説明

伝動ベルト

【課題】心線と接着ゴム層との間の接着力が高く、耐熱性にすぐれ、動的寿命を改善した伝動ベルトを提供する。
【解決手段】圧縮ゴム層、接着ゴム層と接着ゴム層内にレゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)による接着処理層を有する繊維コードからなる心線が埋設され、RFLにおけるラテックスのゴム成分が固形分にてクロロスルホン化ポリエチレン及びアルキル化クロロスルホン化ポリエチレンから選ばれる少なくとも1種20〜80重量%とビニルピリジンラテックス、カルボキシル変性ビニルピリジンラテックス、クロロプレンラテックス、2,3−ジクロロブタジエンラテックス、ニトリルゴムラテックス、カルボキシル基含有水素添加ニトリルゴムラテックス及びスチレン−ブタジエンゴムラテックスから選ばれる少なくとも1種80〜20重量%とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動ベルトに関し、詳しくは、圧縮ゴム層と接着ゴム層とを有し、これら圧縮ゴム層と接着ゴム層とがいずれもエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム加硫物からなると共に、上記接着ゴム層内に繊維コードからなる心線が接着され、埋設されてなり、上記心線と接着ゴム層との動的接着性にすぐれており、従って、動的寿命の改善された伝動ベルトに関する。更に、本発明は、そのような伝動ベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、VベルトやVリブドベルト等のような伝動ベルトは、圧縮ゴム層と接着ゴム層とを有し、この接着ゴム層内に繊維コードからなる心線が接着、埋設されており、ベルトの上面又は下面又は側面を含む全周面は、必要に応じて、ゴム引き帆布が接着されている。
【0003】
このような伝動ベルトにおいて、従来、一般に、圧縮ゴム層にはクロロプレンゴムや、水素化ニトリルゴムとクロロスルホン化ポリエチレンゴムとの混合物の加硫物が用いられているが、近年、伝動ベルトの廃棄に伴う環境保護の観点から、伝動ベルトの素材ゴムにも、脱塩素化の要請に基づいて、圧縮ゴム層と共に、接着ゴム層にも、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムを用いることが試みられている。
【0004】
しかし、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムは、既に知られているように、ポリエステル、ナイロン、アラミド繊維等のコードからなる心線に対して接着性が十分でなく、従って、従来、例えば、繰り返し屈曲の下に動的特性が重要である伝動ベルトに用いることは困難であるとされている。
【0005】
そこで、圧縮ゴム層と接着ゴム層とが共にエチレン−α−オレフィン−ジエンゴムからなり、ポリエステル等の繊維コードからなる心線が接着ゴム層内に接着され、埋設されている伝動ベルトにおいて、クロロスルホン化ポリエチレンやアルキル化クロロスルホン化ポリエチレンをゴム成分として有するラテックスをラテックス成分として含むレゾルシン−ホルマリン−ラテックス(以下、RFLという。)にて上記心線を接着処理することによって、心線と接着ゴム層層との間にすぐれた動的接着力を有せしめることができ、かくして、動的特性にすぐれた伝動ベルトを得ることができることが知られている(特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、このような伝動ベルトにおいても、その製造に際して、加硫時の温度や時間にばらつき等があったとき、特に、高温で長時間にわたって加硫がなされたときや、また、伝動ベルトが高温環境下で長時間使用されたときに、心線とそのRFL処理層との界面で接着力の低下が起こりやすい問題がある。このことは、クロロスルホン化ポリエチレンやアルキル化クロロスルホン化ポリエチレンが極性が低いので、加硫時にゴム層中の加硫促進剤や老化防止剤から発生するアミン化合物、ラジカル、水分等を透過させやすく、そのために、心線の表面層や心線−接着処理層の界面の結合を切断するからであるとみられる。
【特許文献1】特開2001−3991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、圧縮ゴム層と接着ゴム層とが共にエチレン−α−オレフィン−ジエンゴムからなり、接着ゴム層内に心線が接着、埋設されている伝動ベルトにおける上述したような問題を解決するためになされたものであって、心線と接着ゴム層との間の接着力を高く、耐熱性にすぐれるものとし、かくして、動的寿命を改善した伝動ベルトを提供することを目的とする。また、本発明は、そのような伝動ベルトの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、共にエチレン−α−オレフィン−ジエンゴムからなる圧縮ゴム層と接着ゴム層とが加硫接着され、上記接着ゴム層内にレゾルシン−ホルマリン−ラテックスによる接着処理層を有する繊維コードからなる心線が接着、埋設されている伝動ベルトにおいて、上記レゾルシン−ホルマリン−ラテックスにおけるラテックスのゴム成分が固形分にてクロロスルホン化ポリエチレン及びアルキル化クロロスルホン化ポリエチレンから選ばれる少なくとも1種20〜80重量%とビニルピリジンラテックス、カルボキシル変性ビニルピリジンラテックス、クロロプレンラテックス、2,3−ジクロロブタジエンラテックス、ニトリルゴムラテックス、カルボキシル基含有水素添加ニトリルゴムラテックス及びスチレン−ブタジエンゴムラテックスから選ばれる少なくとも1種80〜20重量%とからなることを特徴とする伝動ベルトが提供される。
【0009】
更に、本発明によれば、共にエチレン−α−オレフィン−ジエンゴムからなる圧縮ゴム層と接着ゴム層とが加硫接着され、上記接着ゴム層内にレゾルシン−ホルマリン−ラテックスにて接着処理された繊維コードからなる心線が接着、埋設されている伝動ベルトの製造方法において、ラテックスのゴム成分が固形分にてクロロスルホン化ポリエチレン及びアルキル化クロロスルホン化ポリエチレンから選ばれる少なくとも1種20〜80重量%とビニルピリジンラテックス、カルボキシル変性ビニルピリジンラテックス、クロロプレンラテックス、2,3−ジクロロブタジエンラテックス、ニトリルゴムラテックス、カルボキシル基含有水素添加ニトリルゴムラテックス及びスチレン−ブタジエンゴムラテックスから選ばれる少なくとも1種80〜20重量%とからなるレゾルシン−ホルマリン−ラテックスを心線に含浸せ、加熱乾燥して、接着処理し、このように、接着処理した心線を接着ゴム層を形成するための未加硫エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムシート間に載置し、この未加硫エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムシートを圧縮ゴム層を形成するための未加硫エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムシートに積層し、このようにして得られた積層物を加圧加熱し、加硫することを特徴とする伝動ベルトの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明による伝動ベルトにおいては、圧縮ゴム層と接着ゴム層とが共にエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム加硫物からなり、上記接着ゴム層内に繊維コードからなる心線がRFLにて接着処理されて、接着、埋設されている。
【0011】
一般に、接着ゴム層中にレゾルシン−ホルマリン−ラテックスで接着処理した心線を埋設した後、圧縮ゴム層と接着ゴム層とを加硫接着する際に、特に、接着ゴム層からアミン化合物やラジカル化合物、水等が生じ、これらが心線上のRFLによる接着処理層を透過して、心線の表面層の繊維分子を切断したり、繊維と上記接着処理層の間の接着を劣化させるといわれている。
【0012】
ここに、本発明によれば、ラテックスのゴム成分が固形分にてクロロスルホン化ポリエチレン及びアルキル化クロロスルホン化ポリエチレンから選ばれる少なくとも1種20〜80重量%とビニルピリジンラテックス、カルボキシル変性ビニルピリジンラテックス、クロロプレンラテックス、2,3−ジクロロブタジエンラテックス、ニトリルゴムラテックス、カルボキシル基含有水素添加ニトリルゴムラテックス及びスチレン−ブタジエンゴムラテックスから選ばれる少なくとも1種80〜20重量%とからなるRFLにて心線を接着処理することによって、上記RFLによる接着処理層の有するピリジル基、カルボキシル基、塩素、ニトリル基、フェニル基等に圧縮ゴム層と接着ゴム層との加硫接着時にゴム層から生じるアミン化合物やラジカル化合物等を捕獲させ、それらの心線と接着処理層との界面への透過を妨げて、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムと心線との加硫接着性を確保すると共に、ラテックス中のクロロスルホン化ポリエチレン及びアルキル化クロロスルホン化ポリエチレンによって、RFLによる接着処理層とゴム層との間の接着性を確保し、かくして、本発明によれば、伝動ベルトの製造に際して、圧縮ゴム層と接着ゴム層とを長時間にわたって加硫接着しても、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムと心線との間に強固な接着を維持せしめることができ、しかも、高温環境下における伝動ベルトの走行時にも、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムと心線との間にそのような強固な接着力を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において、伝動ベルトは、Vリブドベルト及びVリブドベルトを含むものとする。
【0014】
図1は、本発明による伝動ベルトの一例であるVリブドベルトの横断面図を示し、ベルトの上面は、単層又は複数層のゴム引き帆布1にて形成されており、これに隣接して、接着ゴム層3が積層されている。この接着ゴム層には、繊維コードからなる低伸度の複数の心線2が間隔を置いてベルト長手方向に延びるように埋設されている。更に、この接着ゴム層に隣接して、圧縮ゴム層5が積層されている。この圧縮ゴム層には、ベルト長手方向に延びるように相互に間隔を有するリブ4が形成されている。多くの場合、圧縮ゴム層5には、その耐側圧性を高めるために、ベルトの幅方向に短繊維6が配向して分散されている。
【0015】
図2は、本発明による伝動ベルトの一例であるVベルトの横断面図を示し、ベルトの上面は、上記と同様に、単層又は複数層のゴム引き帆布1にて形成されており、必要に応じて、上ゴム層7が積層され、これに隣接して、上記と同様に心線2が埋設された接着ゴム層3が積層され、更に、これに隣接して、圧縮ゴム層5が積層されている。多くの場合、圧縮ゴム層5には、その耐側圧性を高めるために、ベルトの幅方向に短繊維6が配向して分散されている。圧縮ゴム層は、通常、単層又は複数層のゴム引き帆布1にて被覆されている。
【0016】
本発明による伝動ベルトは、上述したように、圧縮ゴム層と接着ゴム層とが加硫接着されていると共に、上記接着ゴム層内に繊維コードからなる心線がRFLにて接着処理されて、接着、埋設されており、必要に応じて、その上面又は下面又は側面を含む全周面にゴム引き帆布が接着されており、上記圧縮ゴム層と接着ゴム層が共にエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム加硫物からなる。
【0017】
本発明において、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムとしては、エチレンを除くα−オレフィンとエチレンとジエン(非共役ジエン)の共重合体からなるゴム、それらの一部ハロゲン置換物、又はこれらの2種以上の混合物が用いられ、上記エチレンを除くα−オレフィンとしては、好ましくは、プロピレン、ブテン、ヘキセン及びオクテンから選ばれる少なくとも1種が用いられる。なかでも、好ましいエチレン−α−オレフィン−ジエンゴムは、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、これらの一部ハロゲン置換物、特に、一部塩素置換物、又はそれらの2種以上の混合物である。
【0018】
特に、本発明においては、エチレン−プロピレン−ジエンゴムとして、例えば、エチレン50〜80重量%、プロピレン50〜20重量%、非共役ジエンがエラストマーのヨウ素価として50以下、好ましくは、4〜40、ムーニー粘度ML1+4 (100℃)が20〜120程度のものが好ましく用いられる。上記ジエン成分としては、特に、限定されるものではないが、通常、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン又はエチリデンノルボルネン等の非共役ジエンが適宜に用いられる。
【0019】
本発明による伝動ベルトにおいては、心線として、ポリエステル、アラミド、ナイロン又はビニロン繊維からなるコードが用いられるが、なかでも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等からなるポリエステル繊維からなるコード、ナイロン6,6(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ナイロン6(ポリカプロアミド)、ナイロン6,10(ポリヘキサメチレンセバテート)等のナイロン繊維からなるコード、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリメタフェニレンイソフタルアミド、コポリ(パラフェニレン/3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド)等のアラミド繊維からなるコードが好ましく用いられる。
【0020】
本発明によれば、このような心線は、RFLにて接着処理されて、後述するように、接着ゴム層と圧縮ゴム層とを加硫接着する際に同時に接着ゴム層中に接着され、埋設されている。ここに、本発明によれば、RFLは、そのラテックスのゴム成分が固形分にてクロロスルホン化ポリエチレン及びアルキル化クロロスルホン化ポリエチレンから選ばれる少なくとも1種20〜80重量%とビニルピリジンラテックス、カルボキシル変性ビニルピリジンラテックス、クロロプレンラテックス、2,3−ジクロロブタジエンラテックス、ニトリルゴムラテックス、カルボキシル基含有水素添加ニトリルゴムラテックス及びスチレン−ブタジエンゴムラテックスから選ばれる少なくとも1種80〜20重量%とからなる。以下、本発明においては、クロロスルホン化ポリエチレン及びアルキル化クロロスルホン化ポリエチレンから選ばれる少なくとも1種を含むラテックスを第1のラテックスといい、ビニルピリジンラテックス、カルボキシル変性ビニルピリジンラテックス、クロロプレンラテックス、2,3−ジクロロブタジエンラテックス、ニトリルゴムラテックス、カルボキシル基含有水素添加ニトリルゴムラテックス及びスチレン−ブタジエンゴムラテックスから選ばれる少なくとも1種を含むラテックスを第2のラテックスということがある。
【0021】
クロロスルホン化ポリエチレンゴムは、ポリエチレンに塩素と二酸化硫黄とを反応させて得られるゴムであって、加硫点として、クロロスルホニル基を有する。通常、塩素含有量が15〜45重量%、好ましくは、25〜35重量%の範囲にあり、硫黄含有量が0.5〜2.5重量%の範囲にある。また、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴムは、上記クロロスルホン化ポリエチレンゴムにおいて、極性基である塩素の導入量を低減し、代わりにアルキル基を導入して、分子の結晶性を乱して、低温特性(耐寒性)とゴム弾性のバランスを図ったものであって、塩素量は、通常、25〜30重量%の範囲にあり、硫黄量は1重量%以下、好ましくは、0.6〜0.8重量%の範囲である。
【0022】
RFLは、通常、レゾルシンとホルマリンとをレゾルシン/ホルマリンモル比1/3〜3/1にて塩基性触媒の存在下に縮合させて、レゾルシン−ホルマリン樹脂(レゾルシン−ホルマリン初期縮合物、以下、RFという。)の5〜80重量%濃度の水溶液を調製し、これをゴムラテックスと混合することによって得られる水性分散液である。RFLにおいて、固形分濃度は、特に限定されるものではないが、通常、10〜50重量%の範囲である。本発明によれば、RFLは、必要に応じて、RFLにクロロフェノール−レゾルシン系の縮合物を含有していてもよい。
【0023】
本発明において、心線の接着処理に用いるRFLは、上述したように、第1と第2のラテックスとの混合物からなり、従って、第1と第2のラテックスとの混合物は、これを調製した後、長期間にわたって放置すれば、相互に分離して、心線を処理しても、心線に所期の接着性を与えることができないおそれがある。そこで、本発明において用いる第1と第2のラテックスとの混合物からなるRFLは、相互の相溶化剤として、界面活性剤を含有することが望ましい。界面活性剤は、ラテックス粒子(ゴム成分)の表面に付着し、同種のラテックス粒子の凝集を防止し、また、異種のラテックス粒子を均一に分散させ、かくして、安定なRFLを得ることができる。
【0024】
本発明において用いるRFLの調製に際して、界面活性剤は、どの段階で加えてもよい。しかし、一例を挙げれば、第1と第2のラテックスを所定の重量比にて混合した後、水を加えて、所定の固形分濃度に希釈するときに界面活性剤を加え、この後、攪拌しながら、熟成することによって、第1と第2のラテックスと共に界面活性剤を含んで、安定なRFLを得ることができる。
【0025】
上記界面活性剤としては、カチオン、アニオン、両性及びノニオン界面活性剤のいずれでも用いることができ、カチオン界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩等を例示することができ、アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩等を例示することができ、ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステルソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等を例示することができる。しかし、本発明によれば、用いるラテックスのpHが相互に大幅に相違する場合には、両性又はノニオン界面活性剤が好ましく用いられ、特に、ノニオン界面活性剤が好ましく用いられる。
【0026】
このような界面活性剤は、通常、RFLの固形分100重量部に対して、0.005〜0.5重量部の範囲で用いられる。RFLの固形分100重量部に対して0.005重量部よりも少ないときは、相溶化剤としての効果が十分でなく、他方、RFLの固形分100重量部に対して、0.5重量部よりも多いときは、RFL処理した心線の表面に浸出して、RFLによる接着処理の効果を阻害するおそれがある。本発明によれば、界面活性剤の量は、好ましくは、RFLの固形分100重量部に対して、0.01〜0.5重量部の範囲である。
【0027】
このようなRFLによる心線の接着処理は、常法に従えばよく、例えば、心線をRFLに浸漬して、心線にRFLを含浸させた後、200〜300℃、好ましくは、200〜250℃の範囲の温度に加熱し、乾燥して、RFLの固形分(即ち、RFとゴム成分)を不溶化して心線に定着させることをいう。本発明においては、このようなRFLによる接着処理は、必要に応じて、二段以上の多段に行ってもよい。
【0028】
このように、本発明に従って、上述したような第1と第2のラテックスの混合物を含むRFLにて心線を接着処理し、これを接着ゴム層内に埋設、接着してなる伝動ベルトとすることによって、その製造に際して、心線を接着ゴム層内に加硫接着すると共に、圧縮ゴム層と接着ゴム層とを一体に加硫接着する際に、心線上の第1のラテックスのゴム成分にて心線と接着ゴム層との強固な接着を確保すると共に、心線とRFL処理層との間の接着に有害な影響を及ぼす種々の成分、代表的には、アミン化合物、ラジカル化合物、水分等を第2のラテックスの極性の高いゴム成分にて捕獲し、心線側に透過するのを妨げて、心線とRFLとの間の上記接着性を維持する。かくして、本発明によれば、伝動ベルトの製造に際して、圧縮ゴム層と接着ゴム層とを長時間にわたって加硫接着しても、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムと心線との間に強固な接着を維持せしめることができ、しかも、高温環境下における伝動ベルトの走行時にも、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムと心線との間にそのような強固な接着力を維持することができる。
【0029】
本発明によれば、RFLにある種の金属酸化物と含硫黄加硫促進剤とを含有させることによって、心線と接着ゴム層との間の加硫接着のための時間を短縮することができ、かくして、伝動ベルトの生産性を高めることができる。
【0030】
上記金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉛又はこれらの2種以上の混合物が好ましく用いられ、特に、酸化亜鉛が好ましく用いられる。また、含硫黄加硫促進剤としては、チアゾール類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類又はこれらの2種以上の混合物が好ましく用いられる。
【0031】
上記チアゾール類としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール(M)やその塩類(例えば、亜鉛塩、ナトリウム塩、シクロヘキシルアミン塩等)、ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)等を挙げることができ、スルフェンアミド類としては、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CZ)等を挙げることができ、チウラム類としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TT)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(TRA)等を挙げることができ、また、ジチオカルバミン酸塩類としては、例えば、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(TP)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(PZ)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(EZ)等を挙げることができる。
【0032】
RFLへの配合割合は、RFL中のラテックス成分の固形分100重量部に対して、金属酸化物は、通常、0.1〜10重量部の範囲であり、含硫黄加硫促進剤は、通常、0.1〜20重量部の範囲である。
【0033】
本発明においては、心線をRFLにて接着処理する前に、イソシアネート化合物又はエポキシ化合物を含む溶液に心線を浸漬した後、必要に応じて、加熱乾燥することによって、心線に前処理を行なってもよい。
【0034】
上記イソシアネート化合物としては、特に、限定されるものではないが、例えば、トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が好ましく用いられる。また、このようなイソシアネート化合物にトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のように分子内に活性水素を2つ以上有する化合物を反応させて得られる多価アルコール付加ポリイソシアネートや、上記イソシアネート化合物にフェノール類、第3級アルコール類、第2級アミン類等のブロック化剤を反応させて、イソシアネート化合物のイソシアネート基をブロックしたブロック化ポリイソシアネートも、イソシアネート化合物として好適に用いることができる。
【0035】
他方、エポキシ化合物も、分子内に2つ以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物であれば、特に、限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール等の多価アルコールや、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコールと、エピクロロヒドリンのようなハロゲン含有エポキシ化合物との反応生成物や、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルエタン、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂等の多価フェノール類やフェノール樹脂とエピクロロヒドリンのようなハロゲン含有エポキシ化合物との反応生成物が好ましく用いられる。
【0036】
このようなイソシアネート化合物やエポキシ化合物の溶液を形成するための溶媒も、特に、限定されるものではなく、用いるイソシアネート化合物やエポキシ化合物に応じて、水や適宜の有機溶媒が用いられる。通常、イソシアネート化合物は化学的に非常に活性であるので、非水系溶液とされるが、しかし、例えば、前述したように、フェノール類等にてイソシアネート基をブロックしたものは、水溶液としても用いることができる。有機溶媒としては、通常、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトン、酢酸エチル、酢酸アミル等の脂肪族カルボン酸アルキルエステル等が好適に用いられる。このような溶液におけるイソシアネート化合物やエポキシ化合物の濃度は、通常、5〜50重量%の範囲である。
【0037】
更に、本発明においては、心線をRFLで接着処理した後、ゴム糊で後処理してもよい。この後処理に用いるゴム糊は、通常、圧縮ゴム層及び接着ゴム層を形成するためのエチレン−α−オレフィン−ジエンゴムを適宜の有機溶媒に溶解して溶液としたものであり、心線をこの溶液に浸漬した後、加熱乾燥すればよい。
【0038】
本発明において、圧縮ゴム層及び接着ゴム層を形成するために用いるエチレン−α−オレフィン−ジエンゴムは、必要に応じて、カーボンブラック、シリカ、ガラス繊維、セラミックス繊維等の増強剤、炭酸カルシウム、タルク等の充填剤、可塑剤、安定剤、加工助剤、着色剤等の通常のゴム工業で用いられる種々の薬剤を含有してなる配合物として用いられる。
【0039】
圧縮ゴム層や接着ゴム層を形成するためのエチレン−α−オレフィン−ジエンゴム配合物は、エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムを、必要に応じて、上述したような薬剤と共に、ロール、バンバリー等、通常の混合手段を用いて均一に混合することによって得ることができる。
【0040】
本発明による伝動ベルトは、従来より知られている通常の方法によって製造することができる。例えば、Vリブドベルトに例をとれば、表面が平滑な円筒状の成形ドラムの周面に1枚又は複数枚のゴムコート帆布と接着ゴム層のための未加硫シートを巻き付けた後、この上に心線を螺旋状にスピニングし、更に、その上に接着ゴム層のための未加硫シートを巻き付けた後、圧縮ゴム層のための未加硫シートを巻き付けて積層体とし、これを加硫缶中にて加熱加圧し、加硫して、環状物を得る。次に、この環状物を駆動ロールと従動ロールとの間に掛け渡して、所定の張力の下で走行させながら、これに研削ホイールにて表面に複数のリブを形成する。この後、この環状物を更に別の駆動ロールと従動ロールとの間に掛け渡して走行させながら、所定の幅に裁断すれば、製品としてのVリブドベルトを得ることができる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。以下においては、ベルトの接着ゴム層のための配合物として、次の組成を有するものを用いた。
【0042】
エチレン−プロピレン−ジエンゴム1) 100重量部
HAFカーボン(三菱化学(株)製) 50重量部
シリカ(トクヤマ(株)製トクシールGu) 20重量部
パラフィンオイル(日本サン化学(株)製サンフレックス2280) 20重量部
加硫剤(細井化学(株)製オイル硫黄) 3重量部
加硫促進剤(大内新興化学(株)製EP−1502)) 2.5重量部
加硫助剤(花王(株)製ステアリン酸) 1重量部
加硫助剤(堺化学工業(株)製酸化亜鉛) 5重量部
老化防止剤(大内新興化学(株)製2243)) 2重量部
老化防止剤(大内新興化学(株)製MB4)) 1重量部
粘着付与剤(日本ゼオン(株)製石油樹脂クイントンA−100) 5重量部
短繊維(綿粉) 2重量部
【0043】
また、ベルトの圧縮ゴム層のための配合物として、次の組成を有するものを用いた。
【0044】
エチレン−プロピレン−ジエンゴム1) 100重量部
HAFカーボン(三菱化学(株)製) 70重量部
パラフィンオイル(日本サン化学(株)製サンフレックス2280) 20重量部
加硫剤(細井化学(株)製オイル硫黄) 1.6重量部
加硫促進剤(大内新興化学(株)製EP−1502)) 2.8重量部
加硫促進剤(大内新興化学(株)MSA5)) 1.2重量部
加硫助剤(花王(株)製ステアリン酸) 1重量部
加硫助剤(堺化学工業(株)製酸化亜鉛) 5重量部
老化防止剤(大内新興化学(株)製2243)) 2重量部
老化防止剤(大内新興化学(株)製MB4)) 1重量部
短繊維(66ナイロン繊維、6de×1mm) 22重量部
【0045】
(注)1)エチレン含量56重量%、プロピレン含量36.1重量%、エチリデンノルボ ルネン(ENB)5.5重量%、ジシクロペンタジエン(DCPD)2.4重 量%、ムーニー粘度ML1+4 (100℃)60
2)加硫促進剤DM(ジベンゾチアジスルフィド)とTT(テトラメチルチウラム ジスルフィド)とEZ(ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛との混合物)
3)TMDQ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)
4)2−メルカプトベンツイミダゾール
5)N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
【0046】
RFLの調製
心線の接着処理に用いたRFL(1)から(10)は次のようにして調製した。
【0047】
RFL(1)
(ラテックスとしてクロロスルホン化ポリエチレン(CSM)ラテックスのみを含むRFL)
レゾルシン7.31重量部とホルマリン(37重量%濃度)10.77重量部とを混合、攪拌し、これに水酸化ナトリウム水溶液(固形分0.33重量部)を加えて、攪拌し、この後、水160.91重量部を加え、5時間熟成して、レゾルシン−ホルマリン樹脂(レゾルシン−ホルマリン初期縮合物(これをRFという。)、R/F比は0.5)の水溶液を調製した。このRF水溶液にCSMラテックス(固形分40%)をRF/L比が0.25になるように固形分にて45.2重量部を加えた後、水を加えて、固形分が20重量%となるように調整した。攪拌しながら、12時間熟成して、RFL(1)を調製した。
【0048】
RFL(2)
(CSMラテックスと2,3−ジクロロブタジエン(DCB)ラテックスを含むRFL) レゾルシン7.31重量部とホルマリン(37重量%濃度)10.77重量部とを混合、攪拌し、これに水酸化ナトリウム水溶液(固形分0.33重量部)を加えて、攪拌し、この後、水160.91重量部を加え、5時間熟成して、R/F比が0.5のRF水溶液を調製した。このRF水溶液にCSMラテックス(固形分40%)とDCBラテックス(固形分32%)を固形分比率5/5にてRF/L比が0.25になるように固形分にて合計45.2重量部を加えた後、水を加えて、固形分が20重量%となるように調整した。攪拌しながら、12時間熟成して、RFL(2)を調製した。
【0049】
RFL(3)
(CSMラテックスとカルボキシル化ビニルピリジンラテックスを含むRFL)
レゾルシン7.31重量部とホルマリン(37重量%濃度)10.77重量部とを混合、攪拌し、これに水酸化ナトリウム水溶液(固形分0.33重量部)を加えて、攪拌し、この後、水160.91重量部を加え、5時間熟成して、R/F比が0.5のRF水溶液を調製した。このRF水溶液にCSMラテックス(固形分40%)とビニルピリジン−エチレン性不飽和カルボン酸−スチレン−ブタジエン共重合体(カルボキシル化VP)ラテックス(日本ゼオン(株)製LX603、固形分36%)を固形分比率6/4にてRF/L比が0.25になるように固形分にて合計45.2重量部を加えた後、水を加えて、固形分が20重量%となるように調整した。攪拌しながら、12時間熟成して、RFL(3−1)を調製した。
【0050】
同様にして、上記RF水溶液にCSMラテックス(固形分40%)とカルボキシル化VPラテックス(日本ゼオン(株)製LX603、固形分36%)を固形分比率2/8にてRF/L比が0.25になるように固形分にて合計45.2重量部を加えた後、水を加えて、固形分が20重量%となるように調整した。攪拌しながら、12時間熟成して、RFL(3−2)を調製した。
【0051】
RFL(4)
(CSMラテックスとビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(VP)ラテックスを含むRFL)
レゾノレシン7.31重量部とホルマリン(37重量%濃度)10.77重量部とを混合、攪拌し、これに水酸化ナトリウム水溶液(固形分0.33重量部)を加えて、攪拌し、この後、水160.91重量部を加え、5時間熟成して、R/F比が0.5のRF水溶液を調製した。このRF水溶液にCSMラテックス(固形分40%)とVPラテックス(JSR(株)製JSR0650、固形分40%)を固形分比率6/4にてRF/L比が0.25になるように固形分にて合計45.2重量部を加えた後、水を加えて、固形分が20重量%となるように調整した。攪拌しながら、12時間熟成して、RFL(4−1)を調製した。
【0052】
同様にして、上記RF水溶液にCSMラテックス(固形分40%)とVPラテックス(JSR(株)製JSR0650、固形分40%)を固形分比率2/8にてRF/L比が0.25になるように固形分にて合計45.2重量部を加えた後、水を加えて、固形分が20重量%となるように調整した。攪拌しながら、12時間熟成して、RFL(4−2)を調製した。
【0053】
RFL(5)
(CSMラテックスとDCBラテックスを含むRFL)
レゾルシン7.31重量部とホルマリン(37重量%濃度)10.77重量部とを混合、攪拌し、これに水酸化ナトリウム水溶液(固形分0.33重量部)を加えて、攪拌し、この後、水160.91重量部を加え、5時間熟成して、R/F比が0.25のRF水溶液を調製した。このRF水溶液にCSMラテックス(固形分40%)とDCBラテックス(東ソー(株)製LH430、固形分32%)を固形分比率6/4にてRF/L比が0.25になるように固形分にて合計45.2重量部を加えた後、水を加えて、固形分が20重量%となるように調整した。攪拌しながら、12時間熟成して、RFL(5)を調製した。
【0054】
RFL(6)
(CSMラテックスとクロロプレンゴム(CR)ラテックスを含むRFL)
レゾルシン7.31重量部とホルマリン(37重量%濃度)10.77重量部とを混合、攪拌し、これに水酸化ナトリウム水溶液(固形分0.33重量部)を加えて、攪拌し、この後、水160.91重量部を加え、5時間熟成して、R/F比が0.5のRF水溶液を調製した。このRF水溶液にCSMラテックス(固形分40%)とクロロプレンゴム(CR)ラテックス(DDEジャパン(株)製CR842、固形分50%)を固形分比率6/4にてRF/L比が0.25になるように固形分にて合計45.2重量部を加えた後、水を加えて、固形分が20重量%となるように調整した。攪拌しながら、12時間熟成して、RFL(6)を調製した。
【0055】
RFL(7)
(CSMラテックスとニトリルゴム(NBR)ラテックスを含むRFL)
レゾルシン7.31重量部とホルマリン(37重量%濃度)10.77重量部とを混合、攪拌し、これに水酸化ナトリウム水溶液(固形分0.33重量部)を加えて、攪拌し、この後、水160.91重量部を加え、5時間熟成して、R/F比が0.5のRF水溶液を調製した。このRF水溶液にCSMラテックス(固形分40%)とNBRラテックス(日本ゼオン(株)製ニポール1562、固形分40%)を固形分比率6/4にてRF/L比が0.25になるように固形分にて合計45.2重量部を加えた後、水を加えて、固形分が20重量%となるように調整した。攪拌しながら、12時間熟成して、RFL(7)を調製した。
【0056】
RFL(8)
(CSMラテックスとスチレン−ブタジエンゴム(SBR)ラテックスを含むRFL)
レゾルシン7.31重量部とホルマリン(37重量%濃度)10.77重量部とを混合、攪拌し、これに水酸化ナトリウム水溶液(固形分0.33重量部)を加えて、攪拌し、この後、水160.91重量部を加え、5時間熟成して、R/F比が0.5のRF水溶液を調製した。このRF水溶液にCSMラテックス(固形分40%)とSBRラテックス(日本A&L(株)製J9049、固形分40%)を固形分比率6/4にてRF/L比が0.25になるように固形分にて合計45.2重量部を加えた後、水を加えて、固形分が20重量%となるように調整した。攪拌しながら、12時間熟成して、RFL(8)を調製した。
【0057】
RFL(9)
(CSMラテックスとカルボキシル化VPラテックスを含むRFL)
レゾルシン7.31重量部とホルマリン(37重量%濃度)10.77重量部とを混合、攪拌し、これに水酸化ナトリウム水溶液(固形分0.33重量部)を加えて、攪拌し、この後、水160.91重量部を加え、5時間熟成して、R/F比が0.5のRF水溶液を調製した。このRF水溶液にCSMラテックス(固形分40%)とカルボキシル化VPラテックス(日本ゼオン(株)製LX603、固形分36%)を固形分比率6/4にてRF/L比が0.25になるように固形分にて合計45.2重量部を加えた後、水を加えて、固形分が20重量%となるように調整した。攪拌しながら、12時間熟成して、RFL(9)を調製した。
【0058】
RFL(10)
(CSMラテックスとカルボキシル化VPラテックスと酸化亜鉛と加硫促進剤を含むRFL)
レゾルシン7.31重量部とホルマリン(37重量%濃度)10.77重量部とを混合、攪拌し、これに水酸化ナトリウム水溶液(固形分0.33重量部)を加えて、攪拌し、この後、水160.91重量部を加え、5時間熟成して、R/F比が0.5のRF水溶液を調製した。このRF水溶液にCSMラテックス(固形分40%)とカルボキシル化VPラテックス(日本ゼオン(株)製LX603、固形分36%)を固形分比率6/4にてRF/L比が0.25になるように固形分にて合計45.2重量部を加え、更に、ディスポンDZ(住友精化(株)製加硫促進剤DM/酸化亜鉛=5/1の水性ディスパージョン、固形分43%)6.5重量部を加えた後、水を加え、ラテックスの固形分が20重量%となるように調整した。攪拌しながら、12時間熟成して、RFL(10)を調製した。
【0059】
心線
心線として次の繊維コードを用いた。
(a)ポリエステル繊維コード
帝人(株)製ポリエステル繊維、1000d/2×3、上撚り9.5T/10cm(Z)、下撚り2.19T/10cm
(b)アラミド繊維コード
帝人(株)製テクノーラ、1000d/1×3、上撚り(Z)16.4T/10cm、下撚り(S)28.5T/10cm
(c)ナイロン繊維コード
旭化成(株)製レオナ66、1260d/1×5、上撚り(Z)9.3T/10cm、下撚り(S)20.7T/10cm
(d)ビニロン繊維コード
(株)クラレ製クラレビニロン、1800d/1×3、上撚り(Z)10T/10cm、下撚り17.3T/10cm
【0060】
A.RFLの調製後、24時間以内に心線の接着処理に用いた実施例
【0061】
実施例1
(ポリエステル心線と接着ゴム層との接着物の調製とこの接着物の接着力の測定)
ポリエステル心線をイソシアネートのトルエン溶液(イソシアネート固形分20重量%)に浸漬した後、240℃で40秒間加熱乾燥して、心線に前処理を施した。
【0062】
次に、このように前処理したポリエステル心線をRFL(3−1)に浸漬した後、200℃で80秒間加熱乾燥させ、次いで、このように接着処理したポリエステル心線を接着ゴムと同じエチレン−プロピレン−ジエンゴムをトルエンに溶解してなる接着溶液に浸漬した後、60℃で40秒間加熱乾燥して、ポリエステル心線に後処理を施した。
【0063】
このように処理したポリエステル心線を前記接着ゴムのためのエチレン−プロピレン−ジエンゴムの配合物の未加硫シートの間に挟み、これらを面圧3920kPa、温度160℃で35分間、加圧加熱し、プレス加硫した。このようにして得られた接着物におけるポリエステル心線の接着力を測定した。結果を接着物の特性(1)として表1に示す。また、加硫条件を面圧3920kPa、温度170℃で50分間とした以外は、同様にして得た接着物について、ポリエステル心線の接着力を測定した。結果を接着物の特性(2)として表1に示す。
【0064】
(伝動ベルトの製造とその動的寿命の評価)
前述したように、表面が平滑な円筒状の成形ドラムの周面にゴムコート帆布と接着ゴム層のための前記エチレン−プロピレン−ジエンゴムの配合物の未加硫シートを巻き付けた後、この上に接着処理したポリエステル心線を螺旋状にスピニングした。更に、その上に上記と同じ接着ゴム層のためのゴム配合物の未加硫シートを巻き付けた後、圧縮ゴム層のための前記エチレン−プロピレン−ジエンゴムの配合物の未加硫シートを巻き付けて積層体とした。
【0065】
この積層体を内圧6kgf/cm2 、外圧9kgf/cm2 、温度165℃、時間35分間の条件にて加硫缶中にて加熱加圧し、蒸気加硫して、環状物を得た。次いで、この環状物を駆動ロールと従動ロールとからなる第1の駆動システムに取り付けて、所定の張力の下で走行させながら、研削ホイールを用いて上記環状物を研削して、表面に複数のリブを形成した。この後、この環状物を更に別の駆動ロールと従動ロールとからなる第2の駆動システムに取り付けて、走行させながら、所定の幅に裁断して、リブ数3、周長さ1000mmの製品としてのVリブドベルトを得た。
【0066】
このようにして得られたVリブドベルトを図3に示すように駆動プーリ11(直径120mm)と従動プーリ12(直径120mm)とこれらのプーリの間に配置したアイドラープーリ13(直径70mm)とテンションプーリ14(直径55mm)とからなるベルト駆動システムに取り付けた。但し、アイドラープーリにはベルト背面を係合させた。
【0067】
130℃の雰囲気温度の下で、従動プーリの負荷を16馬力とし、テンションプーリの初張力を85kgfとし、駆動プーリを回転数4900rpmで駆動して、ベルトを走行させ、ベルトから心線が露出するか、又はゴム層に割れを生じるまでの走行時間をベルトの動的寿命とした。結果を表1に示す。
【0068】
実施例2〜14
心線として表1又は表2に示す繊維コードを用いると共に、これに表1又は表2に示すRFLを用いた以外は、実施例1と同様にして、心線に接着処理を施した。このように処理した心線を用いて、実施例1と同様にして、接着物を調製し、その接着力を測定した。結果を表1と表2に示す。
【0069】
次に、このように接着処理を施した心線を用いて、実施例1と同様にして、リブ数3、周長さ1000mmの製品としてのVリブドベルトを得、これについて、実施例1と同様にして、ベルトの動的寿命を調べた。結果を表1及び表2に示す。
【0070】
比較例1
実施例1において、RFL(1)を用いた以外は、実施例1と同様にして、心線に接着処理を施した。このように処理した心線を用いて、実施例1と同様にして、接着物を調製し、その接着力を測定した。結果を表2に示す。
【0071】
次に、このように接着処理を施した心線を用いて、実施例1と同様にして、リブ数3、周長さ1000mmの製品としてのVリブドベルトを得、これについて、実施例1と同様にして、ベルトの動的寿命を調べた。結果を表2に示す。
【0072】
比較例2〜4
実施例1において、ポリエステル心線に代えて、表2に示す繊維コードを用いると共に、RFL(1)を用いた以外は、実施例1と同様にして、心線に接着処理を施した。このように処理した心線を用いて、実施例1と同様にして、接着物を調製し、その接着力を測定察した。結果を表2に示す。
【0073】
次に、このように接着処理を施した心線を用いて、実施例1と同様にして、リブ数3、周長さ1000mmの製品としてのVリブドベルトを得、これについて、実施例1と同様にして、ベルトの動的寿命を調べた。結果を表2に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
B.RFLを調製してから5日後に心線の接着処理に用いた実施例
【0077】
RFL(3−3)から(3−8)の調製
前述したRFL(3−1)にRFLの固形分100重量部に対してノニオン界面活性剤ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(花王(株)製エマルゲンA−500)を1.0重量部加え、攪拌しながら、12時間熟成した後、5日間放置して、RFL(3−3)を調製した。また、前述したRFL(3−1)を調製した後、そのまま、5日間放置したものをRFL(3−0)とした。
【0078】
同様にして、RFL(3−1)にRFLの固形分100重量部に対して上記ノニオン界面活性剤0.1重量部を加えて、RFL(3−4)を調製し、上記ノニオン界面活性剤0.03重量部を加えて、RFL(3−5)を調製した。
【0079】
また、前述したRFL(3−2)にRFLの固形分100重量部に対して上記ノニオン界面活性剤1.0重量部を加え、攪拌しながら、12時間熟成した後、5日間放置して、RFL(3−6)を調製した。
【0080】
同様にして、RFL(3−2)にRFLの固形分100重量部に対して上記ノニオン界面活性剤0.1重量部を加えて、RFL(3−7)を調製し、上記ノニオン界面活性剤0.03重量部を加えて、RFL(3−8)を調製した。
【0081】
実施例15〜18
実施例1において、表3に示すように、RFL(3−4)、(3−5)、(3−7)又は(3−8)を用いた以外は、同様にして、心線に接着処理を施した。このように処理した心線を用いて、実施例1と同様にして、接着物を調製し、その接着力を測定した。結果を表3に示す。
【0082】
次に、このように接着処理を施した心線を用いて、実施例1と同様にして、リブ数3、周長さ1000mmの製品としてのVリブドベルトを得、これについて、実施例1と同様にして、ベルトの動的寿命を調べた。結果を表3に示す。
【0083】
比較例5〜7
実施例1において、表3に示すように、前述したRFL(3−1)、(3−3)又は(3−6)を用いた以外は、同様にして、心線に接着処理を施した。このように処理した心線を用いて、実施例1と同様にして、接着物を調製し、その接着力を測定した。結果を表3に示す。
【0084】
次に、このように接着処理を施した心線を用いて、実施例1と同様にして、リブ数3、周長さ1000mmの製品としてのVリブドベルトを得、これについて、実施例1と同様にして、ベルトの動的寿命を調べた。結果を表3に示す。
【0085】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】Vリブドベルトの一例の横断面図を示す。
【図2】Vベルトの一例の横断面図を示す。
【図3】伝動ベルトの動的試験を行なうためのベルト駆動システムを示す図である。
【符号の説明】
【0087】
1…ゴム引き帆布
2…心線
3…接着ゴム層
4…リブ
5…圧縮ゴム層
6…短繊維
7…上ゴム層
11…駆動プーリ
12…従動プーリ
13…アイドラープーリ
14…テンションプーリ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
共にエチレン−α−オレフィン−ジエンゴムからなる圧縮ゴム層と接着ゴム層とが加硫接着され、上記接着ゴム層内にレゾルシン−ホルマリン−ラテックスにて接着処理された繊維コードからなる心線が接着、埋設されている伝動ベルトにおいて、上記レゾルシン−ホルマリン−ラテックスにおけるラテックスのゴム成分が固形分にてクロロスルホン化ポリエチレン及びアルキル化クロロスルホン化ポリエチレンから選ばれる少なくとも1種20〜80重量%とビニルピリジンラテックス、カルボキシル変性ビニルピリジンラテックス、クロロプレンラテックス、2,3−ジクロロブタジエンラテックス、ニトリルゴムラテックス、カルボキシル基含有水素添加ニトリルゴムラテックス及びスチレン−ブタジエンゴムラテックスから選ばれる少なくとも1種80〜20重量%とからなることを特徴とする伝動ベルト。
【請求項2】
レゾルシン−ホルマリン−ラテックスが相溶化剤としてノニオン界面活性剤を含有する請求項1に記載の伝動ベルト。
【請求項3】
レゾルシン−ホルマリン−ラテックスが金属酸化物と含硫黄加硫促進剤を含有する請求項1に記載の伝動ベルト。
【請求項4】
金属酸化物が酸化亜鉛、酸化マグネシウム又は酸化鉛である請求項3に記載の伝動ベルト。
【請求項5】
含硫黄加硫促進剤がチアゾール類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類又はこれらの2種以上の混合物である請求項3に記載の伝動ベルト。
【請求項6】
心線がポリエステル繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維及びナイロン繊維から選ばれる少なくとも1種のコードからなるものである請求項1に記載の伝動ベルト。
【請求項7】
共にエチレン−α−オレフィン−ジエンゴムからなる圧縮ゴム層と接着ゴム層とが加硫接着され、上記接着ゴム層内にレゾルシン−ホルマリン−ラテックスにて接着処理された繊維コードからなる心線が接着、埋設されている伝動ベルトの製造方法において、ラテックスのゴム成分が固形分にてクロロスルホン化ポリエチレン及びアルキル化クロロスルホン化ポリエチレンから選ばれる少なくとも1種20〜80重量%とビニルピリジンラテックス、カルボキシル変性ビニルピリジンラテックス、クロロプレンラテックス、2,3−ジクロロブタジエンラテックス、ニトリルゴムラテックス、カルボキシル基含有水素添加ニトリルゴムラテックス及びスチレン−ブタジエンゴムラテックスから選ばれる少なくとも1種80〜20重量%とからなるレゾルシン−ホルマリン−ラテックスを心線に含浸せ、加熱乾燥して、接着処理し、このように、接着処理した心線を接着ゴム層を形成するための未加硫エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムシート間に載置し、この未加硫エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムシートを圧縮ゴム層を形成するための未加硫エチレン−α−オレフィン−ジエンゴムシートに積層し、このようにして得られた積層物を加圧加熱し、加硫することを特徴とする伝動ベルトの製造方法。
【請求項8】
レゾルシン−ホルマリン−ラテックスが相溶化剤としてノニオン界面活性剤を含有する請求項7に記載の伝動ベルトの製造方法。
【請求項9】
レゾルシン−ホルマリン−ラテックスが金属酸化物と含硫黄加硫促進剤を含有する請求項7に記載の伝動ベルトの製造方法。
【請求項10】
金属酸化物が酸化亜鉛、酸化マグネシウム又は酸化鉛である請求項9に記載の伝動ベルトの製造方法。
【請求項11】
含硫黄加硫促進剤がチアゾール類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類又はこれらの2種以上の混合物である請求項9に記載の伝動ベルトの製造方法。
【請求項12】
心線がポリエステル繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維及びナイロン繊維から選ばれる少なくとも1種のコードからなるものである請求項7に記載の伝動ベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−207600(P2006−207600A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16198(P2005−16198)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】