説明

仲介装置および無線通信端末装置

【課題】携帯電話網等の第1通信システムの無線通信端末を、無線LAN設備等の第2通信システムと送受信可能にする。
【解決手段】 携帯電話事業者設備10等の第1固定設備と、無線通信端末とを含む第1通信システムと、インターネット事業者設備20等の第2固定設備を含む第2通信システムと、第1通信システムの無線通信端末に対して第2固定設備との通信を仲介する仲介装置31と、を含み、この仲介装置31が無線通信端末と第2固定設備との間でプロトコルや周波数を変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仲介装置および無線通信端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機が高機能化し、インターネット(the internet)接続機能を搭載し、インターネットを介して電子メールの送受信やウエブサーバへの接続を行うものがある。こうした携帯電話機と通信を行う携帯電話システムは、その概略として図7に示すようになっている。
【0003】
すなわち、従来の携帯電話システムは、図7に示すように、制御局1と、各地に配置される固定設備に含まれる基地局2と、無線通信端末である携帯電話機3とを含んで構成されている。なお、一般にはこのほかに統括局などが含まれるのが全体的な構成であるが、ここでは簡単のために説明を省いている。ここで基地局2は、各地に配置されており、その近傍(PHSの場合数百メートル、携帯電話の場合数キロメートル、以下この近傍エリアを、カバーエリアと呼ぶ)にある携帯電話機3との間で通信を行っている。
【0004】
制御局1は、複数ある携帯電話機3のそれぞれが、現在どの基地局2のカバーエリア内にあるかを位置情報として記憶している。具体的に制御局1は、携帯電話機3からの要求により、現在どの基地局2のカバーエリア内にあるかを表す情報を取得してもよい。また制御局1は基地局2側からの要求により、各携帯電話機3がどの基地局2のカバーエリア内にあるかを表す情報を取得することとしてもよい。これらは、位置登録の処理、並びにハンドオフ(あるいはハンドオーバ)の技術として広く知られているものを用いることができる。
【0005】
特定の携帯電話機3を発呼する場合、制御局1は、位置情報を参照して当該携帯電話機3が存している位置をカバーエリアに含む基地局2の一つを特定し、当該特定した基地局2に対して、発呼の対象となった携帯電話機3への発呼の信号を出力する。この信号の入力を受けた基地局2は、カバーエリア内に当該信号を無線送信する。そして、当該カバーエリア内にある、発呼の対象となった携帯電話機3が当該呼を受け入れる。これらは一般にセルラー方式の無線通信端末が広く利用している方法である。
【0006】
さて、この携帯電話機3がインターネットを介して種々のデータを送受する場合、従来は携帯電話機3が、現在の所在地をカバーエリアに含む基地局2に対し、インターネットを介したデータの送受を要求し、基地局2を経由してデータの送受信を行うようになっていた。
【0007】
なお、複数のワイヤレスデータネットワークを介して端末間で通信する技術については、特許文献1にその開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−214133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来の移動通信システムでは、一つの基地局のカバーエリア内にある無線通信端末の数が、その基地局が一斉に通信できる数を超えているのが普通であり、多くのユーザが帯域を分けあって通信をしているのが現状である。こうした現状に対し、昨今では飲食店内にいるときにも、インターネット上のウエブサーバへの接続や電子メールの送受信をしたいという要望が高くなっており、この要望に応えることが必要となってきている。
【0010】
一方で、近年では、携帯電話網とは異なり、無線LAN設備を用いてインターネット接続サービスを行っている飲食店等の施設も増えてきている。これは、施設側に固定された設備として無線LAN(いわゆる802.11規格等によるネットワーク)のアクセスポイント装置を設け、このアクセスポイント装置を、例えば光ファイバを介してインターネットに直接的に接続したものである。ユーザ側の機器は、アクセスポイント装置を介してインターネット上のサーバとの間でTCP/IP等の一般的なコンピュータ通信プロトコルを介して通信を行う。この場合、アクセスポイント装置と機器間の通信速度は、携帯電話機と基地局との間の通信速度に比べて大きく、一斉にアクセス可能なユーザの数も多くなるが、他方、アクセスポイント装置の空中線電力は基地局に比べて小さく、その通信可能なエリアは高々50メートル程度までである。
【0011】
現在、こうした無線LAN設備と携帯電話網等の移動通信システムとを統合した新たなサービスを提供するべく、無線通信端末側に無線LANに対応した通信モジュールと、携帯電話網に対応した無線モジュールとを搭載し、どちらにもアクセスできるようにする機器も考えられている。しかし、このように複数の通信モジュールを搭載すると、消費電力が大きくなり、機器の小型化も阻害されることとなり、ユーザの利便性の要望に応えることができなくなる。
【0012】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、携帯電話網等の第1通信システムの無線通信端末を、無線LAN設備等の第2通信システムと送受信可能にするとともに、ユーザの利便性の要望にも応えることのできる移動通信システムを提供することを、その目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、第1固定設備と、無線通信端末とを含む第1通信システムと、第2固定設備を含む第2通信システムと、を含み、前記第1通信システムと第2通信システムとは互いに異なる通信プロトコルと互いに異なる周波数を用いて通信を行っている移動通信システム内で、前記第1通信システムの無線通信端末に対して、前記第2固定設備との通信を仲介する仲介装置であって、仲介を行う無線通信端末として予め設定されている無線通信端末を認証するための情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されている情報を利用して当該送信要求の元となった無線通信端末を認証する認証手段と、を有し、前記認証手段によって認証された無線通信端末から受信したデータを、第2通信システムで利用される通信プロトコル及び周波数を用いて第2固定設備に対して送信し、第2固定設備から受信したデータを、第1通信システムで利用される通信プロトコル及び周波数を用いて当該認証された無線通信端末に送信する、ことを特徴としている。
【0014】
また、上記従来例の問題点を解決するための本発明は、第1固定設備とデータの通信を行うとともに、第2固定設備との間では、所定の仲介装置を介してデータの通信を行う無線通信端末装置であって、第1固定設備にデータを送信する際に比べ、前記仲介装置にデータの送信を行う場合の送信電力を低くなるよう制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、携帯電話網等の第1通信システムの無線通信端末を、無線LAN設備等の第2通信システムと送受信可能にするとともに、ユーザの利便性の要望にも応えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る移動通信システムの構成ブロック図である。
【図2】携帯電話機30の構成ブロック図である。
【図3】仲介装置31の構成ブロック図である。
【図4】基地局11と携帯電話機30との間の通信フローの例を表すフローチャート図である。
【図5】アクセスポイント装置22を介した通信を行う場合の通信フローの例を表すフローチャート図である。
【図6】認証の処理のフロー例を表すフローチャート図である。
【図7】従来の携帯電話システムの構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係る移動通信システムは、図1に示すように、携帯電話事業者設備10と、インターネット設備20と、無線通信端末の例である携帯電話機30と、仲介装置31とを含む。また、携帯電話事業者設備10は、複数の基地局11と、制御局12と、認証サーバ13と、ゲートウエイ装置(GW)14とを含み、インターネット設備20は、サーバシステム21と、サーバシステム21に接続されている、複数のアクセスポイント装置22とを含む。ここで携帯電話事業者設備10が本発明の第1固定設備の一例であり、インターネット設備20が第2固定設備の一例となっている。
【0018】
基地局11は、従来の基地局11と同様のものであり、制御局12側から入力される指示に従い、そのカバーエリア内の携帯電話機30と無線通信する。制御局12は、各携帯電話機30が現在通信を行っている基地局11又はアクセスポイント装置22を特定し、携帯電話機30ごとに当該特定された基地局11又はアクセスポイント装置22を特定する情報を関連づけて記憶する処理(位置登録処理)を行う。また、この制御局12は、上記記憶している内容を更新する処理(ハンドオフ処理)を行っている。この制御局12の具体的処理の内容については、後に詳しく説明する。
【0019】
認証サーバ13は、ゲートウエイ装置14を介してサーバシステム21側から認証情報(例えば携帯電話機30の電話番号等、識別情報そのもの)を受け入れて認証処理を行う。具体的にこの認証サーバ13は、各携帯電話機30の識別情報等の認証情報を保持しており、電話番号等の識別情報のデータを認証情報として受け入れると、当該保持している情報と照合し、照合ができた場合には、当該識別情報に係る電話番号の携帯電話機30に対する認証が成功した旨の認証結果の情報をサーバシステム21に送信する。さらに、この認証サーバ13は、当該認証に成功した場合に、その携帯電話機30に対する所定の課金処理を行うようにしてもよい。以下の説明では簡単のため、認証情報は携帯電話機30の識別情報であるものとして説明する。
【0020】
ゲートウエイ装置14は、インターネットを介してサーバシステム21に接続されており、サーバシステム21側から認証情報を受信して、認証サーバ13に出力する。また、このゲートウエイ装置14は、認証サーバ13から認証結果の情報の入力を受けると、サーバシステム21に対して当該認証結果の情報を送信する。
【0021】
また、このゲートウエイ装置14は、アクセスポイント装置22を特定する情報(IPアドレス情報等)とともに、携帯電話機30に対する制御信号データや音声信号データの入力を、制御局12から受けると、当該特定されたアクセスポイント装置22に対して入力された制御信号データや音声信号データを送信する。
【0022】
サーバシステム21は、インターネットプロバイダ業者に備えられるコンピュータシステムであり、各アクセスポイント装置22から受信されるTCP/IPパケットを、インターネット側に送信し、またインターネット側から受信されるTCP/IPパケットを、当該パケットに含まれるIPアドレスによって特定されるアクセスポイント装置22に送信するといった処理(ルーティングの処理)を行っている。また、このサーバシステム21は、携帯電話機30からの通信要求(当該携帯電話機30の識別情報を含む)を、アクセスポイント装置22を介して取得した場合に、当該携帯電話機30の通信要求をゲートウエイ装置14を介して認証サーバ13に送信し、認証サーバ13から認証に成功した旨の情報が取得されるまでは、当該携帯電話機30からインターネット上のサーバ(電子メールサーバや、ウエブサーバ等)に対するデータパケットのルーティングを行わない。すなわち、これらのデータパケットはサーバシステム21側に保持され、認証に成功した旨の情報が取得されたときに、サーバシステム21によって、各サーバにルーティングされて送信される。また、認証に成功しなかった旨の情報が取得されると、サーバシステム21は、当該データパケットを破棄する。サーバシステム21は、この場合に、携帯電話機30側に認証に成功しなかった旨の情報を送信することとしてもよい。
【0023】
アクセスポイント装置22は、例えば802.11bや802.11gといった無線LANの規格に従ったプロトコル、並びに周波数を利用し、当該アクセスポイント装置22近傍(例えば50メートル程度以内)をカバーエリアとして、当該カバーエリア内の通信相手との間でデータの送受信を行うものである。このアクセスポイント装置22のカバーエリアと、それに近接する基地局11のカバーエリアとは互いに重複していてもよいし、アクセスポイント装置22のカバーエリアは、少なくとも一つの基地局11のカバーエリアに包含されていてもよい。
【0024】
また、このアクセスポイント装置22は、当該通信相手から受信したデータ(TCP/IPパケット)をサーバシステム21側に送信し、またサーバシステム21側から受信されるデータ(TCP/IPパケットに含まれるパケットのデータ)に基づき、当該データに含まれるアドレス(IPアドレス)が割り当てられている通信相手に、当該データを送信する。なおアクセスポイント装置22は、その近傍の通信相手に対して、固有のIPアドレスを割り当てる処理(DHCP;Dynamic Host Con figuration Protocolに基づく処理)を行ってもよい。
【0025】
さらに、アクセスポイント装置22は、例えば802.11の規格におけるビーコンのように、通信相手に対して自らの存在を知らせるための信号(以下、アクセスポイントビーコンと呼ぶ)を定期的に送信している。
[携帯電話機]
携帯電話機30は、図2に示すように、基地局11との間での通信で利用されるプロトコル並びに周波数で通信を行う通信モジュール41と、制御モジュール42とを含んでなる、一般的な携帯電話機である。なお、本来であれば、制御モジュール42にキーパッドなどの操作部やスピーカ、マイク等の音声処理部等、並びにディスプレイ等の表示部、その他を含むのが全体的な構成であるが、ここでは簡単のため、それらを図示していない。この携帯電話機30は、その基本構成は従来から広く用いられている携帯電話機と同様のものであるが、制御モジュール42の行う処理の内容が少々異なる。
【0026】
すなわち、この制御モジュール42は、図示しない記憶素子に格納されたプログラムに従って動作するもので、後に説明する仲介装置31からのビーコン信号を通信モジュール41が受信したときに、仲介装置31との接続処理を行う点が従来のものと異なっている。まず、この携帯電話機30は、仲介装置31からビーコン信号が受信されると、それに対して応答信号を仲介装置31に送信する。この応答信号には携帯電話機30に割り当てられている電話番号等、識別情報を含めてもよい。
【0027】
また、携帯電話機30の制御モジュール42は、通信相手となる基地局11又は仲介装置31を特定する情報を、図示しない記憶部に記憶しており、仲介装置31からビーコン信号を受信していないときには、通信相手として、いずれかの基地局11を特定する情報をこの記憶部に記憶し、仲介装置31からビーコン信号を受信したときには、通信相手として当該仲介装置31を特定する情報を記憶部に記憶する。
【0028】
そして携帯電話機30は、ユーザから発呼、又はインターネット上のサーバへのアクセス(電子メールサーバやウエブサーバとの通信)の指示を受けると、上記記憶部を参照して、通信相手として記憶されている基地局11又は仲介装置31に対して通信要求(発呼等の要求)を送信する。ここで、携帯電話機30の制御モジュール42は、通信相手が基地局11であるか仲介装置31であるかによって通信要求に含めるデータの内容を変更してもよい。例えば、仲介装置31に対して通信要求を行う場合、携帯電話機30は、自らの認証情報を当該要求に含める。また、この携帯電話機30は、基地局11又は仲介装置31から着信の要求を受け入れて、着信の処理を行う(ユーザに対する着信の報知や着呼の処理等)。
[携帯電話機の省電力制御]
さらに、この携帯電話機30の制御モジュール42は、通信相手が基地局11と仲介装置31とのどちらであるかによって、通信モジュール41の送信に係る空中線電力を変更してもよい。すなわち平均的には、仲介装置31と携帯電話機30との距離は、基地局11と携帯電話機30との距離に比して小さいので、制御モジュール42は、基地局11を通信相手とする場合に比べ、仲介装置31を通信相手とする場合の空中線電力(送信電力)を低減するよう通信モジュール41を制御する。
【0029】
これによると、仲介装置31に対する信号送信の際の消費電力を低減し、携帯電話機30の全体的な消費電力を低減できる。
[仲介装置]
仲介装置31は、図3に示すように、携帯電話機側高周波回路51と、携帯電話機側信号処理回路52と、制御回路53と、アクセスポイント装置側信号処理回路54と、アクセスポイント装置側高周波回路55とを含んで構成されている。なお、仲介装置31は、さらに操作部56と、表示部57との少なくとも一方を含んでもよいので、図3では、これらを含んだ例を示している。
【0030】
携帯電話機側高周波回路51は、携帯電話機30との間で、基地局11が用いているのと同じプロトコル(以下、第1プロトコルと呼ぶ)及び周波数を用いて通信を行う。具体的に、ある例では、基地局11は、例えば800MHz、アクセスポイント装置22は、2.4GHzを用いており、これらは互いに異なっているのが一般的である。この携帯電話機側高周波回路51は、携帯電話機30から受信される信号を携帯電話機側信号処理回路52に出力し、また携帯電話機側信号処理回路52から入力される信号を、携帯電話機30に送信する。
【0031】
さらに、この携帯電話機側高周波回路51は、制御回路53から入力される指示に従って所定のビーコン信号を放射する。
【0032】
携帯電話機側信号処理回路52は、携帯電話機側高周波回路51が携帯電話機30から受信した信号からディジタルデータを復号して制御回路53に出力している。また、この携帯電話機側信号処理回路52は、制御回路53から入力されるディジタルデータを携帯電話機側高周波回路51に出力する。
【0033】
制御回路53は、携帯電話機側信号処理回路52から入力されるディジタルデータに基づき、アクセスポイント装置22側で用いられるプロトコル(以下、第2プロトコルと呼ぶ)に対応するデータ構造、例えばTCP/IPパケットのデータ構造に変換したディジタルデータを生成し、アクセスポイント装置側信号処理回路54に出力する。また、この制御回路53は、アクセスポイント装置側信号処理回路54から入力されるディジタルデータに基づき、携帯電話機30側で用いられる第1プロトコルに対応するデータ構造に変換したディジタルデータを生成し、携帯電話機側信号処理回路52に出力する。
【0034】
さらに、この制御回路53は、アクセスポイント装置側高周波回路55が、アクセスポイント装置22を検出すると、携帯電話機側高周波回路51にビーコン信号を放射させる。
【0035】
アクセスポイント装置側信号処理回路54は、制御回路53から入力されるディジタルデータをアクセスポイント装置側高周波回路55に出力する。また、このアクセスポイント装置側信号処理回路54は、アクセスポイント装置側高周波回路55から入力される信号から、ディジタルデータを復号して制御回路53に出力する。
【0036】
アクセスポイント装置側高周波回路55は、アクセスポイント装置側信号処理回路54から入力されるディジタルデータを変調し、アクセスポイント装置22が利用する周波数の信号を生成して送信する。また、このアクセスポイント装置側高周波回路55は、アクセスポイント装置22から受信した信号をアクセスポイント装置側信号処理回路54に出力する。
【0037】
本実施の形態において特徴的なことの一つは、この仲介装置31のアクセスポイント装置側高周波回路55が、仲介装置31の他の各部への電源供給を制御する処理を行っていることである。具体的に、仲介装置31の他の各部、携帯電話機側高周波回路51、携帯電話機側信号処理回路52、制御回路53、アクセスポイント装置側信号処理回路54、操作部56、表示部57へは、通常の状態では電源が供給されていない状態となっている。アクセスポイント装置側高周波回路55は、アクセスポイント装置22との通信を開始していない状態(電源投入直後や、アクセスポイント装置22のカバーエリア外にあったときなど)では、アクセスポイント装置22が送信するアクセスポイントビーコンが受信されるか否かを監視している。そしてアクセスポイントビーコンが受信されると、アクセスポイント装置22を検出したとして、各部への電源供給を開始する。さらにこの際、仲介装置31は、DHCP等のプロトコルを利用してアクセスポイント装置22側からIPアドレスの割当を受け付けて記憶しておく。ここで割り当てられたIPアドレスは、ビーコン信号に対して応答し、通信の要求を行った携帯電話機30の識別情報(電話番号等)とともに、携帯電話事業者設備10側に対して、アクセスポイント装置22を介して送信される。具体的な例を示せば、このパケットは、アクセスポイント装置22からサーバシステム21を経由し、ゲートウエイ14を介して制御局12に送られ、制御局12は、当該IPアドレスと携帯電話機30の識別情報とを関連づけて図示しないデータベース(IPアドレスデータベース)に格納する。
【0038】
なお、操作部56は、ボタンなどであり、ユーザから行われた操作の内容を制御回路53に出力する。また表示部57は、制御回路53から入力される指示に従って情報を表示するディスプレイである。
[仲介装置の動作]
仲介装置31は、上述の構成を含み、次のように動作する。ここでは仲介装置31は、携帯電話機30のユーザが、携帯電話機30とともに携帯しているものとする。
【0039】
電源が投入された後、アクセスポイント装置22のカバーエリア外にある間は、仲介装置31のアクセスポイント装置側高周波回路55がアクセスポイントビーコンを受信せず、仲介装置31の携帯電話機側高周波回路51、携帯電話機側信号処理回路52、制御回路53、アクセスポイント装置側信号処理回路54、操作部56、表示部57といった各部には電源の供給が行われていない状態となっている。
【0040】
仲介装置31を携帯するユーザがアクセスポイント装置22の一つのカバーエリア内に移動してくると、アクセスポイント装置側高周波回路55が当該アクセスポイント装置22から放射されているアクセスポイントビーコンを受信し、各部への電源供給を開始する。
【0041】
すると、制御回路53が、携帯電話機側高周波回路51に対してビーコン信号の放射を指示し、携帯電話機側高周波回路51がビーコン信号の放射を開始する。携帯電話機30がこのビーコン信号に応答して通信の開始を要求すると、仲介装置31は、携帯電話機30から例えば800MHzの周波数で受信した信号を復号し、第1プロトコルに対応するデータ構造のデータを抽出して、これを第2プロトコルに対応するデータ構造に変換し、第2プロトコルに対応する符号化を行い、アクセスポイント装置22側の周波数、例えば2.4GHzの周波数の信号に変調して、アクセスポイント装置22に対して送信する。また仲介装置31は、この逆に、アクセスポイント装置22から受信した信号についても、そのプロトコル及び周波数を、第1プロトコル及び800MHzの周波数といった、携帯電話機30側で受信可能な信号に変換して送信する。
[アクセスポイント装置のカバーエリアからの離脱]
また、仲介装置31を携帯するユーザがアクセスポイント装置22のカバーエリアから離れると、アクセスポイント装置側高周波回路55が受信するアクセスポイント装置22の信号強度が低下するので、制御回路53が当該信号強度を監視しておき、当該信号強度が予め定めたしきい値を下回ったときに、携帯電話機30に対してアクセスポイント装置22が利用できなくなったことを報知する信号を、携帯電話機側信号処理回路52及び携帯電話機側高周波回路51を用いて送信するようにしてもよい。この場合、携帯電話機30は、アクセスポイント装置22が利用できなくなったことを報知する当該信号を受信したときに、通信可能な基地局11を探索し、当該探索により特定された基地局11を介して通信を継続すればよい。
【0042】
また、仲介装置31のアクセスポイント装置側高周波回路55が、自らが受信しているアクセスポイント装置22の信号強度を監視し、当該信号強度が予め定めたしきい値を下回ったときに、制御回路53を含む他の各部への電源供給を停止するようにしてもよい。この場合、携帯電話機30は、仲介装置31との通信ができなくなる。そこで、携帯電話機30では、一定の時間以上、仲介装置31との通信ができなくなったときに(あるいは仲介装置31からのビーコン信号等が一定の時間以上受信できなくなったときに)、通信可能な基地局11を探索し、当該探索により特定された基地局11を介して通信を継続するようにしてもよい。
[仲介装置に対する登録の例]
仲介装置31は、上述のように動作するので、この仲介装置31が送信するビーコン信号が受信されれば、それに対応する携帯電話機30が一斉に、この仲介装置31を利用できるようになってしまい、ユーザの利便性に資することが必ずしもできなくなる。そこで、仲介装置31に対して予め、ユーザの携帯電話機30の識別情報を登録しておき、当該識別情報により識別される携帯電話機30に対してのみ、仲介装置31を介して、アクセスポイント装置22との通信が可能となるよう制御してもよい。
【0043】
具体的には、仲介装置31の制御回路53に携帯電話機30の電話番号等の識別情報を記憶するレジスタを含めておき、ここに通信を許可する携帯電話機30の識別情報を記憶する。そして、携帯電話機30側から受信したデータが、当該記憶されている識別情報によって識別される携帯電話機30から受信したものであるか否かを調べ、そうでないときには、当該情報を破棄する。この場合、携帯電話機30側では、仲介装置31を介してアクセスポイント装置22と通信を行う際には、自己に割り当てられている電話番号等の識別情報を、データとともに送信するように制御しておく。
【0044】
なお、この識別情報をレジスタに記憶させる手順としては、仲介装置31がユーザに譲渡される時点で、業者側によって予めレジスタに書き込んでおく手順が考えられる。また、操作部56において所定の登録指示操作が行われたときに、仲介装置31が登録処理開
始信号を携帯電話機30側に対して(例えば第1プロトコル及び800MHzの信号で)放射し、携帯電話機30側がこれに応えて識別情報を仲介装置31側に放射し、仲介装置31側で当該識別情報を受信してレジスタに書き込むようにしてもよい。この場合は、携帯電話機30側で識別情報を放射する前にユーザに問い合せを行うようにしてもよい。さらにレジスタには複数の携帯電話機30の識別情報が登録できるようになっていても構わない。この場合、後者の方法で仲介装置31に識別情報を登録させることとすれば、例えば、それぞれが携帯電話機30を所持する仲間が集まっているところで、当該登録操作を行うことによって、当該仲間の携帯電話機30のそれぞれに対しても、簡易な操作でアクセスポイント装置22との間で通信を行わせることができるようになる。
【0045】
また、この仲介装置31は、操作部56から入力される所定の登録削除操作によって、レジスタ内に格納されている識別情報をユーザによる選択に基づいて削除するようにしてもよい。さらに、仲介装置31は、操作部56から入力される所定の登録確認操作に応答して、レジスタ内に格納されている識別情報を表示部57に表示出力するようにしてもよい。
[制御局12の位置登録処理]
ここで、制御局12の処理の内容についてより具体的に説明する。制御局12は、当該制御局12を管理する事業者の携帯電話機30の各々について、それらを特定する情報と、各携帯電話機30が現在通信可能になっている基地局11又はアクセスポイント装置22を特定する情報(位置登録情報)とを関連づけて、図示しないデータベース(位置登録データベース)に保持している。
【0046】
制御局12は、この位置登録情報により、例えば公衆電話回線網(PSTN)から携帯電話機30の一つに対する発呼の要求が入来した場合に、当該要求に係る携帯電話機30を識別する情報に関連づけて上記位置登録データベースに保持されている位置登録情報を参照し、当該位置登録情報によって特定される基地局11又はアクセスポイント装置22に対して当該発呼の要求を送信する。ここで、アクセスポイント装置22に対して発呼の要求を送信する場合は、制御局12は、IPアドレスデータベースを参照し、発呼の対象となっている携帯電話機30とアクセスポイント装置22との間の通信を仲介している仲介装置31のIPアドレスを取得し、当該IPアドレスに対して発呼の指示と、当該発呼の対象となっている携帯電話機の識別情報とを含んだデータパケットを送信することとすればよい。
[ハンドオフ処理]
さらにこの制御局12は、例えば携帯電話機30側から、新たに通信可能になった基地局11又はアクセスポイント装置22を特定する、位置登録情報を受信すると、当該位置登録情報の送信元となっている携帯電話機30の識別情報に関連づけて位置登録データベースに格納されている位置登録情報を、当該受信した位置登録情報で上書きして、位置登録データベースを更新する。
【0047】
なお、ハンドオフに際しては、このように携帯電話機30から新たな位置登録情報を受信する方法のほか、いずれかの携帯電話機30と新たに通信可能となった基地局11やアクセスポイント装置22側から、それらを特定する情報と当該新たに通信可能となった携帯電話機30を識別する情報とを受信することによって行うこともできる。
【0048】
さらに本実施の形態における制御局12は、次のような処理を行うようにしてもよい。すなわち、アクセスポイント装置22のカバーエリアは既に説明したように、限られた範囲内であるため、位置登録データベース上ではアクセスポイント装置22のいずれかとの通信が可能であると位置登録されていても、仲介装置31を所持するユーザがそのカバーエリアから外れた位置に短時間のうちに移動してしまうことは想定されるところである。
【0049】
そこで、本実施の形態の制御局12は、新たな位置登録情報を受信したときに、当該位置登録情報によって特定される、携帯電話機30の通信相手がアクセスポイント装置22のいずれかである場合は、前回通信相手として特定されていた基地局11を特定する位置登録情報を位置登録データベース内に保持しておくこととしてもよい。そして制御局12は、位置登録データベースに登録されているアクセスポイント装置22を介して、携帯電話機30に対して送信したデータが携帯電話機30に届いていないと判断される場合(例えば一定の時間内に携帯電話機30から確認信号(ACKなど)が受信されない場合)に、当該保持している位置登録情報によって特定される基地局11を介して当該届いていないデータを送信する。これにより、通信を継続させることができるようになる。
[動作]
次に本実施の形態に係る移動通信システムの動作について説明する。まず、携帯電話機30が、基地局11との間で通信可能となっている場合は、従来と同じように動作する。例えば、図4に示すように制御局12側から携帯電話機30を発呼する際には、制御局12が、位置登録データベースを参照して携帯電話機30と通信可能となっている基地局11を特定し、当該特定した基地局11に対して発呼の指示を送信する(S1)。そして基地局11はこの発呼の指示を携帯電話機30に送信する(S2)。携帯電話機30のユーザが着信の操作を行うと、携帯電話機30が着信したことを表す信号を基地局11に送信し(S3)、基地局11が当該着信を表す信号を制御局12に送信する(S4)。その後、制御局12と、携帯電話機30との間で基地局11を介して音声信号の送受信が行われ、通話が行われる(S5)。
【0050】
なお携帯電話機30が、基地局11を介してデータパケットを送受信する場合もこれと同様に、制御局12を介してインターネット上のサーバへデータパケット(ユーザデータを含むパケット)が送出され、それに対する応答のデータを含むパケットは、制御局12及び基地局11を経由して携帯電話機30にて受信される。
【0051】
このように携帯電話機30のユーザの近傍にアクセスポイント装置22がなく、携帯電話機30が基地局11と通信を行う場合の動作は、従来のものと同じとなる。また、この場合は図5に示すように、位置登録情報も、基地局11を介して制御局12に送信されることになる(S11,12)。
【0052】
ユーザがアクセスポイント装置22のカバーエリアに入ると、アクセスポイント装置22が送信するアクセスポイントビーコンが仲介装置31で受信され(S13)、仲介装置31がビーコン信号を携帯電話機30に送信する(S14)。このとき、仲介装置31に対してアクセスポイント装置22からIPアドレス(例えば「192.168」などのネットワークに属する、ローカルアドレスで構わない)が付与される(S15)。
【0053】
ビーコン信号を受信した携帯電話機30では、送信電力を低減する制御を行うとともに、ビーコン信号に応答して位置登録要求を送信する(S16)。すると、仲介装置31がこの位置登録要求をTCP/IPのデータパケットとして変換し、当該変換後の位置登録情報をアクセスポイント装置22に送信する(S17)。この位置登録要求の送信先は、アクセスポイント装置22に予め設定されている、制御局12側のIPアドレスであり、このIPアドレスに向けてネットワークを介して送信され(S18)、制御局12が当該位置登録要求を取得することとなる。具体的には制御局12は、当該位置登録要求の送信元となっている、当該アクセスポイント装置22のIPアドレスを、当該携帯電話機30の位置登録情報として位置登録データベースに記憶する。
【0054】
この状態で、制御局12が携帯電話機30を発呼するときには、発呼の指示を含むTCP/IPデータパケットを、当該携帯電話機30の位置登録情報により特定されるアクセスポイント装置22のIPアドレスに送信し(S21)、アクセスポイント装置22が当該データパケットのIPアドレスを、仲介装置31のIPアドレスに付け替えて(アドレス変換して)、仲介装置31に送信する(S22)。このアドレス変換の処理は、IPマスカレード等、広く知られた方法を利用できる。
【0055】
仲介装置31は、当該発呼の指示を含むTCP/IPパケットから、発呼の指示を取り出して、携帯電話機30に送信する(S23)。携帯電話機30のユーザがこれに対して着信の操作を行うと、処理S3におけるのと同じ、着信したことを表す信号が仲介装置31に送信され(S24)、仲介装置31がこれをTCP/IPのデータパケット(着信パケット)に変換して、当該着信パケットをアクセスポイント装置22に送信する(S25)。アクセスポイント装置22では、これを制御局12に対して送信する(S26)。以下、制御局12は、仲介装置31との間で音声パケットを送受し、仲介装置31は、携帯電話機30との間で、当該音声パケットに係る音声信号を送受信するようになる(S27)。
【0056】
なお、電子メールやウエブサーバからのデータ等についても、この図5に示したのと同様にして、携帯電話機30側から仲介装置31に対しては、基地局11に対するのと同じ形式、周波数の信号が送信され(この際、送信信号の電力は低減されているので、最近接の基地局11にも当該信号が到来せず、基地局11の処理に混乱を来すことがないようになっている)、仲介装置31にて当該データがTCP/IP等、インターネット側に適したデータ形式に変換されてアクセスポイント装置22に送信されることとなる。この場合は、アクセスポイント装置22が当該データ形式のデータパケットをサーバシステム21に送信し、サーバシステム21からインターネット上の各サーバへ当該データパケットがルーティングされるようになっている。また、インターネット上のサーバ側からのデータパケットは、アクセスポイント装置22宛てに、サーバシステム21を経由して届けられ、アクセスポイント装置22がIPアドレスの変換(アドレス変換)を行って仲介装置31に送信し、仲介装置31がデータパケット内のデータを取り出して、基地局11側から携帯電話機30へ送信されるのと同じ形式のデータ、周波数にて、携帯電話機30に対して当該取り出したデータを送信する。携帯電話機30は、基地局11からの信号を受信するのと同様の処理によって当該データを受信し、処理する。
【0057】
このように、本実施の形態では、携帯電話機30のデータ処理に係る機能、プログラムには何らの変更も必要とならない。携帯電話機30においては、仲介装置31からのビーコン信号に応答する処理を付加するのみでよく、また、アクセスポイント装置22との間で直接通信を行うための通信モジュールも必要とならない。
【0058】
次に、図5において、仲介装置31にIPアドレスが割り当てられるときの処理についてより詳細に説明する。本実施の形態の例では、この処理中に携帯電話機30側の認証が行われるようにしておいてもよい。すなわち、図6に示すようにアクセスポイント装置22からアクセスポイントビーコンを受信し(処理S13)、ビーコン信号を携帯電話機30に送信した(処理S14)仲介装置31は、携帯電話機30の識別情報をアクセスポイント装置22を介してサーバシステム21側に送信する(S32からS33)。この際には例えばDHCPにおけるDHCPリクエストパケット内のオプション(option)フィールドを用いて識別情報を送信することとしておけばよい。またここで、携帯電話機30の識別情報は、予め登録されたものであってもよいし、携帯電話機30側から応答として受信した信号に含められた識別情報を用いてもよい(S31)。なお、登録されたものを用いるなど、仲介装置31側で携帯電話機30の識別情報を備えている場合は、この処理S31は必ずしも必要とはならない。
【0059】
サーバシステム21は、当該識別情報を認証サーバ13に送信する。この際、当該認証情報は、インターネットと、ゲートウエイ装置14とを介して認証サーバ13側に届けられる。認証サーバ13は、当該受信した認証情報に基づいて認証の処理を行い、その結果をサーバシステム21に送信する(S35)。サーバシステム21では、認証に成功した旨の認証結果の情報を受信したときには、通信の許可を表すデータパケットをアクセスポイント装置22に送信し(S36)、アクセスポイント装置22は、このデータパケットを受けてIPアドレスを発行して(S37)、その発行したIPアドレスを仲介装置31に通知する(S38)。この通知は例えばDHCPリクエストに対する応答として行われてもよい。そして仲介装置31にIPアドレスが設定されて付与される(S39)。
【0060】
従って、認証に成功するまでは、仲介装置31による仲介の処理が行われず、仲介装置31を用いた通信はできない。なお、認証に失敗した旨のデータパケットが受信された場合は、サーバシステム21は、アクセスポイント装置22にその旨を送信し、アクセスポイント装置22は、仲介装置31にその旨を通知する。この場合、仲介装置31は、携帯電話機30に対して通信可能とならなかった旨のデータを送信し、携帯電話機30は、アクセスポイント装置22に対する位置登録を行うことなく、基地局11との通信を継続することとなる。
【0061】
なお、この図5、図6を用いて説明した例によると、IPアドレスの付与の処理と、位置登録の処理とは個別に行われるとしていたが、例えば認証サーバ13において、ゲートウエイ装置14を介して識別情報を受信した認証を行い、認証の結果、認証に成功したときに、当該識別情報を、当該識別情報の送信元となったアクセスポイント装置22を特定する位置登録情報に関連づけて登録するよう、制御局12側に要求してもよい。すなわち、認証サーバ13は、ゲートウエイ装置14を介して認証の要求を受けて、認証に成功したときには、その認証の要求元、つまり識別情報の送信元のアクセスポイント装置22を介して、携帯電話機30との通信を行うこととなるよう、制御局12の位置登録データベースを更新させるようにしてもよい。この場合、位置登録要求の送信(S16からS18)は必ずしも必要でない。
[変形例]
なお、ここまでの説明では仲介装置31は、ユーザが携帯しているものとして説明したが、仲介装置31自体は、アクセスポイント装置22の近傍に設置されていてもよい。
[第2の変形例]
なお、ここまでの説明では、携帯電話機30の消費電力増大の抑制、及び小型化等に配慮して、仲介装置31を用いる例を示したが、本実施の形態に示した制御局12や、認証サーバ13、サーバシステム21、アクセスポイント装置22といった構成は、仲介装置31を用いずに、携帯電話機側に基地局11との通信を行うモジュールと、アクセスポイント装置22との通信を行うモジュールとの双方を備えている場合にも適用できる。
【0062】
このように双方のモジュールを備える携帯電話機(以下、複合端末と呼ぶ)では、基地局11との通信を行う際の動作は従来通りであり、また、ユーザがアクセスポイント装置22のカバーエリアに入ったときには、アクセスポイント装置22が送信するアクセスポイントビーコンをアクセスポイント装置22との通信を行うモジュールにて捕捉し、これに応答して識別情報を(例えばDHCPリクエストパケットのオプションフィールドを用いて)アクセスポイント装置22に送信し、アクセスポイント装置22がサーバシステム21に当該識別情報を送信し、サーバシステム21が、当該識別情報を認証サーバ13に送信する。この際もこの認証情報は、インターネットと、ゲートウエイ装置14とを介して認証サーバ13側に届けられる。認証サーバ13は、当該受信した認証情報に基づいて認証の処理を行い、その結果をサーバシステム21に送信し、サーバシステム21では、認証に成功した旨の認証結果の情報を受信したときは、通信の許可を表すデータパケットをアクセスポイント装置22に送信し、アクセスポイント装置22は、このデータパケットを受けてIPアドレスを発行して、その発行したIPアドレスを仲介装置31に通知する(この通知は例えばDHCPリクエストに対する応答として行われてもよい)。そして複合端末のアクセスポイント装置22との通信を行うモジュール側にIPアドレスが設定されて付与される。
【0063】
複合端末側では、基地局11に対する通信を行っているモジュールへの電源供給を停止するなど、送信電力を低減する制御を行うとともに、アクセスポイント装置22、サーバシステム21、インターネット、ゲートウエイ装置14を介して制御局12側に位置登録要求を送信する。なお、この位置登録要求の送信先のIPアドレスは、予め複合端末側に設定しておく。
【0064】
制御局12は、当該位置登録要求を取得するとともに、位置登録情報として、当該位置登録要求の送信元となっているアクセスポイント装置22のIPアドレスを取得して記憶する。
【0065】
この状態で、制御局12が複合端末を発呼するときには、発呼の指示を含むTCP/IPデータパケットを、複合端末の位置登録情報により特定されるアクセスポイント装置22のIPアドレスに送信し、アクセスポイント装置22が当該データパケットのIPアドレスを、複合端末側のIPアドレスに付け替えて(アドレス変換して)送信する。このアドレス変換の処理は、IPマスカレード等、広く知られた方法を利用できる。
【0066】
複合端末は、当該発呼の指示を含むTCP/IPパケットから、発呼の指示を取り出し、ユーザに報知する。複合端末のユーザがこれに対して着信の操作を行うと、着信したことを表すTCP/IPのデータパケット(着信パケット)をアクセスポイント装置22に送信する。そしてアクセスポイント装置22では、これを制御局12に対して送信する。以下、制御局12は、音声パケットをアクセスポイント装置22経由で複合端末側と送受信することとなる。
【0067】
なお、電子メールやウエブサーバからのデータ等についても、これと同様に処理され、アクセスポイント装置22と、サーバシステム21とを経由して、インターネット上のサーバと複合端末とが通信を行うことになる。
【符号の説明】
【0068】
1,12 制御局、2,11 基地局、3,30 携帯電話機、13 認証サーバ、14 ゲートウエイ装置、21 サーバシステム、22 アクセスポイント装置、31 仲介装置、41 通信モジュール、42 制御モジュール、51 携帯電話機側高周波回路、52 携帯電話機側信号処理回路、53 制御回路、54 アクセスポイント装置側信号処理回路、55 アクセスポイント装置側高周波回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1固定設備と、無線通信端末とを含む第1通信システムと、第2固定設備を含む第2通信システムと、を含み、前記第1通信システムと第2通信システムとは互いに異なる通信プロトコルと互いに異なる周波数を用いて通信を行っている移動通信システム内で、前記第1通信システムの無線通信端末に対して、前記第2固定設備との通信を仲介する仲介装置であって、
仲介を行う無線通信端末として予め設定されている無線通信端末を認証するための情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている情報を利用して当該送信要求の元となった無線通信端末を認証する認証手段と、を有し、
前記認証手段によって認証された無線通信端末から受信したデータを、第2通信システムで利用される通信プロトコル及び周波数を用いて第2固定設備に対して送信し、第2固定設備から受信したデータを、第1通信システムで利用される通信プロトコル及び周波数を用いて当該認証された無線通信端末に送信する、
ことを特徴とする仲介装置。
【請求項2】
第1固定設備とデータの通信を行うとともに、第2固定設備との間では、所定の仲介装置を介してデータの通信を行う無線通信端末装置であって、
第1固定設備にデータを送信する際に比べ、前記仲介装置にデータの送信を行う場合の送信電力が低くなるよう制御することを特徴とする無線通信端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−244624(P2012−244624A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−93107(P2012−93107)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【分割の表示】特願2011−114495(P2011−114495)の分割
【原出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】