合金、ステンレス鋼などの金属材料により形成されている。
【0072】
複数のコンポーネント(3a、3b、3c)は、それぞれ半球殻状に形成されたカップ状の部材として設けられているとともに、それぞれ一体に形成された部材として設けられている。各コンポーネント(3a、3b、3c)には、肩甲骨104の寛骨臼104aに対して固定して取り付けられる取付面(17a、17b、17c)が設けられている。そして、各コンポーネント(3a、3b、3c)において、カップ状の外側の形状であるこの取付面(17a、17b、17c)の形状は、半径寸法が同じ半球面として形成されている。即ち、コンポーネント3aの取付面17aと、コンポーネント3bの取付面17bと、コンポーネント3cの取付面17cとは、同一半径の半球面を成す同じ形状に形成されている。尚、各取付面(17a、17b、17c)には、肩甲骨104の寛骨臼104aに対する固定性能を向上させるための表面処理が施されている。例えば、アパタイトコーティング処理や、溶射処理、粗面化処理、等の肩甲骨104に対する固定性能を向上させるための表面処理が施されている。
【0073】
また、複数のコンポーネント(3a、3b、3c)のそれぞれには、表面置換型コンポーネント105の球状外面105cが摺動する摺動面(18a、18b、18c)が設けられている。そして、各コンポーネント(3a、3b、3c)において、カップ状の内側の内面形状であるこの摺動面(18a、18b、18c)の形状は、第1実施形態の摺動面(12a、12b、12c)と同様に、半径寸法が同じ球面の一部を形成するように設けられている。
【0074】
また、各コンポーネント(3a、3b、3c)における各摺動面(18a、18b、18c)としての各球面の径方向における中心位置は、第1実施形態の各摺動面(12a、12b、12c)と同様に、同一直線上に沿って配置されて互いにずれた位置に位置するように設定されている。このため、人工関節用コンポーネント3においても、第1実施形態と同様に、各コンポーネント(3a、3b、3c)における各摺動面(18a、18b、18c)の頂点の位置での深さが異なるように設定されている。尚、各摺動面(18a、18b、18c)には、鏡面加工等の平滑化処理が施されている。
【0075】
図11はコンポーネント3aが選択されて人工肩関節が構成された場合を示しており、図12はコンポーネント3bが選択されて人工肩関節が構成された場合を示しており、図13はコンポーネント3cが選択されて人工肩関節が構成された場合を示している。前述のように、各コンポーネント(3a、3b、3c)において、各摺動面(18a、18b、18c)の頂点の位置での深さが異なっている。このため、人工関節用コンポーネント3では、いずれかのコンポーネント(3a、3b、3c)が適宜選択されることで、人工関節用コンポーネント3に対する表面置換型コンポーネント105の位置が調整可能なように構成されている。
【0076】
本実施形態によると、表面置換型コンポーネント105が摺動するカップ状の人工関節用コンポーネント3が、外形が同一で内面形状が異なる複数のコンポーネント(3a、3b、3c)として設けられ、人工関節置換術の際には、これらの複数のコンポーネント(3a、3b、3c)のいずれかが選択して用いられる。そして、複数のコンポーネント(3a、3b、3c)のそれぞれの内面形状が、同一半径の球面の一部を成すように構成される。これにより、複数のコンポーネント(3a、3b、3c)のいずれの内面形状においても、表面置換型コンポーネント105が摺動する摺動面(18a、18b、18c)である球面の半径が変わることないため、表面置換型コンポーネント105の円滑な摺動動作を確保することができる。
【0077】
また、本実施形態では、更に、複数のコンポーネント(3a、3b、3c)のそれぞれにおいて、各摺動面(18a、18b、18c)として設けられた各内面形状の球面の径方向の中心位置が互いにずれた位置に設定される。このため、複数のコンポーネント(3
a、3b、3c)のうちから患者の状況に応じた適切なコンポーネント(3a、3b、3c)を選択して設置することで、人工関節用コンポーネント3に対する表面置換型コンポーネント105の位置を人工関節置換術を行う術者が所望する位置に設定することができる。よって、人工関節用コンポーネント3を用いることにより、人体の左右での骨長差を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることが可能な人工肩関節を実現することができる。
【0078】
また、人工関節用コンポーネント3を用いる場合、摺動する相手側の表面置換型コンポーネントとして、特許文献3に開示されたような骨頭に嵌合して取り付けるためのスカート部が設けられた表面置換型コンポーネントを用いる必要がない。即ち、骨頭表面を置換するように取り付けられる表面置換型コンポーネントとして、骨への取り付け箇所の端部において応力集中を発生させ易い構造の表面置換型コンポーネントを用いる必要がなく、通常よく用いられる形態の表面置換型コンポーネント105のような形態のものを用いることができる。よって、人工関節用コンポーネント3を用いることで、表面置換型コンポーネント105の取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工肩関節を実現することができる。
【0079】
従って、本実施形態によると、人体の左右での骨長差を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることができ、表面置換型コンポーネント105の取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工肩関節を実現することができる人工関節用コンポーネント3を提供することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0081】
(1)第1乃至第3実施形態では、複数のコンポーネントとして3つのコンポーネントを構成可能な人工関節用コンポーネントを例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。即ち、複数のコンポーネントとして2つのコンポーネント又は4つ以上のコンポーネントを構成可能な人工関節用コンポーネントを実施してもよい。
【0082】
(2)第1乃至第3実施形態では、複数のコンポーネントのそれぞれにおける内面形状の球面の径方向の中心位置が、同一直線上に沿って配置されて互いにずれた位置に位置するように設定された人工関節用コンポーネントを例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。複数のコンポーネントのそれぞれにおける上記球面の中心位置が、同一直線上に沿った位置とは異なる位置で、互いにずれた位置に位置するように設定された人工関節用コンポーネントを実施してもよい。
【0083】
(3)第1及び第3実施形態では、複数のコンポーネントのそれぞれが、金属材料で形成されているものを例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、複数のコンポーネントのそれぞれが、セラミックス材料や樹脂材料で形成されている人工関節用コンポーネントを実施してもよい。
【0084】
(4)第1及び第3実施形態における複数のコンポーネントにおいては、金属材料で形成されて、摺動面も金属面として形成されている形態を例示したが、この通りでなくてもよい。複数のコンポーネントのそれぞれが、金属材料で形成されるとともに表面置換型コンポーネントが摺動する内側にセラミックスコーティングの層が設けられ、摺動面がセラミックスの面として形成されている人工関節用コンポーネントを実施してもよい。
【0085】
上記の変形例に係る人工関節用コンポーネントによると、複数のコンポーネントがそれ
ぞれ金属材料で一体形成された部材として設けられ、構成の簡素化が図られる。そして、金属材料で形成されるため、骨に固定される外面に対して、骨に対する固定性能を向上させるための表面処理を容易に施すことができる。そして、表面置換型コンポーネントが摺動する内側にセラミックスコーティングの層が設けられるため、表面置換型コンポーネントの円滑な摺動動作を確保する構造をより容易に実現することができる。
【0086】
(5)第2実施形態では、第1コンポーネント部材と第2コンポーネント部材とが球面同士の嵌合によって固定される形態を例示したが、この通りでなくてもよい。例えば、第1コンポーネント部材の内側と、第1コンポーネント部材の内側に固定される第2コンポーネント部材の外側とに、互いに係合し合う係合部がそれぞれ設けられている人工関節用コンポーネントを実施してもよい。この変形例によると、第1コンポーネント部材及び第2コンポーネント部材が、互いに係合する係合部を介して固定されることになる。このため、第1コンポーネント部材の内側及び第2コンポーネント部材の外側に係合部を設けるという簡素な構成によって、第1コンポーネント部材と第2コンポーネント部材との結合強度を容易に向上させることができる。
【0087】
図14及び図15、図16及び図17、図18及び図19は、それぞれ、上記の変形例に係る人工関節用コンポーネントにおける複数のコンポーネントのうちの1つのコンポーネントを示す断面図である。図14乃至図19に示す変形例については、第2実施形態における複数のコンポーネント(2a、2b、2c)のうちの1つのコンポーネント2bに対応する変形例のコンポーネントの断面をそれぞれ図示している。以下、第2実施形態のコンポーネント2bにおける第1コンポーネント部材13及び第2コンポーネント14bに係合部が形成された状態を示す断面図(図14乃至図19)を参照しつつ、上記の変形例について説明する。尚、図14、図16、及び図18は、第1コンポーネント部材13と第2コンポーネント部材14bとが組み合わされた状態を示している。一方、図15、図17、及び図19は、第1コンポーネント部材13の断面図(図15(a)、図17(a)、図19(a))と、第2コンポーネント部材14bの断面図(図15(b)、図17(b)、図19(b))とを示している。
【0088】
図14及び図15に示す変形例においては、第1コンポーネント部材13の内側における縁部分の近傍において、周方向に沿って延びるように形成された溝状の係合部19が形成されている。一方、第2コンポーネント部材14bの外側における縁部分の近傍においては、周方向に沿って延びるように形成された突起状の係合部20が形成されている。これらの係合部19と係合部20とは互いに係合し合うように構成されている。これにより、第1コンポーネント部材13及び第2コンポーネント部材14bが、互いに係合する係合部(19、20)を介して強固に固定されることになる。
【0089】
図16及び図17に示す変形例においては、第1コンポーネント部材13の内側における縁部分において、周方向に沿って延びるように形成されるとともに、縁側に向かって円錐曲面の一部を成すように広がるテーパ状の斜面としての係合部21が形成されている。一方、第2コンポーネント部材14bの外側における縁部分においては、周方向に沿って延びるように形成されるとともに、縁側に向かって円錐曲面の一部を成すように広がるテーパ状の斜面としての係合部22が形成されている。第2コンポーネント部材14bの縁側に向かう係合部22の勾配は、第1コンポーネント部材13の縁側に向かう係合部21の勾配よりも僅かに緩やかな角度となるように形成されている。このため、係合部21と係合部22とが互いに楔状に係合し合うように構成されている。これにより、第1コンポーネント部材13及び第2コンポーネント部材14bが、互いに係合する係合部(21、22)を介して強固に固定されることになる。
【0090】
図18及び図19に示す変形例においては、第1コンポーネント部材13の内側におけ
る縁部分において、周方向に沿って螺旋状に延びる雌ネジ部分としての係合部23が形成されている。一方、第2コンポーネント部材14bの外側における縁部分においては、周方向に沿って螺旋状に延びる雄ネジ部分としての係合部24が形成されている。これらの係合部23と係合部24とは、螺合により互いに係合し合うように構成されている。これにより、第1コンポーネント部材13及び第2コンポーネント部材14bが、互いに係合する係合部(23、24)を介して強固に固定されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、人工関節において用いられ、カップ状に形成されるとともに関節における一方の骨に対して設置され、関節における他方の骨の骨頭表面を置換するように配置される表面置換型コンポーネントが摺動するように配置される人工関節用コンポーネントとして、広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0092】
1 人工関節用コンポーネント
1a、1b、1c 複数のコンポーネント
12a、12b、12c 摺動面(内面形状における球面)
100 大腿骨(他方の骨)
101 骨盤(一方の骨)
102 表面置換型コンポーネント
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工関節において用いられ、カップ状に形成されるとともに関節における一方の骨に対して設置され、関節における他方の骨の骨頭表面を置換するように配置される表面置換型コンポーネントが摺動するように配置される人工関節用コンポーネントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、股関節等の関節に異常が認められた患者に対して、人工股関節等の人工関節を適用し、関節の一部又は全部を人工関節で置換する人工関節置換術が行われている。そして、上述したような人工関節においては、関節における一方の骨に対してカップ状のコンポーネントが設置され、他方の骨に対しては骨頭の一部又は全部を置換するコンポーネントが用いられる。
【0003】
骨頭の全部を置換するコンポーネントとしては、骨の髄腔部に挿入される棒状に形成されたステム部材と、ボール状に形成されてステム部材のネック部に連結される骨頭ボール部材とを有するコンポーネントが用いられる。このようなコンポーネントとして、特許文献1の図8や特許文献2において、人工股関節において用いられる人工股関節用大腿骨コンポーネントが開示されている。このようなコンポーネントにおいては、関節側に配置される骨頭ボール部材は、骨盤の寛骨臼に設置されたカップ状のコンポーネントに対して摺動するように配置される。そして、人体の左右で骨の長さ寸法の差(骨長差)が生じてしまっているような患者に対しては、ステム部材に対する連結位置を変更可能な骨頭ボール部材を用いることで、その骨長差を補正しつつ適当な筋肉の緊張を得ることが可能なコンポーネントを用いた人工関節置換術が行われることが一般的である。尚、この場合、ステム部材のネック部に連結する骨頭ボール部材の位置を変更可能なように、骨頭ボール部材に形成される連結穴の深さ寸法が異なる骨頭ボール部材が複数準備されることになる。
【0004】
一方、関節における一方の骨に対してカップ状に形成された人工関節用コンポーネントが設置され、関節における他方の骨に対してその骨頭表面を置換するように配置されるとともに上記の人工関節用コンポーネントに対して摺動するように配置される表面置換型コンポーネントが設置される人工関節置換術も行われている。特許文献1の図1及び図2においては、カップ状の人工関節用コンポーネントと表面置換型コンポーネントとを備える人工股関節が開示されている。このような人工関節が用いられることで、例えば骨頭部分の損傷の程度が軽度の場合には、手術の際における骨頭部分の切除量の少量化等を図ることができ、骨温存の観点において非常に有用な人工関節を提供することができる。また、前述したような骨頭ボール部材を用いた人工関節の適用が必要な段階の前段階としての人工関節の選択肢を拡大することができる。
【0005】
特許文献1に開示されたようなカップ状の人工関節用コンポーネントと表面置換型コンポーネントとを備える人工関節においては、上記のように、骨温存の観点で有用な人工関節を提供することができる。しかし、この人工関節においては、前述したステム部材及び骨頭ボール部材を有するコンポーネントを用いる場合のように、人体の左右での骨長差を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることが可能な人工関節を実現することが難しい。
【0006】
上記に対して、特許文献3に開示された表面置換型コンポーネントは、カップ状の人工関節用コンポーネントに対して摺動するとともに骨頭を置換するように配置され、表面が置換される骨頭に対して内側の取付面において嵌合するように取り付けられる頭部が設け
られている。この頭部には、骨頭の周囲に沿って延びるように形成されたスカート部が設けられ、スカート部の内面と上記の取付面とによって、表面が置換される骨頭に対して嵌合するように取り付けられる。そして、この表面置換型コンポーネントにおいては、頭部の厚み寸法を変更して設定することができるとともに、表面が置換される骨頭に対してスカート部にて嵌合して固定されることになる。このため、頭部の寸法構成を変更した表面置換型コンポーネントを用いることで、人体の左右での骨長差を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることが可能な人工関節を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−137267号公報
【特許文献2】特表平8−503859号公報
【特許文献3】特開2009−160300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3に開示されたような表面置換型コンポーネントを有する人工関節を用いることで、人体の左右での骨長差を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることができる。しかしながら、特許文献3の表面置換型コンポーネントの場合、骨頭に嵌合して取り付けられた状態では、骨に対するコンポーネントの取り付け箇所の端部となるスカート部の端部の近傍の骨において、応力集中を招いてしまい易いという問題がある。このため、表面置換型コンポーネントの取り付け箇所の端部の近傍での骨折(大腿骨用の表面置換型コンポーネントの場合であれば大腿骨頚部骨折)の発生を招き易いという問題がある。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、人体の左右での骨長差を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることができ、表面置換型コンポーネントの取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工関節を実現することができる人工関節用コンポーネントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための第1発明に係る人工関節用コンポーネントは、人工関節において用いられ、カップ状に形成されるとともに関節における一方の骨に対して設置され、関節における他方の骨の骨頭表面を置換するように配置される表面置換型コンポーネントが摺動するように配置される人工関節用コンポーネントに関する。そして、第1発明に係る人工関節用コンポーネントは、カップ状の外側の形状が同じに形成されるとともに、カップ状の内側の内面形状が異なるように形成される複数のコンポーネントを構成可能に設けられ、前記複数のコンポーネントは、いずれかが選択して用いられるとともに、それぞれの前記内面形状が、半径寸法が同じ球面の一部を形成するように設けられ、前記複数のコンポーネントのそれぞれにおける前記球面の径方向における中心位置は、互いにずれた位置に位置するように設定されていることを特徴とする。
【0011】
この発明によると、表面置換型コンポーネントが摺動するカップ状の人工関節用コンポーネントが、外形が同一で内面形状が異なる複数のコンポーネントとして設けられ、人工関節置換術の際には、これらの複数のコンポーネントのいずれかが選択して用いられる。そして、複数のコンポーネントのそれぞれの内面形状が、同一半径の球面の一部を成すように構成される。これにより、複数のコンポーネントのいずれの内面形状においても、表面置換型コンポーネントが摺動する摺動面である球面の半径が変わることがないため、表面置換型コンポーネントの円滑な摺動動作を確保することができる。そして、更に、複数のコンポーネントのそれぞれにおいて、内面形状の球面の中心位置が互いにずれた位置に設定される。このため、複数のコンポーネントのうちから患者の状況に応じた適切なコン
ポーネントを選択して設置することで、人工関節用コンポーネントに対する表面置換型コンポーネントの位置を人工関節置換術を行う術者が所望する位置に設定することができる。よって、本発明の人工関節用コンポーネントを用いることにより、人体の左右での骨長差を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることが可能な人工関節を実現することができる。また、本発明の人工関節用コンポーネントを用いる場合、摺動する相手側の表面置換型コンポーネントとして、特許文献3に開示されたような骨頭に嵌合して取り付けるためのスカート部が設けられた表面置換型コンポーネントを用いる必要がない。即ち、骨頭表面を置換するように取り付けられる表面置換型コンポーネントとして、骨への取り付け箇所の端部において応力集中を発生させ易い構造の表面置換型コンポーネントを用いる必要がない。これにより、本発明の人工関節用コンポーネントを用いることで、表面置換型コンポーネントの取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工関節を実現することができる。
【0012】
従って、本発明によると、人体の左右での骨長差を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることができ、表面置換型コンポーネントの取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工関節を実現することができる人工関節用コンポーネントを提供することができる。
【0013】
第2発明に係る人工関節用コンポーネントは、第1発明の人工関節用コンポーネントにおいて、前記複数のコンポーネントのそれぞれにおける前記球面の中心位置が、同一直線上に沿って配置されて互いにずれた位置に位置するように設定されていることを特徴とする。
【0014】
この発明によると、複数のコンポーネントの内面形状において、位置が互いにずれるように設定される球面の中心位置が同一直線上に沿って配置されるよう設定される。このため、人工関節置換術を行う術者が、複数のコンポーネントのうちから患者の状況に応じた適切なコンポーネントを選択して設置するに際して、人工関節用コンポーネントに対する表面置換型コンポーネントの位置についての検討及び調整をより容易に行うことができる。
【0015】
第3発明に係る人工関節用コンポーネントは、第1発明又は第2発明の人工関節用コンポーネントにおいて、前記複数のコンポーネントは、それぞれ一体に形成された部材として設けられていることを特徴とする。
【0016】
この発明によると、複数のコンポーネントがそれぞれ一体形成された部材として設けられる。このため、人体の左右での骨長差を補正して適当な筋肉の緊張を得ることができ、表面置換型コンポーネントの取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工関節を実現できる人工関節用コンポーネントにおいて、更なる構成の簡素化を図ることができる。
【0017】
第4発明に係る人工関節用コンポーネントは、第1発明又は第2発明の人工関節用コンポーネントにおいて、前記複数のコンポーネントのそれぞれは、カップ状に形成されて前記一方の骨に対して固定される第1コンポーネント部材と、前記第1コンポーネント部材とは別体のカップ状に形成されるとともに前記第1コンポーネント部材の内側に固定される第2コンポーネント部材と、を有し、前記第1コンポーネント部材と前記第2コンポーネント部材とが組み合わされることで形成されることを特徴とする。
【0018】
この発明によると、複数のコンポーネントのそれぞれが、第1コンポーネント部材と第2コンポーネント部材とが組み合わされることで形成される。このため、第1コンポーネント部材と第2コンポーネント部材との組み合わせ形態を種々設定することができる。こ
れにより、一方の骨に固定される第1コンポーネント部材と、表面置換型コンポーネントが摺動する第2コンポーネント部材とのそれぞれにおいて、所望される特性が付与された人工関節用コンポーネントの組み合わせを容易に実現することができる。
【0019】
第5発明に係る人工関節用コンポーネントは、第4発明の人工関節用コンポーネントにおいて、前記第1コンポーネント部材は、前記複数のコンポーネントにおいて共通して用いられる1つの部材として設けられていることを特徴とする。
【0020】
この発明によると、第1コンポーネント部材が複数のコンポーネントにおいて共通する1つの部材として設けられ、内面形状が異なる第2コンポーネント部材がそれぞれ組み合わされることで、複数のコンポーネントがそれぞれ構成されることになる。このため、第1コンポーネント部材及び第2コンポーネント部材が組み合わされて構成される人工関節用コンポーネントにおいて、部材点数の増大を第1コンポーネント部材の共通化により抑制でき、構成の簡素化を図ることができる。
【0021】
第6発明に係る人工関節用コンポーネントは、第4発明又は第5発明の人工関節用コンポーネントにおいて、前記第1コンポーネント部材と前記第2コンポーネント部材とが、種類の異なる材料で形成されていることを特徴とする。
【0022】
この発明によると、第1コンポーネント部材及び第2コンポーネント部材が種類の異なる材料で形成される。このため、一方の骨に固定される第1コンポーネント部材と、表面置換型コンポーネントが摺動する第2コンポーネント部材とのそれぞれにおいて、所望される特性を付与できる材料の種類にそれぞれ独立して設定することができる。
【0023】
第7発明に係る人工関節用コンポーネントは、第6発明の人工関節用コンポーネントにおいて、前記第1コンポーネント部材は金属材料で形成され、前記第2コンポーネント部材はセラミックス材料で形成されていることを特徴とする。
【0024】
この発明によると、一方の骨に固定される第1コンポーネント部材が金属材料で形成されるため、第1コンポーネント部材において骨に固定される外面に対して、骨に対する固定性能を向上させるための表面処理を容易に施すことができる。例えば、アパタイトコーティング処理や、溶射処理、粗面化処理、等の骨に対する固定性能を向上させるための表面処理を容易に施すことができる。そして、表面置換型コンポーネントが摺動する第2コンポーネント部材がセラミックス材料で形成されるため、内面形状の球面に鏡面加工等の平滑化処理を施すだけで、表面置換型コンポーネントの円滑な摺動動作を確保する構造をより容易に実現することができる。
【0025】
第8発明に係る人工関節用コンポーネントは、第4発明乃至第7発明のいずれかの人工関節用コンポーネントにおいて、前記第1コンポーネント部材の内側と、前記第1コンポーネント部材の内側に固定される前記第2コンポーネント部材の外側とには、互いに係合し合う係合部がそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0026】
この発明によると、第1コンポーネント部材及び第2コンポーネント部材が、互いに係合する係合部を介して固定されることになる。このため、第1コンポーネント部材の内側及び第2コンポーネント部材の外側に係合部を設けるという簡素な構成によって、第1コンポーネント部材と第2コンポーネント部材との結合強度を容易に向上させることができる。
【0027】
第9発明に係る人工関節用コンポーネントは、第3発明の人工関節用コンポーネントにおいて、前記複数のコンポーネントのそれぞれは、金属材料で形成されるとともに前記表
面置換型コンポーネントが摺動する内側にセラミックスコーティングの層が設けられていることを特徴とする。
【0028】
この発明によると、複数のコンポーネントがそれぞれ金属材料で一体形成された部材として設けられ、構成の簡素化が図られる。そして、金属材料で形成されるため、骨に固定される外面に対して、骨に対する固定性能を向上させるための表面処理を容易に施すことができる。そして、表面置換型コンポーネントが摺動する内側にセラミックスコーティングの層が設けられるため、表面置換型コンポーネントの円滑な摺動動作を確保する構造をより容易に実現することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、人体の左右での骨長差を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることができ、表面置換型コンポーネントの取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工関節を実現することができる人工関節用コンポーネントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係る人工関節用コンポーネントを示す断面図である。
【図2】図1に示す人工関節用コンポーネントが人工股関節において用いられた状態を示す断面図であって、大腿骨及び骨盤の断面の一部とともに示す図である。
【図3】図1に示す人工関節用コンポーネントが人工股関節において用いられた状態を示す断面図であって、大腿骨及び骨盤の断面の一部とともに示す図である。
【図4】図1に示す人工関節用コンポーネントが人工股関節において用いられた状態を示す断面図であって、大腿骨及び骨盤の断面の一部とともに示す図である。
【図5】図1に示す人工関節用コンポーネントにおける複数のコンポーネントの形状について説明するための模式断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る人工関節用コンポーネントを示す断面図である。
【図7】図6に示す人工関節用コンポーネントが人工股関節において用いられた状態を示す断面図であって、大腿骨及び骨盤の断面の一部とともに示す図である。
【図8】図6に示す人工関節用コンポーネントが人工股関節において用いられた状態を示す断面図であって、大腿骨及び骨盤の断面の一部とともに示す図である。
【図9】図6に示す人工関節用コンポーネントが人工股関節において用いられた状態を示す断面図であって、大腿骨及び骨盤の断面の一部とともに示す図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る人工関節用コンポーネントを示す断面図である。
【図11】図10に示す人工関節用コンポーネントが人工肩関節において用いられた状態を示す断面図であって、上腕骨及び肩甲骨の断面の一部とともに示す図である。
【図12】図10に示す人工関節用コンポーネントが人工肩関節において用いられた状態を示す断面図であって、上腕骨及び肩甲骨の断面の一部とともに示す図である。
【図13】図10に示す人工関節用コンポーネントが人工肩関節において用いられた状態を示す断面図であって、上腕骨及び肩甲骨の断面の一部とともに示す図である。
【図14】変形例に係る人工関節用コンポーネントにおける複数のコンポーネントのうちの1つのコンポーネントを示す断面図である。
【図15】図14に示すコンポーネントにおける第1コンポーネント部材と第2コンポーネント部材とを示す断面図である。
【図16】変形例に係る人工関節用コンポーネントにおける複数のコンポーネントのうちの1つのコンポーネントを示す断面図である。
【図17】図16に示すコンポーネントにおける第1コンポーネント部材と第2コンポーネント部材とを示す断面図である。
【図18】変形例に係る人工関節用コンポーネントにおける複数のコンポーネントのうちの1つのコンポーネントを示す断面図である。
【図19】図18に示すコンポーネントにおける第1コンポーネント部材と第2コンポーネント部材とを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、人工関節において用いられ、カップ状に形成されるとともに関節における一方の骨に対して設置され、関節における他方の骨の骨頭表面を置換するように配置される表面置換型コンポーネントが摺動するように配置される人工関節用コンポーネントとして広く適用することができるものである。
【0032】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る人工関節用コンポーネント1を示す断面図である。本実施形態では、人工関節用コンポーネント1が人工股関節(本実施形態における人工関節)において用いられる場合を例にとって説明する。図2乃至図4は、人工関節用コンポーネント1が人工股関節において用いられた状態を示す断面図であって、大腿骨100及び骨盤101の断面の一部とともに示している。
【0033】
図1乃至図4に示すように、人工関節用コンポーネント1は、人工股関節において用いられ、カップ状に形成されるとともに股関節における一方の骨である骨盤101に対して設置される。そして、人工関節用コンポーネント1は、股関節における他方の骨である大腿骨100の骨頭100aの表面を置換するように配置される表面置換型コンポーネント102が摺動するように配置される。尚、本実施形態では、人工関節用コンポーネント1と表面置換型コンポーネント102とによって人工股関節が構成されている。
【0034】
ここで、表面置換型コンポーネント102について説明する。表面置換型コンポーネント102は、図2乃至図4に示すように、骨頭表面部102aと軸状部102bとを備えて構成されている。この表面置換型コンポーネント102は、生体埋植用に医療機器としての認可承認を得たチタン合金、コバルトクロム合金、ステンレス鋼などの金属材料により形成されている。
【0035】
そして、表面置換型コンポーネント102の骨頭表面部102aは、骨盤101に設置される人工関節用コンポーネント1に対して摺動する球状外面102cが形成された半球殻状の形状に形成されている。この骨頭表面部102aは、大腿骨100の骨頭100aの表面を覆うように配置される。また、表面置換型コンポーネント102の軸状部102bは、骨頭表面部102aの内側における球状外面102cの頭頂部分の裏側に対応する位置から突出して延びるように形成されている。そして、この軸状部102bは、大腿骨100の骨頭100aに埋植される。
【0036】
本実施形態に係る人工関節用コンポーネント1は、図1に示すように、カップ状の外側の形状が同じに形成されるとともに、カップ状の内側の内面形状が異なるように形成される複数のコンポーネント(1a、1b、1c)を備えて構成されている。そして、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)は、図2乃至図4に示すように、いずれかが選択して用いられる。また、各コンポーネント(1a、1b、1c)は、例えば、生体埋植用に医療機器としての認可承認を得たチタン合金、コバルトクロム合金、ステンレス鋼などの金属材料により形成されている。
【0037】
複数のコンポーネント(1a、1b、1c)は、それぞれ半球殻状に形成されたカップ状の部材として設けられているとともに、それぞれ一体に形成された部材として設けられている。各コンポーネント(1a、1b、1c)には、骨盤101の寛骨臼101aに対して固定して取り付けられる取付面(11a、11b、11c)が設けられている。そし
て、各コンポーネント(1a、1b、1c)において、カップ状の外側の形状であるこの取付面(11a、11b、11c)の形状は、半径寸法が同じ半球面として形成されている。即ち、コンポーネント1aの取付面11aと、コンポーネント1bの取付面11bと、コンポーネント1cの取付面11cとは、同一半径の半球面を成す同じ形状に形成されている。尚、各取付面(11a、11b、11c)には、骨盤101の寛骨臼101aに対する固定性能を向上させるための表面処理が施されている。例えば、アパタイトコーティング処理や、溶射処理、粗面化処理、等の骨盤101に対する固定性能を向上させるための表面処理が施されている。
【0038】
また、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)のそれぞれには、表面置換型コンポーネント102の球状外面102cが摺動する摺動面(12a、12b、12c)が設けられている。そして、各コンポーネント(1a、1b、1c)において、カップ状の内側の内面形状であるこの摺動面(12a、12b、12c)の形状は、半径寸法が同じ球面の一部を形成するように設けられている。尚、各摺動面(12a、12b、12c)には、鏡面加工等の平滑化処理が施されている。
【0039】
図5は、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)の形状について説明するための模式断面図である。尚、図5では、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)の断面を仮想的に重ねた状態で模式的に図示している。この図5に示すように、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)において、各取付面(11a、11b、11c)は、同一の半径の半球面として設けられている。
【0040】
また、図5に示すように、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)において、各摺動面(12a、12b、12c)は、半径寸法(R1、R2、R3)が同じ球面の一部を成すように形成されている。即ち、摺動面12aの半径寸法R1と、摺動面12bの半径寸法R2と、摺動面12cの半径寸法Rcとが、同一となるように(R1=R2=R3となるように)構成されている。また、図5においては、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)のそれぞれにおける各摺動面(12a、12b、12c)としての各球面の径方向における中心位置(C1、C2、C3)を黒く塗りつぶした小さい丸印で図示している。複数のコンポーネント(1a、1b、1c)においては、各摺動面(12a、12b、12c)における上記の各中心位置(C1、C2、C3)は、図中において一点鎖線で示す同一直線L上に沿って配置されて互いにずれた位置に位置するように設定されている。
【0041】
尚、図5において、上記の直線Lについては、各取付面(11a、11b、11c)及び各摺動面(12a、12b、12c)の頭頂部分の頂点を通過する仮想の直線として図示している。そして、上記のように、各摺動面(12a、12b、12c)としての各球面の中心位置(C1、C2、C3)が直線L上に沿って互いにずれた位置に位置するように設定されていることで、各コンポーネント(1a、1b、1c)における各摺動面(12a、12b、12c)の頂点の位置での深さが異なるように設定されている。即ち、コンポーネント1aに対して、上記の深さが、コンポーネント1bでは両端矢印D1で示す深さ寸法だけ深くなるように、コンポーネント1cでは両端矢印D2で示す深さ寸法だけ深くなるように設定されている。
【0042】
図2はコンポーネント1aが選択されて人工股関節が構成された場合を示しており、図3はコンポーネント1bが選択されて人工股関節が構成された場合を示しており、図4はコンポーネント1cが選択されて人工股関節が構成された場合を示している。前述のように、各コンポーネント(1a、1b、1c)において、各摺動面(12a、12b、12c)の頂点の位置での深さが異なっている。このため、人工関節用コンポーネント1では、いずれかのコンポーネント(1a、1b、1c)が適宜選択されることで、人工関節用
コンポーネント1に対する表面置換型コンポーネント102の位置が調整可能なように構成されている。
【0043】
本実施形態によると、表面置換型コンポーネント102が摺動するカップ状の人工関節用コンポーネント1が、外形が同一で内面形状が異なる複数のコンポーネント(1a、1b、1c)として設けられ、人工関節置換術の際には、これらの複数のコンポーネント(1a、1b、1c)のいずれかが選択して用いられる。そして、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)のそれぞれの内面形状が、同一半径の球面の一部を成すように構成される。これにより、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)のいずれの内面形状においても、表面置換型コンポーネント102が摺動する摺動面(12a、12b、12c)である球面の半径が変わることがないため、表面置換型コンポーネント102の円滑な摺動動作を確保することができる。
【0044】
また、本実施形態では、更に、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)のそれぞれにおいて、各摺動面(12a、12b、12c)として設けられた各内面形状の球面の径方向の中心位置(C1、C2、C3)が互いにずれた位置に設定される。このため、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)のうちから患者の状況に応じた適切なコンポーネント(1a、1b、1c)を選択して設置することで、人工関節用コンポーネント1に対する表面置換型コンポーネント102の位置を人工関節置換術を行う術者が所望する位置に設定することができる。よって、人工関節用コンポーネント1を用いることにより、人体の左右での骨長差(本実施形態では、脚長差に対応することになる)を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることが可能な人工股関節を実現することができる。
【0045】
また、人工関節用コンポーネント1を用いる場合、摺動する相手側の表面置換型コンポーネントとして、特許文献3に開示されたような骨頭に嵌合して取り付けるためのスカート部が設けられた表面置換型コンポーネントを用いる必要がない。即ち、骨頭表面を置換するように取り付けられる表面置換型コンポーネントとして、骨への取り付け箇所の端部において応力集中を発生させ易い構造の表面置換型コンポーネントを用いる必要がなく、通常よく用いられる形態の表面置換型コンポーネント102のような形態のものを用いることができる。よって、人工関節用コンポーネント1を用いることで、表面置換型コンポーネント102の取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工股関節を実現することができる。
【0046】
従って、本実施形態によると、人体の左右での骨長差(脚長差)を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることができ、表面置換型コンポーネント102の取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工股関節を実現することができる人工関節用コンポーネント1を提供することができる。
【0047】
また、人工関節用コンポーネント1によると、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)の内面形状において、位置が互いにずれるように設定される球面の中心位置(C1、C2、C3)が同一直線L上に沿って配置されるよう設定される。このため、人工関節置換術を行う術者が、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)のうちから患者の状況に応じた適切なコンポーネントを選択して設置するに際して、人工関節用コンポーネント1に対する表面置換型コンポーネント102の位置についての検討及び調整をより容易に行うことができる。
【0048】
また、人工関節用コンポーネント1によると、複数のコンポーネント(1a、1b、1c)がそれぞれ一体形成された部材として設けられる。このため、人体の左右での骨長差を補正して適当な筋肉の緊張を得ることができ、表面置換型コンポーネント102の取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工股関節を実現できる人工関節用コン
ポーネントにおいて、更なる構成の簡素化を図ることができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係る人工関節用コンポーネント2を示す断面図である。本実施形態では、人工関節用コンポーネント2が人工股関節(本実施形態における人工関節)において用いられる場合を例にとって説明する。図7乃至図9は、人工関節用コンポーネント2が人工股関節において用いられた状態を示す断面図であって、大腿骨100及び骨盤101の断面の一部とともに示している。
【0050】
図6乃至図9に示すように、人工関節用コンポーネント2は、人工股関節において用いられ、カップ状に形成されるとともに股関節における一方の骨である骨盤101に対して設置される。そして、人工関節用コンポーネント2は、股関節における他方の骨である大腿骨100の骨頭100aの表面を置換するように配置される表面置換型コンポーネント102が摺動するように配置される。尚、本実施形態では、人工関節用コンポーネント2と表面置換型コンポーネント102とによって人工股関節が構成されている。
【0051】
図6に示すように、人工関節用コンポーネント2は、カップ状の外側の形状が同じに形成されるとともに、カップ状の内側の内面形状が異なるように形成される複数のコンポーネント(2a、2b、2c)を構成可能に設けられている。そして、複数のコンポーネント(2a、2b、2c)は、図7乃至図9に示すように、いずれかが選択して用いられる。
【0052】
この人工関節用コンポーネント2では、複数のコンポーネント(2a、2b、2c)において、第1実施形態の取付面(11a、11b、11c)と同様の形状に形成される取付面15と、第1実施形態の各摺動面(12a、12b、12c)と同様の形状に形成される各摺動面(16a、16b、16c)とが設けられている。但し、各コンポーネント(2a、2b、2c)のそれぞれが、第1コンポーネント部材13と第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)とが組み合わされることで形成されている点において異なっている。尚、以下の説明においては、骨(100、101)及び表面置換型コンポーネント102については、第1実施形態と同様に構成されるため、図面において同一の符号を付すことで説明を省略する。また、複数のコンポーネント(2a、2b、2c)については、第1実施形態と同様の形状に形成される取付面15及び摺動面(16a、16b、16c)に関しては適宜第1実施形態の説明を参照することで説明を省略し、第1実施形態とは異なる構成について説明する。
【0053】
複数のコンポーネント(2a、2b、2c)のそれぞれは、第1コンポーネント部材13と第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)とを有し、第1コンポーネント部材13と第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)とが組み合わされることで形成される。尚、コンポーネント2aは第1コンポーネント部材13及び第2コンポーネント部材14aが組み合わされることで形成され、コンポーネント2bは第1コンポーネント部材13及び第2コンポーネント部材14bが組合されることで形成され、コンポーネント2cは第1コンポーネント部材13及び第2コンポーネント部材14cが組み合わされることで形成される。
【0054】
第1コンポーネント部材13は、カップ状に形成されて一方の骨である骨盤101に対して固定される部材として設けられ、複数のコンポーネント(2a、2b、2c)において共通して用いられる1つの部材として設けられている。尚、図6では、各コンポーネント(2a、2b、2c)においてそれぞれ第1コンポーネント部材13を図示しているが、人工関節用コンポーネント2においては、第1コンポーネント部材13は、1つのみ設
けられている。この第1コンポーネント部材13は、金属材料で形成されており、例えば、生体埋植用に医療機器としての認可承認を得たチタン合金、コバルトクロム合金、ステンレス鋼などの金属材料により形成されている。
【0055】
また、第1コンポーネント部材13には、第1実施形態の各取付面(11a、11b、11c)と同じ形状に形成され、骨盤101の寛骨臼101aに対して固定して取り付けられる取付面15が設けられている。そして、取付面15には、骨盤101の寛骨臼101aに対する固定性能を向上させるための表面処理が施されている。例えば、アパタイトコーティング処理や、溶射処理、粗面化処理、等の骨盤101に対する固定性能を向上させるための表面処理が施されている。
【0056】
各コンポーネント(2a、2b、2c)における各第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)は、第1コンポーネント部材13とは別体のカップ状に形成されるとともに、第1コンポーネント部材13の内側に対して固定される部材として設けられている。そして、各第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)は、セラミックス材料で形成されている。このため、第1コンポーネント部材13と第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)とは、種類の異なる材料で形成されていることになる。尚、各第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)は、第1コンポーネント部材13の内側に対して、球面同士での嵌合により固定されるように構成されている。
【0057】
また、各第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)には、第1実施形態の各摺動面(12a、12b、12c)と同じ形状に形成され、表面置換型コンポーネント102の球状外面102cが摺動する摺動面(16a、16b、16c)が設けられている。各コンポーネント(2a、2b、2c)におけるカップ状の内側の内面形状となるこの摺動面(16a、16b、16c)の形状は、半径寸法が同じ球面の一部を形成するように設けられている。そして、各コンポーネント(2a、2b、2c)における各摺動面(16a、16b、16c)としての各球面の径方向における中心位置は、第1実施形態の各摺動面(12a、12b、12c)と同様に、同一直線上に沿って配置されて互いにずれた位置に位置するように設定されている。このため、人工関節用コンポーネント2においても、第1実施形態と同様に、各コンポーネント(2a、2b、2c)における各摺動面(16a、16b、16c)の頂点の位置での深さが異なるように設定されている。尚、各摺動面(16a、16b、16c)には、鏡面加工等の平滑化処理が施されている。
【0058】
図7は、第1コンポーネント部材13に第2コンポーネント部材14aを組み合わせたコンポーネント2aが選択されて人工股関節が構成された場合を示している。また、図8は、第1コンポーネント部材13に第2コンポーネント部材14bを組み合わせたコンポーネント2bが選択されて人工股関節が構成された場合を示している。また、図9は、第1コンポーネント部材13に第2コンポーネント部材14cを組み合わせたコンポーネント2cが選択されて人工股関節が構成された場合を示している。前述のように、各コンポーネント(2a、2b、2c)において、各摺動面(16a、16b、16c)の頂点の位置での深さが異なっている。このため、人工関節用コンポーネント2では、いずれかのコンポーネント(2a、2b、2c)が適宜選択されることで、人工関節用コンポーネント2に対する表面置換型コンポーネント102の位置が調整可能なように構成されている。
【0059】
本実施形態によると、表面置換型コンポーネント102が摺動するカップ状の人工関節用コンポーネント2が、外形が同一で内面形状が異なる複数のコンポーネント(2a、2b、2c)として設けられ、人工関節置換術の際には、これらの複数のコンポーネント(2a、2b、2c)のいずれかが選択して用いられる。そして、複数のコンポーネント(2a、2b、2c)のそれぞれの内面形状が、同一半径の球面の一部を成すように構成さ
れる。これにより、複数のコンポーネント(2a、2b、2c)のいずれの内面形状においても、表面置換型コンポーネント102が摺動する摺動面(16a、16b、16c)である球面の半径が変わることがないため、表面置換型コンポーネント102の円滑な摺動動作を確保することができる。
【0060】
また、本実施形態では、更に、複数のコンポーネント(2a、2b、2c)のそれぞれにおいて、各摺動面(16a、16b、16c)として設けられた各内面形状の球面の径方向の中心位置が互いにずれた位置に設定される。このため、複数のコンポーネント(2a、2b、2c)のうちから患者の状況に応じた適切なコンポーネント(2a、2b、2c)を選択して設置することで、人工関節用コンポーネント2に対する表面置換型コンポーネント102の位置を人工関節置換術を行う術者が所望する位置に設定することができる。よって、人工関節用コンポーネント2を用いることにより、人体の左右での骨長差(脚長差)を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることが可能な人工股関節を実現することができる。
【0061】
また、人工関節用コンポーネント2を用いる場合、摺動する相手側の表面置換型コンポーネントとして、特許文献3に開示されたような骨頭に嵌合して取り付けるためのスカート部が設けられた表面置換型コンポーネントを用いる必要がない。即ち、骨頭表面を置換するように取り付けられる表面置換型コンポーネントとして、骨への取り付け箇所の端部において応力集中を発生させ易い構造の表面置換型コンポーネントを用いる必要がなく、通常よく用いられる形態の表面置換型コンポーネント102のような形態のものを用いることができる。よって、人工関節用コンポーネント2を用いることで、表面置換型コンポーネント102の取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工股関節を実現することができる。
【0062】
従って、本実施形態によると、人体の左右での骨長差(脚長差)を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることができ、表面置換型コンポーネント102の取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工股関節を実現することができる人工関節用コンポーネント2を提供することができる。
【0063】
また、人工関節用コンポーネント2によると、複数のコンポーネント(2a、2b、2c)のそれぞれが、第1コンポーネント部材13と第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)とが組み合わされることで形成される。このため、第1コンポーネント部材13と第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)との組み合わせ形態を種々設定することができる。これにより、一方の骨である骨盤101に固定される第1コンポーネント部材13と、表面置換型コンポーネント102が摺動する第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)とのそれぞれにおいて、所望される特性が付与された人工関節用コンポーネント2の組み合わせを容易に実現することができる。
【0064】
また、人工関節用コンポーネント2によると、第1コンポーネント部材13が複数のコンポーネント(2a、2b、2c)において共通する1つの部材として設けられ、内面形状が異なる第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)がそれぞれ組み合わされることで、複数のコンポーネント(2a、2b、2c)がそれぞれ構成されることになる。このため、第1コンポーネント部材13及び第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)が組み合わされて構成される人工関節用コンポーネント2において、部材点数の増大を第1コンポーネント部材13の共通化により抑制でき、構成の簡素化を図ることができる。
【0065】
また、人工関節用コンポーネント2によると、第1コンポーネント部材13及び第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)が種類の異なる材料で形成される。このた
め、一方の骨である骨盤101に固定される第1コンポーネント部材13と、表面置換型コンポーネント102が摺動する第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)とのそれぞれにおいて、所望される特性を付与できる材料の種類にそれぞれ独立して設定することができる。
【0066】
また、人工関節用コンポーネント2によると、一方の骨である骨盤101に固定される第1コンポーネント部材13が金属材料で形成されるため、第1コンポーネント部13において骨盤101の寛骨臼101aに固定される外面に対して、寛骨臼101aに対する固定性能を向上させるための表面処理を容易に施すことができる。そして、表面置換型コンポーネント102が摺動する第2コンポーネント部材(14a、14b、14c)がセラミックス材料で形成されるため、内面形状の球面に鏡面加工等の平滑化処理を施すだけで、表面置換型コンポーネント102の円滑な摺動動作を確保する構造をより容易に実現することができる。
【0067】
(第3実施形態)
図10は、本発明の第3実施形態に係る人工関節用コンポーネント3を示す断面図である。本実施形態では、人工関節用コンポーネント3が人工肩関節(本実施形態における人工関節)において用いられる場合を例にとって説明する。図11乃至図13は、人工関節用コンポーネント1が人工肩関節において用いられた状態を示す断面図であって、上腕骨103及び肩甲骨104の断面の一部とともに示している。
【0068】
図10乃至図13に示すように、人工関節用コンポーネント3は、人工肩関節において用いられ、カップ状に形成されるとともに肩関節における一方の骨である肩甲骨104に対して設置される。そして、人工関節用コンポーネント3は、肩関節における他方の骨である上腕骨103の骨頭103aの表面を置換するように配置される表面置換型コンポーネント105が摺動するように配置される。尚、本実施形態では、人工関節用コンポーネント3と表面置換型コンポーネント105とによって人工肩関節が構成されている。
【0069】
ここで、表面置換型コンポーネント105について説明する。表面置換型コンポーネント105は、図11乃至図13に示すように、骨頭表面部105aと軸状部105bとを備えて構成されている。この表面置換型コンポーネント105は、生体埋植用に医療機器としての認可承認を得たチタン合金、コバルトクロム合金、ステンレス鋼などの金属材料により形成されている。
【0070】
そして、表面置換型コンポーネント105の骨頭表面部105aは、肩甲骨104に設置される人工関節用コンポーネント3に対して摺動する球状外面105cが形成された半球状の形状に形成されている。この骨頭表面部105aは、上腕骨103の骨頭103aの表面を覆うように配置される。また、表面置換型コンポーネント105の軸状部105bは、骨頭表面部105aにおける球状外面105cの頭頂部分の反対側に対応する位置から突出して延びるように形成されている。そして、この軸状部105bは、上腕骨103の骨頭103aに埋植される。
【0071】
本実施形態に係る人工関節用コンポーネント3は、図10に示すように、カップ状の外側の形状が同じに形成されるとともに、カップ状の内側の内面形状が異なるように形成される複数のコンポーネント(3a、3b、3c)を備えて構成されている。そして、複数のコンポーネント(3a、3b、3c)は、図11乃至図13に示すように、いずれかが選択して用いられる。また、各コンポーネント(3a、3b、3c)は、例えば、生体埋植用に医療機器としての認可承認を得たチタン合金、コバルトクロム合金、ステンレス鋼などの金属材料により形成されている。
【0072】
複数のコンポーネント(3a、3b、3c)は、それぞれ半球殻状に形成されたカップ状の部材として設けられているとともに、それぞれ一体に形成された部材として設けられている。各コンポーネント(3a、3b、3c)には、肩甲骨104の寛骨臼104aに対して固定して取り付けられる取付面(17a、17b、17c)が設けられている。そして、各コンポーネント(3a、3b、3c)において、カップ状の外側の形状であるこの取付面(17a、17b、17c)の形状は、半径寸法が同じ半球面として形成されている。即ち、コンポーネント3aの取付面17aと、コンポーネント3bの取付面17bと、コンポーネント3cの取付面17cとは、同一半径の半球面を成す同じ形状に形成されている。尚、各取付面(17a、17b、17c)には、肩甲骨104の寛骨臼104aに対する固定性能を向上させるための表面処理が施されている。例えば、アパタイトコーティング処理や、溶射処理、粗面化処理、等の肩甲骨104に対する固定性能を向上させるための表面処理が施されている。
【0073】
また、複数のコンポーネント(3a、3b、3c)のそれぞれには、表面置換型コンポーネント105の球状外面105cが摺動する摺動面(18a、18b、18c)が設けられている。そして、各コンポーネント(3a、3b、3c)において、カップ状の内側の内面形状であるこの摺動面(18a、18b、18c)の形状は、第1実施形態の摺動面(12a、12b、12c)と同様に、半径寸法が同じ球面の一部を形成するように設けられている。
【0074】
また、各コンポーネント(3a、3b、3c)における各摺動面(18a、18b、18c)としての各球面の径方向における中心位置は、第1実施形態の各摺動面(12a、12b、12c)と同様に、同一直線上に沿って配置されて互いにずれた位置に位置するように設定されている。このため、人工関節用コンポーネント3においても、第1実施形態と同様に、各コンポーネント(3a、3b、3c)における各摺動面(18a、18b、18c)の頂点の位置での深さが異なるように設定されている。尚、各摺動面(18a、18b、18c)には、鏡面加工等の平滑化処理が施されている。
【0075】
図11はコンポーネント3aが選択されて人工肩関節が構成された場合を示しており、図12はコンポーネント3bが選択されて人工肩関節が構成された場合を示しており、図13はコンポーネント3cが選択されて人工肩関節が構成された場合を示している。前述のように、各コンポーネント(3a、3b、3c)において、各摺動面(18a、18b、18c)の頂点の位置での深さが異なっている。このため、人工関節用コンポーネント3では、いずれかのコンポーネント(3a、3b、3c)が適宜選択されることで、人工関節用コンポーネント3に対する表面置換型コンポーネント105の位置が調整可能なように構成されている。
【0076】
本実施形態によると、表面置換型コンポーネント105が摺動するカップ状の人工関節用コンポーネント3が、外形が同一で内面形状が異なる複数のコンポーネント(3a、3b、3c)として設けられ、人工関節置換術の際には、これらの複数のコンポーネント(3a、3b、3c)のいずれかが選択して用いられる。そして、複数のコンポーネント(3a、3b、3c)のそれぞれの内面形状が、同一半径の球面の一部を成すように構成される。これにより、複数のコンポーネント(3a、3b、3c)のいずれの内面形状においても、表面置換型コンポーネント105が摺動する摺動面(18a、18b、18c)である球面の半径が変わることないため、表面置換型コンポーネント105の円滑な摺動動作を確保することができる。
【0077】
また、本実施形態では、更に、複数のコンポーネント(3a、3b、3c)のそれぞれにおいて、各摺動面(18a、18b、18c)として設けられた各内面形状の球面の径方向の中心位置が互いにずれた位置に設定される。このため、複数のコンポーネント(3
a、3b、3c)のうちから患者の状況に応じた適切なコンポーネント(3a、3b、3c)を選択して設置することで、人工関節用コンポーネント3に対する表面置換型コンポーネント105の位置を人工関節置換術を行う術者が所望する位置に設定することができる。よって、人工関節用コンポーネント3を用いることにより、人体の左右での骨長差を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることが可能な人工肩関節を実現することができる。
【0078】
また、人工関節用コンポーネント3を用いる場合、摺動する相手側の表面置換型コンポーネントとして、特許文献3に開示されたような骨頭に嵌合して取り付けるためのスカート部が設けられた表面置換型コンポーネントを用いる必要がない。即ち、骨頭表面を置換するように取り付けられる表面置換型コンポーネントとして、骨への取り付け箇所の端部において応力集中を発生させ易い構造の表面置換型コンポーネントを用いる必要がなく、通常よく用いられる形態の表面置換型コンポーネント105のような形態のものを用いることができる。よって、人工関節用コンポーネント3を用いることで、表面置換型コンポーネント105の取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工肩関節を実現することができる。
【0079】
従って、本実施形態によると、人体の左右での骨長差を補正するとともに適当な筋肉の緊張を得ることができ、表面置換型コンポーネント105の取り付け箇所の端部の近傍での骨折の発生を抑制する人工肩関節を実現することができる人工関節用コンポーネント3を提供することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0081】
(1)第1乃至第3実施形態では、複数のコンポーネントとして3つのコンポーネントを構成可能な人工関節用コンポーネントを例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。即ち、複数のコンポーネントとして2つのコンポーネント又は4つ以上のコンポーネントを構成可能な人工関節用コンポーネントを実施してもよい。
【0082】
(2)第1乃至第3実施形態では、複数のコンポーネントのそれぞれにおける内面形状の球面の径方向の中心位置が、同一直線上に沿って配置されて互いにずれた位置に位置するように設定された人工関節用コンポーネントを例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。複数のコンポーネントのそれぞれにおける上記球面の中心位置が、同一直線上に沿った位置とは異なる位置で、互いにずれた位置に位置するように設定された人工関節用コンポーネントを実施してもよい。
【0083】
(3)第1及び第3実施形態では、複数のコンポーネントのそれぞれが、金属材料で形成されているものを例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、複数のコンポーネントのそれぞれが、セラミックス材料や樹脂材料で形成されている人工関節用コンポーネントを実施してもよい。
【0084】
(4)第1及び第3実施形態における複数のコンポーネントにおいては、金属材料で形成されて、摺動面も金属面として形成されている形態を例示したが、この通りでなくてもよい。複数のコンポーネントのそれぞれが、金属材料で形成されるとともに表面置換型コンポーネントが摺動する内側にセラミックスコーティングの層が設けられ、摺動面がセラミックスの面として形成されている人工関節用コンポーネントを実施してもよい。
【0085】
上記の変形例に係る人工関節用コンポーネントによると、複数のコンポーネントがそれ
ぞれ金属材料で一体形成された部材として設けられ、構成の簡素化が図られる。そして、金属材料で形成されるため、骨に固定される外面に対して、骨に対する固定性能を向上させるための表面処理を容易に施すことができる。そして、表面置換型コンポーネントが摺動する内側にセラミックスコーティングの層が設けられるため、表面置換型コンポーネントの円滑な摺動動作を確保する構造をより容易に実現することができる。
【0086】
(5)第2実施形態では、第1コンポーネント部材と第2コンポーネント部材とが球面同士の嵌合によって固定される形態を例示したが、この通りでなくてもよい。例えば、第1コンポーネント部材の内側と、第1コンポーネント部材の内側に固定される第2コンポーネント部材の外側とに、互いに係合し合う係合部がそれぞれ設けられている人工関節用コンポーネントを実施してもよい。この変形例によると、第1コンポーネント部材及び第2コンポーネント部材が、互いに係合する係合部を介して固定されることになる。このため、第1コンポーネント部材の内側及び第2コンポーネント部材の外側に係合部を設けるという簡素な構成によって、第1コンポーネント部材と第2コンポーネント部材との結合強度を容易に向上させることができる。
【0087】
図14及び図15、図16及び図17、図18及び図19は、それぞれ、上記の変形例に係る人工関節用コンポーネントにおける複数のコンポーネントのうちの1つのコンポーネントを示す断面図である。図14乃至図19に示す変形例については、第2実施形態における複数のコンポーネント(2a、2b、2c)のうちの1つのコンポーネント2bに対応する変形例のコンポーネントの断面をそれぞれ図示している。以下、第2実施形態のコンポーネント2bにおける第1コンポーネント部材13及び第2コンポーネント14bに係合部が形成された状態を示す断面図(図14乃至図19)を参照しつつ、上記の変形例について説明する。尚、図14、図16、及び図18は、第1コンポーネント部材13と第2コンポーネント部材14bとが組み合わされた状態を示している。一方、図15、図17、及び図19は、第1コンポーネント部材13の断面図(図15(a)、図17(a)、図19(a))と、第2コンポーネント部材14bの断面図(図15(b)、図17(b)、図19(b))とを示している。
【0088】
図14及び図15に示す変形例においては、第1コンポーネント部材13の内側における縁部分の近傍において、周方向に沿って延びるように形成された溝状の係合部19が形成されている。一方、第2コンポーネント部材14bの外側における縁部分の近傍においては、周方向に沿って延びるように形成された突起状の係合部20が形成されている。これらの係合部19と係合部20とは互いに係合し合うように構成されている。これにより、第1コンポーネント部材13及び第2コンポーネント部材14bが、互いに係合する係合部(19、20)を介して強固に固定されることになる。
【0089】
図16及び図17に示す変形例においては、第1コンポーネント部材13の内側における縁部分において、周方向に沿って延びるように形成されるとともに、縁側に向かって円錐曲面の一部を成すように広がるテーパ状の斜面としての係合部21が形成されている。一方、第2コンポーネント部材14bの外側における縁部分においては、周方向に沿って延びるように形成されるとともに、縁側に向かって円錐曲面の一部を成すように広がるテーパ状の斜面としての係合部22が形成されている。第2コンポーネント部材14bの縁側に向かう係合部22の勾配は、第1コンポーネント部材13の縁側に向かう係合部21の勾配よりも僅かに緩やかな角度となるように形成されている。このため、係合部21と係合部22とが互いに楔状に係合し合うように構成されている。これにより、第1コンポーネント部材13及び第2コンポーネント部材14bが、互いに係合する係合部(21、22)を介して強固に固定されることになる。
【0090】
図18及び図19に示す変形例においては、第1コンポーネント部材13の内側におけ
る縁部分において、周方向に沿って螺旋状に延びる雌ネジ部分としての係合部23が形成されている。一方、第2コンポーネント部材14bの外側における縁部分においては、周方向に沿って螺旋状に延びる雄ネジ部分としての係合部24が形成されている。これらの係合部23と係合部24とは、螺合により互いに係合し合うように構成されている。これにより、第1コンポーネント部材13及び第2コンポーネント部材14bが、互いに係合する係合部(23、24)を介して強固に固定されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、人工関節において用いられ、カップ状に形成されるとともに関節における一方の骨に対して設置され、関節における他方の骨の骨頭表面を置換するように配置される表面置換型コンポーネントが摺動するように配置される人工関節用コンポーネントとして、広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0092】
1 人工関節用コンポーネント
1a、1b、1c 複数のコンポーネント
12a、12b、12c 摺動面(内面形状における球面)
100 大腿骨(他方の骨)
101 骨盤(一方の骨)
102 表面置換型コンポーネント
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工関節において用いられ、カップ状に形成されるとともに関節における一方の骨に対して設置され、関節における他方の骨の骨頭表面を置換するように配置される表面置換型コンポーネントが摺動するように配置される人工関節用コンポーネントであって、
カップ状の外側の形状が同じに形成されるとともに、カップ状の内側の内面形状が異なるように形成される複数のコンポーネントを構成可能に設けられ、
前記複数のコンポーネントは、いずれかが選択して用いられるとともに、それぞれの前記内面形状が、半径寸法が同じ球面の一部を形成するように設けられ、
前記複数のコンポーネントのそれぞれにおける前記球面の径方向における中心位置は、互いにずれた位置に位置するように設定されていることを特徴とする、人工関節用コンポーネント。
【請求項2】
請求項1に記載の人工関節用コンポーネントであって、
前記複数のコンポーネントのそれぞれにおける前記球面の中心位置が、同一直線上に沿って配置されて互いにずれた位置に位置するように設定されていることを特徴とする、人工関節用コンポーネント。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の人工関節用コンポーネントであって、
前記複数のコンポーネントは、それぞれ一体に形成された部材として設けられていることを特徴とする、人工関節用コンポーネント。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の人工関節用コンポーネントであって、
前記複数のコンポーネントのそれぞれは、カップ状に形成されて前記一方の骨に対して固定される第1コンポーネント部材と、前記第1コンポーネント部材とは別体のカップ状に形成されるとともに前記第1コンポーネント部材の内側に固定される第2コンポーネント部材と、を有し、前記第1コンポーネント部材と前記第2コンポーネント部材とが組み合わされることで形成されることを特徴とする、人工関節用コンポーネント。
【請求項5】
請求項4に記載の人工関節用コンポーネントであって、
前記第1コンポーネント部材は、前記複数のコンポーネントにおいて共通して用いられる1つの部材として設けられていることを特徴とする、人工関節用コンポーネント。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の人工関節用コンポーネントであって、
前記第1コンポーネント部材と前記第2コンポーネント部材とが、種類の異なる材料で形成されていることを特徴とする、人工関節用コンポーネント。
【請求項7】
請求項6に記載の人工関節用コンポーネントであって、
前記第1コンポーネント部材は金属材料で形成され、前記第2コンポーネント部材はセラミックス材料で形成されていることを特徴とする、人工関節用コンポーネント。
【請求項8】
請求項4乃至請求項7のいずれか1項に記載の人工関節用コンポーネントであって、
前記第1コンポーネント部材の内側と、前記第1コンポーネント部材の内側に固定される前記第2コンポーネント部材の外側とには、互いに係合し合う係合部がそれぞれ設けられていることを特徴とする、人工関節用コンポーネント。
【請求項9】
請求項3に記載の人工関節用コンポーネントであって、
前記複数のコンポーネントのそれぞれは、金属材料で形成されるとともに前記表面置換型コンポーネントが摺動する内側にセラミックスコーティングの層が設けられていることを特徴とする、人工関節用コンポーネント。
【請求項1】
人工関節において用いられ、カップ状に形成されるとともに関節における一方の骨に対して設置され、関節における他方の骨の骨頭表面を置換するように配置される表面置換型コンポーネントが摺動するように配置される人工関節用コンポーネントであって、
カップ状の外側の形状が同じに形成されるとともに、カップ状の内側の内面形状が異なるように形成される複数のコンポーネントを構成可能に設けられ、
前記複数のコンポーネントは、いずれかが選択して用いられるとともに、それぞれの前記内面形状が、半径寸法が同じ球面の一部を形成するように設けられ、
前記複数のコンポーネントのそれぞれにおける前記球面の径方向における中心位置は、互いにずれた位置に位置するように設定されていることを特徴とする、人工関節用コンポーネント。
【請求項2】
請求項1に記載の人工関節用コンポーネントであって、
前記複数のコンポーネントのそれぞれにおける前記球面の中心位置が、同一直線上に沿って配置されて互いにずれた位置に位置するように設定されていることを特徴とする、人工関節用コンポーネント。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の人工関節用コンポーネントであって、
前記複数のコンポーネントは、それぞれ一体に形成された部材として設けられていることを特徴とする、人工関節用コンポーネント。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の人工関節用コンポーネントであって、
前記複数のコンポーネントのそれぞれは、カップ状に形成されて前記一方の骨に対して固定される第1コンポーネント部材と、前記第1コンポーネント部材とは別体のカップ状に形成されるとともに前記第1コンポーネント部材の内側に固定される第2コンポーネント部材と、を有し、前記第1コンポーネント部材と前記第2コンポーネント部材とが組み合わされることで形成されることを特徴とする、人工関節用コンポーネント。
【請求項5】
請求項4に記載の人工関節用コンポーネントであって、
前記第1コンポーネント部材は、前記複数のコンポーネントにおいて共通して用いられる1つの部材として設けられていることを特徴とする、人工関節用コンポーネント。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の人工関節用コンポーネントであって、
前記第1コンポーネント部材と前記第2コンポーネント部材とが、種類の異なる材料で形成されていることを特徴とする、人工関節用コンポーネント。
【請求項7】
請求項6に記載の人工関節用コンポーネントであって、
前記第1コンポーネント部材は金属材料で形成され、前記第2コンポーネント部材はセラミックス材料で形成されていることを特徴とする、人工関節用コンポーネント。
【請求項8】
請求項4乃至請求項7のいずれか1項に記載の人工関節用コンポーネントであって、
前記第1コンポーネント部材の内側と、前記第1コンポーネント部材の内側に固定される前記第2コンポーネント部材の外側とには、互いに係合し合う係合部がそれぞれ設けられていることを特徴とする、人工関節用コンポーネント。
【請求項9】
請求項3に記載の人工関節用コンポーネントであって、
前記複数のコンポーネントのそれぞれは、金属材料で形成されるとともに前記表面置換型コンポーネントが摺動する内側にセラミックスコーティングの層が設けられていることを特徴とする、人工関節用コンポーネント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−147702(P2011−147702A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12828(P2010−12828)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(504418084)日本メディカルマテリアル株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(504418084)日本メディカルマテリアル株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
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