説明

位相推定方法および位相推定装置

【課題】マルチステージ位相推定の処理および/または構成の複雑さを低くする。
【解決手段】マルチステージ位相推定装置は、マルチステージ位相推定構成を有する。各ステージの位相推定構成は、それぞれが入力信号および初期位相角または前段ステージで得られるサーチ位相角に基づいて距離メトリックおよびサーチ位相角を計算する、当該ステージのサーチ位相角の数と同数の複数のメトリック計算モジュールと、当該ステージの位相推定結果として、前記複数のメトリック計算モジュールの計算結果に基づいて、最小の距離メトリックに対応するサーチ位相角を選択する選択モジュールと、を有する。前段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長は、後続するステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長よりも長い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信に係わり、位相推定方法および位相推定装置に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
高速大容量光ファイバ伝送システムは、光通信が発展していく方向であり、高次の直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)方式とコヒーレント受信技術の組合せが有望なソリューションを提供してくれると期待されている。QAM方式を使用すると、スペクトル効率が向上し、電気/光帯域の要求を下げることができる。また、コヒーレント受信技術は、受信感度を向上させながら、強力なDSP(Digital Signal Processing)技術を利用して伝送による信号の劣化の問題を解決することができる。
【0003】
レーザ位相雑音が存在するので、デジタルコヒーレント受信機においてキャリア位相推定器は重要なデバイスである。また、実用上、トレーニング手順を省略するために、フィードフォワードでブラインド位相推定を使用する方式が期待されている。この方式では、情報の伝送効率が向上する。ただし、変調次数が高くなると(すなわち、シンボル当たりのビット数が増加すると)、QAM信号のコンステレーション点の密度が高くなるので、レーザ位相雑音に対してQAM信号の耐力が大きく劣化する。このため、従来のフィードフォワードブラインド位相推定アルゴリズムには、高次のQAM信号に適用することは困難であった。また、フィードフォワードブラインド位相推定モジュールに対して技術的に高度な要求が生じていた。これらの問題については、例えば、非特許文献1〜4に記載されている。
【0004】
様々なフィードフォワードブラインド位相推定アルゴリズムの中で、ブラインド位相サーチ(BPS:Blind Phase Search)に基づくフィードフォワードアルゴリズムは、位相雑音耐力が高い、並列処理を実行できる、任意の次数のQAM方式に適用可能である等の利点を有している。このアルゴリズムの原理は比較的シンプルであるが、実装の複雑さは非常に高い。効果的なソリューションの1つは、1ステージの位相推定モジュールを複数ステージのモジュールに適用することにより、位相サーチにおいて必要とされる位相角の数を削減し、複雑さを低くすることである。なお、フィードフォワードアルゴリズムについては、例えば、非特許文献5〜7に記載されている。
【0005】
様々なマルチステージ位相推定アルゴリズムが提案されている(例えば、非特許文献8〜11)。これらの提案においては、複雑さが1.5〜3分の1に削減されている。一例として、非特許文献10で提案されているアルゴリズムについて記載する。非特許文献10で提案されている2ステージの位相推定構成において、各ステージはそれぞれ位相サーチアルゴリズムに基づいており、前段ステージは、後段ステージのための粗いサーチと考えられ、後段ステージは、前段ステージでの推定位相に基づく細かいサーチに相当する。この構成により、位相推定の精度を確保しながら、位相サーチのための位相角の数が削減される。しかしながら、この2ステージ位相推定構成においては、各ステージで同じ長さの平均時間ウィンドウが使用されるので、第1ステージで必要とされる位相角の数は、パターン効果の影響により依然として非常に大きい。したがって、複雑さの低減は限定的である。
【0006】
なお非特許文献1〜11の内容は、本発明および従来技術の理解を助けるために有用であり、引用によって本件特許出願に取り込まれるものとする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】R. Noe, “Phase noise tolerant synchronous QPSK/BPSK baseband-type intradyne receiver concept with feed-forward carrier recovery,” J. Lightw. Technol., vol. 23, no. 2, pp. 802-808, Feb. 2005.
【非特許文献2】H. Louchet, K. Kuzmin, and A. Richter, “Improved DSP algorithms for coherent 16-QAM transmission,”PaperTu.1.E.6, in Proc. ECOC2008, Brussels, Belgium, Sep.21-25, 2008.
【非特許文献3】M. Seimetz, “Laser linewidth limitations for optical systems with high-order modulation employing feedforward digital carrier phase estimation,” PaperOTuM2, in Proc.OFC2008, San Diego, CA, Feb. 24-28, 2008.
【非特許文献4】I. Fatadin, D. Ives, and S. J. Savory, “Laser linewidth tolerance for 16QAM coherent optical systems using QPSK partitioning,” IEEE Photon. Technol. Lett., vol. 22, no. 9, pp. 631-633, May. 2010.
【非特許文献5】S.K. Oh and S.P. Stapleion, “Blind phase recovery using finite alphabet properties in digital communications,”Electronics Letters, vol. 33, no. 3, pp. 175-176, Jan. 1997.
【非特許文献6】F. Rice, B. Cowley, B. Moran, and M. Rice, “Cramer-Rao lower bounds for QAM phase and frequency estimation,” IEEE Transactions on Communications, vol. 49, no. 9, pp. 1582-1591, Sep. 2001.
【非特許文献7】T. Pfau, S. Hoffmann, and R. Noe, “Hardware-efficient coherent digital receiver concept with feed-forward carrier recovery for M-QAM constellations,” Journal of Lightwave Technology, vol. 27, no. 8, pp. 989-999, Apr. 15, 2009.
【非特許文献8】T. Pfau, and R. Noe, “Phase-noise-tolerant two-stage carrier recovery concept for higher order QAM formats,” IEEE Journal of Selected Topics on Quantum Electronics, vol. 16, no. 5, pp. 1210-1216, 2010.
【非特許文献9】X. Zhou, “An improved feed-forward carrier recovery algorithm for coherent receivers with M-QAM modulation format,” IEEE Photonics Technology Letters, vol. 22, no. 14, pp. 1051-1053, July. 2010.
【非特許文献10】X. Li, Y. Cao, S. Yu, W. Gu, and Y. Ji, “A Simplified Feed-Forward Carrier Recovery Algorithm for Coherent Optical QAM System,” Journal of Lightwave Technology, vol. 29, no. 5, pp. 801-807, Mar. 2011.
【非特許文献11】Q. Zhuge, C. Chen, and D. V. Plant, “Low computation complexity two-stage feedforward carrier recovery algorithm for M-QAM,” Paper OMJ5, presented in OFC2011, Los Angeles, CA, Mar. 2011.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、マルチステージ位相推定方法および/または装置の処理および/または構成の複雑さを低くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様のマルチステージ位相推定装置は、マルチステージ位相推定構成を有し、各ステージの位相推定構成は、それぞれが入力信号および初期位相角または前段ステージで得られるサーチ位相角に基づいて距離メトリックおよびサーチ位相角を計算する、当該ステージのサーチ位相角の数と同数の複数のメトリック計算モジュールと、当該ステージの位相推定結果として、前記複数のメトリック計算モジュールの計算結果に基づいて、最小の距離メトリックに対応するサーチ位相角を選択する選択モジュールと、を有する。前段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長は、後続するステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長よりも長い。
【発明の効果】
【0010】
上述の態様によれば、マルチステージ位相推定方法および/または装置の処理および/または構成の複雑さが低くなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態のマルチステージ位相推定装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示すマルチステージ位相推定装置の実施例を示す図である。
【図3】図2に示す第1ステージ位相推定構成のメトリック計算モジュールの構成を示す図である。
【図4】図2に示す第2ステージ位相推定構成のメトリック計算モジュールの構成を示す図である。
【図5】実施形態のデジタルコヒーレント受信機の構成を示す図である。
【図6】実施形態の偏波ダイバーシティデジタルコヒーレント受信機の構成を示す図である。
【図7】図5または図6に示すコヒーレント受信機を使用する光通信システムの構成を示す図である。
【図8】実施形態のマルチステージ位相推定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の幾つかの実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に記載する実施形態は、例示的なものであり、本発明を限定するものではない。当業者が本発明の原理および実施形態をより適切に理解するために、以下では、光通信システムにおけるレーザ位相雑音の推定を例にして説明する。ただし、本発明は、位相雑音が存在するすべての通信システムに適用可能であり、光通信システムに限定されるものではない。
【0013】
図1は、実施形態のマルチステージ位相推定装置の構成を示す図である。図1に示すように、実施形態のマルチステージ位相推定装置は、マルチステージ位相推定構成11を有する。すなわち、マルチステージ位相推定装置は、複数の位相推定構成11を有し、各ステージの結果はそれぞれ次のステージで使用される。各ステージの位相推定構成11は、複数のメトリック計算モジュール111、および選択モジュール112を有する。各ステージのメトリック計算モジュール111の数は、当該ステージのサーチ位相角の数と同じである。
【0014】
各メトリック計算モジュール111は、入力信号および初期サーチ位相角または前段の位相推定構成で得られたサーチ位相角に基づいて、距離メトリックを計算するために使用される。選択モジュール112は、すべてのメトリック計算モジュール111の計算結果に基づいて、当該ステージが出力する位相推定結果として、最小距離メトリックに対応するサーチ位相角を選択する。ここで、この実施形態では、前段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長は、それに続くステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長よりも長い。
【0015】
実施形態のマルチステージ位相推定装置においては、各ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長が互いに同じであるという制限は取り除かれ、ステージ毎に同一ではない平均時間ウィンドウ長が使用される。このため、レーザ位相雑音耐力を保証しながらパターン効果の問題が解決され、さらに位相推定アルゴリズムを実装する際の複雑さ(或いは、位相推定のための処理または構成の複雑さ)が低くなる。したがって、この実施形態のマルチステージ位相推定装置をデジタルコヒーレント受信機または偏波ダイバーシティデジタルコヒーレント受信機に適用すれば、位相推定のための処理のコストおよび実装の複雑さが低くなる。
【0016】
なお、この実施形態では、各ステージの位相推定構成は、一例として、または好ましくは、BPS(Blind Phase Search)アルゴリズムを使用する。
この実施形態では、最終ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長の最適値は、単一ステージ位相推定構成のみが使用される場合の平均時間ウィンドウ長の最適値と同じまたはほぼ同じである。ここで、単一ステージ位相推定構成は、入力信号の位相を推定するために位相推定構成を1ステージだけ使用する形態を意味する。そして、単一ステージ位相推定構成が実施形態のマルチステージ位相推定構成と同じアルゴリズムを使用する場合に、単一ステージ位相推定構成の最適な平均時間ウィンドウ長は、実施形態のマルチステージ位相推定装置の最終ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長の最適値と同じまたはほぼ同じである。
【0017】
この実施形態では、位相推定構成の各ステージにおけるサーチ位相角の数の積と、単一ステージ位相推定構成において必要とされるサーチ位相角の総数との差分の絶対値が最小である。また、位相推定構成の各ステージにおけるサーチ位相角の数の和が最小である。なお、単一ステージ位相推定構成の意味は、上述した通りであり、さらなる記載は省略する。
【0018】
以下、この実施形態のマルチステージ位相推定装置について、マルチステージ位相推定構成を例にして説明する。なお、この実施形態では、一例として、2つのステージ(第1ステージおよび第2ステージ)を取り上げるが、マルチステージ位相推定装置が3以上のステージを有する場合には、第3ステージから最終ステージまでの各ステージの処理は、第2ステージと実質的に同じであり、その記載は省略する。
【0019】
図2は、図1に示すマルチステージ位相推定装置の実施例を示す図である。図2に示すように、実施形態のマルチステージ位相推定装置は、マルチステージ位相推定構成を有する。図2においては、第1ステージ位相推定構成21および第2ステージ位相推定構成22が示されている。
【0020】
第1ステージ位相推定構成21は、複数のメトリック計算モジュール

を有する。メトリック計算モジュール

は、それぞれ、入力信号rkおよび対応する初期サーチ位相角

に基づいて、位相サーチのために使用される距離メトリック

、およびサーチ位相角

を計算するために使用される。I1は、第1ステージ位相推定構成21で使用されるサーチ位相角の数を表す。
【0021】
第1ステージ位相推定構成21は、マルチステージ位相推定構成全体の第1番目のステージであって、他のステージ(すなわち、2段目以降のステージ)とは異なっている。すなわち、第1ステージ位相推定構成21の各メトリック計算モジュールで使用されるサーチ位相角は、第1ステージのサーチ位相角の数に基づいて直接的に得られ、例えば、サーチ位相角は、−π/4からπ/4の間に等しい間隔で分布する。
【0022】
第1ステージ位相推定構成21は、更に選択モジュールを有する。この実施形態では、選択モジュールは、最小値セレクタ212およびスイッチ213を有する。そして、最小値セレクタ212およびスイッチ213を利用することにより、第1ステージ位相推定構成21が出力すべき位相推定結果として、最小距離メトリックに対応するサーチ位相角が選択される。すなわち、最小値セレクタ212は、複数の距離メトリック

の中で最小値を特定する。ここで、例えば、距離メトリック

が最小であったときは、スイッチ213は、

に対応するサーチ位相角

を選択する。そして、第1ステージ位相推定構成21で選択されたサーチ位相角は、第2ステージ位相推定構成22に与えられる。
【0023】
第1ステージ位相推定構成21に設けられる各メトリック計算モジュールは、例えば、図3に示す構成で実現される。図3に示すように、メトリック計算モジュールは、乗算器31、判定器32、第1の計算器33、第2の計算器34を有する。
【0024】
乗算器31は、初期位相角として与えられているサーチ位相角に対応する複素数を入力信号rkに掛けるために使用される。これにより、入力信号の位相は対応する角度だけ回転する。なお、この実施形態では、例えば、各メトリック計算モジュールに対して、互いに異なる初期位相角が与えられる。そして、判定部32は、乗算器31の出力に対してQAMコンステレーションに基づく硬判定を行うために使用される。
【0025】
第1の計算器33は、乗算器31の出力と判定器32の出力との間の差分の絶対値の二乗を計算するために使用される。すなわち、第1の計算器33は、実質的に、乗算器31の出力と判定器32の出力との間の距離を計算する。第2の計算器34は、長さNjの平均時間ウィンドウの中で第1の計算器33の出力の和を計算して距離メトリックの値を得るために使用される。すなわち、第2の計算器34は、長さNjの平均時間ウィンドウの中で、実質的に、乗算器31の出力と判定器32の出力との間の距離の平均を計算する。そして、第2の計算器34による計算結果は、距離メトリックとして図2に示す最小値セレクタ212へ導かれる。なお、このステージの位相推定構成は、第1番目のステージ位相推定構成なので、j=1である。
【0026】
第2ステージ位相推定構成22は、複数のメトリック計算モジュール

を有する。メトリック計算モジュール

は、それぞれ、入力信号rkおよび前段ステージの位相推定構成で得られたサーチ位相角

に基づいて、位相サーチのために使用される距離メトリック

、およびサーチ位相角

を計算するために使用される。I2は、第2ステージ位相推定構成22で使用されるサーチ位相角の数を表す。
【0027】
この実施形態では、各メトリック計算モジュールは、前段ステージの位相推定構成から出力されるサーチ位相角に基づく計算により、自ステージのサーチ位相角を得る。すなわち、第2ステージ位相推定構成22の各メトリック計算モジュールは、第1ステージ位相推定構成21から出力されるサーチ位相角に基づいて、第2ステージのサーチ位相角を得る。なお、第2ステージ位相推定構成22の各メトリック計算モジュールが使用するサーチ位相角は、互いに異なっている。このとき、第2ステージ位相推定構成22の各メトリック計算モジュールが使用するサーチ位相角は、等しい間隔で分布していてもよいし、そうでなくてもよい。
【0028】
第2ステージ位相推定構成22は、更に選択モジュールを有する。この実施形態では、選択モジュールは、最小値セレクタ222およびスイッチ223を有する。そして、最小値セレクタ222およびスイッチ223を利用することにより、第1ステージ位相推定構成22が出力すべき位相推定結果として、最小距離メトリックに対応するサーチ位相角が選択される。
【0029】
第2ステージ位相推定構成22に設けられる各メトリック計算モジュールは、例えば、図4に示す構成で実現される。図4に示すように、メトリック計算モジュールは、乗算器41、判定器42、第1の計算器43、第2の計算器44を有する。
【0030】
乗算器41は、入力信号rkに、前段ステージの位相推定構成のサーチ位相角に基づく計算で得られるサーチ位相角に対応する複素数を掛けるために使用される。これにより、入力信号の位相は対応する角度だけ回転する。ここで、第j番目のステージのサーチ位相角

は、第j−1番目のステージで得られる推定位相角(サーチ位相角)

により決定される。
【0031】
判定器42は、乗算器41の出力に対してQAMコンステレーションに基づく硬判定を行うために使用される。第1の計算器43は、乗算器41の出力と判定器42の出力との間の差分の絶対値の二乗を計算するために使用される。第2の計算器44は、長さNjの平均時間ウィンドウの中で第1の計算器43の出力の和を計算して、距離メトリックの値を得るために使用される。そして、第2の計算器44による計算結果は、距離メトリックとして図2に示す最小値セレクタ222へ導かれる。なお、このステージの位相推定構成は、第2ステージ位相推定構成なので、j=2である。
【0032】
この実施形態では、マルチステージ位相推定装置が3以上のステージを有する場合は、第3ステージから最後のステージまでの各ステージの位相推定構成の構成および機能は、第2ステージ位相推定構成22と類似しているので、説明を省略する。このように、マルチステージ位相推定構成の各ステージの各メトリック計算モジュールは、長さNj(j=1,2,...,J)を有する平均時間ウィンドウの中で和を求める演算に関係する。
【0033】
上記構成において、前段ステージの位相推定構成は、後段ステージの位相推定構成と比較してパターン効果の影響をより強く受ける。このため、この実施形態では、前段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長は、後段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長よりも長く設定されている。すなわち、N1>N2>...>Njである。ここで、Nj(j=1,2,...,J)は、第j番目のステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長を表す。Jは、マルチステージ位相推定装置のステージの総数を表す。これにより、パターン効果による影響は緩和される。
【0034】
前段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長および後段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長は、2Llatter<Lformer<3Llatterを満たすように決定してもよい。ここで、Lformerは、あるステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長を表し、Llatterは、その直後のステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長を表す。この場合、一例として、倍数は2.3〜2.6であることが好ましい。すなわち、1つの実施例においては、2.3Llatter<Lformer<2.6Llatterを満たすようにウィンドウ長が決定される。ただし、本発明はこの値に限定されるものではなく、前段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長が後段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長よりも長く設定されているマルチステージ位相推定構成であれば、すべて本発明に含まれる。
【0035】
好ましい実施形態として、各位相推定構成において同じアルゴリズムが使用される場合には、単一ステージ位相推定構成の平均時間ウィンドウ長Nと比較すると、マルチステージ位相推定装置の最終ステージの位相推定構成のウィンドウ長NJの最適値は、単一ステージ構成のみが使用される場合の最適な長さNと同じまたはほぼ同じである。このようにウィンドウ長を設定することにより、位相雑音耐力は保証される。
【0036】
他の好ましい実施形態として、各位相推定構成において同じアルゴリズムが使用される場合は、単一ステージ位相推定構成のサーチ位相角の数Iと比較すると、各ステージの位相推定構成のサーチ位相角の数の積(I12・・・IJ)と、単一ステージ位相推定構成において必要とされるサーチ位相角の総数Iとの差分の絶対値|I12・・・IJ−I|が最小であり、且つ、各ステージの位相推定構成のサーチ位相角の数の和(I1+I2+・・・+IJ)が最小である。これにより、パターン効果を緩和しながら、実装の複雑さを効果的に低くすることができる。
【0037】
既存のマルチステージ位相推定構成においては、各ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長Njは、互いに同じである。このため、レーザ位相雑音耐力を維持するという前提においては、パターン効果の影響があるために、第1ステージにおいて必要とされるサーチ位相角の数を大幅に削減することは出来ない。
【0038】
これに対して、実施形態のマルチステージ位相推定構成においては、平均時間ウィンドウ長を互いに同じにする、という制限が取り除かれており、各ステージの平均時間ウィンドウ長Njは個々に最適化される。ここで、前段ステージの位相推定構成は、後段ステージの位相推定構成と比較してパターン効果の影響をより強く受けるので、この実施形態においては、前段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長は、後段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長よりも長く設定される。そして、平均時間ウィンドウ長を長くすることにより、パターン効果による影響は緩和される。さらに、パターン効果を緩和するという前提においては、この実施形態では、各ステージのサーチ位相角の数を調整することにより、サーチ位相角の総数が最小化される。これにより、実装の複雑さが十分に低くなる。
【0039】
次に、この実施形態のマルチステージ位相推定装置の効果について下記の例を参照しながら説明する。ここでは、実施例として、64QAMまたは256QAM変調信号を取り上げて説明する。
【0040】
位相推定性能を保証する、という前提においては、単一ステージ位相推定方法で必要とされる位相角の数Iは、64である(I=64)。ここで、2ステージ位相推定構成を採用する場合、|I12−I|を最小化し、I1+I2を最小化するために、I1=I2=8が導き出される。この場合、実施形態のマルチステージ位相推定装置のサーチ位相角の総数(すなわち、I1+I2)は、16である。同様に、3ステージ位相推定構成を採用する場合、|I123−I|を最小化し、I1+I2+I3を最小化するためには、各ステージのサーチ位相角の理想的な数は、4である(I1=I2=I3=4)。この場合、サーチ位相角の総数(すなわち、I1+I2+I3)は、12である。
【0041】
このように、実施形態のマルチステージ位相推定装置においてマルチステージ位相推定構成を使用すると、前段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長が、後段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長よりも長くなり、パターン効果の影響が緩和される。そして、パターン効果を緩和する、という前提においては、各ステージの位相推定構成のサーチ位相角の数の再結合によって、実装の複雑さが十分に低くなる。
【0042】
上述の実施形態のマルチステージ位相推定装置は、QAM信号変調に基づくデジタルコヒーレント受信機に適用化脳である。以下では、マルチステージ位相推定装置の適用について、2つの実施例を記載する。ただし、本発明のマルチステージ位相推定装置は、下記の2つの実施例に限定されるものではない。すなわち、QAM信号変調に基づく任意のデジタルコヒーレント受信機は、位相推定を実行するために、この実施形態で提案されているマルチステージ位相推定装置を使用することができる。
【0043】
図5は、実施形態のデジタルコヒーレント受信機の構成を示す図である。図5に示すように、デジタルコヒーレント受信機は、受信機光/電気フロントエンド51、A/Dコンバータ52、リニアイコライザ53、周波数差推定器54、位相推定器55、データ再生器56を有する。
【0044】
受信機光/電気フロントエンド51、A/Dコンバータ52、リニアイコライザ53、周波数差推定器54、データ再生器56は、既存のデジタルコヒーレント受信機に設けられている構成および機能と同等であり、説明を省略する。また、位相推定器55は、上述した実施形態のマルチステージ位相推定装置により実現される。実施形態のマルチステージ位相推定装置の構成および機能については、上述した通りなので、説明を省略する。なお、リニアイコライザ53、周波数差推定器54、データ再生器56は、デジタル信号プロセッサ等のプロセッサを用いて実現してもよい。
【0045】
実施形態のマルチステージ位相推定装置を使用するデジタルコヒーレント受信機は、デジタルコヒーレント受信機の実装の複雑さおよび位相推定処理のコストを効果的に削減できる。
【0046】
コヒーレント光通信システムは、容量をさらに大きくするために、伝送端で偏波多重を使用することがある。この場合、互いに直交する2つの偏波を利用して情報が送信され、受信側には偏波ダイバーシティコヒーレント光受信機が適用される。そして、この実施形態のマルチステージ位相推定装置は、偏波ダイバーシティを利用するデジタルコヒーレント受信機にも適用可能である。
【0047】
図6は、実施形態の偏波ダイバーシティデジタルコヒーレント受信機の構成を示す図である。図6に示すように、偏波ダイバーシティデジタルコヒーレント受信機は、受信機光/電気フロントエンド61、第1のA/Dコンバータ621、第2のA/Dコンバータ622、リニアイコライザ63、第1の周波数差推定器641、第2の周波数差推定器642、第1の位相推定器651、第2の位相推定器652、第1のデータ再生器661、第2のデータ再生器662を有する。
【0048】
受信機光/電気フロントエンド61、第1のA/Dコンバータ621、第2のA/Dコンバータ622、リニアイコライザ63、第1の周波数差推定器641、第2の周波数差推定器642、第1のデータ再生器661、第2のデータ再生器662は、既存の偏波ダイバーシティデジタルコヒーレント受信機に設けられている構成および機能と同等であり、説明を省略する。ここで、この実施形態では、図6に示すように、リニアイコライザ63は、バタフライ構成のFIR(Finite Impulse Response)リニアイコライザを用いて実現される。
【0049】
第1の位相推定器651および第2の位相推定器652は、それぞれ、実施形態のマルチステージ位相推定装置により実現される。実施形態のマルチステージ位相推定装置の構成および機能については、上述した通りなので、説明を省略する。なお、リニアイコライザ63、第1の周波数差推定器641、第2の周波数差推定器642、第1の位相推定器651、第2の位相推定器652、第1のデータ再生器661、第2のデータ再生器662は、デジタル信号プロセッサ等のプロセッサを用いて実現してもよい。
【0050】
実施形態のマルチステージ位相推定装置を使用する偏波ダイバーシティデジタルコヒーレント受信機は、デジタルコヒーレント受信機の実装の複雑さおよび位相推定処理のコストを効果的に削減できる。
【0051】
図7は、実施形態に係るコヒーレント受信機を使用する光通信システムの構成を示す図である。図7に示すように、この実施形態の光通信システムは、光送信機71、光ファイバリンク76、光コヒーレント受信機75を有する。光ファイバリンク76は、この実施例では、ネットワークの交換ノード72、光ファイバ73、光アンプ74を有する。光コヒーレント受信機75は、図5に示すデジタルコヒーレント受信機または図6に示す偏波ダイバーシティデジタルコヒーレント受信機によって実現される。光送信機71、光ファイバリンク76、および他の関連するデバイスは、既存の公知の技術で実現されるので、説明を省略する。
【0052】
この実施形態の光通信システムによれば、上述した実施形態のデジタルコヒーレント受信機または偏波ダイバーシティデジタルコヒーレント受信機の実装の複雑さおよび位相推定処理のコストを効果的に削減できる。
【0053】
図8は、実施形態のマルチステージ位相推定方法を示すフローチャートである。この方法は、図8に示すように、ステップ801を含む。
ステップ801においては、マルチステージ位相推定構成を用いて、入力信号に対して位相推定を実行する。ここで、前段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長は、後続するステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長よりも長い。
【0054】
好ましい実施形態としては、位相推定構成の各ステージは、ブラインド位相サーチ(BPS:Blind Phase Search)アルゴリズムを使用する。BPSアルゴリズムについては上述したので、説明を省略する。
【0055】
他の好ましい実施形態としては、マルチステージ位相推定構成において、最終ステージの平均時間ウィンドウ長の最適値は、単一ステージ位相推定構成のみが使用される場合における平均時間ウィンドウ長の最適値と同じまたはほぼ同じである。
【0056】
さらに他の好ましい実施形態としては、位相推定構成の各ステージにおけるサーチ位相角の数の積と、単一ステージ位相推定構成において必要とされるサーチ位相角の総数との差分の絶対値が最小である。また、位相推定構成の各ステージにおけるサーチ位相角の数の和が最小である。
【0057】
この実施形態のマルチステージ位相推定方法は、上述した実施形態のマルチステージ位相推定装置に適用可能であり、この方法のステップおよび各特徴についての記載は、上述した実施形態のマルチステージ位相推定装置の対応する記載と同等であり、その内容をここに取り込むものとして説明を省略する。
【0058】
この実施形態のマルチステージ位相推定方法によれば、各ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長が互いに同じであるという制限は取り除かれ、ステージ毎に互いに同一でない平均時間ウィンドウ長が使用される。このため、レーザ位相雑音耐力を保証しながらパターン効果の問題が解決され、さらに位相推定を実装する際の複雑さ(或いは、位相推定のための処理または構成の複雑さ)が低くなる。したがって、このマルチステージ位相推定方法をデジタルコヒーレント受信機または偏波ダイバーシティデジタルコヒーレント受信機に適用すれば、位相推定のための処理のコストおよび実装の複雑さが削減される。
【0059】
本発明に係る装置および方法は、ハードウェアで実現してもよいし、ハードウェアとソフトウェアとの組合せで実現してもよい。また、本発明は、論理コンポーネントにより実行されたときに、その論理コンポーネントに上述の装置またはその一部を実現させる、或いはその論理コンポーネントに上述の方法またはステップを実現させる、コンピュータ読み取り可能プログラムに係わる。さらに、本発明は、上述のプログラムを格納する格納媒体にも係わる。格納媒体は、例えば、ハードディスク、フレキシブルディスク、コンパクトディスク、DVD、フラッシュメモリ等である。
【0060】
以上、本発明の実施形態について、本発明の原理が適用される態様を示しながら、明細書において図面を参照して詳しく説明した。ただし、本発明の実施形態は上述の記載に限定されるものではない。すなわち、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に記載の精神および用語の範囲内での様々な変更、変形、および均等な構成および方法を含む。
【0061】
ある実施形態について記載または示された特徴は、1または複数の他の実施形態において同じまたは類似の方法で使用してもよい。また、ある実施形態について記載または示された特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせて、或いは他の実施形態の特徴と置き換えて使用してもよい。
【0062】
「有する/有している/含む/含んでいる」という語は、この明細書で使用されるときは、特徴、全体、ステップ、部品などが存在することを意味し、他の特徴、全体、ステップ、部品、またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。
【0063】
本発明について、幾つかの実施形態を参照しながら記載した。ただし、実施形態の記載は、例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。当業者であれば様々なバリエーションおよび/または変形が可能であり、そのようなバリエーションおよび変形も本発明の範囲に属するものである。
【0064】
以上記載した各実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
マルチステージ位相推定構成を有するマルチステージ位相推定装置であって、
各ステージの位相推定構成は、
それぞれが入力信号および初期位相角または前段ステージで得られるサーチ位相角に基づいて距離メトリックおよびサーチ位相角を計算する、当該ステージのサーチ位相角の数と同数の複数のメトリック計算モジュールと、
当該ステージの位相推定結果として、前記複数のメトリック計算モジュールの計算結果に基づいて、最小の距離メトリックに対応するサーチ位相角を選択する選択モジュールと、を有し、
前段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長は、後続するステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長よりも長い
ことを特徴とするマルチステージ位相推定装置。
(付記2)
formerが前段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長を表し、Llatterが後段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長を表すときに、2Llatter<Lformer<3Llatterである
ことを特徴とする付記1に記載のマルチステージ位相推定装置。
(付記3)
formerは、Llatterの2.3〜2.6倍である
ことを特徴とする付記2に記載のマルチステージ位相推定装置。
(付記4)
各ステージの位相推定構成は、ブラインド位相推定アルゴリズムを使用する
ことを特徴とする付記1に記載のマルチステージ位相推定装置。
(付記5)
最終ステージの平均時間ウィンドウ長の最適値は、単一ステージ位相推定構成のみが使用される場合における平均時間ウィンドウ長の最適値と同じまたはほぼ同じである
ことを特徴とする付記4に記載のマルチステージ位相推定装置。
(付記6)
位相推定構成の各ステージにおけるサーチ位相角の数の積と、単一ステージ位相推定構成において必要とされるサーチ位相角の総数との差分の絶対値が最小であり、且つ、位相推定構成の各ステージにおけるサーチ位相角の数の和が最小である
ことを特徴とする付記5に記載のマルチステージ位相推定装置。
(付記7)
付記1〜6のいずれか1つに記載のマルチステージ位相推定装置を有するデジタルコヒーレント受信機。
(付記8)
信号を受信する受信機光/電気フロントエンドデバイスと、
前記受信機光/電気フロントエンドデバイスにより受信された信号に対してアナログ/デジタル変換を行うA/Dコンバータと、
前記A/Dコンバータにより得られる信号に対してリニアな等化を行うリニアイコライザと、
前記リニアイコライザにより得られる信号の周波数差を推定して、前記マルチステージ位相推定装置に提供する周波数差推定器と、
前記マルチステージ位相推定装置により得られる信号のデータを再生するデータ再生器と、をさらに有する
ことを特徴とする付記7に記載のデジタルコヒーレント受信機。
(付記9)
付記1〜6のいずれか1つに記載のマルチステージ位相推定装置を2つ有する偏波ダイバーシティデジタルコヒーレント受信機。
(付記10)
信号を受信する受信機光/電気フロントエンドデバイスと、
前記受信機光/電気フロントエンドデバイスにより受信されたh偏波方向の信号に対してアナログ/デジタル変換を行う第1のA/Dコンバータと、
前記受信機光/電気フロントエンドデバイスにより受信されたv偏波方向の信号に対してアナログ/デジタル変換を行う第2のA/Dコンバータと、
前記第1のA/Dコンバータにより得られるh偏波方向の信号および前記第2のA/Dコンバータにより得られるv偏波方向の信号に対してリニアな等化を行うデジタルフィルタと、
前記デジタルフィルタにより得られるh偏波方向の信号の周波数差を推定して、一方のマルチステージ位相推定装置に提供する第1の周波数差推定器と、
前記デジタルフィルタにより得られるv偏波方向の信号の周波数差を推定して、他方のマルチステージ位相推定装置に提供する第2の周波数差推定器と、
前記一方のマルチステージ位相推定装置により得られる信号のデータを再生する第1のデータ再生器と、
前記他方のマルチステージ位相推定装置により得られる信号のデータを再生する第2のデータ再生器と、をさらに有する
ことを特徴とする付記9に記載の偏波ダイバーシティデジタルコヒーレント受信機。
(付記11)
付記7に記載のデジタルコヒーレント受信機または付記9に記載の偏波ダイバーシティデジタルコヒーレント受信機を有する光通信システム。
(付記12)
マルチステージ位相推定構成を用いて入力信号に対して位相推定を実行するステップを有し、
前段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長は、後続するステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長よりも長い
ことを特徴とするマルチステージ位相推定方法。
(付記13)
formerが前段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長を表し、Llatterが後段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長を表すときに、2Llatter<Lformer<3Llatterである
ことを特徴とする付記12に記載のマルチステージ位相推定方法。
(付記14)
formerは、Llatterの2.3〜2.6倍である
ことを特徴とする付記13に記載のマルチステージ位相推定方法。
(付記15)
各ステージの位相推定構成は、ブラインド位相推定アルゴリズムを使用する
ことを特徴とする付記12に記載のマルチステージ位相推定方法。
(付記16)
最終ステージの平均時間ウィンドウ長の最適値は、単一ステージ位相推定構成のみが使用される場合における平均時間ウィンドウ長の最適値と同じまたはほぼ同じである
ことを特徴とする付記15に記載のマルチステージ位相推定方法。
(付記17)
位相推定構成の各ステージにおけるサーチ位相角の数の積と、単一ステージ位相推定構成において必要とされるサーチ位相角の総数との差分の絶対値が最小であり、且つ、位相推定構成の各ステージにおけるサーチ位相角の数の和が最小である
ことを特徴とする付記16に記載のマルチステージ位相推定方法。
【符号の説明】
【0065】
11 位相推定構成
111 メトリック計算モジュール
112 選択モジュール
21 第1ステージ位相推定構成
22 第2ステージ位相推定構成
51 受信機光/電気フロントエンド
52 A/Dコンバータ
53 リニアイコライザ
54 周波数差推定器
55 位相推定器
56 データ再生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチステージ位相推定構成を有するマルチステージ位相推定装置であって、
各ステージの位相推定構成は、
それぞれが入力信号および初期位相角または前段ステージで得られるサーチ位相角に基づいて距離メトリックおよびサーチ位相角を計算する、当該ステージのサーチ位相角の数と同数の複数のメトリック計算モジュールと、
当該ステージの位相推定結果として、前記複数のメトリック計算モジュールの計算結果に基づいて、最小の距離メトリックに対応するサーチ位相角を選択する選択モジュールと、を有し、
前段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長は、後続するステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長よりも長い
ことを特徴とするマルチステージ位相推定装置。
【請求項2】
formerが前段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長を表し、Llatterが後段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長を表すときに、2Llatter<Lformer<3Llatterである
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチステージ位相推定装置。
【請求項3】
formerは、Llatterの2.3〜2.6倍である
ことを特徴とする請求項2に記載のマルチステージ位相推定装置。
【請求項4】
各ステージの位相推定構成は、ブラインド位相推定アルゴリズムを使用する
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチステージ位相推定装置。
【請求項5】
最終ステージの平均時間ウィンドウ長の最適値は、単一ステージ位相推定構成のみが使用される場合における平均時間ウィンドウ長の最適値と同じまたはほぼ同じである
ことを特徴とする請求項4に記載のマルチステージ位相推定装置。
【請求項6】
位相推定構成の各ステージにおけるサーチ位相角の数の積と、単一ステージ位相推定構成において必要とされるサーチ位相角の総数との差分の絶対値が最小であり、且つ、位相推定構成の各ステージにおけるサーチ位相角の数の和が最小である
ことを特徴とする請求項5に記載のマルチステージ位相推定装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のマルチステージ位相推定装置を有するデジタルコヒーレント受信機。
【請求項8】
マルチステージ位相推定構成を用いて入力信号に対して位相推定を実行するステップを有し、
前段ステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長は、後続するステージの位相推定構成の平均時間ウィンドウ長よりも長い
ことを特徴とするマルチステージ位相推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−227908(P2012−227908A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−273991(P2011−273991)
【出願日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】