説明

人形玩具

【課題】環境温度の変化と太陽光の照射の何れにも反応して皮膚の色調が変化する興趣性を高めた人形玩具を提供する。
【解決手段】胴部2、頭部3、左右の腕部4,4及び左右の脚部5,5で構成され、各部材が塩化ビニル樹脂にサーモクロミック材料及びフォトクロミック材料を配合してなる成形材料を用いて成形され、環境温度の変化及び太陽光の照射により色調が変化する人形玩具1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人形玩具に関し、更に詳しくは、環境温度や太陽光により皮膚の色調が変化する人形玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人や動物を模した人形玩具は種々存在する。中でも、環境温度の変化により玩具の色調が変化する人形玩具があり、湯水に浸けてその色調変化を楽しむことができる。これは、玩具表面に感温変色(サーモクロミック)塗料を塗布したり、玩具を成形する樹脂材料にマイクロカプセル化したサーモクロミック材料を混合することにより実現される。例えば、ピンク色の着色顔料とイエロー色のサーモクロミック材料を混合してなる成形材料により成形される人形玩具が提案されている。この玩具は、低温域でサーモクロミック材料の色調を表現させ、高温域で着色顔料の色調を表現させるため、環境温度の変化によって体温が上昇すると皮膚が赤みを帯びた色に変化し、常温域まで体温が下降すると元の色に戻ることを繰り返すことができるものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、太陽光の照射により玩具の色調が変化する人形玩具がある。これは、紫外線により色が変わるフォトクロミック材料を使用するもので、このフォトクロミック材料を混入させた着色合成樹脂で成形した変色玩具が提案されている。この玩具は、太陽光(紫外線)が当たると変色し、太陽光の当たらない場所に放置しておくと元の色に戻ることを繰り返すことができるものである(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−180849号公報
【特許文献2】実開平6−57398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように環境温度により色調が変化する人形玩具又は太陽光の照射により色調が変化する人形玩具はそれぞれ提案されているが、その色調の変化を楽しむ場所がそれぞれ限定されるため、興趣性に欠けることがあった。
【0005】
そこで本発明は、環境温度の変化と太陽光の照射の何れにも反応して皮膚の色調が変化する興趣性を高めた人形玩具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、胴部、頭部、左右の腕部及び左右の脚部で構成され、各部材が塩化ビニル樹脂にサーモクロミック材料及びフォトクロミック材料を配合してなる成形材料を用いて成形され、環境温度の変化及び太陽光の照射により色調が変化することを特徴とする人形玩具に関する。
【0007】
本発明の人形玩具は、頭部、左右の腕部及び左右の脚部が胴部に対して回動可能に取り付けられていることが好ましく、各部材は中空に形成されることが好ましい。
【0008】
また、前記成形材料中、前記サーモクロミック材料が1〜5重量%配合され、且つ、前記フォトクロミック材料が5〜10重量%配合されることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の人形玩具は、成形材料にサーモクロミック材料とフォトクロミック材料を混入させて成形しているため、環境温度の変化と太陽光の照射の何れに対しても反応して皮膚の色調を変化させることができる。また、人形玩具の頭部、左右の腕部及び左右の脚部が胴部に対して回動可能であるため、その姿勢を自由に変えて遊ぶことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の人形玩具は、胴部、頭部、左右の腕部及び左右の脚部で構成され、各部材は塩化ビニル樹脂にサーモクロミック材料及びフォトクロミック材料を配合してなる成形材料を用いて成形され、且つ、頭部や腕部、脚部を胴部に対して回動可能とされているものである。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の人形玩具の実施形態について図面に基づき、詳細に説明する。尚、本発明は下記実施形態になんら制限されるものではない。
図1は、本発明に係る人形玩具の外観を示す図であり、図2は、本発明に係る人形玩具の座位状態を示す図である。図3は、本発明に係る人形玩具に衣装を着せた状態の外観を示す図である。
【0012】
本発明の人形玩具1は、図1に示したように、胴部2、頭部3、左右の腕部4,4及び左右の脚部5,5で構成されている。本実施形態の人形玩具1は、女児を模して形成されているが、架空のキャラクターやロボット、動物など様々な形を模して形成することも可能である。
【0013】
胴部2は樹脂製であり、中空に形成されている。また、胴部2の上部中央に頭部取付用の筒状継手(図示しない)を一体に設けるとともに、胴部2の左右側部に、腕部4,4を取り付けるための腕部取付孔(図示しない)を、胴部2の下方斜め左右側部に、脚部5,5を取り付けるための脚部取付孔(図示しない)をそれぞれ形成している。
【0014】
頭部3は、胴部2と同じく樹脂製であり、中空に形成されている。また、その基部には胴部2に設けられた筒状継手と略同径の胴部取付孔(図示しない)が形成されている。頭部3には頭髪が植毛され、表皮側に目、鼻、唇、眉、耳などの顔面構成要素が形成されている。本実施形態の人形玩具1の目は、頭部3の所望位置に略楕円形状の貫通孔を形成し、人形の俯仰に応じて開閉する眼球機構を内側に備えて構成されている。
【0015】
左右の腕部4,4及び左右の脚部5,5は、胴部2及び頭部3と同じく樹脂製であり、中空に形成されている。また、腕部4,4の基部には胴部2に形成された腕部取付孔と略同径の筒状継手(図示しない)が、脚部5,5の基部には胴部2に形成された脚部取付孔と略同径の筒状継手(図示しない)がそれぞれ一体に設けられている。
【0016】
前記頭部3の胴部取付孔に前記胴部2の筒状継手を嵌合し、該胴部2の腕部取付穴孔に前記腕部4,4を、胴部2の脚部取付孔に前記脚部5,5の筒状継手を夫々嵌合して、各部材を連結する。頭部3、腕部4,4及び脚部5,5は、胴部2に対してそれぞれ回動可能であり、図2に示したように、人形玩具1を座位状態とすることもできる。
【0017】
前記胴部2、頭部3、左右の腕部4,4及び左右の脚部5,5は、着色塩化ビニル樹脂にサーモクロミック材料及びフォトクロミック材料を配合して成る成形材料を所望の形状に成形して作成される。
【0018】
サーモクロミック材料は熱による可逆的な消発色を示すものであり、第1の温度で所定の色を発色し、第2の温度で透明になる性質を有する。サーモクロミック材料は、電子供与性呈色性色素、電子受容性物質、及びこの両者の反応媒体となる溶媒の3成分からなる感温変色性顔料をマイクロカプセル化したものを利用することができる。本発明において、第1の温度を室温(1〜30℃,日本薬局方規定による)とし、第2の温度を35℃以上の高温域としている。本実施形態において、人間の肌の色を表現するために、イエロー成分のサーモクロミック材料をピンク色の着色顔料で着色した塩化ビニル樹脂に配合する。サーモクロミック材料は成形材料中、1.0〜5.0重量%、好ましくは2.0〜5.0重量%配合する。1.0重量%より配合量が少ないと、色調の変化が視認しにくく、5.0重量%より多く配合してもそれ以上の効果が望めないため好ましくない。本発明において使用するサーモクロミック材料としては、人間の肌の色を表現するために、例えば、クロミカラー New Fast Yellow 35M(パウダー状,無色化温度36℃)、クロミカラーNew Fast Yellow 37M(パウダー状,無色化温度41℃)(いずれも商品名,株式会社松井色素化学工業所製)等が使用できる。
【0019】
フォトクロミック材料は紫外線の照射によって可逆的な消発色を示すものである。フォトクロミック材料は、スピロピラン系材料、スピロオキサジン系材料、アゾベンゼン系材料等の有機フォトクロミック材料をマイクロカプセル化したものを利用することができる。フォトクロミック材料は成形材料中、5.0〜10.0重量%、好ましくは7.0〜10.0重量%配合する。5.0重量%より配合量が少ないと、色調の変化が視認しにくく、10.0重量%より多く配合してもそれ以上の効果が望めないため好ましくない。本発明において使用するフォトクロミック材料としては、例えば、フォトピア Yellow 2W(パウダー状)とフォトピア Purple 3W(パウダー状)(いずれも商品名,株式会社松井色素化学工業所製)を混合したもの等が使用できる。
【0020】
また、塩化ビニル樹脂をピンク色に着色する着色顔料は、赤色の有機顔料に白色顔料としての酸化チタンを混ぜて作成される。この赤色の有機顔料と酸化チタンを任意の割合で混ぜ合わせ、所望のピンク色を作成する。このピンク色の着色顔料は、人形玩具1が高温域下に放置され、サーモクロミック材料が無色化した後に現れる。着色顔料は成形材料中、15重量%以下で配合する。15重量%よりも多く配合するとサーモクロミック材料及びフォトクロミック材料による皮膚の色調の変化が視認しにくくなるため好ましくない。
【0021】
その他、塩化ポリビニル樹脂の柔軟性付与のために可塑剤を配合したり、成形加工工程における塩化ビニル樹脂の熱分解防止のための安定剤、着色剤や樹脂の分散性を高めるための分散剤、その他紫外線防止剤や酸化防止剤、増粘剤等を本発明を逸脱しない範囲で配合することができる。
【0022】
上記各材料を混錬して成形材料を作成し、スラッシュ成形法等を用いて中空状に成形する。各部材は、上述した如く筒状継手を取付孔に嵌合して互いを連結し、人形玩具1とする。
【0023】
本発明の人形玩具1は、湯水等の高温液体に浸けた場合やドライヤー等で温風をあてた場合、成形材料中のサーモクロミック材料が無色に変色して着色顔料の色の色味が表れる。サーモクロミック材料の色味が黄色であり、着色顔料の色味がピンク色であるため、例えば、風呂場等で湯水に浸けると肌の色がピンク色に変化し、湯上りで体が火照った状態を表現することができる。また、室温に放置しておくと元の肌色に戻るため、風呂場での遊びが楽しくなる。
【0024】
そして、太陽光を照射した場合はフォトクロミック材料が変色するため、肌の色が浅黒く変化する。従って、太陽光が当たる屋外や窓際では人形玩具1は日焼けをしたような状態を表現することができる。また、室温に放置しておくと元の肌色に戻るため、これを繰り返すことができる。
【0025】
また、図3に示したように、衣装6を着けた状態で太陽光に当てると、露出した部分のみが変色するため、日焼けの跡をつけて遊ぶことができる。また、衣装を水着としたり、ハートや星等種々の形状を模ったシールなどを肌に貼付して太陽光に照射すると、水着のあとがついたり、シールの模様を残して日焼けをさせることができる。
【0026】
本実施形態の人形玩具1は、頭部3、左右の腕部4,4及び左右の脚部5,5が胴部2に対して回動可能であるため、図2に示したように、頭部3、腕部4,4及び脚部5,5を回動させて人形玩具1に任意の姿勢をとらせることができる。
【0027】
また、本実施形態の人形玩具1は、中空状に成形されているため、弾力性があり、人形玩具1を抱いたり、触れたときに、柔らかい感触を楽しむことができる。また、胴部2、頭部3、腕部4,4及び脚部5,5の内部に綿などの繊維材を充填することもでき、充填量を調整して各部材の柔軟性を調節することができる。
【0028】
本発明の人形玩具1は上記した実施形態に限定されることは無く、人形の形態、皮膚の色等を任意に変更することができる。例えば、サーモクロミック材料やフォトクロミック材料の色番を変えて漁師人形等の色黒の人形とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る人形玩具の外観を示す図である。
【図2】本発明に係る人形玩具の座位状態を示す図である。
【図3】本発明に係る人形玩具に衣装を着せた状態の外観を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 人形玩具
2 胴部
3 頭部
4 腕部
5 脚部
6 衣装

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部、頭部、左右の腕部及び左右の脚部で構成され、
各部材が塩化ビニル樹脂にサーモクロミック材料及びフォトクロミック材料を配合してなる成形材料を用いて成形され、
環境温度の変化及び太陽光の照射により色調が変化することを特徴とする人形玩具。
【請求項2】
前記頭部、左右の腕部及び左右の脚部が前記胴部に対して回動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の人形玩具。
【請求項3】
前記胴部、頭部、左右の腕部及び左右の脚部が中空に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の人形玩具。
【請求項4】
前記成形材料中、前記サーモクロミック材料が1〜5重量%配合され、且つ、前記フォトクロミック材料が5〜10重量%配合されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の人形玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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