説明

伸線機

【課題】ワイヤーとダイスとの間の調芯を良好にする。
【解決手段】ダイス1およびコーンプーリー2が潤滑液4に浸され、ターンプーリー5が潤滑液4に浸されることなく潤滑液4の液面Fとダイス1およびコーンプーリー2よりも上方に配置され、ワイヤー7のターンプーリー5からダイス1を経由してコーンプーリー2に掛け渡された部分7aおよびダイス1がターンプーリー5のワイヤー通線面部17乃至20の各々からの鉛直線Lの上に配置されて、ダイス1の重量Wがワイヤー7にワイヤー7の伸線方向Yと平行する方向に加わることによって、ワイヤー7とダイス1との間の調芯が適切に維持される。ダイス1がダイスホルダー11に鉛直線Lと直交する水平方向に移動可能に支持されれば、ダイス1がワイヤー7の鉛直線Lから水平方向への移動と同じ方向に移動し、ワイヤー7とダイス1との間の調芯が一層好適に維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーとダイスとの間の調芯が良好になる伸線機に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、特許文献1で開示された伸線機を示す。図4のa図において、ダイス1およびコーンプーリー2が潤滑槽3に入れられた潤滑液4に浸されて配置され、ターンプーリー24が潤滑液4に浸されることなく潤滑液4の液面Fとダイス1およびコーンプーリー2よりも上方に配置され、巻き出しボビン6に巻き付けられたワイヤー7が巻き出しボビン6からターンプーリー24、ダイス1、コーンプーリー2、キャプスタン8を順に経由して巻き取りボビン9に通され、巻き取りボビン9やコーンプーリー2などが図外のモーターで駆動され、ダイス1がワイヤー7の線径を細くするようにワイヤー7を伸線し、伸線されたワイヤー7が巻き取りボビン9に巻き取られる。しかしながら、図4のb図に示すように、ワイヤー7のターンプーリー24からダイス1を経由してコーンプーリー2に掛け渡された部分7b(以下、ワイヤー特定部分7bと称する)が斜めに設定され、ダイス1の重量Wがワイヤー7の伸線方向Yと交差する方向に加わる構造である。このため、ダイス1がダイスホルダー25に固定されていないと、図4のc図に示すように、ワイヤー特定部分7bのテンションが緩んだなどの場合、ダイス1が下方に移動し、ワイヤー7とダイス1との間の調芯がずれるという欠点がある。
【特許文献1】特開平8−155532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明が解決しようとする問題点は、ワイヤーとダイスとの間の調芯がずれるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る伸線機は、ダイスおよびコーンプーリーが潤滑槽に入れられた潤滑液に浸されて配置され、ターンプーリーが潤滑液に浸されることなくダイスおよびコーンプーリーよりも上方に配置され、巻き出しボビンに巻き付けられたワイヤーが巻き出しボビンからターンプーリー、ダイス、コーンプーリー、キャプスタンを順に経由して巻き取りボビンに通され、モーターがコーンプーリーや巻き取りボビンを駆動し、ダイスがワイヤーの線径を細くするようにワイヤーを伸線し、伸線されたワイヤーが巻き取りボビンに巻き取られる伸線機において、ワイヤーのターンプーリーからダイスを経由してコーンプーリーに掛け渡された部分およびダイスがターンプーリーからの鉛直線上に配置されたことによって、ダイスの重量がワイヤーにワイヤーの伸線方向と平行する方向に加わることを最も主要な特徴とする。ダイスがダイスホルダーにターンプーリーからの鉛直線と直交する水平方向に移動可能に支持され、ダイスホルダーにはワイヤー逃避部が設けられたり、または、ターンプーリーのワイヤーを巻き掛けるワイヤー通線面部はターンプーリーの回転中心を構成する軸と平行する方向の両端部から中央部に行くにしたがって徐々に直径を小さくする斜面が上記軸を中心とする円形となるように連続したすり鉢状の面からなる溝として構成されたりしてもよい。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る伸線機は、ワイヤーのターンプーリーからダイスを経由してコーンプーリーに掛け渡された部分およびダイスがターンプーリーからの鉛直線上に配置されたことによって、ダイスの重量がワイヤーにワイヤーの伸線方向と平行する方向に加わるので、ワイヤーとダイスとの間の調芯が適切に維持できるという利点がある。ダイスがダイスホルダーにターンプーリーからの鉛直線と直交する水平方向に移動可能に支持され、ダイスホルダーにはワイヤー逃避部が設けられれば、ワイヤーとダイスとの間の調芯が一層好適に維持できるという利点がある。ターンプーリーのワイヤーを巻き掛けるワイヤー通線面部はターンプーリーの回転中心を構成する軸と平行する方向の両端部から中央部に行くにしたがって徐々に直径を小さくする斜面が上記軸を中心とする円形となるように連続したすり鉢状の面からなる溝として構成されれば、ワイヤー通線面部におけるワイヤーの通るワイヤー通線位置が最も直径の小さな部分となり、ワイヤーがワイヤー通線面部において軸と平行する方向に移動しないようにワイヤー通線面部における最も直径の小さな部分に位置決めされるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1のa図は、伸線機を示す。図1のb図は、図1のa図に示すS方向から見たコーンプーリー2の側面を示す。図1のc図は、図1のa図に示すS方向から見たターンプーリー5の側面を示す。図2は、ダイス1とダイスホルダー11とをワイヤー7の伸線方向Yに切断した断面を示す。図3は、ダイス1とコーンプーリー2とターンプーリー5およびワイヤー7との関係を示す。
【0007】
図1のa図を参照し、伸線機について説明する。伸線機では、ダイス1およびコーンプーリー2が潤滑槽3に入れられた潤滑液4に浸されて配置され、ターンプーリー5が潤滑液4に浸されることなく潤滑液4の液面Fとダイス1およびコーンプーリー2よりも上方に配置され、巻き出しボビン6に巻き付けられたワイヤー7が巻き出しボビン6からターンプーリー5、ダイス1、コーンプーリー2、キャプスタン8を順に経由して巻き取りボビン9に通され、コーンプーリー2や巻き取りボビン9などが図外のモーターで駆動され、ダイス1がワイヤー7の線径を細くするようにワイヤー7を伸線し、伸線されたワイヤー7が巻き取りボビン9に巻き取られるものであって、とりわけ、ワイヤー7のターンプーリー5からダイス1を経由してコーンプーリー2に掛け渡された部分7a(以下、ワイヤー特定部分7aと称する)およびダイス1がターンプーリー5のワイヤー通線面部17乃至20の各々からの鉛直線Lの上に配置されたことによって、ダイス1の重量Wがワイヤー7にワイヤー7の伸線方向Yと平行する方向に加わるので、ワイヤー7とダイス1との間の調芯が適切に維持できるという利点がある。
【0008】
図1のa図では、ワイヤー特定部分7aが4本の場合を例示されたことから、ダイス1も4個であって、ダイス1の1個ずつにワイヤー特定部分7aが1本ずつ通される。これらのダイス1の全部が板状のダイスホルダー11に鉛直線Lと直交する水平方向に個別に移動可能に支持される。例えば、ダイス1のそれぞれが、鉛直線Lと直交する水平方向に個別に移動可能に、ダイスホルダー11の平坦な水平な上面に載せられた形態である。ワイヤー7におけるコーンプーリー2のワイヤー通線面部12乃至15の各々からターンプーリー5のワイヤー通線面部17乃至20の各々に戻る部分は、鉛直線Lと平行でなく、斜めになってもよい。
【0009】
図1のb図を参照し、コーンプーリー2について説明する。コーンプーリー2は、4つのワイヤー通線面部12;13;14;15を有する。ワイヤー通線面部12乃至15は、コーンプーリー2の回転中心を構成する軸16を中心とする直径の異なる4つの円周上に個別に配置される。最大直径のワイヤー通線面部12が軸16の一端部の側に配置され、次に大きな直径のワイヤー通線面部13がワイヤー通線面部12の隣に配置され、その次に大きな直径のワイヤー通線面部14がワイヤー通線面部13の隣に配置され、最小直径のワイヤー通線面部15がワイヤー通線面部14の隣に配置される。つまり、ワイヤー通線面部12乃至15は、軸16の一端部の側から他端部の側に行くにしたがって直径が小さくなるような4段を構成する。ワイヤー通線面部12乃至15の各々は、軸16と平行する方向に平坦な面が軸16を中心とする円形となるように連続した面として構成される。
【0010】
図1のc図を参照し、ターンプーリー5について説明する。ターンプーリー5は、4つのワイヤー通線面部17;18;19;20を有する。ワイヤー通線面部17乃至20は、ターンプーリー5の回転中心を構成する軸21を中心とする直径の異なる4つの円周上に個別に配置される。最大直径のワイヤー通線面部17が軸21の一端部の側に配置され、次に大きな直径のワイヤー通線面部18がワイヤー通線面部17の隣に配置され、その次に大きな直径のワイヤー通線面部19がワイヤー通線面部18の隣に配置され、最小直径のワイヤー通線面部20がワイヤー通線面部19の隣に配置される。つまり、ワイヤー通線面部17乃至20は、軸21の一端部の側から他端部の側に行くにしたがって直径が小さくなるような4段を構成する。ワイヤー通線面部17乃至20の各々は、軸21と平行する方向の両端部から中央部に行くにしたがって徐々に直径を小さくする斜面が軸21を中心とする円形となるように連続したV字形または弧状のすり鉢状の面からなる溝として構成される。よって、ワイヤー通線面部17乃至20の各々におけるワイヤー7の通るワイヤー通線位置は、最も直径の小さな部分となる。つまり、ワイヤー7が、ワイヤー通線面部17乃至20の各々において軸21と平行する方向に移動しないように、ワイヤー通線面部17乃至20の各々における最も直径の小さな部分に位置決めされるという利点がある。
【0011】
図2を参照し、ダイス1およびダイスホルダー11について説明する。ダイス1は、加工孔部22を備える。ダイスホルダー11には、ワイヤー逃避部23が設けられる。そして、ダイス1が、鉛直線Lと直交する水平方向に個別に移動可能に、ダイスホルダー11の平坦な水平な上面に載せられた形態である。例えば、ワイヤー7が鉛直線Lから左側に移動した場合、それに伴い、ダイス1がダイスホルダー11の上面を左側に滑走し、ワイヤー7が鉛直線Lから右側に移動した場合、それに伴い、ダイス1がダイスホルダー11の上面を右側に滑走する。つまり、ワイヤー7が鉛直線Lから水平方向に移動するのに伴い、ダイス1が当該ワイヤー7の移動方向と同じ方向に移動し、ワイヤー7とダイス1との間の調芯が一層好適に維持できるという利点がある。
【0012】
図3を参照し、ダイス1とコーンプーリー2とターンプーリー5およびワイヤー7との関係について説明する。コーンプーリー2の軸16とターンプーリー5の軸21とが互いに水平かつ平行に相対峙する。そして、ワイヤー7がコーンプーリー2のワイヤー通線面部12乃至15の各々に何回か巻き付けられてターンプーリー5に戻っていく構成となり、ワイヤー特定部分7aが矢印Xで示す方向にずれるくせを生じる。そして、ダイス1がダイスホルダー11に鉛直線Lと直交する水平方向に個別に移動可能に支持されている。よって、ワイヤー特定部分7aが矢印Xで示す方向にずれた場合でも、そのずれに伴い、ダイス1が当該ワイヤー7の移動方向と同じ方向に移動し、ワイヤー7とダイス1との間の調芯が一層好適に維持できるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0013】
図2において、ワイヤー逃避部23は、ワイヤー7がダイスホルダー11に接触しないように逃げるための要素であるので、一体のダイスホルダー11に、上下方向への貫通孔として、または、上下方向および一側に開口した溝として設けてもよいが、二体のダイスホルダー11が水平方向に離れて相対峙して配置されることによって、二体のダイスホルダー11の間の隙間をワイヤー逃避部23として形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】a図は伸線機の正面図的な模式図、b図はa図のS方向から見たコーンプーリーの側面図、c図は、a図のS方向から見たターンプーリーの側面図(最良の形態)。
【図2】ダイスとダイスホルダーとの断面図(最良の形態)。
【図3】ダイスとワイヤーとの間の調芯を説明する模式図(最良の形態)。
【図4】a図は伸線機の正面図的な模式図、bおよびc図はダイスとワイヤーとの関係を説明する模式図(従来)。
【符号の説明】
【0015】
1はダイス、2はコーンプーリー、3は潤滑槽、4は潤滑液、5はターンプーリー、6は巻き出しボビン、7はワイヤー、7a;7bはワイヤー特定部分、8はキャプスタン、9は巻き取りボビン、10は欠番、11はダイスホルダー、12乃至15はワイヤー通線面部、16は軸、17乃至20はワイヤー通線面部、21は軸、22は加工孔部、23はワイヤー逃避部、24はターンプーリー、25はダイスホルダー、Fは液面、Lは鉛直線、Xは特定部分7aがずれる方向、Wは重量、Yは伸線方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイスおよびコーンプーリーが潤滑槽に入れられた潤滑液に浸されて配置され、ターンプーリーが潤滑液に浸されることなくダイスおよびコーンプーリーよりも上方に配置され、ワイヤーが巻き出しボビンからターンプーリー、ダイス、コーンプーリー、キャプスタンを順に経由して巻き取りボビンに通され、モーターがコーンプーリーや巻き取りボビンを駆動し、ダイスがワイヤーの線径を細くするようにワイヤーを伸線する伸線機において、ワイヤーのターンプーリーからダイスを経由してコーンプーリーに掛け渡された部分およびダイスがターンプーリーからの鉛直線上に配置されたことによって、ダイスの荷重がワイヤーにワイヤーの伸線方向と平行する方向に加わることを特徴とする伸線機。
【請求項2】
ダイスがダイスホルダーにターンプーリーからの鉛直線と直交する水平方向に移動可能に支持され、ダイスホルダーにはワイヤー逃避部が設けられたことを特徴とする請求項1記載の伸線機。
【請求項3】
ターンプーリーのワイヤーを巻き掛けるワイヤー通線面部はターンプーリーの回転中心を構成する軸と平行する方向の両端部から中央部に行くにしたがって徐々に直径を小さくする斜面が上記軸を中心とする円形となるように連続したすり鉢状の面からなる溝として構成されたことを特徴とする請求項1記載の伸線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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