説明

伸線材の結晶配向測定方法

【課題】切断などの加工や平行に並べたりする手間を要することなく、伸線材の結晶配向性を評価することが可能なX線回折測定方法を提供する。
【解決手段】2θ−θ法を用いて、ターゲットからのX線を入射コリメータを通して伸線材に当て、伸線材からの回折したX線を受光側コリメータを通して計数器に入射して、伸線材の複数の結晶面による回折ピークを測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸線材の結晶配向性についての情報を得るためのX線回折の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
伸線材は、母合金をダイス加工などによって細い線状に加工したものであり、加工後はスプールなどに巻き取られて保管される。この伸線材をX線回折で測定する場合、適当な大きさに切断した後に試料が平滑になるように並べて固定する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、測定の際、直径が数μmから数十μmの伸線材を平滑になるように並べて固定するのは煩雑であるうえ、確実に並べるのが非常に困難である。したがって、伸線材の結晶配向性を正確に評価するのは困難である。
【0004】
したがって、本発明は、切断などの加工や平行に並べたりする手間を要することなく、伸線材の結晶配向性を評価することが可能なX線回折測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、スプールなどに巻かれた状態の伸線材について、巻かれた状態のままでX線回折測定を実施することが効果的であることを見い出た。本発明の測定方法は、スプールなどに巻かれた伸線材をその巻き取り方向とX線入射方向が一致するように固定したうえで、X線回折の装置構成を集中法の光学系ではなく平行ビーム系にして測定することによって解決される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の測定方法によれば、伸線材について、試料を破壊することなく、短時間で結晶配向性に関する資料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、本発明の測定方法に用いるX線回折装置を説明するための斜視図である。図1において、ターゲット(X線源)12から平行ビームを形成する入射側コリメータ14を通して試料であるスプールに巻かれた伸線材16にX線を入射し、伸線材16からの回折したX線を平行ビームを形成する受光側コリメータ18を通して計数器20に入射して、伸線材の回折ピークを測定する。
【0008】
すなわち、X線回折装置は平行ビーム系として光学軸調整した状態にしておく。次に、スプールなどに巻かれた状態の伸線材16をX線回折装置の試料ホルダーに固定する。このとき、X線入射方向と伸線材の巻き取り方向を揃えることによって、複数の試料との結晶配向性を直接的に比較できる。なお、試料ホルダーは、大型試料が固定できるものであることが望ましい。
【0009】
伸線材の複数の結晶面による回折ピークが計測できる測定範囲について2θ−θスキャン法で計測する。図2は、2θ−θスキャン法を説明するための平面図である。図2において、ターゲット12の中心からゴニオメータ回転中心(試料16の表面中心)までの距離とゴニオメータ回転中心(試料16の表面中心)から計数器20までの距離が等しくなる光学系において、試料表面に平行な結晶面の回折ピークを計数するには、常に入射角と出射角が同じになるように試料と計数器を回転させる必要がある。それを満たすためには、試料の回転角θに対して計数器は2倍の回転角2θとなるように走査する。
【0010】
上記測定方法によって得られた回折パターンについて、各々の回折ピーク強度を計数する。
【実施例】
【0011】
ここでは、スプールに巻き取られた直径15μmの伸線材についての実施例を示す。線状加工の際の加工強度が異なる不良品2試料(A、B)について、良品との配向の度合いを比較した結果を図3に示す。図3から、不良品(図中の(a)および(b))が良品(図中(c))よりも(220)ピーク強度が小さいことがわかる。このように、加工強度の違いによる配向性の変化を正確に確認することが可能となる。
【0012】
実施例で測定した3試料について、本法による測定時間と従来法(切断して並べて固定して測定に供す方法)の平均作業時間を下記の表1に示す。表から、従来法では情報を得るまでに90分かかるのに対し、本法では45分で情報を得ることができる。
【0013】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の測定方法に用いるX線回折装置を説明するための斜視図である。
【図2】2θ−θスキャン法を説明するための平面図である。
【図3】加工強度の異なる2試料および良品1試料の配向性評価結果である。
【符号の説明】
【0015】
12 ターゲット
14 入射側コリメータ
16 試料
18 受光側コリメータ
20 計数器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2θ−θ法を用いて、ターゲットからのX線を入射コリメータを通して伸線材に当て、伸線材からの回折したX線を受光側コリメータを通して計数器に入射して、伸線材の複数の結晶面による回折ピークを測定することを特徴とする伸線材の結晶配向測定方法。
【請求項2】
請求項1記載の伸線材の結晶配向測定方法において、上記伸線材はスプールに巻かれた状態であることを特徴とする伸線材の結晶配向測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−90766(P2006−90766A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−274461(P2004−274461)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】