説明

伸縮構造体

【課題】持ち上げる際に支脚が不意に伸長することを防止できる伸縮構造体を提供することを目的とする。
【解決手段】短筒体3が、外パイプ1に固着する外パイプ固着部4と、円周方向の摩擦接触弧状片5とを、有する。摩擦接触弧状片5の基端部6が外パイプ固着部4に連設されている。摩擦接触弧状片5の先端部7が内径方向へ揺動可能に構成されている。摩擦接触弧状片5の厚さ寸法Tを、基端部6から先端部7へしだいに大きく設定する。短筒体3に回転自在に外嵌される操作用回転キャップ部材9を備える。回転キャップ部材9の内周面10に、摩擦接触弧状片5を外周面11側から押圧可能な軸心方向の押圧突部12を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、机、椅子、テーブル、ベッド等の支脚の高さを調節する伸縮構造体として、外パイプに内パイプを軸心方向への移動自在に挿嵌し、外パイプと内パイプの間に、外パイプと内パイプの短縮方向への相対的移動を規制しつつ伸長方向へ多段階に切換自在とする直線運動多段ラチェット機構を有するとともに、外パイプに短筒体を固着し、短筒体の内周面と内パイプの外周面を摺動させることによって外パイプと内パイプの相対的な移動に対して制動力を付与するスローダウン機構を有するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、直線運動多段ラチェット機構及びスローダウン機構は、外パイプと内パイプの短縮方向への相対的な移動を規制するものであって、伸長方向への相対的な移動はほとんど規制されないので、天板や座部等の上方部位を手で持ち上げる際に、支脚が不意に伸長するという欠点があった。
【特許文献1】特許第3390381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、持ち上げる際に支脚が不意に伸長する点である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明に係る伸縮構造体は、外パイプに内パイプを軸心方向へ移動自在に挿嵌し、上記外パイプと内パイプの間に、該外パイプと内パイプの短縮方向への相対的移動を規制しつつ伸長方向へ多段階に切換自在とする直線運動多段ラチェット機構を有するとともに、上記外パイプに短筒体を固着し、該短筒体の内周面と上記内パイプの外周面を摺動させることによって上記外パイプと内パイプの相対的な移動に対して制動力を付与するスローダウン機構を有する伸縮構造体に於て、上記短筒体が、上記外パイプに固着する外パイプ固着部と、円周方向の摩擦接触弧状片とを、有し、上記摩擦接触弧状片の基端部が上記外パイプ固着部に連設されており、上記摩擦接触弧状片の先端部が内径方向へ揺動可能に構成され、かつ、上記摩擦接触弧状片の厚さ寸法を、上記基端部から先端部へしだいに大きく設定し、さらに、上記短筒体に回転自在に外嵌される操作用回転キャップ部材を備え、該回転キャップ部材の内周面に、上記摩擦接触弧状片を外周面側から押圧可能な軸心方向の押圧突部を有するものである。
【0006】
また、上記短筒体が複数の上記摩擦接触弧状片を有し、かつ、隣合う上記摩擦接触弧状片の間に、間隙を設けたものである。
また、上記押圧突部が上記摩擦接触弧状片に係止する内径方向突出状の抜止め用突部14を有するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の伸縮構造体によれば、持ち上げる際に支脚が不意に伸長することを防止できる。しかも、支脚を伸長したいときは、容易かつ迅速に切換えて、伸長作動させることができる。さらに、コンパクトで構造が簡易であって、故障しにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1・図2は、本発明の実施の一形態の使用状態を示す。この伸縮構造体は、複数本の支柱(支脚)Pを有するテーブルXに用いられている。すなわち、伸縮構造体がテーブルXの支柱Pに用いられている。
【0009】
外パイプ1に内パイプ2を軸心方向へ移動自在に挿嵌し、外パイプ1と内パイプ2の間に、外パイプ1と内パイプ2の短縮方向(全体としての長さが短縮する方向。すなわち、外パイプ1と内パイプ2が重なる部分の長さ寸法が大きくなる方向。)への相対的移動を規制しつつ伸長方向(短縮方向と逆の方向)へ多段階に切換自在とする直線運動多段ラチェット機構Rを有するとともに、外パイプ1の上端18に短筒体3を固着し、短筒体3の内周面19と内パイプ2の外周面16を摺動させることによって外パイプ1と内パイプ2の相対的な移動に対して制動力を付与するスローダウン機構Sを有する(すなわち、本出願人が既に提案した特許第 3390381号の発明と、基礎的技術は同一である)。
【0010】
図1〜図5に示すように、持ち上げる際に支柱Pが不意に伸長することを防止する伸長防止機構Eを有する。具体的には、短筒体3が、外パイプ1に固着する外パイプ固着部4と、円周方向の4枚の摩擦接触弧状片5とを、有する。短筒体3が、プラスチック製であって、一体成形されている。そして、摩擦接触弧状片5の基端部6が、連設部17をもって外パイプ固着部4に連設(一体成形)されており、摩擦接触弧状片5の先端部7が内径方向へ揺動可能に構成されている。言い換えると、外パイプ固着部4と摩擦接触弧状片5の間に、円周方向の切欠部20が設けられている。隣合う摩擦接触弧状片5の間に、間隙8が設けられている。外パイプ固着部4と摩擦接触弧状片5が一体に形成されているので、強度的に優れる。特に、多数回にわたって摩擦接触弧状片5が揺動した場合の耐久性が優れている。
【0011】
摩擦接触弧状片5の厚さ寸法Tが、基端部6から先端部7へしだいに大きく設定されている。すなわち、摩擦接触弧状片5の基端部6の厚さ寸法T1 と先端部7の厚さ寸法T2 が、T1 <T2 となるように設定されている。なお、「しだいに大きく」とは、厚さ寸法Tが一定の部分を有する場合を含むものとする。また、軸心に直交する断面に於て、摩擦接触弧状片5の内周面15を(自由状態時に)内パイプ2の外周面16(外周円)外径寸法よりわずかに(例えば隙間の半径方向の寸法が50μm 〜2mm)大きい仮想円α上に形成することが好ましい。
【0012】
短筒体3に回転自在に外嵌されるプラスチック製操作用回転キャップ部材9を備えている。回転キャップ部材9の内周面10に、摩擦接触弧状片5を外周面11側から押圧可能な軸心方向の帯状の押圧突部12を有する。
【0013】
押圧突部12が摩擦接触弧状片5に係止する内径方向突出状の抜止め用突部14を有する。具体的には、押圧突部12の下端13に断面形状が三角形の抜止め用突部14を有する。抜止め用突部14が切欠部20内に配設されて円周方向に移動自在に構成されている。軸心方向に引抜力がはたらくと、抜止め用突部14が摩擦接触弧状片5の下面21(図5参照)に係止して、操作用回転キャップ部材9が短筒体3から引抜かれる(離脱する)ことを防止する。
【0014】
次に、上述の伸縮構造体の動作のうち本発明の主要動作を説明する。図6は、外パイプ1(図1・図2参照)と内パイプ2が遊嵌状とされた状態(すなわち軸心方向へ移動自在な状態)を示す。具体的には、押圧突部12が摩擦接触弧状片5の基端部6近傍に配設されている。言い換えると、操作用回転キャップ部材9が緩んでいる。操作用回転キャップ部材9を図6の矢印Y方向へ回転させると、押圧突部12が摩擦接触弧状片5の基端部6近傍から先端部7近傍へ円弧状に移動し、摩擦接触弧状片5の外周面11を内径方向へ押圧して基端部6廻りに揺動させる。なお、摩擦接触弧状片5を4枚とする場合、操作用回転キャップ部材9の回転可能角度が50°以上85°以下となるように、摩擦接触弧状片5の基端部6と外パイプ固着部4との連設部17(図5参照)の寸法等を設定することが好ましい。
【0015】
図7は、外パイプ1(図1・図2参照)と内パイプ2が締結された状態(すなわち軸心方向へ移動不可とされた状態)を示す。具体的には、押圧突部12が摩擦接触弧状片5の先端部7近傍に配設されている。言い換えると、操作用回転キャップ部材9が締まっている。このとき、摩擦接触弧状片5の内周面15が、内パイプ2の外周面16に押圧力Fを与える。そして、内パイプ2が軸心方向(及び回転方向)へ移動することを摩擦力により防止する。従って、内パイプ2と、短筒体3が固着された外パイプ1が、軸心方向(及び回転方向)へ相対的に移動不可となる。
【0016】
なお、図示省略するが、本発明の伸縮構造体を、1本の支柱Pを有するテーブル、2本の支柱Pを有する手すり等に用いるも良い。
本発明は、設計変更可能であって、例えば、摩擦接触弧状片5の枚数を増減させるも良い。すなわち、摩擦接触弧状片5の枚数を、1枚、2枚、3枚、5枚、6枚等とするも良い。また、押圧突部12の形状は、円周方向に部分的(局部的)にかつ各摩擦接触弧状片5に対応して配設されていれば良く、(帯状以外に)半球状、直方体状等であっても良い。また、抜止め用突部14の断面形状を(三角形以外に)四角形等としても良い。また、外パイプ固着部4の外周面には、複数本の突条を形成するのが望ましく、図5のような弧状突条や、(図示省略の)三角状突条が好ましい。
【0017】
以上のように、本発明は、外パイプ1に内パイプ2を軸心方向へ移動自在に挿嵌し、外パイプ1と内パイプ2の間に、外パイプ1と内パイプ2の短縮方向への相対的移動を規制しつつ伸長方向へ多段階に切換自在とする直線運動多段ラチェット機構Rを有するとともに、外パイプ1に短筒体3を固着し、短筒体3の内周面10と内パイプ2の外周面11を摺動させることによって外パイプ1と内パイプ2の相対的な移動に対して制動力を付与するスローダウン機構Sを有する伸縮構造体に於て、短筒体3が、外パイプ1に固着する外パイプ固着部4と、円周方向の摩擦接触弧状片5とを、有し、摩擦接触弧状片5の基端部6が外パイプ固着部4に連設されており、摩擦接触弧状片5の先端部7が内径方向へ揺動可能に構成され、かつ、摩擦接触弧状片5の厚さ寸法Tを、基端部6から先端部7へしだいに大きく設定し、さらに、短筒体3に回転自在に外嵌される操作用回転キャップ部材9を備え、回転キャップ部材9の内周面10に、摩擦接触弧状片5を外周面11側から押圧可能な軸心方向の押圧突部12を有するので、外パイプ1と内パイプ2の相対的な移動を調節することがより容易になる。すなわち、持ち上げる際に支柱(支脚)Pが不意に伸長することを防止できる。しかも、支柱Pを伸長したいときは、操作用回転キャップ部材9を緩める方向へ回転させることにより容易かつ迅速に切換えて、伸長作動させることができる。また、支柱Pのふらつきを減少させることができる。さらに、従来のものと比較して部品点数の増加が少ない(すなわち、増加する部材は回転キャップ部材9のみである)。コンパクトで構造が簡易であって、故障しにくい。
【0018】
また、短筒体3が複数の摩擦接触弧状片5を有し、かつ、隣合う摩擦接触弧状片5の間に、間隙8を設けたので、摩擦接触弧状片5が1枚の場合と比較して、円周方向のバランスが良く、強度的に優れる。そして、確実に、内パイプ2に摩擦接触弧状片5を押圧して保持することができる。
【0019】
また、押圧突部12が摩擦接触弧状片5に係止する内径方向突出状の抜止め用突部14を有するので、簡素な構造でありながら、操作用回転キャップ部材9が短筒体3から離脱することを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の使用状態の一例を示す断面図である。
【図2】要部拡大断面斜視図である。
【図3】本発明の実施の一形態の操作用回転キャップ部材を示す正面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】短筒体及び操作用回転キャップ部材の分解状態を示す断面斜視図である。
【図6】説明用要部拡大断面図である。
【図7】説明用要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 外パイプ
2 内パイプ
3 短筒体
4 外パイプ固着部
5 摩擦接触弧状片
6 基端部
7 先端部
8 間隙
9 (操作用)回転キャップ部材
10 内周面
11 外周面
12 押圧突部
14 抜止め用突部
R 直線運動多段ラチェット機構
S スローダウン機構
T 厚さ寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外パイプ(1)に内パイプ(2)を軸心方向へ移動自在に挿嵌し、上記外パイプ(1)と内パイプ(2)の間に、該外パイプ(1)と内パイプ(2)の短縮方向への相対的移動を規制しつつ伸長方向へ多段階に切換自在とする直線運動多段ラチェット機構(R)を有するとともに、上記外パイプ(1)に短筒体(3)を固着し、該短筒体(3)の内周面(10)と上記内パイプ(2)の外周面(11)を摺動させることによって上記外パイプ(1)と内パイプ(2)の相対的な移動に対して制動力を付与するスローダウン機構(S)を有する伸縮構造体に於て、
上記短筒体(3)が、上記外パイプ(1)に固着する外パイプ固着部(4)と、円周方向の摩擦接触弧状片(5)とを、有し、上記摩擦接触弧状片(5)の基端部(6)が上記外パイプ固着部(4)に連設されており、上記摩擦接触弧状片(5)の先端部(7)が内径方向へ揺動可能に構成され、かつ、上記摩擦接触弧状片(5)の厚さ寸法(T)を、上記基端部(6)から先端部(7)へしだいに大きく設定し、
さらに、上記短筒体(3)に回転自在に外嵌される操作用回転キャップ部材(9)を備え、該回転キャップ部材(9)の内周面(10)に、上記摩擦接触弧状片(5)を外周面(11)側から押圧可能な軸心方向の押圧突部(12)を有することを特徴とする伸縮構造体。
【請求項2】
上記短筒体(3)が複数の上記摩擦接触弧状片(5)を有し、かつ、隣合う上記摩擦接触弧状片(5)の間に、間隙(8)を設けた請求項1記載の伸縮構造体。
【請求項3】
上記押圧突部(12)が上記摩擦接触弧状片(5)に係止する内径方向突出状の抜止め用突部(14)を有する請求項1又は2記載の伸縮構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−195442(P2009−195442A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39657(P2008−39657)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(396010373)向陽技研株式会社 (3)
【Fターム(参考)】