説明

伸縮性シートの製造方法およびこれを用いた紙おむつ

【課題】シート破断のおそれなく伸縮部材の切断を可能とするとともに、通気性を向上させる。
【解決手段】上記課題は、上下シート910,930間に、複数本の糸状の伸縮部材920を、間隔をおいて平行に伸張状態で配置して積層体940となし、表面に切断凸部951が多数形成された第1のロール950と、第1のロール950と対向する第2のロール960との間に、積層体940を通過させ、その際に当該積層体940に切断凸部951を刺しこむことによって、前記複数本の少なくとも一部の伸縮部材920について、少なくともその長手方向一部を切断し、かつシートの穴形成加工を行なうことを特徴とする伸縮性シートの製造方法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布やプラスチックフィルム等のシートに糸ゴム等の弾性材料等からなる伸縮部材を取付けて伸縮性シートを製造する方法、ならびにこの方法により製造された伸縮性シートを使用した紙おむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつや使い捨てパンツ等の使い捨て着用物品には、着用者への密着性を向上させる為、ウエスト周囲、脚回り、胴部周囲等を伸縮可能に形成することが要求される。素材そのものが伸縮力を有する織布(ストレッチ布)を利用する事も考えられるが、使い捨て着用物品に用いるにはコストが高い。このため、通常は、不織布やプラスチックフィルムに糸状や帯状の伸縮部材を伸長状態で接着し、これらの非伸縮性シートを伸縮可能にしている。
このような伸縮性シートを連続製造するには、非伸縮性シートをロールから繰り出して走行させながら、伸縮部材をロールから繰り出して所定のテンションをかけて引っ張った状態で非伸縮性シートに貼り付ける方法が採用されている。しかし、使い捨て着用物品の形態上、或いは個々の製品に切断する都合上、伸縮させる必要の無い部分と伸縮部を、シートの走行方向に断続的に設けなければならないことがある。
伸縮させる必要の無い部分には、伸縮部材にテンションをかけずにシートに貼着することも考えられるが、テンションをかけて引っ張った状態と、テンションをかけない状態を、素早く切り替えるのは、製造上困難である。
従って、通常は、接着剤をシートヘ間欠塗工して、シート上に接着剤塗布部と非塗布部をシート走行方向に沿って交互に設け、接着剤非塗布部に存在する伸縮部材を切断する事によって、非伸縮部を設けている。接着剤非塗布部では、伸縮部材がシートに接着されていないので1個所で切断された伸縮部材は、シートに接着されている伸縮部材の方へ引っ張られて弛緩し、そこに留まることとなる。
伸縮部材を切断する方法としては、ロール幅方向に沿って連続する連続線状凸部(一枚刃)を有する第1のロールと、これと対向する第2のロールとの間に伸縮部材を配置したシートを通過させ、第1のロールの線状凸部による加圧または加熱により、伸縮部材を切断しようとするものがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この従来方法では、ロール幅方向に沿って連続線状に切断力を作用させるため、伸縮部材の存在していない部分に切断力を作用させた場合、シートを破断してしまうことがあった。また、破断にまで到らない場合でも、不織布等のシートが加熱圧着によってフィルム化するので、硬い触感の1本のシール線が伸縮部材の存在していない部分を横切るように残ることとなり、製品にした時に、見栄え、着用感の両方が、不充分となると言う問題があった。
他方、かかる伸縮性シートを、紙おむつに伸縮性を付与することを目的として、紙おむつの外形シートに重ねて又は外形シート自体として使用する場合には、通気性が良好であるのが望ましい。
そこで本発明の主たる課題は、シート破断のおそれなく伸縮部材切断や通気性向上のための加工を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
シート上に又は上下シート間に、複数本の糸状の伸縮部材を、間隔をおいて平行に伸張状態で配置して積層体となし、
表面に切断凸部がロール軸方向及び周方向に間隔をおいて多数形成された第1のロールと、前記第1のロールと対向する第2のロールとの間に、
前記積層体を通過させ、その際に当該積層体に前記切断凸部を刺しこむことによって、前記複数本の少なくとも一部の伸縮部材について、少なくともその長手方向一部を切断し、かつシートの穴形成加工を行なうことを特徴とする伸縮性シートの製造方法。
【0005】
<作用>
本発明では、間隔をおいて複数個配列した切断凸部を積層体に刺しこみ、伸縮部材の切断を行う。よってその加工に際して、凸部と凸部との間に切断力が作用せず、ロール幅方向(軸方向)に沿って連続線状に切断力が作用することがないため、部分的に切断されることはあっても、シート破断(ロール幅方向全体の切断)のおそれがない。そして伸縮部材を切断する場合には、積層体に切断凸部を刺しこむため伸縮部材をより確実に切断することができる。
なお、前記切断凸部の刺しこみにより、前記伸縮部材の切断および前記積層体の穴形成の両方を行うことができる。
この場合、シート破断のおそれなく、より確実に伸縮部材を切断でき、かつこれと同時に穴形成による通気性の向上を図ることができる。
【0006】
<請求項2記載の発明>
外形シートと、
この外形シートの内面に対して固定され、股下を中心として前後方向に延在する吸収主体とを有する紙おむつであって、
シート上に又は上下シート間に、複数本の糸状の伸縮部材を、間隔をおいて平行に伸張状態で配置して積層体となし、
表面に切断凸部がロール軸方向及び周方向に間隔をおいて多数形成された第1のロールと、前記第1のロールと対向する第2のロールとの間に、
前記積層体を通過させ、その際に当該積層体に前記切断凸部を刺しこむことによって、前記複数本の少なくとも一部の伸縮部材について、少なくともその長手方向一部を切断し、かつシートの穴形成加工を行なって伸縮性シートを得るとともに、
前記伸縮性シートの伸縮部材の切断および穴形成加工領域が紙おむつのある程度の剛性を有する吸収コアのほぼ幅方向全体に相当する部分領域と対応していることを特徴とする紙おむつ。
【0007】
<作用>
請求項1と同様の効果を奏する。
また、伸縮性シートの伸縮部材の切断および穴形成加工領域が紙おむつのある程度の剛性を有する吸収コアのほぼ幅方向全体に相当する部分領域と対応していることにより、伸縮部材が吸収コアを横切って連続しなくなり、吸収コアに対する腰周り締め付け方向の収縮力が弱められ、縦皺およびそれによる吸収性能の低下が防止される。さらに、多数の穴が形成されることにより通気性が良好なものとなる。
【0008】
<請求項3記載の発明>
前記紙おむつは、前後方向に沿って順にウエスト部、腰下部、股部からなり、
前記腰下部では伸縮部材の切断および穴形成加工が行われ、
前記ウエスト部では伸縮部材の切断および穴形成加工が行われていない請求項2記載の紙おむつ。
【0009】
<作用>
腰下部では伸縮部材の切断および穴形成加工が行われることにより、吸収コアに対する腰周り締め付け方向の収縮力が弱められ、縦皺およびそれによる吸収性能の低下が防止される。さらに、多数の穴が形成されることにより通気性が良好なものとなる。
また、ウエスト部では伸縮部材の切断が行われていないことにより、ウエスト周りのフィット性を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のとおり本発明によれば、シート破断のおそれなく伸縮部材切断や通気性向上のための加工を施すことができるようになるとともに、通気性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳説する。
<伸縮性シート製造方法の実施形態>
図1には、第1の形態に係る本発明の伸縮性シートの製造方法例の斜視説明図を示した。矢印方向がシート走行方向である。
所定幅の帯状の下シート910が、図示しないホットメルト接着剤塗工機により、接着剤塗布部911と非塗布部912とが交互に設けられつつ、図中右側から左側へ向かって走行している。本発明においては、図2に示すように接着剤911を、シート長手方向に連続に塗布することもできる。
【0012】
複数本の伸縮部材920,920は、伸縮部材ロールから繰り出され、テンションロールを通る事によって所定のテンションがかけられた状態で、案内ガイド921によって案内されながら、下シート910へと貼着される。このとき、上シート930と下シート910とで伸縮部材920を挟み込み、プレスロール931,932の間を通過させることにより、これらが圧着され、接着剤塗布部911において上シート930、下シート910および伸縮部材920が接着されることとなる。かくして、上下シート930,910に伸縮部材920が挟み込まれた積層体940が形成される。
【0013】
続いて、この積層体940は、表面に複数の切断凸部951を間隔をおいて配列した第1のロール950と、切断凸部951が挿入される凹部961を有する第2のロール960との間に挿入され、その際に当該積層体940に切断凸部951が刺しこまれることにより伸縮部材920が切断されるとともに積層体に穴が形成される。
【0014】
本例では、積層体940の搬送方向に適宜の間隔をおいて伸縮部材920の切断および穴X形成を行うべく、第1のロール950は、その周方向の一部に設けられた張出面952においてのみ第2のロール960の外周面に接するように構成されており、この張出面952にのみ切断凸部951が形成されている。したがって、図3(A)に示すように張出面952が第2のロールと対向しない状態では、第1および第2のロールは離間しており、伸縮部材の切断および穴形成は行われないが、両ロールの回転によって、図3(B)に示すように張出面952が第2のロールと対向する位置にきたときには、第1のロール950の張出面952が第2のロールと当接し、その際には図4に示すように、張出面952上の切断凸部951が積層体940に刺しこまれ、伸縮部材920が切断されるとともに穴Xが形成される。この際、第2ロールの凹部基端部962が、図示するように開口側に向かうにつれて拡径したテーパ状に形成されていると、より確実且つ綺麗に穴が形成される利点がある。なお、図1に示す例では、張出面の周方向長さL2は、接着剤非塗布部912の長さL1よりも若干短めに形成され、接着剤非塗布部912に張出面952が当接するように、塗工間隔と、第1のロール950の周長および走行速度が設定される。
【0015】
形成される穴Xとしては、図5(A)に示されるように、裏面まで貫通する貫通穴X1であっても良いし、或いは図5(B)に示されるように非貫通の窪み穴X2であってもよい。窪み穴X2の深さは、積層体の厚さに対して30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上とすることを推奨する。積層体940の厚みに対して30%以上の窪み穴とすることにより、従来のダイヤエンボス等のエンボス処理と異なり、機能性の点で顕著な通気性を示すようになる。また、孔形状は、円形状が望ましいが、星形または三角形状、四角形状等の多角形状であってもよい。
【0016】
実際には、繊維の復元力により明確な貫通穴X1または窪み穴X2が形成されないこともあるが、後述の実験例で示すように、このような穴加工を施すことにより、明確に通気性が発現されるようになる。前記穴加工は、1〜25mmピッチで付与するようにし、その穴面積は積層体面上で0.01mm2以上とするのが望ましい。
【0017】
他方、第1のロール950の切断凸部951の形状としては、図6に示すように(A)円錐ピン状951、(B)多角錐ピン状951’、および(C)先端に線状の刃部Cを有する線状凸部951’’など、積層体に刺せるものであれば適宜の形状とすることができる。また切断凸部951は、図4に示すように刺しこみ基端面951Sの面積が所望の穴面積と等しくなるように形成する。
【0018】
また切断凸部951は、行列状に配列することもできるが、より確実に伸縮部材を切断するためには図7に示すように千鳥状に配列するのが好ましい。この場合、ロールの周方向および軸方向ピッチM,Dは、所望の穴ピッチと等しくする。なお、一列における凸部951の数は、切断すべき伸縮部材の本数等で、適宜設定すると良い。凸部951のロール周方向列の数は、接着剤非塗布部の長さL1に応じて適宜設定することが出来る。特に、各ロール軸方向列における凸部951,951間の隙間にその周方向前後列の凸部951が周方向において重なるように、凸部951のサイズ・配置を定めるのが好ましく、その場合、伸縮部材920を切断し損なうことが実質的になくなる。
【0019】
この千鳥状配列を採用した場合のより詳細な切断態様が図8に示されている。図中、下へ向かって積層体が走行しているものとする。911が接着剤塗布部、912が接着剤非塗布部である。左側の伸縮部材922は、最も近くの凸部対応部970(前記凸部951に対応する)で切断されて、その端部922aは引張り状態から開放され、シートに接合固定されている伸縮部材922の方へと収縮する。凸部対応部970による切断が完了する前に残りの伸縮部材が凸部対応部972に捕捉されていれば、凸部対応部970と凸部対応部972の間にあった伸縮部材922bは、凸部対応部970による切断時に、凸部対応部972側に収縮する。残りの伸縮部材が凸部対応部972に捕捉される前に凸部対応部970による切断が完了してしまった場合には、下流の接着剤塗布部に存在している伸縮部材(図示しない)の方へ収縮することとなる。また、右側の伸縮部材923も最も近い凸部対応部971で切断され、その端部923aが収縮することとなる。
かくして形成された伸縮性シートにおいては、切断凸部の刺しこみにより確実に伸縮部材が切断されるだけでなく、貫通または窪み穴が形成されることにより通気性が良好なものとなる。
【0020】
他方、本発明では、下記(イ)〜(チ)のような変形も可能である。
(イ)第1および第2のロール950,960の少なくとも一方に加熱手段を備え、伸縮部材の溶断および上下シートのシールを行うように構成することもできる。具体的には、これらのロール近傍に、棒状のシーズヒーターを設けたり、高周波による加熱手段、遠赤外線ヒーター、オイルヒーター等の別の加熱手段を併用しても良い。ただし、本発明ではピンや刃部等の切断凸部を用いているので、軽い加圧のみで伸縮部材の切断を行うことができ、その場合には上下シートのヒートシールの無い柔軟な伸縮性シートを製造できる。
なお、図1において、第1のロール950と第2のロール960の位置が逆の構成も採用可能である。
(ロ)下シート910、上シート930としては、不織布、プラスチックフィルム、編物、織物、紙等が使用可能である。素材としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、セルロース、レーヨン等、適宜公知の素材を単独でまたは2種類以上を混合して、用いることが出来る。
(ハ)各シート910,930が既に何枚かのシートが積層された多層シートであってもよい。
(ニ)本発明の伸縮部材としては、切断可能な素材(例えば、熱可塑性ポリウレタンや、各種エラストマー、ゴム類等)で、例えば糸状、帯状、ネット状のものが利用可能である。
(ホ)図1においては、シートの幅方向中央部に伸縮部材を接着する例を示したが、シートの端部近傍に伸縮部材を接着する構成であっても、勿論かまわない。エンボスパターンの配設部を、伸縮部材の取付位置に合せて変更すれば良い。
(ヘ)本発明における接着剤は、上下シートのいずれか一方もしくは両方に塗布することができる。また伸縮部材に接着剤を塗布することもできる。さらに接着剤は、シート等に対し、長手方向に沿って不連続(図1参照)もしくは連続(図2参照)に、または一部、全部もしくは一部を除いて全体的に塗工することもできる。
(ト)図9に示すように、本発明における切断部位は、接着剤塗布部Xであっても良いし、接着材非塗布部Yであっても良い。
(チ)上記例では上下一対のシート間に伸縮部材を挟み込む形態を示したが、図9に示すように、一枚のシート又は多層シート上に伸縮部材を配置固定する場合にも本発明の伸縮部材切断手法を適用することが可能である。
(リ)上記例は伸縮部材を切断するものであるが、本発明では切断凸部の配列を変更して伸縮部材を切断せずに積層体の穴形成のみを行い、通気性の向上のみを図ることもできる。
【0021】
次に、紙おむつへの適用例について、まずパンツ型使い捨ておむつの例を採って詳説し、その後、おむつ使用時(装着時)に背側の左右両側縁部を腹側の左右両側縁部に持ち込み、これらをテープファスナー(粘着剤テープファスナーおよび面ファスナーを含む)により接合するタイプのいわゆるテープ式紙おむつに対する適用例も説明する。
<本発明の用語の説明、及びパンツ型使い捨ておむつの第1の実施形態>
主に図10によって、本発明の部位や方向に関する用語説明をしつつ、図11〜13によって、第1の実施形態に係るパンツ型使い捨ておむつについて説明する。
この第1の実施形態に係るパンツ型使い捨ておむつは、図10及び図11に示すように、可撓性の外形シート1と、この外形シート1内面に固定され、股下4を中心として縦方向(前後方向)に延在する吸収主体10とを主体として構成されている。
外形シート1は2枚または3枚以上の通気・撥水性の不織布を積層固定してなり、この外形シート1と吸収主体10とを重ね合わせた後の製造工程の最終段階で、前身頃Fと後身頃Bとの両側縁部の長手方向全体を超音波シールや熱溶融などの手段により接合する(この接合部を符号30としてある)ことにより、図13に示されているようにウエスト開口部WOおよび左右一対のレッグ開口部LOを形成してある。
【0022】
図10の符号において、「縦方向」とは、腹側と背側を結ぶ方向を意味し、「周方向」とは前記縦方向と直交する方向を意味する。「ウエスト開口縁」とはウエスト開口部WOの縁を意味し、「レッグ開口縁」とはレッグ開口部LOの縁を意味する。「レッグ開口始端」とはレッグ開口部LOのレッグ開口縁と接合部30とが交差する位置を意味し、レッグ開口縁の始まり個所の意味である。「胴周り部」Tとは、ウエスト開口縁からレッグ開口始端に至る長さ範囲の全体領域を意味する。胴周り部Tは、概念的に「ウエスト部」Wと「腰下部」Uとに分けることができる。これらの縦方向の長さは、製品のサイズによって異なるが、ウエスト部Wは15〜40mm、腰下部Uは45〜120mmである。「股部」Lとは、レッグ開口部LOを形成する長さ範囲の全体領域を意味する。また、「中央部」とは、製品の中央線を含む側部を除く中間領域を意味する。「脇部」とは、胴周り部Tにおける両側部を意味する。
【0023】
吸収主体10は、図12にも示すように、不織布などからなり着用者の肌に直接触れる長方形の透液性トップシート11と、綿状パルプを主体とし、ある程度の剛性を有する(半剛性の)長方形の吸収コア13とその上下面全体を包む額巻きされた長方形のクレープ紙14とからなる吸収体ABと、この吸収体ABの裏面において両側縁近傍まで達する、ポリエチレンプラスチックフィルムなどからなる長方形の不透液性バックシート12とを有し、前記透液性トップシート11は、吸収体ABの両側縁を周り込んで裏面に達し、不透液性バックシート12に重ねられており、これらの各要素はホットメルト接着剤により接着(図中*で示しているのが接着部分である)一体化されたものである。必要に応じて、図示のように透液性トップシート11とクレープ紙14との間に透液性セカンドシート11Sを介在させることができる。この吸収主体10は、ほぼ裏面全体が前記外形シート1に対して、ホットメルト接着剤により接着して一体化してある。
【0024】
吸収主体10の両側部には、使用面側に突出する脚周り起立カフスC,Cがそれぞれ形成され、この起立カフスCは、実質的に幅方向に連続した起立シート40と、伸縮部材、たとえば糸ゴムからなる一本のまたは図示のように複数本の伸縮部材50,50…とにより構成されている。
さらに詳細には、起立カフスCは、起立シート40を2重に形成され、各伸縮部材50,50…をホットメルト接着剤などにより固着した状態で包んで形成されたものである。各起立カフスC,Cを形成する起立シート40は、透液性でなく不透液性もしくは疎水性であるのが望ましい。このため、起立シート40の内面に別のシート(フィルム、不織布等)を張り込んで防漏性を高める構成としても良い。また、不織布などの透液性シートに対してシリコン処理などにより液体をはじく性質となるようにしてもよい。さらに、通気もしくは蒸気透過性を有しているのが望ましい。
【0025】
二重の起立シート40の内面は、吸収体AB及び不透液性バックシート12の裏面側に回り込んでホットメルト接着剤などにより固着されている。その結果、二重の起立シート40のこの固着始端は、起立カフスCの起立端を形成している。
この起立端より先端側は、製品本体に固定されていない自由部分である。
他方、長手方向前後端部において、ホットメルト接着剤などにより、前記自由部分は、その先端が物品の中央側に向かう状態で物品に、具体的には透液性トップシート11外面に固定されている。
【0026】
また、伸縮部材50,50…は、少なくとも1本が自由部分にあることを基本形態とするが、特にその伸縮部材50は自由部分の先端部にあることが好ましく、さらに、図12に示されているように、根元側にも伸縮部材50を有することが好ましい。先端部には、図示のように複数本有するのがさらに望ましい。
【0027】
図11は、紙おむつを長手方向に展開した状態を示しているが、装着時には、紙おむつが舟形に体に装着されるので、そして各伸縮部材50,50…の収縮力が作用するので、製品の前後端はそのままで、脚周りでは、各伸縮部材50,50…の収縮力により起立カフスCが起立する。そしてこのとき、吸収主体10の側部を変形させ持ち上げ、また若干吸収コア13も変形させつつ持ち上げ、深いポケット空間を形成する。
【0028】
左右の起立カフスC,Cで囲まれる空間は、尿または軟便の閉じ込め空間を形成する。この空間内に排尿されると、その尿は透液性トップシート11を通って吸収体AB内に吸収されるとともに、軟便の固形分については、起立カフスCがバリヤーとなり、その乗り越えが防止される。
【0029】
他方、前身頃F及び後身頃Bの長手方向端部において、ウエスト部Wにおける外形シート1の不織布間には、ウエスト周りのフィット性を高めるために、ウエスト開口部WOの端縁に平行に間隔を置いて細い糸ゴムからなるウエスト伸縮部材20F,20Bが伸縮するように伸長下に配置固定されている。ウエスト部Wにおけるウエスト伸縮部材20F,20Bの間隔および本数は適宜定めることができるが、例えば間隔としては4〜8mm程度、本数としては4〜10本程度が好ましい。
【0030】
さらに本実施形態では、前身頃F及び後身頃Bのウエスト部Wから股部Lの間の領域たる腰下部Uにおける、前身頃Fの下腹部及び後身頃Bの臀部に、周方向に沿って腰下部伸縮部材21F,21Bが設けられている。そして、前身頃Fの腰下部伸縮部材21Fは、一方側の接合部30から他方側の接合部30までの部分のうち吸収コア13のほぼ全体に相当する部分が不連続とされ、中央部を除く製品の左右脇部では連続的に設けられている。また後身頃Fの腰下部伸縮部材21Bは一方側の接合部30から他方側の接合部30まで吸収コア13を横断して連続的に設けられている。
【0031】
これら腰下部伸縮部材21F,21Bとしては、好適には細い糸ゴム、具体的に太さが620dtex以下とされた伸縮部材が用いられ、前身頃F及び後身頃Bの両者において、縦方向の間隔が7.0mm以下とされ、それぞれ平行に15〜40本、外形シート1の不織布間に配置固定されている。この腰下部伸縮部材21F,21Bおける相互間隔は、ウエスト伸縮部材20F,20Bの間隔に対して同じか、あるいはそれよりも短いものが望ましい。
【0032】
これら腰下部伸縮部材21F,21Bとして使用する糸ゴムは、前述のウエスト伸縮部材20F,20Bとして使用する細い糸ゴムよりも伸張応力および断面外径が小さいか、あるいは実質的に同一のものとすることができる。ここにおいて使用する細い糸ゴムとしては、具体的には、伸張応力が、150%伸長時において4〜17gの範囲、特に5〜10gの範囲のものが好適に使用される。
【0033】
また、第1の実施の形態においては、股部Lの前身頃F部分に対しても吸収コア13と対応する中央部が不連続とされ中央部を除く左右脇部において周方向に連続する股部伸縮部材23を設けてある。この股部伸縮部材23F,23Bについても、腰下部伸縮部材21F,21Bと同様に、太さが620dtex以下の伸縮部材を縦方向の間隔を7.0mm以下として不織布間に配置固定できる。
【0034】
特に本例では、これら腰下部・股部伸縮部材21F,21B,23F,23Bは、股部Lにおける股間部4の前後各2〜3cm(計4〜6cm)、特に4〜6cm(計8〜12cm)の長さ範囲Rを除いて設けられている。
【0035】
そして、本第1の実施形態では、外形シート1の所定部位に対して本発明の伸縮部材切断・穴形成加工を施すことにより、上述の前身頃Fにおける腰下部伸縮部材21Fおよび余剰部伸縮部材23Fの中央部不連続部分および穴Xが形成されている。すなわち本第1の実施形態は、不織布間に伸縮部材が挟まれて形成された外形シート自体が本発明の伸縮性シートに相当する形態である。
【0036】
かくして形成されたおむつにおいては、図13に示すように、前身頃Fにおける腰下部伸縮部材21Fおよび余剰部伸縮部材23Fにおける吸収コア13と重なる部分が不連続に形成されたことにより、腰下部伸縮部材21F,21Fが前身頃Fにおいて吸収コア13を横切って連続しなくなり、吸収コア13に対する腰周り締め付け方向の収縮力が弱められ、縦皺およびそれによる吸収性能の低下が防止される。また外形シート1に多数の穴が形成されることにより通気性が良好なものとなる。一方、後身頃Bにおいては、腰下部伸縮部材21Bは、一方側の接合部30から他方側の接合部30まで連続的に配置されているので、ずれ落ち防止および肌への密着性が高くなる。また前身頃Fにおける腰下部伸縮部材21F,21Fが不連続の部分に殆ど皺がなくなるため、その上から着用するパンツとの密着性も良好となり、すっきりとした見栄えのよいものとなる。
【0037】
なお、図示していないが、本発明の腰下部伸縮部材21F,21Fは、前身頃Fにおける一方側の接合部30から他方側の接合部30までの部分のうち吸収コア13の全部の部分を不連続に形成することもでき、この場合にも上記と同様の作用効果が奏せられる。
【0038】
また上記例では、本発明の伸縮部材切断および穴形成加工を腰下部伸縮部位ならびに股部伸縮部位に適用したが、本発明の伸縮部材切断および穴形成加工は、他の伸縮性を付与したい部位(例えば後述の第4の実施形態のようにウエスト伸縮部位や、脚周り伸縮部位等)に対しても適用することができる。
【0039】
<パンツ型使い捨ておむつの第2の実施形態およびその製造方法例>
次に、外形シートに別途の伸縮性シートを取り付けることを骨子とする第2の実施形態について、その製造方法例とともに詳説する。
図14は、本発明に係るパンツタイプ紙おむつの組み立てフローを示しており、吸収主体製造供給ライン100と、外形シート製造供給製造ライン200と、最終処理ライン300とで構成されている。
【0040】
吸収主体製造供給ライン100においては、先ず吸収コアが、その長手方向が搬送方向に沿うように供給され、この上に透液性トップシートが被されて固定され、さらにこの透液性トップシートの両側端部に起立カフスがそれぞれ配置固定される。次いで、これらは、別途供給される不透液性バックシートの上に配置固定され、吸収主体10が完成する。本例の場合、不透液性バックシートは、予めその両側端部を折り返すとともにその間に色の着いたウレタンフィルム等の補強部材を挟んで接着し、当該縁部のコシを強くするように加工される(補強部材を用いずにカラーホットメルト接着により側縁部を強調させたり、コシを強くしたりしても良い)。
かくして製造された吸収主体10は、90度ターン装置110において、その長手方向が搬送方向に対して直交する姿勢となるように平面的に90度ターンされ、最終処理ライン300の外形シート取付装置310へと搬送される。
【0041】
この一方で、外形シート製造供給製造ライン200において、製品幅方向に連続する帯状外形シート201に対して余剰部伸縮部材、腰下部伸縮部材をなす伸縮性シートならびにウエスト伸縮部材の取り付けがなされる。
詳細には帯状外形シート201が先ずスリップカッター装置210に送り込まれる。このスリップカッター装置210においては、別途供給されたデザインシート202がスリップされ供給間隔をあけられながら所定形状に順次カットされるとともに、図16及び図17にも示すように、このカットされたデザインシート202が帯状外形シート201の上面における前身頃幅方向中央部および後身頃幅方向中央部に対し、ホットメルト接着等によりそれぞれ配置固定される。デザインシートとしては透けない材質のフィルム等に絵柄等を付したものを用いることができる。またデザインシートには、外面にキャラクターなどのデザインを施すことができる。このデザイン部分は、ある程度の剛性を有する吸収コア13を有し、かつ本発明にしたがって外形シート201が変形したり皺を生じたりすることがないために、そのデザインが崩れることなく鮮明に分かるものとなる。デザインシート202は外形シート間に介在させることができる。また、外形シート201に印刷するか、不透液性バックシート12の裏面側に印刷することができる。さらに、図示のように、製品の正面と裏面とに対応して、当該キャラクターの正面と背面とを施すと、誰でも一目で前後を判別でき、おむつ換えが楽しくなり、着用者も喜ぶものとなる。
続いて、この外形シート201は伸縮部材供給ライン230から前身頃用伸縮性シートおよび後身頃用伸縮性シートがそれぞれ供給され取り付けられる。
【0042】
このため本例では、伸縮部材供給ライン230において、上述の本発明の製造方法により、上下シート910,930間に、単数または複数の伸縮部材920を伸張状態で挟み込んで形成した積層体940を、表面に複数の切断凸部951を間隔をおいて配列した第1のロール950と、切断凸部951が挿入される凹部961を有する第2のロール960との間に挿入し、その際に当該積層体940における吸収体と対応する部分に切断凸部951を刺しこみ、当該部分の伸縮部材920を切断するとともに当該部分に穴を形成する。かくして、吸収体と対応する部分における伸縮部材が不連続とされた連続伸縮性シート206が、前身頃の余剰部および腰下部用および後身頃の余剰部および腰下部用として各一本製造される。なお、これらの伸縮性シート製造のため、個別のラインを設けても良いし、1ラインで製造したものを長手方向に2分割しても良い。
かくして製造された前身頃用および後身頃用の連続伸縮性シート206が、外形シート201上の前身頃用および後身頃の所定部位に連続的にホットメルト接着剤等により取付けられる。
【0043】
次に、この前身頃用および後身頃部用の連続伸縮性シート206を貼り付けた外形シート201は、順次ダイカッター装置320に送り込まれ、そこで脚周り開口部相当個所がくり貫かれた後、その上に、連続するウエスト伸縮部材203が各身頃の所定部位にそれぞれ連続的に供給され(例えば糸ゴムや帯状ゴム等の材が複数本間隔をおいて平行に供給される)、ホットメルト接着により固定される。このウエスト伸縮部材として、本発明の伸縮部材切断および穴あき伸縮性シートを利用することも可能である。
以上の部材取付が施された外形シート201は、続いて最終処理ライン300の外形シート取付装置310へ送り込まれる。ここでは、外形シート201の製品幅方向中央部相当部位に対し、別途送り込まれてくる吸収主体10が配置されホットメルト接着等により固定される。
【0044】
そして各種部材の取付等が完了した外形シート201は、折り畳み装置330により、前身頃Fおよび後身頃Bの両側縁部30,30が重なるように2つ折りされ、続くヒートシール装置340により両側縁部30,30がヒートシールされた後、ファイナルカッター350において搬送のために残しておいた余代部分切り落とされウエスト開口端縁相当個所が形成されるとともに、連続する製品相互がその側縁部間相当個所に沿って切り離され、および製品寸法に合うようにカットされて個々のおむつとされる。これら個々のおむつは、必要に応じて転写ロール360により外形シート201表面に絵や模様等が転写された後、順次図示しない計数装置へ送給される。
【0045】
かくして製造された紙おむつは、図15〜図17に示すように、前身頃Fおよび後身頃Bの両方において、伸縮性シート206,206…における吸収コア13の中央部と対応する部分に、本発明の伸縮部材切断・穴形成加工が施され、当該部分の腰下部および股部伸縮部材920,920…が切断され、また当該部分に穴X,Xが形成されている。
【0046】
このように、前後両身頃F,Bにおける腰下部および股部伸縮部材21F,21B,23F,23Bを不連続に形成することもでき、前後両身頃F,Bの見栄えがスッキリするとともに通気性が向上する。また本例では、図16及び図17に示すように、伸縮性シート206外側にデザインシート202が積層されるので、伸縮性シート206の穴Xはデザインシート202により隠され、前述第1実施形態のようにおむつ外面に穴Xが露出せず、見栄えが良好となる利点がある。
なお、本例では、デザインシート202を省略することができる。しかしこの場合にも、伸縮性シートの穴Xは、その外側の外形シート201に覆われ隠されることとなるので、前述図12に示す例よりも見栄えが良くなる。
また、本例の伸縮性シート206の伸縮部材920,920…(21F,21B,23F,23B)は、吸収コア13の幅方向全部と対応する部分を、本発明の伸縮部材切断・穴形成加工により不連続にすることもできる。
【0047】
他方、本製造方法例において、後身頃用の伸縮性シートの伸縮部材の切断を省略することにより、前述第1実施形態と同様な、後身頃の腰下部および股部伸縮部材21B,23Bのみを一方側側縁部30から他方側側縁部30まで連続的に配置固定した紙おむつとすることができる。
【0048】
<パンツ型使い捨ておむつの第3の実施形態>
第3の実施形態は、図18および図19に示すように、第1の実施形態とは反対に、前身頃Fにおける腰下部伸縮部材21Fおよび股部伸縮部材23Fを一方側側縁部30から他方側のそれまで連続的に形成し、後身頃Bにおける腰下部伸縮部材21Bおよび股部伸縮部材23Bの吸収コア13と対応する部位を不連続にしたものである。後身頃Bにおける腰下部伸縮部材21Bおよび股部伸縮部材23Bは、本発明の伸縮部材切断・穴形成加工により不連続とされ、かつ当該部分に穴X、Xが形成されて通気性が向上される。
【0049】
<パンツ型使い捨ておむつの第4の実施形態>
第4の実施形態は、図20に示すように、第2の実施形態に対して、さらにウエスト伸縮部材20F,20B中央部についても、本発明の伸縮部材切断・穴形成加工により不連続とするとともに穴Xを形成したものである。
【0050】
<パンツ型使い捨ておむつの各形態についての補足説明及び他の実施の形態>
上記の実施の形態を比較して推測できるように、本発明に係る紙おむつにおいては、周方向に沿う伸縮部材を少なくとも一つ有し、かつ周方向に沿う伸縮部材の少なくとも一つの中央部が、本発明の伸縮部材切断・穴形成加工により不連続とされていれば足りるものであり、ウエスト部W、腰下部U、股部Lの伸縮部材のいずれを設けるか、またいずれを不連続とするかは適宜選択できるものである。但し、見栄えのスッキリ感を得るためには前身頃Fの伸縮部材、特に上記例でいうならば少なくとも腰下部および股部伸縮部材21F,23Fの中央部を不連続にするのが好ましい。
また本発明に係る紙おむつには、第1実施形態のように外形シート1自体を本発明の伸縮性シートにより形成する形態のみならず、第2実施形態のように外形シート1に別の本発明の伸縮性シート206を取り付ける形態も含まれる。
上記例は砂時計形状の外形シート1に対して長方形の吸収主体10を接合してあるが、本発明では外形シート1と同形状の透液性トップシート11を設け、これらの間に吸収体ABを設ける形態でもよい。
【0051】
製品の外面を構成する外形シート1は、上記例では2枚または3枚以上の通気・撥水性の不織布を積層固定したものであるが、1枚の不織布でもよく、この場合にはその不織布の使用面側に伸縮部材を接合することができる。さらに積層する不織布間の中間にプラスチックシートを介在させたり、または裏面側不織布の使用面側に張り合わせたりすることができる。
上記形態では、伸縮性を殺したい部位の伸縮部材の全てを切断しているが、例えば、図21に示すように、一部のみ、例えば30%以上、特に好適には50%以上を切断することもできる。図示例では一本おきに伸縮部材21F,21B,23F,23Bを切断しているが、縦方向において上側部分のみ、中間部分のみまたは下側部分のみを切断するようにすることもできる。また図示しないが、伸縮部材を全く切断せずに穴Xの形成による通気性向上加工のみを施したものとすることもできる。
【0052】
ウエスト伸縮部材20F,20B、腰下部伸縮部材21F,21Bおよび股部伸縮部材23F,23Bのいずれか一つ以上は、格子網状の伸縮部材であってもよい。例えば図22に示すように、外形シート1の不織布間全体に網目状たとえば格子状に糸ゴムを固定したものを用い、周方向中央部の吸収コア13と対応する部分に対して本発明の伸縮部材切断および穴形成加工を施したものである。この場合における、周方向の糸ゴムはウエスト部W、腰下部U及び股部Lの各伸縮部材を形成する。
【0053】
紙おむつの各部位に設ける伸縮部材としては、天然ゴムや合成ゴムなどの材質のほか、ウレタンなどの弾性伸縮性のものを用いることができる。また、細帯状の弾性伸縮性帯や、面積的に大きいシート状のものも使用できる。これらの例として、ウレタンなどの帯、フィルムまたはシートなどがある。フィルムとしては無孔フィルムや孔開きフィルム、さらにシートとしては網目状のシートなどを適宜選択できる。無孔フィルム60の配設例を図23に示した。また、網目状のフィルム61の配設例を図24に示した。これらの形態においても、伸縮性を殺したい中央部に対して、本発明の伸縮部材切断および穴Xの形成加工を施すことが重要である。
また、外形シート1には、股間部または股下部をフィットさせるために、種々の形態で伸縮部材を設けることができる。
【0054】
図25は、前脇部の端部から股部Lのレッグ開口縁にほぼ平行に後脇部の端部に亘って、それぞれ股部伸縮部材24,24を外形シート1の不織布間に固定したものである。股部伸縮部材24,24からのレッグ開口縁のはみ出し幅tを5mm以内(好適には2mm以内)とするのが望ましい。この形態では、股部伸縮部材24がレッグ開口部LOを収縮させ、体液の漏れを防止する。なお、股部伸縮部材24,24を明示するために、吸収主体10を仮想線で示してある。
【0055】
図26は、前身頃F及び後身頃Bにおいて、左方の脇部の端部から股下部を横断するように右方の脇部の端部に亘って、それぞれ股間部伸縮部材25F,25Bを外形シート1の不織布間に固定したものである。また、この例においては、前身頃F側と後身頃B側の脚周り・股間部伸縮部材25F,25Bが股間4の前後各2〜3cm、特に4〜6cmの範囲R内で一部交差する形態としてある。
この形態においても、伸縮部材25F,25Bの脚周り部分からのレッグ開口縁のはみ出し幅tを5mm以内(好適には2mm以内)とすると、第10の実施形態と同様、さらにレッグ開口縁のヒラヒラ感がさらに少なくなる。
【0056】
図27は、前身頃F及び後身頃Bにおいて、左方の脇部の端部から股下部を横断するように右方の脇部の端部に亘って、それぞれ股間・股下部伸縮部材26F,26Bを外形シート1の不織布間に固定したものである。この例においては、股間部伸縮部材26F,26Bが股間部4の前後各2〜3cm、特に4〜6cmの範囲R内を通るものの、交差することなく、股下部において平行する形態としてある。
なお、上述の図25〜27に示す例では、腰下部伸縮部材21F,21Bの中央部のみ、本発明の伸縮部材切断および穴Xの形成加工を施しており、ウエスト伸縮部材20F,20Bなど他の伸縮部材部位には本発明の伸縮部材切断および穴Xの形成加工を施していない。
【0057】
一方、図28に示すように、股下部分において、吸収主体10、特に吸収コア13の幅より外形シート1の幅が狭いようにすることもできる。この図18の形態や前述の形態において、吸収コア13の側縁より外方へ食み出る外形シート1はヒラヒラしがちであり、製品全体にすっきり感を得ようとするときの問題となる。そこで、第1の形態の股部伸縮部材23F,23Bと同様に、股部Lの両側に整形伸縮部材27を外形シート1の不織布間に設け、食み出る外形シート1を中央側に寄せることで、ヒラヒラ感を解消することができる。この場合において、整形伸縮部材27群の外端部はホットメルト接着剤によるシール線28により固定することにより、整形伸縮部材27群の外端部の中央側への引き込みを防止することができる。
【0058】
図29は同様にヒラヒラ感を解消するために、前身頃F及び後身頃Bにおいて、左方の脇部の端部から股部を横断するように右方の脇部の端部に亘って、それぞれ整形伸縮部材29,29を外形シート1の不織布間に固定したものである。この形態では、整形伸縮部材29に中間の周方向部分が、吸収コア13の側縁より外方に食み出る外形シート1を中央側に寄せることで、ヒラヒラ感を解消することができるとともに、整形伸縮部材29の端部が脇部の端部に亘るので、股部を胴周り部T側に持ち上げるように作用し、腹部及び臀部のたるみを解消し、よりすっきり感に富むものとなる。
なお、これら図28および図29の例における伸縮部材切断・穴Xの形成加工の態様は、前述第4の実施形態と同様である。
【0059】
<テープ式紙おむつの第1の実施の形態>
前述のように、本発明はパンツ型使い捨ておむつのほか、テープ式紙おむつをも対象とする。この第1の実施の形態を図30及び図31に示す。この例においては、両側部に起立シート41,41を有し、これらの自由起立部の先端部に伸縮部材51,51が設けられ、起立カフスC,Cを構成している。起立シート41は外形シートと同様の裏面シート1と接合されている。42は背側の左右両側部を腹側の左右両側部に持ち込み、接合するためのテープファスナーである。この例において、前身頃F及び後身頃Bの長手方向端部において、ウエスト部Wにおける外形シート(裏面シート)1の不織布間には、ウエスト周りのフィット性を高めるために、ウエスト開口部WOの端縁に平行に間隔を置いて細い糸ゴムからなるウエスト伸縮部材20F,20Bが伸縮するように伸長下に配置固定されている。さらに前身頃Fの下腹部及び後身頃Bの臀部に、中央部を除く脇部に周方向に沿って腰下部伸縮部材21F,21Bが設けられ、股部Lにも周方向にそって側端部間にわたる股部伸縮部材23F,23Bが設けられている。
かかる場合にもウエスト伸縮部材20F,20Bを除いて、本発明の伸縮部材切断・穴形成加工により腰下部伸縮部材21F,21Bおよび股部伸縮部材23F,23Bの中央部が切断されて不連続とされ、かつ当該部分に穴X、Xが形成されて通気性が向上される。
【0060】
<テープ式紙おむつの第2の実施の形態>
第2の実施の形態を図32及び図33に示す。この形態は起立カフスを有しない例である。そして、吸収コア13の外方のフラップ部に縦方向に沿って伸縮部材52,52が、透液性トップシート11とバックシート12との間に固定されている。この例においても、ウエスト伸縮部材20F,20B、腰下部伸縮部材21F,21B及び股部伸縮部材23F,23Bが設けられている。
かかる場合にもウエスト伸縮部材20F,20Bを除いて、本発明の伸縮部材切断・穴形成加工により腰下部伸縮部材21F,21Bおよび股部伸縮部材23F,23Bの中央部が切断されて不連続とされ、かつ当該部分に穴X、Xが形成されて通気性が向上される。
【0061】
<好適な製品各部の幅について>
本発明の紙おむつにおいては、図34に示すようにウエスト幅d1に対して吸収コア13の幅d2が40%以下であるのが好ましい。
さらに、本発明の伸縮部材を切断した伸縮性シートを適用する紙おむつにおいては、股間部4において外形シート1の側端が吸収コア13の側端から5mm以内に位置するように形成するのが望ましい。これには、図34(A)に示すように、外形シート1の股間部4側端が吸収コア13の股間部側端の外側にはみ出て、そのはみ出し幅d3が5mm以下とされる場合と、図34(B)に示すように、外形シート1の股間部4側端が吸収コア13の股間部側端の内側に入り、吸収コア13の股間部側端が外形シート1の股間部4側端からはみ出て、そのはみ出し幅d4が5mm以下とされる場合とが含まれる。また図示しないが外形シート1の股間部4側端と吸収コア13の股間部側端とが重なる場合も含まれる。
【0062】
このように少なくとも伸縮部材の切断を行って製造した伸縮性シート部を、前身頃および後身頃の少なくとも一方において、伸縮方向が周方向に沿いかつ切断部位が中央部に位置するように備えた紙おむつにおいては、中央部の収縮が無くなることによりボリューム感・もこもこ感が低減し、見栄えがスッキリとしたものとなるが、さらに前述のように、外形シート1の股間部4側端が吸収コア13の股間部側端から5mm以内に位置するように形成することによって、吸収コア13の脇部から外形シート1が殆どはみ出なくなり、股間部4のボリューム感・もこもこ感が更に低減し、見栄えが更にすっきりとしたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明の他の実施例を示す斜視図である。
【図3】第1および第2のロールの動作態様の説明図である。
【図4】本発明の伸縮部材切断および穴形成加工の説明図である。
【図5】切断凸部本発明により形成される穴の態様を示すシート断面図である。
【図6】各種切断凸部を示す斜視図である。
【図7】切断凸部の配列例を示す平面図である。
【図8】切断態様を示す平面図である。
【図9】伸縮性シートの各種積層構造を示す説明図である。
【図10】本発明の用語説明のための、第1の実施の形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図11】第1の実施の形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図12】図11の5−5線矢視図である。
【図13】製品状態の紙おむつの正面及び背面図である。
【図14】第2の実施形態のパンツ型使い捨て紙おむつの製造フローである。
【図15】第2の実施形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図16】図15の5−5線矢視図である。
【図17】製品状態の紙おむつの正面及び背面図である。
【図18】第3の実施形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図19】第3の実施形態の正面及び背面図である。
【図20】第4の実施形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図21】他の実施形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図22】別の実施形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図23】他の素材の伸縮部材を設けた実施の形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図24】別の素材の伸縮部材を設けた実施の形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図25】他の伸縮部材を付加した実施の形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図26】別の伸縮部材を付加した実施の形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図27】さらに他の伸縮部材を付加した実施の形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図28】さらに別の伸縮部材を付加した実施の形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図29】他の伸縮部材を付加した実施の形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図30】テープ式紙おむつの第1の実施の形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図31】その5−5線相当位置矢視図である。
【図32】テープ式紙おむつの第2の実施の形態の展開状態使用面側からの平面図である。
【図33】その5−5線相当位置矢視図である。
【図34】股間幅の好適な例を示す紙おむつの使用状態正面図である。
【符号の説明】
【0064】
910…下シート、911…接着剤塗布部、912…接着剤非塗布部、920…伸縮部材、921…案内ガイド、930…上シート、931,932…プレスロール、950…第1のロール、951…切断凸部、960…第2のロール、961…凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート上に又は上下シート間に、複数本の糸状の伸縮部材を、間隔をおいて平行に伸張状態で配置して積層体となし、
表面に切断凸部がロール軸方向及び周方向に間隔をおいて多数形成された第1のロールと、前記第1のロールと対向する第2のロールとの間に、
前記積層体を通過させ、その際に当該積層体に前記切断凸部を刺しこむことによって、前記複数本の少なくとも一部の伸縮部材について、少なくともその長手方向一部を切断し、かつシートの穴形成加工を行なうことを特徴とする伸縮性シートの製造方法。
【請求項2】
外形シートと、
この外形シートの内面に対して固定され、股下を中心として前後方向に延在する吸収主体とを有する紙おむつであって、
シート上に又は上下シート間に、複数本の糸状の伸縮部材を、間隔をおいて平行に伸張状態で配置して積層体となし、
表面に切断凸部がロール軸方向及び周方向に間隔をおいて多数形成された第1のロールと、前記第1のロールと対向する第2のロールとの間に、
前記積層体を通過させ、その際に当該積層体に前記切断凸部を刺しこむことによって、前記複数本の少なくとも一部の伸縮部材について、少なくともその長手方向一部を切断し、かつシートの穴形成加工を行なって伸縮性シートを得るとともに、
前記伸縮性シートの伸縮部材の切断および穴形成加工領域が紙おむつのある程度の剛性を有する吸収コアのほぼ幅方向全体に相当する部分領域と対応していることを特徴とする紙おむつ。
【請求項3】
前記紙おむつは、前後方向に沿って順にウエスト部、腰下部、股部からなり、
前記腰下部では伸縮部材の切断および穴形成加工が行われ、
前記ウエスト部では伸縮部材の切断および穴形成加工が行われていない請求項2記載の紙おむつ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2011−225000(P2011−225000A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132443(P2011−132443)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【分割の表示】特願2008−177662(P2008−177662)の分割
【原出願日】平成12年12月11日(2000.12.11)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【出願人】(593070192)ダイオーペーパーコンバーティング株式会社 (20)
【Fターム(参考)】