説明

人物撮影装置、人物撮影装置の制御方法

【課題】被写体となる人物が容易に笑顔を作り出せるような案内をして、その案内に従った発話によって作られたより自然な笑顔をタイムリーに撮影する人物撮影装置を提供すること。
【解決手段】複数の撮影モードを有する人物撮影装置であって、被写体となる人物に対し、指定する2種類の単語を指定する順序で発声するように案内する案内手段と、前記人物が発声する単語を認識する音声認識手段と、前記2種類の単語のうち、最初の順番の単語が発声されたことを認識したときに、前記複数の撮影モードの一つを選択する選択手段と
を有することを特徴とする人物撮影装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人物の顔を撮影する人物撮影装置、及び人物撮影装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人物撮影装置としては、証明写真撮影システム、観光スポット、あるいは娯楽施設での記念写真撮影装置が知られている。また、最近では、友人と一緒に撮った顔写真シールプリントを得るための、もしくは友人との交換を目的とした顔写真シールプリントを作成するためのシールプリント作成装置も多く見られる。
【0003】
証明写真撮影装置は、履歴書、学校や各種資格試験の受験申請書、あるいは、パスポートの交付を申請する際の交付申請書、等々に添付するための必要な写真を、短時間の中に自分で用意できる便利な装置として、多くの場所に設置され、利用されている。これらの証明写真撮影システムにより、自分の顔を自分で撮影することにより作成したプリントは、認証や照合のために用いられる証明写真としての必須要件、例えば、写真の大きさ、顔の位置、目つぶりがない等の要件を満たしているものの、自分の気に入った顔を撮影した写真ではないこともある。
【0004】
上述したような人物撮影装置で、気に入った表情の、特に笑顔の顔写真を撮りたいという要求もあるが、被写体となる人物は、撮影の瞬間に丁度合うように笑顔を作り出すということは容易なことではない。
【0005】
このような状況を改善するために、被写体である人物が、いろいろな表情をして、リモート式のシャッター操作手段を操作することにより、良い表情の自分自身を撮影するというような案もある(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
しかしながら、本来、表情を作る表情筋の多くは不随意な動きが多く、どの様に動かせば良いのか分からず、たとえ笑顔であったにしても不自然な表情になり易い。従って、良い表情を作るという意識と、シャッターチャンスを的確に捕まえようという意識の両方を同時に働かせることは相当に困難である。
【特許文献1】特開2000−147641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述したような状況に鑑みてなされたもので、その目的は、被写体となる人物が容易に笑顔を作り出せるような案内をして、その案内に従った発話によって作られたより自然な笑顔をタイムリーに撮影する人物撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の発明の実現により達成される。
1.複数の撮影モードを有する人物撮影装置であって、
被写体となる人物に対し、指定する2種類の単語を指定する順序で発声するように案内する案内手段と、
前記人物が発声する単語を認識する音声認識手段と、
前記2種類の単語のうち、最初の順番の単語が発声されたことを認識したときに、前記複数の撮影モードの一つを選択する選択手段と
を有することを特徴とする人物撮影装置。
2.2番目に発声された単語の第1音節を前記音声認識手段により認識した後に、予め設定したタイミングで撮影を行うことを特徴とする1項に記載の人物撮影装置。
3.2番目に発声された単語の第1音節を前記音声認識手段により認識した後に、予め設定した周期で複数回の撮影を行うことを特徴とする1項に記載の人物撮影装置。
4.被写体となる人物に対し、指定する2種類の単語を指定する順序で発声するように案内して、
前記2種類の単語のうち、最初の順番の単語が発声されたことを認識したときに、撮影の準備を開始し、2番目の単語の第1音節が認識されたときに、予め設定したタイミングで撮影を行うことを特徴とする人物撮影装置の制御方法。
5.被写体となる人物に対し、指定する2種類の単語を指定する順序で発声するように案内して、
前記2種類の単語のうち、最初の順番の単語が発声されたことを認識したときに、撮影の準備を開始し、2番目の単語の第1音節が認識されたときに、予め設定した周期で複数回の撮影を行うことを特徴とする人物撮影装置の制御方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、誰にでも自然な笑顔の顔写真を容易に得ることができる人物撮影装置が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図を基に説明する。
【0011】
図1は、人物撮影装置Aの外観図である。
【0012】
図2は、人物撮影装置Aの構成を説明する概念図である。
【0013】
図3は、人物撮影装置Aの正面パネルの概念図である。
【0014】
人物撮影システムAは、ボックスBと、その内部に備えられた、マイクロホン10、スピーカ20、画像表示手段30、指示操作手段40、タッチパネル45、撮影手段50、照明手段55、プリント手段60、記憶媒体出力手段70、料金支払い手段80、通信手段TT、椅子D、制御手段C等から構成されている。
【0015】
ボックスBは、被写体である人物Pを外界から遮断して、撮影時におけるプライバシーを保護すると共に、外光の影響を抑えて、撮影に際しての照明条件を内部の照明手段55により制御できるようにするという役割もある。また、人物撮影システムAが屋外に設置される場合には、屋外ハウスとして風雨に対応する役割も持つ。
【0016】
撮影手段50は、デジタル式カメラで、制御手段Cから送られる撮影開始信号により人物Pの顔をハーフミラー31を介して撮影する。撮影により得た顔画像情報は、制御手段Cに送られ、メモリMの所定のファイルに格納される。
【0017】
照明手段55は、複数の照明ランプとストロボからなり、制御手段Cの指示信号により、照明の強さや点灯のタイミング動作が個別に制御される。
【0018】
画像表示手段30は、CRT、液晶、もしくはプラズマによる表示装置であり、制御手段Cから送られた画像や文字を表示する。本実施の形態においては、画像表示手段5にて表示された画像は、ハーフミラー31と、タッチパネル45を介してボックスB内の人物Pの目に映り、人物にはタッチパネル45が画像表示手段30の画像表示面のように見える。
【0019】
本実施の形態における指示操作手段40はタッチパネル45と、その下方に配置された押しボタンから構成される。人物Pは、画像表示手段30により表示された画像、および文字を見ながらタッチパネル45の表面に触れることにより、指示や選択の操作ができる。
【0020】
料金支払い手段80は、人物Pが投入したコイン、もしくは挿入した紙幣の金額を確認した後、料金受領確認の信号を制御手段Cに送るもので、自動販売機で多用されている公知のものである。
【0021】
通信手段TTは、人物撮影システムAの管理と、画像転送のために用いられるものである。管理の方法としては、制御手段Cから送られた稼働状況をはじめ各種データを管理センタに送信すると共に、管理センタから送られたバージョンアップのためのソフトを受け取り、制御手段Cに転送する方法がとられている。また、画像転送機能は、撮影された画像を、通信路であるネットワークを介して転送するために使用される。
【0022】
プリント手段60は、選択されてメモリMにストアされた顔画像をハードコピーとして出力する手段であり、銀塩方式、熱溶融転写方式、インクジェット方式等適宜な方式による画像出力手段が採用される。
【0023】
記憶媒体出力手段70は、フロッピー(登録商標)ディスク、CD、DVD、MO等の一般に使用されている記憶媒体に、画像情報を出力するものであり、採用する記憶媒体に適合する手段が選択される。なお、場合によっては、複数種類の記憶媒体出力手段を設けて、複数種類の記憶媒体を選択できるようにしても良い。
【0024】
図4は、人物撮影装置Aの制御関係を示すブロック図である。
【0025】
制御手段CはCPU、メモリ、画像処理のための演算ユニット、駆動回路等を有するコンピュータシステムであり、他の制御手段とは、入出力I/Oポート、シリアルあるいはパラレルのインターフェイスを介して情報の交換を行っている。なお、本図では本実施の形態の説明に直接関係しないブロックの記載が省略されている。
【0026】
図5は、この人物撮影装置により、被撮影者である人物Pが顔写真を撮影する時の操作と、それに対応して行われる処理を示すフローチャートである。
【0027】
人物Pが料金支払い手段80に料金を投入すると(ステップS1:Y)、プログラムである案内手段100が実行され、音響手段であるスピーカ20から出力される音声と、画像表示手段30による表示とにより撮影前の案内が行われる(ステップS2)。
【0028】
前記案内の中には、撮影目的が選択できることを説明する案内が含まれている。ここでいう撮影目的とは、例えば、証明写真を作成するための撮影、あるいは笑顔写真を作成するための撮影というものである。
【0029】
案内手段の実行により行われる音声と表示とは、例えば、「証明写真を撮る場合には、では、撮影を開始しますという合図の音声の後に時間と共に変化する表示マークの点滅が停止した時に撮影が行われます。もし、笑顔写真を撮る場合には、撮影を開始しますという合図の音声があってから、前記表示マークが変化している内に、「はい、チーズ」と言って下さい、カメラが最適なタイミングで撮影を行います。」という様なものである。なお、本例では、笑顔を作り出すための最も一般的な単語として知られる「チーズ」を採用しているが、笑顔を作り出す単語であれば何でも良い。また、「はい」についても、発声しやすく、且つ音声認識し易い短い単語であれば何でも良い。
【0030】
人物Pが指示操作手段40を操作することによって、撮影開始OKの指示が出されると(ステップS3:Y)、タイマーTM1が一旦リセットされた後、計時を開始する(ステップS4)。
【0031】
前記タイマーTM1が、予め設定した時間T1内に、第1の単語である「はい」の発声が、マイクロホン10を介して制御手段Cに入力され、入力された音声波形は加工されて音声情報となる。入力された音声が、公知の技術手段である音声認識手段200による認識処理により、「はい」であると認識された時には(ステップS5:N)、笑顔写真を撮影する撮影モード2による撮影を行い(ステップS7)、また、第1の単語である「はい」の発声が、予め設定した時間T1内に認識されなかった場合には、証明写真を撮影する撮影モード1による撮影を行う(ステップS6)。撮影が終わると、撮影モード1又は2により撮影した顔画像を画像表示手段30に出力して撮影モードの選択ルーチンから出る。
【0032】
なお、上述したステップS5の処理を行うプログラムを、選択手段と称す。
【0033】
また、上記説明は撮影モードが2つの場合を基に行ったが、「はい」という単語以外に他の単語(例えば「いち」、「に」等)を設け、この単語を認識した場合には、予め設定した所定の撮影モードを選択するようにしてもよい。即ち、撮影モードの数は必要に応じ作られるもので、制限はない。
【0034】
また、もし、画像表示手段30に表示された顔画像が、被写体となった人物Pにとって満足できないものであれば、指示操作手段40により「NO」の入力をして、再度ステップS2に戻り撮影を行うような処理ステップを追加してもよい。
【0035】
表示された顔画像は、当該の出力プログラムが実行されることによりプリント出力手段60が制御され、指定されたフォーマットのプリントとして出力される。また、前記顔画像のプリントに対応する画像情報は、指示操作手段40からの指示情報に応じて記憶媒体出力手段70が制御され、指定する記憶媒体に出力される。
【0036】
図6は、図5で示すフローチャート中の撮影モード1(証明写真撮影)の流れを示すフローチャートである。
【0037】
タイマーTM1の計時値が、予め設定された値であるT1に到達しても第1の単語である「はい」の発声が音声認識手段200により認識されなかった場合、証明写真を撮影する撮影モード1に入る(図5、ステップS5:N)。
【0038】
タイマーTM1の計時の進行と共に、音、表示されたマークの点滅の周期が短くなり、タイマーTM1の値が、予め設定したT2に到達すると(ステップS61:Y)、撮影が行われる(ステップS62)。なお、このようなステップS61〜S62で示す撮影処理は、多くの人物撮影装置にて行われる公知の技術である。
【0039】
撮影モード1での撮影が終わると、図5のステップS8に進む。
【0040】
図7は、図5で示すフローチャート中の撮影モード2(笑顔写真)の流れを示すフローチャートである。
【0041】
タイマーTM1の計時値が、予め設定された値であるT1に到達する前に第1の単語である「はい」の発声が音声認識手段200により認識されると、笑顔写真を撮影する撮影モード2に入る(図5、ステップS5:Y)。
【0042】
次に、第2の単語である「チーズ」の最初の音節である「チ」の発声が認識されると(ステップS71:Y)、第2のタイマーTM2が一旦リセットされた後、計時を開始する。
【0043】
タイマーTM2の計時値が予め設定された値T2に到達すると(ステップS73:Y)、撮影が行われる(ステップS74)。
【0044】
なお、前記予め設定された値T2は、「チーズ」の「チ」が発声されてから、人物Pに最も好ましい笑顔が生まれるまでのタイミングをとる時間として設定されるもので、実験により決められるものである。
【0045】
また、撮影は1回に限定されるもではなく、短い周期(例えば、1/5秒毎)に、複数回の撮影を行うようにしても良い。この場合、撮影の開始は前記「チ」の発声を認識した直後から撮影を開始しても良い。なお、このように撮影した複数の顔画像は、画像表示手段5に表示して、これらの顔画像の中から最も良いと思われるものを被写体となった人物Pが選択できるようにすることが好ましい。
【0046】
撮影モード2での撮影が終わると、図5のステップS8に進む。
【0047】
以上説明したように、証明写真の撮影以外に、シャッターチャンスが的確な笑顔の撮影ができる人物撮影装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】人物撮影装置の外観図である。
【図2】人物撮影装置の構成を説明する概念図である。
【図3】人物撮影装置の正面パネルの概念図である。
【図4】人物撮影装置の制御関係を示すブロック図である。
【図5】顔写真を撮影する時の操作と、それに対応して行われる処理を示すフローチャートである。
【図6】証明写真処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】笑顔写真処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
10 マイクロホン
20 スピーカ
30 画像表示手段
40 指示操作手段
50 撮影手段
55 照明手段
60 プリント手段
70 記憶媒体出力手段
80 料金支払い手段
91 タッチパネル
A 人物撮影装置
B ボックス
C 制御手段
P 人物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の撮影モードを有する人物撮影装置であって、
被写体となる人物に対し、指定する2種類の単語を指定する順序で発声するように案内する案内手段と、
前記人物が発声する単語を認識する音声認識手段と、
前記2種類の単語のうち、最初の順番の単語が発声されたことを認識したときに、前記複数の撮影モードの一つを選択する選択手段と
を有することを特徴とする人物撮影装置。
【請求項2】
2番目に発声された単語の第1音節を前記音声認識手段により認識した後に、予め設定したタイミングで撮影を行うことを特徴とする請求項1に記載の人物撮影装置。
【請求項3】
2番目に発声された単語の第1音節を前記音声認識手段により認識した後に、予め設定した周期で複数回の撮影を行うことを特徴とする請求項1に記載の人物撮影装置。
【請求項4】
被写体となる人物に対し、指定する2種類の単語を指定する順序で発声するように案内して、
前記2種類の単語のうち、最初の順番の単語が発声されたことを認識したときに、撮影の準備を開始し、2番目の単語の第1音節が認識されたときに、予め設定したタイミングで撮影を行うことを特徴とする人物撮影装置の制御方法。
【請求項5】
被写体となる人物に対し、指定する2種類の単語を指定する順序で発声するように案内して、
前記2種類の単語のうち、最初の順番の単語が発声されたことを認識したときに、撮影の準備を開始し、2番目の単語の第1音節が認識されたときに、予め設定した周期で複数回の撮影を行うことを特徴とする人物撮影装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−26604(P2008−26604A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199186(P2006−199186)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】