説明

位相差フィルムおよび液晶表示装置

【課題】 液晶セルと偏光板との間に位相差フィルムを配置した場合でも、表示画像に明暗模様を発生させることがなく、表示品位が低下することを効果的に抑制可能な位相差フィルムを提供することを主目的とする。
【解決手段】 少なくとも透明支持体、配向膜、及び当該配向膜に隣接し液晶性化合物を含んでなる位相差層を有する位相差フィルムにおいて、該透明支持体と該配向膜の間に屈折率調節層が、波長420nm〜480nmの光に対する該透明支持体の屈折率N1と該屈折率調節層の屈折率N2の差及び該屈折率調節層の屈折率N2と該配向膜の屈折率N3の差がいずれも0.04未満となるように設置されていることを特徴とする位相差フィルムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差フィルムおよびこの位相差フィルムを用いた液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な液晶表示装置としては、図5に示すように、入射側の偏光板102Aと、出射側の偏光板102Bと、液晶セル104とを有するものを挙げることができる。偏光板102Aおよび102Bは、所定の振動方向の振動面を有する直線偏光(図中、矢印で模式的に図示)のみを選択的に透過させるように構成されたものであり、それぞれの振動方向が相互に直角の関係になるようにクロスニコル状態で対向して配置されている。また、液晶セル104は画素に対応する多数のセルを含むものであり、偏光板102Aと102Bとの間に配置されている。
【0003】
ここで、このような液晶表示装置100において、液晶セル104が、負の誘電異方性を有するネマチック液晶が封止されたVA(Vertical Alignment)方式(図中、液晶のダイレクターを点線で模式的に図示)を採用している場合を例に挙げると、入射側の偏光板102Aを透過した直線偏光は、液晶セル104のうち非駆動状態のセルの部分を透過する際に、位相シフトされずに透過し、出射側の偏光板102Bで遮断される。これに対し、液晶セル104のうち駆動状態のセルの部分を透過する際には、直線偏光が位相シフトされ、この位相シフト量に応じた量の光が出射側の偏光板102Bを透過して出射される。これにより、液晶セル104の駆動電圧を各セル毎に適宜制御することにより、出射側の偏光板102B側に所望の画像を表示することができる。なお、液晶表示装置100としては、上述したような光の透過および遮断の態様をとるものに限らず、液晶セル104のうち非駆動状態のセルの部分から出射された光が出射側の偏光板102Bを透過して出射される一方で、駆動状態のセルの部分から出射された光が出射側の偏光板102Bで遮断されるように構成された液晶表示装置も考案されている。
【0004】
ところで、上述したようなVA方式の液晶セル104のうち非駆動状態のセルの部分を直線偏光が透過する場合を考えると、液晶セル104は複屈折性を有しており、厚さ方向の屈折率と面方向の屈折率とが異なるので、入射側の偏光板102Aを透過した直線偏光のうち液晶セル104の法線に沿って入射した光は位相シフトされずに透過するものの、入射側の偏光板102Aを透過した直線偏光のうち液晶セル104の法線から傾斜した方向に入射した光は液晶セル104を透過する際に位相差が生じて楕円偏光となる。この現象は、液晶セル104内で垂直方向に配向した液晶分子が、正のCプレートとして作用することに起因したものである。なお、液晶セル104を透過する光(透過光)に対して生じる位相差の大きさは、液晶セル104内に封入された液晶分子の複屈折値や、液晶セル104の厚さ、透過光の波長等にも影響される。
【0005】
以上の現象により、液晶セル104内のあるセルが非駆動状態であり、本来的には直線偏光がそのまま透過され、出射側の偏光板102Bで遮断されるべき場合であっても、液晶セル104の法線から傾斜した方向に出射された光の一部が出射側の偏光板102Bから洩れてしまうことになる。
【0006】
このため、上述したような従来の液晶表示装置100においては、正面から観察される画像に比べて、液晶セル104の法線から傾斜した方向から観察される画像の表示品位が主にコントラストが低下することが原因で悪化するという問題(視角依存性の問題)があった。
【0007】
上述したような従来の液晶表示装置100における視角依存性の問題を改善するため、現在までに様々な技術が開発されており、その一つとして、例えば特許文献1または特許文献2に開示されているように、コレステリック規則性の分子構造を有する位相差層(複屈折性を示す位相差層)を用い、このような位相差層を液晶セルと偏光板との間に配置することにより光学補償を行うようにした液晶表示装置が知られている。
ここで、コレステリック規則性の分子構造を有する位相差光学素子では、λ=nav・p(p:液晶分子の螺旋構造における螺旋(ヘリカル)ピッチ、nav:螺旋軸に直交する平面内での平均屈折率)で表される選択反射波長が、例えば特許文献1または特許文献2に開示されているように、透過光の波長よりも小さくなる、または大きくなるように調整している。
【0008】
一方、例えば特許文献3に開示されているように、円盤状化合物からなる位相差層(複屈折性を示す位相差層)を用い、このような位相差層を液晶セルと偏光板との間に配置することにより光学補償を行うようにした液晶表示装置も知られている。
【0009】
上述したような位相差光学素子においては、上述した液晶セルの場合と同様に、位相差層の法線から傾斜した方向に入射する直線偏光は、位相差層を透過する際に位相差が生じて楕円偏光となる。この現象は、コレステリック規則性の分子配列や円盤状化合物自体が負のCプレートとして作用することに起因したものである。なお、位相差層を透過する光(透過光)に対して生じる位相差の大きさは、位相差層内の液晶分子の複屈折値や、位相差層の厚さ、透過光の波長等にも影響される。
【0010】
したがって、上述したような位相差層を用いれば、正のCプレートとして作用するVA方式の液晶セルで生じる位相差と、負のCプレートとして作用する位相差層で生じる位相差とが相殺するように、位相差層を適宜設計することにより、液晶表示装置の視角依存性の問題を大幅に改善することが可能である。
【0011】
しかしながら、上述したような位相差光学素子を液晶セルと偏光板との間に配置した場合には、視角依存性の問題を改善することはできるものの、表示画像に明暗模様が発生して表示品位を著しく低下させる場合があり、問題となっていた。
【0012】
この問題を解決するために、液晶の配向に着目したものとして、例えば特許文献4では、コレステリック規則性を有する液晶層表面の全範囲における液晶分子のダイレクターを一致させモノドメインとした光学素子が開示されている。しかしながら、より簡単かつ低コストに得られる解決手段が望まれていた。
【0013】
【特許文献1】特開平3−67219号公報
【特許文献2】特開平4−322223号公報
【特許文献3】特開平10−312166号公報
【特許文献4】特開2002−258053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、液晶セルと偏光板との間に位相差フィルムを配置した場合でも、表示画像に明暗模様を発生させることがなく、表示品位が低下することを効果的に抑制可能な位相差フィルム、この位相差フィルムを用いた液晶表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記目的を達成するために、少なくとも透明支持体、配向膜、及び当該配向膜に隣接し液晶性化合物を含んでなる位相差層を有する位相差フィルムにおいて、該透明支持体と該配向膜の間に屈折率調節層が、波長420nm〜480nmの光に対する該透明支持体の屈折率N1と該屈折率調節層の屈折率N2の差及び該屈折率調節層の屈折率N2と該配向膜の屈折率N3の差がいずれも0.04未満となるように設置されていることを特徴とする位相差フィルムを提供することにより、上記課題を解決するようにした。
【0016】
本発明者は、液晶セルと偏光板との間に位相差フィルムを配置した場合の、表示画像の明暗模様を発生させる原因を鋭意検討した結果、位相差フィルムの基材と位相差層等との屈折率差と膜厚ムラが組み合わされて生じるものが大きな原因の一つであることに想到した。即ちそれは、基材と位相差層等との屈折率差が大きいと、その界面での反射光が大きくなり、位相差フィルムの表面からの反射光と干渉が起こるが、更に位相差層に膜厚ムラがあると反射光が強くなる箇所と弱くなる箇所ができて、明暗模様を発生させるというものである。上記屈折率差も膜厚ムラも微小のものであり、特に膜厚ムラを更に低減するには限界があった。
【0017】
本発明によれば、位相差フィルムにおいて屈折率差が比較的大きくなる透明支持体と配向膜の間に、屈折率調節層が、波長420nm〜480nmの光に対する該透明支持体の屈折率N1と該屈折率調節層の屈折率N2の差及び該屈折率調節層の屈折率N2と該配向膜の屈折率N3の差がいずれも0.04未満となるように設置されていることにより、偏光板クロスニコル下で漏れて透過する特性を有する波長420nm〜480nmの光に対して、位相差フィルムの反射光の干渉が効果的に低減されるため、位相差層に従来と同様の膜厚ムラが存在していても、反射光の場所による強弱が低減される。その結果、本発明の位相差フィルムは、液晶セルと偏光板との間に位相差フィルムを配置した場合でも、表示画像に明暗模様を発生させることがなく、表示品位が低下することを効果的に抑制可能となる。
【0018】
本発明の位相差フィルムにおいては、波長420nm〜480nmの光に対する上記配向膜の屈折率N3と上記位相差層の屈折率N4の差が0.04未満であることが、偏光板クロスニコル下で観察した時の明暗模様の低減効果がより高くなる点から好ましい。
【0019】
また、本発明の位相差フィルムにおいては、上記配向膜が、水溶性多糖類を含んでなることが、液晶配向能に優れる点から好ましい。
【0020】
本発明の位相差フィルムにおいては、上記位相差層が、重合性液晶化合物を含んでなることが好ましい。重合性液晶化合物を用いることにより、耐熱性の良い位相差フィルムを得ることができるからである。
【0021】
また、本発明の位相差フィルムにおいては、上記位相差層の液晶規則性がネマチック規則性またはスメクチック規則性を有することが好ましい。ネマチック規則性又はスメクチック規則性を有することにより、偏光板起因の視野角依存性に対する補償用や、円偏光モード液晶ディスプレイに適用可能なλ/4やλ/2のAプレートの機能を果たすことができるからである。
【0022】
本発明の位相差フィルムにおいては、上記位相差層の液晶規則性がプレーナー配向されたコレステリック規則性を有することが好ましい。この場合には、VAモード液晶ディスプレイに適用可能な負の一軸性を持った負のCプレートの機能を果たすことができるからである。
【0023】
また、本発明の位相差フィルムにおいては、上記位相差層が少なくともネマチック規則性またはスメクチック規則性を有する層とコレステリック規則性を有する層が積層されてなることが好ましい。この場合には、1つの位相差フィルムで、上記のようなAプレートと負のCプレートを兼ね備えた機能を果たすことができるからである。
【0024】
また、本発明に係る液晶表示装置は、上記本発明に係る位相差フィルムを、光路に配置したことを特徴とする。したがって、本発明に係る液晶表示装置は、表示画像に明暗模様を発生させることがなく、表示品位に優れるものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の位相差フィルムは、液晶セルと偏光板との間に位相差フィルムを配置した場合でも、表示画像に明暗模様を発生させることがなく、表示品位が低下することを効果的に抑制可能であるといった効果を奏するものである。
本発明の位相差フィルムは、隣接する層間の屈折率差を調節することにより、層の膜厚ムラが従来と同様でも、より簡単に、効果的に明暗模様の発生を防止できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、位相差フィルム、及び液晶表示装置を含むものである。以下、それぞれについて詳述する。なお、本発明において(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートのいずれかであることを意味し、(メタ)アクリロイルとはアクリロイル基又はメタクリロイル基のいずれかであることを意味する。
また本発明において、特に波長が限定されていない光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波が含まれる。
【0027】
1.位相差フィルム
本発明の位相差フィルムは、少なくとも透明支持体、配向膜、及び当該配向膜に隣接し液晶性化合物を含んでなる位相差層を有する位相差フィルムにおいて、該透明支持体と該配向膜の間に屈折率調節層が、波長420nm〜480nmの光に対する該透明支持体の屈折率N1と該屈折率調節層の屈折率N2の差及び該屈折率調節層の屈折率N2と該配向膜の屈折率N3の差がいずれも0.04未満となるように設置されていることを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、位相差フィルムにおいて屈折率差が比較的大きくなる透明支持体と配向膜の間に、屈折率調節層が、波長420nm〜480nmの光に対する該透明支持体の屈折率N1と該屈折率調節層の屈折率N2の差及び該屈折率調節層の屈折率N2と該配向膜の屈折率N3の差がいずれも0.04未満となるように設置されていることにより、偏光板クロスニコル下で漏れて透過する特性を有する波長420nm〜480nmの光に対して、位相差フィルムの反射光の干渉が効果的に低減されるため、位相差層に従来と同様の膜厚ムラが存在していても、反射光の場所による強弱が低減される。その結果、本発明の位相差フィルムは、液晶セルと偏光板との間に位相差フィルムを配置した場合でも、表示画像に明暗模様を発生させることがなく、表示品位が低下することを効果的に抑制可能となる。
ここで、各層の波長420nm〜480nmの光に対する屈折率の値は必ずしも一定ではないが、本発明でいう波長420nm〜480nmの光に対する屈折率の差が0.04未満とは、波長420nm〜480nmの全ての領域において、屈折率の差が0.04未満となっていることをいう。なお、波長420nm〜480nmの光に対する屈折率は、市販の屈折率測定機(例えば、アッベ屈折計(DR-M2、ATAGO社製)やエリプソメーター(J.A.Woollam社製)を用いて求めることができる。
【0029】
図1に本発明に係る位相差フィルムの一例の層構成を示す。図1において1は透明支持体、2は透明支持体1上に形成された屈折率調節層、3は屈折率調節層2上に形成された配向膜、4は配向膜3上に形成された液晶性化合物を含んでなる位相差層である。
【0030】
上記透明支持体の屈折率N1と上記屈折率調節層の屈折率N2と上記配向膜の屈折率N3と上記位相差層の屈折率N4において、波長420nm〜480nmの光に対するN1とN2の差が0.04未満、且つ、波長420nm〜480nmの光に対するN2とN3の差が0.04未満であることが特徴である。更に、波長420nm〜480nmの光に対する上記配向膜の屈折率N3と上記位相差層の屈折率N4の差が0.04未満であることが、偏光板クロスニコル下で観察した時の明暗模様の低減効果が高い点から好ましい。また、本発明に係る位相差フィルムには、上記構成とは別の層を含有していても良いが、その場合であっても、隣接する各層の波長420nm〜480nmの光に対する屈折率の差は0.04未満であることが好ましい。上述のような各隣接する層の屈折率の差は、更に0.03以下、特に0.02以下であることが、偏光板クロスニコル下で観察した時の明暗模様の低減効果が高く、液晶セルと偏光板との間に位相差フィルムを配置した場合でも、表示画像に明暗模様を発生させることがなく、表示品位が低下することを効果的に抑制可能な点から好ましい。
【0031】
[透明支持体]
透明支持体は、透明性に優れ、複屈折性を示さないものであれば、適宜使用することができる。なお、透明であるとは、可視光域380nm〜780nmにおける平均光透過率が80%以上である場合を言う。なお、光透過率の測定は、紫外可視分光光度計(例えば、(株)島津製作所製 UV−3100PC)を用い、室温、大気中で測定した値を用いる。
【0032】
透明支持体としては、例えば、トリアセチルセルロースのようなセルロース系ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アモルファスポリオレフィン、変性アクリル系ポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリノルボルネン樹脂、及びガラス等が挙げられる。
【0033】
中でも、本発明における透明支持体として、セルロース系ポリマーは、透明性、光学的等方性において有利であるので好適に用いられる。
上記透明支持体の光学的等方性については、本発明の光学素子の用途や上記屈折率調整層、上記配向膜および上記位相差層を構成する材料の種類等に応じて、所望の光学的性質を達成できるものを任意に採用できるが、中でも、レターデーション値(Re)が0nm〜100nmの範囲内がさらに好ましく、0nm〜50nmの範囲がより好ましく、0nm〜10nmの範囲内がさらに好ましい。このような透明基材を用いることにより、本発明の位相差フィルムの用途や上記屈折率調節層、上記配向膜および上記位相差層の構成材料の選択の幅を広げることができるからである。ここで、レターデーション値(Re)とは、透明基材の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、透明基材の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率ny、透明基材の厚みをd(nm)とした場合に、Re=(nx−ny)×dで表される値をいう。
【0034】
セルロース系ポリマーにはセルロースエステルが挙げられ、そのうちセルロースの低級脂肪酸エステルが好適に使用できる。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数は、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)または4(セルロースブチレート)であることが好ましい。セルロースエステルとしてはセルロースアセテートが好ましく、その例としては、ジアセチルセルロースおよびトリアセチルセルロースなどが挙げられる。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いても良い。プラスチック製支持体としてセルロースエステルを用いる場合には、ケン化処理することが、上層との密着性の上で好ましい。
【0035】
透明支持体の厚さは、位相差フィルムの薄型化などを目的に、一般に1μm〜300μmであることが好ましく、1μm〜150μmであることがさらに好ましい。透明支持体とその上に設けられる屈折率調節層との密着性を改善するため、透明支持体に表面処理(例、ケン化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよい。
【0036】
[屈折率調節層]
屈折率調節層は、透明支持体と配向膜との間に設けることにより、位相差フィルムにおいて屈折率差が比較的大きくなる透明支持体と配向膜の間において屈折率差が段階的に変化し、屈折率差を小さくできることを目的とする。通常は透明支持体に対して配向膜の方が、屈折率がより大きくなる場合が多い為、通常は当該屈折率調節層の屈折率N2が、上記透明支持体の屈折率N1と後述する配向膜の屈折率N3と比較して、N1<N2<N3を満たすものであって、隣接する各層の波長420nm〜480nmの光に対する屈折率差が0.04未満、好ましくは0.03未満、更に好ましくは0.02未満となるものを選択すれば、特に限定されるものではない。なお、本発明に用いられる屈折率調節層は、1層だけでなく、2層以上用いられても良い。例えば、透明支持体と配向膜との屈折率差が大きすぎて、1つの屈折率調節層で隣接する各層の屈折率の差を0.04未満とすることができない場合には、適宜、2つ以上の屈折率調節層を用いて、隣接する各層の屈折率の差を0.04未満とするようにしても良い。また、屈折率調節層としては、透明性を阻害せず、更に透明支持体や配向膜との密着性を高める機能を有するものであることが更に好ましい。
【0037】
屈折率調節層を形成する材料としては、特に限定されないが、例えば、光重合性化合物を用いることができる。光重合性化合物は、重合性官能基として、光照射により重合可能なエチレン性不飽和結合を有することが好ましい。エチレン性不飽和結合としては、例えばビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、イソプロペニル基等を挙げることができる。これらのうち(メタ)アクリロイル基が重合速度、反応性の面から好ましい。また、重合性官能基を分子内に複数有する多官能モノマー及び/又はオリゴマーは、光照射による硬化過程において充分に架橋し、網目状のマトリックスを形成するために、耐熱性及び耐溶剤性が向上するので有利であり好適に用いられる。光重合性化合物は、1種又は2種類以上を混合して用いても良い。
【0038】
光重合性化合物は、例として紫外線硬化型のポリオール(メタ)アクリレート類、エポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類が挙げられる。
多官能モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールビスβ−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピオネート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、2,3−ビス(メタ)アクリロイルオキシルエチルオキシメチル「2,2,1」ヘプタン、ポリ1,2−ブタジエンジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルヘキサン、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカンエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、3,8−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルトリシクロ「5,2,10」デカン、水素添加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、1,4−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)シクロヘキサン、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
透明支持体が未処理のトリアセチルセルロースの場合には、光重合性化合物は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、または1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを少なくとも含むことが透明支持体との密着性の点で好ましい。
【0040】
また、必要に応じて上記多官能モノマーに単官能モノマーを併用して共重合させても良い。単官能モノマーとしては、例えば、N−ビニルピロリドン、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、エチル(メタ)メタクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル等、テトラフルフリル(メタ)アクリレート。及びそのカプロラクトン変性物などの誘導体、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸等及びそれらの混合物が挙げられる。
【0041】
屈折率調節層を形成する材料としては、光重合性化合物を用いる場合には、光重合開始剤を用いることが必要となる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタール等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−シクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン類;チオキサン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4,4−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類及びアゾ化合物、過酸化物類、ケタール類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ホスフィンオキシド類等が挙げられる。これらは、1種または2種以上混合して用いることができる。
【0042】
更に、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等の3級アミン;2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミド安息香酸エチル等の安息香酸誘導体等の光開始助剤等を組み合わせて使用しても良い。
また、屈折率を調節するために、必要に応じて屈折率を調節可能な有機化合物や無機化合物、微粒子などを混合しても良い。
【0043】
本発明において屈折率調節層は、用いられる材料を適宜溶剤に溶解及び/または分散させて塗工液を調製し、当該塗工液を上記透明支持体に塗工して形成することができる。塗工方法としては、樹脂基材表面に位相差強化領域形成用塗工液を均一に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、グラビアコーティング法、ロールコーティング法、リバースコーティング法、ダイコーティング法、ナイフコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、スピンコーティング法、インクジェット法等の方法を用いることができる。適切な塗工法を用いて所望の厚みに塗工し、その後溶剤成分を乾燥し、必要に応じて光照射を行なって硬化し、屈折率調節層を形成する。
【0044】
また、屈折率調節層の膜厚は、材料により適宜選択され、特に限定されないが、1μm〜10μmの範囲にあることが、屈折率調整の点から好ましい。
本発明に用いられる屈折率調節層には、上層との密着性や濡れ性を向上させるために、表面処理をしても良い。表面処理としては、例えば、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線処理、火炎処理、オゾン処理などが挙げられる。
【0045】
[配向膜]
配向膜とは、その上に形成される層中の液晶性化合物を所定の方向に配向させる機能を有する層をいう。本発明において用いられる配向膜は、上記配向機能を有し、且つ、当該配向膜の屈折率N3が、上記透明支持体の屈折率N1や後述する位相差層の屈折率N4に比べて大きな差を有しないものを適宜選択すれば、特に限定されずに用いることができる。当該配向膜の屈折率N3と、上記透明支持体の屈折率N1は、上記屈折率調節層によって屈折率差を補填することが可能であるが、位相差層はその性質上必ず配向膜と隣接して設けられるものであるため、中でも、当該配向膜の屈折率N3と位相差層の屈折率N4との波長420nm〜480nmの光に対する屈折率差が0.04未満であるように、配向膜は選択されることが好ましい。
【0046】
配向膜としては、例えば、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の形成、さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能を生じさせるものが挙げられる。
【0047】
配向膜形成用材料としては、特に制限されず、例えば、PI(ポリイミド)、PVA(ポリビニルアルコール)、HEC(ヒドロキシエチルセルロース)、PC(ポリカーボネート)、PS(ポリスチレン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PE(ポリエステル)、PVCi(ポリビニルシンナメート)、PVK(ポリビニルカルバゾール)、シンナモイルを含むポリシラン、クマリン、カルコン等の既知の配向膜として用いられている樹脂を含有するものを用いることができる。
【0048】
更に、配向膜に使用される材料としては、成膜時の透明性が高く、且つ、成膜後、位相差層を作製する際に使用する有機溶媒に対し不溶または難溶であることが好ましい。この点から、非イオン性の水溶性エーテル化多糖類或いは水溶性多糖類を用いることが好ましい。中でも、非イオン性の水溶性エーテル化多糖類を少なくとも含む配向膜形成用材料(1)、或いは、水溶性多糖類、及びエチレン性不飽和結合を有するモノマー若しくはオリゴマーを少なくとも含む配向膜形成用材料(2)は、上に形成される位相差層との密着性に優れた配向膜を形成でき、ラビング処理により配向膜の配向規制力で容易に液晶性化合物を配向させることができ、且つ、下層の屈折率調節層が樹脂製である場合に密着性に優れ、更に耐久性に優れた配向膜が形成できる点から好ましい。
【0049】
上記配向膜形成用材料(1)に使用される非イオン性の水溶性エーテル化多糖類には、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプンが挙げられる。
【0050】
上記配向膜形成用材料(2)に使用される水溶性多糖類には、水溶性のセルロース(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、カルボキシメチルセルロースアンモニウム塩等)、デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルデンプン、プルラン、キトサン、シクロデキストリンが挙げられる。
【0051】
上記配向膜形成用材料に使用される多糖類、特にヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは変性されていない場合でも、該多糖類を用いて形成した配向膜は、液晶性化合物からなる位相差層と密着性が良いので好ましい。
【0052】
また、配向膜形成用材料に使用される前記の非イオン性の水溶性エーテル化多糖類、或いは水溶性多糖類は、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合が導入されることが好ましい。エチレン性不飽和結合により変性された多糖類を用いて形成した配向膜は、液晶性化合物からなる位相差層と密着性がさらに向上する。また、エチレン性不飽和結合により変性された非イオン性の水溶性エーテル化多糖類或いは水溶性多糖類を用いて形成した配向膜は、耐溶剤性、耐熱性等の耐久性が向上する。
【0053】
水溶性エーテル化多糖類、或いは水溶性多糖類へのエチレン性不飽和結合の導入は、多糖類の少なくとも1個のヒドロキシル基またはカルボキシル基に、ヒドロキシル基またはカルボキシル基と反応する官能基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物を反応させることによって行なうことができる。ヒドロキシル基またはカルボキシル基と反応する官能基を有する化合物としては、イソシアナート化合物、酸ハロゲン化物、混合酸無水物、またはエポキシ化合物が挙げられる。ヒドロキシル基またはカルボキシル基と反応する官能基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物の具体的な化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0054】
また、上記配向膜形成用材料(2)に添加して使用されるエチレン性不飽和結合を有するモノマー若しくはオリゴマーとしては、特に制限されず用いることができる。多糖類に対しエチレン性不飽和結合を有するモノマーあるいはオリゴマーの1種または2種以上を添加して配向膜形成用材料とすることにより、該配向膜形成用材料を用いて形成した塗膜は、紫外線または電子線の照射により硬化が可能となる。このように硬化された配向膜は、多糖類に不足している性質、即ち、位相差層に対して密着性を高める性質、耐熱・耐溶剤性向上を必要な分だけ付与することができる。中でも、エチレン性不飽和結合が分子内に複数ある多官能モノマーあるいはオリゴマーは配向膜の紫外線照射または電子線照射による硬化過程において十分に架橋し、耐熱性および耐溶剤性が向上するので有利である。また、下層である屈折率調節層が光重合性化合物を用いて形成されている場合には特に屈折率調節層との密着性も高くなるので好ましい。添加して使用されるエチレン性不飽和結合を有するモノマー若しくはオリゴマーとしては、具体的には、上述の屈折率調節層で述べたような化合物を用いることができる。
また、配向膜形成用材料がエチレン性不飽和結合を有する場合には、適宜、光重合開始剤が添加される。
【0055】
配向膜の形成方法は、用いられる配向膜形成用材料が配向能を発揮できるように適宜選択されれば、特に限定されない。配向膜の膜厚は、0.1μm〜10μmの範囲にあることが好ましい。10μmを超えると配向膜の着色により位相差フィルムの透明性が低くなる場合があるからである。
【0056】
[位相差層]
位相差層は、求められる位相差フィルムの機能に合わせて、適宜、位相差層形成用材料が選択されて形成される。
位相差層は、1層で形成されていても、2層以上から形成されていてもよく、また、複数層が同一種類の液晶性化合物を含む層であっても、ネマチック規則性、スメクチック規則性、またはコレステリック規則性から選ばれた異なる種類の液晶性化合物を含む層であってもよい。
【0057】
位相差層として、液晶規則性がネマチック規則性またはスメクチック規則性を有する場合には、例えば、偏光板起因の視野角依存性に対する補償用や、円偏光モード液晶ディスプレイに適用可能なλ/4やλ/2のAプレートの機能を果たすことができる。
【0058】
また、位相差層として、液晶規則性がプレーナー配向されたコレステリック規則性を有する場合には、液晶のプレーナー配向のヘリカル軸に沿って入射した自然光の右旋及び左旋の2つの円偏光のうち、一方を選択的に反射する性質を有する。また、このような場合には、負のCプレートとして機能する。すなわち、ヘリカル軸に対して斜めに入射する光には位相差が生じるのでヘリカル軸から傾斜した方向の楕円偏光を直線偏光にすることが可能である。一方、ヘリカル軸の方向に透過する直線偏光は位相差を生じることなく直線偏光としてそのまま透過する。これにより、液晶表示装置の視野角依存性の改善等が可能な光学補償の機能を有することになる。
【0059】
また、本発明の位相差フィルムにおいては、上記位相差層が少なくともネマチック規則性またはスメクチック規則性を有する層とコレステリック規則性を有する層が積層されてなるものであっても良い。この場合には、1つの位相差フィルムで、上記のようなAプレートと負のCプレートを兼ね備えた機能を果たすことができるからである。
【0060】
位相差層を形成するための材料としては、これらのみで層を形成した場合に、ネマチック規則性、スメクチック規則性、またはコレステリック規則性を有する液晶を形成し得る液晶材料であれば特に限定されるものではなく、ポリマー液晶及び重合性液晶化合物のどちらでもよい。 中でも、位相差層は、重合性液晶化合物を含んでなることが好ましい。重合性液晶化合物を用いることにより、耐熱性の良い位相差フィルムを得ることができるからである。また重合性液晶化合物としては、分子の両末端に重合性官能基がある重合性液晶化合物が含まれることが、耐熱性のよい位相差フィルムを得る上で好ましい。
【0061】
重合性液晶化合物としては、例えば、シアノビフェニル系、シアノフェニルシクロヘキサン系、シアノフェニルエステル系、安息香酸フェニルエステル系、フェニルピリミジン系等及びそれらの混合物などが挙げられる。重合性液晶化合物としては、中でも、光重合開始剤の存在下で紫外線により重合が可能であるエチレン性不飽和結合を有する液晶化合物が好ましく、分子の両末端に重合性官能基である(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基を有することが耐熱性のよい光学素子を得る上で更に好ましい。このような重合性液晶化合物は、1種でも使用可能であるが、液晶性を示す温度領域を拡大するためや、複屈折性を制御するために、2種以上の混合物で用いることができる。
【0062】
このような重合性液晶化合物の一例としては、例えば下記の一般式(1)で表わされる化合物(化合物(I)という)や下記に示す化合物を挙げることができる。化合物(I)としては、一般式(1)に包含される化合物の2種を混合して使用することも可能である。また、重合性液晶化合物としては、一般式(1)に包含される化合物や下記の化合物の2種以上を混合して使用することもできる。
【0063】
【化1】

【0064】
【化2】

【0065】
【化3】

【0066】
【化4】

【0067】
一般式(1)において、R1 及びR2 はそれぞれ水素又はメチル基を示すが、液晶層を示す湿度範囲の広さからR1 及びR2 は共に水素であることが好ましい。Xは水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基、ニトロ基のいずれであっても差し支えないが、塩素又はメチル基であることが好ましい。また、化合物(I)の分子鎖両端の(メタ)アクリロイルオキシ基と、芳香環とのスペーサーであるアルキレン基の鎖長を示すa及びbは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数を取り得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜10の範囲であることがさらに好ましい。
a=b=0の範囲である化合物(I)は、安定性に乏しく、加水分解を受けやすい上に、化合物自体の結晶性が高い。また、a及びbがそれぞれ13以上である化合物(I)は、アイソトロピック転移温度(TI)が低い。この理由から、これらの化合物はどちらも液晶性を示す温度範囲が狭く好ましくないからである。
【0068】
上述した例では、重合性液晶モノマーの例を挙げたが、本発明においては、重合性液晶オリゴマーや重合性液晶ポリマー等を用いることも可能である。このような重合性液晶オリゴマーや重合性液晶ポリマーとしては、従来提案されているものを適宜選択して用いることが可能である。
なお、液晶性化合物が重合性ネマチック液晶を主成分とする場合には、偏光板起因の視野角依存性に対する補償用や、円偏光モード液晶ディスプレイに適用可能なλ/4やλ/2のAプレートの作製が可能となり、更に、耐熱性が良好な位相差フィルムを得ることができる点から好ましい。
【0069】
本発明においては、また、ネマチック液晶にカイラル剤を加えた、コレステリック規則性を有するカイラルネマチック液晶を、好適に使用することができる。ネマチック液晶とカイラル剤を主成分とする場合には、VAモード液晶ディスプレイに適用可能な負の一軸性を持った負のCプレートが作製可能となる。カイラル剤としては、光学活性な部位を有する低分子化合物であり、分子量1500以下の化合物を意味する。カイラル剤は主として化合物(I)のような液晶化合物が発現する正の一軸ネマチック規則性に螺旋ピッチを誘起させる目的で用いられる。この目的が達成される限り、化合物(I)や上記の化合物と、溶液状態あるいは溶融状態において相溶し、上記ネマチック規則性をとりうる重合性液晶化合物の液晶性を損なうことなく、これに所望の螺旋ピッチを誘起できるものであれば、下記に示すカイラル剤としての低分子化合物の種類は特に限定されないが、分子の両末端に重合性官能基があることが耐熱性のよい位相差フィルムを得る上で好ましい。液晶に螺旋ピッチを誘起させるために使用するカイラル剤は、少なくとも分子中に何らかのキラリティーを有していることが必須である。従って、本発明で使用可能なカイラル剤としては、例えば1つあるいは2つ以上の不斉炭素を有する化合物、キラルなアミン、キラルなスルフォキシド等のようにヘテロ原子上に不斉点がある化合物、あるいはクムレン、ビナフトール等の軸不斉を持つ化合物が例示できる。さらに具体的には、市販のカイラルネマチック液晶、例えばMerck社製S−811(商品名)等が挙げられる。
【0070】
しかし、選択したカイラル剤の性質によっては、化合物(I)が形成するネマチック規則性の破壊、配向性の低下、あるいは該化合物が非合重合性の場合には、液晶組成物の硬化性の低下、硬化フィルムの信頼性の低下を招く恐れがある。さらに、光学活性な部位を有するカイラル剤の多量使用は、組成物のコストアップを招く。従って、短ピッチのコレステリック規則性を有する位相差フィルムを製造する場合には、液晶組成物に含有させる光学活性な部位を有するカイラル剤には、螺旋ピッチを誘発する効果の大きなカイラル剤を選択することが好ましく、具体的には一般式(2)、(3)または(4)で表されるような分子内に軸不斉を有する低分子化合物(II)の使用が好ましい。
【0071】
【化5】

【0072】
【化6】

【0073】
【化7】

【0074】
カイラル剤(II)を表す一般式(2)、(3)または(4)において、R4 は水素又はメチル基を示す。Yは上記に示す式(i)〜(xxiv)の任意の一つであるが、なかでも、式(i)、(ii)、(iii)、(v)及び(vii)の何れか一つであることが好ましい。また、アルキレン基の鎖長を示すc及びdは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数をとり得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜10の範囲であることがさらに好ましい。
c又はdの値が0又は1である一般式(2)又は(3)で表される化合物は、安定性に欠け、加水分解を受けやすく、結晶性も高い。一方、c又はdの値が13以上である化合物は融点(Tm)が低い。これらの化合物は液晶性を示す化合物(I)との相溶性が低下し、濃度によっては相分離等が起こるおそれがあるからである。
【0075】
本発明における重合性液晶化合物に配合されるカイラル剤の量は、螺旋ピッチ誘起能力や最終的に得られる光学素子のコレステリック性を考慮して最適値が決められる。具体的には、用いる重合性液晶化合物により大きく異なるものではあるが、重合性液晶化合物の合計量100質量部当り、0.01〜60質量部、最も好ましくは1〜20質量部の範囲で選ばれる。この配合量が上記範囲を超える場合は、分子の配向が阻害され、活性放射線によって硬化させる際に悪影響を及ぼす危惧がある。少ない場合は、充分なコレステリック性を付与できない場合がある。
【0076】
本発明において、このようなカイラル剤としては、特に重合性を有することが必須ではない。しかしながら、得られる位相差層の熱安定性等を考慮すると、上述した重合性液晶化合物と重合し、コレステリック規則性を固定化することが可能な重合性のカイラル剤を用いることが好ましい。特に、分子の両末端に重合性官能基があることが、耐熱性のよい位相差フィルムを得る上で好ましい。
【0077】
重合性液晶化合物に添加される光重合開始剤としては、上記「屈折率調節層」の項において述べたものと同様のものを用いることができる。なお、光重合開始剤の他に増感剤を、本発明の目的が損なわれない範囲で添加することもできる。
【0078】
このような光重合開始剤の添加量としては、一般的には0.01〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは、0.5〜5質量%の範囲で重合性液晶化合物に添加することができる。
【0079】
位相差層を形成するための塗工液には、上記液晶性化合物、カイラル剤、光重合開始剤以外に、界面活性剤、非液晶性の重合性モノマー(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基を有する化合物)、及びポリマーを液晶性化合物の配向を阻害しない限り添加してもよい。これらの界面活性剤、非液晶性の重合性モノマー及びポリマーを選択することにより表面側(空気側)の液晶の傾斜角を調整することができる。
【0080】
また、位相差層を形成するための塗工液に用いられる溶剤としては、上記液晶性化合物、カイラル剤が溶解し、かつ配向膜の配向性を阻害しなければ特に限定されるものではない。具体的には炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、ケトン(例、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)等が挙げられる。
【0081】
本発明に係る位相差フィルムにおいて、位相差層は従来の液晶配向処理に準じた方法で液晶分子構造を形成して得ることができる。位相差層は、液晶性ポリマーが用いられる場合、液晶性ポリマー及び他の化合物を溶剤に溶解した溶液を上記配向膜上に塗布し、乾燥し、次いで液晶相形成温度まで加熱し、その後配向状態を維持して冷却することにより得られる。あるいは、重合性液晶化合物が用いられる場合、位相差層は、重合性液晶化合物及び他の化合物(更に、例えば重合性モノマー、光重合開始剤)を溶剤に溶解した溶液を上記配向膜上に塗布し、乾燥し、次いで液晶相形成温度まで加熱したのちUV照射、または電子線照射により重合させ、さらに冷却することにより得られる。
本発明において位相差層の厚さは、配向の乱れや透過率低下の防止、選択反射の波長域の広さなどの点から、一般に0.5〜50μm、好ましくは1〜30μm、特に好ましくは1〜10μmである。
【0082】
2.液晶表示装置
次に、本発明の液晶表示装置について説明する。
本発明の液晶表示装置は、上述した本発明に係る位相差フィルムを、光路に配置したことを特徴とする。本発明の液晶表示装置は、液晶セルと偏光板との間に位相差フィルムを配置した場合でも、表示画像に明暗模様を発生させることがなく、表示品位が低下することを効果的に抑制可能な位相差フィルムが配置されていることにより、表示品位に優れるものである。
【0083】
図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す斜面図である。図2に示すように、本発明の液晶表示装置20は、入射側の偏光板102Aと、出射側の偏光板102Bと、液晶セル104とを有するものである。偏光板102A、102Bは、所定の振動方向の振動面を有する直線偏光のみを選択的に透過させるように構成されたものであり、それぞれの振動方向が相互に直角の関係になるようにクロスニコル状態で対向して配置されている。また、液晶セル104は画素に対応する多数のセルを含むものであり、偏光板102A、102Bの間に配置されている。
【0084】
ここで、液晶表示装置20において、液晶セル104は、負の誘電異方性を有するネマチック液晶が封止されたVA(Vertical Alignment)方式を採用しており、入射側の偏光板102Aを透過した直線偏光は、液晶セル104のうち非駆動状態のセルの部分を透過する際には、位相シフトされずに透過し、出射側の偏光板102Bで遮断される。これに対し、液晶セル104のうち駆動状態のセルの部分を透過する際には、直線偏光が位相シフトされ、この位相シフト量に応じた量の光が出射側の偏光板102Bを透過して出射される。これにより、液晶セル104の駆動電圧を各セル毎に適宜制御することにより、出射側の偏光板102B側に所望の画像を表示することができる。
【0085】
このような構成からなる液晶表示装置20において、液晶セル104と出射側の偏光板102B(液晶セル104から出射された所定の偏光状態の光を選択的に透過させる偏光板)との間であって、光路に上述した本発明に係る位相差フィルム10が配置されており、位相差フィルム10により、液晶セル104から出射された所定の偏光状態の光のうち液晶セル104の法線から傾斜した方向に出射される光の偏光状態を補償することができるようになっている。
【0086】
以上のとおり、上述した構成からなる液晶表示装置20によれば、液晶表示装置20の液晶セル104と出射側の偏光板102Bとの間に、上述した本発明に係る信頼性が高い位相差フィルム10を配置し、液晶セル104から出射された光のうち液晶セル104の法線から傾斜した方向に出射される光の偏光状態を補償するので、液晶表示装置20における視角依存性の問題を効果的に改善することができ、表示画像に明暗模様を発生させることがなく、表示品位に優れるものである。
【0087】
なお、図2に示す液晶表示装置20は、光が厚さ方向の一方の側から他方の側へ透過する透過型であるが、本発明に係る表示装置の実施形態はこれに限定されるものではなく、上述した本発明に係る位相差フィルム10は反射型の液晶表示装置にも同様に組み込んで用いることができる。
【0088】
また、図2に示す液晶表示装置20では、上述した本発明に係る位相差フィルム10を液晶セル104と出射側の偏光板102Bとの間に配置しているが、光学補償の態様によっては、位相差フィルム10を液晶セル104と入射側の偏光板102Aとの間に配置してもよい。また、位相差フィルム10を液晶セル104の両側(液晶セル104と入射側の偏光板102Aとの間、及び液晶セル104と出射側の偏光板102Bとの間)に配置してもよい。なお、液晶セル104と入射側の偏光板102Aとの間、又は液晶セル104と出射側の偏光板102Bとの間に配置される位相差フィルムは一つに限らず、複数配置されていてもよい。更に、他の光学機能フィルムが光路に配置されていても良い。
【0089】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0090】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。
(実施例1)
透明支持体としてフィルム厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム上に、下記の屈折率調節層形成用塗工液を塗布し、乾燥後に光照射して硬化させ、膜厚7.0μmの屈折率調節層を形成した。ついで、当該屈折率調節層の濡れ性を向上させるために空気中で波長254nmの光を放射するUV殺菌ランプを搭載したUV照射装置(UVクリーナー/4 同潤光機(株)製)により5分間紫外線を照射した。その後、該屈折率調節層上に、下記の配向膜形成用途工液を塗布し、乾燥後膜厚0.2μmの配向膜を形成した。
【0091】
<屈折率調節層形成用塗工液>
・ペンタエリスリトールトリアクリレート:40重量部
・光重合開始剤(Igr184:チバスペシャルティケミカルズ社製):0.8重量部
・メチルエチルケトン:29.6重量部
・トルエン:29.6重量部
<配向膜形成用塗工液>
・ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業社製):1重量部
・メタノール:33重量部
・水:66重量部
【0092】
次いで、下記の位相差層形成用塗工液を前記工程で作製した配向膜上に塗工し、加熱して液晶を配向させた後、光照射して、膜厚2.0μmの液晶層を形成し、本発明の位相差フィルムを得た。
<位相差層形成用塗工液>
・重合性ネマチック液晶性化合物(下記化合物(a)):17.2重量部
【0093】
【化8】

・カイラル剤(下記化合物(b)):2.8重量部
【0094】
【化9】

・反応開始剤(商品名 Irg907、チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.8重量部
・反応禁止剤(商品名 BHT、関東化学社製):0.004重量部
・シクロヘキサノン:71.27重量部
・イソプロピルアルコール:7.92重量部
【0095】
[屈折率の評価]
上記透明支持体の屈折率N1、上記屈折率調節層の屈折率N2、上記配向膜の屈折率N3、上記位相差層の屈折率N4について、偏光板を直交させた時に漏れて薄膜干渉に関与する波長420nm〜480nmにおいて、アッベ屈折計(DR-M2、ATAGO社製)を用いて、評価した。中間液は1−ブロモナフタレン(波長589nmに於いて屈折率1.63)を使用し、支持ガラスはS−LAL14(オハラ社製、波長589nmに於いて屈折率1.69680)を用いた。結果を図3に示す。該透明支持体の屈折率N1と該屈折率調節層の屈折率N2と該配向膜の屈折率N3と該位相差層の屈折率N4は、波長420nm〜480nmにおいて、各隣接する層の屈折率差(N1とN2の差2とN3の差3とN4の差)はいずれも0.04未満となっていた。
【0096】
[明暗模様の評価]
図4に示されているように、直線偏光板30A、30Bをクロスニコル状態にして、その間に、作製した位相差フィルム10を挟んでバックライト下で観察したところ、明暗模様は観察されなかった。このような位相差フィルムは、液晶セルと偏光板との間に位相差フィルムを配置した場合でも、表示画像に明暗模様を発生させることがなく、表示品位が低下することを効果的に抑制可能である。
【0097】
(比較例1)
屈折率調節層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして位相差フィルムを作製した。
また、実施例1と同様に屈折率の評価と明暗模様の観察の評価を行なった。該透明支持体の屈折率N1と該配向膜の屈折率N3の波長420nm〜480nmにおける屈折率の差が0.04以上となっていた。作製した位相差フィルムを偏光板クロスニコルに挟み、バックライト下で観察したところ、明暗模様が観察された。
【0098】
(比較例2)
配向膜を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして位相差フィルムを作製した。
また、実施例1と同様に屈折率の評価と明暗模様の観察の評価を行なった。屈折率調節層の屈折率N2と位相差層の屈折率N4の波長420nm〜480nmにおける屈折率の差が0.04以上となっていた。作製した位相差フィルムを偏光板クロスニコルに挟み、バックライト下で観察したところ、明暗模様が観察された。
【0099】
(比較例3)
透明支持体としてフィルム厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム上に、実施例1と同じ配向膜形成用塗工液を用いて実施例1と同様に膜厚0.2μmの配向膜を形成し、次いで当該配向膜上に実施例1と同じ位相差層形成用塗工液を用いて同様に膜厚2.0μmの位相差層を形成した。その後、当該位相差層の上に、実施例1と同じ屈折率調節層形成用塗工液を用いて同様に7.0μmの層を形成して位相差フィルムを作製した。
【0100】
また、実施例1と同様に屈折率の評価と明暗模様の観察の評価を行なった。該透明支持体の屈折率をN1、該配向膜の屈折率をN3、該位相差層の屈折率をN4、及び該屈折率調節層の屈折率をNとした時に、各層の積層順に屈折率は、N1≦N3≦N4≧N2となっており、該透明支持体の屈折率N1と該配向膜の屈折率N3の波長420nm〜480nmにおける屈折率の差が0.04以上となっていた。作製した位相差フィルムを偏光板クロスニコルに挟み、バックライト下で観察したところ、明暗模様が観察された。
【0101】
(比較例4)
透明支持体としてフィルム厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム上に、実施例1と同じ配向膜形成用塗工液を用いて実施例1と同様に膜厚0.2μmの配向膜を形成し、次いで当該配向膜上に実施例1と同じ位相差層形成用塗工液を用いて同様に膜厚2.0μmの位相差層を形成した。その後、透明支持体の位相差層を形成しなかった他方の面に、実施例1と同じ屈折率調節層形成用塗工液を用いて同様に膜厚7.0μmの層を形成して位相差フィルムを作製した。
【0102】
また、実施例1と同様に屈折率の評価と明暗模様の観察の評価を行なった。該透明支持体の屈折率をN1、該配向膜の屈折率をN3、該位相差層の屈折率をN4、及び該屈折率調節層の屈折率をNとした時に、各層の積層順に屈折率は、N2≧N1≦N3≦N4となっており、該透明支持体の屈折率N1と該配向膜の屈折率N3の波長420nm〜480nmにおける屈折率の差が0.04以上となっていた。作製した位相差フィルムを偏光板クロスニコルに挟み、バックライト下で観察したところ、明暗模様が観察された。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の位相差フィルムの一例を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の液晶表示装置の一例を示す概略分解斜視図である。
【図3】実施例1における各層の波長420nm〜480nmの光に対する屈折率を示す図である。
【図4】位相差フィルムを偏光板に挟んで観察する場合の構成を示す概略分解斜視図である。
【図5】従来の液晶表示装置を示す概略分解斜視図である。
【符号の説明】
【0104】
1…透明支持体
2…屈折率調節層
3…配向膜
4…位相差層
10…位相差フィルム
20…液晶表示装置
30A、30B…直線偏光板
100…液晶表示装置
102A、102B…偏光板
104…液晶セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも透明支持体、配向膜、及び当該配向膜に隣接し液晶性化合物を含んでなる位相差層を有する位相差フィルムにおいて、該透明支持体と該配向膜の間に屈折率調節層が、波長420nm〜480nmの光に対する該透明支持体の屈折率N1と該屈折率調節層の屈折率N2の差及び該屈折率調節層の屈折率N2と該配向膜の屈折率N3の差がいずれも0.04未満となるように設置されていることを特徴とする、位相差フィルム。
【請求項2】
波長420nm〜480nmの光に対する上記配向膜の屈折率N3と上記位相差層の屈折率N4の差が0.04未満であることを特徴とする、請求項1に記載の位相差フィルム。
【請求項3】
前記配向膜が、水溶性多糖類を含んでなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の位相差フィルム。
【請求項4】
前記位相差層が、重合性液晶化合物を含んでなることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の位相差フィルム。
【請求項5】
前記位相差層の液晶規則性がネマチック規則性またはスメクチック規則性を有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の位相差フィルム。
【請求項6】
前記位相差層の液晶規則性がプレーナー配向されたコレステリック規則性を有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の位相差フィルム。
【請求項7】
前記位相差層が少なくともネマチック規則性またはスメクチック規則性を有する層とコレステリック規則性を有する層が積層されてなることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の位相差フィルム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の位相差フィルムを、光路に配置したことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−276697(P2006−276697A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98516(P2005−98516)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】