説明

位相シフトマスクの製造方法及びパターン転写方法

【課題】位相シフトマスクを製造する際のアンダーカット形成時のウェットエッチング工程において、非シフタ透光部に生じるダメージを軽減する。
【解決手段】透明基板上に遮光膜と第1レジスト層が形成されたフォトマスクブランクを用意する工程と、第1レジストパターンを形成する工程と、第1レジストパターンをマスクとして遮光膜をエッチングし第1遮光膜パターンを形成する工程と、第1遮光膜パターンまたは第1レジストパターンをマスクとして遮光膜の下層をエッチングにより除去しシフタ透光部を形成する工程と、透明基板上全面に第2レジスト層を形成する工程と、第2レジストパターンを形成する工程と、第2レジストパターンをマスクとして遮光膜をエッチングし、非シフタ透光部を形成する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路や表示装置の製造用に用いられる位相シフトマスクの製造方法、及び該位相シフトマスクを用いたパターン転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マスク基板を掘り込んで位相シフタパターンを形成する位相シフトマスクの製造方法が記載されている。この文献には、位相シフトマスクを用いて被転写体に周期的パターンを転写した場合、位相シフタパターンの有無によってパターン寸法に変動が生じてしまうという課題が記載されている。そして、これを解決するため、位相シフタパターンの寸法を、位相シフタパターンを配置しないパターンの寸法よりも大きくする方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−333316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フォトマスクに形成された転写用パターンを、半導体集積回路等の構成部品に対して精緻に転写するに際し、解像力を向上する方法として、位相シフトマスクが提案され、実用化されている。特に、大規模集積回路(LSI)における高集積化、及び回路パターンの微細化に対応し、超解像技術として有利に適用されている。
【0005】
位相シフトマスクとしては、オルタネイティング型(いわゆるレベンソン型)、エッジ強調型、補助パターン型、クロムレス型、ハーフトーン型等、様々な種類のものが提案されている。このうち、オルタネイティング型位相シフトマスクは、透明基板上にクロム(Cr)等の金属膜等からなる遮光膜により形成された遮光膜パターンを備えて構成されている。そして、例えばラインアンドスペースパターンのように、遮光部と透光部とが繰り返し存在する場合に、遮光部を介して隣接する透光部を透過する透過光の位相が、互いに180°ずれるように構成されている。遮光部を介して隣接する透光部を透過する透過光の位相が、このように互いに所定量ずれることにより、回折光の干渉による解像度の低下を防止でき、ラインアンドスペースパターンの解像度の向上を図ることができる。
【0006】
このような位相シフトマスクにおいては、遮光部を介して隣接する透光部が、透光部を通過する波長λの透過光に対して、
P=λ(2m−1)/2(∵mは自然数) ・・・(1)
の光路長差を生じさせることで、これら透過光の間に180°の位相差を生じさせることができる。
【0007】
このような光路長差を生じさせるためには、透明基板の屈折率をnとしたとき、遮光部を介して隣接する透光部間における透明基板の厚さの差dを、
d=λ(2m−1)/2n ・・・(2)
が成立するような大きさに設定すればよい。そのためには、遮光部を介して隣接する透光部の一方(シフタ透光部という)において、透明基板を掘り込んでその厚みを減少させ、他方(非シフタ透光部という)において、透明基板を掘り込まずにおくとよい。これにより、透光部間における透明基板の厚さに差を設けることができ、係る差を上記(2)式のdに等しくすることができる。
【0008】
あるいは、透明基板上であって遮光膜より透明基板側(下層側)に、位相シフタ層(これが遮光膜の下層となる)を予め設けておき、遮光部を介して隣接する透光部の一方(シフタ透光部)において、位相シフタ層を除去(完全除去または一部除去による減膜)し、他方(非シフタ透光部)において、位相シフタ層を除去しないようにしてもよい。位相シフタ層の屈折率がnであれば、位相シフタ膜の厚さを上記(2)式のdに等しくすることにより、シフタ透光部を通過する透過光と、非シフタ透光部を通過する透過光との間に、180°の位相差を生じさせることができる。なお、シフタ透光部及び非シフタ透光部の命名は、それぞれ逆でも良い。
【0009】
なお、透明基板を掘り込むことによりシフタ透光部を形成したオルタネイティング型の位相シフトマスクでは、掘り込み部の側壁の影響により、掘り込み部が設けられた透光部(シフタ透光部)を通過する透過光の光量が、非掘り込み部(非シフタ透光部)を通過する透過光の光量に対して低下してしまうことがある。そのため、シフタ透光部の寸法と非シフタ透光部の寸法とを同一にしても、被転写体上に転写したパターン寸法が、互いに異なってしまうことがある。この課題を解決する手段として、特許文献1においては、位相シフタパターンを配置したマスクパターン(上記でいうシフタ透光部)の寸法を、位相シフタパターンを配置しないマスクパターン(上記でいう非シフタ透光部)の寸法よりも大きくすることが提案されている。
【0010】
また、特許文献1には、上述の位相シフトマスクの製造方法が開示されている。この製造方法によると、まず遮光膜をエッチングし、遮光膜パターンを画定した後、透明基板の掘り込み加工を行って位相シフトパターンを形成している。以下に、遮光膜パターンを画定した後に、透明基板の掘り込み加工を行う従来の製造工程について、図1を用いて説明する。
【0011】
まず、透明基板1’上に遮光膜2’とレジスト層3’とが形成されたフォトマスクブランク100b’を用意する(図1(a))。そして、このレジスト層3’に所定のパターンを描画して現像することにより、透光部を形成するためのレジストパターン31’を形成する。そして、このレジストパターン31’をマスクとし、所定のエッチャント(エッチング液またはエッチングガス)を用いて遮光膜2’をエッチングし、遮光膜パターン21’を形成する(図1(b))。エッチングが完了したら、レジストパターン31’を剥離する(図1(c))。次に、透明基板1’上にレジスト層4’を再び形成し、このレジスト層4’に所定のパターンを描画して現像することにより、シフタ透光部を形成するためのレジストパターン41’を形成する。そして、このレジストパターン41’と、上記の遮光膜パターン21’のエッジと、をマスクとして、透明基板1’の表層を除去する掘り込みを行う。この掘り込みでは、まず第1段階として、エッチングガスによる透明基板1’の異方性エッチングを行って透明基板1’の表面を所定厚み減少させる(図1(f))。その後、第2段階として、エッチング液を用いた等方性エッチングによって透明基板1’の表面を掘り進むと同時に、遮光膜パターン21’下にアンダーカット部を形成する(図1(g))。その後、レジストパターン41’を剥離することにより、位相シフトマスク100’が完成する(図1(h))。
【0012】
このように、シフタ透光部を形成する最後の段階(図1(g))では、エッチング液を用いたウェットエッチングを適用することにより、透明基板1’の掘り込みを形成するとともに、遮光膜パターン21’を成す遮光膜2’が掘り込み領域に対して迫り出したオーバーハンク形状を形成することができる。すなわち、ウェットエッチングが有する等方性のエッチング挙動を利用することにより、透明基板1’の表層部にオーバーハンク形状を形成することができる。これにより、掘り込み部の側壁の影響によって透過光の光量が低下する不都合が抑制できるようになり、非常に有利である。
【0013】
しかしながら、上述のアンダーカット形成時のウェットエッチング工程(図1(g))には大きな課題があることが、発明者により見出された。
【0014】
透明基板1’は合成石英等のガラスとして構成されていることが一般的であり、このようなSi系材料をウェットエッチングするには、エッチング液としてフッ酸溶液等が用いられる。但し、エッチング液に対するレジストパターン41’の耐性はあまり高くないため、透明基板1’をウェットエッチングする際に、エッチング液がレジストパターン41’中に浸み込んでしまうことがある。更に、レジストパターン41’と遮光膜2’との密着性、及びレジストパターン41’と透明基板1’との密着性も、必ずしも十分ではない。そのため、これらの接合面にはエッチング液が浸み込み易く、エッチング液が透明基板1’の表面に到達してしまい易い。透明基板1’の表面に到達したエッチング液は、透明基板1’の表面を侵食し、ダメージを与えてしまう。この状況を図2に示す。
【0015】
エッチング液の浸み込み量や、透明基板1’が受けるダメージの程度は、ウェットエッチングの処理時間または処理条件等の変更により変化する。場合によっては、レジストパターン41’の一部が剥離し、透明基板1’が深刻なダメージを受ける場合もある。言うまでもなく、透明基板1’の表面の侵食は透過率の低下や位相のずれ等をもたらし、精密部品としてのフォトマスクの性能を阻害してしまう。
【0016】
本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、位相シフトマスクを製造する際のアンダーカット形成時のウェットエッチング工程において、シフタ透光部の構成、透明基板の掘り込み量、使用するレジスト種類や塗布環境等によらず、非シフタ透光部に生じるダメージを軽減でき、製造工程を簡素化でき、欠陥の発生確率を低減することが可能な位相シフトマスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の態様は、
透明基板上に形成された遮光膜によってなる遮光部と、前記遮光部の両側に、前記遮光膜が除去されてそれぞれ形成された透光部と、を有し、前記透光部の一方は前記遮光膜の下層が除去されて形成されたシフタ透光部であり、他の一方は前記遮光膜の下層が除去されない非シフタ透光部である位相シフトマスクの製造方法において、
前記透明基板上に前記遮光膜と第1レジスト層とが形成されたフォトマスクブランクを用意する工程と、
前記第1レジスト層にエネルギービームによる第1描画を行うことにより、前記シフタ透光部を形成するための開口部を有する第1レジストパターンを形成する工程と、
前記第1レジストパターンをマスクとして前記遮光膜をエッチングし、前記シフタ透光部を形成するための開口部を有する第1遮光膜パターンを形成する工程と、
前記第1遮光膜パターンまたは前記第1レジストパターンをマスクとして、前記遮光膜の下層をエッチングにより除去し、前記シフタ透光部を形成する工程と、
前記第1遮光膜パターンを含む前記透明基板上全面に、第2レジスト層を形成する工程と、
前記第2レジスト層にエネルギービームによる第2描画を行うことにより、前記非シフタ透光部を形成するための開口部を有する第2レジストパターンを形成する工程と、
前記第2レジストパターンをマスクとして前記遮光膜をエッチングし、非シフタ透光部を形成する工程と、を有する
位相シフトマスクの製造方法である。
【0018】
本発明の第2の態様は、
前記遮光膜の下層は、前記透明基板の表層である
第1の態様に記載の位相シフトマスクの製造方法である。
【0019】
本発明の第3の態様は、
前記第1遮光膜パターンを形成する工程の後、前記第1レジストパターンを除去し、かつ、前記遮光膜の下層をエッチングにより除去する工程においては、前記第1遮光膜パターンをマスクとしてエッチングを行う
第1または第2の態様に記載の位相シフトマスクの製造方法である。
【0020】
本発明の第4の態様は、
前記遮光膜の下層をエッチングにより除去する工程においては、ウェットエッチングを行う第1〜第3のいずれかの態様に記載の位相シフトマスクの製造方法である。
【0021】
本発明の第5の態様は、
前記遮光膜の下層をエッチングにより除去する工程においては、ドライエッチング及びウェットエッチングを行う第1〜第3のいずれかの態様に記載の位相シフトマスクの製造方法である。
【0022】
本発明の第6の態様は、
前記遮光膜の下層の除去量は、シフタ透光部を透過した露光光の位相と、非シフタ透光部を通過した露光光の位相とを略180°異ならせるような量である
第1〜第5のいずれかの態様に記載の位相シフトマスクの製造方法である。
【0023】
本発明の第7の態様は、
第1〜第6のいずれかの態様に記載の位相シフトマスクの製造方法によって形成された位相シフトマスクを用い、該位相シフトマスクの有する転写パターンを、露光機によって被転写体に転写するパターン転写方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、位相シフトマスクを製造する際のアンダーカット形成時のウェットエッチング工程において、シフタ透光部の構成、透明基板の掘り込み量、使用するレジスト種類や塗布環境等によらず、非シフタ透光部に生じるダメージを軽減でき、製造工程を簡素化でき、欠陥の発生確率を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来の位相シフトマスクの製造工程を例示する概略図である。
【図2】従来の位相シフトマスクの製造工程における課題を例示する概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る位相シフトマスクの製造工程を例示する概略図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る位相シフトマスク、及びその製造工程にて用いられる描画データの平面構成を例示する図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る位相シフトマスクの製造工程を例示する概略図である。
【図6】本発明の実施例に係る位相シフトマスクの製造工程を例示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る位相シフトマスク100の製造工程を例示する概略図である。図4は、本発明の一実施形態に係る位相シフトマスク100、及びその製造工程にて用いられる描画データの平面構成図である。
【0027】
ここでは、一例として、図3(g)に示す構成の位相シフトマスク100の製造方法を説明する。本実施形態に係る製造方法では、透明基板1上に形成された遮光膜2によってなる遮光部と、この遮光部の両側に配置された透光部と、を有する転写用パターンを備えた位相シフトマスク100を製造する。なお、本実施形態に係る製造方法は、例えば、ラインアンドスペースパターンを含む転写パターンを備えた位相シフトマスク100の製造に好適に適用される。上記の両透光部、すなわち、遮光部を介して隣接する透光部は、それぞれ遮光膜2が除去されて透明基板1が露出しているが、一方は、透明基板1の表層がエッチング除去されて掘り込まれており(以下、係る透光部をシフタ透光部と呼ぶ)、他方は除去されていない(以下、係る透光部を非シフタ透光部と呼ぶ)。これにより、両透光部における透明基板1の厚みが異なり、結果として透過する露光光の光路長を異ならせることが出来る。
【0028】
透明基板1の厚みの差である露光光の光路長の差dは、両透光部を透過する露光光の位相差を略180°とするような大きさとすることが好ましい。すなわち、光路長の差dは、シフタ透光部を透過した露光光の位相と、非シフタ透光部を通過した露光光の位相とを、互いに略180°異ならせるような量とすることが好ましい。ここで、略180°とは、例えば180±30°の範囲内とすることができる。なお、後述のとおり、露光光が単一波長でない場合には、露光光に含まれる代表波長を上記式(2)における波長λとし、光路長の差を算定することができる。例えば、露光光波長域の中心波長等を代表波長とすることができる。
【0029】
以下に、本実施形態に係る位相シフトマスク100の製造工程を、図3を参照しながら説明する。
【0030】
まず、透明基板1上に遮光膜2が形成され、更に、遮光膜2上にレジスト層(第1レジスト層とする)3が形成されたフォトマスクブランク100bを用意する(図3(a))。
【0031】
透明基板1は、例えば合成石英(SiO)ガラスや、SiO,Al,B,RO(Rはアルカリ土類金属),RO(Rはアルカリ金属)等を含む低膨張ガラス等からなる平板として構成されている。透明基板1の主面(表面及び裏面)は、研磨される等して平坦且つ平滑に構成されている。
【0032】
遮光膜2としては、露光光(後述)に対して、光学濃度が3.0以上となるような遮光性を有する膜、または、露光光の一部を透過する膜(例えば、透過率が3〜40%、より好ましくは3〜30%であるような膜)を用いることができる。遮光膜2の材料としては、クロム(Cr)や、クロム化合物(窒化物、炭化物、酸化物、酸化窒化物等)、タンタル(Ta)、タンタル化合物(酸化物、窒化物、酸化窒化物等)、金属シリサイド(モリブデンシリサイド、タンタルシリサイド、またはそれらの酸化物等)等、金属を主成分(組成中50at%以上)とする材料を用いることができる。成膜方法としては、例えばスパッタ法等の公知の方法を用いることができる。
【0033】
第1レジスト層3の材料に特に制約はなく、ポジ型レジスト材を用いてもよく、ネガ型レジスト材を用いてもよい。こうしたレジスト材料を遮光膜2上に塗布し、必要に応じてベークすることで、第1レジスト層3を形成することができる。
【0034】
次に、描画機を用いて、第1レジスト層3に、シフタ透光部を形成するためのパターンを描画する。レジスト層3を描画するエネルギービームとしては、例えば電子線やレーザー等を用いることができる。
【0035】
そして、第1レジスト層3を現像することにより、シフタ透光部を形成するための開口部を有するレジストパターン(第1レジストパターンとする)31を形成する。そして、レジストパターン31をマスクとして遮光膜2をエッチングし、シフタ透光部を形成するための開口部を有する第1遮光膜パターン21を形成する(図3(b))。遮光膜2のエッチングは、ドライエッチングにより行っても良く、ウェットエッチングにより行っても良い。遮光膜2に対するドライエッチャントとしては、例えば塩素系のガスを用いることができ、ウェットエッチャントとしては、例えば硝酸第2セリウムアンモニウム等を用いることができる。
【0036】
この後、第1レジストパターン31を剥離する(図3(c))。この段階で洗浄することができる。
【0037】
そして、第1遮光膜パターン21をマスクとして、遮光膜2の下層をエッチングにより除去する。本実施形態では、遮光膜2の下層は透明基板1の表層であるので、この部分をエッチングして掘り込み部を形成する。このエッチングは、主にウェットエッチングにより行うが、ウェットエッチングのみで行っても良く、または、所定の除去量をドライエッチングにより除去し、その後ウェットエッチングを行うようにしても良い。透明基板1に対するドライエッチャントとしては、例えば三フッ化メタン(CHF)ガスと酸素(O)ガスとの混合ガス等を用いることができる。また、ウェットエッチャントとしては、例えばフッ化水素酸(HF)等のフッ酸溶液を用いることができる。いずれにしても、ここでのエッチング工程の最後にはウェットエッチングを行い、等方的なエッチングの性質を利用して、遮光膜2の下層にアンダーカットを形成することが好ましい(図3(d))。ウェットエッチング後には洗浄を行う。
【0038】
上記のようにして、アンダーカット構造のシフタ透光部が形成される。これにより、「掘り込み部の側壁に起因して、掘り込み部(シフタ透光部)を透過する露光光の光量が、掘り込みのない非シフタ透光部を透過する露光光の光量に比べて低下してしまう」という課題を解決することが出来る。
【0039】
ところで、上記の遮光膜2の下層(本実施形態では透明基板1の表層)をエッチングにより除去する工程においては、遮光膜2の開口部は、シフタ透光部を形成する位置のみに存在する。すなわち、掘り込み部以外の透明基板1の表面は、遮光膜2によって全てが覆われている。また、遮光膜2と透明基板1との間は強く密着している。このため、「ウェットエッチング液が遮光膜2と透明基板1との界面に浸み込んで、透明基板1の表面に到達してしまう」という課題を解決することができ、エッチング液による透明基板1のダメージを抑制することが出来る。
【0040】
なお、遮光膜2の下層をエッチング除去する際(図3(d))、第1レジストパターン31を事前に剥離しなくても良い。すなわち、残存する第1レジストパターン31と第1遮光膜パターン21とをマスクとして、遮光膜2の下層のエッチングを行い、その後、第1レジストパターン31を剥離しても構わない。その場合、エッチング液が第1レジストパターン31中に浸み込む現象が生じたとしても、透明基板1の表面は遮光膜2によって覆われて保護されているため、エッチング液は透明基板1の表面に到達することはできない。そのため、第1レジストパターン31を事前に剥離する場合と同様に、透明基板1のエッチング液によるダメージを抑制することが出来る。
【0041】
但し、ウェットエッチングを行う前に、第1レジストパターン31を事前に剥離することがより好ましい。これは、遮光膜2の下層のウェットエッチングに先駆けて、第1レジストパターン31を事前に剥離して洗浄することで、ウェットエッチング環境における異物の存在確率を低減させることができ、結果として、位相シフトマスク100への欠陥発生の機会を大幅に減らすことができる為である。
【0042】
他方、前述のようにドライエッチングとウェットエッチングとを組み合わせて適用する場合には、以下の工程が好ましい。すなわち、ドライエッチングは、図3(b)に示すように、第1レジストパターン31が残存している状態で行うことが好ましい。第1遮光膜パターン21の全面を第1レジストパターン31により保護することで、ドライエッチングによる遮光膜2表面の損傷を回避することが出来る。また、ウェットエッチングは、図3(c)に示すように、第1レジストパターン31を剥離してから行うことが好ましい。これにより、ウェットエッチング環境における異物の存在確率を低減でき、位相シフトマスク100への欠陥発生を抑制することが出来る。
【0043】
遮光膜2の下層のエッチングによりシフタ透光部が形成された後、新たに、透明基板1全面を覆うようにレジスト層(第2レジスト層とする)4を形成する(図3(e))。
【0044】
次いで、第2レジスト層4に、非シフタ透光部を形成するための描画を行う。この描画も、上記と同様に電子ビームを用いて行っても良く、レーザーを用いて行っても良い。そして、描画後の第2レジスト層4を現像し、第2レジストパターン41を形成する。この第2レジストパターン41は、掘り込みの無い透光部、すなわち非シフタ透光部を形成するための開口部を有する。そして、第2レジストパターン41をマスクとして、露出した遮光膜2をエッチングすることで、遮光膜パターン22が形成される(図3(f))。遮光膜2のエッチングは、上記と同様にドライエッチングにより行っても良く、ウェットエッチングにより行っても良い。
【0045】
最後に、第2レジストパターン41を剥離し、洗浄して、本実施形態に係る位相シフトマスク100が完成する(図3(g))。
【0046】
図4(a)は、本実施形態に係る位相シフトマスク100の上面構成を例示する図である。図4の左側は、ダークフィールドとして構成された例を、図4の右側は、クリアフィールドとして構成された例を示しており、いずれも、被転写体上に3本のラインアンドスペースを形成するように構成されている。ここで、ダークフィールドとは、遮光膜2等に覆われた透明基板1の表面に、露光光を透過する透光部からなる設計パターンが形成されたマスクをいい、クリアフィールドとは、露出した透明基板1の表面に、露光光を遮光する遮光部からなる設計パターンが形成されたマスクをいう。
【0047】
図4(b)は、上記ダークフィールドとクリアフィールドのそれぞれに対し、第1の描画で用いられるパターンデータを例示している。このパターンに基づいて第1レジスト層3に描画及び現像が行われることで、第1レジストパターン31が形成される。その後、第1レジストパターン31をマスクとした遮光膜2のエッチングが行われ、更に、遮光膜パターン21をマスクとした透明基板1のウエットエッチングが行われることで、シフタ透光部が形成される。
【0048】
図4(c)は、上記ダークフィールドとクリアフィールドのそれぞれに対し、第2の描画で用いられるパターンデータを例示している。このパターンに基づいて第2レジスト層4に描画及び現像が行われることで、第2レジストパターン41が形成される。その後、第2レジストパターン41をマスクとした遮光膜2のエッチングが行われることで、非シフタ透光部が形成される。
【0049】
このように、透明基板1の表面上で、図4(b)及び(c)に例示するパターンデータを用いたパターニングが順次行われることで、図4(a)に示す位相シフトマスク100が最終的に形成される。なお、位相シフトマスク100を使用して実際に被転写体上にパターンを転写する場合には、トリムマスクを別途用意し、不要なパターン部分を除去することにより、3本のラインアンドスペースを形成することが出来る。
【0050】
本実施形態に係る製造方法によれば、透明基板1のウェットエッチングを行う際、遮光膜2に形成されている開口部は、シフタ透光部形成用の開口部のみである。換言すれば、透明基板1のウェットエッチングを行う際、透明基板1の表面は、エッチング対象の領域以外は全て遮光膜2によって覆われている。この点で、本実施形態に係る製造方法は、先に述べた図1の製造方法とは対照的である。すなわち、エッチング液がレジスト層に浸み込んだり、レジスト層と遮光膜との界面に浸み込んだりすることによる透明基板1表面の損傷が防げるのである。
【0051】
ところで、本実施形態に係る製造方法では、クリアフィールドとして構成された位相シフトマスクを製造する際に、特に顕著な効果が得られる。何故なら、クリアフィールドとして構成された位相シフトマスクを図1に示す従来方法で形成しようとすれば、透明基板の掘り込みを行う際、透明基板上にレジストパターンのエッジが配置されてしまい(図4(a)のP1に対応する部分)、この部分からのエッチング液の浸み込みが生じ易くなってしまうからである。
【0052】
なお、透明基板とレジスト層との界面へのエッチング液の浸み込みや、レジスト層の剥離の懸念に対しては、レジスト層を形成する前に透明基板上にHMDS(ヘキサメチルジシラザン)を供給して透明基板の表面を疎水性にし、レジストと透明基板との密着性を向上させる処理(HMDS処理)を採用することができる。しかしながら、透明基板の掘り込み量、使用するエッチング液の組成、濃度、温度、使用するレジスト種類や透明基板の表面状態、塗布環境等によっては、上述のHMDS処理のみでは充分ではないことが発明者によって認識されている。ところが、本実施形態に係る製造方法を実施すれば、透明基板とレジスト層との界面が存在しない状況で、ウェットエッチングを実施することが可能になる。
【0053】
本実施形態に係る製造方法においては、上述の工程に加えて、更に欠陥検査工程を実施することが可能である。例えば、第1レジストパターン31を剥離、洗浄後(図3(c)の後)に欠陥検査を行ない、透光部に遮光膜2が残存する余剰欠陥が発見された場合には、この段階で、余剰欠陥を除去する修正を施すことができる。これにより、透明基板1の掘り込み後の煩雑なシフタ修正を回避出来る。仮に、遮光膜2の余剰欠陥があっても問題ないと判断される場合には、遮光膜2のエッチング後に、ウェットエッチングによる掘り込みをそのまま引き続き行なっても良い。
【0054】
これに関連し、図1に示す従来方法によると、掘り込み領域に隣接する遮光膜2’のエッジにダメージが生じてしまうことがある。つまり、図1(f)に示すように、透明基板1’の表面をドライエッチングする際には、遮光膜2’のエッジはレジストパターン41’に覆われておらず、部分的に露出している。そのため、透明基板1’のドライエッチングに伴って、遮光膜2’のエッジも局所的にダメージを受けてしまう。その結果、遮光膜2’のエッジと、それ以外の部分とで、表面の反射率が異なってしまい、例えばパターン転写時に異常反射による不都合を生じたり、検査時に欠陥として検出されてしまう不都合を生じることがある。これに対し、本実施形態に係る製造方法によれば、第1レジストパターン31を剥離させてから(すなわち遮光膜2全面を露出させてから)、或いは第1レジストパターン31を剥離せずに(すなわち遮光膜2全面を露出させずに)透明基板1のエッチングを行うため、遮光膜2の表面が部分的にダメージを受けることを回避することができ、遮光膜2の表面の局所的な反射率変化を抑制できる。
【0055】
更には、本実施形態に係る製造方法においては、掘り込みエッチング後に、形成された掘り込み深さを測定し、不足があれば必要に応じてエッチングを追加することが可能である。掘り込みエッチングの際にレジストが無いので、清浄な状態で測定を行うことができ、必要なら洗浄も可能であって、そのままの状態でエッチングを追加することが出来る。
【0056】
以上のように、本実施形態に係る位相シフトマスクの製造方法においては、最初にレジストの無い環境下でウェットエッチングを適用し、シフタ透光部の形成(遮光膜の下層の除去)を行える。従って、特にフッ酸溶液のように、透明基板にダメージを与えるエッチャントを使用することによる諸々の問題点を回避することができる。また、遮光膜の表面(反射防止層)に局所的なダメージが生じることが防止できる。
【0057】
こうした要因により、本実施形態に係る位相シフトマスクの製造方法では、工程全般にわたる欠陥の発生確率を低くすることができる。そして、高品質のオルタネイティング型位相シフトマスクを、安定して製造することができる。
【0058】
本実施形態に係る製造方法によって製造される位相シフトマスクの用途には、特に制約はない。なお、ウェットエッチングに要する時間が長い場合、すなわち、掘り込み量が大きい場合には、本実施形態に係る製造方法の効果が特に顕著に得られる。例えば、露光光として193nmの波長の光を用いる位相シフトマスクであれば、180°の位相差を形成するための透明基板の掘り込み量は170nm程度である(透明基板1の材料である石英の屈折率n=1.56)。また、i線露光用の位相シフトマスクであれば、透明基板の掘り込み量は380nm程度となる。すなわち、従来、ArFエキシマレーザー露光用のフォトマスクでは透明基板の表面の損傷が仮に顕在化しなかった場合であっても、露光光の変化によって、本実施形態に係る製造方法の作用効果が顕著に得られる。本実施形態に係る製造方法は、特に、300nm以上の露光光(i線、h線、g線等)に用いられる位相シフトマスクに対して、特に顕著な効果が得られる。すなわち、掘り込み量(遮光膜下層の除去量厚さ)が300nm以上の場合(例えば、300〜500nm)となるようなウェットエッチングを採用する場合に、特に顕著な効果が得られる。
【0059】
位相シフトマスクは、通常、単一波長の露光光によるパターン転写に用いられることが多い。露光波長に複数の波長が含まれると、180°の位相差を生み出すための掘り込み量の決定が単純ではなくなるからである。しかしながら、波長域をもつ露光光を用いたとしても、その波長域の中の代表値(例えば中央値)の波長に合わせて掘り込み量を決定すると、位相シフトマスクを使用しない場合に比べて、解像力を増加させることが可能である。従って、本実施形態に係る製造方法は、所定の波長域をもつ露光光を用いる位相シフトマスクを製造する際にも、好適に適用可能である。例えば、i線〜g線の波長域を含む露光光を用いる位相シフトマスクを製造する際には、i線、h線、g線のうちいずれかを代表波長とし、或いは、このうち中央値に近いh線を代表波長とすることなどができる。
【0060】
また、上記したように、遮光膜表面の反射率について面内の均一性が確保できるといった理由から、本実施形態に係る製造方法は、大面積のフォトマスクを製造する際に、好適に適用可能である。例えば、液晶表示装置等の表示装置製造用のフォトマスクであって、一辺が500mm以上のフォトマスク等を製造する際に、好適に適用可能である。
【0061】
なお、製造過程で、第1描画(図1(b))と第2描画(図1(f))との相互のアライメントのズレを完全にゼロとすることは難しい。しかしながら、例えば20nm(例えば20〜500nm)程度のアライメントずれが許容されるフォトマスクを製造する際には、本実施形態に係る製造方法は好適に適用可能である。この点においても、本実施形態に係る製造方法は、表示装置製造用のフォトマスクを製造する際に好適に適用可能といえる。
【0062】
本実施形態に係る製造方法による位相シフトマスク100の転写パターンの形状に、特に制約はない。例えば、位相シフトマスク100の転写パターン形状を、1〜500μmの線幅をもつ転写パターンとすることができる。
【0063】
<本発明の他の実施形態>
上述の実施形態において、遮光膜2の下層は、透明基板1の表層として構成されていたが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、遮光膜2の下層であって、透明基板1上に、位相シフタ層5が設けられている場合も本発明に含まれる(図5参照)。その場合、位相シフタ層の材料としては、例えばSOG(Spin On Glass)、SiON、SiO等を用いることができる。この場合、透明基板1と位相シフタ層5との間に、エッチング選択性の異なるエッチングストッパ層を設けても良い。
【0064】
遮光膜1の下層に位相シフタ層5が設けられた本実施形態に係る位相シフトマスク200の製造工程を、図5に示す。
【0065】
まず、透明基板1上に、位相シフタ層5と遮光膜2とがこの順に形成(積層)され、更に、遮光膜2上にレジスト層(第1レジスト層とする)3が形成されたフォトマスクブランク200bを用意する。透明基板1及び遮光膜2の材料は、上述の実施形態と同様である(図5(a))。
【0066】
次に、描画機を用いて、第1レジスト層3に、シフタ透光部を形成するためのパターンを描画する。レジスト層3を描画するエネルギービームとしては、例えば電子線やレーザー等を用いることができる。
【0067】
そして、第1レジスト層3を現像することにより、シフタ透光部を形成するための開口部を有するレジストパターン(第1レジストパターンとする)31を形成する。そして、レジストパターン31をマスクとして遮光膜2をエッチングし、シフタ透光部を形成するための開口部を有する第1遮光膜パターン21を形成する(図5(b))。
【0068】
この後、第1レジストパターン31を剥離する(図5(c))。この段階で洗浄することができる。
【0069】
そして、第1遮光膜パターン21をマスクとして、遮光膜2の下層(位相シフタ層5)をエッチングし、位相シフタ層パターン51を形成する。このエッチングは、主にウェットエッチングにより行うが、ウェットエッチングのみで行ってもよく、または、所定の除去量をドライエッチングにより除去し、その後ウェットエッチングを行うようにしても良い。いずれにしても、ここでのエッチング工程の最後にはウェットエッチングを行い、等方的なエッチングの性質を利用して遮光膜2の下層にアンダーカットを形成することが好ましい(図5(d))。ウェットエッチング後には洗浄を行う。
【0070】
上記のようにして、位相シフタ層5がサイドエッチングされたアンダーカット構造のシフタ透光部が形成される。これにより、「掘り込み部の側壁に起因して、掘り込み部(シフタ透光部)を透過する露光光の光量が、掘り込みのない非シフタ透光部を透過する露光光の光量に比べて低下してしまう」という課題を解決できる。なお、ここでも、ウェットエッチングの際には、シフタ透光部以外の位相シフタ層5の表面は、遮光膜2によって全てが覆われている。また、遮光膜2と位相シフタ層5との間は強く密着している。このため、「ウェットエッチング液が遮光膜2と位相シフタ層5との界面に浸み込んで、位相シフタ層5の表面に到達してしまう」という課題を解決することができ、位相シフタ層5のエッチング液によるダメージを抑制することが出来る。
【0071】
遮光膜2の下層のエッチングによりシフタ透光部が形成されたのち、透明基板1全面を覆うようにレジスト層(第2レジスト層とする)4を形成する(図5(e))。
【0072】
次いで、第2レジスト層4に、非シフタ透光部を形成するための描画を行う。この描画も、上記と同様に電子ビームを用いて行っても良く、レーザーを用いて行っても良い。そして、描画後の第2レジスト層4を現像し、第2レジストパターン41を形成する。この第2レジストパターン41は、シフタ層が除去されない透光部、すなわち非シフタ透光部を形成するための開口部を有する。そして、この第2レジストパターンをマスクとして、露出した遮光膜2をエッチングすることで、遮光膜パターン22が形成される(図5(f))。遮光膜2のエッチングは、ドライエッチングにより行ってもよく、ウェットエッチングにより行っても良い。
【0073】
最後に、第2レジストパターン41を剥離し、洗浄して、本実施形態に係る位相シフトマスク200が完成する(図5(g))。なお、位相シフタ層5と透明基板1との間には、必要に応じて、エッチングストッパ層を設けることができる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0075】
図6(a)に示すように、透明基板として、大きさ6インチ角、厚さ0.25インチの表面を鏡面研磨した石英ガラス基板を用意し、所定の洗浄を施した。この透明基板上に、スパッタリング法により、クロム(Cr)からなる遮光膜を、膜厚100nmとなるように形成した。遮光膜の表面部分には、酸化クロム層からなる反射防止層を形成した。更に、遮光膜上の全面に、スピンコート法により、ポジ型電子線レジスト(日本ゼオン社製「ZEP7000」(登録商標))を膜厚500nmとなるように塗布して第1レジスト層を形成することで、フォトマスクブランクを用意した。
【0076】
次に、図6(b)に示すように、第1レジスト層に対し、シフタ透光部を形成するための所望のパターンを電子線描画し、現像して、第1レジストパターンを形成した。そして、第1レジストパターンをマスクとして、遮光膜に対し、ClとOとの混合ガスを用いてドライエッチングを行い、設計寸法通りの遮光膜パターンを得た。
【0077】
次に、図6(c)に示すように、第1レジストパターンを剥離し、洗浄して、遮光膜パターンを形成した。
【0078】
次に、図6(d)に示すように、透光部の所定箇所に位相シフト部を形成するため、遮光膜パターンをマスクとして、透明基板に対してバッファードフッ酸(BHF)を用いてウェットエッチングを行ない、シフタ透光部(堀り込み部)を形成した。シフタ透光部は、遮光膜の下部に亘るアンダーカット部を有して凹状に形成された。そして、洗浄を施した。なお、この実施例の位相シフトマスクは、ArF(波長193nm)露光用のものであるため、透明基板のエッチング処理量(深さ)は、露光光が180°シフトする量として算定した170nmとした。
【0079】
次に、図6(e)に示すように、ポジ型電子線レジスト(日本ゼオン社製「ZEP7000」)を、膜厚500nmとなるように全面に塗布し、第2レジスト層を形成した。
【0080】
次に、図6(f)に示すように、第2レジスト層に対し、非シフタ透光部を形成するための所定のパターンを電子線で重ねて描画し、現像して、第2レジストパターンを形成した。そして、第2レジストパターンをマスクとして、遮光膜に対してClとOとの混合ガスを用いてドライエッチングを行い、設計寸法通りの遮光膜パターンを得た。
【0081】
次に、図6(g)に示すように、第2レジストパターンを剥離、洗浄して、位相シフトマスクが完成した。
【0082】
このようにして作製した位相シフトマスクの表面を観察、検査したところ、非シフタ透光部においては、エッチング液として用いたフッ酸がしみ込んできたようなダメージは全く検出されなかった。また、露光波長を193nmとして露光したところ、シフタ透光部及び非シフタ透光部のいずれにおいても、透過光量が等しく、均一な線幅の転写パターンを得られることが確認された。
【0083】
なお、本実施例では、透明基板を掘り込むエッチングを、フッ酸を用いたウエットエッチングのみで行った。但し、必要に応じて、ドライエッチングによって所定の掘り込み量までエッチングを行い、その後、ウェットエッチングに切り替えても構わない。このようにドライエッチングとウェットエッチングとを組み合わせて透明基板の掘り込みを行う方法は、露光波長や露光条件に合わせて、所望の掘り込み量やアンダーカット量をそれぞれ選択して得る場合に、有効に使用される。
【0084】
この場合、図6(c)に示す状態で、すなわち、遮光膜の表面が露出した状態で、透明基板を掘り込むドライエッチングが行われる為、遮光膜の表面(特に、遮光膜表面に形成されている反射防止層)に若干ダメージが出ることも考えられる。しかしながら、予め遮光膜の成膜時(特に反射防止層形成時)に、このダメージ分を見越して反射防止層を厚く成膜することで、係る課題は解決可能である。
【0085】
また、上述のとおり、遮光膜のエッチングについては、必要な線幅や精度に応じて、ドライエッチングを用いてもウエットエッチングを用いても良い。
【0086】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0087】
100 位相シフトマスク
1 透明基板
2 遮光膜
3 第1レジスト層
4 第2レジスト層
21 遮光膜パターン
31 第1レジストパターン
41 第2レジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に形成された遮光膜によってなる遮光部と、前記遮光部の両側に、前記遮光膜が除去されてそれぞれ形成された透光部と、を有し、前記透光部の一方は前記遮光膜の下層が除去されて形成されたシフタ透光部であり、他の一方は前記遮光膜の下層が除去されない非シフタ透光部である位相シフトマスクの製造方法において、
前記透明基板上に前記遮光膜と第1レジスト層とが形成されたフォトマスクブランクを用意する工程と、
前記第1レジスト層にエネルギービームによる第1描画を行うことにより、前記シフタ透光部を形成するための開口部を有する第1レジストパターンを形成する工程と、
前記第1レジストパターンをマスクとして前記遮光膜をエッチングし、前記シフタ透光部を形成するための開口部を有する第1遮光膜パターンを形成する工程と、
前記第1遮光膜パターンまたは前記第1レジストパターンをマスクとして、前記遮光膜の下層をエッチングにより除去し、前記シフタ透光部を形成する工程と、
前記第1遮光膜パターンを含む前記透明基板上全面に、第2レジスト層を形成する工程と、
前記第2レジスト層にエネルギービームによる第2描画を行うことにより、前記非シフタ透光部を形成するための開口部を有する第2レジストパターンを形成する工程と、
前記第2レジストパターンをマスクとして前記遮光膜をエッチングし、非シフタ透光部を形成する工程と、を有する
ことを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
【請求項2】
前記遮光膜の下層は、前記透明基板の表層である
ことを特徴とする請求項1に記載の位相シフトマスクの製造方法。
【請求項3】
前記第1遮光膜パターンを形成する工程の後、前記第1レジストパターンを除去し、かつ、前記遮光膜の下層をエッチングにより除去する工程においては、前記第1遮光膜パターンをマスクとしてエッチングを行う
ことを特徴とする請求項1または2に記載の位相シフトマスクの製造方法。
【請求項4】
前記遮光膜の下層をエッチングにより除去する工程においては、ウェットエッチングを行う
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の位相シフトマスクの製造方法。
【請求項5】
前記遮光膜の下層をエッチングにより除去する工程においては、ドライエッチング及びウェットエッチングを行う
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の位相シフトマスクの製造方法。
【請求項6】
前記遮光膜の下層の除去量は、シフタ透光部を透過した露光光の位相と、非シフタ透光部を通過した露光光の位相とを略180°異ならせるような量である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の位相シフトマスクの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の位相シフトマスクの製造方法によって形成された位相シフトマスクを用い、該位相シフトマスクの有する転写パターンを、露光機によって被転写体に転写する
ことを特徴とするパターン転写方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−29786(P2013−29786A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167657(P2011−167657)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】