説明

位相比較器及びその位相比較器を用いたクロック・リカバリ回路

【課題】
クロックによりサンプリングされた受信データ間のゼロクロス点の位相を高精度で検出することが可能な位相検出器を提供することである。
【解決手段】
第1受信データの第1データ値及び第2受信データの第2データ値に対応した論理を備える判別信号を発生するタイミング判別器と、第1受信データのサンプリング時刻及び第1データ値と、第2受信データのサンプリング時刻及び第2データ値とから補間計算により求めらる、第1ゼロクロス時刻とクロックとの位相関係に関する第1位相情報を抽出する第1ゼロクロス抽出器と、第1データ値及び第1受信データのサンプリング時刻に基づいて、単位時間当たりのデータ値の増分を用いて求められた、第2ゼロクロス時刻とクロックとの位相関係に関する第2位相情報を抽出する第2ゼロクロス抽出器と、判別信号の論理に対応して、第1位相情報又は第2位相情報の内の一方を選択するセレクタと、を備える位相比較器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
受信データがゼロ点と交差する時点(ゼロクロス点)のサンプリングクロックに対する位相情報を検出する位相比較器、及び、その位相比較器を用いたクロック・リカバリ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
受信器に使用されるクロック・データリカバリ回路は、受信器内部で発生した内部クロックにより、受信データ信号をサンプリングし、受信データ信号のエッジに同期させた復元クロックにより、受信データを出力する回路である。
クロック・データリカバリ回路は、ADC(Analog DigitalConverter)回路、逆多重器、位相比較器、データ判定器、フィルタ、位相補間器、FIFO(First infirst out)から構成されている。
従って、クロック・データリカバリ回路において、受信データ信号のエッジに復元クロックを精度よく同期させるには、位相比較器において、受信データ信号のエッジの位相と内部クロック(サンプリングクロック)の位相の比較を精度よく行う必要がある。復元クロックは、内部クロックから、位相の調整を行って発生させるクロックだからである。
【0003】
そこで、いわゆる、ゼロクロス点を利用した、位相誤差算出方法を実行する回路が提案されている(特許文献1:WO2005/027122参照。)。
上記の位相誤差算出方法においては、以下のステップを備える。第1ステップは内部クロックによりサンプリングした複数の受信データの内、符号が異なる連続した2つの受信データを検出するステップである。次いで、第2ステップはその2つの受信データ間において、受信データが負値から正値へ変化した時点又は正値から負値へ変化した時点(ゼロクロス点)を検出するステップである。第3ステップはそのゼロクロス点を基準に、位相誤差を算出するステップである。
【0004】
上記においては、サンプリングした2個の受信データから補間によってゼロクロス点を求めることになる。
【0005】
しかし、一方の受信データがゼロレベルに近接している場合、ゼロクロス点を求めるための受信データ双方が、同一のデータ値の立ち上がり状態、又は、立ち下がり状態にあるとは限らない。例えば、クロックに同期して行われるサンプリングの間隔が、受信データ信号の周期の半分程度であると、先のサンプリングが、立ち上がり期間に行われても、後のサンプリングは半周期後のデータ値の立ち下がり状態のときに行われるようになるからである。
その結果、サンプリングされた2個の受信データを用いて補間によって求められるゼロクロス点は、実際のゼロクロス点からは離れたものとなる。後のサンプリングにより得られた受信データの影響により、補間によって求められるゼロクロス点は、後のサンプリングにより得られる受信データ側に位置することになるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開公報WO2005/027122パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、内部クロックによりサンプリングされた受信データ間のゼロクロス点の位相情報を高精度に抽出することが可能な位相検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1受信データの第1データ値及び第2受信データの第2データ値に対応した論理を備える判別信号を発生するタイミング判別器と、
第1受信データのサンプリング時刻及び第1データ値と、第2受信データのサンプリング時刻及び第2データ値とから補間計算により求めらる、データ値がゼロレベルとなる第1ゼロクロス時刻とサンプリングクロックの立ち上がりとの位相に関する第1位相情報を抽出する第1ゼロクロス抽出器と、
第1データ値及び第1受信データのサンプリング時刻に基づいて、単位時間当たりのデータ値の増分を用いて求められた、データ値がゼロレベルとなる第2ゼロクロス時刻とサンプリングクロックの立ち上がりとの位相に関する第2位相情報を抽出する第2ゼロクロス抽出器と、
判別信号の論理に対応して、第1位相情報又は第2位相情報の内の一方を選択するセレクタと、を備える位相比較器。
【発明の効果】
【0009】
内部クロックによりサンプリングされた受信データ間のゼロクロス点の位相情報を高精度に抽出することが可能な位相検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は実施例1のクロック・データリカバリ回路10を示す図である。
【図2】図2は実施例1の位相比較器40を示す。
【図3】図3は、実施例1の位相比較器40の動作を説明するフローチャートである。
【図4】図4A、Bは、タイミング判別器41及び判別信号の論理を決定するパラメータについて説明する図である。
【図5】図5はゼロクロス抽出器42を示す図である。
【図6】図6は、ゼロクロス位相情報選択器424の原理を示す図である。
【図7】図7A、Bは、傾き利用のゼロクロス抽出器44を示す図である。
【図8】図8は、傾き利用のゼロクロス位相情報選択器44の原理を示す図である。
【図9】図9は、実施例2の位相比較器60を示す。
【図10】図10A、Bはタイミング判別器61及び判別信号の論理を決定するパラメータについて説明する図である。
【図11】図11は実施例2のゼロクロス抽出器62を示す。
【図12】図12は実施例3の位相比較器80を示す図である。
【図13】図13はゼロクロス抽出器81の詳細について説明する図である。
【図14】図14は、ゼロクロス抽出回路81の動作原理について説明する図である。
【図15】図15は実施例4のゼロクロス抽出器101について説明する図である。
【図16】図16は、実施例4の論理判定回路105を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、以下に説明する実施例に対し、当業者が想到可能な、設計上の変更が加えられたもの、及び、実施例に現れた構成要素の組み換えが行われたものも含む。また、本発明は、その構成要素が同一の作用効果を及ぼす他の構成要素へ置き換えられたもの等も含み、以下の実施例に限定されない。
【実施例1】
【0012】
図1は実施例1のクロック・データリカバリ回路10を示す図である。クロック・データリカバリ回路10はADC(Analog Digital Converter)1、2、DMX(Demux)回路3、位相比較器40、データ判定器5、フィルタ6、FIFO(First in first out)7、位相補間回路8を備える。
ADC1、2は、アナログ信号からなる受信データを内部クロックに応じて、サンプリングして、デジタル信号に変換する回路である。なお、ADC1とADC2とは、内部クロック(サンプリングクロック)の立ち上がり又は立ち下がりに応じて、交互に動作する。
DMX回路3は、ADC1、2から出力されるデジタル信号からなる受信データをビット幅を広げて多重化して、基本周期が長いデジタル信号からなる受信データに変換する回路である。
位相比較器40は、DMX回路3から出力される複数の連続してサンプリングされた、デジタル化した受信データから1次補間により求めた受信データがゼロレベルと交差するゼロクロス点のゼロクロス位相情報46、及び、そのゼロクロス点に対するゼロクロスベクトルphiを生成する回路である。ここで、ゼロクロスベクトルPhiとは、交差点の時間座標から、サンプリングされた第1の受信データの時間座標の差分をとったものである。
ゼロクロス位相情報46とは、サンプルクロックの論理の立ち上がりから立ち下がりまでの間の位相が0から1/8までの第1範囲、1/8から1/4までの第2範囲、1/4から3/8までの第3範囲、3/8から1/2までの第4範囲に分割されたときに、ゼロクロス点の時間座標がどの範囲の位相に属しているかを示す2進数である。図2、3、4A、4B、5、6、及び7を用いて、位相比較器40の詳細動作を説明する。
【0013】
フィルタ回路6は、ゼロクロス位相情報46及びゼロクロスベクトルphiを受け、過去のゼロクロス位相情報及びゼロクロスベクトルphiをN個分記憶し、N個のゼロクロス位相情報及びゼロクロスベクトルPhiを加算した後、Nで除して、平均化したゼロクロス位相情報及び平均ベクトルph0を求める回路である。
データ判定器5は、位相比較器40から出力される、ゼロクロス位相情報46及びゼロクロスベクトルphiと、フィルタ6から出力される過去のゼロクロスベクトルPhiの平均ベクトルph0、平均化したゼロクロス位相情報を用いて、複数の連続した、デジタル化した受信データから、ゼロクロス点に対して一定の位相関係にある受信データを選択し、FIFO7に出力する回路である。
そこで、上記の受信データの選択は以下のように行う。まず、サンプリングされた受信データについてのゼロクロス位相情報46を取得した結果、ゼロクロス点が属する位相範囲を特定する。次いで、ゼロクロス点の位相範囲が0から1/8の範囲、或いは、1/8から1/4の範囲であるときには、ゼロクロス位相情報46、ゼロクロスベクトルPhi又は平均ベクトルPh0に1/2位相加算した位置にデータ中心があるとする。一方、ゼロクロス点の位相範囲が1/4から3/4の範囲、或いは、3/4から1/2の範囲であるときには、ゼロクロス位相情報46、ゼロクロスベクトルPhi又は平均ベクトルPh0に1/2位相減算した位置に受信データの中心があるとする。次いで、データ判定器5は、受信データの中心に近い時間座標を有するサンプリングされた受信データを、選択する。次いで、データ判定器5はFIFO7に向けて、選択した受信データを出力する。
位相補間回路8は、内部クロック(サンプリングクロック)を受け、フィルタ6からの出力された平均ベクトルph0に応じて、内部クロックの位相を調整し、復元クロックを発生させる回路である。
FIFO7は、データ判定器5から内部クロックに応じて出力される受信データを受け、受信データを復元クロックにより、復元した受信データとして出力する回路である。すなわち、FIFO7は、受信データを内部クロックから復元クロックに同期させるようにリタイミングする回路である。
【0014】
図2は実施例1の位相比較器40を示す。位相比較器40は、タイミング判別器41、ゼロクロス抽出器42、傾き利用のゼロクロス抽出器44、セレクタ47から構成されている。
サンプリングした受信データは、その受信データのサンプリング時刻Tと、データ値Sとで表される。
【0015】
タイミング判別器41は、連続する2個のサンプリングした受信データのデータ値S、Sと、与えられた閾値Vthとの関係に応じた論理を備える判別信号を、出力する回路である。タイミング判別器41の動作の詳細は、図4A、4Bで詳細に説明する。
【0016】
ゼロクロス抽出器42は、連続する2個のサンプリングした受信データから線型補間によって求められた第1ゼロクロスデータに関して、2個の受信データのデータ値S及びSとから、第1ゼロクロス位相情報431を生成する回路である。後に、図5、図6により詳細に説明する。
【0017】
傾き利用のゼロクロス抽出器44は、連続する2個のサンプリングした受信データ内、データ値が小さい受信データを起点とする直線であって、過去の連続するサンプリングした受信データから得られた、データ値の増分と時刻の増分の割合を備える直線を用いて求められた第2ゼロクロスデータについて、過去の複数の受信データのデータ値Sの平均及び複数のデータ値Sの平均とから、第2ゼロクロス位相情報452を生成する回路である。後に、図7、図8により詳細に説明する。
【0018】
セレクタ47は、タイミング判別器41からの判別信号45の論理が論理”H”であるときに、ゼロクロス抽出器42からの第1のゼロクロス位相情報431をゼロクロス位相情報として選択し、タイミング判別器41からの判別信号45の論理が論理”L”であるときに、傾き利用のゼロクロス抽出器44からの第2のゼロクロス位相情報452を選択し、ゼロクロス位相情報46として選択する。
【0019】
図3は、実施例1の位相比較器40の動作を説明するフローチャートである。
op10:位相比較器40はDMX回路3から3個の受信データを受け取る。そして、3個の受信データの中から、任意の2個の受信データを選択する。
op20:タイミング判別器41は、選択した任意の2個の受信データのデータ値S、Sの積、すなわち、S×Sが0未満(S×S<0)であるかを判断する。S×S<0である場合、受信データの遷移があると判断し、op40へ進む。しかし、S×S<0でない場合、受信データの遷移がないと判断し、op30へ進む。
【0020】
op30:位相比較器40は、op20で扱った受信データとは異なる、他の2個の受信データを選択し、op20へ進む。
op40:タイミング判別器41は、与えられた閾値Vthと、受信データのデータ値S、Sの絶対値それぞれと、大小比較を行う。その結果、データ値S、Sの絶対値がともに閾値Vthより大きい場合、2個の受信データがともにデータの遷移上に存在すると判断し、その後、op50へ進む。
一方、データ値S、Sの絶対値のいずれかが閾値Vthより小さい場合、1個の受信データのみがデータの遷移上に存在すると判断する。なお、データの遷移上に存在する受信データは、データ値が小さい受信データであるとする。その後、op60へ進む。
【0021】
op50:タイミング判別器41は論理”H”の判別信号45をセレクタ47に出力し、op70へ進む。
op60:タイミング判別器41は論理”L”の判別信号45をセレクタ47に出力し、op70へ進む。
【0022】
op70:ゼロクロス抽出器42が第1のゼロクロス位相情報を生成する。その後、op80へ進む。
op80:セレクタ47は、タイミング判別器41から出力される判別信号45の論理が”H”の場合、第1のゼロクロス位相情報をゼロクロス位相情報として出力し、判別信号45の論理が”L”の場合、第2のゼロクロス位相情報をゼロクロス位相情報として出力する。
【0023】
図4A、Bは、タイミング判別器41及び判別信号45の論理を決定するパラメータについて説明する図である。
図4Aはタイミング判別器41を説明する図である。タイミング判別器41は、連続した2個の受信データ50のデータ値S及びSと、予め与えられた閾値Vthとの関係に応じて、以下の論理を有する判別信号54を出力する回路である。
とSの積(S×S)が0未満であり、且つ、Sの絶対値及びSの絶対値がともに予め与えられた閾値Vth以上であるときは、判定信号の論理は論理”H”である。
とSの積(S×S)が0未満であり、且つ、Sの絶対値又はSの絶対値の内、いずれかが、予め与えられた閾値Vth以下であるときは、判定信号の論理は論理”L”である。
【0024】
図4Bは、判別信号45の論理を決定するパラメータについて説明する図である。すなわち、図4Bは、縦軸にデータ値を表す軸、横軸に点線で表された時間軸を示す図である。判別信号45の論理を決定するパラメータは、(t、S)により表されるサンプリングされた受信データ51、(t、S)により表されるサンプリングされた受信データ52、閾値Vth、閾値−Vthである。
(t、S)により表されるサンプリングされた受信データ51は、受信信号dataを時刻t1にサンプリングすると、データ値はSであることを示す。
(t、S)により表されるサンプリングされた受信データ52は、受信信号dataを時刻tにサンプリングすると、データ値はSであることを示す。
閾値Vthは、データ値に対して予め設定された正の一定値である。閾値−Vthは、データ値に対して予め設定された負の一定値である。
また、図4Bには、その他に、(t、S)により表されるサンプリングされた受信データ53、(tx、0)で表されたゼロクロス点、実線かつ曲線で表された受信信号data、点線かつ曲線で表された受信信号の反転信号datax、受信データ51とゼロクロス点との時間座標の差分を表わしたゼロクロスベクトルPhi、データ値の0値上を走る点線が示されている。
(t、S)により表されるサンプリングされた受信データ52は、受信信号dataを時刻t3にサンプリングすると、データ値はS3であることを示す。
(tx、0)で表されたゼロクロス点は、受信データ51と受信データ52とを結ぶ実線の直線と、データ値のゼロレベル上の点線で表された時間軸との交点であり、実際の受信データを表す線と、データ値のゼロレベル上の点線で表された時間軸との交点であると近似される点である。
ゼロクロスベクトルphiは受信データ51がサンプリングされた時刻tから、ゼロクロス点の時刻txとの間で、時間軸上で定義されるベクトルである。ただし、位相比較器40から出力される際は、txとtの差分データとして出力される。
【0025】
図5はゼロクロス抽出器42を示す図である。ゼロクロス抽出器42は、演算器421、423、加算器422、ゼロクロス位相情報選択器424から構成されている。
演算器421は、入力端子425で受けた受信データのデータ値Sの絶対値と、4とを乗算する回路である。
加算器422は、入力端子425、入力端子426から受けた受信データのデータ値Sの絶対値及びデータ値Sの絶対値を加算する回路である。
演算器423は、入力端子426で受けた受信データのデータ値Sの絶対値と、4とを乗算する回路である。
ゼロクロス位相情報選択器424は、データ値S及びデータ値Sに対して、以下の関係式のいずれかが成立する場合に、その関係式に対応する2進数で表現された位相を、ゼロクロス位相情報431として出力する回路である。
関係式1 |S|<|S|かつ 4×|S|<|S|+|S|が成立するときは、2進数(11)で表される位相427をゼロクロス位相情報431として出力する。
関係式2 |S|<|S|かつ 4×|S|>|S|+|S|が成立するときは、2進数(10)で表される位相428をゼロクロス位相情報431として出力する。
関係式3 |S|<|S|かつ 4×|S|>|S|+|S|が成立するときは、2進数(01)で表される位相429をゼロクロス位相情報431として出力する。
関係式4 |S|<|S|かつ 4×|S|<|S|+|S|が成立するときは、2進数(00)で表される位相430をゼロクロス位相情報431として出力する。
入力端子425は、ゼロクロス位相情報選択器424、乗算器421、加算器422に接続する。入力端子426は、ゼロクロス位相情報選択器424、乗算器423、加算器422に接続する。
【0026】
図6は、ゼロクロス位相情報選択器424の原理を示す図である。図6において、横軸は受信データをサンプリングするクロックにおける位相を表す。一方、縦軸は、サンプリングされた受信データのデータ値を表す。なお、クロックの1周期分を位相1としたとすると、受信信号のクロックによるサンプリングは、クロックの立ち上がり及び立ち下がりで行われるため、連続する2個の受信データの時間間隔は、クロックの1/2位相に相当する。
【0027】
上記の関係式1を満たし、Sが負の数値であるときは、受信データ51と受信データ52を結ぶ線は、図6の(1)の右上がりの菱形領域に含まれる。従って、(tx、0)で表されたゼロクロス点の位相は位相3/8から位相1/2までの範囲内にある。ここで、ゼロクロス点の位相が位相3/8から位相1/2までの範囲内にある場合に、その位相を2進数(11)で表さすこととしたため、ゼロクロス位相情報選択器424はゼロクロス位相情報431として位相427を出力する。
上記の関係式2を満たし、Sが負の数値であるときは、受信データ51と受信データ52を結ぶ線は、図6の(2)の菱形領域に含まれる。従って、(tx、0)で表されたゼロクロス点の位相は位相1/4から位相3/8までの範囲内にある。そうすると、上記と同様に、ゼロクロス位相情報選択器424は2進数(10)で表されるゼロクロス位相情報431を出力する。
上記の関係式3を満たし、Sが負の数値であるときは、受信データ51と受信データ52を結ぶ線は、図6の(3)の菱形領域に含まれる。従って、(tx、0)で表されたゼロクロス点の位相は位相1/8から位相1/4までの範囲内にある。そうすると、上記と同様に、ゼロクロス位相情報選択器424は2進数(01)で表されるゼロクロス位相情報431を出力する。
上記の関係式4を満たし、Sが負の数値であるときは、受信データ51と受信データ52を結ぶ線は、図6の(4)の菱形領域に含まれる。従って、(tx、0)で表されたゼロクロス点の位相は位相0から位相1/8までの範囲内にある。そうすると、上記と同様に、ゼロクロス位相情報選択器424は2進数(00)で表されるゼロクロス位相情報431を出力する。
なお、上記では、Sが負の数値であるときについて記載したが、Sが正の数値であるときには、受信データ51と受信データ52を結ぶ線は、図6の(1)、(2)、(3)、(4)に示す菱形領域とゼロレべルに対して線対象な菱形領域に含まれる。その結果、Sが正の数値であっても、関係式1、2、3、4に対応してゼロクロス位相情報431は(11)、(10)、(01)、(00)で表されるゼロクロス位相情報431を出力する。
すなわち、ゼロクロス位相情報選択器424は、連続する2個の受信データのデータ値に応じて、ゼロクロス点の位相に関するゼロクロス位相情報431を出力する。
【0028】
図7A、Bは、傾き利用のゼロクロス抽出器44を示す図である。図7Aで示す傾き利用のゼロクロス抽出器44は、演算器441、443、平均値生成器442、ゼロクロス位相情報選択器444から構成されている。
演算器441は入力端子445で受けた受信データのデータ値Sの絶対値と、4とを乗算する回路である。
演算器443は入力端子447で受けた受信データのデータ値Sの絶対値と、4とを乗算する回路である。
平均値生成器442は、受信データ51及び受信データ52のサンプリングが行われる以前にサンプリングした受信データを、受信データ51を受ける端子、及び、受信データ52を受ける端子それぞれに対応して、複数個保持している。そして、端子毎に過去に取得した受信データの平均値M1、M2を保持している。そして、判別信号54を受け、判別信号54の論理が”L”のときに動作を行い、平均値M1、M2、データ値Sの絶対値、データ値Sの絶対値から、図7Bで示す式で表される(|S|+|S|)AVGを求める演算を行う。なお、平均値生成器442の論理回路例を、図7Bで示す。
ゼロクロス位相情報選択器444は、データ値S及びデータ値Sに対して、以下の関係式のいずれかが成立する場合に、その関係式に対応する2進数で表現された位相を、ゼロクロス位相情報452として出力する回路である。
関係式5 |S|<|S|かつ 4×|S|<(|S|+|S|)AVGが成立するときは、2進数(11)で表される位相448をゼロクロス位相情報452として出力する。
関係式6 |S|<|S|かつ 4×|S|>(|S|+|S|)AVGが成立するときは、2進数(10)で表される位相449をゼロクロス位相情報452として出力する。
関係式7 |S|<|S|かつ 4×|S|>(|S|+|S|)AVGが成立するときは、2進数(01)で表される位相450をゼロクロス位相情報452として出力する。
関係式8 |S|<|S|かつ 4×|S|<(|S|+|S|)AVGが成立するときは、2進数(00)で表される位相451をゼロクロス位相情報452として出力する。
【0029】
図7Bは、平均値生成器442の論理図を示す。平均値演算部442は、加算器455、信号ゲート457、記憶回路456、演算器457、スイッチ458から構成されている。
平均値生成器442は、データ値Sとデータ値Sとを受け、データ値Sの絶対値とデータ値Sの絶対値との加算演算をおこなって、その加算値(|S|+|S|)(以下、S加算という)を形成する加算部455と、データ値Sとデータ値S以前に受け取ったデータ値であって、端子445から受けたデータ値Sの過去データに対応する平均値M1、端子445から受けたデータ値Sの過去データに対応する平均値M2、それぞれを記憶する記憶回路456と、下記の関係式9に沿った演算を行う演算器457と、加算部455と演算器457の結果の内どちらを出力するかを判別信号54の論理によって選択するスイッチ458を備える回路である。すなわち、平均値生成器442は下記のような演算値を出力する。
判別信号の論理”H”の場合、(|S|+|S|)AVG=(|S|+|S|)
判別信号の論理”L”の場合、(|S|+|S|)AVG
=K1×K2×M/(s+K1×s+K1×K2)
――――――関係式9
ここで、K1及びK2は、予め決められた定数である。また、sはサンプリングクロックの周波数である。Mは平均値M1と平均値M2の加算値である。
【0030】
図8は、傾き利用のゼロクロス抽出器44の原理を示す図である。図8において、横軸は受信データをサンプリングするクロックにおける位相を表す。一方、縦軸は、サンプリングされた受信データのデータ値を表す。なお、クロックの1周期分を位相1としたとすると、受信信号のクロックによるサンプリングは、クロックの立ち上がり及び立ち下がりで行われるため、連続する2個の受信データの時間間隔は、クロックの1/2位相に相当する。図8において、実線は実際の受信データである。また、一点鎖線は受信データ51及び受信データ52を結ぶ一点鎖線である。さらに、点線は、受信データ51を起点とした直線であって、過去にサンプリングした受信データから求めた単位時間あたりのデータ値の増分から求めた傾きを備える直線を表す。なお、過去にサンプリングした受信データから求めた単位時間あたりのデータ値の増分(|M1|+|M2|)/(T2−T1)により求められる。ここで、M1、M2は平均値生成器442に蓄積されたデータ値の平均値であり、T1、T2はそれぞれ、端子445、端子447から取り込まれた受信データのサンプリング時刻の平均値である。
なお、受信データ51と受信データ52とを結ぶ直線(一点鎖線)と、データ値がゼロレベルであることを示す線との交点の時間座標と、上記のゼロクロス点の時間座標を比較すると、上記のゼロクロス点の時間座標のほうが、実際の受信データ(実線)と、データ値がゼロレベルであることを示す線との交点の時間座標に近接していることが図8よりわかる。ゼロレベルに近い方の受信データ51を起点とし、かつ、過去にサンプリングした受信データから求めた、単位時間あたりのデータの増分から求めた傾きを備える直線を用いてゼロクロス点を求めると、受信データ52のデータ値に影響されることがないからである。
【0031】
上記の関係式5を満たし、Sが負の数値であるときは、受信データ51を一方の起点とする直線であって、過去に連続してサンプリングされた受信データから求めた、単位時間あたりのデータ値の増分から求めた傾きを備える直線は、図8の(1)の菱形領域に入る。
従って、(tx、0)で表されたゼロクロス点の位相は位相0から位相1/8までの範囲内にある。ここで、ゼロクロス点の位相が位相0から位相1/8までの範囲内にある場合に、その位相を2進数(11)で表さすこととしたため、ゼロクロス位相情報選択器444はゼロクロス位相情報452として位相448を出力する。
上記の関係式6を満たし、Sが負の数値であるときは、受信データ51を一方の起点とする直線であって、過去にサンプリングした受信データから求めた、単位時間あたりのデータ値の増分から求めた傾きを備える直線は、図8の(2)の菱形領域に入る。
従って、(tx、0)で表されたゼロクロス点の位相は位相1/8から位相1/4までの範囲内にある。そうすると、上記と同様に、ゼロクロス位相情報選択器444は2進数(10)で表さすゼロクロス位相情報452を出力する。
上記の関係式7を満たし、Sが負の数値であるときは、受信データ51を一方の起点とする直線であって、過去に連続してサンプリングされた受信データから求めた、単位時間あたりのデータ値の増分から求めた傾きを備える直線は、図8の(3)の菱形領域に入る。
従って、(tx、0)で表されたゼロクロス点の位相は位相1/4から位相3/8までの範囲内にある。そうすると、上記と同様に、ゼロクロス位相情報選択器444は2進数(01)で表さすゼロクロス位相情報452を出力する。
上記の関係式8を満たし、Sが負の数値であるときは、受信データ51を一方の起点とする直線であって、過去に連続してサンプリングした受信データから求めた、単位時間あたりのデータ値の増分から求めた傾きを備える直線は、図8の(4)の菱形領域に入る。従って、(tx、0)で表されたゼロクロス点の位相は位相3/8から位相1/2までの範囲内にある。そうすると、上記と同様に、ゼロクロス位相情報選択器444は2進数(00)で表さすゼロクロス位相情報452を出力する。
なお、上記では、Sが負の数値であるときについて記載したが、Sが正の数値であるときには、受信データ51を起点とする線は、図8の(1)、(2)、(3)、(4)に示す菱形領域とゼロレバルに対して線対象な菱形領域に含まれる。その結果、Sが正の数値であっても、関係式1、2、3、4に対応してゼロクロス位相情報452は(11)、(10)、(01)、(00)で表されるゼロクロス位相情報431を出力する。
すなわち、ゼロクロス位相情報選択器444は、連続する2個の受信データから、ゼロクロス点の位相範囲に応じた位相情報、すなわちゼロクロス位相情報452を出力する。
【0032】
以上より、クロックに同期してサンプリングされた第1受信データ及び第2受信データ間のゼロクロス点の位相を検出する実施例1の位相比較器40は、
前記第1受信データの第1データ値及び前記第2受信データの第2データ値に対応した論理を備える判別信号を発生するタイミング判別器(タイミング判別器41)と、
前記第1受信データのサンプリング時刻及び前記第1データ値と、前記第2受信データのサンプリング時刻及び前記第2データ値とから補間計算により求めらる、データ値がゼロとなる第1ゼロクロス時刻とサンプリングクロックの立ち上がりとの位相に関する第1位相情報を抽出する第1ゼロクロス抽出器(ゼロクロス抽出器42)と、
前記第1データ値及び前記第1受信データのサンプリング時刻に基づいて、単位時間当たりのデータ値の増分を用いて求められた、データ値がゼロとなる第2ゼロクロス時刻とサンプリングクロックの立ち上がりと前記第2ゼロクロス時刻との位相に関する第2位相情報を抽出する第2ゼロクロス抽出器(ゼロクロス抽出器44)と、
前記判別信号の論理に対応して、前記第1位相情報又は前記第2位相情報の内の一方を選択するセレクタ(セレクタ47)と、を備える位相比較器である。
なお、上記の第1データ値及び第2データ値に対応した論理は、第1データ値と第1閾値との比較結果及び第2データ値と第2閾値との比較結果とから導き出されることを特徴とする。
そうすると、第1受信データのデータ値の絶対値又は第2受信のデータ値の絶対値の一方が、第1閾値又は第2閾値以下或いは未満である場合は、セレクタ47は第2ゼロクロス抽出器44からの結果を選択する。一方、第1受信データのデータ値の絶対値又は第2受信のデータ値の絶対値の双方が、第1閾値又は第2閾値以上或いは閾値を超えたものである場合は、セレクタ47は第1ゼロクロス抽出器42からの結果を選択する。従って、位相比較器は、より、実際のゼロクロス点に近いゼロクロス点に基づいて、位相情報を抽出することができる。
【0033】
さらに、前記実施例1の位相比較器40において、
前記第1ゼロクロス抽出器は、前記第1データ値の絶対値又は前記第2データ値の絶対値内の小さいほうの値を2倍して得られた結果値と、前記第1データ値の絶対値と前記第2データ値の絶対値の平均値との比較結果に応じて前記第1位相情報を抽出し、
前記第2ゼロクロス抽出器は、前記第1データ値の絶対値又は前記第2データ値の絶対値内の小さいほうの値を2倍して得られた結果値と、前記第1受信データのサンプリング時刻又は前記第2受信データのサンプリング時刻以前にサンプリングされた複数の第3受信データの第3データ値の平均値との比較結果に応じて前記第2位相情報を抽出することを特徴とする。
【0034】
以上より、実施例1のクロック・リカバリ回路10は、
複数の受信データをクロックに同期してサンプリングし、受信データのデータ値をアナログ値からデジタル値に変換するアナログデジタル変換回路と、
前記複数の受信データをサンプリング時刻順に連続して並べるデマックス回路と、
デマックス回路から前記複数の受信データを受け取り、その内の2個の受信データ間のゼロクロス点を抽出し、ゼロクロス点と前記クロックとの位相情報を出力する位相比較器40と、
前記位相情報を受け取り、予め決められた数の前記位相情報を蓄積し、蓄積された前記位相情報から平均値を求めて平均位相情報とするフィルタと、
前記位相情報、及び、平均位相情報と、前記複数の受信データをを受け、位相情報と、平均位相情報とに基づいて、前記複数の受信データの内から一つを選択するデータ判定器と、
前記クロックを受け、前記位相情報又は平均位相情報に応じて、前記クロックの位相を調整して、復元クロックを形成する位相補間回路と、
前記クロックに同期して、前記複数の受信データの内から前記データ判定器が選択した受信データを記憶し、前記復元クロックに基づいて、前記データ判定器が選択した受信データを出力するFIFOと、を備えることを特徴とするクロック・リカバリ回路である。
そうすると、クロック・リカバリ回路は、内部クロックによりサンプリングされた受信データ間のゼロクロス点の位相情報を高精度に抽出する位相比較器を備えるため、ゼロクロス点の位相を高精度に把握することができる。従って、クロック・リカバリ回路は、ゼロクロス点を受信データの境目であるとすると、より精度よく、受信データの境目を把握することができる。従って、クロック・リカバリ回路は、より実際のゼロクロス点に近い、位相比較器により推定されたゼロクロス点に基づいて、受信データの中心の位置を抽出することができ、受信データの中心に近い位置でサンプリングした受信データを復元クロックに同期して出力することができる。
【実施例2】
【0035】
実施例1の位相比較器40は、順次、受け取った3個の受信データの内、任意の連続した2個の受信データを選択し、選択した2個の受信データ間にゼロクロス点があるか否かを特定し、特定したゼロクロス点を間に有する2個の受信データからゼロクス位相情報46を出力する位相比較器40である。
そして、実施例1の位相比較器40のタイミング判別器41に、予め与えられた閾値をもとに、タイミング判定器41が受信データの状態を判断させ、位相比較器40は、その受信データの状態に応じて、傾き利用のデータ抽出器44又はゼロクロス抽出器42を動作させて、ゼロクロス位相情報46を出力している。
しかし、実施例2の位相比較器は、連続した4個の受信データに基づいて、予め与えられた閾値を用いることなく、受信データの状態を判断する位相比較器である。
なお、実施例2の位相比較器60においては、通常のゼロクロス抽出器の一部と、傾き利用のゼロクロス抽出器の一部を共通化して、回路の部品数を削減している。
図9は、実施例2の位相比較器60を示す。位相比較器50はタイミング判別器61、ゼロクロス抽出器62を備える。
タイミング判別器61は、4個の受信データ(第0受信データ(t0、S0)、第1受信データ(t、S)、第2受信データ(t、S)、第3受信データ(t、S))を受け取り、各受信データのデータ値が図10Aの関係式で示される状態にあるとき、その状態に対応する論理を備える判別信号を出力する。図10Aの関係式及びそれに対応する判別信号の論理については、図10Aで後述する。
ゼロクロス抽出器62は、判別信号の論理が論理”L”であるときには、実施例1において説明した傾き利用のゼロクロス抽出器44として動作するが、判別信号の論理が論理”H”であるときには、実施例1において説明したゼロクロス抽出器42として動作する回路である。なお、詳細な回路構成については、図11を用いて説明する。
【0036】
図10A、Bはタイミング判別器61及び判別信号の論理を決定するパラメータについて説明する図である。図10Aに示すタイミング判定器61は、(t、S)で表される受信データ64、(t、S)で表される受信データ65、(t、S)で表される受信データ66、(t3、S3)で表される受信データ67を受けて、受信データ64−67のデータ値それぞれに対して定められた関係に応じて、以下の論理を有する判別信号63を出力する回路である。
条件1(S×Sが0未満であり、かつ、S×Sが0未満であり、かつ、Sの絶対値がSの絶対値より大きい)を満たす、又は、条件2(S×Sが0未満であり、かつ、S×Sが0未満であり、かつ、Sの絶対値よりSの絶対値が大きい)を満たす場合は、判定信号63の論理は論理”L”である。
条件1を満たさず、かつ、条件2を満たさないときに判定信号63の論理は論理”H”である。
「第0受信データのデータ値より、第2受信データのデータ値が大きく、かつ、第1受信データのデータ値より、第3受信データのデータ値が大きい」、という条件により、実施例1における「予め与えられた閾値の絶対値より、第1受信データの受信データと第2受信データのデータ値がともに大きい」という条件と同様な条件を、第1受信データ、第2受信データについて確保している。
そのようにする理由は、データ値0より、第1受信データのデータ値、及び、第2受信データのデータ値の双方が充分に大きな値であることが、通常のゼロクロス抽出器(傾き利用のゼロクロス抽出器ではないゼロクス抽出器)を用いるための条件だからである。
【0037】
図10Bは、判定信号63の論理を決定するパラメータについて説明する図である。図4Bにおいて、縦軸はデータ値を表す軸、横軸は点線で示された時間軸を示す図である。判定信号63の論理を決定するパラメータは(t0、S0)で表される受信データ64、(t、S)で表される受信データ65、(t、S)で表される受信データ66、(t、S)で表される受信データ67であり、実線で表された受信信号dataを時刻t、t、t、tに内部クロックによってサンプリングして得た受信データである。なお、点線の曲線は、受信信号dataに対して反転論理を有する信号である。(tx、0)で表されるゼロクロス点は、受信データ65と受信データ66とを結ぶ実線の直線とデータ値0上の点線で表された時間軸との交点であり、実際の受信データを表す線と、データ値0上の点線で表された時間軸との交点であると推定される点である。
ゼロクロスベクトルphiは受信データ51がサンプリングされた時刻t1から、ゼロクロス点の時刻txとの間で、時間軸上で定義されるベクトルである。ただし、位相比較器60から出力される際は、txとt1の差分データとして出力される。
【0038】
図11は実施例2のゼロクロス抽出器62を示す。ゼロクロス抽出器62は、演算器621、625、加算器622、セレクタ623、平均値生成器624、ゼロクロス位相情報選択器633から構成されている。
演算器621は、入力端子626で受けた受信データのデータ値Sの絶対値と、4とを乗算する回路である。
加算器622は、入力端子628、入力端子628から受けた受信データのデータ値Sの絶対値及びデータ値Sの絶対値を加算する回路である。
演算器625は、入力端子628で受けた受信データのデータ値Sの絶対値と、4とを乗算する回路である。
平均値生成器624は、判別信号63を受け、判別信号63の論理が”L”のときに動作を行い、データ値Sの絶対値、データ値Sの絶対値から、図7Bで示す式で表される(|S|+|S|)AVGを求める演算を行う。なお、平均値生成器624は、平均値生成器442と同様に関係式9の演算を行う機能を有する回路である。
セレクタ623は、判別信号63の論理が”H”であるときには、加算器622の演算結果を選択し、数値Aを表す信号として出力する。一方、セレクタ623は、判別信号63の論理が”L”であるときには、平均値生成器624の演算結果を選択し、数値Aを表す信号として出力する。
ゼロクロス位相情報選択器633は、データ値S及びデータ値Sに対して、以下の関係式のいずれかが成立する場合に、その関係式に対応する2進数で表現された位相を、ゼロクロス位相情報64として出力する回路である。
関係式10 |S|<|S|かつ 4×|S|<Aが成立するときは、2進数(11)で表される位相629をゼロクロス位相情報64として出力する。
関係式11 |S|<|S|かつ 4×|S|>Aが成立するときは、2進数(10)で表される位相630をゼロクロス位相情報64として出力する。
関係式12 |S|<|S|かつ 4×|S|>Aが成立するときは、2進数(01)で表される位相631をゼロクロス位相情報64として出力する。
関係式13 |S|<|S|かつ 4×|S|<Aが成立するときは、2進数(00)で表される位相632をゼロクロス位相情報64として出力する。
入力端子626は、平均値生成器624、乗算器621、加算器622、ゼロクロス位相情報選択器633に接続する。入力端子428は、平均値生成器624、乗算器625、加算器622、ゼロクロス位相情報選択器424に接続する。入力端子627は判別信号63を受け、平均生成器624、セレクタ623に接続する。
【0039】
以上より、実施例2の位相比較器60は、
前記第1受信データの第1データ値及び前記第2受信データの第2データ値に対応した、論理を備える判別信号を発生するタイミング判別器(タイミング判別器61)と、
前記第1データ値と前記第2データ値との平均を求め第1平均値とする第1平均値生成器と、
前記第1受信データのサンプリング時刻又は前記第2受信データのサンプリング時刻以前にサンプリングされた複数の第3受信データの第3データ値の平均を求め第2平均値とする第2平均値生成器と、
前記判別信号の論理に応じて、第1平均値又は第2平均値を選択するセレクト回路と、
前記セレクト回路から第1平均値が出力されたときは、前記第1受信データのサンプリング時刻及び前記第1データ値と、前記第2受信データのサンプリング時刻及び前記第2データ値とから補間計算により求めらる、データ値がゼロとなる第1ゼロクロス時刻とサンプリングクロックの立ち上がりとの位相に関する第1位相情報を、前記第1平均値と、前記第1データ値の絶対値又は前記第2データ値の絶対値内の小さいほうの値を2倍して得られた結果値との比較結果に応じて抽出し、
前記セレクト回路から第2平均値が出力されてときは、前記第1データ値及び前記第1受信データのサンプリング時刻に基づいて、単位時間当たりのデータ値の増分を用いて求められた、データ値がゼロとなる第2ゼロクロス時刻とサンプリングクロックの立ち上がりと前記第2ゼロクロス時刻との位相に関する第2位相情報を、前記第2平均値と、前記第1データ値の絶対値又は前記第2データ値の絶対値内の小さいほうの値を2倍して得られた結果値との比較結果に応じて抽出する論理判別回路と、を備える位相比較器である。
ただし、実施例2の位相比較器60は、タイミング判別器(タイミング判別器61)が、連続してサンプリングされた、第0受信データの第0データ値(第1受信データより以前にサンプリングされた受信データ)と第1受信データの第1データ値との比較結果、第1受信データの第1データ値と第2受信データの第2データ値との比較結果、第2受信データの第2データ値と第3受信データの第3データ値(第2受信データより以後にサンプリングされた受信データ)との比較結果、及び、第3受信データの第3データ値と前記第0受信データの前記第0データ値との比較結果とから導き出された、前記第0データ値、前記第1データ値、前記第2データ値、及び、前記第3データ値の状態に対応した、論理を備える判別信号を発生することを特徴とする。
実施例2のゼロクロス抽出器62は、演算器621、625、加算器622、セレクタ623、平均値生成器624、ゼロクロス位相情報選択器633から構成されている回路である。ここで、ゼロクロス位相情報選択器633は、セレクタ623から出力される数値Aに応じて、実施例1のゼロクロス抽出器42としても実施例1の傾き利用のゼロクロス抽出器44としても動作する回路である。そうすると、実施例2のゼロクロス抽出器62と実施例1のゼロクロス抽出器42と同様な機能を有する回路である。
また、実施例2の位相比較器60においては、タイミング判別器61において、予め与えられた閾値を使用することがなく、第1受信データ又は第2受信データがゼロレベルに近接しているか否かをその前後の第0受信データ及び第3受信データを使用することにより検出することができる。
【実施例3】
【0040】
実施例1の位相比較器40は、順次、受け取った3個の受信データの内、任意の連続した2個の受信データを選択し、選択した2個の受信データ間にゼロクロス点があるか否かを特定し、特定したゼロクロス点を間に有する2個の受信データからゼロクス位相情報46を出力する位相比較器40である。
一方、実施例3の位相比較器は受け取った3個の受信データすべてから、ゼロクロス点を特定し、ゼロクロス情報を出力する位相比較器である。
図12は実施例3の位相比較器80を示す図である。位相比較器80は3個のサンプリングされた受信データ((ta、Sa)で表される受信データa、(tb、sb)で表される受信データb、(tc、Sc)で表される受信データcを受け、どの受信データの間にゼロクロス点があり、そのゼロクロス点についてのゼロクロス位相情報96を出力する回路である。位相比較器80はゼロクロス抽出器81、82、加算器84、85、2進コードデータ記憶回路83、86、演算回路89、91、1加算回路90、92、最上ビット設定回路87、88、セレクタ94、モード回路93、及び、4ビットラッチ回路95から構成されている。
【0041】
ゼロクロス抽出器81は、2個の受信データa、受信データbを受け、ゼロクロス点が2個の受信データa、b間にあるか、及び、そのゼロクロス点の位相範囲がどの範囲にあるかを検出し、2進コードで表す回路であり、その詳細について図13、14を用いて説明する。なお、ゼロクロス抽出器81、82は、それぞれ、ゼロクロス点位相範囲を示す位相範囲2進コードu−ab、u−bcと、ゼロクロス点が存在することを示す移行2進コードtran−ab、tran−bcを出力する。なお、ゼロクロス抽出器82は、2個の受信データb、cを受けて、ゼロクロス抽出器81と同様な動作をする。
加算器84は、ゼロクロス抽出器81から出力される2進コードu−abと、ゼロクロス抽出器82から出力される2進コードu−bcを加算し、加算後の2進コードu−abcを出力する回路である。
加算器85は、加算器84から出力される2進コードu−abcと2進コードデータ記憶回路86から出力される(1101)で表される2進コード97との加算を行う回路である。
演算回路89、最上位ビット設定回路87、1加算回路90は、ゼロクロス抽出器81から出力される2進コードu−abに対して、2倍する演算を行い、最上位ビットに0を設定し、その結果得られた2進コードに1を加算する回路である。
演算回路91、最上位ビット設定回路88、1加算回路92は、ゼロクロス抽出器82から出力される2進コードu−bcに対して、2倍する演算を行い、最上位ビットに0を設定し、その結果得られた2進コードに1を加算する回路である。
モード回路93は、加算器85から出力される2進コード99について、モード16演算、すなわち、下位4ビットを切り出す演算を行う回路である。
セレクタ94はゼロクロス抽出器81からの2進コードtran−abの論理値と、ゼロクロス抽出器82からの2進コードtran−bcの論理値の組合せにより4つの入力信号から一つを選択して、選択した信号を出力する回路である。具体的には、セレクタ94は、2進コードtran−ab、2進コードtran−bcが(00)のときには2進コード記憶回路83からの信号を出力する。セレクタ94は、2進コードtran−ab、2進コードtran−bcが(10)のときには1加算回路90からの信号を出力する。セレクタ94は、2進コードtran−ab、2進コードtran−bcが(01)のときには1加算回路92からの信号を出力する。セレクタ94は、2進コードtran−ab、2進コードtran−bcが(11)のときにはモード回路93からの信号を出力する。
【0042】
図13はゼロクロス抽出器81の詳細について説明する図である。ゼロクロス抽出器81は、演算回路811、813、引算回路812、814、加算回路815、816、論理判定回路817から構成されている。なお、ゼロクロス抽出器82はゼロクロス抽出器82と同様な構成の回路である。
演算回路811は入力された受信データaのデータ値Saを4倍する回路である。引算回路812は、+端子から入力された受信データaのデータ値Saから、−端子から入力された受信データbのデータ値Sbを引算する回路である。引算回路814は、+端子から入力された演算回路811からのデータ値4×Saから、−端子から入力された引算回路812からのデータ値(Sa−Sb)を引算し、その結果、データ値(3Sa+Sb)を出力する回路である。
加算回路815は、データ値Saとデータ値Sbを加算し、データ値(Sa+Sb)を出力する回路である。
演算回路813は入力された受信データbのデータ値Sbを4倍する回路である。加算回路816は、演算回路813からのデータ値4×Sbから、引算回路812からのデータ値(Sa−Sb)を引算し、その結果、データ値(Sa+3×Sb)を出力する回路である。
論理判定回路817は、データ値Sa、引算回路814からのデータ値(3Sa+Sb)、加算回路815からのデータ値(Sa+Sb)、加算回路816からのデータ値(Sa+3×Sb)を受け、次の関係式14、15、16、17、18を満たすか否かを判定する回路である。そして、論理判定回路817は、関係式14、15、16、17を満たす場合、それぞれの関係式に対応した、ゼロクロス点位相範囲を示す位相範囲2進コードu−abを出力する。また、関係式18を満たす場合、その関係式に対応する2進コードtran−abを出力する。具体的には、関係式14、15、16、17、及び、その関係式に対応する2進コードu−abは以下である。また、関係式18及びその関係式に対応する2進コードtran−abを出力する。
【0043】
関係式14 IF((Sa>=0)&(3Sa+Sb<0))OR((Sa<=0)&(3Sa+Sb>0))=1 を満たす場合、2進コードu−abとして、2進コード00を出力する。
関係式15 IF((3Sa+Sb>=0)&(Sa+Sb<0))OR((3Sa+Sb<=0)&(Sa+Sb>0))=1 を満たす場合、2進コードu−abとして、2進コード01を出力する。
関係式16 IF((Sa+Sb>=0)&(Sa+3×Sb<0))OR((Sa+Sb<=0)&(Sa+3Sb>0))=1 を満たす場合、2進コードu−abとして、2進コード10を出力する。
関係式17 IF((Sa+3Sb>=0)&(Sb<0))OR((Sa+3Sb<=0)&(Sb>0))=1 を満たす場合、2進コードu−abとして、2進コード11を出力する。
関係式18 IF((Sa>=0)XOR((Sb>=0)を満たす場合、2進コードtran−abとして、2進コード1を出力する。
【0044】
図14は、ゼロクロス抽出回路81の動作原理について説明する図である。図14において、縦軸はデータ値、横軸は位相を示す。
図14において、時刻0においてサンプリングされた受信データaのデータ値はデータ値Saであり、クロックの半周期後にサンプリングされた受信データbのデータ値はデータ値Sbである。ここで、クロックの立ち上がりを位相0とすると、クロックの半周期は位相1/2にあたる。また、位相0から位相1/8の範囲は(00)で表される2進数で示され、位相1/8から位相1/4の範囲は(01)で表される2進数で示され、位相1/4から位相3/8の範囲は(10)で表される2進数で示され、位相3/8から位相1/2の範囲は(11)で表される2進数で示される。
図14において、受信データaのデータ値Saは正の値、受信データbのデータ値Sbは負の値である。また、受信データaのデータ値Saは正の値であるが、(3Sa+Sb)/4は負の値である。
そこで、動作原理について以下に説明する。まず、ゼロクロス抽出回路81はデータ値Saの正負とデータ値Sb正負の組合せにおいて、関係式18の条件を満たすときには、ゼロクロス点が受信データaと受信データbとの間にあると判断し、2進コードtran−abとして「1」を出力する。例えば、図14においては、関係式18の条件を満たす状態(すなわち、受信データaのデータ値Saは正であり、受信データbのデータ値Sbは負の数である状態)であり、受信データaと受信データbとの間にゼロクロス点が存在し、ゼロクロス抽出回路81は2進コードtran−abとして「1」を出力する。
次いで、ゼロクロス抽出回路81は、値Saと値Sbとから得られる演算結果(すなわち、値Sa、値(3Sa+Sb)/4、値(Sa+Sb)/2、値(Sa+3Sb)/4)と値0を比較することにより、ゼロクロス点が存在する位相範囲を決定することができる。その理由は、値Sa、値(3×Sa+Sb)/4、値(Sa+Sb)/2、値(Sa+3Sb)/4は、座標(0、Sa)と座標(1/2、Sb)とを結ぶ直線が、それぞれ、位相0、位相1/8、位相1/4、位相3/8、位相1/2と交差する点のデータ値座標に相当するからである。例えば、図14においては、関係式15の条件を満たす状態(すなわち、データ値Saが正の値且つ(3Sa+Sb)が負値、又は、データ値Saが負の値且つ(3Sa+Sb)が正値の状態)であり、ゼロクロス抽出回路81は2進コードu−abとして「00」を出力する。
【0045】
以上より、実施例3の位相比較器80は、
第1受信データ(受信データa)の第1データ値が正かつ第2受信データ(受信データb)の第2データ値が負であるとき、又は、第1受信データの第1データ値が負、かつ、第2受信データの第2データ値が正であるときは、第1ゼロクロス点が第1受信データと第2受信データの間にあると判断し、第1ゼロクロス存在信号を出力し、
前記第1データ値と前記第2データ値とから演算により求めた結果と、ゼロを比較することにより、前記第1ゼロクロス点の第1位相範囲を決定する第1ゼロクロス抽出器と、
前記第2受信データ(受信データb)の第2データ値が正かつ第3受信データ(受信データc)の第3データ値が負であるとき、又は、第2受信データの第2データ値が負、かつ、第3受信データの第3データ値が正であるときは、第2ゼロクロス点が第2受信データと第3受信データの間にあると判断し、第2ゼロクロス存在信号を出力し、
前記第2データ値と前記第3データ値とから演算により求めた結果と、ゼロを比較することにより、前記第2ゼロクロス点の第2位相範囲を決定する第2ゼロクロス抽出器と、
第1ゼロクロス存在信号の論理、及び、第2ゼロクロス存在信号の論理とに応じて、第1位相範囲又は第2位相範囲の内の一つを選択するセレクタと、を備える位相比較器である。
実施例3の位相比較器80は、第1受信データ、第2受信データとの間のゼロクロス点の抽出と、第2受信データ、第3受信データとの間のゼロクロス点の抽出とを行い、抽出されたゼロクロス点の位相範囲を出力する回路である。
なお、実施例3の第1ゼロクロス抽出器の第1位相情報及び第2のゼロクロス抽出器の第2位相情報は位相0から位相1/8までの第1位相範囲、位相1/8から位相1/4までの第2位相範囲、位相1/4から位相3/8までの第3位相範囲、位相3/8から位相1/2までの第4位相範囲の内の一つを示す情報を含むことを特徴とする。
【実施例4】
【0046】
実施例3の位相比較器80においては、受信データと受信データ間のゼロクロス点の位相範囲を、受信データそれぞれのデータ値から補間により求めた位相0、位相1/8、位相1/4、位相3/8、位相1/2に相当するデータ値と、「0」との比較によって、求めている。しかし、ゼロクロス点の位相範囲をさらに詳細に設定することもできる。
実施例4の位相比較器は、ゼロクロス点の位相範囲が、位相0から位相1/16、位相1/16から位相1/8、位相1/8から位相3/16、位相3/16から位相1/4、位相1/4から位相5/16、位相3/16から位相7/16、位相7/16から位相1/2の内、どの範囲にあるかを特定することができるゼロクロス抽出器101、110が、実施例3の位相比較器において、ゼロクロス抽出器81、82に替わって配置されている位相比較器である。ただし、ゼロクロス抽出器101は3ビットの2進数コードを出力することから、演算回路89、91及び1加算回路90、92は不要となる。
【0047】
図15は実施例4のゼロクロス抽出器101について説明する図である。ゼロクロス抽出器101は、実施例3のゼロクロス抽出器81の変形例である。ゼロクロス抽出器101は、引算回路102、加算回路103、シフター&アダー104、論理判定回路105を備える。
引算回路102は、受信データaのデータ値Saから受信データbのデータ値Sbを引算する回路である。
加算回路103は、データ値Saとデータ値Sbの加算を行う回路である。
シフター&アダー104は、加算回路103の計算結果(Sa+Sb)、引算回路102の計算結果(Sa−Sb)、及び、データ端子からのデータ値Sa、データ値Sbを用いて、A=(7×Sa+b)、B=(3×Sa+Sb)、C=(5×Sa+3×Sb)、D=(3×Sa+5×Sb)、E=(Sa+3×Sb)、F=(Sa+7×Sb)を求める回路である。ただし、計算結果(Sa+Sb)、(Sa−Sb)を用いて、以下のように変形した計算式に従って、加算はアダー、掛け算はシフターを使用してAからFまでを求める。
A=7×Sa+b=8×Sa−(Sa−Sb)、B=3×Sa+Sb=4×Sa−(Sa−Sb)、C=5×Sa+3×Sb=4×(Sa+Sb)+(Sa−Sb)、D=3×Sa+5×Sb=4×(Sa+Sb)−(Sa−Sb)、E=Sa+3×Sb=4×Sb+(Sa−Sb)、F=Sa+7×Sb=8×Sb+(Sa−Sb)
論理判定回路105は、後に図16に示す関係式19、20、21、22が満たされるか否かに応じて、3ビットの2進コード(u−ab(2)、2進コードu−ab(1)、2進コードu−ab(0))及び1ビットの2進コードtranを出力する。
【0048】
図16は、実施例4の論理判定回路105を示す図である。論理判定回路105は上記AからFまでの入力を受け、関係式19から22までが満たされるかを判断し、どの関係式が満たされるかに応じて3ビットの2進コード(u−ab106(2)、2進コードu−ab106(1)、2進コードu−ab106(0))及び1ビットの2進コードtran107を出力する。
関係式19 u−ab(2)=(Sa+Sb>=0)AND(Sb<0)+(Sa+Sb<=0)AND(Sb>0)
関係式20 u−ab(1)=[(3×Sa+Sb>=0)AND(Sa+Sb<0)+(3×Sa+Sb<=0)AND(Sa+Sb>0)]OR[(Sa+3×Sb>=0)AND(Sb<0)+(Sa+3×Sb<=0)AND(Sb>0)]
関係式21 u−ab(0)=[(7×Sa+Sb>=0)AND(3×Sa+Sb<0)+(7×Sa+Sb<=0)AND(3×Sa+Sb>0)]OR[(5×Sa+3×Sb>=0)AND(Sa+Sb<0)+(5×Sa+3×Sb<=0)AND(Sa+Sb>0)]OR[(3×Sa+5×Sb>=0)AND(Sa+3×Sb<0)+(3×Sa+5×Sb<=0)AND(Sa+3×Sb>0)]OR[(Sa+7×Sb>=0)AND(Sb<0)+(Sa+7×Sb<=0)AND(Sb>0)]
関係式22 tran=(Sa>=0)XOR(Sb>=0)
ゼロクロス抽出回路105は値Sa、値(7×Sa+Sb)/8、値(3×Sa+Sb)/4、値(5×Sa+3×Sb)/8、値(Sa+Sb)/2、値(3×Sa+5×Sb)/8、値(Sa+3×Sb)/4、値(Sa+7×Sb)/8、値Sbと値0を比較することにより、ゼロクロス点が存在する位相範囲を決定することができる。その理由は、値Sa、値(7×Sa+Sb)/8、値(3×Sa+Sb)/4、値(5×Sa+3×Sb)/8、値(Sa+Sb)/2、値(3×Sa+5×Sb)/8、値(Sa+3×Sb)/4、値(Sa+7×Sb)/8、値Sbは、座標(0、Sa)と座標(1/2、Sb)とを結ぶ直線が、それぞれ、位相0、位相1/16、位相1/8、位相3/16、位相1/4、位相5/16、位相3/8、位相7/16、位相1/2と交差する点のデータ値座標に相当するからである。
【0049】
以上より、実施例4の位相比較器は、
第1受信データ(受信データa)の第1データ値が正かつ第2受信データ(受信データb)の第2データ値が負であるとき、又は、第1受信データの第1データ値が負、かつ、第2受信データの第2データ値が正であるときは、第1ゼロクロス点が第1受信データと第2受信データの間にあると判断し、第1ゼロクロス存在信号を出力し、
前記第1データ値と前記第2データ値とから演算により求めた結果と、ゼロを比較することにより、前記第1ゼロクロス点の第1位相範囲を決定する第1ゼロクロス抽出器(ゼロクロス抽出器101)と、
前記第2受信データ(受信データb)の第2データ値が正かつ第3受信データ(受信データc)の第3データ値が負であるとき、又は、第2受信データの第2データ値が負、かつ、第3受信データの第3データ値が正であるときは、第2ゼロクロス点が第2受信データと第3受信データの間にあると判断し、第2ゼロクロス存在信号を出力し、
前記第2データ値と前記第3データ値とから演算により求めた結果と、ゼロを比較することにより、前記第2ゼロクロス点の第2位相範囲を決定する第2ゼロクロス抽出器(ゼロクロス抽出器110)と、
第1ゼロクロス存在信号の論理、及び、第2ゼロクロス存在信号の論理とに応じて、第1位相範囲又は第2位相範囲の内の一つを選択するセレクタと、を備える位相比較器である。
実施例4のゼロクロス抽出器の位相情報は位相0から位相1/16までの第1位相範囲、位相1/16から位相1/8までの第2位相範囲、位相1/8から位相3/16までの第3位相範囲、位相3/16から位相1/4までの第4位相範囲、位相1/4から位相5/16までの第5位相範囲、位相5/16から位相3/8までの第6位相範囲、位相3/8から位相7/16までの第7位相範囲、位相7/16から位相1/2までの第8位相範囲の内の一つを示す情報を含むことを特徴とする。
【0050】
以下に本発明の特徴を付記する。
(付記1)
第1受信データの第1データ値及び第2受信データの第2データ値に対応した論理を備える判別信号を発生するタイミング判別器と、
前記第1受信データのサンプリング時刻及び前記第1データ値と、前記第2受信データのサンプリング時刻及び前記第2データ値とから補間計算により求めらる、データ値がゼロレベルとなる第1ゼロクロス時刻とサンプリングクロックの立ち上がりとの位相関係に関する第1位相情報を抽出する第1ゼロクロス抽出器と、
前記第1データ値及び前記第1受信データのサンプリング時刻に基づいて、単位時間当たりのデータ値の増分を用いて求められた、データ値がゼロレベルとなる第2ゼロクロス時刻とサンプリングクロックの立ち上がりとの位相関係に関する第2位相情報を抽出する第2ゼロクロス抽出器と、
前記判別信号の論理に対応して、前記第1位相情報又は前記第2位相情報の内の一方を選択するセレクタと、を備える位相比較器。
【0051】
(付記2)
前記第1受信データの前記第1データ値及び前記第2受信データの前記第2データ値に対応した前記論理は、前記第1データ値と第1閾値との比較結果及び前記第2データ値と第2閾値の比較結果とから導き出されることを特徴とする付記1記載の位相比較器。
【0052】
(付記3)
前記第1ゼロクロス抽出器は、前記第1データ値の絶対値又は前記第2データ値の絶対値内の小さいほうの値を2倍して得られた結果値と、前記第1データ値の絶対値と前記第2データ値の絶対値の平均値との比較結果に応じて前記第1位相情報を抽出し、
前記第2ゼロクロス抽出器は、前記第1データ値の絶対値又は前記第2データ値の絶対値内の小さいほうの値を2倍して得られた結果値と、前記第1受信データのサンプリング時刻又は前記第2受信データのサンプリング時刻以前にサンプリングされた複数の第3受信データの第3データ値の平均値との比較結果に応じて前記第2位相情報を抽出することを特徴とする付記1記載の位相比較器。
【0053】
(付記4)
第1受信データの第1データ値及び第2受信データの第2データ値に対応した論理を備える判別信号を発生するタイミング判別器と、
前記第1データ値と前記第2データ値との平均を求め第1平均値とする第1平均値生成器と、
前記第1受信データのサンプリング時刻又は前記第2受信データのサンプリング時刻以前にサンプリングされた複数の第3受信データの第3データ値の平均を求め第2平均値とする第2平均値生成器と、
前記判別信号の論理に応じて、第1平均値又は第2平均値を選択するセレクト回路と、
前記セレクト回路から第1平均値が出力されたときは、前記第1受信データのサンプリング時刻及び前記第1データ値と、前記第2受信データのサンプリング時刻及び前記第2データ値とから補間計算により求めらる、データ値がゼロとなる第1ゼロクロス時刻とサンプリングクロックの立ち上がりとの位相関係に関する第1位相情報を、前記第1平均値と、前記第1データ値の絶対値又は前記第2データ値の絶対値内の小さいほうの値を2倍して得られた結果値との比較結果に応じて抽出し、
前記セレクト回路から第2平均値が出力されてときは、前記第1データ値及び前記第1受信データのサンプリング時刻に基づいて、単位時間当たりのデータ値の増分を用いて求められた、データ値がゼロとなる第2ゼロクロス時刻とサンプリングクロックの立ち上がりとの位相関係に関する第2位相情報を、前記第2平均値と、前記第1データ値の絶対値又は前記第2データ値の絶対値内の小さいほうの値を2倍して得られた結果値との比較結果に応じて抽出する論理判別回路と、を備える位相比較器。
【0054】
(付記5)
前記第1受信データの前記第1データ値及び前記第2受信データの前記第2データ値に対応した前記論理は、前記第1データ値と前記第1受信データより以前にサンプリングされた受信データの第0データ値との比較結果、前記第1データ値と前記第2データ値との比較結果と、前記第2データ値と前記第2受信データより以後にサンプリングされた受信データの第3データ値との比較結果、及び、前記第3データ値と前記第0受信データとの比較結果から導き出されることを特徴とする付記4記載の位相比較器。
【0055】
(付記6)
第1受信データの第1データ値が正かつ第2受信データの第2データ値が負であるとき、又は、前記第1データ値が負、かつ、前記第2データ値が正であるときは、第1ゼロクロス点が前記第1受信データと前記第2受信データの間にあると判断し、第1ゼロクロス存在信号を出力し、
前記第1データ値と前記第2データ値とから演算により求めた結果と、ゼロを比較することにより、前記第1ゼロクロス点の第1位相範囲を決定する第1ゼロクロス抽出器と、
前記第2データ値が正かつ第3受信データの第3データ値が負であるとき、又は、前記第2データ値が負、かつ、前記第3データ値が正であるときは、第2ゼロクロス点が前記第2受信データと前記第3受信データの間にあると判断し、第2ゼロクロス存在信号を出力し、
前記第2データ値と前記第3データ値とから演算により求めた結果と、ゼロを比較することにより、前記第2ゼロクロス点の第2位相範囲を決定する第2ゼロクロス抽出器と、
第1ゼロクロス存在信号の論理、及び、第2ゼロクロス存在信号の論理とに応じて、第1位相範囲又は第2位相範囲の内の一つを選択するセレクタと、を備える位相比較器。
【0056】
(付記7)
複数の受信データをクロックに同期してサンプリングし、受信データのデータ値をアナログ値からデジタル値に変換するアナログデジタル変換回路と、
前記複数の受信データをサンプリング時刻順に連続して並べるデマックス回路と、
デマックス回路から前記複数の受信データを受け取り、その内の2個の受信データ間のゼロクロス点を抽出し、ゼロクロス点と前記クロックとの位相情報を出力する位相比較器と、
前記位相情報を受け取り、予め決められた数の前記位相情報を蓄積し、蓄積された前記位相情報から平均値を求めて平均位相情報とするフィルタと、
前記位相情報、及び、平均位相情報と、前記複数の受信データをを受け、位相情報と、平均位相情報とに基づいて、前記複数の受信データの内から一つを選択するデータ判定器と、
前記クロックを受け、前記位相情報又は平均位相情報に応じて、前記クロックの位相を調整して、復元クロックを形成する位相補間回路と、
前記クロックに同期して、前記複数の受信データの内から前記データ判定器が選択した受信データを記憶し、前記復元クロックに基づいて、前記データ判定器が選択した受信データを出力するFIFOと、を備えることを特徴とするクロック・リカバリ回路。
【産業上の利用可能性】
【0057】
内部クロックによりサンプリングされた受信データ間のゼロクロス点の位相情報を高精度で検出することが可能な位相検出器を提供することができる。
【符号の説明】
【0058】
1、2 ADC
3 DMX回路
5 データ判定器
6 フィルタ
7 FIFO
8 位相補間回路
10 クロック・データリカバリ回路
40、60、80 位相比較器
41 タイミング判別器
42、81、101 ゼロクロス抽出器
44 傾き利用のゼロクロス抽出器
45 判別信号
46 ゼロクロス位相情報
47 セレクタ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
前記第1受信データの第1データ値及び前記第2受信データの第2データ値に対応した論理を備える判別信号を発生するタイミング判別器と、
前記第1受信データのサンプリング時刻及び前記第1データ値と、前記第2受信データのサンプリング時刻及び前記第2データ値とから補間計算により求めらる、データ値がゼロレベルとなる第1ゼロクロス時刻とサンプリングクロックの立ち上がりとの位相関係に関する第1位相情報を抽出する第1ゼロクロス抽出器と、
前記第1データ値及び前記第1受信データのサンプリング時刻に基づいて、単位時間当たりのデータ値の増分を用いて求められた、データ値がゼロレベルとなる第2ゼロクロス時刻とサンプリングクロックの立ち上がりとの位相関係に関する第2位相情報を抽出する第2ゼロクロス抽出器と、
前記判別信号の論理に対応して、前記第1位相情報又は前記第2位相情報の内の一方を選択するセレクタと、を備える位相比較器。
【請求項2】
前記第1受信データの前記第1データ値及び前記第2受信データの前記第2データ値に対応した前記論理は、前記第1データ値と第1閾値との比較結果及び前記第2データ値と第2閾値の比較結果とから導き出されることを特徴とする請求項1に記載した位相比較器。
【請求項3】
前記第1ゼロクロス抽出器は、前記第1データ値の絶対値又は前記第2データ値の絶対値内の小さいほうの値を2倍して得られた結果値と、前記第1データ値の絶対値と前記第2データ値の絶対値の平均値との比較結果に応じて前記第1位相情報を抽出し、
前記第2ゼロクロス抽出器は、前記第1データ値の絶対値又は前記第2データ値の絶対値内の小さいほうの値を2倍して得られた結果値と、前記第1受信データのサンプリング時刻又は前記第2受信データのサンプリング時刻以前にサンプリングされた複数の第3受信データの第3データ値の平均値との比較結果に応じて前記第2位相情報を抽出することを特徴とする請求項1に記載した位相比較器。
【請求項4】
第1受信データの第1データ値及び第2受信データの第2データ値に対応した論理を備える判別信号を発生するタイミング判別器と、
前記第1データ値と前記第2データ値との平均を求め第1平均値とする第1平均値生成器と、
前記第1受信データのサンプリング時刻又は前記第2受信データのサンプリング時刻以前にサンプリングされた複数の第3受信データの第3データ値の平均を求め第2平均値とする第2平均値生成器と、
前記判別信号の論理に応じて、第1平均値又は第2平均値を選択するセレクト回路と、
前記セレクト回路から第1平均値が出力されたときは、前記第1受信データのサンプリング時刻及び前記第1データ値と、前記第2受信データのサンプリング時刻及び前記第2データ値とから補間計算により求めらる、データ値がゼロとなる第1ゼロクロス時刻とサンプリングクロックの立ち上がりとの位相関係に関する第1位相情報を、前記第1平均値と、前記第1データ値の絶対値又は前記第2データ値の絶対値内の小さいほうの値を2倍して得られた結果値との比較結果に応じて抽出し、
前記セレクト回路から第2平均値が出力されてときは、前記第1データ値及び前記第1受信データのサンプリング時刻に基づいて、単位時間当たりのデータ値の増分を用いて求められた、データ値がゼロとなる第2ゼロクロス時刻とサンプリングクロックの立ち上がりとの位相関係に関する第2位相情報を、前記第2平均値と、前記第1データ値の絶対値又は前記第2データ値の絶対値内の小さいほうの値を2倍して得られた結果値との比較結果に応じて抽出する論理判別回路と、を備える位相比較器。
【請求項5】
複数の受信データをクロックに同期してサンプリングし、受信データのデータ値をアナログ値からデジタル値に変換するアナログデジタル変換回路と、
前記複数の受信データをサンプリング時刻順に連続して並べるデマックス回路と、
デマックス回路から前記複数の受信データを受け取り、その内の2個の受信データ間のゼロクロス点を抽出し、ゼロクロス点と前記クロックとの位相情報を出力する位相比較器と、
前記位相情報を受け取り、予め決められた数の前記位相情報を蓄積し、蓄積された前記位相情報から平均値を求めて平均位相情報とするフィルタと、
前記位相情報、及び、平均位相情報と、前記複数の受信データをを受け、位相情報と、平均位相情報とに基づいて、前記複数の受信データの内から一つを選択するデータ判定器と、
前記クロックを受け、前記位相情報又は平均位相情報に応じて、前記クロックの位相を調整して、復元クロックを形成する位相補間回路と、
前記クロックに同期して、前記複数の受信データの内から前記データ判定器が選択した受信データを記憶し、前記復元クロックに基づいて、前記データ判定器が選択した受信データを出力するFIFOと、を備えることを特徴とするクロック・リカバリ回路。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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