説明

仮設シェルターの扉構造、及びその組み立て方法

【課題】人力で能率的に組み立て可能かつ充分に堅固な扉構造を提供する。
【解決手段】扉5’は矩形の開口枠体4にヒンジ掛部18で回転開閉可能に取り付けられる矩形の枠体13’と、枠体13’の内側に積層されて扉面となる複数の板材14a、14bとからなる。枠体は左右の縦枠材16’と上下の横枠材17’とを矩形状に一体に接合してなる。左右の縦枠材はそれぞれ板材支持溝21を相対する位置に有し、その上側に板材挿入スペース22を有する。各板材は上側又は下側の一方に幅広部14c、他方に幅狭部14dを有する。各板材を下側から順次、その幅広部14cを板材挿入スペース22の位置に位置させて下降させ板材支持溝21に係合させて、積層する。最上段の板材14bとそのすぐ下の板材14bとは連結部材25で連結する。堅固な枠体、および複数の板材を予め工場で製造しておけば、施工現場では簡単な作業で充分堅固な扉を組み立てることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、災害などの緊急時に人力で設置して不要時には人力で撤去可能な仮設シェルターの扉構造、及びその組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
激しい防風や転石、爆風などから身体を護ることができるシェルターで、災害などの緊急時に設置し不要時には撤去する必要がある場合に、仮設シェルターが使用される。このような仮設シェルターとして、クレーンなどの重機を用いて構築されるもの(特許文献1)、あるいは、重機が搬入できない場合などに対処できるように、人力で組み立て可能なライナープレートなどの仮設用部材を用いて現場で組み立てるものがある。
【0003】
特許文献1は仮設住宅としての用途であるが、四角形筒状等のプレキャストコンクリート(プレキャストボックスカルバート)を複数連結した連結体の内部に、居住空間を形成するユニットハウス的な収納体を、連結体との間に少なくとも3方に空気層を設けられるように配設するというものである。プレキャストコンクリートやユニットハウス的な収納体を用いるので、その施工は重機を用いて行なう。
特許文献1では、人が出入れする扉として、ユニットハウス的な収納体における扉を利用している。すなわち、収納体の扉の部分が、四角形筒状のプレキャストコンクリート連結体の端部の開口部に位置するように収納体を連結体内に配設するとともに、収納体の扉の部分に開口部を有するコンクリート製のカバープレートで連結体の端部の開口部を塞いでいる。したがって、扉自体は収納体の一部として既に出来あがったものである。
【0004】
人力で組み立て可能な仮設用部材を用いて仮設シェルターを組み立てる場合、仮設シェルターの本体は、仮設用部材として例えば複数のライナープレートを組み合わせて組み立てることで、激しい防風や転石、爆風などで破損しない堅固な構造にすることは可能である。
扉についても、激しい防風や転石、爆風などで破損しない堅固な扉であることが求められるが、その要求に応える扉を単体の扉として構成した場合、扉の重量が極端に重くなり、人力でシェルター本体に取り付けることは困難になる。
【0005】
そこで、扉を分割して扉を構成する各部材の単体重量を軽くして、現場での人力による組み立てが可能な組立て式の扉とすることが考えられる。しかし、現場で能率的に組み立てることができ、かつ確実・堅固な組み立てが可能な構造とするのは、必ずしも簡単でない。
【0006】
仮設シェルターとは全く異なるが、家具などのキャビネットの扉に適用されるものとして、扉面材を分割式にした扉構造が特許文献2に記載されている。
この扉構造は、既存のキャビネットの上部に、上置きキャビネットを追加設置する場合のものであり、左右の縦枠材材と上下の横枠材とからなる枠体の上側の横枠材を取り外し、上置きキャビネット用の扉として、追加の縦枠材及び追加のパネル(追加する扉面材)をそれぞれ既存の縦枠材及び既存のパネルの上に継ぎ足す、というものである。
この扉構造は、分割パネルの両端部を挿入する溝を有する左右の縦枠材間に、複数の分割パネルを仕切枠を介在させながら順次挿入配置した後に、上側の横枠材の両端を左右の縦枠材の上端に連結する手順で、枠体が組み立てられる構造である。上側の横枠材の両端と縦枠材の上端との連結構造は、L形金具の各辺部を横枠材及び縦枠材にそれぞれ添わせ小ねじで固定して連結する構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−277962
【特許文献1】特開2004−346498
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1において、複数のプレキャストコンクリートからなる連結体は激しい防風や転石、爆風などに耐えられる充分堅固な構造であると言える。この場合、扉自体も同様に堅固な扉にする必要があるが、そのような堅固な扉は前述の通り、かなりの重量物になる。
特許文献1では、扉を一体に取り付けた収納体をクレーンで吊って連結体内に配設するものと思われるが、仮に扉を別途収納体に取り付けるとすれば、かなりの重量物になるその扉の取り付けを人力で行なうのは困難である。
【0009】
特許文献2の扉構造は、災害等に対応する仮設シェルターに適用されるような堅固なものでなく家具等のキャビネットに適用されるものなので事情はかなり異なるが、仮にこの扉構造を仮設シェルターの扉構造に適用するとすれば、次のような問題がある。
災害に対応する仮設シェルターに取り付ける扉は十分な剛性が求められ、その枠体にも十分な剛性が求められるので、枠体を構成する縦枠材と横枠材との確実・堅固な組み立てが必要である。しかし、十分な剛性が求められる枠体の重量は大変重く、縦枠材や横枠材も重いので、災害が発生している現場で早急に確実・堅固に組み立てることは困難である。このため、枠体はあらかじめ工場などで組み立てられていることが望ましい。
しかし、特許文献2の扉の組み立て構造は、左右の縦枠材間に複数の分割パネルを挿入配置した後に、上側の横枠材の両端を左右の縦枠材の上端に連結する手順で、枠体が組み立てられる構造であり、あらかじめ枠体を組み立てておくことはできない。
また、上側の横枠材の両端と縦枠材の上端との連結構造は、L形金具の各辺部を横枠材及び縦枠材にそれぞれ添わせ小ねじで固定して連結するものであるが、小ねじを使用する構造では剛性に欠ける。
L形金具とボルト・ナットによる連結構造としても、剛性の点では問題ないとしても、L形金具をボルト・ナットで固定する作業は煩雑であり組み立てに手間が掛かかるので、災害時などでの緊急時に使用する仮設シェルターの扉構造として望ましくない。
また、ボルト・ナットなどの小物の管理が必要となるが、そのボルト・ナットなどが紛失などにより見当たらない場合には他のもので代替することができずに、組み立てることができなくなる恐れもある。その点でも、緊急時に使用する仮設シェルターの扉構造として望ましくない。
【0010】
本発明は、上記背景のもとになされたもので、災害などの緊急時に設置して不要時には撤去可能な仮設シェルターの扉構造として、充分に堅固であり、重量が嵩んでいても人力によりかつ能率的に組み立てが可能であり、また、不要時には各部を損傷することなく再使用可能に容易に解体することができて、別の場所で再度組み立てが可能な仮設シェルターの扉構造、及びその組立て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する請求項1の発明は、仮設シェルター本体に設けた扉用の矩形の開口枠体に矩形の扉を回転開閉可能に取り付ける仮設シェルターの扉構造であって、
前記扉は、前記開口枠体に回転開閉可能に取り付けられる矩形の枠体と、前記枠体の内側に扉面を形成するように積層して取り付けられる複数の板材とからなり、
前記枠体は、左右の縦枠材と上下の横枠材とを矩形状に一体に接合してなるとともに、左右の縦枠材の一方に取り付けたヒンジ掛部を、前記開口枠体の対応する箇所に設けたヒンジ受部に着脱可能かつ回転可能に係合させて、前記開口枠体に回転開閉可能に取り付けられており、
前記左右の縦枠材はそれぞれ、扉の幅方向中心側に開口して前記板材の左右の端部を挿入可能な断面略コ字形の1つ又は複数の板材支持溝を相対する位置に有するとともに、少なくとも前記板材支持溝の上側に前記板材を前記板材支持溝に上側から挿入することを可能にする板材挿入スペースを有し、
前記各板材は、その高さ方向の少なくとも一部が左右の縦枠材の前記板材支持溝に挿入可能な幅寸法の幅広部を有する形状であり、
前記枠体内に下側から順に積層される各板材のうち最後に積層される板材とその板材に隣接する下側の板材とに、両者を互いに着脱可能に連結する板材連結部を設けたことを特徴とすることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の仮設シェルターの扉構造において、前記扉の枠体が複数に分割され、各枠体にそれぞれ前記板材が取り付けられ、各枠体は隣接するもの同士を互いに連結する枠体連結部を有することを特徴とする。
【0013】
請求項3は、請求項1又は2の仮設シェルターの扉構造において、前記枠体における上側の横枠材の下面側に、前記枠体内に積層された最上段の板材の上端縁を刺し入れる板材上端刺入溝を有することを特徴とする。
【0014】
請求項4は、請求項1〜3のいずれかの仮設シェルターの扉構造において、前記枠体における左右の縦枠材に、前記板材支持溝と板材挿入スペースとが上下方向に交互に設けられていることを特徴とする。
請求項5は、請求項4の仮設シェルターの扉構造において、前記各板材は、その上側部分又は下側部分の一方が左右の縦枠材の前記板材支持溝に両端部を挿入可能な幅寸法の幅広部、他方が左右の縦枠材の前記板材支持溝に両端を挿入できない幅寸法の幅狭部とされているおり、前記幅広部の高さ寸法が前記板材挿入スペースの寸法より小さいことを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明は、請求項1の仮設シェルターの扉構造を組み立てる仮設シェルターの扉構造組み立て方法であって、
予め製作した前記枠体を、そのヒンジ掛部を前記開口枠体のヒンジ受部に係合させて、開口枠体に回転開閉可能に取り付ける工程と、前記複数の板材を、前記枠体の最上段のものを除き下側のものから順に、それぞれの両端部を、前記枠体の左右の縦枠材の板材挿入スペースからその下にある板材支持溝に挿入して枠体内に積層する工程と、前記最上段の板材を、その板材に隣接する下側の板材の上に載せ、前記最上段の板材とその下側の板材とを、それぞれに取り付けた連結部材を介して連結することを特徴とする。
【0016】
請求項7の発明は、仮設シェルター本体に設けた扉用の矩形の開口枠体に矩形の扉を回転開閉可能に取り付ける仮設シェルターの扉構造であって、
前記扉は、前記開口枠体に回転開閉可能に取り付けられる矩形の枠体と、前記枠体の内側に扉面を形成するように横方向に隣接配置して取り付けられる複数の板材とからなり、
前記枠体は、左右の縦枠材と上下の横枠材とを矩形状に一体に接合してなるとともに、左右の縦枠材の一方に取り付けたヒンジ掛部を、前記開口枠体の対応する箇所に設けたヒンジ受部に着脱可能かつ回転可能に係合させて、前記開口枠体に回転開閉可能に取り付けられており、
前記上下の横枠材はそれぞれ、扉の上下方向中心側に開口して前記板材の上下の端部を挿入可能な断面略コ字形の1つ又は複数の板材支持溝を相対する位置に有するとともに、少なくとも前記板材支持溝部の右側又は左側に前記板材を前記板材支持溝に右側又は左側から挿入することを可能にする板材挿入スペースを有し、
前記各板材は、その横方向の少なくとも一部が左右の縦枠材の前記板材支持溝に挿入可能な幅寸法の幅広部を有する形状であり、
前記枠体内に横方向に隣接配置される各板材のうち最後に取り付けられる板材とその板材に隣接する板材とに、両者を互いに着脱可能に連結する板材連結部を設けたことを特徴とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の仮設シェルターの扉構造によれば、ヒンジ掛部や板材支持溝や板材挿入スペースなどを有する枠体、および、掴み部を又は掴み部と板材連結部を持つ複数の板材を予め工場で製造しておけば、施工現場では、枠体のヒンジ掛部を架設シェルター本体に設けた開口枠体のヒンジ受部に掛けてヒンジ結合させ、枠体に複数の板材を取り付けるという簡単な作業で扉を組み立てて、仮設シェルターに扉に設けることができる。
組み立て式であるが、剛性の必要な枠体自体は工場での製造により確実に堅固なものとすることができるので、災害時などの衝撃に充分対応できる堅固な扉を得ることができる。
【0018】
扉の組み立てに際して、枠体や各板材は人力で扱うことができる重量にすることができるので重機は勿論不要ですべて人力で行なわれるだけでなく、連結部には、ボルト、ナットやその他複雑な結合部品は用いず、かつ特別な工具を用いることもなく、例えば連結ピンだけを用いて行なうことも可能となる。したがって、扉の組み立て作業は極めて単純で能率的であり、迅速に組み立てることができる。
また、仮設シェルターを撤去する際には、扉を容易に各部材、部品に分解することができ、その際、全ての部材、部品を、特別な破損が生じない限り再使用することができ、別の場所に移動させて組み立てることが容易である。
また、部品としては、連結ピン程度で済み、数が少ないので、管理も容易であり、紛失する恐れも少ない。
また、連結ピンは単純な構造であるから、各箇所に用いる連結ピンの形状・サイズを共通にすることも容易で、管理が一層容易になり、また、共用の連結ピンを余分にも持っておれば、部品紛失のために扉を組み立てられないという恐れも殆んどない。したがって、緊急時に使用する仮設シェルターの扉構造として極めて適切である。
【0019】
請求項2のように、扉の枠体を複数に分割することで、枠体の重量を人力で取扱うことが容易な程度に軽くすることができる。
請求項3のように、枠体における上側の横枠材に、最上段の板材の上端縁を刺し入れる板材上端刺入溝を設けることで、最上段の板材を枠体に堅固に取り付けることができる。
請求項4のように、枠体における左右の縦枠材に、板材支持溝と板材挿入スペースとを上下方向に交互に設けると、少なくとも下側の板材は高い位置に持ち上げて板材支持溝に挿入する必要はなく、板材支持溝に挿入する作業が容易になる。
請求項4の構造とする場合に、請求項5のように、板材の形状が幅広部と幅狭部を持つ形状としかつ幅広部の高さ寸法が板材挿入スペースの寸法より小さい構造とすることは、下側の板材を高い位置に持ち上げて板材支持溝に挿入する必要がないようにするために、極めて適切である。
【0020】
請求項6の仮設シェルターの扉構造組み立て方法によれば、本発明の扉構造の組み立て作業を極めて能率的に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例の仮設シェルターの扉構造の正面図である。
【図2】図1の右側面図である。
【図3】図1の扉構造における開口枠体を示し、(イ)は正面図、(ロ)は(イ)のF−F断面図である。
【図4】図1の扉構造における枠体の正面図である。
【図5】(イ)は図1のA−A断面図(ただし、縦枠材、ノブは省略)、(ロ)は図1のB−B断面図(但し板材は省略)である。
【図6】(イ)は図1のC−C矢視図、(ロ)は図1のD−D断面図、(ハ)は図1のノブを除いたE−E断面図である(いずれも仮設シェルターの壁体を合せて図示している)。
【図7】図1の概ねE−E拡大断面図であり、開いた状態の扉(2点鎖線)を併せて示している。
【図8】扉のノブの部分に設けた指詰め防止機構が作用する状態を示す図であり、図7における開いた扉が閉じる直前の状態の図である。
【図9】扉の扉面を構成する2種類の板材を示すもので、(イ)は背の低い板材の平面図、(ロ)は同正面図、(ハ)は背の高い板材の平面図、(ニ)は同正面図である。
【図10】図5(ロ)におけるノブの部分の詳細拡大図である。
【図11】図10の右側面図である。
【図12】本発明の仮設シェルターの扉構造の他の実施例を示す正面図である。
【図13】本発明の仮設シェルターの扉構造のさらに他の実施例を示す正面図である。
【図14】本発明の仮設シェルターの扉構造のさらに他の実施例を示す正面図である。
【図15】本発明の仮設シェルターの扉構造のさらに他の実施例を示すもので、(イ)は最後の板材を取り付ける直前の状態の正面図、(ロ)は最後の板材を取り付けた状態の正面図である。
【図16】本発明の扉構造を取り付ける仮設シェルターの一例を模式的に示した平面図である。
【図17】本発明の扉構造に用いる連結ピンの実施例を示すもので、(イ)は軸部の一端に頭部を備える頭付き連結ピンの正面図、(ロ)は2つの軸部を備えるコ字形連結ピンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施した仮設シェルターの扉構造、及びその組み立て方法について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は本発明の一実施例の仮設シェルターの扉構造1の正面図、図2は同右側面図である。
この扉構造1は、図示例では図16に示すような円筒状の壁体2を有する仮設シェルター本体3の開口部に取り付けられる。図16では仮設シェルターの天井は省略している。
この扉構造1は、仮設シェルター本体3に取り付けられる矩形の開口枠体4に矩形の扉5を回転開閉可能に取り付けた構成である。
【0024】
前記開口枠体4は、図2、図3(イ)、(ロ)等にも示すように、熱間溝形鋼による左右の開口縦枠材8と熱間山形鋼による上下の開口横枠材9とを矩形に溶接接合してなり、一方の開口縦枠材8に図示例では上側2つ、下側2つの合計4つのヒンジ受部10を固定している。
なお、各開口縦枠材8には、図3(ロ)に示すように、仮設シェルター本体3の開口端面部(壁体2の開口端面)に設けた図示略の係合穴に挿入して、開口縦枠材8を開口端面部に係合させるための係合ピン11を溶接固定している。この係合ピン11は、溝形鋼である開口縦枠材8のウエブにあけた穴に、その一端部を挿入して溶接固定すると堅固に固定できる。
この開口枠体4は工場で予め製造しておく。現場で組み立てるものでなく、工場での製造であるから、確実かつ堅固に製造できる。
【0025】
この実施例の扉5は、図1に示すように、上下2つの分割扉6a、6bに分割されている。上下の分割扉6a、6bは、それぞれ矩形の枠体13a、13bを持つ。
上側の分割扉6aは前記開口枠体4に回転開閉可能に取り付けられる前記矩形の枠体13aと、前記枠体13aの内側に扉面を形成するように積層して取り付けられる複数の板材14a、14bとからなり、下側の分割扉6bも同じく矩形の枠体13bと複数の板材14a、14bとからなる。実施例では板材として背の高い板材14aと、背の低い板材14bとの2種類を用いている。
各枠体13a、13bは、図4に示すように、熱間山形鋼からなる左右の縦枠材16、16と、同じく熱間山形鋼からなる上下の横枠材17、17とを矩形状に一体に溶接接合してなるとともに、左右の縦枠材16、16の一方に取り付けたヒンジ掛部18を、前記開口枠体4の対応する箇所に取り付けた前記ヒンジ受部10に着脱可能かつ回転可能に係合させて、前記開口枠体4に回転開閉可能に取り付けられる。なお、ヒンジ掛部18には、ヒンジ受部10のヒンジ軸穴に挿入されるヒンジ軸18aを溶接固定している。
上側の枠体13aの下側の横枠材17、および、下側の枠体13bの上側の横枠材17には、両者を互いに連結するための枠体連結部である軽量山形鋼からなる連結部材12が溶接固定されている。
【0026】
各枠体13a、13bにおける前記左右の縦枠材16はそれぞれ、扉の幅方向中心側に開口して前記板材14a、14bの左右端部を挿入可能な断面略コ字形の図示例では3つの板材支持溝21を相対する位置に有するとともに、前記板材支持溝21の上側に前記板材14a、14bを前記板材支持溝に上側から挿入することを可能にする板材挿入スペース22を有している。前記板材支持溝21は、山形鋼である縦枠材16の扉幅方向中心側に面するフランジに溶接固定したフラットバー21aで形成している。前記板材挿入スペース22は山形鋼である縦枠材16のフランジにおけるフラットバー21aのない部分(スペース)である。
【0027】
各枠体13a、13b内に積層される前記各板材14a、14bは図9で言えば、その下側部分は、両端部が左右の縦枠材16の前記板材支持溝21に挿入可能な幅寸法Wの幅広部14c、上側部分は、両端部が左右の縦枠材の前記板材支持溝21に両端を挿入できない幅寸法Wの幅狭部14dとされており、かつ、それぞれの外側の面に、組立て時に当該板材14a、14bを掴み持つための掴み部23を有している。
また、各枠体13a、13b内に積層される各板材14a、14bのうち最後に積層される板材14bとその板材に隣接する下側の板材14b、すなわち、各枠体13a、13b内の上側の2枚の板材は、背の低い板材14bを用いるとともに、その2つの板材14bを上下逆にして互いに連結する板材連結部である軽量山形鋼による連結部材25をそれぞれの幅広部14c側に溶接固定している。この連結部材25には、図示略の連結ピンを上から差し込むためのピン穴25aが設けられている。
なお、後述するように、各枠体13a、13b内に取り付けるとき、連結される上側の2つの板材14bのうち下側(上から2番目)の板材14bは、その幅広部14cが上にくるように取り付ける。このとき、各板材14bの幅広部14cに溶接固定された連結部材25は、そのフランジ同士がピン穴25aを一致させた状態で当接し、上から挿入した連結ピンで互いに連結できる。
【0028】
また、各枠体13a、13bにおける上側の横枠材17には、下方に開口して上端の板材14bの上端縁を挿入可能な断面略コ字形の板材上端刺入溝26設けている。前記板材上端刺入溝26は、山形鋼である横枠材17の下向きのフランジに溶接固定したフラットバー26aで形成している。
【0029】
下側の分割扉6bの枠体13bにおけるヒンジ掛部18と反対側の縦枠材16の上端部に、ノブ27を取り付けている。このノブ27は、図10、図11に詳細構造を示すように、縦枠材16の上端部にあけた穴16a(図4参照)に丸パイプ27aを貫通させて溶接固定し、この丸パイプ27aに外側ノブ27bと一体の回転軸部27cを挿入貫通させ、その先端に形成したメネジ部を、内側ノブ27dを溶接固定した錘作用をする指詰め防止板27eの上部の穴に通しナットで固定した構造である。ノブ27b、27dは、指詰め防止板27eの錘作用で通常は図11のように垂下している。
前記指詰め防止板27eは図11に示すように、角部に丸みを付けた下部の広い略三角形状をなしており、ノブ27d又は27bを回さずに扉5を閉ざした時、図8に示すように、指詰め防止板27eが溝形鋼である開口枠体4の開口側の面に当たって止まる構成となっている。指詰め防止板27eが開口枠体4の開口側の面に当たる部分を図11に27e’で示す。この状態では、図8に示すように、扉5の枠体13bの縦枠材16と開口枠体4との間に隙間29があり、指を詰めることはない。
その後、例えば内側ノブ27dを図11で時計回り方向に回転させて、指詰め防止板27eを開口枠体4から引き離した上で、扉5を図7に実線で示すように最後まで閉ざす。この操作により、指を詰めることを防止できる。なお、扉5の開閉はノブ27b又は27dを持って行なうので、指詰め防止板27eと開口枠体4との間で指が挟まれることは考慮しない。
一方のノブ(図示例では内側のノブ27d)に、ノブを回さずに単に扉5を閉ざした時に開口枠体4に当たる指詰め防止板27eを固定した構造は、指詰め防止機構28を構成する。また、指詰め防止板27eは、扉5を閉ざした状態では図7に示すように開口枠体4の室内側の面に当たっているので、扉5が自然に開いてしまうことを防止するロック機構も兼ねている。
【0030】
仮設シェルターに上記の扉構造1を施工する要領を説明する。
まず、開口枠体4を仮設シェルター本体3の開口部に取り付ける。この場合、開口枠体4の裏面(開口側と反対側の面)に溶接固定している係合ピン11を、図6のように仮設シェルター本体3の壁体2の開口端面に形成されている係合穴(図示略)に差し込むことで、開口枠体4を仮設シェルター本体側に取り付ける。仮設シェルター本体3の壁体2はライナープレートなどの人力で設置、撤去が可能な仮設用部材を用いて組み立てられ、若干動かすことができるので、係合ピン11を壁体2側の係合穴に差し込む作業は容易である。このように、ボルト等の接合用の別部品を必要とせず、かつ特に工具を用いずに、開口枠体4の取付作業を行うことができる。開口枠体4だけの重量はそれほど重くないので、人力で行なうことができる。
【0031】
次いで、上下の枠体13a、13bを下側から順に開口枠体4に回転開閉可能に取り付ける。
まず、下側の枠体13bの2箇所のヒンジ掛部18のヒンジ軸18aを開口枠体4の下側の部分の2箇所のヒンジ受部10のヒンジ軸穴にそれぞれ差し込むことで、下側の枠体13bを開口枠体4の下側部分にヒンジ結合させる。
次いで、上側の枠体13aの2箇所のヒンジ掛部18のヒンジ軸18aを開口枠体4の上側の部分の2箇所のヒンジ受部10のヒンジ軸穴にそれぞれ差し込むことで、上側の枠体13aを開口枠体4の上側部分にヒンジ結合させる。
次いで、上下の枠体13a、13bの位置を揃えて重ねた状態にして、上下の枠体13a、13bを連結する。上下の枠体13a、13bを重ねた状態では、それぞれの側の軽量山形鋼からなる連結部材12のフランジが当接しかつ連結用穴が一致する状態となっているので、後述の連結ピンを差し込んで、上下の枠体13a、13bを連結する。この作業も、ボルト等の接合用の別部品を必要とせず、かつ特に工具を用いずに行なうことができる。前記連結ピンとして、図17(イ)に示すように、軸部31aの一端に頭部31bを持つだけの単なる頭付きピン31を用いることができ、また、図17(ロ)に示すような、2つの連結用穴に同時に挿入される2つの軸部32aを持つコ字形連結ピン32を用いることもできる。図示例のコ字形連結ピン32は、両軸部32aのそれぞれ先端に、コ字形がなす面と直角に曲げた折曲部32bを設けて、抜け落ち防止を図っている。また、図示例の頭付きピン31、コ字形連結ピン32のそれぞれの先端部は、連結用穴に挿入し易いようにテーパ状にしている。
【0032】
次いで、下側の枠体13b内に板材14a、14bを取り付ける。まず、最下段の背の高い板材14aを枠体13bに取り付ける。この場合、幅広部14cを下にした板材14aの前記幅広部14cの両端部を、最下段の左右の板材支持溝21の上側にそれぞれ形成されている左右の板材挿入スペース22に位置させ、その位置から下に降ろして、板材支持溝21に挿入する。これにより、板材14aの幅広部14cの両端部が板材支持溝21に係合して、枠体13bに取り付けられる。
この場合、板材14aの上側部分である幅狭部14dの幅Wは、板材支持溝21を形成する左右のフラットバー21a間の内法寸法W(図4参照)より幅が狭い(W<W)、そして、幅広部14cの幅Wは前記内法寸法Wより幅が広い(W<W)ので、上記の操作が可能であり、板材14aが枠体13bの左右の縦枠材16間に保持される。
次いで、下から2番目の背の高い板材14aについても前記と同様な操作で、その幅広部14cの両端部を、下から2番目の板材支持溝21の上側の板材挿入スペース22の位置から板材支持溝21に挿入して、下から2番目の板材14aを前記最下段の板材14aの上に積層する。
次いで、下から3番目(上から2番目)の背の低い板材14bを、図1に示すように、連結部材25を固定している幅広部14cを上にして、その幅広部14cを板材挿入スペース22に位置させ、そこから下に降ろして板材支持溝21に挿入する。これにより、下から3番目の板材14bを前記下から2番目の板材14aの上に積層する。
次いで、最上段の背の低い板材14bを、その幅広部14cを下にして、まず上端縁を枠体13bの上側の横枠材17の下面に設けたコ字形断面の板材上端刺入溝26に差し込み、次いで下端縁を隣接する下側(下から3番目(上から2番目))の背の低い板材14bの上に積層する。
次いで、上下に隣接するその2つの板材14b、14bにそれぞれ固定された軽量山形鋼である連結部材25同士を連結して、2つの板材14b同士を連結する。連結部材25同士の連結は、重ね合わされているそれぞれのフランジにあけた2箇所の連結用穴25aに上から連結ピンを差し込むことにより行なう。連結ピンは、図17(イ)で説明したような、軸部31aの一端に頭部31bを持つだけの単なる頭付きピン31を用いることができ、また、図17(ロ)で説明したような、2つの連結用穴に同時に挿入される2つの軸部32aを持つコ字形連結ピン32を用いることもできる。
なお、上記のように板材14a、14bを取扱う場合、板材14a、14bに固定した取っ手23を持って作業する。
【0033】
上記により、下側の枠体13bに各板材14a、14bを挿入した下側の分割扉6bの部分が形成される。
次いで、上側の枠体13aについても、同様な手順で各板材14a、14bを挿入して、上側の分割扉6aの部分を形成すると、開口枠体4に扉5を回転開閉可能に取り付けた扉構造1が完成する。
【0034】
上記の通り、ヒンジ掛部18や板材支持溝21や板材挿入スペース22などを有する枠体13a、13b、および、掴み部23を又は掴み部23と連結部材25を持つ複数の板材14a、14bを予め工場で製造しておけば、施工現場では、枠体13a、13bのヒンジ掛部18を架設シェルター本体3に設けた開口枠体4のヒンジ受部10に掛けてヒンジ結合させ、枠体13a、13bに複数の板材14a、14bを取り付けるという簡単な作業で扉5を組み立てて、仮設シェルターに扉に設けることができる。
組み立て式であるが、剛性の必要な枠体13a、13b自体は工場での製造により堅固なものとすることができるので、災害時などの衝撃に充分対応できる堅固な扉5を得ることができる。
【0035】
扉5の組み立てに際して、枠体13a、13bや各板材14a、14bは人力で扱うことができる重量にすることができるので重機は勿論不要ですべて人力で行なわれるだけでなく、連結部には、ボルト、ナットやその他複雑な結合部品は用いず、かつ特別な工具を用いることもなく、連結ピンだけを用いているので、扉の組み立て作業は極めて単純で能率的であり、迅速に組み立てることができる。
また、仮設シェルターを撤去する際には、扉5を容易に枠体13a、13b、板材14a、14b、連結ピンに分解することができ、その際、全ての部材、部品を、特別な破損が生じない限り再使用することができ、別の場所に移動させて組み立てることが容易である。
また、部品としては、連結ピン程度で済み、数が少ないので、管理も容易であり、紛失する恐れも少ない。
また、連結ピンは単純な構造であるから、各箇所に用いる連結ピンの形状・サイズを共通にすることも容易で、管理が一層容易になり、また、共用の連結ピンを余分にも持っておれば、部品紛失のために扉を組み立てられないという恐れも殆んどない。したがって、緊急時に使用する仮設シェルターの扉構造として極めて適切である。
また、連結ピンの代わりに連結ピンと同程度の直径を備えるボルトを用いることもできる。この場合のボルトは、連結ピンと同様に孔に差し込んで使用し、ナットによる締結までは必要としない。
【実施例2】
【0036】
上述の実施例では扉5の枠体を上下二つの枠体13a、13bに分割する構造としたが、図12に示した扉構造1Aのように、扉5’の枠体を分割せずに1つの枠体13’で構成することができる。枠体13’は扉全高の長さの左右の縦枠材16’と上下の横枠材17’とを矩形状に一体溶接している。
使用する板材は前述の実施例と同じく図9の2種の板材14a、14bであるが、背の低い上部の2つの板材14bを除いて、すべて背の高い板材14aを用いている。
前述と同様に、枠体13’の縦枠材16’には板材の幅広部14cを係合させるための板材支持溝21(板材支持溝を形成するフラットバー21aの裏側にある)を有し、その上側に、板材14a、14bを板材支持溝に上側から挿入することを可能にする板材挿入スペース22を有している。
【実施例3】
【0037】
上述の各実施例では、板材14a、14bを縦枠材16、16’に係合させるための板材支持溝21と、板材14a、14bを前記板材支持溝21に上側から挿入することを可能にする板材挿入スペース22とを交互に形成したが、図13に示した扉構造1Bのように、板材支持溝21”(板材支持溝を形成するフラットバー21a”の裏側にある)が断続しない構造としてもよい。すなわち、板材支持溝を形成するフラットバー21a”が概ね最上段の板材14fの下端縁の近くまで連続して、一連続の長い板材支持溝を形成し、その上側に1つの板材挿入スペース22”を形成している。
最上段の1枚とその下の1枚の板材14fは、図1や図12の実施例の板材14bと異なり幅広部14cと幅狭部14dとを備えておらず、他の板材14eと同様に、単なる長方形でよい。
上部の2つの板材14fを除く4つの板材14eはすべて、上部に形成されている板材挿入スペース22”から板材支持溝に落とし込んで、積層する。上部の2つの板材14fは、図1や図12の実施例における取り付けと同様にして取り付ける。但し、この場合の上部の2つの板材14fは幅広部、幅狭部のない単なる長方形なので、そのことを考慮する必要はない点では異なる。
板材支持溝に落とし込む4つの板材14eは、上部の板材挿入スペース22”の寸法に合せて、上部の2つの板材14fと同じ背の低い板材を用いている。
【実施例4】
【0038】
図14に本発明のさらに他の実施例の扉構造1Cを示す。
この扉構造1Cは、仮設シェルターの開口枠体104に取り付ける扉105の枠体113に、縦長の図示例では2枚の板材114aと2枚の板材114bを横方向に隣接配置して扉面を形成している。
前記開口枠体104は、山形鋼からなる左右の開口縦枠材108と山形鋼からなる上下の開口横枠材109とを矩形状に一体に溶接接合してなる。
前記枠体113は、山形鋼からなる左右の縦枠材116と山形鋼からなる上下の横枠材117とを矩形状に一体に溶接接合してなり、左右の縦枠材116の一方に取り付けたヒンジ掛部118を、前記開口枠体104の対応する箇所に設けたヒンジ受部110に着脱可能かつ回転可能に係合させて、前記開口枠体104に回転開閉可能に取り付けている。
前記上下の横枠材117にそれぞれ、扉の上下方向中心側に開口して前記板材114a、114bの上下の端部を挿入可能な断面略コ字形の複数の板材支持溝121(板材支持溝を形成するフラットバー121aの裏側にある)を相対する位置に有するとともに、前記板材支持溝部121の図で左側に前記板材114a、114bを前記板材支持溝121に図では左側から挿入することを可能にする板材挿入スペース122を有している。
前記各板材114a、114bは、その右側部分又は左側部分の一方が上下の横枠材117の前記板材支持溝121に上下の両端部を挿入可能な幅寸法の幅広部114c、他方が上下の横枠材117の前記板材支持溝121に上下の両端を挿入できない幅寸法の幅狭部114dとされており、かつ、それぞれの外側の面に、組立て時に当該板材を掴み持つための掴み部123を有する。図14で左から2番目の板材114bは、左側部分が幅広部114c、右側部分が幅狭部114dとなっているが、他の3枚の板材114は右側部分が幅広部114c、左側部分が幅狭部114dである。なお、この実施例で、板材114について「幅広部」、「幅狭部」という場合の「幅」の方向は、縦長の板材の横方向ではなく縦方向であるが、図1、図12、図13における板材の「幅広部」、「幅狭部」と共通にした。
そして、前記枠体113内に横方向に隣接配置される各板材114a、114bのうち最後に取り付けられる図14で最も左側の板材114bとその右側の板材114bとは、それぞれの板材114bに予め溶接固定されている軽量山形鋼からなる連結部材125にあけたピン穴に連結ピンを差し込むことで連結される。連結ピンとして、図17(イ)で説明したような単なる頭付き連結ピン31や、図17(ロ)で説明したようなコ字形連結ピン32を用いるとよい。
また、図14で左側の縦枠材116には、図14で右方に開口して最左端の板材114bの左端縁を挿入可能な断面略コ字形の板材側端刺入溝126(板材側端刺入溝を形成するフラットバー126aの裏側にある)を設けている。
【実施例5】
【0039】
例えば実施例1(図1、図4、図5(イ)参照)において、上下の各枠体13a、13bの上側の横枠材17の下面に、それぞれの最上段の板材14bの上端縁を刺し入れる板材上端刺入溝26を形成しているが、この板材上端刺入溝26を設けないことも可能である。
この場合、最上段の板材14bの上端部を枠体13の上側の横枠材17に連結する何らかの連結手段を設ける。連結手段としては、ボルトを用いる手段ではなく、例えば、板材14b及び横枠材17にピン穴をあけて、そのピン穴にコ字形などの連結ピンを挿入して両者を連結するなどの連結手段を用いることができる。
【0040】
縦長の板材114a、114bを横方向に隣接配置する実施例4(図14参照)の場合は、図で左側の縦枠材116に設ける板材側端刺入溝126を設けないこともできる。
この場合、前記と同様の考え方で、最左側の板材114bの左端部を枠体113の左側の縦枠材116に連結する何らかの連結手段を設ける。連結手段としては、ボルトを用いる手段ではなく、例えば、板材114b及び縦枠材116にピン穴をあけて、そのピン穴にコ字形などの連結ピンを挿入して両者を連結するなどの連結手段を用いることができる。
【実施例6】
【0041】
縦長の板材114a、114bを横方向に隣接配置する実施例4(図14参照)の場合に板材側端刺入溝126を設けない他の実施例として、図15の扉構造1Dのようにすることも可能である。図示例では、左右の開口縦枠材108と上下の開口横枠材109とからなる矩形の開口枠体104、左右の縦枠材116と上下の横枠材117とからなる矩形の枠体113などは、図14の実施例と概ね同じである。
この実施例では、枠体113内に横方向に隣接配置する複数の板材114’のうち扉の幅方向中間部の板材(図示例では左から2番目の板材)を最後に取り付ける。図15(イ)は最後の板材を取り付ける直前の状態、図15(ロ)は最後の板材を取り付けた状態を示す。図示例の板材114’はいずれも同じサイズで、かつ、段差部のない単なる細長い長方形の板材であり、4枚用いている。
最後に取り付ける板材114’の箇所に、その板材114’の幅より広い板材挿入スペース122’を設け、その両側に板材支持溝121’(板材支持溝を形成するフラットバー121a’の裏側にある)を設ける。図示例では、板材挿入スペース122’の図で右側に長い板材支持溝121’、左側に短い板材支持溝121’を設けている。
枠体113に各板材114’を取り付ける場合、最初に取り付ける板材114’及び2番目に取り付ける板材114’を順に板材挿入スペース122’の位置から右側にスライドさせて、その2枚の板材の上下の端部を右側の板材支持溝121’に挿入し係合させる。次いで、3番目に取り付ける板材114’を板材挿入スペース122’の位置から左側にスライドさせて、左側の板材支持溝121’に挿入し係合させる。次いで、最後に取り付ける板材114’を板材挿入スペース122’の部分に位置させ、その板材114’と先に取り付けた両側の板材114’、114’とをそれぞれ連結部材125で連結すると、扉105’が完成する。各連結部材125による連結手段自体は図14と同じである。
これにより、最後に取り付けた板材114’はその両側の板材114’、114’により連結部材125を介して支持されるので、図14の実施例のような板材側端刺入溝126は不要となる。
【実施例7】
【0042】
上述の例えば実施例1では、扉5の枠体13a、13bの縦枠材16及び横枠材17として山形鋼を用いたが、使用鋼材はこれに限らず適宜の鋼材を使用できる。
また、例えば実施例1の板材支持溝21は、縦枠材16である山形鋼のフランジ内面にフラットバー21aを溶接固定して形成したが、縦枠材16の断面形状に応じた適宜の手段で、板材支持溝を形成することができる。
また、本発明において、扉5を取り付ける架設シェルター側の開口枠体4は、実施例では、ウエブ内面に係合ピン11を溶接固定した溝形鋼(開口縦枠材8、開口横枠材9)を用いて、開口枠体4も仮設シェルターにボルトレスで取り付けることを可能にしたが、開口枠体の構成は、扉5側のヒンジ掛部18を係合可能なヒンジ受部を持つものであれば、任意である。
【符号の説明】
【0043】
1、1A、1B、1C、1D 扉構造
2 壁体
3 仮設シェルター本体
4、4”、104 開口枠体
5、5’、5”、105、105’ 扉
6a、6b 分割扉
8、8”、108 開口縦枠材
9、9”、109 開口横枠材
10 ヒンジ受部
11 係合ピン
12 連結部材(枠体連結部)
13a、13b、13’、13”、113 枠体
14a、14b、14e、114a、114b、114’ 板材
16、16’、16”、116 縦枠材
17、17’、17”、117 横枠材
18 ヒンジ掛部
18a ヒンジ軸
21、21”、121、121’ 板材支持溝
21a、21a”、121a、121a’ フラットバー
22、22”、122、122’ 板材挿入スペース
14c 幅広部
14d 幅狭部
23 掴み部
25 連結部材(板材連結部)
25a ピン穴
26 板材上端刺入溝
126 板材側端刺入溝
26a、126a フラットバー
27 ノブ
27a 丸パイプ
27b 外側ノブ
27d 内側ノブ
27e 指詰め防止板
28 指詰め防止機構
29 隙間
31 連結ピン(頭付き連結ピン)
32 連結ピン(コ字形連結ピン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮設シェルター本体に設けた扉用の矩形の開口枠体に矩形の扉を回転開閉可能に取り付ける仮設シェルターの扉構造であって、
前記扉は、前記開口枠体に回転開閉可能に取り付けられる矩形の枠体と、前記枠体の内側に扉面を形成するように積層して取り付けられる複数の板材とからなり、
前記枠体は、左右の縦枠材と上下の横枠材とを矩形状に一体に接合してなるとともに、左右の縦枠材の一方に取り付けたヒンジ掛部を、前記開口枠体の対応する箇所に設けたヒンジ受部に着脱可能かつ回転可能に係合させて、前記開口枠体に回転開閉可能に取り付けられており、
前記左右の縦枠材はそれぞれ、扉の幅方向中心側に開口して前記板材の左右の端部を挿入可能な断面略コ字形の1つ又は複数の板材支持溝を相対する位置に有するとともに、少なくとも前記板材支持溝の上側に前記板材を前記板材支持溝に上側から挿入することを可能にする板材挿入スペースを有し、
前記各板材は、その高さ方向の少なくとも一部が左右の縦枠材の前記板材支持溝に挿入可能な幅寸法の幅広部を有する形状であり、
前記枠体内に下側から順に積層される各板材のうち最後に積層される板材とその板材に隣接する下側の板材とに、両者を互いに着脱可能に連結する板材連結部を設けたことを特徴とすることを特徴とする仮設シェルターの扉構造。
【請求項2】
前記扉の枠体が複数に分割され、各枠体にそれぞれ前記板材が取り付けられ、各枠体は隣接するもの同士を互いに連結する枠体連結部を有することを特徴とする請求項1記載の仮設シェルターの扉構造。
【請求項3】
前記枠体における上側の横枠材の下面側に、前記枠体内に積層された最上段の板材の上端縁を刺し入れる板材上端刺入溝を有することを特徴とする請求項1又は2記載の仮設シェルターの扉構造。
【請求項4】
前記枠体における左右の縦枠材に、前記板材支持溝と板材挿入スペースとが上下方向に交互に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の仮設シェルターの扉構造。
【請求項5】
前記各板材は、その上側部分又は下側部分の一方が左右の縦枠材の前記板材支持溝に両端部を挿入可能な幅寸法の幅広部、他方が左右の縦枠材の前記板材支持溝に両端を挿入できない幅寸法の幅狭部とされているおり、前記幅広部の高さ寸法が前記板材挿入スペースの寸法より小さいことを特徴とする請求項4記載の仮設シェルターの扉構造。
【請求項6】
請求項1の仮設シェルターの扉構造を組み立てる仮設シェルターの扉構造組み立て方法であって、
予め製作した前記枠体を、そのヒンジ掛部を前記開口枠体のヒンジ受部に係合させて、開口枠体に回転開閉可能に取り付ける工程と、
前記複数の板材を、前記枠体の最上段のものを除き下側のものから順に、それぞれの両端部を、前記枠体の左右の縦枠材の板材挿入スペースからその下にある板材支持溝に挿入して枠体内に積層する工程と、
前記最上段の板材を、その板材に隣接する下側の板材の上に載せ、前記最上段の板材とその下側の板材とを、それぞれに取り付けた連結部材を介して連結することを特徴とする仮設シェルターの扉構造組み立て方法。
【請求項7】
仮設シェルター本体に設けた扉用の矩形の開口枠体に矩形の扉を回転開閉可能に取り付ける仮設シェルターの扉構造であって、
前記扉は、前記開口枠体に回転開閉可能に取り付けられる矩形の枠体と、前記枠体の内側に扉面を形成するように横方向に隣接配置して取り付けられる複数の板材とからなり、
前記枠体は、左右の縦枠材と上下の横枠材とを矩形状に一体に接合してなるとともに、左右の縦枠材の一方に取り付けたヒンジ掛部を、前記開口枠体の対応する箇所に設けたヒンジ受部に着脱可能かつ回転可能に係合させて、前記開口枠体に回転開閉可能に取り付けられており、
前記上下の横枠材はそれぞれ、扉の上下方向中心側に開口して前記板材の上下の端部を挿入可能な断面略コ字形の1つ又は複数の板材支持溝を相対する位置に有するとともに、少なくとも前記板材支持溝部の右側又は左側に前記板材を前記板材支持溝に右側又は左側から挿入することを可能にする板材挿入スペースを有し、
前記各板材は、その横方向の少なくとも一部が左右の縦枠材の前記板材支持溝に挿入可能な幅寸法の幅広部を有する形状であり、
前記枠体内に横方向に隣接配置される各板材のうち最後に取り付けられる板材とその板材に隣接する板材とに、両者を互いに着脱可能に連結する板材連結部を設けたことを特徴とすることを特徴とする仮設シェルターの扉構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−64227(P2013−64227A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201742(P2011−201742)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】