説明

任意的に架橋性のコーティング、組成物及びその利用方法

【課題】硬質組織および口内環境の表面へのバクテリアおよびタンパク材料の付着性を低下させる、これらの表面へのコーティングを提供する。このような表面へのこれらの材料の付着を低下させる方法。およびこのようなコーティング中に含まれるポリマーをも提供する。
【解決手段】口内環境の表面または硬質組織表面のコーティングのための組成物であって、
A)極性基または極性化性基1〜80重量%
B)改質基0〜98重量%、
C)少なくとも 500の分子量の疎水性グラフトポリシロキサン鎖1〜40重量%
の繰り返し単位を含むポリマーを含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は硬質組織表層又は口環境の表面上のコーティングに関する。より詳しくは、本発明は硬質組織表面又は口環境の表面のための直接コーティングに関する。
【0002】
関連出願のクロスリファレンス
本願は現在係属中の1993年12月6日出願の米国出願第08/163,028 号の一部継続出願である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
プラークはカリエス、歯肉病及び歯の脱色の一般的な原因であり、そしてそれらの進行に大いに寄与している。プラークはう食原性の細菌が歯の表層上のタンパク質性膜である周皮に付着したときに始まる。プラークはその後、歯石の形成にとっての核を担う。歯石が成熟し、そして硬化すると、それは食物着色物の吸収により変色する傾向にある。更に、口の修復材は食物着色物に由来する変色の形成をもとから受け易いことがある。口環境の硬質組織及び表層に対する汚れの吸収及び細菌の付着を回避する手段が所望されている。
【0004】
シリコーン油を、その疎水的な性質を理由に、変色過程を阻止するために歯みがき粉の中に組込むことが提唱された。しかしながら、歯の表層へのそれらの付着率及び保持率は一般にかなり低い。
Linらの米国特許第 5,078,988号は改変アミノアルキルシリコーンを含む歯みがき粉を開示している。この改変シリコーンは、カリエス及び変色の予防のために、歯の上の疎水性層を形成するものであると言われている。 Rollaらの PCT特許出願 WO 91/13608 号は液状シリコーン油及び脂肪溶解性抗菌剤を含んで成る歯みがき粉を開示しており、それは抗菌剤の唾液への徐放に基づきプラーク形成に対する歯の保護にとって有用であると記載されている。
【0005】
Garbeらの米国特許第 4,981,903号は、グラフトされた懸垂シクロキサンポリマー成分を有するビニルポリマー骨格を含んで成る感圧又は非感圧接着剤を開示する。これらの組成物は化粧品及び医薬品における良好な局所塗布結合材料として、更には紙及び木材の如く孔質材料のためのシール剤としても有用であると開示されている。第3欄第25〜31行を参照のこと。 Garbeらの米国特許第 4,972,037号は室温において接着剤として有用な組成物を開示し、それは懸垂フルオロケミカル基及び懸垂ポリシロキサングラフトの双方を有するコポリマーを含んで成る。これらの組成物は局所塗布剤、例えば化粧品及び医薬品の塗布剤、並びに紙及び木材の如くの孔質材料のためのシール剤においても有用である。第3欄、第25〜33行を参照のこと。 Mitraらの米国特許第 4,981,902号は懸垂ポリシロキサングラフトを有する非感圧接着性のアクリレート又はメタクリレートポリマーを開示している。これらのポリマーは極性官能基を有するモノマーを含んで成り、そして動物の身体のためのコーティング組成物において有用であると記載されている。
【0006】
Mazurekの米国特許第 4,693,935号は、ポリシロキサン成分のグラフトされたビニルポリマー骨格を有するコポリマーを含んで成る感圧接着剤を開示している。Clemenらの米国特許第 4,728,571号はシート材上のポリシロキサングラフト型コポリマー及びそのブレンドを含んで成るリリースコーティング組成物を開示している。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は硬質組織表層又は口環境の表層上のコーティングを提供し、このコーティングは以下の反復単位
A)1〜80重量%の極性又は極性化性(polarizable) 基
B)0〜98重量%の改質基
C)1〜40重量%の少なくとも 500の分子量を有する疎水性グラフトポリシロキサン鎖
を含んで成るポリマーを含んで成る。
【0008】
本発明はまたヒトの口表層にコーティングするのに適する歯科組成物であって、以下の反復単位
A)1〜80重量%の極性又は極性化性基
B)0〜98重量%の改質基
C)1〜40重量%の少なくとも 500の分子量を有する疎水性グラフトポリシロキサン鎖
を含んで成るポリマーを含んで成る組成物を提供し、ここで前記ポリマーは更に縮合反応を受けることのできる少なくとも1のシラン成分を含む。
【0009】
これらの組成物は任意的にシラン縮合反応を促進する触媒、及び任意的に縮合反応を受けることのできる少なくとも2つの縮合シリコーン反応部位を含んで成る追加の化合物をも含んで成りうる。この追加の化合物は、縮合反応の完了を経た上記のポリマー間での架橋性化合物を担う。
【0010】
更に、変色及び細菌付着に対する耐久力の著しい増強が、上記のコーティングを有する表層を界面活性剤で処理することにより供されうる。
【0011】
本発明はまた、別の態様において、表層上で架橋性である硬質組織表層又は口環境の表層をコーティングするためのポリマーを提供する。
【0012】
更なる別の態様において、上記のポリマー系を含んで成るコーティングを有する歯科具を提供する。
【0013】
詳細な説明
本発明は硬質組織、例えばぞうげ質、エナメル質、セメント質及び骨の上のコーティングに関する。他方、このコーティングは、口環境のその他の表層、例えば歯科修復材、歯科矯正具又は歯科補てつ具の表層上に施してよい。歯科修復材には、樹脂ベース複合体、アマルガム、ガラスイオノマー、セラミック及びこれらから誘導された様々なハイブリッド材料より仕上げた修復材が含まれる。歯科矯正具には歯科矯正用ブラケット、ワイヤー等が含まれる。歯科補てつ具には歯科ブリッジ、クラウン、義歯等が含まれる。
【0014】
これらのコーティングは、細菌付着、プラーク形成又は食品もしくは色素由来の変色に対するコート表層の耐久力を供するに十分な量を施す。このコーティングは連続又は半連続層として施してよい。好ましくは、このコーティングはコート表層上に、本明細書に記載の通りにしてポリマーの実質的に連続な単層を少なくとも供するに足りる量で塗布する。
【0015】
本発明に従って供されるコーティングは上記の表層に対して高度に独立している。このコーティングは低い摩擦係数を有し、そしてプラーク、細菌、食品変色等に対する高度な耐久力を有する。
【0016】
驚くべきことに、本明細書に記載のコーティングを有する表層を界面活性剤を含んで成る組成物で処理したとき、表層上の細菌及びタンパク質性物質の付着に対する高い耐久力が観察されることが更に発見された。この界面活性剤処理工程はこの驚くべき利点を、コート表層を界面活性剤処理工程の前に細菌及びタンパク質性物質に曝露したときでさえも供する。即ち、界面活性剤含有組成物により処理した本明細書記載のコーティングは、界面活性剤含有組成物で処理していないコーティングとは明らかに物理的に異なる。理論に拘束されるわけではないが、界面活性剤処理はコーティングのポリマーのポリシロキサン成分を配向せしめ、これによってコーティングの細菌付着及び変色耐性を高めるものと信じられている。
【0017】
界面活性剤処理は(i)一次コーティングの一部として、(ii)一次コーティングの後とするが、しかしコート表層を望ましくないタンパク質性物質の口内有機体に曝露する前に、又は(iii )細菌等へのコート化表層の曝露の後に、施してよい。最後の場合、界面活性剤処理は適宜再適用してよい。
【0018】
本発明のコーティングはA,B及びCの反復単位を有するビニル系コポリマーを含んで成り、ここでAは少なくとも1個の極性又は極性化性基を含むエチレン系不飽和モノマーに由来し、Bは改質基を任意的に含むエチレン系不飽和モノマーに由来し、そしてCはエチレン系不飽和オルガノシロキサン鎖に由来する。好ましくは、このポリマーは水の中で 0.1%未満の溶解度である。
【0019】
より詳しくは、単位Aはビニル系モノマー、例えばアクリレート、メタクリレート、クロトネート、イタコネート等に由来する。この極性化性基はイオン性又は中性であってもよい。
【0020】
極性又は極性化性基の例には、中性基、例えばヒドロキシ、チオ、置換化及び未置換のアミド、環状エーテル(例えばオキサン、オキセタン、フラン及びピラン)、塩基性基(例えばホスフィン及びアミン、例えば第1、第2、第3アミン)、酸性基(例えばオキシ酸、及びC,S,D,Bのチオオキシ酸)及びイオン性基(例えば第4アンモニウム、カルボン酸塩、スルホン酸塩等)、並びにこれらの基の前駆体及び保護体が含まれる。更に、Aはマクロモノマーであってよい。かかる基のより詳しい例を以下に示す。
【0021】
A単位は次の一般式により表わされる分子を含むモノ−又は多価カルボキシル基に由来しうる:
【0022】
【化1】

【0023】
(式中、R2 =H、メチル、エチル、シアノ、カルボキシ又はカルボキシメチルであり、d=1〜5であり、そしてGは結合であるか、又は原子価がd+1である炭素原子1〜12個を含むヒドロカルビルラジカル連結基であり、且つ任意的に置換化又は未置換のヘテロ原子(例えばO,S,N及びP)により置換及び/又は介在されている)。任意的に、この単位は塩形態で供されていてよい。このクラスにおける好適なモノマーはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸及びN−アクリロイルグリシンである。
【0024】
A単位は例えば次の一般式により表わされる分子を含むモノ−又は多価ヒドロキシ基に由来しうる:
【0025】
【化2】

【0026】
(式中、R2 =H、メチル、エチル、シアノ、カルボキシ又はカルボキシアルキルであり、L=O,NHであり、d=1〜5であり、そしてR3 は1〜12個の炭素原子を含む原子価d+1のヒドロカルビル基である)。このクラスにおける好適なモノマーはヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシメチル)エタンモノアクリレート、ペンタエリトリトールモノ(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミドである。
【0027】
A単位は、他方、次の一般式の分子を含むモノ−又は多価アミノ基に由来しうる:
【0028】
【化3】

【0029】
(式中、R2 ,L,R3 及びdは上記の通りであり、そしてR4 及びR5 はHであるか、もしくは1〜12個の炭素原子のアルキル基であるか、又は一緒になって炭素環又は複素環基を構成している)。このクラスの好適なモノマーはアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及び4−メチル−1−アクリロイル−ピペラジンである。
【0030】
A単位はアルコキシ置換化(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミド、例えばメトキシエチル(メタ)アクリレート、2(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート又はポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートに由来してもよい。
【0031】
単位は、以下の一般式:
【化4】

【0032】
(式中、R2 ,R3 ,R4 ,R5 ,L及びdが先に定義したものと同じであり、そしてR6 がH又は1−12炭素原子のアルキルであり、そしてQ- が有機又は無機アニオンである。)により表される置換又は未置換アンモニウム・モノマーから誘導されることができる。このようなモノマーの好ましい例は、2−N,N,N−トリメチルアンモニウム・エチル(メタ)アクリレート、2−N,N,N−トリエチルアンモニウム・エチル(メタ)アクリレート、3−N,N,N−トリメチルアンモニウム・プロピル(メタ)アクリレート、N(2−N′,N′,N′−トリメチルアンモニウム)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(ジメチル・ヒドロキシエチル・アンモニウム)プロピル(メタ)アクリルアミド等であり、ここで、反対イオンは、フルオリド、クロライド、ブロマイド、アセテート、プロピオネート、ラウレート、パルミテート、ステアレート等であることができる。このモノマーは、有機又は無機反対イオンのN,N−ジメチル・ジアリル・アンモニウム塩であることもできる。
【0033】
アンモニウム基含有ポリマーは、そのAユニットとして上記のアミノ基含有モノマーのいずれかを使用し、そして得られたポリマーを有機又は無機酸により、側鎖アミノ基が実質的にプロトン化されるpHまで酸性にすることにより作られることもできる。全置換アンモニウム基含有ポリマーは、上記アミノ・ポリマーをアルキル化基によりアルキル化することにより作られることができ、この方法は、 Meuschutkin反応として本分野において一般的に知られている。
【0034】
本発明のAユニットは、スルホン酸基含有モノマー、例えば、ビニル・スルホン酸、スチレン・スルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル・プロパン・スルホン酸、アリルオキシベンゼン・スルホン酸、その他から誘導されることもできる。あるいは、このAユニットは、亜リン酸又はホウ素酸 (boron acid) 基含有モノマーから誘導されることができる。これらのモノマーは、モノマーとしてプロトン化された酸の形態で、使用されることができ、そして得られたその対応ポリマーは、有機又は無機塩基により中和されてそのポリマーの塩形態を与える。
【0035】
ユニットBは、アクリレート又はメタクリレートあるいは他のビニル重合性出発モノマーから誘導され、そして場合により特性、例えばガラス転移温度、担体媒質中の溶解度、親水性−疎水性バランス、その他を調節する官能基を含む。
【0036】
ユニットBモノマーの例は、1−12炭素の直鎖、分枝又は環式アルコールの低級〜中程度のメタクリル酸エステルを含む。Bユニット・モノマーの他の例は、スチレン、ビニル・エステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルオイル・モノマーその他を含む。
【0037】
Bモノマーのさらなる例は、(1)〜(7)のアクリル又はメタクリル酸エステルである。1,1−ジヒドロペルフルオロアルカノール(1) と同族体(2)、
(1) CF3(CF2)xCH2OH
{式中、xが0〜20であり、そしてyが少なくとも1〜10である。}
(2) CF3(CF2)x(CH2)yOH
(3) w−ヒドロフルオロアルカノール3, HCF2(CF2)x(CH2)yOH
{式中、xが0〜20であり、そしてyが少なくとも1〜10である。}
(4) フルオロアルキルスルホンアミド・アルコール4,
【0038】
【化5】

【0039】
{式中、xが0〜20であり、R1 が20炭素原子までのアルキル又はアリールアルキル又は6環炭素原子までのシクロアルキルである。}
(5) 環式フルオロアルキル・アルコール5,
【0040】
【化6】

【0041】
{式中、zが0〜7であり、そしてyが少なくとも1〜10である。}
【0042】
【化7】

{式中、qが2〜20であり、かつ、xよりも大きく、xが0〜20であり、そしてyが少なくとも1〜10である。}
【0043】
【化8】

【0044】
{式中、p及びsが少なくとも1であり、そしてrが1〜6である。}
【0045】
好ましく重合したAモノマー骨格組成物は、フルオロアクリレート (8)−(13)のポリマーを含む。
【0046】
【化9】

【0047】
Bは、場合により、マクロモノマー、例えば、スチレン、α−メチスチレン(α−methystyrene) 、ビニル・トルエン又はメチル・メタクリレートから誘導されたものから誘導されることもできる。
【0048】
好ましいこのようなマクロモノマーは、 500−100,000 の分子量をもつ。
【0049】
ユニットCは、エチレン性不飽和の前形成オルガノシロキサン鎖から誘導される。このユニットの分子量は、一般的に 500を超える。
【0050】
本発明に係るユニットCは、以下の一般式:
【化10】

【0051】
{式中、
Xが、上記A及びBモノマーと共重合性のビニル基であり;
Yが、2価連結基(例えば、1−30炭素原子の、アルキレン、アリーレン、アルクアリーレン、及びアラールキレン)であり、そして、複素原子、例えば、O,N,S,Pを取り込んでおり、例として、エステル、アミド、ウレタン、ウレア基であり;
nが、0又は1であり;
mが、1〜3の整数であり;
Rが、水素、低級アルキル(例えば、1〜4炭素原子、メチル、エチル、又はプロピル)、アリール(例えば、6〜20炭素原子、フェニル又は置換フェニル)、又はアルコキシ(好ましくは、1〜4炭素原子の低級アルコキシ)であり;そして
Zが、約 500を上廻る数平均分子量をもつ1価シロキサン・ポリマー部部であり、そして共重合条件下で本質的に非反応性である。}をもつモノマーから誘導されることができる。
【0052】
好ましいCモノマーは、以下の一般式:
【化11】

【0053】
{式中、R7 が、水素原子又はCOOHであり、そして
8 が水素原子、メチル基、又は CH2COOH基である。}
をもつX基をもつものとしてさらに定義されることができる。
【0054】
このCモノマーのZ基は、以下の一般式:
【化12】

{式中、R9 とR11が、独立して、低級アルキル、アリール、又はフルオロアルキルである。ここで、低級アルキルとアルオロアルキルは両方共1〜3炭素原子をもつアルキル基をいい、そしてアリールはフェニル又は(20炭素原子までの)置換フェニルをいう。}をもつ。R10は、(1〜20炭素原子の)アルキル、(1〜20炭素原子の)アルコキシ、(1〜20炭素原子の)アルキルアミノ、(20炭素原子までの)アリール、ヒドロキシ、又は(1〜20炭素原子の)フルオロアルキルであることができ、そしてeは約5〜約 700の整数である。好ましくは、このCモノマーは、以下のものから成る群から選ばれた一般式
{式中、mが1,2、又は3であり、gが0又は1であり、R11が(1〜10炭素原子の)アルキル、又は水素であることができ、fが2〜6の整数であり、hが0〜2の整数であり、そしてX,R、及びZが先に定義したものと同じである。}をもつ:
【0055】
【化13】

【0056】
本発明における使用に特に好ましいポリマーは、
そのA基が、以下の一般式:
【0057】
【化14】

【0058】
{式中、R2 =H又はメチル、
d=1、そして
Gが、結合又は価数d+1の、1−12炭素原子を含むヒドロカルビル基連結基、 又はその塩である。}により表される
モノ−又は多官能価カルボキシル基含有分子から誘導され;そして
そのC基が、以下の式:
【0059】
【化15】

【0060】
{式中、
Xが、そのA及びBモノマーと共重合性のビニル基であり;
mが、1〜3の整数であり;
Rが水素、低級アルキルであり;
Zが、約 500を超える数平均分子量をもつ1価シロキサン・ポリマー部分であり、そして共重合条件下で本質的に非反応性である。}により表されるモノマーから誘導される、
ような組成をもつ。
【0061】
本発明のCユニットを提供するために使用されるモノマーは、単一の官能基(ビニル、エチレン性不飽和の、アクリルオイル、又はメタクリルオイル基)をもつ末端官能性ポリマーであり、そしてときどき、マクロモノマー又は“マクロマー(macromer)”といわれる。このようなモノマーは、公知であり、そして米国特許第 3,786,116号及び第 3,842,059号中に記載されたように、 Milkovich et al.,により開示された方法により製造されることができる。ポリジメチルシロキサン・マクロモノマーの製造そしてその後のビニル・モノマーとの共重合は、 Y.Yamashita et al.,による、いくつかの論文〔Polymer J. 14, 913 (1982) ; ACS Polymer Preprints 25 (1), 245 (1984) ; Makromol.Chem. 185, 9 (1984) 〕中に記載されている。上記マクロモノマー製造の方法は、コントロールされた分子量のリビング(living)・ポリマーを作るための、ヘキサメチルシクロトリシロキサン・モノマー(D3)のアニオン重合を含み、そして停止は、重合性ビニル基を含むクロロシラン化合物を介して達成される。ビニル・モノマー(単数又は複数)との1官能価シロキサン・マクロモノマーのフリー・ラジカル共重合は、よく規定された構造をもつシロキサン−グラフト・コポリマー、すなわち、コントロールされた長さと数のグラフトしたシロキサン分枝を提供する。
【0062】
上述のアニオン重合における使用に好適なモノマーは、一般的に、以下の式:
【0063】
【化16】

【0064】
{式中、R9 及びR11が、先に定義したものと同じであり、そしてeが、3〜7の整数である。}により表されるジオルガノシクロシロキサンである。好ましいのは、式中、eが3又は4であり、そしてR9 とR11が共にメチルであるものである。これらの環状シロキサンをそれぞれ以下D3 とD4 という。
アニオン重合の開始剤は、1官能価リビング・ポリマーが作り出されるように選ばれる。好適な開始剤は、アルカリ金属炭化水素、例えば、アルキル又はアリール・リチウム、ナトリウム、又はカリウム化合物であってそのアルキル又はアリール基内に20炭素原子までを又はより好ましくは8炭素原子までを含むものを含む。このような化合物の例は、エチルナトリウム、プロピルナトリウム、フェニルナトリウム、ブチルカリウム、オクチルカリウム、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、 sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、フェニルリチウム、及び2−エチルヘキシルリチウムである。リチウム化合物が開始剤として好ましい。また、開始剤として好適なものは、アルカリ金属アルコキシド、ヒドロキシド、及びアミド、並びに以下の式:
【0065】
【化17】

【0066】
{式中、Mが、アルカリ金属、テトラアルキルアンモニウム、又はテトラアルキルホスホニウム・カチオンであり、そしてR9 ,R10、及びR11が、先に定義したものと同じである。}により表されるトリオルガノシラノレートである。好ましいトリオルガノシラノレート開始剤は、リチウム・トリメチルシラノレート (LTMS) である。一般的に、直鎖環状モノマーとリチウム開始剤の両方の好ましい使用は、再分布反応の傾向を減少させ、そしてそれにより、不所望の環状・オリゴマーを妥当な範囲で含まない狭い分子量分布のシロキサン・マクロモノマーを提供する。
【0067】
分子量は、開始剤/環状モノマー比により決められ、そしてこれ故、開始剤の量は、約 0.004〜約 0.4モルの、有機金属開始剤/モノマー1モルにおいて変化することができる。好ましくは、この量、約 0.008〜約0.04モルの、開始剤/モノマー1モルであろう。
【0068】
アニオン重合の開始のために、不活性で、好ましくは、極性の有機溶剤を使用することができる。リチウム反対イオン (counterion) によるアニオン重合の広がり(propagation) は、いずれかの強極性溶媒、例えば、テトラヒドロフラン、ジメチル・スルホキシド、又はヘキサメチル・亜リン酸トリアミドのいずれか、又はこのような極性溶媒と、非極性脂肪族、環式脂肪族、又は芳香族炭化水素溶媒、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、又はトルエンとの混合物を必要とする。この極性溶媒は、上記シラノレート・イオンを“活性化 (activate) する”のに役立ち、広がりを可能にする。
【0069】
一般的に、重合は、約−50℃〜約 100℃、好ましくは、約−20℃〜約30℃のレンジの温度で行われることができる。無水条件及び不活性雰囲気、例えば、窒素、ヘリウム、又はアルゴンが必要とされる。
【0070】
アニオン重合は、通常、ビニル末端高分子モノマーを形成するリビング高分子アニオンとハロゲン含有停止剤、すなわち機能性クロロシランとの直接反応により停止される。そのような停止剤は一般式、X(Y)n Si(R)3-mClm (式中、mは1,2、もしくは3であり、X,Y,n、及びRは前記規定のものである)で表される。好ましい停止剤はメタクリルオキシプロピルジメチルクロロシランである。この停止反応は、重合温度においてリビングポリマーにわずかにモル過剰(開始剤の量に対して)の停止剤を添加することにより行われる。前記の Y.Yamashitaらの論文によれば、この反応混合物には、マクロモノマーの機能を高めるために、停止剤の添加後に超音波を照射してもよい。メタノールの添加によってマクロモノマーの精製が行われる。
【0071】
本発明において用いられるコポリマーは、標準重合法により出発モノマーユニットA,B及びCを共重合することにより製造される。
【0072】
このポリマーを所定の基材上に塗布した後に架橋反応によりコーティングもしくは表面組成物を定着させるため、このポリマーは1種以上の架橋性基を含んでいてもよい。基Bが架橋性基を含むコポリマーは、コポリマーの求電子性もしくは求核性部分を適当な反応性基及び少なくとも1種の架橋性基、例えばエチレン性基もしくはエポキシ基を含む他の化合物と反応させることにより製造される。この求電子性もしくは求核性部分は、場合によっては、コポリマーのユニットAに存在するものと同じであってもよい。
【0073】
従って、本発明は、以下の繰り返しユニット
A)1〜80重量%の極性もしくは可極化性基
B)0〜98重量%の改質基
C)1〜40重量%の、少なくとも 500の分子量を有する疎水性グラフトポリシロキサン鎖
を含み、さらに側架橋性基を含む新規ポリマーを包含する。
【0074】
この架橋性基は遊離基架橋反応もしくはカチオン架橋反応を受けることができる。限定するものではないが、適した架橋性基は、重合性エチレン系不飽和基及び重合性エポキシ基を含む。エチレン系不飽和基が好ましく、遊離基メカニズムにより重合されるものが特に好ましく、その例は置換されたもしくは未置換のアクリレート、メタクリレート、アルケン及びアクリルアミドである。水系においては、カチオンメカニズムにより重合される重合性基、例えばビニルエーテル基のような重合性エチレン系不飽和基及び重合性エポキシ基はあまり好ましくない。それは、通常そのような水系においてはカチオンメカニズムよりも遊離基メカニズムのほうが容易に用いることができるからである。
【0075】
架橋性ポリマーは種々の合成経路によって製造することができる。この合成経路は、限定するものではないが、側架橋性基を形成するために求電子性もしくは求核性基を有するポリマーを1当量未満の適当な化合物と反応させ、それにより求電子性もしくは求核性基を未反応にしておくことを含む。これとは別に、適切なモノマーをモノマーにすでに存在している側架橋性基と共重合させてもよい。この方法における反応は、重合段階において基がすべて反応しないように注意深く制御しなければならず、又はポリマーの形成に用いられる反応はポリマーの間に架橋を形成するために用いられる反応とは異なっていなければならない。
【0076】
架橋性ポリマーを製造するための上記の第一の経路は現在、「カップリング化合物」、すなわちこのカップリング化合物と求電子性もしくは求核性基の間に共有結合を形成し、それにより側架橋性基をポリマーの主鎖に結合させるため、出発材料ポリマーに存在する官能基によってポリマーと反応することのできる反応性基と側架橋性基の両方を含む化合物の使用によって行うことができる。好適なカップリング化合物は、所望により側架橋性基と反応性基の間に反応を妨害しない結合基及び/又は妨害しない置換基を含む、有機化合物である。
【0077】
本発明のポリマーの製造に用いるに適したカップリング化合物は、共有結合を形成するために極性基と反応することのできる少なくとも一種の基、並びに少なくとも一種の重合性エチレン系不飽和基を含む化合物を含む。この極性基がカルボキシル基である場合、求電子性及び求核性基を含む多くの基がこれと反応することができる。そのような基の例は、−OH, −NH2 , −NCO , −COCl及び
【0078】
【化18】

【0079】
並びにこれらを含む基を含む。結合サイトがアルコールである場合、多くの基がアルコールと反応することができる。そのような基の例は、−NCO , −COCl,
【0080】
【化19】

【0081】
並びにこれらを含む基を含む。架橋性基に結合する好適なカップリング基の例は、例えば、アクリロリルクロリド、メタクリロリルクロリド、ビニルアザラクトン、アリルイソシアネート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−アミノエチルメタクリレート、及び2−イソシアナトエチルメタクリレートを含む。好適なカップリング化合物の他の例は、米国特許第 4,035,321号に記載されているものを含む。好ましいカップリング化合物の例は、例えば、以下のメタクリレート化合物及びその対応するアクリレートを含む。
【0082】
【化20】

【0083】
以下のアリル化合物
【化21】

【0084】
特に好ましいカップリング化合物は、以下のメタクリレート化合物及びその対応するアクリレートである(式中、R及びqは上記規定と同じである)
【0085】
【化22】

【0086】
本発明のポリマーは、所望により、縮合反応を受けることのできる少なくとも一種のシラン部分をさらに含んでいてもよい。縮合反応は2つの分子が化合し、第三の化合物を排除する反応である。この第三の化合物は水であってもよく、又は特定の反応体の構造によっては、この第三の化合物はアルコール、アミンもしくはこの反応において排除される他の化合物であってよい。このシラン部分は、例えば上記のA,B及びCユニットとDユニット(これはA,B及びC用のモノマーと共重合可能なエチレン系不飽和モノマーより得られる)との縮合によるポリマーの製造時に提供されるものであってもよい。このユニットは下記一般式を有する。
【0087】
【化23】

【0088】
上式中、XはA及びBモノマーと共重合可能なビニル基である。
Yは所望によりヘテロ原子、例えばO,N,S,Pを含む多価結合基(例えば1〜30個の炭素原子を有するアルキレン、アリーレン、アルカリーレン、及びアラルキレン)である。その例はエステル、アミド、ウレタン、ウレア基である。
nは0もしくは1である。
12はHもしくは低級アルキルである。
iは0〜2の整数である。
jは1〜3の整数である。
i+jは3である。
Tはハロゲン原子、アルコキシ、アルケノキシ、アシルオキシ、カルボキシ、アミノ、アミド、ジアルキルイミノオキシ、ケトキシム、アルドキシム、及び同様の基を含む加水分解性基もしくはヒドロキシ基である。好ましくは、この加水分解性基は、アルコキシ、アルケニルオキシ、ケトキシム及びアルドキシムからなる群より選ばれる。より好ましくは、この加水分解性基は、市販入手性、低コスト及び低毒性のため、メトキシ及びエトキシのようなアルコキシ基である。そのようなDユニットの例は、限定するものではないが、下式で表されるようなアクリレート及びメタクリレートアルキルアルコキシシランを含む。
【0089】
【化24】

【0090】
(上式中、R13は低級アルキルである)
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン及びビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランのようなビニルオルガノアルコキシシランも用いてよい。
【0091】
これらのDユニット化合物は、その未加水分解、部分加水分解、もしくは完全加水分解の形態で用いてよい。後者の2つの形態においては、特に完全加水分解の形態においては、シロキサン結合によるシラン二量化及びオリゴマー化によるゲル形勢を最小にするよう注意しなければならない。シロキサン反応を防ぐためヒドロキシル基のキャッピングもしくはpHの調整のような、当業者に周知のあらゆる方法を用いてもよい。
【0092】
上記ポリマーの合成に用いられるDユニットシラン化合物の量は好ましくは、シラン部分がポリマーの 0.1〜30モルパーセント存在するような量である。より好ましくは、シラン部分はポリマーの 0.1〜20モルパーセント、最も好ましくは 0.1〜10モルパーセント存在する。
【0093】
上記Dユニットを含むコポリマーは、標準的ビニル重合法により出発モノマーユニットA,B,C及びDを共重合することにより製造される。これとは別に、製造されたポリマーのAの極性基の部分を、縮合反応を受けることのできる少なくとも1種のシラン部分を有する化合物(これはAの極性基と反応することのできる基をさらに有している)により改質することも可能である。
【0094】
好ましくは、コーティング組成物は3種の成分を含む。成分Iは上記のように縮合反応を受けることのできるシラン部分を含むコポリマーである。成分IIは縮合反応を受けることのできる少なくとも2つの縮合シリコーン反応サイトを有する材料である。成分III は成分Iのポリマーの間及び/又は成分Iのポリマーと成分IIの化合物の間の縮合反応を促進する所望の触媒である。
【0095】
成分IIは縮合反応を受けることのできる少なくとも2つの縮合シリコーン反応サイトを有する化合物であり、従ってこの系における成分Iのポリマーの間の架橋化合物として機能する。この成分は所望により比較的小さな分子であってもよく、又は高分子性であってもよい。好ましくは、成分IIは約64〜3000の重量平均分子量を有する。
【0096】
成分IIの例は、テトラエチルオルトシリケート、及びその部分もしくは完全加水分解形態を含む。好ましくは、成分IIは下式で表される。
【0097】
【化25】

【0098】
上式中、Yは多価結合基(例えば1〜30個の炭素原子を有するアルキレン、アリーレン、アルカリーレン、及びアラルキレン)であり、所望によりヘテロ原子、例えばO,N,S,Pを含んでいてもよい。その例は、エステル、アミド、ウレタン、ウレア基である。
12はH又は低級アルキルである。
iは0〜2の整数である。
jは1〜3の整数である。
i+jは3である。
kは2〜50である。
【0099】
Tはハロゲン原子、アルコキシ、アルケノキシ、アシルオキシ、カルボキシ、アミノ、アミド、ジアルキルイミノオキシ、ケトキシム、アルドキシム、及び同様の基を含む加水分解性基もしくはヒドロキシ基である。好ましくは、この加水分解性基は、アルコキシ、アルケニルオキシ、ケトキシム及びアルドキシムからなる群より選ばれる。より好ましくは、この加水分解性基は、市販入手性、低コスト及び低毒性のため、メトキシ及びエトキシのようなアルコキシ基である。
【0100】
成分IIの例は以下の通りである。
【化26】

(式中
【化27】

である。)
成分III は、縮合反応を受けることのできるシラン部分の縮合を促進する触媒である。一般に、水分がこのような硬化反応に有利に作用する。この目的で、いかなる縮合シリコン触媒でも使用することができる。
【0101】
当該コーティングの重合体を架橋させるための好ましい硬化触媒としては、III −A,IV−A,V−A,VI−A,VIII−A,I−B,II−B,III −B,IV−B及びV−B群の金属を含有する有機金属化合物の触媒が含まれる。同じく好ましいのは、シリコン縮合反応のための有機アミン及び有機酸触媒である。特に好ましい触媒は、ジカプリル酸錫、ナフテン酸錫、ジラウリン酸ジブチル錫、二酢酸ジブチル錫、二酸化ジブチル錫、ジカプリル酸ジブチル錫、キレート化ジルコニウム、キレート化アルミニウム、チタン酸アルミニウム、チタンイソプロポキシド、トリエチレンジアミン、p−トルエンスルホン酸、n−ブチルリン酸及びその混合物である。
【0102】
IIの存在下での成分I及びIII のみの組合せは、特定の利用分野のための充分な架橋を提供するのに充分である可能性もある。一方、或る種の利用分野では、特に成分IIが部分的に予備加水分解された形で提供される場合に、成分I及びIIのみを組合せるだけで充分な場合もある。望まれる利用分野の硬化速度ならびに成分Iの重合体及び成分IIの橋かけ化合物の実際の分子アーキテクチャは、本発明の成分の特定の組合せの選択を左右することになる。溶剤及び包装材料そして送出しシステムを適正に選ぶことによって、1部分又は多部分系を得ることが可能である。後者の場合、多部分を塗布の直前に混合できるか、或いは、連続する層として塗布することもできる。
【0103】
縮合反応を受け得るシラン半分を含有する重合体は、上述の通りのその他の重合体と同じ要領で塗布できる。例えば、これらの重合体を、口内への挿入前に或る物品の表面に塗布することもできるし、或いは又口腔内の表面上でその場で重合させることもできる。さらに、付加的な恩恵を得るべく界面活性剤を含有する組成物を用いてコーティングを処理することもできる。
【0104】
矯正具の設置の後に本書に記述する組成物を表面にコーティングすることが、きわめて有利である。付着されたブラケットなどに隣接する歯の表面の保護は、良好な口腔衛生が困難でかつ矯正装置自体が細菌などの集結する隙間を提供することから、きわめて重要なことである。当該コーティング材料の重要な1つの使用方法は、機具自体及び機具に隣接する歯の表面の両方に対して、矯正具の装着後に塗布することである。
【0105】
本発明の方法においては、コーティングするべき口腔表面を、コーティング組成物の塗布に先立ち酸で前処理することが望ましい。適切な酸としては、クエン酸、マレイン酸、硝酸、しゅう酸、リン、イオウ、ホウ素などの酸がある。付加的には、フッ化物処理を提供するのに用いられるもののような弱酸性組成物も同じく使用可能であり、表面処理のための口腔表面前処理組成物としての利点をもつ。
【0106】
コーティングとして共重合体が塗布される場合、一般には、担体溶剤と組合わせた形でこれを送り出すことが有用である。この担体溶剤は次に、乾燥といった適切な手段によって除去される。担体溶剤の例には、水、エタノール、イソプロパノール、D4 といったアセトンシリコン流体、及びそれらの混合物が含まれる。コーティングは同様に、水中油形又は油中水形といったエマルジョンの形で塗布することもできる。
【0107】
本発明のコーティング及び界面活性剤処理剤は、口腔リンス液としてか又は改質基の中に存在するエチレン不飽和を通してのさらなる架橋又は重合によって任意に固定されうる専門家が塗布するコーティングとして、利用することのできるものである。練りはみがき、デンタルゲル、歯みがき粉、チューインガム、トローチ剤などとして、成分をはみがき剤の中に取り込むことも可能である。代替的にはコーティング及び処理剤は、歯石除去向け清掃ペースト又は研磨ペーストの一部を成していてよく、この場合このペーストは歯石除去用カップ、アングル、ディスクなどを用いて仕上げ又は研磨プロセス中に塗布される。歯間腔及びその他のアクセス困難な部域への送り出しのため絹糸を用いてこれを塗布することもできる。
【0108】
口腔洗浄液及び口腔リンス液のためには、重合体又は界面活性剤のための担体として作用する液体媒質は、水性か又は水性アルコール溶液であってよく、任意にその他の無機溶剤を含有していてもよい。洗剤としての表面活性剤が、重合体送り出し組成物の中に存在していてもよい。
【0109】
重合体又は表面活性剤のいずれかの送り出しのために使用される練りはみがき、ゲル、チューインガム、トローチ剤及び口腔用こう薬はさらに、湿潤薬(例えば、グリセロール、ソルビトール及びポリエチレングリコール)、研磨剤(例えばシリカ、炭酸カルシウム、及びリン酸三カルシウム)及び増粘剤(通常はカラゲナン、ヒドロキシメチルセルロースといった天然又は合成のゴム又はヒュームドシリカといった合成増粘剤)を含む可能性もある。組成物は、非弾性率(「損失弾性率」としても知られているもの)が組成物の弾性率より低い場合に、ペーストであると定義づけられる。又、組成物は、非弾性率が組成物の弾性率と等しい場合にゲルとして定義づけされる。組成物は、歯科技術で慣習的に使用されているブラシ、スポンジ又はその他の類似のアプリケータを用いて意図された基質に塗布できる場合に「塗布(ペイント)可能」とみなされる。
【0110】
重合体又は界面活性剤の送り出しのための組成物はさらに香味剤(ペパーミントオイル、メンソール及び甘味料などの天然及び合成の両方のもの)、着色剤、粘性調節剤、保存剤、酸化防止剤及び抗菌剤(例えば、ヒドロキノン、 BHT、アスコルビン酸、p−オキシ安息香酸、アルキルエステル、ソルビン酸ナトリウム及びチモール)、その他の歯垢防止用添加剤(例えば有機ホスホン酸塩、トリクロサン及び米国特許第3488,419号で記述されているようなその他の物質)、口内治療薬(例えばフッ化物塩、クロルヘキシジン及びアラントイン)、色素及び染料及びイオン強度を制御するための緩衝液、といったその他のアジュバントを含有している可能性がある。
【0111】
重合体送り出しのための組成物は、任意には、エチレン不飽和化合物を付加的に含んでいる可能性がある。好ましいエチレン不飽和化合物の例は、2,2−ビス〔4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(「BIS-GMA 」)及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート(「HEMA」)である。
【0112】
本書で記述されている重合体は、練りはみがきなどの中へ取り込むのに有用であるばかりでなく、口の中に一時的又は恒常的に装入する外来性装置のための外部コーティング組成物としても使用することができる。例えば、これらのコーティング組成物は、口の外で製造されその後口の中に入れられる矯正用ブラケット、ワイヤー、ブリッジ、歯冠、義歯などの歯科用品に塗布することができる。これらの組成物は、歯の中への挿入前又は挿入後のいずれかに、歯科医又は患者によって塗布され得る。これらのコーティング組成物が口の中の人工品又はすでに存在している構成に対して塗布される場合、重合体形でか又はそれ自体熱、光開始又はレドックス重合によって口外又は口内で重合される重合体前駆物質としてこのコーティング組成物を塗布することができる。これらの重合体を含有する組成物でコーティングされた修復材の摩擦係数が低いことから、これらの重合体を含有しない修復材に比べ、これらの修復の摩耗耐性は改善されることになる。
【0113】
当該組成物の重合体が、意図された基質への塗布後のひき続く段階において反応させることのできる付属のエチレン不飽和半分を含んでいる場合、組成物はエチレン不飽和基の反応を起こすため重合触媒をも含んでいる。かかる触媒は、光開始触媒又は酸化剤と還元剤の組合せを含むことができる。好ましくは、開始剤は、安全面からみて、人体内で使用するのに適したものである。
【0114】
光開始剤は、適切な波長及び強さの光に露出された時点でエチレン不飽和成分の遊離基架橋を促進することができなくてはならない。同様に好ましくは、光開始剤は、標準的歯科条件下でのその保存及び使用を可能にするべく、充分な保存安定性を有しかつ望ましくない変色の無いものである。可視光線光開始剤が好まれる。光開始剤は、単独で使用できることが多いが、標準的には、適切な供与体化合物又は適切な促進剤(例えばアミン、過酸化物、リン化合物、ケトン及びアルファ−ジケトン化合物)と組合わせた形で使用される。
【0115】
好ましい光誘発型開始剤としては、カンフォルキノン(標準的にアミンといった適切な水素供与体と組合わされる)、ジアリルヨードニウム単純又は金属錯塩、発色団置換型ハロメチル−s−トリアジン及びハロメタルオキサジアゾール、が含まれる。特に好ましい可視光線誘発型光開始剤には、アルファ−ジケトン例えばカンフォルキノン及びジアリルヨードニウム塩例えば塩化、臭化、ヨウ化ジフェニルヨードニウム、又は付加的な水素供与体(例えばスルフィン酸ナトリウムベンゼン、アミン及びアミンアルコール)を伴う又は伴わないヘキサフルオロホスフェート、が含まれる。好ましい紫外線誘発型重合開始剤としては、ベンジル及びベンゾインといったケトン、及びアシロイン及びアシロインエーテルがある。好ましい市販の紫外線誘発型重合開始剤としては、両者共Ciba-Geigy社からのものである2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(「IRGACURE 651」)及びベンゾインメチルエーテル(2−メトキシ−2−フェニルアセトフェノン)がある。
【0116】
光開始剤は、望まれる速度の重合が得られるよう充分な量で存在しなくてはならない。
【0117】
この量は一部には光源及び光開始剤の消衰係数に左右されることになる。標準的には、光開始剤成分は固まっていないコーティング成分の総重量(水を含む)に基づいて約0.01〜約5%、より好ましくは約 0.1〜約5%の総重量で存在することになる。
【0118】
代替的な重合開始剤には、還元剤及び酸化剤の組合せであるレドックス系が含まれる。これらの作用物質は互いに反応するか又はその他の形で共働してエチレン不飽和半分の重合を開始させることのできる遊離基を生成しなくてはならない。還元剤及び酸化剤は好ましくは、標準的な歯科条件下での保存及び使用を可能にするべく充分な保存安定性を有しかつ望ましくない変色が無いものである。これらは担体媒質内で充分な可溶性をもつかこの媒質との混和性を有しているべきである。還元剤及び酸化剤は、適当な遊離基反応速度を可能にするのに充分な量で存在していなくてはならない。有用な還元剤/酸化剤対は「レドックス重合」、 G.S.Misra及びU.D.N.Baipai, Prog. Polym.Sci., 8 61-131 (1982) の中で示されている。
【0119】
好ましい還元剤としては、アスコルビン酸、塩化コバルト(II)、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、ヒドラジン、芳香族及び脂肪族アミン、ヒドロキシルアミン(酸化剤の選択に応じて)、しゅう酸、チオ尿素、硫酸及びその塩、亜ニチオン酸塩又は亜硫酸塩アニオンの塩、が含まれる。好ましい酸化剤塩化コバルト(III )、ヒドロ過酸化第三ブチル、塩化第二鉄、ヒドロキシルアミン(還元剤の選択に応じて)、過ホウ酸及びその塩及び過マンガン酸塩又は過硫酸塩アニオンの塩、が含まれる。過酸化水素は、或る種の場合において光開始剤と干渉することがわかっているものの、同様に使用可能である。
【0120】
還元剤及び酸化剤の量は、エチレン不飽和成分の望ましい重合度を得るのに充分なものでなくてはならない。還元剤及び酸化剤の各々についての好ましい量は、成分の総重量(水を含む)に基づいて約0.01%〜約10%、より好ましくは約0.02〜約5%である。表面活性剤処理剤は特に中性及びカチオン性である。カチオンメカニズムによって重合される架橋可能な重合体については、適切な開始剤としてはジアリルヨードニウム、トリアリルスルフォニウム及びアリルジアゾニウム塩といったカチオンを生成することのできる塩が含まれる。
【0121】
前述のとおり、驚くべきことに、界面活性剤を含有する組成物による本書に記述したコーティングの後処理が、細菌又はタンパク様物質に関する接着の著しい減少を提供する、ということが発見されてきた。界面活性剤は、コーティング後の組成物の中に非常に少量取り込むことができ、非イオン又はイオンのいずれの界面活性剤であってもよい。コーティング後の処理に使用するための特に好ましい界面活性剤は非イオン界面活性剤である。
【0122】
好ましいイオン界面活性剤としては例えばドデシル硫酸ナトリウムやオクタデシル硫酸ナトリウムのような長鎖脂肪族酸の塩を挙げることができる。必要ならコーティングのポリマーが界面活性剤に対して対イオンとして作用する官能性イオンを含んでいてもよい。
【0123】
好ましい非イオン界面活性剤は長鎖脂肪酸のポリヒドロキシエステルまたは長鎖脂肪酸のポリヒドロキシエーテルをベースとする界面活性剤である。特に好ましいのは長鎖脂肪酸のポリオキシエチレン、ソルビタンエーテル、例えば、 TweenTM20, 40, 60、または80界面活性剤である。
【0124】
ここに述べるコーティングは表面への付着を軽減したい医療用物品のコーティングにも有用である。このような医療用物品の例としては例えばペースメーカー、血管ふるい、骨修復材、骨補充材などのように一時的または恒久的に体内に植込まれる物品が挙げられる。カテーテルや外科用器具のように体液と接触する物品も本発明のコーティングを施すことで有益な結果を得ることができる。さらに、感染防止用物品、例えば手袋、マスク、ガウン、ドレープなども本発明のコーティングから有益な結果を得ることができる。
【0125】
本発明のコーティングの持続性は種々の方法で測定できる。例えば別のタイプの刺激が加えられた場合にコーティングが存続するか否かを化学的手段によって測定することができる。このような分析手段の1つが後述するウィルヘルミー表面圧計による前進接触角の測定である。接触角は水に対して55°よりも大きいことが好ましい。
【0126】
これに代わる方法として、基層の耐変色性または耐細菌付着性を測定することによってコーティングの耐久性を評価することができる。コーティングの耐久性はコーティングに物理的刺激または浸漬刺激を加えることで評価することができる。物理的刺激としては所定の荷重を有するブラシで一定時間こすればよい。あるいは口腔内での歯の作用を刺激するのに使用される機械的メカニズムのもとで繰返えし歯を研削または研磨することによって物理的刺激を加えることもできる。
【0127】
ウィルヘルミー表面圧計
本発明のコーティングの疎水性及び親水性を評価するには公知のウィルヘルミー表面圧計を利用して水に対する前進及び後退接触角をそれぞれ測定する。この方法は例えば"Wettability", John C.Berg, editor, Marcel Dekker, Inc., New York, 1993, pp11-25に記述されている。測定はコーティングを施された連続的なサンプルに対して行われる。接触角測定はいずれも水に対して行われる。
【0128】
本発明のコーティングは37℃の蒸留水に2週間浸漬したサンプルに対してウィルヘルミー表面圧計で測定して少なくとも55°の前進接触角を示す程度に所期の基層上に持続することが好ましい。3カ月間浸漬したサンプルで少なくとも55°の前進接触角が得られればさらに好ましい。
【0129】
以下に述べる例は本発明の内容を解説するためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。特にことわらない限り、部及び%はすべて重量部及び重量%であり、分子量はすべて平均分子量である。
【0130】
例 1
イソブチルメタクリレート(14g)、アクリル酸(2g)、米国特許第 4,693,935の第16欄に記述されている“モノマーC 3b”の製法に従って調製された分子量10,000のエチレン不飽和シリコーンマクロマー("PDMSマクロマー")(4g)及びアゾビスイソブチロニトリル("AIBN", 0.1g) をイソプロパノールに溶解させた。脱酸素後、溶液を55℃で重合させた。このポリマーをP1と命名した。次いでこの溶液をエッチングを施されたエナメル及び象牙質にそれぞれ塗布した。 ATT Instrument, Madison, WIから入手した DCA 322接触角アナライザを使用してウィルヘルミー表面圧法により接触角を測定した。利用サイクルは3サイクルまでとした。結果は下記の通り。
【0131】
【表1】

【0132】
【表2】

【0133】
上記表に示す結果から明らかなように、エナメルをポリマーP1でコーティングすると表面が疎水性になる。苛酷な処理を施したあとでも接触角が極めて高いことでも明白なようにコーティングは容易は損われない。摩耗し始めるのは粗い研磨剤で機械的に研磨した場合に限る。
【0134】
象牙質スラブをポリマーP1でコーティングしたのち、同様の測定を実施した。その結果を下記の表3に示す。
【0135】
【表3】

【0136】
例 2
イソブチルメタクリレート(13g)、アクリル酸(3g)、PDMSマクロマー(4g)及びAIBN(0.1g)を THFに溶解させた。脱酸素後、溶液を55℃で重合させた。得られたポリマーのカルボキシレート基の約1/3をイソシアナトエチルメタクリレートと反応させて中間的な不飽和基を誘導した。次いで THFを60gのイソプロパノールと交換した。この溶液10gに0.0123gのヘキサフルオロリン酸ジフェニルヨードニウム及び0.0031gのカンフルキノンを添加した。このポリマーをP2と命名する。このポリマーから調製したコーティングに3M社の VisiluxTM2可視光源で照射することによりさらに交差結合を進行させた。
【0137】
ウィルヘルミー表面圧法による接触角測定結果を表4に示す。
【0138】
【表4】

【0139】
前述接触角測定結果はポリマーP2で処理するとエナメルも象牙質も共にその表面の疎水性が著しく高くなることを示している。
【0140】
Z100歯科用複合材のスラブをP1またはP2でコーティングした。コーティングP2は前述したようにさらに交差結合を強めた。この際の接触角を測定した。測定結果を表5に示す。
【0141】
【表5】

【0142】
例 3
エチルメタクリレート(11.4g)、アクリル酸(2g)、PDMSマクロマー(4g)及びAIBN(0.1g) を75mlの絶対エタノールに溶解させた。反応混合物を15分間に亘って窒素でフラッシングしたのち8時間に亘って、55℃に加熱した。次いで室温まで放冷し、等量のイソプロパノールで希釈した。このポリマー溶液をP3と命名した。
【0143】
ウシのエナメル質スラブを研磨紙で研磨し、ウィルヘルミー表面圧法を利用して水中での接触角を測定した。次いでスラブを乾燥させ、溶液P3でコーティングし、空気乾燥させ、再び接触角を測定した。コーティングを施さない対照エナメルとコーティングを施したエナメルの値を表6に示す。同様の実験をウシの象牙質スラブについても実施した。その結果を表7に示す。硬化させたVitremerTMトリキュアガラスイオノマーのスラブを調製し、これについても同様の処理を施した。この材料のコーティング前後における接触角測定結果を表8に示す。
【0144】
【表6】

【0145】
【表7】

【0146】
【表8】

【0147】
これらのデータから明らかなように、ポリマーP3溶液でコーティングすると表面の疎水性が高くなり、また、コーティングは耐久性にすぐれている。
【0148】
例 4
ポリマーA−Fの合成
窒素導入管、凝縮器及び温度計を装着した3ネックの 250ml丸底フラスコに表9に示す試薬を送入した。フラスコに磁気撹拌棒を取付け、均一溶液に無水窒素泡を激しく送り込むことによって試薬を15分間撹拌した。15分後、窒素流量を減らし、泡立ち状態からブランケット状態に切換えた。電子式温度コントローラを取付けた油浴を利用して、撹拌しながら溶液を60℃に加熱した。加熱は8時間継続した。次いで反応混合物を、ポリマー溶液1mlにつき5mlの水を使用して水中に沈殿させた。白色のポリマー沈殿物を回収し、冷水で洗浄し、数日間に亘り70°の真空オーブン中で乾燥させた。
【0149】
【表9】

【0150】
エナメル及び象牙質スラブの調製
エナメルスラブ
抜取ったウシの歯の唇側面を 120グリットの研磨紙で扁平に研磨することによってエナメル質のない純粋な象牙質面を露出させた。次いでこれを 600グリット研磨紙で研磨して平滑面にした。ダイヤモンドソーを使用して、研磨面を含む薄いウエハ(約1/2mm)に切取った。このようなウエハ2枚を研磨面が外側になるようにScotchbondTM Multipurpose 歯科用接着剤(3M)で貼合わせた。この接着されたサンドウィッチを切削して約8mm×6mmの矩形にした。エナメルサンドウィッチの一方の短辺に小さく扁平な歯科用複合材から成るボタンをSBMP歯科用接着剤で取付け、ハンドルを形成した。
【0151】
象牙質スラブ
ウシの歯の唇側面を 120グリットの研磨紙で扁平に研磨して広い象牙質面を露出させた。ダイヤモンドソーを使用して研磨面と平行な薄く扁平なスラブを切り取った。スラブの厚さは約1mmであった。切削面が象牙質だけとなるように(即ち、髄腔が全く残らないように)留意した。次いで象牙質スラブの扁平な両面を 600グリット研磨紙で研磨した。次いでダイヤモンドソーを使用して6mm×8mmの矩形に切削した。小さく扁平な複合材ボタンを一端(短辺)にSBMPで接着した。
【0152】
例 5
裸のエナメルスラブを先ず35%リン酸ゲルでエッチングし、 600グリット研磨紙で研磨した。コーティング前のスラズの水中での接触角を測定した。次いでポリマーA−Fのいずれか1つの溶液(イソプロパノール中 7.5%のポリマー)にスラブを5分間浸漬し、拭い、空気乾燥することでスラブをこの溶液でコーティングした。ポリマーでコーティングしたエナメルスラブの水中での前進接触面をウィルヘルミー表面圧計を使用して測定した。次いでこのコーティングしたエナメルサンプルを2日間脱イオン水中に貯蔵し、再び測定した。次いでサンプルを90分間プール唾液中で保温し、拭ってから接触角を測定した。上記サンプルを10分間水に浸漬し、再び測定した。この測定後、洗浄したスラブを剛さが中程度の歯ブラシでこすってから再度接触角を測定した。前進接触角の測定結果を表10に示す。第3サイクルにおける前進接触角測定値を報告する理由はこの時点で平衡状態に達するからである。
【0153】
【表10】

【0154】
上記試験結果は、エナメル質をコートした後、歯の表面が疎水性になることを示している。水中に保存しても接触角は実質的に減少せず、このことは該コーティングがこの時点で本質的である(substantive) ことを意味する。唾液とともにインキュベートした後、唾液タンパク質などの成分は、ポリマーA,BおよびEから得たコート面にある程度粘着する。したがって、粘着したタンパク質などの唾液成分のために、これらポリマーから得た表面を唾液で処理すると親水性になる。唾液で処理した表面を水で洗浄すると(ステップ5)、唾液由来の粘着性がいくらか、ポリマーEで生成した表面から洗い落される。歯のブラッシングを行うと(ステップ6)、大部分の唾液成分は除去されて、疎水性ポリマーの表面が再び露出し、このことは高い接触角読取り値(元のコートされた試料に近い)で示される。ポリマーCとFでコートされた歯の場合、唾液インキュベーション後の初期でさえも接触角の減少は大きくないことを示している。したがってこれは、付着がこれらの基材に対して有利でないことを示している。
【0155】
実施例6
コーティングの本質性(substantivity) を示すために、カットエナメル質 (cut enamel) または象牙質スラブ(他の処理を全く行っていない)について、まず接触角を測定した。次にこれらを独立して、表11と12に示すようにポリマーBとCの 7.5重量%溶液でコートし次いで乾燥した。
【0156】
コートされた試料を、蒸留水中37℃で18時間貯蔵し、ブロットドライ(blotted dry) を行い、接触角を測定した。これらの測定値を表11と12に示す。
【0157】
次にこれら試料を水中に浸漬し37℃で1週間インキュベートし、接触角を測定した。これらの数値を表11に示す。接触角の測定はインキュベーションを2週間行った後およびインキュベーションを3箇月行った後に繰返し実施した。
【0158】
試料は反復して試験した。第二サイクルにおける2種のポリマーのアドバンシング接触角(advancing contact angle) の平均値を表11と表12に示す。
【0159】
【表11】

【0160】
【表12】

【0161】
実施例7
エナメル質または象牙質の前処理の影響
カットしてポリッシュしたエナメル質または象牙質スラブを、(a)リン酸ゲルで15秒間エッチングし、水ですすぎ次にポリマーコーティングを塗布する前に乾燥するか、または(b)Nupro(登録商標)粗研磨ペーストで研磨し(エナメル質の場合、片面当り10分間研磨、象牙質スラブの場合片面当り4分間研磨)、水で充分すすぎ接触角を測定した。
【0162】
次にこれらのスラブをポリマーCでコートし、37℃の蒸留水中に18時間、1週間および2週間貯蔵した後、接触角を測定した。
【0163】
これらの試験の第二サイクルを行った後のアドバンシング角を表13に示すが、その接触角値は、コーティングの本質性が長期の貯蔵後でさえも維持されていることを示している。
【0164】
【表13】

【0165】
比較実施例1
ジメチルプロピルアミノ基を含有するポリジメチルシロキサンポリマー鎖を本質性と疎水性について測定した。これらポリマーの市販品2種類:PS510(分子量2,500)およびPS513(分子量27,000) (Petrach, Huls) を使用した。
PS510の 7.5%アセトン溶液を調製した。エナメル質のスラブをこの溶液でコートし次いで乾燥した。次に接触角を測定した。
【0166】
【表14】

【0167】
接触角が減少しているのは、疎水性が失われたためコーティングが本質的でないことを示している。
【0168】
比較実施例2
象牙質スラブをカットし研磨した後、 PS510の溶液(7.5%アセトン溶液)または PS513の溶液(7.5%メチルエチルケトン溶液)でコートした。コートした試料の接触角を測定した。これらの試料を37℃でエージングし次に接触角を再度測定した。測定値を表15に報告する。
【0169】
【表15】

【0170】
接触角が低下するのはコーティングが本質的でなかったことを示す。
本発明のコーティングの効率をさらに評価するため、生物学的方法を用いてさらに詳細な分析を実施した。生物学評価法一般に方法と材料。
【0171】
エナメル質粒子
エナメル質の粒子は、スカペル(Scapel) と歯科キュレットでかきとることによってすべての付着組織をまず取除くことによって約 100個のウシの歯から製造した。歯根を切断ホイールを用いてセメント質エナメル質境界部で除去し次に歯髄を除去した。次に歯冠を液体窒素中に20分間浸漬し、取出して直Sにハンマーでたたいた。象牙質は、粉砕ホイールを用いて、最大片から取出した。エナメル質スラブを分析ミル中に入れ、40℃で約5分間処理した。得られた粉末をふるいにかけて約80〜 120μMの粒子を得た。得られた粒子を洗浄し、酸で処理して清浄にし、40℃で乾燥し使用するまで貯蔵した。
【0172】
唾液プールの収集/処理
唾液は、ボランティヤーに2平方インチの Parafilm を2〜3分間かくで冷却した50ml試験管中に吐き出すように要請して集めた。これら試料を集め、4℃で20分間 10,000RPMで遠心分離した。透明化した唾液を10mlのバイアルビンに分散して、使用する直前まで−70℃で貯蔵した。
【0173】
コーティングの生物学的評価1
4種類のポリマーでコートした粉末エナメル質の試料をポリマーA,B,CおよびEを用いて製造した。
これらの試料は生物学的付着試験を行った。最初、これらのコートされた粒子を以下の3種の物質で攻撃した。
IgG −免疫グロブリンタンパク質PI7.5
OVA −卵白アルブミンタンパク質PI3.5
P.gin −P−歯肉細菌
【0174】
材料と方法
細菌の蛍白標識化
リン酸緩衝食塩水(PBS) 中109 /mlのP−歯肉細菌10mlを、 PBS中1mg/mlのフルオレセインイソチオシアネート(FITC) 0.1mlと混合した。その混合物を、室温で1時間回転させ、次いで上澄み液の 495nmにおける光学濃度がゼロになるまで、40mlづつの PBSで洗浄した。乾燥した細菌のペレットを、 0.1%のアジ化ナトリウムを含有するPBS 10mlに再度懸濁させ、次いで使用するまで4℃で貯蔵した。
【0175】
エナメル質粒子のコーティング
150mg の粒子(ポリマーでコートしてあるかまたはしていない)を 2.5のヒトの唾液と混合し、ポリプロピレン製試験管中で室温にて1〜2時間回転させた。未コートの粒子を、対照として PBS中で同じ時間回転させた。これら粒子を次に PBS中で3回洗浄して、未結合の唾液を除き、 PBS中1ml当り 100mgに調節し、使用するまで4℃で貯蔵した。
【0176】
付着性の検定
5mgの粒子(3組)を、コミカル底のマイクロフィルタープレートのウェル(NUNC)にピペットで採取し、 200μlの PBSで3回洗浄した。FITC標識細菌、 IgGまたは卵白タンパク質 100mlを各ウェルに添加し、プレートを絶えず振盪しながら室温で1時間インキュベートした。そのウェルを 250μlの PBSで3回洗浄し、 250μlの同じ緩衝液中に再度懸濁させた。これら粒子の20μlづつを取出し、底部にガラス繊維のフィルターを有する IDEXX Assay Plateのウェルに入れた。これらプレートをIDEXX Screen Mashine(登録商標)中に入れ、減圧濾過によって液体を除き、結合した蛍光を測定した。初期の読取りを行った後、プレートを、 0.125%NP−40を含有する PBSで2回洗浄し、結合した蛍光をScreen Machine(登録商標)で再度測定した。試験結果は相対蛍光単位(relative fluroresent unit)(RFU)で示した。
【0177】
試験結果
粒子はポリマーコーティングのあるものとないものの両方を試験した。これら各々の1/2を、集めた唾液で処理した。これら唾液で処理した粒子をリン酸緩衝食塩水(PBS) で洗浄し、唾液で処理しなかった粒子によって、付着性について試験した。結合した蛍光を、正の対照の百分率すなわち細菌またはタンパク質の未コートエナメル質粒子への結合として計算した。またこれら粒子は 0.125%のNP−40を含有する PBSで洗浄して細菌とタンパク質の付着性を測定した。
【0178】
図3に示す試験結果は PBSですすいだ粒子の結果であり、図4に示す試験結果は PBS+NP−40ですすいだ粒子の結果である。未コートのエナメル質は、上記3種のすべての試験生物学的薬剤を大量に吸収し(これは相対スケールで 100%である);エナメル質を唾液でコートすると、 IgGに対する結合はいくぶん低下したが OVAおよび P.ginの場合は低下しなかった。粒子をポリマーでコートすると結合が実質的に減少するが、ポリマーでコートされた粒子を唾液でスーパーコートすると、吸収特性がいくぶん回復する傾向がある。コートされた粒子を唾液で処理し次に上記生物学的薬剤で処理し、非イオン性界面活性剤NP−40を含有する PBSで簡単に洗浄すると、すべてのコーティングとP.gin.に対して IgGと OVAの付着が実質的に減少することを示した。
【0179】
コーティングの生物学的評価2
細菌菌株の増殖
ミュータンスれんさ球菌の菌株を、歯の治療を求めている人からの新鮮な分離物としてミネソタ大学歯科学校から入手した(菌株43−2,43−3およびRL19)。追加のミュータンスれんさ球菌をAmerican Type Culture Collectionから入手した(菌株10558, 12396,27351, 27352, 27609および33399)。これら菌株をすべて、37℃で嫌気チャンバー内にて Todd Hewitt Broth中で培養した。細胞を、対数増殖期の後期に収穫し、濾過減菌した、食塩水で3回洗浄した。これら細胞を、濾過減菌した KCl緩衝液(0.1M NaCl, 0.05M KCl, 0.1M MgCl2, 0.1mMリン酸カリウムおよび1mM CaCl2, pH7.0)中に1.0(600nm)の光学濃度(“OD”)で再懸濁させた。
【0180】
全ゲノムプローブの製造
A8AP(登録)Kit(Boeringer Manheim 社) をメーカーの指示にしたがって使って、 DNAを上記細菌から単離した。要約すると、各種菌株の細胞約109 個を、1ml/mlのムタノリシン(Sigma社) を補充した溶菌緩衝液2mlと混合した。熱処理したRNアーゼ60μlとリゾチーム溶液 160μlを添加し、ゆるやかに転倒させて混合した。得られた懸濁細胞を37℃で30分間インキュベートし、次に 100μlの Proteinase Kを添加した。ゆるやかに転倒させて混合した後、懸濁した細胞を60℃で60分間インキュベートした。4mlの結合緩衝液を添加し、ゆるやかに転倒させて混合し、試料全体を DNA結合マトリックスのカラムに添加した。そのカラムを重量によって排液し、次に添加の結合緩衝液3mlを添加し再び排液した。 0.5mlの一次溶離緩衝液を添加し、カラムを排液して RNAを溶出させ、続いてタンパク質を2mlの DNA溶離緩衝液で溶出させ 100mm×100mm の試験管に集めた。その DNAをイソプロパノールで沈澱させ、エタノールで洗浄して乾燥した。得られた DNAのペレットをトリス−EDTA (“TE”)緩衝液50μlに溶解し、各製剤の量と純度を、 260/280nm における光学濃度と0.85%TE上の電気泳動で測定した。
【0181】
GENIUS (登録商標)Non-radioactive DNA Labeling Kit(Boeringer Manheim社)を用いメーカーの指示にしたがって、 DNAをニックトランスレーションによって標識をつけた。要約すると、各細菌菌株由来の DNA 4.5μgを、ヘキサヌクレオチド類、デゴキシゲネイン(degoxigenein)で標識をつけたdNTP類およびクレノー酵素を含有し水で20μlにした平衡混合物と混合した。これら試験管を10秒間遠心分離し次いで37℃で一夜インキュベートした。
【0182】
付着した細菌についてのドットブロットアッセイ
コーティングしたエナメル粒子およびコーティングしないエナメル粒子を1mlの唾液に独立に添加し、そして室温において1時間回転した。粒子を緩衝化 KClで洗浄し、そしてOD1.0(600nm)において1mlの細菌を添加し、そしてこの混合物を室温においてさらに1時間回転した。次いで、粒子を5つの懸濁液〔下を参照〕の1つの中で洗浄した。次いで粒子を沈降させ、50μlの DNA抽出緩衝液を添加し、そして懸濁粒子を沸騰させて DNAを抽出しそして可溶化した。粒子を40℃に急冷し、遠心し、そして各管について10μlの複製試料をゼータープロープ(Zeta-ProbeTM(バイオ・ラド)膜上に点在させた。次いで、膜を前ハイブリダイゼーション溶液で処理し、洗浄し、そして 100ngのニック翻訳された DNAプロープを25mlのハイブリダイゼーション溶液の中に添加した。ハイブリダイゼーションを65℃において一夜インキュベートさせた後、3回洗浄して非結合プローブを除去した。次いで、膜をミルク・ブロッキング溶液の中で1時間インキュベートし、そしてヤギ抗ジゴキシゲニン(ブロッキング緩衝液中の1:1000)を添加した。さらに1時間インキュベートした後、膜を洗浄して非結合抗体を除去し、そして酵素基質溶液の中に1〜2時間決めた。膜をEDTA溶液の中で洗浄することによって、反応を停止させ、そして単一の観察者により下記の目盛りを使用してドットの強度を推定した:
0=色なし、
1=ちょうど可視、
2=明瞭に可視の円、
3=透明に可視の暗い円、
4=非常に暗い、最高の強度の円。
【0183】
付着強度を推定するための洗浄実験
5つの異なる緩衝液を洗浄実験のために調製した:緩衝化 KCl、緩衝化 KCl+1%ツイーン20、緩衝化 KCl+1%ツイーン80、緩衝化 KCl+1%可溶性練り歯磨き抽出物および緩衝化 KCl+1%うがい薬。微生物の付着実験のための最終洗浄液として、緩衝液を個々に使用した。
【0184】
微生物の付着実験
細菌、プラーク耐性コーティングおよび対照の組み合わせについての付着値は、表16において見ることができる。一般に、すべての実験材料でコーティングしたエナメルを試験し、そして KCl緩衝液の巾の対照と比較したとき、約25%(範囲=10〜47%) の結合の全体の減少が存在した。また、種々の界面活性剤または経口生成物を洗浄緩衝液に添加したとき、未処理エナメルの対照と比較して、コーティングされた粒子への結合の、81〜29%範囲の実質的減少が存在し、そして唾液で処理した対照と比較して、86〜13%の減少が存在した。この減少は、種々の洗浄溶液単独の添加により説明することができるよう、大きかった。
【0185】
【表16】

【0186】
【表17】

【0187】
【表18】

【0188】
記号解:
エナメル処理
第1の特性−唾液の処理
E=ポリマーによる未コーティングのエナメル
A1=ポリマーAでコーティングされたエナメル
B1=ポリマーBでコーティングされたエナメル
C1=ポリマーCでコーティングされたエナメル
E1=ポリマーEでコーティングされたエナメル
第2の特性−唾液の処理
B=KCL 緩衝液の処理のみ
S=唾液の処理
第3の特性−洗浄緩衝液
KCL =KCL 緩衝液の洗浄
T20=KCL +1%ツイーン(TweenTM) 20緩衝液の洗浄
T80=KCL +1%ツイーン(TweenTM) 80緩衝液の洗浄
TP=KCL +1%フローズ−アップ(Close−upTM) 練り歯磨き抽出物の洗浄
MW=KCL +1%ラボンス(LavorisTM) うがい薬の洗浄
コーティング溶液の生物学的評価
無水マレイン酸で前以てコーティングした、ポリスチレンのアッセイウェルを、下記に示すように種々の溶液で処理した。
i)対照、未コーティング、
ii)ポリマーCの溶液(イソプロパノール中の 7.5%)でコーティングした、
iii )ポリマーCの溶液(イソプロパノール中の 7.5%)でコーティングし、次いで1重量%のツイーン80を含有する緩衝液から成るすすぎ液、
iv)ポリマーEの溶液(イソプロパノール中の 7.5%)でコーティングした、
v)ポリマーEの溶液(イソプロパノール中の 7.5%)でコーティングし、次いで1重量%のツイーン80を含有する緩衝液から成るすすぎ液。
【0189】
S.Challis 細胞の接種物を1×107 細胞/ウェルの濃度においてプレートした。標準的洗浄後、ウェルに付着する細胞をシンチレーションカウターで計数し、そしてもとの接種物の百分率として表した。これらを表17に対照の、未コーティング基質(100%) の相対百分率として報告する。
【0190】
【表19】

【0191】
上記結果が示すように、ポリマーのコーティングの適用は経口細菌の付着を減少する。細菌の暴露の前に基質を含有するすすぎ溶液でコーティングを処理すると、細菌の付着は減少する。
【0192】
図面の詳細な説明
ポリマーおよびPDMS溶液による歯のスラブのコーティングを比較するために、イソプロパノール中のポリマーCの 7.5%溶液(実施例4)またはアセトン中の PS510ポリジメチルシロキサンの 7.5%溶液(比較例1)で、象牙質スラブをコーティングした。50mlの蒸留水の中に0.01gのメチレンブルーを溶解することによって、溶液を調製した。コーティングされた象牙質スラブをこの溶液の中に5分間浸漬し、次いで取り出し、そして蒸留水で洗浄した。スラブを乾燥し、そしてオリンパス拡大顕微鏡を使用して 7.5×でポラロド写真を撮った。
第1図に示すように象牙質スラブは両側が純白であり、ポリマーCでコーティングされた象牙質スラブ上に色素は保持されていないことを示した。対照的に、第2図は、比較例1のシロキサンでコーティングされた象牙質スラブが、暗色区域により示されるように、スラブ表面上に色素の保持を経験したことを示す。
【0193】
生物学的評価1の付着アッセイの結果の論考に記載したように、第3図および第4図は、後述するようにコーティングをもたないか、またはコーティングをもつエナメル粒子に対する細菌の付着を示す:
1:唾液処理なしの未コーティングのエナメル
2:唾液処理した未コーティングのエナメル
3:唾液処理なしのBでコーティングしたエナメル
4:唾液処理したBでコーティングしたエナメル
5:唾液処理したAでコーティングしたエナメル
6:唾液処理したCでコーティングしたエナメル
7:唾液処理したEでコーティングしたエナメル
8:陰性の対照
コーティングを有するエナメル粒子は、IgG, OVAおよび/または P.ginの付着の実質的減少を示す。
【0194】
実施例8
下記表18は、ポリマーと異なるA単位との反応組成物を記載する。下記の連続的供給重合方法により、表18に示すポリマーの各々を製造した。
【0195】
【表20】

【0196】
250mlの3つ首丸底フラスコに、イソプロパノール(20ml)を磁気撹拌棒と一緒に添加した。AIBN(0.2g)をイソプロパノール(60ml)の中に溶解し、この溶液を60mlの滴下漏斗に入れ、そして反応フラスコに取り付けた。表18に記載するA単位ならびにメチルアクリレート(26g)およびPDMSモノマー(4g)をイソプロパノール(28ml)の中に溶解し、第2の60mlの滴下漏斗の中に入れ、そして反応フラスコに取り付けた。冷却器を反応フラスコの第3首の中に配置した。室温において、供給溶液を通して窒素ガスを15分間泡立てて通入することによって、反応器を脱酸素した。窒素雰囲気下におだやかに撹拌しながら、反応フラスコを60℃に維持する間、2つの漏斗の内容物を反応フラスコに一定速度(10ml/時)で6時間かけて添加した。モノマーおよび開始剤溶液の添加が完結した後、反応フラスコを60℃にかつ窒素雰囲気下にさらに3時間維持した。
【0197】
ポリマーGおよびIIの重合後、ポリマーを溶解するために十分な量のアセトンを各反応混合物に独立に添加した。激しく撹拌しながら各反応混合物を合計の反応混合部の体積の4倍の量の水に滴下することによって、各ポリマーを精製した。各沈殿したポリマーを水混合物から取り出し、次いで真空炉の中でほぼ60℃において数日間乾燥した。生ずる固体状ポリマーを粉砕し、そして粉末として貯蔵した。
【0198】
ポリマーIをそれ以上精製しないで使用した。反応混合物の中のポリマーの重量%を重量測定法により決定し、次いで反応混合物を50/50イソプロパノール/アセトンの中でほぼ10%の希釈した。
【0199】
表18に記載するポリマーのコーティングの疎水性および親水性を、それぞれ、進行する水および後退する水の接触角により特徴づけた。水の進行および後退する接触角は、ウィエルミイ(Wilhelmy)板技術により測定した。ポリマーでコーティングしたガラス板(22mm×22mm×0.15mm) を、測定のための板として使用した。ガラス板をガンマ・メタクリルオキシトリメトキシシラン(“A…174", OSiスペシャルティーズ・インコーポレーテッド)でシラン処理した後、板をポリマー溶液の中で浸漬コーティングした。コーティングした板の進行および後退する水の接触角を、50ミクロン/秒の板浸漬速度で測定した。表18における接触角の結果は、3回の反復測定の平均値を表し、ポリマーのコーティングが、裸の磨いたエナメル(表6に示す)よりも、いっそう疎水性でありかつより少なく親水性であったことを示す。
【0200】
「方法I」と呼ぶ下記の手順により、エナメル上の表18に記載するポリマーの歯ブラシ/練り歯磨きの摩耗抵抗を決定した。ウシの切歯をエポキシ樹脂の中に注射した。次いで、頬の表面を 120および 600グリットの炭化ケイ素の湿式/乾式サンドペーパーで磨いて、きれいな、平らなエナメル表面を露出させた。磨かれたエナメル表面をされに清浄するために、エナメルを水中の10%クエン酸で15秒間エッチングし、すすぎ、そして乾燥した。表18に記載するポリマー(10%)を表19の溶液の中に溶解し、そして磨かれたエナメル表面に#75コーティング棒(RDスペシャルティーズ・インコーポレーテッド)で適用した。乾燥ポリマーのフィルムはほぼ5ミクロンの厚さであった。
【0201】
エナメルの10%のみがポリマーでコーティングされて残るまで、各コーティングしたエナメル表面を ORALBTM35ソフト・ストレイト歯ブラシで 2.7ニュートンンの荷重で3サイクル/秒の頻度でブラッシングした。エナメル表面および歯ブラシを、ブラッシングの間に、50/50重量 CRESTTMレギュラー・フレイバー(Regular Flavor)練り歯磨き/蒸留水のスラリーの中に浸漬した。
【0202】
ブラッシングの間の規則的な間隔において、ポリマーでコーティングされたままである磨かれたエナメル表面の百分率を染色法により決定した。磨かれた表面を37%リン酸で1秒間エッチングし、すすぎ、アシッド・バイオレット#17(アルドリッヒ・ケミカル・カンパニー・インコーポレーテッド、ウイスコンシン州ミルウォーキー)の 0.2%水溶液の中にほぼ30秒間浸漬し、すすぎ、そして乾燥した。プラーク耐性ポリマーはリン酸エッチング段階により比較的影響を受けず、そしてアシッド・バイオレット#17により染色に対して耐性であったが、エナメル表面上にコーティングが残っていない区域は染色を示した。ブラッシング後にコーティングされたままである、磨かれた表面区域の百分率を視的検査により決定し、そして非染色表面の百分率として報告した。
【0203】
下記表19は、ポリマーG,HおよびIの歯ブラシ/練り歯磨き摩耗抵抗の比較を示す。結果は、5回の反復測定の平均を表し、ポリマーG,HおよびIが歯磨きの間に増強された摩耗に対してすぐれた抵抗を有することを示す。
【0204】
【表21】

【0205】
実施例9
下記の表20は、様々なBユニットを有する、プラーク抵抗性ポリマーの反応組成物を示す。表20のポリマーはそれぞれ、アクリル酸(6g),PDMS大割球(macromer)(4g),AIBN(0.2g)、記載されたBユニット(26g)及び溶媒(108ml)を、 250mlの丸底フラスコに入れて調製した。室温下で、この混合物中に、泡立っている窒素を15分間通すことによって、この反応混合物を脱酸素した。その後、この反応混合物をゆるやかに撹拌しながら、温度を60℃まで上昇した。この反応混合物は、8時間、窒素ブランケットを行った。
【0206】
【表22】

【0207】
ポリマーJ及びLは、各反応混合物に、該反応混合物全体の容量の4倍量の水を、激しく撹拌しながらそれぞれ独立に滴下することによって、精製した。この水性混合物から、沈殿したポリマーを除去し、次に真空オーブン中、約60℃で、数日間乾燥した。これらの乾燥したポリマーを微粉に粉砕し、かつ保管した。ポリマーKは、該反応混合物にアセトン36gを添加し、該反応混合物を水に滴下する以前に該ポリマーを溶解した以外は、同様の方法で精製した。
【0208】
表20に記載したポリマー類のエナメル質上での歯ブラシ/練り歯磨き摩擦抵抗は、“方法II" と称する下記の方法を用いて測定した。頬側の表面が、入れた(potting) 物質の上に盛り上がるように、ウシの切歯をポリメチルメタクリレートの中に入れた。次にその頬側の表面を、 120及び 600グリッドのシリコンカーバイド湿式/乾式サンドペーパーで、清潔で、平面のエナメル質が現れるまで研磨した。この研磨したエナメル質表面をより清潔にするために、エナメル質を、水を溶媒とする10%クエン酸で、15秒間酸腐蝕し、洗浄し、かつ乾燥した。表20に示したポリマー類の10%溶液である、イソプロマノールを溶媒とする溶液(ポリマーJ及びL)又は50/50イソプロパノール/アセトンを溶媒とする溶液(ポリマーK)を、研磨したエナメル質の表面に、小さいブラシを用いて塗布し、風乾した。この被覆されたエナメル質の標本は、ブラッシングを行う以前に、37℃、相対湿度(“RH”)97%で、24時間維持した。
被覆されたエナメル質表面の各々を、ORAL B(登録商標)35のやわらかい直毛の歯ブラシを用いて、負荷 140gで、回数50サイクル/分で、15分間ブラッシングした。エナメル質表面及び歯ブラシは、ブラッシング時は、CREST(登録商標)レギュラーフレーバー練り歯磨き/蒸留水の50/50スラリーに浸された。
【0209】
ブラッシング後、ポリマーで被覆された状態でいる研磨されたエナメル質表面の割合を、実施例8の方法Iに記載した染色法で測定した。
【0210】
表20は、様々なBユニットを有するポリマー類の歯ブラシ/練り歯磨きの磨耗抵抗の比較を示す。平均2回反復した結果は、該ポリマーコーティングが、歯磨きの際に直面する磨耗に対し、良い抵抗性を有することを示した。
【0211】
実施例10
下記の表21は、Aユニット、Bユニット及びCユニットをさまざまな相対量で含む、プラーク抵抗性反応組成物を示す。表21の各ポリマーは、 250mlの3首丸底フラスコの中に、モノマー類、AIBN(0.2g)及びイソプロパノール(108ml)を装入することによって調製した。室温下で、この混合物中に、泡立っている窒素を15分間通すことによって、この反応混合物を脱酸索した。その後、この反応混合物をゆるやかに撹拌しながら、温度を60℃まで上昇した。この反応混合物は、8時間、窒素ブランケットを行った。
【0212】
【表23】

【0213】
表21に記載されたモノマー類の重合に続き、該ポリマーを溶解するのに十分量のアセトンを、各反応混合物に添加した。その後各ポリマーを、各反応混合物に、該反応混合物全体の容量の4倍量の水を、激しく撹拌しながら滴下することによって、精製した。この水性混合物から、沈殿したポリマーを除去し、次に真空オーブン中、約60℃で、数日間乾燥した。得られた固形ポリマー類を粉砕し、かつ粉末として保管した。
【0214】
表21に記載されたポリマーコーティングの疎水性及び親水性を、それぞれ、増加及び減少する水の接触角で特徴付けた。増加及び減少する水の接触角は、定着滴下(sessile drop)法を用いて測定した。定着滴定接触角測定のための標本は、エポキシド樹脂中の最初に入れたウシの切歯から調製した。その後、頬側の表面を、 120及び 600グリッドのシリコンカーバイド湿式/乾式サンドペーパー、6及び3μmのダイヤモンドペースト、並びに0.05μmのアルミナスラリーで、清潔で、平面のエナメル質表面が露出するまで、研磨した。表21のプラーク抵抗性ポリマー類の50/50イソプロパノール/アセトンを溶媒とする溶液(10%)を、研磨下エナメル質表面に、小さいブラシを用いて塗布した。2回反復した測定値の平均である表21に示した接触角は、これらのポリマーコーティングが、塗布していない研磨したエナメル質(表6参照)よりも、より疎水性が増し、かつ親水性が減ったことを示している。
【0215】
表21のポリマー類の歯ブラシ/練り歯磨きの磨耗抵抗性を、RDスペシャルティー社から入手した#40コーティングロッドを用いて、ポリマー溶液を調製したエナメル質表面に塗布し、約3μmの乾燥フィルムの厚さを得る以外は、方法Iに従って測定した。これらのポリマーフィルムは、50/50イソプロパノール/アセトンを溶媒とする10%ポリマー溶液から作られた。歯を、ポリマーが完全に除去されるまでブラッシングした。5回の反復測定値の平均を表わしている、表21に結果を示した歯ブラシ/練り歯磨きの磨耗抵抗性は、このポリマーコーティングが、歯磨きの際に直面する磨耗に対し、良い抵抗性を有することを示している。
【0216】
実施例11
実施例10のポリマーN及びKに対するう食原性最近の付着を、下記の方法を用いて測定した。清潔なウシの歯を、10%のクエン酸で15秒間酸腐蝕し、洗浄し、かつ乾燥した。次に酸腐蝕した歯の歯冠を、50/50イソプロパノール/アセトンを溶媒とする10%ポリマー溶液に浸漬被覆し、かつ風乾した。
【0217】
ポリマーで被覆されたウシの歯は、10mm×30mmのポリプロピレン製試験管に入れ、3M社から入手した3M(登録商標)インプリント(登録商標)接触圧物質を用いて、保持した。歯冠部分だけが露出するように、歯を配置した。その後これらの歯を、24−ウェルの組織培養プレート(コスター社、ケンブリッジ、MA)のウェルの中に、歯冠部が下側になるように配置し、及びヒトの全唾液(2.3ml)を各ウェルに加え、歯冠が覆われるようにした。これらの歯を、室温で振盪しながら1時間、インキュベートした。 KClバッファー(0.1M NaCl, 0.05M KCl, 1mM KH2PO4, 0.1mM MgCl2, 1mM CaCl2, pH7.0)で洗浄した。“連鎖球菌変異体(mutans streptpcocci)”(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)、ロックビル、MD)を、唾液に添加し(109 /歯)、かつ更に2時間室温で、振盪しながらインキュベートした。その後これらの歯を、 KClバッフアー、又は 0.3% TWEEN−80(シグマ社、セントルイス、MO)を添加した KClバッファーのいずれかで、2回洗浄した。該接触圧物質から歯を取り除き、24−ウェルのプレートに歯冠を下側にして配置した。 KClバッファー、又は TWEEN−80 (2ml) を添加した KClバッファーを、各ウェルに添加し、歯を2回以上洗浄した。 DNA抽出バッファー(0.4M NaOH, 10mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)) (2.3ml)を、各ウェルに添加し、このプレートを95〜 100℃で、12分間加熱した。溶解した DNAを、該ウェルから取り出し、3個に等分した。各部分を、各標本中の最近の DNAの濃度を測定するスロットプロット装置のウェルに入れた。その後、該プレートから菌を取り除き、番号を付けた。
【0218】
各標本中の最近の DNA濃度は、下記の DMAスロットブロット法を用いて測定し
【0219】
各標本中の最近の DNA濃度は、下記の DMAスロットブロット法を用いて測定した。セータプローブハイブリゼーション膜(バイオラドラボ社、リッチモンド、(CA) のシートを、蒸留水に該膜を浸すことによって調製した。次のこの湿った膜を、スロットブロット装置(ミニフォルドII、シュライシャー&シェネル社)に装着し、真空にし、かつ各ウェルを、TEバッファー(10mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩(TRIZMA (登録商標) 塩酸塩、シグマ社)、1mM EDTA, pH8.0) 0.5mlですすいだ。溶解した DNA標本を、各ウェルに添加し、かつ 0.4M NaOHで1回洗浄した。液体が全部該膜を通過した後に、真空装置を取り外し、この装置を外し、かつ DNAを、この半乾燥膜上で、3分間紫外線(ストラタリンカー、ストラータジーン社、ラホヤ、CA)を照射し、固定化した。この膜を、 0.3M NaCl, 0.003Mクエン酸ナトリウムで簡単に洗浄し、37℃のインキュベーターで乾燥した。乾燥した膜を、ガラスハイブリッド形成チャンバー中に置き、あらまじめハイブリッド形成した溶液(ライフテクノロジー社、グランドアイランド、NY)15mlを添加した。このチューブを、ハイブリッド形成オーブン(ハイブリダイザー 700、ストラータジーン社)の中で65℃で1時間回転した。試験する微生物のジゴキセゲニン(digoxegenin)で標識した全ゲノムプローブを、あらかじめハイブリッド形成した溶液(15ml) に添加した。希釈されたプローブを12分間沸騰した。その後、あらかじめハイブリッド形成した溶液を、ガラスハイブリッド形成チャンバーから除去し、希釈したプローブ溶液を入れた。このスロットブロットを、該プローブと共に一晩、65℃でインキュベートした。
【0220】
ジゴキシゲニン標識化プローブとともに一夜インキュベートしたスロット−ブロット膜をハイブリダイゼーションオーブンから取り出して、振盪器台上に載せたガラストレー中の 0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS) を含む 0.3M NaCl, 0.03Mクエン酸ナトリウム中で5分間、室温で2回洗浄した。65℃で30分間、ハイブリダイゼーションオーブン中の 0.1% SDSを含有する15mM NaCl, 1.5mMクエン酸ナトリウム50ml中で、膜を2回洗浄した。次に膜をガラストレー中に置き、マレイン酸緩衝液(0.15M NaCl, 0.1Mマレイン酸,pH7.5)中で室温で2分間洗浄した。10%スキムミルクタンパク質(KPl, Laboratories, Gaithersburg, MD)を加えたマレイン酸緩衝液中で室温で1時間、膜をインキュベートして、膜上の非特異的反応体部位を遮断した。アルカリ性ホスファターゼ(Boehringer Mannheim, Inc., Indianapolis. IN)で標識した抗ジゴキシゲニン抗体を10%スキムミルクタンパク質を含有するマレイン酸中で1:5000に希釈して、室温で1時間、膜に付加した。抗体溶液を取り出して、 0.3% TWEEN−20を含有するマレイン酸緩衝液中で15分間、膜を2回洗浄した。洗浄緩衝液を除去後、酵素基質緩衝液(0.1M塩酸TRIZMA, pH9.5)中で5分間、膜を平衡させた。リン酸ゾロモクロロインドール/ニトロブルーテトラゾリウム酵素基質溶液(KPL Laboratories, Inc.) を加え、室温で30分間、暗所で膜をインキュベートした。膜をTE緩衝液に5分間移した後、蒸留水に5〜10分間浸漬して発色を停止させた。次に膜を紙タオル上に載せて乾燥させた。
【0221】
乾燥させた膜をデンシトメーター(モデル325, Molecular Dynamics, Inc., Sunnyvalc, CA) の運搬トレー上に置き、走査した。Molecular Dynamics Image QuantTMソフトウエアを用いてデジタルファイルとしてデータを収集した。各スロットの正味光学密度を測定し、各膜上で動かした微生物 DNAの標準曲線と比較した。各スロットの微生物等価物を算出し、ブロフィール計測法により測定した歯冠表面積で標準化した。
【0222】
ポリマーN及びKに対する細菌付着結果を、アメリカ培養細胞コレクション (ATCC) (Rockville, Maryland) からの「突然変異体連鎖球菌」の4株に関して表22に示す。表22は、非結合エナメルと比較した結合細菌の%減少を記録する。 KCl洗浄液中に含まれる TWEEN−80を用いた場合と用いない場合の4種の細菌を評価した。 TWEEN−80がポリマー被覆菌の KCl洗浄液中に含まれる場合は、 TWEEN−80は裸エナメル対照菌の KCl洗浄液中にも含まれた。5つの測定値の平均を表す結果は、ノラーク耐性コーティングをエナメルに適用した場合にう食原性細菌の結合の有意の低減が達成されたことを示す。
【0223】
【表24】

【0224】
実施例12
下記の表23は、プラーク耐性ポリマーのA 174を含めた種々のDユニット及び下記のアルコキシ シランとの反応組成物を説明する。
【0225】
【化28】

【0226】
表23はさらに、Dユニットを用いずに調製されたポリマーを比較する。表23の6つのポリマーは各々、アクリル酸(6g)、イソブチルメタクリレート、PDMSマクロマー(4g)、前記のDユニット、AIBN(0.2g)及びイソプロパノール(108ml)を 250ml丸底フラスコ中に入れて調製した。室温で、15分間混合物中に窒素を発泡させて、反応混合物を脱酸素化した。次に反応混合物を軽く撹拌しながら60℃に上げて、窒素ブランケット下で反応を実施した。
【0227】
反応混合物を激しく撹拌しながら反応混合物の容積の4倍の量の水に滴下して、ポリマーBを精製した。沈澱したポリマーを水混合物から取り出した後、真空オーブン中で約60℃で数日間乾燥させた。
【0228】
表23のDユニット含有ポリマー(ポリマーQ〜U)を、さらに、精製せずに用いた。各反応混合物中のポリマー重量%を重量測定法で測定し、次いで反応混合物をイソプロパノール中で10%ポリマーに希釈した。
【0229】
表23に記載したポリマーコーティングの疎水性及び親水性を、それぞれ水の接触角度の上げ下げにより特性化した。水の接触角度の上げ下げは、ウイルヘルミープレート法を用いて測定し、その結果を表23に示す。2つの測定値の平均を表す結果は、ポリマーコーティングが裸研磨エナメル(表6に示した)より疎水性が高く、親水性が低いことを示す。
【0230】
エナメル上の表23記載のポリマー歯ブラシ/練り歯磨き磨耗耐性を、方法IIを用いて測定した。イソプロパノールに溶解した表23のポリマーの溶液(10%) を磨いたエナメル表面に小ブラシで塗布して、風乾させた。標本は、ブラッシング前に37℃で少なくとも24時間、加湿オーブン中に保存した。少なくとも2つの測定値の平均を表す結果は、Dユニットの付加によるポリマーコーティングの歯ブラシ/練り歯磨き磨耗耐性の増大を示す。
【0231】
【表25】

【0232】
実施例13
下記の表24は、コーティング溶液に縮合触媒を付加した場合の実施例12のポリマーQ〜Uの水接触角度の上下を示す。ウイルへルミープレート法を用いて接触角度を測定した。オクタン酸第一スズを縮合触媒として用いた(ポリマー重量の5%)。2つの測定値の平均を表す表24の結果は、ポリマーコーティングが裸研磨エナメル(表6)よりも疎水性が高く親水性が低いことを示す。
【0233】
さらに表24には、縮合触媒をコーティング溶液に付加(ポリマーの5重量%)した場合に方法IIを用いて測定したエナメル上のポリマーQ〜Uの歯ブラシ/練り歯磨き磨耗耐性を示す。イソプロパノールに溶解したプラーク耐性ポリマーの溶液(10%)を、縮合触媒オクタン酸第一スズ、ジゾチルスズジラウレート又はトリエチレンジアミンを用いて調製した。コーティング溶液を磨いたエナメル表面に小ブラシで塗布して、風乾させた。標本は、ブラッシング前に37℃で少なくとも24時間、加湿オーブン中に保存した。少なくとも2つの測定値の平均を表す結果は、架橋結合性アルコキシーシランDユニットの含入がコーティングの磨耗耐性を有意に増大したことを示す。
【0234】
【表26】

【0235】
実施例14
Dユニットの架橋結合のための架橋化合物をコーティング溶液に加えた場合の実施例12のポリマーQ及びRの水接触角度の上下を示す。表25に示した「PHS 」と呼ばれる架橋化合物を、加水分解及び部分縮合後にA−174 から得た。表25に示した PHSの濃度は、溶液中のポリマー重量を基礎にした重量百分率である。ウイルヘルミープレート法を用いて接触角度を測定した。2つの測定値の平均を表す表25の結果は、ポリマーコーティングが裸研磨エナメル(表6)よりも疎水性が高く親水性が低いことを示す。
【0236】
【表27】

【0237】
下記の表26及び27は、Y−11597(トリス−〔N−(トリメトキシシリル)プロピル〕イソシアヌレート、Osi Specialtie s. Inc.から市販されている)をコーティング溶液に加えた場合の実施例12のポリマーQ及びRのそれぞれの水接触角度の上下を示す。コーティング溶液に付加したこの架橋化合物のモル量は、ポリマー中の1モルのA−174 ユニットを基礎にして算出した。表26及び27はさらに、接触角度に及ぼす架橋化合物と結合した縮合触媒の作用を示す。使用した縮合触媒は、溶液中のポリマー重量を基礎にして5%の濃度のオクタン酸第一スズであった。ウイルヘルミープレート法を用いて接触角度を測定した。2つの測定値の平均を表す表26及び27の結果は、ポリマーコーティングが裸研磨エナメル(表6)よりも疎水性が高く親水性が低いことを示す。
【0238】
【表28】

【0239】
【表29】

【0240】
架橋化合物 PHS又はY−11597 をコーティング溶液に加えた場合の方法IIを用いて測定したエナメル上のポリマーQ及びRの歯ブラシ/練り歯磨き磨耗耐性を、それぞれ表25及び28に示す。表28はさらに、架橋化合物と結合した縮合触媒の作用を示す。イソプロパノールに溶解したポリマーの溶液(10%)を、種々の量の架橋化合物を用いて、並びに任意に縮合触媒を用いて調製した。使用した縮合触媒は、溶液中のポリマー重量を基礎にして5%の濃度のオクタン酸第一スズであった。コーティング溶液を磨いたエナメル表面に小ブラシで塗布して、風乾させた。標本は、ブラッシング前に37℃で少なくとも24時間、加湿オーブン中に保存した。少なくとも2つの測定値の平均を表す結果は、架橋結合性アルコキシ−シランDユニットの含入がコーティングの磨耗耐性を有意に増大したことを示す。
【0241】
【表30】

【0242】
実施例15
縮合触媒オクタン酸第一スズ(溶液中のポリマー重量を基礎にして5%)を用いた場合と用いない場合のポリマーQ及びS〜Uへのう食原性細菌の付着を、実施例11記載の手法を用いて測定した。Streptococcus sobrinus (ATCC 27351) の株及びStreptococcus gordinii (ATCC 10558)の株に関して結果を、下記の表29に示す。表29は、非結合エナメルと比較した結合細菌の%減少を記載する。2種の細菌を、 KCl洗浄中に含まれる TWEEN−80を用いた場合と用いない場合で評価した。 TWEEN−80がポリマー被覆菌の KCl洗浄液中に含まれる場合は、 TWEEN−80は裸エナメル対照菌の KCl洗浄液中にも含まれた。5つの反復測定値の平均を表す結果は、プラーク耐性コーティングをエナメルに適用した場合にう食原性細菌の結合の有意の低減が達成されたことを示す。
【0243】
【表31】

【0244】
実施例16
下記の表30は、Bユニットメチルメタクリレート及びDユニットA−174 とのポリマーの反応組成物を比す。比較のために、表30には、対応するDユニットを用いずに調製された同様のポリマーの反応組成物が含まれている。表30に示したポリマーはともに、実施例8に記載の連続給送重合工程により調製した。モノマー給送は、イソプロパノール(28ml)中のオアクリル酸(6g)、メチルメタクリレート(26g)、PDMSマクロマー(4g)及び任意にA− 174Dユニット(2.6g)で構成された。イニシエーター給送はイソプロパノール(60ml)中のAIBN(0.2g)から成っていた。モノマー及びイニシエーター給送をそれぞれ60ml滴下漏斗中に入れ、漏斗を 250ml三つ首丸底フラスコに取り付けた。少量のイソプロパノール(20ml)及び磁気撹拌棒を 250ml丸底フラスコ中に初めて入れておいた。冷却器を反応フラスコの三首に取り付けた。室温で、15分間給送溶液中に窒素ガスを発泡させて反応容器を脱酸素化した。軽く撹拌しながら窒素ブランケット下で反応フラスコを60度Cに保持しながら、2つの漏斗の内容物を一定速度(10ml/時間)で6時間、反応フラスコに付加した。モノマー及びイニシエーター溶液の付加完了後、反応フラスコを窒素下でさらに3時間、60℃に保持した。
【0245】
【表32】

【0246】
ポリマーKの重合後、アセトン(50ml)を反応混合物に加えてポリマーを溶解させた。次に反応混合物を激しく撹拌しながら反応混合物の総量の4倍の量の水に付加して、ポリマーを精製した。沈澱したポリマーを水混合物から取り出して、約60℃で真空オーブン中で数日間乾燥させた。その結果生じた固体ポリマーを挽いて、粉末として保存した。
【0247】
ポリマーVを、さらに精製せずに用いた。ポリマー収率は、重量測定法により76.4%と測定された。次に反応混合物を50/50イソプロパノール/アセトン中で10%ポリマーに希釈した。
【0248】
表30はさらに、架橋化合物 PHS及び縮合触媒オクタン酸第一スズを用いた場合と用いない場合のポリマーK及びポリマーVの水接触角度の上下を示す。ウイルヘルミープレート法を用いて接触角度を測定した。2つの測定値の平均を表す結果は、ポリマーコーティングが裸研磨エナメル(表6)より疎水性が高く、親水性が低くかったことを示す。
【0249】
架橋化合物 PHS及び縮合触媒オクタン酸第一スズを用いた場合と用いない場合のポリマーK及びポリマーVのエナメル上での歯ブラシ/練り歯磨き磨耗耐性を方法Iを用いて測定した。50/50 イソプロパノール/アセトンに溶解した表30記載のポリマーの溶液を#75コーティング棒で磨いたエナメル表面に塗布した。乾燥ポリマーフィルムは厚さ約5μであった。被覆歯は、歯磨き前に95%RIIで70時間、37℃で保湿オーブン中で保存した。ポリマーで被覆されたままのエナメルが10%に過ぎなくなるまで、被覆歯をブラッシングした。5つの反復測定値の平均を表す表30の結果は、架橋結合性アルコキシ−シランDユニットの含入がコーティングの磨耗耐性を有意に増大したことを示す。
【0250】
実施形態
1.口内環境の表面または硬質組織表面上のコーティングであって、
A)極性基または極性化性基1〜80重量%
B)改質基0〜98重量%、
C)少なくとも 500の分子量の疎水性グラフトポリシロキサン鎖1〜40重量%
の繰り返し単位を含むポリマーを含むコーティング。
2.C単位が前記ポリマーの1〜30重量%である形態1記載のコーティング。
3.前記極性基または極性化性基がヒドロキシ、チオ、置換および無置換アミド、環式エーテル、ホスフィン、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、C,S,P,Bのオキシ酸、C,S,P,Bのチオオキシ酸、これらの基の前駆体および保護形態からなる群より選ばれたものである形態1記載のコーティング。
4.A単位が、下記式
【0251】
【化29】

【0252】
(式中、R2 はH、メチル、エチル、シアノ、カルボキシまたはカルボキシメチルであり、dは1〜5であり、そして、Gは結合であるか、または、1〜12個の炭素原子を含む価数d+1のヒドロカルビル結合基であって、所望により、置換若しくは無置換ヘテロ原子により置換され、および/または介在されている。)で示される一若しくは多官能性カルボキシル基含有分子およびその塩から誘導されたものである形態1記載のコーティング。
5.A単位が隣含有酸官能基を含む形態4記載のコーティング。
6.A単位が、アクリル酸およびメタクリル酸、イタコン酸およびN−アクリロイルグリシンからなる群より選ばれたものである形態4記載のコーティング。
7.A単位が、一般式
【0253】
【化30】

【0254】
(式中、R2 はH、メチル、エチル、シアノ、カルボキシまたはカルボキシアルキルであり、LはO,NHであり、dは1〜5であり、そして、R3 は1〜12個の炭素原子を含む価数d+1のヒドロカルビル基である。)で示される、一若しくは多官能性カルボキシル基含有分子から誘導されたものである形態1記載のコーティング。
8.A単位がヒドロキシエチル(メト)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メト)アクリレート、ヒドロキシブチル(メト)アクリレート、グリセロールモノ(メト)アクリレート、トリス(ヒドロキシメチル)エタンモノアクリレート、ペンタエリトリトールモノ(メト)アクリレート、N−ヒドロキシメチル(メト)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メト)アクリルアミド、およびヒドロキシプロピル(メト)アクリルアミドからなる群より選ばれたものである形態7記載のコーティング。
9.A単位がアルコキシ置換(メト)アクリレート若しくは(メト)アクリルアミドである形態1記載のコーティング。
10.A単位が、一般式
【0255】
【化31】

【0256】
(式中、R2 はH、メチル、エチル、シアノ、カルボキシまたはカルボキシアルキルであり、LはO,NHであり、dは1〜5であり、そしてR3 は1〜12個の炭素原子を含む価数d+1のヒドロカルビル基であり、そしてR4 およびR5 はHまたは1〜12個の炭素原子のアルキル基であるか、または、一緒になって炭素環式または複数環式基を構成し、そしてR6 はHまたは1〜30個の炭素原子のアルキルであり、そしてQ- は有機若しくは無機アニオンである。)の置換若しくは無置換アンモニウムモノマーから誘導されたものである形態1記載のコーティング。
11.C単位が一般式
【0257】
【化32】

【0258】
(式中、XはAおよびBモノマーと共重合可能なビニル基であり、
Yは二価の結合基であり、
nは0または1であり、
mは1〜3の整数であり、
Rは水素、低級アルキルであり、
Zは約 500を越える数平均分子量を有する、一価シロキサンポリマー部分であり、そして共重合条件下で本質的に無反応性である。)
を有するモノマーから誘導されたものである形態1記載のコーティング。
12.単位Cが一般式
【0259】
【化33】

【0260】
(式中、Xは一般式
【0261】
【化34】

【0262】
を有し、ここで、上式中、R7 は水素原子またはCOOH基であり、そしてR8 は水素原子、メチル基またはCH2 COOH基であり、Yは二価の結合基であり、
Zは一般式
【0263】
【化35】

【0264】
を有し、ここで、上式中、R9 およびR11は独立に低級アルキル、アリールまたはフルオロアルキルであり、R10はアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、アリール、ヒドロキシルまたはフルオロアルキルであることができ、
eは約5〜約 700の整数であり、
mは1,2または3であり、
nは0または1である。)を有するモノマーから誘導されたものである形態1記載のコーティング。
13.C単位が
【0265】
【化36】

【0266】
(式中、XはAおよびBモノマーと共重合可能なビニル基であり、mは1〜3の整数であり、
RおよびR”は水素、低級アルキルであり、
Zは約 500を越える数平均分子量を有する一価シロキサンポリマー部分であり、そして共重合条件下で本質的に無反応性であり、fは2〜6の整数であり、
gは0または1であり、
hは0〜2の整数である。)からなる群より選ばれた一般式を有するモノマーから誘導されたものである形態1記載のコーティング。
14.Aが一般式
【0267】
【化37】

【0268】
(式中、R2 はHまたはメチルであり、dは1であり、そして、Gは結合であるか、または、1〜12個の炭素原子を含む価数d+1のヒドロカルビル結合基である。)で示される一若しくは多官能性カルボキシル基含有分子またはその塩から誘導されたものであり、且つ、
C単位が
【0269】
【化38】

【0270】
(式中、XはAおよびBモノマーと共重合可能なビニル基であり、
mは1〜3の整数であり、
Rは水素、低級アルキルであり、
Zは約 500を越える数平均分子量を有する一価シロキサンポリマー部分であり、そして共重合条件下で本質的に無反応性であり、fは2〜6の整数であり、
gは0または1である。)
のモノマーから誘導されたものである形態1記載のコーティング。
15.前記コーティングが少なくとも1種のエチレン性不飽和化合物を更に含む形態1記載のコーティング。
16.A)極性基または極性化性基1〜80重量%
B)改質基0〜98重量%、
C)少なくとも 500の分子量の疎水性グラフトポリシロキサン鎖1〜40重量%
の繰り返し単位を含むポリマーを含むコーティングが付着されて有する一時若しくは永久歯科修復材。
17.A)極性基または極性化性基1〜80重量%
B)改質基0〜98重量%、
C)少なくとも 500の分子量の疎水性グラフトポリシロキサン鎖1〜40重量%。
の繰り返し単位を含むポリマーを含むコーティングが付着されて有する歯列矯正具。
18.A)極性基または極性化性基1〜80重量%
B)改質基0〜98重量%、
C)少なくとも 500の分子量の疎水性グラフトポリシロキサン鎖1〜40重量%
の繰り返し単位を含むポリマーを含むコーティングが付着されて有する口内組織修復具。
19.ヒト口内表面に適する歯科用組成物であって、
A)極性基または極性化性基1〜80重量%
B)改質基0〜98重量%、
C)少なくとも 500の分子量の疎水性グラフトポリシロキサン鎖1〜40重量%
の繰り返し単位を含むポリマーを含むコーティングを含み、弾性率以下の損失弾性率を有する組成物。
20.前記組成物が歯磨き配合物である形態19記載の組成物。
21.前記組成物が弾性率と等しい損失弾性率形態19記載の組成物。
22.A)極性基または極性化性基1〜80重量%
B)改質基0〜98重量%、
C)少なくとも 500の分子量の疎水性グラフトポリシロキサン鎖1〜40重量%
の繰り返し単位を含むポリマーを含むチューインガム。
23.プラーク、細菌および汚れの口内表面への付着性を低下させる方法であって、
a)
A)極性基または極性化性基1〜80重量%
B)改質基0〜98重量%、
C)少なくとも 500の分子量の疎水性グラフトポリシロキサン鎖1〜40重量%
の繰り返し単位を含むポリマーを前記口内表面に適用する工程、
b)
前記ポリマーを前記口内表面上で乾燥させる工程、
を含む方法。
24.前記ポリマーが塗布可能な組成物から適用される形態23記載の方法。
25.前記ポリマーが、水、低級アルコール、アセトン、シリコーンオイルおよびそれらの混合物からなる群より選ばれたキャリアー溶剤を更に含む組成物から適用される形態23記載の方法。
26.口内表面への細菌の付着性を低下させる方法であって、
a)
A)極性基または極性化性基1〜80重量%
B)改質基0〜98重量%、
C)少なくとも 500の分子量の疎水性グラフトポリシロキサン鎖1〜40重量%
の繰り返し単位を含むポリマーを前記口内表面に適用する工程、
b)
前記ポリマーを前記口内表面上で乾燥させる工程、
c)被覆された口内表面に界面活性剤を含む第二組成物を適用する工程、
を含む方法。
27.前記第二組成物が 0.1〜30重量%の界面活性剤を含む形態26記載の方法。
28.前記界面活性剤がノニオン界面活性剤である形態26記載の方法。
29.前記界面活性剤がカチオン若しくはアニオン界面活性剤である形態26記載の方法。
30. 前記界面活性剤が長鎖脂肪酸塩、長鎖脂肪酸の多価ヒドロキシエステルおよび長鎖脂肪アルコールの多価ヒドロキシエーテルからなる群より選ばれたものである形態26記載の方法。
31.前記第二組成物が、被覆された口内表面にバクテリアまたはタンパク材料が付着する前に適用される形態26記載の方法。
32.ヒト口内表面を被覆する方法であって、
i)次の比でモノマーを混合する工程、
A)極性基または極性化性基を有する重合性モノマー1〜80重量%
B)改質基を有する重合性モノマー0〜98重量%、
C)少なくとも 500の分子量の疎水性グラフトポリシロキサン鎖を含む重合性モノマー1〜40重量%
ii)口内表面上で現場で前記モノマーを重合させる工程、
を含む方法。
33.以下の成分を含んで成るヒト口腔内の口腔表面をコーティングするのに適する歯科用組成物:
a)以下の繰返し単位を含んで成るポリマー:
A)1〜80重量%の極性基または可極性化基;
B)0〜98重量%の改質基;
C)1〜40重量%の少なくとも 500の分子量を有する疎水性グラフトポリシロキサン鎖;及び
b)界面活性剤。
34.歯を修復するために必要な以下の成分を含んで成る処理剤を塗布すためのキット:
a)歯修復剤;及び
b)以下の繰返し単位を含んで成るポリマーを含んで成る組成物:
A)1〜80重量%の極性基または可極性化基;
B)0〜98重量%の改質基;
C)1〜40重量%の少なくとも 500の分子量を有する疎水性グラフトポリシロキサン鎖。
35.以下の繰返し単位を含んで成り、ペンダント架橋性基を更に含んで成るポリマー:
A)1〜80重量%の極性基または可極性化基;
B)0〜98重量%の改質基;
C)1〜40重量%の少なくとも 500の分子量を有する疎水性グラフトポリシロキサン鎖。
36.前記ペンダント架橋性基が重合性エチレン性不飽和基である形態35に記載のポリマー。
37.前記ペンダント架橋性基が重合性エポキシ基である形態35に記載のポリマー。
38.a)以下の繰返し単位を含んで成り、ペンダント架橋性基を更に含んで成るポリマー:
A)1〜80重量%の極性基または可極性化基;
B)0〜98重量%の改質基;
C)1〜40重量%の少なくとも 500の分子量を有する疎水性グラフトポリシロキサン鎖;及び
b)界面活性剤;
を含んで成るヒト口腔内の口腔表面をコーティングするのに適する歯科用組成物。
39.以下の繰返し単位:
A)1〜80重量%の極性基または可極性化基;
B)0〜98重量%の改質基;
C)1〜40重量%の少なくとも 500の分子量を有する疎水性グラフトポリシロキサン鎖;
を含んで成るポリマーを含んで成るヒト口腔内の口腔表面をコーティングするのに適する歯科用組成物であって、前記ポリマーが、縮合反応しうる少なくとも1個のシラン部分を更に含んで成る組成物。
40.シラン部分がポリマーの 0.1〜30モル%の量で存在する形態39に記載の組成物。
41.シラン部分が下記式により表される形態39に記載の組成物:
【0271】
【化39】

【0272】
上式中、
Xは、A及びBモノマーと共重合可能なビニル基であり;
Yは、多価結合基であり;
nは、0または1であり;
12は、水素または低級アルキルであり;
iは、0〜2の整数であり;
jは、1〜3の整数であり;
i+jは、3であり;及び
Tは、ヒドロキシ、またはハロゲン原子、アルコキシ、アルケノキシ、アシロキシ、カルボキシ、アミノ、アミド、ジアルキルイミシオキシ、ケトキシム及びアルドキシムから成る群より選ばれた加水分解性基である。
42.以下の繰返し単位を含んで成るポリマーを含んで成るヒト口腔内の口腔表面をコーティングするのに適する歯科用組成物:
A)1〜80重量%の極性基または可極性化基;
B)0〜98重量%の改質基;
C)1〜40重量%の少なくとも 500の分子量を有する疎水性グラフトポリシロキサン鎖;
D)1〜50重量%の下記式による表される基
【0273】
【化40】

【0274】
上式中、
Xは、A及びBモノマーと共重合可能なビニル基であり;
Yは、多価結合基であり;
nは,0または1であり;
12は、水素または低級アルキルであり;
iは、0〜2の整数であり;
jは、1〜3の整数であり;
j+jは、3であり;及び
Tは、ヒドロキシ、またはハロゲン原子、アルコキシ、アルケノキシ、アシロキシ、アルボキシ、アミノ、アミド、ジアルキルイミノオキシ、ケトキシム及びアルドキシムから成る群より選ばれた加水分解性基である。
43.Tが、アルコキシ、アルケノキシ、アシロキシ、ケトキシム及びアルドキシムから成る群より選ばれた形態41に記載の組成物。
44.Tがアルコキシ基である形態41に記載の組成物。
45.前記組成物が、反応性シラン部分の縮合を促進する触媒を更に含んで成る形態40に記載の組成物。
46.前記触媒が、第III A族、第IVA族、第VA族、第VIA族、第VIIIA族、第IB族、第IIB族、第III B族、第IVB族及び第VB族の金属を含んで成る有機金属触媒から成る群より選ばれた形態45に記載の組成物。
47.前記触媒が、ジオクタン酸錫、ナフテン酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオキシド、ジブチル錫ジオクトエート、ジルコニウムキレート、アルミニウムキレート、チタン酸アルミニウム、チタンイソプロポキシド、及びこれらの混合物から成る群より選ばれた形態46に記載の組成物。
48.前記触媒が、トリエチレンジアミン、p−トルエンスルホン酸、n−ブチルホスホン酸及びこれらの混合物から成る群より選ばれた形態45に記載の組成物。
49.前記組成物が、縮合反応しうる少なくとも2個の総合シリコーン反応部位を含んで成る化合物を更に含んで成る形態39に記載の組成物。
50.前記化合物が下記式により表される形態49に記載の組成物:
【0275】
【化41】

【0276】
上式中、
Yは、多価結合基であり;
12は、Hまたは低級アルキルであり;
iは、0〜2の整数であり;
jは、1〜3の整数であり;
i+jは、3であり;
kは、2〜50であり;及び
Tは、ヒドロキシ、またはハロゲン原子、アルコキシ、アルケノキシ、アシロキシ、カルボキシ、アミノ、アミド、ジアルキルイミノオキシ、ケトキシム及びアルドキシムから成る群より選ばれた加水分解性基である。
51.Tが、アルコキシ、アルケノキシ、アシロキシ、ケトキシム及びアルドキシムから成る群より選ばれた形態50に記載の組成物。
52.Tがアルコキシ基である形態50に記載の組成物。
53.前記化合物が下記式により表される形態49に記載の組成物:
【0277】
【化42】

【0278】
上式中、Rは、
【0279】
【化43】

【0280】
54.前記組成物が反応性シラン部分の縮合を促進する触媒を更に含んで成る形態49に記載の組成物。
55. 前記触媒が、第III A族、第IVA族、第VA族、第VIA族、第VIIIA族、第IB族、第IIB族、第III B族、第IVB族及び第VB族の金属を含んで成る有機金属触媒から成る群より選ばれた形態54に記載の組成物。
56.前記触媒が、ジオクタン酸錫、ナフテン酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオキシド、ジブチル錫ジオクトエート、ジルコニウムキレート、アルミニウムキレート、チタン酸アルミニウム、チタンイソプロポキシド、及びこれらの混合物から成る群より選ばれた形態55に記載の組成物。
57.前記触媒が、トリエチレンジアミン、p−トルエンスルホン酸、n−ブチルホスホン酸及びこれらの混合物から成る群より選ばれた形態54に記載の組成物。
58.前記ポリマーが10,000〜10,000,000重量平均分子量を有する形態39に記載の組成物。
59.前記ポリマーが50,000〜5,000,000 の重量平均分子量を有する形態39に記載の組成物。
60.口腔環境の硬質組織表面上のコーティングであって、以下の繰返し単位を含んで成り、縮合反応しうる少なくとも1個のシラン部分を含むポリマーから製造されたコーティング:
A)1〜80重量%の極性基または可極性化基;
B)0〜98重量%の改質基;
C)1〜40重量%の少なくとも 500の分子量を有する疎水性グラフトポリシロキサン鎖。
61.一時的または永久的歯修復材であって、以下の繰返し単位を含んで成り、縮合反応しうる少なくとも1個のシラン部分を含むポリマーを含んで成るコーティングを有する修復材:
A)1〜80重量%の極性基または可極性化基;
B)0〜98重量%の改質基;
C)1〜40重量%の少なくとも 500の分子量を有する疎水性グラフトポリシロキサン鎖。
62.以下の繰返し単位:
A)1〜80重量%の極性基または可極性化基;
B)0〜98重量%の改質基;
C)1〜40重量%の少なくとも 500の分子量を有する疎水性グラフトポリシロキサン鎖;
を含んで成り、縮合反応しうる少なくとも1個のシラン部分を含むポリマーを含んで成るコーティングを有する歯列矯正具。
63.前記組成物が、その弾性率以下の損失弾性率を有する形態39に記載の組成物。
64.前記組成物が、その弾性率に等しい損失弾性率を有する形態39に記載の組成物。
65.以下の工程を含んで成る口腔内表面への細菌の付着を減少させる方法:
a)以下の繰返し単位:
A)1〜80重量%の極性基または可極性化基;
B)0〜98重量%の改質基;
C)1〜40重量%の少なくとも 500の分子量を有する疎水性グラフトポリシロキサン鎖;
を含んで成り、縮合反応しうる少なくとも1個のシラン部分を含むポリマーを含んで成る組成物を、口腔内表面に塗布する工程;及び
b)前記ポリマーを前記口腔内表面上で乾燥させる工程。
66.前記ポリマーを塗布する前に被覆面を酸性溶液で処理する形態65に記載の方法。
67.前記組成物が、反応性シラン部分の縮合を促進する触媒を更に含んで成る形態65に記載の方法。
68.前記組成物が、縮合反応しうる少なくとも2個のシラン部分を含んで成る化合物を更に含んで成る形態65に記載の方法。
69.以下の工程を含んで成る口腔内表面への細菌の付着を減少させる方法:
a)以下の繰返し単位:
A)1〜80重量%の極性基または可極性化基;
B)0〜98重量%の改質基;
C)1〜40重量%の少なくとも 500の分子量を有する疎水性グラフトポリシロキサン鎖;
を含んで成り、縮合反応しうる少なくとも1個のシラン部分を含むポリマーを含んで成る組成物を口腔内表面に塗布する工程;及び
b)前記ポリマーを前記口腔内表面上に乾燥させる工程;
c)界面活性剤を含んで成る第2の組成物を被覆された口腔内表面に塗布する工程。
70.以下の工程を含んで成る歯列矯正具の近接した口腔内表面への細菌の付着を減少させる方法:
a)歯列矯正具を歯表面に接着させる工程;
b)以下の繰返し単位:
A)1〜80重量%の極性基または可極性化基;
B)0〜98重量%の改質基;
C)1〜40重量%の少なくとも 500の分子量を有する疎水性グラフトポリシロキサン鎖;
を含んで成り、縮合反応しうる少なくとも1個のシラン部分を含むポリマーを含んで成る組成物を歯列矯正具及び前記歯列矯正具に隣接する歯表面に塗布する工程;及び
b)前記ポリマーを前記口腔内表面上で乾燥させる工程。
71.歯を修復するために必要な以下の成分を含んで成る処理剤を塗布するためのキット:
a)歯修復材;及び
b)以下の繰返し単位:
A)1〜80重量%の極性基または可極性化基;
B)0〜98重量%の改質基;
C)1〜40重量%の少なくとも 500の分子量を有する疎水性グラフトポリシロキサン鎖。
を含んで成り、縮合反応しうる少なくとも1個のシラン部分を含むポリマーを含んで成る組成物。
【図面の簡単な説明】
【0281】
【図1】本発明のコーティングの適用されている歯のチップの写真であり、それは歯材料への色素の保持を示さない。
【図2】本発明の比較例1のコーティングの適用されている歯のチップの写真であり、それは歯材料への色素の保持を示している。
【図3】リン酸緩衝食塩水ですすいだエナメル粒子に対するタンパク質又は細菌の付着力の相対レベルを示すチャートである。
【図4】NP−40界面活性剤含有溶液ですすいだエナメル粒子に対するタンパク質又は細菌の付着力の相対レベルを示すチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口内環境の表面または硬質組織表面のコーティングのための組成物であって、
A)少なくとも1つの極性基または極性化性基を含むモノマー1〜80重量%
B)得られるポリマーの物性を改質する少なくとも1つの基を含むモノマー0〜98重量%、
C)少なくとも 500の分子量の少なくとも1つの疎水性グラフトポリシロキサン鎖を含むモノマー1〜40重量%
を含むエチレン系不飽和モノマーに由来する繰り返し単位を含むポリマーと、適切なキャリアとを含む組成物。
【請求項2】
前記極性基または極性化性基がヒドロキシ、チオ、置換および無置換アミド、環式エーテル、ホスフィン、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、C,S,P,Bのオキシ酸、C,S,P,Bのチオオキシ酸、これらの基の前駆体および保護形態からなる群より選ばれたものである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
A単位が、下記一般式
【化1】

(式中、R2 はH、メチル、エチル、シアノ、カルボキシまたはカルボキシメチルであり、dは1〜5であり、そして、Gは結合であるか、または、1〜12個の炭素原子を含む価数d+1のヒドロカルビル結合基であって、所望により、置換若しくは無置換ヘテロ原子により置換され、および/または介在されている。)で示される一若しくは多官能性カルボキシル基含有分子およびその塩から誘導されたものであるか、又は、
A単位が、一般式
【化2】

(式中、R2 はH、メチル、エチル、シアノ、カルボキシまたはカルボキシアルキルであり、LはO,NHであり、dは1〜5であり、そして、R3 は1〜12個の炭素原子を含む価数d+1のヒドロカルビル基である。)で示される、一若しくは多官能性ヒドロキシル基含有分子から誘導されたものであるか、又は、
A単位がアルコキシ置換(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれるか、又は、
A単位が、一般式
【化3】

(式中、R2 はH、メチル、エチル、シアノ、カルボキシまたはカルボキシアルキルであり、LはO,NHであり、dは1〜5であり、そしてR3 は1〜12個の炭素原子を含む価数d+1のヒドロカルビル基であり、そしてR4 およびR5 はHまたは1〜12個の炭素原子のアルキル基であるか、または、一緒になって炭素環式または複素環式基を構成し、そしてR6 はHまたは1〜30個の炭素原子のアルキルであり、そしてQ- は有機若しくは無機アニオンである。)の置換若しくは無置換アンモニウムモノマーから誘導されたものである、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
C単位が一般式
【化4】

(式中、XはAおよびBモノマーと共重合可能なビニル基であり、
Yは二価の結合基であり、
nは0または1であり、
mは1〜3の整数であり、
Rは水素、低級アルキルであり、
Zは500を越える数平均分子量を有する、一価シロキサンポリマー部分であり、
そして共重合条件下で本質的に無反応性である。)を有するモノマーから誘導されたものであるか、又は、
単位Cが一般式
【化5】

(式中、Xは一般式
【化6】

を有し、ここで、上式中、R7 は水素原子またはCOOH基であり、そしてR8 は水素原子、メチル基またはCH2 COOH基であり、Yは二価の結合基であり、
Zは一般式
【化7】

を有し、ここで、上式中、R9 およびR11は独立に低級アルキル、アリールまたはフルオロアルキルであり、R10はアルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、アリール、ヒドロキシルまたはフルオロアルキルであることができ、
eは5〜700の整数であり、
mは1,2または3であり、
nは0または1である。)を有するモノマーから誘導されたものであるか、又は、
C単位が
【化8】

(式中、XはAおよびBモノマーと共重合可能なビニル基であり、mは1〜3の整数であり、
RおよびR”は水素、低級アルキルであり、
Zは500を越える数平均分子量を有する一価シロキサンポリマー部分であり、そして共重合条件下で本質的に無反応性であり、fは2〜6の整数であり、
gは0または1であり、
hは0〜2の整数である。)からなる群より選ばれた一般式を有するモノマーから誘導されたものである、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
請求項1記載のポリマーを含むコーティングを有する、一時若しくは永久歯科修復材。
【請求項6】
請求項1記載のポリマーを含むコーティングを有する、歯列矯正具。
【請求項7】
請求項1記載のポリマーを含むコーティングを有する、歯科補てつ具。
【請求項8】
ヒト口内表面をコーティングするための歯科用組成物であって、
請求項1記載のポリマーを含み、弾性率以下の損失弾性率を有する組成物。
【請求項9】
請求項1記載のポリマーを含む、チューイングガム。
【請求項10】
歯に修復材を適用する処置を必要とする場合のかかる処置のためのキットであって、以下を含んで成るキット:
a)歯修復材;及び
b)請求項1記載のポリマーを含む組成物。
【請求項11】
以下のモノマーを含むエチレン系不飽和モノマーに由来する繰返し単位を含んで成るポリマーを含んで成るヒト口腔内の口腔表面をコーティングするための歯科用組成物:
A)少なくとも1つの極性基または極性化性基を含むモノマー1〜80重量%;
B)得られるポリマーの物性を改質する少なくとも1つの基を含むモノマー0〜98重量%;
C)少なくとも 500の分子量を有する少なくとも1つの疎水性グラフトポリシロキサン鎖を含むモノマー1〜40重量%;
D)下記式による表される少なくとも1つの基を含むモノマー1〜50重量%基
【化9】

上式中、
Xは、A及びBモノマーと共重合可能なビニル基であり;
Yは、多価結合基であり;
nは、0または1であり;
12は、水素または低級アルキルであり;
iは、0〜2の整数であり;
jは、1〜3の整数であり;
i+jは、3であり;及び
Tは、ヒドロキシ、またはハロゲン原子、アルコキシ、アルケノキシ、アシロキシ、カルボキシ、アミノ、アミド、ジアルキルイミノオキシ、ケトキシム及びアルドキシムから成る群より選ばれた加水分解性基である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−348047(P2006−348047A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242143(P2006−242143)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【分割の表示】特願平7−516241の分割
【原出願日】平成6年12月2日(1994.12.2)
【出願人】(590000422)スリーエム カンパニー (144)
【Fターム(参考)】