説明

位相同期装置および方法、データ再生装置および方法、並びに、プログラム

【課題】位相同期装置を含むデータ再生装置全体を、そのデータ再生装置についての各種設定条件の違いによらず安定に保つようにする。
【解決手段】 PLLの位相誤差情報検出処理として次の処理が実行される。即ち、現在のスライス値slice_nowと1つ前のスライス値slice_Dとの組(slice_D,slice_now)に基づいて、現在のサンプリング値data_nowと1つ前のサンプリング値data_Dの位相位置が判定される(ステップS23)。裏位相ではないと判定された場合(ステップS24NO)、基準となる第1の演算手法に従って位相誤差情報が算出される(ステップS25)。これに対して、裏位相であると判定された場合(ステップS24YES)、第2の演算手法に従って位相誤差情報が算出される。本発明はPLLや、そのPLLを搭載するデータ再生装置に適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相同期装置および方法、データ再生装置および方法、並びに、プログラムに関し、特に、位相同期装置を含むデータ再生装置全体を、そのデータ再生装置についての各種設定条件の違いによらず安定に保つことができる、位相同期装置および方法、データ再生装置および方法、並びに、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、位相同期装置のひとつとして登場してきているデジタルPLL(Phase Locked Loop)は(例えば特許文献1乃至6、および非特許文献1参照)、RLL符号に対応する非同期サンプリングデータを同期サンプリングデータに変換する場合、所定のパーシャルレスポンス方式等化に整形された同期サンプリングデータを出力する様に、その位相誤差(phase_error)に基づいてフィードバック制御を行うことができる。
【特許文献1】特開2001−358782号公報
【特許文献2】特許第3071142号公報
【特許文献3】特開平10−69727号公報
【特許文献4】特表平10−508135号公報
【特許文献5】特開2000−76805号公報
【特許文献6】特開2002−42428号公報
【非特許文献1】Interpolated Timing Recovery For Hard Disk Drive Read Channels Mark Spurbeck and Richard T.Behrens / Cirrus Logic 1997 IEEE p1618-1624
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなPLLから出力された同期サンプリングデータから元のデータ(RLL符号化された元のデータ)を再生するデータ再生装置(システム)において、そのデータ再生装置に対する各種設定条件によっては、再生されたデータのエラーレートが突然取れなくなったりする等システム全体が不安定になる場合がある、という問題点があった。
【0004】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、位相同期装置を含むデータ再生装置(システム)全体を、そのデータ再生装置についての各種設定条件の違いによらず安定に保つことができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の位相同期装置は、d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータが、所定の周波数に非同期で読み出された場合、その非同期のデータから、所定の周波数に同期させた同期データを生成する位相同期装置であって、同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出手段を備え、位相誤差情報検出手段は、同期データを構成する各サンプリング値のうちの、処理対象の第1の値と、それに隣接する第2の値との位相位置が、第1の値と第2の値とのうちのいずれか一方だけの値が予め定めた閾値を超えているときの位相位置となっている裏位相状態であるのか否かを、ラン制限による情報により判定する位相位置判定手段と、位相位置判定手段により裏位相状態であると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出手段とを有することを特徴とする。
【0006】
ラン制限による情報とは、dが1以上となる最小ランに基づく情報であるようにすることができる。
【0007】
ラン制限による情報とは、同期データの最小ランの制限に基づくパーシャルレスポンス応答の推移を示す情報であるようにすることができる。
【0008】
同期データの最小ランの制限に基づくパーシャルレスポンス応答は、d=1かつPR(1,-1)の応答であり、位相位置判定手段は、d=1かつPR(1,-1)の応答の推移パターンが、裏位相状態のときには存在し、そうではないときには存在しないパターンである場合、裏位相状態であると判定し、それ以外のパターンである場合、裏位相状態ではないと判定するようにすることができる。
【0009】
同期データの最小ランの制限に基づくパーシャルレスポンス応答は、d=1かつPR(1,0,-1)の応答であり、位相位置判定手段は、d=1かつPR(1,0,-1)の応答の推移パターンが、裏位相状態のときには存在し、そうではないときには存在しないパターンである場合、裏位相状態であると判定し、それ以外のパターンである場合、裏位相状態ではないと判定するようにすることができる。
【0010】
位相誤差情報算出手段は、少なくとも第1の値を利用して位相誤差情報を算出するようにすることができる。
【0011】
位相誤差情報算出手段は、さらに、同期データのうちの第1の値を含む所定の区間内の2以上のサンプリング値と、所定の区間内の2以上のサンプリング値のそれぞれに対する2以上の仮判定値とを利用して、位相誤差情報を算出するようにすることができる。
【0012】
位相誤差情報検出手段は、所定の区間内の2以上のサンプリング値のそれぞれに対する2以上の仮判定値を算出する仮判定値算出手段をさらに設け、位相位置判定手段は、仮判定値算出手段により算出された2以上の仮判定値をラン制限による情報として、裏位相状態であるか否かを判定するようにすることができる。
【0013】
位相位置判定手段は、裏位相状態であると判定された場合、さらに、複数パターンの裏位相状態のうちの何れのパターンであるのかを判定し、位相誤差情報算出手段は、さらに、裏位相状態の複数のパターンを区別して、位相誤差情報をそれぞれ算出するようにすることができる。
【0014】
位相誤差情報算出手段は、記位相位置判定手段により裏位相状態ではないと判定された場合、基準となる第1の演算手法に従って位相誤差情報を算出し、裏位相状態であると判定された場合、第1の演算手法とは異なる第2の演算手法に従って位相誤差情報を算出するようにすることができる。
【0015】
第2の演算手法とは、第1の演算手法に従って位相誤差情報として算出された値に対して、異なる符号を有する値が位相誤差情報として算出する手法であるようにすることができる。
【0016】
第1の演算手法とは、所定の演算式による演算値を位相誤差情報として出力する手法であり、第2の演算手法とは、所定の演算式による演算値の符号を反転させた値を位相誤差情報として出力する手法であるようにすることができる。
【0017】
第1の演算手法とは、所定の演算式による演算値を位相誤差情報として出力する手法であり、第2の演算手法とは、所定の値を位相誤差情報として出力する手法であるようにすることができる。
【0018】
第2の演算手法による所定の値は0であるようにすることができる。
【0019】
本発明の位相同期方法は、d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータが、所定の周波数に非同期で読み出された場合、その非同期のデータから、所定の周波数に同期させた同期データを生成する位相同期装置の位相同期方法であって、同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出ステップを含み、位相誤差情報検出ステップは、同期データを構成する各サンプリング値のうちの、処理対象の第1の値と、それに隣接する第2の値との位相位置が、第1の値と第2の値とのうちのいずれか一方だけの値が予め定めた閾値を超えているときの位相位置となっている裏位相状態であるのか否かを、ラン制限による情報により判定する位相位置判定ステップと、位相位置判定ステップの処理により裏位相状態であると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出ステップとを含むことを特徴とする。
【0020】
本発明の第1のプログラムは、上述した本発明の位相同期方法に対応するプログラムである。
【0021】
本発明の位相同期装置および方法並びに第1のプログラムにおいては、d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータが、所定の周波数に非同期で読み出された場合、その非同期のデータから、所定の周波数に同期させた同期データが生成される。このとき、同期データの位相誤差を示す位相誤差情報が検出され、その位相誤差情報に基づいて同期データ(次以降のサンプリング値)が生成される。詳細には、同期データを構成する各サンプリング値のうちの、処理対象の第1の値と、それに隣接する第2の値との位相位置が、第1の値と第2の値とのうちのいずれか一方だけの値が予め定めた閾値を超えているときの位相位置となっている裏位相状態であるのか否かが、ラン制限による情報により判定される。そして、裏位相状態であると判定された場合とそうではないと判定された場合とが区別されて、位相誤差情報がそれぞれ算出される。
【0022】
本発明のデータ再生装置は、d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータを再生するデータ再生装置であって、データがアナログ信号として所定の記録媒体から読み出された場合、そのアナログ信号の微分応答信号を生成する微分手段と、微分手段により生成されたアナログの微分応答信号を、所定の周波数に非同期でサンプリングすることで、非同期データを生成するサンプリング手段と、サンプリング手段により生成された非同期データから、所定の周波数に同期した同期データを生成する位相同期手段とを備え、位相同期手段は、同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出手段を有し、位相誤差情報検出手段は、同期データを構成する各サンプリング値のうちの、処理対象の第1の値と、それに隣接する第2の値との位相位置が、第1の値と第2の値とのうちのいずれか一方だけの値が予め定めた閾値を超えているときの位相位置となっている裏位相状態であるのか否かを、ラン制限による情報により判定する位相位置判定手段と、位相位置判定手段により裏位相状態であると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出手段とを有することを特徴とする。
【0023】
データ再生装置はさらに、サンプリング手段により生成された非同期データを所定の波形に整形し、整形後の非同期データを出力する波形整形手段と、波形整形手段から出力された非同期データのゲイン制御(AGC:Auto Gain Control)およびDC(Direct Current)オフセットキャンセル(DCC:DC Cancel)を行い、AGCおよびDCC後の非同期データを出力するAGC/DCC手段とを設け、位相同期手段は、AGC/DCC手段から出力された非同期データから、同期データを生成するようにすることができる。
【0024】
データ再生装置はさらに、位相同期手段により生成された同期データから、RLL記録符号に対応するチャネルビット列を検出するデータ検出手段と、データ検出手段により検出されたチャネルビット列をデコードするデコード手段とを設けるようにすることができる。
【0025】
位相同期手段は、位相誤差情報検出手段により検出された位相誤差情報を少なくとも用いてループフィルタ演算を行い、その演算結果を出力するループフィルタ手段と、ループフィルタ手段から出力された演算結果についての所定の累算処理を行い、その処理結果に基づいて、非同期データを構成する各サンプリング値の位相位置を調整するために必要な情報を生成して出力する剰余累算手段と、剰余累算手段から出力された情報を利用して、非同期データを構成する各サンプリング値の位相位置を調整し、調整後の各サンプリング値から構成されるデータを同期データとして出力する位相調整手段とをさらに有するようにすることができる。
【0026】
位相同期手段の位相誤差情報検出手段は、同期データを構成する各サンプリング値のそれぞれと所定の閾値とを比較し、その比較の結果に基づいてスライス値を算出するスライス手段をさらに有し、位相誤差情報検出手段の位相位置判定手段は、スライス手段により算出されるスライス値の推移をラン制限による情報として、裏位相状態であるのか否かを判定するようにすることができる。
【0027】
記録媒体に記録されているRLL記録符号のd=1であり、位相誤差情報検出手段は、PR(1,-1)等化のアルゴリズムに従って位相誤差情報を検出しているようにすることができる。
【0028】
同期データを構成する各サンプリング値のうちの、処理対象の第1の値の1つ前の値が、第2の値とされており、位相位置判定手段は、スライス手段により算出されたスライス値のうちの、第2の値に対応する第2のスライス値と、第1の値に対応する第1のスライス値との組み合わせに基づいて、裏位相状態であるのか否かを判定し、位相誤差情報算出手段は、裏位相状態ではないと判定された場合、第1の値をdata_nowとし、第2の値をdata_Dとし、第1のスライス値をslice_nowとし、第2のスライス値をslice_Dとして、位相誤差情報をphase_errとして、phase_err = (data_now * slice_D) - (data_D * slice_now)で示される演算式を利用する第1の演算手法に従って、位相誤差情報を算出し、裏位相状態であると判定された場合、第1の演算手法とは異なる第2の演算手法に従って、位相誤差情報を算出するようにすることができる。
【0029】
第2の演算手法とは、位相誤差情報をrev_phase_errとして、
rev_phase_err = -phase_errで示される演算式を利用する演算手法であるようにすることができる。
【0030】
第2の演算手法とは、phase_errの符号が+の場合には−でありphase_errの符号が−の場合には+であることを(phase_err出力の反転符号)と記述し、所定の定数をRLEVとし、位相誤差情報をrev_phase_errとして、rev_phase_err =(phase_err出力の反転符号) × RLEVで示される演算式を利用する演算手法であるようにすることができる。
【0031】
第2の演算手法で利用される演算式において、RLEV=0とするようにすることができる。
【0032】
記録媒体に記録されているRLL記録符号のd=1であり、位相誤差情報検出手段は、PR(1,0,-1)等化のアルゴリズムに従って位相誤差情報を検出しているようにすることができる。
【0033】
同期データを構成する各サンプリング値のうちの、処理対象の第1の値の1つ前の値が、第2の値とされており、第2の値の1つ前の値が第3の値とされており、位相位置判定手段は、スライス手段により算出されたスライス値のうちの、第3の値に対応する第3のスライス値と、第2の値に対応する第2のスライス値と、第1の値に対応する第1のスライス値との組み合わせに基づいて、裏位相状態であるのか否かを判定し、位相誤差情報算出手段は、裏位相状態ではないと判定された場合、第1の値をdata_nowとし、第2の値をdata_Dとし、第1のスライス値をslice_nowとし、第2のスライス値をslice_Dとして、位相誤差情報をphase_errとして、slice_nowとslice_Dが共に0でない時において、phase_err = (data_now * slice_D) - (data_D * slice_now)で示される演算式を利用する第1の演算手法に従って、位相誤差情報を算出し、裏位相状態であると判定された場合、第1の演算手法とは異なる第2の演算手法に従って、位相誤差情報を算出するようにすることができる。
【0034】
第2の演算手法とは、第3の値をdata_2Dとし、第3のスライス値をslice_2Dとして、phase_err_2D = (data_now × slice_D)−(data_2D×slice_D)として、位相誤差情報をrev_phase_err_2Dとして、rev_phase_err_2D = −phase_err_2Dで示される演算式を利用する演算手法であるようにすることができる。
【0035】
第2の演算手法とは、第3の値をdata_2Dとし、第3のスライス値をslice_2Dとして、phase_err_2D = (data_now × slice_D)−(data_2D×slice_D)として、phase_err_2Dの符号が+の場合には−でありphase_err_2Dの符号が−の場合には+であることを(phase_err_2D出力の反転符号)と記述し、所定の定数をRLEVとし、位相誤差情報をrev_phase_err_2Dとして、rev_phase_err_2D =(phase_err_2D出力の反転符号) × RLEVで示される演算式を利用する演算手法であるようにすることができる。
【0036】
第2の演算手法で利用される演算式において、RLEV=0とするようにすることができる。
【0037】
本発明のデータ再生方法は、d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータを再生するデータ再生装置のデータ再生方法であって、データがアナログ信号として所定の記録媒体から読み出された場合、そのアナログ信号の微分応答信号を生成する微分ステップと、微分ステップの処理により生成されたアナログの微分応答信号を、所定の周波数に非同期でサンプリングすることで、非同期データを生成するサンプリングステップと、サンプリングステップの処理により生成された非同期データから、所定の周波数に同期した同期データを生成する位相同期ステップとを含み、位相同期ステップは、同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出ステップを含み、位相誤差情報検出ステップは、同期データを構成する各サンプリング値のうちの、処理対象の第1の値と、それに隣接する第2の値との位相位置が、第1の値と第2の値とのうちのいずれか一方だけの値が予め定めた閾値を超えているときの位相位置となっている裏位相状態であるのか否かを、ラン制限による情報により判定する位相位置判定ステップと、位相位置判定ステップの処理により裏位相状態であると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出ステップとを含むことを特徴とする。
【0038】
本発明の第2のプログラムは、上述した本発明のデータ再生方法に対応するプログラムであることを特徴とする。
【0039】
本発明のデータ再生装置および方法並びに第2のプログラムにおいては、d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータが再生される。詳細には、データがアナログ信号として所定の記録媒体から読み出された場合、そのアナログ信号の微分応答信号が生成され、アナログの微分応答信号が所定の周波数に非同期でサンプリングされて非同期データが生成され、その非同期データから、所定の周波数に同期した同期データが生成される。この同期データは、同期データの位相誤差を示す位相誤差情報に基づいて生成される。この位相誤差情報は次のように算出される。即ち、同期データを構成する各サンプリング値のうちの、処理対象の第1の値と、それに隣接する第2の値との位相位置が、第1の値と第2の値とのうちのいずれか一方だけの値が予め定めた閾値を超えているときの位相位置となっている裏位相状態であるのか否かが、ラン制限による情報により判定される。そして、裏位相状態であると判定された場合とそうではないと判定された場合とが区別されて、位相誤差情報がそれぞれ算出される。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、位相同期装置またはそれを含むデータ再生装置を提供することが可能になる。特に、位相同期装置を含むデータ再生装置(システム)全体を、そのデータ再生装置についての各種設定条件の違いによらず安定に保つことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、請求項に記載の構成要件と、発明の実施の形態における具体例との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、請求項に記載されている発明をサポートする具体例が、発明の実施の形態に記載されていることを確認するためのものである。従って、発明の実施の形態中には記載されているが、構成要件に対応するものとして、ここには記載されていない具体例があったとしても、そのことは、その具体例が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、具体例が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その具体例が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
【0042】
さらに、この記載は、発明の実施の形態に記載されている具体例に対応する発明が、請求項に全て記載されていることを意味するものではない。換言すれば、この記載は、発明の実施の形態に記載されている具体例に対応する発明であって、この出願の請求項には記載されていない発明の存在、すなわち、将来、分割出願されたり、補正により追加される発明の存在を否定するものではない。
【0043】
本発明によれば、位相同期装置が提供される。この位相同期装置(例えば図10のPLL部5)は、
d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータが、所定の周波数に非同期で読み出された場合、その非同期のデータから、前記所定の周波数に同期させた同期データを生成する位相同期装置であって、
前記同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出手段(例えば図10の位相誤差情報検出部31)を備え、
前記位相誤差情報検出手段は、
前記同期データを構成する各サンプリング値のうちの、処理対象の第1の値と、それに隣接する第2の値との位相位置が、前記第1の値と前記第2の値とのうちのいずれか一方だけの値が予め定めた閾値を超えているときの位相位置となっている裏位相状態(例えば、図4に対する図5の状態が裏位相状態である。また、図6に対する図7の状態が裏位相状態である)であるのか否かを、ラン制限による情報により判定する位相位置判定手段(例えば図10の位相位置判定部51)と、
前記位相位置判定手段により前記裏位相状態であると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出手段(例えば図10の位相誤差情報演算部52)と
を有することを特徴とする。
【0044】
この位相同期装置の前記位相誤差情報検出手段は、
前記所定の区間内の2以上の前記サンプリング値のそれぞれに対する2以上の前記仮判定値を算出する仮判定値算出手段(例えば図10のスライス部41)をさらに備え、
前記位相位置判定手段は、前記仮判定値算出手段により算出された2以上の前記仮判定値を前記ラン制限による情報として、前記裏位相状態であるか否かを判定する
ようにすることができる。
【0045】
本発明によれば、上述した本発明の位相同期装置の位相同期方法が提供される。この位相同期方法は、
前記同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出ステップ(例えば図11の位相誤差情報検出処理)を含み、
前記位相誤差情報検出ステップは、
前記同期データを構成する各サンプリング値のうちの、処理対象の第1の値と、それに隣接する第2の値との位相位置が、前記第1の値と前記第2の値とのうちのいずれか一方だけの値が予め定めた閾値を超えているときの位相位置となっている裏位相状態であるのか否かを、ラン制限による情報により判定する位相位置判定ステップ(例えば図11のステップS23)と、
前記位相位置判定ステップの処理により前記裏位相状態であると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出ステップ(例えば図11のステップS24乃至S26)と
を含むことを特徴とする。
【0046】
本発明によれば、上述した本発明の位相同期方法に対応する第1のプログラムや、その第1のプログラムが記録された記録媒体が提供される。この第1のプログラムは、後述するように、例えば図18の構成のコンピュータにより実行される。
【0047】
本発明によれば、データ再生装置が提供される。このデータ再生装置(例えば図1のデータ再生装置)は、
d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータを再生するデータ再生装置であって、
前記データがアナログ信号として前記所定の記録媒体から読み出された場合、そのアナログ信号の微分応答信号を生成する微分手段(例えば図1の微分フィルタ部1)と、
前記微分手段により生成されたアナログの前記微分応答信号を、所定の周波数に非同期でサンプリングすることで、非同期データを生成するサンプリング手段(例えば図1のA/D変換部2)と、
前記サンプリング手段により生成された前記非同期データから、前記所定の周波数に同期した同期データを生成する位相同期手段(例えば図1と図10のPLL部5)と
を備え、
前記位相同期手段は、前記同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出手段(例えば図10の位相誤差情報検出部31)を有し、
前記位相誤差情報検出手段は、
前記同期データを構成する各サンプリング値のうちの、処理対象の第1の値と、それに隣接する第2の値との位相位置が、前記第1の値と前記第2の値とのうちのいずれか一方だけの値が予め定めた閾値を超えているときの位相位置となっている裏位相状態であるのか否かを、ラン制限による情報により判定する位相位置判定手段(例えば図10の位相位置判定部51)と、
前記位相位置判定手段により前記裏位相状態であると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出手段(例えば図10の位相誤差情報演算部52)と
を有することを特徴とする。
【0048】
このデータ再生装置はさらに、
前記サンプリング手段により生成された前記非同期データを所定の波形に整形し、整形後の前記非同期データを出力する波形整形手段(例えば図1のEQ部3)と、
前記波形整形手段から出力された前記非同期データのゲイン制御(AGC:Auto Gain Control)およびDC(Direct Current)オフセットキャンセル(DCC:DC Cancel)を行い、AGCおよびDCC後の前記非同期データを出力するAGC/DCC手段(例えば図1のAGC/DCC部4)と
を備え、
前記位相同期手段は、前記AGC/DCC手段から出力された前記非同期データから、前記同期データを生成する
ようにすることができる。
【0049】
このデータ再生装置はさらに、
前記位相同期手段により生成された前記同期データから、前記RLL記録符号に対応するチャネルビット列を検出するデータ検出手段(例えば図1のPRML部6)と、
前記データ検出手段により検出された前記チャネルビット列をデコードするデコード手段(例えば図1のデコード部7)と
を設けるようにすることができる。
【0050】
このデータ再生装置の前記位相同期手段は、
前記位相誤差情報検出手段により検出された前記位相誤差情報を少なくとも用いてループフィルタ演算を行い、その演算結果を出力するループフィルタ手段(例えば図10のループフィルタ部13)と、
前記ループフィルタ手段から出力された演算結果についての所定の累算処理を行い、その処理結果に基づいて、前記非同期データを構成する各サンプリング値の位相位置を調整するために必要な情報を生成して出力する剰余累算手段(例えば図10の剰余累算部14)と、
前記剰余累算手段から出力された前記情報を利用して、前記非同期データを構成する前記各サンプリング値の位相位置を調整し、調整後の前記各サンプリング値から構成されるデータを前記同期データとして出力する位相調整手段(例えば図10の補間フィルタ部11)と
をさらに有することを特徴とする。
【0051】
このデータ再生装置の前記位相同期手段の前記位相誤差情報検出手段は、
前記同期データを構成する前記各サンプリング値のそれぞれと所定の閾値とを比較し、その比較の結果に基づいてスライス値を算出するスライス手段(例えば図10のスライス部41)
をさらに有し、
前記位相誤差情報検出手段の前記位相位置判定手段は、
前記スライス手段により算出される前記スライス値の推移を前記ラン制限による情報として、前記裏位相状態であるのか否かを判定する
ようにすることができる。
【0052】
本発明によれば、上述した本発明のデータ再生装置のデータ再生方法が提供される。このデータ再生方法(例えば図2のデータ再生処理に対応する方法)は、
前記データがアナログ信号として前記所定の記録媒体から読み出された場合、そのアナログ信号の微分応答信号を生成する微分ステップ(例えば図2のステップS1)と、
前記微分ステップの処理により生成されたアナログの前記微分応答信号を、所定の周波数に非同期でサンプリングすることで、非同期データを生成するサンプリングステップ(例えば図2のステップS2)と、
前記サンプリングステップの処理により生成された前記非同期データから、前記所定の周波数に同期した同期データを生成する位相同期ステップ(例えば図2のステップS4)と
を含み、
前記位相同期ステップは、前記同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出ステップ(例えば図11の位相誤差情報検出処理)を含み、
前記位相誤差情報検出ステップは、
前記同期データを構成する各サンプリング値のうちの、処理対象の第1の値と、それに隣接する第2の値との位相位置が、前記第1の値と前記第2の値とのうちのいずれか一方だけの値が予め定めた閾値を超えているときの位相位置となっている裏位相状態であるのか否かを、ラン制限による情報により判定する位相位置判定ステップ(例えば図11のステップS23)と、
前記位相位置判定ステップの処理により前記裏位相状態であると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出ステップ(例えば図11のステップS24乃至S26)と
を含むことを特徴とする。
【0053】
本発明によれば、上述した本発明のデータ再生方法に対応する第2のプログラムや、その第2のプログラムが記録された記録媒体が提供される。この第2のプログラムは、後述するように、例えば図18の構成のコンピュータにより実行される。
【0054】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0055】
図1は、本発明を適用したデータ再生装置、或いは、本発明を適用した位相同期装置を含むデータ再生装置の一実施の形態の構成例を示している。
【0056】
このデータ再生装置は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク等の記録媒体に記録されたデータを再生することができる。
【0057】
そこで、図1のデータ再生装置の説明を行う前に、記録媒体に記録されたデータについて説明する。
【0058】
即ち、データを、本実施の形態のように記録媒体に記録したり、或いは、所定の伝送路に伝送する場合、記録媒体や伝送路に適するように、そのデータの変調が行われる。
【0059】
このような変調方法の1つとして、ブロック符号が知られている。このブロック符号は、データ列をm×iビットからなる単位(以下データ語と称する)にブロック化し、このデータ語を適当な符号則に従って、n×iビットからなる符号語に変換するものである。そしてこの符号は、i=1のときには固定長符号となり、またiが複数個選べるとき、すなわち、1乃至imax(最大のi)の範囲の所定のiを選択して変換したときには可変長符号となる。このブロック符号化された符号は可変長符号(d,k;m,n;r)と表される。以下、可変長符号(d,k;m,n;r)を、RLL符号(Run Length Limited Code)と適宜称する。
【0060】
ここでiは拘束長と称され、imaxはr(最大拘束長)となる。またdは、連続する”1”の間に入る、”0”の最小連続個数、例えば”0”の最小ランを示し、kは連続する”1”の間に入る、”0”の最大連続個数、例えば”0”の最大ランを示している。
【0061】
さらに詳細には、記録波形列(後述するようにRLL符号がNRZI変調されたもの)の最小反転間隔をTminとし、最大反転間隔をTmaxとするとき、線速方向に高密度に記録を行うためには、最小反転間隔Tminは長い方が、すなわちdは大きい方が良く、またクロックの再生の面からは、最大反転間隔Tmaxは短い方が、すなわち最大ランkは小さい方が望ましく、この条件を満足するために、種々の変調方法が提案されている。
【0062】
具体的には、例えば光ディスク、磁気ディスク、又は光磁気ディスク等において、提案あるいは実際に使用されている変調方式として、可変長符号であるRLL(1−7)((1,7;m,n;r)とも表記される)やRLL(2−7)((2,7;m,n;r)とも表記される)、そしてISO規格MOに用いられている固定長RLL(1−7)((1,7;m,n;1)とも表記される)などがある。
【0063】
現在開発研究されている、記録密度の高い光ディスクや光磁気ディスク等のディスク装置では、d=1のRLL符号がよく用いられており、例えば可変長RLL(1−7)符号がある。
【0064】
可変長RLL(1−7)のパラメータは(1,7;2,3;2)であり、記録波形列のビット間隔をTとすると、(d+1)Tで表される最小反転間隔Tminは2(=1+1)Tとなる。データ列のビット間隔をTdataとすると、この(m/n)×2で表される最小反転間隔Tminは1.33(=(2/3)×2)Tdataとなる。また(k+1)Tで表される最大反転間隔Tmaxは8(=7+1)T((=(m/n)×8Tdata=(2/3)×8Tdata=5.33Tdata)である。さらに検出窓幅Twは(m/n)×Tdataで表され、その値は0.67(=2/3)Tdataとなる。
【0065】
RLL(1−7)による変調を行ったチャネルビット列におけるTの発生頻度を調べると、Tminである2Tが一番多く、以下3T、4T、5Tと続く。2Tや3Tといった、エッジ情報が早い周期で多く発生するのは、クロック再生には有利となる場合が多い。
【0066】
Blu-ray Disc ReWritable Formatで採用されている17PP符号は、RLL(1−7)符号をベースとしており、最小ラン、最大ラン、基本変換率は同一である。さらに、最小ラン2Tの連続を有限回に制限するとともに、データ列と変換符号列の関係が、テーブル内の「1」の個数に規則性を持たせてあり、DSV(Digital Sum Value)制御時に効率良く行えるような形式となっている。
【0067】
なお、DSV制御とは、次のような制御を言う。
【0068】
即ち、記録媒体へのデータの記録、あるいは、データの伝送の際には、記録媒体あるいは伝送路に適した符号化変調が行われるが、これら変調符号に直流成分及び低域成分が含まれていると、例えば、ディスク装置のサーボの制御におけるトラッキングエラーなどの、各種のエラー検出信号に変動が生じ易くなったり、あるいはジッターが発生し易くなったりする。従って、変調符号には、直流成分及び低域成分をなるべく含めないようにする方が良い。
【0069】
そこで、DSVを制御することが提案されている。このDSVとは、RLL符号をレベル符号化し(例えば後述するNRZI変調を行い)、そのビット列(データのシンボル)の”1”を「+1」、”0”を「−1」として、符号を加算することであり、その総和を0に近づけることを、DSV制御という。符号列の直流成分及び低域成分の目安となるDSV推移の絶対値を小さくすること、すなわち、DSV制御を行うことは、符号列の直流成分及び低域成分を抑圧することになる。
【0070】
なお、可変長RLL(1−7)による変調符号は、DSV制御が行われていない。変換効率が良いために、例えば、DVD(Digital Versatile Disk)の8−16符号のように、変調時にDSV制御を行うことが出来ない。このような場合のDSV制御は例えば、変調後の符号化列(チャネルビット列)において、所定の間隔に区切ってDSV計算を行い、DSV制御ビットとして符号化列(チャネルビット列)内の所定の位置に挿入することによって、実現される。
【0071】
しかしながら、DSV制御ビットは、基本的には冗長ビットである。従って符号変換の効率から考えれば、DSV制御ビットはなるべく少ない方が良い。
【0072】
以上説明したように、本実施の形態では、このようなRLL符号が記録媒体に記録されることになる。
【0073】
より正確には、このようなRLL符号が光ディスクや光磁気ディスク等の記録媒体に記録される場合、例えばコンパクトディスクやミニディスクでは、RLL符号において、”1”を反転とし、”0”を無反転とするNRZI(Non Return to Zero Inverted)変調が行われ、NRZI変調された可変長符号(以下、記録波形列とも称する)に基づく記録が行なわれていることが多い。ただし、この他に、記録密度のあまり大きくなかった初期のISO(International Organization for Standardization)規格の光磁気ディスクでは、記録変調されたビット列がNRZI変調されずに、そのまま記録された場合もあった。
【0074】
本実施の形態では、このようにして光ディスクや光磁気ディスク等の記録媒体に記録されたRLL符号(以下、RLL記録符号と称する)が、図1のデータ再生装置により再生される。さらに言えば、本実施の形態では、d>0のRLL記録符号が、図1のデータ再生装置により再生される。
【0075】
即ち、例えば記録媒体に記録されたRLL記録符号は、図示せぬヘッド等によりRF(Radio Frequency)信号(以下、再生RF信号と称する)として読み出され、図1のデータ再生装置に入力される。
【0076】
従って、図1のデータ再生装置は、この再生RF信号から元のデータを復元し、出力することになる。このため、図1の例では、データ再生装置は、微分フィルタ部1乃至デコード部7から構成されている。
【0077】
かかる構成のデータ再生装置のデータ再生処理の一例が図2のフローチャートに示されている。そこで、以下、図2のフローチャートを参照して、図1のデータ再生装置のデータ再生処理の一例について説明する。また、図2のフローチャートの各ステップの処理を説明する際に、微分フィルタ部1乃至デコード部7のうちの、説明対象のステップの処理を実行するブロックについても併せて説明していく。
【0078】
ステップS1において、微分フィルタ部1は、再生RF信号の微分応答信号を生成し、A/D変換部2に供給する。即ち、微分フィルタ部1は、その名称の通り例えば微分型のフィルタで構成される。
【0079】
ステップS2において、A/D(Analog/Digital)変換部2は、ターゲットとするチャネルクロック(書き込み周波数)fchとは非同期の所定のサンプリング周波数によって、アナログの微分応答信号を非同期サンプリングすることで、デジタルの非同期サンプリングデータを生成し、EQ部3に供給する。
【0080】
なお、ステップS2の処理で使用されるサンプリング周波数は、例えばチャネルクロックfchに対して、2倍よりも小さく、等倍よりもやや高い周波数に設定するとよい。例えば本実施の形態では、サンプリング周波数は、チャネルクロックfchに対してn/m倍とされており、具体的には例えばm=7、n=8 として、fch * 8/7、即ち、チャネルクロックfchに対して8/7倍とされている。
【0081】
ステップS3において、EQ部3は、A/D変換部2から供給された非同期サンプリングデータを所定の波形に整形する。例えば本実施の形態では、EQ部3は、5tapで固定の係数が与えられたイコライザ(Equalizer)として構成されており、この5tap分の固定の係数のそれぞれにより非同期サンプリングデータが所定の波形に整形される。
【0082】
所定の波形に整形された非同期サンプリングデータがEQ部3からAGC/DCC部4に提供されると、処理はステップS4に進む。ステップS4において、AGC/DCC部4は、非サンプリングデータのゲイン制御(AGC:Auto Gain Control)およびDC(Direct Current)オフセットキャンセル(DCC:DC Cancel)を行う。
【0083】
なお、AGC/DCC部4は、必要に応じて、他のブロックより情報を入手して所定の演算を行ってもよい。
【0084】
ゲイン制御およびDCオフセットキャンセルが行われた非同期サンプリングデータが、AGC/DCC部4からPLL部5に提供されると、処理はステップS5に進む。ステップS5において、PLL(Phase Locked Loop)部5は、非同期サンプリングデータを、チャネルクロックfchに同期した同期サンプリングデータに変換する。
【0085】
詳細については後述するが、PLL部5には、PR(1,-1)等化またはPR(1,0,-1)等化に対応したアルゴリズムが与えられており、その結果、PLL部5から出力される同期サンプリングデータは、PR(1,-1)等化またはPR(1,0,-1)等化に整形されたデジタル信号になる。
【0086】
同期サンプリングデータがPLL部5からPRML部6に提供されると、処理はステップS6に進む。ステップS6において、PRML部6は、パーシャルレスポンス(PR:Partial Response)方式と最尤検出(ML:Maximum Likelihood Sequence Detection)方式を組み合わせたPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式を利用して、その同期サンプリングデータからRLL符号(0または1のチャネルビット)を検出する。
【0087】
なお、最尤復号としては、主にビタビ検出(ビタビ復号)が用いられる。ただし、PRML部6のデータ検出方式は、ビタビ復号に特に限定されず、例えばNPML符号を用いる方式であってもよいし、あるいはまた、単純なスライス検出方式であってもよい。
【0088】
RLL符号がPRML部6からデコード部7に供給されると、処理はステップS7に進む。ステップS7において、デコード部7は、このRLL符号をデコード(チャネル復号=符号化復号)し、その結果得られる元のデータ列を出力する。
【0089】
以上、図1の構成を有するデータ再生装置が実行するデータ再生処理について説明した。
【0090】
ところで、例えばいま、図1の構成を有するデータ再生装置に対して、本発明が適用されるPLL部5(詳細の構成については図10参照)の代わりに、図3に示されるような従来のPLL部を搭載した再生装置を考える。即ち、図3は、従来のPLL部の一構成例を示している。
【0091】
図3の例では、従来のPLL部は、Digital ITR型PLL回路として構成されている。このため、図3の例では、補間フィルタ部11乃至剰余累算部14が従来のPLL部に設けられている。
【0092】
補間フィルタ部11は、図1のAGC/DCC部4から入力された非同期サンプリングデータを、同期サンプリングデータに変換するためのフィルタ係数を持った補間フィルタとして構成される。即ち、補間フィルタ部11は、剰余累算部14から供給された情報に基づいて複数のフィルタ係数から所定の1つを選択し、非同期サンプリングデータの位相を、選択されたフィルタ係数に対応する分だけずらす。その結果、補間フィルタ部11から出力されるサンプリングデータは、同期サンプリングデータに近いデータになる。
【0093】
換言すると、過渡期などにおいては、補間フィルタ部11から出力されるサンプリングデータはまだ、チャネル周波数fchに正確に同期していない。即ち、補間フィルタ部11から出力されるサンプリングデータには位相誤差が存在する。このため、PLL部は、フィードバック制御を行って位相誤差を限りなく0に近づけていくことで、結果として、チャネル周波数fchにほぼ同期したサンプリングデータを出力するようにしている。このようなフィードバック制御を行うために、補間フィルタ部11の他、位相誤差情報検出部12、ループフィルタ部13、および、剰余累算部14が設けられているのである。即ち、補間フィルタ部11乃至剰余累算部14によりフィードバックループが構成されているのである。
【0094】
ただし、以下の説明においては、補間フィルタ部11から出力されるサンプリングデータをまとめて、同期サンプリングデータと称する。即ち、位相誤差を多少とも含んだサンプリングデータであっても、同期サンプリングデータと称する。
【0095】
位相誤差情報検出部12は、例えばPR(1,-1)等化に対応したアルゴリズムが与えられており、同期サンプリングデータの位相誤差を示す情報(以下、位相誤差情報と称する)を検出し、ループフィルタ部13に提供する。
【0096】
詳細には、位相誤差情報検出部12は、スライス部21と位相誤差検出部22とから構成される。
【0097】
なお、以下、位相誤差情報検出部12により位相誤差が検出される対象の同期サンプリングデータ、即ち、現在の処理対象のサンプリング値を、data_nowと称する。これに対して、data_nowの一つ前の同期サンプリングデータを、data_Dと称する。
【0098】
この場合、スライス部21は、data_nowの実際の値と所定の閾値thとを比較することで、data_nowが本来取り得る値を仮判定し、その仮判定値(以下、スライス値と称する)を位相誤差検出部22に提供する。
【0099】
具体的には例えば、ここでは同期サンプリングデータはPR(1,-1)等化に整形されたデジタル信号とされているので、1,0,−1が、data_nowが本来取り得る値となる。即ち、例えば本実施の形態では、スライス部21は、data_nowが次の不等式(1)乃至(3)のうちの何れを満たすかを判断する。
【0100】
data_now ≧ th ・・・(1)
th > data_now > -th ・・・(2)
-th ≧ data_now ・・・(3)
【0101】
そして、スライス部21は、不等式(1)を満たす場合にはスライス値は1であると、不等式(2)を満たす場合にはスライス値は0であると、不等式(3)を満たす場合にはスライス値は−1であるとそれぞれ判定し、判定されたスライス値を位相誤差検出部22に提供する。
【0102】
位相誤差検出部22は、次のMueller&Muellerの式(4)の右辺を演算することで、位相誤差情報としてphase_errを算出し、ループフィルタ部13に提供する。なお、式(4)において、slice_nowは、data_nowに対応するスライス値を示しており、slice_Dは、data_Dに対応するスライス値を示している。
【0103】
phase_err = (data_now * slice_D) - (data_D * slice_now) ・・・(4)
【0104】
ループフィルタ部13は、位相誤差検出部22から供給された位相誤差情報に加えて、所定のループフィルタ係数と、必要に応じて所定の初期値とを用いて、ループフィルタ演算を行い、その演算結果を剰余累算部14に提供する。
【0105】
剰余累算部14は、ループフィルタ部13のループフィルタ演算結果についての所定の累算処理を行い、その処理結果に基づいて、補間フィルタ部11にとって必要な情報を生成して補間フィルタ部11に提供するとともに、他のブロックに対して必要なenable情報を提供する。
【0106】
かかる構成の従来のPLL部では、上述した従来の問題点が発生してしまうことになる。そこで、本発明人は、従来の問題点の発生要因を突き止め、その要因を取り除くことが可能な手法を発明した。
【0107】
以下、はじめに、図4乃至図9を参照して、従来の問題点の発生要因について説明する。
【0108】
図4は、d=1のRLL記録符号を用いてPR(1,-1)等化を行ったときの最小ラン2T(=d+1)連続時の理想的な出力波形を示している。
【0109】
即ち、d=1のRLL記録符号を用いてPR(1,-1)等化を行ったときの2Tの連続時の出力は、1,0,-1,0,1,0,-1,・・・である。従って、その出力波形は、図4に示されるような単純なsin波形であるとみなすことができる。
【0110】
この場合、PLL部によるPR(1,-1)等化での理想的なサンプル位置、即ち、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの理想的な位相位置(位相誤差が存在しない位置)、換言すると、data_nowやdata_Dの理想的な位相位置は、図4に示されるように、0,90,180,270,360 の位相位置となる。
【0111】
このような理想的な位相位置の同期サンプリングデータが補間フィルタ部11から出力されている場合には、上述したスライス部12により利用される閾値th、即ち、不等式(1)乃至(3)で利用される閾値thが例えば0.5であるとすると、slice_Dとslice_nowの組み合わせ(slice_D,slice_now)が、(0,-1)、(0,1)、(1,0)、および(-1,0)の何れかとなる。従って、この場合、上述した式(4)より、phase_errは常に0となる。即ち、位相誤差検出部22は、位相誤差情報として0(位相誤差が存在しない意味)をループフィルタ部13に出力する。換言すると、位相誤差検出部22は、位相誤差情報の出力を発生させないとも言える。
【0112】
ただし、0,90,180,270,360 の位相位置における同期サンプリングデータがノイズ等に起因する値を含めば、即ち、0,90,180,270,360 の位置における値が、0,1,−1に対してノイズ等に起因する値が加えられた値であれば、phase_errは0以外の値を有することになるので、位相誤差情報の出力が発生することになる。
【0113】
また、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの位相位置が、理想位置(0,90,180,270,360 の位置)に対して若干ずれた場合にも、slice_Dとslice_nowの組み合わせ(slice_D,slice_now)が、(0,-1)、(0,1)、(1,0)、および(-1,0)の何れかとなる。従って、このような場合には、ノイズ等が無くても、phase_errは0以外の値を有することになるので、位相誤差情報の出力が発生することになる。
【0114】
従って、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの位相位置が理想位置(0,90,180,270,360 の位置)から若干ずれている場合には、PLL部の上述したフィードバック制御により、理想位置(0,90,180,270,360 の位置)に収束していくことになる。即ち、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの位相誤差がなくなっていくことになる。
【0115】
ところが、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの位相位置、換言すると、data_nowやdata_Dの位相位置がさらにずれていき、図5に示されるように、理想位置(0,90,180,270,360 の位置)に対して45ずつずれてしまった場合には、(slice_D,slice_now)として、(0,-1)、(0,1)、(1,0)、および(-1,0)が存在しなくなる。即ち、(slice_D,slice_now)として、本来d=1のRLL符号をPR(1,-1)等化に適用した際には発生し得ない、(1,-1)、(1,1)、(-1,1)、(-1,-1)が発生してしまう。その結果、上述した式(4)より、phase_errは常に0となってしまう。即ち、位相誤差検出部22は、45もの位相誤差が存在するにも拘らず、位相誤差情報として0(位相誤差が存在しない意味)をループフィルタ部13に出力することになってしまう。
【0116】
なお、図5において、45,135, 225, 315の位相位置における値、即ち、同期サンプリングデータの値が、ノイズ等でth=0.5を下回るか-th=-0.5を上回れば、(slice_D,slice_now)として、(0,-1)、(0,1)、(1,0)、および(-1,0)のうちの何れかが存在することになり、位相誤差情報の出力が発生することになる。ただし、図5から明らかなように、45,135位相位置における値はth=0.5を大きく上回っており、また、225, 315の位相位置における値は-th=-0.5を大きく下回っており、たとえ同期サンプリングデータにノイズ等が多く含まれていたとしても、その値がth=0.5を下回るか-th=-0.5を上回る確率は低い。
【0117】
結局、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの位相位置が理想位置から45だけずれた位置(45,135,225,315,405 の位置)から若干ずれている場合には、PLL部の上述したフィードバック制御により、理想位置から45だけずれた位置(45,135,225,315,405 の位置)に収束していってしまうことになる。即ち、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの位相誤差はほぼ45のまま推移して、位相誤差はなくならないことになる。
【0118】
より正確に言うと、data_Dとdata_nowの位相位置が、data_Dとdata_nowのうちのいずれか一方だけの値が予め定めた閾値を超えているときの位相位置となった場合、以下、その位相位置を裏位相と称する。この場合、裏位相になると、PLL部の上述したフィードバック制御により、理想位置から45だけずれた位置(45,135,225,315,405 の位置)に収束していってしまうことになる。即ち、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの位相誤差はほぼ45のまま推移して、位相誤差はなくならないことになる。
【0119】
以上の内容は、2T以外の最小ラン連続時にも同様に当てはまる。例えば、d=1のRLL記録符号を用いてPR(1,-1)等化を行ったときの最小ラン3Tの連続時の出力は、0,1,0,0,-1,0,0,1,0,0,-1,0,0,…である。従って、その出力波形は、図6に示されるような波形であるとみなすことができる。即ち、図6は、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの位相位置が理想位置(0,90,180,270,360 の位置)である状態を示す図である。これに対して、図7は、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの位相位置が理想位置に対して45ずつずれてしまった状態を示す図である。
【0120】
図6から明らかなように、最小ラン3Tの連続時の出力であっても、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの位相位置が理想位置(0,90,180,270,360 の位置)である場合には、(slice_D,slice_now)が、(0,-1)、(0,1)、(1,0)、および(-1,0)が発生する。これに対して、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの位相位置が理想位置に対して45ずつずれてしまうと、(slice_D,slice_now)として、本来発生しない(1,1)、(-1,-1)が発生するとともに、(0,-1)、(0,1)、(1,0)、および(-1,0)が位相のずれた状態で発生する。
【0121】
その他図示はしないが、最小ラン4Tの連続時の出力ならば、1, 0, 0, 0, -1, 0, ・・・となり、最小ラン5Tの連続時の出力ならば、1, 0, 0, 0, 0, -1, 0, ・・・となり、最小ラン6Tの連続時の出力ならば、1, 0, 0, 0, 0, 0, -1, 0, ・・・となる。例えばRLL(1,7)ならば、d=1、最大ランk=7であるから、2Tから8Tまでが存在することとなる。但し大抵において実際にはSync-codeによって、例えば10Tなどのさらに大きなTが存在している。
【0122】
いずれにしても、最小ランに関わり無く、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの位相位置が理想位置である場合には、(slice_D,slice_now)として(0,-1)、(0,1)、(1,0)、および(-1,0)が発生する。これに対して、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの位相位置が理想位置に対して45ずつずれてしまうと、(slice_D,slice_now)として、本来発生しない(1,1)、(-1,-1)が発生するとともに、(0,-1)、(0,1)、(1,0)、および(-1,0)が位相のずれた状態で発生する。
【0123】
従って、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの位相位置が裏位相になってしまうと、PLL部の上述したフィードバック制御により、理想位置からずれた位置に収束していってしまうことになる。即ち、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの位相誤差はなくならないことになる。このことが、上述した従来の問題点の発生要因と考えられる。
【0124】
具体的には例えば、図8は、従来のPLL部が正常にロックしている様子、即ち、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの位相位置がほぼ理想位置にある状態を示している。即ち、図8は、従来のPLL部が、非同期サンプリングデータをPLL(1,-1)等化により位相同期させた場合における、その結果得られる正常時の同期サンプリングデータを示している。図8において、横軸が時間を示し、縦軸が振幅のレベルを示している。また、閾値thは32[Level]とされており、前段の図1のEQ部3における5tap として(-0.50, 0.25, 1.50, 0.25, -0.50)が与えられている。また、アイパターン時のエラーレートは、Byte単位で 3e-4程度であった。図8に示されるように、アイ(閾値近辺の白い部分:2つの黒い部分の間の隙間)が開いていることから、実際の外乱を含んだ波形でも、同期サンプリングデータの位相位置がほぼ理想位置へ向けて収束していることがわかる。
【0125】
ところが、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの位相位置が裏位相となってしまった場合には、従来のPLL部が裏位相の所定の位相位置(理想位置から45度ずれた位置等)でロックしてしまい、その結果、非同期サンプリングデータは図9に示されるようになってしまう。この場合、図9に示されるように、アイの状態が崩れてしまっていることがわかる。換言すると、部分部分でPR(1,-1)等化が正常に行われているアイ(±60[Level]前後のアイ)が確認できるが、それ以外は、別のPR等化(PR(1,0,-1)等化)が行われたようなアイ(±30[Level]前後のアイ)となってしまっていることがわかる。即ち、従来のPLL部が裏位相の所定の位相位置(理想位置から45度ずれた位置等)でロックしてしまうこととは、従来のPLL部があたかも別のPR等化(PR(1,0,-1)等化)を行うことになってしまうことを意味する。
【0126】
従って、PR(1,-1)等化が正常に行われているアイの部分では、図8と同程度のエラーレートを取ることができていたものが(ある程度エラーレートがよかったものが)、そのアイが崩れると、即ち、従来のPLL部が裏位相の所定の位相位置でロックしてしまうと、後段の図1のPR(1,-1)に対応したPRML部6で検出されたチャネルビットは全く合っていないものになるか、または、SYNC(先頭)が取れないものになってしまう。その結果、エラーレートを全く取ることができなくなってしまう。即ち、従来の問題点が発生してしまう。
【0127】
このような裏位相の所定の位相位置で従来のPLL部がロックしてしまうという現象は、再生品質の良い悪いに関係なく、従来のPLL部の前段の図1のAGC/DCC部4のAGCやDCCの設定、EQ部3のタップの設定、或いは、従来のPLL部のスライスの閾値thの設定によっては発生し得る。
【0128】
そこで、本発明人は、このような問題点を解決すべく、次のような手法を発明した。
【0129】
即ち、PLL部からの同期サンプリングデータの位相位置が裏位相になっているか否かを判定し、裏位相になっていない場合には、上述した式(4)の演算結果を位相誤差情報として利用し、裏位相になった場合には、式(4)とは別の位相誤差情報を利用するという手法が、本発明人により発明された。ただし、詳細については後述するが、より正確には、d=1かつPR(1,0,-1)については、裏位相になっていない場合には、基本的には、式(4)の演算結果を位相誤差情報として利用するが、data_Dからdata_nowへの推移が0→±1や±1→0の場合には、0を位相誤差情報として利用する。なぜならば、これらの推移は、裏位相になっているときにも、なっていないときにも、発生し得るからである。
【0130】
この本発明の手法が適用された位相同期装置の構成例、即ち、図1のPLL部5の構成例が、図10に示されている。なお、図10のPLL部5において、図3の従来のPLL部と対応する部分には同一の符号を付してあり、その説明は適宜省略する。
【0131】
図10の例では、PLL部5は、Digital ITR型PLL回路として構成されている。このため、図10の例では、PLL部5には、補間フィルタ部11、位相誤差情報検出部31、ループフィルタ部13、および剰余累算部14が設けられている。即ち、図3の従来のPLL部に対して、位相誤差情報検出部12の代わりに、位相誤差情報検出部31を採用したPLL部5が、本発明が適用される位相同期装置の一実施の形態である。
【0132】
従って、以下、位相誤差情報検出部31の説明のみを行う。
【0133】
図10の例では、位相誤差情報検出部31は、スライス部41と位相誤差検出部42とから構成されている。
【0134】
スライス部41は、図3のスライス部21と基本的に同様の構成と機能とを有している。即ち、このPLL部5から出力される同期サンプリングデータが、PR(1,-1)等化に整形されたデジタル信号である場合には、スライス部41は、data_nowが上述した不等式(1)乃至(3)のうちの何れを満たすかを判断する。そして、スライス部41は、不等式(1)を満たす場合にはスライス値は1であると、不等式(2)を満たす場合にはスライス値は0であると、不等式(3)を満たす場合にはスライス値は−1であるとそれぞれ判定し、判定されたスライス値をslice_nowとして位相誤差検出部42に提供する。
【0135】
図10の例では、位相誤差検出部42は、位相位置判定部51と位相誤差情報演算部52とから構成されている。
【0136】
位相位置判定部51は、スライス部41から提供されたslice_D(1つ前にslice_nowとして提供されたスライス値)とslice_nowとの組(slice_D,slice_now)から、data_nowとdata_Dの位相位置が裏位相であるのか否かを判定する。
【0137】
具体的には例えば、上述した図4乃至図6で説明したように、同期サンプリングデータがd=1かつPR(1,-1)等化に整形されたデジタル信号となる場合、位相位置判定部51は、(slice_D,slice_now)が、上述した(0,-1)、(0,1)、(1,0)、および(-1,0)のうちの何れかの場合、data_nowとdata_Dの位相位置は裏位相ではないと判定する。これに対して、位相位置判定部51は、(slice_D,slice_now)が、上述した(1,-1)、(1,1)、(-1,1)、および(-1,1)のうちの何れかの場合、data_nowとdata_Dの位相位置は裏位相であると判定する。
【0138】
なお、(slice_D,slice_now)として(0,0)も発生し得る(例えば図6の180と270の位置)が、上述した式(4)に従えば、その出力(演算結果であるphase_err)は0となる。従って、(slice_D,slice_now)=(0,0)の場合には、位相位置判定部51による判定は行われないことに相当する。
【0139】
位相位置判定部51の判定結果は位相誤差情報演算部52に供給される。例えばdata_nowとdata_Dの位相位置は裏位相ではないという判定結果が位相位置判定部51から供給された場合には、位相誤差情報演算部52は、上述した式(4)で示される演算手法(以下、基準となる第1の演算手法と称する)に従って位相誤差情報を算出し、即ち、phase_errを位相誤差情報として算出し、ループフィルタ部13に提供する。これに対して例えば、data_nowとdata_Dの位相位置は裏位相であるという判定結果が位相位置判定部51から供給された場合には、位相誤差情報演算部52は、第1の手法とは異なる第2の手法に従って位相誤差情報を算出し、ループフィルタ部13に提供する。なお、第2の手法の具体例については、図12乃至図16を参照して後述する。
【0140】
かかる構成の位相誤差情報検出部31の処理(以下、位相誤差情報検出処理と称する)の一例が図11のフローチャートに示されている。そこで以下、図11のフローチャートを参照して、位相誤差情報検出処理の一例について説明する。
【0141】
ステップS21において、位相誤差情報検出部31は、補間フィルタ部11から直前に出力された同期サンプリングデータの1つのサンプリング値を、data_nowとして取得する。このdata_nowが、スライス部41と位相誤差情報演算部52に供給されると、処理はステップS22に進む。
【0142】
ステップS22において、スライス部41は、data_nowから上述したようにslice_nowを取得する。このslice_nowが、スライス部41から、位相位置判定部51と位相誤差情報演算部52に供給されると、処理はステップS23に進む。
【0143】
ステップS23において、位相位置判定部51は、上述したように、(slice_D,slice_now)に基づいて、data_Dとdata_nowとの位相位置を判定する。その判定結果が、位相位置判定部51から位相誤差情報演算部52に供給されると、処理はステップS24に進む。
【0144】
なお、後述するように、slice_D,slice_nowのみならず、slice_nowよりも2以上前のスライス値も加味された推移パターンに従って、data_Dとdata_nowとの位相位置の判定が行われる場合もある。
【0145】
ステップS24において、位相誤差情報演算部52は、位相位置判定部51によるステップS23の判定結果が裏位相であるか否かを判定する。
【0146】
ステップS24において、裏位相ではないと判定した場合、ステップS25において、位相誤差情報演算部52は、上述したように、基準となる第1の演算手法に従って位相誤差情報を算出する。
【0147】
これに対して、ステップS24において、裏位相であると判定した場合、ステップS26において、位相誤差情報演算部52は、上述したように、第2の演算手法に従って位相誤差情報を算出する。
【0148】
ステップS25またはS26の処理で、位相誤差情報が、位相誤差情報演算部52により算出されて、ループフィルタ部13に提供されると、処理はステップS27に進む。
【0149】
ステップS27において、位相誤差情報検出部31は、これまでのdata_nowをdata_Dに設定し、かつ、これまでのslice_nowをslice_Dに設定する。なお、場合によっては、このステップS27の処理でさらに、これまでのdata_Dがdata_2Dに設定され、かつ、これまでのslice_Dがslice_2Dに設定される。ただし、data_2D,slice_2Dについては後述する。
【0150】
ステップS28において、位相誤差情報検出部31は、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの出力が終了したか否かを判定する。
【0151】
即ち、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの出力が続いている限り、ステップS28においてNOであると判定されて、処理はステップS21に戻され、上述したステップS21乃至S28のループ処理が繰り返し実行される。
【0152】
そして、補間フィルタ部11からの同期サンプリングデータの出力が終了すると、ステップS28においてYESであると判定されて、位相誤差情報検出処理が終了する。
【0153】
次に、図12乃至図15を参照して、ステップS26の第2の演算手法の具体例について説明する。
【0154】
図12は、上述した図3の従来のPLL部の位相誤差情報検出部12の動作(アルゴリズム)であって、d=1、かつ、PR(1,-1)等化におけるアルゴリズムを説明する図である。
【0155】
図12の前提事項として、出現可否とは、エラーが無い正常時(通常理想時)に、その左方に示される(slice_D,slice_now)のパターンが存在するか否かを示す項目とされている。即ち、出現可否の項目において、◎(二重丸印)が付された左方に示される(slice_D,slice_now)のパターンは、エラーが無い正常時に発生し得るパターンである。これに対して、出現可否において、×(バツ印)が付された左方に示される(slice_D,slice_now)のパターンは、エラーが無い正常時に発生し得ないパターンであって、図12の例では裏位相のときのパターンである。
【0156】
また、図12の前提事項として、補正可否とは、エラーが無い時にphase_err(次に説明する)による位相補正ができるかできないかを示す項目とされている。即ち、補正可否の項目において、◎(二重丸印)が付された左方に示される(slice_D,slice_now)のパターンでは、エラーが無い時にphase_errによる位相補正ができることになる。これに対して、補正可否において、−(バー印)が付された左方に示される(slice_D,slice_now)のパターンでは、エラーが無い時にphase_errによる位相補正ができないことになる。
【0157】
さらにまた、図12の前提事項として、phase_errとは、位相誤差情報(その算出手法)を示す項目とされている。順方向 phase_errとは、上述した式(4)(図12の下方に示される式)そのものを示している。即ち、エラーが無い正常時においては、上述した式(4)で示される演算手法(基準となる第1の演算手法)に従って、位相誤差情報が算出されることになる。
【0158】
なお、これらの図12の前提事項は、後述する図13乃至図16においても同様に前提事項とされている。
【0159】
図12の出現可否の項目が×(バツ印)である欄(行)に示されるように、従来のPLL部では、裏位相のときには、位相誤差情報は出力されていなかった(0が出力されていた)。上述したように、このことが、従来の問題点、即ち、エラーレートが突然取れなくなるという問題点の発生要因である。
【0160】
そこで、本発明が適用される図10のPLL部5の位相誤差情報検出部31は、例えば図13の出現可否の項目が×(バツ印)である欄(行)に示されるように、裏位相のときには、次の式(5)(図13の最下方の式)の演算結果rev_phase_errを位相誤差情報として算出する。即ち、次の式(5)(図13の最下方の式)の演算結果rev_phase_errを位相誤差情報として算出するという手法が、図11のステップS26の処理で適用されている第2の演算手法の一例である。
【0161】
rev_phase_err = -phase_err ・・・(5)
【0162】
即ち、図13が、本発明が適用される図10のPLL部5の位相誤差情報検出部31の動作(アルゴリズム)の一例を説明する図であって、d=1、かつ、PR(1,-1)等化におけるアルゴリズムの一例を説明する図である。
【0163】
図13において、逆方向 rev_phase_errとは、phase_errの符号を反転させた値に相当する。この逆方向 rev_phase_errが行われる欄(行)の左方には、※(米印)が付されている。従って、rev_phase_errは、上述した式(5)の代わりに次の式(6)から算出されてもよい。なお、式(6)において、(phase_err出力の反転符号)とは、式(4)の演算結果phase_errが正値の場合(符号が+の場合)には−(マイナス)を言い、式(4)の演算結果phase_errが負値の場合(符号が−の場合)には+(プラス)を言う。また、RLEVは所定の定数(たとえば閾値)を示している。
【0164】
rev_phase_err =(phase_err出力の反転符号) × RLEV ・・・(6)
【0165】
このように、位相誤差情報検出部31は、d=1かつ、PR(1,-1)等化のアルゴリズムで位相誤差情報を決定する場合、従来の図12のアルゴリズムに加えて、さらに、裏位相を考慮した処理を加えた図13のアルゴリズムを適用することができる。
【0166】
さらに、位相誤差情報検出部31は、図14のアルゴリズムに従って、位相誤差情報を決定することもできる。即ち、図14は、裏位相処理を加えた、d=1かつ、PR(1,-1)等化での、位相誤差情報検出部31のアルゴリズムの他の例を示している。
【0167】
図14の例では、従来の問題点をより一段と解決すること(より安定した回路を作成すること)を目的として、PR(1,-1)等化に対して、次のようなアルゴリズムが導入されている。
【0168】
即ち、上述した図13の例のアルゴリズムは、slice_nowの1区間遅れたslice_D(data_nowの1つ前のdata_Dに対応するslice_D)と、slice_nowとの組である(slice_D,slice_now)に基づくアルゴリズムであった。
【0169】
これに対して、この図14の例のアルゴリズムは、slice_nowの2区間遅れたスライス値(以下、slice_2Dと称する)、即ち、data_nowの2つ前のデータ(以下、data_2Dと称する)に対応するslice_2Dも加えたアルゴリズム、即ち、slice_2D、slice_D、およびslice_nowの組である(slice_2D,slice_D,slice_now)に基づくアルゴリズムである。
【0170】
即ち、例えば、(slice_D,slice_now)=(1,0)の場合であっても、エラーがない通常理想時の(slice_2D,slice_D,slice_now)のパターンとして、(0,1,0)は発生(出現)し得るが、(1,1,0)や(-1,1,0)は発生(出現)しない。そして、(slice_2D,slice_D,slice_now)のパターンとして、(1,1,0)は裏位相のときに発生し得る。
【0171】
同様に、例えば、(slice_D,slice_now)=(-1,0)の場合であっても、エラーがない通常理想時の(slice_2D,slice_D,slice_now)のパターンとして、(0,-1,0)は発生(出現)し得るが、(1,-1,0)や(-1,-1,0)は発生(出現)しない。そして、(slice_2D,slice_D,slice_now)のパターンとして、(-1,-1,0)は裏位相のときに発生し得る。
【0172】
そこで、図14の例のアルゴリズムでは、(slice_2D,slice_D,slice_now)のパターンが、(1,1,0)、(-1,-1,0)のそれぞれのときには、裏位相であるとして、それぞれの右方のphase_errの項目に示される算出手法(ここでは0を出力するという算出手法)に従って位相誤差情報を求めると言うアルゴリズムがさらに導入されているのである。
【0173】
このように、図1のデータ再生装置が、d=1のRLL符号(再生RF信号)を用いてPR(1,-1)の等化を行う場合には、図13の例や図14の例のアルゴリズムを適用することで、外乱等によって、再生波形に対する各種設定、例えばAGC/DCC部4についてのAGCやDCCの設定、PLL部5についてのスライスの閾値の設定、EQ部3についてのタップの設定等が適正では無くなったときに、PLL部5が裏位相側でロックするのを回避することができるので、このデータ再生装置全体(システム)を安定にさせることができる。
【0174】
ところで、上述した例では、図10のPLL部5には、PR(1,-1)等化に対応したアルゴリズムが与えられており、このため、その出力である同期サンプリングデータは、PR(1,-1)等化に整形されたデジタル信号とされていた。
【0175】
しかしながら、PLL部5に与えられるアルゴリズムは、PR(1,-1)等化に対応したアルゴリズムに特に限定されない。例えば、PLL部5に対して、PR(1,0,-1)等化に対応したアルゴリズムが与えられてもよい。即ち、PLL部5は、PR(1,0,-1)等化に整形されたデジタル信号を同期サンプリングデータとして出力してもよい。
【0176】
ただし、この場合、d=1のRLL記録符号を用いてPR(1,0,-1)等化を行ったときの2Tの連続時の出力は、PR(1,-1)等化を行ったときの2Tの連続時の出力とは異なり、1,1,-1,-1,1,1,-1,-1,・・・である。同様に、d=1のRLL記録符号を用いてPR(1,0,-1)等化を行ったときの3T以上の連続時の出力は、PR(1,-1)等化を行ったときの3T以上の連続時の出力とは異なり、1,1,0,0,-1,-1,0,0,0,1,1,0,-1,-1,0・・・である。
【0177】
従って、図15に示されるように、エラーが無い正常時(通常理想時)の(slice_D,slice_now)のパターンとしては、(0,-1)、(0,1)、(1,0)、および(-1,0)、並びに、(1,-1)、(1,1)、(-1,1)、(-1,1)、および(0,0)が存在する(出現し得る)ことになる。一方では、裏位相のときの(slice_D,slice_now)のパターンとしては、(0,-1)、(0,1)、(1,0)、(-1,0)、および(0,0)が存在する。
【0178】
この図15は、上述した図3の従来のPLL部の位相誤差情報検出部12の動作(アルゴリズム)であって、d=1、かつ、PR(1,0,-1)等化におけるアルゴリズムを説明する図である。
【0179】
この図15に示されるように、(slice_D,slice_now)のパターンとして、(0,-1)、(0,1)、(1,0)、および(-1,0)は、正常時と裏位相時のどちらの場合でも出現し得ることより、従来、位相誤差情報は全く出力されていなかった(0が出力されていた)。
【0180】
そこで、本実施の形態の図10の位相誤差情報検出部31は、d=1、かつ、PR(1,0,-1)等化におけるアルゴリズムとして、例えば図16のアルゴリズムに従って、位相誤差情報を決定することもできる。即ち、図16は、裏位相処理を加えた、d=1かつ、PR(1,0,-1)等化での、位相誤差情報検出部31のアルゴリズムの一例を示している。
【0181】
具体的には、図16の例のアルゴリズムでは、(slice_2D,slice_D,slice_now)のパターンが、(0,1,0)、(0,-1,0)のそれぞれのときには(左方に※(米印)が付加された欄参照)、裏位相であるとして、それぞれの右方のphase_errの項目に示される算出手法に従って位相誤差情報を求めると言うアルゴリズムがさらに導入されている。
【0182】
即ち、右方のphase_errの項目に示される逆方向(2D) rev_phase_err_2Dとは、次の式(7)(図16中上から2番目の下線式)の左辺のphase_err_2Dの符号を反転させた値に相当する。
【0183】
phase_err_2D = (data_now × slice_D)−(data_2D×slice_D)
・・・(7)
【0184】
従って、逆方向(2D) rev_phase_err_2Dとは、次の式(8)(図16中一番下の式)、または式(9)の左辺の値を言う。
【0185】
rev_phase_err_2D = −phase_err_2D ・・・(8)
【0186】
rev_phase_err_2D =(phase_err_2D出力の反転符号) × RLEV ・・・(9)
なお、式(9)において、(phase_err_2D出力の反転符号)とは、phase_err_2Dの符号が+の場合には−でありphase_err_2Dの符号が−の場合には+であることを示している。または、RLEVは、所定の定数を示している。
【0187】
このように、図1のデータ再生装置が、d=1のRLL符号(再生RF信号)を用いてPR(1,0,-1)の等化を行う場合には、図16の例のアルゴリズムを適用することで、外乱等によって、再生波形に対する各種設定、例えばAGC/DCC部4についてのAGCやDCCの設定、PLL部5についてのスライスの閾値の設定、EQ部3についてのタップの設定等が適正では無くなったときに、PLL部5からの同期サンプリングデータが裏位相に存在する状態となってしても、その状態を速やかに補正することができるので(正常な状態に速やかに遷移させることができるので)、このデータ再生装置全体(システム)を安定にさせることができる。
【0188】
以上説明したように、d=1のRLL符号に対応する非同期サンプリングデータを同期サンプリングデータに変換するPLL部5は、裏位相状態を補正する(元の状態に戻す)ためのアルゴリズムを追加したPR等化方式の位相誤差情報を生成することができる。詳細には、このアルゴリズムは、それぞれのPR等化方式において通常理想時には存在しないパターンを位相位置判定として用いることで、data_nowとdata_Dとの位相位置が裏位相に存在するか否かを判定し、その判定結果によって位相誤差情報の演算手法を切り替える、というアルゴリズムである。その結果、例えばPR(1,-1)等化の場合においては、裏位相側でロックするのを回避することができ、また、PR(1,0,-1)の等化の場合においては、裏位相にある状態を速やかに補正することができ、その結果、このPLL部5を含むシステム(図1のデータ再生装置)全体を安定にさせることができる。
【0189】
ところで、本発明の手法、即ち、通常理想時には存在しないスライス値の推移のパターンのときには、通常理想時とは異なる演算で位相誤差情報を算出するという手法は、d=1、かつ、PR(1,-1)等化またはPR(1,0,-1)等化に限定されるものではない。
【0190】
具体的には例えば、d=2、かつPR(1,-1)等化の場合、スライス値の推移が+1 → +1 のときや-1 → -1 のとき、即ち、(slice_D,slice_now)が(1,1)や(-1,-1)が通常理想時には存在しないパターンである。従って、このようなパターンのときには、通常理想時とは異なる演算で位相誤差情報を算出すればよい。なお、d=1、かつPR(1,-1)等化の場合との違いとしては、スライス値の推移が+1 → -1や-1 → +1というパターンは存在しない。
【0191】
また例えば、d=2、かつPR(1,0,-1)等化の場合、スライス値の推移が0 → +1 → 0 のときや0 → -1 → 0 のとき、即ち、(slice_2D,slice_D,slice_now)が(0,1,0)や(0,-1,0)が通常理想時には存在しないパターンである。従って、このようなパターンのときには、通常理想時とは異なる演算で位相誤差情報を算出すればよい。
【0192】
即ち、結局のところ、dとPR等化方式との組み合わせに応じて、裏位相側で存在するが、通常側では存在しない(通常理想時には存在しない)スライス値の推移のパターンのときには、通常理想時とは異なる演算で位相誤差情報を算出すればよい。
【0193】
また、例えば、本発明の手法は、上述した図10のスライス部41を有するPLL部5に対してだけではなく、仮判定値を出力するようなスライス部を有するPLL部に対しても全く同様に適用することができる。
【0194】
また、例えば、本発明の手法は、上述した図10の例のPLL部5に対してだけではなく、例えば図17に示されるような補間フィルタ部を用いずにA/D変換部のサンプリング周波数及び位相を変更させるような、VCO(Voltage Controlled Oscillator)を用いたPLL部に対しても全く同様に適用することができる。即ち、図17は、本発明が適用されるPLL部の、図10の例とは異なる構成例を示している。
【0195】
図17の例では、PLL部61は、アナログ等化部71、A/D変換部72、位相誤差情報検出部31、ループフィルタ部73、D/A変換部74、およびVCO部75から構成されている。
【0196】
アナログ等化部71は、再生RF信号から、所定のPR方式、例えばPR(1,-1)等化に整形されたアナログ信号を生成し、A/D変換部72に供給する。
【0197】
A/D変換部72は、VCO部75からのVCO出力信号の周波数と同期するように、アナログ等化部71からのアナログ信号を同期サンプリングすることで、デジタルの同期サンプリングデータを生成し、出力する。
【0198】
このA/D変換部72からの同期サンプリングデータはまた、位相誤差情報検出部31にも供給される。この位相誤差情報検出部31は、上述した図10の例のPLL部5にも採用されているものである。従って、位相誤差情報検出部31の説明については省略する。
【0199】
ループフィルタ部73は、位相誤差情報検出部31から供給された位相誤差情報に加えて、所定のループフィルタ係数と、必要に応じて所定の初期値とを用いて、ループフィルタ演算を行い、その演算結果をD/A変換部74に提供する。
【0200】
D/A変換部74は、ループフィルタ部73のループフィルタ演算結果であるデジタル信号をアナログ信号に変換し、そのアナログ信号をVCO入力信号としてVCO部75に提供する。
【0201】
VCO部75は、D/A変換部74からのVCO入力信号の電圧レベルに対応して、VCO出力信号を生成して、A/D変換部72等に提供する。
【0202】
このように、本発明の手法は、図10の例のPLL部5や、図17の例のPLL部61といった様々なPLLに適用することができる。換言すると、図3の従来の位相誤差情報検出部12の代わりに、図10や図17の例の位相誤差情報検出部31を採用することで、本発明の手法を適用したPLLを実現することが容易に可能になる。
【0203】
さらに、本発明が適用されるPLLは、図1のデータ再生装置に適用(搭載)できるだけなく、様々な装置やシステム(システムについては後述する)に対しても容易に適用できる。
【0204】
また、例えば、本発明の手法は、上述した図1の微分フィルタ部1の代わりに、再生RF信号から所定のPR等化に適合させることが可能なアナログ信号を生成する、所定のフィルタ部が採用されたデータ再生装置に対しても適用可能である。
【0205】
さらに例えば、本発明の手法は、上述した図1のPRML部6の代わりに、PLL部5からの同期サンプリングデータからRLL符号を検出可能なデータ検出部が採用されたデータ再生装置に対しても適用可能である。
【0206】
ところで、上述した一連の処理(或いはそのうちの一部分の処理)は、ハードウエアにより実行させることもできるが、ソフトウエアにより実行させることもできる。
【0207】
この場合、図1のデータ再生装置の全体若しくはその一部分(例えばPLL部5等)や、図17のPLL部61等は、例えば、図18に示されるコンピュータで構成することができる。
【0208】
図18において、CPU(Central Processing Unit)101は、ROM(Read Only Memory)102に記録されているプログラム、または記憶部108からRAM(Random Access Memory)103にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM103にはまた、CPU101が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0209】
CPU101、ROM102、およびRAM103は、バス104を介して相互に接続されている。このバス104にはまた、入出力インタフェース105も接続されている。
【0210】
入出力インタフェース105には、キーボードやマウスなどよりなる入力部106、ディスプレイなどよりなる出力部107、ハードディスクなどより構成される記憶部108、および、モデムやターミナルアダプタなどより構成される通信部109が接続されている。通信部109は、インターネットを含むネットワークを介して他の装置(図示せず)との通信処理を行う。
【0211】
入出力インタフェース105にはまた、必要に応じてドライブ110が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどよりなるリムーバブル記録媒体111が適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部108にインストールされる。
【0212】
一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで各種の機能を実行することが可能なコンピュータ(例えば汎用のパーソナルコンピュータ)などに、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
【0213】
このようなプログラムを含む記録媒体は、図18に示されるように、装置本体とは別にユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini-Disk)を含む)、もしくは半導体メモリなどよりなるリムーバブル記録媒体(パッケージメディア)111により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記録されているROM102や、記憶部108に含まれるハードディスクなどで構成される。
【0214】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0215】
また、上述したように、本明細書において、システムとは、複数の処理装置や複数の処理部により構成される装置全体を表すものである。
【図面の簡単な説明】
【0216】
【図1】本発明を適用したデータ再生装置の一実施の形態の構成例を示す図である。
【図2】図1のデータ再生装置のデータ再生処理の一例を説明するフローチャートである。
【図3】従来のDigital ITR型のPLLの構成例を示す図である。
【図4】裏位相の状態を説明するためのモデル図である。
【図5】裏位相の状態を説明するためのモデル図である。
【図6】裏位相の状態を説明するためのモデル図である。
【図7】裏位相の状態を説明するためのモデル図である。
【図8】図3の従来のPLLがロックしている様子を示した応答波形の図である。
【図9】図3の従来のPLLが裏位相側にロックしている様子を示した応答波形の図である。
【図10】図1のデータ再生装置に搭載されているPLL部であって、本発明が適用される位相同期装置の一実施の形態の構成例を示す図である。
【図11】図10の位相誤差情報検出部の位相誤差情報検出処理の一例を説明するフローチャートである。
【図12】PR(1,-1)等化における、図3の従来の位相誤差情報検出部の従来のアルゴリズムの一例を示す図である。
【図13】本発明に基づく、d=1かつPR(1,-1)等化における、図10の位相誤差情報検出部のアルゴリズムの一例を示す図である。
【図14】本発明に基づく、d=1かつPR(1,-1)等化における、図10の位相誤差情報検出部のアルゴリズムの他の例を示す図である。
【図15】PR(1,0,-1)等化における、図3の従来の位相誤差情報検出部の従来のアルゴリズムの一例を示す図である。
【図16】本発明に基づく、d=1かつPR(1,0,-1)等化における、図10の位相誤差情報検出部のアルゴリズムの一例を示す図である。
【図17】本発明が適用される位相同期装置の、図10とは異なる実施の形態の構成例を示す図である。
【図18】本発明が適用されるデータ再生装置や位相同期装置の全体または一部分がコンピュータで構成された実施の形態についてのその構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0217】
1 微分フィルタ部, 2 A/D変換部, 3 EQ部, 4 AGC/DCC部, 5 PLL部, 6 PRML部, 7 デコード部, 11 補間フィルタ部, 13 ループフィルタ部, 14 剰余累算部, 31 位相誤差情報検出部, 41 スライス部, 42 位相誤差検出部, 51 位相位置判定部, 52 位相誤差情報演算部, 71 アナログ等化部, 72 A/D変換部, 73 ループフィルタ部, 74 D/A変換部, 75 VCO部, 101 CPU, 102 ROM, 108 記憶部, 111 リムーバブル記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータが、所定の周波数に非同期で読み出された場合、その非同期のデータから、前記所定の周波数に同期させた同期データを生成する位相同期装置において、
前記同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出手段を備え、
前記位相誤差情報検出手段は、
前記同期データを構成する各サンプリング値のうちの、処理対象の第1の値と、それに隣接する第2の値との位相位置が、前記第1の値と前記第2の値とのうちのいずれか一方だけの値が予め定めた閾値を超えているときの位相位置となっている裏位相状態であるのか否かを、ラン制限による情報により判定する位相位置判定手段と、
前記位相位置判定手段により前記裏位相状態であると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出手段と
を有することを特徴とする位相同期装置。
【請求項2】
前記ラン制限による情報とは、dが1以上となる最小ランに基づく情報である
ことを特徴とする請求項1に記載の位相同期装置。
【請求項3】
前記ラン制限による情報とは、前記同期データの前記最小ランの制限に基づくパーシャルレスポンス応答の推移を示す情報である
ことを特徴とする請求項2に記載の位相同期装置。
【請求項4】
前記同期データの前記最小ランの制限に基づくパーシャルレスポンス応答は、d=1かつPR(1,-1)の応答であり、
前記位相位置判定手段は、d=1かつPR(1,-1)の応答の推移パターンが、前記裏位相状態のときには存在し、そうではないときには存在しないパターンである場合、前記裏位相状態であると判定し、それ以外のパターンである場合、前記裏位相状態ではないと判定する
ことを特徴とする請求項3に記載の位相同期装置。
【請求項5】
前記同期データの前記最小ランの制限に基づくパーシャルレスポンス応答は、d=1かつPR(1,0,-1)の応答であり、
前記位相位置判定手段は、d=1かつPR(1,0,-1)の応答の推移パターンが、前記裏位相状態のときには存在し、そうではないときには存在しないパターンである場合、前記裏位相状態であると判定し、それ以外のパターンである場合、前記裏位相状態ではないと判定する
ことを特徴とする請求項3に記載の位相同期装置。
【請求項6】
前記位相誤差情報算出手段は、少なくとも前記第1の値を利用して前記位相誤差情報を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の位相同期装置。
【請求項7】
前記位相誤差情報算出手段は、さらに、前記同期データのうちの前記第1の値を含む所定の区間内の2以上のサンプリング値と、前記所定の区間内の2以上の前記サンプリング値のそれぞれに対する2以上の仮判定値とを利用して、前記位相誤差情報を算出する
ことを特徴とする請求項6に記載の位相同期装置。
【請求項8】
前記位相誤差情報検出手段は、
前記所定の区間内の2以上の前記サンプリング値のそれぞれに対する2以上の前記仮判定値を算出する仮判定値算出手段をさらに備え、
前記位相位置判定手段は、前記仮判定値算出手段により算出された2以上の前記仮判定値を前記ラン制限による情報として、前記裏位相状態であるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項7に記載の位相同期装置。
【請求項9】
前記位相位置判定手段は、前記裏位相状態であると判定された場合、さらに、複数パターンの前記裏位相状態のうちの何れのパターンであるのかを判定し、
前記位相誤差情報算出手段は、さらに、前記裏位相状態の複数の前記パターンを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の位相同期装置。
【請求項10】
前記位相誤差情報算出手段は、前記位相位置判定手段により前記裏位相状態ではないと判定された場合、基準となる第1の演算手法に従って前記位相誤差情報を算出し、前記裏位相状態であると判定された場合、前記第1の演算手法とは異なる第2の演算手法に従って前記位相誤差情報を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の位相同期装置。
【請求項11】
前記第2の演算手法とは、前記第1の演算手法に従って前記位相誤差情報として算出された値に対して、異なる符号を有する値を前記位相誤差情報として算出する手法である
ことを特徴とする請求項10に記載の位相同期装置。
【請求項12】
前記第1の演算手法とは、所定の演算式による演算値を前記位相誤差情報として出力する手法であり、
前記第2の演算手法とは、前記所定の演算式による前記演算値の符号を反転させた値を前記位相誤差情報として出力する手法である
ことを特徴とする請求項11に記載の位相同期装置。
【請求項13】
前記第1の演算手法とは、所定の演算式による演算値を前記位相誤差情報として出力する手法であり、
前記第2の演算手法とは、所定の値を前記位相誤差情報として出力する手法である
ことを特徴とする請求項11に記載の位相同期装置。
【請求項14】
前記第2の演算手法による前記所定の値は0である
ことを特徴とする請求項13に記載の位相同期装置。
【請求項15】
d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータが、所定の周波数に非同期で読み出された場合、その非同期のデータから、前記所定の周波数に同期させた同期データを生成する位相同期装置の位相同期方法において、
前記同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出ステップを含み、
前記位相誤差情報検出ステップは、
前記同期データを構成する各サンプリング値のうちの、処理対象の第1の値と、それに隣接する第2の値との位相位置が、前記第1の値と前記第2の値とのうちのいずれか一方だけの値が予め定めた閾値を超えているときの位相位置となっている裏位相状態であるのか否かを、ラン制限による情報により判定する位相位置判定ステップと、
前記位相位置判定ステップの処理により前記裏位相状態であると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出ステップと
を含むことを特徴とする位相同期方法。
【請求項16】
d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータが、所定の周波数に非同期で読み出された場合、その非同期のデータから、前記所定の周波数に同期させた同期データを生成する処理の制御を行うコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出ステップを含み、
前記位相誤差情報検出ステップは、
前記同期データを構成する各サンプリング値のうちの、処理対象の第1の値と、それに隣接する第2の値との位相位置が、前記第1の値と前記第2の値とのうちのいずれか一方だけの値が予め定めた閾値を超えているときの位相位置となっている裏位相状態であるのか否かを、ラン制限による情報により判定する位相位置判定ステップと、
前記位相位置判定ステップの処理により前記裏位相状態であると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出ステップと
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項17】
d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータを再生するデータ再生装置において、
前記データがアナログ信号として前記所定の記録媒体から読み出された場合、そのアナログ信号の微分応答信号を生成する微分手段と、
前記微分手段により生成されたアナログの前記微分応答信号を、所定の周波数に非同期でサンプリングすることで、非同期データを生成するサンプリング手段と、
前記サンプリング手段により生成された前記非同期データから、前記所定の周波数に同期した同期データを生成する位相同期手段と
を備え、
前記位相同期手段は、前記同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出手段を有し、
前記位相誤差情報検出手段は、
前記同期データを構成する各サンプリング値のうちの、処理対象の第1の値と、それに隣接する第2の値との位相位置が、前記第1の値と前記第2の値とのうちのいずれか一方だけの値が予め定めた閾値を超えているときの位相位置となっている裏位相状態であるのか否かを、ラン制限による情報により判定する位相位置判定手段と、
前記位相位置判定手段により前記裏位相状態であると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出手段と
を有することを特徴とするデータ再生装置。
【請求項18】
前記データ再生装置はさらに、
前記サンプリング手段により生成された前記非同期データを所定の波形に整形し、整形後の前記非同期データを出力する波形整形手段と、
前記波形整形手段から出力された前記非同期データのゲイン制御(AGC:Auto Gain Control)およびDC(Direct Current)オフセットキャンセル(DCC:DC Cancel)を行い、AGCおよびDCC後の前記非同期データを出力するAGC/DCC手段と
を備え、
前記位相同期手段は、前記AGC/DCC手段から出力された前記非同期データから、前記同期データを生成する
ことを特徴とする請求項17に記載のデータ再生装置。
【請求項19】
前記データ再生装置はさらに、
前記位相同期手段により生成された前記同期データから、前記RLL記録符号に対応するチャネルビット列を検出するデータ検出手段と、
前記データ検出手段により検出された前記チャネルビット列をデコードするデコード手段と
を備えることを特徴とする請求項17に記載のデータ再生装置。
【請求項20】
前記位相同期手段は、
前記位相誤差情報検出手段により検出された前記位相誤差情報を少なくとも用いてループフィルタ演算を行い、その演算結果を出力するループフィルタ手段と、
前記ループフィルタ手段から出力された演算結果についての所定の累算処理を行い、その処理結果に基づいて、前記非同期データを構成する各サンプリング値の位相位置を調整するために必要な情報を生成して出力する剰余累算手段と、
前記剰余累算手段から出力された前記情報を利用して、前記非同期データを構成する前記各サンプリング値の位相位置を調整し、調整後の前記各サンプリング値から構成されるデータを前記同期データとして出力する位相調整手段と
をさらに有することを特徴とする請求項17に記載のデータ再生装置。
【請求項21】
前記位相同期手段の前記位相誤差情報検出手段は、
前記同期データを構成する前記各サンプリング値のそれぞれと所定の閾値とを比較し、その比較の結果に基づいてスライス値を算出するスライス手段
をさらに有し、
前記位相誤差情報検出手段の前記位相位置判定手段は、
前記スライス手段により算出される前記スライス値の推移を前記ラン制限による情報として、前記裏位相状態であるのか否かを判定する
ことを特徴とする請求項17に記載のデータ再生装置。
【請求項22】
前記記録媒体に記録されている前記RLL記録符号のd=1であり、
前記位相誤差情報検出手段は、PR(1,-1)等化のアルゴリズムに従って前記位相誤差情報を検出している
ことを特徴とする請求項21に記載のデータ再生装置。
【請求項23】
前記同期データを構成する前記各サンプリング値のうちの、処理対象の前記第1の値の1つ前の値が、前記第2の値とされており、
前記位相位置判定手段は、前記スライス手段により算出された前記スライス値のうちの、前記第2の値に対応する第2のスライス値と、前記第1の値に対応する第1のスライス値との組み合わせに基づいて、前記裏位相状態であるのか否かを判定し、
前記位相誤差情報算出手段は、
前記裏位相状態ではないと判定された場合、
前記第1の値をdata_nowとし、前記第2の値をdata_Dとし、前記第1のスライス値をslice_nowとし、前記第2のスライス値をslice_Dとして、前記位相誤差情報をphase_errとして、
phase_err = (data_now * slice_D) - (data_D * slice_now)
で示される演算式を利用する第1の演算手法に従って、前記位相誤差情報を算出し、
前記裏位相状態であると判定された場合、前記第1の演算手法とは異なる第2の演算手法に従って、前記位相誤差情報を算出する
ことを特徴とする請求項22に記載のデータ再生装置。
【請求項24】
前記第2の演算手法とは、
前記位相誤差情報をrev_phase_errとして、
rev_phase_err = -phase_err
で示される演算式を利用する演算手法である
ことを特徴とする請求項23に記載のデータ再生装置。
【請求項25】
前記第2の演算手法とは、
phase_errの符号が+の場合には−でありphase_errの符号が−の場合には+であることを(phase_err出力の反転符号)と記述し、
所定の定数をRLEVとし、
前記位相誤差情報をrev_phase_errとして、
rev_phase_err =(phase_err出力の反転符号) × RLEV
で示される演算式を利用する演算手法である
ことを特徴とする請求項23に記載のデータ再生装置。
【請求項26】
前記第2の演算手法で利用される前記演算式において、RLEV=0とする
ことを特徴とする請求項25に記載のデータ再生装置。
【請求項27】
前記記録媒体に記録されている前記RLL記録符号のd=1であり、
前記位相誤差情報検出手段は、PR(1,0,-1)等化のアルゴリズムに従って前記位相誤差情報を検出している
ことを特徴とする請求項21に記載のデータ再生装置。
【請求項28】
前記同期データを構成する前記各サンプリング値のうちの、処理対象の前記第1の値の1つ前の値が、前記第2の値とされており、前記第2の値の1つ前の値が第3の値とされており、
前記位相位置判定手段は、前記スライス手段により算出された前記スライス値のうちの、前記第3の値に対応する第3のスライス値と、前記第2の値に対応する第2のスライス値と、前記第1の値に対応する第1のスライス値との組み合わせに基づいて、前記裏位相状態であるのか否かを判定し、
前記位相誤差情報算出手段は、
前記裏位相状態ではないと判定された場合、
前記第1の値をdata_nowとし、前記第2の値をdata_Dとし、前記第1のスライス値をslice_nowとし、前記第2のスライス値をslice_Dとして、前記位相誤差情報をphase_errとして、
slice_nowとslice_Dが共に0でない時において、
phase_err = (data_now * slice_D) - (data_D * slice_now)
で示される演算式を利用する第1の演算手法に従って、前記位相誤差情報を算出し、
前記裏位相状態であると判定された場合、前記第1の演算手法とは異なる第2の演算手法に従って、前記位相誤差情報を算出する
ことを特徴とする請求項27に記載のデータ再生装置。
【請求項29】
前記第2の演算手法とは、
前記第3の値をdata_2Dとし、
前記第3のスライス値をslice_2Dとして、
phase_err_2D = (data_now × slice_D)−(data_2D×slice_D)として、
前記位相誤差情報をrev_phase_err_2Dとして、
rev_phase_err_2D = −phase_err_2D
で示される演算式を利用する演算手法である
ことを特徴とする請求項28に記載のデータ再生装置。
【請求項30】
前記第2の演算手法とは、
前記第3の値をdata_2Dとし、
前記第3のスライス値をslice_2Dとして、
phase_err_2D = (data_now × slice_D)−(data_2D×slice_D)として、
phase_err_2Dの符号が+の場合には−でありphase_err_2Dの符号が−の場合には+であることを(phase_err_2D出力の反転符号)と記述し、
所定の定数をRLEVとし、
前記位相誤差情報をrev_phase_err_2Dとして、
rev_phase_err_2D =(phase_err_2D出力の反転符号) × RLEV
で示される演算式を利用する演算手法である
ことを特徴とする請求項28に記載のデータ再生装置。
【請求項31】
前記第2の演算手法で利用される前記演算式において、RLEV=0とする
ことを特徴とする請求項30に記載のデータ再生装置。
【請求項32】
d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータを再生するデータ再生装置のデータ再生方法において、
前記データがアナログ信号として前記所定の記録媒体から読み出された場合、そのアナログ信号の微分応答信号を生成する微分ステップと、
前記微分ステップの処理により生成されたアナログの前記微分応答信号を、所定の周波数に非同期でサンプリングすることで、非同期データを生成するサンプリングステップと、
前記サンプリングステップの処理により生成された前記非同期データから、前記所定の周波数に同期した同期データを生成する位相同期ステップと
を含み、
前記位相同期ステップは、前記同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出ステップを含み、
前記位相誤差情報検出ステップは、
前記同期データを構成する各サンプリング値のうちの、処理対象の第1の値と、それに隣接する第2の値との位相位置が、前記第1の値と前記第2の値とのうちのいずれか一方だけの値が予め定めた閾値を超えているときの位相位置となっている裏位相状態であるのか否かを、ラン制限による情報により判定する位相位置判定ステップと、
前記位相位置判定ステップの処理により前記裏位相状態であると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出ステップと
を含むことを特徴とするデータ再生方法。
【請求項33】
d>0のRLL記録符号として所定の記録媒体に記録されているデータを再生する処理の制御を行うコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記データがアナログ信号として前記所定の記録媒体から読み出された場合、そのアナログ信号の微分応答信号を生成する微分ステップと、
前記微分ステップの処理により生成されたアナログの前記微分応答信号を、所定の周波数に非同期でサンプリングすることで、非同期データを生成するサンプリングステップと、
前記サンプリングステップの処理により生成された前記非同期データから、前記所定の周波数に同期した同期データを生成する位相同期ステップと
を含み、
前記位相同期ステップは、前記同期データの位相誤差を示す位相誤差情報を検出する位相誤差情報検出ステップを含み、
前記位相誤差情報検出ステップは、
前記同期データを構成する各サンプリング値のうちの、処理対象の第1の値と、それに隣接する第2の値との位相位置が、前記第1の値と前記第2の値とのうちのいずれか一方だけの値が予め定めた閾値を超えているときの位相位置となっている裏位相状態であるのか否かを、ラン制限による情報により判定する位相位置判定ステップと、
前記位相位置判定ステップの処理により前記裏位相状態であると判定された場合とそうではないと判定された場合とを区別して、前記位相誤差情報をそれぞれ算出する位相誤差情報算出ステップと
を含むことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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