説明

伸縮ブームにおけるワイヤ切断検出装置

【課題】 左右対称に固定された二本のワイヤにおけるいずれか一本の切断を一つの揺動検出スイッチで確実に検知することができる伸縮ブームのワイヤ切断検出装置を提供する。
【解決方法】
揺動部材31を基端ブーム5aに回転自在に固定し、また、その揺動部材31の両端に、二本のワイヤ14を、ワイヤ接合部20に固定させる。右側のワイヤが切断された時は、切断検出プレート23に作用していたワイヤの張力が解放され、切断検出プレート23が皿バネ22の付勢力を受け基端方向に揺動変位することでスイッチレバー32bが揺動し切断の検出が可能となる。一方、左側のワイヤが切断された時は、切断検出プレート24に作用していたワイヤの張力が解放され、切断検出プレート24が皿バネ22の付勢力を受け基端方向に揺動変位し、揺動部材31が中央ピン37を支軸として回転することでスイッチレバー32bがスイッチ本体32aに対して回転し、切断の検出が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業車等に用いられる伸縮ブームにおけるワイヤ切断検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車等に用いられる伸縮ブームは、例えば、高所作業車の車体に搭載された旋回台に基端部が枢結されて取り付けられており、起伏シリンダにより起伏動されるようになっている。このような伸縮ブームは、例えば、複数のブームを入れ子式に組み合わせて、内蔵の伸縮シリンダにより伸縮動可能に構成される。そして、伸縮ブームの先端には作業台が取り付けられ、伸縮ブームを伸縮動および起伏動させることにより、作業台を所望の位置に移動できるようになっている。
【0003】
伸縮ブームは、伸長機構と縮小機構とからなり、入れ子式に組み合わせた複数のブームの伸縮作動を可能にする。伸長機構および縮小機構は、滑車をブーム、シリンダ等に固設し、その滑車にワイヤを巻き掛ける構成となっており、シリンダの伸縮によりワイヤを前後に作動させることで、多段ブームの伸縮を円滑に行う(詳細は後述)。尚、上述のワイヤは切断時の安全性を考慮し、伸長機構用のワイヤと縮小機構用のワイヤがそれぞれ、左右対称に2本、合計4本接続されている。
【0004】
また、伸縮ブームには、ワイヤの切断等の故障を検出するための手段が設けられている。エラーを検出する方法として、例えば、ワイヤが切断されるとドラムが過度に回転して内部センサが破損するように構成し、このセンサの破損をエラーとして検出する方法や、ワイヤが切断されるとワイヤが解放した張力により、ワイヤの一端が固定されている箇所にある揺動部材を揺動させ、揺動検出スイッチをオン状態として検出する方法もある。
【特許文献1】特開2001−132008号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような多段ブームにおけるワイヤ切断検出装置では、ワイヤの数と同数の揺動検出スイッチを設置しているため、揺動検出スイッチのコストがかかるとともに、ブーム内の占有スペースが大きく必要となり、またブーム全体としての重量増が問題となった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、左右対称に固定された二本のワイヤにおけるいずれか一本の切断を一つの揺動検出スイッチで確実に検知することができる伸縮ブームのワイヤ切断検出装置を提供することを目的とする。なお、本発明に係る伸縮ブームのワイヤ切断検出装置に関する先行特許文献は特許文献1に開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的達成のため、本発明に係る伸縮ブームのワイヤ切断検出装置は、少なくとも3本のブーム部材を入れ子式に組み合わせて伸縮動可能に構成され、ブーム部材のうち第1のブーム部材(例えば、実施形態における基端ブーム5a)に対して第2のブーム部材(例えば、実施形態における中間ブーム5b)を伸縮動させる伸縮アクチュエータ(例えば、実施形態における伸縮シリンダ7)と、伸縮アクチュエータによる第2のブーム部材の伸縮動に応じて第3のブーム部材(例えば、実施形態における先端ブーム5c)に結合された伸縮ワイヤとを備えた伸縮ブームにおける伸縮ワイヤの切断検出装置であって、伸縮ブームの内部に幅方向に並んで左右一対の伸縮ワイヤが配設されており、伸縮ワイヤを前後に移動可能な状態で貫通させた状態で、第1もしくは第3のブーム部材に固設されているブラケットと、ブラケットを貫通した伸縮ワイヤの端部に取り付けられた切断検出プレートとからなる左右一対のワイヤ結合部と、左右一対のワイヤ結合部の間に回動自在に取り付けられたリミットスイッチを備え、揺動部材の他端側が切断検出プレートのワイヤの張力を受ける方向と反対側の面と近接し、リミットスイッチのスイッチアーム部が切断検出プレートのワイヤの張力を受ける方向と反対側の面と近接するように構成されている。
【0008】
また、本発明において、切断検出プレートとブラケットの間に揺動付勢手段(例えば、実施形態における皿バネ22)を挿入し、ワイヤの張力を受けて切断検出プレートに付勢力を加えるような構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、この揺動部材の右側に位置するワイヤが切断等する際は、ワイヤにかかっていた張力が解放され、その張力の解放により揺動部材の右側の切断検出プレートが押し上げられ、切断検出プレートがスイッチレバーの先端のローラに接触し、スイッチレバーがスイッチ本体に対して回転することから、スイッチ本体が、揺動部材右側のワイヤの切断を検出することができる。また、この揺動部材の左側のワイヤが切断等する際は、ワイヤにかかっていた張力が解放され、その張力の解放により揺動部材の左側の切断検出プレートが押し上げられ、それにより、切断検出プレートがブラケット固定レバーの先端の揺動部材左端に位置するローラに接触する。これにより、揺動部材中央部にある中央ピンを支軸として、揺動部材全体が時計回りに回転し、これにより、揺動検出スイッチのスイッチレバーの先端にあるローラが、揺動部材右側の切断検出プレートに接触し、スイッチ本体に対してスイッチレバーが反時計回りに揺動する。そして、スイッチレバーがスイッチ本体に対して回転することから、スイッチ本体が、揺動部材の左側のワイヤの切断を検出することができる。よって、左右対称にブームに固定された二本のワイヤの切断を一つの揺動検出スイッチで検出することができるため、ワイヤの切断を検出するために必要な揺動検出スイッチにかかるコストを低下させることができるとともに、揺動検出スイッチ一つ分のブーム内の占有スペースを開放でき、またブームの軽量化を図ることができる。
【0010】
また、ブラケットと切断検出プレートの間に揺動付勢手段を挿入し、切断検出プレートに付勢力を加えるような構成とすることで、ワイヤの切断による張力の解放が確実に切断検出プレートに伝えられるため、より確実にワイヤの切断を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明に係る伸縮ブームのワイヤ切断検出装置を備えた高所作業車1を図1に示している。この高所作業車1は、前後輪2a、2bを有して走行可能であり、前部に運転キャブ3aを有したトラック車両をベースに構成される。このトラック車両の車体3の上に図示しない旋回モータ(油圧モータ)により駆動されて水平旋回可能に構成された旋回台4が配設されている。この旋回台4に基端部が枢結されて伸縮ブーム5が取り付けられている。この伸縮ブーム5は起伏シリンダ6により起伏動されるようになっている。伸縮ブーム5は、基端ブーム5a、中間ブーム5bおよび先端ブーム5cを入れ子式に組み合わせて、内蔵の伸縮シリンダ7により伸縮動可能に構成されている。
【0012】
先端ブーム5cは先端にブームヘッド5dを有し、このブームヘッド5dに枢結されて支持部材8が上下に揺動可能に取り付けられている。この支持部材8は垂直ポスト部(図示せず)を有し、ブームヘッド5dと支持部材8との間に配設されたレベリングシリンダ(図示せず)により支持部材8の揺動制御が行われ、伸縮ブーム5の起伏の如何に拘わらず垂直ポスト部が常に垂直に延びて位置するように支持部材8が揺動制御される。このように常時垂直に保持される垂直ポスト部に水平旋回自在に(首振り自在に)作業台9が取り付けられており、作業台9は伸縮ブーム5の起伏に拘わらず常に水平に保持される。
【0013】
なお、車体3の前後左右の四カ所に下方に伸縮自在なアウトリガ10が設けられており、高所作業を行うときには、図示のようにアウトリガ10を下方に張り出して車体3を持ち上げ支持できるようになっている。
【0014】
ここで、上記のような高所作業車1を構成する伸縮ブーム5の断面側面図を図2および図3に示しており、図2には伸縮ブーム5が縮小している状態が、図3には伸縮ブーム5が伸長している状態がそれぞれ示されている。まずこれらの図を参照して図中に示された方向矢印を基準に伸縮ブーム5の構成について説明する。
【0015】
前述したように伸縮ブーム5は、基端ブーム5aと、中間ブーム5bと先端ブーム5cとが入れ子式に配設されて構成される。これら基端ブーム5a、中間ブーム5b、先端ブーム5cはそれぞれ中空柱状に形成されており、これらの部材の内部を前後に連通する空間Sには伸縮シリンダ7、シーブ機構Mが配設されている。
【0016】
伸縮ブーム5内(空間S)に設置された伸縮シリンダ7は、シリンダチューブ7aとピストンロッド7bとが伸縮動可能に組み付けられて構成され、このシリンダチューブ7aは、先端側(図面左側)が先端ブーム5c内に前後移動可能に位置して後端側がチューブ支軸11により中間ブーム5b基端部に枢結されており、ピストンロッド7bは、伸縮ブーム5の基端側(図面右側)に延びてその端部がロッド支軸12により基端ブーム5aの基端部に枢結されて構成されている。そしてこの伸縮シリンダ7が伸縮することで中間ブーム5bの基端ブーム5aに対する伸縮作動が行われる。
【0017】
シーブ機構Mは、伸長機構M1と縮小機構M2とからなり、基端ブーム5aと先端ブーム5cを、中間ブーム5bを介して連結させて、これらの伸縮作動を可能にする。伸長機構M1は、伸縮シリンダ7のシリンダチューブ7a先端に左右軸に回転自在に設けられた第1滑車13と、基端ブーム5aに固設された第1ワイヤ接合部20および先端ブーム5cに固設された共通ワイヤ接合部16に連結する第1ワイヤとから構成される。また、縮小機構M2は、中間ブーム5bに固設された第2滑車17と、基端ブーム5aの先端側(図面左側)に固設された第2ワイヤ接合部19および先端ブーム5cに固設された共通ワイヤ接合部16に連結する第2ワイヤ18とから構成される。また、第1ワイヤ14、第2ワイヤ18は共にワイヤ切断時の安全性を考慮し、左右対称に2本接続されている。
【0018】
上記のように構成された伸縮ブーム5の作用について、図2から図3に示すように伸縮ブーム5を縮小状態から伸長状態に作動させる場合について説明する。まず伸縮シリンダ7への油圧供給を制御してこの伸縮シリンダ7を伸長させる。すると、ピストンロッド7bは基端ブーム5aに連結されていることから、シリンダチューブ7aおよびこれに連結される中間ブーム5bが基端ブーム5aに対して先端側(前方)に移動する。このとき、シリンダチューブ7aの先端に設けられた第1滑車13がこれに巻き掛けられた第1ワイヤ14を前方に押し出し、この第1ワイヤ14の一端側は基端ブーム5aに連結されて固設されていることから、第1ワイヤ14の他端側が連結された先端ブーム5cが前方に引張られて移動する。なお滑車の原理により、基端ブーム5aを基準にした先端ブーム5cの前方への移動量は、伸縮シリンダ7およびこれに連結された中間ブーム5bの前方への移動量の二倍になる。これにより、先端ブーム5cは中間ブーム5bより、中間ブーム5bは基端ブーム5aより、それぞれ前方に同じ長さ分突出して移動し、伸縮ブーム5の伸長が行われる。
【0019】
次に、図3から図2に示すように伸縮ブーム5を伸長状態から縮小状態に作動させる場合について説明する。まず伸縮シリンダ7への油圧供給を制御してこの伸縮シリンダ7を縮小させる。すると、ピストンロッド7bは基端ブーム5aに連結されていることから、シリンダチューブ7aおよびこれに連結される中間ブーム5bが基端ブーム5aに対して基端側(後方)に移動する。このとき、中間ブーム5bの基端側に設けられた第2滑車17がこれに巻き掛けられた第2ワイヤ18を後方に押し出し、この第2ワイヤ18の一端側は基端ブーム5aの先端側に連結されて固設されていることから、第2ワイヤ18の他端側が連結された先端ブーム5cが後方に引張られて移動する。なお滑車の原理により、基端ブーム5aを基準にした先端ブーム5cの後方への移動量は、伸縮シリンダ7およびこれに連結された中間ブーム5bの後方への移動量の二倍になる。これにより、先端ブーム5cは中間ブーム5bより、中間ブーム5bは基端ブーム5aより、それぞれ後方に同じ長さ分移動し、先端ブーム5c、中間ブーム5bは基端ブーム5aに格納され、伸縮ブーム5の縮小が行われる。
【0020】
また、第1ワイヤ14の一端が接続されているワイヤ接合部20は、図4に示すように、基端ブーム5aに固設されたブラケット21、皿バネ22、切断検出プレート23(24)、ワイヤ14を接合しているナット25を主体として構成されており、ワイヤ14は、基端ブーム5aに固設されたブラケット21を貫通しているが、ブラケット21に固定されているわけではなく、前後方向に移動可能な状態になっている。ブラケット21を貫通したワイヤ14は、更に、皿バネ22、切断検出プレート23(24、切断検出プレートは左右対称に1枚ずつあるので、以下、右側のプレートを23、左側のプレートを24と称する)を貫通し、ナット25により固定されている。皿バネ22および切断検出プレート23(24)は、ブラケット21とナット25の間に挿入されているが、皿バネ22は、ワイヤ14の張力を受けて圧縮された状態になっており、切断検出プレート23(24)は、皿バネ22により、常に基端側(図4における右側)に付勢された状態となっている。また、例えば後述のようにワイヤ14が切断する等してワイヤ14の張力が解放されると、皿バネ22がワイヤ14の張力が解放されるので、切断検出プレート23(24)を基端側(図5における上方向)に揺動させる付勢力を切断検出プレート23(24)に加えるようになっている。
【0021】
以上のように概略構成される高所作業車1において、ワイヤは、ブームを伸縮動させ、またその伸縮の状態を維持するのに重要な役割を担っており、万が一ブームの伸縮時にワイヤが切断されると、ブームが予期せず縮小する等の誤動作を起こす虞がある。そこで、上述したように、切断時の安全性を確保するためワイヤは左右対称に2本接続されているわけであるが、ワイヤを左右対称に2本使用する場合、そのうちの1本が切断されたとしても、その切断を検知できず、十分な安全性を確保できないという問題がある。そこで、左右対称に2本接続されているワイヤのうち1本が切断されたときにでも、すぐにその切断を検知できるよう、本発明に係るワイヤ切断検出装置30が設けられている。ここで、図5、図6、図7、図8、図9を参照しながら、図中に示された方向矢印を基準に、ワイヤ切断検出装置30について説明する。ワイヤ切断検出装置30は、上述したワイヤ接合部20、また、後述する揺動部材31、高所作業車制御機構50を主体として構成されている。
【0022】
まず、揺動部材31は、揺動検出スイッチ32、スイッチ固定用ブラケット33、ブラケット固定レバー34、ローラ35を主体として構成される。なお、揺動部材31は、ロックナット36により、基端ブーム5aに回転自在な状態で固定されており、外力を受けると中央ピン37を支軸として回転可能な状態になっている。
【0023】
また、揺動部材31の一部である、ワイヤの切断を検知する揺動検出スイッチ32は、いわゆるローラーレバー形のリミットスイッチであり、図5に示すように、スイッチ本体32a、スイッチレバー32b、ローラ32cを主体に構成されている。なお、揺動検出スイッチ32は、基端ブーム5aにおける、切断検出プレート23(24)より基端側に位置するようになっている。スイッチレバー32bは、スイッチ本体32aから基端ブーム5aの外筐側(図5における右側)へ延びる板状に構成されており、左端を揺動軸として揺動可能な状態になっている。揺動検出スイッチ32は、スイッチレバー32bが回転していない状態ではオフ状態になっているが、ローラ32cが切断検出プレート23に当接されてスイッチレバー32bが所定角度回転すると、オン状態になるようになっている。
【0024】
なお、図5に示すように、揺動検出スイッチ32、ブラケット固定レバー34は、スイッチ固定用ブラケット33に固定されている。揺動検出スイッチ32におけるスイッチレバー32bとブラケット固定レバー34は、基端ブーム5aにおける、切断検出プレート23(24)より基端側に位置するようになっている。ローラ35は、揺動アーム部34bの先端部(揺動側端部)にあるローラ取付部34aに取り付けナット等を用いて回転自在に取り付け保持されており、また、図5における左側のワイヤ14が切断される等して、ワイヤ14の張力が解放される場合に、切断検出プレート24により接触される構成となっている(詳細は後述)。
【0025】
ワイヤが切断され、揺動検出スイッチ32にてワイヤの切断を検出したときに作動制御を行う高所作業車制御機構50について、図9を参照して説明する。高所作業車制御機構50は、コントローラ51と、コントローラ51と電気的に接続されておりワイヤ切断時にコントローラ51に切断検出信号を入力する揺動検出スイッチ32と、ワイヤ切断検出時に警報を発する警報装置52と、ワイヤ切断検出時にブーム伸縮作動を規制させる作動停止装置53とから構成されている。
【0026】
以上のように構成されるワイヤ切断検出装置30において、図5、図6を用いて右側のワイヤ14が切断されたときの、切断検出方法について説明する。まず、右側のワイヤ14が切断されると、切断検出プレート23にワイヤ14の張力が作用しなくなり、図6に示すように、切断検出プレート23が皿バネ22の付勢力を受けて基端方向に揺動変位する。それに伴い、ローラ32c、スイッチレバー32bが、左端の揺動軸部を支軸として反時計回りに揺動変位する。そして、スイッチレバー32bが所定検出位置に揺動変位すると、スイッチ本体32aがオン状態となり、揺動検出スイッチ32が高所作業車制御機構50におけるコントローラ51に切断検出信号を出力する。コントローラ51は、揺動検出スイッチ32から切断検出信号が入力されると、警報装置52に警報作動を行わせる警報作動信号を出力したり、作動停止装置53にブーム伸縮作動規制信号を出力したりするようになっている。これにより、図5における右側のワイヤ14の切断を確実に検知することができる。
【0027】
また、図5における右側のワイヤ14が切断されて伸縮ブーム5内の構造物等に引っ掛かった場合でも、切断検出プレート23にワイヤ14の張力が一時作用しなくなることにより、切断検出プレート23が、皿バネ22の付勢力を受けて基端側(図5における上方向)に揺動変位する。それに伴い、ローラ32cおよびスイッチレバー32bが左端の揺動軸部を支軸として反時計回りに揺動変位することから、ワイヤ14の切断を確実に検知することができる。
【0028】
また、ワイヤが切断されていない際は、ワイヤ14がワイヤ接合部20から先端側に繰り出され、先端側に繰り出されたワイヤ14が第1滑車13に掛け回されて方向を反転させ基端側に延出されるように構成されることで、切断検出プレート23にワイヤ14の張力が確実に作用しているため、図5における右側のワイヤ14の切断検出における誤検出を防止することができる。
【0029】
また、図5、図7を用いて左側のワイヤ14が切断されたときの、切断検出方法について説明する。まず、左側のワイヤ14が切断されると、切断検出プレート24にワイヤ14の張力が作用しなくなり、図7に示すように、切断検出プレート24が皿バネ22の付勢力を受けて、基端側(図5における上方向)に揺動変位する。それに伴い、ローラ35は、切断検出プレート24からの基端方向への付勢力を受けて、揺動部材31が、中央ピン37を支軸として時計回りに揺動変位する(図7参照)。そして、揺動部材31が揺動変位すると、揺動部材31の右側端が中央ピン37を中心に時計回りに回転し、先端側(図7における下側)に揺動変位する。この時点で、ローラ32cがプレート23に接触し、ローラ32cとスイッチレバー32bが、スイッチ本体32aに対し、左端の揺動軸部を支軸として反時計回りに揺動変位する。この際、スイッチ本体32aがオン状態となり、揺動検出スイッチ32が、高所作業車制御機構50におけるコントローラ51に切断検出信号を出力する。コントローラ51は、揺動検出スイッチ32から切断検出信号が入力されると、警報装置52に警報作動を行わせる警報作動信号を出力したり、作動停止装置53にブーム伸縮作動規制信号を出力したりするようになっている。これにより、図5における左側のワイヤ14の切断を確実に検知することができる。
【0030】
また、図5における左側のワイヤ14が切断されて伸縮ブーム5内の構造物等に引っ掛かった場合でも、切断検出プレート24にワイヤ14の張力が一時作用しなくなることにより、切断検出プレート24が皿バネ22の付勢力を受けて基端側(図5における上方向)に揺動変位する。それに伴いローラ35は、切断検出プレート24からの基端方向への付勢力を受けて、揺動部材31が中央ピン37を支軸として時計回りに揺動変位する(図7参照)。そして、揺動部材31が揺動変位すると、揺動部材31の右側端が中央ピン37を中心に時計回りに回転し、先端側(図7における下側)に揺動変位する。この時点で、ローラ32cがプレート23に接触し、ローラ32cとスイッチレバー32bが、スイッチ本体32aに対し、左端の揺動軸部を支軸として反時計回りに揺動変位する。この際、スイッチ本体32aがオン状態となり、揺動検出スイッチ32が、高所作業車制御機構50におけるコントローラ51に切断検出信号を出力する。コントローラ51は、揺動検出スイッチ32から切断検出信号が入力されると、警報装置52に警報作動を行わせる警報作動信号を出力したり、作動停止装置53にブーム伸縮作動規制信号を出力したりするようになっている。これにより、図5における左側のワイヤ14の切断を確実に検知することができる。
【0031】
また、ワイヤが切断されていない際は、ワイヤ14がワイヤ接合部20から先端側に繰り出され、先端側に繰り出されたワイヤ14が第1滑車13に巻き掛けられて方向を反転させ基端側に延出されるように構成されることで、切断検出プレート24にワイヤ14の張力が確実に作用しているため、図5における左側のワイヤ14の切断検出における誤検出を防止することができる。
【0032】
上記のような構成により、左右対称にブームに固定された二本のワイヤ14の切断を一つの揺動検出スイッチ32で検出することができるため、ワイヤ14の切断を検出するために必要な揺動検出スイッチ32にかかるコストを低下させることができるとともに、揺動検出スイッチ32一つ分の基端ブーム5a内の占有スペースを開放でき、また伸縮ブーム5の軽量化を図ることも可能となる。
【0033】
上述の実施形態において、ワイヤ切断検出装置30を備えたワイヤとして第1ワイヤ14(伸長機構M1)を例に説明したが、これに限られるものではなく、第2ワイヤ18(縮小機構M2)の切断検知においても、第2ワイヤ接合部19付近にワイヤ切断検出装置30を配設することで、同様の効果を得ることができる。
【0034】
上述の実施形態において、スイッチレバー32bが所定検出位置に揺動変位したときにスイッチ本体32aがオン状態となるように構成されているが、これに限られるものではなく、スイッチレバー32bが所定検出位置に揺動変位したときにスイッチ本体32aがオフ状態になるように構成されてもよい。
【0035】
また、上述の実施形態において、本発明に係る揺動検出器(揺動検出スイッチ)としてローラーレバー形のリミットスイッチが用いられているが、これに限られるものではなく、例えば、ビームセンサや近接センサ等を用いるようにしてもよい。
【0036】
さらに、上述の実施形態において、伸縮ブーム5が、基端ブーム5a、中間ブーム5bおよび先端ブーム5cの3つのブームから構成されているが、これに限られるものではなく、伸縮ブームは複数のブームを入れ子式に組み合わせて伸縮動可能に構成されていればよい。特に、伸縮シリンダの伸縮作動に伴って中間ブームおよび先端ブームが伸縮動するように構成された伸縮ブームに対して有効である。
【0037】
また、上述実施形態において、本発明に係るワイヤ切断検出装置を備えた作業車として高所作業車1を例に説明したが、これに限られるものではなく、例えば、クレーン車や穴掘り建柱車等にも、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る伸縮ブームのワイヤ切断検出装置を備えた高所作業車の側面図である。
【図2】本発明に係る伸縮ブームの側面図であり、ブーム縮小状態を示している。
【図3】本発明に係る伸縮ブームの側面図であり、ブーム伸長状態を示している。
【図4】ワイヤ切断検出装置周辺における、ワイヤが接続されている接合部周辺の詳細図である。
【図5】ワイヤ切断検出装置を基端ブーム下部から見た断面図である。
【図6】ワイヤ切断検出装置を基端ブーム下部から見た断面図であり、右側のワイヤ14が切断された状態を示している。
【図7】ワイヤ切断検出装置を基端ブーム下部から見た断面図であり、左側のワイヤ14が切断された状態を示している。
【図8】図1のA−A線におけるワイヤ切断検出装置を基端側から見た要部断面図である。
【図9】ワイヤ切断時に作動する高所作業車制御機構のブロック図である。
【符号の説明】
【0039】
1 高所作業車
5 伸縮ブーム
5a 基端ブーム
5b 中間ブーム
5c 先端ブーム
5d ブームヘッド
7 伸縮シリンダ
7a シリンダチューブ
7b ピストンロッド
11 チューブ支軸
12 ロッド支軸
13 第1滑車
14 第1ワイヤ
16 共通ワイヤ接合部
17 第2滑車
18 第2ワイヤ
19 第2ワイヤ接合部
20 第1ワイヤ接合部
21 ブラケット
22 皿バネ
23 ワイヤ切断検出プレート
24 ワイヤ切断検出プレート
30 ワイヤ切断検出装置
31 揺動部材
32 揺動検出スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3本のブーム部材を入れ子式に組み合わせて伸縮動可能に構成され、
前記ブーム部材のうちの第1のブーム部材に対して第2のブーム部材を伸縮動させる伸縮アクチュエータと、
前記伸縮アクチュエータによる前記第2のブーム部材の伸縮動に応じて第3のブーム部材を伸縮させるために、一端が前記第1のブーム部材に結合されるとともに前記第2のブーム部材もしくは前記アクチュエータに設けられた滑車に巻き掛けられて他端が前記第3のブーム部材に結合された伸縮ワイヤとを備えた伸縮ブームにおける前記伸縮ワイヤの切断検出装置であって、
前記伸縮ブームの内部に幅方向に並んで左右一対の前記伸縮ワイヤが配設されており、
前記伸縮ワイヤを前後に移動可能な状態で貫通させた状態で、前記第1もしくは第3のブーム部材に固設されているブラケットと、
前記ブラケットを貫通した前記伸縮ワイヤの端部に取り付けられた切断検出プレートとからなる左右一対のワイヤ結合部と、
前記左右一対のワイヤ結合部の間に回動自在に設けられた揺動部材と、前記揺動部材の一端側に取り付けられたリミットスイッチとを備え、
前記揺動部材の他端側が切断検出プレートの前記ワイヤの張力を受ける方向と反対側の面と近接し、前記リミットスイッチのスイッチアーム部が前記切断検出プレートの前記ワイヤの張力を受ける方向と反対側の面と近接するように配設されたことを特徴とする伸縮ブームにおけるワイヤ切断検出装置。
【請求項2】
前記切断検出プレートと前記ブラケットの間に揺動付勢手段が挿入され、前記揺動付勢手段が、前記ワイヤの張力を受けて前記切断検出プレートに付勢力を加えることを特徴とする請求項1に記載の伸縮ブームにおけるワイヤ切断検出装置。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−292584(P2009−292584A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147287(P2008−147287)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000116644)株式会社アイチコーポレーション (168)
【Fターム(参考)】