説明

位相同期装置および方法、データ再生装置および方法、並びに、プログラム

【課題】位相同期装置を含むデータ再生装置のエラーレートを改善して安定に保つことができるようにする。
【解決手段】 PLLの位相誤差情報検出処理として次の処理が実行される。即ち、現在のスライス値およびそれよりも前の幾つかのスライス値の推移パターンが判定される(ステップS23)。その推移パターンが特定パターンではないと判定された場合(ステップS24NO)、基準となる演算手法に従って位相誤差情報が算出される(ステップS25)。これに対して、その推移パターンが特定パターンであると判定された場合(ステップS24YES)、特定パターンに対応する演算手法に従って位相誤差情報が算出される。本発明はPLLや、そのPLLを搭載するデータ再生装置に適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相同期装置および方法、データ再生装置および方法、並びに、プログラムに関し、特に、位相同期装置を含むデータ再生装置において、再生データのエラーレートを改善して、ひいてはデータ再生装置全体を安定に保つことができる、位相同期装置および方法、データ再生装置および方法、並びに、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、位相同期装置のひとつとして登場してきているデジタルPLL(Phase Locked Loop)は(例えば特許文献1乃至6、および非特許文献1参照)、RLL符号に対応する非同期サンプリングデータを入力して、所定のパーシャルレスポンス方式等化に整形された同期サンプリングデータを出力する様に、その位相誤差(phase_error)に基づいてフィードバック制御を行うことができる。
【特許文献1】特開2001−358782号公報
【特許文献2】特許第3071142号公報
【特許文献3】特開平10−69727号公報
【特許文献4】特表平10−508135号公報
【特許文献5】特開2000−76805号公報
【特許文献6】特開2002−42428号公報
【非特許文献1】Interpolated Timing Recovery For Hard Disk Drive Read Channels Mark Spurbeck and Richard T.Behrens / Cirrus Logic 1997 IEEE p1618-1624
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなPLLから出力された同期サンプリングデータから元のデータ(RLL符号化された元のデータ)を再生するデータ再生装置(システム)において、再生データのエラーレートを改善し、ひいてはシステム全体を安定にしたい、という要望が近年数多く挙げられている。
【0004】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、位相同期装置を含むデータ再生装置(システム)において、再生データのエラーレートを改善し、ひいてはシステム全体を安定に保つことができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の位相同期装置は、d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータが、所定の周波数に非同期で読み出された場合、その非同期のデータから、所定の周波数に同期させた同期データを生成する位相同期装置であって、同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出手段を備え、位相誤差情報検出手段は、同期データを構成する各サンプリング値のうちの処理対象のサンプリング値に関する所定の情報が、予め定められた特定パターンであるのか否かを、ラン制限による情報により判定する特定パターン判定手段と、特定パターン判定手段により特定パターンであると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出手段とを有することを特徴とする。
【0006】
ラン制限による情報とは、dが1以上となる最小ランに基づく情報であるようにすることができる。
【0007】
特定パターンとは、同期データを構成する各サンプリング値のうちの、処理対象のサンプリング値を含む所定の範囲内の状態が理想状態のときには存在し得ないパターンであるようにすることができる。
【0008】
ラン制限による情報とは、同期データの最小ランの制限に基づくパーシャルレスポンス応答の推移を示す情報であり、特定パターンとは、同期データの最小ランの制限に基づくパーシャルレスポンス応答の推移の全パターンのうちの、所定の範囲内の状態が理想状態のときには存在し得ないパターンであるようにすることができる。
【0009】
同期データの最小ランの制限に基づくパーシャルレスポンス応答は、d=1かつPR(1,-1)の応答であり、特定パターン判定手段は、d=1かつPR(1,-1)の応答の推移のパターンが、所定の範囲内の状態が理想状態のときには存在し得ないパターンである場合、特定パターンであると判定し、それ以外のパターンである場合、特定パターンではないと判定するようにすることができる。
【0010】
特定パターンとして、処理対象のサンプリングデータを含む所定の範囲内のサンプリングデータの位相位置が理想状態の位置からずれたことに起因して生じる第1の種類の特定パターンと、所定の範囲内のサンプリングデータの位相位置には依存せずに理想状態のときには存在し得ない第2の種類の特定パターンとが存在するようにすることができる。
【0011】
同期データの最小ランの制限に基づくパーシャルレスポンス応答は、d=1かつPR(1,0,-1)の応答であり、特定パターン判定手段は、d=1かつPR(1,0,-1)の応答の推移のパターンが、所定の範囲内の状態が理想状態のときには存在し得ないパターンである場合、特定パターンであると判定し、それ以外のパターンである場合、特定パターンではないと判定するようにすることができる。
【0012】
特定パターンとして、処理対象のサンプリングデータを含む所定の範囲内のサンプリングデータの位相位置が理想状態の位置からずれたことに起因して生じる第1の種類の特定パターンと、所定の範囲内のサンプリングデータの位相位置には依存せずに理想状態のときには存在し得ない第2の種類の特定パターンとが存在するようにすることができる。
【0013】
位相誤差情報算出手段は、少なくとも処理対象のサンプリング値を利用して位相誤差情報を算出するようにすることができる。
【0014】
位相誤差情報算出手段は、さらに、同期データのうちの処理対象のサンプリング値を含む所定の区間内の2以上のサンプリング値と、所定の区間内の2以上のサンプリング値のそれぞれに対する2以上の仮判定値とを利用して、位相誤差情報を算出するようにすることができる。
【0015】
位相誤差情報検出手段は、所定の区間内の2以上のサンプリング値のそれぞれに対する2以上の仮判定値を算出する仮判定値算出手段をさらに設け、特定パターン判定手段は、仮判定値算出手段により算出された2以上の仮判定値をラン制限による情報として、特定パターンであるか否かを判定するようにすることができる。
【0016】
特定パターン判定手段は、特定パターンであると判定した場合、さらに、複数の種類に分類される特定パターンのうちの何れの種類であるのかを判定し、位相誤差情報算出手段は、さらに、特定パターンの複数の種類のそれぞれを区別して、位相誤差情報をそれぞれ算出するようにすることができる。
【0017】
特定パターンの複数の種類として、処理対象のサンプリングデータを含む所定の範囲内のサンプリングデータの位相位置が理想状態の位置からずれたことに起因して生じる第1の種類と、所定の範囲内のサンプリングデータの位相位置には依存せずに理想状態のときには存在し得ない第2の種類とが少なくとも存在するようにすることができる。
【0018】
位相誤差情報算出手段は、特定パターン判定手段により特定パターンではないと判定された場合、基準となる第1の演算手法に従って位相誤差情報を算出し、特定パターンのうちの第1の種類であると判定された場合、第2の演算手法に従って位相誤差情報を算出し、特定パターンのうちの第2の種類であると判定された場合、第3の演算手法に従って位相誤差情報を算出するようにすることができる。
【0019】
第2の演算手法と第3の演算手法とのうちの少なくとも一方は、位相誤差情報として固定の0を出力する手法であるようにすることができる。
【0020】
第2の演算手法と第3の演算手法とのうちの少なくとも一方は、第1の演算手法に従って位相誤差情報として算出された値に対して、異なる符号の値を位相誤差情報として算出する手法であるようにすることができる。
【0021】
第1の演算手法とは、所定の演算式による演算値を位相誤差情報として出力する手法であり、第2の演算手法と第3の演算手法とのうちの少なくとも一方は、所定の演算式による演算値の符号を反転させた値を位相誤差情報として出力する手法であるようにすることができる。
【0022】
本発明の位相同期方法は、d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータが、所定の周波数に非同期で読み出された場合、その非同期のデータから、所定の周波数に同期させた同期データを生成する位相同期装置の位相同期方法であって、同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出ステップを含み、位相誤差情報検出ステップは、同期データを構成する各サンプリング値のうちの処理対象のサンプリング値に関する所定の情報が、予め定められた特定パターンであるのか否かを、ラン制限による情報により判定する特定パターン判定ステップと、特定パターン判定ステップの処理により特定パターンであると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出ステップとを含むことを特徴とする。
【0023】
本発明の第1のプログラムは、上述した本発明の位相同期方法に対応するプログラムであることを特徴とする。
【0024】
本発明の位相同期装置および方法並びに第1のプログラムにおいては、d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータが、所定の周波数に非同期で読み出された場合、その非同期のデータから、所定の周波数に同期させた同期データが生成される。このとき、同期データの位相誤差を示す位相誤差情報が検出され、その位相誤差情報に基づいて同期データ(次以降のサンプリング値)が生成される。詳細には、同期データを構成する各サンプリング値のうちの処理対象のサンプリング値に関する所定の情報が、予め定められた特定パターンであるのか否かが、ラン制限による情報により判定される。そして、特定パターンであると判定された場合とそうではないと判定された場合とが区別されて、位相誤差情報がそれぞれ算出される。
【0025】
本発明のデータ再生装置は、d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータを再生するデータ再生装置であって、データがアナログ信号として所定の記録媒体から読み出された場合、そのアナログ信号の微分応答信号を生成する微分手段と、微分手段により生成されたアナログの微分応答信号を、所定の周波数に非同期でサンプリングすることで、非同期データを生成するサンプリング手段と、サンプリング手段により生成された非同期データから、所定の周波数に同期した同期データを生成する位相同期手段とを備え、位相同期手段は、同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出手段を有し、位相誤差情報検出手段は、同期データを構成する各サンプリング値のうちの処理対象のサンプリング値に関する所定の情報が、予め定められた特定パターンであるのか否かを、ラン制限による情報により判定する特定パターン判定手段と、特定パターン判定手段により特定パターンであると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出手段とを有することを特徴とする。
【0026】
データ再生装置はさらに、サンプリング手段により生成された非同期データを所定の波形に整形し、整形後の非同期データを出力する波形整形手段と、波形整形手段から出力された非同期データのゲイン制御(AGC:Auto Gain Control)およびDC(Direct Current)オフセットキャンセル(DCC:DC Cancel)を行い、AGCおよびDCC後の非同期データを出力するAGC/DCC手段とを備え、位相同期手段は、AGC/DCC手段から出力された非同期データから、同期データを生成するようにすることができる。
【0027】
データ再生装置はさらに、位相同期手段により生成された同期データから、RLL記録符号に対応するチャネルビット列を検出するデータ検出手段と、データ検出手段により検出されたチャネルビット列をデコードするデコード手段とを設けるようにすることができる。
【0028】
位相同期手段は、位相誤差情報検出手段により検出された位相誤差情報を少なくとも用いてループフィルタ演算を行い、その演算結果を出力するループフィルタ手段と、ループフィルタ手段から出力された演算結果についての所定の累算処理を行い、その処理結果に基づいて、非同期データを構成する各サンプリング値の位相位置を調整するために必要な情報を生成して出力する剰余累算手段と、剰余累算手段から出力された情報を利用して、非同期データを構成する各サンプリング値の位相位置を調整し、調整後の各サンプリング値から構成されるデータを同期データとして出力する位相調整手段とをさらに有するようにすることができる。
【0029】
位相同期手段の位相誤差情報検出手段は、同期サンプルを構成する各サンプリング値のそれぞれと所定の閾値とを比較し、その比較の結果に基づいてスライス値を算出するスライス手段をさらに有し、位相誤差情報検出手段の特定パターン判定手段は、スライス手段により算出されるスライス値の推移をラン制限による情報として、特定パターンであるのか否かを判定するようにすることができる。
【0030】
記録媒体に記録されているRLL記録符号のd=1であり、位相誤差情報検出手段は、PR(1,-1)等化のアルゴリズムに従って位相誤差情報を検出しているようにすることができる。
【0031】
同期データを構成する各サンプリング値のうちの、処理対象のサンプリングデータが第1の値とされ、第1の値の1つ前の値が、第2の値とされており、特定パターン判定手段は、スライス手段により算出されたスライス値のうちの、第2の値に対応する第2のスライス値と、第1の値に対応する第1のスライス値との組み合わせに基づいて、特定パターンであるのか否かを判定し、位相誤差情報算出手段は、特定パターンではないと判定された場合、第1の値をdata_nowとし、第2の値をdata_Dとし、第1のスライス値をslice_nowとし、第2のスライス値をslice_Dとして、位相誤差情報をphase_errとして、phase_err = (data_now * slice_D) - (data_D * slice_now)で示される演算式を利用する第1の演算手法に従って、位相誤差情報を算出し、特定パターンであると判定された場合、第1の演算手法とは異なる演算手法に従って、位相誤差情報を算出するようにすることができる。
【0032】
同期データを構成する各サンプリング値のうちの、第2の値の1つ前の値が第3の値とされており、特定パターン判定手段は、スライス手段により算出されたスライス値のうちの、さらに、第3の値に対応する第3のスライス値と、第2のスライス値と、第1のスライス値との組み合わせに基づいて、特定パターンであるのか否かを判定するようにすることができる。
【0033】
第1の演算手法とは異なる演算手法とは、所定の値を位相誤差情報として出力する手法であるようにすることができる。
【0034】
特定パターン判定手段は、特定パターンであると判定した場合、さらに、複数の種類に分類される特定パターンのうちの何れの種類であるのかを判定し、位相誤差情報算出手段は、さらに、特定パターンの複数の種類のそれぞれを区別して、位相誤差情報をそれぞれ算出するようにすることができる。
【0035】
特定パターンの複数の種類として、第1の種類と第2の種類とが少なくとも存在するようにすることができる。
【0036】
位相誤差情報算出手段は、特定パターン判定手段により特定パターンではないと判定された場合、第1の演算手法に従って位相誤差情報を算出し、特定パターンのうちの第1の種類であると判定された場合、第1の演算手法とは異なる第2の演算手法に従って位相誤差情報を算出し、特定パターンのうちの第2の種類であると判定された場合、第1の演算手法とは異なる第3の演算手法に従って位相誤差情報を算出するようにすることができる。
【0037】
第2の演算手法と第3の演算手法とのうちの少なくとも一方は、位相誤差情報をrev_phase_errとして、rev_phase_err = -phase_errで示される演算式を利用する演算手法であるようにすることができる。
【0038】
第2の演算手法とと第3の演算手法とのうちの少なくとも一方は、phase_errの符号が+の場合には−でありphase_errの符号が−の場合には+であることを(phase_err出力の反転符号)と記述し、所定の定数をRLEVとし、位相誤差情報をrev_phase_errとして、rev_phase_err =(phase_err出力の反転符号) × RLEVで示される演算式を利用する演算手法であるようにすることができる。
【0039】
第2の演算手法と第3の演算手法とのうちの少なくとも一方は、所定の値を位相情報として出力する手法であるようにすることができる。
【0040】
記録媒体に記録されているRLL記録符号のd=1であり、位相誤差情報検出手段は、PR(1,0,-1)等化のアルゴリズムに従って位相誤差情報を検出しているようにすることができる。
【0041】
同期データを構成する各サンプリング値のうちの、処理対象のサンプリングデータが第1の値とされ、第1の値の1つ前の値が、第2の値とされており、第2の値の1つ前の値が第3の値とされており、特定パターン判定手段は、スライス手段により算出されたスライス値のうちの、第3の値に対応する第3のスライス値と、第2の値に対応する第2のスライス値と、第1の値に対応する第1のスライス値との組み合わせに基づいて、特定パターンであるのか否かを判定し、位相誤差情報算出手段は、特定パターンではないと判定された場合、第1の値をdata_nowとし、第2の値をdata_Dとし、第1のスライス値をslice_nowとし、第2のスライス値をslice_Dとして、位相誤差情報をphase_errとして、slice_nowとslice_Dが共に0でない時において、phase_err = (data_now * slice_D) - (data_D * slice_now)で示される演算式を利用する第1の演算手法に従って、位相誤差情報を算出し、特定パターンであると判定された場合、第1の演算手法とは異なる演算手法に従って、位相誤差情報を算出するようにすることができる。
【0042】
第1の演算手法とは異なる演算手法とは、所定の値を位相誤差情報として出力する手法であるようにすることができる。
【0043】
特定パターン判定手段は、特定パターンであると判定した場合、さらに、複数の種類に分類される特定パターンのうちの何れの種類であるのかを判定し、位相誤差情報算出手段は、さらに、特定パターンの複数の種類のそれぞれを区別して、位相誤差情報をそれぞれ算出するようにすることができる。
【0044】
特定パターンの複数の種類として、第1の種類と第2の種類とが少なくとも存在するようにすることができる。
【0045】
位相誤差情報算出手段は、記特定パターン判定手段により特定パターンではないと判定された場合、第1の演算手法に従って位相誤差情報を算出し、特定パターンのうちの第1の種類であると判定された場合、第1の演算手法とは異なる第2の演算手法に従って位相誤差情報を算出し、特定パターンのうちの第2の種類であると判定された場合、第1の演算手法とは異なる第3の演算手法に従って位相誤差情報を算出するようにすることができる。
【0046】
第2の演算手法と第3の演算手法とのうちの少なくとも一方は、位相誤差情報をrev_phase_errとして、rev_phase_err = -phase_errで示される演算式を利用する演算手法であるようにすることができる。
【0047】
第2の演算手法と第3の演算手法とのうちの少なくとも一方は、phase_errの符号が+の場合には−でありphase_errの符号が−の場合には+であることを(phase_err出力の反転符号)と記述し、所定の定数をRLEVとし、位相誤差情報をrev_phase_errとして、rev_phase_err =(phase_err出力の反転符号) × RLEVで示される演算式を利用する演算手法であるようにすることができる。
【0048】
第2の演算手法と第3の演算手法とのうちの少なくとも一方は、所定の値を位相情報として出力する手法であるようにすることができる。
【0049】
第1の種類の特定パターンは、処理対象のサンプリングデータを含む所定の範囲内のサンプリングデータの位相位置が理想状態の位置からずれたことに起因して生じるパターンであり、第2の種類の特定パターンは、所定の範囲内のサンプリングデータの位相位置には依存せずに理想状態のときには存在し得ないパターンであるようにすることができる。
【0050】
第2の演算手法とは、第3の値をdata_2Dとし、第3のスライス値をslice_2Dとして、phase_err_2D = (data_now × slice_D)−(data_2D×slice_D)として、位相誤差情報をrev_phase_err_2Dとして、rev_phase_err_2D = −phase_err_2Dで示される演算式を利用する演算手法であり、第3の演算手法とは、所定の値を位相誤差情報として出力する手法であるようにすることができる。
【0051】
第2の演算手法とは、第3の値をdata_2Dとし、第3のスライス値をslice_2Dとして、phase_err_2D = (data_now × slice_D)−(data_2D×slice_D)として、phase_err_2Dの符号が+の場合には−でありphase_err_2Dの符号が−の場合には+であることを(phase_err_2D出力の反転符号)と記述し、所定の定数をRLEVとし、位相誤差情報をrev_phase_err_2Dとして、rev_phase_err_2D =(phase_err_2D出力の反転符号) × RLEVで示される演算式を利用する演算手法であり、第3の演算手法とは、所定の値を位相誤差情報として出力する手法であるようにすることができる。
【0052】
本発明のデータ再生方法は、d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータを再生するデータ再生装置のデータ再生方法であって、データがアナログ信号として所定の記録媒体から読み出された場合、そのアナログ信号の微分応答信号を生成する微分ステップと、微分ステップの処理により生成されたアナログの微分応答信号を、所定の周波数に非同期でサンプリングすることで、非同期データを生成するサンプリングステップと、サンプリングステップの処理により生成された非同期データから、所定の周波数に同期した同期データを生成する位相同期ステップとを含み、位相同期ステップは、同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出ステップを有し、位相誤差情報検出ステップは、同期データを構成する各サンプリング値のうちの処理対象のサンプリング値に関する所定の情報が、予め定められた特定パターンであるのか否かを、ラン制限による情報により判定する特定パターン判定ステップと、特定パターン判定ステップの処理により特定パターンであると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出ステップとを含むことを特徴とする。
【0053】
本発明の第2のプログラムは、上述した本発明のデータ再生方法に対応するプログラムであることを特徴とする。
【0054】
本発明のデータ再生装置および方法並びに第2のプログラムにおいては、d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータが再生される。詳細には、データがアナログ信号として所定の記録媒体から読み出された場合、そのアナログ信号の微分応答信号が生成され、アナログの微分応答信号が所定の周波数に非同期でサンプリングされることで非同期データを生成され、生成された非同期データから、所定の周波数に同期した同期データが生成される。この同期データは、同期データの位相誤差を示す位相誤差情報に基づいて生成される。この位相誤差情報は次のように算出される。即ち、同期データを構成する各サンプリング値のうちの処理対象のサンプリング値に関する所定の情報が、予め定められた特定パターンであるのか否かが、ラン制限による情報により判定される。そして、特定パターンであると判定された場合とそうではないと判定された場合とが区別されて、位相誤差情報をそれぞれ算出される。
【発明の効果】
【0055】
本発明によれば、位相同期装置またはそれを含むデータ再生装置を提供することが可能になる。特に、位相同期装置を含むデータ再生装置(システム)において、再生データのエラーレートを改善して、ひいてはシステム全体を安定に保つことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、請求項に記載の構成要件と、発明の実施の形態における具体例との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、請求項に記載されている発明をサポートする具体例が、発明の実施の形態に記載されていることを確認するためのものである。従って、発明の実施の形態中には記載されているが、構成要件に対応するものとして、ここには記載されていない具体例があったとしても、そのことは、その具体例が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、具体例が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その具体例が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
【0057】
さらに、この記載は、発明の実施の形態に記載されている具体例に対応する発明が、請求項に全て記載されていることを意味するものではない。換言すれば、この記載は、発明の実施の形態に記載されている具体例に対応する発明であって、この出願の請求項には記載されていない発明の存在、すなわち、将来、分割出願されたり、補正により追加される発明の存在を否定するものではない。
【0058】
本発明によれば、位相同期装置が提供される。この位相同期装置(例えば図4のPLL部5)は、
d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータが、所定の周波数に非同期で読み出された場合、その非同期のデータから、前記所定の周波数に同期させた同期データを生成する位相同期装置であって、
前記同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出手段(例えば図4の位相誤差情報検出部31)を備え、
前記位相誤差情報検出手段は、
前記同期データを構成する各サンプリング値のうちの処理対象のサンプリング値に関する所定の情報が、予め定められた特定パターンであるのか否かを、ラン制限による情報により判定する特定パターン判定手段(例えば図4の特定パターン検出部51)と、
前記特定パターン判定手段により前記特定パターンであると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出手段(例えば図4の位相誤差情報演算部52)と
を有することを特徴とする。
【0059】
この位相同期装置の前記位相誤差情報検出手段は、
前記所定の区間内の2以上の前記サンプリング値のそれぞれに対する2以上の前記仮判定値を算出する仮判定値算出手段(例えば図4のスライス部41)をさらに備え、
前記特定パターン判定手段は、前記仮判定値算出手段により算出された2以上の前記仮判定値を前記ラン制限による情報として、前記特定パターンであるか否かを判定する
ようにすることができる。
【0060】
本発明によれば、上述した本発明の位相同期装置の位相同期方法が提供される。この位相同期方法は、
前記同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出ステップ(例えば図5の位相誤差情報検出処理)を含み、
前記位相誤差情報検出ステップは、
前記同期データを構成する各サンプリング値のうちの処理対象のサンプリング値に関する所定の情報が、予め定められた特定パターンであるのか否かを、ラン制限による情報により判定する特定パターン判定ステップ(例えば図5のステップS23とS24)と、
前記特定パターン判定ステップの処理により前記特定パターンであると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出ステップ(例えば図5のステップS25とS26)と
を含むことを特徴とする。
【0061】
本発明によれば、上述した本発明の位相同期方法に対応する第1のプログラムや、その第1のプログラムが記録された記録媒体が提供される。この第1のプログラムは、後述するように、例えば図17の構成のコンピュータにより実行される。
【0062】
本発明によれば、データ再生装置が提供される。このデータ再生装置(例えば図1のデータ再生装置)は、
d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータを再生するデータ再生装置であって、
前記データがアナログ信号として前記所定の記録媒体から読み出された場合、そのアナログ信号の微分応答信号を生成する微分手段(例えば図1の微分フィルタ部1)と、
前記微分手段により生成されたアナログの前記微分応答信号を、所定の周波数に非同期でサンプリングすることで、非同期データを生成するサンプリング手段(例えば図1のA/D変換部2)と、
前記サンプリング手段により生成された前記非同期データから、前記所定の周波数に同期した同期データを生成する位相同期手段(例えば図1や図4のPLL部5)と
を備え、
前記位相同期手段は、前記同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出手段(例えば図4の位相誤差情報検出部31)を有し、
前記位相誤差情報検出手段は、
前記同期データを構成する各サンプリング値のうちの処理対象のサンプリング値に関する所定の情報が、予め定められた特定パターンであるのか否かを、ラン制限による情報により判定する特定パターン判定手段(例えば図4の特定パターン検出部51)と、
前記特定パターン判定手段により前記特定パターンであると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出手段(例えば図4の位相誤差情報演算部52)と
を有することを特徴とする。
【0063】
このデータ再生装置はさらに、
前記サンプリング手段により生成された前記非同期データを所定の波形に整形し、整形後の前記非同期データを出力する波形整形手段(例えば図1のEQ部3)と、
前記波形整形手段から出力された前記非同期データのゲイン制御(AGC:Auto Gain Control)およびDC(Direct Current)オフセットキャンセル(DCC:DC Cancel)を行い、AGCおよびDCC後の前記非同期データを出力するAGC/DCC手段(例えば図1のAGC/DCC部4)と
を設け、
前記位相同期手段は、前記AGC/DCC手段から出力された前記非同期データから、前記同期データを生成する
ようにすることができる。
【0064】
このデータ再生装置はさらに、
前記位相同期手段により生成された前記同期データから、前記RLL記録符号に対応するチャネルビット列を検出するデータ検出手段(例えば図1のPRML部6)と、
前記データ検出手段により検出された前記チャネルビット列をデコードするデコード手段(例えば図1のデコード部7)と
を設けるようにすることができる。
【0065】
このデータ再生装置の前記位相同期手段は、
前記位相誤差情報検出手段により検出された前記位相誤差情報を少なくとも用いてループフィルタ演算を行い、その演算結果を出力するループフィルタ手段(例えば図4のループフィルタ部13)と、
前記ループフィルタ手段から出力された演算結果についての所定の累算処理を行い、その処理結果に基づいて、前記非同期データを構成する各サンプリング値の位相位置を調整するために必要な情報を生成して出力する剰余累算手段(例えば図4の剰余累算部14)と、
前記剰余累算手段から出力された前記情報を利用して、前記非同期データを構成する前記各サンプリング値の位相位置を調整し、調整後の前記各サンプリング値から構成されるデータを前記同期データとして出力する位相調整手段(例えば図4の補間フィルタ部11)と
をさらに有するようにすることができる。
【0066】
このデータ再生装置の前記位相同期手段の前記位相誤差情報検出手段は、
前記同期サンプルを構成する前記各サンプリング値のそれぞれと所定の閾値とを比較し、その比較の結果に基づいてスライス値を算出するスライス手段(例えば図4のスライス部41)
をさらに有し、
前記位相誤差情報検出手段の前記特定パターン判定手段は、
前記スライス手段により算出される前記スライス値の推移を前記ラン制限による情報として、前記特定パターンであるのか否かを判定する
ようにすることができる。
【0067】
本発明によれば、上述した本発明のデータ再生装置のデータ再生方法が提供される。このデータ再生方法(例えば図2のデータ再生処理)は、
d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータを再生するデータ再生装置のデータ再生方法であって、
前記データがアナログ信号として前記所定の記録媒体から読み出された場合、そのアナログ信号の微分応答信号を生成する微分ステップ(例えば図2のステップS1)と、
前記微分ステップの処理により生成されたアナログの前記微分応答信号を、所定の周波数に非同期でサンプリングすることで、非同期データを生成するサンプリングステップ(例えば図2のステップS2)と、
前記サンプリングステップの処理により生成された前記非同期データから、前記所定の周波数に同期した同期データを生成する位相同期ステップ(例えば図2のステップS5)と
を含み、
前記位相同期ステップは、前記同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出ステップ(例えば図5の位相誤差情報検出処理)を有し、
前記位相誤差情報検出ステップは、
前記同期データを構成する各サンプリング値のうちの処理対象のサンプリング値に関する所定の情報が、予め定められた特定パターンであるのか否かを、ラン制限による情報により判定する特定パターン判定ステップ(例えば図5のステップS23とS24)と、
前記特定パターン判定ステップの処理により前記特定パターンであると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出ステップ(例えば図5のステップS25とS26)と
を含むことを特徴とする。
【0068】
本発明によれば、上述した本発明のデータ再生方法に対応する第2のプログラムや、その第2のプログラムが記録された記録媒体が提供される。この第2のプログラムは、後述するように、例えば図17の構成のコンピュータにより実行される。
【0069】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0070】
図1は、本発明を適用したデータ再生装置、或いは、本発明を適用した位相同期装置を含むデータ再生装置の一実施の形態の構成例を示している。
【0071】
このデータ再生装置は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク等の記録媒体に記録されたデータを再生することができる。
【0072】
そこで、図1のデータ再生装置の説明を行う前に、記録媒体に記録されたデータについて説明する。
【0073】
即ち、データを、本実施の形態のように記録媒体に記録したり、或いは、所定の伝送路に伝送する場合、記録媒体や伝送路に適するように、のデータの変調が行われる。
【0074】
このような変調方法の1つとして、ブロック符号が知られている。このブロック符号は、データ列をm×iビットからなる単位(以下データ語と称する)にブロック化し、このデータ語を適当な符号則に従って、n×iビットからなる符号語に変換するものである。そしてこの符号は、i=1のときには固定長符号となり、またiが複数個選べるとき、すなわち、1乃至imax(最大のi)の範囲の所定のiを選択して変換したときには可変長符号となる。このブロック符号化された符号は可変長符号(d,k;m,n;r)と表される。以下、可変長符号(d,k;m,n;r)を、RLL符号(Run Length Limited Code)と適宜称する。
【0075】
ここでiは拘束長と称され、imaxはr(最大拘束長)となる。またdは、連続する”1”の間に入る、”0”の最小連続個数、例えば”0”の最小ランを示し、kは連続する”1”の間に入る、”0”の最大連続個数、例えば”0”の最大ランを示している。
【0076】
さらに詳細には、記録波形列(後述するようにRLL符号がNRZI変調されたもの)の最小反転間隔をTminとし、最大反転間隔をTmaxとするとき、線速方向に高密度に記録を行うためには、最小反転間隔Tminは長い方が、すなわちdは大きい方が良く、またクロックの再生の面からは、最大反転間隔Tmaxは短い方が、すなわち最大ランkは小さい方が望ましく、この条件を満足するために、種々の変調方法が提案されている。
【0077】
具体的には、例えば光ディスク、磁気ディスク、又は光磁気ディスク等において、提案あるいは実際に使用されている変調方式として、可変長符号であるRLL(1−7)((1,7;m,n;r)とも表記される)やRLL(2−7)((2,7;m,n;r)とも表記される)、そしてISO規格MOに用いられている固定長RLL(1−7)((1,7;m,n;1)とも表記される)などがある。
【0078】
現在開発研究されている、記録密度の高い光ディスクや光磁気ディスク等のディスク装置では、d=1のRLL符号がよく用いられており、例えば可変長RLL(1−7)符号がある。
【0079】
可変長RLL(1−7)のパラメータは(1,7;2,3;2)であり、記録波形列のビット間隔をTとすると、(d+1)Tで表される最小反転間隔Tminは2(=1+1)Tとなる。データ列のビット間隔をTdataとすると、この(m/n)×2で表される最小反転間隔Tminは1.33(=(2/3)×2)Tdataとなる。また(k+1)Tで表される最大反転間隔Tmaxは8(=7+1)T((=(m/n)×8Tdata=(2/3)×8Tdata=5.33Tdata)である。さらに検出窓幅Twは(m/n)×Tdataで表され、その値は0.67(=2/3)Tdataとなる。
【0080】
RLL(1−7)による変調を行ったチャネルビット列におけるTの発生頻度を調べると、Tminである2Tが一番多く、以下3T、4T、5Tと続く。2Tや3Tといった、エッジ情報が早い周期で多く発生するのは、クロック再生には有利となる場合が多い。
【0081】
Blu-ray Disc ReWritable Formatで採用されている17PP符号は、RLL(1−7)符号をベースとしており、最小ラン、最大ラン、基本変換率は同一である。さらに、最小ラン2Tの連続を有限回に制限するとともに、データ列と変換符号列の関係が、テーブル内の「1」の個数に規則性を持たせてあり、DSV(Digital Sum Value)制御時に効率良く行えるような形式となっている。
【0082】
なお、DSV制御とは、次のような制御を言う。
【0083】
即ち、記録媒体へのデータの記録、あるいは、データの伝送の際には、記録媒体あるいは伝送路に適した符号化変調が行われるが、これら変調符号に直流成分及び低域成分が含まれていると、例えば、ディスク装置のサーボの制御におけるトラッキングエラーなどの、各種のエラー検出信号に変動が生じ易くなったり、あるいはジッターが発生し易くなったりする。従って、変調符号には、直流成分及び低域成分をなるべく含めないようにする方が良い。
【0084】
そこで、DSVを制御することが提案されている。このDSVとは、RLL符号をレベル符号化し(例えば後述するNRZI変調を行い)、そのビット列(データのシンボル)の”1”を「+1」、”0”を「−1」として、符号を加算することであり、その総和を0に近づけることを、DSV制御という。符号列の直流成分及び低域成分の目安となるDSV推移の絶対値を小さくすること、すなわち、DSV制御を行うことは、符号列の直流成分及び低域成分を抑圧することになる。
【0085】
なお、可変長RLL(1−7)による変調符号は、DSV制御が行われていない。変換効率が良いために、例えば、DVD(Digital Versatile Disk)の8−16符号のように、変調時にDSV制御を行うことが出来ない。このような場合のDSV制御は例えば、変調後の符号化列(チャネルビット列)において、所定の間隔に区切ってDSV計算を行い、DSV制御ビットとして符号化列(チャネルビット列)内の所定の位置に挿入することによって、実現される。
【0086】
しかしながら、DSV制御ビットは、基本的には冗長ビットである。従って符号変換の効率から考えれば、DSV制御ビットはなるべく少ない方が良い。
【0087】
以上説明したように、本実施の形態では、このようなRLL符号が記録媒体に記録されることになる。
【0088】
より正確には、このようなRLL符号が光ディスクや光磁気ディスク等の記録媒体に記録される場合、例えばコンパクトディスクやミニディスクでは、RLL符号において、”1”を反転とし、”0”を無反転とするNRZI(Non Return to Zero Inverted)変調が行われ、NRZI変調された可変長符号(以下、記録波形列とも称する)に基づく記録が行なわれていることが多い。ただし、この他に、記録密度のあまり大きくなかった初期のISO(International Organization for Standardization)規格の光磁気ディスクでは、記録変調されたビット列がNRZI変調されずに、そのまま記録された場合もあった。
【0089】
本実施の形態では、このようにして光ディスクや光磁気ディスク等の記録媒体に記録されたRLL符号(以下、RLL記録符号と称する)が、図1のデータ再生装置により再生される。さらに言えば、本実施の形態では、d>0のRLL記録符号が、図1のデータ再生装置により再生される。
【0090】
即ち、例えば記録媒体に記録されたRLL記録符号は、図示せぬヘッド等によりRF(Radio Frequency)信号(以下、再生RF信号と称する)として読み出され、図1のデータ再生装置に入力される。
【0091】
従って、図1のデータ再生装置は、この再生RF信号から元のデータを復元し、出力することになる。このため、図1の例では、データ再生装置は、微分フィルタ部1乃至デコード部7から構成されている。
【0092】
かかる構成のデータ再生装置のデータ再生処理の一例が図2のフローチャートに示されている。そこで、以下、図2のフローチャートを参照して、図1のデータ再生装置のデータ再生処理の一例について説明する。また、図2のフローチャートの各ステップの処理を説明する際に、微分フィルタ部1乃至デコード部7のうちの、説明対象のステップの処理を実行するブロックについても併せて説明していく。
【0093】
ステップS1において、微分フィルタ部1は、再生RF信号の微分応答信号を生成し、A/D変換部2に供給する。即ち、微分フィルタ部1は、その名称の通り例えば微分型のフィルタで構成される。
【0094】
ステップS2において、A/D(Analog/Digital)変換部2は、ターゲットとするチャネルクロック(書き込み周波数)fchとは非同期の所定のサンプリング周波数によって、アナログの微分応答信号を非同期サンプリングすることで、デジタルの非同期サンプリングデータを生成し、EQ部3に供給する。
【0095】
なお、ステップS2の処理で使用されるサンプリング周波数は、例えばチャネルクロックfchに対して、2倍よりも小さく、等倍よりもやや高い周波数に設定するとよい。例えば本実施の形態では、サンプリング周波数は、チャネルクロックfchに対してn/m倍とされており、具体的には例えばm=7、n=8 として、fch * 8/7、即ち、チャネルクロックfchに対して8/7倍とされている。
【0096】
ステップS3において、EQ部3は、A/D変換部2から供給された非同期サンプリングデータを所定の波形に整形する。例えば本実施の形態では、EQ部3は、5tapで固定の係数が与えられたイコライザ(Equalizer)として構成されており、この5tap分の固定の係数のそれぞれにより非同期サンプリングデータが所定の波形に整形される。
【0097】
所定の波形に整形された非同期サンプリングデータがEQ部3からAGC/DCC部4に提供されると、処理はステップS4に進む。ステップS4において、AGC/DCC部4は、非サンプリングデータのゲイン制御(AGC:Auto Gain Control)およびDC(Direct Current)オフセットキャンセル(DCC:DC Cancel)を行う。
【0098】
なお、AGC/DCC部4は、必要に応じて、他のブロックより情報を入手して所定の演算を行ってもよい。
【0099】
ゲイン制御およびDCオフセットキャンセルが行われた非同期サンプリングデータが、AGC/DCC部4からPLL部5に提供されると、処理はステップS5に進む。ステップS5において、PLL(Phase Locked Loop)部5は、非同期サンプリングデータを、チャネルクロックfchに同期した同期サンプリングデータに変換する。
【0100】
詳細については後述するが、PLL部5には、PR(1,-1)等化またはPR(1,0,-1)等化に対応したアルゴリズムが与えられており、その結果、PLL部5から出力される同期サンプリングデータは、PR(1,-1)等化またはPR(1,0,-1)等化に整形されたデジタル信号になる。
【0101】
同期サンプリングデータがPLL部5からPRML部6に提供されると、処理はステップS6に進む。ステップS6において、PRML部6は、パーシャルレスポンス(PR:Partial Response)方式と最尤検出(ML:Maximum Likelihood Sequence Detection)方式を組み合わせたPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式を利用して、その同期サンプリングデータからRLL符号(0または1のチャネルビット)を検出する。
【0102】
なお、最尤復号としては、主にビタビ検出(ビタビ復号)が用いられる。ただし、PRML部6のデータ検出方式は、ビタビ復号に特に限定されず、例えばNPML符号を用いる方式であってもよいし、あるいはまた、単純なスライス検出方式であってもよい。
【0103】
RLL符号がPRML部6からデコード部7に供給されると、処理はステップS7に進む。ステップS7において、デコード部7は、このRLL符号をデコード(チャネル復号=符号化復号)し、その結果得られる元のデータ列を出力する。
【0104】
以上、図1の構成を有するデータ再生装置が実行するデータ再生処理について説明した。
【0105】
ところで、例えばいま、図1の構成を有するデータ再生装置に対して、本発明が適用されるPLL部5(詳細の構成については図10参照)の代わりに、図3に示されるような従来のPLL部を搭載した再生装置を考える。即ち、図3は、従来のPLL部の一構成例を示している。
【0106】
図3の例では、従来のPLL部は、Digital ITR型PLL回路として構成されている。このため、図3の例では、補間フィルタ部11乃至剰余累算部14が従来のPLL部に設けられている。
【0107】
補間フィルタ部11は、図1のAGC/DCC部4から入力された非同期サンプリングデータを、同期サンプリングデータに変換するためのフィルタ係数を持った補間フィルタとして構成される。即ち、補間フィルタ部11は、剰余累算部14から供給された情報に基づいて複数のフィルタ係数から所定の1つを選択し、非同期サンプリングデータの位相を、選択されたフィルタ係数に対応する分だけずらす。その結果、補間フィルタ部11から出力されるサンプリングデータは、同期サンプリングデータに近いデータになる。
【0108】
換言すると、過渡期などにおいては、補間フィルタ部11から出力されるサンプリングデータはまだ、チャネル周波数fchに正確に同期していない。即ち、補間フィルタ部11から出力されるサンプリングデータには位相誤差が存在する。このため、PLL部は、フィードバック制御を行って位相誤差を限りなく0に近づけていくことで、結果として、チャネル周波数fchにほぼ同期したサンプリングデータを出力するようにしている。このようなフィードバック制御を行うために、補間フィルタ部11の他、位相誤差情報検出部12、ループフィルタ部13、および、剰余累算部14が設けられているのである。即ち、補間フィルタ部11乃至剰余累算部14によりフィードバックループが構成されているのである。
【0109】
ただし、以下の説明においては、補間フィルタ部11から出力されるサンプリングデータをまとめて、同期サンプリングデータと称する。即ち、位相誤差を多少とも含んだサンプリングデータであっても、同期サンプリングデータと称する。
【0110】
位相誤差情報検出部12は、例えばPR(1,-1)等化に対応したアルゴリズムが与えられており、同期サンプリングデータの位相誤差を示す情報(以下、位相誤差情報と称する)を検出し、ループフィルタ部13に提供する。
【0111】
詳細には、位相誤差情報検出部12は、スライス部21と位相誤差検出部22とから構成される。
【0112】
なお、以下、位相誤差情報検出部12により位相誤差が検出される対象の同期サンプリングデータ、即ち、現在の処理対象のサンプリング値を、data_nowと称する。これに対して、data_nowの一つ前の同期サンプリングデータを、data_Dと称する。
【0113】
この場合、スライス部21は、data_nowの実際の値と所定の閾値thとを比較することで、data_nowが本来取り得る値を仮判定し、その仮判定値(以下、スライス値と称する)を位相誤差検出部22に提供する。
【0114】
具体的には例えば、ここでは同期サンプリングデータはPR(1,-1)等化に整形されたデジタル信号とされているので、1,0,−1が、data_nowが本来取り得る値となる。即ち、例えば本実施の形態では、スライス部21は、data_nowが次の不等式(1)乃至(3)のうちの何れを満たすかを判断する。
【0115】
data_now ≧ th ・・・(1)
th > data_now > -th ・・・(2)
-th ≧ data_now ・・・(3)
【0116】
そして、スライス部21は、不等式(1)を満たす場合にはスライス値は1であると、不等式(2)を満たす場合にはスライス値は0であると、不等式(3)を満たす場合にはスライス値は−1であるとそれぞれ判定し、判定されたスライス値を位相誤差検出部22に提供する。
【0117】
位相誤差検出部22は、次のMueller&Muellerの式(4)の右辺を演算することで、位相誤差情報としてphase_errを算出し、ループフィルタ部13に提供する。なお、式(4)において、slice_nowは、data_nowに対応するスライス値を示しており、slice_Dは、data_Dに対応するスライス値を示している。
【0118】
phase_err = (data_now * slice_D) - (data_D * slice_now) ・・・(4)
【0119】
ループフィルタ部13は、位相誤差検出部22から供給された位相誤差情報に加えて、所定のループフィルタ係数と、必要に応じて所定の初期値とを用いて、ループフィルタ演算を行い、その演算結果を剰余累算部14に提供する。
【0120】
剰余累算部14は、ループフィルタ部13のループフィルタ演算結果についての所定の累算処理を行い、その処理結果に基づいて、補間フィルタ部11にとって必要な情報を生成して補間フィルタ部11に提供するとともに、他のブロックに対して必要なenable情報を提供する。
【0121】
かかる構成の従来のPLL部では、位相誤差情報の精度が悪いという問題点が発生してしまう。そこで、本発明人は、この問題点の発生要因を突き止め、その要因を取り除くことが可能な手法を発明した。
【0122】
以下、この問題点の発生要因について説明する。
【0123】
即ち、従来の位相誤差情報検出部12は、上述したMueller&Muellerの式(4)を利用して位相誤差情報(phase_err)を算出している。
【0124】
この式(4)からわかるように、slice_Dとslice_nowとを利用して位相誤差情報(phase_err)が算出される。
【0125】
ところが、補間フィルタ部11から出力されるdata_Dとdata_nowとによっては、それらから算出されるslice_Dとsliceとの組み合わせ(slice_D,slice_now)、即ち、slice_Dからslice_nowへの推移が、通常理想時(エラーが一切発生していない時)に起こり得るパターンとは全く異なるパターンとなっている場合がある。
【0126】
このような場合の(slice_D,slice_now)が式(4)に代入されてしまうと、その結果得られる位相誤差情報(phase_err)は、当然ながら精度の悪い(正確でない)値となってしまう。即ち、上述した問題点が発生する。
【0127】
以上説明したように、従来のPLL部は、(slice_D,slice_now)のパターンが通常理想時のパターンと異なっている場合であっても、全く同一の演算手法により位相誤差情報を演算していた。即ち、従来においては、(slice_D,slice_now)のパターンとして、通常理想時のパターンと異なるパターン(以下、特定パターンと称する)については一切考慮されていなかった。さらに、slice_nowよりも2つ前のスライス値(以下、slice_2Dと称する)まで考慮すると、(slice_D,slice_now)を見ただけでは通常理想時に起りえるパターンであったものが、(slice_2D,slice_D,slice_now)のパターンでは、特定パターンとなるものも存在する。従来においては、このような特定パターンも当然ながら考慮されていなかった。このことが、上述した問題点の発生要因と考えられる。
【0128】
そこで、本発明人は、このような問題点を解決すべく、次のような手法を発明した。
【0129】
即ち、スライス値の推移パターンを判定し、例えば(slice_2D,slice_D,slice_now)や(slice_D,slice_now)等を判定し、判定された推移パターンが通常理想時のパターン(特定パターンではないパターン)の場合には、上述した式(4)の演算結果を位相誤差情報として利用し、判定された推移パターンが特定パターンの場合には、その特定パターンに対応する位相誤差情報を利用するという手法が、本発明人により発明された。なお、特定パターンに対応する位相誤差情報とは、式(4)の演算結果とは異なる値を当然ながら含む他、結果として、式(4)の演算結果そのものを含む場合(後述する図8参照)もある。
【0130】
この本発明の手法が適用された位相同期装置の構成例、即ち、図1のPLL部5の構成例が、図4に示されている。なお、図4のPLL部5において、図3の従来のPLL部と対応する部分には同一の符号を付してあり、その説明は適宜省略する。
【0131】
図4の例では、PLL部5は、Digital ITR型PLL回路として構成されている。このため、図4の例では、PLL部5には、補間フィルタ部11、位相誤差情報検出部31、ループフィルタ部13、および剰余累算部14が設けられている。即ち、図4の例のPLL部5は、図3の従来のPLL部に対して、位相誤差情報検出部12の代わりに、位相誤差情報検出部31を採用したものである。
【0132】
従って、以下、位相誤差情報検出部31の説明のみを行う。
【0133】
図4の例では、位相誤差情報検出部31は、スライス部41と位相誤差検出部42とから構成されている。
【0134】
スライス部41は、図3のスライス部21と基本的に同様の構成と機能とを有している。即ち、このPLL部5から出力される同期サンプリングデータが、PR(1,-1)等化に整形されたデジタル信号である場合には、スライス部41は、data_nowが上述した不等式(1)乃至(3)のうちの何れを満たすかを判断する。そして、スライス部41は、不等式(1)を満たす場合にはスライス値は1であると、不等式(2)を満たす場合にはスライス値は0であると、不等式(3)を満たす場合にはスライス値は−1であるとそれぞれ判定し、判定されたスライス値をslice_nowとして位相誤差検出部42に提供する。
【0135】
図4の例では、位相誤差検出部42は、特定パターン検出部51と位相誤差情報演算部52とから構成されている。
【0136】
特定パターン検出部51は、スライス部41から提供された過去幾つかのスライス値(slice_nowとして順次提供されてきた幾つかのスライス値)の推移パターンが、特定パターンであるのか、或いは、そうでないのか(通常理想時のパターンであるのか)を判定する。
【0137】
なお、通常理想時のパターンや特定パターンの具体例については、図6乃至図14を参照して後述する。
【0138】
特定パターン検出部51の判定結果は位相誤差情報演算部52に供給される。例えば特定パターンではない(通常理想時のパターンである)という判定結果が特定パターン検出部51から供給された場合には、位相誤差情報演算部52は、上述した式(4)で示される演算手法(以下、基準となる演算手法と称する)に従って位相誤差情報を算出し、即ち、phase_errを位相誤差情報として算出し、ループフィルタ部13に提供する。これに対して例えば特定パターンであるという判定結果が特定パターン検出部51から供給された場合には、位相誤差情報演算部52は、特定パターンに対応する演算手法に従って位相誤差情報を算出し、ループフィルタ部13に提供する。特定パターンに対応する演算手法とは、基準となる演算手法とは異なる手法を当然ながら含む他、基準となる演算手法そのものを含む場合(後述する図8参照)もある。なお、特定パターンに対応する演算手法の具体例については、図6乃至図14を参照して後述する。
【0139】
かかる構成の位相誤差情報検出部31の処理(以下、位相誤差情報検出処理と称する)の一例が図5のフローチャートに示されている。そこで以下、図5のフローチャートを参照して、位相誤差情報検出処理の一例について説明する。
【0140】
ステップS21において、位相誤差情報検出部31は、補間フィルタ部11から直前に出力された同期サンプリングデータの1つのサンプリング値を、data_nowとして取得する。このdata_nowが、スライス部41と位相誤差情報演算部52に供給されると、処理はステップS22に進む。
【0141】
ステップS22において、スライス部41は、data_nowから上述したようにslice_nowを取得する。このslice_nowが、スライス部41から、特定パターン検出部51と位相誤差情報演算部52に供給されると、処理はステップS23に進む。
【0142】
ステップS23において、特定パターン検出部51は、上述したように、スライス値の推移パターンを判定する。その判定結果が、特定パターン検出部51から位相誤差情報演算部52に供給されると、処理はステップS24に進む。
【0143】
ステップS24において、位相誤差情報演算部52は、特定パターン検出部51によるステップS23の判定結果が特定パターンであるか否かを判定する。
【0144】
ステップS24において、特定パターンではないと判定した場合、即ち、通常理想時のパターンであると判定した場合、ステップS25において、位相誤差情報演算部52は、上述したように、基準となる演算手法に従って位相誤差情報を算出する。
【0145】
これに対して、ステップS24において、特定パターンであると判定した場合、ステップS26において、位相誤差情報演算部52は、上述したように、特定パターンに対応する演算手法に従って位相誤差情報を算出する。
【0146】
ステップS25またはS26の処理で、位相誤差情報が、位相誤差情報演算部52により算出されて、ループフィルタ部13に提供されると、処理はステップS27に進む。
【0147】
ステップS27において、位相誤差情報検出部31は、これまでのdata_nowをdata_Dに設定し、かつ、これまでのslice_nowをslice_Dに設定する。なお、場合によっては、このステップS27の処理でさらに、これまでのdata_Dがdata_2Dに設定され、かつ、これまでのslice_Dがslice_2Dに設定される。ただし、data_2D,slice_2Dについては後述する。
【0148】
ステップS28において、位相誤差情報検出部31は、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの出力が終了したか否かを判定する。
【0149】
即ち、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの出力が続いている限り、ステップS28においてNOであると判定されて、処理はステップS21に戻され、上述したステップS21乃至S28のループ処理が繰り返し実行される。
【0150】
そして、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの出力が終了すると、ステップS28においてYESであると判定されて、位相誤差情報検出処理が終了する。
【0151】
次に、図6乃至図11を参照して、特定パターン、および、ステップS26の特定パターンに対応する演算手法の具体例について説明する。
【0152】
図6は、上述した図3の従来のPLL部の位相誤差情報検出部12の動作(アルゴリズム)であって、d=1、かつ、PR(1,-1)等化におけるアルゴリズムを説明する図である。
【0153】
図6の前提事項として、出現可否とは、エラーが無い正常時(通常理想時)に、その左方に示される(slice_D,slice_now)のパターンが存在するか否かを示す項目とされている。即ち、出現可否の項目において、◎(二重丸印)が付された左方に示される(slice_D,slice_now)のパターンが、上述した通常理想時のパターンである。これに対して、出現可否において、×(バツ印)が付された左方に示される(slice_D,slice_now)のパターンは、エラーが無い正常時に発生し得ないパターン(特定パターンのひとつ)である。
【0154】
また、図6の前提事項として、補正可否とは、エラーが無い時にphase_err(次に説明する)による位相補正ができるかできないかを示す項目とされている。即ち、補正可否の項目において、◎(二重丸印)が付された左方に示される(slice_D,slice_now)のパターンでは、エラーが無い時にphase_errによる位相補正ができることになる。これに対して、補正可否において、−(バー印)が付された左方に示される(slice_D,slice_now)のパターンでは、エラーが無い時にphase_errによる位相補正ができないことになる。
【0155】
さらにまた、図6の前提事項として、phase_errとは、位相誤差情報(その算出手法)を示す項目とされている。順方向 phase_errとは、上述した式(4)(図6の下方に示される式)そのものを示している。即ち、エラーが無い正常時においては、上述した式(4)で示される演算手法(基準となる演算手法)に従って、位相誤差情報が算出されることになる。
【0156】
なお、これらの図6の前提事項は、後述する図7乃至図14においても同様に前提事項とされている。
【0157】
このように、従来においては、(slice_D,slice_now)として、(0,-1)、(0,1)、(1,0)、および(-1,0)は何れも通常理想時のパターンとして取り扱われていた。ところが、上述したように、slice_2Dまで考慮すると、これらのパターンの中にも特定パターンに分類されるものも存在する。しかしながら、従来ではこれらの特定パターンについては一切考慮されていなかった。
【0158】
そこで、本発明が適用される図4のPLL部5の位相誤差情報検出部31は、例えば図7のアルゴリズムに従って、位相誤差情報を決定することができる。即ち、図7は、本発明が適用される図4のPLL部5の位相誤差情報検出部31の動作(アルゴリズム)の一例を説明する図であって、d=1、かつ、PR(1,-1)等化におけるアルゴリズムの一例を説明する図である。
【0159】
上述した図6の従来の例のアルゴリズムは、slice_nowの1区間遅れたslice_Dと、slice_nowとの組である(slice_D,slice_now)に基づくアルゴリズムであった。
【0160】
これに対して、本発明が適用されるこの図7の例のアルゴリズムは、slice_nowの2区間遅れたslice_2D、slice_D、およびslice_nowの組である(slice_2D,slice_D,slice_now)に基づくアルゴリズムである。
【0161】
即ち、例えば、(slice_D,slice_now)=(0,1)の場合であっても、エラーがない通常理想時の(slice_2D,slice_D,slice_now)のパターンとして、(0,0,1)や(-1,0,1)は発生(出現)し得るが、(1,0,1)は発生しない。即ち、(slice_2D,slice_D,slice_now)=(1,0,1)が特定パターンの一例である。
【0162】
その他、特定パターンとしては、図7に示されるように、(slice_2D,slice_D,slice_now)=(-1,0,-1),(1,1,0),(-1,1,0),(1,-1,0),(-1,-1,0)が存在する。
【0163】
なお、特定パターンのうちの、出現可否に(Pha)が記述されている特定パターンは、data_nowの位相位置が裏位相に存在する状態(以下、裏位相状態と称する)のときに発生するパターンであることを示している。裏位相とは、data_Dとdata_nowの位相位置が、data_Dとdata_nowのうちのいずれか一方だけの値が予め定めた閾値を超えているときの位相位置のことをいう。
【0164】
即ち、特定パターンは大別して2種類存在する。1種類目は、同期サンプリングデータの推移が通常理想時の推移であるにも関わらず、同期サンプリングデータの位相位置だけがずれてしまった裏位相状態のときに生じる第1の特定パターンである。2種類目は、エラー等の要因により、同期サンプリングデータの位相位置によらず(ずれていてもずれていなくても)、その推移が通常理想時では存在し得ないパターンとなってしまい、その結果生じる第2の特定パターンである。このため、この図7を含め図7乃至図14においては、前者の第1の特定パターンの欄(行)のうちの少なくとも一部の左方にはpが記述され、後者の第2の特定パターンの欄(行)のうちの少なくとも一部の左方にはeが記述されている。なお、eまたはpの左方の※(米印)は、phase_errが新たに定義されたことを示している。
【0165】
このように、図7の例のアルゴリズムでは、(slice_2D,slice_D,slice_now)が(1,0,1),(-1,0,-1),(1,1,0),(-1,1,0),(1,-1,0),(-1,-1,0)のうちの何れかとなった場合、図4の特定パターン検出部51は特定パターンであると検出し、位置誤差情報演算部52は、位相誤差情報として0を出力する(位相誤差情報を出力しない)。
【0166】
なお、位置誤差情報演算部52は、位相誤差情報として0の代わりに所定の定数を出力してもよい。
【0167】
このような図7のアルゴリズムを採用することで、d=1のRLL符号を用いて、PR(1,-1)の等化を行った場合のシステム(例えば本実施の形態では図1のデータ再生装置全体)において、外乱等によって、入力信号が劣化した際においても、より品質の良い位相誤差出力を与えることができ、その結果、エラーレートを改善することができ、ひいてはシステムを安定にさせることができる。
【0168】
ところで、位相誤差情報は、誤った方向へ出力することなく、かつ、なるべくサンプル毎に出力する方が、より品質の良い位相誤差出力として望ましい。
【0169】
例えば(slice_2D, slice_D, slice_now)が(-1,1,0)または(1,-1,0)は、誤り時の位相誤差情報の出力の方向が、確率的に順方向の可能性が高いパターンである。そこで、このような特定パターンに対しては、位置誤差情報演算部52は、位相誤差情報として0の代わりに、順方向 phase_errを出力するとよい。即ち、位置誤差情報演算部52は、基準となる演算手法(上述した式(4))に従って位相誤差情報を算出するとよい。
【0170】
この場合のアルゴリズムは、図8に示されるようになる。即ち、図8は、d=1かつ、PR(1,-1)等化での、位相誤差情報検出部31のアルゴリズムの他の例を示している。
【0171】
この図8のアルゴリズムのように、特定パターンをさらに分類して、位相誤差出力をそれぞれ個別に与えることで、即ち、分類された各種類毎に異なる演算手法に従って位相誤差情報をそれぞれ算出することで、より品質の良い位相誤差出力を与えることが可能になる。
【0172】
さらに、位相誤差情報検出部31は、図9のアルゴリズムに従って、位相誤差情報を決定することもできる。即ち、図9は、d=1かつ、PR(1,-1)等化での、位相誤差情報検出部31のアルゴリズムの他の例を示している。
【0173】
図9の例のアルゴリズムは、上述した図7や図8の例よりもさらに一段と適した位相誤差情報を出力することを目的とした次のようなアルゴリズムである。
【0174】
即ち、図9の例では、図8の例に対してさらに、(slice_2D,slice_D,slice_now)=(0,1,1),(-1,1,1),(-1,-1,1),(1,1,-1),(0,-1,-1),(1,-1,-1)といった特定パターンの場合には、位相誤差情報演算部52は位相誤差情報として逆方向 rev_phase_errを出力する、といったアルゴリズムが付加されている。
【0175】
逆方向 rev_phase_errとは、phase_errの符号を反転させた値に相当し、例えば次の式(5)(=図9の一番下の式と同一式)により演算される。
【0176】
rev_phase_err = -phase_err ・・・(5)
【0177】
その他、rev_phase_errは、上述した式(5)の代わりに次の式(6)から算出されてもよい。なお、式(6)において、(phase_err出力の反転符号)とは、式(4)の演算結果phase_errが正値の場合(符号が+の場合)には−(マイナス)を言い、式(4)の演算結果phase_errが負値の場合(符号が−の場合)には+(プラス)を言う。また、RLEVは所定の定数(たとえば閾値)を示している。
【0178】
rev_phase_err =(phase_err出力の反転符号) × RLEV ・・・(6)
【0179】
このように、図9の例では、裏位相状態のときに発生する特定パターン(出現可否に(pha)と記述されているパターン)のうちの、slice_now と sline_D の両方が0でないパターンに対して、位相誤差情報として逆方向rev_phase_errが出力される。これは、上述した「位相誤差情報は、誤った方向へ出力することなく、かつ、なるべくサンプル毎に出力すること」を実現するためである。
【0180】
さらに、位相誤差情報検出部31は、図10のアルゴリズムに従って、位相誤差情報を決定することもできる。即ち、図10は、d=1かつ、PR(1,-1)等化での、位相誤差情報検出部31のアルゴリズムの他の例を示している。
【0181】
図10の例のアルゴリズムでは、上述した図7乃至図9の例よりもさらに一段と適した位相誤差情報を出力することを目的とした次のようなアルゴリズムである。
【0182】
即ち、図10の例では、図9の例に対してさらに、(slice_2D,slice_D,slice_now)=(0,-1,1),(0,1,-1)といった特定パターンの場合には、位相誤差情報演算部52は位相誤差情報として0ではなく逆方向 rev_phase_errを出力する、といったアルゴリズムが付加されている。
【0183】
即ち、この(slice_2D,slice_D,slice_now)=(0,-1,1),(0,1,-1)は、上述したように、同期サンプリングデータの位相位置によらず、その推移が通常理想時では存在し得ないパターンとなった結果生じる特定パターンである。しかしながら、(slice_2D,slice_D,slice_now)=(0,-1,1),(0,1,-1)は、誤り時の位相誤差出力の方向が、確率的に逆方向の可能性が高いパターンである。そこで、上述した「位相誤差情報は、誤った方向へ出力することなく、かつ、なるべくサンプル毎に出力すること」を実現するために、図10の例では、(slice_2D,slice_D,slice_now)=(0,-1,1),(0,1,-1)といった特定パターンの場合には逆方向 rev_phase_errが出力されるのである。
【0184】
ところで、上述した例では、図4のPLL部5には、PR(1,-1)等化に対応したアルゴリズムが与えられており、このため、その出力である同期サンプリングデータは、PR(1,-1)等化に整形されたデジタル信号とされていた。
【0185】
しかしながら、PLL部5に与えられるアルゴリズムは、PR(1,-1)等化に対応したアルゴリズムに特に限定されない。例えば、PLL部5に対して、PR(1,0,-1)等化に対応したアルゴリズムが与えられてもよい。即ち、PLL部5は、PR(1,0,-1)等化に整形されたデジタル信号を同期サンプリングデータとして出力してもよい。
【0186】
ただし、この場合、スライス部41は、PR(1,0,-1)等化に対応したアルゴリズムに従ってスライス値を決定することになる。
【0187】
この場合、図11に示されるように、エラーが無い正常時(通常理想時)の(slice_D,slice_now)のパターンとしては、(0,-1)、(0,1)、(1,0)、および(-1,0)、並びに、(1,-1)、(1,1)、(-1,1)、(-1,1)、および(0,0)が存在する(出現し得る)ことになる。一方では、裏位相のときの(slice_D,slice_now)のパターンとしては、(0,-1)、(0,1)、(1,0)、(-1,0)、および(0,0)が存在する。
【0188】
この図11は、上述した図3の従来のPLL部の位相誤差情報検出部12の動作(アルゴリズム)であって、d=1、かつ、PR(1,0,-1)等化におけるアルゴリズムを説明する図である。
【0189】
この図11に示されるように、図3の従来のPLL部では、(slice_D,slice_now)が(1,1),(-1,-1),(1,-1),(-1,-1)のうちの何れかとなった場合には全て、通常理想時のパターンであると認識されて、位相誤差情報として順方向 phase_errが出力されていた。ところが、上述したように、slice_2Dまで考慮すると、これらのパターンの中にも特定パターンに分類されるものも存在する。しかしながら、従来ではこれらの特定パターンについては一切考慮されていなかった。
【0190】
そこで、本実施の形態の図4の位相誤差情報検出部31は、d=1、かつ、PR(1,0,-1)等化におけるアルゴリズムとして、例えば図12のアルゴリズムに従って、位相誤差情報を決定することもできる。即ち、図12は、d=1かつ、PR(1,0,-1)等化での、位相誤差情報検出部31のアルゴリズムの一例を示している。
【0191】
具体的には、図12の例のアルゴリズムでは、(slice_2D,slice_D,slice_now)が(1,1,1),(0,-1,1),(1,-1,1),(0,1,-1),(-1,1,-1),(-1,-1,-1)のうちの何れかとなった場合、図4の特定パターン検出部51は特定パターンであると検出し、位置誤差情報演算部52は、位相誤差情報として0を出力する(位相誤差情報を出力しない)。
【0192】
なお、位置誤差情報演算部52は、位相誤差情報として0の代わりに所定の定数を出力してもよい。
【0193】
このようにすることで、d=1のRLL符号を用いて、PR(1,0,-1)の等化を行った場合のシステム(例えば本実施の形態では図1のデータ再生装置全体)において、外乱等によって、入力信号が劣化した際においても、より品質の良い位相誤差出力を与えることができ、その結果、エラーレートを改善することができ、ひいてはシステムを安定にさせることができる。
【0194】
さらに、位相誤差情報検出部31は、図13のアルゴリズムに従って、位相誤差情報を決定することもできる。即ち、図13は、d=1かつ、PR(1,0,-1)等化での、位相誤差情報検出部31のアルゴリズムの他の例を示している。
【0195】
図13の例のアルゴリズムは、上述した図12の例よりもさらに一段と適した位相誤差情報を出力することを目的とした次のようなアルゴリズムである。
【0196】
即ち、図13の例では、図12の例に対してさらに、(slice_2D,slice_D,slice_now)=(0,-1,1),(0,1,-1)といった特定パターンの場合には、位相誤差情報演算部52は位相誤差情報として0ではなく順方向 phase_errを出力し、また、(slice_2D,slice_D,slice_now)=(-1,1,0),(1,-1,0)といった特定パターンの場合には、位相誤差情報演算部52は位相誤差情報として逆方向 rev_phase_errを出力する、といったアルゴリズムが付加されている。これは、上述した「位相誤差情報は、誤った方向へ出力することなく、かつ、なるべくサンプル毎に出力すること」を実現するためである。
【0197】
さらに、位相誤差情報検出部31は、図14のアルゴリズムに従って、位相誤差情報を決定することもできる。即ち、図14は、d=1かつ、PR(1,0,-1)等化での、位相誤差情報検出部31のアルゴリズムの他の例を示している。
【0198】
図14の例では、上述した図12や図13の例よりもさらに一段と適した位相誤差情報を出力することを目的とした次のようなアルゴリズムである。
【0199】
即ち、図14の例では、図13の例に対してさらに、(slice_2D,slice_D,slice_now)=(0,1,0),(0,-1,0)といった特定パターンの場合には、位相誤差情報演算部52は位相誤差情報として逆方行(2D) rev_phase_err_2Dを出力する、といったアルゴリズムが付加されている。これは、上述した「位相誤差情報は、誤った方向へ出力することなく、かつ、なるべくサンプル毎に出力すること」を実現するためである。
【0200】
逆方向(2D) rev_phase_err_2Dとは、次の式(7)(図14中上から2番目の下線式)の左辺のphase_err_2Dの符号を反転させた値に相当する。
【0201】
phase_err_2D = (data_now × slice_D)−(data_2D×slice_D)
・・・(7)
【0202】
従って、逆方向(2D) rev_phase_err_2Dとは、次の式(8)(図14中一番下の式)、または式(9)の左辺の値を言う。
【0203】
rev_phase_err_2D = −phase_err_2D ・・・(8)
【0204】
rev_phase_err_2D =(phase_err_2D出力の反転符号) × RLEV ・・・(9)
なお、式(9)において、(phase_err_2D出力の反転符号)とは、phase_err_2Dの符号が+の場合には−でありphase_err_2Dの符号が−の場合には+であることを示している。または、RLEVは、所定の定数を示している。
【0205】
以上説明した図13や図14の例のように、特定パターンをさらに分類して、位相誤差出力をそれぞれ個別に与えることで、即ち、分類された各種類毎に異なる演算手法に従って位相誤差情報をそれぞれ算出することで、より品質の良い位相誤差出力を与えることが可能になる。
【0206】
ところで、このように、特定パターンは2種類以上に分類することも可能であることから、図1のPLL部5として、図4の構成のPLL部の代わりに、例えば図15に示される構成のPLL部を採用することもできる。即ち、図15は、特定パターンが2種類に分類される場合における、図1のPLL部5の詳細な構成例(図4とは異なる構成例)を示している。
【0207】
なお、図15のPLL部5において、図4の例のそれと対応する部分には同一の符号を付してあり、その説明は適宜省略する。
【0208】
図15の例でも、PLL部5は、Digital ITR型PLL回路として構成されている。このため、図15の例では、PLL部5には、補間フィルタ部11、位相誤差情報検出部61、ループフィルタ部13、および剰余累算部14が設けられている。即ち、図15の例では、PLL部5は、図4の例のそれに対して、位相誤差情報検出部31の代わりに、位相誤差情報検出部61を含むように構成されている。
【0209】
従って、以下、位相誤差情報検出部61の説明のみを行う。
【0210】
図15の例では、位相誤差情報検出部61は、スライス部41と位相誤差検出部72とから構成されている。
【0211】
スライス部41は、図4のそれと基本的に同様の構成と機能とを有している。
【0212】
図15の例では、位相誤差検出部72は、第1の特定パターン検出部81、第2の特定パターン検出部82、および、位相誤差情報演算部52から構成されている。
【0213】
第1の特定パターン検出部81は、スライス部41から提供された過去幾つかのスライス値の推移パターンが、2種類の特定パターンのうちの所定の1種類(第1の種類)であるのか、或いは、そうでないのかを判定する。
【0214】
第2の特定パターン検出部82は、スライス部41から提供された過去幾つかのスライス値の推移パターンが、2種類の特定パターンのうちの第1の種類とは異なる種類(第2の種類)であるのか、或いは、そうでないのかを判定する。
【0215】
第1の特定パターン検出部81の判定結果と、第2の特定パターン検出部82の判定結果とのそれぞれは位相誤差情報演算部52に供給される。この位相誤差情報演算部52は、図4のそれと基本的に同様の構成と機能とを有している。
【0216】
このように、特定パターンが2種類に分類される場合には、第1の種類の特定パターンを検出する第1の特定パターン検出部81と、第2の種類の特定パターンを検出する第2の特定パターン検出部82を有する位相誤差情報検出部61を採用すればよい。
【0217】
従って、特定パターンがN種類(Nは2以上の整数値)に分類される場合には、第1の種類の特定パターンを検出する第1の特定パターン検出部乃至第Nの種類の特定パターンを検出する第Nの特定パターン検出部を有する位相誤差情報検出部を採用すればよい。
【0218】
ところで、本発明の手法、即ち、通常理想時には存在しないスライス値の推移が特定パターンのときにはその特定パターンに対応する位相誤差情報を算出するという手法は、d=1、かつ、PR(1,-1)等化またはPR(1,0,-1)等化に限定されるものではない。
【0219】
具体的には例えば、d=2、かつPR(1,-1)等化の場合、スライス値の推移が+1 → -1 となるパターンや-1 → +1 となるパターン、即ち、(slice_D,slice_now)が(1,-1)や(-1,1)が第2の種類の特定パターンである。さらに、スライス値の推移が+1 → +1 となるパターンや-1 → -1 となるパターン、即ち、(slice_D,slice_now)が(1,1)や(-1,-1)が第1の種類の特定パターンである。従って、このような特定パターンのときには、それぞれの特定パターンに対応する位相誤差情報を算出すればよい。
【0220】
また例えば、d=2、かつPR(1,0,-1)等化の場合、スライス値の推移が+1 → -1 となるパターンや-1 → +1 となるパターン、即ち、(slice_D,slice_now)が(1,-1)や(-1,1)が第2の種類の特定パターンである。スライス値の推移が0 → +1 → 0 となるパターンや0 → -1 → 0 となるパターン、即ち、(slice_2D,slice_D,slice_now)が(0,1,0)や(0,-1,0)が第1の種類の特定パターンである。従って、このような特定パターンのときには、それぞれの特定パターンに対応する位相誤差情報を算出すればよい。
【0221】
即ち、結局のところ、dとPR等化方式との組み合わせに応じて特定パターンは異なることになるが、何れの組み合わせであっても、その組み合わせで生じる特定パターンのときには、その特定パターンに対応する位相誤差情報を算出すればよい。
【0222】
また、例えば、本発明の手法は、上述した図4や図15のスライス部41を有するPLL部5に対してだけではなく、仮判定値を出力するようなスライス部を有するPLL部に対しても全く同様に適用することができる。
【0223】
また、例えば、本発明の手法は、上述した図4や図15の例のPLL部5に対してだけではなく、例えば図16に示されるような補間フィルタ部を用いずにA/D変換部のサンプリング周波数及び位相を変更させるような、VCO (Voltage Controlled Oscillator)を用いたPLL部に対しても全く同様に適用することができる。即ち、図16は、本発明が適用されるPLL部の、図4や図15の例とは異なる構成例を示している。
【0224】
図16の例では、PLL部61は、アナログ等化部101、A/D変換部102、位相誤差情報検出部31、ループフィルタ部103、D/A変換部104、およびVCO部105から構成されている。
【0225】
アナログ等化部101は、再生RF信号から、所定のPR方式、例えばPR(1,-1)等化に整形されたアナログ信号を生成し、A/D変換部102に供給する。
【0226】
A/D変換部102は、VCO部105からのVCO出力信号の周波数と同期するように、アナログ等化部101からのアナログ信号を同期サンプリングすることで、デジタルの同期サンプリングデータを生成し、出力する。
【0227】
このA/D変換部102からの同期サンプリングデータはまた、位相誤差情報検出部31にも供給される。この位相誤差情報検出部31は、上述した図4の例のPLL部5にも採用されているものである。従って、位相誤差情報検出部31の説明については省略する。
【0228】
ループフィルタ部103は、位相誤差情報検出部31から供給された位相誤差情報に加えて、所定のループフィルタ係数と、必要に応じて所定の初期値とを用いて、ループフィルタ演算を行い、その演算結果をD/A変換部104に提供する。
【0229】
D/A変換部104は、ループフィルタ部103のループフィルタ演算結果であるデジタル信号をアナログ信号に変換し、そのアナログ信号をVCO入力信号としてVCO部105に提供する。
【0230】
VCO部105は、D/A変換部104からのVCO入力信号の電圧レベルに対応して、VCO出力信号を生成して、A/D変換部102等に提供する。
【0231】
その他、図示はしないが、本発明の手法は、図15のPLL部91に対して、位相誤差情報検出部31の代わりに図15の位相誤差情報検出部61を採用したPLL部にも適用することができる。
【0232】
このように、本発明の手法は、図4や図15の例のPLL部5や、図16の例のPLL部91といった様々なPLLに適用することができる。換言すると、図3の従来の位相誤差情報検出部12の代わりに、図4の例の位相誤差情報検出部31や図15の例の位相誤差情報検出部61を採用することで、本発明の手法を適用したPLLを実現することが容易に可能になる。
【0233】
さらに、本発明が適用されるPLLは、図1のデータ再生装置に適用(搭載)できるだけなく、様々な装置やシステム(システムについては後述する)に対しても容易に適用できる。
【0234】
また、例えば、本発明の手法は、上述した図1の微分フィルタ部1の代わりに、再生RF信号から所定のPR等化に適合させることが可能なアナログ信号を生成する、所定のフィルタ部が採用されたデータ再生装置に対しても適用可能である。
【0235】
さらに例えば、本発明の手法は、上述した図1のPRML部6の代わりに、PLL部5からの同期サンプリングデータからRLL符号を検出可能なデータ検出部が採用されたデータ再生装置に対しても適用可能である。
【0236】
ところで、上述した一連の処理(或いはそのうちの一部分の処理)は、ハードウエアにより実行させることもできるが、ソフトウエアにより実行させることもできる。
【0237】
この場合、図1のデータ再生装置の全体若しくはその一部分(例えばPLL部5等)や、図16のPLL部91等は、例えば、図17に示されるコンピュータで構成することができる。
【0238】
図17において、CPU(Central Processing Unit)201は、ROM(Read Only Memory)202に記録されているプログラム、または記憶部208からRAM(Random Access Memory)203にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM203にはまた、CPU201が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0239】
CPU201、ROM202、およびRAM203は、バス204を介して相互に接続されている。このバス204にはまた、入出力インタフェース205も接続されている。
【0240】
入出力インタフェース205には、キーボードやマウスなどよりなる入力部206、ディスプレイなどよりなる出力部207、ハードディスクなどより構成される記憶部208、および、モデムやターミナルアダプタなどより構成される通信部209が接続されている。通信部209は、インターネットを含むネットワークを介して他の装置(図示せず)との通信処理を行う。
【0241】
入出力インタフェース205にはまた、必要に応じてドライブ210が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどよりなるリムーバブル記録媒体211が適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部208にインストールされる。
【0242】
一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで各種の機能を実行することが可能なコンピュータ(例えば汎用のパーソナルコンピュータ)などに、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
【0243】
このようなプログラムを含む記録媒体は、図17に示されるように、装置本体とは別にユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini-Disk)を含む)、もしくは半導体メモリなどよりなるリムーバブル記録媒体(パッケージメディア)211により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記録されているROM202や、記憶部208に含まれるハードディスクなどで構成される。
【0244】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0245】
また、上述したように、本明細書において、システムとは、複数の処理装置や複数の処理部により構成される装置全体を表すものである。
【図面の簡単な説明】
【0246】
【図1】本発明を適用したデータ再生装置の一実施の形態の構成例を示す図である。
【図2】図1のデータ再生装置のデータ再生処理の一例を説明するフローチャートである。
【図3】従来のDigital ITR型のPLLの構成例を示す図である。
【図4】図1のデータ再生装置に搭載されているPLL部であって、本発明が適用される位相同期装置の一実施の形態の構成例を示す図である。
【図5】図10の位相誤差情報検出部の位相誤差情報検出処理の一例を説明するフローチャートである。
【図6】PR(1,-1)等化における、図3の従来の位相誤差情報検出部の従来のアルゴリズムの一例を示す図である。
【図7】本発明に基づく、d=1かつPR(1,-1)等化における、図4の位相誤差情報検出部のアルゴリズムの一例を示す図である。
【図8】本発明に基づく、d=1かつPR(1,-1)等化における、図4の位相誤差情報検出部のアルゴリズムの他の例を示す図である。
【図9】本発明に基づく、d=1かつPR(1,-1)等化における、図4の位相誤差情報検出部のアルゴリズムの他の例を示す図である。
【図10】本発明に基づく、d=1かつPR(1,-1)等化における、図4の位相誤差情報検出部のアルゴリズムの他の例を示す図である。
【図11】PR(1,0,-1)等化における、図3の従来の位相誤差情報検出部の従来のアルゴリズムの一例を示す図である。
【図12】本発明に基づく、d=1かつPR(1,0,-1)等化における、図4の位相誤差情報検出部のアルゴリズムの一例を示す図である。
【図13】本発明に基づく、d=1かつPR(1,0,-1)等化における、図4の位相誤差情報検出部のアルゴリズムの他の例を示す図である。
【図14】本発明に基づく、d=1かつPR(1,0,-1)等化における、図4の位相誤差情報検出部のアルゴリズムの他の例を示す図である。
【図15】本発明が適用される位相同期装置の、図4とは異なる実施の形態の構成例を示す図である。
【図16】本発明が適用される位相同期装置の、図4や図15とは異なる実施の形態の構成例を示す図である
【図17】本発明が適用されるデータ再生装置や位相同期装置の全体または一部分がコンピュータで構成された実施の形態についてのその構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0247】
1 微分フィルタ部, 2 A/D変換部, 3 EQ部, 4 AGC/DCC部, 5 PLL部, 6 PRML部, 7 デコード部, 11 補間フィルタ部, 13 ループフィルタ部, 14 剰余累算部, 31 位相誤差情報検出部, 41 スライス部, 42 位相誤差検出部, 51 特定パターン検出部, 52 位相誤差情報演算部, 61 位相誤差情報検出部, 72 位相誤差検出部, 81,82 特定パターン検出部, 101 アナログ等化部, 102 A/D変換部, 103 ループフィルタ部, 104 D/A変換部, 105 VCO部, 201 CPU, 202 ROM, 208 記憶部, 211 リムーバブル記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータが、所定の周波数に非同期で読み出された場合、その非同期のデータから、前記所定の周波数に同期させた同期データを生成する位相同期装置において、
前記同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出手段を備え、
前記位相誤差情報検出手段は、
前記同期データを構成する各サンプリング値のうちの処理対象のサンプリング値に関する所定の情報が、予め定められた特定パターンであるのか否かを、ラン制限による情報により判定する特定パターン判定手段と、
前記特定パターン判定手段により前記特定パターンであると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出手段と
を有することを特徴とする位相同期装置。
【請求項2】
前記ラン制限による情報とは、dが1以上となる最小ランに基づく情報である
ことを特徴とする請求項1に記載の位相同期装置。
【請求項3】
前記特定パターンとは、前記同期データを構成する前記各サンプリング値のうちの、処理対象の前記サンプリング値を含む所定の範囲内の状態が理想状態のときには存在し得ないパターンである
ことを特徴とする請求項1に記載の位相同期装置。
【請求項4】
前記ラン制限による情報とは、前記同期データの前記最小ランの制限に基づくパーシャルレスポンス応答の推移を示す情報であり、
前記特定パターンとは、前記同期データの前記最小ランの制限に基づくパーシャルレスポンス応答の推移の全パターンのうちの、前記所定の範囲内の状態が理想状態のときには存在し得ないパターンである
ことを特徴とする請求項3に記載の位相同期装置。
【請求項5】
前記同期データの前記最小ランの制限に基づくパーシャルレスポンス応答は、d=1かつPR(1,-1)の応答であり、
前記特定パターン判定手段はd=1かつPR(1,-1)の応答の推移のパターンが、前記所定の範囲内の状態が理想状態のときには存在し得ないパターンである場合、前記特定パターンであると判定し、それ以外のパターンである場合、前記特定パターンではないと判定する
ことを特徴とする請求項4に記載の位相同期装置。
【請求項6】
前記特定パターンとして、処理対象の前記サンプリングデータを含む前記所定の範囲内のサンプリングデータの位相位置が理想状態の位置からずれたことに起因して生じる第1の種類の特定パターンと、前記所定の範囲内の前記サンプリングデータの位相位置には依存せずに理想状態のときには存在し得ない第2の種類の特定パターンとが存在する
ことを特徴とする請求項5に記載の位相同期装置。
【請求項7】
前記同期データの前記最小ランの制限に基づくパーシャルレスポンス応答は、d=1かつPR(1,0,-1)の応答であり、
前記特定パターン判定手段は、d=1かつPR(1,0,-1)の応答の推移のパターンが、前記所定の範囲内の状態が理想状態のときには存在し得ないパターンである場合、前記特定パターンであると判定し、それ以外のパターンである場合、前記特定パターンではないと判定する
ことを特徴とする請求項4に記載の位相同期装置。
【請求項8】
前記特定パターンとして、処理対象の前記サンプリングデータを含む前記所定の範囲内のサンプリングデータの位相位置が理想状態の位置からずれたことに起因して生じる第1の種類の特定パターンと、前記所定の範囲内の前記サンプリングデータの位相位置には依存せずに理想状態のときには存在し得ない第2の種類の特定パターンとが存在する
ことを特徴とする請求項7に記載の位相同期装置。
【請求項9】
前記位相誤差情報算出手段は、少なくとも処理対象の前記サンプリング値を利用して前記位相誤差情報を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の位相同期装置。
【請求項10】
前記位相誤差情報算出手段は、さらに、前記同期データのうちの処理対象の前記サンプリング値を含む所定の区間内の2以上のサンプリング値と、前記所定の区間内の2以上の前記サンプリング値のそれぞれに対する2以上の仮判定値とを利用して、前記位相誤差情報を算出する
ことを特徴とする請求項9に記載の位相同期装置。
【請求項11】
前記位相誤差情報検出手段は、
前記所定の区間内の2以上の前記サンプリング値のそれぞれに対する2以上の前記仮判定値を算出する仮判定値算出手段をさらに備え、
前記特定パターン判定手段は、前記仮判定値算出手段により算出された2以上の前記仮判定値を前記ラン制限による情報として、前記特定パターンであるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項10に記載の位相同期装置。
【請求項12】
前記特定パターン判定手段は、前記特定パターンであると判定した場合、さらに、複数の種類に分類される前記特定パターンのうちの何れの種類であるのかを判定し、
前記位相誤差情報算出手段は、さらに、前記特定パターンの複数の種類のそれぞれを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の位相同期装置。
【請求項13】
前記特定パターンの複数の種類として、処理対象の前記サンプリングデータを含む前記所定の範囲内のサンプリングデータの位相位置が理想状態の位置からずれたことに起因して生じる第1の種類と、前記所定の範囲内の前記サンプリングデータの位相位置には依存せずに理想状態のときには存在し得ない第2の種類とが少なくとも存在する
ことを特徴とする請求項12に記載の位相同期装置。
【請求項14】
前記位相誤差情報算出手段は、前記特定パターン判定手段により前記特定パターンではないと判定された場合、基準となる第1の演算手法に従って前記位相誤差情報を算出し、前記特定パターンのうちの前記第1の種類であると判定された場合、第2の演算手法に従って前記位相誤差情報を算出し、前記特定パターンのうちの前記第2の種類であると判定された場合、第3の演算手法に従って前記位相誤差情報を算出する
ことを特徴とする請求項13に記載の位相同期装置。
【請求項15】
前記第2の演算手法と前記第3の演算手法とのうちの少なくとも一方は、前記位相誤差情報として固定の0を出力する手法である
ことを特徴とする請求項14に記載の位相同期装置。
【請求項16】
前記第2の演算手法と前記第3の演算手法とのうちの少なくとも一方は、前記第1の演算手法に従って前記位相誤差情報として算出された値に対して、異なる符号の値を前記位相誤差情報として算出する手法である
ことを特徴とする請求項14に記載の位相同期装置。
【請求項17】
前記第1の演算手法とは、所定の演算式による演算値を前記位相誤差情報として出力する手法であり、
前記第2の演算手法と前記第3の演算手法とのうちの少なくとも一方は、前記所定の演算式による前記演算値の符号を反転させた値を前記位相誤差情報として出力する手法である
ことを特徴とする請求項14に記載の位相同期装置。
【請求項18】
d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータが、所定の周波数に非同期で読み出された場合、その非同期のデータから、前記所定の周波数に同期させた同期データを生成する位相同期装置の位相同期方法において、
前記同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出ステップを含み、
前記位相誤差情報検出ステップは、
前記同期データを構成する各サンプリング値のうちの処理対象のサンプリング値に関する所定の情報が、予め定められた特定パターンであるのか否かを、ラン制限による情報により判定する特定パターン判定ステップと、
前記特定パターン判定ステップの処理により前記特定パターンであると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出ステップと
を含むことを特徴とする位相同期方法。
【請求項19】
d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータが、所定の周波数に非同期で読み出された場合、その非同期のデータから、前記所定の周波数に同期させた同期データを生成する処理の制御を行うコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出ステップを含み、
前記位相誤差情報検出ステップは、
前記同期データを構成する各サンプリング値のうちの処理対象のサンプリング値に関する所定の情報が、予め定められた特定パターンであるのか否かを、ラン制限による情報により判定する特定パターン判定ステップと、
前記特定パターン判定ステップの処理により前記特定パターンであると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出ステップと
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項20】
d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータを再生するデータ再生装置において、
前記データがアナログ信号として前記所定の記録媒体から読み出された場合、そのアナログ信号の微分応答信号を生成する微分手段と、
前記微分手段により生成されたアナログの前記微分応答信号を、所定の周波数に非同期でサンプリングすることで、非同期データを生成するサンプリング手段と、
前記サンプリング手段により生成された前記非同期データから、前記所定の周波数に同期した同期データを生成する位相同期手段と
を備え、
前記位相同期手段は、前記同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出手段を有し、
前記位相誤差情報検出手段は、
前記同期データを構成する各サンプリング値のうちの処理対象のサンプリング値に関する所定の情報が、予め定められた特定パターンであるのか否かを、ラン制限による情報により判定する特定パターン判定手段と、
前記特定パターン判定手段により前記特定パターンであると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出手段と
を有することを特徴とするデータ再生装置。
【請求項21】
前記データ再生装置はさらに、
前記サンプリング手段により生成された前記非同期データを所定の波形に整形し、整形後の前記非同期データを出力する波形整形手段と、
前記波形整形手段から出力された前記非同期データのゲイン制御(AGC:Auto Gain Control)およびDC(Direct Current)オフセットキャンセル(DCC:DC Cancel)を行い、AGCおよびDCC後の前記非同期データを出力するAGC/DCC手段と
を備え、
前記位相同期手段は、前記AGC/DCC手段から出力された前記非同期データから、前記同期データを生成する
ことを特徴とする請求項20に記載のデータ再生装置。
【請求項22】
前記データ再生装置はさらに、
前記位相同期手段により生成された前記同期データから、前記RLL記録符号に対応するチャネルビット列を検出するデータ検出手段と、
前記データ検出手段により検出された前記チャネルビット列をデコードするデコード手段と
を備えることを特徴とする請求項20に記載のデータ再生装置。
【請求項23】
前記位相同期手段は、
前記位相誤差情報検出手段により検出された前記位相誤差情報を少なくとも用いてループフィルタ演算を行い、その演算結果を出力するループフィルタ手段と、
前記ループフィルタ手段から出力された演算結果についての所定の累算処理を行い、その処理結果に基づいて、前記非同期データを構成する各サンプリング値の位相位置を調整するために必要な情報を生成して出力する剰余累算手段と、
前記剰余累算手段から出力された前記情報を利用して、前記非同期データを構成する前記各サンプリング値の位相位置を調整し、調整後の前記各サンプリング値から構成されるデータを前記同期データとして出力する位相調整手段と
をさらに有することを特徴とする請求項20に記載のデータ再生装置。
【請求項24】
前記位相同期手段の前記位相誤差情報検出手段は、
前記同期サンプルを構成する前記各サンプリング値のそれぞれと所定の閾値とを比較し、その比較の結果に基づいてスライス値を算出するスライス手段
をさらに有し、
前記位相誤差情報検出手段の前記特定パターン判定手段は、
前記スライス手段により算出される前記スライス値の推移を前記ラン制限による情報として、前記特定パターンであるのか否かを判定する
ことを特徴とする請求項20に記載のデータ再生装置。
【請求項25】
前記記録媒体に記録されている前記RLL記録符号のd=1であり、
前記位相誤差情報検出手段は、PR(1,-1)等化のアルゴリズムに従って前記位相誤差情報を検出している
ことを特徴とする請求項24に記載のデータ再生装置。
【請求項26】
前記同期データを構成する前記各サンプリング値のうちの、処理対象のサンプリングデータが第1の値とされ、前記第1の値の1つ前の値が、前記第2の値とされており、
前記特定パターン判定手段は、前記スライス手段により算出された前記スライス値のうちの、前記第2の値に対応する第2のスライス値と、前記第1の値に対応する第1のスライス値との組み合わせに基づいて、前記特定パターンであるのか否かを判定し、
前記位相誤差情報算出手段は、
前記特定パターンではないと判定された場合、
前記第1の値をdata_nowとし、前記第2の値をdata_Dとし、前記第1のスライス値をslice_nowとし、前記第2のスライス値をslice_Dとして、前記位相誤差情報をphase_errとして、
phase_err = (data_now * slice_D) - (data_D * slice_now)
で示される演算式を利用する第1の演算手法に従って、前記位相誤差情報を算出し、
前記特定パターンであると判定された場合、前記第1の演算手法とは異なる演算手法に従って、前記位相誤差情報を算出する
ことを特徴とする請求項25に記載のデータ再生装置。
【請求項27】
前記同期データを構成する前記各サンプリング値のうちの、前記第2の値の1つ前の値が第3の値とされており、
前記特定パターン判定手段は、前記スライス手段により算出された前記スライス値のうちの、さらに、前記第3の値に対応する第3のスライス値と、前記第2のスライス値と、前記第1のスライス値との組み合わせに基づいて、前記特定パターンであるのか否かを判定する
ことを特徴とする請求項26に記載のデータ再生装置。
【請求項28】
前記第1の演算手法とは異なる前記演算手法とは、所定の値を前記位相誤差情報として出力する手法である
ことを特徴とする請求項26に記載のデータ再生装置。
【請求項29】
前記特定パターン判定手段は、前記特定パターンであると判定した場合、さらに、複数の種類に分類される前記特定パターンのうちの何れの種類であるのかを判定し、
前記位相誤差情報算出手段は、さらに、前記特定パターンの複数の種類のそれぞれを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する
ことを特徴とする請求項26に記載のデータ再生装置。
【請求項30】
前記特定パターンの複数の種類として、第1の種類と第2の種類とが少なくとも存在する
ことを特徴とする請求項29に記載のデータ再生装置。
【請求項31】
前記位相誤差情報算出手段は、前記特定パターン判定手段により前記特定パターンではないと判定された場合、前記第1の演算手法に従って前記位相誤差情報を算出し、前記特定パターンのうちの前記第1の種類であると判定された場合、前記第1の演算手法とは異なる第2の演算手法に従って前記位相誤差情報を算出し、前記特定パターンのうちの前記第2の種類であると判定された場合、前記第1の演算手法とは異なる第3の演算手法に従って前記位相誤差情報を算出する
ことを特徴とする請求項29に記載のデータ再生装置。
【請求項32】
前記第2の演算手法と前記第3の演算手法とのうちの少なくとも一方は、
前記位相誤差情報をrev_phase_errとして、
rev_phase_err = -phase_err
で示される演算式を利用する演算手法である
ことを特徴とする請求項31に記載のデータ再生装置。
【請求項33】
前記第2の演算手法と前記第3の演算手法とのうちの少なくとも一方は、
phase_errの符号が+の場合には−でありphase_errの符号が−の場合には+であることを(phase_err出力の反転符号)と記述し、
所定の定数をRLEVとし、
前記位相誤差情報をrev_phase_errとして、
rev_phase_err =(phase_err出力の反転符号) × RLEV
で示される演算式を利用する演算手法である
ことを特徴とする請求項31に記載のデータ再生装置。
【請求項34】
前記第2の演算手法と前記第3の演算手法とのうちの少なくとも一方は、所定の値を前記位相情報として出力する手法である
ことを特徴とする請求項31に記載のデータ再生装置。
【請求項35】
前記記録媒体に記録されている前記RLL記録符号のd=1であり、
前記位相誤差情報検出手段は、PR(1,0,-1)等化のアルゴリズムに従って前記位相誤差情報を検出している
ことを特徴とする請求項24に記載のデータ再生装置。
【請求項36】
前記同期データを構成する前記各サンプリング値のうちの、処理対象のサンプリングデータが第1の値とされ、前記第1の値の1つ前の値が、前記第2の値とされており、前記第2の値の1つ前の値が第3の値とされており、
前記特定パターン判定手段は、前記スライス手段により算出された前記スライス値のうちの、前記第3の値に対応する第3のスライス値と、前記第2の値に対応する第2のスライス値と、前記第1の値に対応する第1のスライス値との組み合わせに基づいて、前記特定パターンであるのか否かを判定し、
前記位相誤差情報算出手段は、
前記特定パターンではないと判定された場合、
前記第1の値をdata_nowとし、前記第2の値をdata_Dとし、前記第1のスライス値をslice_nowとし、前記第2のスライス値をslice_Dとして、前記位相誤差情報をphase_errとして、
slice_nowとslice_Dが共に0でない時において、
phase_err = (data_now * slice_D) - (data_D * slice_now)
で示される演算式を利用する第1の演算手法に従って、前記位相誤差情報を算出し、
前記特定パターンであると判定された場合、前記第1の演算手法とは異なる演算手法に従って、前記位相誤差情報を算出する
ことを特徴とする請求項35に記載のデータ再生装置。
【請求項37】
前記第1の演算手法とは異なる前記演算手法とは、所定の値を前記位相誤差情報として出力する手法である
ことを特徴とする請求項36に記載のデータ再生装置。
【請求項38】
前記特定パターン判定手段は、前記特定パターンであると判定した場合、さらに、複数の種類に分類される前記特定パターンのうちの何れの種類であるのかを判定し、
前記位相誤差情報算出手段は、さらに、前記特定パターンの複数の種類のそれぞれを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する
ことを特徴とする請求項36に記載の位相同期装置。
【請求項39】
前記特定パターンの複数の種類として、第1の種類と第2の種類とが少なくとも存在する
ことを特徴とする請求項38に記載のデータ再生装置。
【請求項40】
前記位相誤差情報算出手段は、前記特定パターン判定手段により前記特定パターンではないと判定された場合、前記第1の演算手法に従って前記位相誤差情報を算出し、前記特定パターンのうちの前記第1の種類であると判定された場合、前記第1の演算手法とは異なる第2の演算手法に従って前記位相誤差情報を算出し、前記特定パターンのうちの前記第2の種類であると判定された場合、前記第1の演算手法とは異なる第3の演算手法に従って前記位相誤差情報を算出する
ことを特徴とする請求項39に記載のデータ再生装置。
【請求項41】
前記第2の演算手法と前記第3の演算手法とのうちの少なくとも一方は、
前記位相誤差情報をrev_phase_errとして、
rev_phase_err = -phase_err
で示される演算式を利用する演算手法である
ことを特徴とする請求項40に記載のデータ再生装置。
【請求項42】
前記第2の演算手法と前記第3の演算手法とのうちの少なくとも一方は、
phase_errの符号が+の場合には−でありphase_errの符号が−の場合には+であることを(phase_err出力の反転符号)と記述し、
所定の定数をRLEVとし、
前記位相誤差情報をrev_phase_errとして、
rev_phase_err =(phase_err出力の反転符号) × RLEV
で示される演算式を利用する演算手法である
ことを特徴とする請求項40に記載のデータ再生装置。
【請求項43】
前記第2の演算手法と前記第3の演算手法とのうちの少なくとも一方は、所定の値を前記位相情報として出力する手法である
ことを特徴とする請求項40に記載のデータ再生装置。
【請求項44】
前記第1の種類の前記特定パターンは、処理対象の前記サンプリングデータを含む前記所定の範囲内のサンプリングデータの位相位置が理想状態の位置からずれたことに起因して生じるパターンであり、
前記第2の種類の前記特定パターンは、前記所定の範囲内の前記サンプリングデータの位相位置には依存せずに理想状態のときには存在し得ないパターンである
ことを特徴とする請求項40に記載の位相同期装置。
【請求項45】
前記第2の演算手法とは、
前記第3の値をdata_2Dとし、
前記第3のスライス値をslice_2Dとして、
phase_err_2D = (data_now × slice_D)−(data_2D×slice_D)として、
前記位相誤差情報をrev_phase_err_2Dとして、
rev_phase_err_2D = −phase_err_2D
で示される演算式を利用する演算手法であり、
前記第3の演算手法とは、所定の値を前記位相誤差情報として出力する手法である
ことを特徴とする請求項44に記載のデータ再生装置。
【請求項46】
前記第2の演算手法とは、
前記第3の値をdata_2Dとし、
前記第3のスライス値をslice_2Dとして、
phase_err_2D = (data_now × slice_D)−(data_2D×slice_D)として、
phase_err_2Dの符号が+の場合には−でありphase_err_2Dの符号が−の場合には+であることを(phase_err_2D出力の反転符号)と記述し、
所定の定数をRLEVとし、
前記位相誤差情報をrev_phase_err_2Dとして、
rev_phase_err_2D =(phase_err_2D出力の反転符号) × RLEV
で示される演算式を利用する演算手法であり、
前記第3の演算手法とは、所定の値を前記位相誤差情報として出力する手法である
ことを特徴とする請求項44に記載のデータ再生装置。
【請求項47】
d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータを再生するデータ再生装置のデータ再生方法において、
前記データがアナログ信号として前記所定の記録媒体から読み出された場合、そのアナログ信号の微分応答信号を生成する微分ステップと、
前記微分ステップの処理により生成されたアナログの前記微分応答信号を、所定の周波数に非同期でサンプリングすることで、非同期データを生成するサンプリングステップと、
前記サンプリングステップの処理により生成された前記非同期データから、前記所定の周波数に同期した同期データを生成する位相同期ステップと
を含み、
前記位相同期ステップは、前記同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出ステップを有し、
前記位相誤差情報検出ステップは、
前記同期データを構成する各サンプリング値のうちの処理対象のサンプリング値に関する所定の情報が、予め定められた特定パターンであるのか否かを、ラン制限による情報により判定する特定パターン判定ステップと、
前記特定パターン判定ステップの処理により前記特定パターンであると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出ステップと
を含むことを特徴とするデータ再生方法。
【請求項48】
d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータを再生する処理の制御を行うコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記データがアナログ信号として前記所定の記録媒体から読み出された場合、そのアナログ信号の微分応答信号を生成する微分ステップと、
前記微分ステップの処理により生成されたアナログの前記微分応答信号を、所定の周波数に非同期でサンプリングすることで、非同期データを生成するサンプリングステップと、
前記サンプリングステップの処理により生成された前記非同期データから、前記所定の周波数に同期した同期データを生成する位相同期ステップと
を含み、
前記位相同期ステップは、前記同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出ステップを有し、
前記位相誤差情報検出ステップは、
前記同期データを構成する各サンプリング値のうちの処理対象のサンプリング値に関する所定の情報が、予め定められた特定パターンであるのか否かを、ラン制限による情報により判定する特定パターン判定ステップと、
前記特定パターン判定ステップの処理により前記特定パターンであると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出ステップと
を含むことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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