説明

伝搬遅延時間差を測定するための送信機および受信機

【課題】高精度な伝搬遅延時間差測定方法および装置を提供する。
【解決手段】周波数の異なるN個の無変調波からなる第1無変調波群の各々の無変調波(fi)(iは1〜Nの自然数)に対して、初期位相がほぼ等しく周波数差Δfを有するN個の無変調波(fi+Δf)からなる第2無変調波群とを発生させ、周波数差Δfとなる2つの無変調波を1つの組(fiとfi+Δf)とするN組の無変調波組を出力する無変調波発生装置11および該無変調波発生装置11からの各無変調波組(fiとfi+Δf)を入力し、各無変調波組の2つの無変調波の送信電力を受信時の電力がほぼ等しくなるように調整して、対応するN個の経路へ送信するN個の送信装置12から構成される送信機10と、前記無変調波組を入力する(N−1)対の受信装置13と検波装置14および位相差検出装置15とから成る受信機より構成され、N個の経路の伝搬遅延時間差を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、無線信号が異なる経路を伝搬する際の伝搬遅延時間差を測定するための送信機および受信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、異なる2つの伝搬路の遅延時間差を簡単に測る方法としては、送信側において、信号発生器で発生させたCW信号を2分岐して送信し、受信側において、それぞれ異なる伝搬経路を通過してきた信号の位相差をオシロスコープなどで測定する方法がある。しかしながら、この方法では送信側経路の途中に遅延時間差とは無関係に位相を変化させる素子または回路(例えば、周波数変換回路など)がある場合には、遅延時間差は同一であっても出力される位相差が異なってしまう場合があり、位相差から遅延時間を測定することができなくなってしまうという問題点がある。
【0003】
また、送信側において、パルス信号を2分岐して送信し、受信側において、それぞれ異なる伝搬経路を通過してきた信号の立ち上がり時間差を測定する方法がある。しかしながら、この方法では、測定器に優れた立ち上がり特性が必要となり、測定器が高価になってしまう。急峻なパルス波形を形成するには広帯域が要求される。
【0004】
また、従来のスペクトラム拡散変調技術を用いた拡散符号による遅延時間差測定では、受信側において、時間差を正確に検出するために、拡散符号を長く、即ち、拡散率を高く設計する必要がある。従って、送受信側においてともに、拡散率に応じた連続した広帯域の周波数を確保することが必要である。また、拡散・逆拡散を行うための変復調装置、広帯域信号をフィルタリングするための広域フィルタ、符号系列を照合するための同期装置が必要となることから、この方法についても複雑な装置になってしまうという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、簡易な装置により、狭い周波数帯で実施可能な伝搬遅延時間差測定方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一特徴に従った送信機(10)は、N個の経路の伝搬遅延時間差を測定するために無変調波を出力する送信機であって:
周波数の異なるN個の無変調波からなる第1無変調波群と、該第1無変調波群の各々の無変調波(fi)(ここでiは1〜Nの自然数)に対して初期位相がほぼ等しく周波数差Δfを有するN個の無変調波(fi+Δf)からなる第2無変調波群とを発生させ、前記第1無変調波群と前記第2無変調波群の無変調波のうち周波数差Δfとなる2つの無変調波を1つの組(fiとfi+Δf)とするN組の無変調波組を出力する無変調波発生装置(11);および
該無変調波発生装置(11)からの各無変調波組(fiとfi+Δf)を入力し、各無変調波組の2つの無変調波の送信電力を受信時の電力がほぼ等しくなるように調整して、対応するN個の経路へと送信するN個の送信装置(12);
から構成されることを特徴とする。
【0007】
本発明の他の特徴に従った受信機(20,60)は、N個の経路の伝搬遅延時間差を測定するために無変調波を受信して処理する受信機であって:
N個の各経路から全ての経路が少なくとも一度は選択されるように、かつ各経路対をなす少なくとも一方の経路が他の少なくとも1つの経路対に含まれるように、(N-1)通りの経路対を選択して、選択した各経路対からの初期位相が互いにほぼ等しい無変調波組(fiとfi+Δf、或いは(fi とfj )および(fi+Δfとfj+Δf))を受信して出力する(N-1)対の受信装置(13、53);
対応する該受信装置からの無変調波組を入力し、2つの無変調波の差を表す検波信号を出力する(N-1)対の検波装置(14、54);および
各検波装置対からの2つの検波信号を入力し、2つの検波信号の位相差を検出する(N-1)個の位相差検出装置(15、55);
から構成されることを特徴とする。
【0008】
本発明の他の特徴に従って送信機(50)は、N個の経路の伝搬遅延時間差を測定するために無変調波を出力する送信機であって:
初期位相がほぼ等しく周波数の異なるN個の無変調波からなる第1無変調波群と、該第1無変調波群の各々の無変調波(fi(iは1〜Nの自然数))に対して周波数差Δfを有するN個の無変調波(fi+Δf)からなる初期位相がほぼ等しい第2無変調波群とを発生させ、前記第1無変調波群と前記第2無変調波群の無変調波のうち周波数差Δfとなる2つの無変調波を1つの組(fiとfi+Δf)とするN組の無変調波組を出力する無変調波発生装置(51);および
該無変調波発生装置(51)からの各無変調波組(fiとfi+Δf)を入力し、各無変調波組の2つの無変調波の送信電力を他の各無変調波組(fjとfj+Δf(ここでjは1〜Nの自然数であり、i≠j))の対応する無変調波に対して((fiとfj)および(fi+Δfとfj+Δf))、受信時の電力がほぼ等しくなるように調整して、対応するN個の経路へと送信するN個の送信装置(52);
から構成されることを特徴とする。
【0009】
本発明の他の特徴に従った受信機(20,60)は、N個の経路の伝搬遅延時間差を測定するために無変調波を受信して処理する受信機であって:
N個の経路から少なくとも2通りの経路対を選択して、選択した各経路対からの初期位相が互いにほぼ等しい2組の無変調波組(fiとfi+Δf、或いは(fi とfj )および(fi+Δfとfj+Δf))を受信して出力する少なくとも2対の受信装置(13,53);
対応する該受信装置からの無変調波組を入力し、2つの無変調波の差を表す検波信号を出力する少なくとも2対の検波装置(14,54);および
各検波装置対からの1対の検波信号を入力し、2つの検波信号の位相差を検出する少なくとも2個の位相差検出装置(15,55);
から構成されることを特徴とする。
【0010】
本発明の他の特徴に従った送信機(10,50)は、N個の経路の伝搬遅延時間差を測定するために無変調波を出力する送信機であって:
周波数の異なるN個の無変調波fiと、それに対して一定の差周波数Δfだけ異なるN個の無変調波fi+Δfとを発生させ、N組の無変調波組(fiとfi+Δf)を対応するN個の経路へと送信する。
【0011】
本発明の他の特徴に従った受信機(20,60)は、N個の経路の伝搬遅延時間差を測定するために無変調波を受信して処理する受信機であって:
N個の経路からN組の無変調波組(fiとfi+Δf)を受信し、初期位相が互いにほぼ等しい無変調波組から検波信号を検出し、異なる2個の検波信号の位相を比較することにより経路途中で受ける位相回転を相殺して、異なる経路の伝搬遅延時間差を測定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施例によれば、無変調波を利用するので、変復調回路が不要であり、同期処理などが必要なく簡単な装置構成とすることができる。また、理論的な必要帯域幅は無限少であり、装置の周波数安定度などを考慮したとしても変調波に比べると十分小さい帯域幅ですむ。
【0013】
本発明の実施例によれば、経路途中で受ける無変調波の位相回転とは全く無関係な検波信号を検出することが可能であり、経路途中に遅延時間に無関係な固定的な位相変化が存在したとしても影響を受けることがない。異なる2個の検波信号の位相を比較することにより、異なる2経路の通過により生じた伝搬遅延時間差を、検波信号の位相差として測定することが可能となる。
【0014】
本発明の実施例によれば、異なる2個の検波信号の位相を比較することにより経路途中で受ける位相回転が相殺され、異なる2経路の通過により生じた伝搬遅延時間差を、検波信号の位相差として測定することが可能となる。
【0015】
さらに、特殊な測定装置を必要とせず、簡易な構成で測定可能であるため、低コストで測定が実現できる。狭い周波数帯で実施可能であるため、周波数利用の観点からも有益な方法である。運用中のシステムであっても僅かな空き帯域が存在すれば、運用停止することなく測定可能であり、保守・点検等に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1実施例]
図1に、本発明の第1実施例に従った送受信装置の基本構成を示す。図2に、第1実施例に従った送信側の無変調波の周波数配置を示す。第1実施例に従った装置は、遅延時間の異なるN個の経路の伝搬遅延時間差を測定するものである。
【0017】
図1に示すように、送信機10に1個の無変調波発生装置11がある。該無変調波発生装置11から、N個の無変調波fi(i=1~N)とN個の無変調波fi+Δfが出力される。無変調波fiと無変調波fi+Δfの各無変調波組が、N個の伝搬経路に対応したN個の送信装置1〜Nに接続される。ここで、無変調波fiと無変調波fi+Δfとは互いに初期位相が等しくされている(図2参照)。
【0018】
無変調波組fiと無変調波fi+Δfは、それぞれ経路iを伝搬して、各経路における位相回転 +φi を受けて、受信側に至る。
【0019】
N個の伝搬経路1〜Nを隔てた受信機20には、N個の経路のうち特定の経路(例えば、経路i=1とする)と任意の経路(経路j=2〜N)との経路対(例えば、1と2、1と3、1と4、1とj、〜、1とNというような経路対であり、経路対個数は(N-1)通りになる)に対応して、その2倍である2(N-1)個の受信装置1、1’、2、2’、〜、N-1、(N-1)’がある。経路対は、1と2、2と3、3と4、〜N−1とNというような選択の仕方でも良い。経路対は任意に選択しても良いが、各経路対をなす少なくとも一方の経路が少なくとも1つの他の経路対にも存在するようにして、全ての経路間の相対的関係が少なくとも間接的にわかるように選択することが望ましい。受信装置1は、経路1を伝搬し位相回転+φ1を受けた無変調波組fとf+Δfを受信し、受信装置1’は、経路2を伝搬し位相回転+φ2を受けた無変調波組fとf+Δfを受信する。受信装置2は、経路1を伝搬し位相回転+φ1を受けた無変調波組fとf+Δfを受信し、受信装置2’は、経路3を伝搬し位相回転+φ3を受けた無変調波組fとf+Δfを受信する。受信装置N-1は、経路1を伝搬し位相回転+φ1を受けた無変調波組fとf+Δfを受信し、受信装置(N-1)’は、経路Nを伝搬し位相回転+φNを受けた無変調波組fNとfN+Δfを受信する。
【0020】
続いて、受信装置1と1’、〜、(N-1)と(N-1)’の各々の出力fとf+Δf、fとf+Δfに対応して、2(N-1)個の検波装置1と1’、〜、(N-1)と(N-1)’が接続される。各検波装置k、k’(k=1~N-1)の検波処理を説明すると、検波装置kにおいて2個の無変調波f1_kとf1_k+Δfからのビート成分である周波数Δfの信号を検出し、検波装置k’において2個の無変調波fj_k、fj_k+Δfからのビート成分である周波数Δfの信号を検出する(図3参照)。この際、検波信号の周波数は、2つの無変調波の周波数f1_kとf1_k+Δfの周波数差分、および2つの無変調波の周波数fj_k、fj_k+Δfの周波数差分、すなわち両者とも周波数Δfのみをもつ信号を検出することにより得られることから、検出信号に含まれる経路途中で受けた位相回転は、それぞれ (φ1−φ1)、(φ−φj) となり、経路途中で受けた位相回転は相殺される。したがって、経路途中で受ける位相回転とは全く無関係な検波信号を検出することが可能であり、経路途中に遅延時間に依存しない位相変化が存在したとしても影響を受けない。
【0021】
2(N-1)個の検波装置からの検波信号の出力線が2個ずつ結合されて1組とされ、(N-1)組の検波信号出力線が(N-1)個の位相差検出装置1〜(N-1)に接続される。位相差検出装置1〜(N-1)が、それぞれ2個の検波信号の位相を比較することにより、異なる経路を通過することによる伝搬遅延時間差を検波信号の位相差として測定することが可能となる。
【0022】
(N-1)通りの位相差を求めることにより、N通りの経路のいずれの組合せについても位相差を導出することが可能となる。
【0023】
すなわち、第1の実施例に従った無変調波発生装置においては、周波数の異なる無変調波「無変調波1(周波数f)」、「無変調波2(周波数f2)」…「無変調波N(周波数fN)」と、該無変調波と初期位相が等しく該無変調波のそれぞれから一定の周波数差Δfだけ周波数の異なる無変調波「無変調波1’(周波数f+Δf)」、「無変調波2’(周波数f2+Δf)」…「無変調波N’(周波数fN’+Δf)」を生成し、Δfだけ周波数が異なる2つの無変調波を1つの組としたN組の無変調波組「無変調波組1」、「無変調波組2」、…「無変調波組N」を出力する。
本実施例では、同一経路を通過する2つの無変調波のビート信号を生成することから、2つの無変調波の電力レベルを同一にすることが容易である。このように電力レベルを同一とすることでビート信号の振幅を増加させることが可能となり、振幅分解能の低い位相差検出装置であった場合にその検出精度を向上させることが可能となる。
[第2実施例]
図5に、本発明の第2実施例に従った送受信装置の基本構成を示す。図6に、第2実施例に従った送信側の無変調波の周波数配置を示す。第2実施例に従った装置も、遅延時間の異なるN個の経路の伝搬遅延時間差を測定するものである。
【0024】
図5に示すように、送信機50に1個の無変調波発生装置51がある。該無変調波発生装置51から、N個の無変調波fi(i=1~N)とN個の無変調波fi+Δfが出力される。無変調波fiと無変調波fi+Δfの各無変調波組が、N個の伝搬経路に対応したN個の送信装置1〜Nに分岐接続される。ここで、無変調波fi(i=1~N)はすべて初期位相が等しく(ξ1)、また、無変調波fi+Δf(i=1~N)はすべて初期位相が等しく(ξ1’)されている(図6参照)。
【0025】
無変調波組fiと無変調波fi+Δfは、それぞれ経路iを伝搬して、各経路における位相回転 +φi を受けて、受信側に至る。
【0026】
N個の伝搬経路1〜Nを隔てた受信機60には、N個の経路のうち特定の経路(例えば、経路i=1とする)と任意の経路(経路j=2〜N)との経路対(例えば、1と2、1と3、1と4、1とj、〜、1とNというような経路対であり、経路対個数は(N-1)通りになる)に対応して、その2倍である2(N-1)個の受信装置1、1’、2、2’、〜、(N-1)、(N-1)’がある。経路対は、1と2、2と3、3と4、〜N−1とNというような選択の仕方でも良い。経路対は任意に選択しても良いが、各経路対をなす少なくとも一方の経路が少なくとも1つの他の経路対にも存在するようにして、全ての経路間の相対的関係が少なくとも間接的にわかるように選択することが望ましい。受信装置1は、経路1を伝搬し位相回転+φ1を受けた無変調波fと、経路2を伝搬し位相回転+φを受けた無変調波fと(周波数の低い無変調波どうしの組)を受信し、受信装置1’は、経路1を伝搬し位相回転+φ1を受けた無変調波f+Δfと、経路2を伝搬し位相回転+φ2を受けた無変調波f+Δfと(周波数の高い無変調波どうしの組)を受信する。受信装置2は、経路1を伝搬し位相回転+φ1を受けた無変調波fと、経路3を伝搬し位相回転+φ3を受けた無変調波f3と(周波数の低い無変調波どうしの組)を受信し、受信装置2’は、経路1を伝搬し位相回転+φ1を受けた無変調波f+Δfと、経路3を伝搬し位相回転+φ3を受けた無変調波f+Δfと(周波数の高い無変調波どうしの組)を受信する。受信装置(N-1)は、経路1を伝搬し位相回転+φ1を受けた無変調波fと、経路Nを伝搬し位相回転+φNを受けた無変調波fNと(周波数の低い無変調波どうしの組)を受信し、受信装置(N-1)’は、経路1を伝搬し位相回転+φ1を受けた無変調波f+Δfと、経路Nを伝搬し位相回転+φNを受けた無変調波fN+Δfと(周波数の高い無変調波どうしの組)を受信する。
【0027】
続いて、受信装置1と1’、〜、(N-1)と(N-1)’の各々の出力fとf、f+Δfとf+Δfに対応して、2(N-1)個の検波装置1と1’、〜、(N-1)と(N-1)’が接続される。各検波装置k、k’(k=1~N-1)において、2個の無変調波f1_kとfj_kからのビート成分である(fj_k - f1_k)を検出し、2個の無変調波f1_k+Δfとfj_k+Δfからビート成分である(fj_k - f1_k)を検出する(図7参照)。この際、検波信号の周波数は、2つの無変調波の周波数、f1_kとfj_kの周波数差分、および( f1_k+Δf )と( fj_k+Δf )の周波数差分、すなわち両者とも周波数(fj_k - f1_k)をもつ信号を検出することにより得られることから、検出信号に含まれる経路途中で受けた位相回転差は、両者とも(+φj - φ1)となり、同位相回転差となる。
【0028】
2(N-1)個の検波装置からの検波信号の出力線が2個ずつ結合されて1組とされ、(N-1)組の検波信号出力線が(N-1)個の位相差検出装置1〜N-1に接続される。位相差検出装置1〜N-1が、それぞれ2個の検波信号の位相を比較することにより、(N-1)個の位相差を検出する。このようにして、異なる経路を通過することによる伝搬遅延時間差を検波信号の位相差として測定することが可能となる。
【0029】
2個の検出信号に含まれる経路途中で受けた位相回転は、両者とも(+φj - φi)となりこれらが相殺され、位相回転とは全く無関係な検波信号を検出することが可能であり、経路途中に遅延時間に依存しない位相変化が存在したとしても影響を受けない。
【0030】
(N-1)通りの位相差を求めることにより、N通りの経路のいずれの組合せについても位相差を導出することが可能となる。
【0031】
第2実施例に従った無変調波発生装置においては、第1実施例と類似した無変調波の出力動作となるが、初期位相を等しくする無変調波の組合せの点で異なる。無変調波発生装置11,51で発生する各無変調波の初期位相をζ〜ζN、ζ’〜ζN’とすると、第1実施例に関しては、ζ=ζ’, ζ=ζ’, …ζN=ζN’とし、第2実施例に関しては、ζ= … =ζN, ζ’ =ζ’ = … =ζN’とする。
【0032】
無変調波1と無変調波1’を組み合わせたものが無変調波組1であり、無変調波2と無変調波2’を組み合わせたものが無変調波組2であり、以下同様に、無変調波Nと無変調波N’を組み合わせたものが無変調波組Nである。N個の無変調波組は、それぞれ周波数が異なり、受信時に各周波数別に無変調波組を取り出すことが可能な周波数であればよい。無変調波の周波数差Δfは、時間差測定範囲を決定する値であり、後述するように、要求される測定精度に応じて設定される。
【0033】
第2実施例では、時間差測定範囲を短時間にする必要があり、周波数差Δf幅の帯域が確保できない場合においても、受信点にて、Δfより狭帯域に配置された2つの無変調波(fi_k, fj_k)のビート信号を生成することから、遅延時間差の測定が可能となる。
【0034】
図4及び図8に、第1実施例及び第2実施例を衛星通信システムなどの中継器を用いたシステムにそれぞれ応用した場合の実施形態を示す。
【0035】
図4及び図8において、送信側に1個の任意信号発生器41とN個の送信機42がある。N個の伝搬経路を隔てて、受信側に2個の受信機44、2個のスペクトラムアナライザ45、1個のオシロスコープ46がある。N個の伝搬経路の途中には衛星中継器があるが、衛星中継器に限らず、どのような中継器であっても良い。
【0036】
任意信号発生器41からN本の出力線があり、対応するN個の送信機42にそれぞれ接続される。N個の送信機42からのN本の出力線は、対応するN個の伝搬経路を介して、衛星中継器43を通過して、再び対応するN個の伝搬経路を介して一受信点に入力され、2個の受信機44に分岐接続される。続いて、2個の受信機44からの出力線は、対応する2個のスペクトラムアナライザ45に接続され、各スペクトラムアナライザからの2本の出力線が1個のオシロスコープ46に接続される構成である。
【0037】
図4の任意信号発生器41では、異なる周波数をもったN個の無変調波「無変調波1(周波数f1)」「無変調波2(周波数f2)」…「無変調波N(周波数fN)」と、各無変調波と初期位相が等しく各無変調波のそれぞれから一定の周波数差Δfだけ周波数の異なる無変調波「無変調波1’(周波数f1+Δf)」、「無変調波2’(周波数f2+Δf)」…「無変調波N’(周波数fN+Δf)」が生成され、Δfだけ周波数が異なる2つの無変調波を1つの組としたN組の無変調波組「無変調波組1」、「無変調波組2」、…「無変調波組N」が対応する送信機「送信機1」「送信機2」…「送信機N」に出力される。
【0038】
一方、図8の任意信号発生器81では、初期位相が等しく異なる周波数をもったN個の無変調波「無変調波1(周波数f1)」「無変調波2(周波数f2)」…「無変調波N(周波数fN)」と、初期位相が等しく各無変調波のそれぞれから一定の周波数差Δfだけ周波数の異なる無変調波「無変調波1’(周波数f1+Δf)」、「無変調波2’(周波数f2+Δf)」…「無変調波N’(周波数fN+Δf)」が生成され、Δfだけ周波数が異なる2つの無変調波を1つの組としたN組の無変調波組「無変調波組1」、「無変調波組2」、…「無変調波組N」が対応する送信機「送信機1」「送信機2」…「送信機N」に出力される。
【0039】
送信機は、任意信号発生器41,81で生成された信号を変調するための変調装置、その変調信号を衛星中継機43,83へ送信するための周波数に変換する周波数コンバータ、信号電力を増幅するための増幅器、衛星中継機に信号を発信するためのアンテナ等、衛星通信システムにおける地球局送信装置である。任意信号発生器41,81で生成されたN個の無変調波組は、送信機から初期位相の等しい状態で送信され、対応するN個の経路へ発信される。ここで、送信機の周波数コンバータにおいて遅延時間に依存しない位相回転が生じている。
【0040】
衛星中継器43,83は、送受信アンテナ、増幅器、周波数コンバータ等、衛星通信システムにおける宇宙局装置である。
【0041】
N個の該無変調波組は、無変調波の周波数差Δfを維持したまま、衛星中継機43,83を通過し、受信機44,84に送信される。ここでも、中継器の周波数コンバータにおいて遅延時間に依存しない位相回転が生じている。
【0042】
受信機44,84は、衛星中継機からの信号を受信するためのアンテナ、受信信号電力を増幅するための増幅器、周波数を変更するための周波数コンバータ、受信信号を復調するための復調装置等、衛星通信システムにおける地球局受信装置である。さらに、受信機の周波数コンバータにおいて遅延時間に依存しない位相回転が生じている。
【0043】
図4に示す受信機44では、衛星中継機43から送信されたN組の無変調波組のうち、伝搬遅延時間差測定を行う異なる任意の経路対i、jを選択する。該経路対を通過する無変調波組iおよび無変調波組jを対応するスペクトラムアナライザ45に出力する。
【0044】
一方、図8に示す受信機84では、衛星中継機83から送信されたN組の無変調波組のうち、伝搬遅延時間差測定を行う異なる任意の経路対i、jを選択する。次に該経路対を通過する無変調波組i、jを構成する無変調波のうち、一方の受信機では、無変調波i(周波数fi)と無変調波j(周波数fj)を1組として新たな無変調波組を検出し、対応するスペクトラムアナライザ85に出力し、もう一方の受信機では、無変調波i’(周波数fi+Δf)と無変調波j’(周波数fj+Δf)を1組として新たな無変調波組を検出し、対応するスペクトラムアナライザ85に出力する。すなわち、初期位相の互いに等しい組を選択する。
【0045】
スペクトラムアナライザ45,85(例えば、Agirent社、E4443A)は、特定の周波数帯にある測定信号を抽出するためのフィルタと検波の機能を有することから、スペクトラムアナライザは本発明の基本構成における検波装置の役割を果たす。
【0046】
スペクトラムアナライザ45,85によって、2個の受信機から入力された無変調波組がそれぞれフィルタリングされ、検波されて、図4では無変調波の周波数差Δf、図8では無変調波の周波数差 (fj - fi)による検波信号を抽出する。抽出された2つの検波信号をオシロスコープ46,86に出力する。
【0047】
オシロスコープ46,86は、2種類の信号を時間軸で表示させ、その信号の位相差を検出する機能を有することから、本発明の基本構成における位相差測定装置の役割を果たす。オシロスコープ46,86によって、スペクトラムアナライザ45,85で抽出した2個の検波信号の位相差を検出することができる。
【0048】
オシロスコープでは受信点での検波信号の周期を正確に計測できるので、ドップラーシフトなどにより送信周波数からの変動を予測できない場合において、この周波数変動を補正することにより時間差測定精度を向上させることが可能となる。
【0049】
各経路を通過する無変調波組は、通過する経路や衛星中継器によって位相回転を受けるが、前述のように、2つの検波信号の位相差を比較することにより、それらの位相要素は相殺され、伝搬遅延時間差を表わす位相差のみを検出することが可能となる。
【0050】
本発明は、衛星通信システムにおける伝搬遅延時間差測定だけでなく、マイクロ無線中継、無線LANのような無線中継システムにおける遅延時間の異なる経路の伝搬遅延時間差測定にも応用可能である。また、無線伝搬路だけでなく、光伝送、CATVのような有線伝送システムにおいても適用可能である。
【0051】
伝搬遅延時間差比較を行う無変調波組(例えば無変調波組1と無変調波組N)が通過する経路については、中継器の種類やホップ数が異なっても構わない。
【0052】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
[数式を用いた原理説明]
受信側の無変調波組を検波し、それぞれの周波数差成分から得られる2つの検波信号の位相差を検出することにより、経路途中で受ける位相回転とは無関係に伝搬遅延時間差の測定が可能である原理を、数式を用いて以下に説明する。
【0053】
[第1実施例の場合]
受信側の無変調波組(N-1)の2つの無変調波を
【0054】
【数1】

とし、受信側の無変調波組(N-1)’の2つの無変調波を
【0055】
【数2】

とする。
【0056】
【数3】

まず、各無変調波組の2つの無変調波の初期位相を等しくすることから、
【0057】
【数4】

とする。
【0058】
前者の無変調波組(N-1)を検波すると、
【0059】
【数5】

となり、2つの無変調波のビート成分(周波数Δfをもつ信号)を低域濾過することにより、
【0060】
【数6】

が、検波信号(N-1)として得られる。
【0061】
同様に、後者の無変調波組(N-1)’を検波すると、
【0062】
【数7】

となり、2つの無変調波のビート成分(周波数Δfをもつ信号)を低域濾過することにより、
【0063】
【数8】

が、検波信号(N-1)’として得られる。
【0064】
得られた2つの検波信号の位相を比較すると、位相回転 “Δω・t” は共通しており、2つの検波信号の位相差を検出することにより、位相差 “Δω・tN” のみが残る。
【0065】
Δω(=2πΔf)は無変調波発生装置で設定可能な一定値であることから、位相差Δω・tNを検出することにより、伝搬遅延時間差ΔtNを測定することが可能となる。
【0066】
なお、位相差検出装置で位相差を検出するためには、2つの検波信号の振幅に留意する必要がある。
検波信号(N-1)の振幅は、
【0067】
【数9】

と表せる。
【0068】
このことから、2つの検波信号の振幅は、以下の直流成分と交流成分とで構成され、その和の平方根で表される。
【0069】
【数10】

位相差を検出するためには、位相が含まれる交流成分を強調する必要があるが、第1実施例における構成(図1)においては、同じ伝搬経路を通過する無変調波組の2つの無変調波の振幅は等しくなるため、
【0070】
【数11】

となる。よって、2つの検波信号の振幅は下式で表現でき、交流成分を十分に検出できる。
【0071】
【数12】

[第2実施例の場合]
受信側の無変調波組(N-1)の2つの無変調波を
【0072】
【数13】

とし、受信側の無変調波組(N-1)’の2つの無変調波を
【0073】
【数14】

とする。
【0074】
【数15】

まず、各無変調波組を構成する無変調波のうち周波数の低い無変調波同士の初期位相を等しくし、また、各無変調波組を構成する無変調波のうち周波数の高い無変調波同士初期位相を等しくすることから、
【0075】
【数16】

とする。
【0076】
前者の無変調波組(N-1)を検波すると、
【0077】
【数17】

となり、2つの無変調波のビート成分(周波数(fN - f)をもつ信号)を低域濾過することにより、
【0078】
【数18】

が、検波信号(N-1)として得られる。

同様に、後者の無変調波組(N-1)’を検波すると、
【0079】
【数19】

となり、2つの無変調波のビート成分(周波数(fN - f)をもつ信号)を低域濾過することにより、
【0080】
【数20】

なお、位相差検出装置で位相差を検出するためには、2つの検波信号の振幅に留意する必要がある。
【0081】
検波信号(N-1)の振幅は、
【0082】
【数21】

と表せる。
【0083】
このことから、2つの検波信号の振幅は、以下の直流成分と交流成分とで構成され、その和の平方根で表される。
【0084】
【数22】

第1実施例の場合と同様に、位相差を検出するためには、位相の含まれる交流成分を強調する必要がある。
【0085】
異なる伝搬経路からの無変調波組内の無変調波において、低い周波数をもつ無変調波同士の振幅を等しくし、高い周波数をもつ無変調波同士の振幅を等しくすること、すなわち、N個の経路からの無変調波組の受信電力をほぼ等しくすることが望ましく、N個の経路からの無変調波組の受信電力を等しくすることにより、直流成分を最小限に抑えることができ、交流成分を強調することができる。
【0086】
【数23】

2つの無変調波の振幅に差があると、振幅の大きい無変調波の影響で直流成分が二乗で強調されてしまうため、交流成分の大きさが直流成分の大きさで見えなくなり位相差の観測が困難になるためである。したがって、位相差を検出するためには、異なる伝搬経路を通過する無変調波の振幅を等しくし、以下の検波信号を出力する必要がある。
【0087】
【数24】

[時間差の測定範囲と測定精度]
時間差は、検波信号の1周期内で測定しなければならない。
検波信号の周波数はΔfなので、測定可能な時間差ΔtNの範囲は下式で表せる。
【0088】
【数25】

trは計測器の時間分解能であり、Tは検波信号の一周期である。
例えば、無変調波組の周波数差Δf = 1 kHzとしたとき、Tは、
【0089】
【数26】

となる。
【0090】
ここで、時間差を検出する計測器が固有のサンプル数をもつ場合、サンプル数が1000であったとすると、
実際に測定可能な最小時間tminは、
【0091】
【数27】

となる。
【0092】
よって、周波数差Δfを1kHzに設定すると、1msecを超えない時間差を検出することが可能となり、1μsec単位で時間差測定が可能となる。
【0093】
なお、Δfを大きくする程、測定範囲を小さい範囲に抑えられることから、
Δfを大きくすることにより、微小な時間差に対してより高い測定精度で測定が可能となる。
【0094】
【数28】

となり、10μsec内において10nsec単位で時間差測定が可能となる。
[時間差測定の留意点]
測定するべき実際の遅延時間ΔtNが、検波信号の1周期を超えてしまっている場合には、
測定値ΔtmNは、
【0095】
【数29】

と測定され、誤った測定結果となってしまう。
【0096】
これを防ぐために、1回目の時間差測定では、可能な限りΔfを小さく設定することにより、広い測定範囲で測定を行い、測定される遅延時間差の規模を確認する必要がある。1回目の結果をふまえた上で、Δfを調整し、測定精度を高めていく方法が効果的である。
また、時間差は検波信号の一周期T内の相対時間差として検出されるため、実際の遅延時間差ΔtNが測定値ΔtmNなのか、(T−ΔtmN)なのか区別できない。
しかしながら、異なるΔfで2回測定することにより、これを容易に解決できる。Δfを変えて測定した場合にも、測定値が変わらないものが実際の遅延時間差である。2回目の測定の検波信号の一周期をT’、測定値ΔtmN‘とすれば、ΔtmN=ΔtmN’なら、ΔtN=ΔtmN、(T−ΔtmN)= (T’−ΔtmN’)となら、ΔtN=(T−ΔtmN)である。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明に従った伝搬遅延時間差測定方法および装置は、移動無線システムのシステム設計に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の第1実施例に従った送受信装置の基本構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施例に従った送信機の無変調波の周波数配置図である。
【図3】第1実施例に従った受信機の無変調波組の周波数配置図である。
【図4】本発明の第1実施例を衛星中継システムに応用した場合の送受信装置の基本構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2実施例に従った送受信装置の基本構成を示すブロック図である。
【図6】第2実施例に従った送信機の無変調波の周波数配置図である。
【図7】第2実施例に従った受信機の無変調波組の周波数配置図である。
【図8】本発明の第2実施例を衛星中継システムに応用した場合の送受信装置の基本構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0099】
10、50 送信機
11、51 無変調波発生装置
12、52 送信装置
13、53 受信装置
14、54 検波装置
15、55 位相差検出装置
20、60 受信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個の経路の伝搬遅延時間差を測定するために無変調波を出力する送信機(10)であって:
周波数の異なるN個の無変調波からなる第1無変調波群と、該第1無変調波群の各々の無変調波(fi)(ここでiは1〜Nの自然数)に対して初期位相がほぼ等しく周波数差Δfを有するN個の無変調波(fi+Δf)からなる第2無変調波群とを発生させ、前記第1無変調波群と前記第2無変調波群の無変調波のうち周波数差Δfとなる2つの無変調波を1つの組(fiとfi+Δf)とするN組の無変調波組を出力する無変調波発生装置(11);および
該無変調波発生装置(11)からの各無変調波組(fiとfi+Δf)を入力し、各無変調波組の2つの無変調波の送信電力を受信時の電力がほぼ等しくなるように調整して、対応するN個の経路へと送信するN個の送信装置(12);
から構成されることを特徴とする送信機。
【請求項2】
N個の経路の伝搬遅延時間差を測定するために無変調波を受信して処理する受信機(20、60)であって:
N個の各経路から全ての経路が少なくとも一度は選択されるように、かつ各経路対をなす少なくとも一方の経路が他の少なくとも1つの経路対に含まれるように、(N-1)通りの経路対を選択して、選択した各経路対からの初期位相が互いにほぼ等しい無変調波組(fiとfi+Δf、或いは(fi とfj )および(fi+Δfとfj+Δf))を受信して出力する(N-1)対の受信装置(13、53);
対応する該受信装置からの無変調波組を入力し、2つの無変調波の差を表す検波信号を出力する(N-1)対の検波装置(14、54);および
各検波装置対からの2つの検波信号を入力し、2つの検波信号の位相差を検出する(N-1)個の位相差検出装置(15、55);
から構成されることを特徴とする受信機。
【請求項3】
N個の経路の伝搬遅延時間差を測定するために無変調波を出力する送信機(50)であって:
初期位相がほぼ等しく周波数の異なるN個の無変調波からなる第1無変調波群と、該第1無変調波群の各々の無変調波(fi(iは1〜Nの自然数))に対して周波数差Δfを有するN個の無変調波(fi+Δf)からなる初期位相がほぼ等しい第2無変調波群とを発生させ、前記第1無変調波群と前記第2無変調波群の無変調波のうち周波数差Δfとなる2つの無変調波を1つの組(fiとfi+Δf)とするN組の無変調波組を出力する無変調波発生装置(51);および
該無変調波発生装置(51)からの各無変調波組(fiとfi+Δf)を入力し、各無変調波組の2つの無変調波の送信電力を他の各無変調波組(fjとfj+Δf(ここでjは1〜Nの自然数であり、i≠j))の対応する無変調波に対して((fiとfj)および(fi+Δfとfj+Δf))、受信時の電力がほぼ等しくなるように調整して、対応するN個の経路へと送信するN個の送信装置(52);
から構成されることを特徴とする送信機。
【請求項4】
N個の経路の伝搬遅延時間差を測定するために無変調波を受信して処理する受信機(20,60)であって:
N個の経路から少なくとも2通りの経路対を選択して、選択した各経路対からの初期位相が互いにほぼ等しい2組の無変調波組(fiとfi+Δf、或いは(fi とfj )および(fi+Δfとfj+Δf))を受信して出力する少なくとも2対の受信装置(13,53);
対応する該受信装置からの無変調波組を入力し、2つの無変調波の差を表す検波信号を出力する少なくとも2対の検波装置(14,54);および
各検波装置対からの1対の検波信号を入力し、2つの検波信号の位相差を検出する少なくとも2個の位相差検出装置(15,55);
から構成されることを特徴とする受信機。
【請求項5】
請求項2または4記載の受信機であって、無変調波組から得られる検波信号の位相差を検出することにより、N個の経路の伝搬遅延時間差を検出することを特徴とする受信機。
【請求項6】
請求項1または3記載の送信機であって、周波数差Δfの大きさを変化させることにより伝搬遅延時間差検出精度を制御することを特徴とする送信機。
【請求項7】
N個の経路の伝搬遅延時間差を測定するために無変調波を出力する送信機(10、50)であって:
周波数の異なるN個の無変調波fiと、それに対して一定の差周波数Δfだけ異なるN個の無変調波fi+Δfとを発生させ、N組の無変調波組(fiとfi+Δf)を対応するN個の経路へと送信する送信機。
【請求項8】
N個の経路の伝搬遅延時間差を測定するために無変調波を受信して処理する受信機(20、60)であって:
N個の経路からN組の無変調波組(fiとfi+Δf)を受信し、初期位相が互いにほぼ等しい無変調波組から検波信号を検出し、異なる2個の検波信号の位相を比較することにより経路途中で受ける位相回転を相殺して、異なる経路の伝搬遅延時間差を測定する受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−107974(P2007−107974A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298183(P2005−298183)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】