伝送方法、伝送システム、送信装置及び受信装置
【課題】HDMI規格などの既存の映像データの伝送規格を利用して、色域の広い映像データを簡単に伝送できるようにする。
【解決手段】所定ビット単位の映像データを、画素クロックに同期して、色データ毎に個別の伝送ラインを使用して、ソース側装置からシンク側装置に伝送する伝送方式を利用して映像データを伝送するものに適用される。ソース側装置からシンク側装置に伝送する映像データとして、規定された色帯域内の色データの映像データと、前記規定された帯域外の色データの映像データとする。規定された色帯域内の色データの映像データと、規定された帯域外の色データの映像データとは、それぞれ1画素毎に所定ビット数で構成して、画素クロックに同期したタイミングで伝送して、ソース側装置からシンク側装置に、規定された色帯域を越える映像データを伝送する。
【解決手段】所定ビット単位の映像データを、画素クロックに同期して、色データ毎に個別の伝送ラインを使用して、ソース側装置からシンク側装置に伝送する伝送方式を利用して映像データを伝送するものに適用される。ソース側装置からシンク側装置に伝送する映像データとして、規定された色帯域内の色データの映像データと、前記規定された帯域外の色データの映像データとする。規定された色帯域内の色データの映像データと、規定された帯域外の色データの映像データとは、それぞれ1画素毎に所定ビット数で構成して、画素クロックに同期したタイミングで伝送して、ソース側装置からシンク側装置に、規定された色帯域を越える映像データを伝送する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル映像・音声入出力インターフェース規格を使用して色帯域が広帯域な映像データを伝送する技術に関し、例えば、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)規格と称されるデジタル映像・音声入出力インターフェース規格やDVI(Digital Video Interface)規格に適用して好適な伝送方法及び伝送システム、並びにこの伝送システムに適用される送信装置及び受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータとディスプレイを接続するためのインターフェース規格であるDVI(Digital Video Interface)規格に加え、複数台の映像機器の間で、非圧縮のデジタル映像データなどを伝送させるインターフェース規格として、HDMI規格と称されるものが開発されている。HDMI規格は、映像データを、各色の原色データとして、1画素単位で個別に伝送する規格である(以下画素をピクセルと称する場合もある)。音声データ(オーディオデータ)についても、映像データのブランキング期間に、映像データの伝送ラインを使用して伝送するようにしてある。伝送する原色データは、赤,緑,青の加法混色の3チャンネルの原色データ(Rデータ,Gデータ,Bデータ)を伝送する場合と、Y,Cb,Crといった輝度および色差信号を伝送する場合とがある。
【0003】
図9は、Rデータ,Gデータ,Bデータの原色データを伝送する場合と、Yデータ,Cbデータ,Crデータを伝送する場合の例を示したものである。図9(a)に示すように、ビデオディクス再生装置などのビデオ再生装置からテレビジョン受像機に、HDMI規格のケーブルを使用して映像データを伝送する場合には、Rデータ,Gデータ,Bデータの原色データを伝送する場合と、Yデータ,Cbデータ,Crデータの輝度データ及び色差データを伝送する場合のいずれもあり得る。これに対して、図9(b)に示すように、ビデオ再生装置からコンピュータ装置用モニタに、HDMI規格のケーブルを使用して映像データを伝送する場合には、Rデータ,Gデータ,Bデータの原色データを伝送する構成とされる。
【0004】
Yデータ,Cbデータ,Crデータと、Rデータ,Gデータ,Bデータとについては、予め決められた行列式で変換が可能である。例えば、後述するxvYCC信号としてのYデータ,Cbデータ,Crデータと、sRGB信号としてのRデータ,Gデータ,Bデータとは、以下の行列によって変換可能である。同様の演算式で、Yデータ,Cbデータ,CrデータからRデータ,Gデータ,Bデータに変換することも可能である。
Y= 0.2126R+0.7152G+0.0722B
Cb=−0.1146R−0.3854G+0.5000B
Cr= 0.5000R−0.4542G−0.0458B
【0005】
HDMI規格では、各色の1ピクセルのデータは、基本的に8ビットを単位として構成される。水平同期信号や垂直同期信号などの同期信号についても、それぞれの同期信号が配置されるタイミングに送信される。また、映像データのピクセルクロックの伝送ラインと、制御データの伝送ラインについても設けてある。
【0006】
図10は、HDMI規格のインターフェースで、原色データ(Rデータ,Gデータ,Bデータ)を伝送する場合の例の概要を示した図である。映像データについては、チャンネル0とチャンネル1とチャンネル2との3つのチャンネルで、BデータとGデータとRデータとを個別に伝送するようにしてある。図10の例では、ピクセル0、ピクセル1、ピクセル2、ピクセル3の4画素のデータを送る期間を示してあり、それぞれのチャンネルの1ピクセルのデータが8ビットで構成されている。
【0007】
即ち、Bデータ(青データ)については、チャンネル0を使用して、ピクセル0の期間に、8ビットのB0データが送られ、以下、8ビットのB1データ、B2データ、B3データがピクセルクロック(図示せず)に同期して順に送られる。Gデータ(緑データ)については、チャンネル1を使用して、ピクセル0の期間に、8ビットのG0データが送られ、以下、8ビットのG1データ、G1データ、G2データ、G3データがピクセルクロックに同期して順に送られる。Rデータ(赤データ)については、チャンネル2を使用して、ピクセル0の期間に、8ビットのR0データが送られ、以下、8ビットのR1データ、R2データ、R3データがピクセルクロックに同期して順に送られる。
【0008】
図10では示していないが、HDMI規格のインターフェースでは、別のチャンネルを使用して、制御データやピクセルクロックを伝送するようにしてある。制御データについては、映像データの送信側機器(ソース側機器)から受信側機器(シンク側機器)への伝送だけでなく、受信側機器(シンク側機器)から送信側機器(ソース側機器)への伝送も行える構成としてある。また、ソース側機器では、8ビット単位でデータを暗号化してあり、シンク側機器では、8ビット単位でデータをその暗号化からの復号化を行うようにしてある。
【0009】
このように、HDMI規格のインターフェースでは、1ピクセルを、1色あたり8ビットで送ることを前提として規格化されたものである。一方、近年、色の解像度を高めることが検討されており、1ピクセルの1色あたりのビット数を、8ビット以上とすることが提案されている。例えば、1ピクセルの1色あたりのビット数を、16ビットとすることが提案されている。
【0010】
図11は、HDMI規格のインターフェースで、1ピクセルの1色あたり16ビットのデータを伝送することを想定した、伝送状態の例である。HDMI規格は既に説明したように、8ビットを1単位でデータを伝送することを想定した規格であり、1ピクセルクロックで、8ビット伝送する構成としてあり、16ビットのデータを伝送するためには、2ピクセルクロックが必要である。図11の例では、2ピクセルクロックで、1ピクセルのデータを伝送するデータ配置としてある。図11に示したフェーズ0,1,2,3が、それぞれ1ピクセルクロックの1周期を示している。この図11に示すように、2クロック期間を利用することで、2倍のビット数である1ピクセル16ビットの映像データを伝送することができる。なお、この図11に示すデータ伝送の場合には、1つのピクセルの伝送に、2ピクセルクロック期間が必要であるので、ピクセルクロックについても対応して2倍に高周波数化する必要がある。
【0011】
特許文献1には、HDMI規格の詳細についての記載がある。
【特許文献1】WO2002/078336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、映像データを受信して表示させる表示装置では、色表現能力を従来よりも向上させたものが開発されている。即ち、従来の表示装置が扱う映像データの色表現能力は、基本的には陰極線管(CRT)を表示手段として使用することを前提として、その陰極線管で表現可能な色範囲を想定して、上述したRデータ,Gデータ,Bデータの原色データで、表現される色範囲を設定してある。
【0013】
一方、表示装置が使用される表示手段として、陰極線管よりも色表現範囲が優れたものが登場してきている。例えば、液晶ディスプレイの場合には、色表現範囲は、バックライトとして使用される光源の特性により色表現範囲が決まり、陰極線管よりも色表現範囲を広帯域化することが比較的容易に行える。
【0014】
このような色表現範囲を広帯域化する表示装置が扱う映像データ(動画データ)の規格として、近年、xvYCC信号と称される規格が策定された。このxvYCC信号に準拠して表現された映像データを表示処理することで、色表現範囲を広帯域化した映像の表示が可能となる。xvYCC信号の詳細については、後述する発明の実施の形態の中で説明する。なお、以下の説明では、従来の色表現範囲のR,G,Bデータについては、sRGB信号と称する。
【0015】
ところで、xvYCC信号のような色表現範囲を広くした映像データを、sRGB信号の伝送路で伝送しようとすると、通常、sRGB信号の色域以外の情報を送ることができない問題がある。特に、図9に示したように、パーソナルコンピュータ装置用のモニタに、HDMI規格の伝送ラインで伝送する場合には、RGBデータの形式でしか伝送できないため、sRGB信号の色域を超える色域のデータが伝送できない問題があった。
【0016】
より広いより広い色域を扱うため、例えば別の色度点を定義して、sRGB信号と互換性のないものとする方法がある。あるいは、各RGBのデータの色度点の外を定義する値を使用することでも可能になる。具体的には、同じ色度点で、色度点より外の色を定義するために、具体的には各原色RGBデータの値が1を超えた値、もしくはマイナスの値をとることを意味する。
ところが、通常のモニタや映像機器においては、異なる色度点をもつ信号を、同一の端子で扱うことは、切り替えが煩雑となり実現が困難である問題がある。また、RGBの値が1を超えた値、もしくはマイナスの値を送ることは、信号を受ける側のシステムの構成が、その信号に対応しなければならないために、対応が困難である問題がある。
【0017】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、HDMI規格などの既存の映像データの伝送規格を利用して、色度点の異なる映像データを伝送できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、所定ビット単位の映像データを、画素クロックに同期して、色データ毎に個別の伝送ラインを使用して、ソース側装置からシンク側装置に伝送する伝送方式を利用して映像データを伝送するものに適用される。そして、ソース側装置からシンク側装置に伝送する映像データとして、規定された色帯域内の色データの映像データと、前記規定された帯域外の色データの映像データとする。規定された色帯域内の色データの映像データと、規定された帯域外の色データの映像データとは、それぞれ1画素毎に所定ビット数で構成して、画素クロックに同期したタイミングで伝送して、ソース側装置からシンク側装置に、規定された色帯域を越える映像データを伝送するようにしたものである。
【0019】
このようにしたことで、1組の伝送ラインを使用して、規定された色帯域を越える映像データが、色帯域内の色データと、色帯域を越える色データとに分けて伝送され、ビット数の多い映像データを伝送可能な伝送規格に適用可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、1組の伝送ラインを使用して、規定された色帯域を越える映像データが、色帯域内の色データと、色帯域を越える色データとに分けて伝送され、ビット数の多い映像データを伝送可能な伝送規格に適用可能となり、例えばHDMI規格を利用して簡単に規定された色帯域を越える映像データを伝送できるようになる。また、受信側の表示装置が規定された色帯域を越える映像データの処理に対応していない場合には、色帯域を越える色データを無視して受信処理すればよく、広い色域に対応した表示用の映像伝送と、通常の色域に対応した表示用の映像伝送との互換性が保てる。さらに、伝送形態としては、伝送規格で定められたビット数(例えば8ビット)の伝送単位を維持した伝送形態であり、所定ビット単位での暗号化や復号化が、規格で定められた状態で行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態を、図1〜図8を参照して説明する。
【0022】
本例においては、HDMI規格でソース側機器からシンク側機器に映像データなどを伝送する伝送システムに適用したものである。図1は、本例のシステム構成例を示した図で、ソース側機器であるビデオ記録再生装置10と、シンク側機器であるテレビジョン受像機30とを、HDMIケーブル1で接続して、ビデオ記録再生装置10から映像データや音声データを、テレビジョン受像機30に伝送する構成としてある。本例のビデオ記録再生装置10は、色域が広帯域の映像データを記録し再生することができる構成としてあり、テレビジョン受像機30は、色域が広帯域の映像の表示処理が行える受像機としてある。
【0023】
以下の説明でHDMI規格について、必要な構成などを順に説明するが、基本的には既存のHDMI規格をそのまま適用してあり、HDMIケーブル1の構成などは従来と同じである。本例の場合には、HDMIケーブル1を使用して、原色信号であるRデータとGデータとBデータとを伝送する。また、本例のシステムで扱う、色域が従来の信号を、sRGB信号と称し、色域を広域化した信号を、xvYCC信号と称する。sRGB信号でのRデータとGデータとBデータとして、データの値が0から1で各色の値を示すようにした場合、xvYCC信号でのRデータとGデータとBデータについては、各色のデータが、0未満のマイナス値及び1を超える値になる場合もあり得る。この0未満のマイナス値及び1を越える値になる場合が、従来のsRGB信号で表現できない色域であることを示している。
【0024】
まず、ビデオ記録再生装置10について説明すると、ビデオ記録再生装置10は記録再生部11を備え、映像データや音声データを記録し再生することができる。記録再生部11としては、例えばハードディスクドライブ(HDD)装置を使用できる。記録再生部11で再生して得た映像データがアナログ信号である場合には、アナログ・デジタル変換回路12に供給し、デジタルデータ化して、伝送処理する。再生して得た音声データは、音声処理部14に供給する。
【0025】
アナログ・デジタル変換回路12で各色ごとにデジタル化したRGBデータ、又は記録再生部11から既にデジタル化されて供給されたRGBデータは、分離回路13に供給する。分離回路13は、色域が広域化された原色信号を、各色ごとに、sRGB信号の色域内の映像データRGBinと、sRGB信号の色域を超えた色域の映像データRGBoutとに分離する。例えば、sRGB信号の色域を超えた画素についての、sRGB信号の色域内の映像データRGBinは、色度の上限値又は下限値の値となり、sRGB信号の色域を超えた色域の映像データRGBoutは、その上限値又は下限値と、本来の値との差分値を示す値とする。本例の場合、sRGB信号の色域内の映像データRGBinと、sRGB信号の色域を超えた色域の映像データRGBoutとは、それぞれ1ピクセルが1色あたり8ビットのデータ(即ち3色合わせて1ピクセルあたり24ビットのデータ)としてあり、結局、両映像データを合わせると、1ピクセルのデータが48ビットで構成されることになる。
【0026】
音声処理部14は、再生又は受信して得た音声データを、伝送用の音声データとする処理が行われる。
【0027】
分離回路13及び音声処理部14が出力する映像データ及び音声データは、HDMI伝送処理部20に供給する。HDMI伝送処理部20は、HDMI規格のインターフェースの伝送処理を行う回路部であり、例えば集積回路化してある。HDMI伝送処理部20に供給される映像データ及び音声データは、多重化回路21で多重化する。
【0028】
ここでは、sRGB信号の色域内の映像データRGBinと、sRGB信号の色域を超えた色域の映像データRGBoutとが、1ピクセルの1色ごとに8ビットで構成されているので、1ピクセルの1色の伝送に16ビット期間を使用し、その16ビットの伝送期間の前半に色域内映像データRGBinを配置し、後半に色域の映像データRGBoutを配置する。具体的なデータ配置と伝送状態の詳細は後述する。
【0029】
音声データについては、映像データが伝送されるチャンネルのブランキング期間を使用して伝送するように、多重化を行うようにしてある。この音声データをブランキング期間に配置して伝送する処理は、HDMI規格でフォーマット化された一般的な伝送処理である。
【0030】
そして、多重化回路21で多重化された伝送用のデータを、HDCP暗号化部22で暗号化する。HDCP暗号化部22は、HDCP(High-bandwidth Digital Content Protection System)規格で、少なくとも映像データが伝送されるチャンネルの暗号化を行うようにしてある。ここでの暗号化は、1チャンネルの8ビットのデータを単位として行うようにしてある。
【0031】
HDCP暗号化部22で暗号化されたデータは、伝送処理部23に供給し、各色のピクセルデータを個別のチャンネルに配置し、またピクセルクロックチャンネルや制御データチャンネルなども、それぞれ対応したクロックやデータとし、HDMI端子24に接続されたHDMIケーブル1に送出する。
【0032】
HDMIケーブル1は、テレビジョン受像機30のHDMI端子41に接続するようにしてある。
次にテレビジョン受像機30の構成について説明する。テレビジョン受像機30のHDMI端子41に接続されたHDMIケーブル1で伝送されたデータは、HDMI伝送処理部40内の伝送処理部42で、ピクセルクロックに同期して検出(受信)される。検出された各チャンネルのデータは、HDCP復号化部42で送信時の暗号化からの復号化を行う。ここでの復号化についても、1チャンネルごとに8ビット単位で行われる。
【0033】
復号化されたデータは、多重分離回路44に供給して、各チャンネルに多重化されたデータを分離する。ここでの分離処理としては、映像が伝送されるチャンネルのブランキング期間に配置された音声データを、映像データから分離する。また、映像データとして、色域が広域化された映像データである場合には、sRGB信号の色域内の映像データRGBinと、sRGB信号の色域を超えた色域の映像データRGBoutとを分離する。
【0034】
多重分離回路44で分離された各映像データについては、映像加算部31に供給する。映像加算部31では、このテレビジョン受像機30の制御部36からの指示に基づいて、sRGB信号の色域内の映像データRGBinと、sRGB信号の色域を超えた色域の映像データRGBoutとを加算して、各色の1ピクセルあたり、1つの映像データとする。そして、加算された映像データを、デジタル・アナログ変換回路32に供給して、各色のピクセルごとに個別のアナログ映像データRA,GA,BAとする。
【0035】
変換されたアナログ映像データRA,GA,BAは、表示処理部33に供給する。表示処理部33では、表示パネル60を駆動する処理を行う。
【0036】
多重分離回路44で分離された音声データについては、音声処理部34に供給し、アナログ変換などの音声処理を行い、処理された出力を出力処理部35に供給して、スピーカ駆動用に増幅などの処理を行い、出力処理部35に接続されたスピーカ51,52から出力させる。
【0037】
多重分離回路44で分離された制御データについては、制御部36に供給する。なお、制御データについては、制御データ用のチャンネルを使用して、このテレビジョン受像機30の制御部36から、ビデオ記録再生装置10側の制御部15に送ることもできる。
【0038】
図2は、ビデオ記録再生装置10の伝送処理部23と、テレビジョン受像機30の伝送処理部42との間で、HDMIケーブル1で伝送される各チャンネルのデータ構成例を示した図である。図2に示すように、映像データを伝送するチャンネルとして、チャンネル0と、チャンネル1と、チャンネル2の3つのチャンネルが用意してあり、さらにピクセルクロックを伝送するクロックチャンネルが用意してある。また、制御データ伝送チャンネルとしての、DDC(Display Data Channel)ライン及びCEC(Consumer Electronics Control)ラインが用意してある。DDCラインは、主として表示を制御するデータを伝送する伝送路であり、CECラインは、主として接続された機器間で、機器制御のデータなどを相互に伝送する伝送路である。
【0039】
送信側では、映像データを伝送するチャンネル毎に、伝送処理部(送信部)23a,23b,23cが伝送処理部23内に用意してあり、受信側でも、映像データを伝送するチャンネル毎に、伝送処理部(データ受信部)42a,42b,42cが伝送処理部42内に用意してある。
【0040】
各チャンネルの構成について説明すると、チャンネル0では、Bデータのピクセルデータと、垂直同期データと水平同期データと補助データとを伝送するようにしてある。チャンネル1では、Gデータのピクセルデータと、2種類の制御データ(CTL0,CTL1)と、補助データとを伝送するようにしてある。チャンネル2では、Rデータのピクセルデータと、2種類の制御データ(CTL2,CTL3)と、補助データとを伝送するようにしてある。
【0041】
図3は、本例の伝送構成で伝送される映像データの、1フレームのライン構成及びピクセル構成を示した図である。本例の場合に伝送される映像データ(主映像データ)は、非圧縮データ(即ち1画素単位の映像データ)であり、垂直ブランキング期間及び水平ブランキング期間が付加されている。具体的には、図3の例では、表示される映像エリア(アクティブビデオエリアとして示すエリア)として、480ライン×720ピクセルのピクセルデータとしてあり、ブランキング期間まで含めたライン数及びピクセル数として525ライン及び858ピクセルとしてある。ブランキング期間中のダブルハッチング(右方向の斜線と左方向の斜線の重なり部分)で示すエリアはデータアイランドと称される、補助データが付加可能な期間である。
【0042】
次に、本例の伝送構成で、ピクセルデータが伝送されるチャンネル0とチャンネル1とチャンネル2を使用して、映像データが伝送される状態について説明する。本例の伝送構成は、HDMI規格に準拠した伝送構成であり、通常の映像データ(即ち色域が拡大されてない映像データ)を伝送する場合には、背景技術の欄で説明した、図10又は図11の伝送構成で、映像データの伝送が行われる。即ち、各色の1ピクセルが8ビットで構成されている場合、1ピクセルクロックに同期して、チャンネル0,1,2で、それぞれ1ピクセルのデータである8ビットデータが配置されて、伝送される(図10の伝送処理)。なお、ここでの8ビットデータとは、送信用で入力させるデータのビット数であり、受信側で取り出されるデータのビット数である。実際にHDMI規格で伝送する際には、8ビットのデータを8−10変換で10ビットデータに変換して、ケーブルで相手側に伝送し、受信側で10ビットデータを8ビットに戻す10−8変換を行う、TMDS(Transition Minimized Differential Signaling)というシリアル伝送方式により伝送を行う構成としてある。
【0043】
そして、色域を広域化した映像データをビデオ記録再生装置10からテレビジョン受像機30に伝送する場合には、図4に示す伝送構成とする。この例では、sRGB信号の色域内の映像データRGBinを、1ピクセル8ビットで構成し、sRGB信号の色域を超えた色域の映像データRGBoutについても、1ピクセル8ビットで構成し、それぞれの映像データを同じデータ量としてある。伝送構成としては、1ピクセルの映像データRGBinと映像データRGBoutを、クロックチャンネルで伝送されるピクセルクロックの2クロック周期で伝送する。即ち、2ピクセルクロック期間の前半のクロック周期(図4のフェーズ0,2の期間)に、B,G,Rの各色の、色域内の映像データRGBinを、それぞれチャンネル0,1,2を使用して伝送する。そして、2ピクセルクロック期間の後半のクロック周期(図4のフェーズ1,3の期間)に、B,G,Rの各色の、超えた色域の映像データRGBoutを、それぞれチャンネル0,1,2を使用して伝送する。前半の映像データRGBinと、後半の映像データRGBoutとは、それぞれ同じ画素位置のデータである。ブランキング期間についても、2ピクセルクロック期間の前半と後半とで、同じデータ構成のブランキング期間用のデータを伝送する。
【0044】
図4の伝送状態をより詳細に説明すると、R,G,Bそれぞれで、[in]を付加して示したデータが、対応した原色についての、sRGB信号の色域内の映像データである。また、[out]を付加して示したデータが、対応した原色についての、sRGB信号の色域外の映像データである。
例えば、ピクセル0のデータについては、チャンネル0のBデータについては、フェーズ0で、8ビットの色域内青データB0inを伝送し、次のフェーズ1で、8ビットの色域外青データB0outを伝送する。チャンネル1のGデータについては、フェーズ0で、8ビットの色域内緑データG0inを伝送し、次のフェーズ1で、8ビットの色域外緑データG0outを伝送する。チャンネル2のRデータについては、フェーズ0で、8ビットの色域内赤データR0inを伝送し、次のフェーズ1で、8ビットの色域外赤データR0outを伝送する。なお、図4の色域を広くした映像データを伝送する場合には、図10に示した通常表示用の各色8ビットの映像データを伝送する場合に比べて、画素クロックは2倍の周波数にする必要がある。
【0045】
図5は、このような色域を広くした映像データの伝送構成とした場合に、ソース側から、伝送データの構成について指示するデータである、VSDBと称されるデータで、多重化データ例をシンク側に指示する場合の例である。VSDBのデータは、DDCライン(図2)を使用して伝送されるデータである。この例のVSDBの場合には、6バイト目のデータで、1ピクセルが何ビットのデータであるかが示される。本例の場合には、1色の1ピクセルごとに8ビットで合計24ビットのデータであることが示される。そして、色域を広くした映像データの伝送であるか否か(即ちxvYCC信号の伝送であるか否か)が、所定のビット位置を使用して示される。
【0046】
シンク側機器(テレビジョン受像機30)の制御部36(図1)では、このVSDBのデータを判断して、図4に示した色域を広くした映像データの伝送であるのか、或いは図10又は図11に示した通常の映像データ伝送であるのかが、判断される。図10の例の1ピクセルが8ビットか、図11の例の1ビットが167ビットかの区別についても、図5の6バイト目の1ピクセルが何ビットのデータかで判断される。
【0047】
テレビジョン受像機30の制御部36では、この判断に基づいて、受信した映像データから、帯域内映像データと帯域外映像データの分離や、それぞれの映像データを使用した色域を拡大した表示処理を実行させる。
【0048】
なお、テレビジョン受像機30として、色域を拡大した表示ができない従来の色域の表示能力である場合には、図1に示した多重分離回路44で、帯域内映像データと帯域外映像データとを分離した後、sRGB信号の色域内の映像データRGBinだけを後段の回路に供給するようにすれば、従来と同様の処理が可能となる。この従来構成の場合には、映像加算部31については不要となる。
【0049】
ここで、図6〜図8を参照して、テレビジョン受像機やコンピュータ装置用モニタなどで表現可能な色範囲について説明する。
図6は、原色信号であるRGBデータを入力して表示可能な表示装置において、立体(色空間)を投影したu’,v’色度図である。横軸がu’であり縦軸がv’である。このu’,v’色度図として示された図6において、自然界に存在する色の範囲が、外側の扇形形状で示されている。この図6中で、例えば3点Rs,Gs,Bsで囲って示される3角形の範囲が、通常のRGBデータで表現可能な色域である。この三角形の内部の色は、各原色RGBの値をそれぞれアナログ値の場合に0から1までの範囲の値で与えることにより、一意に決めることができる。このRGBの3原色をどこにするかで、表示できる色域が決定されるが、その規格のひとつとして、sRGB規格がある。アナログ信号の場合に0から1までの範囲で表現される値は、デジタルの場合には、例えば8ビットで量子化された値で示されることになる。
【0050】
従来は、表示手段として使用されていた陰極線管(CRT)の蛍光体の特性から、ほぼ図6に示されるようなsRGB規格の頂点(3原色の色度点)Rs,Gs,Bsと、モニタが表現可能な3原色点が一致していた。ところが、最近CRT以外の各種FPD、およびプロジェクタタイプのモニタが増え、モニタの再現できる色域がsRGB規格で規定された色域の外側に広がってきて、より広い色域が再現可能になってきた。頂点Rf,Gf,Bfで囲まれた図6に破線で示した色域の例は、xvYCC信号として映像データを構成させた場合に、表示可能な色域を示したものである。図6中に示した各点は、実際に存在した色度を示したものである。この図6から判るように、画像中には、sRGB信号で表現可能な色域を超えて、xvYCC信号の色域で表現可能な範囲の色となる場合が相当ある。
【0051】
図7は、xvYCC信号とsRGB信号の色域の関係を示した図である。縦軸が輝度信号Y、横軸が色差信号Cb,Crである。xvYCC信号の規格では、図7に示すように、sRGB信号と同じ原色点を用いつつ、一つの輝度信号Yと二つの色差信号Cb,Crで表現し、sRGB信号の色域を包含するよう規格化されている。xvYCC信号がYデータ,Cbデータ,Crデータで表現された場合の、Rデータ,Gデータ,Bデータへの変換行列式については、背景技術欄で説明したとおりである。図7に示すように、sRGB信号としての領域は、菱形の領域で示され、xvYCC信号としての拡張利領域が、その菱形のsRGB信号の周辺に設定されている。
【0052】
図8は、3次元的に示された色空間上に、sRGB信号の色域とxvYCC信号の色域とを示したものである。sRGB信号の色域を示す四角の立方体は、xvYCC信号の色域を示す四角の立方体よりも小さく表現されている。図8中の各点は、xvYCC信号として映像データを構成させた場合に、実際に存在した色度を示したものである。ここで、sRGB信号の色域を示す四角の立方体の外側に位置する点が、本例でのsRGB信号の域外のデータとして表現されるデータになる。
【0053】
従って、ソース機器で伝送させるデータがxvYCC信号である場合に、そのxvYCC信号から、図1に示した分離回路13で、簡単に、色域内のピクセルデータと色域外のピクセルデータとに分離することができ、図4に示したデータ構成として伝送することが容易に対処できる。シンク機器側では、色域内のピクセルデータと色域外のピクセルデータとを加算するだけで、元のxvYCC信号の色域の信号が得られ、簡単に色域が広い信号を受信できる。
【0054】
また、図4に示すように伝送する場合において、sRGB信号の色域を超えた画素についての、sRGB信号の色域内の映像データRGBinは、色度の上限値又は下限値の値となるので、そのsRGB信号の色域内の映像データRGBinだけを使用して表示処理をおこなった場合、従来のsRGB信号の色域での表示としては、完全な表示が可能である。このようなsRGB信号の色域での表示が可能な表示装置の場合には、受信したデータからsRGB信号の色域内の映像データRGBinを分離するだけでよく、簡単に対処可能である。
【0055】
このように、本例の伝送処理を行うことで、ソース機器とシンク機器とをHDMIケーブル1で接続するだけで、広色域の映像データ伝送と、通常表示用の映像データ伝送とを行うことができ、1組のケーブルで接続するだけの簡単な接続構成で、双方に対応した映像データ伝送が可能になる。しかも、図10や図11に示した通常表示用の映像データ伝送と、図4に示した広色域の映像データ伝送とは、基本的な伝送構成については同じであり、HDMI規格に準拠した上で、広色域の映像データ伝送が可能になる。
【0056】
なお、上述した図4の説明では、1ピクセル各色8ビットのデータを伝送する場合の例としたが、例えば1ピクセル各色16ビットの色域内の色データと色域外のデータのような、他のビット数で構成された映像データを伝送する場合などにも対処可能である。この場合には、1ピクセルの伝送に必要な画素クロックの周期を対応して増やし、クロック周波数を対応して高速化すればよい。
【0057】
また、上述した実施の形態では、HDMI規格のインターフェースを前提として説明したが、その他の同様な伝送規格にも適用可能である。HDMI規格のケーブルで接続するソース側機器とシンク側機器についても、図1に示した記録再生装置とテレビジョン受像機以外の映像機器で接続する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施の形態によるシステム構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態による伝送チャンネル構成例を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態によるビット構成例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態によるデータパッキング例を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態によるVSDBのデータ構成例を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態によるディスプレイの表示可能領域と、sRGB信号で表現される色域との関係例を示す説明図である。
【図7】sRGB信号とxvYCC信号の色域の関係を示す説明図である。
【図8】sRGB信号とxvYCC信号の色域を、色空間で示した説明図である。
【図9】HDMI規格による伝送例を示した説明図である。
【図10】HDMI規格のデータパッキング例(1ピクセル8ビットの例)を示す説明図である。
【図11】HDMI規格のデータパッキング例(1ピクセル16ビットの例)を示す説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1…HDMIケーブル、10…ビデオ記録再生装置(ソース側機器)、11…記録再生部、12…アナログ・デジタル変換回路、13…分離部、14…音声処理部、15…制御部、16…チューナ、20…HDMI伝送処理部、21…多重化回路、22…HDCP暗号化部、23…伝送処理部、24…HDMI端子、30…テレビジョン受像機(シンク側機器)、31…映像選択部、32…デジタル・アナログ変換回路、33…表示処理部、34…音声処理部、35…出力処理部、36…制御部、37…映像処理部、38…表示処理部、40…HDMI伝送処理部、41…HDMI端子、42…伝送処理部、43…HDCP復号化部、44…多重分離回路、60…表示パネル
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル映像・音声入出力インターフェース規格を使用して色帯域が広帯域な映像データを伝送する技術に関し、例えば、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)規格と称されるデジタル映像・音声入出力インターフェース規格やDVI(Digital Video Interface)規格に適用して好適な伝送方法及び伝送システム、並びにこの伝送システムに適用される送信装置及び受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータとディスプレイを接続するためのインターフェース規格であるDVI(Digital Video Interface)規格に加え、複数台の映像機器の間で、非圧縮のデジタル映像データなどを伝送させるインターフェース規格として、HDMI規格と称されるものが開発されている。HDMI規格は、映像データを、各色の原色データとして、1画素単位で個別に伝送する規格である(以下画素をピクセルと称する場合もある)。音声データ(オーディオデータ)についても、映像データのブランキング期間に、映像データの伝送ラインを使用して伝送するようにしてある。伝送する原色データは、赤,緑,青の加法混色の3チャンネルの原色データ(Rデータ,Gデータ,Bデータ)を伝送する場合と、Y,Cb,Crといった輝度および色差信号を伝送する場合とがある。
【0003】
図9は、Rデータ,Gデータ,Bデータの原色データを伝送する場合と、Yデータ,Cbデータ,Crデータを伝送する場合の例を示したものである。図9(a)に示すように、ビデオディクス再生装置などのビデオ再生装置からテレビジョン受像機に、HDMI規格のケーブルを使用して映像データを伝送する場合には、Rデータ,Gデータ,Bデータの原色データを伝送する場合と、Yデータ,Cbデータ,Crデータの輝度データ及び色差データを伝送する場合のいずれもあり得る。これに対して、図9(b)に示すように、ビデオ再生装置からコンピュータ装置用モニタに、HDMI規格のケーブルを使用して映像データを伝送する場合には、Rデータ,Gデータ,Bデータの原色データを伝送する構成とされる。
【0004】
Yデータ,Cbデータ,Crデータと、Rデータ,Gデータ,Bデータとについては、予め決められた行列式で変換が可能である。例えば、後述するxvYCC信号としてのYデータ,Cbデータ,Crデータと、sRGB信号としてのRデータ,Gデータ,Bデータとは、以下の行列によって変換可能である。同様の演算式で、Yデータ,Cbデータ,CrデータからRデータ,Gデータ,Bデータに変換することも可能である。
Y= 0.2126R+0.7152G+0.0722B
Cb=−0.1146R−0.3854G+0.5000B
Cr= 0.5000R−0.4542G−0.0458B
【0005】
HDMI規格では、各色の1ピクセルのデータは、基本的に8ビットを単位として構成される。水平同期信号や垂直同期信号などの同期信号についても、それぞれの同期信号が配置されるタイミングに送信される。また、映像データのピクセルクロックの伝送ラインと、制御データの伝送ラインについても設けてある。
【0006】
図10は、HDMI規格のインターフェースで、原色データ(Rデータ,Gデータ,Bデータ)を伝送する場合の例の概要を示した図である。映像データについては、チャンネル0とチャンネル1とチャンネル2との3つのチャンネルで、BデータとGデータとRデータとを個別に伝送するようにしてある。図10の例では、ピクセル0、ピクセル1、ピクセル2、ピクセル3の4画素のデータを送る期間を示してあり、それぞれのチャンネルの1ピクセルのデータが8ビットで構成されている。
【0007】
即ち、Bデータ(青データ)については、チャンネル0を使用して、ピクセル0の期間に、8ビットのB0データが送られ、以下、8ビットのB1データ、B2データ、B3データがピクセルクロック(図示せず)に同期して順に送られる。Gデータ(緑データ)については、チャンネル1を使用して、ピクセル0の期間に、8ビットのG0データが送られ、以下、8ビットのG1データ、G1データ、G2データ、G3データがピクセルクロックに同期して順に送られる。Rデータ(赤データ)については、チャンネル2を使用して、ピクセル0の期間に、8ビットのR0データが送られ、以下、8ビットのR1データ、R2データ、R3データがピクセルクロックに同期して順に送られる。
【0008】
図10では示していないが、HDMI規格のインターフェースでは、別のチャンネルを使用して、制御データやピクセルクロックを伝送するようにしてある。制御データについては、映像データの送信側機器(ソース側機器)から受信側機器(シンク側機器)への伝送だけでなく、受信側機器(シンク側機器)から送信側機器(ソース側機器)への伝送も行える構成としてある。また、ソース側機器では、8ビット単位でデータを暗号化してあり、シンク側機器では、8ビット単位でデータをその暗号化からの復号化を行うようにしてある。
【0009】
このように、HDMI規格のインターフェースでは、1ピクセルを、1色あたり8ビットで送ることを前提として規格化されたものである。一方、近年、色の解像度を高めることが検討されており、1ピクセルの1色あたりのビット数を、8ビット以上とすることが提案されている。例えば、1ピクセルの1色あたりのビット数を、16ビットとすることが提案されている。
【0010】
図11は、HDMI規格のインターフェースで、1ピクセルの1色あたり16ビットのデータを伝送することを想定した、伝送状態の例である。HDMI規格は既に説明したように、8ビットを1単位でデータを伝送することを想定した規格であり、1ピクセルクロックで、8ビット伝送する構成としてあり、16ビットのデータを伝送するためには、2ピクセルクロックが必要である。図11の例では、2ピクセルクロックで、1ピクセルのデータを伝送するデータ配置としてある。図11に示したフェーズ0,1,2,3が、それぞれ1ピクセルクロックの1周期を示している。この図11に示すように、2クロック期間を利用することで、2倍のビット数である1ピクセル16ビットの映像データを伝送することができる。なお、この図11に示すデータ伝送の場合には、1つのピクセルの伝送に、2ピクセルクロック期間が必要であるので、ピクセルクロックについても対応して2倍に高周波数化する必要がある。
【0011】
特許文献1には、HDMI規格の詳細についての記載がある。
【特許文献1】WO2002/078336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、映像データを受信して表示させる表示装置では、色表現能力を従来よりも向上させたものが開発されている。即ち、従来の表示装置が扱う映像データの色表現能力は、基本的には陰極線管(CRT)を表示手段として使用することを前提として、その陰極線管で表現可能な色範囲を想定して、上述したRデータ,Gデータ,Bデータの原色データで、表現される色範囲を設定してある。
【0013】
一方、表示装置が使用される表示手段として、陰極線管よりも色表現範囲が優れたものが登場してきている。例えば、液晶ディスプレイの場合には、色表現範囲は、バックライトとして使用される光源の特性により色表現範囲が決まり、陰極線管よりも色表現範囲を広帯域化することが比較的容易に行える。
【0014】
このような色表現範囲を広帯域化する表示装置が扱う映像データ(動画データ)の規格として、近年、xvYCC信号と称される規格が策定された。このxvYCC信号に準拠して表現された映像データを表示処理することで、色表現範囲を広帯域化した映像の表示が可能となる。xvYCC信号の詳細については、後述する発明の実施の形態の中で説明する。なお、以下の説明では、従来の色表現範囲のR,G,Bデータについては、sRGB信号と称する。
【0015】
ところで、xvYCC信号のような色表現範囲を広くした映像データを、sRGB信号の伝送路で伝送しようとすると、通常、sRGB信号の色域以外の情報を送ることができない問題がある。特に、図9に示したように、パーソナルコンピュータ装置用のモニタに、HDMI規格の伝送ラインで伝送する場合には、RGBデータの形式でしか伝送できないため、sRGB信号の色域を超える色域のデータが伝送できない問題があった。
【0016】
より広いより広い色域を扱うため、例えば別の色度点を定義して、sRGB信号と互換性のないものとする方法がある。あるいは、各RGBのデータの色度点の外を定義する値を使用することでも可能になる。具体的には、同じ色度点で、色度点より外の色を定義するために、具体的には各原色RGBデータの値が1を超えた値、もしくはマイナスの値をとることを意味する。
ところが、通常のモニタや映像機器においては、異なる色度点をもつ信号を、同一の端子で扱うことは、切り替えが煩雑となり実現が困難である問題がある。また、RGBの値が1を超えた値、もしくはマイナスの値を送ることは、信号を受ける側のシステムの構成が、その信号に対応しなければならないために、対応が困難である問題がある。
【0017】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、HDMI規格などの既存の映像データの伝送規格を利用して、色度点の異なる映像データを伝送できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、所定ビット単位の映像データを、画素クロックに同期して、色データ毎に個別の伝送ラインを使用して、ソース側装置からシンク側装置に伝送する伝送方式を利用して映像データを伝送するものに適用される。そして、ソース側装置からシンク側装置に伝送する映像データとして、規定された色帯域内の色データの映像データと、前記規定された帯域外の色データの映像データとする。規定された色帯域内の色データの映像データと、規定された帯域外の色データの映像データとは、それぞれ1画素毎に所定ビット数で構成して、画素クロックに同期したタイミングで伝送して、ソース側装置からシンク側装置に、規定された色帯域を越える映像データを伝送するようにしたものである。
【0019】
このようにしたことで、1組の伝送ラインを使用して、規定された色帯域を越える映像データが、色帯域内の色データと、色帯域を越える色データとに分けて伝送され、ビット数の多い映像データを伝送可能な伝送規格に適用可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、1組の伝送ラインを使用して、規定された色帯域を越える映像データが、色帯域内の色データと、色帯域を越える色データとに分けて伝送され、ビット数の多い映像データを伝送可能な伝送規格に適用可能となり、例えばHDMI規格を利用して簡単に規定された色帯域を越える映像データを伝送できるようになる。また、受信側の表示装置が規定された色帯域を越える映像データの処理に対応していない場合には、色帯域を越える色データを無視して受信処理すればよく、広い色域に対応した表示用の映像伝送と、通常の色域に対応した表示用の映像伝送との互換性が保てる。さらに、伝送形態としては、伝送規格で定められたビット数(例えば8ビット)の伝送単位を維持した伝送形態であり、所定ビット単位での暗号化や復号化が、規格で定められた状態で行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態を、図1〜図8を参照して説明する。
【0022】
本例においては、HDMI規格でソース側機器からシンク側機器に映像データなどを伝送する伝送システムに適用したものである。図1は、本例のシステム構成例を示した図で、ソース側機器であるビデオ記録再生装置10と、シンク側機器であるテレビジョン受像機30とを、HDMIケーブル1で接続して、ビデオ記録再生装置10から映像データや音声データを、テレビジョン受像機30に伝送する構成としてある。本例のビデオ記録再生装置10は、色域が広帯域の映像データを記録し再生することができる構成としてあり、テレビジョン受像機30は、色域が広帯域の映像の表示処理が行える受像機としてある。
【0023】
以下の説明でHDMI規格について、必要な構成などを順に説明するが、基本的には既存のHDMI規格をそのまま適用してあり、HDMIケーブル1の構成などは従来と同じである。本例の場合には、HDMIケーブル1を使用して、原色信号であるRデータとGデータとBデータとを伝送する。また、本例のシステムで扱う、色域が従来の信号を、sRGB信号と称し、色域を広域化した信号を、xvYCC信号と称する。sRGB信号でのRデータとGデータとBデータとして、データの値が0から1で各色の値を示すようにした場合、xvYCC信号でのRデータとGデータとBデータについては、各色のデータが、0未満のマイナス値及び1を超える値になる場合もあり得る。この0未満のマイナス値及び1を越える値になる場合が、従来のsRGB信号で表現できない色域であることを示している。
【0024】
まず、ビデオ記録再生装置10について説明すると、ビデオ記録再生装置10は記録再生部11を備え、映像データや音声データを記録し再生することができる。記録再生部11としては、例えばハードディスクドライブ(HDD)装置を使用できる。記録再生部11で再生して得た映像データがアナログ信号である場合には、アナログ・デジタル変換回路12に供給し、デジタルデータ化して、伝送処理する。再生して得た音声データは、音声処理部14に供給する。
【0025】
アナログ・デジタル変換回路12で各色ごとにデジタル化したRGBデータ、又は記録再生部11から既にデジタル化されて供給されたRGBデータは、分離回路13に供給する。分離回路13は、色域が広域化された原色信号を、各色ごとに、sRGB信号の色域内の映像データRGBinと、sRGB信号の色域を超えた色域の映像データRGBoutとに分離する。例えば、sRGB信号の色域を超えた画素についての、sRGB信号の色域内の映像データRGBinは、色度の上限値又は下限値の値となり、sRGB信号の色域を超えた色域の映像データRGBoutは、その上限値又は下限値と、本来の値との差分値を示す値とする。本例の場合、sRGB信号の色域内の映像データRGBinと、sRGB信号の色域を超えた色域の映像データRGBoutとは、それぞれ1ピクセルが1色あたり8ビットのデータ(即ち3色合わせて1ピクセルあたり24ビットのデータ)としてあり、結局、両映像データを合わせると、1ピクセルのデータが48ビットで構成されることになる。
【0026】
音声処理部14は、再生又は受信して得た音声データを、伝送用の音声データとする処理が行われる。
【0027】
分離回路13及び音声処理部14が出力する映像データ及び音声データは、HDMI伝送処理部20に供給する。HDMI伝送処理部20は、HDMI規格のインターフェースの伝送処理を行う回路部であり、例えば集積回路化してある。HDMI伝送処理部20に供給される映像データ及び音声データは、多重化回路21で多重化する。
【0028】
ここでは、sRGB信号の色域内の映像データRGBinと、sRGB信号の色域を超えた色域の映像データRGBoutとが、1ピクセルの1色ごとに8ビットで構成されているので、1ピクセルの1色の伝送に16ビット期間を使用し、その16ビットの伝送期間の前半に色域内映像データRGBinを配置し、後半に色域の映像データRGBoutを配置する。具体的なデータ配置と伝送状態の詳細は後述する。
【0029】
音声データについては、映像データが伝送されるチャンネルのブランキング期間を使用して伝送するように、多重化を行うようにしてある。この音声データをブランキング期間に配置して伝送する処理は、HDMI規格でフォーマット化された一般的な伝送処理である。
【0030】
そして、多重化回路21で多重化された伝送用のデータを、HDCP暗号化部22で暗号化する。HDCP暗号化部22は、HDCP(High-bandwidth Digital Content Protection System)規格で、少なくとも映像データが伝送されるチャンネルの暗号化を行うようにしてある。ここでの暗号化は、1チャンネルの8ビットのデータを単位として行うようにしてある。
【0031】
HDCP暗号化部22で暗号化されたデータは、伝送処理部23に供給し、各色のピクセルデータを個別のチャンネルに配置し、またピクセルクロックチャンネルや制御データチャンネルなども、それぞれ対応したクロックやデータとし、HDMI端子24に接続されたHDMIケーブル1に送出する。
【0032】
HDMIケーブル1は、テレビジョン受像機30のHDMI端子41に接続するようにしてある。
次にテレビジョン受像機30の構成について説明する。テレビジョン受像機30のHDMI端子41に接続されたHDMIケーブル1で伝送されたデータは、HDMI伝送処理部40内の伝送処理部42で、ピクセルクロックに同期して検出(受信)される。検出された各チャンネルのデータは、HDCP復号化部42で送信時の暗号化からの復号化を行う。ここでの復号化についても、1チャンネルごとに8ビット単位で行われる。
【0033】
復号化されたデータは、多重分離回路44に供給して、各チャンネルに多重化されたデータを分離する。ここでの分離処理としては、映像が伝送されるチャンネルのブランキング期間に配置された音声データを、映像データから分離する。また、映像データとして、色域が広域化された映像データである場合には、sRGB信号の色域内の映像データRGBinと、sRGB信号の色域を超えた色域の映像データRGBoutとを分離する。
【0034】
多重分離回路44で分離された各映像データについては、映像加算部31に供給する。映像加算部31では、このテレビジョン受像機30の制御部36からの指示に基づいて、sRGB信号の色域内の映像データRGBinと、sRGB信号の色域を超えた色域の映像データRGBoutとを加算して、各色の1ピクセルあたり、1つの映像データとする。そして、加算された映像データを、デジタル・アナログ変換回路32に供給して、各色のピクセルごとに個別のアナログ映像データRA,GA,BAとする。
【0035】
変換されたアナログ映像データRA,GA,BAは、表示処理部33に供給する。表示処理部33では、表示パネル60を駆動する処理を行う。
【0036】
多重分離回路44で分離された音声データについては、音声処理部34に供給し、アナログ変換などの音声処理を行い、処理された出力を出力処理部35に供給して、スピーカ駆動用に増幅などの処理を行い、出力処理部35に接続されたスピーカ51,52から出力させる。
【0037】
多重分離回路44で分離された制御データについては、制御部36に供給する。なお、制御データについては、制御データ用のチャンネルを使用して、このテレビジョン受像機30の制御部36から、ビデオ記録再生装置10側の制御部15に送ることもできる。
【0038】
図2は、ビデオ記録再生装置10の伝送処理部23と、テレビジョン受像機30の伝送処理部42との間で、HDMIケーブル1で伝送される各チャンネルのデータ構成例を示した図である。図2に示すように、映像データを伝送するチャンネルとして、チャンネル0と、チャンネル1と、チャンネル2の3つのチャンネルが用意してあり、さらにピクセルクロックを伝送するクロックチャンネルが用意してある。また、制御データ伝送チャンネルとしての、DDC(Display Data Channel)ライン及びCEC(Consumer Electronics Control)ラインが用意してある。DDCラインは、主として表示を制御するデータを伝送する伝送路であり、CECラインは、主として接続された機器間で、機器制御のデータなどを相互に伝送する伝送路である。
【0039】
送信側では、映像データを伝送するチャンネル毎に、伝送処理部(送信部)23a,23b,23cが伝送処理部23内に用意してあり、受信側でも、映像データを伝送するチャンネル毎に、伝送処理部(データ受信部)42a,42b,42cが伝送処理部42内に用意してある。
【0040】
各チャンネルの構成について説明すると、チャンネル0では、Bデータのピクセルデータと、垂直同期データと水平同期データと補助データとを伝送するようにしてある。チャンネル1では、Gデータのピクセルデータと、2種類の制御データ(CTL0,CTL1)と、補助データとを伝送するようにしてある。チャンネル2では、Rデータのピクセルデータと、2種類の制御データ(CTL2,CTL3)と、補助データとを伝送するようにしてある。
【0041】
図3は、本例の伝送構成で伝送される映像データの、1フレームのライン構成及びピクセル構成を示した図である。本例の場合に伝送される映像データ(主映像データ)は、非圧縮データ(即ち1画素単位の映像データ)であり、垂直ブランキング期間及び水平ブランキング期間が付加されている。具体的には、図3の例では、表示される映像エリア(アクティブビデオエリアとして示すエリア)として、480ライン×720ピクセルのピクセルデータとしてあり、ブランキング期間まで含めたライン数及びピクセル数として525ライン及び858ピクセルとしてある。ブランキング期間中のダブルハッチング(右方向の斜線と左方向の斜線の重なり部分)で示すエリアはデータアイランドと称される、補助データが付加可能な期間である。
【0042】
次に、本例の伝送構成で、ピクセルデータが伝送されるチャンネル0とチャンネル1とチャンネル2を使用して、映像データが伝送される状態について説明する。本例の伝送構成は、HDMI規格に準拠した伝送構成であり、通常の映像データ(即ち色域が拡大されてない映像データ)を伝送する場合には、背景技術の欄で説明した、図10又は図11の伝送構成で、映像データの伝送が行われる。即ち、各色の1ピクセルが8ビットで構成されている場合、1ピクセルクロックに同期して、チャンネル0,1,2で、それぞれ1ピクセルのデータである8ビットデータが配置されて、伝送される(図10の伝送処理)。なお、ここでの8ビットデータとは、送信用で入力させるデータのビット数であり、受信側で取り出されるデータのビット数である。実際にHDMI規格で伝送する際には、8ビットのデータを8−10変換で10ビットデータに変換して、ケーブルで相手側に伝送し、受信側で10ビットデータを8ビットに戻す10−8変換を行う、TMDS(Transition Minimized Differential Signaling)というシリアル伝送方式により伝送を行う構成としてある。
【0043】
そして、色域を広域化した映像データをビデオ記録再生装置10からテレビジョン受像機30に伝送する場合には、図4に示す伝送構成とする。この例では、sRGB信号の色域内の映像データRGBinを、1ピクセル8ビットで構成し、sRGB信号の色域を超えた色域の映像データRGBoutについても、1ピクセル8ビットで構成し、それぞれの映像データを同じデータ量としてある。伝送構成としては、1ピクセルの映像データRGBinと映像データRGBoutを、クロックチャンネルで伝送されるピクセルクロックの2クロック周期で伝送する。即ち、2ピクセルクロック期間の前半のクロック周期(図4のフェーズ0,2の期間)に、B,G,Rの各色の、色域内の映像データRGBinを、それぞれチャンネル0,1,2を使用して伝送する。そして、2ピクセルクロック期間の後半のクロック周期(図4のフェーズ1,3の期間)に、B,G,Rの各色の、超えた色域の映像データRGBoutを、それぞれチャンネル0,1,2を使用して伝送する。前半の映像データRGBinと、後半の映像データRGBoutとは、それぞれ同じ画素位置のデータである。ブランキング期間についても、2ピクセルクロック期間の前半と後半とで、同じデータ構成のブランキング期間用のデータを伝送する。
【0044】
図4の伝送状態をより詳細に説明すると、R,G,Bそれぞれで、[in]を付加して示したデータが、対応した原色についての、sRGB信号の色域内の映像データである。また、[out]を付加して示したデータが、対応した原色についての、sRGB信号の色域外の映像データである。
例えば、ピクセル0のデータについては、チャンネル0のBデータについては、フェーズ0で、8ビットの色域内青データB0inを伝送し、次のフェーズ1で、8ビットの色域外青データB0outを伝送する。チャンネル1のGデータについては、フェーズ0で、8ビットの色域内緑データG0inを伝送し、次のフェーズ1で、8ビットの色域外緑データG0outを伝送する。チャンネル2のRデータについては、フェーズ0で、8ビットの色域内赤データR0inを伝送し、次のフェーズ1で、8ビットの色域外赤データR0outを伝送する。なお、図4の色域を広くした映像データを伝送する場合には、図10に示した通常表示用の各色8ビットの映像データを伝送する場合に比べて、画素クロックは2倍の周波数にする必要がある。
【0045】
図5は、このような色域を広くした映像データの伝送構成とした場合に、ソース側から、伝送データの構成について指示するデータである、VSDBと称されるデータで、多重化データ例をシンク側に指示する場合の例である。VSDBのデータは、DDCライン(図2)を使用して伝送されるデータである。この例のVSDBの場合には、6バイト目のデータで、1ピクセルが何ビットのデータであるかが示される。本例の場合には、1色の1ピクセルごとに8ビットで合計24ビットのデータであることが示される。そして、色域を広くした映像データの伝送であるか否か(即ちxvYCC信号の伝送であるか否か)が、所定のビット位置を使用して示される。
【0046】
シンク側機器(テレビジョン受像機30)の制御部36(図1)では、このVSDBのデータを判断して、図4に示した色域を広くした映像データの伝送であるのか、或いは図10又は図11に示した通常の映像データ伝送であるのかが、判断される。図10の例の1ピクセルが8ビットか、図11の例の1ビットが167ビットかの区別についても、図5の6バイト目の1ピクセルが何ビットのデータかで判断される。
【0047】
テレビジョン受像機30の制御部36では、この判断に基づいて、受信した映像データから、帯域内映像データと帯域外映像データの分離や、それぞれの映像データを使用した色域を拡大した表示処理を実行させる。
【0048】
なお、テレビジョン受像機30として、色域を拡大した表示ができない従来の色域の表示能力である場合には、図1に示した多重分離回路44で、帯域内映像データと帯域外映像データとを分離した後、sRGB信号の色域内の映像データRGBinだけを後段の回路に供給するようにすれば、従来と同様の処理が可能となる。この従来構成の場合には、映像加算部31については不要となる。
【0049】
ここで、図6〜図8を参照して、テレビジョン受像機やコンピュータ装置用モニタなどで表現可能な色範囲について説明する。
図6は、原色信号であるRGBデータを入力して表示可能な表示装置において、立体(色空間)を投影したu’,v’色度図である。横軸がu’であり縦軸がv’である。このu’,v’色度図として示された図6において、自然界に存在する色の範囲が、外側の扇形形状で示されている。この図6中で、例えば3点Rs,Gs,Bsで囲って示される3角形の範囲が、通常のRGBデータで表現可能な色域である。この三角形の内部の色は、各原色RGBの値をそれぞれアナログ値の場合に0から1までの範囲の値で与えることにより、一意に決めることができる。このRGBの3原色をどこにするかで、表示できる色域が決定されるが、その規格のひとつとして、sRGB規格がある。アナログ信号の場合に0から1までの範囲で表現される値は、デジタルの場合には、例えば8ビットで量子化された値で示されることになる。
【0050】
従来は、表示手段として使用されていた陰極線管(CRT)の蛍光体の特性から、ほぼ図6に示されるようなsRGB規格の頂点(3原色の色度点)Rs,Gs,Bsと、モニタが表現可能な3原色点が一致していた。ところが、最近CRT以外の各種FPD、およびプロジェクタタイプのモニタが増え、モニタの再現できる色域がsRGB規格で規定された色域の外側に広がってきて、より広い色域が再現可能になってきた。頂点Rf,Gf,Bfで囲まれた図6に破線で示した色域の例は、xvYCC信号として映像データを構成させた場合に、表示可能な色域を示したものである。図6中に示した各点は、実際に存在した色度を示したものである。この図6から判るように、画像中には、sRGB信号で表現可能な色域を超えて、xvYCC信号の色域で表現可能な範囲の色となる場合が相当ある。
【0051】
図7は、xvYCC信号とsRGB信号の色域の関係を示した図である。縦軸が輝度信号Y、横軸が色差信号Cb,Crである。xvYCC信号の規格では、図7に示すように、sRGB信号と同じ原色点を用いつつ、一つの輝度信号Yと二つの色差信号Cb,Crで表現し、sRGB信号の色域を包含するよう規格化されている。xvYCC信号がYデータ,Cbデータ,Crデータで表現された場合の、Rデータ,Gデータ,Bデータへの変換行列式については、背景技術欄で説明したとおりである。図7に示すように、sRGB信号としての領域は、菱形の領域で示され、xvYCC信号としての拡張利領域が、その菱形のsRGB信号の周辺に設定されている。
【0052】
図8は、3次元的に示された色空間上に、sRGB信号の色域とxvYCC信号の色域とを示したものである。sRGB信号の色域を示す四角の立方体は、xvYCC信号の色域を示す四角の立方体よりも小さく表現されている。図8中の各点は、xvYCC信号として映像データを構成させた場合に、実際に存在した色度を示したものである。ここで、sRGB信号の色域を示す四角の立方体の外側に位置する点が、本例でのsRGB信号の域外のデータとして表現されるデータになる。
【0053】
従って、ソース機器で伝送させるデータがxvYCC信号である場合に、そのxvYCC信号から、図1に示した分離回路13で、簡単に、色域内のピクセルデータと色域外のピクセルデータとに分離することができ、図4に示したデータ構成として伝送することが容易に対処できる。シンク機器側では、色域内のピクセルデータと色域外のピクセルデータとを加算するだけで、元のxvYCC信号の色域の信号が得られ、簡単に色域が広い信号を受信できる。
【0054】
また、図4に示すように伝送する場合において、sRGB信号の色域を超えた画素についての、sRGB信号の色域内の映像データRGBinは、色度の上限値又は下限値の値となるので、そのsRGB信号の色域内の映像データRGBinだけを使用して表示処理をおこなった場合、従来のsRGB信号の色域での表示としては、完全な表示が可能である。このようなsRGB信号の色域での表示が可能な表示装置の場合には、受信したデータからsRGB信号の色域内の映像データRGBinを分離するだけでよく、簡単に対処可能である。
【0055】
このように、本例の伝送処理を行うことで、ソース機器とシンク機器とをHDMIケーブル1で接続するだけで、広色域の映像データ伝送と、通常表示用の映像データ伝送とを行うことができ、1組のケーブルで接続するだけの簡単な接続構成で、双方に対応した映像データ伝送が可能になる。しかも、図10や図11に示した通常表示用の映像データ伝送と、図4に示した広色域の映像データ伝送とは、基本的な伝送構成については同じであり、HDMI規格に準拠した上で、広色域の映像データ伝送が可能になる。
【0056】
なお、上述した図4の説明では、1ピクセル各色8ビットのデータを伝送する場合の例としたが、例えば1ピクセル各色16ビットの色域内の色データと色域外のデータのような、他のビット数で構成された映像データを伝送する場合などにも対処可能である。この場合には、1ピクセルの伝送に必要な画素クロックの周期を対応して増やし、クロック周波数を対応して高速化すればよい。
【0057】
また、上述した実施の形態では、HDMI規格のインターフェースを前提として説明したが、その他の同様な伝送規格にも適用可能である。HDMI規格のケーブルで接続するソース側機器とシンク側機器についても、図1に示した記録再生装置とテレビジョン受像機以外の映像機器で接続する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施の形態によるシステム構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態による伝送チャンネル構成例を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態によるビット構成例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態によるデータパッキング例を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態によるVSDBのデータ構成例を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態によるディスプレイの表示可能領域と、sRGB信号で表現される色域との関係例を示す説明図である。
【図7】sRGB信号とxvYCC信号の色域の関係を示す説明図である。
【図8】sRGB信号とxvYCC信号の色域を、色空間で示した説明図である。
【図9】HDMI規格による伝送例を示した説明図である。
【図10】HDMI規格のデータパッキング例(1ピクセル8ビットの例)を示す説明図である。
【図11】HDMI規格のデータパッキング例(1ピクセル16ビットの例)を示す説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1…HDMIケーブル、10…ビデオ記録再生装置(ソース側機器)、11…記録再生部、12…アナログ・デジタル変換回路、13…分離部、14…音声処理部、15…制御部、16…チューナ、20…HDMI伝送処理部、21…多重化回路、22…HDCP暗号化部、23…伝送処理部、24…HDMI端子、30…テレビジョン受像機(シンク側機器)、31…映像選択部、32…デジタル・アナログ変換回路、33…表示処理部、34…音声処理部、35…出力処理部、36…制御部、37…映像処理部、38…表示処理部、40…HDMI伝送処理部、41…HDMI端子、42…伝送処理部、43…HDCP復号化部、44…多重分離回路、60…表示パネル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定ビット単位の映像データを、画素クロックに同期して、色データ毎に、個別の伝送ラインを使用して、ソース側装置からシンク側装置に伝送する伝送方式を利用して映像データを伝送する伝送方法であって、
前記ソース側装置から前記シンク側装置に伝送する色データ毎の映像データとして、規定された色帯域内の色データの映像データと、前記規定された帯域外の色データの映像データとし、
前記規定された色帯域内の色データの映像データと、前記規定された帯域外の色データの映像データとを、それぞれ1画素毎に前記所定ビット数で構成して、前記画素クロックに同期したタイミングで伝送して、
前記ソース側装置から前記シンク側装置に、規定された色帯域を越える映像データを伝送することを特徴とする
伝送方法。
【請求項2】
所定ビット単位の映像データを、画素クロックに同期して、色データ毎に、個別の伝送ラインを使用して、ソース側装置からシンク側装置に伝送する伝送システムであって、
前記ソース側装置として、
映像データを構成する色データを、規定された色帯域内の色データと、前記規定された帯域外の色データとに分離する分離部と、
前記分離部で分離された規定された色帯域内の色データと、前記規定された帯域外の色データとを、1画素ごとに所定ビット数のデータとして構成させ、それぞれの色データを合成する合成部と、
前記合成部で合成された映像データを、前記画素クロックに同期して前記伝送ラインに送出する送出部とを備え、
前記シンク側装置として、
前記伝送ラインから受信したデータを前記画素クロックに同期して検出する受信部と、
前記受信部で受信した映像データを、前記画素クロックに同期して、前記規定された色帯域内の色データと、前記規定された帯域外の色データとに分離する分離部と、
前記分離部で分離された規定された色データの内で、少なくとも色帯域内の色データを使用して、表示処理する表示処理部とを備えたことを特徴とする
伝送システム。
【請求項3】
請求項2記載の伝送システムにおいて、
前記シンク側装置の表示処理部は、前記分離部で分離された規定された色帯域内の色データと、前記規定された帯域外の色データとを合成して、各画素ごとに規定された色帯域を越える帯域の色データとして、その帯域の色データを基に表示処理を行うことを特徴とする
伝送システム。
【請求項4】
請求項2記載の伝送システムにおいて、
前記シンク側装置の表示処理部として、前記規定された帯域外の色データの処理をしない表示処理部である場合には、前記分離部で分離された規定された前記規定された帯域外の色データについては、無視して表示処理することを特徴とする
伝送システム。
【請求項5】
所定ビット単位の映像データを、画素クロックに同期して、色データ毎に、個別の伝送ラインを使用して送出する送信装置であって、
映像データを構成する色データを、規定された色帯域内の色データと、前記規定された帯域外の色データとに分離する分離部と、
前記分離部で分離された規定された色帯域内の色データと、前記規定された帯域外の色データとを、1画素ごとに所定ビット数のデータとして構成させ、それぞれの色データを合成する合成部と、
前記合成部で合成された映像データを、前記画素クロックに同期して前記伝送ラインに送出する送出部とを備えたことを特徴とする
送信装置。
【請求項6】
所定ビット単位の映像データを、画素クロックに同期して、色データ毎に、個別の伝送ラインを使用して受信して、受信した映像データを表示させる受信装置であって、
前記伝送ラインから受信したデータを前記画素クロックに同期して検出する受信部と、
前記受信部で受信した映像データを、前記画素クロックに同期して、前記規定された色帯域内の色データと、前記規定された帯域外の色データとに分離する分離部と、
前記分離部で分離された規定された色データの内で、少なくとも色帯域内の色データを使用して、表示処理を行う表示処理部とを備えたことを特徴とする
受信装置。
【請求項7】
請求項6記載の受信装置において、
前記表示処理部は、前記分離部で分離された規定された色帯域内の色データと、前記規定された帯域外の色データとを合成して、各画素ごとに規定された色帯域を越える帯域の色データとして、その帯域の色データを基に表示処理を行うことを特徴とする
受信装置。
【請求項8】
請求項6記載の受信装置において、
前記表示処理部として、前記規定された帯域外の色データの処理をしない表示処理部である場合には、前記分離部で分離された規定された前記規定された帯域外の色データについては、無視して表示処理することを特徴とする
受信装置。
【請求項1】
所定ビット単位の映像データを、画素クロックに同期して、色データ毎に、個別の伝送ラインを使用して、ソース側装置からシンク側装置に伝送する伝送方式を利用して映像データを伝送する伝送方法であって、
前記ソース側装置から前記シンク側装置に伝送する色データ毎の映像データとして、規定された色帯域内の色データの映像データと、前記規定された帯域外の色データの映像データとし、
前記規定された色帯域内の色データの映像データと、前記規定された帯域外の色データの映像データとを、それぞれ1画素毎に前記所定ビット数で構成して、前記画素クロックに同期したタイミングで伝送して、
前記ソース側装置から前記シンク側装置に、規定された色帯域を越える映像データを伝送することを特徴とする
伝送方法。
【請求項2】
所定ビット単位の映像データを、画素クロックに同期して、色データ毎に、個別の伝送ラインを使用して、ソース側装置からシンク側装置に伝送する伝送システムであって、
前記ソース側装置として、
映像データを構成する色データを、規定された色帯域内の色データと、前記規定された帯域外の色データとに分離する分離部と、
前記分離部で分離された規定された色帯域内の色データと、前記規定された帯域外の色データとを、1画素ごとに所定ビット数のデータとして構成させ、それぞれの色データを合成する合成部と、
前記合成部で合成された映像データを、前記画素クロックに同期して前記伝送ラインに送出する送出部とを備え、
前記シンク側装置として、
前記伝送ラインから受信したデータを前記画素クロックに同期して検出する受信部と、
前記受信部で受信した映像データを、前記画素クロックに同期して、前記規定された色帯域内の色データと、前記規定された帯域外の色データとに分離する分離部と、
前記分離部で分離された規定された色データの内で、少なくとも色帯域内の色データを使用して、表示処理する表示処理部とを備えたことを特徴とする
伝送システム。
【請求項3】
請求項2記載の伝送システムにおいて、
前記シンク側装置の表示処理部は、前記分離部で分離された規定された色帯域内の色データと、前記規定された帯域外の色データとを合成して、各画素ごとに規定された色帯域を越える帯域の色データとして、その帯域の色データを基に表示処理を行うことを特徴とする
伝送システム。
【請求項4】
請求項2記載の伝送システムにおいて、
前記シンク側装置の表示処理部として、前記規定された帯域外の色データの処理をしない表示処理部である場合には、前記分離部で分離された規定された前記規定された帯域外の色データについては、無視して表示処理することを特徴とする
伝送システム。
【請求項5】
所定ビット単位の映像データを、画素クロックに同期して、色データ毎に、個別の伝送ラインを使用して送出する送信装置であって、
映像データを構成する色データを、規定された色帯域内の色データと、前記規定された帯域外の色データとに分離する分離部と、
前記分離部で分離された規定された色帯域内の色データと、前記規定された帯域外の色データとを、1画素ごとに所定ビット数のデータとして構成させ、それぞれの色データを合成する合成部と、
前記合成部で合成された映像データを、前記画素クロックに同期して前記伝送ラインに送出する送出部とを備えたことを特徴とする
送信装置。
【請求項6】
所定ビット単位の映像データを、画素クロックに同期して、色データ毎に、個別の伝送ラインを使用して受信して、受信した映像データを表示させる受信装置であって、
前記伝送ラインから受信したデータを前記画素クロックに同期して検出する受信部と、
前記受信部で受信した映像データを、前記画素クロックに同期して、前記規定された色帯域内の色データと、前記規定された帯域外の色データとに分離する分離部と、
前記分離部で分離された規定された色データの内で、少なくとも色帯域内の色データを使用して、表示処理を行う表示処理部とを備えたことを特徴とする
受信装置。
【請求項7】
請求項6記載の受信装置において、
前記表示処理部は、前記分離部で分離された規定された色帯域内の色データと、前記規定された帯域外の色データとを合成して、各画素ごとに規定された色帯域を越える帯域の色データとして、その帯域の色データを基に表示処理を行うことを特徴とする
受信装置。
【請求項8】
請求項6記載の受信装置において、
前記表示処理部として、前記規定された帯域外の色データの処理をしない表示処理部である場合には、前記分離部で分離された規定された前記規定された帯域外の色データについては、無視して表示処理することを特徴とする
受信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図6】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図6】
【図8】
【公開番号】特開2008−131281(P2008−131281A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313279(P2006−313279)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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