説明

伸縮部材試験装置、伸縮部材検査装置、伸縮部材試験方法及び伸縮部材検査方法

【課題】被験体の伸縮方向だけでなく、複数の方向に曲げることができるため、曲げた状態において負荷をかけることができる。
【解決手段】被験体の伸縮部を伸縮させる第1の駆動機構と、弾性体を介して前記第1の駆動機構にとりつけられている被験体の伸縮部を保持する第1の保持手段と、被験体本体を保持する第2の保持手段と、前記第2の保持手段を被験体の伸縮部の伸縮方向を軸として回転させる回転駆動機構と、前記回転駆動機構が固定されているステージと、前記被験体の伸縮部を前記ステージを介して屈曲させる第2の駆動機構とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料に対して圧縮や引張りの繰り返し荷重をかけて疲労試験を行ったり、機械的構造体に対して抜き差しなどの繰り返し動作に対する耐久性を試験するための材料試験装置に関し、特に微小な試験力を必要としたり、繰り返し速度の速い試験に適した材料試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
材料に繰り返し荷重をかけて材料の変形や破壊などの特性を評価する試験装置は疲労試験機として知られている。またこの疲労試験機は、コネクタなどの様に2つの機械的構造体を抜き差しした場合の挿抜耐久性や、伸び縮み可能なアンテナなどの可動部分の伸縮耐久性を試験する場合に利用することができる。
【0003】
従来の材料試験装置は、試験体に対して負荷軸方向に繰り返し荷重をかけて該試験体の特性または耐久性を試験する材料試験装置において、試験装置の全体を支持するフレームと、試験体を固定する試料台と、この試料台を負荷軸に沿って直線的に駆動するリニアモータ駆動部を有する直線駆動部材と、この直線駆動部材を前記フレームに対して負荷軸方向に直線的に駆動するネジザオを備えたものであった(図6参照)。
【特許文献1】特開2002−107278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の技術では、直線駆動方向に負荷をかけることはできるが、試験体が曲げられた状態で負荷をかけることができなかった。
【0005】
上記の問題点を解決すべく、本発明は実際の製品の使用状況に、より近い状態で試験を行える装置、方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)被験体の伸縮部を伸縮させる第1の駆動機構と、
弾性体を介して前記第1の駆動機構にとりつけられている被験体の伸縮部を保持する第1の保持手段と、
被験体本体を保持する第2の保持手段と、
前記第2の保持手段を被験体の伸縮部の伸縮方向を軸として回転させる回転駆動機構と、
前記回転駆動機構が固定されているステージと、
前記被験体の伸縮部を前記ステージを介して屈曲させる第2の駆動機構と
を具備することを特徴とする伸縮部材試験装置。
【0007】
(2)被験体の伸縮部を保持する第1の保持手段と、
被験体本体を保持する第2の保持手段と、
前記第1の保持手段を有し前記伸縮部の伸縮荷重を検査する検査手段と
を具備することを特徴とする伸縮部材検査装置。
【0008】
(3)被験体本体を保持する工程と、
前記第2の保持手段を回転駆動機構によって回転させる工程と、
前記被験体の伸縮部先端を保持する工程と、
前記被験体の伸縮部を屈曲させる工程と
を具備することを特徴とする伸縮部材試験方法。
【0009】
(4)被験体本体を保持する工程と、
前記被験体の伸縮部先端を保持する工程と、
前記伸縮部の伸縮荷重を検査する検査工程と
を具備することを特徴とする伸縮部材検査方法。
【0010】
(5)被験体本体を保持する工程と、
被験体の伸縮部先端を保持する工程と、
前記被験体本体と前記被験体の伸縮部先端とを回転駆動機構によって被験体伸縮部の伸縮方向を軸として同じ方向に同時に回転させる工程と、
前記被験体を屈曲させる工程と
を具備することを特徴とする伸縮部材試験方法。
【発明の効果】
【0011】
被験体の伸縮方向だけでなく、複数の方向に曲げることができるため、曲げた状態において負荷をかけることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施の形態について図1〜図4を用いて説明する。
【0013】
図1、図2は携帯電話のアンテナの伸縮試験装置である。図3は揺動運動による屈曲アーム8(ステージ)と屈曲アーム8上に設けられた長穴11及びカムフォロア10の動きを示した図である。図4は揺動運動による携帯電話アンテナ2の動きを示した図である。
【0014】
まず、伸縮試験装置に設置される被験体の携帯電話機本体部1に関して説明をする。携帯電話の本体部分は根元保持部3によって保持されている。また、この根元保持部3(第2の保持手段)は屈曲アーム8上に固定された回転駆動機構14に接続されている。
【0015】
屈曲アーム8は回転軸を中心として揺動運動をする。揺動運動は直進駆動機構9(第2の駆動機構)によるものである。この運動方向の変換についての構造は後ほど述べる。 屈曲アーム8上に設けられた長穴11と、直進駆動機構9に連動して駆動し長穴11と係合されるカムフォロア10とによって揺動運動が行われる。
【0016】
次に携帯電話アンテナ2に関して説明をする。携帯電話アンテナ2は携帯電話機本体部1に接続されている。携帯電話アンテナ2はアンテナ先端部5を先端保持部4(第1の保持手段)によって保持されている。先端保持部4はコイルバネ6を介して直進駆動機構7(第1の駆動機構)に固定されている。
【0017】
先端保持部4は高圧エア機構と接続しており、対象物を掴んだり放したりすることができる。
【0018】
高圧エア機構以外の機構でも代替可能な機構であれば他の機構を用いてもよい。コイルバネ6は装置の伸縮運動の際に装置においてあらかじめ設定した数値と、実際の被験体の有するサイズの数値の誤差により、被験体を痛めたり検査が十分に行われなかったりすることを防ぐための緩衝材である。コイルバネ以外でも代替可能な部材があれば、他の緩衝材でも良い。
【0019】
直線駆動機構9は、アンテナの揺動回数の入力及び、揺動回数をカウントできる制御部に接続されている。
【0020】
次に、実験時の装置の動きについて説明する。
【0021】
回転駆動機構14、直進駆動機構9、直進駆動機構7が同時にそれぞれ矢印方向A、B,Dの方向に動く。
【0022】
各機構の動きを説明する。直進駆動機構7によりアンテナ先端部5を保持した先端保持部4を矢印D方向で携帯電話機本体部1の方向とは反対の方向に移動させる。これにより携帯電話アンテナ2が伸びる。
【0023】
そして回転駆動機構14により、携帯電話本体1を携帯電話アンテナ2を軸として矢印A方向に回転させ、任意の角度まできたら回転を止める。
【0024】
このとき、携帯電話本体1と携帯電話アンテナ2の相対回転角度を変更させないように、携帯電話アンテナ2を一旦先端保持部4から放し、回転が止まった時点で再び携帯電話アンテナ2を先端保持部4で保持する。
次に図3を参照しながら説明をする。直進駆動機構9によってガイドローラーであるカムフォロア10が矢印B方向の一方向に動く。一方で、長穴11を有する屈曲アーム8は端部下面を回転軸によって固定されている。
【0025】
カムフォロア10は長穴11内を自由に移動できるように係合されているため、カムフォロア10が直線上を移動するとカムフォロア10が長穴11内移動し、長穴11の内側面に作用が働く。その結果長穴11を有する屈曲アーム8が携帯電話機本体部1ごと回転軸を中心に矢印方向Cの一方向へ移動し、携帯電話アンテナ2は図4のように曲げられる。
【0026】
次に、携帯電話アンテナ2の先端保持部4を矢印D方向で携帯電話機本体部1の方向に移動させ、アンテナを縮め、同時に直進駆動機構9によって動くカムフォロア10が初期位置へ戻る。
【0027】
次に再び直進駆動機構7により携帯電話アンテナ2の先端保持部4を矢印D方向で携帯電話機本体部1とは逆の方向に移動させ、アンテナを伸ばす。
【0028】
次に直進駆動機構9によってカムフォロア10が矢印B方向の先ほどとは逆方向に動き、回転軸13を中心として携帯電話機本体部1を屈曲アーム8ごと矢印方向Cの先ほどとは逆方向へ移動する。その結果携帯電話アンテナ2が先ほどとは逆方向へ曲げられる。
【0029】
以上のように直進駆動機構9によるカムフォロア10が矢印B方向に1往復したら、携帯電話本体1は回転駆動機構14によって別の角度に設定される。以上の動作が繰り返される。
【0030】
上記記載において、携帯電話本体1と携帯電話アンテナ2の相対回転角度を変えないために、上記では携帯電話アンテナ2を先端保持部4から放し、回転が止まった時点で再び携帯電話アンテナ2を先端保持部4で保持していたが、代わりに先端保持部4が携帯電話本体1の回転、すなわち回転駆動機構14と同時に動くことができる機構を有していれば携帯電話アンテナ2を先端保持部4から放す必要はなく、部品の特定箇所を摩耗させずに伸縮試験を行うことができる。このとき先端保持部4が極めて回転摩耗の小さい部品を介して直進駆動機構7に固定されることが好ましい。
【0031】
また、上記では根元保持部3を直進駆動機構9と屈曲アーム8により揺動させているが、パルスモータなどの回転駆動系により屈曲アーム8を揺動させても良い。
【0032】
上記の実験をした後、図5に示すように携帯電話アンテナの伸縮力、すなわち摩耗の程度を調べる。先端保持部4を携帯電話アンテナ2から離し、直進駆動機構7全体を退避させた状態で、測定手段15をアンテナ先端部5にセットし伸縮力を測定検査することができる。このような構成により、被験体本体を試験装置から外すことなく装置上での検査が可能となる。
【0033】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。例えば、携帯電話のアンテナに限らず伸縮する部材であれば他の部材でも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の試験装置の平面図。
【図2】本発明の試験装置の正面図。
【図3】本発明の試験装置による屈曲アームの動作を示す図。
【図4】本発明の試験装置による被験体の動きを示す図。
【図5】本発明の試験装置を利用した検査装置の平面図。
【図6】従来の試験装置の正面図。
【符号の説明】
【0035】
1・・・携帯電話機本体部 ,2・・・携帯電話アンテナ,3・・・根元保持部,4・・・先端保持部,5・・・アンテナ先端部,6・・・コイルバネ,7・・・直進駆動機構,8・・・屈曲アーム,9・・・直進駆動機構,10・・・カムフォロア,11・・・長穴,14・・・回転駆動機構,15・・・測定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の伸縮部を伸縮させる第1の駆動機構と、
弾性体を介して前記第1の駆動機構にとりつけられている被験体の伸縮部を保持する第1の保持手段と、
被験体本体を保持する第2の保持手段と、
前記第2の保持手段を被験体の伸縮部の伸縮方向を軸として回転させる回転駆動機構と、
前記回転駆動機構が固定されているステージと、
前記被験体の伸縮部を前記ステージを介して屈曲させる第2の駆動機構と
を具備することを特徴とする伸縮部材試験装置。
【請求項2】
前記第1の駆動機構は伸縮部の伸縮方向に駆動し、第1の保持手段と第2の保持手段の位置を相対的に変化させる駆動機構であることを特徴とする請求項1記載の伸縮部材試験装置。
【請求項3】
前記伸縮部は電波を送信もしくは受信する部材であることを特徴とする請求項1記載の伸縮部材試験装置。
【請求項4】
被験体の伸縮部を保持する第1の保持手段と、
被験体本体を保持する第2の保持手段と、
前記第1の保持手段を有し前記伸縮部の伸縮荷重を検査する検査手段と
を具備することを特徴とする伸縮部材検査装置。
【請求項5】
被験体本体を保持する工程と、
前記第2の保持手段を回転駆動機構によって回転させる工程と、
前記被験体の伸縮部先端を保持する工程と、
前記被験体の伸縮部を屈曲させる工程と
を具備することを特徴とする伸縮部材試験方法。
【請求項6】
前記被験体の伸縮部の屈曲を戻す工程と、
前記被験体の伸縮部先端を放す工程と
を具備することを特徴とする請求項5記載の伸縮部材試験方法。
【請求項7】
前記伸縮部は被験体の電波を送信もしくは受信する部材であることを特徴とする請求項5もしくは請求項6記載の伸縮部材試験方法。
【請求項8】
被験体本体を保持する工程と、
前記被験体の伸縮部先端を保持する工程と、
前記伸縮部の伸縮荷重を検査する検査工程と
を具備することを特徴とする伸縮部材検査方法。
【請求項9】
前記第1の保持手段は前記回転駆動機構と同時に回転することを特徴とした
請求項1記載の伸縮部材試験装置。
【請求項10】
被験体本体を保持する工程と、
被験体の伸縮部先端を保持する工程と、
前記被験体本体と前記被験体の伸縮部先端とを回転駆動機構によって被験体伸縮部の伸縮方向を軸として同じ方向に同時に回転させる工程と、
前記被験体を屈曲させる工程と
を具備することを特徴とする伸縮部材試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−187569(P2007−187569A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6336(P2006−6336)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】