説明

付着物除去装置及び付着物除去方法

【課題】被処理物(ワーク)を損傷させることなく、被処理物に堆積した付着物を効率的に除去することができる付着物除去装置及び付着物除去方法を提供する。
【解決手段】高圧水を噴射するノズル40が配されたノズルヘッド41と、ノズルヘッド41が取り付けられた高圧水噴射ガン30と、ノズル40に対向するようにワークWが載置されるステージ14とを備え、ワークWに堆積した付着膜100を前記ノズルから噴射される高圧水により除去する付着膜除去装置1において、高圧水噴射ガン30は、ステージ14に対してY軸方向に移動可能に構成され、ノズルヘッド41は、高圧水噴射ガン30の移動方向に対して直交する方向に直線状に振動可能に構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付着物除去装置及び付着物除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置やFPD(Flat Panel Display)等の電子機器の普及が著しい。このような電子機器を製造するにあたって、基板に金属膜や絶縁膜の薄膜を形成するために、スパッタリング装置やCVD(Chemical Vapor Deposition)装置等の真空成膜装置が用いられている。
【0003】
ところで、前記真空成膜装置を用いて金属膜や絶縁膜の薄膜を形成する際、金属膜や絶縁膜が基板以外の部分、例えば真空成膜装置の防着板や基板トレイ等の成膜装置部品に付着してしまう。これら成膜装置部品は、繰返し使用する必要があり、金属膜や絶縁膜等の付着膜が堆積した状態で使用し続けると、その付着膜が剥離して基板に付着してしまう等の問題があるため、定期的な洗浄が必要となる。
【0004】
このような付着膜を除去する方法として、化学薬品を用いて溶解する方法やサンドブラストを用いて付着膜を破壊する方法が知られている。また、高圧水を用いて物理的に付着膜を除去する方法も知られている。高圧水を用いる除去方法は、低コスト、リサイクル性等の点で非常に優れている。ただし、高圧水が吐出されるノズルのノズル径は、一般的に1mm以下であるため、高圧水の噴射面積が狭くなる。そのため、ノズルが搭載されたノズルヘッドを洗浄ガンの中心軸を中心として、回転自在に取り付けている付着膜除去装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図8は回転式のノズルヘッドにより高圧水が描く軌跡図である。なお、図8では、Y軸を洗浄ガンの移動方向とし、XY平面をノズルヘッドの回転平面としている。
図8に示すように、従来では洗浄ガンを成膜装置部品に平行に(Y方向に)移動させながらノズルヘッドを回転運動させることで、高圧水の噴射面積を向上させ、除膜効率を向上させている。また、非特許文献1にも示すように、ガンのノズルヘッドは、通常、回転式が一般である。
【特許文献1】特開2002−292346号公報
【非特許文献1】「ウォータージェットアタッチメント」CAT.NO.U4202NE,p.7,p.10
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のような付着膜除去装置にあっては、ノズルヘッドの回転運動に対する洗浄ガンの移動速度が重要になる。具体的には、洗浄ガンの移動速度がノズルヘッドの回転速度に対して早過ぎると、成膜装置用部品(以下、ワークという)に堆積した付着膜が除去しきれず、除膜残りが発生してしまう。また、洗浄ガンの移動速度を遅くした場合には、ワーク上の付着膜が除去された部位に対しても再度高圧水を噴射することになってしまうため、時間のロスとワークの損傷に繋がってしまうという問題がある。
【0007】
さらに、図9に示すように、洗浄ガンをワークWに対して傾斜させて、高圧水を付着膜(付着物)100の端面101に対して噴射することもできるが(図9中矢印参照)、回転式のノズルヘッドにあっては、付着膜100の端面101に高圧水が効率的に噴射されないという問題がある。
具体的には、図10の平面図に示すように、洗浄ガンをワークWに対して傾斜させて高圧水を噴射しても、多くの高圧水が付着膜100表面とワークW表面に噴射されてしまう(図10中太実線)。そのため、付着膜100を完全に除去できず付着膜100が残存してしまうという問題がある。また、付着膜100が除去された部位に対しても再度高圧水を噴射することになってしまうため、ワークWの損傷に繋がってしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、被処理物(ワーク)を損傷させることなく、被処理物に堆積した付着物を効率的に除去することができる付着物除去装置及び付着物除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の付着物除去装置は、高圧水を噴射するノズルが配されたノズルヘッドと、該ノズルヘッドが取り付けられた高圧水噴射装置と、前記ノズルに対向するように被処理物が載置されるステージとを備え、前記被処理物に堆積した付着物を前記ノズルから噴射される高圧水により除去する付着物除去装置において、前記高圧水噴射装置は、前記ステージと平行な第1の方向に前記ステージに対して相対移動可能に構成され、前記ノズルヘッドは、前記ステージと平行であって前記第1の方向と交差する第2の方向に直線状に振動可能に構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、高圧水噴射装置をステージと平行な第1の方向にステージに対して相対移動可能に構成するとともに、ノズルヘッドを第1の方向と交差する第2の方向に直線状に振動可能に構成することで、高圧水は、被処理物に対して、正弦波カーブを描くように噴射される。これにより、付着物が除去された部位に対して再度高圧水を噴射することなくなるため、被処理物の損傷を防止することができる。
また、被処理物の各領域に対して均等に高圧水を噴射させることが可能になり、高圧水噴射装置の移動速度を速めても全ての付着物を除去することができるので、付着物を効率的に除去することができる。
【0010】
また本発明の付着物除去装置は、前記ノズルヘッドは、前記ノズルから噴射された高圧水が前記被処理物の表面に対して斜め方向から入射するように、前記高圧水噴射装置に取り付けられていることを特徴とする。
この構成によれば、高圧水を被処理物の表面に対して斜め方向から入射するように噴射することで、被処理物と被処理物に堆積した付着物との界面にスベリの力が発生し、付着物の除去効率を向上させることができる。
【0011】
また本発明の付着物除去装置は、前記ノズルヘッドには、前記第2の方向に沿って前記ノズルが複数配されていることを特徴とする。
この構成によれば、ノズルヘッドに、ノズルを複数配することで、高圧水の噴射範囲を広げることができるため、作業効率を向上させることができる。
【0012】
また本発明の付着物除去装置は、隣接する前記ノズル間の距離Bは、前記ノズルヘッドの振動幅Aに対して、A≦B≦A+2mmの範囲に設定されていることを特徴とする。
この構成によれば、隣接する前記ノズル間の距離Bとノズルヘッドの振動幅Aとの関係を、B≦A+2mmに設定することで、付着物が除去された部位に対して再度高圧水を噴射することを防止することができるため、被処理物の損傷を防止することができる。また、A≦Bに設定することで、被処理物の全面に確実に高圧水を噴射することができるため、付着物の除去残りを防止することができる。
【0013】
一方、本発明の付着膜除去方法は、高圧水を噴射するノズルが配されたノズルヘッドと、該ノズルヘッドが取り付けられた高圧水噴射装置と、前記ノズルに対向するように被処理物が載置されるステージとを備えた付着物除去装置を使用して、前記被処理物に堆積した付着物を前記ノズルから噴射される高圧水により除去する付着物除去方法であって、前記高圧水噴射装置を、前記ステージと平行な第1の方向に前記ステージに対して相対移動させるとともに、前記ノズルヘッドを、前記ステージと平行であって前記第1の方向と交差する第2の方向に直線状に振動させながら、前記ノズルから前記付着物に向かって高圧水を噴射することを特徴とする。
この構成によれば、高圧水噴射装置をステージと平行な第1の方向にステージに対して相対移動させるとともに、ノズルヘッドを第1の方向と交差する第2の方向に直線状に振動させることで、高圧水は、被処理物に対して、正弦波カーブを描くように噴射される。これにより、付着物を除去した部位に対して再度高圧水が噴射されることなくなるため、被処理物の損傷を防止することができる。
また、被処理物の各領域に対して均等に高圧水を噴射させることが可能になり、高圧水噴射装置の移動速度を速めても全ての付着物を除去することができるので、付着物を効率的に除去することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の付着物除去装置によれば、付着物が除去された部位に対して再度高圧水を噴射することなくなるため、被処理物の損傷を防止することができる。また、被処理物の各領域に対して均等に高圧水を噴射させることが可能になり、高圧水噴射装置の移動速度を速めても全ての付着物を除去することができるので、付着物を効率的に除去することができる。したがって、付着物の除去効率及び除去速度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。また、また、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。そして、水平面内における所定方向をX方向、水平面内においてX方向と直交する方向をY方向、X方向及びY方向のそれぞれに直交する上下方向をZ方向とする。
【0016】
(第1実施形態)
(付着膜除去装置)
図1,2は、本実施形態に係る付着膜除去装置(付着物除去装置)の側面図である。
図1,2に示すように、本実施形態に係る付着膜除去装置1は、被処理物(以下、ワークという)Wが載置されるベース部10と、ワークWに対して高圧水を吐出する洗浄部20とを備えている。
【0017】
ベース部10は、フレーム11を備えている。フレーム11は、平面視矩形状のものであり、その中央部には支持部材12が配置されている。この支持部材12は、側面視矩形状のものであり、その上面で、洗浄槽13を支持している。
洗浄槽13は、上部が開口した箱型形状であり、後述するノズル40から吐出される高圧水の飛散を防ぎ、高圧水を収容するものである。また、洗浄槽13には、ドレインタンクに連通するドレイン管(ともに不図示)が接続されている。
【0018】
洗浄槽13内には、ステージ14が設けられている。このステージ14は、洗浄するワークWを載置するものであり、洗浄槽13の開口と略同形状の金属メッシュ等から構成されている。このように、ステージ14を金属メッシュで構成することにより、ワークWとステージ14との摩擦力を向上させて、洗浄時におけるワークWのずれを防止することができる。
【0019】
なお、本実施形態におけるワークWは、付着膜100が堆積した真空成膜装置の防着板や基板トレイ等の成膜装置部品であり、例えば、ステンレス鋼(SUS)、アルミ(Al)等からなる。また、ワークWに堆積する付着膜100として、真空成膜装置を用いて成膜される銅(Cu)、酸化インジウム(ITO)、アルミ(Al)合金、モリブデン(Mo)合金、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、アルミシリコン(AlSi)、タンタル(Ta)等が挙げられる。
【0020】
また、フレーム11の両側には、そのY軸方向に沿って、第1ガイドレール15が形成されている。この第1ガイドレール15は、山型形状の凸部16を有している。
【0021】
一方、洗浄部20は、高圧水噴射ガン(高圧水噴射装置)30と、該高圧水噴射ガン30を支持するフレーム21とを備えている。フレーム21は、下枠22と、縦枠23と、上枠24とからなり、洗浄槽13をX軸方向で跨ぐように構成されている。
【0022】
下枠22の下面には、複数のガイドローラ(例えば、各2つずつ)25が、回転可能に設けられている。このガイドローラ25は、側面視H形状のものであり、上述した第1ガイドレール15の凸部16に噛合うように配置されている。そして、洗浄部20は、モータ等の図示しない駆動手段により、第1ガイドレール15上をY軸方向に沿って移動可能(図2中矢印)に構成されている。
上枠24は、縦枠23により支持されており、その上下面には第2ガイドレール26が形成されている。この第2ガイドレール26は、上述した第1ガイドレール15と同様に凸部27を有するものであり、X軸方向に沿って形成されている。
【0023】
第2ガイドレール26には、第2ガイドレール26をその上下から挟むようにガイドローラ(例えば、4つずつ)28が回転可能に設けられている。このガイドローラ28は、前述したガイドローラ25と同様の形状のものであり、第2ガイドレール26の凸部27に噛合うように配置されている。このガイドローラ28には、モータ等の駆動手段29が設けられており、この駆動手段29には、高圧水噴射ガン30が設けられている。そして、高圧水噴射ガン30は、駆動手段29により第2ガイドレール26上をX軸方向に沿って移動可能に構成されている(図1中矢印)。
【0024】
図3は、高圧水噴射ガン(高圧水噴射装置)の拡大図であり、図4はノズルヘッドの底面拡大図である。
図3に示すように、高圧水噴射ガン30は、ベース部10のステージ14と対向配置されており、高圧水を吐出するノズル40と、該ノズル40を備えたノズルヘッド41と、該ノズルヘッド41が取り付けられるガン本体部42とを備えている。
【0025】
ガン本体部42は、駆動手段29に接続されている。また、ガン本体部42の上端には、高圧水ホース43が接続されており、図示しない供給源から高圧水が供給される。なお、本実施形態における高圧水の圧力は30〜250Mpa程度が好ましい。
【0026】
一方、図4に示すように、ガン本体部42の下端には、ノズルヘッド41が取り付けられている。このノズルヘッド41は、平面視矩形状のものであり、図示しない駆動手段によりガン本体部42に対してX軸方向に振動可能に構成されている。また、ノズルヘッド41の下面には、そのX軸方向に沿って複数のノズル40(例えば、2つ)が配列されている。なお、ノズルヘッド41に配列されるノズル40の数は、3つ以上でもよく、単数でもよい。
【0027】
ノズル40は、供給源から供給される高圧水(図3矢印参照)をワークWに対して噴射するものであり、本実施形態において、ノズル径が例えば、0.5mmで形成されている。また、このノズル40により噴射された高圧水のワークW表面における噴射径φ(図4中二点鎖線)は、平均で2mm程度となる。
【0028】
ここで、隣接するノズル40間の距離と高圧水噴射ガン30の直線往復移動の振動幅との関係は、隣接するノズル40から噴射される高圧水の噴射径φが、接するような位置関係に配置することが好ましい。
具体的には、隣接するノズル40間の距離Bは、ノズルヘッド41の振動幅Aに対して、A≦B≦A+2mmの範囲に設定されていることが好ましい。B≦A+2mm(図4においてA=A2の場合)とすることで、ノズルヘッド41の振動により、隣接するノズル40から噴射される高圧水の噴射径φが接する位置まで移動するため、付着膜100が除去された部位に対して再度高圧水を噴射することを防止することができる。また、A≦B(図4においてA=A1の場合)とすることで、ノズルヘッド41の振動により、一方のノズル40が他方のノズル40と重なる位置まで移動するため、ワークWの全面に高圧水を確実に噴射させることができ、除去残りを防ぐことができる。
【0029】
(付着膜除去方法)
次に、本実施形態における付着膜除去装置の作用である、付着膜除去方法について説明する。
まず、図1,2に示すように、ステージ14上にワークWを載置する。次に、洗浄部20を第1ガイドレール15上のY軸負方向の端部に移動させるとともに、高圧水噴射ガン30を第2ガイドレール26上のX軸負方向の端部に移動させる。そして、ワークW表面に対して垂直に高圧水を噴射していく。
【0030】
作業が開始されると、高圧水噴射ガン30のノズルヘッド41は、ワークW上をX軸方向に振動運動し始める。この時の振動数としては、例えば、1000rpm程度が好ましく、振幅(ノズルヘッドの移動範囲の両端間の距離であり、図4のA寸法に相当)としては、例えば20mm(±10mm)程度が好ましい。なお、上述した振幅とは、ノズルヘッド41の両端間の振動可能範囲である。
【0031】
一方、洗浄部20に搭載された高圧水噴射ガン30は、ベース部10の第1ガイドレール15に沿ってY軸正方向に向かって移動し始める。この時の高圧水噴射ガン30の移動速度は、ノズルヘッド41の振動の1往復を1サイクルとして、1サイクルにつき0.5mm程度(ノズルヘッド41の振動数を1000rpmとすれば、高圧水噴射ガン30の移動速度は約500mm/min)であることが好ましい。移動速度が1サイクルにつき0.5mm以上であると、ワークW表面の付着膜100が完全に除去できず、付着膜100が残留してしまう虞があるため好ましくない。また、移動速度が1サイクルにつき0.5mm以下であると付着膜100が除去された部位に再度高圧水が噴射されてしまい、ワークWにダメージを与えてしまう虞があるため好ましくない。
【0032】
図5は、本実施形態における、付着膜除去装置により高圧水が描く軌跡図である。なお、図5では、X軸(振幅)をノズルヘッドの振動方向とし、Y軸を高圧水噴射ガンの移動方向としている。
図5に示すように、高圧水噴射ガン30をY軸正方向に移動させるとともに、ノズルヘッド41をX軸方向に振動させつつ、ノズル40から高圧水を噴射することで、高圧水はワークW表面対して正弦波カーブを描くような軌跡で噴射されることとなる。
【0033】
高圧水噴射ガン30がY軸正方向の端部まで移動したら、高圧水噴射ガン30をY軸負方向の端部まで復帰させ、X軸正方向にノズル数×ノズル間距離(例えば、図4中では、2×B)だけ移動させる。その位置から上記と同様の処理を繰り返すことでワークW全面に高圧水を噴射していく。
【0034】
ここで、本実施形態の付着膜除去装置1と従来の回転式のノズルヘッドを備えた付着膜除去装置との除去効率の比較試験を行った。本試験では、ノズルヘッドの振動数、振幅、高圧水の圧力を同条件に設定し、高圧水噴射ガンの移動速度のみを変化させた。
本試験によれば、本実施形態における付着膜除去装置1を用いた場合、従来に比べ、1.2〜1.5倍の移動速度で、ワークW全面の付着膜100を完全に除去することが可能となった。
【0035】
したがって、本実施形態は、洗浄部20の高圧水噴射ガン30をワークWに対してY軸方向に移動可能に構成するとともに、高圧水噴射ガン30のノズルヘッド41を高圧水噴射ガン30の移動方向に対して直交する方向(X軸方向)に直線状に振動可能に構成した。
この構成によれば、高圧水噴射ガン30を移動させながら、その移動方向に直交する方向にノズルヘッド41を直線状に振動させることで、高圧水は、ワークWに対して、正弦波カーブを描くように噴射される。これにより、付着膜100が除去された部位に対して再度高圧水を噴射することなくなるため、ワークWの損傷を防止することができる。
また、ワークWの各領域に対して均等に高圧水を噴射させることが可能になり、従来のような回転式のノズルヘッドに比べ、高圧水噴射ガン30の移動速度を速めても全ての付着物を除去することができるので、付着膜100を効率的に除去することができる。
【0036】
さらに、ノズルヘッド41に、ノズル40を複数配列することで、高圧水の幅方向(X軸方向)の噴射範囲を広げることができるため、付着膜100の除去効率を向上させることができる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、図6,7に基づいて、本発明の第2実施形態について説明する。
本発明の第2実施形態は、高圧水噴射ガン30のガン本体部42をワークWに対して傾斜させて洗浄を行う点で第1実施形態と異なる。なお、本実施形態において、図1,2を援用して、同一部材に同一符号を付し説明を省略する。
本実施形態における付着膜除去装置は、第1実施形態と同様の構成であって(図1,2参照)、さらに、高圧水噴射ガン30がYZ平面内において傾斜した状態で固定しうるように構成されている。つまり、高圧水噴射ガン30は、ワークW表面に対して傾斜配置可能に構成され、ノズル40から噴射される高圧水がワークWの表面に対して斜め方向から入射するようになっている。この時の傾斜角度θとしては、ワークWに対して45°程度であることが好ましい。
【0038】
(付着膜除去方法)
次に、本実施形態の付着膜除去装置の作用である、付着膜除去方法について説明する。
まず、高圧水噴射ガン30をワークWに対して、傾斜させる。次いで、第1実施形態と同様に除去作業を行う。
【0039】
この時、従来の回転式ノズルでは、上述したようにワークWに対して傾斜させて噴射しても、高圧水が付着膜100の端面101に効率的に噴射されなかった(図10参照)。これに対して、本実施形態の直線振動式ノズルでは、ワークWに堆積された付着膜100の端面101に、高圧水を効率的に噴射することができる。
具体的には、図7に示すように、付着膜100の端面101に沿って高圧水を確実に噴射させることができるため(図7中太実線)、ワークWと付着膜100との界面にスベリの力が発生し、付着膜100を剥すように除去することができる。これにより、高圧水を垂直に噴射させた場合に比べ、高圧水噴射ガン30の移動速度をさらに向上させることができる。
【0040】
したがって、本実施形態は、高圧水噴射ガン30がワークW表面に対して傾斜配置可能に構成され、ノズル40から噴射される高圧水がワークWの表面に対して斜め方向から入射するように構成した。
この構成によれば、高圧水噴射ガン30を、ワークWに対して傾斜して取り付けることで、高圧水をワークWに対して斜め方向から入射するように、噴射させることができる。これにより、付着膜100の端面101に沿って高圧水を確実に噴射させることができるため、ワークWとワークWに堆積した付着膜100との界面にスベリの力が発生し、付着膜100を剥すように除去することができる。したがって、付着膜100の除去効率をより向上させることができる。
【0041】
なお、上述の第1、2実施形態について、ワークW、付着膜100の条件等を特に限定はしないが、第1実施形態においては、ワークWに対して垂直に高圧水を噴射するため、ワークWに大きな圧力がかかる。したがって、上述したワークW及び付着膜100の材質のうち、比較的硬いワークWに付着した、硬い付着膜100を局所的に除去していく際に特に好適である。
【0042】
一方、第2実施形態は、ワークWに対して高圧水を傾斜させて噴射するため、ワークWにかかる高圧水の圧力が垂直に噴射する場合に比べ弱くなっている。逆に、ワークWと付着膜100との界面にスベリの力が発生するため、付着膜100を剥すように除去していくことができる。したがって、上述したワークW及び付着膜100の材質のうち、比較的軟らかいワークWに付着した、軟らかい付着膜100を除去する際に特に好適である。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0044】
例えば、本実施形態において、ステージに対して洗浄部をY軸方向に移動可能に構成したが、洗浄部を固定し、ステージを洗浄部に対して移動可能にするような構成としてもよい。
また、ノズルから噴射する流体は、高圧水以外の高圧流体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態における付着膜除去装置の側面図である。
【図2】本発明の実施形態における付着膜除去装置の側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態における高圧水噴射ガンの拡大図である。
【図4】本発明の実施形態における高圧水噴射ガンの拡大図である。
【図5】本発明の実施形態における付着膜除去装置により高圧水が描く軌跡図である。
【図6】本発明の第2実施形態における高圧水噴射ガンの拡大図である。
【図7】本発明の第2実施形態における高圧水を付着膜の側面から噴射させた図である。
【図8】従来の回転式ノズルヘッドにより高圧水が描く軌跡図である。
【図9】高圧水を付着膜の側面から噴射させた図である。
【図10】従来の回転式ノズルヘッドにより高圧水を付着膜の側面から噴射させた図である。
【符号の説明】
【0046】
1…付着膜除去装置(付着物除去装置) 14…ステージ 30…高圧水噴射ガン(高圧水噴射装置) 40…ノズル 41…ノズルヘッド 100…付着膜(付着物) W…ワーク(被処理物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧水を噴射するノズルが配されたノズルヘッドと、
該ノズルヘッドが取り付けられた高圧水噴射装置と、
前記ノズルに対向するように被処理物が載置されるステージとを備え、前記被処理物に堆積した付着物を前記ノズルから噴射される高圧水により除去する付着物除去装置において、
前記高圧水噴射装置は、前記ステージと平行な第1の方向に前記ステージに対して相対移動可能に構成され、
前記ノズルヘッドは、前記ステージと平行であって前記第1の方向と交差する第2の方向に直線状に振動可能に構成されていることを特徴とする付着物除去装置。
【請求項2】
前記ノズルヘッドは、前記ノズルから噴射された高圧水が前記被処理物の表面に対して斜め方向から入射するように、前記高圧水噴射装置に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の付着物除去装置。
【請求項3】
前記ノズルヘッドには、前記第2の方向に沿って前記ノズルが複数配されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の付着物除去装置。
【請求項4】
隣接する前記ノズル間の距離Bは、前記ノズルヘッドの振動幅Aに対して、
A≦B≦A+2mm
の範囲に設定されていることを特徴とする請求項3記載の付着物除去装置。
【請求項5】
高圧水を噴射するノズルが配されたノズルヘッドと、
該ノズルヘッドが取り付けられた高圧水噴射装置と、
前記ノズルに対向するように被処理物が載置されるステージとを備えた付着物除去装置を使用して、前記被処理物に堆積した付着物を前記ノズルから噴射される高圧水により除去する付着物除去方法であって、
前記高圧水噴射装置を、前記ステージと平行な第1の方向に前記ステージに対して相対移動させるとともに、
前記ノズルヘッドを、前記ステージと平行であって前記第1の方向と交差する第2の方向に直線状に振動させながら、
前記ノズルから前記付着物に向かって高圧水を噴射することを特徴とする付着物除去方法。
【請求項6】
前記ノズルから噴射した高圧水を、前記被処理物と前記付着物との付着面の端辺に向かって、前記被処理物の表面に対して斜め方向から入射させることを特徴とする請求項5記載の付着物除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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