説明

伝送装置、伝送システム、障害検出方法

【課題】
OAMパケットを転送することなく、一定時間間隔内でのパケット信号の受信有無で、伝送路断・劣化の検出を行う。
【解決手段】
送信側では、変換部212は、保守運用信号パケットを含めず、周期的に主信号を送信する。受信側では、伝送路障害検出装置215は、主信号を受信した後に、予め設定された時間、次の主信号を受信していないと判定した場合、伝送路障害を検出したと判断する。OAM処理部313は、前記伝送路障害検出装置215による伝送路障害の検出に基づき、対向の伝送装置へ主信号が伝送されていない状態かアイドル状態かを検出し、アイドル状態のときに伝送路障害を通知するための保守運用信号を対向の伝送装置へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送装置、伝送システム、障害検出方法に係り、特に、T−MPLS等のMPLS技術における主信号パケットを用いた伝送路断を検出するための伝送装置、伝送システム、障害検出方法に関する。
さらに、本発明は、例えば、ITU−T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)Y.1370.1、Y.1371、Y.1381などに規定されるSDH(Synchronous Digital Hierarchy)/SONET(Synchronous Optical NETwork)信号等の同期伝送信号をMPLS(Multi−Protocol Label Switching)信号にカプセル化・デカプセル化する伝送装置において、周期的に主信号パケットを伝送させることで伝送路断を検出する保守信号の代わりに、主信号パケットを用いて伝送路断を検出する方式に関するものである。

【背景技術】
【0002】
近年、通信キャリアのバックボーンネットワークのフルIP(Internet Protocol)・Ethernet(登録商標)化が進展しており、旧来から存在するSDH/SONET技術をベースとするバックボーンネットワークと新しいIP・Ethernet技術をベースとするバックボーンネットワークが並存する状況となっている。
本状況を受け、ネットワーク並存による設備、保守の非効率解消の為に、SDH/SONET信号をIP・Ethernetパケット化することにより、IP・Ethernetベースのバックボーンネットワークに集約を図る為の検討が行われている。このような検討技術は、具体的には、ITU−T Y.1370.1、Y.1371、Y.1381などに規定されるT−MPLS(Transport−MPLS)技術などに代表される。
【0003】
図1に、MPLSデータフレームフォーマットを示す。
T−MPLS技術において、SDH/SONET信号は、そのペイロード部をITU−T Y.1413(ユーザプレーンにおけるTDM−MPLS(Time Division Multiplexing−MPLS)インタワーキング規定)に従い、低次郡パスをフレームの基本単位としてその整数倍のバイト数にまとめられた後、図1に示すようなMPLSフレームのデータフォーマットに格納される。MPLSのフレームはレイヤ2ヘッダ(プリアングル/SFD、宛先アドレス、送信元アドレス、Type/Length)とレイヤ3ヘッダ(SDH/SONET信号のペイロードデータのヘッダ)の間に、4バイトのシムヘッダと呼ばれるMPLS用のヘッダが挿入されたフォーマットとなっている。このシムヘッダは、2つ以上スタックすることも可能である。
図2に、シムヘッダの各フィールドの内容の説明図を示す。なお、ここでは伝送媒体としてEthernetを使用している場合を示しているので、MAC(Media Access Control)のヘッダ(プリアンブル〜Type/Lengthまでのヘッダ)とFCS(Frame Check Sequence)が付与された形となっているが、物理的な伝送媒体としてはEthernetでなくても良く、その場合は、MACのヘッダ、フッダの代わりに、伝送媒体に従ったヘッダ、フッダが付与される。
T−MPLSネットワークでは、シムヘッダに格納するラベルに対し、宛先IPアドレスの情報が与えられる。その後はラベルのみを見てフォワーディングが繰り返され、目的地まで到着したらラベルが外される。結果的に、MPLSによりフォワーディングされるラベル・パケットの道筋を、1本のパスのように扱うことが可能である。T−MPLSネットワークでは、各ノードのラベルテーブルを制御することによって、IPネットワークに明示的なルートを提供し、特定ルートにパケットが集約を防止することにより、リンクの使用効率を高めることが可能となる。
【0004】
また、図3に、MPLS OAMフレームフォーマットの説明図を示す。
T−MPLS技術では、IP・Ethernetパケット化した際においても、転送されるデータの高品質で安定した転送を支援する為にITU−T Y.1730、Y.1731、Y.1710、Y.1711において、OAM(Operation And Maintenance)機能と呼ばれる保守運用機能を提供している。図3に示すOAMのフレームフォーマットのように、OAMフレームは、図1にて示したMPLSフレームのシムヘッダの一つをOAMラベルとし、データ部を44バイトのOAMペイロードにした構成となっている。OAMラベルは、例えば、ITU−TのY.1711によりOAMフレーム用にラベルID=14を予約しており、EXP(EXPerimental use)、S、TTL(Time To Live)の値はEXP=0、S=1、TTL=1と規定されている。ペイロードはFunction Type、LSP(Label Switch Path)Trail Termination、Source Identification(TTSI)、BIP(Bit Interleaved Party)とOAMフレーム別のデータ領域からなる。
【0005】
図4に、MPLS OAMの代表例の説明図を示す。
また、図5に、FDI方向とBDI方向についての説明図を示す。
以下に各フィールドの内容を示す。
(1)Function type
OAM種別を示すフィールドとなる。本フィールドの値はY.1711で規定されている(図4参照)。
(2)LSP TTSI
OAMフレーム送出ノードを特定するLSR IDとLSP IDから構成されている。Y.1711ではLSR IDはノードに割り振られたIPv6アドレスまたはIPv4アドレスと規定されている。
(3)BIP16
誤り訂正用のBIP16演算範囲は、OAM function typeからBIP16フィールドの直前までの42Byteとなる。
【0006】
OAMの代表的な例として、CV(Connectivity Verification)、FDI(Forward Defect Indicator)、BDI(Backward Defect Indicator)、FFD(First Failure Detection)がある。
【0007】
CVとは、MPLSパスのEnd to Endの正常性を確認するための機能であり、送信端ポイントであるMPLS装置内のUNI(User Network Interface)から挿入され、受信端ポイントであるMPLS装置内のUNIで終端される。例えば、CVの挿入周期は1秒固定であり、CV受信端ポイントであるUNIでは、3秒間CV未受信状態が続くとLOCV(Loss Of CV)状態を検出し、CV送信端ポイントであるUNIへBDIでLOCV検出を通知する。LOCV検出により、伝送路断などの伝送路の状態を確認することが可能となる。
FDIとは、図5に示すような上り方向(送信方向)に異常及びその原因を通知するための機能であり、UNIにおけるユーザ装置とのリンク断検出時やNNI(Network Node Interface)におけるMPLS装置同士のリンク断検出時などに検出パスに対して挿入する。例えば、FDIは障害検出が解除されるまで1秒間隔で挿入し、ペイロードのDefect typeフィールド(例えば、図3のOAM別データ領域に相当)でパスの終端ポイントであるUNIとそのパスの中継ポイントであるNNIにその要因となっている障害情報を通知する。
BDIとは、図5に示すような下り方向(送信方向と逆向きの方向)に異常及びその原因を通知するための機能であり、FDIを受信したパス及びLOCVを検出したパスに対してEndポイントであるUNIへ障害発生情報を通知のために挿入する。BDIは、例えば、FDIを受信している間1秒間隔で挿入し、FDIと同じくペイロードのDefect typeで対向パスの終端ポイントであるUNIとそのパスの中継ポイントであるNNIに対して障害発生情報を通知する。
FFDとは、CVと同様にMPLSパスのEnd to Endの正常性を確認するための機能であり、送信端ポイントであるUNIから挿入され、受信端ポイントであるUNIで終端される。例えば、CVの挿入周期は1秒固定であるのに対し、FFDの挿入周期は10ms、20ms、50ms、100ms、200ms、500msで可変設定可能となる。FFDは、主に伝送路断が起きた際の現用系から予備系への切替のために使用するため、CVとは異なり許容切替時間によって挿入周期を変更する必要がある。
これらOAM信号のうち、CV及びFFDは、パス単位で一定時間ごとに、対向側装置に向け送信され、対向側装置でCV及びFFDを監視することによって、伝送路の障害を検出する。しかしながら、伝送路の帯域と言う観点からCV及びFFDを見ると、パス数の増加及び挿入周期を短くすることで、CV及びFFDの帯域は増大し、その分、主信号パケットの帯域を逼迫する可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ITU−T Y.1370.1、Y.1371、Y.1381、Y.1413、Y.1730、Y.1731、Y.1710、Y.1711
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
T−MPLS技術を用いたネットワーク等では、一定周期で専用のOAMフレーム(例、CV)を転送することにより、伝送路断・劣化の検出を行っている。品質確認の周期を短くする必要がある場合(例、FFDを用いる場合)、また、主信号のパケット数が多い場合、OAMフレームの帯域は、主信号帯域を逼迫する可能性がある。
SDH/SONET信号がカプセル化されたT−MPLS信号では、Ethernet信号と異なり、必ず一定周期でT−MPLS信号が転送される。
本発明は、以上の点に鑑み、OAMパケットを転送することなく、一定時間間隔内でのパケット信号の受信有無で、伝送路断・劣化の検出を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の解決手段によると、
SDH(Synchronous Digital Hierarchy)/SONET(Synchronous Optical NETwork)信号又は他の同期伝送信号をMPLS(Multi−Protocol Label Switching)信号にカプセル化し、MPLS信号をSDH/SONET号にデカプセル化し、保守運用信号の挿入及び受信処理を実行する伝送装置において、
対向伝送装置側から入力されたMPLS信号を主信号と保守運用信号に分け、伝送路障害を検出するための伝送路障害検出装置と、
前記伝送路障害検出装置による伝送路障害の検出に基づき、対向の伝送装置に保守運用信号を送信するための保守運用信号処理部と、
ユーザ装置側から出力されたSDH/SONET信号又は他の同期伝送信号をカプセル化し、対向伝送装置側へと出力し、前記伝送路障害検出装置から出力されたMPLS信号の主信号をデカプセル化して、ユーザ装置側に送出するための変換部と、
を備え、

送信側では、
前記変換部は、保守運用信号パケットを含めず、周期的に主信号を送信し、

受信側では、
前記伝送路障害検出装置は、主信号を受信した後に、予め設定された時間、次の主信号を受信していないと判定した場合、伝送路障害を検出したと判断し、
前記保守運用信号処理部は、前記伝送路障害検出装置による伝送路障害の検出に基づき、対向の伝送装置へ主信号が伝送されていない状態かアイドル状態かを検出し、アイドル状態のときに伝送路障害を通知するための保守運用信号を前記対向の伝送装置へ送信する
ことにより、主信号を用いた伝送路障害を検出するための前記伝送装置が提供される。
【0011】
本発明の第2の解決手段によると、
上述のような伝送装置と、
多重化したMPLS信号を対向伝送装置と伝送するネットワークノードインターフェースと、
前記伝送装置とネットワークノードインターフェースの間の伝送方路の切替を実施するスイッチと、
を備えた伝送システムが提供される。
本発明の第3の解決手段によると、
SDH(Synchronous Digital Hierarchy)/SONET(Synchronous Optical NETwork)信号又は他の同期伝送信号をMPLS(Multi−Protocol Label Switching)信号にカプセル化し、MPLS信号をSDH/SONET号にデカプセル化し、保守運用信号の挿入及び受信処理を実行する伝送装置における障害検出方法であって、

送信側では、
ユーザ装置側から出力されたSDH/SONET信号又は他の同期伝送信号をカプセル化し、対向伝送装置側へ、保守運用信号パケットを含めず、周期的に主信号を送信し、

受信側では、
対向伝送装置側から入力されたMPLS信号を主信号と保守運用信号に分け、主信号を受信した後に、予め設定された時間、次の主信号を受信していないと判定した場合、伝送路障害を検出したと判断し、
前記伝送路障害の検出に基づき、対向の伝送装置へ主信号が伝送されていない状態かアイドル状態かを検出し、アイドル状態のときに伝送路障害を通知するための保守運用信号を前記対向の伝送装置へ送信する
ことにより、主信号を用いた伝送路障害を検出するための前記障害検出方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、伝送路の断検出用のOAMパケット(例、CV、FFD)を転送しなくなるので、その分の帯域を主信号用の帯域に割り当てることができ、伝送容量を増加することができる。

【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】MPLSデータフレームフォーマット。
【図2】MPLSデータフレームに挿入するシムヘッダの内容の説明図。
【図3】MPLS OAMフレームフォーマットの説明図。
【図4】MPLS OAMの代表例の説明図。
【図5】FDI方向とBDI方向についての説明図。
【図6】MPLS装置を用いたネットワーク構成図。
【図7】MPLS装置のハード構成図。
【図8】SDH−UNI盤のハード構成図。
【図9】FDI・BDIの受信処理プロセスについてのフローチャート。
【図10】FDI・BDIの送信処理プロセスについてのフローチャート。
【図11】伝送路断検出装置の機能ブロック図。
【図12】パケット周期監視処理プロセスについてのフローチャート。
【図13】MPLS信号の比較
【発明を実施するための形態】
【0014】
図6に、本実施の形態のT−MPLSネットワークシステムの構築図の一例を示す。
局舎100−1〜100−4は、それぞれ、各MPLS装置200−1〜200−4によって、主信号伝送路(実線)を介して接続され、MPLS装置200−1〜200−4は、リング状のMPLSネットワーク1000を構成している。局舎100−1内においてユーザ装置300−1〜300−2がSDH/SONET信号やEthernet信号の信号をMPLS装置200−1に入力する。MPLS装置200−1では、異なるフォーマットの信号をMPLS信号にカプセル化し、対向のMPLS装置(例えば、MPLS装置200−2)まで、信号が伝送される。伝送先のMPLS装置200−2では、MPLS信号からSDH/SONET信号やEthernet信号にデカプセル化され、各ユーザ装置に振り分けられる。また、各MPLS装置200−1〜200−2は、主信号伝送路とは別の制御線(破線)を介して互いに接続されており、MPLSネットワーク1000内の、各MPLS装置200−1〜200−2及び主信号伝送路の状態は、MPLS装置200−1と接続されたネットワーク管理装置400−1によって管理される。ネットワーク管理装置400−1は、MPLSネットワーク1000内の各MPLS装置200−1〜200−4と通信を行い、各MPLS装置200−1〜200−4の伝送路断等の伝送路障害を含むOAM情報を管理する。ネットワーク管理装置400−1により、MPLSネットワーク1000内にある各MPLS装置200−1〜200−4間の伝送路障害を遠隔地や保守センター等において集中して管理し、各MPLS装置200−1〜200−4を管理・運用することができる。
【0015】
図7に、MPLS装置のハード構成図の一例を示す。MPLS装置は、SDH−UNI210、GbE−UNI220、SW(SWitch)230、NNI240を備える。SDH−UNI210は、SONET/SDH信号とMPLS信号のカプセル化/デカプセル化、及び多重化/多重分離化を実施する。GbE−UNI220は、Ethernet信号とMPLS信号のカプセル化/デカプセル化、及び多重化/多重分離化を実施する。SW230は、伝送方路の切替を実施する。NNI240は、多重化した高速信号を対向伝送装置まで長距離伝送する。ここで、保守運用信号のOAM信号は、SDH−UNI210及び、GbE−UNI220において挿入・受信処理がなされる。
図8に、SDH−UNI210のハードウェア構成図の一例を示す。最初に、主信号(実線)の動きを説明する。ユーザ装置100から出力されたSDH/SONET信号は光モジュール211で光電変換なされ、SDH/SONET⇔MPLS変換部212によってカプセル化され、SW230へと出力される。逆にSW230より入力したMPLS信号は、伝送路断検出装置215によって、主信号とOAM信号の区別がつけられ、主信号の場合、SDH/SONET⇔MPLS変換部212でデカプセル化され、光モジュール211による光電変換を介して、ユーザ装置100まで送出される。
【0016】
次にOAM信号(破線)の動きを説明する。OAM信号は、OAM処理部213にて、送信と受信処理が行われる。
図9に、FDI及びBDIの受信処理プロセスについてのフローチャートを示す。受信処理では、OAM処理部213は、Function TypeをキーにOAM信号の種別を検出し(A01、A05)、その種別を制御線(点線)を介して警報処理部214に通知する(A03、A07)。その際に、OAM処理部213は、Function Typeが規定されていなかったOAM信号に関しては、規定外フレームとして廃棄を行う(A09)。このようにして、OAM処理部213は、ステップA03ではFDI受信通知を行い、一方、ステップA07ではBDI受信通知を行う。
図10に、FDI及びBDIの送信処理プロセスについてのフローチャートを示す。送信処理では、SDH/SONET⇔MPLS変換部212及び/又は伝送路断検出装置215で、障害を検出した場合に、SDH/SONET⇔MPLS変換部212又は伝送路断検出装置215は、それぞれ、警報処理部214に通知する。警報処理部214は、その障害の種類によって、例えば、伝送路断検出装置215から伝送路断等の伝送路障害を通知されたり、OAM処理部213からFDI又はBDIの受信を通知されたときなど対向装置に通知すべき警報に関しては、OAM処理部213にOAM信号の送信を通知し、OAM処理部213は、その通知を受信する(B01)。その際に、OAM処理部213は、MPLS伝送路の状態を調べ、パケット送信状態かアイドル状態かを判定する(B03)。パケット送信状態の場合は、そのパケットを伝送するまで待機する。アイドル状態の場合には、FDIやBDIのOAM信号を送出する(B05)。
【0017】
図11に、主信号パケットを用いた伝送路断検出方式の機能ブロック図を示す。また、図12に、パケット周期監視処理プロセスについてのフローチャートを示す。
伝送路断検出装置215のパケット判定部215−2は、まず有効フラグを立てることにより、伝送路断検出を開始する。有効フラグを入れなかった場合は、パケット判定部215−2は、MPLS信号の判別のみを行う。パケット判定部215−2は、有効フラグを入れることにより、周期監視タイマー215−1をセットする(C01)。その後、パケット判定部215−2は、周期監視タイマー215−1のカウンタによる測定時間が外部入力によって設定された時間を超えたかどうかの判定を実施(C03)する。測定時間が設定時間内であった場合は、パケット判定部215−2は、パケットの受信を確認(C05)する。パケットを受信していない場合は、パケット判定部215−2は、再び、周期監視タイマー215−1のカウンタによる測定時間が外部入力によって設定された時間を超えたかどうかの判定を実施(C03)する。パケット判定部215−2は、パケットを受信した場合は、主信号かOAM信号かの判定を行う(C07)。OAM信号であった場合は、パケット判定部215−2は、OAM処理部213にOAM信号を転送(C09)し、時間判定に戻る(C03)。主信号であった場合、パケット判定部215−2は、周期監視タイマー215−1のカウンタをリセットし(C11)、ステップC01に進む。設定時間を超えた場合は、パケット判定部215−2は、警報処理部214に伝送路断を通知する(C13)。このようにして、伝送路断検出装置215は、主信号パケットを用いた伝送路断検出を実現する。
なお、警報処理部214は、伝送路断の通知を受けると、対向装置に対して上り方向(送信方向)にはFDI、下り方向(送信方向と逆向きの方向)にはBDI等のOAM処理部213にOAM信号の送信を通知する。OAM処理部213は、このような通知により、図10に示したように、送信処理プロセスを実行する。
【0018】
ここで、主信号パケットを用いた伝送路断検出のための本方式のメリットを以下に説明する。
図13に、従来方式と本方式のパケット列の模式図を示す。図13−(A)はEthernet信号、図13−(B)はMPLS化したEthernet信号、図13−(C)はMPLS化したSDH/SONET信号(従来方式)、図13−(D)はSDH/SONET信号(本方式)である。
図13−(A)のように、Ethernet信号はバースト信号であり、送りたい信号があるときのみ、伝送路に信号を送出される。そのため、伝送路の帯域を広く使える反面、伝送路断が起きた場合でも、信号を送出していないのか、途中で障害がおきたのかが受信側では不可分なため、伝送路断を検出できないなど保守・運営上の課題があった。そのため、図13−(B)のように、OAM信号に帯域を割くことによって、保守・運営能力が強化される。対して、SDH/SONET信号は、ストリーム信号であり、常に一定のフレーム周期で信号を送出している。そのため、主信号が途切れた場合は、途中に障害が発生している場合のみである。そのため、OAM信号のCV及び/又はFFDといった伝送路断を検出する信号は本質的には不要となると考えられる。そこで、本方式により、図13−(D)のように主信号にCVやFFDの機能を持たすことによって、その分、主信号に帯域を広く割り当てることが可能となる。また、本方式においても、FDIやBDIなどのOAM信号を送る場合は、図13−(C)のように、OAM信号の使用は必要となる。しかしながら、FDIやBDIは、LOCVやリンク断などの異常が起きた時のみ発出する信号であり、その場合、通常、正常に通信が行われている状態ではないので、主信号に帯域を割り当てる必要がないため、FDIやBDIの帯域が正常通信時の主信号帯域を逼迫することはない。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、T−MPLS技術を用いたネットワーク以外にも、他のMPLS技術や、一定周期で主信号フレームを転送することで、伝送路の断又は劣化等を検出するような各種ネットワークに適用することができる。
また、上述の説明では、主に伝送路断について説明したが、本発明はこれに限らず、パケットやデータの伝送路の劣化等のような様々な伝送路障害に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SDH(Synchronous Digital Hierarchy)/SONET(Synchronous Optical NETwork)信号又は他の同期伝送信号をMPLS(Multi−Protocol Label Switching)信号にカプセル化し、MPLS信号をSDH/SONET号にデカプセル化し、保守運用信号の挿入及び受信処理を実行する伝送装置において、
対向伝送装置側から入力されたMPLS信号を主信号と保守運用信号に分け、伝送路障害を検出するための伝送路障害検出装置と、
前記伝送路障害検出装置による伝送路障害の検出に基づき、対向の伝送装置に保守運用信号を送信するための保守運用信号処理部と、
ユーザ装置側から出力されたSDH/SONET信号又は他の同期伝送信号をカプセル化し、対向伝送装置側へと出力し、前記伝送路障害検出装置から出力されたMPLS信号の主信号をデカプセル化して、ユーザ装置側に送出するための変換部と、
を備え、

送信側では、
前記変換部は、保守運用信号パケットを含めず、周期的に主信号を送信し、

受信側では、
前記伝送路障害検出装置は、主信号を受信した後に、予め設定された時間、次の主信号を受信していないと判定した場合、伝送路障害を検出したと判断し、
前記保守運用信号処理部は、前記伝送路障害検出装置による伝送路障害の検出に基づき、対向の伝送装置へ主信号が伝送されていない状態かアイドル状態かを検出し、アイドル状態のときに伝送路障害を通知するための保守運用信号を前記対向の伝送装置へ送信する
ことにより、主信号を用いた伝送路障害を検出するための前記伝送装置。

【請求項2】
前記変換部又は前記保守運用信号処理部又は前記伝送路障害検出装置から障害検出の通知を受け、前記保守運用信号処理部に保守運用信号の送信を指示するための警報処理部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の伝送装置。

【請求項3】
前記伝送路障害検出装置は、伝送路障害を検出した場合に前記警報処理部に通知し、
前記警報処理部は、前記保守運用信号処理部に、伝送路障害を通知する保守運用信号を対向装置へ送信するための指示をすることを特徴とする請求項2に記載の伝送装置。

【請求項4】
前記保守運用信号処理部は、前記伝送路障害検出装置から保守運用信号が入力されると、保守運用信号の種別を検出した際、検出した種別を前記警報処理部に通知し、

前記警報処理部は、対向装置に通知すべき警報に関しては、前記保守運用信号処理部に、検出した保守運用信号に対応する障害を通知する保守運用信号を対向装置へ送信するための指示をすることを特徴とする請求項2又は3に記載の伝送装置。

【請求項5】
前記変換部は、障害を検出した場合に前記警報処理部に通知し、
前記警報処理部は、対向装置に通知すべき警報に関しては、前記保守運用信号処理部に、検出した保守運用信号に対応する障害を通知する保守運用信号を対向装置へ送信するための指示をすることを特徴とする請求項2に記載の伝送装置。

【請求項6】
前記伝送路障害検出装置は、
MPLS信号を受信し、受信したMPLS信号のラベルを読み取り、主信号と保守運用信号に分けて、主信号を前記変換部へ出力し、保守運用信号を前記保守運用信号処理部へ出力する判定部と、
主信号が周期的に受信することを監視する周期監視タイマーと
を具備し、
前記判定部は、前記周期監視タイマーを参照し、主信号が一定時間以上受信されないことにより伝送路障害を検出することを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の伝送装置。

【請求項7】
前記保守運用信号は、上り方向若しくは送信方向に異常及びその原因となる障害情報を通知するための信号、及び/又は、下り方向若しくは送信方向と逆向きの方向に異常及びその原因、障害発生情報を通知するための信号であることを特徴とする請求項1に記載の伝送装置。

【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の伝送装置と、
多重化したMPLS信号を対向伝送装置と伝送するネットワークノードインターフェースと、
前記伝送装置とネットワークノードインターフェースの間の伝送方路の切替を実施するスイッチと、
を備えた伝送システム。

【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の伝送装置を複数備えたネットワークにおいて、前記ネットワーク内の複数の前記伝送装置と通信を行い、前記伝送装置の伝送路障害を含む保守情報を管理する管理装置を具備し、
前記管理装置により、前記ネットワーク内にある伝送装置間の伝送路障害を検出することを特徴とする、伝送装置を管理及び運用するための伝送システム。

【請求項10】
SDH(Synchronous Digital Hierarchy)/SONET(Synchronous Optical NETwork)信号又は他の同期伝送信号をMPLS(Multi−Protocol Label Switching)信号にカプセル化し、MPLS信号をSDH/SONET号にデカプセル化し、保守運用信号の挿入及び受信処理を実行する伝送装置における障害検出方法であって、

送信側では、
ユーザ装置側から出力されたSDH/SONET信号又は他の同期伝送信号をカプセル化し、対向伝送装置側へ、保守運用信号パケットを含めず、周期的に主信号を送信し、

受信側では、
対向伝送装置側から入力されたMPLS信号を主信号と保守運用信号に分け、主信号を受信した後に、予め設定された時間、次の主信号を受信していないと判定した場合、伝送路障害を検出したと判断し、
前記伝送路障害の検出に基づき、対向の伝送装置へ主信号が伝送されていない状態かアイドル状態かを検出し、アイドル状態のときに伝送路障害を通知するための保守運用信号を前記対向の伝送装置へ送信する
ことにより、主信号を用いた伝送路障害を検出するための前記障害検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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