仕口用ダンパー
【課題】この発明は、ダンパーに設けられる孔状又は凹状の剛性調整部の大きさを変更するだけで、木造軸組構造体に付加される外部応力に応じてダンパー自体の剛性を調整することができる仕口用ダンパーの提供を目的とする。
【解決手段】仕口用ダンパー1を構成するダンパー2の第1固定部2A及び第2固定部2Bに跨って固定された取付け板3の板部3A,3Bを、木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53の柱51及び梁52に固定する。これにより、ダンパー2自体の剛性を超える地震荷重や風荷重等の外部応力が木造軸組構造体50に付加された際、ダンパー2に設けられた剛性調整孔2Cが変形して、木造軸組構造体50に付加される小さな外部応力を吸収又は緩和する。
【解決手段】仕口用ダンパー1を構成するダンパー2の第1固定部2A及び第2固定部2Bに跨って固定された取付け板3の板部3A,3Bを、木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53の柱51及び梁52に固定する。これにより、ダンパー2自体の剛性を超える地震荷重や風荷重等の外部応力が木造軸組構造体50に付加された際、ダンパー2に設けられた剛性調整孔2Cが変形して、木造軸組構造体50に付加される小さな外部応力を吸収又は緩和する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、木造軸組工法により構築された木造建物等の木造軸組構造体における柱などの垂直部材と、梁、桁、大引、土台などの水平部材とからなる仕口部に取り付けられ、該仕口部の補強及び建物等の構造体の耐震性の向上を図る際に用いられる仕口用ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
前記木造軸組工法で構築された木造軸組構造体の仕口部に取り付けられるダンパーとしては、例えば柱に固定する柱固定部を有する第1硬質板と、横架材に固定する横架材固定部を有する第2硬質板と、第1硬質板と第2硬質板の間に接着積層されたシート状の粘弾性材層とからなる特許文献1の粘弾性ダンパーがある。
【0003】
しかし、一つの粘弾性ダンパーで吸収又は緩和される外部応力には限界があるので、例えば大きな外部応力が付加される部分に取り付けられる剛性が高いダンパーと、小さな外部応力が付加される部分に取り付けられる剛性が低いダンパー等の仕口用ダンパーを、仕口部に付加される外部応力の大きさに応じて複数製作しなければならず、仕口用ダンパーを製作するのに手間及び時間が掛かるだけでなく、製作費が高くなる。また、粘弾性材層を、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブチレンゴム、SBR、NBR、EPDM、ポリウレタン、シリコンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム等の中から選択した単一種又は複数種の組成物で成形しなければならず、外部応力を吸収又は緩和するのに適した剛性に調製することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−247269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、ダンパーに設けられる孔部や凹部の剛性調整部の大きさを変更するだけで、木造軸組構造体に付加される外部応力に応じてダンパー自体の剛性を調整することができる仕口用ダンパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、木造軸組構造体の仕口部を構成する一対の部材からなる角隅面に取り付けられる仕口用ダンパーであって、前記角隅面と対応する形状に形成された合成樹脂製のダンパーと、前記ダンパーの一方の部材と対向する部分に形成され、該一方の部材に対し固定手段で固定される第1固定部と、前記ダンパーの他方の部材と対向する部分に形成され、該他方の部材に対し固定手段で固定される第2固定部とを備え、前記ダンパーの前記部材と対向しない部分に、該ダンパーの剛性を低めるための剛性調整部が形成された仕口用ダンパーであることを特徴とする。
【0007】
この発明の態様として、前記剛性調整部は、前記ダンパーの前記部材と対向しない側面に形成され、該ダンパーの厚み方向に貫通する孔部で構成することができる。
【0008】
また、この発明の態様として、前記剛性調整部は、前記ダンパーの前記部材と対向しない側面又は端面に形成される凹部で構成することができる。
【0009】
また、この発明の態様として、前記剛性調整部が、前記第1固定部と第2固定部の一端が直交する交点と、該第1固定部と第2固定部の他端を結ぶ線の中間点を通る基準線上又は該基準線の両側に適宜数配置される。
【0010】
また、この発明の態様として、前記剛性調整部が、前記ダンパーの前記部材と対向しない前記第1固定部の端面側中央部と前記第2固定部の端面側中央部とを結ぶ基準線上に適宜数配置される。
【0011】
また、この発明の態様として、前記第1固定部及び第2固定部の前記部材が押し付けられる面に、該各固定部の外面が覆われる大きさ及び形状に形成され、前記部材に対し前記固定手段で固定される側面から見てL字状の取付け板を取り付けることができる。
【0012】
また、この発明の態様として、前記第1固定部及び第2固定部の前記部材が押し付けられる面に、該固定部の外面が覆われる大きさ及び形状に形成され、前記部材に対し前記固定手段で固定される取付け板を個々に取り付けることができる。
【0013】
また、この発明の態様として、前記第1固定部及び第2固定部の両側部に形成されたフランジ部に、該フランジ部の外面が覆われる大きさ及び形状に形成され、前記部材に対し前記固定手段で固定される取付け板を個々に取り付けることができる。
【0014】
前記ダンパーは、例えば熱可塑性エラストマー、ポリエステル、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリル、ポリカーボネイト、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂、或いは、メラミン、フェノール等の熱硬化性樹脂から選択した単一種又は複数種の合成樹脂(プラスチック)で構成することができる。
【0015】
また、剛性調整部は、例えば丸形状、楕円形、四角形、五角形、六角形、八角形等の形状に形成された孔部(実施例の剛性調整孔)や凹部(実施例の剛性調整凹部)で構成することができる。
【0016】
また、取付け板は、例えばSUS鋼板、ステンレス、鉄、ニッケル、銅、アルミニウム等の金属類、或いは、杉や檜の間伐材、単板積層材、集成材等の木類、或いは、繊維強化プラスチック、ポリプロピレン、ポリエチレン等のプラスチック類で構成することができる。
【0017】
また、固定手段は、例えばビス、ネジ、釘、ボルト、接着剤、粘着剤、両面粘着テープ等で構成することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、仕口用ダンパーのダンパーに設けられる孔部や凹部の剛性調整部の大きさを変更するだけで、木造軸組構造体に付加される外部応力に応じてダンパー自体の剛性を調整することができる。これにより、木造軸組構造体の大きさや階層数等に応じた減衰機能の仕口用ダンパーに調整することができる。また、地震荷重や風荷重等の外部応力を吸収して、木造軸組構造体の変形や倒壊を抑制することができる。また、リブフレーム等の木造軸組構造体の耐震補強に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施例の仕口用ダンパーの取り付け状態を示す斜視図。
【図2】仕口用ダンパーの取り付け状態を示す図3のG−G線矢視断面図。
【図3】図1の仕口用ダンパーの取り付け状態を示す縦断側面図。
【図4】第2実施例の仕口用ダンパーの取り付け状態を示す斜視図。
【図5】仕口用ダンパーの取り付け状態を示す図6のH−H線矢視断面図。
【図6】図4の仕口用ダンパーの取り付け状態を示す縦断側面図。
【図7】第3実施例の仕口用ダンパーの取り付け状態を示す斜視図。
【図8】仕口用ダンパーの取り付け状態を示す図9のI−I線矢視断面図。
【図9】図7の仕口用ダンパーの取り付け状態を示す縦断側面図。
【図10】仕口用ダンパーの他の例を示す斜視図。
【図11】仕口用ダンパーのその他の例を示す斜視図。
【図12】仕口用ダンパーのその他の例を示す側面図。
【図13】仕口用ダンパーのその他の例を示す斜視図。
【図14】図13の剛性調整孔の孔形状を示す縦断正面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0020】
図1は、本発明の一実施形態である木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53の補強に用いられる第1実施例の仕口用ダンパー1の取り付け状態を示す斜視図、図2は、仕口用ダンパー1の取り付け状態を示す図3のG−G線矢視断面図、図3は、図1の仕口用ダンパー1の取り付け状態を示す縦断側面図である。
【0021】
第1実施例の仕口用ダンパー1は、側面から見て直角二等辺三角形状に形成された合成樹脂製のダンパー2と、該ダンパー2の直角を成す第1固定部2Aと第2固定部2Bとに跨って装着されるSUS鋼板製の取付け板3と、第1固定部2A及び第2固定部2Bに対し取付け板3を固定するための樹脂固定用のビス4と、木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53の柱51又は梁52に対し取付け板3を固定するための木材固定用のビス5とで構成される。
【0022】
前記ダンパー2は、東洋紡績株式会社製の熱可塑性ポリエステルエラストマー(商品名=ペルプレン)で形成されるとともに、木造軸組構造体50の柱51と梁52が直交して固定される仕口部53の直角を成す内側角隅面と対応して側面から見て直角二等辺三角形状に形成されている。
【0023】
ダンパー2の直角を成す両辺には、柱51又は梁52の一方の部材に固定される第1固定部2Aと、他方の部材に固定される第2固定部2Bとが直交して形成されている。また、第1固定部2A及び第2固定部2Bは、直角を成す両辺の開放側端部から見てT字状の断面形状に形成されている。
【0024】
ダンパー2の柱51又は梁52と対向しない側面部分には、側面から見て丸形状の剛性調整孔2Cが厚み方向に貫通して形成されている。また、剛性調整孔2Cは、ダンパー2の第1固定部2Aと第2固定部2Bの一端が直交する交点P1と、該第1固定部2Aと第2固定部2Bの他端を結ぶ線Rの中間点P2とを通る基準線X1上の中央部に形成されている。また、剛性調整孔2Cの中心が基準線X1上に位置するように形成されている。
【0025】
また、実施例のダンパー2は、25mm〜30mmの厚さに形成され、剛性調整孔2Cは、10mm〜15mmの孔径に形成されているが、木造軸組構造体50に付加される外部応力に応じて、25mm以下又は30mm以上の厚さに変更するか、10mm以下又は15mm以上の孔径に変更してもよい。
【0026】
第1固定部2Aの両側部には、該第1固定部2Aの両側面に沿って一対のフランジ部2Aa,2Aaが形成されている。また、第2固定部2Bの両側部には、該第2固定部2Bの両側面に沿って一対のフランジ部2Ba,2Baが形成されている。
【0027】
また、第1固定部2Aのフランジ部2Aa,2Aaと、第2固定部2Bのフランジ部2Ba,2Baは、第1固定部2Aと第2固定部2Bとに跨って形成され、側面から見てL字状に連続して形成されている。
【0028】
前記取付け板3は、前記仕口部53の直角を成す柱51及び梁52の内側角隅面と対応して側面から見てL字状に形成され、ダンパー2の直角を成す第1固定部2Aと第2固定部2Bの固定面及び両側面が覆われる大きさ及び形状に形成されている。なお、取付け板3を、一対の板部3A,3Bが直交する交点P1を中心として二つに分割してもよい。
【0029】
取付け板3の一端に形成された板部3Aは、第1固定部2Aと対応する横幅で該第1固定部2Aより下方に突出される長さに形成されている。また、取付け板3の他端に形成された板部3Bは、第2固定部2Bと対応する横幅で該第2固定部2Bより前方に突出される長さに形成されている。
【0030】
板部3Aの両側縁部に形成された支持片3Aa,3Aaは、第1固定部2Aに形成されたフランジ部2Aa,2Aaの側面に対し押し当てられる方向及び角度に折り曲げられるとともに、該フランジ部2Aa,2Aaの側面が覆われる大きさ及び形状に形成されている。
【0031】
板部3Bの両側縁部に形成された支持片3Ba,3Baは、第2固定部2Bに形成されたフランジ部2Ba,2Baの側面に対し押し当てられる方向及び角度に折り曲げられるとともに、該フランジ部2Ba,2Baの側面が覆われる大きさ及び形状に形成されている。
【0032】
なお、第1固定部2Aのフランジ部2Aa,2Aaと第2固定部2Bのフランジ部2Ba,2Baを含むダンパー2全体の横幅及び取付け板3の横幅は、木造軸組構造体50の柱51又は梁52の横幅より幅狭に形成されている。
【0033】
先ず、木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53に、前記第1実施例の仕口用ダンパー1を固定する場合、取付け板3を、ダンパー2の直角を成す第1固定部2Aと第2固定部2Bの外面に跨って装着する。
【0034】
この後、径が5mmで、長さが30mmの樹脂固定用のビス4…を、第1固定部2Aに装着された取付け板3の板部3Aと、第2固定部2Bに装着された取付け板3の板部3Bとの中央面に沿って長さ方向に等間隔に隔てて4本打ち込む。
【0035】
さらに、取付け板3の板部3A,3Bに対し厚み方向に貫通されたビス4…を、第1固定部2Aと第2固定部2Bに打ち込むことにより、第1固定部2Aと第2固定部2Bの直角を成す外面に対し取付け板3が固定される。
【0036】
ダンパー2の第1固定部2A及び第2固定部2Bに跨って固定された取付け板3の板部3A,3Bを、木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53の柱51及び梁52に押し付ける。
【0037】
この後、径が5mmで、長さが50mmの木材固定用のビス5…を、第1固定部2Aより突出する取付け板3の突出側端部に対し適宜間隔に隔てて4本打ち込むとともに、取付け板3の板部3Aに対し厚み方向に貫通されたビス5…を、第1固定部2Aが押し付けられた仕口部53の柱51に対し打ち込む。
【0038】
前記と同様に、木材固定用のビス5…を、第2固定部2Bより突出する取付け板3の突出側端部に対し適宜間隔に隔てて4本打ち込むとともに、取付け板3の板部3Bに対し厚み方向に貫通されたビス5…を、第2固定部2Bが押し付けられた仕口部53の梁52に対し打ち込む。これにより、木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53の柱51及び梁52に対し第1実施例の仕口用ダンパー1が固定される。
【0039】
仕口用ダンパー1のダンパー2に大きな孔径の剛性調整孔2Cを設ければ、ダンパー2自体の剛性を低めることができる。つまり、ダンパー2自体の剛性を超える地震荷重や風荷重等の小さな外部応力が木造軸組構造体50に付加された際、大径の剛性調整孔2Cが変形して、木造軸組構造体50に付加される小さな外部応力が吸収又は緩和される。
【0040】
また、ダンパー2に小さな孔径の剛性調整孔2Cを設ければ、ダンパー2自体の剛性を高めることができる。つまり、ダンパー2自体の剛性を超える外部応力が木造軸組構造体50に付加された際、小径の剛性調整孔2Cが変形して、木造軸組構造体50に付加される大きな外部応力が吸収又は緩和される。
【0041】
以上のように、ダンパー2に設けられる剛性調整孔2Cの孔径を変更するだけで、木造軸組構造体50の仕口部53に付加される外部応力に応じてダンパー自体の剛性を適宜強さに調整することができる。これにより、木造軸組構造体50の大きさや階層数等に応じた減衰機能の仕口用ダンパー1に調整することができる。また、地震荷重や風荷重等の外部応力を吸収して、木造軸組構造体50の変形や倒壊を抑制することができる。また、リブフレーム等の木造軸組構造体50の耐震補強にも用いることができる。
【0042】
また、丸形状の剛性調整孔2Cを設けた場合、剛性調整孔2Cの一部に外部応力が集中して付加されることがなく、ダンパー2の耐久性及び減衰性が向上する。ダンパー2自体に剛性調整孔2Cを設けるので、仕口用ダンパー1の軽量化が図れる。
【0043】
また、ダンパー2に剛性調整孔2Cを設けるだけの簡単な構造及び構成であるので、射出成形法による量産が可能であり、仕口用ダンパー1を安価に製造することができる。さらに、施工現場にて、ダンパー2に対し所望する孔径の剛性調整孔2Cを加工することも可能である。なお、剛性調整孔2Cの形状を変更してもよく、ダンパー2自体の剛性を低めるか高める等の調整を行うことが可能である。
【0044】
また、ダンパー2の第1固定部2Aと第2固定部2Bに跨って取り付けられた取付け板3を仕口部53の柱51と梁52に固定するので、仕口部53の柱51と梁52に対し仕口用ダンパー1を固定する作業が容易に行える。
【0045】
図4は、第2実施例の仕口用ダンパー1の取り付け状態を示す斜視図、図5は、仕口用ダンパー1の取り付け状態を示す図6のH−H線矢視断面図、図6は、図4の仕口用ダンパー1の取り付け状態を示す縦断側面図である。
【0046】
第2実施例の仕口用ダンパー1は、側面から見て直角二等辺三角形状に形成された合成樹脂製のダンパー20と、該ダンパー20の直角を成す第1固定部2A及び第2固定部2Bに装着されるSUS鋼板製の取付け板30と、第1固定部2A及び第2固定部2Bに対し取付け板30を固定するための樹脂固定用のビス4と、仕口部53の部材に対し取付け板30を固定するための木材固定用のビス5とで構成される。
【0047】
ダンパー20の柱51又は梁52と対向しない側面部分には、該側面に沿って設定された基準線X1の中央部に、側面から見て丸形状の剛性調整孔2Cが厚み方向に貫通して形成されている。
また、実施例のダンパー20は、25mm〜30mmの厚さに形成され、剛性調整孔2Cは、10mm〜30mmの孔径に形成されているが、木造軸組構造体50に付加される外部応力に応じて、25mm以下又は30mm以上の厚さに変更するか、10mm以下又は30mm以上の孔径に変更してもよい。
【0048】
取付け板30は、ダンパー20の第1固定部2A及び第2固定部2Bより長尺で幅広に形成され、第1固定部2Aの平面と第2固定部2Bの平面とが覆われる大きさ及び形状に形成されている。
【0049】
また、第1固定部2A及び第2固定部2Bは同一の形状及び寸法に形成されているので、一種類の取付け板30を製作すれば、第1固定部2A及び第2固定部2Bを固定する際に兼用することができる。
【0050】
実施例の取付け板30は、60mmの幅で、140mmの長さに形成されているが、ダンパー20のサイズに応じて、60mm以下又は60mm以上の幅に変更するか、140mm以下又は140mm以上の長さに変更してもよい。
【0051】
先ず、木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53に、前記第2実施例の仕口用ダンパー1を固定する場合、2枚の取付け板30を、仕口用ダンパー1の第1固定部2Aと第2固定部2Bとに装着した後、径が5mmで、長さが25mmの樹脂固定用のビス4…を、第1固定部2A及び第2固定部2Bに装着された取付け板30の中央部に対し長さ方向に等間隔に隔てて5本打ち込む。
【0052】
さらに、取付け板30の厚み方向に貫通されたビス4…を、第1固定部2A及び第2固定部2Bに打ち込むことにより、第1固定部2A及び第2固定部2Bに対し取付け板30をそれぞれ固定する。
【0053】
仕口用ダンパー1の第1固定部2Aと第2固定部2Bに固定された取付け板30を、木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53の取り付け面に押し付ける。この後、径が5mmで、長さが50mmの木材固定用のビス5…を、第1固定部2Aより突出する取付け板30の突出側端部に対し等間隔に隔てて4本打ち込むとともに、取付け板30に対し厚み方向に貫通されたビス5…を、第1固定部2Aが押し付けられた仕口部53の柱51に対し打ち込む。
【0054】
前記と同様に、木材固定用のビス5…を、第2固定部2Bより突出する取付け板30の突出側端部に対し等間隔に隔てて4本打ち込むとともに、取付け板30に対し厚み方向に貫通されたビス5…を、第2固定部2Bが押し付けられた仕口部53の部材に対し打ち込む。これにより、木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53の梁52に対し第2実施例の仕口用ダンパー1が固定される。
【0055】
つまり、ダンパー20自体の剛性を超える外部応力が木造軸組構造体50に付加された際に、ダンパー20の側面に設けられた丸形状の剛性調整孔2Cが変形するので、木造軸組構造体50に付加される外部応力が吸収又は緩和される。これにより、前記第1実施例と同等又は同等以上の作用及び効果を奏することができる。
【0056】
また、ダンパー20の第1固定部2Aと第2固定部2Bに取り付けられた取付け板30,30を仕口部53の柱51と梁52に固定するので、仕口部53の柱51と梁52に対し仕口用ダンパー1を固定する作業が容易に行える。
【0057】
図7は、第3実施例の仕口用ダンパー1の取り付け状態を示す斜視図、図8は、仕口用ダンパー1の取り付け状態を示す図9のI−I線矢視断面図、図9は、図7の仕口用ダンパー1の取り付け状態を示す縦断側面図である。
【0058】
第3実施例の仕口用ダンパー1は、側面から見て直角二等辺三角形状に形成された合成樹脂製のダンパー21と、該ダンパー21の直角を成す第1固定部2Aのフランジ部2Aa,2Aa及び第2固定部2Bのフランジ部2Ba,2Baに装着されるSUS鋼板製の取付け板31と、仕口部53の部材に対し第1固定部2A及び第2固定部2Bを固定するための木材固定用のビス5とで構成される。
【0059】
ダンパー21の柱51又は梁52と対向しない側面部分には、該側面に沿って設定された基準線X1の中央部に、側面から見て丸形状の剛性調整孔2Cが厚み方向に貫通して形成されている。また、実施例のダンパー21は、25mm〜30mmの厚さに形成され、剛性調整孔2Cは、15mm〜30mmの孔径に形成されているが、ダンパー21のサイズに応じて、25mm以下又は30mm以上の厚さに変更するか、15mm以下又は30mm以上の孔径に変更してもよい。
【0060】
取付け板31は、第1固定部2Aのフランジ部2Aa,2Aa及び第2固定部2Bのフランジ部2Ba,2Baと対応する長さに形成され、SUS鋼板の一方の長辺と他方の長辺を逆方向に向けて直角に曲げ加工されている。また、第1固定部2Aのフランジ部2Aa,2Aaの直角を成す一対の角隅外面と、第2固定部2Bのフランジ部2Ba,2Baの直角を成す一対の角隅外面とが覆われる大きさ及び形状に曲げ加工されている。
【0061】
なお、第1固定部2Aのフランジ部2Aa,2Aa及び第2固定部2Bのフランジ部2Ba,2Baは同一の形状及び寸法に形成されているので、一種類の取付け板31を曲げ加工すれば、第1固定部2Aのフランジ部2Aa,2Aa及び第2固定部2Bのフランジ部2Ba,2Baを固定する際に兼用することができる。また、第3実施例のフランジ部2Aa,2Baは、第1実施例のフランジ部2Aa,2Baに比べて厚肉に形成されている。
【0062】
先ず、木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53に、前記第3実施例の仕口用ダンパー1を固定する場合、第1固定部2Aのフランジ部2Aa,2Aa及び第2固定部2Bのフランジ部2Ba,2Baに4枚の取付け板31…をそれぞれ装着した後、仕口用ダンパー1の直角を成す第1固定部2Aと第2固定部2Bとを、木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53の柱51及び梁52に押し付ける。
【0063】
この後、径が5mmで、長さが90mmの木材固定用のビス5…を、第1固定部2Aのフランジ部2Aa,2Aaに装着された取付け板31,31に対し等間隔に隔てて4本打ち込むとともに、第1固定部2Aのフランジ部2Aa,2Aaに対し厚み方向に貫通されたビス5…を、第1固定部2Aが押し付けられた仕口部53の柱51に対し打ち込み固定する。
【0064】
前記と同様に、木材固定用のビス5…を、第2固定部2Bのフランジ部2Ba,2Baに装着された取付け板31,31に対し等間隔に隔てて4本打ち込むとともに、第2固定部2Bのフランジ部2Ba,2Baに対し厚み方向に貫通されたビス5…を、第2固定部2Bが押し付けられた仕口部53の梁52に対し打ち込み固定する。これにより、木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53の柱51及び梁52に対し第3実施例の仕口用ダンパー1が固定される。
【0065】
つまり、ダンパー21自体の剛性を超える外部応力が木造軸組構造体50に付加された際に、丸形状の剛性調整孔2Cが変形して、木造軸組構造体50に付加される外部応力が吸収又は緩和される。これにより、前記第1実施例と同等又は同等以上の作用及び効果を奏することができる。
【0066】
また、ダンパー21の第1固定部2Aのフランジ部2Aa,2Aaと第2固定部2Bのフランジ部2Ba,2Baに取り付けられた取付け板31…を仕口部53の柱51と梁52に固定するので、仕口部53の柱51と梁52に対し仕口用ダンパー1を固定する作業が容易に行える。
【0067】
図10は、側面から見て直角二等辺三角形状に形成されたダンパー2の弧状を有する端面の中央部に、該端面から見て丸形状に形成された有底筒状の剛性調整凹部2Dが設けられた仕口用ダンパー1の他の例を示す斜視図である。
【0068】
剛性調整凹部2Dは、仕口部53を構成する柱51と対向しないダンパー2の第1固定部2Aの端面側中央部と、梁52と対向しない第2固定部2Bの端面側中央部とを結ぶ基準線X2の中央部に形成され、ダンパー2の端面側中央部から第1固定部2Aと第2固定部2Bの一端が直交する交点P1に向けて斜めに形成されている。
【0069】
また、剛性調整凹部2Dは、前記交点P1と対向する斜め方向には貫通されておらず、ダンパー2の交点P1と対応する剛性調整凹部2Dの一端側は、丸形状に形成された底部で閉塞されている。一方、ダンパー2の端面と対応する剛性調整凹部2Dの他端側は、前記底部と同径に形成された開口部が開口されている。
【0070】
つまり、ダンパー2自体の剛性を超える外部応力が木造軸組構造体50に付加された際に、丸形状の剛性調整凹部2Dが変形して、木造軸組構造体50に付加される外部応力が吸収又は緩和される。これにより、前記第1実施例と同等又は同等以上の作用及び効果を奏することができる。
【0071】
また、ダンパー2に設けられる剛性調整凹部2Dの深さを深くすれば、ダンパー2自体の剛性を低めることができる。また、剛性調整凹部2Dの深さを浅くすれば、ダンパー2自体の剛性を高めることができる。つまり、ダンパー2に設けられる剛性調整凹部2Dの深さを変えるだけで、その剛性調整凹部2Dの深さに応じてダンパー2自体の剛性を低めるか高める等の調整を行うことができる。
【0072】
図11は、側面から見て直角二等辺三角形状に形成されたダンパー2の弧状を有する端面の中央部に、該端面から見て楕円形状に形成された有底筒状の剛性調整凹部2Eが設けられた仕口用ダンパー1のその他の例を示す斜視図である。
【0073】
剛性調整凹部2Eは、仕口部53を構成する柱51と対向しないダンパー2の第1固定部2Aの端面側中央部と、梁52と対向しない第2固定部2Bの端面側中央部とを結ぶ基準線X2の中央部に形成されるとともに、該ダンパー2の交点P1を中心として扇形状に形成されている。
【0074】
また、ダンパー2の交点P1と対応する剛性調整凹部2Eの一端側は、楕円形状に形成された底部で閉塞されている。一方、ダンパー2の端面と対応する剛性調整凹部2Eの他端側は、前記底部より長い楕円形状に形成された口部が開口されている。
【0075】
つまり、ダンパー2自体の剛性を超える外部応力が木造軸組構造体50に付加された際に、楕円形状の剛性調整凹部2Eが変形して、木造軸組構造体50に付加される外部応力が吸収又は緩和される。
【0076】
これにより、前記第1実施例と同等又は同等以上の作用及び効果を奏することができる。また、ダンパー2に設けられる剛性調整凹部2Eの深さを変えるだけで、その剛性調整凹部2Eの深さに応じてダンパー2自体の剛性を低めるか高める等の調整を行うことができる。
【0077】
なお、図10、図11に示す剛性調整凹部2D,2Eを、第2実施例或いは第3実施例の仕口用ダンパー1のダンパー2に設けてもよい。また、剛性調整凹部2D,2Eの個数を、例えば2個、3個、4個、5個等の複数に変更してもよい。また、剛性調整凹部2D,2Eを、例えば四角形、五角形、六角形等の形状に変更してもよい。
【0078】
また、ダンパー2の端面に沿って設定された前記基準線X2上又は基準線X2の両側に、同一の形状で同一の径に形成された剛性調整凹部2D,2E、或いは、同一の形状で異なる径に形成された剛性調整凹部2D,2E、或いは、異なる形状に形成された剛性調整凹部2D,2Eを配置するか、前記剛性調整孔2C及び後述する剛性調整孔2Ca,2Cb,2Ccと組み合わせて設ける等してもよい。
【0079】
図12の(a)〜(f)は、直角二等辺三角形状に形成されたダンパー2の側面に、各種形状から選択した単一形状又は複数形状の剛性調整孔2Cが複数設けられた仕口用ダンパー1のその他の例を示すものである。
【0080】
図12の(a)は、ダンパー2の第1固定部2A及び第2固定部2Bの一端が直交する交点P1と、該第1固定部2A及び第2固定部2Bの他端を結ぶ線Rの中間点P2とを通る基準線X1上に、同一の形状で同一の径に形成された丸形状の剛性調整孔2Cを直列に2個配置した例を示す側面図である。
【0081】
同一の径に形成された丸形状の剛性調整孔2Cは、基準線X1に沿って左斜め上方と右斜め下方とに配置されている。また、前記剛性調整孔2Cの個数は、例えば3個、4個、5個等の複数に変更してもよい。
【0082】
つまり、前記第1実施例と同様に、木造軸組構造体50に外部応力が付加された際に、ダンパー2の剛性調整孔2C,2Cが変形して、木造軸組構造体50に付加される外部応力を吸収又は緩和するので、前記第1実施例と同等又は同等以上の作用及び効果を奏することができる。
【0083】
大きな孔径の剛性調整孔2Cをダンパー2に設ければ、ダンパー2自体の剛性を低めることができる。また、小さな孔径の剛性調整孔2Cをダンパー2に設ければ、ダンパー2自体の剛性を高めることができる。これにより、ダンパー2に設けられる剛性調整孔2Cの孔径を変更するだけで、その剛性調整孔2Cの孔径に応じてダンパー2自体の剛性を低めるか高める等の調整を行うことができる。
【0084】
図12の(b)は、前記基準線X1上に、同一の形状で異なる径に形成された丸形状の剛性調整孔2C,2Ca,2Caを直列に3個配置した例を示す側面図である。
【0085】
基準線X1上の中央部には、大径に形成された剛性調整孔2Cが配置され、その剛性調整孔2Cの前後には、該剛性調整孔2Cより小径に形成された2個の剛性調整孔2Ca,2Caが配置されている。
【0086】
つまり、木造軸組構造体50に外部応力が付加された際に、ダンパー2の剛性調整孔2C,2Ca,2Caが変形して、木造軸組構造体50に付加される外部応力を吸収又は緩和するので、前記第1実施例と同等又は同等以上の作用及び効果を奏することができる。
【0087】
なお、小径の剛性調整孔2Caを中央に配置し、大径の剛性調整孔2C,2Cを前後に配置してもよい。また、同一の形状で異なる径に形成された大中小の剛性調整孔2Cを直列に配置してもよく、図12の(b)に示す配置及び組み合わせに限定されるものではない。また、前記剛性調整孔2C,2Caの個数は、例えば2個、4個、5個等の複数に変更してもよい。
【0088】
図12の(c)は、前記基準線X1の両側に、該基準線X1上の剛性調整孔2Cと同一の形状で異なる径に形成された丸形状の剛性調整孔2Caを線対称に配置した例を示す側面図である。
【0089】
基準線X1上の中央部には、大径に形成された剛性調整孔2Cが配置されている。また、その剛性調整孔2Cの両側には、該剛性調整孔2Cと同一の形状で小径に形成された2個の剛性調整孔2Ca,2Caが基準線X1を中心として線対称に配置されている。また、両側の剛性調整孔2Ca,2Caは、基準線X1上の剛性調整孔2Cの左斜め下方と右斜め上方とに配置されている。
【0090】
つまり、木造軸組構造体50に外部応力が付加された際に、ダンパー2の剛性調整孔2C,2Ca,2Caが変形して、木造軸組構造体50に付加される外部応力を吸収又は緩和するので、前記第1実施例と同等又は同等以上の作用及び効果を奏することができる。
【0091】
なお、基準線X1上及び両側に、同一の形状で同一の径に形成された剛性調整孔2Cを配置してもよい。また、基準線X1の両側又は一側に配置された剛性調整孔2Cを、前記基準線X1上の剛性調整孔2Cより大径に形成してもよく、図12の(c)に示す配置及び組み合わせに限定されるものではない。
【0092】
図12の(d)は、前記基準線X1上に、異なる形状に形成された3個の剛性調整孔2C,2Cb,2Ccを直列に配置した例を示す側面図である。
【0093】
基準線X1上の中央部には、丸形状に形成された剛性調整孔2Cが配置されている。また、丸形状の剛性調整孔2Cの左斜め上方には、楕円形状の剛性調整孔2Cが配置されている。また、丸形状の剛性調整孔2Cの右斜め下方には、六角形状の剛性調整孔2Cが配置されている。
【0094】
つまり、木造軸組構造体50に外部応力が付加された際に、ダンパー2の剛性調整孔2C,2Cb,2Ccが変形して、木造軸組構造体50に付加される外部応力を吸収又は緩和するので、前記第1実施例と同等又は同等以上の作用及び効果を奏することができる。
【0095】
なお、基準線X1上の中央部に、楕円形状の剛性調整孔2C或いは六角形状の剛性調整孔2Cを配置してもよく、図12の(d)に示す配置及び組み合わせに限定されるものではない。また、前記丸形状、楕円形、六角形状以外の形状の剛性調整孔2Cを配置してもよい。
【0096】
図12の(e)は、前記基準線X1の両側に、該基準線X1上の剛性調整孔2Cとは異なる形状に形成された2個の剛性調整孔2Cb,2Cbを配置した例を示す側面図である。
【0097】
基準線X1上の中央部には、丸形状に形成された剛性調整孔2Cが配置されている。また、剛性調整孔2Cの両側には、同一の形状で同一の径に形成された楕円形状の剛性調整孔2Cb,2Cbが基準線X1を中心として線対称に配置されている。また、楕円形状の剛性調整孔2Cb,2Cbは、丸形状に形成された基準線X1上の剛性調整孔2Cの左斜め下方と右斜め上方とに配置されている。
【0098】
つまり、木造軸組構造体50に外部応力が付加された際に、ダンパー2の剛性調整孔2C,2Cb,2Cbが変形して、木造軸組構造体50に付加される外部応力を吸収又は緩和するので、前記第1実施例と同等又は同等以上の作用及び効果を奏することができる。
【0099】
なお、基準線X1上の中央部に楕円形状の剛性調整孔2Cを配置し、基準線X1の両側に丸形状の剛性調整孔2Cを配置してもよく、図12の(e)に示す配置及び組み合わせに限定されるものではない。また、前記丸形状、楕円形以外の形状に形成された異なる形状の剛性調整孔2Cを基準線X1上の中央部及び基準線X1の両側に配置してもよい。
【0100】
図12の(f)は、前記基準線X1上及び両側に、丸形状及び楕円形状の剛性調整孔2Cを複数配置した例を示す側面図である。
【0101】
基準線X1上の中央部には、大径で丸形状の剛性調整孔2Cが配置されている。また、剛性調整孔2Cの左斜め上方と右斜め下方には、小径で丸形状の剛性調整孔2Ca,2Caが配置されている。また、剛性調整孔2Cの両側には、同一の径で楕円形状の剛性調整孔2Cb,2Cbが線対称に配置されているが、図12の(f)に示す配置及び組み合わせに限定されるものではない。
【0102】
つまり、木造軸組構造体50に外部応力が付加された際に、ダンパー2に設けられた大径の剛性調整孔2Cと、小径の剛性調整孔2Ca,2Caと、楕円形状の剛性調整孔2Cb,2Cbとが変形して、木造軸組構造体50に付加される外部応力を吸収又は緩和するので、前記第1実施例と同等又は同等以上の作用及び効果を奏することができる。
【0103】
また、剛性調整孔2C,2Ca,2Cbの個数が多くなれば、ダンパー2自体の剛性が低くなる。また、剛性調整孔2C,2Ca,2Cbの個数が少なくなれば、ダンパー2自体の剛性が高くなるので、剛性調整孔2Cの個数に応じてダンパー2自体の剛性を低めるか高める等の調整を行うことができる。
【0104】
なお、剛性調整孔2C,2Ca,2Cb,2Ccの大きさ、形状、配置、組み合わせは、図12の(a)〜(f)に示す構成のみに限定されるものではない。例えば剛性調整孔2C,2Ca,2Cb,2Ccの形状を、前記丸形状、楕円形状、六角形状以外の菱形、三角形、四角形、五角形等の形状に変更するか、その組み合わせを変更する等してもよい。
【0105】
図13は、側面から見て直角二等辺三角形状に形成されたダンパー2の両側面に、側面から見て丸形状に形成された有底形状の剛性調整凹部2Fが設けられた仕口用ダンパー1のその他の例を示す斜視図、図14は、図13の剛性調整凹部2Fの孔形状を示す縦断正面図である。
【0106】
剛性調整凹部2Fは、ダンパー2の側面に沿って設定された前記基準線X1上の中央部に設けられ、端面に沿って設定された基準線X1を中心として左右対称に配置されている。
【0107】
また、ダンパー2の側面に対して厚み方向には貫通されておらず、ダンパー2の厚みと対応する剛性調整凹部2Fの一端側は、丸形状に形成された底部で閉塞されている。一方、ダンパー2の側面と対応する剛性調整凹部2Fの他端側は、前記底部と同径に形成された口部が開口されている。また、剛性調整凹部2Fの深さは、ダンパー2の厚みより浅く、厚みの1/2以下の深さに形成されている。
【0108】
つまり、ダンパー2自体の剛性を超える外部応力が付加された際に、丸形状に形成された有底筒状の剛性調整凹部2Fが変形するので、木造軸組構造体50に付加される外部応力が吸収又は緩和される。
【0109】
これにより、前記第1実施例と同等又は同等以上の作用及び効果を奏することができる。また、ダンパー2に設けられる剛性調整凹部2Fの深さを変えるだけで、その剛性調整凹部2Fの深さに応じてダンパー2自体の剛性を低めるか高める等の調整を行うことができる。
【0110】
なお、図13に示す剛性調整凹部2Fを、第2実施例のダンパー20或いは第3実施例のダンパー21に設けてもよい。また、剛性調整凹部2Fを、ダンパー2の一方の側面のみに形成してもよい。また、剛性調整凹部2Fの個数を、例えば2個、3個、4個、5個等の複数に変更してもよい。また、剛性調整凹部2Fを、例えば四角形、五角形、六角形等の形状に変更してもよい。
【0111】
また、前記剛性調整凹部2Fを、例えば楕円形、四角形、五角形、六角形等の形状に形成してもよい。また、各種形状から選択した単一形状の剛性調整凹部2Fを設けるか、前記剛性調整孔2C,2D,2E及び2Ca,2Cb,2Ccと組み合わせて設ける等してもよい。
【0112】
この発明の構成と、前記実施形態との対応において、
この発明の一対の部材は、仕口部53の柱51と梁52に対応し、
以下同様に、
剛性調整部は、孔部の一例である剛性調整孔2C,2Ca,2Cb,2Ccと、凹部の一例である剛性調整凹部2D,2E,2Fに対応し、
固定手段は、ビス4,5に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0113】
前記取付け板3,30を、例えば接着剤、粘着剤、或いは、両面粘着テープ等の固定手段で第1固定部2A及び第2固定部2Bに固定しておいてもよい。また、取付け板31を、前記固定手段で第1固定部2Aのフランジ部2Aa及び第2固定部2Bのフランジ部2Baに固定してもよい。また、ダンパー2,20,21、取付け板3,30を、前記接着剤等の固定手段で仕口部53の柱51及び梁52に固定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の仕口用ダンパーは、木造軸組構造体の直角以下又は直角以上の角度を成す仕口部の補強構造としても適用することができる。
【符号の説明】
【0115】
1…仕口用ダンパー
2,20,21…ダンパー
2A…第1固定部
2B…第1固定部
2Aa,2Ba…フランジ部
2C,2Ca,2Cb,2Cc…剛性調整孔
2D,2E,2F…剛性調整凹部
3,30,31…取付け板
3A,3B…板部
3Aa,3Ba…支持片
4,5…ビス
50…木造軸組構造体
51…柱
52…梁
53…仕口部
【技術分野】
【0001】
この発明は、木造軸組工法により構築された木造建物等の木造軸組構造体における柱などの垂直部材と、梁、桁、大引、土台などの水平部材とからなる仕口部に取り付けられ、該仕口部の補強及び建物等の構造体の耐震性の向上を図る際に用いられる仕口用ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
前記木造軸組工法で構築された木造軸組構造体の仕口部に取り付けられるダンパーとしては、例えば柱に固定する柱固定部を有する第1硬質板と、横架材に固定する横架材固定部を有する第2硬質板と、第1硬質板と第2硬質板の間に接着積層されたシート状の粘弾性材層とからなる特許文献1の粘弾性ダンパーがある。
【0003】
しかし、一つの粘弾性ダンパーで吸収又は緩和される外部応力には限界があるので、例えば大きな外部応力が付加される部分に取り付けられる剛性が高いダンパーと、小さな外部応力が付加される部分に取り付けられる剛性が低いダンパー等の仕口用ダンパーを、仕口部に付加される外部応力の大きさに応じて複数製作しなければならず、仕口用ダンパーを製作するのに手間及び時間が掛かるだけでなく、製作費が高くなる。また、粘弾性材層を、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブチレンゴム、SBR、NBR、EPDM、ポリウレタン、シリコンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム等の中から選択した単一種又は複数種の組成物で成形しなければならず、外部応力を吸収又は緩和するのに適した剛性に調製することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−247269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、ダンパーに設けられる孔部や凹部の剛性調整部の大きさを変更するだけで、木造軸組構造体に付加される外部応力に応じてダンパー自体の剛性を調整することができる仕口用ダンパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、木造軸組構造体の仕口部を構成する一対の部材からなる角隅面に取り付けられる仕口用ダンパーであって、前記角隅面と対応する形状に形成された合成樹脂製のダンパーと、前記ダンパーの一方の部材と対向する部分に形成され、該一方の部材に対し固定手段で固定される第1固定部と、前記ダンパーの他方の部材と対向する部分に形成され、該他方の部材に対し固定手段で固定される第2固定部とを備え、前記ダンパーの前記部材と対向しない部分に、該ダンパーの剛性を低めるための剛性調整部が形成された仕口用ダンパーであることを特徴とする。
【0007】
この発明の態様として、前記剛性調整部は、前記ダンパーの前記部材と対向しない側面に形成され、該ダンパーの厚み方向に貫通する孔部で構成することができる。
【0008】
また、この発明の態様として、前記剛性調整部は、前記ダンパーの前記部材と対向しない側面又は端面に形成される凹部で構成することができる。
【0009】
また、この発明の態様として、前記剛性調整部が、前記第1固定部と第2固定部の一端が直交する交点と、該第1固定部と第2固定部の他端を結ぶ線の中間点を通る基準線上又は該基準線の両側に適宜数配置される。
【0010】
また、この発明の態様として、前記剛性調整部が、前記ダンパーの前記部材と対向しない前記第1固定部の端面側中央部と前記第2固定部の端面側中央部とを結ぶ基準線上に適宜数配置される。
【0011】
また、この発明の態様として、前記第1固定部及び第2固定部の前記部材が押し付けられる面に、該各固定部の外面が覆われる大きさ及び形状に形成され、前記部材に対し前記固定手段で固定される側面から見てL字状の取付け板を取り付けることができる。
【0012】
また、この発明の態様として、前記第1固定部及び第2固定部の前記部材が押し付けられる面に、該固定部の外面が覆われる大きさ及び形状に形成され、前記部材に対し前記固定手段で固定される取付け板を個々に取り付けることができる。
【0013】
また、この発明の態様として、前記第1固定部及び第2固定部の両側部に形成されたフランジ部に、該フランジ部の外面が覆われる大きさ及び形状に形成され、前記部材に対し前記固定手段で固定される取付け板を個々に取り付けることができる。
【0014】
前記ダンパーは、例えば熱可塑性エラストマー、ポリエステル、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリル、ポリカーボネイト、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂、或いは、メラミン、フェノール等の熱硬化性樹脂から選択した単一種又は複数種の合成樹脂(プラスチック)で構成することができる。
【0015】
また、剛性調整部は、例えば丸形状、楕円形、四角形、五角形、六角形、八角形等の形状に形成された孔部(実施例の剛性調整孔)や凹部(実施例の剛性調整凹部)で構成することができる。
【0016】
また、取付け板は、例えばSUS鋼板、ステンレス、鉄、ニッケル、銅、アルミニウム等の金属類、或いは、杉や檜の間伐材、単板積層材、集成材等の木類、或いは、繊維強化プラスチック、ポリプロピレン、ポリエチレン等のプラスチック類で構成することができる。
【0017】
また、固定手段は、例えばビス、ネジ、釘、ボルト、接着剤、粘着剤、両面粘着テープ等で構成することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、仕口用ダンパーのダンパーに設けられる孔部や凹部の剛性調整部の大きさを変更するだけで、木造軸組構造体に付加される外部応力に応じてダンパー自体の剛性を調整することができる。これにより、木造軸組構造体の大きさや階層数等に応じた減衰機能の仕口用ダンパーに調整することができる。また、地震荷重や風荷重等の外部応力を吸収して、木造軸組構造体の変形や倒壊を抑制することができる。また、リブフレーム等の木造軸組構造体の耐震補強に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施例の仕口用ダンパーの取り付け状態を示す斜視図。
【図2】仕口用ダンパーの取り付け状態を示す図3のG−G線矢視断面図。
【図3】図1の仕口用ダンパーの取り付け状態を示す縦断側面図。
【図4】第2実施例の仕口用ダンパーの取り付け状態を示す斜視図。
【図5】仕口用ダンパーの取り付け状態を示す図6のH−H線矢視断面図。
【図6】図4の仕口用ダンパーの取り付け状態を示す縦断側面図。
【図7】第3実施例の仕口用ダンパーの取り付け状態を示す斜視図。
【図8】仕口用ダンパーの取り付け状態を示す図9のI−I線矢視断面図。
【図9】図7の仕口用ダンパーの取り付け状態を示す縦断側面図。
【図10】仕口用ダンパーの他の例を示す斜視図。
【図11】仕口用ダンパーのその他の例を示す斜視図。
【図12】仕口用ダンパーのその他の例を示す側面図。
【図13】仕口用ダンパーのその他の例を示す斜視図。
【図14】図13の剛性調整孔の孔形状を示す縦断正面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0020】
図1は、本発明の一実施形態である木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53の補強に用いられる第1実施例の仕口用ダンパー1の取り付け状態を示す斜視図、図2は、仕口用ダンパー1の取り付け状態を示す図3のG−G線矢視断面図、図3は、図1の仕口用ダンパー1の取り付け状態を示す縦断側面図である。
【0021】
第1実施例の仕口用ダンパー1は、側面から見て直角二等辺三角形状に形成された合成樹脂製のダンパー2と、該ダンパー2の直角を成す第1固定部2Aと第2固定部2Bとに跨って装着されるSUS鋼板製の取付け板3と、第1固定部2A及び第2固定部2Bに対し取付け板3を固定するための樹脂固定用のビス4と、木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53の柱51又は梁52に対し取付け板3を固定するための木材固定用のビス5とで構成される。
【0022】
前記ダンパー2は、東洋紡績株式会社製の熱可塑性ポリエステルエラストマー(商品名=ペルプレン)で形成されるとともに、木造軸組構造体50の柱51と梁52が直交して固定される仕口部53の直角を成す内側角隅面と対応して側面から見て直角二等辺三角形状に形成されている。
【0023】
ダンパー2の直角を成す両辺には、柱51又は梁52の一方の部材に固定される第1固定部2Aと、他方の部材に固定される第2固定部2Bとが直交して形成されている。また、第1固定部2A及び第2固定部2Bは、直角を成す両辺の開放側端部から見てT字状の断面形状に形成されている。
【0024】
ダンパー2の柱51又は梁52と対向しない側面部分には、側面から見て丸形状の剛性調整孔2Cが厚み方向に貫通して形成されている。また、剛性調整孔2Cは、ダンパー2の第1固定部2Aと第2固定部2Bの一端が直交する交点P1と、該第1固定部2Aと第2固定部2Bの他端を結ぶ線Rの中間点P2とを通る基準線X1上の中央部に形成されている。また、剛性調整孔2Cの中心が基準線X1上に位置するように形成されている。
【0025】
また、実施例のダンパー2は、25mm〜30mmの厚さに形成され、剛性調整孔2Cは、10mm〜15mmの孔径に形成されているが、木造軸組構造体50に付加される外部応力に応じて、25mm以下又は30mm以上の厚さに変更するか、10mm以下又は15mm以上の孔径に変更してもよい。
【0026】
第1固定部2Aの両側部には、該第1固定部2Aの両側面に沿って一対のフランジ部2Aa,2Aaが形成されている。また、第2固定部2Bの両側部には、該第2固定部2Bの両側面に沿って一対のフランジ部2Ba,2Baが形成されている。
【0027】
また、第1固定部2Aのフランジ部2Aa,2Aaと、第2固定部2Bのフランジ部2Ba,2Baは、第1固定部2Aと第2固定部2Bとに跨って形成され、側面から見てL字状に連続して形成されている。
【0028】
前記取付け板3は、前記仕口部53の直角を成す柱51及び梁52の内側角隅面と対応して側面から見てL字状に形成され、ダンパー2の直角を成す第1固定部2Aと第2固定部2Bの固定面及び両側面が覆われる大きさ及び形状に形成されている。なお、取付け板3を、一対の板部3A,3Bが直交する交点P1を中心として二つに分割してもよい。
【0029】
取付け板3の一端に形成された板部3Aは、第1固定部2Aと対応する横幅で該第1固定部2Aより下方に突出される長さに形成されている。また、取付け板3の他端に形成された板部3Bは、第2固定部2Bと対応する横幅で該第2固定部2Bより前方に突出される長さに形成されている。
【0030】
板部3Aの両側縁部に形成された支持片3Aa,3Aaは、第1固定部2Aに形成されたフランジ部2Aa,2Aaの側面に対し押し当てられる方向及び角度に折り曲げられるとともに、該フランジ部2Aa,2Aaの側面が覆われる大きさ及び形状に形成されている。
【0031】
板部3Bの両側縁部に形成された支持片3Ba,3Baは、第2固定部2Bに形成されたフランジ部2Ba,2Baの側面に対し押し当てられる方向及び角度に折り曲げられるとともに、該フランジ部2Ba,2Baの側面が覆われる大きさ及び形状に形成されている。
【0032】
なお、第1固定部2Aのフランジ部2Aa,2Aaと第2固定部2Bのフランジ部2Ba,2Baを含むダンパー2全体の横幅及び取付け板3の横幅は、木造軸組構造体50の柱51又は梁52の横幅より幅狭に形成されている。
【0033】
先ず、木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53に、前記第1実施例の仕口用ダンパー1を固定する場合、取付け板3を、ダンパー2の直角を成す第1固定部2Aと第2固定部2Bの外面に跨って装着する。
【0034】
この後、径が5mmで、長さが30mmの樹脂固定用のビス4…を、第1固定部2Aに装着された取付け板3の板部3Aと、第2固定部2Bに装着された取付け板3の板部3Bとの中央面に沿って長さ方向に等間隔に隔てて4本打ち込む。
【0035】
さらに、取付け板3の板部3A,3Bに対し厚み方向に貫通されたビス4…を、第1固定部2Aと第2固定部2Bに打ち込むことにより、第1固定部2Aと第2固定部2Bの直角を成す外面に対し取付け板3が固定される。
【0036】
ダンパー2の第1固定部2A及び第2固定部2Bに跨って固定された取付け板3の板部3A,3Bを、木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53の柱51及び梁52に押し付ける。
【0037】
この後、径が5mmで、長さが50mmの木材固定用のビス5…を、第1固定部2Aより突出する取付け板3の突出側端部に対し適宜間隔に隔てて4本打ち込むとともに、取付け板3の板部3Aに対し厚み方向に貫通されたビス5…を、第1固定部2Aが押し付けられた仕口部53の柱51に対し打ち込む。
【0038】
前記と同様に、木材固定用のビス5…を、第2固定部2Bより突出する取付け板3の突出側端部に対し適宜間隔に隔てて4本打ち込むとともに、取付け板3の板部3Bに対し厚み方向に貫通されたビス5…を、第2固定部2Bが押し付けられた仕口部53の梁52に対し打ち込む。これにより、木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53の柱51及び梁52に対し第1実施例の仕口用ダンパー1が固定される。
【0039】
仕口用ダンパー1のダンパー2に大きな孔径の剛性調整孔2Cを設ければ、ダンパー2自体の剛性を低めることができる。つまり、ダンパー2自体の剛性を超える地震荷重や風荷重等の小さな外部応力が木造軸組構造体50に付加された際、大径の剛性調整孔2Cが変形して、木造軸組構造体50に付加される小さな外部応力が吸収又は緩和される。
【0040】
また、ダンパー2に小さな孔径の剛性調整孔2Cを設ければ、ダンパー2自体の剛性を高めることができる。つまり、ダンパー2自体の剛性を超える外部応力が木造軸組構造体50に付加された際、小径の剛性調整孔2Cが変形して、木造軸組構造体50に付加される大きな外部応力が吸収又は緩和される。
【0041】
以上のように、ダンパー2に設けられる剛性調整孔2Cの孔径を変更するだけで、木造軸組構造体50の仕口部53に付加される外部応力に応じてダンパー自体の剛性を適宜強さに調整することができる。これにより、木造軸組構造体50の大きさや階層数等に応じた減衰機能の仕口用ダンパー1に調整することができる。また、地震荷重や風荷重等の外部応力を吸収して、木造軸組構造体50の変形や倒壊を抑制することができる。また、リブフレーム等の木造軸組構造体50の耐震補強にも用いることができる。
【0042】
また、丸形状の剛性調整孔2Cを設けた場合、剛性調整孔2Cの一部に外部応力が集中して付加されることがなく、ダンパー2の耐久性及び減衰性が向上する。ダンパー2自体に剛性調整孔2Cを設けるので、仕口用ダンパー1の軽量化が図れる。
【0043】
また、ダンパー2に剛性調整孔2Cを設けるだけの簡単な構造及び構成であるので、射出成形法による量産が可能であり、仕口用ダンパー1を安価に製造することができる。さらに、施工現場にて、ダンパー2に対し所望する孔径の剛性調整孔2Cを加工することも可能である。なお、剛性調整孔2Cの形状を変更してもよく、ダンパー2自体の剛性を低めるか高める等の調整を行うことが可能である。
【0044】
また、ダンパー2の第1固定部2Aと第2固定部2Bに跨って取り付けられた取付け板3を仕口部53の柱51と梁52に固定するので、仕口部53の柱51と梁52に対し仕口用ダンパー1を固定する作業が容易に行える。
【0045】
図4は、第2実施例の仕口用ダンパー1の取り付け状態を示す斜視図、図5は、仕口用ダンパー1の取り付け状態を示す図6のH−H線矢視断面図、図6は、図4の仕口用ダンパー1の取り付け状態を示す縦断側面図である。
【0046】
第2実施例の仕口用ダンパー1は、側面から見て直角二等辺三角形状に形成された合成樹脂製のダンパー20と、該ダンパー20の直角を成す第1固定部2A及び第2固定部2Bに装着されるSUS鋼板製の取付け板30と、第1固定部2A及び第2固定部2Bに対し取付け板30を固定するための樹脂固定用のビス4と、仕口部53の部材に対し取付け板30を固定するための木材固定用のビス5とで構成される。
【0047】
ダンパー20の柱51又は梁52と対向しない側面部分には、該側面に沿って設定された基準線X1の中央部に、側面から見て丸形状の剛性調整孔2Cが厚み方向に貫通して形成されている。
また、実施例のダンパー20は、25mm〜30mmの厚さに形成され、剛性調整孔2Cは、10mm〜30mmの孔径に形成されているが、木造軸組構造体50に付加される外部応力に応じて、25mm以下又は30mm以上の厚さに変更するか、10mm以下又は30mm以上の孔径に変更してもよい。
【0048】
取付け板30は、ダンパー20の第1固定部2A及び第2固定部2Bより長尺で幅広に形成され、第1固定部2Aの平面と第2固定部2Bの平面とが覆われる大きさ及び形状に形成されている。
【0049】
また、第1固定部2A及び第2固定部2Bは同一の形状及び寸法に形成されているので、一種類の取付け板30を製作すれば、第1固定部2A及び第2固定部2Bを固定する際に兼用することができる。
【0050】
実施例の取付け板30は、60mmの幅で、140mmの長さに形成されているが、ダンパー20のサイズに応じて、60mm以下又は60mm以上の幅に変更するか、140mm以下又は140mm以上の長さに変更してもよい。
【0051】
先ず、木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53に、前記第2実施例の仕口用ダンパー1を固定する場合、2枚の取付け板30を、仕口用ダンパー1の第1固定部2Aと第2固定部2Bとに装着した後、径が5mmで、長さが25mmの樹脂固定用のビス4…を、第1固定部2A及び第2固定部2Bに装着された取付け板30の中央部に対し長さ方向に等間隔に隔てて5本打ち込む。
【0052】
さらに、取付け板30の厚み方向に貫通されたビス4…を、第1固定部2A及び第2固定部2Bに打ち込むことにより、第1固定部2A及び第2固定部2Bに対し取付け板30をそれぞれ固定する。
【0053】
仕口用ダンパー1の第1固定部2Aと第2固定部2Bに固定された取付け板30を、木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53の取り付け面に押し付ける。この後、径が5mmで、長さが50mmの木材固定用のビス5…を、第1固定部2Aより突出する取付け板30の突出側端部に対し等間隔に隔てて4本打ち込むとともに、取付け板30に対し厚み方向に貫通されたビス5…を、第1固定部2Aが押し付けられた仕口部53の柱51に対し打ち込む。
【0054】
前記と同様に、木材固定用のビス5…を、第2固定部2Bより突出する取付け板30の突出側端部に対し等間隔に隔てて4本打ち込むとともに、取付け板30に対し厚み方向に貫通されたビス5…を、第2固定部2Bが押し付けられた仕口部53の部材に対し打ち込む。これにより、木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53の梁52に対し第2実施例の仕口用ダンパー1が固定される。
【0055】
つまり、ダンパー20自体の剛性を超える外部応力が木造軸組構造体50に付加された際に、ダンパー20の側面に設けられた丸形状の剛性調整孔2Cが変形するので、木造軸組構造体50に付加される外部応力が吸収又は緩和される。これにより、前記第1実施例と同等又は同等以上の作用及び効果を奏することができる。
【0056】
また、ダンパー20の第1固定部2Aと第2固定部2Bに取り付けられた取付け板30,30を仕口部53の柱51と梁52に固定するので、仕口部53の柱51と梁52に対し仕口用ダンパー1を固定する作業が容易に行える。
【0057】
図7は、第3実施例の仕口用ダンパー1の取り付け状態を示す斜視図、図8は、仕口用ダンパー1の取り付け状態を示す図9のI−I線矢視断面図、図9は、図7の仕口用ダンパー1の取り付け状態を示す縦断側面図である。
【0058】
第3実施例の仕口用ダンパー1は、側面から見て直角二等辺三角形状に形成された合成樹脂製のダンパー21と、該ダンパー21の直角を成す第1固定部2Aのフランジ部2Aa,2Aa及び第2固定部2Bのフランジ部2Ba,2Baに装着されるSUS鋼板製の取付け板31と、仕口部53の部材に対し第1固定部2A及び第2固定部2Bを固定するための木材固定用のビス5とで構成される。
【0059】
ダンパー21の柱51又は梁52と対向しない側面部分には、該側面に沿って設定された基準線X1の中央部に、側面から見て丸形状の剛性調整孔2Cが厚み方向に貫通して形成されている。また、実施例のダンパー21は、25mm〜30mmの厚さに形成され、剛性調整孔2Cは、15mm〜30mmの孔径に形成されているが、ダンパー21のサイズに応じて、25mm以下又は30mm以上の厚さに変更するか、15mm以下又は30mm以上の孔径に変更してもよい。
【0060】
取付け板31は、第1固定部2Aのフランジ部2Aa,2Aa及び第2固定部2Bのフランジ部2Ba,2Baと対応する長さに形成され、SUS鋼板の一方の長辺と他方の長辺を逆方向に向けて直角に曲げ加工されている。また、第1固定部2Aのフランジ部2Aa,2Aaの直角を成す一対の角隅外面と、第2固定部2Bのフランジ部2Ba,2Baの直角を成す一対の角隅外面とが覆われる大きさ及び形状に曲げ加工されている。
【0061】
なお、第1固定部2Aのフランジ部2Aa,2Aa及び第2固定部2Bのフランジ部2Ba,2Baは同一の形状及び寸法に形成されているので、一種類の取付け板31を曲げ加工すれば、第1固定部2Aのフランジ部2Aa,2Aa及び第2固定部2Bのフランジ部2Ba,2Baを固定する際に兼用することができる。また、第3実施例のフランジ部2Aa,2Baは、第1実施例のフランジ部2Aa,2Baに比べて厚肉に形成されている。
【0062】
先ず、木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53に、前記第3実施例の仕口用ダンパー1を固定する場合、第1固定部2Aのフランジ部2Aa,2Aa及び第2固定部2Bのフランジ部2Ba,2Baに4枚の取付け板31…をそれぞれ装着した後、仕口用ダンパー1の直角を成す第1固定部2Aと第2固定部2Bとを、木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53の柱51及び梁52に押し付ける。
【0063】
この後、径が5mmで、長さが90mmの木材固定用のビス5…を、第1固定部2Aのフランジ部2Aa,2Aaに装着された取付け板31,31に対し等間隔に隔てて4本打ち込むとともに、第1固定部2Aのフランジ部2Aa,2Aaに対し厚み方向に貫通されたビス5…を、第1固定部2Aが押し付けられた仕口部53の柱51に対し打ち込み固定する。
【0064】
前記と同様に、木材固定用のビス5…を、第2固定部2Bのフランジ部2Ba,2Baに装着された取付け板31,31に対し等間隔に隔てて4本打ち込むとともに、第2固定部2Bのフランジ部2Ba,2Baに対し厚み方向に貫通されたビス5…を、第2固定部2Bが押し付けられた仕口部53の梁52に対し打ち込み固定する。これにより、木造軸組構造体50の直角を成す仕口部53の柱51及び梁52に対し第3実施例の仕口用ダンパー1が固定される。
【0065】
つまり、ダンパー21自体の剛性を超える外部応力が木造軸組構造体50に付加された際に、丸形状の剛性調整孔2Cが変形して、木造軸組構造体50に付加される外部応力が吸収又は緩和される。これにより、前記第1実施例と同等又は同等以上の作用及び効果を奏することができる。
【0066】
また、ダンパー21の第1固定部2Aのフランジ部2Aa,2Aaと第2固定部2Bのフランジ部2Ba,2Baに取り付けられた取付け板31…を仕口部53の柱51と梁52に固定するので、仕口部53の柱51と梁52に対し仕口用ダンパー1を固定する作業が容易に行える。
【0067】
図10は、側面から見て直角二等辺三角形状に形成されたダンパー2の弧状を有する端面の中央部に、該端面から見て丸形状に形成された有底筒状の剛性調整凹部2Dが設けられた仕口用ダンパー1の他の例を示す斜視図である。
【0068】
剛性調整凹部2Dは、仕口部53を構成する柱51と対向しないダンパー2の第1固定部2Aの端面側中央部と、梁52と対向しない第2固定部2Bの端面側中央部とを結ぶ基準線X2の中央部に形成され、ダンパー2の端面側中央部から第1固定部2Aと第2固定部2Bの一端が直交する交点P1に向けて斜めに形成されている。
【0069】
また、剛性調整凹部2Dは、前記交点P1と対向する斜め方向には貫通されておらず、ダンパー2の交点P1と対応する剛性調整凹部2Dの一端側は、丸形状に形成された底部で閉塞されている。一方、ダンパー2の端面と対応する剛性調整凹部2Dの他端側は、前記底部と同径に形成された開口部が開口されている。
【0070】
つまり、ダンパー2自体の剛性を超える外部応力が木造軸組構造体50に付加された際に、丸形状の剛性調整凹部2Dが変形して、木造軸組構造体50に付加される外部応力が吸収又は緩和される。これにより、前記第1実施例と同等又は同等以上の作用及び効果を奏することができる。
【0071】
また、ダンパー2に設けられる剛性調整凹部2Dの深さを深くすれば、ダンパー2自体の剛性を低めることができる。また、剛性調整凹部2Dの深さを浅くすれば、ダンパー2自体の剛性を高めることができる。つまり、ダンパー2に設けられる剛性調整凹部2Dの深さを変えるだけで、その剛性調整凹部2Dの深さに応じてダンパー2自体の剛性を低めるか高める等の調整を行うことができる。
【0072】
図11は、側面から見て直角二等辺三角形状に形成されたダンパー2の弧状を有する端面の中央部に、該端面から見て楕円形状に形成された有底筒状の剛性調整凹部2Eが設けられた仕口用ダンパー1のその他の例を示す斜視図である。
【0073】
剛性調整凹部2Eは、仕口部53を構成する柱51と対向しないダンパー2の第1固定部2Aの端面側中央部と、梁52と対向しない第2固定部2Bの端面側中央部とを結ぶ基準線X2の中央部に形成されるとともに、該ダンパー2の交点P1を中心として扇形状に形成されている。
【0074】
また、ダンパー2の交点P1と対応する剛性調整凹部2Eの一端側は、楕円形状に形成された底部で閉塞されている。一方、ダンパー2の端面と対応する剛性調整凹部2Eの他端側は、前記底部より長い楕円形状に形成された口部が開口されている。
【0075】
つまり、ダンパー2自体の剛性を超える外部応力が木造軸組構造体50に付加された際に、楕円形状の剛性調整凹部2Eが変形して、木造軸組構造体50に付加される外部応力が吸収又は緩和される。
【0076】
これにより、前記第1実施例と同等又は同等以上の作用及び効果を奏することができる。また、ダンパー2に設けられる剛性調整凹部2Eの深さを変えるだけで、その剛性調整凹部2Eの深さに応じてダンパー2自体の剛性を低めるか高める等の調整を行うことができる。
【0077】
なお、図10、図11に示す剛性調整凹部2D,2Eを、第2実施例或いは第3実施例の仕口用ダンパー1のダンパー2に設けてもよい。また、剛性調整凹部2D,2Eの個数を、例えば2個、3個、4個、5個等の複数に変更してもよい。また、剛性調整凹部2D,2Eを、例えば四角形、五角形、六角形等の形状に変更してもよい。
【0078】
また、ダンパー2の端面に沿って設定された前記基準線X2上又は基準線X2の両側に、同一の形状で同一の径に形成された剛性調整凹部2D,2E、或いは、同一の形状で異なる径に形成された剛性調整凹部2D,2E、或いは、異なる形状に形成された剛性調整凹部2D,2Eを配置するか、前記剛性調整孔2C及び後述する剛性調整孔2Ca,2Cb,2Ccと組み合わせて設ける等してもよい。
【0079】
図12の(a)〜(f)は、直角二等辺三角形状に形成されたダンパー2の側面に、各種形状から選択した単一形状又は複数形状の剛性調整孔2Cが複数設けられた仕口用ダンパー1のその他の例を示すものである。
【0080】
図12の(a)は、ダンパー2の第1固定部2A及び第2固定部2Bの一端が直交する交点P1と、該第1固定部2A及び第2固定部2Bの他端を結ぶ線Rの中間点P2とを通る基準線X1上に、同一の形状で同一の径に形成された丸形状の剛性調整孔2Cを直列に2個配置した例を示す側面図である。
【0081】
同一の径に形成された丸形状の剛性調整孔2Cは、基準線X1に沿って左斜め上方と右斜め下方とに配置されている。また、前記剛性調整孔2Cの個数は、例えば3個、4個、5個等の複数に変更してもよい。
【0082】
つまり、前記第1実施例と同様に、木造軸組構造体50に外部応力が付加された際に、ダンパー2の剛性調整孔2C,2Cが変形して、木造軸組構造体50に付加される外部応力を吸収又は緩和するので、前記第1実施例と同等又は同等以上の作用及び効果を奏することができる。
【0083】
大きな孔径の剛性調整孔2Cをダンパー2に設ければ、ダンパー2自体の剛性を低めることができる。また、小さな孔径の剛性調整孔2Cをダンパー2に設ければ、ダンパー2自体の剛性を高めることができる。これにより、ダンパー2に設けられる剛性調整孔2Cの孔径を変更するだけで、その剛性調整孔2Cの孔径に応じてダンパー2自体の剛性を低めるか高める等の調整を行うことができる。
【0084】
図12の(b)は、前記基準線X1上に、同一の形状で異なる径に形成された丸形状の剛性調整孔2C,2Ca,2Caを直列に3個配置した例を示す側面図である。
【0085】
基準線X1上の中央部には、大径に形成された剛性調整孔2Cが配置され、その剛性調整孔2Cの前後には、該剛性調整孔2Cより小径に形成された2個の剛性調整孔2Ca,2Caが配置されている。
【0086】
つまり、木造軸組構造体50に外部応力が付加された際に、ダンパー2の剛性調整孔2C,2Ca,2Caが変形して、木造軸組構造体50に付加される外部応力を吸収又は緩和するので、前記第1実施例と同等又は同等以上の作用及び効果を奏することができる。
【0087】
なお、小径の剛性調整孔2Caを中央に配置し、大径の剛性調整孔2C,2Cを前後に配置してもよい。また、同一の形状で異なる径に形成された大中小の剛性調整孔2Cを直列に配置してもよく、図12の(b)に示す配置及び組み合わせに限定されるものではない。また、前記剛性調整孔2C,2Caの個数は、例えば2個、4個、5個等の複数に変更してもよい。
【0088】
図12の(c)は、前記基準線X1の両側に、該基準線X1上の剛性調整孔2Cと同一の形状で異なる径に形成された丸形状の剛性調整孔2Caを線対称に配置した例を示す側面図である。
【0089】
基準線X1上の中央部には、大径に形成された剛性調整孔2Cが配置されている。また、その剛性調整孔2Cの両側には、該剛性調整孔2Cと同一の形状で小径に形成された2個の剛性調整孔2Ca,2Caが基準線X1を中心として線対称に配置されている。また、両側の剛性調整孔2Ca,2Caは、基準線X1上の剛性調整孔2Cの左斜め下方と右斜め上方とに配置されている。
【0090】
つまり、木造軸組構造体50に外部応力が付加された際に、ダンパー2の剛性調整孔2C,2Ca,2Caが変形して、木造軸組構造体50に付加される外部応力を吸収又は緩和するので、前記第1実施例と同等又は同等以上の作用及び効果を奏することができる。
【0091】
なお、基準線X1上及び両側に、同一の形状で同一の径に形成された剛性調整孔2Cを配置してもよい。また、基準線X1の両側又は一側に配置された剛性調整孔2Cを、前記基準線X1上の剛性調整孔2Cより大径に形成してもよく、図12の(c)に示す配置及び組み合わせに限定されるものではない。
【0092】
図12の(d)は、前記基準線X1上に、異なる形状に形成された3個の剛性調整孔2C,2Cb,2Ccを直列に配置した例を示す側面図である。
【0093】
基準線X1上の中央部には、丸形状に形成された剛性調整孔2Cが配置されている。また、丸形状の剛性調整孔2Cの左斜め上方には、楕円形状の剛性調整孔2Cが配置されている。また、丸形状の剛性調整孔2Cの右斜め下方には、六角形状の剛性調整孔2Cが配置されている。
【0094】
つまり、木造軸組構造体50に外部応力が付加された際に、ダンパー2の剛性調整孔2C,2Cb,2Ccが変形して、木造軸組構造体50に付加される外部応力を吸収又は緩和するので、前記第1実施例と同等又は同等以上の作用及び効果を奏することができる。
【0095】
なお、基準線X1上の中央部に、楕円形状の剛性調整孔2C或いは六角形状の剛性調整孔2Cを配置してもよく、図12の(d)に示す配置及び組み合わせに限定されるものではない。また、前記丸形状、楕円形、六角形状以外の形状の剛性調整孔2Cを配置してもよい。
【0096】
図12の(e)は、前記基準線X1の両側に、該基準線X1上の剛性調整孔2Cとは異なる形状に形成された2個の剛性調整孔2Cb,2Cbを配置した例を示す側面図である。
【0097】
基準線X1上の中央部には、丸形状に形成された剛性調整孔2Cが配置されている。また、剛性調整孔2Cの両側には、同一の形状で同一の径に形成された楕円形状の剛性調整孔2Cb,2Cbが基準線X1を中心として線対称に配置されている。また、楕円形状の剛性調整孔2Cb,2Cbは、丸形状に形成された基準線X1上の剛性調整孔2Cの左斜め下方と右斜め上方とに配置されている。
【0098】
つまり、木造軸組構造体50に外部応力が付加された際に、ダンパー2の剛性調整孔2C,2Cb,2Cbが変形して、木造軸組構造体50に付加される外部応力を吸収又は緩和するので、前記第1実施例と同等又は同等以上の作用及び効果を奏することができる。
【0099】
なお、基準線X1上の中央部に楕円形状の剛性調整孔2Cを配置し、基準線X1の両側に丸形状の剛性調整孔2Cを配置してもよく、図12の(e)に示す配置及び組み合わせに限定されるものではない。また、前記丸形状、楕円形以外の形状に形成された異なる形状の剛性調整孔2Cを基準線X1上の中央部及び基準線X1の両側に配置してもよい。
【0100】
図12の(f)は、前記基準線X1上及び両側に、丸形状及び楕円形状の剛性調整孔2Cを複数配置した例を示す側面図である。
【0101】
基準線X1上の中央部には、大径で丸形状の剛性調整孔2Cが配置されている。また、剛性調整孔2Cの左斜め上方と右斜め下方には、小径で丸形状の剛性調整孔2Ca,2Caが配置されている。また、剛性調整孔2Cの両側には、同一の径で楕円形状の剛性調整孔2Cb,2Cbが線対称に配置されているが、図12の(f)に示す配置及び組み合わせに限定されるものではない。
【0102】
つまり、木造軸組構造体50に外部応力が付加された際に、ダンパー2に設けられた大径の剛性調整孔2Cと、小径の剛性調整孔2Ca,2Caと、楕円形状の剛性調整孔2Cb,2Cbとが変形して、木造軸組構造体50に付加される外部応力を吸収又は緩和するので、前記第1実施例と同等又は同等以上の作用及び効果を奏することができる。
【0103】
また、剛性調整孔2C,2Ca,2Cbの個数が多くなれば、ダンパー2自体の剛性が低くなる。また、剛性調整孔2C,2Ca,2Cbの個数が少なくなれば、ダンパー2自体の剛性が高くなるので、剛性調整孔2Cの個数に応じてダンパー2自体の剛性を低めるか高める等の調整を行うことができる。
【0104】
なお、剛性調整孔2C,2Ca,2Cb,2Ccの大きさ、形状、配置、組み合わせは、図12の(a)〜(f)に示す構成のみに限定されるものではない。例えば剛性調整孔2C,2Ca,2Cb,2Ccの形状を、前記丸形状、楕円形状、六角形状以外の菱形、三角形、四角形、五角形等の形状に変更するか、その組み合わせを変更する等してもよい。
【0105】
図13は、側面から見て直角二等辺三角形状に形成されたダンパー2の両側面に、側面から見て丸形状に形成された有底形状の剛性調整凹部2Fが設けられた仕口用ダンパー1のその他の例を示す斜視図、図14は、図13の剛性調整凹部2Fの孔形状を示す縦断正面図である。
【0106】
剛性調整凹部2Fは、ダンパー2の側面に沿って設定された前記基準線X1上の中央部に設けられ、端面に沿って設定された基準線X1を中心として左右対称に配置されている。
【0107】
また、ダンパー2の側面に対して厚み方向には貫通されておらず、ダンパー2の厚みと対応する剛性調整凹部2Fの一端側は、丸形状に形成された底部で閉塞されている。一方、ダンパー2の側面と対応する剛性調整凹部2Fの他端側は、前記底部と同径に形成された口部が開口されている。また、剛性調整凹部2Fの深さは、ダンパー2の厚みより浅く、厚みの1/2以下の深さに形成されている。
【0108】
つまり、ダンパー2自体の剛性を超える外部応力が付加された際に、丸形状に形成された有底筒状の剛性調整凹部2Fが変形するので、木造軸組構造体50に付加される外部応力が吸収又は緩和される。
【0109】
これにより、前記第1実施例と同等又は同等以上の作用及び効果を奏することができる。また、ダンパー2に設けられる剛性調整凹部2Fの深さを変えるだけで、その剛性調整凹部2Fの深さに応じてダンパー2自体の剛性を低めるか高める等の調整を行うことができる。
【0110】
なお、図13に示す剛性調整凹部2Fを、第2実施例のダンパー20或いは第3実施例のダンパー21に設けてもよい。また、剛性調整凹部2Fを、ダンパー2の一方の側面のみに形成してもよい。また、剛性調整凹部2Fの個数を、例えば2個、3個、4個、5個等の複数に変更してもよい。また、剛性調整凹部2Fを、例えば四角形、五角形、六角形等の形状に変更してもよい。
【0111】
また、前記剛性調整凹部2Fを、例えば楕円形、四角形、五角形、六角形等の形状に形成してもよい。また、各種形状から選択した単一形状の剛性調整凹部2Fを設けるか、前記剛性調整孔2C,2D,2E及び2Ca,2Cb,2Ccと組み合わせて設ける等してもよい。
【0112】
この発明の構成と、前記実施形態との対応において、
この発明の一対の部材は、仕口部53の柱51と梁52に対応し、
以下同様に、
剛性調整部は、孔部の一例である剛性調整孔2C,2Ca,2Cb,2Ccと、凹部の一例である剛性調整凹部2D,2E,2Fに対応し、
固定手段は、ビス4,5に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0113】
前記取付け板3,30を、例えば接着剤、粘着剤、或いは、両面粘着テープ等の固定手段で第1固定部2A及び第2固定部2Bに固定しておいてもよい。また、取付け板31を、前記固定手段で第1固定部2Aのフランジ部2Aa及び第2固定部2Bのフランジ部2Baに固定してもよい。また、ダンパー2,20,21、取付け板3,30を、前記接着剤等の固定手段で仕口部53の柱51及び梁52に固定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の仕口用ダンパーは、木造軸組構造体の直角以下又は直角以上の角度を成す仕口部の補強構造としても適用することができる。
【符号の説明】
【0115】
1…仕口用ダンパー
2,20,21…ダンパー
2A…第1固定部
2B…第1固定部
2Aa,2Ba…フランジ部
2C,2Ca,2Cb,2Cc…剛性調整孔
2D,2E,2F…剛性調整凹部
3,30,31…取付け板
3A,3B…板部
3Aa,3Ba…支持片
4,5…ビス
50…木造軸組構造体
51…柱
52…梁
53…仕口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造軸組構造体の仕口部を構成する一対の部材からなる角隅面に取り付けられる仕口用ダンパーであって、
前記角隅面と対応する形状に形成された合成樹脂製のダンパーと、
前記ダンパーの一方の部材と対向する部分に形成され、該一方の部材に対し固定手段で固定される第1固定部と、
前記ダンパーの他方の部材と対向する部分に形成され、該他方の部材に対し固定手段で固定される第2固定部とを備え、
前記ダンパーの前記部材と対向しない部分に、該ダンパーの剛性を低めるための剛性調整部が形成された
仕口用ダンパー。
【請求項2】
前記剛性調整部は、前記ダンパーの前記部材と対向しない側面に形成され、該ダンパーの厚み方向に貫通する孔部で構成された
請求項1に記載の仕口用ダンパー。
【請求項3】
前記剛性調整部は、前記ダンパーの前記部材と対向しない側面又は端面に形成される凹部で構成された
請求項1に記載の仕口用ダンパー。
【請求項4】
前記剛性調整部が、前記第1固定部と第2固定部の一端が直交する交点と、該第1固定部と第2固定部の他端を結ぶ線の中間点を通る基準線上又は該基準線の両側に適宜数配置された
請求項1〜3のいずれか一つに記載の仕口用ダンパー。
【請求項5】
前記剛性調整部が、前記ダンパーの前記部材と対向しない前記第1固定部の端面側中央部と前記第2固定部の端面側中央部とを結ぶ基準線上に適宜数配置された
請求項1〜4のいずれか一つに記載の仕口用ダンパー。
【請求項6】
前記第1固定部及び第2固定部の前記部材が押し付けられる面に、該各固定部の外面が覆われる大きさ及び形状に形成され、前記部材に対し前記固定手段で固定される側面から見てL字状の取付け板を取り付けた
請求項1〜5のいずれか一つに記載の仕口用ダンパー。
【請求項7】
前記第1固定部及び第2固定部の前記部材が押し付けられる面に、該固定部の外面が覆われる大きさ及び形状に形成され、前記部材に対し前記固定手段で固定される取付け板を個々に取り付けた
請求項1〜5のいずれか一つに記載の仕口用ダンパー。
【請求項8】
前記第1固定部及び第2固定部の両側部に形成されたフランジ部に、該フランジ部の外面が覆われる大きさ及び形状に形成され、前記部材に対し前記固定手段で固定される取付け板を個々に取り付けた
請求項1〜5のいずれか一つに記載の仕口用ダンパー。
【請求項1】
木造軸組構造体の仕口部を構成する一対の部材からなる角隅面に取り付けられる仕口用ダンパーであって、
前記角隅面と対応する形状に形成された合成樹脂製のダンパーと、
前記ダンパーの一方の部材と対向する部分に形成され、該一方の部材に対し固定手段で固定される第1固定部と、
前記ダンパーの他方の部材と対向する部分に形成され、該他方の部材に対し固定手段で固定される第2固定部とを備え、
前記ダンパーの前記部材と対向しない部分に、該ダンパーの剛性を低めるための剛性調整部が形成された
仕口用ダンパー。
【請求項2】
前記剛性調整部は、前記ダンパーの前記部材と対向しない側面に形成され、該ダンパーの厚み方向に貫通する孔部で構成された
請求項1に記載の仕口用ダンパー。
【請求項3】
前記剛性調整部は、前記ダンパーの前記部材と対向しない側面又は端面に形成される凹部で構成された
請求項1に記載の仕口用ダンパー。
【請求項4】
前記剛性調整部が、前記第1固定部と第2固定部の一端が直交する交点と、該第1固定部と第2固定部の他端を結ぶ線の中間点を通る基準線上又は該基準線の両側に適宜数配置された
請求項1〜3のいずれか一つに記載の仕口用ダンパー。
【請求項5】
前記剛性調整部が、前記ダンパーの前記部材と対向しない前記第1固定部の端面側中央部と前記第2固定部の端面側中央部とを結ぶ基準線上に適宜数配置された
請求項1〜4のいずれか一つに記載の仕口用ダンパー。
【請求項6】
前記第1固定部及び第2固定部の前記部材が押し付けられる面に、該各固定部の外面が覆われる大きさ及び形状に形成され、前記部材に対し前記固定手段で固定される側面から見てL字状の取付け板を取り付けた
請求項1〜5のいずれか一つに記載の仕口用ダンパー。
【請求項7】
前記第1固定部及び第2固定部の前記部材が押し付けられる面に、該固定部の外面が覆われる大きさ及び形状に形成され、前記部材に対し前記固定手段で固定される取付け板を個々に取り付けた
請求項1〜5のいずれか一つに記載の仕口用ダンパー。
【請求項8】
前記第1固定部及び第2固定部の両側部に形成されたフランジ部に、該フランジ部の外面が覆われる大きさ及び形状に形成され、前記部材に対し前記固定手段で固定される取付け板を個々に取り付けた
請求項1〜5のいずれか一つに記載の仕口用ダンパー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−185171(P2010−185171A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27993(P2009−27993)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(509040640)株式会社SERB (1)
【出願人】(000107619)スターライト工業株式会社 (62)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(509040640)株式会社SERB (1)
【出願人】(000107619)スターライト工業株式会社 (62)
【Fターム(参考)】
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