伝達機構
【課題】互いに独立した二つの入力を一つの出力として取出し可能で、かつ、電気制御機器の附加や防水性の配慮を不要にしてコストを抑えることができる伝達機構を提供する。
【解決手段】伝達機構22は、二つの独立した入力部材としてスロットルレバー73および伝達レバー74を備え、一つの出力部材として湾曲アーム75を備える。さらに、スロットルレバー73にカム部86を備える。カム部86は、スロットルレバー73が矢印A方向にスイング移動をしたとき湾曲アーム75のスイング移動を許容するように変位可能なカム面87を有する。カム面87は、伝達レバー74が矢印E方向にスイング移動をしたとき、湾曲アーム75が乗り越えつつスイング移動することを許容する形状に形成されている。
【解決手段】伝達機構22は、二つの独立した入力部材としてスロットルレバー73および伝達レバー74を備え、一つの出力部材として湾曲アーム75を備える。さらに、スロットルレバー73にカム部86を備える。カム部86は、スロットルレバー73が矢印A方向にスイング移動をしたとき湾曲アーム75のスイング移動を許容するように変位可能なカム面87を有する。カム面87は、伝達レバー74が矢印E方向にスイング移動をしたとき、湾曲アーム75が乗り越えつつスイング移動することを許容する形状に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1入力部材および第2入力部材の二つの独立した入力部材を備えるとともに一つの出力部材を備え、第1入力部材および第2入力部材からの互いに独立した二つの入力を出力部材から一つの出力として取出し可能な伝達機構に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機のなかには、車両の作業負荷状態から作業休止状態に移行したことを検知手段で検知し、検知した信号に基づいて伝達機構でエンジン回転数を低下するように制御するものがある。
この伝達機構によれば、作業休止状態でエンジン回転数を低下させて、燃費(燃料消費量)を抑え、CO2削減を図ることで環境に優しい作業が可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−248975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1の伝達機構は、作業機が作業休止状態に移行した際に、電気的な制御でエンジン回転数を低下させている。
このような、伝達機構のなかには、電気的に制御することで、互いに独立した二つの入力を一つの出力として取出し可能なものが考えられる。
しかし、電気的に制御可能な伝達機構は、検知手段などの電気制御機器を附加し、附加した電気制御機器の防水性を確保する必要があり、コストを抑えることが難しいとされていた。
【0005】
本発明は、互いに独立した二つの入力を一つの出力として取出し可能で、かつ、電気制御機器の附加や電気制御機器の防水性に対する配慮を不要にすることでコストを抑えることができる伝達機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、互いに独立した二つの入力を一つの出力として取出し可能な伝達機構であって、第1スイング中心線を基点にスイング移動が可能な第1入力部材と、前記第1スイング中心線を基点として、前記第1入力部材に対し独立したスイング移動が可能な第2入力部材と、この第2入力部材に、前記第1スイング中心線に平行な第2スイング中心線を基点としたスイング移動が可能に連結された出力部材と、この出力部材のスイング移動の軌跡を前記第1入力部材のスイング移動量に応じて変化させるべく、前記第1入力部材に設けられたカムと、このカムに対して前記出力部材を接触する方向へ付勢する付勢部材と、を備え、前記カムは、前記第1入力部材が一方にスイング移動をしたとき、前記出力部材のスイング移動を許容するように変位可能なカム面を有し、このカム面は、前記第2入力部材が前記一方にスイング移動をしたとき、前記出力部材が乗り越えつつスイング移動することを許容する形状に形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2は、前記カム面は、前記第2入力部材のスイング移動量が小さいとき、前記第2入力部材のスイング移動量の変化に対して前記出力部材が緩やかに変化可能で、前記第2入力部材のスイング移動量が大きいとき、前記第2入力部材のスイング移動量の変化に対して前記出力部材が大きく変化可能となるように、曲線的に形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項3は、前記第1入力部材は、前記第2入力部材および前記出力部材を収納するケースを兼用していることを特徴とする。
【0009】
請求項4は、前記出力部材は、前記第1スイング中心線を迂回するように湾曲状に形成され、湾曲状に形成された内側の面が前記カム面に接触可能としたことを特徴とする。
【0010】
請求項5は、前記第2入力部材は、作業機の前進走行、停止、後退走行の間で連続して切換え操作可能な前後進レバーに直接または間接に連結され、前記出力部材は、前記停止、前記後退走行のとき無負荷または前記前進走行のときより負荷が小さくなる作業部を駆動する駆動源の出力を調整可能な出力調整部に直接または間接に連結され、前記第1入力部材は、前記出力調整部を操作力で調整可能な出力操作部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、第1入力部材を一方にスイング移動することで、出力部材のスイング移動を許容するようにカム面を変位させるようにした。カム面を変位させることで、出力部材をスイング移動の方向へ第1の変位量だけ変位させることができる。
また、第2入力部材を一方にスイング移動させたとき、出力部材がカム面を乗り越えつつスイング移動することを許容するようにした。出力部材がカム面を乗り越えつつスイング移動することで、出力部材をスイング移動の方向へ第2の変位量だけ変位させることができる。
【0012】
ここで、第1入力部材の一方へのスイング移動による第1の変位量に対して、第2入力部材の一方へのスイング移動による第2の変位量が概ね合致する。
よって、第1入力部材および第2入力部材の二つの入力部材を、各々一方にスイング移動させることで、一つの出力部材を同様に変位させることができる。
これにより、第1、第2の入力部材、出力部材およびカム面などの機械的な構成で、二つの入力部材による各々の入力に対応させて、一つの出力部材から出力を取り出すことができる。
【0013】
さらに、伝達機構を第1入力部材、第2入力部材および出力部材などで機械的に構成した。よって、伝達機構に電気制御機器を附加することや、負荷した電気制御機器の防水性に対する配慮を不要にできる。
このように、電気制御機器の附加や防水性に対する配慮を不要にできるので伝達機構のコストを抑えることができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、カム面を曲線的に形成することで、第2入力部材のスイング移動量に応じて出力部材の変位量を変えるように出力特性を決めることができる。
具体的には、第2入力部材のスイング移動量が小さいとき、出力部材をカム面で支えて出力部材を緩やかに変化(変位)させることができる。
一方、第2入力部材のスイング移動量が大きいとき、出力部材がカム面を乗り越えて出力部材を大きく変化(変位)させることができる。
このように、カム面を曲線的に形成する簡単な構成で、第2入力部材のスイング移動量に対する出力部材の出力特性を決めることができるので、用途に適した特性を得ることができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、第1入力部材で第2入力部材や出力部材を収納するケースを兼用するようにした。
第1入力部材で兼用したケースに第2入力部材や出力部材を収納することで、伝達機構の小型化を図ることができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、出力部材を湾曲状に形成して第1スイング中心線を迂回するようにした。このように、出力部材を湾曲状に形成することで出力部材の形状を小さくできる。
これにより、出力部材を収納するケースを一層小型にすることが可能になり、伝達機構のさらなる小型化を図ることができる。
【0017】
請求項5に係る発明では、第1入力部材を出力操作部材とし、さらに第2入力部材を前後進レバーに連結し、加えて出力部材を駆動源の出力調整部に連結した。
これにより、第1入力部材を一方にスイング移動することで、出力部材を変位させて駆動源の出力を低下させることができる。
【0018】
また、第2入力部材を一方にスイング移動することで後退走行に切り換えるとともに、出力部材を変位させて駆動源の出力を低下させることができる。
これにより、作業機を後退走行に切り換えた際に、駆動源の出力を迅速に低下させることができ、燃費(燃料消費量)を抑え、CO2削減を図ることで環境に優しい作業を可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る伝達機構を備えた除雪機を示す側面図である。
【図2】図1の除雪機の要部を示す斜視図である。
【図3】図1の除雪機に備えた前後進操作部を示す側面図である。
【図4】本発明に係る伝達機構を示す斜視図である。
【図5】図4の伝達機構を示す分解斜視図である。
【図6】図4の6矢視図である。
【図7】図4の伝達機構を示す断面図である。
【図8】図4の8−8線断面図である。
【図9】図8の9部拡大図である。
【図10】本発明に係る伝達機構および前後進操作部の関係を示す概略図である。
【図11】本発明に係る伝達機構を前後進レバーで操作した際の伝達ケーブルの変位量δ1およびスロットルケーブルの変位量δ2の関係を示すグラフである。
【図12】本発明に係る伝達機構でエンジン高速回転に配置した状態において前後進レバーを最大前進位置P2から中立位置P1に向けてスイング移動する例を説明する図である。
【図13】図12の状態から前後進レバーを最大後進位置P3に向けてスイング移動する例を説明する図である。
【図14】図13の状態から前後進レバーを最大後進位置P3までスイング移動してエンジンの回転数を低速回転に下げる例を説明する図である。
【図15】本発明に係るスロットルレバーでエンジン高速回転からエンジン低速回転に切り換える例を説明する図である。
【図16】本発明に係る伝達機構でエンジン低速回転に配置した状態において前後進レバーを最大前進位置P2から最大後進位置P3に向けてスイング移動する例を説明する図である。
【図17】図16の状態から前後進レバーを最大後進位置P3までスイング移動してエンジンの回転数を低速回転に下げる例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前(Fr)」、「後(Rr)」、「左(L)」、「右(R)」は運転者から見た方向にしたがう。
ここで、実施例では作業機として除雪機10を例示するが、これに限定するものではない。例えば、除雪機10の他に芝刈機やブルドーザなどに適用可能で、さらには他の産業機械(例えば、工作機械)などに適用することも可能である。
【実施例】
【0021】
実施例に係る伝達機構22について説明する。
図1に示すように、除雪機10は、機体フレーム11の上部に設けられたエンジン(駆動源)12と、機体フレーム11の下部に走行フレーム13を介して設けられたクローラ走行部14と、機体フレーム11の前部に設けられた除雪作業部(作業部)15と、機体フレーム11の後部に設けられた左右のハンドル16と、左右のハンドル16の後端部に設けられた左右のグリップ17と、左右のグリップ17の前方に設けられた操作部20とを備えている。
【0022】
除雪作業部15は、機体フレーム11の前部に設けられたハウジング26と、ハウジング26内に設けたオーガ27およびブロア28と、ハウジング26の上部に立設されたシュータ29とを備えている。
オーガ27およびブロア28が作業用駆動軸32に連結されている。作業用駆動軸32が一対のプーリ33,34、ベルト35、電磁クラッチ36およびクランクシャフト(駆動軸)12aを介してエンジン12に連結されている。
【0023】
除雪作業部15によれば、エンジン12を駆動してオーガ27およびブロア28を回転させることで、オーガ27前方の積雪を機体幅方向中央に集め、中央に集めた雪をブロア28で跳ね上げ、跳ね上げた雪をシュータ29で投雪することができる。
この除雪作業部15は、停止、後退走行のとき無負荷または前進走行のときより負荷が小さくなる作業部である。
【0024】
クローラ走行部14は、エンジン12のクランクシャフト12aに連結されたハイドロ スタティック トランスミッション(以下、「HST」という)41と、HST41の左油圧モータ44に連結された左クローラ走行部47と、HST41の右油圧モータ45に連結された右クローラ走行部48とを備えている。
【0025】
HST41は、エンジン12の右クローラ走行部12aに一対のプーリ51,52およびベルト53を介してHST駆動軸41aが連結されている。
このHST41は、HST駆動軸41aで駆動可能な斜板式の可変吐出量タイプの左油圧ポンプ42と、HST駆動軸41aで駆動可能な斜板式の可変吐出量タイプの右油圧ポンプ43と、左油圧ポンプ42に配管を介して連通された左油圧モータ44と、右油圧ポンプ43に配管を介して連通された右油圧モータ45とを備えた静油圧式無段変速機である。
【0026】
HST41によれば、左右の油圧ポンプ42,43の吐出量を同一にすることで、左右の油圧モータ44,45を同一回転速度で回転させることができる。
また、左右の油圧ポンプ42,43の吐出量を零にすることで、左右の油圧モータ44,45の回転を止めることができる。
さらに、左右の油圧ポンプ42,43の吐出量を異ならせることで、左右の油圧モータ44,45を異なる回転速度で回転させることができる。
【0027】
左クローラ走行部47は、走行フレーム13の左側後端部に設けられるとともに左油圧モータ44に連結された駆動輪55と、走行フレーム13の左側前端部に設けられた転動輪56と、駆動輪55および転動輪56に周回させたクローラベルト57とを備えている。
右クローラ走行部48は、左クローラ走行部47と左右対称の部材であり、各構成部材に左クローラ走行部47と同じ符号を付して右クローラ走行部48の詳説を省略する。
【0028】
図2に示すように、左右のハンドル16には、それぞれの上端部近傍にクロスメンバー18が架け渡されている。よって、クロスメンバー18により左右のハンドル16の剛性が確保されている。
このクロスメンバー18の略中央に、操作部20の伝達機構22が設けられている。
【0029】
操作部20は、左ハンドル16に設けられた前後進操作部21と、クロスメンバー18の略中央に設けられた伝達機構22と、伝達機構22および前後進操作部21を覆う操作カバー23(図1参照)とを備えている。
なお、図2は操作部20の構成の理解を容易にするため操作カバー23を外した状態で示す。
【0030】
図1、図3に示すように、前後進操作部21は、左ハンドル16に設けられた取付ブラケット61と、取付ブラケット61にレバー支持軸62を介して回動自在に支持された操作ブラケット63と、操作ブラケット63に基端部64aが固定された前後進レバー64と、操作ブラケット63を前後進操作レバー66に連結する前後進ケーブル67とを備えている
【0031】
操作ブラケット63は、第1連結部63aおよび第2連結部63bを有する。
第1連結部63aに、前後進ケーブル67(インナケーブル69)の一端部69aが連結されている。
また、第2連結部63bに、後述する伝達ケーブル92(インナケーブル94)の一端部94aが連結されている。
【0032】
前後進ケーブル67は、アウタケーブル68内にインナケーブル69が摺動自在に収容され、両端部69a,69bがアウタケーブル68から突出されている。
インナケーブル69は、一端部69aが操作ブラケット63の第1連結部63aに連結され、他端部69bが前後進操作レバー66に連結されている。
【0033】
操作ブラケット63に前後進レバー64の基端部64aが固定されることで、前後進レバー64がレバー支持軸62を軸にスイング移動自在に支持されている。
この前後進レバー64は、操作カバー23(図1参照)のガイド開口から上方に突出されている。
前後進レバー64が中立位置P1に配置された状態において、前後進ケーブル67のインナケーブル69で前後進操作レバー66が中立位置P4に配置される。
【0034】
前後進操作レバー66が中立位置P4に配置されることで、左右の油圧ポンプ42,43の吐出量が零になり左右の油圧モータ44,45が回転停止状態に保たれる。
左右の油圧モータ44,45を回転停止状態に保つことで、左右の駆動輪55および左右のクローラベルト57が停止して除雪機10が停止状態に保たれる。
【0035】
また、前後進レバー64が中立位置P1から機体前方の最大前進位置P2に向けてスイング移動されることにより、前後進ケーブル67のインナケーブル69で前後進操作レバー66が最大前進位置P5に配置される。
前後進操作レバー66が最大前進位置P5に配置されることで、左右の油圧モータ44,45から吐出された油量で左右の駆動輪55が正転状態に保たれる。
左右の駆動輪55を正転状態に保つことで、左右のクローラベルト57が正転して除雪機10が前進走行状態に保たれる。
【0036】
さらに、前後進レバー64が中立位置P1から機体後方の最大後進位置P3に向けてスイング移動されることにより、前後進ケーブル67のインナケーブル69で前後進操作レバー66が最大後進位置P6に配置される。
前後進操作レバー66が最大後進位置P6に配置されることで、左右の油圧モータ44,45から吐出された油量で左右の駆動輪55が逆転状態に保たれる。
左右の駆動輪55を逆転状態に保つことで、左右のクローラベルト57が逆転して除雪機10が後進走行状態に保たれる。
すなわち、前後進レバー64は、除雪機10の前進走行、停止、後退走行の間で連続して切換え操作可能なレバーである。
【0037】
図4、図5に示すように、伝達機構22は、取付ブラケット71に固定されたスロットル支持軸72と、スロットル支持軸72に回転自在に支持されたスロットルレバー(第1入力部材)73と、スロットルレバー73内に収容された伝達レバー(第2入力部材)74および湾曲アーム(出力部材)75と、伝達レバー74および湾曲アーム75を覆うスロットルカバー76と、湾曲アーム75を付勢するリターンスプリング(付勢部材)77(図2参照)とを備えている。
【0038】
この伝達機構22は、図6に示すように、スロットルレバー73内において湾曲アーム75に伝達レバー74が重ねられている。
この状態において、伝達レバー74の基部74aがスロットル支持軸72に回転自在に支持されている。また、伝達レバー74の先端部74bに湾曲アーム75の一端部75aが第1連結ピン78を介して連結されている。
【0039】
さらに、伝達機構22は、図7に示すように、スロットル支持軸72がスロットルレバー73の側壁部84および伝達レバー74の基部74aを貫通し、スロットル支持軸72のねじ部72aがスロットルカバー76の取付孔76aから突出されている。
取付孔76aから突出されたねじ部72aにナット82がねじ結合されることにより伝達機構22が一体に組み付けられている。
以下、本発明に係る伝達機構22について詳しく説明する。
【0040】
図6、図7に示すように、スロットルレバー73は、基部に設けられたケース83と、ケース83の外周から半径方向外側に向けて突出されたレバー本体91とを備えている。
ケース83は、側面視略円形状に形成されるとともに中央に取付孔84aが形成された側壁部84と、側壁部84の外周縁84bに沿って設けられた周壁部85と、側壁部84の内面に設けられたカム部(カム)86とを有する。
【0041】
ケース83(側壁部84)の取付孔84aがスロットル支持軸72に回動自在に嵌合されている。
これにより、スロットル支持軸72にスロットルレバー73が回動自在に支持されている。
【0042】
図6、図8に示すように、スロットルレバー73は、高速回転位置P7〜低速回転位置P8において第1スイング中心線S1を基点にして矢印A−B方向にスイング移動可能である。
第1スイング中心線S1はスロットル支持軸72の中心に一致する中心線である。
【0043】
スロットルレバー73のケース83に備えた収容空間88に、カム部86、伝達レバー74および湾曲アーム75が収容されている。さらに、ケース83の収容空間88には、伝達インナケーブル94の他端部94bや、スロットルインナケーブル97の一端部97aなどが収容されている。
【0044】
すなわち、スロットルレバー73は、カム部86、伝達レバー74、湾曲アーム75、伝達インナケーブル94の他端部94b、およびスロットルインナケーブル97の一端部97aなどを収納するケースを兼用している。
スロットルレバー73で兼用したケースに伝達レバー74や湾曲アーム75を収納することで、伝達機構22の小型化を図ることができる。
【0045】
レバー本体91は、周壁部85の外周面85aから半径方向外側に向けて突出され、先端部につまみ部91aを有する。
つまみ部91aが矢印A−B方向に移動することで、スロットルレバー73が第1スイング中心線S1を基点にして矢印A−B方向にスイング移動可能である。
【0046】
カム部86は、湾曲アーム75が第2スイング中心線S2を基点としてスイング移動した際に、湾曲アーム75(他端部75b)のスイング移動の軌跡をスロットルレバー73のスイング移動量に応じて変化させるべくスロットルレバー73に設けられたカムである。
【0047】
図9に示すように、カム部86は、スロットルレバー73の側壁部84に一体に形成され、湾曲アーム75の他端部75bが載置可能なカム面87を有する。
このカム面87は、スロットルレバー73を矢印A方向にスイング移動(一方にスイング移動)する際に、スロットルレバー73と一体に矢印C方向に変位可能な面である。
カム面87が矢印C方向に変位することで、湾曲アーム75が第1連結ピン78を軸にして矢印D方向にスイング移動することを許容する。
【0048】
さらに、カム面87は、湾曲アーム75の他端部75bが乗り越えつつ矢印F方向へのスイング移動を許容する形状に形成されている。
すなわち、スロットルレバー73が高速回転位置P7に配置された状態において、伝達レバー74が矢印E方向にスイング移動(一方にスイング移動)する際に、湾曲アーム75の他端部75bがカム面87を乗り越えつつ矢印F方向にスイング移動することを許容する。
【0049】
以下、カム面87の形状および特性について詳しく説明する。
すなわち、カム面87は、曲線的に形成されることで、略水平な水平カム面87aと、角状の角カム面87bと、略鉛直な鉛直カム面87cとを有する。
【0050】
伝達レバー74の矢印E方向へのスイング移動量が小さい範囲H1において、湾曲アーム75の他端部75bが水平カム面87aに載置された状態に保たれる。
湾曲アーム75の他端部75b(具体的には、内側の面75c)が水平カム面87aに載置された状態に保たれることで、湾曲アーム75の他端部75bを緩やかに変化(変位)させることができる。
【0051】
一方、伝達レバー74の矢印E方向へのスイング移動量が大きい範囲H2において、湾曲アーム75の他端部75b(具体的には、内側の面75c)が水平カム面87aから角カム面87bを乗り越えて鉛直カム面87cに沿って下方に変位する。
湾曲アーム75の他端部75bが鉛直カム面87cに沿って下方に変位することで、湾曲アーム75の他端部75bを大きく変化(変位)させることができる。
【0052】
伝達レバー74は、湾曲アーム75に重ねた状態でスロットルレバー73の収容空間88に収容され、スロットル支持軸72に取付孔81が回転自在に嵌入されている。
よって、伝達レバー74は、第1スイング中心線S1を基点としてスロットルレバー73に対し独立してスイング移動可能にスロットル支持軸72に支持されている。
伝達レバー74の先端部74bに第1連結ピン78を介して湾曲アーム75の一端部75aが連結されるとともに伝達ケーブル92(インナケーブル94)の他端部94bが連結されている。
【0053】
図3、図8に示すように、伝達ケーブル92は、アウタケーブル93内にインナケーブル(以下、「伝達インナケーブル」という)94が摺動自在に収容され、両端部94a,94bがアウタケーブル93から突出されている。
伝達インナケーブル94は、一端部94aが操作ブラケット63の第2連結部63bに連結され、他端部94bが伝達レバー74の先端部74bおよび湾曲アーム75の一端部75aに第1連結ピン78を介して連結されている。
【0054】
よって、伝達レバー74の先端部74bは、伝達ケーブル92を介して操作ブラケット63の第2連結部63bに連結されている。操作ブラケット63には前後進レバー64の基端部64aが固定されている。
これにより、伝達レバー74は、伝達ケーブル92を介して前後進レバー64に間接的に連結されている。
【0055】
ここで、伝達インナケーブル94は、押引き操作(プッシュ・プル操作)が可能に針金(ロッド)で形成されている。
なお、押引き操作が可能なケーブルは、作業機などに一般に使用されているケーブルである。
【0056】
図6、図9に示すように、湾曲アーム75は、側壁部84に隣接して配置され、第1スイング中心線S1(すなわち、スロットル支持軸72)を迂回するように外側に向けて膨出させて湾曲状(ブーメラン状)に形成されている。
このように、湾曲アーム75を湾曲状に形成してスロットル支持軸72を迂回するようにすることで湾曲アーム75の形状を小さくできる。
これにより、湾曲アーム75を収納するケース(すなわち、スロットルレバー73)を一層小型にすることが可能になり、伝達機構22のさらなる小型化を図ることができる。
【0057】
この湾曲アーム75は、一端部75aが伝達レバー74の先端部74bに第1連結ピン78を介して連結され、他端部75bのうち内側の面75cがカム面87に接触可能に形成されている。
内側の面75cは、湾曲状に形成された湾曲アーム75の内側の面である。
【0058】
湾曲アーム75の一端部75aが伝達レバー74の先端部74bに第1連結ピン78を介して連結されることで、湾曲アーム75が第2スイング中心線S2を基点としてスイング移動自在に支持されている。
第2スイング中心線S2は、第1スイング中心線S1に平行で、かつ、第1連結ピン78の中心に一致する中心線である。
【0059】
湾曲アーム75の他端部75bに第2連結ピン79を介してスロットルケーブル95(インナケーブル97)の一端部97aが連結されている。
図2、図8に示すように、スロットルケーブル95は、アウタケーブル96内にインナケーブル(以下、「スロットルインナケーブル」という)97が摺動自在に収容され、両端部97a,97bがアウタケーブル96から突出されている。
【0060】
スロットルインナケーブル97は、一端部97aが湾曲アーム75の他端部75bに第2連結ピン79を介して連結され、他端部97bがスロットル操作レバー(出力調整部)98(図2参照)に連結されている。
よって、湾曲アーム75の他端部75bは、スロットルケーブル95を介してスロットル操作レバー98に連結されている。
【0061】
すなわち、湾曲アーム75は、クローラ走行部14や除雪作業部15(図1参照)を駆動するエンジン12の出力を調整可能なスロットル操作レバー98に間接に連結されている。
除雪作業部15は、前述したように、除雪機10が停止、後退走行のとき無負荷状態または前進走行のときより負荷が小さな状態に切り換え可能な作業部である。
【0062】
スロットル操作レバー98は、高速回転位置P9および低速回転位置P10間においてスイング移動(揺動)自在にスロットルボディ99に支持されている。
スロットル操作レバー98を高速回転位置P9および低速回転位置P10間でスイング移動することで、スロットルボディ99内のスロットル弁が全開された位置および僅かに開放された位置間で変位可能である。
このように、スロットルボディ99内のスロットル弁を全開された位置および僅かに開放された位置間で変位させることで、エンジン12を高速回転および低速回転間で調整可能である。
【0063】
スロットル操作レバー98にはリターンスプリング77が連結されている。
リターンスプリング77は、スロットル操作レバー98を低速回転位置P10に向けて付勢するばね部材である。
スロットル操作レバー98を低速回転位置P10に向けて付勢することで、リターンスプリング77によってスロットル操作レバー98を矢印Gの如く牽引する(引張る)ことができる。
スロットル操作レバー98を矢印Gの如く牽引することで、図8に示す湾曲アーム75の他端部75b(具体的には、内側の面75c)がカム部86のカム面87に対して接触する方向に付勢されている。
【0064】
図7に示すように、伝達機構22は、ケース83の側壁部84にロック部材101が配置されるとともに、ロック部材101の貫通孔101aにスロットル支持軸72が貫通され、ロック部材101のロック片101bが取付ブラケット71の係止孔71aに係止されている。
ロック部材101および取付ブラケット71間にロック圧縮ばね102が圧縮された状態に配置されるとともにスロットル支持軸72に嵌入されている。
これにより、ロック圧縮ばね102のばね力でスロットルレバー73が任意の位置に保持される。
【0065】
また、伝達機構22は、伝達レバー74の基部74aおよびスロットルカバー76間にワッシャ(スペーサ)104が介在され、基部74aの周囲部74cおよびスロットルカバー76間に圧縮ばね105が圧縮された状態で介在されるとともにスロットル支持軸72に嵌入されている。
よって、圧縮ばね105のばね力で伝達レバー74が任意の位置に保持される。
【0066】
図2、図9に示すように、つまみ部91aを矢印A方向に操作することで、スロットルレバー73がスロットル支持軸72を軸に矢印A方向にスイング移動する。
スロットルレバー73がスロットル支持軸72を軸に矢印A方向にスイング移動することで、カム部86がスロットルレバー73と一体に矢印C方向に移動する。
【0067】
ここで、湾曲アーム75の他端部75bは、リターンスプリング77のばね力で水平カム面87aに載置された状態に保たれている。
すなわち、湾曲アーム75の他端部75bにはスロットル操作レバー98、スロットルケーブル95および第2連結ピン79を介してリターンスプリング77の復帰力Fが矢印の如く作用している。
【0068】
よって、カム部86が矢印C方向に移動することで、湾曲アーム75の他端部75b(具体的には、内側の面75c)がリターンスプリングの復帰力Fでカム部86(水平カム面87a)に追従する。
これにより、湾曲アーム75が第1連結ピン78を軸にして矢印D方向にスイング移動し、スロットル操作レバー98が低速回転位置P10に向けて移動する。
スロットル操作レバー98が低速回転位置P10に向けて移動することで、エンジン12の回転数が低速回転に下げられる。
【0069】
一方、つまみ部91aを矢印B方向に操作することで、スロットルレバー73がスロットル支持軸72を軸に矢印B方向にスイング移動する。
スロットルレバー73がスロットル支持軸72を軸に矢印B方向にスイング移動することで、カム部86がスロットルレバー73と一体に矢印H方向に移動する。
【0070】
ここで、湾曲アーム75の他端部75b(具体的には、内側の面75c)は水平カム面87aに載置された状態に保たれている。
よって、カム部86が矢印H方向に移動することで、湾曲アーム75の他端部75bがリターンスプリングの復帰力Fに抗してカム部86に追従する。
これにより、湾曲アーム75が第1連結ピン78を軸にして矢印I方向にスイング移動する。
【0071】
湾曲アーム75が第1連結ピン78を軸にして矢印I方向にスイング移動することで、スロットル操作レバー98が高速回転位置P9に向けて移動する。
スロットル操作レバー98が高速回転位置P9に向けて移動することで、エンジン12の回転数が高速回転に高められる。
【0072】
すなわち、スロットルレバー73は、つまみ部91aに操作力を作用させてつまみ部91aを矢印A−B方向に操作することで、スロットル操作レバー98を移動させてエンジン12の回転数を調整可能な出力操作部材である。
【0073】
以上説明したように、伝達機構22によれば、スロットルレバー73を矢印A方向にスイング移動することでエンジン12の回転数が低速回転に下げられる。
一方、スロットルレバー73を矢印B方向にスイング移動することでエンジン12の回転数が高速回転に高められる。
【0074】
さらに、前後進レバー64を最大後進位置P3(図3参照)までスイング移動する際に、伝達レバー74を矢印E方向にスイング移動することでエンジン12の回転数が低速回転に抑えられる。
一方、前後進レバー64を最大前進位置P2(図3参照)までスイング移動する際に、伝達レバー74を矢印J方向にスイング移動することでエンジン12の回転数が高速回転に高められる。
【0075】
このように、伝達機構22は、二つの独立した入力部材としてスロットルレバー73および伝達レバー74を備えるとともに、一つの出力部材として湾曲アーム75を備えている。
伝達機構22によれば、スロットルレバー73、伝達レバー74からの互いに独立した二つの入力を、湾曲アーム75で一つの出力として取り出すことが可能である。
【0076】
ここで、前後進レバー64を操作した際の伝達ケーブル92の変位量δ1およびスロットルケーブル95の変位量δ2の関係を図10、図11に基づいて説明する。
なお、図10においては前後進操作部21および伝達機構22の構成の理解を容易にするために前後進操作部21および伝達機構22の取付位置を離した状態で図示する。
【0077】
図11において、左側の縦軸は伝達ケーブル92の変位量δ1を示し、右側の縦軸はスロットルケーブル95の変位量δ2を示す。また、横軸は前後進レバー64のレバー位置(P2〜P1〜P3)を示す。
P1は中立位置、P2は最大前進位置、およびP3は最大後進位置である。
【0078】
前後進レバー64のレバー位置(P2〜P1〜P3)および伝達ケーブル92の変位量δ1の関係をグラフG1に示す。
また、前後進レバー64のレバー位置(P2〜P1〜P3)およびスロットルケーブル95の変位量δ2の関係をグラフG2に示す。
【0079】
グラフG1およびグラフG2の関係から、前後進レバー64のレバー位置(P2〜P1)の範囲においてスロットルケーブル95の変位量δ2が小さく抑えられる。
一方、前後進レバー64のレバー位置(P1〜P3)の範囲においてスロットルケーブル95の変位量δ2を大きく確保される。
【0080】
図10、図11に示すように、スロットルレバー73が高速回転位置P7に配置された状態において、前後進レバー64を最大前進位置P2から中立位置P1まで矢印K方向にスイング移動することで伝達ケーブル92(インナケーブル94)が矢印L方向にδ1aだけ押し出される。
【0081】
伝達ケーブル92(インナケーブル94)が矢印L方向にδ1aだけ押し出されることで、伝達レバー74が矢印E方向にスイング移動する。
伝達レバー74が矢印E方向に小さい範囲H1(図9参照)においてスイング移動することで、湾曲アーム75の一端部75aが矢印E方向に移動する。
【0082】
この状態において、湾曲アーム75の他端部75bが水平カム面87a(図9参照)に載置された状態に保たれる。
湾曲アーム75の他端部75bが水平カム面87aに載置された状態に保たれることで、伝達レバー74のスイング移動量δ1aの変化に対して湾曲アーム75の他端部75bをδ2aだけ緩やかに変化(変位)させることができる。
よって、湾曲アーム75の他端部75bに第2連結ピン79を介して連結されたスロットルケーブル95の変位量δ2aを小さく抑えることができる。
【0083】
さらに、スロットルレバー73が高速回転位置P7に配置された状態において、前後進レバー64を中立位置P1から最大後進位置P3まで矢印M方向にスイング移動することで伝達ケーブル92(インナケーブル94)が矢印L方向にδ1bだけ押し出される。
【0084】
伝達ケーブル92(インナケーブル94)が矢印L方向にδ1bだけ押し出されることで、伝達レバー74が矢印E方向にスイング移動する。
伝達レバー74が矢印E方向に大きい範囲H2(図9参照)においてスイング移動することで、湾曲アーム75の一端部75aが矢印E方向に移動する。
【0085】
この状態において、湾曲アーム75の他端部75bが水平カム面87aから角カム面87b(図9参照)を乗り越えて鉛直カム面87c(図9参照)に沿って下方に変位する。
湾曲アーム75の他端部75bが鉛直カム面87cに沿って下方に変位することで、伝達レバー74のスイング移動量の変化に対して湾曲アーム75を大きく変化(変位)させることができる。
よって、湾曲アーム75の他端部75bに第2連結ピン79を介して連結されたスロットルケーブル95の変位量δ2bを大きく確保できる。
【0086】
以上説明したように、伝達機構22によれば、カム面87を曲線的に形成することで、伝達レバー74のスイング移動量に応じて湾曲アーム75の変位量δ2(図11参照)を変えるように出力特性を決めることができる。
具体的には、湾曲アーム75のスイング移動量が小さい範囲H1において、湾曲アーム75をカム面87で支えて湾曲アーム75(他端部75b)の変位量δ2をδ2aと緩やかに変化(変位)させることができる。
【0087】
一方、伝達レバー74のスイング移動量が大きい範囲H2において、湾曲アーム75(他端部75b)がカム面87を乗り越えて湾曲アーム75(他端部75b)の変位量δ2をδ2bと大きく変化(変位)させることができる。
このように、カム面87を曲線的に形成する簡単な構成で、伝達レバー74のスイング移動量に対する湾曲アーム75の出力特性を決めることができるので、用途に適した特性を得ることができる。
【0088】
すなわち、実施例では作業機として除雪機10を例示するが、これに限定するものではなく、例えば、除雪機10の他に芝刈機やブルドーザに適用可能で、さらには他の産業機械(例えば、工作機械)などに適用することも可能である。
【0089】
つぎに、除雪機10をエンジン高速回転で前進走行させている状態から後進走行に切り換える際に、伝達機構22でエンジン12の回転数を低速回転に下げる例を図12〜図14に基づいて説明する。
【0090】
図12(a)に示すように、スロットルレバー73を高速回転位置P7に配置する。
この状態において、湾曲アーム75の他端部75b(内側の面75c)が水平カム面87aに載置された状態に保たれる。
スロットルレバー73を高速回転位置P7に配置することにより、スロットルケーブル95のスロットルインナケーブル97を矢印Nの如く牽引する。
スロットルインナケーブル97を矢印Nの如く牽引することで、リターンスプリング77(図2参照)のばね力に抗してスロットル操作レバー98を高速回転位置P9に配置する。
これにより、図2に示すエンジン12が高速回転に保持されている。
【0091】
図12(b)に示すように、前後進レバー64を最大前進位置P2から中立位置P1の手前位置まで矢印O方向にスイング移動する。
前後進レバー64を最大後進位置P3までスイング移動することで、前後進ケーブル67(インナケーブル69)が矢印Pの如く牽引されるとともに、伝達ケーブル92が矢印Qの如くδ1a(図11参照)だけ押し出される。
【0092】
前後進ケーブル67(インナケーブル69)を矢印Pの如く牽引することで、前後進ケーブル67のインナケーブル69で前後進操作レバー66を中立位置P4まで移動する。
【0093】
図13(a)に示すように、伝達ケーブル92が矢印Q方向にδ1a(図11参照)だけ押し出されることで、伝達レバー74が矢印E方向にスイング移動する。
伝達レバー74が矢印E方向に小さい範囲H1においてスイング移動することで、湾曲アーム75の一端部75aが矢印E方向に移動する。
【0094】
この状態において、湾曲アーム75の他端部75bが水平カム面87aに載置された状態に保たれる。
湾曲アーム75の他端部75bが水平カム面87aに載置された状態に保たれることで、伝達レバー74のスイング移動量の変化に対して湾曲アーム75の他端部75bを緩やかに変化(変位)させることができる。
よって、図11に示すように、スロットルケーブル95の変位量δ2をδ2aと小さく抑えることができる。
【0095】
図13(b)に示すように、前後進レバー64を中立位置P1から最大後進位置P3まで矢印O方向に継続してスイング移動する。
前後進レバー64を最大後進位置P3までスイング移動することで、前後進ケーブル67のインナケーブル69が矢印Pの如く牽引されるとともに、伝達ケーブル92の伝達インナケーブル94が矢印Qの如くδ1b(図11参照)だけ押し出される。
【0096】
前後進ケーブル67のインナケーブル69が矢印Pの如く継続して牽引されることで、インナケーブル69で前後進操作レバー66を最大後進位置P6に配置する。
前後進操作レバー66を最大後進位置P6に配置することで、左右の油圧モータ44,45で左右の駆動輪55(図1参照)を逆転させる。
左右の駆動輪55を逆転させることで、図1に示す左右のクローラベルト57を逆転させて除雪機10を後進走行させる。
【0097】
図14に示すように、伝達ケーブル92が矢印Q方向にδ1b(図11参照)だけ押し出されることで、伝達レバー74が矢印E方向にスイング移動する。
伝達レバー74が矢印E方向に大きい範囲H2においてスイング移動することで、湾曲アーム75の一端部75aが矢印E方向に移動する。
【0098】
この状態において、湾曲アーム75の他端部75bが水平カム面87aから角カム面87bを乗り越えて鉛直カム面87cに沿って下方に移動する。
湾曲アーム75の他端部75bが鉛直カム面87cに沿って下方に向けて矢印R方向に移動する。よって、伝達レバー74のスイング移動量の変化に対して湾曲アーム75を大きく変化(変位)させることができる。
これにより、図11に示すように、スロットルケーブル95の変位量δ2をδ2b(図11参照)と大きく確保できる。
【0099】
湾曲アーム75を大きく変化(変位)させることにより、スロットル操作レバー98(図2参照)をリターンスプリング77の付勢力(ばね力)で低速回転位置P10まで移動する。
スロットル操作レバー98が低速回転位置P10まで移動することで、図1に示すエンジン12の回転数を低速回転に下げることができる。
【0100】
これにより、図1に示す除雪作業部15を前進走行から後進走行に切り換える際にエンジン12の回転数を伝達機構22で低速回転に迅速に下げることができる。
このように、エンジン12の出力を低下させることで、燃費(燃料消費量)を抑え、CO2削減を図ることで環境に優しい作業を可能にできる。
【0101】
この状態から、図13(b)に示す前後進レバー64を最大後進位置P3から最大前進位置P2まで戻すことにより、前後進操作レバー66を最大後進位置P6から最大前進位置P5に戻される。
同時に、伝達ケーブル92(インナケーブル94)が矢印Q方向に対して逆方向に牽引される(引張られる)。よって、伝達レバー74が矢印E方向に対して逆方向に移動することにより、湾曲アーム75の一端部75aが第1連結ピン78を介して矢印E方向に対して逆方向に移動する。
【0102】
これにより、湾曲アーム75の他端部75bが矢印R方向に対して逆方向に移動して、他端部75bの内側の面75cがカム面87(水平カム面87a)に乗り上がる。
したがって、スロットルケーブル95(インナケーブル97)が第2連結ピン79を介して上方に引き上げられて、図2に示すスロットル操作レバー98を低速回転位置P10から高速回転位置P9まで戻すことができる。
【0103】
図12〜図14で説明したように、伝達機構22は、伝達レバー(第2入力部材)74を矢印E方向(一方)にスイング移動させたとき、湾曲アーム(出力部材)75の他端部75bがカム面87を乗り越えつつスイング移動することを許容するように構成されている。
そして、湾曲アーム75(他端部75b)がカム面87を乗り越えつつスイング移動することで、湾曲アーム75(他端部75b)を矢印R方向(スイング移動の方向)へ第2の変位量(δ2a+δ2b)だけ変位させることができる。
【0104】
ついで、除雪機10をエンジン高速回転からエンジン低速回転に切り換える例を図15に基づいて説明する。
図15(a)に示すように、スロットルレバー73のつまみ部91aを高速回転位置P7から低速回転位置P8に向けて矢印S方向にスイング移動する。
スロットルレバー73を矢印S方向にスイング移動することで、カム部86(カム面87)が矢印T方向に移動する。
【0105】
ここで、スロットルケーブル95のスロットルインナケーブル97がリターンスプリング77(図2参照)のばね力で矢印U方向に牽引されている(引張られている)。
よって、カム部86(カム面87)が矢印T方向に移動することで、湾曲アーム75の他端部75bがカム面87とともに矢印T方向に移動する。
【0106】
図15(b)に示すように、スロットルレバー73のつまみ部91aが低速回転位置P8までスイング移動することで、スロットルケーブル95のスロットルインナケーブル97がリターンスプリング77のばね力で矢印U方向に変位量(δ2a+δ2b)(図11参照)と略同量変位する。
すなわち、図2に示すスロットル操作レバー98がリターンスプリング77のばね力で低速回転位置P9に配置される。
これにより、エンジン12が低速回転に保持され、エンジン12の出力を低下させることができる。
【0107】
この状態から、図15(b)に示すスロットルレバー73のつまみ部91aを低速回転位置P8から高速回転位置P7までスイング移動することにより、カム面87(水平カム面87a)が矢印T方向に対して逆方向に移動する。
よって、湾曲アーム75の他端部75bがカム面87(水平カム面87a)とともに移動する。
これにより、スロットルケーブル95(インナケーブル97)が第2連結ピン79を介して上方に引き上げられて、図2に示すスロットル操作レバー98を低速回転位置P10から高速回転位置P9まで戻すことができる。
【0108】
図15で説明したように、伝達機構22は、スロットルレバー(第1入力部材)73を矢印S方向(一方)にスイング移動することで、湾曲アーム(出力部材)75のスイング移動を許容するようにカム面87を変位させるように構成されている。
そして、カム面87を変位させることで、湾曲アーム75(他端部75b)を矢印T方向(スロットルレバー73のスイング移動の方向)へ第1の変位量(略δ2a+δ2b)だけ変位させることができる。
【0109】
ここで、スロットルレバー73の矢印S方向(一方)へのスイング移動による第1の変位量(略δ2a+δ2b)に対して、伝達レバー74の矢印E方向(一方)へのスイング移動による第2の変位量(δ2a+δ2b)が概ね合致する。
よって、スロットルレバー73および伝達レバー74の二つの入力部材を、各々一方にスイング移動させることで、一つの湾曲アーム75を同様に変位させることができる。
これにより、スロットルレバー73、伝達レバー74、湾曲アーム75およびカム面87などの機械的な構成で、二つの入力部材(スロットルレバー73、伝達レバー74)による各々の入力に対応させて、一つの出力部材(湾曲アーム75)から出力を取り出すことができる。
【0110】
さらに、伝達機構22をスロットルレバー73、伝達レバー74、湾曲アーム75などで機械的に構成した。
よって、伝達機構22に電気制御機器を附加することや、負荷した電気制御機器の防水性に対する配慮を不要にできる。
このように、電気制御機器の附加や防水性に対する配慮を不要にできるので伝達機構22のコストを抑えることができる。
【0111】
つぎに、除雪機10をエンジン低速回転で前進走行させている状態から後進走行に切り換える例を図16〜図17に基づいて説明する。
図16(a)に示すように、スロットルレバー73のつまみ部91aを低速回転位置P8に配置した状態でエンジン12(図2参照)が低速回転に保持されている。
【0112】
図16(b)に示すように、前後進レバー64を最大前進位置P2から中立位置P1を経て最大後進位置P3まで矢印Oの如くスイング移動する。
前後進レバー64を最大後進位置P3までスイング移動することで、前後進ケーブル67(インナケーブル69)が矢印P方向に牽引されるとともに、伝達ケーブル92(インナケーブル94)が矢印Qの如く(δ1a+δ1b)だけ押し出される。
【0113】
前後進ケーブル67(インナケーブル69)を矢印Pの如く牽引することで、インナケーブル69で前後進操作レバー66を最大後進位置P6に配置する。
前後進操作レバー66を最大後進位置P6に配置することで、左右の油圧モータ44,45で左右の駆動輪55(図1参照)を逆転させる。
左右の駆動輪55を逆転させることで、図1に示す左右のクローラベルト57を逆転させて除雪機10を後進走行させる。
【0114】
図17に示すように、伝達ケーブル92(インナケーブル94)が矢印Q方向に(δ1a+δ1b)(図11参照)だけ押し出されることで、伝達レバー74が矢印E方向にスイング移動する。
この状態において、湾曲アーム75の他端部75bが水平カム面87aに載置した状態に保たれる。
よって、スロットルケーブル95(インナケーブル97)の変位量を小さく抑えることができる。
【0115】
スロットルケーブル95(インナケーブル97)の変位量を小さく抑えることで、スロットル操作レバー98(図2参照)を低速回転位置P10近傍に保つことができる。
スロットル操作レバー98を低速回転位置P10近傍に保つことで、エンジン12の回転数を低速回転に保つことができる。
これにより、図1に示す除雪作業部15を前進走行から後進走行に切り換える際にエンジン12の回転数を伝達機構22で低速回転に保つことができる。
【0116】
この状態から、図17に示すスロットルレバー73のつまみ部91aを低速回転位置P8から高速回転位置P7までスイング移動することにより、カム面87(水平カム面87a)がスロットルレバー73と一体に反時計回り方向に移動する。
この際に、湾曲アーム75が第1連結ピン78を軸にして時計回り方向に移動する(逃げる)。よって、カム面87が湾曲アーム75の他端部75bを乗り越えて反時計回り方向に移動する。
これにより、湾曲アーム75の他端部75bを略同じ位置に保つことができ、図2に示すスロットル操作レバー98を低速回転位置P10に保持することができる。
【0117】
なお、本発明に係る伝達機構は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、作業機として除雪機10を例示するが、これに限定するものではない。例えば、除雪機10の他に芝刈機やブルドーザなどに適用可能で、さらには他の産業機械(例えば、工作機械)などに適用することも可能である。
【0118】
また、前記実施例では、第1入力部材としてスロットルレバー73を例示し、第2入力部材として伝達レバー74を例示し、出力部材として湾曲アーム75を例示したが、これに限らないで、その他の部材に適用することも可能である。
【0119】
さらに、前記実施例では、付勢部材としてリターンスプリング77を例示したが、これに限らないで、ゴムなどの他の付勢部材を用いることも可能である。
【0120】
また、前記実施例では、スロットル操作レバー98に設けたリターンスプリング77で、湾曲アーム75をカム面87に接触させる例について説明したが、これに限らないで、その他の付勢部材で湾曲アーム75をカム面87に接触させるように構成することも可能である。
【0121】
さらに、前記実施例では、伝達レバー74を伝達ケーブル92を介して前後進レバー64に間接的に連結した例について説明したが、これに限らないで、伝達レバー74を前後進レバー64に直接的に連結することも可能である。
【0122】
また、前記実施例では、ケース83を側面視略円形状に形成した例について形成したが、これに限らないで、矩形状などの他の形状に形成することも可能である。
【0123】
さらに、前記実施例で示した除雪機10、エンジン12、伝達機構22、前後進レバー64、前後進ケーブル67、スロットルレバー73、伝達レバー74、湾曲アーム75、リターンスプリング77、ケース83、カム部86、カム面87、伝達ケーブル92、スロットルケーブル95およびスロットル操作レバー98などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、第1入力部材および第2入力部材からの互いに独立した二つの入力を出力部材から一つの出力として取出し可能な伝達機構への適用に好適である。
【符号の説明】
【0125】
10…除雪機(作業機)、12…エンジン(駆動源)、22…伝達機構、64…前後進レバー、67…前後進ケーブル、73…スロットルレバー(第1入力部材、出力操作部材)、74…伝達レバー(第2入力部材)、75…湾曲アーム(出力部材)、77…リターンスプリング(付勢部材)、83…ケース、86…カム部(カム)、87…カム面、92…伝達ケーブル、95…スロットルケーブル、98…スロットル操作レバー(出力調整部)、S1…第1スイング中心線、S2…第2スイング中心線。
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1入力部材および第2入力部材の二つの独立した入力部材を備えるとともに一つの出力部材を備え、第1入力部材および第2入力部材からの互いに独立した二つの入力を出力部材から一つの出力として取出し可能な伝達機構に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機のなかには、車両の作業負荷状態から作業休止状態に移行したことを検知手段で検知し、検知した信号に基づいて伝達機構でエンジン回転数を低下するように制御するものがある。
この伝達機構によれば、作業休止状態でエンジン回転数を低下させて、燃費(燃料消費量)を抑え、CO2削減を図ることで環境に優しい作業が可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−248975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1の伝達機構は、作業機が作業休止状態に移行した際に、電気的な制御でエンジン回転数を低下させている。
このような、伝達機構のなかには、電気的に制御することで、互いに独立した二つの入力を一つの出力として取出し可能なものが考えられる。
しかし、電気的に制御可能な伝達機構は、検知手段などの電気制御機器を附加し、附加した電気制御機器の防水性を確保する必要があり、コストを抑えることが難しいとされていた。
【0005】
本発明は、互いに独立した二つの入力を一つの出力として取出し可能で、かつ、電気制御機器の附加や電気制御機器の防水性に対する配慮を不要にすることでコストを抑えることができる伝達機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、互いに独立した二つの入力を一つの出力として取出し可能な伝達機構であって、第1スイング中心線を基点にスイング移動が可能な第1入力部材と、前記第1スイング中心線を基点として、前記第1入力部材に対し独立したスイング移動が可能な第2入力部材と、この第2入力部材に、前記第1スイング中心線に平行な第2スイング中心線を基点としたスイング移動が可能に連結された出力部材と、この出力部材のスイング移動の軌跡を前記第1入力部材のスイング移動量に応じて変化させるべく、前記第1入力部材に設けられたカムと、このカムに対して前記出力部材を接触する方向へ付勢する付勢部材と、を備え、前記カムは、前記第1入力部材が一方にスイング移動をしたとき、前記出力部材のスイング移動を許容するように変位可能なカム面を有し、このカム面は、前記第2入力部材が前記一方にスイング移動をしたとき、前記出力部材が乗り越えつつスイング移動することを許容する形状に形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2は、前記カム面は、前記第2入力部材のスイング移動量が小さいとき、前記第2入力部材のスイング移動量の変化に対して前記出力部材が緩やかに変化可能で、前記第2入力部材のスイング移動量が大きいとき、前記第2入力部材のスイング移動量の変化に対して前記出力部材が大きく変化可能となるように、曲線的に形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項3は、前記第1入力部材は、前記第2入力部材および前記出力部材を収納するケースを兼用していることを特徴とする。
【0009】
請求項4は、前記出力部材は、前記第1スイング中心線を迂回するように湾曲状に形成され、湾曲状に形成された内側の面が前記カム面に接触可能としたことを特徴とする。
【0010】
請求項5は、前記第2入力部材は、作業機の前進走行、停止、後退走行の間で連続して切換え操作可能な前後進レバーに直接または間接に連結され、前記出力部材は、前記停止、前記後退走行のとき無負荷または前記前進走行のときより負荷が小さくなる作業部を駆動する駆動源の出力を調整可能な出力調整部に直接または間接に連結され、前記第1入力部材は、前記出力調整部を操作力で調整可能な出力操作部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、第1入力部材を一方にスイング移動することで、出力部材のスイング移動を許容するようにカム面を変位させるようにした。カム面を変位させることで、出力部材をスイング移動の方向へ第1の変位量だけ変位させることができる。
また、第2入力部材を一方にスイング移動させたとき、出力部材がカム面を乗り越えつつスイング移動することを許容するようにした。出力部材がカム面を乗り越えつつスイング移動することで、出力部材をスイング移動の方向へ第2の変位量だけ変位させることができる。
【0012】
ここで、第1入力部材の一方へのスイング移動による第1の変位量に対して、第2入力部材の一方へのスイング移動による第2の変位量が概ね合致する。
よって、第1入力部材および第2入力部材の二つの入力部材を、各々一方にスイング移動させることで、一つの出力部材を同様に変位させることができる。
これにより、第1、第2の入力部材、出力部材およびカム面などの機械的な構成で、二つの入力部材による各々の入力に対応させて、一つの出力部材から出力を取り出すことができる。
【0013】
さらに、伝達機構を第1入力部材、第2入力部材および出力部材などで機械的に構成した。よって、伝達機構に電気制御機器を附加することや、負荷した電気制御機器の防水性に対する配慮を不要にできる。
このように、電気制御機器の附加や防水性に対する配慮を不要にできるので伝達機構のコストを抑えることができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、カム面を曲線的に形成することで、第2入力部材のスイング移動量に応じて出力部材の変位量を変えるように出力特性を決めることができる。
具体的には、第2入力部材のスイング移動量が小さいとき、出力部材をカム面で支えて出力部材を緩やかに変化(変位)させることができる。
一方、第2入力部材のスイング移動量が大きいとき、出力部材がカム面を乗り越えて出力部材を大きく変化(変位)させることができる。
このように、カム面を曲線的に形成する簡単な構成で、第2入力部材のスイング移動量に対する出力部材の出力特性を決めることができるので、用途に適した特性を得ることができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、第1入力部材で第2入力部材や出力部材を収納するケースを兼用するようにした。
第1入力部材で兼用したケースに第2入力部材や出力部材を収納することで、伝達機構の小型化を図ることができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、出力部材を湾曲状に形成して第1スイング中心線を迂回するようにした。このように、出力部材を湾曲状に形成することで出力部材の形状を小さくできる。
これにより、出力部材を収納するケースを一層小型にすることが可能になり、伝達機構のさらなる小型化を図ることができる。
【0017】
請求項5に係る発明では、第1入力部材を出力操作部材とし、さらに第2入力部材を前後進レバーに連結し、加えて出力部材を駆動源の出力調整部に連結した。
これにより、第1入力部材を一方にスイング移動することで、出力部材を変位させて駆動源の出力を低下させることができる。
【0018】
また、第2入力部材を一方にスイング移動することで後退走行に切り換えるとともに、出力部材を変位させて駆動源の出力を低下させることができる。
これにより、作業機を後退走行に切り換えた際に、駆動源の出力を迅速に低下させることができ、燃費(燃料消費量)を抑え、CO2削減を図ることで環境に優しい作業を可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る伝達機構を備えた除雪機を示す側面図である。
【図2】図1の除雪機の要部を示す斜視図である。
【図3】図1の除雪機に備えた前後進操作部を示す側面図である。
【図4】本発明に係る伝達機構を示す斜視図である。
【図5】図4の伝達機構を示す分解斜視図である。
【図6】図4の6矢視図である。
【図7】図4の伝達機構を示す断面図である。
【図8】図4の8−8線断面図である。
【図9】図8の9部拡大図である。
【図10】本発明に係る伝達機構および前後進操作部の関係を示す概略図である。
【図11】本発明に係る伝達機構を前後進レバーで操作した際の伝達ケーブルの変位量δ1およびスロットルケーブルの変位量δ2の関係を示すグラフである。
【図12】本発明に係る伝達機構でエンジン高速回転に配置した状態において前後進レバーを最大前進位置P2から中立位置P1に向けてスイング移動する例を説明する図である。
【図13】図12の状態から前後進レバーを最大後進位置P3に向けてスイング移動する例を説明する図である。
【図14】図13の状態から前後進レバーを最大後進位置P3までスイング移動してエンジンの回転数を低速回転に下げる例を説明する図である。
【図15】本発明に係るスロットルレバーでエンジン高速回転からエンジン低速回転に切り換える例を説明する図である。
【図16】本発明に係る伝達機構でエンジン低速回転に配置した状態において前後進レバーを最大前進位置P2から最大後進位置P3に向けてスイング移動する例を説明する図である。
【図17】図16の状態から前後進レバーを最大後進位置P3までスイング移動してエンジンの回転数を低速回転に下げる例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前(Fr)」、「後(Rr)」、「左(L)」、「右(R)」は運転者から見た方向にしたがう。
ここで、実施例では作業機として除雪機10を例示するが、これに限定するものではない。例えば、除雪機10の他に芝刈機やブルドーザなどに適用可能で、さらには他の産業機械(例えば、工作機械)などに適用することも可能である。
【実施例】
【0021】
実施例に係る伝達機構22について説明する。
図1に示すように、除雪機10は、機体フレーム11の上部に設けられたエンジン(駆動源)12と、機体フレーム11の下部に走行フレーム13を介して設けられたクローラ走行部14と、機体フレーム11の前部に設けられた除雪作業部(作業部)15と、機体フレーム11の後部に設けられた左右のハンドル16と、左右のハンドル16の後端部に設けられた左右のグリップ17と、左右のグリップ17の前方に設けられた操作部20とを備えている。
【0022】
除雪作業部15は、機体フレーム11の前部に設けられたハウジング26と、ハウジング26内に設けたオーガ27およびブロア28と、ハウジング26の上部に立設されたシュータ29とを備えている。
オーガ27およびブロア28が作業用駆動軸32に連結されている。作業用駆動軸32が一対のプーリ33,34、ベルト35、電磁クラッチ36およびクランクシャフト(駆動軸)12aを介してエンジン12に連結されている。
【0023】
除雪作業部15によれば、エンジン12を駆動してオーガ27およびブロア28を回転させることで、オーガ27前方の積雪を機体幅方向中央に集め、中央に集めた雪をブロア28で跳ね上げ、跳ね上げた雪をシュータ29で投雪することができる。
この除雪作業部15は、停止、後退走行のとき無負荷または前進走行のときより負荷が小さくなる作業部である。
【0024】
クローラ走行部14は、エンジン12のクランクシャフト12aに連結されたハイドロ スタティック トランスミッション(以下、「HST」という)41と、HST41の左油圧モータ44に連結された左クローラ走行部47と、HST41の右油圧モータ45に連結された右クローラ走行部48とを備えている。
【0025】
HST41は、エンジン12の右クローラ走行部12aに一対のプーリ51,52およびベルト53を介してHST駆動軸41aが連結されている。
このHST41は、HST駆動軸41aで駆動可能な斜板式の可変吐出量タイプの左油圧ポンプ42と、HST駆動軸41aで駆動可能な斜板式の可変吐出量タイプの右油圧ポンプ43と、左油圧ポンプ42に配管を介して連通された左油圧モータ44と、右油圧ポンプ43に配管を介して連通された右油圧モータ45とを備えた静油圧式無段変速機である。
【0026】
HST41によれば、左右の油圧ポンプ42,43の吐出量を同一にすることで、左右の油圧モータ44,45を同一回転速度で回転させることができる。
また、左右の油圧ポンプ42,43の吐出量を零にすることで、左右の油圧モータ44,45の回転を止めることができる。
さらに、左右の油圧ポンプ42,43の吐出量を異ならせることで、左右の油圧モータ44,45を異なる回転速度で回転させることができる。
【0027】
左クローラ走行部47は、走行フレーム13の左側後端部に設けられるとともに左油圧モータ44に連結された駆動輪55と、走行フレーム13の左側前端部に設けられた転動輪56と、駆動輪55および転動輪56に周回させたクローラベルト57とを備えている。
右クローラ走行部48は、左クローラ走行部47と左右対称の部材であり、各構成部材に左クローラ走行部47と同じ符号を付して右クローラ走行部48の詳説を省略する。
【0028】
図2に示すように、左右のハンドル16には、それぞれの上端部近傍にクロスメンバー18が架け渡されている。よって、クロスメンバー18により左右のハンドル16の剛性が確保されている。
このクロスメンバー18の略中央に、操作部20の伝達機構22が設けられている。
【0029】
操作部20は、左ハンドル16に設けられた前後進操作部21と、クロスメンバー18の略中央に設けられた伝達機構22と、伝達機構22および前後進操作部21を覆う操作カバー23(図1参照)とを備えている。
なお、図2は操作部20の構成の理解を容易にするため操作カバー23を外した状態で示す。
【0030】
図1、図3に示すように、前後進操作部21は、左ハンドル16に設けられた取付ブラケット61と、取付ブラケット61にレバー支持軸62を介して回動自在に支持された操作ブラケット63と、操作ブラケット63に基端部64aが固定された前後進レバー64と、操作ブラケット63を前後進操作レバー66に連結する前後進ケーブル67とを備えている
【0031】
操作ブラケット63は、第1連結部63aおよび第2連結部63bを有する。
第1連結部63aに、前後進ケーブル67(インナケーブル69)の一端部69aが連結されている。
また、第2連結部63bに、後述する伝達ケーブル92(インナケーブル94)の一端部94aが連結されている。
【0032】
前後進ケーブル67は、アウタケーブル68内にインナケーブル69が摺動自在に収容され、両端部69a,69bがアウタケーブル68から突出されている。
インナケーブル69は、一端部69aが操作ブラケット63の第1連結部63aに連結され、他端部69bが前後進操作レバー66に連結されている。
【0033】
操作ブラケット63に前後進レバー64の基端部64aが固定されることで、前後進レバー64がレバー支持軸62を軸にスイング移動自在に支持されている。
この前後進レバー64は、操作カバー23(図1参照)のガイド開口から上方に突出されている。
前後進レバー64が中立位置P1に配置された状態において、前後進ケーブル67のインナケーブル69で前後進操作レバー66が中立位置P4に配置される。
【0034】
前後進操作レバー66が中立位置P4に配置されることで、左右の油圧ポンプ42,43の吐出量が零になり左右の油圧モータ44,45が回転停止状態に保たれる。
左右の油圧モータ44,45を回転停止状態に保つことで、左右の駆動輪55および左右のクローラベルト57が停止して除雪機10が停止状態に保たれる。
【0035】
また、前後進レバー64が中立位置P1から機体前方の最大前進位置P2に向けてスイング移動されることにより、前後進ケーブル67のインナケーブル69で前後進操作レバー66が最大前進位置P5に配置される。
前後進操作レバー66が最大前進位置P5に配置されることで、左右の油圧モータ44,45から吐出された油量で左右の駆動輪55が正転状態に保たれる。
左右の駆動輪55を正転状態に保つことで、左右のクローラベルト57が正転して除雪機10が前進走行状態に保たれる。
【0036】
さらに、前後進レバー64が中立位置P1から機体後方の最大後進位置P3に向けてスイング移動されることにより、前後進ケーブル67のインナケーブル69で前後進操作レバー66が最大後進位置P6に配置される。
前後進操作レバー66が最大後進位置P6に配置されることで、左右の油圧モータ44,45から吐出された油量で左右の駆動輪55が逆転状態に保たれる。
左右の駆動輪55を逆転状態に保つことで、左右のクローラベルト57が逆転して除雪機10が後進走行状態に保たれる。
すなわち、前後進レバー64は、除雪機10の前進走行、停止、後退走行の間で連続して切換え操作可能なレバーである。
【0037】
図4、図5に示すように、伝達機構22は、取付ブラケット71に固定されたスロットル支持軸72と、スロットル支持軸72に回転自在に支持されたスロットルレバー(第1入力部材)73と、スロットルレバー73内に収容された伝達レバー(第2入力部材)74および湾曲アーム(出力部材)75と、伝達レバー74および湾曲アーム75を覆うスロットルカバー76と、湾曲アーム75を付勢するリターンスプリング(付勢部材)77(図2参照)とを備えている。
【0038】
この伝達機構22は、図6に示すように、スロットルレバー73内において湾曲アーム75に伝達レバー74が重ねられている。
この状態において、伝達レバー74の基部74aがスロットル支持軸72に回転自在に支持されている。また、伝達レバー74の先端部74bに湾曲アーム75の一端部75aが第1連結ピン78を介して連結されている。
【0039】
さらに、伝達機構22は、図7に示すように、スロットル支持軸72がスロットルレバー73の側壁部84および伝達レバー74の基部74aを貫通し、スロットル支持軸72のねじ部72aがスロットルカバー76の取付孔76aから突出されている。
取付孔76aから突出されたねじ部72aにナット82がねじ結合されることにより伝達機構22が一体に組み付けられている。
以下、本発明に係る伝達機構22について詳しく説明する。
【0040】
図6、図7に示すように、スロットルレバー73は、基部に設けられたケース83と、ケース83の外周から半径方向外側に向けて突出されたレバー本体91とを備えている。
ケース83は、側面視略円形状に形成されるとともに中央に取付孔84aが形成された側壁部84と、側壁部84の外周縁84bに沿って設けられた周壁部85と、側壁部84の内面に設けられたカム部(カム)86とを有する。
【0041】
ケース83(側壁部84)の取付孔84aがスロットル支持軸72に回動自在に嵌合されている。
これにより、スロットル支持軸72にスロットルレバー73が回動自在に支持されている。
【0042】
図6、図8に示すように、スロットルレバー73は、高速回転位置P7〜低速回転位置P8において第1スイング中心線S1を基点にして矢印A−B方向にスイング移動可能である。
第1スイング中心線S1はスロットル支持軸72の中心に一致する中心線である。
【0043】
スロットルレバー73のケース83に備えた収容空間88に、カム部86、伝達レバー74および湾曲アーム75が収容されている。さらに、ケース83の収容空間88には、伝達インナケーブル94の他端部94bや、スロットルインナケーブル97の一端部97aなどが収容されている。
【0044】
すなわち、スロットルレバー73は、カム部86、伝達レバー74、湾曲アーム75、伝達インナケーブル94の他端部94b、およびスロットルインナケーブル97の一端部97aなどを収納するケースを兼用している。
スロットルレバー73で兼用したケースに伝達レバー74や湾曲アーム75を収納することで、伝達機構22の小型化を図ることができる。
【0045】
レバー本体91は、周壁部85の外周面85aから半径方向外側に向けて突出され、先端部につまみ部91aを有する。
つまみ部91aが矢印A−B方向に移動することで、スロットルレバー73が第1スイング中心線S1を基点にして矢印A−B方向にスイング移動可能である。
【0046】
カム部86は、湾曲アーム75が第2スイング中心線S2を基点としてスイング移動した際に、湾曲アーム75(他端部75b)のスイング移動の軌跡をスロットルレバー73のスイング移動量に応じて変化させるべくスロットルレバー73に設けられたカムである。
【0047】
図9に示すように、カム部86は、スロットルレバー73の側壁部84に一体に形成され、湾曲アーム75の他端部75bが載置可能なカム面87を有する。
このカム面87は、スロットルレバー73を矢印A方向にスイング移動(一方にスイング移動)する際に、スロットルレバー73と一体に矢印C方向に変位可能な面である。
カム面87が矢印C方向に変位することで、湾曲アーム75が第1連結ピン78を軸にして矢印D方向にスイング移動することを許容する。
【0048】
さらに、カム面87は、湾曲アーム75の他端部75bが乗り越えつつ矢印F方向へのスイング移動を許容する形状に形成されている。
すなわち、スロットルレバー73が高速回転位置P7に配置された状態において、伝達レバー74が矢印E方向にスイング移動(一方にスイング移動)する際に、湾曲アーム75の他端部75bがカム面87を乗り越えつつ矢印F方向にスイング移動することを許容する。
【0049】
以下、カム面87の形状および特性について詳しく説明する。
すなわち、カム面87は、曲線的に形成されることで、略水平な水平カム面87aと、角状の角カム面87bと、略鉛直な鉛直カム面87cとを有する。
【0050】
伝達レバー74の矢印E方向へのスイング移動量が小さい範囲H1において、湾曲アーム75の他端部75bが水平カム面87aに載置された状態に保たれる。
湾曲アーム75の他端部75b(具体的には、内側の面75c)が水平カム面87aに載置された状態に保たれることで、湾曲アーム75の他端部75bを緩やかに変化(変位)させることができる。
【0051】
一方、伝達レバー74の矢印E方向へのスイング移動量が大きい範囲H2において、湾曲アーム75の他端部75b(具体的には、内側の面75c)が水平カム面87aから角カム面87bを乗り越えて鉛直カム面87cに沿って下方に変位する。
湾曲アーム75の他端部75bが鉛直カム面87cに沿って下方に変位することで、湾曲アーム75の他端部75bを大きく変化(変位)させることができる。
【0052】
伝達レバー74は、湾曲アーム75に重ねた状態でスロットルレバー73の収容空間88に収容され、スロットル支持軸72に取付孔81が回転自在に嵌入されている。
よって、伝達レバー74は、第1スイング中心線S1を基点としてスロットルレバー73に対し独立してスイング移動可能にスロットル支持軸72に支持されている。
伝達レバー74の先端部74bに第1連結ピン78を介して湾曲アーム75の一端部75aが連結されるとともに伝達ケーブル92(インナケーブル94)の他端部94bが連結されている。
【0053】
図3、図8に示すように、伝達ケーブル92は、アウタケーブル93内にインナケーブル(以下、「伝達インナケーブル」という)94が摺動自在に収容され、両端部94a,94bがアウタケーブル93から突出されている。
伝達インナケーブル94は、一端部94aが操作ブラケット63の第2連結部63bに連結され、他端部94bが伝達レバー74の先端部74bおよび湾曲アーム75の一端部75aに第1連結ピン78を介して連結されている。
【0054】
よって、伝達レバー74の先端部74bは、伝達ケーブル92を介して操作ブラケット63の第2連結部63bに連結されている。操作ブラケット63には前後進レバー64の基端部64aが固定されている。
これにより、伝達レバー74は、伝達ケーブル92を介して前後進レバー64に間接的に連結されている。
【0055】
ここで、伝達インナケーブル94は、押引き操作(プッシュ・プル操作)が可能に針金(ロッド)で形成されている。
なお、押引き操作が可能なケーブルは、作業機などに一般に使用されているケーブルである。
【0056】
図6、図9に示すように、湾曲アーム75は、側壁部84に隣接して配置され、第1スイング中心線S1(すなわち、スロットル支持軸72)を迂回するように外側に向けて膨出させて湾曲状(ブーメラン状)に形成されている。
このように、湾曲アーム75を湾曲状に形成してスロットル支持軸72を迂回するようにすることで湾曲アーム75の形状を小さくできる。
これにより、湾曲アーム75を収納するケース(すなわち、スロットルレバー73)を一層小型にすることが可能になり、伝達機構22のさらなる小型化を図ることができる。
【0057】
この湾曲アーム75は、一端部75aが伝達レバー74の先端部74bに第1連結ピン78を介して連結され、他端部75bのうち内側の面75cがカム面87に接触可能に形成されている。
内側の面75cは、湾曲状に形成された湾曲アーム75の内側の面である。
【0058】
湾曲アーム75の一端部75aが伝達レバー74の先端部74bに第1連結ピン78を介して連結されることで、湾曲アーム75が第2スイング中心線S2を基点としてスイング移動自在に支持されている。
第2スイング中心線S2は、第1スイング中心線S1に平行で、かつ、第1連結ピン78の中心に一致する中心線である。
【0059】
湾曲アーム75の他端部75bに第2連結ピン79を介してスロットルケーブル95(インナケーブル97)の一端部97aが連結されている。
図2、図8に示すように、スロットルケーブル95は、アウタケーブル96内にインナケーブル(以下、「スロットルインナケーブル」という)97が摺動自在に収容され、両端部97a,97bがアウタケーブル96から突出されている。
【0060】
スロットルインナケーブル97は、一端部97aが湾曲アーム75の他端部75bに第2連結ピン79を介して連結され、他端部97bがスロットル操作レバー(出力調整部)98(図2参照)に連結されている。
よって、湾曲アーム75の他端部75bは、スロットルケーブル95を介してスロットル操作レバー98に連結されている。
【0061】
すなわち、湾曲アーム75は、クローラ走行部14や除雪作業部15(図1参照)を駆動するエンジン12の出力を調整可能なスロットル操作レバー98に間接に連結されている。
除雪作業部15は、前述したように、除雪機10が停止、後退走行のとき無負荷状態または前進走行のときより負荷が小さな状態に切り換え可能な作業部である。
【0062】
スロットル操作レバー98は、高速回転位置P9および低速回転位置P10間においてスイング移動(揺動)自在にスロットルボディ99に支持されている。
スロットル操作レバー98を高速回転位置P9および低速回転位置P10間でスイング移動することで、スロットルボディ99内のスロットル弁が全開された位置および僅かに開放された位置間で変位可能である。
このように、スロットルボディ99内のスロットル弁を全開された位置および僅かに開放された位置間で変位させることで、エンジン12を高速回転および低速回転間で調整可能である。
【0063】
スロットル操作レバー98にはリターンスプリング77が連結されている。
リターンスプリング77は、スロットル操作レバー98を低速回転位置P10に向けて付勢するばね部材である。
スロットル操作レバー98を低速回転位置P10に向けて付勢することで、リターンスプリング77によってスロットル操作レバー98を矢印Gの如く牽引する(引張る)ことができる。
スロットル操作レバー98を矢印Gの如く牽引することで、図8に示す湾曲アーム75の他端部75b(具体的には、内側の面75c)がカム部86のカム面87に対して接触する方向に付勢されている。
【0064】
図7に示すように、伝達機構22は、ケース83の側壁部84にロック部材101が配置されるとともに、ロック部材101の貫通孔101aにスロットル支持軸72が貫通され、ロック部材101のロック片101bが取付ブラケット71の係止孔71aに係止されている。
ロック部材101および取付ブラケット71間にロック圧縮ばね102が圧縮された状態に配置されるとともにスロットル支持軸72に嵌入されている。
これにより、ロック圧縮ばね102のばね力でスロットルレバー73が任意の位置に保持される。
【0065】
また、伝達機構22は、伝達レバー74の基部74aおよびスロットルカバー76間にワッシャ(スペーサ)104が介在され、基部74aの周囲部74cおよびスロットルカバー76間に圧縮ばね105が圧縮された状態で介在されるとともにスロットル支持軸72に嵌入されている。
よって、圧縮ばね105のばね力で伝達レバー74が任意の位置に保持される。
【0066】
図2、図9に示すように、つまみ部91aを矢印A方向に操作することで、スロットルレバー73がスロットル支持軸72を軸に矢印A方向にスイング移動する。
スロットルレバー73がスロットル支持軸72を軸に矢印A方向にスイング移動することで、カム部86がスロットルレバー73と一体に矢印C方向に移動する。
【0067】
ここで、湾曲アーム75の他端部75bは、リターンスプリング77のばね力で水平カム面87aに載置された状態に保たれている。
すなわち、湾曲アーム75の他端部75bにはスロットル操作レバー98、スロットルケーブル95および第2連結ピン79を介してリターンスプリング77の復帰力Fが矢印の如く作用している。
【0068】
よって、カム部86が矢印C方向に移動することで、湾曲アーム75の他端部75b(具体的には、内側の面75c)がリターンスプリングの復帰力Fでカム部86(水平カム面87a)に追従する。
これにより、湾曲アーム75が第1連結ピン78を軸にして矢印D方向にスイング移動し、スロットル操作レバー98が低速回転位置P10に向けて移動する。
スロットル操作レバー98が低速回転位置P10に向けて移動することで、エンジン12の回転数が低速回転に下げられる。
【0069】
一方、つまみ部91aを矢印B方向に操作することで、スロットルレバー73がスロットル支持軸72を軸に矢印B方向にスイング移動する。
スロットルレバー73がスロットル支持軸72を軸に矢印B方向にスイング移動することで、カム部86がスロットルレバー73と一体に矢印H方向に移動する。
【0070】
ここで、湾曲アーム75の他端部75b(具体的には、内側の面75c)は水平カム面87aに載置された状態に保たれている。
よって、カム部86が矢印H方向に移動することで、湾曲アーム75の他端部75bがリターンスプリングの復帰力Fに抗してカム部86に追従する。
これにより、湾曲アーム75が第1連結ピン78を軸にして矢印I方向にスイング移動する。
【0071】
湾曲アーム75が第1連結ピン78を軸にして矢印I方向にスイング移動することで、スロットル操作レバー98が高速回転位置P9に向けて移動する。
スロットル操作レバー98が高速回転位置P9に向けて移動することで、エンジン12の回転数が高速回転に高められる。
【0072】
すなわち、スロットルレバー73は、つまみ部91aに操作力を作用させてつまみ部91aを矢印A−B方向に操作することで、スロットル操作レバー98を移動させてエンジン12の回転数を調整可能な出力操作部材である。
【0073】
以上説明したように、伝達機構22によれば、スロットルレバー73を矢印A方向にスイング移動することでエンジン12の回転数が低速回転に下げられる。
一方、スロットルレバー73を矢印B方向にスイング移動することでエンジン12の回転数が高速回転に高められる。
【0074】
さらに、前後進レバー64を最大後進位置P3(図3参照)までスイング移動する際に、伝達レバー74を矢印E方向にスイング移動することでエンジン12の回転数が低速回転に抑えられる。
一方、前後進レバー64を最大前進位置P2(図3参照)までスイング移動する際に、伝達レバー74を矢印J方向にスイング移動することでエンジン12の回転数が高速回転に高められる。
【0075】
このように、伝達機構22は、二つの独立した入力部材としてスロットルレバー73および伝達レバー74を備えるとともに、一つの出力部材として湾曲アーム75を備えている。
伝達機構22によれば、スロットルレバー73、伝達レバー74からの互いに独立した二つの入力を、湾曲アーム75で一つの出力として取り出すことが可能である。
【0076】
ここで、前後進レバー64を操作した際の伝達ケーブル92の変位量δ1およびスロットルケーブル95の変位量δ2の関係を図10、図11に基づいて説明する。
なお、図10においては前後進操作部21および伝達機構22の構成の理解を容易にするために前後進操作部21および伝達機構22の取付位置を離した状態で図示する。
【0077】
図11において、左側の縦軸は伝達ケーブル92の変位量δ1を示し、右側の縦軸はスロットルケーブル95の変位量δ2を示す。また、横軸は前後進レバー64のレバー位置(P2〜P1〜P3)を示す。
P1は中立位置、P2は最大前進位置、およびP3は最大後進位置である。
【0078】
前後進レバー64のレバー位置(P2〜P1〜P3)および伝達ケーブル92の変位量δ1の関係をグラフG1に示す。
また、前後進レバー64のレバー位置(P2〜P1〜P3)およびスロットルケーブル95の変位量δ2の関係をグラフG2に示す。
【0079】
グラフG1およびグラフG2の関係から、前後進レバー64のレバー位置(P2〜P1)の範囲においてスロットルケーブル95の変位量δ2が小さく抑えられる。
一方、前後進レバー64のレバー位置(P1〜P3)の範囲においてスロットルケーブル95の変位量δ2を大きく確保される。
【0080】
図10、図11に示すように、スロットルレバー73が高速回転位置P7に配置された状態において、前後進レバー64を最大前進位置P2から中立位置P1まで矢印K方向にスイング移動することで伝達ケーブル92(インナケーブル94)が矢印L方向にδ1aだけ押し出される。
【0081】
伝達ケーブル92(インナケーブル94)が矢印L方向にδ1aだけ押し出されることで、伝達レバー74が矢印E方向にスイング移動する。
伝達レバー74が矢印E方向に小さい範囲H1(図9参照)においてスイング移動することで、湾曲アーム75の一端部75aが矢印E方向に移動する。
【0082】
この状態において、湾曲アーム75の他端部75bが水平カム面87a(図9参照)に載置された状態に保たれる。
湾曲アーム75の他端部75bが水平カム面87aに載置された状態に保たれることで、伝達レバー74のスイング移動量δ1aの変化に対して湾曲アーム75の他端部75bをδ2aだけ緩やかに変化(変位)させることができる。
よって、湾曲アーム75の他端部75bに第2連結ピン79を介して連結されたスロットルケーブル95の変位量δ2aを小さく抑えることができる。
【0083】
さらに、スロットルレバー73が高速回転位置P7に配置された状態において、前後進レバー64を中立位置P1から最大後進位置P3まで矢印M方向にスイング移動することで伝達ケーブル92(インナケーブル94)が矢印L方向にδ1bだけ押し出される。
【0084】
伝達ケーブル92(インナケーブル94)が矢印L方向にδ1bだけ押し出されることで、伝達レバー74が矢印E方向にスイング移動する。
伝達レバー74が矢印E方向に大きい範囲H2(図9参照)においてスイング移動することで、湾曲アーム75の一端部75aが矢印E方向に移動する。
【0085】
この状態において、湾曲アーム75の他端部75bが水平カム面87aから角カム面87b(図9参照)を乗り越えて鉛直カム面87c(図9参照)に沿って下方に変位する。
湾曲アーム75の他端部75bが鉛直カム面87cに沿って下方に変位することで、伝達レバー74のスイング移動量の変化に対して湾曲アーム75を大きく変化(変位)させることができる。
よって、湾曲アーム75の他端部75bに第2連結ピン79を介して連結されたスロットルケーブル95の変位量δ2bを大きく確保できる。
【0086】
以上説明したように、伝達機構22によれば、カム面87を曲線的に形成することで、伝達レバー74のスイング移動量に応じて湾曲アーム75の変位量δ2(図11参照)を変えるように出力特性を決めることができる。
具体的には、湾曲アーム75のスイング移動量が小さい範囲H1において、湾曲アーム75をカム面87で支えて湾曲アーム75(他端部75b)の変位量δ2をδ2aと緩やかに変化(変位)させることができる。
【0087】
一方、伝達レバー74のスイング移動量が大きい範囲H2において、湾曲アーム75(他端部75b)がカム面87を乗り越えて湾曲アーム75(他端部75b)の変位量δ2をδ2bと大きく変化(変位)させることができる。
このように、カム面87を曲線的に形成する簡単な構成で、伝達レバー74のスイング移動量に対する湾曲アーム75の出力特性を決めることができるので、用途に適した特性を得ることができる。
【0088】
すなわち、実施例では作業機として除雪機10を例示するが、これに限定するものではなく、例えば、除雪機10の他に芝刈機やブルドーザに適用可能で、さらには他の産業機械(例えば、工作機械)などに適用することも可能である。
【0089】
つぎに、除雪機10をエンジン高速回転で前進走行させている状態から後進走行に切り換える際に、伝達機構22でエンジン12の回転数を低速回転に下げる例を図12〜図14に基づいて説明する。
【0090】
図12(a)に示すように、スロットルレバー73を高速回転位置P7に配置する。
この状態において、湾曲アーム75の他端部75b(内側の面75c)が水平カム面87aに載置された状態に保たれる。
スロットルレバー73を高速回転位置P7に配置することにより、スロットルケーブル95のスロットルインナケーブル97を矢印Nの如く牽引する。
スロットルインナケーブル97を矢印Nの如く牽引することで、リターンスプリング77(図2参照)のばね力に抗してスロットル操作レバー98を高速回転位置P9に配置する。
これにより、図2に示すエンジン12が高速回転に保持されている。
【0091】
図12(b)に示すように、前後進レバー64を最大前進位置P2から中立位置P1の手前位置まで矢印O方向にスイング移動する。
前後進レバー64を最大後進位置P3までスイング移動することで、前後進ケーブル67(インナケーブル69)が矢印Pの如く牽引されるとともに、伝達ケーブル92が矢印Qの如くδ1a(図11参照)だけ押し出される。
【0092】
前後進ケーブル67(インナケーブル69)を矢印Pの如く牽引することで、前後進ケーブル67のインナケーブル69で前後進操作レバー66を中立位置P4まで移動する。
【0093】
図13(a)に示すように、伝達ケーブル92が矢印Q方向にδ1a(図11参照)だけ押し出されることで、伝達レバー74が矢印E方向にスイング移動する。
伝達レバー74が矢印E方向に小さい範囲H1においてスイング移動することで、湾曲アーム75の一端部75aが矢印E方向に移動する。
【0094】
この状態において、湾曲アーム75の他端部75bが水平カム面87aに載置された状態に保たれる。
湾曲アーム75の他端部75bが水平カム面87aに載置された状態に保たれることで、伝達レバー74のスイング移動量の変化に対して湾曲アーム75の他端部75bを緩やかに変化(変位)させることができる。
よって、図11に示すように、スロットルケーブル95の変位量δ2をδ2aと小さく抑えることができる。
【0095】
図13(b)に示すように、前後進レバー64を中立位置P1から最大後進位置P3まで矢印O方向に継続してスイング移動する。
前後進レバー64を最大後進位置P3までスイング移動することで、前後進ケーブル67のインナケーブル69が矢印Pの如く牽引されるとともに、伝達ケーブル92の伝達インナケーブル94が矢印Qの如くδ1b(図11参照)だけ押し出される。
【0096】
前後進ケーブル67のインナケーブル69が矢印Pの如く継続して牽引されることで、インナケーブル69で前後進操作レバー66を最大後進位置P6に配置する。
前後進操作レバー66を最大後進位置P6に配置することで、左右の油圧モータ44,45で左右の駆動輪55(図1参照)を逆転させる。
左右の駆動輪55を逆転させることで、図1に示す左右のクローラベルト57を逆転させて除雪機10を後進走行させる。
【0097】
図14に示すように、伝達ケーブル92が矢印Q方向にδ1b(図11参照)だけ押し出されることで、伝達レバー74が矢印E方向にスイング移動する。
伝達レバー74が矢印E方向に大きい範囲H2においてスイング移動することで、湾曲アーム75の一端部75aが矢印E方向に移動する。
【0098】
この状態において、湾曲アーム75の他端部75bが水平カム面87aから角カム面87bを乗り越えて鉛直カム面87cに沿って下方に移動する。
湾曲アーム75の他端部75bが鉛直カム面87cに沿って下方に向けて矢印R方向に移動する。よって、伝達レバー74のスイング移動量の変化に対して湾曲アーム75を大きく変化(変位)させることができる。
これにより、図11に示すように、スロットルケーブル95の変位量δ2をδ2b(図11参照)と大きく確保できる。
【0099】
湾曲アーム75を大きく変化(変位)させることにより、スロットル操作レバー98(図2参照)をリターンスプリング77の付勢力(ばね力)で低速回転位置P10まで移動する。
スロットル操作レバー98が低速回転位置P10まで移動することで、図1に示すエンジン12の回転数を低速回転に下げることができる。
【0100】
これにより、図1に示す除雪作業部15を前進走行から後進走行に切り換える際にエンジン12の回転数を伝達機構22で低速回転に迅速に下げることができる。
このように、エンジン12の出力を低下させることで、燃費(燃料消費量)を抑え、CO2削減を図ることで環境に優しい作業を可能にできる。
【0101】
この状態から、図13(b)に示す前後進レバー64を最大後進位置P3から最大前進位置P2まで戻すことにより、前後進操作レバー66を最大後進位置P6から最大前進位置P5に戻される。
同時に、伝達ケーブル92(インナケーブル94)が矢印Q方向に対して逆方向に牽引される(引張られる)。よって、伝達レバー74が矢印E方向に対して逆方向に移動することにより、湾曲アーム75の一端部75aが第1連結ピン78を介して矢印E方向に対して逆方向に移動する。
【0102】
これにより、湾曲アーム75の他端部75bが矢印R方向に対して逆方向に移動して、他端部75bの内側の面75cがカム面87(水平カム面87a)に乗り上がる。
したがって、スロットルケーブル95(インナケーブル97)が第2連結ピン79を介して上方に引き上げられて、図2に示すスロットル操作レバー98を低速回転位置P10から高速回転位置P9まで戻すことができる。
【0103】
図12〜図14で説明したように、伝達機構22は、伝達レバー(第2入力部材)74を矢印E方向(一方)にスイング移動させたとき、湾曲アーム(出力部材)75の他端部75bがカム面87を乗り越えつつスイング移動することを許容するように構成されている。
そして、湾曲アーム75(他端部75b)がカム面87を乗り越えつつスイング移動することで、湾曲アーム75(他端部75b)を矢印R方向(スイング移動の方向)へ第2の変位量(δ2a+δ2b)だけ変位させることができる。
【0104】
ついで、除雪機10をエンジン高速回転からエンジン低速回転に切り換える例を図15に基づいて説明する。
図15(a)に示すように、スロットルレバー73のつまみ部91aを高速回転位置P7から低速回転位置P8に向けて矢印S方向にスイング移動する。
スロットルレバー73を矢印S方向にスイング移動することで、カム部86(カム面87)が矢印T方向に移動する。
【0105】
ここで、スロットルケーブル95のスロットルインナケーブル97がリターンスプリング77(図2参照)のばね力で矢印U方向に牽引されている(引張られている)。
よって、カム部86(カム面87)が矢印T方向に移動することで、湾曲アーム75の他端部75bがカム面87とともに矢印T方向に移動する。
【0106】
図15(b)に示すように、スロットルレバー73のつまみ部91aが低速回転位置P8までスイング移動することで、スロットルケーブル95のスロットルインナケーブル97がリターンスプリング77のばね力で矢印U方向に変位量(δ2a+δ2b)(図11参照)と略同量変位する。
すなわち、図2に示すスロットル操作レバー98がリターンスプリング77のばね力で低速回転位置P9に配置される。
これにより、エンジン12が低速回転に保持され、エンジン12の出力を低下させることができる。
【0107】
この状態から、図15(b)に示すスロットルレバー73のつまみ部91aを低速回転位置P8から高速回転位置P7までスイング移動することにより、カム面87(水平カム面87a)が矢印T方向に対して逆方向に移動する。
よって、湾曲アーム75の他端部75bがカム面87(水平カム面87a)とともに移動する。
これにより、スロットルケーブル95(インナケーブル97)が第2連結ピン79を介して上方に引き上げられて、図2に示すスロットル操作レバー98を低速回転位置P10から高速回転位置P9まで戻すことができる。
【0108】
図15で説明したように、伝達機構22は、スロットルレバー(第1入力部材)73を矢印S方向(一方)にスイング移動することで、湾曲アーム(出力部材)75のスイング移動を許容するようにカム面87を変位させるように構成されている。
そして、カム面87を変位させることで、湾曲アーム75(他端部75b)を矢印T方向(スロットルレバー73のスイング移動の方向)へ第1の変位量(略δ2a+δ2b)だけ変位させることができる。
【0109】
ここで、スロットルレバー73の矢印S方向(一方)へのスイング移動による第1の変位量(略δ2a+δ2b)に対して、伝達レバー74の矢印E方向(一方)へのスイング移動による第2の変位量(δ2a+δ2b)が概ね合致する。
よって、スロットルレバー73および伝達レバー74の二つの入力部材を、各々一方にスイング移動させることで、一つの湾曲アーム75を同様に変位させることができる。
これにより、スロットルレバー73、伝達レバー74、湾曲アーム75およびカム面87などの機械的な構成で、二つの入力部材(スロットルレバー73、伝達レバー74)による各々の入力に対応させて、一つの出力部材(湾曲アーム75)から出力を取り出すことができる。
【0110】
さらに、伝達機構22をスロットルレバー73、伝達レバー74、湾曲アーム75などで機械的に構成した。
よって、伝達機構22に電気制御機器を附加することや、負荷した電気制御機器の防水性に対する配慮を不要にできる。
このように、電気制御機器の附加や防水性に対する配慮を不要にできるので伝達機構22のコストを抑えることができる。
【0111】
つぎに、除雪機10をエンジン低速回転で前進走行させている状態から後進走行に切り換える例を図16〜図17に基づいて説明する。
図16(a)に示すように、スロットルレバー73のつまみ部91aを低速回転位置P8に配置した状態でエンジン12(図2参照)が低速回転に保持されている。
【0112】
図16(b)に示すように、前後進レバー64を最大前進位置P2から中立位置P1を経て最大後進位置P3まで矢印Oの如くスイング移動する。
前後進レバー64を最大後進位置P3までスイング移動することで、前後進ケーブル67(インナケーブル69)が矢印P方向に牽引されるとともに、伝達ケーブル92(インナケーブル94)が矢印Qの如く(δ1a+δ1b)だけ押し出される。
【0113】
前後進ケーブル67(インナケーブル69)を矢印Pの如く牽引することで、インナケーブル69で前後進操作レバー66を最大後進位置P6に配置する。
前後進操作レバー66を最大後進位置P6に配置することで、左右の油圧モータ44,45で左右の駆動輪55(図1参照)を逆転させる。
左右の駆動輪55を逆転させることで、図1に示す左右のクローラベルト57を逆転させて除雪機10を後進走行させる。
【0114】
図17に示すように、伝達ケーブル92(インナケーブル94)が矢印Q方向に(δ1a+δ1b)(図11参照)だけ押し出されることで、伝達レバー74が矢印E方向にスイング移動する。
この状態において、湾曲アーム75の他端部75bが水平カム面87aに載置した状態に保たれる。
よって、スロットルケーブル95(インナケーブル97)の変位量を小さく抑えることができる。
【0115】
スロットルケーブル95(インナケーブル97)の変位量を小さく抑えることで、スロットル操作レバー98(図2参照)を低速回転位置P10近傍に保つことができる。
スロットル操作レバー98を低速回転位置P10近傍に保つことで、エンジン12の回転数を低速回転に保つことができる。
これにより、図1に示す除雪作業部15を前進走行から後進走行に切り換える際にエンジン12の回転数を伝達機構22で低速回転に保つことができる。
【0116】
この状態から、図17に示すスロットルレバー73のつまみ部91aを低速回転位置P8から高速回転位置P7までスイング移動することにより、カム面87(水平カム面87a)がスロットルレバー73と一体に反時計回り方向に移動する。
この際に、湾曲アーム75が第1連結ピン78を軸にして時計回り方向に移動する(逃げる)。よって、カム面87が湾曲アーム75の他端部75bを乗り越えて反時計回り方向に移動する。
これにより、湾曲アーム75の他端部75bを略同じ位置に保つことができ、図2に示すスロットル操作レバー98を低速回転位置P10に保持することができる。
【0117】
なお、本発明に係る伝達機構は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、作業機として除雪機10を例示するが、これに限定するものではない。例えば、除雪機10の他に芝刈機やブルドーザなどに適用可能で、さらには他の産業機械(例えば、工作機械)などに適用することも可能である。
【0118】
また、前記実施例では、第1入力部材としてスロットルレバー73を例示し、第2入力部材として伝達レバー74を例示し、出力部材として湾曲アーム75を例示したが、これに限らないで、その他の部材に適用することも可能である。
【0119】
さらに、前記実施例では、付勢部材としてリターンスプリング77を例示したが、これに限らないで、ゴムなどの他の付勢部材を用いることも可能である。
【0120】
また、前記実施例では、スロットル操作レバー98に設けたリターンスプリング77で、湾曲アーム75をカム面87に接触させる例について説明したが、これに限らないで、その他の付勢部材で湾曲アーム75をカム面87に接触させるように構成することも可能である。
【0121】
さらに、前記実施例では、伝達レバー74を伝達ケーブル92を介して前後進レバー64に間接的に連結した例について説明したが、これに限らないで、伝達レバー74を前後進レバー64に直接的に連結することも可能である。
【0122】
また、前記実施例では、ケース83を側面視略円形状に形成した例について形成したが、これに限らないで、矩形状などの他の形状に形成することも可能である。
【0123】
さらに、前記実施例で示した除雪機10、エンジン12、伝達機構22、前後進レバー64、前後進ケーブル67、スロットルレバー73、伝達レバー74、湾曲アーム75、リターンスプリング77、ケース83、カム部86、カム面87、伝達ケーブル92、スロットルケーブル95およびスロットル操作レバー98などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、第1入力部材および第2入力部材からの互いに独立した二つの入力を出力部材から一つの出力として取出し可能な伝達機構への適用に好適である。
【符号の説明】
【0125】
10…除雪機(作業機)、12…エンジン(駆動源)、22…伝達機構、64…前後進レバー、67…前後進ケーブル、73…スロットルレバー(第1入力部材、出力操作部材)、74…伝達レバー(第2入力部材)、75…湾曲アーム(出力部材)、77…リターンスプリング(付勢部材)、83…ケース、86…カム部(カム)、87…カム面、92…伝達ケーブル、95…スロットルケーブル、98…スロットル操作レバー(出力調整部)、S1…第1スイング中心線、S2…第2スイング中心線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに独立した二つの入力を一つの出力として取出し可能な伝達機構であって、
第1スイング中心線を基点にスイング移動が可能な第1入力部材と、
前記第1スイング中心線を基点として、前記第1入力部材に対し独立したスイング移動が可能な第2入力部材と、
この第2入力部材に、前記第1スイング中心線に平行な第2スイング中心線を基点としたスイング移動が可能に連結された出力部材と、
この出力部材のスイング移動の軌跡を前記第1入力部材のスイング移動量に応じて変化させるべく、前記第1入力部材に設けられたカムと、
このカムに対して前記出力部材を接触する方向へ付勢する付勢部材と、を備え、
前記カムは、前記第1入力部材が一方にスイング移動をしたとき、前記出力部材のスイング移動を許容するように変位可能なカム面を有し、
このカム面は、前記第2入力部材が前記一方にスイング移動をしたとき、前記出力部材が乗り越えつつスイング移動することを許容する形状に形成されていることを特徴とする伝達機構。
【請求項2】
前記カム面は、
前記第2入力部材のスイング移動量が小さいとき、前記第2入力部材のスイング移動量の変化に対して前記出力部材が緩やかに変化可能で、
前記第2入力部材のスイング移動量が大きいとき、前記第2入力部材のスイング移動量の変化に対して前記出力部材が大きく変化可能となるように、
曲線的に形成されたことを特徴とする請求項1記載の伝達機構。
【請求項3】
前記第1入力部材は、
前記第2入力部材および前記出力部材を収納するケースを兼用していることを特徴とする請求項1または請求項2記載の伝達機構。
【請求項4】
前記出力部材は、
前記第1スイング中心線を迂回するように湾曲状に形成され、
湾曲状に形成された内側の面が前記カム面に接触可能としたことを特徴とする請求項3記載の伝達機構。
【請求項5】
前記第2入力部材は、
作業機の前進走行、停止、後退走行の間で連続して切換え操作可能な前後進レバーに直接または間接に連結され、
前記出力部材は、
前記停止、前記後退走行のとき無負荷または前記前進走行のときより負荷が小さくなる作業部を駆動する駆動源の出力を調整可能な出力調整部に直接または間接に連結され、
前記第1入力部材は、
前記出力調整部を操作力で調整可能な出力操作部材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の伝達機構。
【請求項1】
互いに独立した二つの入力を一つの出力として取出し可能な伝達機構であって、
第1スイング中心線を基点にスイング移動が可能な第1入力部材と、
前記第1スイング中心線を基点として、前記第1入力部材に対し独立したスイング移動が可能な第2入力部材と、
この第2入力部材に、前記第1スイング中心線に平行な第2スイング中心線を基点としたスイング移動が可能に連結された出力部材と、
この出力部材のスイング移動の軌跡を前記第1入力部材のスイング移動量に応じて変化させるべく、前記第1入力部材に設けられたカムと、
このカムに対して前記出力部材を接触する方向へ付勢する付勢部材と、を備え、
前記カムは、前記第1入力部材が一方にスイング移動をしたとき、前記出力部材のスイング移動を許容するように変位可能なカム面を有し、
このカム面は、前記第2入力部材が前記一方にスイング移動をしたとき、前記出力部材が乗り越えつつスイング移動することを許容する形状に形成されていることを特徴とする伝達機構。
【請求項2】
前記カム面は、
前記第2入力部材のスイング移動量が小さいとき、前記第2入力部材のスイング移動量の変化に対して前記出力部材が緩やかに変化可能で、
前記第2入力部材のスイング移動量が大きいとき、前記第2入力部材のスイング移動量の変化に対して前記出力部材が大きく変化可能となるように、
曲線的に形成されたことを特徴とする請求項1記載の伝達機構。
【請求項3】
前記第1入力部材は、
前記第2入力部材および前記出力部材を収納するケースを兼用していることを特徴とする請求項1または請求項2記載の伝達機構。
【請求項4】
前記出力部材は、
前記第1スイング中心線を迂回するように湾曲状に形成され、
湾曲状に形成された内側の面が前記カム面に接触可能としたことを特徴とする請求項3記載の伝達機構。
【請求項5】
前記第2入力部材は、
作業機の前進走行、停止、後退走行の間で連続して切換え操作可能な前後進レバーに直接または間接に連結され、
前記出力部材は、
前記停止、前記後退走行のとき無負荷または前記前進走行のときより負荷が小さくなる作業部を駆動する駆動源の出力を調整可能な出力調整部に直接または間接に連結され、
前記第1入力部材は、
前記出力調整部を操作力で調整可能な出力操作部材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の伝達機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−82920(P2012−82920A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230881(P2010−230881)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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