説明

人通口形成用型枠および人通口の形成方法

【課題】人通口が形成される内側基礎梁の厚さが220mmの場合や140mmの場合であっても1種類の人通口形成用型枠を用いて人通口を形成することのできる人通口の形成方法を提供する。
【解決手段】複数の枠体接合用ねじ8により内側基礎梁の厚さ方向に分離可能に接合された二つの枠体5,6と、これらの枠体5,6のうち一方の枠体5を内側基礎梁のコンクリート打設空間を形成する基礎形成型枠の上端部から吊り下げて支持する枠体吊下げ具7とを備え、枠体5が140mmmの奥行き寸法で枠状に形成されていると共に、枠体6が80mmmの奥行き寸法で枠状に形成されている人通口形成用型枠を用いて内側基礎梁に人通口を形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニット式建物の建物ユニット、特に方形状に形成された床フレームの四隅に柱を立設して形成された直方体形状の建物ユニットが設置される布基礎の内側基礎梁に人通口を形成するときに使用される人通口形成用型枠と人通口の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
方形状に形成された床フレームの四隅に柱を立設して形成された直方体形状の建物ユニットを複数組み合せて構成されるユニット式建物は、通常、建物ユニットの床フレームと布基礎との間に例えば12mmの換気用隙間が形成されるように、建物ユニットを布基礎上に設置して構築される。このため、例えば特許文献1に開示された布基礎の構築方法のように、布基礎の外側基礎梁や内側基礎梁に換気口を形成する必要はないが、床下配管などを点検するための人通口を布基礎の内側基礎梁に形成する必要がある。そこで、従来においては、例えば図5に示されるような人通口形成用型枠1を用いて布基礎の内側基礎梁2に人通口3を形成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−27043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、人通口が形成される布基礎の内側基礎梁は、厚さが220mmのものと140mmのものとがあるため、従来においては、奥行きが140mmの人通口形成用型枠と奥行きが220mmの人通口形成用型枠とを用意しなければならないという問題があった。
また、内側基礎梁の厚さが220mmの場合には、内側基礎梁のコンクリート打設空間に打設されたコンクリートから人通口形成用型枠を引き抜くのに多くの時間を要するという問題点もあった。
【0005】
本発明は上述した問題点に着目してなされたものであって、ユニット式建物の建物ユニットが設置される布基礎の内側基礎梁に人通口を形成するときに好適な人通口形成用型枠を提供することを目的とするものである。また、本発明の他の目的は、人通口が形成される内側基礎梁の厚さが220mmの場合であっても内側基礎梁を形成するコンクリートから人通口形成用型枠を取り外すことのできる人通口の形成方法を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、人通口が形成される内側基礎梁の厚さが220mmの場合や140mmの場合であっても1種類の人通口形成用型枠を用いて人通口を形成することのできる人通口の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る人通口形成用型枠は、ユニット式建物の建物ユニットが設置される布基礎の内側基礎梁に人通口を形成するときに用いられる人通口形成用型枠であって、前記人通口に対応する大きさで枠状に形成された二つの枠体と、該二つの枠体を前記内側基礎梁の厚さ方向に分離可能に接合する複数の枠体接合用ねじと、前記二つの枠体のうち一方の枠体を前記内側基礎梁のコンクリート打設空間を形成する基礎形成型枠の上端部から吊下げる枠体吊下げ具と、を備えたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係る人通口形成用型枠において、前記二つの枠体のうち一方の枠体は前記枠体接合用ねじと遊嵌する複数のネジ挿通孔と複数の位置合せ孔とを有し、前記二つの枠体のうち他方の枠体は前記枠体接合用ねじと螺合する複数の枠体接合用ナットを有すると共に、前記位置合せ孔と嵌合して前記ネジ挿通孔の中心と前記枠体接合用ナットの中心とを位置合せする複数の位置合せピンを有することが好ましい。
【0008】
また、前記枠体吊下げ具は、前記二つの枠体のうち一方の枠体から上方に延設された左右一対の枠体吊下げ部材と、該枠体吊下げ部材を介して前記一方の枠体を前記基礎形成型枠の上端部に掛止する掛止部を有する水平部材と、該水平部材の左右方向の両端部に固設された一対の水平部材固定用ナットと、前記枠体吊下げ部材の上端部に形成された縦長のスリットを挿通して前記水平部材固定用ナットに螺合する一対の水平部材固定用ねじとを有することが好ましい。
【0009】
さらに、前記二つの枠体のうち一方の枠体は140mmの奥行き寸法で枠状に形成され、他方の枠体は80mmの奥行き寸法で枠状に形成されていることが好ましい。
本発明に係る人通口の形成方法は、ユニット式建物の建物ユニットが設置される布基礎の内側基礎梁に人通口を形成する方法であって、請求項1〜4のいずれか一項に記載の人通口形成用型枠を用いて、前記内側基礎梁に人通口を形成するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ユニット式建物の建物ユニットが設置される布基礎の内側基礎梁に人通口を形成するときに奥行きが140mmの人通口形成用型枠と奥行きが220mmの人通口形成用型枠とを用意する必要がないので、人通口が形成される内側基礎梁の厚さが220mmの場合や140mmの場合であっても1種類の人通口形成用型枠を用いて人通口を形成することができる。
また、人通口を形成するための枠体を内側基礎梁の厚さ方向に分離可能な二つの枠体で形成したことで、内側基礎梁の厚さが220mmの場合でも内側基礎梁を形成するコンクリートから人通口形成用型枠を容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る人通口形成用型枠を示す図である。
【図2】図1に示される人通口形成用型枠の一部を示す図である。
【図3】厚さが220mmの内側基礎梁に人通口を形成する場合における本発明に係る人通口の形成方法を示す図である。
【図4】厚さが180mmの内側基礎梁に人通口を形成する場合における本発明に係る人通口の形成方法を示す図である。
【図5】内側基礎梁に人通口を形成する場合の従来方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明に係る人通口の形成方法と人通口形成用型枠について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る人通口形成用型枠を示す図、図2は図1に示される人通口形成用型枠の一部を示す図であり、図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る人通口形成用型枠1は、枠体5,6と枠体吊下げ具7を備えている。
【0013】
枠体5,6はユニット式建物の建物ユニットが設置される布基礎の内側基礎梁に人通口を形成すためのものであり、これらの枠体5,6のうち枠体5は例えば奥行き140mmの寸法で枠状に形成され、枠体6は例えば奥行き80mmの寸法で枠状に形成されている。
また、枠体5,6は内側基礎梁の厚さ方向に沿う断面が内側基礎梁の外側から内側に向かって絞られた台形形状となっている。さらに、枠体5,6は複数(例えば二つ)の枠体接合用ねじ8により内側基礎梁の厚さ方向に接合されており、枠体5の幅方向を補強する補強部材9には、枠体接合用ねじ8と遊嵌する複数のネジ挿通孔10が形成され、枠体6の幅方向を補強する補強部材11には、枠体接合用ねじ8と螺合する複数の枠体接合用ナット12が固設されている。
【0014】
また、枠体5,6は四隅に位置合せ部材13をそれぞれ有しており、枠体5の四隅に設けられた位置合せ部材13には位置合せ孔14が形成され、枠体6の四隅に設けられた位置合せ部材13には位置合せ孔14と嵌合してネジ挿通孔10の中心と枠体接合用ナット12の中心とを位置合せする位置合せピン15が突設されている
枠体吊下げ具7は内側基礎梁のコンクリート打設空間を形成する基礎形成型枠の上端部から枠体5を吊下げるものであって、枠体5から上方に延設された左右一対の枠体吊下げ部材16,16と、これらの枠体吊下げ部材16を介して枠体5を基礎形成型枠の上端部に掛止する掛止部17aを有する水平部材17とを有している。
【0015】
また、枠体吊下げ具7は水平部材17の左右方向の両端部に固設された一対の水平部材固定用ナット18,18(図2参照)と、枠体吊下げ部材16の各上端部に形成された縦長のスリット19を挿通して水平部材固定用ナット18に螺合する一対の水平部材固定用ねじ20,20とを有し、これらの水平部材固定用ねじ20を緩めることで水平部材17は上下方向に移動可能となっている。
【0016】
図3は厚さが220mmの内側基礎梁に人通口を形成する場合の本発明の人通口形成方法を示す図であり、この図3に示されるように、厚さが220mmの内側基礎梁に人通口を形成する場合には、図1に示した枠体5と枠体6とを枠体接合用ねじ8により接合する。次に、枠体5及び枠体6を枠体吊下げ具7により基礎形成型枠21の上端部から吊り下げた後、基礎形成型枠21により形成されたコンクリート打設空間にコンクリート22を打設する。そして、コンクリート打設空間に打設されたコンクリート22が固化したならば、基礎形成型枠21を分解した後、枠体5と枠体6を内側基礎梁2の厚さ方向に分離すると、奥行き220mmの人通口3が内側基礎梁2に形成される。
【0017】
図4は厚さが180mmの内側基礎梁に人通口を形成する場合の本発明の人通口形成方法を示す図であり、この図4に示されるように、厚さが180mmの内側基礎梁に人通口を形成する場合には、図1に示した枠体5のみを枠体吊下げ具7により基礎形成型枠21の上端部から吊り下げた後、基礎形成型枠21により形成されたコンクリート打設空間にコンクリート22を打設する。そして、コンクリート打設空間に打設されたコンクリート22が固化したならば、基礎形成型枠21を分解した後、枠体5をコンクリート22から引き抜くと、奥行き180mmの人通口3が内側基礎梁2に形成される。
【0018】
したがって、図1に示した人通口形成用型枠1を用いて内側基礎梁に人通口を形成することで、ユニット式建物の建物ユニットが設置される布基礎の内側基礎梁に人通口を形成するときに奥行きが140mmの人通口形成用型枠と奥行きが220mmの人通口形成用型枠とを用意する必要がないので、人通口が形成される内側基礎梁の厚さが220mmの場合や140mmの場合であっても1種類の人通口形成用型枠を用いて人通口を形成することができる。
【0019】
また、人通口を形成するための枠体を内側基礎梁の厚さ方向に分離可能な二つの枠体5,6で形成したことで、内側基礎梁の厚さが220mmの場合でも内側基礎梁を形成するコンクリートから人通口形成用型枠を容易に取り外すことができる。
さらに、二つの枠体5,6を複数の枠体接合用ねじ8により接合するときに枠体接合用ねじ8と嵌合するネジ挿通孔10の中心と枠体接合用ナット12の中心とを枠体5,6の四隅に設けた位置合せ孔14と位置合せピン15によって一致させることができるため、枠体5と枠体6との間に位置ずれが生じることを防止することができる。
【0020】
また、枠体5を基礎形成型枠21の上端部から吊下げる枠体吊下げ具として、枠体5から上方に延設された左右一対の枠体吊下げ部材16,16と、これらの枠体吊下げ部材16を介して枠体5を基礎形成型枠の上端部に掛止する掛止部17aを有する水平部材17と、この水平部材17の左右方向の両端部に固設された一対の水平部材固定用ナット18,18と、枠体吊下げ部材16の各上端部に形成された縦長のスリット19を挿通して水平部材固定用ナット18に螺合する一対の水平部材固定用ねじ20,20とを有するものを用いたことで、水平部材固定用ねじ19を緩めることで水平部材17が上下方向に移動可能となるので、枠体5の吊下げ位置を任意に調整することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 人通口形成用型枠
2 内側基礎梁
3 人通口
5,6 枠体
7 枠体吊下げ具
8 枠体接合用ねじ
9,11 補強部材
10 ネジ挿通孔
12 枠体接合用ナット
13 位置合せ部材
14 位置合せ孔
15 位置合せピン
16 枠体吊り下げ部材
17 水平部材
17a 掛止部
18 水平部材固定用ナット
19 スリット
20 水平部材固定用ねじ
21 基礎形成型枠
22 コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニット式建物の建物ユニットが設置される布基礎の内側基礎梁に人通口を形成するときに用いられる人通口形成用型枠であって、
前記人通口に対応する大きさで枠状に形成された二つの枠体と、
該二つの枠体を前記内側基礎梁の厚さ方向に接合する複数の枠体接合用ねじと、
前記二つの枠体のうち一方の枠体を前記内側基礎梁のコンクリート打設空間を形成する基礎形成型枠の上端部から吊下げる枠体吊下げ具と、
を備えたことを特徴とする人通口形成用型枠。
【請求項2】
前記二つの枠体のうち一方の枠体は前記枠体接合用ねじと遊嵌する複数のネジ挿通孔と複数の位置合せ孔とを有し、前記二つの枠体のうち他方の枠体は前記枠体接合用ねじと螺合する複数の枠体接合用ナットを有すると共に、前記位置合せ孔と嵌合して前記ネジ挿通孔の中心と前記枠体接合用ナットの中心とを位置合せする複数の位置合せピンを有することを特徴とする請求項1記載の人通口形成用型枠。
【請求項3】
前記枠体吊下げ具は、前記二つの枠体のうち一方の枠体から上方に延設された左右一対の枠体吊下げ部材と、該枠体吊下げ部材を介して前記一方の枠体を前記基礎形成型枠の上端部に掛止する掛止部を有する水平部材と、該水平部材の左右方向の両端部に固設された一対の水平部材固定用ナットと、前記枠体吊下げ部材の上端部に形成された縦長のスリットを挿通して前記水平部材固定用ナットに螺合する一対の水平部材固定用ねじとを有することを特徴とする請求項1または2記載の人通口形成用型枠。
【請求項4】
前記二つの枠体のうち一方の枠体が140mmの奥行き寸法で枠状に形成され、かつ他方の枠体が80mmの奥行き寸法で枠状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の人通口形成用型枠。
【請求項5】
ユニット式建物の建物ユニットが設置される布基礎の内側基礎梁に人通口を形成する方法であって、請求項1〜4のいずれか一項に記載の人通口形成用型枠を用いて、前記内側基礎梁に人通口を形成するようにしたことを特徴とする人通口の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−168782(P2010−168782A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11398(P2009−11398)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【出願人】(000128038)株式会社エヌ・エス・ピー (33)
【Fターム(参考)】