説明

位相差フィルムの製造方法および積層体

【課題】液晶表示装置の光学補償用途に用いることができる位相差フィルムの製造方法を提供する。詳細にはフィルムの長手方向に遅相軸をもち、長波長側ほどレターデーションが大きい位相差フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】下記(A)成分と下記(B)成分を含有するセルロースエステルフィルムをフィルムの長手方向と直交する方向に延伸することを特徴とする位相差フィルムの製造方法。(A):下記(1)式および(2)式を満足するセルロースアシレート2.20≦DSac(A)+DSay(A)≦2.90(1)DSay(A)/DSac(A)≧2(2)(DSac(A)は(A)成分のアセチル置換度、DSay(A)は(A)成分の炭素数3または炭素数4のアシル基による置換度の合計を示す。)(B):(A)成分とは異なる分子量を有する水酸基残度0.30以上のセルロースアシレート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置の光学補償用途等に用いることができる位相差フィルムの製造方法および積層体に関するものである。より詳細には、本発明は、フィルム幅方向に遅相軸を有し、生産性に優れる位相差フィルムおよび積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の表示特性を向上させるために種々の位相差フィルムが必要とされている。位相差フィルムの製造方法としてフィルムをその搬送方向(以下、MD方向と表記する場合がある)と垂直な方向(以下TD方向と表記する場合がある)に延伸する方法(以下、この方法を横延伸と表記する場合がある)が知られている。正の配向複屈折を有するフィルムを横延伸した場合、得られる位相差フィルムの遅相軸はフィルムのTD方向と略平行となる。一般に、偏光板はフィルムのMD方向に延伸する方法(以下、この方法を縦延伸と表記する場合がある)によって得られ、その吸収軸はMD方向と略平行である。位相差フィルムは偏光板と積層され、液晶表示装置の光学補償偏光板として用いられる。用いる液晶セルの種類やパネル設計により、偏光板の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸のなすべき角度が決定される。位相差フィルムの遅相軸と偏向板の吸収軸とが直交した光学補償板を製造する場合、横延伸により製造される位相差フィルムと偏光板をロール・ツゥー・ロールで貼合することができるため、生産性に優れている。さらに、横延伸によって得られる位相差フィルムは2軸性を有することが知られている。2軸性を有するフィルムは、液晶表示装置の表示性能向上に優れている(例えば特許文献1)。しかしながら特許文献1においては、実際の2軸性フィルムの製造方法については何ら言及されていない。
【0003】
一方、位相差フィルムとして、長波長側ほど正面レターデーションが高い位相差フィルム(以下、逆波長分散フィルムと表記する)が求められている。特許文献2では逆波長分散特性を示す位相差フィルムが開示されている。しかしながら、特許文献2で開示されている位相差フィルムは、その遅相軸がMD方向にあり、また、2軸性を持たないため、光学補償層として使用する際には、別途、光学補償層を併用する必要がある。
【0004】
また特許文献3ではセルロースエステルよりなるフィルムを横延伸して得られる位相差フィルムが開示されている。しかしながら、アセチル置換度の高いセルロースアシレートは、溶解性が低いため、安定的にソルベントキャスト法によるフィルム化を行うことが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2006−515686号公報
【特許文献2】WO2006/106639号公報
【特許文献3】特開2005−181747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光学補償板を製造する際の生産性に優れ、2軸性フィルムを用いた光学補償が可能であり、さらには逆波長分散特性を有する位相差フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定のセルロースエステルフィルムを用いて、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は書きの(I)〜(X)に関する。
(I)下記(A)成分と下記(B)成分を含有するセルロースエステルフィルムをフィルムの長手方向と直交する方向に延伸することを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
(A):下記(1)式および(2)式を満足するセルロースアシレート
2.20≦DSac(A)+DSay(A)≦2.90 (1)
DSay(A)/DSac(A)≧2 (2)
(DSac(A)は(A)成分のアセチル置換度、DSay(A)は(A)成分の炭素数3または炭素数4のアシル基による置換度の合計を示す。)
(B):(A)成分とは異なる分子量を有する水酸基残度0.30以上のセルロースアシレート。
(II) 前記(B)成分が下記(3)式および(4)式を満たすセルロースアシレートであり、かつ、(A)成分と(B)成分が下記(5)式とを満足することを特徴とする(I)に記載の位相差フィルムの製造方法。
2.00≦DSac(B)+DSay(B)≦2.70 (3)
DSay(B)/DSac(B)≧2 (4)
(DSac(A)+DSay(A))−0.05≧(DSac(B)+DSay(B)) (5)
(DSac(B)は(B)成分のアセチル置換度、DSay(B)は(B)成分の炭素数3または炭素数4のアシル基による置換度の合計を示す。)。
(III) (A)成分のセルロースアシレートが、下記(6)式と(7)式とを満足するセルロースアセテートプロピオネートであり、
2.20≦DSac(A)+DSpr(A)≦2.90 (6)
DSpr(A)/DSac(A)≧2 (7)
(B)成分のセルロースアシレートが、下記(8)式と(9)式とを満足するセルロースアセテートプロピオネートであることを特徴とする、(I)または(II)のいずれか1項に記載の位相差フィルムの製造方法。
2.00≦DSac(B)+DSpr(B)≦2.70 (8)
DSpr(B)/DSac(B)≧2 (9)
(DSpr(A)は(A)成分のプロピオニル置換度、DSpr(B)は(B)成分のプロピオニル置換度を示す)。
(IV) (A)および(B)成分のセルロースアシレートが下記(10)式から(13)式を満足するセルロースアセテートプロピオネートであることを特徴とする、(I)〜(III)のいずれか1項に記載の位相差フィルムの製造方法。
2.5≦DSac(A)+DSpr(A)≦2.9 (10)
2.5≦DSpr(A)≦2.9 (11)
2.5≦DSac(B)+DSpr(B)≦2.7 (12)
2.5≦DSpr(B)≦2.7 (13)。
(V)(A)成分と(B)成分が下記(14)式を満足することを特徴とする、(I)〜(IV)のいずれか1項に記載の位相差フィルムの製造方法。
10,000≦Mn(A)−Mn(B)≦100,000 (14)
(Mn(A)、Mn(B)はそれぞれ(A)成分、(B)成分のゲル・パーミッション・クロマトグラフィー法による数平均分子量を表す)
(VI)前記Mn(A)およびMn(B)がそれぞれ下記の(15)式および(16)式を満たすことを特徴とする、(V)に記載の位相差フィルムの製造方法。
Mn(A)=30,000〜150,000 (15)
Mn(B)=10,000〜50,000 (16)
(VII)(A)成分の分子量分布(Mw(A)/Mn(A))が、2.5〜5.0、(B)成分の分子量分布(Mw(B)/Mn(B))が、1.5〜4.0、であり、且つ(Mw(A)/Mn(A))>(Mw(AB)/Mn(AB))であることを特徴とする、(I)〜(VI)のいずれか1項に記載の位相差フィルムの製造方法。
(Mw(AB)、Mn(AB)は、それぞれ(A)成分と(B)成分を混合後のゲル・パーミッション・クロマトグラフィー法による重量平均分子量、数平均分子量を表す)。
(VIII)(A)成分の含有量が20〜50重量%、(B)成分の含有量が80〜50重量%、
であるセルロースアシレートを含有することを特徴とする、(I)〜(VII)のいずれか1項に記載の位相差フィルムの製造方法。
(IX)(I)〜(VIII)のいずれか1項に記載の方法により製造された位相差フィルムを少なくとも1枚含有することを特徴とする光学補償板。
(X)(I)〜(VIII)のいずれか1項に記載の方法により製造された位相差フィルムを2枚含有することを特徴とする光学補償板。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光学補償板を製造する際の生産性に優れ、2軸性フィルムを用いた光学補償が可能な、逆波長分散特性を有する位相差フィルムを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は下記(A)成分と下記(B)成分を含有するセルロースアシレートフィルムをフィルムの長手方向と直交する方向に延伸することを特徴とする。
(A):下記(1)式を満足するセルロースアシレート
2.20≦DSac(A)+DSay(A)≦2.90 (1)
DSay(A)/DSac(A)≧2 (2)
(DSac(A)は(A)成分のアセチル置換度、DSay(A)は(A)成分の炭素数3または炭素数4のアシル基による置換度の合計を示す。)
(B):(A)成分とは異なる分子量を有する水酸基残度0.30以上のセルロースアシレート。
【0010】
DSac(A)+DSay(A)はセルロース分子中の2、3、6位に存在する3個の水酸基が平均してどれだけアセチル化されているかを表す。それぞれの位置の置換度は均等でも良いし、いずれかに偏っていてもよい。またアシル基の置換度はASTM−D817−96に記載の方法にて定量することができる。
【0011】
本発明において(1)式が意味するところは、次の通りである。DSac(A)+DSay(A)を2.20以上2.90以下とすることにより、延伸した際に、延伸方向に遅相軸を有する位相差フィルムを作成することができる。また得られる位相差フィルムは長波長側ほど正面レターデーションが大きくなる。DSac(A)+DSay(A)が2.90よりも大きいと、延伸方向と直交する方向に遅相軸を有する位相差フィルムが得られるため好ましくない。またDSac(A)+DSay(A)が2.20よりも小さいと逆波長分散性の程度が弱く、好ましくない場合がある。従って、DSac(A)+DSay(A)2.20以上2.90以下の値であることが好ましい。
【0012】
上述した、波長分散性の観点から言えば、セルロースの水酸基は、アセチル基で置換してもプロピオニル基で置換しても目的を達成できる。しかしながら、ソルベントキャスト法で厚み精度の良いフィルムを製膜するためには、高濃度溶液の調製が可能であることが好まれる。このような観点から、アセチル置換度(DSac(A))の高いセルロースアシレートよりも、炭素数3または炭素数4のアシル基の置換度(DSay(A))の高いセルロースアシレートの方が有機溶剤に対する溶解性が高く、特に塩化メチレンを用いる場合においては顕著な差が認められる。従って、DSay(A)は高い方が好ましく、すなわち、前記(A)成分は(2)式を満足することが好ましい。
本発明におけるセルロースアシレートフィルムは(A)成分とは異なる分子量を有する水酸基残度0.30以上のセルロースアシレートを(B)成分として含有させることにより、温度変化に対する耐久性を向上させることができる。(A)成分のみでは、温度変化に対する機械的強度の耐久性(以下、耐久性と略す)の点で問題となる場合がある。
【0013】
(B)成分の水酸基残度は0.30以上であれば特に問題はないが、溶解性を考慮すると0.30〜1.00であることが好ましい。1.00を超えると溶解性が低下し、また逆波長分散フィルムが得られ難くなるため好ましくない。
【0014】
さらに、溶解性や(A)成分との相溶性に優れた(3)式と(4)式を満足するセルロースアシレートであることがより好ましい。
2.00≦DSac(B)+DSay(B)≦2.70 (3)
DSay(B)/DSac(B)≧2 (4)
(DSac(B)は(B)成分のアセチル置換度、DSay(B)は(B)成分の炭素数3または炭素数4のアシル基による置換度の合計を示す。)
さらに、(A)成分と(B)成分が(5)式を満足する関係にある場合、リターデーションの発現性が大きくなる場合があり好ましい。
(DSac(A)+DSay(A))−0.05≧(DSac(B)+DSay(B)) (5)
炭素数3または炭素数4のプロピオニル基、またはブチリル基が工業的に容易に得られるため好ましい。特にプロピオニル基を用いた場合は、臭気の点で好ましい。すなわち、(A)成分および(B)成分に特に好適に用いることができるセルロースアシレートは、(6)〜(9)式をそれぞれ満足するセルロースアセテートプロピオネートである。
2.20≦DSac(A)+DSpr(A)≦2.90 (6)
DSpr(A)/DSac(A)≧2 (7)
2.00≦DSac(B)+DSpr(B)≦2.70 (8)
DSpr(B)/DSac(B)≧2 (9)
(DSpr(A)は(A)成分のプロピオニル置換度、DSpr(B)は(B)成分のプロピオニル置換度を示す)。
【0015】
逆波長分散性が優れるために、(A)成分は(10)式および(11)式を満たすことがさらに好ましい。
2.5≦DSac(A)+DSpr(A)≦2.90 (10)
2.5≦DSpr(A)≦2.90 (11)
また、逆波長分散性が優れるために(B)成分は(12)式および(13)式を満たすことがさらに好ましい。
2.5≦DSac(B)+DSpr(B)≦2.70 (12)
2.5≦DSpr(B)≦2.70 (13)
(A)成分と(B)成分の分子量に関しては、特に制限はなく、同じ分子量でなければいずれの分子量のものも使用することができる。さらに耐久性の観点から、(B)成分の分子量が(14)式の関係を満たすことが好ましい。
10,000≦Mn(A)−Mn(B)≦100,000 (14)
(Mn(A)、Mn(B)はそれぞれ(A)成分、(B)成分のゲル・パーミッション・クロマトグラフィー法による数平均分子量を表す)。
【0016】
さらに(A)成分と(B)成分が、(15)式、(16)式を満たすことが好ましい。分子量が、(14)式と(15)式を超えると、溶剤に対する溶解度を低下させる場合があるため好ましくない。また得られた溶液の粘度が大きすぎソルベントキャスト法に適さない他、熱成型を困難にするなどの問題を生じる場合がある。一方、分子量が、(15)式と(16)式より小さいと、得られたフィルムの機械的強度を低下させる場合があるので好ましくない。
Mn(A)=30,000〜150,000 (15)
Mn(B)=10,000〜50,000 (16)。
【0017】
分子量分布に関しては、特に制限はないが、(A)成分の分子量分布(Mw(A)/Mn(A))が、2.5〜5.0、(B)成分の分子量分布(Mw(B)/Mn(B))が、1.5〜4.0であり、且つ(Mw(A)/Mn(A))>(Mw(AB)/Mn(AB))であることが好ましい。この条件を満たすと、温度変化に対する耐久性がより向上する。(Mw(AB)、Mn(AB)は、それぞれ(A)成分と(B)成分の混合後のゲル・パーミッション・クロマトグラフィー法による重量平均分子量、数平均分子量を表す)。
【0018】
(A)成分と(B)成分の含有量に関しては、A成分とB成分の合計を100重量%とすると、特に制限はないが、(A)成分の含有量が20〜50重量%、(B)成分の含有量が80〜50重量%であることが好ましい。(A)成分と(B)成分の含有量がこの範囲にあると、耐久性が向上するため好ましい。さらに、(A)成分の含有量が30〜40重量%、(B)成分の含有量が70〜60重量%であることが特に好ましい。
【0019】
本発明の横延伸の方法は公知のいかなる方法をも用いることができる。例えば、テンター横延伸や二軸延伸が挙げられる。二軸延伸の場合は、フィルム長手方向の延伸倍率が幅方向の延伸倍率よりも小さいことが好ましい。また、二軸延伸は全テンター方式による同時二軸延伸、ロールーテンター法による逐次二軸延伸のいずれの方法でも用いることができる。生産効率が高いという点から、テンター横延伸によることが好ましい。本発明の製造方法において適用される延伸倍率は目的とする正面レターデーションに応じて適宜選択される。位相差フィルムの製造方法においては、通常1%から120%の延伸倍率が用いられる。幅方向に延伸することで得られるフィルムの屈折率等の位相差特性は、ポリマーフィルムの種類や厚さや延伸倍率、収縮率や処理温度などにより制御することができる。延伸温度は、ポリマーフィルムの融点以下であれば特に限定されないが、好ましくはセルロースアシレートフィルムのガラス転移温度(Tg)に対して(Tg−20)℃ 以上、(Tg+20)℃ 以下、さらに好ましくは、Tg以上、(Tg+20)℃以下である。
【0020】
本発明の製造方法により得られる位相差フィルムは逆波長分散性を有する。すなわち波長λnmにおいて測定した正面レターデーションをR0(λ)と表記した場合、下式の性質を満足する。
【0021】
R0(450)/R0(550)<1
R0(550)<R0(650)
液晶表示装置の光学補償層としては、R0(450)/R0(550)の値が、0.70から0.95であることが好ましく、0.75から0.90であることがさらに好ましい。R0(450)/R0(550)の値は(A)成分と(B)成分の配合割合、延伸温度、延伸倍率などにより調節することができる。
【0022】
正面レターデーションR0は下記のとおり定義される。
【0023】
R0=(Nx―Ny)*d
ただし、Nxフィルム平面内の屈折率のうち、遅相軸方向と平行な方向の屈折率を表す。Nyはフィルム平面内の屈折率のうち、遅相軸方向と直交方向の屈折率を表す。
【0024】
本発明は、セルロースアシレートフィルムをフィルムのTD方向に延伸することを特徴とする。このような横延伸により得られるフィルムは延伸方向であるTD方向の屈折率が大きくなるのみならず、フィルムのMD方向の屈折率も大きくなるという特徴を有する。そのため、Nx、Ny、フィルムの厚み方向の屈折率Nzとしたとき、下式により表されるNZ係数が1.5よりも大きくなる傾向がある。
NZ=(Nx−Nz)/(Nx−Ny)
このような性質は、位相差フィルムの2軸性と呼ばれ、液晶表示装置の光学補償板として好ましい性質である。液晶表示装置の光学補償板として用いられる位相差フィルムにおいてはNZ係数が1.5〜6.0であることが好ましく、優れた光学補償能を示す点から2.0〜4.0であることがさらに好ましい。
光学フィルムの代表的な成形方法として、樹脂を溶融してTダイなどから押し出してフィルム化する溶融押出法と、有機溶剤に樹脂を溶解して支持体上にキャストし加熱により溶剤を乾燥しフィルム化するソルベントキャスト法が挙げられるが、厚み精度の良い光学フィルムが比較的容易に製造できるとの理由からソルベントキャスト法を用いることが好ましい。厚み精度が悪いと、厚み変動に由来する凹凸がレンズのように働き、液晶表示装置に組み込んだ際の画像の歪み(所謂レンズ効果)の発生が懸念され、また、リターデーション(位相差)は複屈折と厚みの積で表されるため、リターデーション値の面内バラツキが発生する場合がある。
【0025】
ソルベントキャスト法を採用する場合の溶剤には特に制限はないが、乾燥効率の観点からは沸点が低い溶剤ほど好ましく、具体的には100℃ 以下の低沸点溶剤が好ましい。例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチルやプロピオン酸エチルなどのエステル系溶剤が使用可能である。また、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素系溶剤は、樹脂材料を溶解しやすく、沸点も低いため、好適な溶剤の一つである。また、塩化メチレンは乾燥中の火災等に対する安全性も高いので、本発明の位相差フィルムを製造する際に用いる主な溶剤として特に好ましい。本発明において用いる溶剤は塩化メチレンを単独で使用することが、回収・再利用の観点から好ましいが、塩化メチレン70〜99重量%と、炭素数3以下のアルコールを1〜30重量%を含む混合溶剤を用いることも可能である。混合溶剤を使用するに当たっては、前記炭素数3以下のアルコールとしてはエチルアルコールが安全で、沸点も低く好ましい。さらに、コストを抑制するため、炭素数3以下のアルコール100重量部のうち、エチルアルコール以外の炭素数3以下のアルコールを1〜10重量部含むことが好ましい。前記エチルアルコール以外の炭素数3以下のアルコールとしては、安全性や沸点の観点から、イソプロピルアルコールを用いることが特に好ましい。また、ここで言う溶剤とは乾燥工程や延伸工程においてフィルムにかかる最大温度よりも沸点が低い溶剤の事を指し、乾燥工程や延伸工程における最大温度より沸点が高い液体は可塑剤と言う。
【0026】
本発明に用いられるセルロースアシレートは、それ自体既知の方法で製造することができる。例えばセルロースアセテートプロピオネートの場合は、セルロースを強苛性ソーダ溶液で処理してアルカリセルロースとし、これを無水酢酸とプロピオン酸無水物との混合物によりアシル化する。得られたセルロースエステルは置換度DSac+DSprがほぼ3であるが、アシル基を部分的に加水分解することにより、目的の置換度を有するセルロースアセテートプロピオネートを製造することができる。また、アシル化の際に無水酢酸とプロピオン酸無水物の比率を変えることにより、目的のプロピオニル置換度を得ることができる。
【0027】
また、分子中のエステル基の存在は、高分子の親水性を増大させるため、フィルム化時に水分が存在したままだと、得られるフィルム強度に好ましくない影響を及ぼすおそれがあるため、フィルム化に用いる樹脂やペレット、溶剤などを事前に乾燥しておくことが好ましい。
【0028】
また、フィルム化の際に、必要に応じて少量の可塑剤や熱安定剤、紫外線安定剤等の添加剤を加えてもよい。得られたフィルムが脆い場合、延伸などの加工特性を改善する目的で可塑剤を加えることは有効である。特に特開2001−75098に記載の熱収縮性フィルムを熱可塑性フィルムの片面又は両面に接着し、加熱によるその熱収縮性フィルムの収縮力の作用下に熱可塑性フィルムを延伸し、位相差フィルムを得る方法においては、ガラス転移点の制御が重要となるため、ガラス転移点を調整するため可塑剤を添加することも好ましい。可塑剤は、乾燥工程、延伸工程においてフィルムにかかる最大温度より沸点が高いもので、(A)成分に相溶すれば特に限定はない。例えば、ヒマシ油およびその誘導体、樟脳等、周知のセルロース系樹脂用可塑剤を好適に用いることができる。ただし、可塑剤を多く含有すると、延伸による位相差の発現が小さくなり、またブリードの原因となるため、添加量は全固形分の5重量%以内であることが好ましい。また芳香環が多い可塑剤はリターデーション上昇剤として作用してしまい、所望の光学特性が得難くなる場合がある。このような観点から、本発明における可塑剤は、フタル酸エステル、特にジエチルフタレートが好ましい。
【0029】
ソルベントキャスト法によりフィルム化する際、本発明の(A)成分と(B)成分を前記溶剤に溶解したのち、支持体にキャストし、乾燥してフィルムとする。溶液の好ましい粘度は1.0Pa・s以上5.0Pa・s以下、さらに好ましくは1.5Pa・s以上4.0Pa・s以下である。好ましい支持体としてはステンレス鋼のエンドレスベルトや、ポリイミドフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等のようなフィルムを用いることができる。
【0030】
キャスト後の乾燥は、支持体に担持されたまま行うことも可能であるが、必要に応じて、自己支持性を有するまで予備乾燥したフィルムを支持体から剥離し、さらに乾燥することもできる。フィルムの乾燥は、一般にはフロート法や、テンターあるいはロール搬送法が利用できる。フロート法の場合、フィルム自体が複雑な応力を受け、光学的特性の不均一が生じやすい。また、テンター法の場合、フィルム両端を支えているピンあるいはクリップの距離により、溶剤乾燥に伴うフィルムの幅収縮と自重を支えるための張力を均衡させる必要があり、複雑な幅の拡縮制御を行う必要がある。一方、ロール搬送法の場合、安定なフィルム搬送のためのテンションは原則的にフィルムの流れ方向(MD方向)にかかるため、応力の方向を一定にしやすい特徴を有する。従って、フィルムの乾燥は、ロール搬送法によることが最も好ましい。また、溶剤の乾燥時にフィルムが水分を吸収しないよう、湿度を低く保った雰囲気中で乾燥することは、機械的強度と透明度の高い本発明フィルムを得るには有効な方法である。
【0031】
本発明の位相差フィルムの厚みは、10μmから500μmが好ましく、より好ましくは30μmから300μmである。フィルムの光線透過率は85%以上が好ましく、より好ましくは、90%以上である。また、フィルムのヘーズは5%以下が好ましく、より好ましくは3%以下である。
【0032】
本発明の製造方法により得られる位相差フィルムの実用に際しては、例えば位相差フィルムの片面又は両面に粘着層を設けたものや、その粘着層を介して偏光フィルム、および/ またはは、等方性の透明な樹脂層やガラス層等からなる保護層を接着積層したものなどの2層又は3 層以上の積層体からなる適宜な形態の光学部材、特に光学補償板として適用することもできる。特に本発明の位相差フィルムと偏光板を積層することで、光学補償偏光板とすることができる。中でも、本発明の位相差フィルムと偏光板をロール・ツゥー・ロールで積層してなる光学補償偏光板は、低コスト、高生産性を有するため好ましい構成である。
本発明の位相差フィルムは光学補償用に、1枚のみ用いてもよく、2枚以上用いてもよい。補償機能の点から2枚用いた光学補償板とすることが特に好ましい。さらに、本発明位相差フィルムと、その他の光学補償フィルムを組み合わせて光学補償板としてもよい。本発明以外の光学補償フィルムを用いる場合、補償効果の向上などを目的とし、その光学補償フィルムは特に限定されないが、例えばポリマーフィルムの一軸や二軸等による延伸処理物、ディスコティック系やネマチック系等の液晶配向板などの適宜なものを用いることができる。
【0033】
これらの光学補償板は、偏光板と貼り合せて光学補償偏光板とすることもできる。
【0034】
また、偏光板として使用されるものは特に限定されず、適宜なものを用いることができる。偏光板は一般に偏光フィルムの両面に透明保護層を有するものが広く用いられているが、偏光フィルムとしてはポリビニルアルコール系フィルムや部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムの如き親水性高分子フィルムにヨウ素及び/ 又は二色性染料を吸着させて延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物の如きポリエン配向フィルム等からなるもの等があげられる。偏光フィルムの配向方法は特に限定されないが、一般には、フィルムを長手方向および/ または幅方向に延伸したものが用いられる。前記偏光フィルムが、フィルム長手方向に延伸を行ったものである場合は、偏光板の透過軸と位相差フィルムの遅相軸が略平行となり、偏光フィルムが幅方向に延伸を行ったものである場合は、偏光板の吸収軸と位相差フィルムの遅相軸が略平行となる。これらはいずれも好ましい構成であるが、生産性の観点から、偏光フィルムはフィルム長手方向に延伸を行ってなるものがより好ましい。
【0035】
偏光板、特に偏光フィルムは、その片側又は両側に透明保護層を有するものであってもよい。また偏光板は、反射層を有する反射型のものであってもよい。反射型の偏光板は、視認側( 表示側) からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化をはかりやすいなどの利点を有する。
【0036】
前記の透明保護層は、ポリマーの塗布層や保護フィルムの積層物などとして適宜に形成でき、その形成には透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮蔽性等に優れるポリマーなどが好ましく用いられる。その例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、あるいは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、ないし紫外線硬化型の樹脂などがあげられる。透明保護層は、微粒子の含有によりその表面が微細凹凸構造に形成されていてもよい。特に、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂を用いる場合は、接着性を上昇させるために、フィルム表面をケン化処理して用いることもできる。さらにまた、本発明の位相差フィルムを偏光フィルムの透明保護層と用いることで、光学補償偏光板を形成することもできる。
【0037】
また反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明樹脂層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式で行うことができる。その具体例としては、必要に応じマット処理した保護フィルム等の透明樹脂層の片面に、アルミニウム等の反射性金属からなる箔や蒸着膜を付設したものや、前記透明樹脂層の微粒子含有による表面微細凹凸構造の上に蒸着方式やメッキ方式等の適宜な方式で金属反射層を付設したものなどがあげられる。
【0038】
なお、本発明の光学補償偏光板において、位相差フィルムと偏光板の積層方法は適宜に決定することができる。例えば、液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層する方式にて実施することもできるが、前記位相差フィルムと偏光板を予め積層することにより、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置の製造効率を向上させうる利点などがある。積層には、適宜な透明接着剤ないし粘着剤などを用いることができ、その接着剤等の種類について特に限定はない。屈折率が異なるものを積層する場合には、反射損の抑制などの点より中間の屈折率を有する接着剤等が好ましく用いられる。また、本発明の位相差フィルムをコロナ放電等によって表面処理することで、接着剤等との密着性を向上させ、接着剤等の剥がれを防止する方法も好ましく用いられる。
【0039】
また光学特性の変化防止の点よりは、積層の際に硬化や乾燥等で高温のプロセスを要しないものが好ましく、長時間の硬化処理や乾燥時間を要しないものが望ましい。その点よりは、粘着層による積層方式が好ましい。その粘着層には、上記の熱収縮性フィルムの接着で例示したものなどの適宜なものを用いうる。就中、耐熱性や光学特性などの点よりアクリル系のものが好ましく用いられる。
【0040】
なお粘着層には、必要に応じて例えば天然物や合成物の樹脂類、ガラス繊維やガラスビーズ、金属粉やその他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤や酸化防止剤などの適宜な添加剤を配合することもできる。また微粒子を含有させて光拡散性を示す粘着層とすることもできる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
(測定方法)
本明細書に記載の特性値等は、以下の評価法によって得られたものである。
(1)リターデーション・波長分散性・遅相軸方向の判定
フィルムの幅方向中央より50mm角のサンプルを切り出し、シンテック社製OPTIPROにより、正面レターデーション・レターデーションの波長分散性・遅相軸の方向を測定した。R0、NZは波長590nmでの測定値を表す。
(2)厚み
アンリツ製電子マイクロメーターにより測定した。
(3)セルロースアシレートの置換度の算出
ASTM−D817−96記載の方法にて各アシル基含量を測定し、アシル基の置換度をそれぞれ算出した。水酸基残度は、3−(総アシル置換度)を計算して求めた。
(4)分子量
ゲル・パーミッション・クロマトグラフィー法により、各試料の数平均分子量と重量平均分子量を求めた。
装置:東ソー製GPC,東ソー製8020型RI
カラム:昭和電工製K−G、K−806,K−805,K−803
溶媒:塩化メチレン
流量:1.0mL/分
温度:25℃
試料溶液:濃度0.1%の塩化メチレン溶液を孔径0.45μmのフィルターで濾過し、試料溶液とした。
注入量:0.2mL
標準試料:東ソー株式会社製PS−オリゴマーキットの12種の試料を標準試料として検量線を作成した。
(5)ガラス転移温度の測定
セイコー電子工業製示差走査熱量計DSC220Cにより、JIS K−7121に記載の方法にて測定した。
(6)樹脂の選定
(A)成分として、DSac+DSpr=2.68、DSpr=2.50、数平均分子量が52200、重量平均分子量が235000であるセルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカルCAP482-20)を用いた。
【0043】
(B)成分として、DSac+DSpr=2.58、DSpr=2.40、数平均分子量が25000、重量平均分子量が62000であるセルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカルCAP482-0.5)を使用した。
(7)ドープの調製
溶剤として83重量部の塩化メチレンに、可塑剤として0.5重量部のジエチエルフタレート、(A)成分33.95重量%、(B)成分66.05%よりなる16.5重量部の樹脂混合物を溶解し、塗工用の溶液1を調整した。
(8)無延伸フィルム1・2の作製
溶液1を23℃、湿度15%の環境下で、流れ方向に1.0×10N/mの応力を付与した状態の厚み125μm、幅1650mmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ポリエステル系易接着層付き)上に 、コンマコーターにより流延した。無延伸フィルム1の作成においては乾燥後のフィルム厚みがおよそ80μmとなるように、また無延伸フィルム2の作成においては乾燥後のフィルム厚みがおよそ100μmとなるように、支持体とコンマロールとの隙間を設定した。支持体および流延された溶液を、遠赤外線ヒーターにより雰囲気温度35℃に調整された乾燥炉内に連続的に搬送し、以降、段階的に雰囲気温度を50℃まで上昇させた炉内を通過させた。また、この乾燥炉は露点−23℃ の除湿エアーを連続的に供給することで湿度を15%以下に保ち、水分によるフィルムの白化を防止した(除湿ゾーン)。その後さらに、60℃から最大で100℃まで段階的に温度を上げた熱風炉を通過させることでさらに乾燥させてウェブとし、支持体と一体で巻取りロール状とした。得られたロール状のウェブを、支持体フィルムから剥離し、さらに雰囲気温度100℃のロール懸垂型乾燥機内を15分間搬送して乾燥させた後(熱風ゾーン)、フィルム両端部を切り落とし、幅1520mm、厚み約80μmの無延伸フィルム1、厚み約100μmの無延伸フィルム2を得た。
(9)無延伸フィルム3の作製
芳香族2価フェノール成分として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン成分を有するポリカーボネート系樹脂(帝人化成製パンライトC1400)を20重量部、塩化メチレンを80重量部含むドープを調製した。このドープを室温(23℃)、湿度15%の環境下で、長手方向に1.0×10N/mの応力を付与した状態の厚み125μmの二軸延伸PETフィルム上に連続的に流延した。乾燥後のフィルム厚みがおよそ70μmとなるように、支持体とコンマロールとの隙間を設定した。無延伸フィルム1・2と同様の乾燥条件で乾燥を行い、厚み68μmの無延伸フィルム3を得た。
(実施例1〜8)
無延伸フィルム1および2を、クリップテンターを有する横延伸機でTg+10℃にて幅方向の延伸倍率が1.1〜1.4倍となるように横延伸し、位相差フィルム1〜8を作製した。
(比較例1)
無延伸フィルム3を、クリップテンターを有する横延伸機でTg+10℃において幅方向の延伸倍率が、1.25倍となるように横延伸し、位相差フィルム9を得た。
(比較例2)
無延伸フィルム1をTg+10℃にて自由端1軸延伸にて縦方向の延伸倍率が1.25倍となるように延伸し、位相差フィルム10を得た。
【0044】
位相差フィルム1〜10のレターデーション等を表1に示す。本発明の製造方法により製造した位相差フィルムは遅相軸がTD方向にあり、2軸性に優れ、さらには優れた逆波長分散性を示すことが分かる。
【0045】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分と下記(B)成分を含有するセルロースエステルフィルムをフィルムの長手方向と直交する方向に延伸することを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
(A):下記(1)式および(2)式を満足するセルロースアシレート
2.20≦DSac(A)+DSay(A)≦2.90 (1)
DSay(A)/DSac(A)≧2 (2)
(DSac(A)は(A)成分のアセチル置換度、DSay(A)は(A)成分の炭素数3または炭素数4のアシル基による置換度の合計を示す。)
(B):(A)成分とは異なる分子量を有する水酸基残度0.30以上のセルロースアシレート。
【請求項2】
前記(B)成分が下記(3)式および(4)式を満たすセルロースアシレートであり、かつ、(A)成分と(B)成分が下記(5)式とを満足することを特徴とする請求項1に記載の位相差フィルムの製造方法。
2.00≦DSac(B)+DSay(B)≦2.70 (3)
DSay(B)/DSac(B)≧2 (4)
(DSac(A)+DSay(A))−0.05≧(DSac(B)+DSay(B)) (5)
(DSac(B)は(B)成分のアセチル置換度、DSay(B)は(B)成分の炭素数3または炭素数4のアシル基による置換度の合計を示す。)
【請求項3】
(A)成分のセルロースアシレートが、下記(6)式と(7)式とを満足するセルロースアセテートプロピオネートであり、
2.20≦DSac(A)+DSpr(A)≦2.90 (6)
DSpr(A)/DSac(A)≧2 (7)
(B)成分のセルロースアシレートが、下記(8)式と(9)式とを満足するセルロースアセテートプロピオネートであることを特徴とする、請求項1〜2のいずれか1項に記載の位相差フィルムの製造方法。
2.00≦DSac(B)+DSpr(B)≦2.70 (8)
DSpr(B)/DSac(B)≧2 (9)
(DSpr(A)は(A)成分のプロピオニル置換度、DSpr(B)は(B)成分のプロピオニル置換度を示す)
【請求項4】
(A)および(B)成分のセルロースアシレートが下記(10)式から(13)式を満足するセルロースアセテートプロピオネートであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の位相差フィルムの製造方法。
2.5≦DSac(A)+DSpr(A)≦2.9 (10)
2.5≦DSpr(A)≦2.9 (11)
2.5≦DSac(B)+DSpr(B)≦2.7 (12)
2.5≦DSpr(B)≦2.7 (13)
【請求項5】
(A)成分と(B)成分が下記(14)式を満足することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の位相差フィルムの製造方法。
10,000≦Mn(A)−Mn(B)≦100,000 (14)
(Mn(A)、Mn(B)はそれぞれ(A)成分、(B)成分のゲル・パーミッション・クロマトグラフィー法による数平均分子量を表す)
【請求項6】
前記Mn(A)およびMn(B)がそれぞれ下記の(15)式および(16)式を満たすことを特徴とする、請求項5に記載の位相差フィルムの製造方法。
Mn(A)=30,000〜150,000 (15)
Mn(B)=10,000〜50,000 (16)
【請求項7】
(A)成分の分子量分布(Mw(A)/Mn(A))が、2.5〜5.0、
(B)成分の分子量分布(Mw(B)/Mn(B))が、1.5〜4.0、
であり、且つ(Mw(A)/Mn(A))>(Mw(AB)/Mn(AB))であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の位相差フィルムの製造方法。
(Mw(AB)、Mn(AB)は、それぞれ(A)成分と(B)成分を混合後のゲル・パーミッション・クロマトグラフィー法による重量平均分子量、数平均分子量を表す)
【請求項8】
(A)成分の含有量が20〜50重量%、
(B)成分の含有量が80〜50重量%、
であるセルロースアシレートを含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の位相差フィルムの製造方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法により製造された位相差フィルムを少なくとも1枚含有することを特徴とする光学補償板。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法により製造された位相差フィルムを2枚含有することを特徴とする光学補償板。

【公開番号】特開2010−211138(P2010−211138A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59762(P2009−59762)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】