説明

伸縮支柱及びそれを用いた投光機

【課題】操作性を向上することができる伸縮支柱それを用いた投光機を提供する。
【解決手段】伸縮支柱1は、複数の管柱を互いに入れ子式に挿入して伸縮自在としたマスト6と、前記マスト6を緩やかに収縮させるブレーキ機構16とを備える。前記ブレーキ機構16は、前記マスト6の基端となる基端管柱に設けられた圧力調整部25と、前記マスト6の先端となる先端管柱に設けられた閉塞部26と、前記圧力調整部25と前記閉塞部26とで仕切ることによってマスト6の内部に形成した空気室27とを有する。前記圧力調整部25は、前記空気室27と外部とを連通する第1の通気穴31と、前記空気室27と外部とを連通する第2の通気穴32と、前記第2の通気穴32のみを開閉自在に閉塞する弁体33とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮支柱及びそれを用いた投光機に関し、特に、先端に固定対象物を取り付けて、前記固定対象物を所定高さに保持することができる伸縮支柱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の伸縮支柱としては、固定対象物としての照明装置と、前記照明装置に電力を供給する電源装置としての発電機とを備える投光機に使用される昇降棒が開示されている(例えば、特許文献1)。この投光機において、昇降棒は、前記照明装置を取り付けた先端を鉛直方向上方に向けた状態で立設され、伸縮するように構成されている。
【0003】
この昇降棒は、基管柱に対して逐次外径を小さくした少なくとも一つの中管柱を順次入れ子式に遊嵌してなり、各中管柱をユーザが上下方向に移動させることによって、長さを調節して、前記照明装置を所定高さに保持し得るよう形成されている。
【0004】
これにより、上記特許文献1は、簡単な構成で、かつ、確実に照明装置を所定高さに保持することができるものである。
【特許文献1】実用新案登録第3092453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、相当の重量物である照明装置を上端に取り付けた場合、昇降棒には鉛直方向の荷重がかかる。従って、昇降棒は、伸長した状態から収縮させる場合、上記鉛直方向の荷重により、昇降棒が急に落下するという懸念があった。このような問題は、照明装置の重量が大きくなればなるほど顕著なものとなり、操作性が悪化するという問題があった。
【0006】
そこで本発明は上記した問題点に鑑み、操作性を向上することができる伸縮支柱それを用いた投光機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の管柱を互いに入れ子式に挿入して伸縮自在としたマストと、前記マストを緩やかに収縮させるブレーキ機構とを備えた伸縮支柱であって、前記ブレーキ機構は、前記マストの基端となる基端管柱に設けられた圧力調整部と、前記マストの先端となる先端管柱に設けられた閉塞部と、前記圧力調整部と前記閉塞部とで仕切ることによってマストの内部に形成した空気室とを有し、前記圧力調整部は、前記空気室と外部とを連通する第1の通気穴と、前記空気室と外部とを連通する第2の通気穴と、前記第2の通気穴のみを開閉自在に閉塞する弁体とが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の伸縮支柱によれば、マストを収縮させる場合には、第2の通気穴を弁体で塞ぐことにより、予め空気室内の空気を緩やかに逃がすように選定された第1の通気穴からのみ、圧縮空気を外部へ逃がすことができると共に、マストを伸長させる場合には、第1の通気穴と共に第2の通気穴からも空気を供給することとしたことにより、格段と容易にマストを引き上げることができるので、操作性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
1.全体構成
図1に示す伸縮支柱1は、固定対象物としての照明装置2、電源装置3、及び、基台としての搬送装置4とからなる投光機5に用いられる。この投光機5は、伸縮支柱1の先端に照明装置2を装着し、該伸縮支柱1及び電源装置3を搬送装置4に取付固定して構成される。これにより、投光機5は、全体として、適当な場所に移動した上で、伸縮支柱1によって所定高さに保持された照明装置2に、電源装置3から電力を供給して、周囲に光を供給し得る。
【0010】
伸縮支柱1は、複数の管柱を互いに入れ子式に挿入して伸縮自在としたマスト6を備える。前記マスト6は、3本の筒形の管柱で構成され、搬送装置4に固定される基端管柱としての第1の管柱7と、前記第1の管柱7より外径を小さくした中管柱としての第2の管柱8と、前記第2の管柱8より外径を小さくした先端管柱としての第3の管柱9とを備える。そして、マスト6は、前記第1の管柱7に第2の管柱8を内挿し、さらに、前記第2の管柱8に第3の管柱9を内挿して伸縮自在に構成されている。第3の管柱9の上端には、第3の管柱9に対し上下動可能に設けられた取付杆10が設けられており、該取付杆10に前記照明装置2が着脱自在に取り付けられている。
【0011】
このように本発明に係る伸縮支柱1は、先端を鉛直方向上方に向けた状態で基端が搬送装置4に固定され、伸縮することによって、照明装置2を所定高さに保持し得るように構成されている。
【0012】
図2に示すように、伸縮支柱1は、マスト6と、ストッパー機構15,15と、ブレーキ機構16と、潤滑油供給機構17,17とを備え、円滑にマスト6を伸縮できるように構成されている。
【0013】
ストッパー機構15,15は、第1の管柱7及び第2の管柱8の先端に設けられている。これらのストッパー機構15,15は、設置箇所が異なるのみで、構成は何ら異ならないので、簡単のため第1の管柱7に設けられたストッパー機構15について説明する。このストッパー機構15は、筒状の保持体20と、着脱ネジ21とからなる。前記保持体20は、第1の管柱7の先端に固定されてなり、第2の管柱8の外面側壁に当接し得るように上端に設けられた折り返し部20aと、半径方向に貫通するタップ穴22とを備える。また、着脱ネジ21の先端には、第1の管柱7の外面側壁に当接する当接部21aが設けられている。このストッパー機構15は、着脱ネジ21を螺合して、折り返し部20aを第2の管柱8の外面側壁に押し当てることにより、第2の管柱8を第1の管柱7に対し固定する。尚、ストッパー機構15は、上記した構成に限定されるものではなく、種々の公知のストッパー機構15を適用することができることはいうまでもない。
【0014】
ブレーキ機構16は、第1の管柱7の下端開口に設けられた圧力調整部25と、第3の管柱9の下端開口に設けられた閉塞部26と、前記圧力調整部25と前記閉塞部26とで仕切ることによりマスト6の内部に形成された空気室27とを備えている。尚、第2の管柱8の下端開口には、第1の管柱7の内側と第3の管柱9の内側とを連通する連通部28が設けられている。
【0015】
圧力調整部25は、マスト6の伸長時又は収縮時に対応して、空気室27内の圧力を適宜調整し得るように構成されている。この圧力調整部25は、第1の管柱7の下端開口を塞ぐ底板部材30を有し、該底板部材30に第1の通気穴31、第2の通気穴32、及び弁体33とが設けられており、第1の管柱7の下端開口に固定されている。
【0016】
第1の通気穴31及び第2の通気穴32は、第1の管柱7の軸方向に貫通してなる。第1の通気穴31は、空気室27内の空気を外部へ緩やかに逃がし得るように形成されている。一方、第2の通気穴32は、外部から空気室27の内部へ空気を円滑に取り込み得るように形成されている。従って、第2の通気穴32は、第1の通気穴31に対し大きく形成されている。
【0017】
弁体33は、外部から空気室27内へ流れる空気は通すが、空気室27内から外部へ流れる空気は止める、いわゆる逆止弁として機能する。この弁体33は、弾性変形可能なゴムの板状部材を、縦長の矩形状に形成してなり、一端33aを前記第2の通気穴32を塞ぐように配置した状態で、他端33bにおいて底板部材30にボルト34で固定されている。
【0018】
閉塞部26は、空気室27の上端の気密を保持し得るように構成されている。この閉塞部26は、第3の管柱9を閉塞する底部材40と、シール41とを備える。また、閉塞部26は、前記シール41に潤滑油としてのグリースを供給する前記潤滑油供給機構17,17が一体的に設けられている。
【0019】
シール41は、空気室27の上端の気密を保持すると共に、第3の管柱9を円滑に上下動させ得るように構成されている。このシール41は、有底筒状の部材からなり、底面に対し拡開してなる開口端41aにおいて第2の管柱8の内壁に環状に接触している。
【0020】
潤滑油供給機構17,17は、前記第3の管柱9の下端開口を塞いでいる底部材40に対向して設けられた天部材42を有し、前記底部材40と前記天部材42との間にグリースを溜めておく貯留室43を形成している。天部材42は、貯留室43に連通する供給穴44と、固定部材としての六角ボルト45が螺合するタップ穴46とが設けられている。貯留室43には、前記シール41に貯留室43内のグリースを供給する吐出穴47が設けられている。この吐出穴47は、第3の管柱9の側壁に設けられている。貯留室43には、グリースが充填されている。
【0021】
次に、上記のように構成した潤滑油供給機構17の組み立て手順について説明する。先ず、第3の管柱9の内側に貯留室43を形成し得るように、下端開口に対向して天部材42を設置して、該天部材42を六角穴付ボルト48で、第3の管柱9の側壁に固定する。また、底部材40とシール41とは、底部材40の一面にシール41の底面を当接させ、中央に穿設された貫通穴に挿通した六角ボルト45を天部材42に形成されたタップ穴46に螺合することにより、第3の管柱9の下端開口に固定される。このようにして潤滑油供給機構17は形成されている。
【0022】
また、第2の管柱8に設けられた連通部28及び潤滑油供給機構17は、第3の管柱9に設けられた閉塞部26と、固定部材のみが異なる。すなわち、第2の管柱8に設けられた連通部28では、固定部材として連通穴付ボルト50が用いられる。この連通穴付ボルト50は、第2の管柱8の底部を挟んで第3の管柱9側と、第1の管柱7側とを連通する連通穴51が中心軸上に形成されている。
【0023】
2.作用及び効果
次に上記のように構成した伸縮支柱1の作用及び効果について説明する。伸縮支柱1を備えた投光機5は、搬送装置4によって、設置場所に移動され、該設置場所において、マスト6を伸長させることにより、照明装置2を所定高さに保持する。従って、マスト6が収縮した状態から、マスト6が伸長した状態に移行する場合について、最初に説明する。
【0024】
マスト6を伸長させるには、着脱ネジ21を緩め、第2の管柱8及び第3の管柱9を引き上げる。そうすると、第1の管柱7の圧力調整部25と第3の管柱9の閉塞部26とで形成された空気室27の容積が増える。尚、第2の管柱8は、第3の管柱9と共に上方へ移動するので、第2の管柱8のみを引き上げたとしても、第1の管柱7の圧力調整部25と第3の管柱9の閉塞部26とで形成された空気室27の容積が増えることとなる。因みに、空気室27の上端は、第3の管柱9の閉塞部26に設けたシール41により気密が保持されている。そうすると、空気室27は一時的に負圧となる。従って、この負圧より、第1の管柱7の底板部材30に設けた第1の通気穴31を通じて外部から空気が空気室27に流れ込む。
【0025】
ところで、第3の管柱9の上方への移動量、すなわち空気室27の容積の増加量に対し、第1の通気穴31から供給される空気の量が少ないと、空気室27は依然として負圧のままとなる。この空気室27の負圧は、容積を縮める方向の力、すなわち第3の管柱9の閉塞部26に対し鉛直下方の力を発生させるので、その分、鉛直上方への力が減じられ、場合によっては相殺されることとなる。従って、空気室27に生じる負圧は、マスト6を引き上げるユーザに対し負荷を与えることとなる。
【0026】
これに対し、本発明では、第2の通気穴32を形成し、第1の通気穴31だけでなく、第2の通気穴32からも空気室27に空気が供給されるように構成した。これにより、第2の通気穴32の空気室27内側の開口から、外部の空気が空気室27内へ流れ込む。従って、第1の通気穴31と共に第2の通気穴32からも空気を供給することとしたので、空気室27の負圧を解消することにより、格段と容易に第2の管柱8及び第3の管柱9を引き上げることができる。従って、伸縮支柱1は、伸長時において、空気室27内の負圧を確実に解消することにより、容易にマストを伸長させることができるので、操作性を確実に向上することができる。
【0027】
尚、第2の通気穴32には、弁体33が設けられている。この弁体33は、弾性変形可能なゴムの板状部材で構成した。マスト6が伸長され空気室27内が負圧になると、弁体33は、第2の通気穴32を塞いでいた一端33aがこの負圧によって上方へ引っ張られる。これにより弁体33は、第2の通気穴32を開放する(図3(A))。このようにして圧力調整部25は、マスト6の伸長時において弁体33を開いて第2の通気穴32を開放し、第1の通気穴31に加え、第2の通気穴32からも空気を空気室27内に取り込めるようにして、空気室27の負圧を確実に解消することとした。
【0028】
このようにして第2の管柱8及び第3の管柱9を所定の長さまで引き上げた後、伸縮支柱1は、着脱ネジ21を締めることで、マスト6の先端に取り付けた照明装置2を所定高さに保持することができる。この状態において、図示しない電源スイッチをオンにすることによって、電源装置3から電力が供給され、ファンによって供給された空気でバルーンが膨らむと同時に、電球が点灯する。このようにして、脚装置は、所定高さに照明装置2を保持し、周囲に光を供給し得る。
【0029】
次に、マスト6が伸長した状態から、マスト6が収縮した状態に移行する場合について説明する。先ず、電源スイッチをオフし、バルーンに対する空気の供給を止めてバルーンを萎ませると共に、電球を消灯する。
【0030】
次いで、伸長したマスト6を収縮させるには、着脱ネジ21を緩め、第2の管柱8及び第3の管柱9を下方へ移動させる。この場合、第2の管柱8及び第3の管柱9は、それぞれの自重、及び照明装置2の自重により、鉛直下方へ相当程度の荷重が生じる。この荷重により、第2の管柱8及び第3の管柱9は、自由落下する。
【0031】
これにより、第1の管柱7の圧力調整部25と第3の管柱9の閉塞部26とで形成された空気室27は、容積が減ることとなる。そうすると、空気室27内の空気は圧縮空気となる。因みに、空気室27の上端は、第3の管柱9の閉塞部26に設けたシール41により気密が保持されているので、空気室27内の圧縮空気は、第1の通気穴31を通じて外部へと流れ出す。この第1の通気穴31は、予め圧縮空気を緩やかに流すように選定されている。これにより、圧力調整部25は、一定の流速以下で圧縮空気を外部へ逃がすことにより、空気室27の圧力を所定圧に保持する。この空気室27の圧力によって、第3の管柱9の閉塞部26には鉛直上方への力が生じる。従って、伸縮支柱1は、空気室27内を所定圧に保持して上記鉛直上方の力を生じさせ、この鉛直上方の力を、第2の管柱8、第3の管柱9、及び照明装置2の自重によって生じる鉛直下方の力に対向させることにより、マスト6を緩やかに収縮させる。このようにして、伸縮支柱1は、マスト6を収縮させる場合に、マスト6が急に落下するのを防いで、操作性を向上することができる。因みに、空気室27の圧力は、マスト6の収縮に伴って減少し、第3の管柱9が下死点に達した状態で大気圧となる。
【0032】
尚、第1の管柱7の底板部材30には、第2の通気穴32が形成されているが、該第2の通気穴32は、弁体33で塞がれており、かつ、弁体33は圧縮空気により底板部材30に押し付けられているので、第2の通気穴32を確実に閉塞しておくことができる。すなわち、予め空気室27内の空気を緩やかに逃がすように選定された第1の通気穴31からのみ、圧縮空気を外部へ逃がすことができる。これにより、伸縮支柱1は、空気室27の容積を緩やかに減少させ、その結果、この空気室27の容積の減少に伴ってマスト6を緩やかに収縮させる。こうして、伸縮支柱1は、第2の管柱8、第3の管柱9、及び、照明装置2の自重によって収縮させる場合でも、マスト6が急に落下するのを確実に防止することができるので、操作性を向上することができる。
【0033】
さらに、本実施形態では、弁体33は、弾性変形可能なゴムの板状部材を、縦長の矩形状に形成してなり、一端33aが前記第2の通気穴32を塞ぐように配置した状態で、他端33bにおいて底板部材30にボルト34で固定されている。これにより、空気室27内が負圧となったとき、すなわちマスト6が伸長した場合には、弁体33は、負圧によって上方へ引っ張られ、これにより第2の通気穴32を開放する。一方、空気室27内に圧縮空気が形成されたとき、すなわちマスト6が収縮した場合には、弁体33は、底板部材30に押し付けられ、確実に第2の通気穴32を閉塞する。このようにして、弁体33は、マスト6の伸縮に合わせて適宜第2の通気穴32を閉塞又は開放する。これにより、圧力調整部25は、空気室27の圧力を適宜調整し、収縮時には外部へ逃がす空気の量を絞り、マスト6を緩やかに収縮させると共に、伸長時には外部から空気を効率よく流し込み、マスト6を引き上げるユーザに負荷を与えないようにする。従って、伸縮支柱1は、空気室27の空気をマスト6の伸縮に合わせて適切に調整することができるので、ユーザが特に意識しなくても、操作性を確実に向上することができる。
【0034】
また、マスト6の伸縮に伴い、第2の管柱8及び第3の管柱9に設けたシール41はそれぞれ第1の管柱7及び第2の管柱8の内壁と摺動する。この第2の管柱8及び第3の管柱9には、潤滑油供給機構17,17を設け、シール41にグリースを供給し得るように構成した。これにより、シール41には常にグリースが供給されるので、磨耗、劣化を防いで円滑に摺動させることができる。従って、本実施形態に係る伸縮支柱1は、操作性を向上することができる。
【0035】
さらに、第2の管柱8に設けられた連通部28の潤滑油供給機構17,17は、強制的にグリースをシール41に供給し得るように構成されている。すなわち、潤滑油供給機構17,17の天部材42には、貯留室43に連通する供給穴44が形成されており、この供給穴44を通じて、マスト6を収縮する際に空気室27内に形成される上記圧縮空気が貯留室43内のグリースを加圧する。圧縮空気によって加圧された貯留室43内に貯留されているグリースは、第3の管柱9の側壁に形成された吐出穴47から押し出されて、シール41に供給される。
【0036】
このように、本発明に係る伸縮支柱1では、マスト6を収縮させた場合に空気室27内に形成される圧縮空気で貯留室43内のグリースを加圧することにより、強制的にシール41にグリースを供給することができる。すなわち、通常の使用を継続している限り、本実施形態に係る伸縮支柱1によれば、ユーザが何ら意識しなくても、貯留室43に貯留されているグリースを確実にシール41に供給し続けることができる。従って、伸縮支柱1は、シール41の劣化を防いで円滑に動作させることができるので、操作性をより確実に向上することができる。
【0037】
また、第2の管柱8に設けた連通部28には、固定部材として連通穴付ボルト50を用いた。これにより、グリースを貯留しておく貯留室43に別途連通穴51を設けることなく、確実に第1の管柱7側と第3の管柱9側とを連通して、空気室27を形成することができる。従って、伸縮支柱1では、マスト6を製造する際の製造工数を低減できると共に、連通穴51からのグリース漏れを防止することができる。
【0038】
次に、弁体60の変形例について図4を参照して説明する。図4に示す弁体60は、第2の通気穴32の空気室27側に形成されたオリフィス32aを塞ぐように設けられたケース61と、該ケース61内に装填されたコイルバネ62と、該コイルバネ62によって付勢された状態で前記第2の通気穴32を閉塞するように設置されたボ−ル弁63とからなる。尚、ケース61体には、予め空気穴64が穿設されている。
【0039】
このように構成された弁体60は、マスト6を収縮する場合、すなわち、空気室27内の圧力の方が外気圧より高い場合は、コイルバネ62の付勢力によってボ−ル弁63が第2の通気穴32に押し付けられ、第2の通気穴32を閉塞する。これにより、伸縮装置1は、空気室27内の空気を第1の通気穴31のみから緩やかに逃がすことにより、マスト6を緩やかに収縮する。
【0040】
一方、マスト6を伸長する場合、すなわち、外気圧と空気室27内の圧力差によってボ−ル弁63に生じる上方向の力が、コイルバネ62の付勢力より大きくなった場合、ボ−ル弁63が前記上方向の力によってオリフィス32aから持ち上げられることにより、第2の通気穴32が開放される。これにより、マスト6は第1の通気穴31に加え、第2の通気穴32を通って空気穴64から空気室27内に外気を取り込むことができる。従って、伸縮装置1は、ユーザに負担を与えることなく、マスト6を円滑に伸長することができる。
【0041】
本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、本実施形態では、中管柱は第2の管柱8を1本とした場合について説明したが、本発明はこれに限らず、中管柱を2本、3本等、複数本としてもよいし、あるいは全く設けないこととしてもよい。
【0042】
また、上記した実施形態では、マスト6は筒形の管柱で構成した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、矩形の管柱で構成してもよい。
【0043】
また、上記した実施形態では、基台は、搬送装置4とした場合について説明したが、本発明はこれに限らず、展開可能な三脚としてもよい。
【0044】
また、上記した実施形態では、固定対象物は、照明装置2とした場合について説明したが、本発明はこれに限らず、カメラや、スピーカに適用してもよい。
【0045】
また、上記した実施形態では、照明装置2は、バルーンを備えるものについて説明したが、本発明はこれに限らず、スポットライトとしてもよい。
【0046】
また、上記した実施形態では、弁体33は、弾性変形可能なゴムの板状部材で構成した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、弾性を有する他の部材、例えば、金属の板状部材などで構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る伸縮支柱の使用状態を示す投光機の全体斜視図である。
【図2】同上、伸縮支柱の縦断面図である。
【図3】同上、圧力調整部の使用状態を示す斜視図であり、(A)伸長時、(B)収縮時を示す図である。
【図4】同上、弁体の変形例を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の管柱を互いに入れ子式に挿入して伸縮自在としたマストと、
前記マストを緩やかに収縮させるブレーキ機構とを備えた
伸縮支柱であって、
前記ブレーキ機構は、
前記マストの基端となる基端管柱に設けられた圧力調整部と、
前記マストの先端となる先端管柱に設けられた閉塞部と、
前記圧力調整部と前記閉塞部とで仕切ることによってマストの内部に形成した空気室とを有し、
前記圧力調整部は、
前記空気室と外部とを連通する第1の通気穴と、
前記空気室と外部とを連通する第2の通気穴と、
前記第2の通気穴のみを開閉自在に閉塞する弁体とが設けられている
ことを特徴とする伸縮支柱。
【請求項2】
前記弁体は、外部から前記空気室内へ流れる空気を通すと共に、前記空気室内から外部へ流れる空気を止めることを特徴とする請求項1記載の伸縮支柱。
【請求項3】
前記閉塞部は、
前記基端管柱の内壁を摺動するシールと、
前記シールに潤滑油を供給する潤滑油供給機構と
を有することを特徴とする請求項1又は2記載の伸縮支柱。
【請求項4】
前記先端管柱と前記基端管柱との間に一又は二以上の中管柱を備え、
前記中管柱は、前記先端管柱と前記基端管柱とを連通する連通部を有し、
前記連通部は、
前記基端管柱の内壁を摺動するシールと、
前記シールに潤滑油を供給する潤滑油供給機構と
を有することを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の伸縮支柱。
【請求項5】
前記潤滑油供給機構は、前記空気室に連通する供給穴が形成されていることを特徴とする請求項4記載の伸縮支柱。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の伸縮支柱を備えたことを特徴とする投光機。

【図1】
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【図2】
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【図3(A)】
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【図3(B)】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−540220(P2009−540220A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539172(P2008−539172)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【国際出願番号】PCT/JP2007/065475
【国際公開番号】WO2008/126340
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(392018595)株式会社ライトボーイ (11)