説明

伸縮ブーム付きクレーン装置

【課題】伸縮ブーム付きクレーン装置において、テンション部材の張力調整を行なう張力調整シリンダと周囲構造物とが干渉しないようにする。
【解決手段】伸縮ブーム付きクレーン装置において、伸縮ブーム3の背面側において立設・格納可能とされたマスト4と、マスト4の先端部4bと伸縮ブーム3の基端部3bの間に配置される第1テンション部材7と、マスト4の先端部4bと伸縮ブーム3の先端3aの間に配置される第2テンション部材8と、第2テンション部材8の張力調整を行なう張力調整シリンダ15を備えるとともに、該張力調整シリンダ15がマスト4と平行を維持するようにしてマスト4側に配置されていることにより、該張力調整シリンダ15と周囲構造物とが干渉しないようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、伸縮ブームの撓み変形に対する補強手段を講じた伸縮ブーム付きクレーン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伸縮ブーム、特に長大な全伸長さをもつ伸縮ブームを備えたクレーン装置においては、該伸縮ブームの自重及び吊荷重による撓み変形を抑制して作業上の安全性を高める等の観点から、該伸縮ブームにその撓み変形に対する補強手段を講じることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のものは、伸縮ブームの基端側ブームの背面(上面)に張設台を配置し、該張設台の基端部に配置されたウィンチから繰り出されたワイヤロープを、上記張設台の外側を通って該張設台の先端に設けたシーブに掛け回すようになっている。
【0004】
また、張設台と基端側ブームの端部との間に張設されたロープには、張力調整用引張シリンダが取付けられている。この引張シリンダは、基端側ブームの基端部において姿勢変位し得る状態で取付けられていて、クレーン装置の組立作業時(例えば張設台の装着・98組立過程)において該引張シリンダの姿勢が変化するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57−184092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に示されるものでは、上記引張シリンダが自由に姿勢変位する構造であって、クレーン装置の組立作業時等において引張シリンダが姿勢変位すると、該引張シリンダが周囲の構造物と干渉して損傷するという恐れあった。
【0007】
そこで本願発明は、伸縮ブーム付きクレーン装置において、クレーン装置の組立作業時等において張力調整シリンダと周囲構造物とが干渉しないようにすることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0009】
本願発明では、車両1上に旋回台2を介して伸縮ブーム3を起伏自在に取付けてなる伸縮ブーム付きクレーン装置において、上記伸縮ブーム3に基端部4aが連結されて該伸縮ブーム3の背面側において立設・格納可能とされたマスト4と、上記マスト4の先端4bと上記伸縮ブーム3の基端部3bの間に配置される第1テンション部材7と、上記マスト4の先端4bと上記伸縮ブーム3の先端3aの間に配置される第2テンション部材8と、上記第2テンション部材8の張力調整を行なう張力調整シリンダ15を備えるとともに、上記張力調整シリンダ15が、上記マスト4と平行を維持するようにして該マスト4側に配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本願発明に係る伸縮ブーム付きクレーン装置によれば、上記マスト4の先端4bと上記伸縮ブーム3の先端3aの間に配置される第2テンション部材8の張力調整を行なう張力調整シリンダ15が、上記マスト4と平行を維持するようにして該マスト4側に配置されているので、例えば、上記張力調整シリンダ15が自由に移動可能とされた従来構造のような上記マスト4の装着・組立過程における上記張力調整シリンダ15と周囲構造物との干渉が未然に且つ確実に回避されるという効果がある
【0011】
また、上記マスト4はその格納状態では上記伸縮ブーム3と略平行な姿勢をとるように姿勢設定されるのが通例であるが、その場合、上記張力調整シリンダ15が、上記マスト4と平行を維持するようにして該マスト4側に配置されているので、上記マスト4を格納した姿勢において上記張力調整シリンダ15が該マスト4から上方へ延出するということがなく、クレーン装置の構内走行姿勢における全高を低く抑えることができ、クレーン装置の構内走行において有利であるという効果もある
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本願発明の実施の形態に係るクレーン車の全体側面図である。
【図2】図1に示したクレーン車の走行状態図である。
【図3】図1に示したクレーン車におけるマスト張出状態図である。
【図4】図3のIV−IV拡大矢視図である。
【図5】図4のV−V拡大矢視図である。
【図6】図5のVI−VI拡大矢視図である。
【図7】図2のVII−VII部の拡大図である。
【図8】図1のVIII部の拡大図である。
【図9】図8のIX−IX矢視図である。
【図10】伸縮テンション部材の取り回し図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1には、本願発明に係る伸縮ブーム付きクレーン装置の実施形態としてのクレーン車Zを示している。先ず、このクレーン車Zの全体構成を概説する。
【0014】
上記クレーン車Zは、車両1上に搭載された旋回台2に伸縮ブーム3の基端部3bを連結し、該伸縮ブーム3を上記旋回台2との間に配置したブーム起伏シリンダ9によって起伏動させるとともに、上記伸縮ブーム3の基端ブーム3Aの先端部3Aaに立設されたマスト4の先端4bと上記伸縮ブーム3の基端部3bを左右一対の第1テンション部材7によって連結するとともに、上記マスト4の先端4bと上記伸縮ブーム3の先端部3a、即ち、先端ブーム3Eの先端部3Eaを第2テンション部材8によって連結し、これら第1テンション部材7と第2テンション部材8の張力によって上記伸縮ブーム3の縦方向(起伏面に沿う方向)の撓み変形を抑制するようになっている。
【0015】
また、上記伸縮ブーム3の先端ブーム3Eの先端部3Eaには、アーム部材5が着脱可能とされ、上記伸縮ブーム3の縦方向の撓み変形と同時に、その横方向(起伏面に直交する方向)の撓み変形をも抑制したい場合には、上記第2テンション部材8の先端を上記アーム部材5側に係止させる。尚、上記アーム部材5の先端には、ジブ6が着脱自在に取付可能とされている。
【0016】
図2には、上記クレーン車Zの構内走行姿勢を示している。この構内走行姿勢では、上記伸縮ブーム3は全縮で最倒伏され、上記マスト4は上記伸縮ブーム3の背面(上面)側において伸縮ブーム3に沿うように倒伏されている(以下、このときの上記マスト4の姿勢を「格納姿勢」という)。また、上記第1テンション部材7は、一部折曲状態で上記伸縮ブーム3に沿って格納されている。さらに、上記第2テンション部材8は、その一部を構成するテンションワイヤ11が上記マスト4側に設けたウィンチ14に巻き取られた状態で該マスト4に沿って格納されている。
【0017】
図3には、図2に示す構内走行姿勢の状態から、マスト起伏シリンダ10によって上記マスト4を立設させた状態を示している(この時の上記マスト4の姿勢を「立設姿勢」という)。このマスト4の立設姿勢では、上記第1テンション部材7が展伸して上記伸縮ブーム3の基端部3bと上記マスト4の先端部4bの間に張設されるとともに、上記第2テンション部材8はそのテンションワイヤ11が上記ウィンチ14に巻き込まれた状態で上記伸縮ブーム3の先端部3aと上記マスト4の先端部4bの間に張設されており、これら両者の張力によって上記マスト4は立設姿勢を維持している。この状態から、上記伸縮ブーム3が伸長されると、これに追従して上記第2テンション部材8のテンションワイヤ11が上記ウィンチ14から繰り出され、上記伸縮ブーム3の伸長量に拘らず、上記第1テンション部材7と第2テンション部材8の張力によって上記マスト4は立設姿勢を維持する(図1参照)。
【0018】
続いて、上記クレーン車Zの各部の構造等をそれぞれ個別に説明する。
【0019】
(a)伸縮ブーム3
上記伸縮ブーム3は、図3に示すように、基端ブーム3Aと三つの中間ブーム3B〜3Dと先端ブーム3Eを順次テレスコ状に入れ合わせて構成された4段伸縮式ブームであって、上記基端ブーム3Aの基端部3Abが上記旋回台2側に連結されている。この基端ブーム3Aの基端部3Abには、相互に折曲・展伸自在とされた4本のテンションロッド7A〜7Dでなる第1テンション部材7の一端が連結されている。
【0020】
また、図3、図4及び図7に示すように、上記基端ブーム3Aの先端部3Aaの上部両側部にはマスト固定ブラケット29、29が設けられ、該各マスト固定ブラケット29,29には後述するマスト4の左右の基端部4a,4aが連結される。
【0021】
一方、上記先端ブーム3Eの先端部の左右両側面には、図3、図4、図8及び図9に示すように、後述する第2テンション部材8の先端部材33が係止される係止固定部31が設けられている。また、この先端ブーム3Eの先端側には、次述のアーム部材5が着脱自在に取付けられるとともに、該アーム部材5の先端側にはジブ6が着脱自在に取付けられる。
【0022】
(b)アーム部材5
上記アーム部材5は、図8及び図9に示すように、左右一対の延出部5A,5Bを備え、該各延出部5A,5Bの先端には、上記第2テンション部材8側の先端部材33が係止可能な係止固定部32がそれぞれ設けられている。尚、この左右一対の係止固定部32、32の間隔は、上記伸縮ブーム3の先端ブーム3E側に設けられた左右一対の係止固定部31,31の間隔よりも大きく設定されている。
【0023】
(c)マスト4
上記マスト4は、図4に示すように、左右一対のマスト本体41,41とこれら各マスト本体41,41同士をその先端側において継材42で連結してなる略門形の形体をもち、該各マスト本体41,41の基端部(即ち、上記マスト4の基端部4a)が上記先端ブーム3E側の各マスト固定ブラケット29,29に連結されることで、該連結部を回動中心として前後方向(上記伸縮ブーム3の起伏面に沿う方向)へ回動可能とされ、上記伸縮ブーム3との間に配置されたポスト起伏シリンダ10の伸縮作動によって、格納姿勢と立設姿勢の何れかに選択的に姿勢設定される。
【0024】
上記マスト4の上記各マスト本体41、41の基端寄り部位、即ち、上記マスト4の基端4a寄り部位には、図4及び図7に示すように、油圧モータ23により回転駆動されるウィンチ14が、側面視において、そのドラム14aの一部を該マスト4に重合させた状態で、且つ該マスト4の背面4d側(マスト4の格納姿勢において上記伸縮ブーム3に対向する側)へ露出状態で、それぞれ配置されている。そして、これら各ウィンチ14、14のドラム14aから繰り出されるテンションワイヤ11は、該ドラム14aの軸心よりも上記マスト4の前面4c寄り側から繰り出されるようになっている。従って、上記各ウィンチ14、14の上記各ドラム14a、14aからそれぞれ繰り出される各テンションワイヤ11、11は、常に上記マスト4の内部を通過することになる。
【0025】
また、上記ウィンチ14の鍔部14bの外周面にはラッチ爪19が設けられている。そして、このラッチ爪19には、該鍔部14bの径方向外方に配置されてロックシリンダ21により傾動操作されるラッチアーム20の先端が選択的に係入可能とされ、該ラッチアーム20の係入状態において上記ウィンチ14の繰出し方向への作動が規制されるようになっている。
【0026】
一方、上記マスト4の先端部4b、即ち、上記各マスト本体41,41の先端部には、図4〜図6に示すように、それぞれ二枚の先端シーブ16,17が、上記マスト4の起伏面に直交する方向に延びるシーブ支持軸28によって回転自在に支承されている。さらに、上記シーブ支持軸28には、該シーブ支持軸28回りに揺動可能に揺動ブラケット25が取付けられるとともに、該揺動ブラケット25には左右一対のガイドシーブ26,27が、その対向隙間部分が上記一対のマスト先端シーブ16,17のうち、マスト幅方向外側に位置する第2先端シーブ17の受溝の略延長上に位置するようにして取付けられている。また、上記揺動ブラケット25の第1先端シーブ16の側方位置には、シーブ軸線と略平行に延びるガイドピン18が、マスト幅方向内側に位置する第1先端シーブ16の受溝の延長上から僅かに幅方向内側へ外れるようにして取付けられている。尚、この実施形態では、上記揺動ブラケット25に上記一対のガイドシーブ26,27と上記ガイドピン18を取付けることで、「ガイド機構24」を構成している。
【0027】
また、図4及び図5に示すように、上記マスト4の上記各マスト本体41,41の外側面4eの下部には、張力調整シリンダ15が取付けられている。この張力調整シリンダ15は、そのロッド端を上記マスト4の先端4b側に向けた状態で、該マスト4と略平行となるようにして固定配置されている。この場合、上記張力調整シリンダ15の上記マスト4に対する相対的な取付位置は、該張力調整シリンダ15の軸線が、上記マスト4の背面4d側において上記第2先端シーブ17のピッチ円に略接するように設定されている。
【0028】
ここで、図4〜図9のほか、図10を参照して、上記ウィンチ14から繰出される上記テンションワイヤ11の巻き掛け形態を説明する。上記ウィンチ14のドラム14aから繰出される上記テンションワイヤ11は、上記マスト4の内部を通過して該マスト4の先端4b側へ引き出され、該先端4b側において上記第1先端シーブ16にその下側から上側へ向けて巻き掛けられたのち、上記マスト4の基端4a側へ引き出され、次述する折返しシーブ12において折り返され、上記第2先端シーブ17にその上側から下側へ向けて巻き掛けられる。そして、上記第2先端シーブ17の下側から上記マスト4の基端4a側へ引き出された上記テンションワイヤ11は、先端部材35を介して上記張力調整シリンダ15のロッド端に連結される。
【0029】
従って、上記ウィンチ14が巻き込み側へ回転することで、上記テンションワイヤ11を介して上記折返しシーブ12は上記マスト4の先端4b側へ引き寄せられ、逆に、上記ウィンチ14が繰出し側へ回転することで、上記テンションワイヤ11を介して上記折返しシーブ12は上記マスト4の先端4bから離間する方向へ移動することになる。
【0030】
このような上記折返しシーブ12の移動を上記伸縮ブーム3の伸縮動作に連動させ、上記マスト4の先端4bと上記伸縮ブーム3の先端3aの間に所要の張力を付与させるべく、上記折返しシーブ12には次述のテンションワイヤ13が取付けられている。
【0031】
上記テンションワイヤ13は、図4〜図5に示すように、その一端に先端部材33を、他端に先端部材34を、それぞれ備えた所定長さのロッド体で構成される。そして、上記一方の先端部材33を上記伸縮ブーム3の先端ブーム3E側に設けた上記係止固定部31(図8参照)に係止し、他方の先端部材34を上記折返しシーブ12を保持するシーブブラケット36に連結している。尚、上記テンションワイヤ13の一方の先端部材33は、既述のように、上記伸縮ブーム3側の係止固定部31と上記アーム部材5側の係止固定部32に対して選択的に係止し得るものである。
【0032】
この実施形態においては、上記テンションワイヤ11と上記テンションワイヤ13によって特許請求の範囲中の「第2テンション部材8」が構成されている。尚、この実施形態では上記第2テンション部材8を構成する二つのテンション材11,13を共にワイヤで構成しているが、本願発明の他の実施形態では、上記テンションワイヤ13をロッドで構成し、「テンションロッド13」とすることもできる。
【0033】
一方、上記張力調整シリンダ15は、その伸縮によって上記各先端シーブ16,17と上記折返しシーブ12の距離を調整する機能をもつものであり、上記マスト4の各マスト本体41,41にそれぞれ設けられた上記各張力調整シリンダ15,15の伸縮調整によって、左右一対の上記第2テンション部材8,8間の張力の不均衡を調整することができる。
【0034】
(d)クレーン車Zの作動等
次に、上述の如く構成されたクレーン車Zの操作及び特有の作用効果等について説明する。
【0035】
上記クレーン車Zにおいては、構内走行時には図2に示すように、上記伸縮ブーム3を全縮状態で最倒伏させるとともに、上記マスト4を格納姿勢に設定する。この構内走行姿勢から、上記伸縮ブーム3を使用してのクレーン作業に移る場合には、先ず図3に示すように、上記マスト4を上記ポスト起伏シリンダ10によって格納姿勢から立設姿勢に姿勢変更し、これを上記第1テンション部材7と第2テンション部材8によって前後から支持する。しかる後、上記伸縮ブーム3を起仰させるとともに、伸長させて、図1に示す作業姿勢とし、この作業姿勢においてクレーン作業が行なわれるものである。この作業姿勢においては、上記伸縮ブーム3の自重あるいは吊荷重による縦方向の撓み変形は、上記第1テンション部材7と第2テンション部材8の張力によって支持される。
【0036】
尚、上記伸縮ブーム3の縦方向の撓み変形の抑制のみならず、例えば、上記伸縮ブーム3の先端3a側にさらに上記ジブ6を装着して作業を行なう場合のように、上記伸縮ブーム3の縦方向の撓み変形のみならず、その横方向の撓み変形をも抑制する必要があるときには、上記伸縮ブーム3の先端3aに上記アーム部材5を装着し、該アーム部材5に設けた上記係止固定部32に上記第2テンション部材8の先端、即ち、上記テンションワイヤ13の先端に設けた上記先端部材33を係止する。
【0037】
このように操作されるクレーン車Zにおいては、上述の如き特有の構成によって、以下のような特有の作用効果が得られるものである。
【0038】
(d−1)この実施形態のクレーン車Zにおいては、上記マスト4に配置される上記ウィンチ14を、そのドラム14aの一部が上記マスト4に重合するようにして取付け、該ドラム14aから繰出される上記テンションワイヤ11を、上記マスト4の内部を通過して上記第1先端シーブ16に掛け回すようにしているので、該ウィンチ14と上記第1先端シーブ16の間において上記テンションワイヤ11が上記マスト4の内部へ収納され、外部へは露出しない。このため、例えば、上記マスト4を上記伸縮ブーム3に離間させ、あるいは接近させてその姿勢を立設姿勢と格納姿勢の間で変更する場合において、上記テンションワイヤ11が上記伸縮ブーム3側あるいはその周辺に設けられた他の構造物と干渉して損傷を受けることが未然に且つ確実に防止され、延いては該クレーン車Zの作業上の信頼性が向上することになる。
【0039】
(d−2)この実施形態のクレーン車Zにおいては、上記マスト4に配置された上記ウィンチ14のドラム14aから繰り出され上記マスト4の先端4b側に設けた上記先端シーブ16,17に掛け回されるテンションワイヤ11と、上記折返しシーブ12を介して上記テンションワイヤ11に連結された上記テンションワイヤ13で上記第2テンション部材8を構成し、且つ該第2テンション部材8の先端、即ち、上記テンションワイヤ13の先端に設けた上記先端部材33を、上記伸縮ブーム3側に設けられた係止固定部31と該伸縮ブーム3側の係止固定部31よりもブーム幅方向外側に位置して設けられたアーム部材5側の係止固定部32に選択的に係止できるように構成しているため、上記各シーブ16,17における上記テンションワイヤ11のフリートアングルは、上記第2テンション部材8の先端部材33を上記伸縮ブーム3側の係止固定部31に係止した場合と上記アーム部材5側の係止固定部32に係止した場合において横方向に変化し、また上記第2テンション部材8の先端部材33の係止位置が同じであったとしても上記伸縮ブーム3の伸長量の大小によって横方向と縦方向の双方において変化することになる(図5の角度「β」及び図6の角度「α1」、「α2」を参照)。
【0040】
しかし、この実施形態のクレーン車Zにおいては、上記マスト4の先端4b側において上記伸縮ブーム3の起伏面と略平行な面内で揺回動可能に配置された揺動ブラケット25に、上記テンションワイヤ11の引出方向をガイドする一対のガイドシーブ26,27を上記起伏面に略直交する軸回りに回転可能に取付けるとともに上記ガイドピン18を取付けてなるガイド機構24を備えているので、上記第2テンション部材8の先端部材33を上記伸縮ブーム3側の係止固定部31に係止した場合と上記アーム部材5側の係止固定部32に係止した場合の間における横方向におけるフリートアングルの変化と、上記伸縮ブーム3の伸長量に基づく横方向におけるフリートアングルの変化は、共に上記ガイドシーブ26,27と上記ガイドピン18によって防止される。この結果、上記各先端シーブ16,17部分におけるフリートアングルは常時略一定に維持され、上記第2テンション部材8の作動がより確実となり、延いてはクレーン車Zの作業上の信頼性が向上することになる。
【0041】
(d−3)この実施形態のクレーン車Zでは、上記マスト4の先端4bと上記伸縮ブーム3の先端3aの間に配置される第2テンション部材8の張力調整を行なう上記張力調整シリンダ15が、上記マスト4と平行を維持するようにして該マスト4側に配置されているので、例えば、上記張力調整シリンダ15が自由に移動可能とされた従来構造のような上記マスト4の装着・組立過程における上記張力調整シリンダ15と周囲構造物との干渉が未然に且つ確実に回避される。
【0042】
また、上記マスト4はその格納状態では上記伸縮ブーム3と略平行な姿勢をとるように姿勢設定されるのが通例であるが、その場合、上記張力調整シリンダ15が、上記マスト4と平行を維持するようにして該マスト4側に配置されているので、上記マスト4を格納した姿勢において上記張力調整シリンダ15が該マスト4から上方へ延出するということがなく、クレーン車Zの構内走行姿勢における全高を低く抑えることができ、構内走行において有利である。
【0043】
(e)その他
(e−1)この実施形態では、上記第2テンション部材8を上記テンションワイヤ11と上記テンションワイヤ13で構成しているが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、例えば、上記第2テンション部材8を上記テンションワイヤ11のみで構成し、上記折返しシーブ12を上記伸縮ブーム3の先端3a側、あるいは上記アーム部材5側へ直接的に取付けるように構成することもできる。
【0044】
(e−2)この実施形態では、上記マスト4の先端4b側に配置される上記ガイド機構24におけるガイド部材をシーブで構成しているが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、例えば、上記ガイド部材をピン材で構成することもできる。
【符号の説明】
【0045】
1 ・・車両
2 ・・旋回台
3 ・・伸縮ブーム
4 ・・マスト
5 ・・アーム部材
6 ・・ジブ
7 ・・第1テンション部材
8 ・・第2テンション部材
9 ・・ブーム起伏シリンダ
10 ・・マスト起伏シリンダ
11 ・・テンションワイヤ
12 ・・折返しシーブ
13 ・・テンションワイヤ
14 ・・ウィンチ
15 ・・張力調整シリンダ
16 ・・第1先端シーブ
17 ・・第2先端シーブ
18 ・・ガイドピン
19 ・・ラッチ爪
20 ・・ラッチアーム
21 ・・ロックシリンダ
22 ・・ウィンチ軸
23 ・・油圧モータ
24 ・・ガイド機構
25 ・・揺動ブラケット
26 ・・第1ガイドシーブ
27 ・・第2ガイドシーブ
28 ・・シーブ支持軸
29 ・・マスト固定ブラケット
31 ・・係止固定部
32 ・・係止固定部
33 ・・先端部材
34 ・・先端部材
35 ・・先端部材
36 ・・シーブブラケット
41 ・・マスト本体
42 ・・継材
Z ・・クレーン車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)上に旋回台(2)を介して伸縮ブーム(3)を起伏自在に取付けてなる伸縮ブーム付きクレーン装置であって、
上記伸縮ブーム(3)に基端部(4a)が連結されて該伸縮ブーム(3)の背面側において立設・格納可能とされたマスト(4)と、
上記マスト(4)の先端(4b)と上記伸縮ブーム(3)の基端部(3b)の間に配置される第1テンション部材(7)と、
上記マスト(4)の先端(4b)と上記伸縮ブーム(3)の先端(3a)の間に配置される第2テンション部材(8)と、
上記第2テンション部材(8)の張力調整を行なう張力調整シリンダ(15)を備えるとともに、
上記張力調整シリンダ(15)が、上記マスト(4)と平行を維持するようにして該マスト(4)側に配置されている、
ことを特徴とする伸縮ブーム付きクレーン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−126577(P2012−126577A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−85983(P2012−85983)
【出願日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【分割の表示】特願2006−306822(P2006−306822)の分割
【原出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】