説明

伐採木材あるいは廃木材とアルカリ廃水との同時処理方法

【目的】特に建設工事などで排出される廃木材や伐採木材が含む炭素を小規模な装置で固定化でき、固定化した固形物は扱いやすく、さらにアルカリ廃水は中和水あるいは水と炭酸カルシウムなどの固形物に処理・分解されるので、汚染水を全く排水しない炭素を含む伐採木材あるいは廃木材とアルカリ廃水との同時処理方法を提供することを目的とする。
【構成】大気中の炭素を吸収固定してなる伐採木材あるいは廃木材であるバイオマスを燃焼させてガス化し、伐採木材あるいは廃木材の廃棄処理を行い、ガス化した気体中からは二酸化炭素を分離回収し、回収した二酸化炭素と建設工事により発生するアルカリ廃水とを気液接触させて中和処理し、水と固形物とに分離する、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中の二酸化炭素を削減するための処理方法にかかり、特に、森林などに設けられる建設現場内で発生する廃木材や前記森林内で産業廃棄物とされる伐採木材と前記の現場内で建設工事などによって発生するアルカリ廃水を同時に処理できる炭素を含む伐採木材あるいは廃木材とアルカリ廃水との同時処理方法に関するものである。

【背景技術】
【0002】
一般的に、従来から知られている、いわゆる炭酸ガス固定化技術としては、海洋への固定化技術(特開2001−187330)などがある。
【0003】
また、建設工事などで排出されるアルカリ廃水の中和処理技術としては、炭酸ガスとの化学反応による中和処理(例えば、特開平6−91275)が一般的に知られている。
【0004】
また、炭酸ガス固定化とその有効活用技術としては、カーボンが固定化された木材を木杭として利用する、カーボンストックと軟弱地盤対策を同時に実現する技術(特開2007−205068)などが一般的に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001―187330号公報
【特許文献2】特開平6―91275号公報
【特許文献3】特開2007―205068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、たとえば、前記説明した海洋への固定化技術については、固定化に大きな労力を要するものであり、また、海洋への固定処理後においては、海水の酸性化が大きな課題として残っている。
また、従来の炭酸ガスの中和処理方法としては、石油精製などの化石燃料に関連して生成される二酸化炭素を中和処理する方法であり、いわゆるバイオマスに固定されている二酸化炭素の中和処理についてのではない。
そして、カーボンが固定化された木材を木杭として利用する、カーボンストックと軟弱地盤対策を同時に実現する技術(特開2007−205068号)は、二酸化炭素が固定されているのは化石燃料ではなく、いわゆるカーボン固定された木材そのものであるため、その減量化が困難で、その輸送も難しいものであった。
かくして、本発明は、前記従来の課題に対処すべく創案されたものであって、特に建設工事などで排出される廃木材や伐採木材が含む炭素を小規模な装置で固定化でき、いわゆる中和処理に化石燃料ではなくバイオマス(木材)から生成された二酸化炭素を用いるため、二酸化炭素の排出とはならず(カーボンニュートラル)、しかも回収した二酸化炭素は、これまた建設工事で排出されるアルカリ廃水の中和処理にも利用できるため、いわゆる廃木材や伐採木材の廃棄処理、及びその炭素固定を行いながら、中和処理をも同時に実施でき、しかも木材そのままの材質・形状で二酸化炭素を固定するのではなく、炭酸カルシウムなどの粒状物、粉状物で固定するものとなり、このように固定化した固形物は扱いやすく、さらにアルカリ廃水は中和水あるいは水と前記炭酸カルシウムなどの固形物に処理・分解されるので、汚染水を全く排水しない炭素を含む伐採木材あるいは廃木材とアルカリ廃水との同時処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による伐採木材およびアルカリ廃水の処理方法は
大気中から二酸化炭素を吸収固定してなる伐採木材あるいは廃木材であるバイオマスを燃焼させてガス化し、前記伐採木材あるいは廃木材の廃棄処理を行い、該ガス化した気体中からは二酸化炭素を分離回収し、回収した二酸化炭素と建設工事により発生するアルカリ廃水とを気液接触させて中和処理し、水と固形物とに分離する、
ことを特徴とし、
または、
大気中から二酸化炭素を吸収固定してなる伐採木材あるいは廃木材を収集すると共に、粉砕して木材チップとなし、該木材チップを燃焼炉の密閉空間内で燃焼させてガス化し、前記伐採木材あるいは廃木材の廃棄処理を行い、該ガス化した気体中からは二酸化炭素を分離回収し、回収した二酸化炭素と建設工事により発生するアルカリ廃水とを気液接触させて中和処理し、水と炭酸水素カルシウムあるいは炭酸カルシウムの固形物とに分離する、
ことを特徴とし、
または、
大気中から二酸化炭素を吸収固定してなる伐採木材あるいは廃木材を収集すると共に、粉砕して木材チップとなし、該木材チップを燃焼炉の密閉空間内で燃焼させてガス化し、前記伐採木材あるいは廃木材の廃棄処理を行い、該ガス化した気体中からは二酸化炭素を分離回収し、回収した二酸化炭素と建設工事により発生する水酸化カルシウムを含むアルカリ廃水とを気液接触させて中和処理し、水と炭酸水素カルシウムあるいは炭酸カルシウムの固形物とに分離する、
ことを特徴とし、
または、
前記燃焼炉あるいは熱交換器で発生した熱エネルギーは、燃焼に用いる木材チップ、伐採木材、廃木材の乾燥あるいは現場で使用される熱エネルギーに再利用されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明による炭素を含む伐採木材あるいは廃木材とアルカリ廃水との同時処理方法であれば、大気中の二酸化炭素を小規模な装置で固定化でき、いわゆる中和処理に化石燃料ではなくバイオマス(木材)から生成された二酸化炭素を用いるため二酸化炭素の排出とはならず(カーボンニュートラル)、しかも回収した二酸化炭素は、いわゆる建設工事で排出されるアルカリ廃水の中和処理にも利用できるため、炭素固定を行いながら、中和処理をも同時に実施でき、木材そのままの材質・形状で二酸化炭素を固定するのではなく、炭酸カルシウムなどの粒状物、粉状物で固定するものとなり、このように固定化した固形物は扱いやすく、さらにアルカリ廃水は中和水あるいは水と前記炭酸カルシウムなどの固形物に処理・分解されるので、汚染水を全く排水しない伐採木材およびアルカリ廃水の処理方法を提供できるとの優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の概略構成を説明する概略構成説明図である。
【図2】建設工事現場で伐採した伐採木材や廃木材を収集する状態を説明する説明図である。
【図3】収集した伐採木材や廃木材を木材チップに加工する状態を説明する説明図である。
【図4】木材チップを焼却炉で消却する状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を図に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0011】
図1は本発明の概略構成を説明する概略説明図である。また図2から図4は、本発明のそれぞれの工程を説明する説明図である。
【0012】
しかして、図2から理解されるように、例えば、ダム建設現場などにおいて、そのサイトで伐採した伐採木材あるいは廃木材1などを収集していく。
このような伐採、収集作業により、例えばダムの建設用の用地などが確保できるものとなる。従来はこれらサイトで伐採した伐採木材あるいは廃木材1などを例えば産業廃棄物として処理するものとなり、多大な労力とコストを要するものとなっていた。
【0013】
次に、収集した伐採木材あるいは廃木材1を加工装置14で連続的に木材チップ2に加工する(図3参照)。
燃焼炉3で燃焼させやすい状態とするためであり、また場所をとることなく、大量に処理できるようにするためである。
【0014】
次いで、加工した木材チップ2を前記燃焼炉3に連続して投入し燃焼させていく。
ここで、木材チップ2を燃焼させる燃焼炉3は、現場まで搬入するため比較的小型のものが好ましく、さらに、1000度C以上の燃焼温度での燃焼処理ができるものが好ましい。
【0015】
またいわゆる難燃性廃棄処理ができて黒煙や臭気を発することなく完全に燃焼できるタイプが好ましい。当該焼却炉3及びそれに伴う焼却設備は、様々な法規制をクリアするばかりではなく、できれば固形物や汚泥、液体など様々な廃棄処理できるタイプとするものとする。
しかして、前記木材チップ2を前記燃焼炉3に投入して燃焼させる際には、高熱が発生するが、当該発生する高熱(熱エネルギー)を利用し、次に燃焼する木材チップ2、あるいは木材チップ2に加工する前の伐採木材あるいは廃木材1を乾燥するため、あるいは現場で立設された事務所などの冷暖房施設などに用いる熱エネルギーに用いるなど再利用するのが好ましい。
【0016】
続いて、燃焼により発生した高温の二酸化炭素を含む燃焼排ガス4を熱交換器5に導入し、二酸化炭素を含む高熱の燃焼排ガス4を冷却して、その水分を飛ばす作業が行われる。
この際に、その作業で発生する熱エネルギーをも取り出し、当該熱エネルギーを前記の焼却炉3のときと同様に、次に燃焼する木材チップ2の乾燥などの熱利用処理に使用することが考えられる。
続いて、冷却された二酸化炭素を含む燃焼排ガス4を回収装置6内へ回収する。
【0017】
該回収装置6は、例えば、いわゆる特殊ガス分離装置の様な構成のもので、例えば吸着剤を用いたPSA方式により、混合ガス、すなわち燃焼排ガス4より対象のガス、ここでは二酸化炭素を分離回収するものとなる。
このように、該回収装置6は、主に、SF6ガス、二酸化炭素(炭酸ガス)、炭化水素ガスなどの温室効果ガスを分離回収するものとなる。
【0018】
上記のようにして、分離回収された二酸化炭素7は、次に中和処理装置8内に導入される。
該中和処理装置8内では、二酸化炭素7が吸い込まれて、中和処理が行われるが、この中和処理の際には、建設工事で発生する現場のアルカリ廃水9を使用するものとする。ここで、このアルカリ廃水9は、例えば、ダム建設工事現場などでのコンクリート打設工事などにより生じたいわゆる水酸化カルシウムを含むアルカリ廃水9が使用されるものである。そしてそのpH値は10以上を示すものであり、このpH値10以上の値を示すアルカリ廃水9の処分もダム建設現場など建設現場では大きな課題となっていたのである。
【0019】
従って本発明では、ダム建設現場などにおいて、そのサイトで伐採された伐採木材あるいは廃木材1の処理と、ダムの建設工事で発生する現場のアルカリ廃水9との双方の処理を同時に行えるものとした。
そして、中和処理装置8内で、気体である二酸化炭素7と液体であるアルカリ廃水9とを気液接触させ、中和処理を行うのである。
【0020】
ここで、図1において符号10は、ガス注入調節装置であり、中和処理装置8内に導入される二酸化炭素7の量を調節するように構成される。すなわち、中和処理装置8では、pH値が7,8程度の無害な処理水11を排出することになるが、この排出前に、pH値がpH値検出装置13によって検出され、pH値が適正の値でないときには、適正な値になるまで中和処理されるものとなる。
【0021】
従って、ガス注入調節装置10は、前記処理水11のpH値を参照して、導入する二酸化炭素7の量を調節しているのである。
しかして、中和処理がなされると、最終的には、単なる無害な中和水である処理水11と炭酸カルシウムの固形物12とが排出されて、完全な二酸化炭素7の処理とアルカリ廃水9の同時処理行えるものとなる。
ここで、前記中和処理装置としては、例えば、いわゆる自吸式小型pH中和処理装置などが使用されるものである。
【符号の説明】
【0022】
1 伐採木材あるいは廃木材
2 木材チップ
3 燃焼炉
4 燃焼排ガス
5 熱交換器
6 回収装置
7 二酸化炭素
8 中和処理装置
9 アルカリ廃水
10 ガス注入調整装置
11 処理水
12 固形物
13 pH値検出装置
14 加工装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素を吸収固定してなる伐採木材あるいは廃木材であるバイオマスを燃焼させてガス化し、前記伐採木材あるいは廃木材の廃棄処理を行い、該ガス化した気体中からは二酸化炭素を分離回収し、回収した二酸化炭素と建設工事により発生するアルカリ廃水とを気液接触させて中和処理し、水と固形物とに分離する、
ことを特徴とするバイオマスとアルカリ廃水との同時処理方法。
【請求項2】
炭素を吸収固定してなる伐採木材あるいは廃木材を収集すると共に、粉砕して木材チップとなし、該木材チップを燃焼炉の密閉空間内で燃焼させてガス化し、前記伐採木材あるいは廃木材の廃棄処理を行い、該ガス化した気体中からは二酸化炭素を分離回収し、回収した二酸化炭素と建設工事により発生するアルカリ廃水とを気液接触させて中和処理し、水と炭酸水素カルシウムあるいは炭酸カルシウムの固形物とに分離する、
ことを特徴とする伐採木材あるいは廃木材とアルカリ廃水との同時処理方法。
【請求項3】
炭素を吸収固定してなる伐採木材あるいは廃木材を収集すると共に、粉砕して木材チップとなし、該木材チップを燃焼炉の密閉空間内で燃焼させてガス化し、前記伐採木材あるいは廃木材の廃棄処理を行い、該ガス化した気体中からは二酸化炭素を分離回収し、回収した二酸化炭素と建設工事により発生する水酸化カルシウムを含むアルカリ廃水とを気液接触させて中和処理し、水と炭酸水素カルシウムあるいは炭酸カルシウムの固形物とに分離する、
ことを特徴とする伐採木材あるいは廃木材とアルカリ廃水との同時処理方法。
【請求項4】
前記燃焼炉あるいは熱交換器で発生した熱エネルギーは、燃焼に用いる木材チップ、伐採木材、廃木材の乾燥あるいは現場で使用される熱エネルギーに再利用される、
ことを特徴とする請求項2または請求項3記載の伐採木材あるいは廃木材とアルカリ廃水との同時処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−188248(P2010−188248A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33530(P2009−33530)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)
【Fターム(参考)】