説明

伸びと幅の変位量の測定用治具および伸びと幅の変位量の測定方法

【課題】 丸棒状試験片に対して材料試験を実行する場合においても、単一のカメラを使用して伸びの測定に利用する標線と幅の変位量の測定に利用する試験片の端縁とを正確に認識することが可能な伸びと幅の変位量の測定用治具および伸びと幅の変位量の測定方法を提供する。
【解決手段】 測定用治具40は、その表面が標線43が形成された標線形成面となる標線形成部材42と、この標線形成部材42を丸棒状試験片10に固定するための固定部材41とから構成される。この固定部材41は、標線形成部材42における標線43が形成された標線形成面を、丸棒状試験片10における直径を通る面と略同一平面上に配置するために使用される。この固定部材41は、ゴム等の弾性部材により構成されるとともに、丸棒状試験片10の外径よりわずかに小さな内径を有する環状の形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、材料試験機によって材料試験がなされる断面が円形の丸棒状試験片に対して、伸びと幅の変位量を測定するために使用する伸びと幅の変位量の測定用治具、および、この測定用治具を利用することにより、材料試験機によって材料試験がなされる断面が円形の丸棒状試験片に対して、伸びと幅の変位量を測定する伸びと幅の変位量の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試験片に対して引張試験等の材料試験を行う場合には、試験実行中において試験片の伸びと幅の変位量が測定される。このような試験片の伸びと幅を測定するときには、伸び計と幅計が使用される。この伸び計と幅計には、接触方式と非接触方式がある。ここで、接触方式の伸び計および幅計においては、フィルム等の軟質材料には使用できないことや、破断試験を行う場合において破断時まで測定ができないことから、近年、非接触式の伸び計および幅計が多用されている。そして、このような非接触式の伸び計および幅計においては、カメラを使用して試験片に形成された一対の標線間の距離を測定することにより伸びを演算するとともに、同一のカメラを使用して試験片の両端縁間の距離を測定することにより幅の変位量を測定する構成となっている。
【0003】
また、特許文献1には、より高い分解能のもとに試験片の幅寸法の変化を計測することを可能とするため、試験片の背後に負荷方向に対して角度θを持って傾斜する複数のラインからなる縞模様パターンを備えたマークを配した状態で、カメラにより試験片を撮影する材料試験機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−317204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図10は、平板状の試験片11に対して伸びと幅の変位量を測定する様子を示す説明図である。また、図11は、これと同様の方式によりその断面が円形の丸棒状試験片12に対して伸びと幅の変位量を測定する様子を示す説明図である。
【0006】
図10に示すように、平板状の試験片11の表面には、一対の標線13が形成されている。試験片11の伸びを測定するときには、カメラにより試験片11を撮影し、これら一対の標線13間の距離D1を経時的に観察して、試験片11の伸びを演算している。また、試験片11の幅の変位量を測定するときには、同じカメラにより試験片11を撮影し、試験片11の両端縁(エッジ)14の位置を認識し、これら一対の端縁間の距離D2を経時的に観察して、試験片11の幅の変位量を演算している。
【0007】
これと同様の方式により、丸棒状試験片12の伸びと幅の変位量を測定するときには、丸棒状試験片12の断面形状に起因する問題点が発生する。すなわち、図10に示す平板状の試験片11の場合と同様に、丸棒状試験片12の表面に一対の標線13を形成し、これらの標線13間の距離D1により試験片12の伸びを測定するとともに、丸棒状試験片12の両端縁15を利用して試験片12の幅の変位量を測定する場合においては、丸棒状試験片12を撮影するカメラと一対の標線13との距離と、このカメラと丸棒状試験片12の両端縁15との距離とは、図11に示す距離Lだけ差が生ずることになる。このため、丸棒状試験片12に形成された標線13と丸棒状試験片12の端縁15とを同一のカメラにより正確に測定することができないという問題が生ずる。
【0008】
このため、カメラにおける光学系の焦点深度を深くして、丸棒状試験片12に形成された標線13と丸棒状試験片12の端縁15とを同時に認識させることも可能ではあるが、この場合には、標線13や端縁15を鮮明に認識することが困難となり、伸びや幅の変位量を正確に測定することが不可能となる。
【0009】
なお、平板状の試験片11を使用する場合においては、試験片11の幅方向の位置を認識するため、標線13と直交する方向を向く一対の標線を、所定距離離隔した状態で試験片の表面に形成し、これらの標線を利用して試験片11の幅の変位量を測定する場合もある。しかしながら、丸棒状試験片12の場合には、その断面形状が円形であることから、このような標線13と直交する方向を向く一対の標線を利用して試験片11の幅の変位量を測定することは不可能である。
【0010】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、丸棒状試験片に対して材料試験を実行する場合においても、単一のカメラを使用して伸びの測定に利用する標線と幅の変位量の測定に利用する試験片の端縁とを正確に認識することが可能な伸びと幅の変位量の測定用治具および伸びと幅の変位量の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、材料試験機によって材料試験がなされる断面が円形の丸棒状試験片に対して、伸びと幅の変位量を測定するために使用する伸びと幅の変位量の測定用治具であって、標線が形成された標線形成面を備える標線形成部材と、前記標線形成部材の標線形成面を、前記丸棒状試験片における直径を通る面と略同一平面上に配置するための固定部材とを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記固定部材は、前記丸棒状試験片の外径よりわずかに小さな内径を有する弾性材料により構成された環状部材を備える。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記固定部材は、前記標線形成部材を支持する支持枠と、前記丸棒状試験片に当接する一対の当接部と、前記各当接部と前記支持枠との間に配設されたバネと、前記支持枠を、前記丸棒状試験片を囲うように環状に配置された装着状態と、この環状に配置された装着状態を開放する開放状態とに切り替える係合機構とを備える。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明において、前記標線形成部材は、前記丸棒状試験片の両側となる位置に一対配設される。
【0015】
請求項5に記載の発明は、材料試験機によって材料試験がなされる断面が円形の丸棒状試験片に対して、伸びと幅の変位量を測定する伸びと幅の変位量の測定方法において、前記丸棒状試験片における直径を通る面と略同一平面上に、標線が形成された標線形成面を備える一対の標線形成部材の各標線形成面を、それらに形成された各標線が前記丸棒状試験片に対する試験力の付与方向に互いに離隔する状態で配置する標線形成面配置工程と、前記丸棒状試験片に試験力を負荷する試験力負荷工程と、前記標線形成面に形成された標線と前記丸棒状試験片の端縁とを同一のカメラにより撮影する撮影工程と、前記カメラにより撮影した一対の標線間の距離に基づいて前記丸棒状試験片の伸びを演算するとともに、前記カメラにより撮影した丸棒状試験片の両端縁間の距離に基づいて前記丸棒状試験片の幅の変位量を演算する演算工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1および請求項5に記載の発明によれば、丸棒状試験片に対して材料試験を実行する場合においても、単一のカメラを使用して伸びの測定に利用する標線と幅の変位量の測定に利用する試験片の端縁とを正確に認識することができ、試験片の伸びと幅の変位量を正確に測定することが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、簡易な構成であるにもかかわらず、標線形成部の標線形成面を丸棒状試験片における直径を通る面と略同一平面上に配置することが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、丸棒状試験片の直径が変更された場合であっても、標線形成部の標線形成面を丸棒状試験片における直径を通る面と略同一平面上に配置することが可能となる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、丸棒状試験片の両端部において標線間の距離を利用して丸棒状試験片の伸びを測定することから、伸びをより高精度に測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明を適用する材料試験機の概要図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る測定用治具40の斜視図である。
【図3】測定用治具40を丸棒状試験片10に装着した状態を示す斜視図である。
【図4】測定用治具40を丸棒状試験片10に装着した状態を示す正面図である。
【図5】測定用治具40を丸棒状試験片10に装着した状態を示す平面図である。
【図6】標線43が形成された標線形成部材42の表面を、丸棒状試験片10の直径を通る面と略同一平面上に配置する様子を示す説明図である。
【図7】測定用治具40を使用したこの発明に係る伸びと幅の変位量の測定方法を示すフローチャートである。
【図8】この発明の第2実施形態に係る測定用治具50の平面図である。
【図9】この発明の第3実施形態に係る測定用治具60の平面図である。
【図10】平板状の試験片11に対して伸びと幅の変位量を測定する様子を示す説明図である。
【図11】丸棒状試験片12に対して伸びと幅の変位量を測定する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。まず、この発明を適用する材料試験機の構成について説明する。図1は、この発明を適用する材料試験機の概要図である。
【0022】
この材料試験機は、テーブル18と、床面に立設された一対の支柱19と、各支柱19の内部において回転可能に立設された図示しない一対のねじ棹と、これらのねじ棹に沿って移動可能なクロスヘッド23と、このクロスヘッド23を移動させて丸棒状試験片10に対して試験力を付与するための負荷機構30とを備える。なお、丸棒状試験片10は、その断面が円形の丸棒からなる試験片である。
【0023】
クロスヘッド23は、一対のねじ棹に対して、図示を省略したナットを介して連結されている。各ねじ棹の下端部は負荷機構30に連結されており、負荷機構30の動力源からの動力が、一対のねじ棹に伝達される構成となっている。一対のねじ棹が同期して回転することにより、クロスヘッド23は、これら一対のねじ棹に沿って昇降する。
【0024】
クロスヘッド23には、丸棒状試験片10の上端部を把持するための上つかみ具21が付設されている。一方、テーブル18には、丸棒状試験片10の下端部を把持するための下つかみ具22が付設されている。引っ張り試験を行う場合には、丸棒状試験片10の両端部をこれらの上つかみ具21および下つかみ具22により把持した状態で、クロスヘッド23を上昇させることにより、丸棒状試験片10に試験力(引張荷重)を負荷する。
【0025】
このときに、丸棒状試験片10に作用する試験力はロードセル24によって検出され、制御回路31を介して制御部33に入力される。また、丸棒状試験片10は、CCD素子を有するビデオカメラ28により撮影され、その画像は制御部33に入力される。この制御部33は、論理演算を実行するCPUや、装置の制御に必要な動作プログラムが格納されたROMおよび制御時にデータ等が一時的にストアされるRAM等の記憶部を有するコンピュータから構成されており、キーボード等の入力部34およびCRT等の表示部35と接続されている。
【0026】
ビデオカメラ28には、光学系27が付設されている。これらのビデオカメラ28および光学系27は、支柱19に配設されたアーム29に支持されている。また、これらのビデオカメラ28および光学系27は、試験片10における必要な領域が撮影可能となるように、支柱19におけるアーム29の固定角度および屈曲度を調整できる構成となっている。
【0027】
次に、この発明に係る伸びと幅の変位量の測定用治具の構成について説明する。図2は、この発明の第1実施形態に係る測定用治具40の斜視図である。図3は、測定用治具40を丸棒状試験片10に装着した状態を示す斜視図である。図4は、測定用治具40を丸棒状試験片10に装着した状態を示す正面図である。図5は、測定用治具40を丸棒状試験片10に装着した状態を示す平面図である。
【0028】
この第1実施形態に係る測定用治具40は、その表面が標線43が形成された標線形成面となる標線形成部材42と、この標線形成部材42を丸棒状試験片10に固定するための固定部材41とから構成される。この固定部材41は、後述するように、標線形成部材42における標線43が形成された標線形成面を、丸棒状試験片10における直径を通る面と略同一平面上に配置するためのものである。この固定部材41は、ゴム等の弾性部材により構成されるとともに、丸棒状試験片10の外径よりわずかに小さな内径を有する環状の形状を有する。
【0029】
この測定用治具40における標線形成部材42は、樹脂製のフィルム等から構成されており、その表面は標線43を形成するための標線形成面となっている。この標線43は、例えば特開平11−295042号公報にも記載されたように、エッジを高精度に認識するために、多数の菱形が直線状に並んだ形状を有している。ここで、標線形成部42は白色の材質であり、標線43は黒色となっている。このように、標線形成部42と標線43の一方を白、他方を黒とすることにより、標線43をより正確に認識することが可能となる。なお、白と黒のかわりに、青と黄色や、赤と緑など、補色の関係にある色を採用してもよい。
【0030】
この測定用治具40を丸棒状試験片10に装着するときには、環状の固定部材41に形成された開口部内に丸棒状試験片10を挿入することにより、測定用治具40を丸棒状試験片10の外周部に固定する。このときには、図5に示すように、標線43が形成された標線形成面である標線形成部材42の表面を、丸棒状試験片10の直径を通る面と略同一平面上に配置する。
【0031】
図6は、標線43が形成された標線形成部材42の表面を、丸棒状試験片10の直径を通る面と略同一平面100上に配置する様子を示す説明図である。
【0032】
標線43が形成された標線形成部材42の表面を丸棒状試験片10の直径を通る面と略同一平面100上に配置するためには、キャリブレーション用の焦点合わせ用マーク45が形成された焦点合わせ用治具44を使用する。この標点合わせ用治具44は、丸棒状試験片10の直径の半分の厚みを有する。この焦点合わせ用治具44を、例えば、図1に示す上つかみ具21または下つかみ具22、あるいは丸棒状試験片10に連結し、焦点合わせ用治具44の位置を調整して、焦点合わせ用マーク45が丸棒状試験片10の直径を通る面上に配置されるようにする。そして、ビデオカメラ28により焦点合わせ用マーク45を撮影して焦点合わせを実行するとともに、ビデオカメラ28により標線43を撮影して焦点が合っていることを確認する。このときには、丸棒状試験片10の端縁部分49は、平面100上に配置されることになる。なお、焦点合わせ用治具44と丸棒状試験片10との位置決めは、定盤上で実行してもよい。
【0033】
次に、上述した伸びと幅の変位量の測定用治具40を使用して、材料試験時に、丸棒状試験片10の伸びと幅の変位量を測定する測定動作について説明する。図7は、測定用治具40を使用したこの発明に係る伸びと幅の変位量の測定方法を示すフローチャートである。
【0034】
材料試験を行うときには、最初に、測定用治具40を丸棒状試験片10に装着することにより、丸棒状試験片10における直径を通る面と略同一平面上に標線43が形成された標線形成部42の標線形成面を配置する(ステップS1)。このときには、一対の測定用治具40を使用し、それらの測定用治具40に形成された各標線43が丸棒状試験片10に対する試験力の付与方向に互いに離隔する状態で配置される状態とする。このときには、図4に示すように、標線43は、丸棒状試験片10の両側に合計4個配置されることになる。
【0035】
この状態で、丸棒状試験片10に対して試験力を負荷して材料試験を行う(ステップS2)。
【0036】
そして、この材料試験時に、ビデオカメラ28により標線43と丸棒状試験片10の端縁とを撮影する(ステップS3)。このときには、丸棒状試験片10における直径を通る面と略同一平面上に測定用治具40に形成された標線43が配置されていることから、丸棒状試験片10の端縁と標線43とは、ビデオカメラ28に対して同一の距離に配置される。このため、単一のビデオカメラ28を使用した場合においても、丸棒状試験片10の端縁と標線43との両方に光学系27の焦点を合致させることが可能となる。
【0037】
そして、図4に示すように、ビデオカメラ28により測定した一対の標線間の距離D1に基づいて丸棒状試験片10の伸びを演算するとともに、同じビデオカメラ28により測定した丸棒状試験片10の両端縁間の距離D2に基づいて丸棒状試験片10の幅の変位量を演算する(ステップS4)。
【0038】
このときには、一対の標線間の距離D1を丸棒状試験片10の左右両側で測定することが可能となる。このため、丸棒状試験片10の左右の縦変位の平均値を測定することも可能となることから、より定量的な縦変位測定を実行することが可能となる。
【0039】
次に、この発明の他の実施形態について説明する。図8は、この発明の第2実施形態に係る測定用治具50の平面図である。
【0040】
この第2実施形態に係る測定用治具50は、第1実施形態に係る測定用治具40と同様の、その表面が標線43が形成された標線形成面となる標線形成部材42を備える。また、この測定用治具50は、各々対をなす枠体53および枠体54から形成され標線形成部材42を支持する支持枠を有する。各枠体53と各枠体54とは、軸55を中心に蝶動可能となっている。また、この測定用治具50は、丸棒状試験片10に当接する一対の当接部56と、各当接部56と支持枠との間に配設されたバネ57とを備える。各枠体53、54には、一対の枠体53同士の先端部と、一対の枠体54同士の先端部を、各々係合させる係合部58が形成されている。この係合部58は、支持枠を、丸棒状試験片10を囲うように環状に配置された装着状態と、この環状に配置された装着状態を開放する開放状態とに切り替える係合機構として機能する。
【0041】
この測定用治具50を丸棒状試験片10に装着するときには、一対の当接部56を丸棒状試験片10に当接させた状態で、一対の枠体53同士の先端部と、一対の枠体54同士の先端部を、係合部58において各々係合させることにより、枠体53、54によって丸棒状試験片10を取り囲む。
【0042】
この第2実施形態に係る測定用治具50においても、標線43が形成された標線形成面である標線形成部材42の表面を、丸棒状試験片10の直径を通る面と略同一平面上に配置することにより、丸棒状試験片10の端縁と標線43とを、ビデオカメラ28に対して同一の距離に配置することができ、単一のビデオカメラ28を使用した場合においても、丸棒状試験片10の端縁と標線43との両方に光学系27の焦点を合致させることが可能となる。
【0043】
また、この第2実施形態に係る測定用治具50を使用した場合には、丸棒状試験片10の直径が異なる場合においても、一対のバネ57の作用により、測定用治具50を丸棒状試験片10に固定することが可能となる。
【0044】
次に、この発明のさらに他の実施形態について説明する。図9は、この発明の第3実施形態に係る測定用治具60の平面図である。
【0045】
この第3実施形態に係る測定用治具60は、第1実施形態に係る測定用治具40と同様、ゴム等の弾性部材により構成される固定部材を備える。但し、この実施形態においては、固定部材は、肉薄部63と肉厚部64とから構成される環状の形状を有する。そして、この固定部材に形成された孔部の内径は、丸棒状試験片10の外径よりわずかに小さな大きさとなっている。また、肉厚部64の端部には、第1実施形態の標線43と同様の標線を形成するための標線形成面62が形成されている。
【0046】
この測定用治具60を丸棒状試験片10に装着するときには、肉薄部63および肉厚部64よりなる管状部材の開口部内に丸棒状試験片10を挿入することにより、測定用治具60を丸棒状試験片10の外周部に固定する。このときには、図9に示すように、標線が形成された標線形成面62の表面を、丸棒状試験片10の直径を通る面と略同一平面上に配置する。
【0047】
この第3実施形態に係る測定用治具60においても、標線が形成された標線形成面62を、丸棒状試験片10の直径を通る面と略同一平面上に配置することにより、丸棒状試験片10の端縁と標線とを、ビデオカメラ28に対して同一の距離に配置することができ、単一のビデオカメラ28を使用した場合においても、丸棒状試験片10の端縁と標線との両方に光学系27の焦点を合致させることが可能となる。
【符号の説明】
【0048】
10 丸棒状試験片
18 テーブル
19 支柱
21 上つかみ具
22 下つかみ具
23 クロスヘッド
24 ロードセル
27 光学系
28 ビデオカメラ
29 アーム
30 負荷手段
31 制御回路
33 制御部
34 入力部
35 表示部
40 測定用治具
41 固定部材
42 標線形成部材
43 標線
50 測定用治具
53 枠体
54 枠体
56 当接部
57 バネ
58 係合部
60 測定用治具
62 標線形成面
63 肉薄部
64 肉厚部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料試験機によって材料試験がなされる断面が円形の丸棒状試験片に対して、伸びと幅の変位量を測定するために使用する伸びと幅の変位量の測定用治具であって、
標線が形成された標線形成面を備える標線形成部材と、
前記標線形成部材の標線形成面を、前記丸棒状試験片における直径を通る面と略同一平面上に配置するための固定部材と、
を備えたことを特徴とする伸びと幅の変位量の測定用治具。
【請求項2】
請求項1に記載の伸びと幅の変位量の測定用治具において、
前記固定部材は、前記丸棒状試験片の外径よりわずかに小さな内径を有する弾性材料により構成された環状部材を備える伸びと幅の変位量の測定用治具。
【請求項3】
請求項1に記載の伸びと幅の変位量の測定用治具において、
前記固定部材は、
前記標線形成部材を支持する支持枠と、
前記丸棒状試験片に当接する一対の当接部と、
前記各当接部と前記支持枠との間に配設されたバネと、
前記支持枠を、前記丸棒状試験片を囲うように環状に配置された装着状態と、この環状に配置された装着状態を開放する開放状態とに切り替える係合機構と、
を備える伸びと幅の変位量の測定用治具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の伸びと幅の変位量の測定用治具において、
前記標線形成部材は、前記丸棒状試験片の両側となる位置に一対配設される伸びと幅の変位量の測定用治具。
【請求項5】
材料試験機によって材料試験がなされる断面が円形の丸棒状試験片に対して、伸びと幅の変位量を測定する伸びと幅の変位量の測定方法において、
前記丸棒状試験片における直径を通る面と略同一平面上に、標線が形成された標線形成面を備える一対の標線形成部材の各標線形成面を、それらに形成された各標線が前記丸棒状試験片に対する試験力の付与方向に互いに離隔する状態で配置する標線形成面配置工程と、
前記丸棒状試験片に試験力を負荷する試験力負荷工程と、
前記標線形成面に形成された標線と前記丸棒状試験片の端縁とを同一のカメラにより撮影する撮影工程と、
前記カメラにより撮影した一対の標線間の距離に基づいて前記丸棒状試験片の伸びを演算するとともに、前記カメラにより撮影した丸棒状試験片の両端縁間の距離に基づいて前記丸棒状試験片の幅の変位量を演算する演算工程と、
を備えたことを特徴とする伸びと幅の変位量の測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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