説明

任意の通信事業者の複数のSIMカードを並行使用可能な携帯電話

【課題】携帯電話が普及し、一人で複数回線を使用する機会や仕事用の回線(電話番号)所有者の流動的な変更が必要な状況が多くなった。2つの回線を使用したい場合、2台の携帯電話を持ち歩けば、携帯性・利便性が犠牲になる。同一の通信事業者からの2枚のSIMカードを装着できる電話機を利用した場合、国内用と国外用の異なる通信事業者の回線・通信方式を1台の携帯電話で併用できなく、携帯電話通信事業者から提供される1枚のSIMカードで2つの契約ができるサービスでは、仕事用の回線のみの所有者を変更できない問題も生じる。
【解決手段】今回、この問題を解決する手法として、1台に通信事業者及び通信方式の異なる複数枚の携帯電話SIMカード(FOMAカード、au SIMカードなど)を装着・使用できる携帯電話機を提案し、各々の通信事業者及び通信方式を1台の携帯電話で使用を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1台で国内外を問わず異なる複数の通信事業者から提供された携帯電話SIMカード(FOMAカード、au SIMカードなど)を装着し、通信方式(W−CDMA、GSMなど)に関わらず、同時並行でこれらを使用できる携帯電話機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話の普及により、会社用と個人用や、日本国内・国外など複数の携帯電話回線を使用する機会、あるいは回線(電話番号)所有者の流動的な変更が求められる状況は珍しくなくなった。
【0003】
複数の携帯電話回線を使用したいという需要は、主に以下3点の要求から生じる。まず、(1)通信相手によって電話番号等の通信先特定情報を使い分けたい、というものである。また、(2)電話回線の所有者および使用料金の請求先を分離したい、という要求もある。これら2点は例えば会社用と個人用などの使い分けにおいて求められるものである。(1)は個人的な通信相手に明かす電話番号と、業務上の通信相手に明かす電話番号を同一とするのは個人情報保護の観点から考えて好ましくない、という点で必要とされる。(2)は、例えば会社の人事異動に従って電話番号使用者を流動的に入れ替えることは、スムーズな業務引継ぎのために必要とされる。しかし、万一、業務用の電話回線所有者が、ある社員一個人である場合、この電話番号使用者の入れ替えは簡単でない。そのため個人用の電話回線はその社員が所有しており、業務用の電話回線は会社が所有している、といったような所有者の分離が求められ、使用料金の請求先分離は明快な精算のために必要である。次に(3)異なる携帯電話通信事業者のサービスを組み合わせたい、という要求がある。各携帯電話通信事業者はそれぞれ独自の料金プラン・サービスを提供しており、各社特有のサービスを使い分けることにより携帯電話の利便性向上が見込まれる。特に、頻繁に様々な国へ渡航する使用者にとっては、例えばW−CDMAやGSMなど異なる通信方式の携帯電話通信事業者の回線を組み合わせることにより、通話可能地域(国)を広げたいという要望や、現地での通話を現地の通信事業者の提供するSIMカードを用いることで通信料を安価にしたいという要望は大きい。
【0004】
しかしながら、現在、日本で販売されている携帯電話は1つの携帯電話に対して1つの通信事業者の提供する携帯電話SIMカードしか使用することができない。異なる2回線を使い分けたい場合、使用目的別に2台の携帯電話機を持ち歩くという方法が広く用いられている方法であるが、これは携帯電話の携帯性・利便性を犠牲にすることとなる。
【0005】
この改善策の一つとして、1枚の携帯電話SIMカードに、主電話番号と異なる付加番号を関連付けることで、主電話番号と付加番号のうち任意の番号からの発信を可能とし、かつ他者からの呼び出しに対して主番号と付加番号の両方を受信可能な状態とするという方法がある(特許文献1)。
【0006】
この方法を用いた場合、(1)通信相手による電話番号等の通信先特定情報の使い分け、については、主番号と付加番号の使い分けにより達成することができる。しかし(2)各電話回線の所有者・使用料金の請求先の分離、については不十分である。なぜなら、使用料金の請求先分離サービスについては提供されているが、単一の携帯電話SIMカードに新たに付加番号を関連付けるという性質上、2つの電話回線の所有者は同一となる。そのため、ある携帯電話に関連付けられた複数の電話回線を流動的に入れ替えることは簡単ではない。さらにこのサービスはある携帯電話事業者が独自に行っているサービスであり、(3)異なる携帯電話事業者のサービスの組み合わせもまた実現することはできない。
【0007】
別の改善策として、1台の携帯電話に複数枚の同一通信事業者の携帯電話SIMカードを装着するという方法がある(特許文献2)。
【0008】
この方法を用いた場合、(1)通信相手による電話番号等の通信先特定情報の使い分け、(2)各電話回線の所有者・使用料金の請求先の分離は各SIMカードの電話回線に請求することで可能になるが、(3)異なる携帯電話事業者のサービスの組み合わせや異なる通信方式(W−CDMA、GSMなど)の併用などが実現できない。
【0009】
従来、1台の携帯電話で複数の通信方式を適用できる必要はなかったが、1台で複数の異なる通信方式(W−CDMA、GSMなど)で通信できる携帯電話が提供可能である。(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−340962号公報
【特許文献2】特開2007−266693号公報
【特許文献3】特開2008−22137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決しようとする問題点は、複数の電話回線を用いる際に、異なる通信事業者や通信方式(W−CDMA、GSMなど)に対して、複数の携帯電話が必要になり、携帯性・利便性が低下するという点である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、複数の異なる電話回線を使い分けるために、1台の携帯電話に対して複数枚の携帯電話SIMカードを装着可能し、通信方式の異なる複数の通信事業者が提供するSIMカードを1台の携帯電話で使用できるようにするということを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の携帯電話は、1台に対して複数枚の携帯電話SIMカードを装着可能であることにより、装着された複数の携帯電話SIMカードに関連付けられた各々の電話回線を独立に、使用者の用途に合わせて使い分けることができるという利点がある。各携帯電話SIMカードは相互に関連がなく、通信事業者及び通信方式が同一である必要がなく、複数台の携帯電話と同等の存在とみなせる。そのため上述の3つの要求、(1)通信相手による電話番号等の通信先特定情報の使い分け、(2)電話回線の所有者・使用料金の請求先の分離、(3)異なる携帯電話事業者のサービスの組み合わせ、全てを満足することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】複数回線使用可能な携帯電話の使用方法を示した説明図。
【図2】本発明で使用される、通信事業者及び通信方式の異なる複数枚の携帯電話SIMカードを装着・使用可能な携帯電話機の形態。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明の携帯電話の使用例を表している。ここでは2枚の携帯電話SIMカードを用いる例を挙げるが、2枚以上の場合でも本発明は実施可能である。
【0016】
複数の携帯電話SIMカードを装着・使用可能な携帯電話1は、異なる2枚の携帯電話SIMカード2と3を装着されている。携帯電話SIMカード2と3はそれぞれ独立に携帯電話通信業者と契約され、SIMカード2には通信方式A、SIMカード3には通信方式Bが関連付けられている。そのため2と3は、電話番号やメールアドレス、通信方式(W−CDMA、GSMなど)、通信料プランなどの関連情報も別個とすることができる。契約者や通信料請求先も異なるものにすることができる。
【0017】
携帯電話1の所有者は、通信相手グループa4と通信相手グループb5への通信の際、それぞれ独立した異なる携帯電話SIMカードを用いることができる。これによりあるグループに属する通信先には、そのグループ用の電話回線情報、つまり携帯電話SIMカード2または3のみの情報が知らされ、他のグループとの通信に用いる情報は秘匿され、プライバシーの保護がもたらされる。さらに、携帯電話SIMカード2と3の通信料は別個に請求されるので、グループaとグループbそれぞれへの通信にかかる費用は明確に分離される。各々の携帯電話SIMカードに、各通信相手グループとの通信の形態に適した、異なる契約プランを適用することで、通信料の最適化を行うことも可能である。
【0018】
それぞれの携帯電話SIMカードは独立しているので、他の携帯電話機に装着されている携帯電話SIMカードと自由に入れ替えることができる。これにより電話番号の交換・引継ぎが容易であるという利点がある。さらに、別の通信事業者が提供する携帯電話SIMカードを組み合わせて装着し、使い分けることも可能となる。これら2つの利点は、現在提供されている1枚の携帯電話SIMカードに付加番号を関連付けるサービスでは実現できないものである。
【0019】
異なる通信事業者及び通信方式を同時に用いることができる利点は、1台の携帯電話に同一通信事業者の複数枚のSIMカードを装着することでは実現できない。
【0020】
図2は本発明の実施例であり、2枚の携帯電話SIMカードを使用する場合を示している。
【0021】
携帯電話機6に、通信事業者及び通信方式の異なる携帯電話SIMカードの装着口7と8を設ける。装着口の位置は図の通りである必要はない。携帯電話6は、携帯電話に装着される携帯電話SIMカード9と10を全て同時に着信可能な状態とすることができ、かつ任意の携帯電話SIMカードに登録されている電話回線を用いて発信可能とすることができるようにする。必要に応じて携帯電話SIMカードの装着口の数、および使用可能な携帯電話SIMカードの数は変化させてもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 複数の携帯電話SIMカードを装着し、使用することができる携帯電話機
2 装着された携帯電話SIMカード
3 装着された携帯電話SIMカード
4 2に関連付けられた通信方式Aの携帯電話回線を用いて、通信される通信相手先グループaの集合
5 3に関連付けられた通信方式Bの携帯電話回線を用いて、通信される通信相手先グループbの集合
6 複数の携帯電話SIMカードを装着し、使用することができる携帯電話機の背面図
7 携帯電話SIMカード9装着口
8 携帯電話SIMカード10装着口
9 7に装着される、携帯電話SIMカード
10 8に装着される、携帯電話SIMカード


【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる通信事業者及び使用国のSIMカードを複数装着可能な携帯電話に、各人の目的に応じたSIMカードを、目的に応じて装着、選択することにより、通信事業者及び通信方式(W−CDMA、GSMなど)を自由に選択することが可能となり、SIMカードの所有者と使用者の分離や海外での現地用のSIMカードと日本で使用していたSIMカードの同時並行使用を可能にする携帯電話機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−178240(P2010−178240A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21078(P2009−21078)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(308029459)
【Fターム(参考)】