付箋積層体及び付箋積層体の製造方法
【課題】複数の付箋の基端部を結束させてなり、かつ裏面に保護片を貼着した付箋積層体であって、その表面と先端面とのなす角度が鋭角であるものを提供する。
【解決手段】0.08mm以下の厚さの複数の付箋を積層して、各付箋の基端部(4a)の裏面に形成した粘着層(6)で結合するとともに、この付箋積層体の裏面側に最下層の付箋の粘着面を保護するための保護片(8)を貼着してなり、
さらにこの付箋積層体(2)の先端面(2C)と付箋積層体の表面(2A)との間の角度(θ)が鋭角になるようにした。
【解決手段】0.08mm以下の厚さの複数の付箋を積層して、各付箋の基端部(4a)の裏面に形成した粘着層(6)で結合するとともに、この付箋積層体の裏面側に最下層の付箋の粘着面を保護するための保護片(8)を貼着してなり、
さらにこの付箋積層体(2)の先端面(2C)と付箋積層体の表面(2A)との間の角度(θ)が鋭角になるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付箋積層体及び付箋積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の付箋を積層して基端部側で結束し、かつ裏面側に粘着面を保護するための保護片を貼着した付箋積層体が知られている。この種の付箋積層体の製造方法として、細長い帯状紙から付箋を一枚毎に打ち抜き、これらの付箋を重ねて張り合わせ、付箋積層体とする方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−310945
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法に代えて、付箋形成用の帯状紙を連続した状態で粘着剤を裏面に付設し、この帯状紙を回転板の回りに巻き付け、積層させた後に、この積層物の二か所を破断刃で破断することも考えられる。
【0005】
しかしながらカッターの片側又は両側は傾斜面になっているので、フィルム状のものの積層物にカッターを圧入させると、図11に示すように付箋積層体の表面と付箋積層体の自由端(先端)側の切断面との間の角度θが鈍角となる。こうなると鈍角となった箇所に指を当てて付箋を一枚ずつとることが難しい。
【0006】
一般に平坦な物を表面に垂直に切る時に刃物を片刃とし、その片刃のほぼ垂直な面を切り取る部分(付箋積層体形成用部分)に向けて切断することが知られている。そこのような方法で付箋積層体を切り取ると、切断面と表面との角度は直角に近付いたが、完全に直角とはならなかった。これは、カッターの刃先が積層体を押しのけて変形させるためと考えられる。
【0007】
近年では、付箋の素材を合成樹脂とすることで、従来の紙製の付箋(通常の厚さは0.1mm程度)より薄型としたものが市販されている。こうした薄型の付箋を一枚ずつ確実にとることができるようにするためには、付箋積層体の表面と自由端側の切断面とがなす角度を少なくとも直角、できれば鋭角にすることが望ましい。
【0008】
この要望に応えるために、出願人は、図8に示すように既に切り取った付箋積層体の表面に冶具Tを圧接し、この表面に基端部側から先端部で側へ圧力を加えて、表面と切断面との角度が鋭角となるようにした。しかしながら、これでは図に示すように各付箋同士の変位が不均一になり、切断面が滑らかでなくなるという不都合が観測された。
【0009】
本願の第1の目的は、複数の付箋の基端部を結束させてなり、かつ裏面に保護片を貼着した付箋積層体であって、その表面と先端面とのなす角度が鋭角であるものを提供することである。
【0010】
本願発明の第2の目的は、上述の表面及び先端面をなす角度が鋭角である付箋積層体を容易に製造可能な方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の手段は、付箋積層体であり、
0.08mm以下の厚さの複数の付箋を積層して、各付箋の基端部4aの裏面に形成した粘着層6で結合するとともに、この付箋積層体の裏面側に最下層の付箋の粘着面を保護するための保護片8を貼着してなり、
さらにこの付箋積層体2の先端面2Cと付箋積層体の表面2Aとの間の角度θが鋭角になるようにしている。
【0012】
本手段は、基端側で複数の付箋を結束するとともに裏面に保護片を貼り付けた付箋積層体において表面と先端面との角度θを鋭角とすることを提案する。これにより図2に想像線で示すように先端面に指を当てたときに最も表側の付箋に確実に指が当たり、一枚の付箋を効果的に取り出すことが可能となる。付箋の厚さの上限値を定めたのは、これ以上の厚さであると、先端面が表面に対して垂直であっても最上層の付箋に指を掛けても指先が滑ることなく当該付箋を取り出すことができ、本願発明のような構造とする必要がないからである。付箋の厚さの下限値は、材料を付箋の形に形成することが可能な実用的な下限値である。
【0013】
「付箋」は合成樹脂で形成することが望ましいが、紙などの一般的な素材で形成することができる。「保護片」とは、最裏方の付箋の粘着層を保護するとともに、付箋積層体を設置面から容易に分離させるための手段(いわゆる離型紙など)である。
【0014】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ上記θの角度を85°以下75°以上としている。
【0015】
本手段では、付箋積層体の表面と先端面との角度θの好適な範囲を提案している。この数値範囲の中で重要なのは角度の上限値であり、上記角度が直角よりもごく僅かに小さくても最上位の付箋に指を係止する効果を十分に発揮することができる。数値範囲の下限値は、後述のカッターを使用して実現可能な先端面の傾斜角度である。
【0016】
第3の手段は、
裏面の長手方向の一部に粘着層を有する細長いテープ32を積層するとともに、このテープ積層体38の裏面側に保護片8を張り付けて、保護片付きテープ積層体を形成する工程と、
このテープ積層体のうち粘着剤で接合された接合部分と非接合部分との2箇所をカッターで切断して、2つの切断箇所の保護片付きテープ積層体部分を、複数の付箋を基端部4aで結束した付箋積層体とする工程とからなり、
テープ積層体に対して、保護片側からカッターを挿入することと、
非接合部分への圧入用のカッター42は、刃体の片面側に主たる傾斜面42aを有する片刃とし、この主たる傾斜面42aを付箋形成箇所に向けることとを特徴とする。
【0017】
本手段では、第1の手段又は第2の手段に係る付箋積層体を製造するために好適な方法を提案している(図3参照)。テープ積層体のうち非接合部分への圧入用の第1のカッター42は、図5に示すように刃体の一方の面に主たる傾斜面42aを有する片刃とし、この傾斜面を付箋形成箇所の側へ向けている。この傾斜面42aは、テープ積層体の切断面に傾斜を付する機能を兼ねている。本明細書にいう「片刃」は、刃先の保護のために主たる傾斜面とは反対側に主たる傾斜面より短い補助傾斜面を付したものを含むものとする。これについては後述する。
【発明の効果】
【0018】
第1の手段に係る発明によれば、付箋積層体の先端面2Cと付箋積層体の表面2Aとの角度θが鋭角となるようにしたから、各付箋が薄くても一枚ずつとることができる。
【0019】
第2の手段に係る発明によれば、付箋積層体の角度を85°以下としたので、付箋を一枚ずつとる操作がより容易となる。
【0020】
第3の手段に係る発明によれば、裏面に保護片を有するテープ積層体に、その裏面側から付箋形成箇所に傾斜面を向けて片刃を入れるから、表面2Aと先端面2Cとの角度が鋭角である付箋積層体を簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る付箋積層体の縦断面図である。
【図2】図1の付箋積層体の要部縦断面図である。
【図3】図1の付箋積層体の製造工程の第1段階の説明図であり、図3(A)は、当該段階の作業を側方からみた図、図3(B)はその作業を上方から見た図である。
【図4】上記製造工程の第2段階を示す説明図であり、図4(A)はテープ積層体に保護片を貼付する様子を、図4(B)はそのテープ積層体を切断する様子を描いている。
【図5】図1の付箋積層体の製造工程の第3段階を示す説明図であり、テープ積層体から付箋積層体を一つずつ打ち抜く様子を描いている。
【図6】図5の要部拡大図である。
【図7】図6で使用する片刃の説明図である。
【図8】本発明の参考図である。
【図9】本発明の実施例である付箋積層体及びこの積層体の作製に使用したカッターを表す図である。
【図10】図9の付箋積層体の要部の拡大図である。
【図11】従来の付箋積層体の拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1から図2は、本発明の実施形態に係る付箋積層体2を示している。この付箋積層体2は、上下方向に重ね合わせた同形状の複数の付箋4と、最も下位の付箋の裏面に貼着した保護片8とで形成している。
【0023】
上記付箋4は、各基端部4aの裏面に粘着層6を有し(図6参照)、この粘着層を介して相互に接合されている。付箋4は、PP(ポリプロピレン)又はPETなどの合成樹脂の薄いフィルムで形成されている。このフィルムの厚さは、一般的な紙製の付箋の厚さより小さく、例えば0.03mm〜0.08mm、好ましくは0.04mmとするとよい。
【0024】
上記保護片8は、もっとも下層の付箋の下面全体を覆っている。この保護片8は、例えば紙で形成することができる。
【0025】
図1に示すように、付箋積層体2の表面2A及び裏面2Bは相互に平行であり、付箋積層体2の先端面2Cは表面2Aとの間に一定の角度θ(<90°)を存して傾斜している。これにより付箋積層体2の鋭角箇所に指を当て、図2に想像線で示すように、一枚ずつ付箋4を取り出すことができる。
【0026】
上記付箋積層体の先端面2Cと表面2Aとの好適な角度θは85°から75°であり、特に80°が好適である。発明の原理からは、角度θが75°以下でも取り易さは変わらないが、付箋積層体の上層側と下層側とで付箋の長さが不揃いとなる、後述のカッターで積層体を打ち抜くときの抵抗が大となるなどの不都合を生ずる。
【0027】
図3から図6は、本発明に係る付箋積層体2の製造方法を示している。
【0028】
図3は、付箋積層体2を製造するためのテープ積層体を製造する工程を示している。同図3(A)中、30は、付箋の材料であるテープ32を巻いたロールである。34は、粘着剤吐出手段であり、図3(B)の如く、テープ32の片面にテープ長手方向と平行に適数の帯状の粘着層6を付着させる。36は、回転軸Oの回りを回転可能な回転板である。この回転板にテープ32の先端を取り付け、次に回転板を回転させることで、回転板36の回りにテープ32を巻き付け、テープ積層体38を形成する。なお、図面では簡単のために2つの粘着層6を塗布したテープ32を描いているが、テープの巾を大きくして多数の粘着層6を形成することが好適である。
【0029】
図4(A)は、このテープ積層体38のうち回転板36の表面及び裏面に対応する部分に2枚の保護片8を貼着する工程を示している。図4(B)は、回転体に巻き付けたテープ積層体を適当な箇所で切断する工程を示している。切断箇所は一箇所でも複数箇所でもよい。これにより複数個分の付箋積層体形成箇所を含むテープ積層体が切り出される。
【0030】
図5及び図6は、上記テープ積層体38から付箋積層体2を一つずつ打ち抜く工程を示している。テープ積層体のうち前述の粘着層で接合した接合部分38aを第2のカッター44で、非接合部分38bを第1のカッター42でそれぞれ切断する。
【0031】
この第1のカッター42は、図7に示す如く、一方面側に大きな傾斜面(主傾斜面)42aを有する片刃である。「片刃」には、一般に刃体の片面にだけ刃が付いているという意味と、刃体の巾方向の片側の縁にのみ刃が付いているという意味とがあるが、本明細書では後者の意味に用いる。但し、完全な片刃とすると、刃先の強度が不足するおそれがあるので、図示例では、刃体の他方面側にもごく短い補助傾斜面42bを設けている。この傾斜面を付箋形成箇所に向けて第1のカッターを配置し、テープの積層体を切断することで、付箋積層体2を裏抜きすることができる。なお、第2のカッター44については、図示例では両刃を用いている。
【0032】
これらの第1カッター42及び第2カッター44の間には、図示していないテープ抑え手段を設けるとよい。2つのカッターをテープ積層体の保護片側(裏面側)から圧入することで、付箋積層体を裏抜きすることができる。この付箋積層体の表面2Aと先端面2Cとの角度θは鋭角となる。
【0033】
[実施例]
図9及び図10は、本発明の実施例を示している。図9は、出願人が実際に試作した付箋積層体の形態及び第1のカッター42の形態を表している。この第1のカッターは、従来公知のものであり、全体の厚さD1=0.7mm、表側に主傾斜面(大きな刃面)42aを、裏側に補助傾斜面(小さな刃面)42bを有している。大きな刃面の長さH1及び小さな刃面の長さH2はそれぞれH1=1mm、H2=0.2mmである。また各刃の傾斜面が垂直方向に対してなす角度βは、ともに29°である。もっともこれらの構成は適宜変更することができる。
【0034】
試作例では、厚さ0.04mmのPP製のテープを25枚積層したものを、上記第1のカッター42で切断した。その結果として、先端面2Cと表面2Aの角度θ=80°の付箋積層体が得られた。このθの余角、すなわち、付箋積層体の先端面と垂直方向とがなす角αの角度は10°であり、これは主傾斜面42aの傾斜角度(28°)よりも小さい。
【0035】
この試作例から、先端面2Cと垂直方向との角度αの付箋積層体を作製しようとするときには、所望の角度αよりも主カッター42の刃の傾斜角度βをそれより大きくすればよいことが判る。
【0036】
図10は、付箋積層体中の各付箋の端面の水平方向を模式的に表したものである。図面では各付箋の端面を階段状に描いているが、実際にこのような形になっているかどうかは不明である。先端面と垂直方向との角度αが10°であり、各付箋の厚さをd=0.04mmだから、隣接する各付箋の端面のずれΔwは、Δw=d×tanθ=0.007mmである。
【0037】
出願人は、付箋積層体の先端面を垂直方向に対して10°程度傾斜したことで、付箋のめくり易さにどの程度寄与するのかを実験した。試験条件を同じにするために、ある一つの付箋積層体から保護片を剥離したものを、年齢の異なる被検者が表側及び裏側からそれぞれめくり、一枚ずつ付箋をめくることができるか否かを調べた。
【0038】
その結果を次の表1に示す。一枚の付箋をとることができた事象は○、2枚の付箋をとってしまった事象は△、全く付箋をめくることができない事象は×で表した。
【0039】
【表1】
【0040】
上記のように、付箋積層物の先端面と垂直方向とのなす角度αが10°程度でも、付箋を表側からめくる場合と裏側からめくる場合とでは上記のように顕著な差が顕れた。
【符号の説明】
【0041】
2…付箋積層体 2A…表面 2B…裏面 2C…先端面
4…付箋 4a…基端部 6…粘着層 8…保護片
30…ロール 32…テープ 34…粘着剤吐出手段 36…回転板
38…テープ積層体 38a…接合部分 38b…非接合部分
44…第2のカッター 42…第1のカッター(片刃) 42a…主傾斜面
42b…補助傾斜面 T…治具
【技術分野】
【0001】
本発明は、付箋積層体及び付箋積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の付箋を積層して基端部側で結束し、かつ裏面側に粘着面を保護するための保護片を貼着した付箋積層体が知られている。この種の付箋積層体の製造方法として、細長い帯状紙から付箋を一枚毎に打ち抜き、これらの付箋を重ねて張り合わせ、付箋積層体とする方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−310945
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法に代えて、付箋形成用の帯状紙を連続した状態で粘着剤を裏面に付設し、この帯状紙を回転板の回りに巻き付け、積層させた後に、この積層物の二か所を破断刃で破断することも考えられる。
【0005】
しかしながらカッターの片側又は両側は傾斜面になっているので、フィルム状のものの積層物にカッターを圧入させると、図11に示すように付箋積層体の表面と付箋積層体の自由端(先端)側の切断面との間の角度θが鈍角となる。こうなると鈍角となった箇所に指を当てて付箋を一枚ずつとることが難しい。
【0006】
一般に平坦な物を表面に垂直に切る時に刃物を片刃とし、その片刃のほぼ垂直な面を切り取る部分(付箋積層体形成用部分)に向けて切断することが知られている。そこのような方法で付箋積層体を切り取ると、切断面と表面との角度は直角に近付いたが、完全に直角とはならなかった。これは、カッターの刃先が積層体を押しのけて変形させるためと考えられる。
【0007】
近年では、付箋の素材を合成樹脂とすることで、従来の紙製の付箋(通常の厚さは0.1mm程度)より薄型としたものが市販されている。こうした薄型の付箋を一枚ずつ確実にとることができるようにするためには、付箋積層体の表面と自由端側の切断面とがなす角度を少なくとも直角、できれば鋭角にすることが望ましい。
【0008】
この要望に応えるために、出願人は、図8に示すように既に切り取った付箋積層体の表面に冶具Tを圧接し、この表面に基端部側から先端部で側へ圧力を加えて、表面と切断面との角度が鋭角となるようにした。しかしながら、これでは図に示すように各付箋同士の変位が不均一になり、切断面が滑らかでなくなるという不都合が観測された。
【0009】
本願の第1の目的は、複数の付箋の基端部を結束させてなり、かつ裏面に保護片を貼着した付箋積層体であって、その表面と先端面とのなす角度が鋭角であるものを提供することである。
【0010】
本願発明の第2の目的は、上述の表面及び先端面をなす角度が鋭角である付箋積層体を容易に製造可能な方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の手段は、付箋積層体であり、
0.08mm以下の厚さの複数の付箋を積層して、各付箋の基端部4aの裏面に形成した粘着層6で結合するとともに、この付箋積層体の裏面側に最下層の付箋の粘着面を保護するための保護片8を貼着してなり、
さらにこの付箋積層体2の先端面2Cと付箋積層体の表面2Aとの間の角度θが鋭角になるようにしている。
【0012】
本手段は、基端側で複数の付箋を結束するとともに裏面に保護片を貼り付けた付箋積層体において表面と先端面との角度θを鋭角とすることを提案する。これにより図2に想像線で示すように先端面に指を当てたときに最も表側の付箋に確実に指が当たり、一枚の付箋を効果的に取り出すことが可能となる。付箋の厚さの上限値を定めたのは、これ以上の厚さであると、先端面が表面に対して垂直であっても最上層の付箋に指を掛けても指先が滑ることなく当該付箋を取り出すことができ、本願発明のような構造とする必要がないからである。付箋の厚さの下限値は、材料を付箋の形に形成することが可能な実用的な下限値である。
【0013】
「付箋」は合成樹脂で形成することが望ましいが、紙などの一般的な素材で形成することができる。「保護片」とは、最裏方の付箋の粘着層を保護するとともに、付箋積層体を設置面から容易に分離させるための手段(いわゆる離型紙など)である。
【0014】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ上記θの角度を85°以下75°以上としている。
【0015】
本手段では、付箋積層体の表面と先端面との角度θの好適な範囲を提案している。この数値範囲の中で重要なのは角度の上限値であり、上記角度が直角よりもごく僅かに小さくても最上位の付箋に指を係止する効果を十分に発揮することができる。数値範囲の下限値は、後述のカッターを使用して実現可能な先端面の傾斜角度である。
【0016】
第3の手段は、
裏面の長手方向の一部に粘着層を有する細長いテープ32を積層するとともに、このテープ積層体38の裏面側に保護片8を張り付けて、保護片付きテープ積層体を形成する工程と、
このテープ積層体のうち粘着剤で接合された接合部分と非接合部分との2箇所をカッターで切断して、2つの切断箇所の保護片付きテープ積層体部分を、複数の付箋を基端部4aで結束した付箋積層体とする工程とからなり、
テープ積層体に対して、保護片側からカッターを挿入することと、
非接合部分への圧入用のカッター42は、刃体の片面側に主たる傾斜面42aを有する片刃とし、この主たる傾斜面42aを付箋形成箇所に向けることとを特徴とする。
【0017】
本手段では、第1の手段又は第2の手段に係る付箋積層体を製造するために好適な方法を提案している(図3参照)。テープ積層体のうち非接合部分への圧入用の第1のカッター42は、図5に示すように刃体の一方の面に主たる傾斜面42aを有する片刃とし、この傾斜面を付箋形成箇所の側へ向けている。この傾斜面42aは、テープ積層体の切断面に傾斜を付する機能を兼ねている。本明細書にいう「片刃」は、刃先の保護のために主たる傾斜面とは反対側に主たる傾斜面より短い補助傾斜面を付したものを含むものとする。これについては後述する。
【発明の効果】
【0018】
第1の手段に係る発明によれば、付箋積層体の先端面2Cと付箋積層体の表面2Aとの角度θが鋭角となるようにしたから、各付箋が薄くても一枚ずつとることができる。
【0019】
第2の手段に係る発明によれば、付箋積層体の角度を85°以下としたので、付箋を一枚ずつとる操作がより容易となる。
【0020】
第3の手段に係る発明によれば、裏面に保護片を有するテープ積層体に、その裏面側から付箋形成箇所に傾斜面を向けて片刃を入れるから、表面2Aと先端面2Cとの角度が鋭角である付箋積層体を簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る付箋積層体の縦断面図である。
【図2】図1の付箋積層体の要部縦断面図である。
【図3】図1の付箋積層体の製造工程の第1段階の説明図であり、図3(A)は、当該段階の作業を側方からみた図、図3(B)はその作業を上方から見た図である。
【図4】上記製造工程の第2段階を示す説明図であり、図4(A)はテープ積層体に保護片を貼付する様子を、図4(B)はそのテープ積層体を切断する様子を描いている。
【図5】図1の付箋積層体の製造工程の第3段階を示す説明図であり、テープ積層体から付箋積層体を一つずつ打ち抜く様子を描いている。
【図6】図5の要部拡大図である。
【図7】図6で使用する片刃の説明図である。
【図8】本発明の参考図である。
【図9】本発明の実施例である付箋積層体及びこの積層体の作製に使用したカッターを表す図である。
【図10】図9の付箋積層体の要部の拡大図である。
【図11】従来の付箋積層体の拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1から図2は、本発明の実施形態に係る付箋積層体2を示している。この付箋積層体2は、上下方向に重ね合わせた同形状の複数の付箋4と、最も下位の付箋の裏面に貼着した保護片8とで形成している。
【0023】
上記付箋4は、各基端部4aの裏面に粘着層6を有し(図6参照)、この粘着層を介して相互に接合されている。付箋4は、PP(ポリプロピレン)又はPETなどの合成樹脂の薄いフィルムで形成されている。このフィルムの厚さは、一般的な紙製の付箋の厚さより小さく、例えば0.03mm〜0.08mm、好ましくは0.04mmとするとよい。
【0024】
上記保護片8は、もっとも下層の付箋の下面全体を覆っている。この保護片8は、例えば紙で形成することができる。
【0025】
図1に示すように、付箋積層体2の表面2A及び裏面2Bは相互に平行であり、付箋積層体2の先端面2Cは表面2Aとの間に一定の角度θ(<90°)を存して傾斜している。これにより付箋積層体2の鋭角箇所に指を当て、図2に想像線で示すように、一枚ずつ付箋4を取り出すことができる。
【0026】
上記付箋積層体の先端面2Cと表面2Aとの好適な角度θは85°から75°であり、特に80°が好適である。発明の原理からは、角度θが75°以下でも取り易さは変わらないが、付箋積層体の上層側と下層側とで付箋の長さが不揃いとなる、後述のカッターで積層体を打ち抜くときの抵抗が大となるなどの不都合を生ずる。
【0027】
図3から図6は、本発明に係る付箋積層体2の製造方法を示している。
【0028】
図3は、付箋積層体2を製造するためのテープ積層体を製造する工程を示している。同図3(A)中、30は、付箋の材料であるテープ32を巻いたロールである。34は、粘着剤吐出手段であり、図3(B)の如く、テープ32の片面にテープ長手方向と平行に適数の帯状の粘着層6を付着させる。36は、回転軸Oの回りを回転可能な回転板である。この回転板にテープ32の先端を取り付け、次に回転板を回転させることで、回転板36の回りにテープ32を巻き付け、テープ積層体38を形成する。なお、図面では簡単のために2つの粘着層6を塗布したテープ32を描いているが、テープの巾を大きくして多数の粘着層6を形成することが好適である。
【0029】
図4(A)は、このテープ積層体38のうち回転板36の表面及び裏面に対応する部分に2枚の保護片8を貼着する工程を示している。図4(B)は、回転体に巻き付けたテープ積層体を適当な箇所で切断する工程を示している。切断箇所は一箇所でも複数箇所でもよい。これにより複数個分の付箋積層体形成箇所を含むテープ積層体が切り出される。
【0030】
図5及び図6は、上記テープ積層体38から付箋積層体2を一つずつ打ち抜く工程を示している。テープ積層体のうち前述の粘着層で接合した接合部分38aを第2のカッター44で、非接合部分38bを第1のカッター42でそれぞれ切断する。
【0031】
この第1のカッター42は、図7に示す如く、一方面側に大きな傾斜面(主傾斜面)42aを有する片刃である。「片刃」には、一般に刃体の片面にだけ刃が付いているという意味と、刃体の巾方向の片側の縁にのみ刃が付いているという意味とがあるが、本明細書では後者の意味に用いる。但し、完全な片刃とすると、刃先の強度が不足するおそれがあるので、図示例では、刃体の他方面側にもごく短い補助傾斜面42bを設けている。この傾斜面を付箋形成箇所に向けて第1のカッターを配置し、テープの積層体を切断することで、付箋積層体2を裏抜きすることができる。なお、第2のカッター44については、図示例では両刃を用いている。
【0032】
これらの第1カッター42及び第2カッター44の間には、図示していないテープ抑え手段を設けるとよい。2つのカッターをテープ積層体の保護片側(裏面側)から圧入することで、付箋積層体を裏抜きすることができる。この付箋積層体の表面2Aと先端面2Cとの角度θは鋭角となる。
【0033】
[実施例]
図9及び図10は、本発明の実施例を示している。図9は、出願人が実際に試作した付箋積層体の形態及び第1のカッター42の形態を表している。この第1のカッターは、従来公知のものであり、全体の厚さD1=0.7mm、表側に主傾斜面(大きな刃面)42aを、裏側に補助傾斜面(小さな刃面)42bを有している。大きな刃面の長さH1及び小さな刃面の長さH2はそれぞれH1=1mm、H2=0.2mmである。また各刃の傾斜面が垂直方向に対してなす角度βは、ともに29°である。もっともこれらの構成は適宜変更することができる。
【0034】
試作例では、厚さ0.04mmのPP製のテープを25枚積層したものを、上記第1のカッター42で切断した。その結果として、先端面2Cと表面2Aの角度θ=80°の付箋積層体が得られた。このθの余角、すなわち、付箋積層体の先端面と垂直方向とがなす角αの角度は10°であり、これは主傾斜面42aの傾斜角度(28°)よりも小さい。
【0035】
この試作例から、先端面2Cと垂直方向との角度αの付箋積層体を作製しようとするときには、所望の角度αよりも主カッター42の刃の傾斜角度βをそれより大きくすればよいことが判る。
【0036】
図10は、付箋積層体中の各付箋の端面の水平方向を模式的に表したものである。図面では各付箋の端面を階段状に描いているが、実際にこのような形になっているかどうかは不明である。先端面と垂直方向との角度αが10°であり、各付箋の厚さをd=0.04mmだから、隣接する各付箋の端面のずれΔwは、Δw=d×tanθ=0.007mmである。
【0037】
出願人は、付箋積層体の先端面を垂直方向に対して10°程度傾斜したことで、付箋のめくり易さにどの程度寄与するのかを実験した。試験条件を同じにするために、ある一つの付箋積層体から保護片を剥離したものを、年齢の異なる被検者が表側及び裏側からそれぞれめくり、一枚ずつ付箋をめくることができるか否かを調べた。
【0038】
その結果を次の表1に示す。一枚の付箋をとることができた事象は○、2枚の付箋をとってしまった事象は△、全く付箋をめくることができない事象は×で表した。
【0039】
【表1】
【0040】
上記のように、付箋積層物の先端面と垂直方向とのなす角度αが10°程度でも、付箋を表側からめくる場合と裏側からめくる場合とでは上記のように顕著な差が顕れた。
【符号の説明】
【0041】
2…付箋積層体 2A…表面 2B…裏面 2C…先端面
4…付箋 4a…基端部 6…粘着層 8…保護片
30…ロール 32…テープ 34…粘着剤吐出手段 36…回転板
38…テープ積層体 38a…接合部分 38b…非接合部分
44…第2のカッター 42…第1のカッター(片刃) 42a…主傾斜面
42b…補助傾斜面 T…治具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.08mm以下の厚さの複数の付箋を積層して、各付箋の基端部(4a)の裏面に形成した粘着層(6)で結合するとともに、この付箋積層体の裏面側に最下層の付箋の粘着面を保護するための保護片(8)を貼着してなり、
さらにこの付箋積層体(2)の先端面(2C)と付箋積層体の表面(2A)との間の角度(θ)が鋭角になるようにしたことを特徴とする、付箋積層体。
【請求項2】
上記(θ)の角度を85°以下75°以上としたことを特徴とする、請求項1記載の付箋積層体。
【請求項3】
裏面の長手方向の一部に粘着層を有する細長いテープ(32)を積層するとともに、このテープ積層体(38)の裏面側に保護片(8)を張り付けて、保護片付きテープ積層体を形成する工程と、
このテープ積層体のうち粘着剤で接合された接合部分と非接合部分との2箇所をカッターで切断して、2つの切断箇所の保護片付きテープ積層体部分を、複数の付箋を基端部(4a)で結束した付箋積層体とする工程とからなり、
テープ積層体に対して、保護片側からカッターを挿入することと、
非接合部分への圧入用のカッター(42)は、刃体の片面側に主たる傾斜面(42a)を有する片刃とし、この主たる傾斜面(42a)を付箋形成箇所に向けたことを特徴とする、付箋積層体の製造方法。
【請求項1】
0.08mm以下の厚さの複数の付箋を積層して、各付箋の基端部(4a)の裏面に形成した粘着層(6)で結合するとともに、この付箋積層体の裏面側に最下層の付箋の粘着面を保護するための保護片(8)を貼着してなり、
さらにこの付箋積層体(2)の先端面(2C)と付箋積層体の表面(2A)との間の角度(θ)が鋭角になるようにしたことを特徴とする、付箋積層体。
【請求項2】
上記(θ)の角度を85°以下75°以上としたことを特徴とする、請求項1記載の付箋積層体。
【請求項3】
裏面の長手方向の一部に粘着層を有する細長いテープ(32)を積層するとともに、このテープ積層体(38)の裏面側に保護片(8)を張り付けて、保護片付きテープ積層体を形成する工程と、
このテープ積層体のうち粘着剤で接合された接合部分と非接合部分との2箇所をカッターで切断して、2つの切断箇所の保護片付きテープ積層体部分を、複数の付箋を基端部(4a)で結束した付箋積層体とする工程とからなり、
テープ積層体に対して、保護片側からカッターを挿入することと、
非接合部分への圧入用のカッター(42)は、刃体の片面側に主たる傾斜面(42a)を有する片刃とし、この主たる傾斜面(42a)を付箋形成箇所に向けたことを特徴とする、付箋積層体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−81654(P2012−81654A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229544(P2010−229544)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(595137239)株式会社カンミ堂 (9)
【出願人】(510271130)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(595137239)株式会社カンミ堂 (9)
【出願人】(510271130)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]