説明

位相補償型薄膜ビームコンバイナ

複数の光ビームを1つの光路上に結合させるためのビームコンバイナであって、第1の波長帯域の光を光路に沿って透過し、第2の波長帯域の光を光路上に反射するように配置されたダイクロイックコーティングを有する第1のダイクロイック要素と、第1および第2の波長帯域の光を光路に沿って透過し、第3の波長帯域の光を光路上に反射するように配置されたダイクロイックコーティングを有する第2のダイクロイック要素と、を備える、ビームコンバイナ。前記ビームコンバイナはさらに、第1、第2、および第3の波長帯域のいずれかの外側に存在する少なくとも1つの反射率エッジ遷移を提供し、第1、第2、および第3の波長帯域の少なくとも1つにおいて通過光の変更状態に対する累積された位相差に対する補償を提供する位相差補償多層薄膜スタックを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に多層薄膜光学コーティングから形成される波長選択光学素子に関し、より詳細には光学コーティングの配列および異なる偏光状態を有する光に対しより均質な応答を有する1組の光学コーティングを提供するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子投影システムが、広範囲の変調技術を用いて開発され、または市販されている。使用される様々な光変調アプローチとしては、例えば、偏向、回折、遮断または吸収、散乱、および偏光状態の回転が挙げられる。液晶装置(LCD)を使用するイメージング装置は、例えば、各カラーチャンネル内の入射光の偏光状態をピクセルバイピクセル様式で直接変調する。デジタルマイクロミラーデバイスを使用するイメージング装置としては、例えば光をピクセルバイピクセル様式で偏向させるマイクロミラーアレイから構成されるテキサス州ダラスのテキサスインスツルメント社(Texas Instruments Inc.)社製のデジタル光プロセッサ(DLP)装置が挙げられる。
【0003】
特定の光変調技術はそれぞれ、特徴的な長所および弱点を有する。例えば偏光を変調するシステムでは、不注意な位相シフト、スキュー光線または大角度クロストーク、または応力複屈折により、汚染がオンとオフ状態の間で生じ得る。光を偏向または回折により変調する別のシステムでは、角度散乱がイメージング経路への光ビームのリダイレクションを引き起こす可能性がある。しばしば、1つの型の光変調の特徴的な不利益は、別の型に関しては因子とはならない。
【0004】
しかしながら、偏光効果は多くの光変調アプローチに影響を与える。例えば、偏光は高性能のDLPに基づくシステムにおいて3Dまたはステレオ投影を可能にするために使用される。リアルディー(Real−D(カルフォルニア州ビバリーヒルズ)技術を用いてステレオ投影のために適合されたDLPプロジェクターは、偏光識別メガネを着用した視聴者により知覚される、右および左目像に対する偏光状態間で切り換えるために偏光回転子を使用する。DLPに基づくシステムにおいて3D映像のために必要とされる偏光コントラストはかなり中程度である(約400:1)が、コントラストが低すぎると、ゴースト像が生じる可能性がある。偏光源、例えば可視光放射レーザがまた、3D映像あり、またはなしの画像投影システムのために使用されている。総合すれば、カラーまたはコントラストアーチファクトに関する、プロジェクターの偏光感度は、光変調構成要素自体が、偏光に対しかなり感度が低い場合であっても、先行技術システムに比べ増加している。
【0005】
カラーコンバイナ、およびスペクトル成分を分離し再結合するため、および投影装置内で光をリダイレクトしコンディショニングするための他の型の光学的構成要素は、典型的には多層薄膜光学コーティングに依存する。従来のコーティング設計は、選択された波長で必要とされるレベルの反射率または透過を有する様々な型のスペクトルフィルタを提供する。しかしながら、従来の多層コーティング設計は、異なる偏光状態を有する光に対し均質性の高い応答を提供しない。例えば、従来の反射性多層コーティングの場合、全範囲の入射角にわたり、その電場ベクトルが入射面に対し垂直に振動する光(s偏光)の反射率は、その電場ベクトルが入射面に対し平行に振動するp偏光の反射率に比べ、より高い。p偏光の反射率は、層特異的なブルースター角でその最小に到達する。結果として、特にブルースター角のあたりの領域で、sおよびp偏光に対する顕著な振幅分割が生じ得る。より小さな角度では、軸上光、反射光、フルフィールド光、またはスキュー光線にわたり、光効率は偏光および角度と共に変動する。別の例として、円偏光が従来の斜めに配置された、薄膜コーティングから形成されている偏向ミラー上に落ちる場合、光のp成分は、反射後、光のs成分よりも強く減衰される。偏光アナライザ、例えばマクネイル(MacNeille)プリズムまたはワイヤグリッド偏光子を有する偏光感応性プロジェクターでは、これらの光効率差は、著しいコントラストまたは色むらエラーを導入する可能性がある。他方、偏光アナライザが欠けている、名目上偏光感応性システムでは、これらの偏光効率差に由来する画像アーチファクトは、ほとんど注目されない可能性がある。
【0006】
カラーコンバイナまたは他の型のダイクロイックフィルタはまた、各偏光に対する位相変化(△φsおよび△φp)、ならびに様々な偏光方向の間の相対的な位相差(△φsp=△φs−△φp)を導入することができ、通過光が偏光および角度により異なる量の回転を経験することが意味される。結果として、光の出射偏光状態は、入射偏光状態と異なる。これらの効果は、偏光に対し複数の反射が存在する光学システムにおいて組み合わせることができ、そのため、多くの表面の各々上での偏光に対するわずかな位相シフトでさえも、相加効果を有することができる。直線偏光は、容易に円偏光または楕円偏光となることができ、その後に、光が下流光学素子を通過した時の偏光応答を変化させる。例えば、最適スペクトル効率性能に対して設計された従来のビームコンバイナを用いると、sおよびp偏光間の位相差△φspはしばしば±20°以上を超える。±100°以上もの位相差△φspはしばしば、エッジ通過付近で測定され得る。比較して、偏光維持では、最良の性能が0°またはその付近での位相差△φspにより、または少なくとも約±10°以下内で、位相性能に到達しながら画像品質または輝度を損なわずに、達成されるであろう。
【0007】
薄膜表面がpおよびs偏光を異なって処理する場合、デジタルイメージングシステムの有効コントラストは、光の漏れにより損なわれることがあり;それに応じてスループットも損なわれる。立体(3D)イメージングにおいて左および右目画像分離のために偏光を使用するシステムでは、偏光の非一様処理による光の漏れは、立体視効果を低下させるクロストークに至る可能性がある。sおよびp偏光に対し、コーティングがどのように応答するかの知られている差を補償するために様々な解決策が提案されている。画像投影システムでは、例えば、様々な型の補償構成要素、例えば4分の1波長リターダの使用が、薄膜表面の偏光解消を補正するために教示されている。
【0008】
本質的に偏光操作に依存する投影またはディスプレイシステム例えば、LCDまたはLCOS(シリコン上の液晶)系システムでは、問題はより深刻であり、というのは、望ましくない偏光差および結果としての光漏れが直接、画像アーチファクトを引き起こす可能性があるからである。LCDは当然、偏光の向きを画素単位様式で一時的におよび空間的に変調し、これは、画像品質が偏光忠実度に依存することを意味する。偏光は画像コントラスト(デジタル映画では>2000:1)、コントラスト均一性、および色とのコントラスト均一性に直接関係する。LCDによる偏光性能を増強するために開発された偏光補償器の多くの例、例えば、垂直配向またはネマチックLCDのために設計されたものが存在する。これらの補償器は、空間的に異なる様式で構築された角変化複屈折を提供するために、典型的にはポリマー膜を使用し、通過光ビームの一部(すなわち、一定の空間および角度領域内)の偏光状態に影響を与えるが、光ビームの他の部分における偏光状態には影響しない。複屈折は、屈折率の方向変化(△n=ns−np=nx−ny)であり、固有の材料特性により、または複屈折サブ波長構造により提供され得る。リターダンスは距離として表された位相変化△φであり、ここで位相変化△φ(x,t,λ)=2πt(△n/λ)である。例えばπ/2(または90°)位相変化△φは、550nmで、約138nmリターダンスに等しい、4分の1波長λ/4のリターダンスを有する適正に配向された補償器により提供することができる。
【0009】
1つの例として、クレール(Clerc)らへの米国特許第4,701,028号は、制限された厚さを有する垂直配向LCDに対して設計された複屈折補償を記載する。ヒロセ(Hirose)らに対する米国特許第5,298,199号は、交差シート偏光子を有するパッケージで使用される、LCDにおける光複屈折エラーを補正するための2軸膜補償器の使用を記載し、この場合LCD暗状態は非ゼロ電圧(バイアス電圧)を有する。さらに、コーシュ(Koch)らへの米国特許第5,619,352号は、ねじれネマチックLCDと共に使用することができる補償装置を記載し、この場合、補償器は、必要に応じてA−プレート、C−プレート、およびO−プレートの組み合わせを使用する多層構造を有する。
【0010】
同様に、そのようなシステムでは、補償器はまた、個々に、またはLCDと組み合わせて、他の構成要素、例えば偏光ビームスプリッターまたはアナライザーの偏光性能変動を補正するために開発されている。例えば、シュミット(Schmidt)らへの米国特許第5,576,854号は、LCDを従来のマクネイルプリズム型偏光ビームスプリッターと共に使用するプロジェクター装置において使用するために構築された補償器を記載する。シュミット補償器は、0.27波(λ)の補償を提供し、ここで0.25λは、マクネイルプリズムを補償し、0.02λのリターダンス(A−プレート)は、LCDの対電極基材において熱的に誘導された応力複屈折を補償する。
【0011】
いくつかのLCDに基づくプロジェクター設計では、カラーコンバイナまたはスプリッターは、LCDパネルと偏光ビームスプリッターの間に配置されたそのコーティングを有する。これは、ひいては、システム偏光性能は、これらの構成要素の設計および製作に依存することを意味する。この問題の詳細分析が、例えば、A.E.ローゼンブルース(Rosenbluth)らにより、「位相制御プリズムコーティングおよびバンドシフトねじれ補償器による投影システムにおけるコントラストの補正(Correction of Contrast in Projection Systems By Means of Phase−Controlled Prism Coatings and Band−Shifted Twist Compensators)」(SPIE Proc.、Vol.3954、pp.63−90、2000)において与えられる。ローゼンブルースらは、「プランビコン(Plumbicon)」または「フィリップス(Philips)」プリズムが色分割および再結合の両方を提供するためにダブルパス構造で使用される従来の投影アーキテクチャを記載する。記載されるプロジェクターはねじれネマチックLCパネルを使用する。デラング(DeLang)により米国特許第3,202,039号で記載される「プランビコン」トリプリズムは元々、TVカメラにおいて光を分割するために開発された。
【0012】
ローゼンブルースらは、傾斜ダイクロイックは、それらが反射および透過の両方において、通過光ビームに対し、偏光混合、または合成角偏光解消を引き起こす差別的位相シフト(△φps=△φp−△φs)を示すという点で、通常偏光であることを観察している。特に、傾いたまたはスキュー光が、一般に厚い傾向のある色分割コーティングを横切る場合、一般にsおよびp成分の有効侵入深さの間には差があり、コーティングに2つの偏光間の差別的位相変化△φpsを与える。ローゼンブルースらは、傾斜ダイクロイックコーティングは通常、帯域のエッジで、強い振幅偏光子であり、これはひいては、位相シフトを強度性能と関連づける分散積分のために、その帯域全体にわたる強い差別的位相シフトを与えることを観察している。よって、sおよびp偏光は、コーティングを合成入射角で通過するので、それらは異なる振幅および位相応答を経験する。最も著しい偏光クロストークは、スキュー光線が光学システムの傾斜ビーム分割コーティングを通過する場合に起こる。
【0013】
ローゼンブルースらは、個別に無位相シフトであるコーティングを設計するのではなく、偏光解消の回転成分を集合的に除去するためのプリズムコーティングを設計することにより、トリプリズムアセンブリのコーティングからの偏光解消を抑制しようとしている。分散積分は、位相性能および光スループット効率を関連づけ、実質的な位相変化に、スループットに対する限界効果が提供され得る。ローゼンブルースらの設計はフィリップスプリズムのダブルパスジオメトリを利用する。すなわち、個々のコーティングは、無位相シフト(ゼロ位相差、△φps=0)となるように設計されず、コーティングは、単一パスで集合的に位相補正されるようにも設計されず、それらはダブルパスで集合的に位相補正されるように設計される。最適化は、振幅偏光解消効果を最小に抑えることを強調しない。ローゼンブルースらは基本的には、スキュー光線が回転なしで楕円偏光を経験し、一方、プリズムアセンブリを通過する光のダブルパス対称性は、楕円率を都合良く取り消すようにプリズムコーティングを設計した。この対称性および固有の取り消しは、ダイクロイックコーティングにおける強度損失がsおよびp偏光に対し本質的に等しい場合にのみ有効であり;よって、補正はバンドエッジ付近では不完全である。ローゼンブルースらは、コーティング偏光解消が、偏光ビームスプリッター(PBS)と組み合わせて、PBSまたはライトバルブ偏光解消効果を補償するポリマー膜補償器の助けにより、またはそれなしで最適化される例を提供する。
【0014】
ローゼンブルースの他に、多層薄膜光学コーティングの位相影響は、光学薄膜コーティングを規定し、設計するものにより広く理解されておらず、簡単に研究され、あるいは文献で言及されているにすぎない。しかしながら、この問題への従来のアプローチは、満足のいく結果を達成するとしてもごくわずかである。
【0015】
偏光解消は遠隔通信および他のデータ信号処理光学システムにおける信号対ノイズ(S/N)比またはコントラストを低下させる可能性があるので、偏光位相シフト△φに対する補償のために多くの解決策が提案されており、この場合、薄膜表面が狭帯域光信号のために使用される。例えば、「非偏光学薄膜エッジフィルタ(Non−Polarizing Thing Film Edge Filter)」と題するテーレン(Thelen)への米国特許第4,373,782号は、立上がりまたは立下りエッジのいずれかで同じsおよびp偏光性能を有するエッジフィルタを形成することを記載する。これは単一の狭い範囲の周波数または波長に対し偏光−中立的効果を提供するが、この狭い範囲を超えて偏光効果を補償しない。同様に、イトウ(Ito)への「光学多層薄膜およびビームスプリッター(Optical Multi層 Thin Film and Beamsplitter)」と題する米国特許第5,579,159号は、予め決められた波長にわたり互いに実質的に近接するsおよびp偏光反射率を達成するコーティング設計アプローチを記載する。しかしながら、イトウの解決策は、IR範囲の単一レーザビームでのビームスプリッターの使用を対象とし、この方法はまた、狭い範囲の波長を超えて容易に拡張可能ではない。
【0016】
ヴァンデルワル(Van Der Wal)らへの「偏光ビームスプリッターおよびこれを使用する磁気光学読取り装置(Polarizing Beam Splitter and Magneto−Optic Reading Device Using the Same)」と題する、米国特許第6,014,255号は、単一の、狭いIR波長にわたって光を誘導するように最適化され、多層薄膜設計について最上層と最下層を厚くすることにより位相差△φが減少された磁気光学読取り機を記載する。また、この方法は、カラーコンバイニング光学素子に適用可能な偏光補償のより大きな問題に対処していない。
【0017】
レーザおよび他の狭帯域光源の使用の増加に伴い、元々はより広帯域の照明のために開発された、変調された光ビームを結合する問題に対する従来の戦略およびアプローチのいくつかは、十分でないことが証明されている。アーク灯および他の広帯域源を使用する、イメージング用途のために設計された光学フィルタは、典型的にはスペクトル効率を最適化し、帯域幅を最大化し、IRまたはUV光を拒絶するように設計される。これらの構成要素は断じて、レーザおよび他の固体光源に特有の狭い波長帯域にわたり必要とされる性能を提供するように設計されておらず、一般に、偏光位相応答に関係なく設計される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第4,701,028号
【特許文献2】米国特許第5,298,199号
【特許文献3】米国特許第5,619,352号
【特許文献4】米国特許第4,373,782号
【特許文献5】米国特許第5,579,159号
【特許文献6】米国特許第6,014,255号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】A.E.ローゼンブルースら、「位相制御プリズムコーティングおよびバンドシフトねじれ補償器による投影システムにおけるコントラストの補正(Correction of Contrast in Projection Systems By Means of Phase−Controlled Prism Coatings and Band−Shifted Twist Compensators)」(SPIE Proc.、Vol.3954、pp.63−90、2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
多層薄膜光学コーティングが偏光をどのように処理するかに影響する位相差の減少への従来のアプローチは、遠隔通信のための狭い範囲の光信号では十分うまくいくことができる。しかしながら、これらの従来の解決策は、画像投影におけるダイクロイック表面の位相および偏光シフト効果を補償するために必要とされるものに及ばない。このように、偏光特異的応答の減少を示すコーティングを提供するために、位相差補償のための多層薄膜光学コーティングの設計のための改善された方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の目的は、異なる波長のレーザ光を結合または分割する技術を前進させることである。この目的を念頭において、本発明は複数の光ビームを1つの光路上に結合させるためのビームコンバイナであって、
第1の波長帯域の光を光路に沿って透過し、第2の波長帯域の光を光路上に反射するように配置され、通過光の偏光状態に位相差を与えるダイクロイックコーティングを有する第1のダイクロイック要素と、
第1および第2の波長帯域の光を光路に沿って透過し、第3の波長帯域の光を光路上に反射するように配置され、通過光の偏光状態に対し追加の位相差を累積する、ダイクロイックコーティングを有する第2のダイクロイック要素と、
を備え、
第1または第2のダイクロイック要素のいずれかの表面はさらに、前記表面上で入射する光に対し第1、第2、および第3の波長帯域のいずれかの外側に存在する少なくとも1つの正または負反射率エッジ遷移を提供する位相差補償多層薄膜スタックを備え、位相差補償多層薄膜スタックは第1、第2、および第3の波長帯域の少なくとも1つにおいて累積された位相差に対する補償を提供する、ビームコンバイナを提供する。
【0022】
本発明の特徴は、位相補償の目的で、光スペクトルの未使用部分に対して反射特性を付加することである。
【0023】
本発明の利点は、知覚できるほど、輝度または他のイメージング性能特性を損なわずに、偏光を結合するための位相差補償に関する。
【0024】
本発明のこれらのおよび他の側面、目的、特徴および利点は、好ましい実施形態の下記詳細な説明および添付の特許請求の範囲を再検討することにより、および添付の図面を参照することにより、より明確に理解され、認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】イメージング装置のための従来のビームコンバイナコーティングの挙動を示すブロック図である。
【図2A】代表的な反射性多層薄膜フィルタに対する位相差関係を示す1組のグラフである。
【図2B】本発明の設計原理を示す図である。
【図3】図1の実施形態に対するビームコンバイナコーティングにより提供される位相補償を示すブロック図である。
【図4】別の実施形態におけるイメージング装置に対するビームコンバイナコーティングの挙動を示すブロック図である
【図5】図4の実施形態に対するビームコンバイナコーティングにより提供される位相補償を示すブロック図である。
【図6】偏光入射面に対する偏光成分の向きを示す斜視図である。
【図7】カラーコンバイナ表面に対する入射偏光面の直交配列を有するイメージング装置を示す略図である。
【図8−1】位相補償前の図7の実施形態に対する表面反射率、透過位相差、および反射位相差に対する1組のグラフを示す。
【図8−2】位相補償前の図7の実施形態に対する表面反射率、透過位相差、および反射位相差に対する1組のグラフを示す。
【図8−3】位相補償前の図7の実施形態に対する表面反射率、透過位相差、および反射位相差に対する1組のグラフを示す。
【図8−4】位相補償前の図7の実施形態に対する表面反射率、透過位相差、および反射位相差に対する1組のグラフを示す。
【図9】図8の未補正実施形態に対するカラーチャンネル毎の総位相差を示す図である。
【図10−1】1つの実施形態における位相補償を有する、図7の実施形態に対する表面反射率、透過位相差、および反射位相差に対する1組のグラフを示す。
【図10−2】1つの実施形態における位相補償を有する、図7の実施形態に対する表面反射率、透過位相差、および反射位相差に対する1組のグラフを示す。
【図10−3】1つの実施形態における位相補償を有する、図7の実施形態に対する表面反射率、透過位相差、および反射位相差に対する1組のグラフを示す。
【図10−4】1つの実施形態における位相補償を有する、図7の実施形態に対する表面反射率、透過位相差、および反射位相差に対する1組のグラフを示す。
【図11】図10の未補正実施形態に対するカラーチャンネル毎の総位相差を示す図である。
【図12A】層の数を増加させることにより位相差を増加させるための方法の結果を示すグラフである。
【図12B】層の数を増加させることにより位相差を増加させるための方法の結果を示すグラフである。
【図12C】層の数を増加させることにより位相差を増加させるための方法の結果を示すグラフである。
【図13A】屈折率の比を増加させることにより位相差を増加させるための方法の結果を示すグラフである。
【図13B】屈折率の比を増加させることにより位相差を増加させるための方法の結果を示すグラフである。
【図13C】屈折率の比を増加させることにより位相差を増加させるための方法の結果を示すグラフである。
【図14A】入射光の角度を増加させることにより位相差を増加させるための方法の結果を示すグラフである。
【図14B】入射光の角度を増加させることにより位相差を増加させるための方法の結果を示すグラフである。
【図15A】伝搬媒質に対し、交互薄膜層を形成するために使用される屈折率を減少させることにより、位相差を増加させるための方法の結果を示すグラフである。
【図15B】伝搬媒質に対し、交互薄膜層を形成するために使用される屈折率を減少させることにより、位相差を増加させるための方法の結果を示すグラフである。
【図16】1つの実施形態における、ビームコンバイナコーティングを設計するための一連の工程を示す論理流れ図である。
【図17A】ダイクロイック表面が同じ入射面を有する一実施形態における多層薄膜表面の配列を示す表である。
【図17B−1】ダイクロイック表面が同じ入射面を有する一実施形態における多層薄膜表面の配列を示す表である。
【図17B−2】ダイクロイック表面が同じ入射面を有する一実施形態における多層薄膜表面の配列を示す表である。
【図17C】ダイクロイック表面が同じ入射面を有する一実施形態における多層薄膜表面の配列を示す表である。
【図18A】ダイクロイック表面が入射直交偏光面を有する一実施形態における多層薄膜表面の配列を示す表である。
【図18B−1】ダイクロイック表面が入射直交偏光面を有する一実施形態における多層薄膜表面の配列を示す表である。
【図18B−2】ダイクロイック表面が入射直交偏光面を有する一実施形態における多層薄膜表面の配列を示す表である。
【図18C】ダイクロイック表面が入射直交偏光面を有する一実施形態における多層薄膜表面の配列を示す表である。
【図19】1つの実施形態においてフィリップスプリズムを使用するイメージング装置と共に使用されるカラーコンバイナを示す略ブロック図である。
【図20】別の実施形態においてフィリップスプリズムを使用するイメージング装置と共に使用されるカラーコンバイナを示す略ブロック図である。
【図21】1つの実施形態においてX−プリズムを使用するイメージング装置と共に使用されるカラーコンバイナを示す略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書で図示され、記載される図面は、本発明の実施形態による動作および構造の原理を説明するために提供され、実際のサイズまたは縮尺を示す意図で描かれていない。多くの場合、光学フィルタ挙動の基本原理を記載するために理想的なグラフが使用される。
【0027】
「色(カラー)」、「波長」、「波長範囲」および「波長帯域」という用語は、以下の説明において同じ意味で使用される。赤、緑および青色の経路は、提供される実施例のために記載され、というのは、これらがカラー投影および他のカラーイメージング用途のために適合するからである。しかしながら、本発明の方法および装置は、異なる波長帯域のためにより広く適用することができ、可視スペクトルの外側に存在するものを含み得る異なる波長の光を結合または分離するように動作するビーム結合またはビーム分割装置を含んでもよいことが理解されるべきである。
【0028】
図1では、2つの多層薄膜プレートダイクロイック要素43および44を使用するビームコンバイナ40を有する先行技術イメージング装置100の概略が示されている。各ダイクロイック要素43および44はまた、それぞれ、対応する反射防止(AR)表面43aおよび44a、ならびにそれぞれ、適切なダイクロイックコーティングを有するフィルタ表面43bおよび44bを有する。図1のシステムのバリエーションは、その後、本発明の利点と共におよび利点なしの両方で記載されるであろう。ここで示されるように、各ダイクロイック要素は、その2つの側の光学表面(エッジ面ではない)の各々上に多層光学コーティングを有する、ガラスの小シートまたはプレートを含む。ダイクロイック光学コーティングは、光学分野において普通に理解されるように、波長の関数として光の選択的反射または透過を提供する。ダイクロイック光学コーティングは、設計された通過帯域を通る偏光に対し、典型的には同程度であるが、同一ではない効率応答(反射率または透過率)を提供するが、効率応答は、典型的には通過帯域エッジ遷移で「s」および「p」偏光状態に対しより顕著に変動する。後に記載されるように、位相応答もまた、入射光の偏光状態に対するその効果に関し、エッジ遷移で変動する。
【0029】
「エッジ遷移」、「負反射率エッジ遷移」および「正反射率エッジ遷移」という用語は、これら用語が、光学コーティング技術分野において当業者により理解されるそれらの従来の意味を有する。エッジ遷移は、多層薄膜コーティングを用い、光学コーティング技術分野において使用される設計原理に従い、意図的に形成される。エッジ遷移は、約25−30nm以下の狭帯域幅内で起こる。エッジ遷移は、例えば、ノッチフィルタ、低波長通過(LWP)フィルタ、または高波長通過(HWP)フィルタを形成することにより生成させることができる。反射フィルタのためのエッジ遷移は、本発明において特に興味深く、下記説明において光コンバイナ装置に位相差補償を提供するために意図的に設計され、使用されるのはこれらのエッジ遷移である。
【0030】
「反射性」という用語は、光学コーティングとの関連でその従来の意味を有する。多層コーティングは、その帯域にわたる光に対し少なくとも約80%反射性である場合、波長帯域に対し反射性であると言うことができる。「反射防止性コーティング」または「ARコーティング」という用語は、本開示との関連でその従来の意味を有し、これは、典型的にはいくらかの反射防止波長帯域にわたって約95%より大きな透過を有するように空気−ガラス界面を修飾するコーティングを意味する。位相補償を提供するようにARコーティング特性を操作することができる実施形態は、これらのコーティングにより提供される必要とされる反射防止波長帯域の外側に存在する波長範囲でそのようにする。イメージング装置では、例えば、ARコーティングは、可視範囲にわたって反射を防止するように使用されるであろう。可視波長帯域の外側、例えば紫外線UVまたは赤外線IR波長帯域のみにある変化された反射性特性は、プロジェクターまたは他のイメージング装置におけるその主要機能に関しては、ARコーティングの性能に影響しない。
【0031】
それらが使用される場合、「第1」、「第2」などという用語は、順序または優先度関係を必ずしも示さないが、1つの要素を別のものとより明確に区別するために単に使用してもよい。
【0032】
本発明との関連で、青色、緑色、および赤色光は、これら色が、電子イメージングおよび投影技術分野の当業者に有すると理解されるそれらの従来の意味および波長範囲を有する。1つの実施形態において、これら色に対する典型的な値は一般的には、これらの近似範囲内にある:赤色λo=637nmおよびその範囲は一般に620−660nmである;緑色λo=532nmおよびその範囲は一般に520−560nmである;青色λo=465nmおよびその範囲は一般に440−480nmである。一般に、選択された光源は、これら範囲内にあるスペクトル発光帯域幅△λを有するが、個々の光源の帯域幅△λはずっと小さいものにすることができる。例えば、個々の緑色レーザはスペクトル帯域幅△λ〜0.1−2.0nmを有することができ、その型の複数の緑色レーザのアレイは、スペクトル帯域幅△λ〜2−7nmを有することができる。
【0033】
本出願の図面および説明では、表記△φは、位相変化を示すために使用され、微分位相変化を含み、ここでφは位相を示す。下付文字「t」は、使用される場合、「透過」を示す。例えば、△φtは、透過時に起こる位相の変化を意味する。同様に、下付文字「r」は、使用される場合、「反射」を示す。
【0034】
前に与えられた背景セクションで言及したように、sおよびp偏光は、入射時に多層薄膜と異なって相互作用し、入射偏光のこれらの成分に対しいくらかの望ましくない量の相対的な位相差(△φsp)を引き起こす。図6を考慮すると、入射光82は、典型的には板ガラスの小さなシートを含む光学素子80上にある角度で入射する。入射光82は、s偏光(入射面84に垂直に振動する)、p偏光(入射面84内で振動する)、または両方(両方が示されている)のいずれかを有することができる。入射光82は、光学素子80の特性によって、光学素子80を透過、反射、またはその両方をさせることができ、反射された光86のみが図示されている。どちらかの偏光の向きの光は、光学素子80で位相変化△φを経験する可能性があり、両方の偏光が同一の位相変化△φを経験する可能性があり、あるいは位相変化(△φ=0)を経験しない可能性があり、そのため、微分位相変化(△φsp=△φs−△φp=0)はない。別の例として、微分位相変化が180o(π)、またはその倍数だけ位相がシフトされた場合、よって△φsp=△φs−△φp=180oである場合、反射時には事実上、微分位相変化が起こらない可能性もある。これらの場合、最初の偏光関係が維持される。
【0035】
光学素子80はまた、反射率、透過率および反射され、または透過された位相に関し、s偏光およびp偏光に対し異なる応答を引き起こす可能性がある。例えば、s偏光が位相変化(△φs)を経験し、一方p偏光が異なる位相変化(△φp)を経験する場合、得られたs偏光の位相φsは1つの値を有し、p偏光の位相φpは別の値を有し、非ゼロ位相差が得られるであろう(△φsp=△φs−△φp≠0)。位相差は△φsp=△φs−△φpまたは△φps=△φp−△φsとして計算することができるが、その選択はジオメトリに依存し得る。位相変化用語△φは、本明細書では偏光特異的変化(△φp、△φs)ではなく、一般的に位相変化を示すために、またはジオメトリ(△φsp、△φps)を考えずに、一般的に位相差を示すために使用される。コンバイナ設計に関しては、目的は、各コンバイナ要素に対し、個々に、または複数のコンバイナ要素に対して全体として、透過または反射(必要に応じて)における微分位相変化をほぼゼロまで(△φ=0)減少させることとすることができる。例えば、共に譲与され、共に係属中の、シルバースタイン(Silverstein)らへの「レーザ照射マイクロミラープロジェクター(Laser Illuminated Micro−Mirror Projector)」と題する米国特許出願第12/171,916号では、結合要素は、エッジ遷移およびそれらの関連する位相プロファイルをできる限り対象波長(λo)から離して配置することにより、個々に微分位相変化△φをほぼゼロに減少させるように設計される。緑色カラーチャンネルでは、これは、エッジ遷移を対象の緑色と青色、または緑色と赤色波長の間に均等に配置しようとすることを意味し得る。このアプローチは、特に狭いスペクトル帯域幅△λを有するカラーチャンネルではうまくいく可能性があるが、残りの位相差△φが依然として重要である可能性があり、小さなコーティング変化が、大きな位相シフトまたは変化を引き起こし、設計の意図にかかわらず、著しい位相差を与えてしまう可能性がある。
【0036】
別の観点として、2つの偏光は、よく知られたフレネル式(Fresnel equations)により説明されるように、異なるまたは同様の反射(RpまたはRs)または透過効率(TpまたはTs)に遭遇する可能性がある。同程度の効率(Tp〜Ts、およびRp〜Rs)を提供することが確かに望ましいが、ダイクロイックコンバイナ表面で起こる適度な光レベル変動を補償するために、他の機構または方法がイメージングシステムにおいてしばしば使用され得る。
【0037】
別のバックグラウンドとして、光の伝搬は、よく知られた波動方程式、例えばEq.(1)により説明することができ、この式は距離xを時間tの間進む平面偏光波Ψ(x,t)を説明し、ここでA(x,t)は振幅関数であり、φ(x,t)は外乱の位相であり:
Ψ(x,t) = A(x,t)eiφ(x,t) (1)
式中、xは光路に沿った距離であり、tは時間である。
【0038】
位相方程式は様々な様式で、例えば、εにより与えられる初期位相を用いて、書くことができ、これは現在の目的のためにその後無視することができる値であり:
φ(x,t) = ωt-kx + ε またはφ(x,t) = ωt-kx =ω(t-x/v) (2)
式中、ωは、時間に伴う位相の変化率であり、kは距離に伴う位相の変化率であり、およびvは速度である。値ωはまた、角振動数としても知られており、この場合ω=2π/νであり、値kはまた、伝搬数としても知られており、この場合k=2ω/λである。光の振動数νおよび波長λは、光の速度、c=λ/νにより関連付けられる。自由空間における光の波長λは通常、ミクロン(μm)またはナノメートル(nm)で表される。光はある材料に入り、横切る時に、入射角、入射光の媒質に対する偏光の向き、屈折率n、および材料の厚さによって、様々な反射率および位相変化△φを経験する可能性がある。表面反射率または透過をモデル化するフレネル式は、Eq.(1)の振幅項に影響を与える。材料または媒質における屈折率は、基本的には真空中の光の速度cの媒質中の速度vに対する比(n=c/v)である。Eq.(2)に代入すると、位相が屈折率の観点から記載される:
φ(x,t) = ωt - (2πn/λ)x (3)
【0039】
一定屈折率の等方性材料中でさえ、微分位相変化△φは、材料中の光路長(t/n)が1つの角度から別のものに変化するので、異なるビーム伝搬角度に対し起こり得る。複雑な構造、例えば、複数の層状材料を有する薄膜コーティングでは、差分反射率および位相変化が異なるビーム伝搬角に対して起こり得る。このように、傾斜ダイクロイックは、光線角度1°あたり(スキューかあるいはその逆)、コーティングにより照射時に誘導される差分量の回転および楕円率を示すので、通常、偏光である。このように、微分位相変化△φは、入射光の角度および偏光状態によって起こりえる;(△φ=△φsp=△φs△φp)または(△φ=△φps=△φp−△φs)。
【0040】
1つ以上の薄膜材料特性または設計構造を操作するこにより、例えば、エッジ遷移または帯域通過反射率を偏光整合することにより、位相変化△φの量を減少させるための方法が存在するが、そのような変化は一般に、位相差の大きさに対し十分な補償を提供しない。位相シフトを最小に抑えるために多層膜コーティング設計を調節し、最適化するために使用することができる、当業者によく知られている他の公知の技術が存在することが観察され得る。例えば、いくらかの量の妥協が、使用される光の波長に対し、カラーフィルタ特性を特定する際に効率およびスループットを犠牲にすることにより達成され得る。しかしながら、幾分狭い調節許容範囲を超えると、実際、光学コーティングの性能を改善するため、および従来のアプローチを使用して位相シフト差を減少させるため、光学素子設計者が利用できる利点は非常に少ない可能性がある。
【0041】
背景セクションで前に言及したように、従来のビームコンバイナは、典型的には入射光の偏光成分に対する位相差△φの問題に対処することができず、±20°を超えてしばしば位相差を明確に示す。本発明の装置および方法は、この点においてビームコンバイナ性能を改善し、±10°以下の好ましい範囲内に位相差を減少させる様式を提供する。
【0042】
図1に戻ると、ブロック図で示されるカラーチャンネル12r、12g、および12bは、この図面で、それぞれ、赤色、緑色、および青色の調光を形成し、提供し、それらはビームコンバイナ40で結合され、ディスプレイ表面30上への投影のために投影レンズ28に誘導される。再び、ビームコンバイナ40は、波長に基づき、光を選択的に反射および透過するために、ダイクロイック光学コーティングを有する2つの多層薄膜プレートダイクロイック要素43および44を備える。各チャンネルにおける調光は、デジタルマイクロミラーアレイ、例えばDLP装置を使用するSLM(図示せず)により変調させることができる。時間的にまたは空間的に変調された偏光はSLMにより、または空間光変調器の光学的に上流に配置された偏光スイッチング装置により、提供することができる。ダブルパスでプランビコンプリズムを使用し、1つの方向で光を分離し、別の方向でカラービームを結合させる従来のシステムと比較して、ダイクロイック要素43および44が使用され、光が単一パスで結合される。すなわち、各個々のカラーチャンネル(12r、12gおよび12b)における光は、図1で示されるように、ビームコンバイナ40による光ビームの結合前の場合に、コンバイナ40を通過しない光路(図示せず)を横切る。
【0043】
赤色、緑色、および青色の光路は、図1においてわずかに空間的にオフセットさせて表されており、ダイクロイック要素43および44の基本的な透過および反射機能を示すのを助けている。実際には、これらの光路は同じ出力軸に沿って重ねられている。赤色、緑色、および青色カラーチャンネル(12r、12gおよび12b)はそれぞれ、光源を含み、これらは好ましくはレーザであるが、他の狭帯域光源、例えば発光ダイオード(LED)またはスーパールミネセント発光ダイオード(SLED)を使用することができる。カラーチャンネル12g、12b、および12rは偏光を放射し、あるいはプリ偏光子(図示せず)により偏光された光を有し、または両方である。偏光アナライザ32または、任意で必要に応じて、偏光ビームスプリッターが光路内、第2のダイクロイック要素44の下流に提供され、例えば、ステレオ画像投影が可能になる。ディスプレイ表面30は標的面であり、この中にスクリーンが典型的には存在し、この上で観客は映像を見ることができる。
【0044】
図1では、ダイクロイック要素43および44の各フィルタ表面43bおよび44bに対する、透過(T)および反射(R)ならびにsとp偏光の間の位相差△φspの代表的なフィルタグラフも示される。左側の点線のボックス46Lにより囲まれているのが、ダイクロイック要素43のフィルタ表面43bに対する反射フィルタグラフ53rおよび透過フィルタグラフ53tである。位相差グラフ53φは、ダイクロイック要素43の高波長通過(HWP)エッジフィルタに対する位相差△φspを示す。著しい位相差△φspがダイクロイック要素43の(HWP)エッジフィルタにより通過緑色および青色光に与えられる。同様に、右側の点線のボックス46Rにより囲まれているのが、ダイクロイック要素44のフィルタ表面44bに対する反射フィルタグラフ54rおよび透過フィルタグラフ54tである。位相差グラフ54φはダイクロイック要素44のノッチフィルタに対する位相差△φspを示す。累積位相変化グラフ56φはその後、位相差グラフ53φおよび54φを加算することにより計算された累積位相差△φspの和を示す。ここで、緑色および赤色波長帯域の光に対する累積位相差△φspの大きさは、20°を超え、100°以上もの大きさとなり得る。この位相性能は多くの標準フィルタ設計の典型である。
【0045】
前に言及したように、ローゼンブルースらは、傾斜ダイクロイックコーティングは通常、通過帯域のエッジで強力な振幅偏光子であることを観察した。これは、ひいては、位相シフトを強度性能と関連させる分散積分のために、帯域全体で強力な差別的位相シフトを伴う。このように、sおよびp偏光成分は、コーティングを合成入射角で通過するので、それらは異なる振幅および位相応答を経験する。この挙動に関し、本発明者らはさらに、位相シフトとダイクロイックコーティングのフィルタバンドエッジ(または反射率エッジ遷移)の間には特徴的な関係があることを観察している。特定的には、図2Aで示されるように、位相差プロファイル50に特徴的な正または負の位相変化差△φspは、反射率スタックの正または負のエッジ遷移42Eに対応する。約470nmから約690nmまで及ぶ通過帯域、ならびに470nm未満および690nm超の阻止帯域を有するノッチフィルタに対する反射率フィルタ曲線セット例(両方のsおよびp偏光反射率プロファイル42)を図2Aの左上に示す。この例の下に、このフィルタを用いて同じ波長にわたって起こる位相差(△φsp=△φs−vφp)に対する対応するプロットされた応答を示す。右の略図は、反射バンドエッジに対する位相差の基本的な挙動をまとめたものである。位相差変化プロファイル50は、立ち上がりバンドエッジに対応する正の位相差△φsp、または反射率プロファイル42の正のエッジ遷移42Eを有する。負の位相差△φspは、反射率プロファイル42の立ち下がりバンドエッジ、すなわち、反射率曲線の負のエッジ遷移42Eに対応する。反射における傾斜ダイクロイックフィルタに対する負のエッジ遷移42Eは、透過におけるそのフィルタに対する正のエッジ遷移42Eとして出現することに注意されたい。各遷移での比較的顕著な応答に続き、位相差△φspはその後、より長い波長に対し、ドリフトして0に戻る。
【0046】
位相差は、波長に伴いかなり変動する;△φ(λ)ことが強調されるべきである。左の非対称位相差プロファイル50を考慮すると、各バンドエッジで、80°を超える位相差ピーク値が(|△φsp|=|△φs−△p|>80)、位相プロファイルの位相テール51となるように延長するエッジ遷移あたりの、通過帯域中心に向かう約40nmの間、および隣接する低反射率阻止帯域に入る約100nmの間の、大きな位相差(|△φsp|=|△φs−△φp|>20)と共に観察される。阻止帯域に入る位相テール51は、より長い波長に比べ、より短い波長で、より短くなる、または圧縮される傾向があることもまた注意すべきである。図2Aの例示的なノッチフィルタの場合、公称470−690nm通過帯域の外側では反射率プロファイル42において顕著なリップルが存在することもまた注意すべきである。対応する位相差プロファイル50は、位相テール51において対応する波長でいくらかの小さなリップルを示す。ノッチまたはエッジフィルタが顕著な阻止帯域反射率リップルなしで設計される場合、エッジ遷移あたりで劇的な位相変化(大きさおよび程度)が依然として観察されが、個々で見られる小さなリップリング効果はない。この挙動は、後の設計例により明らかになるであろう。
【0047】
図2Aで示され、図2Bで拡大されている挙動を考えるにあたり、本発明者らは、特徴的な正および負の位相差△φ曲線間の相互作用は、多層薄膜コート表面に対し位相差を減少させるために使用することができることを見いだした。このように、例えば、主要なスペクトル帯域通過(または通過帯域42P)を有するプライマリダイクロイック要素41は、位相テール51を有する位相差プロファイル50に関し、図2Bに示される一般的挙動を示す。位相補償スペクトル帯域通過および関連する位相差プロファイル50cを有する、第2の位相補償ダイクロイック要素52に対するエッジ遷移42Eが、波長の観点から主要なスペクトル帯域に十分近接する光路に沿って提供される場合、隣接するエッジ遷移42Eと関連する特徴的な位相応答は、有利な様式で相互作用することができる。図2Bに示されるように、位相補償ダイクロイック要素52に対する位相差プロファイル50cの位相テール51cは、標的波長(λo)付近でプライマリダイクロイック要素41に対する位相差プロファイル50の位相テール51と相互作用し、減少された結合位相差を提供する。これは、2つの帯域通過がスペクトル的に、幅△λoffset1の介在阻止帯域42Rにより分離された場合であっても起こり得る。例えば、プライマリダイクロイック要素41および位相補償ダイクロイック要素52の両方の通過帯域42Pは、高い反射率(Rp,Rs>90%)を有することができるが、介在阻止帯域42Rは低い反射率(Rp,Rs<5%)を有する。介在阻止帯域42Rが2つのエッジ遷移λedge1およびλedge2間で十分狭い場合(△λoffset1<50−100nm)、近接する立下りエッジの負の位相差プロファイルおよび近接する立ち上がりエッジの正の位相差プロファイルは、対象のスペクトル帯域で相互作用し、または結合し、対象の波長の(λo±△λ/2)光に与えられる位相差△φpを減少させることができ、ただし、かなりの位相差補償が所望の波長スパン(△λoffset2)にわたって存在することを条件とする。2つの距離△λoffset1および△λoffset2は標的波長(λo)がエッジ遷移にどれだけ近いかによって、ほぼ同一、または著しく異なるものとすることができる。この概念の適用は、その後の設計例においてより明確になるであろう。
【0048】
本発明の装置および方法は、図2Bにより示唆される設計アプローチを適用する。すなわち、反射フィルタに対する位相変化対バンドエッジの関係が、特定の標的波長で異なる偏光状態の光により均一な位相応答を提供する位相差補償多層薄膜スタックを提供することにより、位相差△φを補償するために使用される。特に、補助の多層薄膜スタックを有する位相補償フィルタとして提供される位相補償ダイクロイック要素52は、位相補償ダイクロイック要素52が形成される表面に存在する対象の波長を含むスペクトル帯域幅の外側の波長でスペクトル帯域通過およびエッジ遷移42Eを提供する。有効であるために、位相補償ダイクロイック要素52と関連する位相差プロファイル50cの位相テール51cは、十分遠く(△λoffset)延在し、正しい符号(+または−)および大きさを有し、ダイクロイックフィルタのプライマリダイクロイック要素41の位相衝撃に対し位相差△φ補償を提供しなければならない。以下で記載されるように、位相補償ダイクロイック要素52は、ダイクロイック要素の表面上に、またはARコーティングを有する表面上に、またはいくつかの他の光学素子上に提供することができる。プライマリダイクロイック要素41および位相補償ダイクロイック要素52の両方はノッチフィルタ、またはパスエッジフィルタとすることができ、両方の例は後に与えられるであろう。本発明の実施形態は、一般的にはスペクトルフィルタ、特にビームコンバイナに対する、偏光に影響する位相シフトを補償するための機構として、反射率バンドエッジ挙動に対するこの位相変化応答を採用する。図1の従来の配列に戻ると、例えば、位相差グラフ56φにおいて示される累積位相差は、画像品質を損なわない位相差△φspに影響する適切に構築された薄膜構造を用いて減少させることができる。
【0049】
図3では、位相差補償の方法が1つの実施形態に対して示されている。この構成では、図1のダイクロイック要素44を位相補償特徴を有するダイクロイック要素45により置換させる。ダイクロイック要素43は、反射防止表面45aおよびフィルタ表面45bを有する。図3の左側の、ボックス47Lでは、反射フィルタグラフ53r、透過フィルタグラフ53t、および位相差グラフ53φがダイクロイック要素43の高波長(赤色)通過(HWP)エッジフィルタに対し図1から繰り返されている。赤色波長の対象のスペクトル帯域通過における負の位相変化を補償するために、第2の補助のスペクトル帯域通過または反射率帯域が位相補償スペクトル帯域通過60(図3において囲まれている)により提供され、これはダイクロイック要素45のフィルタ表面45bに追加される。位相補償スペクトル帯域通過60は、この場合、特定の型の位相補償ダイクロイック要素(52)であり、赤外線(IR)スペクトル帯域通過ノッチフィルタに対応し、これは、フィルタ表面45b上の多層薄膜スタックに層スタックを追加することにより形成され、ここでスタックは可視領域の外側のより長い波長の光を反射する。図3の右側の、ボックス47Rでは、反射フィルタグラフ55r、透過フィルタグラフ55t、および位相差グラフ55φは、位相補償スペクトル帯域通過60が図1のボックス46Lのグラフにより特徴づけられるフィルタの形成に追加された場合の、フィルタの特性を示す。位相差グラフ55φは、フィルタ表面45bでの薄膜フィルタ形成のこの変更、すなわち、フィルタ表面45bに対する多層薄膜スタックへのIR位相補償スペクトル帯域通過60の追加の効果を示す。ここで、IR位相補償スペクトル帯域通過60は、対象とする(赤色)スペクトル通過帯域の光に対し位相差△φsp減少または補償構造を提供し、よって、赤色領域にわたる位相応答を改善する。これはカラーチャンネル12r、12gおよび12bが位相補償スペクトル帯域通過60と相互作用するIR光を提供しなくても起こり得る。得られる補償された累積位相変化を、図3の底部に、位相差グラフ57φとして示す。比較のために、初期累積位相差△φspを図1から繰り返し、点線位相差グラフ56φとして図示し、位相補償スペクトル帯域通過60の追加された反射率帯域が特に赤色波長で提供する改善を示す。
【0050】
多くの観察がなされ得る:
(i)図1のビームコンバイナ40においてダイクロイック要素配列を使用すると、補償スペクトル帯域通過60は、反射防止表面44a、43a、またはフィルタ表面43bのいずれか上に交互に追加することができる。すなわち、位相差補償多層薄膜スタックの補償フィルタ構造を、ビームコンバイナ40を通して赤色光を誘導する任意の表面上で形成させることができる。反直感的ではあるが、これは、反射防止性(AR)コーティングの形成における反射性ノッチフィルタの形成さえ含む。後に提供する実施例1は、このアプローチを示す。(表面の選択たのためのこのフレキシビリティは、その後の例で示されるように、提供される波長補償によって、他のビームコンバイナ構成でもそうであってもよく、またはそうでなくてもよい。)
(ii)位相補償ダイクロイック要素52がノッチフィルタである場合、2つのエッジ遷移が提供される。しかしながら、典型的には1つのみが関連する。例として、図3では、ノッチフィルタは、立ち上がり(赤色)エッジ、およびトレーリングもしくは立下りエッジの両方を提供した。位相補償スペクトル帯域通過60が提供された反射率帯域のトレーリングエッジは、さらにIR領域内に及び、いずれの、得られた位相シフトも可視投影用途では、重要ではない)
(iii)位相補償フィルタの高調波はまた、位相補償のために使用することができる。一般に、従来の薄膜フィルタではλ/3高調波が、この高調波を抑制するために特定の工程が取られない限り起こる。720−1050nm範囲に存在することができる、図3の例におけるノッチフィルタ型位相補償スペクトル帯域通過60により提供される反射率帯域では、対応するλ/3高調波が、約240−350nm範囲に存在し、または、UV領域に及ぶ。そのようなものとして、ノッチフィルタ高調波は、UVまたは低青色における必要とされる立ち下がりバンドエッジ遷移に、青色波長で累積正位相変化を補償するのを助けることができる負の位相差を提供する位相テール51を潜在的に提供することができる。
(iv)反射率帯域は図3の例ではノッチフィルタとして示されているが、IRにおける低波長通過(LWP)フィルタを代わりに使用することができる。必要とされるのは、赤色波長に十分近接する(適切な△λoffset2)、正の方向のエッジ遷移により引き起こされ、正の位相差が引き起こされる位相シフト効果である。その補償機能を提供するために、位相差補償多層薄膜スタックは第1、第2、または第3の波長帯域から△λoffset1<約100nmだけの補償エッジ遷移オフセットを提供する。言い換えれば、位相補償を提供する反射性エッジ遷移は、出力光路に沿っていくらかの表面に存在し;エッジ遷移自体は、その表面上に入射する光の波長帯域の外側に存在する波長λedgeにある。補償エッジ遷移は、約100nm未満の帯域内にあり(適切な△λoffset2)、影響することが意図される。より短い波長では、位相テール51がしばしば、大きさまたは程度において圧縮されるので、より短い距離がより望ましい;が、波長が増加するにつれ、約100nmまでのより長い距離が、許容される性能を生じさせ得る。コーティング挙動は一般に、波長と数学的に対称または同一でないことに注意すべきである。このように、スペクトル距離△λoffset1または△λoffset2は、光源またはカラーチャンネルのエッジ遷移に対するスペクトル位置λoおよび幅△λ、ならびに必要とされる位相補償の大きさによって、ガイドラインとなる。例えば赤色−近IRエッジ遷移を有する位相補償ダイクロイック要素52は、赤色において約635nmで位相を助けるために680−740nmスペクトル範囲のエッジ遷移を有するように設計することができる。一方、赤色エッジ遷移を有する位相補償ダイクロイック要素52は、緑色において約635nmで位相を助けるために580−650nmスペクトル範囲のエッジ遷移を有するように設計することができる。基本的には、スペクトルオフセットは、エッジ遷移(λedge)付近で起こる位相プロファイルの劇的スウィングの使用を回避するが(反対符号)位相テール51(図2Bを参照して説明される)を用いて、ある源スペクトルの補償を提供する。
【0051】
このように、図3の例は、本発明の方法が、使用されない波長領域、例えばIRまたはUV領域における可視範囲の外側において正または負の反射率帯域遷移を追加して、薄膜フィルタ設計への従来のアプローチを改良することを示す。この例では、位相補償スペクトル帯域通過60を有するノッチフィルタとして提供される位相差補償ダイクロイック要素52は、第1または第2のダイクロイック要素のいずれかの表面上の薄膜スタックとして形成され、第1、第2、または第3の色(青色、緑色または赤色)を提供する波長帯域の組とは異なる、言い換えれば、その外側の波長で反射性である。補償のために反射される波長のエッジ遷移(λedge)は、図3例で示されるように可視の外側、または可視内とすることができ、ただし、同じ表面上の入射光に対する複合カラーの各々の波長とは異なることを条件とする。可視スペクトル内のこの反射性エッジ遷移の追加を示す別の例は、図4および5に関して後に提供される。
【0052】
図4は、図1および3を参照して記載した基本戦略から発展させたビームコンバイナ40で異なる色の配列を有する、イメージング装置101の別の実施形態を示す。この例では、緑色光は、多層薄膜ダイクロイック要素22および24の両方を通して透過される。各ダイクロイック要素22および24は、それぞれ、対応する反射防止(AR)表面22aおよび24aならびにダイクロイックコーティングを有するフィルタ表面22bおよび24bを有する。ブロック図で表されるカラーチャンネル12r、12g、および12bの各々は、この図面において、それぞれ、調光、赤色、緑色、および青色を形成し、提供し、これらはビームコンバイナ40で結合され、ディスプレイ表面30への投影のために投影レンズ28に誘導される。また、赤色、緑色、および青色光路は、この図では、ダイクロイック要素22および24の基本的な透過および反射機能を示すのを助けるためにわずかなオフセットを用いて示されており、実際には、これら光路は同じ出力軸上に重ねられる。
【0053】
図4には、ダイクロイック要素22および24の各フィルタ表面22bおよび24bに対する、透過(T)および反射(R)ならびに位相差△φspの代表的なフィルタグラフもまた、示されている。図4の左側のボックス48Lでは、ダイクロイック要素22のフィルタ表面22b(青色ミラー)に対する反射フィルタグラフ62rおよび透過フィルタグラフ62tが示される。位相差グラフ62φは、ダイクロイック要素22の高波長通過(HWP)エッジフィルタに対する位相差△φspを示す。ダイクロイック要素22から赤色光には本質的に位相変化効果はなく、というのも、赤色光は、この表面を透過し、または反射しないからであるが、青色および緑色への位相差△φsp効果は著しいことに注意すべきである。同様に、図4の右側のボックス48Rでは、ダイクロイック要素24のフィルタ表面24b(赤色ミラー)に対する反射フィルタグラフ64rおよび透過フィルタグラフ64tが示される。位相差グラフ64φは、ダイクロイック要素24のフィルタ表面24bに対する位相差△φspを示す。この赤色ミラーは、緑色スペクトルに著しい位相差△φsp、ならびに青色および赤色スペクトルの部分にはより少ない量を与える。次に、累積位相差グラフ66φは位相変化により影響を受ける波長に対する位相差グラフ62φおよび64φを合計することにより計算された有効累積位相変化の和を示す。位相差グラフ66φは、青色および赤色は実質的には、位相変化に対しよく補正されており、これらスペクトルのかなりの部分で小さな位相差△φspを有し、というのは、位相差グラフ62φおよび64φのプロファイルがこれらのレジームで取り消す傾向があるからである。許容される残留位相変化に対する規格によって、この性能は十分であり得る。低赤色スペクトルはいくらかの有意の位相差を示し、この重要性は、使用される実際の光源の波長範囲(λoおよび△λにより特徴づけられる)に依存する。しかしながら、緑色光では、有効位相差取消はほとんどなく、実際の累積位相差△φspは、位相差グラフ62φに対し増加した。
【0054】
図5では、緑色波長での負の位相差を補償するために、位相補償ダイクロイック要素が、ダイクロイック要素(青色ミラー)23のフィルタ表面23bに追加される、位相補償スペクトル帯域通過61を有するノッチフィルタとして提供される。ダイクロイック要素23はまた、反射防止表面23aを有する。図5の左側のボックス49Lでは、位相補償スペクトル帯域通過61を含むダイクロイック要素23のフィルタ表面23b(青色ミラー)に対する反射フィルタグラフ63rおよび透過フィルタグラフ63tが示される。対応する位相差グラフ62φは位相差△φspを示す。この場合、位相補償スペクトル帯域通過61には、図示されるように、黄色−橙色スペクトル領域(約580−600nm)あたりで補償反射性エッジ遷移(λedge)が提供される。システム概略図にもどると、フィルタ表面23bは、緑色波長よりも長い入射光を受理しないことが見られる。このように、図5に示されるように、位相補償スペクトル帯域通過61のエッジ遷移および全体特性を有する赤色反射フィルタスタックを追加しても、イメージング装置101に対する光路のこの位置で入射する調光の透過または反射に本質的には影響を与えない。しかしながら、緑色波長よりも長い光を反射するこの追加構造は、緑色光では、位相変化に対し有利な影響を有する。図5の右側のボックス49Rでは、ダイクロイック要素24のフィルタ表面24b(赤色ミラー)に対する反射フィルタグラフ64r、透過フィルタグラフ64tおよび位相差グラフ64φが示され、これらは図4で示される対応するグラフと同一である。得られた補償累積位相差△φspを、図5の底部に、比較のために位相差グラフ66φと重ねて示される位相差グラフ67φとして示す。
【0055】
図5の例では、位相補償スペクトル帯域通過61として示されるノッチフィルタ反射率帯域のための正のエッジ遷移は、有用な位相−補償を提供することに注意することは有益である。別の実施形態では、位相補償スペクトル帯域通過61は、ノッチフィルタ型位相補償スペクトル帯域通過61に対して示されるものと同じ場所に正のエッジ遷移(λedge)を有するが、より高い波長では本質的には、立ち下がり遷移を有しない位相補償スペクトル高波長通過フィルタにより置換される。図5の実施形態において緑色光に対し必要とされる補償を、青色緑色コンバイナ(ダイクロイック要素23)の青色−緑色エッジ遷移により提供される位相差△φspのいくらかを取り消すことにより、実行するのは正のエッジ遷移である。また、反射における負のエッジ遷移が透過における正のエッジ遷移であることが観察されるべきである。
【0056】
図4および5の例として、ビームコンバイナ40に対して使用される光学的配置によって、位相シフトに対する補正を適用することができる限定された数の表面が存在し得ることが示される。例えば、位相補償ダイクロイック要素52は、、位相補償スペクトル帯域通過61を提供し、赤色で動作するノッチまたはエッジフィルタかに関係なく、ダイクロイック要素24のフィルタ表面24bに追加することができず、というのは、この表面はすでにこのシステム構成において赤色ミラーを提供するからである。
【0057】
図3および5と関連する従来の例示的な位相補償型実施形態の説明において、スペクトル反射率または透過率曲線は、発明概念を説明するのを助ける理想的な形態で示された。発明概念をよりよく説明するために、2つの詳細な設計例が、それぞれ、図8および9、ならびに図10および11と関連させた以下の説明において提供されるように示される。
【0058】
入射偏光面の検討
偏光の直交成分は、入射偏光面を基準にして分類される。図6に戻ると、入射面84およびX−Y−Z座標系に対し、入射光82を受理する光学素子80が示される。入射面84(X−Z面)内で振動する光は、p偏光であると考えられる。入射面84に直交する光はs偏光であると考えられる。
【0059】
前の実施例において、図1および3実施形態では、ビームコンバイナ40のダイクロイック要素43および44/45は両方とも、偏光に対し同じ入射面を有する。同様に、図4および5実施形態では、ダイクロイック要素22/23および24は両方とも偏光に対し同じ入射面を有する。特に、どちらのダイクロイック要素も、光学システムに対し同じ角度で配置され、よって名目上互いに平行である。そのような場合、2つの表面に対する総位相差△φtotは加法的である。すなわち、表面1および2に対し以下となる:
△φtot = △φsp = △φ1 + △φ2 = (φs1 −φp1)+(φs2 −φp2) (4)
【0060】
しかしながら、図7の別の実施形態システムでは、ビームコンバイナ40のダイクロイック要素92および94は、対頂角(XZ面内)で傾斜し、傾斜プレートを通して光をイメージングさせる際に経験される非点収差が減少される。すなわち、ダイクロイックコートフィルタ表面92bおよび94bは互いに直交し、または実質的に直交(すなわち、直交の±15°以内)する。これらダイクロイック要素はまた、合成角で回転される。特に、図6を考慮すると、1つのダイクロイックがYZ面内で公称+45°(θx)だけ回転され、他方がYZ面内で公称−45°だけ回転される。この幾何学的配向は、カラーチャンネル12r、12gおよび12b内のDLP装置からくる画像光を、投影レンズ28に入る共通の光学(Z)軸に向かわせるのに役立つ。この別の実施形態では、2つの表面に対する総位相差△φtotは、差分値となる。
△φtot =△φps =△φ1-△φ2= φp−φs)=(φp1−φs1)+(φp2−φs2) (5)
【0061】
図7のシステムに関し、図8は、フィルタ表面に対し35°の入射光、それぞれ、青色、緑色、および赤色波長に対し465nm、535nm、および635nmの公称標的波長λoを用いるが、本発明の位相補償方法なしで設計されたこのシステムに対する詳細なモデル性能を示す。特に、グラフ120はフィルタ表面92bの青色ミラーに対する反射率%を示す。ダイクロイック要素92の反射防止表面92aは、グラフ122で示されるように典型的なAR−コーティングを有することに注意すべきである。ダイクロイック要素94では、それぞれ、典型的なARコーティングが反射防止表面94aのために使用され、ダイクロイックフィルタがフィルタ表面94bの緑色ミラーのために使用される。緑色ミラー応答は、グラフ124に示される。図2Aの例と比較すると、図8の阻止帯域(グラフ120の緑色および赤色スペクトル領域ならびにグラフ124の青色および赤色スペクトル領域)は、ほとんどまたは全く反射率リップリングを有さないことに注意されたい。
【0062】
図8のグラフ130、132、134、140、142、144、および146は、図7実施形態における各構成要素の位相変化挙動△φを示す。「t」および「r」下付文字は、位相変化がそれぞれ、透過率または反射率で起きたかを示す。特に、グラフ130、132、および134はそれぞれ、フィルタ表面92bの青色ミラー(グラフ130)、反射防止表面92aおよび94aのために使用される典型的なARコーティング(グラフ132)を通る赤色チャンネル透過に影響する、フィルタ表面94bの緑色ミラーを通過する光(グラフ134)に対する、°で表される位相差△φを示す。グラフ140、142、および144は、それぞれ、フィルタ表面92bの青色ミラーの反射率ならびに反射防止表面94aのARコーティングに対するおよびフィルタ表面94bの緑色ミラーに対する青色チャンネル光に影響する透過に対する°で表される位相差△φを示す。グラフ146は、フィルタ表面94bでの緑色チャンネル反射に対する°で表される位相差△φを示す。特定の色帯域に関係のないこれらのグラフの様々な領域は、明確にするためにグレー表示されている。
【0063】
図9のグラフは、各チャンネルに対する総位相差△φをまとめたものである。このグラフが示すように、青色チャンネル性能は少なくとも満足のいくものであり、λo=465nmにおいて−25°超の位相差△φtotを有する。緑色および赤色チャンネルの性能はずっと良好であり、それぞれ、λo=535nmおよびλo=635nmあたりでほぼゼロの位相差△φを有する。
【0064】
図10は、本発明による図7システムのための別のコーティング設計に対する結果を提供する。ここで、位相補償反射性薄膜スタックが第2のダイクロイック要素94の反射防止表面94a上の反射防止性コーティングに追加されている。この差は、グラフ152を図8のグラフ122と比較することにより見ることができる。比較すると、図8のグラフ120で示されるものに対し、グラフ150で示される青色ミラー組成に変化はない。同様に、図8のグラフ124で示されるものに対し、グラフ154で示される緑色ミラーに変化はない。図10におけるグラフ160、162、164、170、172、174および176は、図7の直交偏光面実施形態システムにこのように提供される位相差△φを示す。グラフ160、164、170、174および176は、図8の対応するグラフと同一である。グラフ162および172は、それぞれ、赤色および青色カラーチャンネルに対する位相への影響を示すが、図8および10を比較した場合の変化を示すプロットにすぎない。図2Aおよび2Bを参照して説明した基本原理と一致して、ARコーティングの負のエッジ遷移は正味正の位相差を引き起こす。前に記載したように、図2Aに対し記載した応答のこの反転は、図7実施形態の入射面の直交配列に直接関係する。図11のグラフは、位相補償の結果をまとめたものであり、図9に示した未補正の場合との比較を示す。青色チャンネル性能は劇的に改善され、λo=465nmにおいて本質的に0°の位相差を有することがわかる。λo=635nmでの赤色チャンネル性能は優れており、わずかに改善され、ほぼゼロの位相差を有する。緑色標的波長λo=535nmでは、緑色チャンネルは本質的にゼロの位相差を提供するが、位相差変化の勾配は急になる。10°以内の標的位相性能を有するスペクトル帯域幅は約±10nmであり、これはレーザ帯域幅よりもずっとブロードであり、レーザ光源以外との本発明の使用の可能性が示されることに注意されたい。図11の結果は例示にすぎず、位相差勾配を平らにし、スペクトル帯域幅を広げ、残留位相差を減少させるさらに洗練されたコーティング設計が可能である。グラフ152の位相補償ARコーティングは、緑色チャンネルに影響しなかったが、このコーティングが反射防止表面94a上にあるからであり、これは、緑色光が共通光路上に誘導される前の位置に配置されていることに注意されたい。
【0065】
コーティングオプションおよび戦略
本発明の方法および装置は、ビームコンバイナを通して提供される光に対する多層薄膜光学コーティングを提供し、ここで、光学コーティングは、少なくとも1つの追加された多層反射フィルタ構造、すなわち、追加の多層薄膜スタックを含み、これは、ある薄膜スタック上で入射する個々の光源のいずれかの波長帯域の外側に存在する、少なくとも1つのバンドエッジ遷移を提供し、位相補償を提供し、結合された光源の1つ以上の波長に対する累積位相差△φtotを減少させる。この特徴を提供するために、光学コーティング設計は、意図的にさらなる反射特性を既存の多層薄膜フィルタスタックに追加し、あるいは補助コーティング構造を、光路中の1つ以上の構成要素の表面に追加し、この反射性特徴を提供する。ガイドラインとして、位相差補償を提供するエッジ遷移は、約100nm(△λoffset)以下の波長帯域(λo±△λ/2)内に存在するべきであり、またはエッジ遷移(λエッシ゛)は補償のために標的とされる。1つの方向(正または負)で位相差△φを減少させるために、1つ以上の光学コーティングが、反対方向で位相シフトを提供するように設計され、反射特性または特徴が、そうでなければ、調光を結合するためのフィルタ機能を提供するのに有用ではないフィルタ設計に追加される。
【0066】
コーティング設計の観点から、基本的な光学フィルタ型の各々に対し様々な複雑性が存在し、それらのいずれも位相補償ダイクロイック要素52として使用することができる。1つには、この複雑性は、提供されなければならないバンドエッジ遷移の数に関係し、一般に最も困難なフィルタ設計から、最も困難でないものまで下記のように格付けすることができる:
(i)帯域通過またはノッチフィルタ。これらのダイクロイックコーティングは2つのバンドエッジ遷移を提供する。2つのバンドエッジ遷移間の透過または反射特性曲線におけるリップルの量を制御することは困難な場合がある。
(ii)低波長通過(ローパス)エッジフィルタ。これらフィルタは単一のバンドエッジ遷移を有し、エッジ遷移より上の波長を反射し、エッジ遷移より下の波長を透過するように設計される。例えば、いわゆる「ホット」ミラーは、可視光を透過し、IR光を反射する。これらの設計に対し透過領域においてリップル効果を制御するのは困難であり得る。
(iii)高波長通過(ハイパス)エッジフィルタ。比較的リップルのない、これらはまた、単一のバンドエッジ遷移を有し、エッジ遷移より上の波長を透過し、エッジ遷移より下の波長を反射するように設計される。これらはいわゆる「コールド」ミラーと呼ばれ、可視光を反射し、IR光を透過する。
【0067】
実際、最も単純なハイ−パスエッジフィルタ(iii)を形成するために、7つ以上の層が一般に必要とされる;特に、要求されるフィルタ応答がより複雑である場合、追加の層が典型的には使用される。比較して、従来の反射防止性(AR)コーティングは一般に約3つの層を有する。
【0068】
いずれの反射性表面コーティングに対しても、バンドエッジ遷移の波長1/3で高調波が存在する。ノッチフィルタでは、この高調波は元のノッチフィルタの縮尺板として現れる。図1および3の例に関して述べたように、この高調波はIR領域で追加したノッチフィルタに起因する可能性がある。
【0069】
コーティング設計ツール
コーティング設計者は多層薄膜表面に対する位相差△φを増加または減少させるのに有効な多くの設計パラメータを有し、これらは、それらが影響を与える位相プロファイル変化の大きさおよび特性の両方において変動し得る。これらのパラメータは位相補償ダイクロイック要素52の設計または組成に影響する。例えば、sおよびp偏光間の位相差△φを増加させるためのこれらのツールまたは設計パラメータは下記を含む:
a)反射スタックにおけるダイクロイック材料の層数の増加;
b)交互の高および低インデックス(H/L)ダイクロイック材料のインデックス比の増加、nH/nL
c)光ビームに対する入射角の増加;
d)高および低インデックス膜構成要素の両方のインデックス、nHおよびnLの減少、よって媒質(典型的には空気またはガラス)のインデックスn0により近接する
e)位相補償エッジまたはノッチフィルタにより、波長帯域(λo±△λ/2)または対象のスペクトル帯域通過エッジ(λedge)からの距離(△λoffset)として提供されるエッジ遷移(λedge)の相対位置の制御(図2Bを参照されたい)
f)波長帯域のために位相補償を提供するための、位相補償フィルタ構造の高調波の使用。
【0070】
図12A−12Cのグラフは、薄膜層の数を増加させることにより位相差を増加させるための結果を比較する。nH=2.30およびnL=1.46(インデックス比nH/nL=1.57)の屈折率値を有するコーティング設計をこの例では使用する。図12Aの上のグラフは、2つの構成に対するsおよびp偏光の反射率特性曲線を示し(35°入射角を使用)、Rp曲線は最も内側であり、Rs曲線は最も外側である。図12Aの下のグラフはpおよびs偏光間の透過比TP/TSを示す。図12Bは、透過位相差△φtに対する位相差プロファイル110を示し、図12Cは反射位相差△φrに対する位相差プロファイル111を示す。図12Bおよび12Cでは、実線曲線は、より多くの数の層(10対の高/低インデックス層)を有する設計に対するデータを示し、点線曲線はより少ない数の層(7対の高/低インデックス層)を有するコーティング設計に対するデータを示す。図12Bは、透過に対する位相差△φtは、拡大された数のコーティング層により、約80°最大から約140°最大まで約50%だけ増加したことを示す。しかしながら、位相テール118の位相構造のスペクトル帯域幅△λまたは程度は大体同じままである。図12Cは、反射に対する位相差△φrが高振幅リップルの複雑な構造に支配され、これはスペクトル位置において(20nm以上もの大きさだけ)著しくシフトし得ることを示す。
【0071】
図13A−13Cのグラフは、より大きなインデックス比に対する結果(nH/nL=2.30/1.38=1.66:1)をより小さなインデックス比に対する結果(nH/nL=2.30/1.46=1.57:1)と比較することにより、交互の高および低インデックスダイクロイック材料のインデックス比、nH/nLを増加させた結果を比較する。図13Aの上のグラフは、2つの構成に対するsおよびp偏光の反射率特性曲線を示す(35°入射角を使用)。図13Aの下のグラフはpおよびs偏光間の透過比TP/TSを示す。図13Bは透過位相差△φtに対する位相差プロファイル112を示し、一方、図13Cは反射に対する位相差プロファイル113位相差△φrを示す。図13Bでは、透過位相差△φtの位相差プロファイル112は、屈折率比の変化に伴う、位相差プロファイル特徴(位相テール118を含む)の振幅(約30%)および位置および程度の小さな変化を示す。図13Cでは、位相差プロファイル113反射位相差△φrは再び、少量の違いを有するスペクトルシフトを示す。
【0072】
図14Aおよび14Bのグラフは、入射角を約35°から45°まで増加させた結果を比較する。実線グラフは、より大きな入射角(45°)に対するデータを示す。点線グラフは、より小さな入射角(35°)に対するデータを示す。図14Aの上のグラフは、2つの構成に対するsおよびp偏光の反射率特性曲線を示す。図14Aの下のグラフはpおよびs偏光間の透過比TP/TSを示す。図14Bは透過位相差△φtに対する位相差プロファイル114を示し、ピーク位相差の著しい差を示し、近140°から近175°まで大体30%の変化を有する。ピーク位相差スペクトル位置(約20nm)、およびエッジ遷移付近のスペクトル帯域にわたる位相テール118の位相差リップルにおいても著しい変化があり、より高い入射角の場合、大きさおよび程度においてより大きな位相差が提供される。
【0073】
図15Aおよび15Bのグラフは、高および低インデックス膜構成要素両方のインデックス、nHおよびnLを減少させた結果を比較し、そのため、それらは基材媒質のインデックスn0により近似する。この例では、より高い屈折率値(nH=2.30およびnL=1.8)を有するコーティング設計が屈折率値が減少された(nH=1.80およびnL=1.38)を有する設計と比較される。図15Aの上のグラフは、2つの構成に対するsおよびp偏光の反射率特性曲線を示す。図15Aの下のグラフはpおよびs偏光間の透過比TP/TSを示す。図15Bは透過位相差△φtに対する位相差プロファイル115を示し、ピーク位相差(約50%変化)およびエッジ遷移付近のスペクトル帯域にわたる位相テール118の位相差リップルにおいて著しい差を示し、より高いインデックス対は、大きさおよび程度においてより大きな位相差を提供する。
【0074】
高調波に関して
2つの種類の高調波は検討するに値する;プライマリコーティングのものおよび位相補償フィルタのもの。一般に、2つの材料から製造された多層コーティング(スタック)は交互の高および低インデックス(H/L)ダイクロイック材料の比に基づき下記順序を有するであろう;
・1:1比−第1次存在、第2次高調波なし、第3次存在、第4次高調波なし、第5次潜在的に存在、
・2:1比−第1次存在、第2次存在、第3次存在しない、第4次存在、
・3:1比−第1次存在、第2次存在、第3次存在、第4次存在しない、
これらの比は、高(H)および低(L)インデックス材料の光学膜厚(nd)の比であり、ここで、nは屈折率であり、dは物理膜厚である。普通に使用されるコーティング用語体系では、大文字は、特定の屈折率を有する4分の1波長層を表す。例えば、「H」は、高インデックス材料の4分の1波長光学膜厚(QWOT)を表し、「L」は低インデックス材料のQWOTを表し、「M」は、中間インデックス材料におけるQWOTを表す。QWOTは、膜が0.25波長厚となる光学膜厚として、または以下で規定される:
QWOT=nd=λ/4 (6)
この用語体系を用いると、第8分の1波長厚にすぎない高インデックス材料の層は0.5HまたはH/2として示され、半波長厚である層は2Hとして示される。光学またはダイクロイックコーティングの薄膜スタックは典型的には多数のQWOT層、またはわずかなまたは複数のQWOT層を含み、しばしば、繰り返しパターンで形成される層が含まれる。
【0075】
これを考えると、1:1比を有する例示的な高波長通過エッジフィルタは、(0.5LH0.5L)m薄膜スタック層配列を有することができ、一方、例示的な低波長通過エッジフィルタは(0.5LH0.5L)m薄膜スタック層配列を有することができ、ここでmは高/低インデックス層のパターンの繰り返しを示す指数である。例示的な2:1比の高反射体スタックは(1.33H0.66L)m1.1H薄膜スタック層配列を有する。もちろん、中間光学膜厚比が起こり得る。1.10:1の比では、非常に小さな第2次が現れ始め(反射率増加)、第3次が減少し始める(反射率減少)。2:1に近づくにつれ、より第2次が成長し、第3次が消失する。
【0076】
最初に、プライマリダイクロイックコーティングの固有の高調波について検討する。これらの固有の高調波は、プライマリ光学コーティングにより提供される位相差に反対符号の位相差を与えることができるが、位相取り消しまたは位相中性は保証されていない。プライマリコーティングの任意の固有の(および抑制されていない)高調波の位置は、簡単な数学により決定される波長で起こり、それらの位置は調節することができない。さらに、高次の高調波の幅は、第1次に比べ減少される(第5次高調波は、第1次帯域通過の幅の5分の1の幅を有するであろう)。可視またはIRに比べ、UVにおいて位相テールの程度を減少させる、コーティング非対称性対波長はまた、固有の高調波からの位相取り消しの可能性を減少させる。よって、潜在的に有用な高調波が起きる(UVにおいて)より短い波長では、より短い距離(△λoffset)が望ましいが、潜在的なオフセット距離(>100nm)が過度に大きくなる傾向がある。総合すれば、これは、エッジ遷移(λedge)の位置および位相差プロファイルの重なりは本質的に制御されず、位相取り消しが起こる可能性がないことを意味する。残留位相は、高調波がない残留位相差よりも高く、または低くなる可能性がある。
【0077】
これは実施例により説明することができる。従来の設計例の多くにおいて、緑色チャンネルは、緑色通過帯域ノッチフィルタであるプライマリコーティングを用いて、ダイクロイックコンバイナを介して導入されていた。このノッチフィルタは例えば、第1次、第2次、または第3次フィルタとして提供することができる。ノッチが532nmに中心があり、約65nm以下の標的通過帯域幅を有する第1次フィルタとして提供される場合、潜在的な第2または第3次高調波はそれぞれ、266nmおよび177nmで起こる。これら高調波は離れすぎているので(△λoffset>100nm)、典型的な青色イメージングスペクトルに対してであっても、位相差補償に役立つことができない。
【0078】
また、緑色ノッチフィルタが第2次フィルタとして提供される場合、コーティングスタックは1064nmで提供され、532nmで第2次高調波が得られる。その設計が第3次高調波を生成する場合、紫外線(UV)において354nmに存在するであろう。第1次は位相補償に役立つには遠すぎ、第3次は所望の青色イメージング波長(440−480nm)の近接部に対し境界(△λoffset約100nm)である。さらに別の代替案として、緑色ノッチが第3次フィルタとして532nmで提供される場合、第1次は1596nmにあり、第5次はUVにおいて319nmに存在するであろう。前の実施例のように、位相差補償に役立つ境界線距離にある(△λoffset約140nm)高調波(この場合、319nmでの第5次高調波)が存在する。目的は、繰り返しを基本に位相差を±10°未満まで減少させることであるので、プライマリコーティングの固有の高調波は、特に可視範囲では、役立つ可能性が低い。
【0079】
結果として、位相中性は自然には起こらないが、意図的なシステム設計およびコーティング設計の両方の結果であることがわかる。第一に、ダイクロイック要素の設計はコンバイナのジオメトリと共に、間違った色を間違った表面に提供することによる意図的でないおよび望ましくない位相相互作用ではなく、位相取り消しを得るために、補正色(波長)を補正表面に提供する。さらに、位相取り消しはプライマリコーティングの位相性能、ならびに位相補償薄膜スタックの位相応答の知識の結果起こり、その後者は、選択される波長(λedge、△λoffset)、および位相差プロファイル50の特性、例えば位相テール51に依存する。前に記載したように、位相差プロファイル50、例えば位相テール51は、コーティング層の数、屈折率およびインデックス比、ならびに入射光の入射角および波長(△λo、△λ)に依存する。これら特性のいずれかの小さな変化が、補償コーティングが、ゼロである、または少なくとも<±10°である残留位相差△φを提供する設計標的を達成するのを阻止し得る。一例として、材料特性バリエーション、例えば分散および吸収はまた、典型的にはコーティング挙動をより短い波長(特にUV)で変化させる。さらに、これらコーティング設計パラメータは注意深く使用されなければならず、そのため、設計された性能は作製中に確実に達成され得る。
【0080】
比較して、本発明は、位相差補償多層薄膜スタックは、位相補償ダイクロイック要素52の高調波を意図的に使用するように設計することができることを提供する。図3の設計例では、位相補償スペクトル帯域通過ノッチフィルタが赤色−IR波長領域に導入されたことが説明された。その例をさらに詳しく説明すると、位相補償ノッチフィルタは、約685nmに立ち上がり(赤色)エッジ遷移を有し、赤色位相(および可能性のある緑色)補償を支援することができる。このフィルタのための中心波長は110nm幅の帯域通過に対し、740nmとすることができる。このフィルタが2:1光学膜厚比を有する場合、第2次UV−青色高調波が370nmで起こり、立下りエッジ遷移は約395nmであり、比較的小さなオフセット(△λoffset2約70nm)では、これは青色において465nmで位相取り消しを提供することができる。
【0081】
この前の例が説明するように、スペクトルサイズを調整し、位相補償ダイクロイック要素52を配置し、正しいスペクトル位置にその位相補償フィルタの高調波を提供し、なお位相補償を提供することは巧妙なタスクである。プライマリコーティングの高調波を使用して対象の波長のためにうまく位相補償を提供することは、意図的に試みられた場合であっても、よりいっそう困難である。位相補償のためのプライマリコーティングの高調波の使用は、拡張されたスペクトルを有する用途、例えば、可視および近IRの一部の両方がイメージングされる用途に対し、より大きな可能性がある。
【0082】
プライマリコーティングの固有の高調波(例えば、300−400nm UVスペクトル範囲における高調波)により提供される位相応答は、位相補償ダイクロイック要素52の高調波により提供される対象とされる位相応答と、2つのコーティングが異なる表面上に存在したとしても、相互作用することができることもまた認識される。この相互作用は、予測または制御するのが困難である可能性がある。そのため、位相補償フィルタ(またはその高調波)と重なるスペクトル領域で起こり得るプライマリコーティングの高調波を抑制することが有用である。特に、位相補償を提供するために意図されるスペクトル重なり近エッジ遷移は、問題となり得る。幸運にも高調波、例えばプライマリコーティングのものを抑制することが可能である。高調波抑制は、第3の材料を設計に追加することにより達成することができる。例えば、エッジフィルタのための(0.5L H 0.5L)設計の代わりに、別のスタイル(0.25L 0.25M H 0.25M 0.25L)の設計を使用することができる。材料および光学膜厚比が変化されると、異なる高調波次数が抑制される。
【0083】
システム検討
位相補償型ダイクロイックコンバイナまたはセパレータの設計は、システム設計演習とみなすことができることもまた知られている。位相補償ダイクロイック要素52は、前に記載された様々なコーティングツールを使用して効果的に設計することができ、位相低減は、様々な因子により影響され得る。図5と関連する例では、スペクトルの黄色−橙色領域におけるエッジ遷移を有する位相補償フィルタの適用は、システムジオメトリを利用し、この場合、赤色チャンネル12rはまだ導入されていなかった。高調波に関しては、プライマリコーティングの高調波は、位相補償フィルタとの相互作用を防止するように意図的に抑制され、あるいは位相補償を提供するのに好都合な様式で意図的に配置され得る。プライマリコーティングのスペクトル特性(スペクトル通過帯域領域、少なくとも1つのエッジ遷移、および関連する位相差応答)はまた、位相補償フィルタにより、より容易に補正される入射光の標的波長(λo、△λ)で位相差を減少させる、または位相差(大きさおよび符号)を提供するように調整され得る。
【0084】
同様に、異なるコーティングツール(例えば、層数、インデックス比、高または低インデックス、および入射角)に対する位相応答は、ツールによって著しく変動した。入射角は、システム設計検討事項によりおそらく固定され、コーティング設計者は、所望の結果を達成するために他のパラメータをより自由に操作する可能性がある。補償光学コーティングが透過で使用される位相補償ダイクロイック要素52の使用は、反射で使用されるコーティングよりも好ましい可能性があり、というのは、位相差応答が、より容易に調整することができ、繰り返し作製することができるからであり、これは、高振動数リップリングが存在しないためである(図12B、13B、14B、および15Bの反射位相グラフを、図12Cおよび13Cの透過位相グラフと比較されたい)。
【0085】
位相補償型設計の獲得
図16の論理流れ図は、1つの実施形態における、2つ以上のコンバイナダイクロイックフィルムのための位相補償型設計を獲得するために従われる1組の基本的な工程を含む例示的な設計プロセスを示す。最初の設計工程S110では、最も挑戦的なフィルタ設計(フィルタA)が最初に取り組まれる。設計の困難性のレベルは、前に概要が示されたフィルタ型、および入射光の波長などの因子に基づく。最初は、最初の設計工程S110中にsおよびp偏光処理に影響する位相差を補正する試みはなされない。フィルタAに対する位相効果を測定し、または計算する位相評価工程S120が次にくる。第2設計工程S130がその後、実行され、この工程では、より挑戦的でない多層フィルタ(フィルタB)が設計される。第2位相評価工程S140が次にきて、ここで、フィルタAおよびBの組み合わせに対する累積位相差が測定され、または計算される。その後、位相補償工程S150が実施され、フィルタAおよびBの累積位相差に対する位相補償が適用される。一般に、位相補償はより挑戦的でないフィルタ設計またはいくらか関連する表面、例えば、例としてダイクロイック要素のAR表面に適用することがより容易である。図12A−15Bを参照して前に記載される技術を適用して、所望の量の位相補償を得ることができる。
【0086】
実施例 1
例として、図17A、17B、および17Cの表は、図3を参照して前に記載した位相差補償を提供するための薄膜層設計を詳述する。図17Aは、フィルタ表面43bの青色ミラーの組成を示し、層の順序、層材料、および層厚(nm)を特定する。図3実施形態は、赤色−IR波長範囲の位相補償スペクトル帯域通過60を含む。1つの構成では、位相補償スペクトル帯域通過60は、反射防止表面45a上の反射防止コーティングに追加された「ホットミラー」型反射表面スタック(IRを反射し、可視光を透過する)として提供することができる。図17Bは、この特徴を提供するために使用することができる位相補償ARコーティングの組成を示す。図17Cは、フィルタ表面45bの緑色ノッチフィルタのための層リストを提供する。薄膜材料は下記のようにコード化される:
A−TiO2
B−Y2O3
C−Al2O3
D−MgF2
H−ZrO2
L−SiO2
【0087】
ARコーティングに必要とされる反射特性の追加は、層の数を著しく加えることが知られ得る。典型的なARコーティングは3つのコーティングしか必要としない。しかしながら、位相補償の改善は、多くの適用に対し複雑さおよびコストの追加を正当化する。
【0088】
実施例2
図18A、18B、および18Cの表は、図7−10を参照して前に記載した別の実施形態の例を示し、この場合、2つのフィルタ表面92bおよび94bは相互に直交する入射偏光面を有する。ここで、位相差のための補償が反射防止表面94aのARコーティングに追加されるUV−低青色反射性特徴(ミラー)により提供される(図7)。したがって、図18Bは、この特徴を提供するために使用することができる適切な位相補償ARコーティングの組成を示す。図18Aは、フィルタ表面92bの青色ミラーのための層配列を提供し(図7)、図18Cはフィルタ表面94bの緑色ノッチフィルタのための層配列を示す(図7)。
【0089】
さらに考慮すべきこと
光学コーティング技術分野の当業者は、ダイクロイック要素の組み合わせからビームコンバイナを設計する多くの方法が存在し得ること、様々なコーティング処方を多層膜スペクトルフィルタ、例えば本明細書で記載されるものを提供するために使用することができることを認識するであろう。
【0090】
本明細書で提供される実施例および説明は、赤色、緑色、および青色波長のレーザを使用する画像投影のために使用されるビームコンバイナに主に向けられている。本発明の装置および方法は、同様に他の型のイメージング装置、例えば追加の色を使用するもの、および多層薄膜ダイクロイック表面を使用して光を結合または分離する他のシステムにより広く適用することができることに注意すべきである。
【0091】
本説明は、主にレーザまたは固体光源の使用に取り組んでいるが、本発明の装置および方法はまた、例えば、他の光源、例えばキセノンアーク光源を使用するイメージング装置と共に使用することができる。本発明で使用されるアプローチは、狭い波長帯域を有する固体光源と共に使用するのに特によく適合され、というのも、この狭帯域△λ特性は、調光の波長とは異なる波長で反射する反射構造の追加を、より容易に可能にするからであることに注意しなければならない。。これは、例えば、ランプまたは他のより従来の照明光源を用いて提供されるような、よりブロードな波長が使用される場合よりは、例えば、固体光源を使用して、狭い波長帯域が提供された場合、より容易に実施される。
【0092】
本開示において記載され、図1、3、4、5、および7の例において示される、例示的な投影装置は、3つの原色、赤色、緑色、および青色からカラー画像を形成する。本発明の装置および方法は、異なる組の原色を使用するディスプレイ装置、例えば、画像を形成するために4つ以上の色を使用する装置に拡張することができるとに注意すべきである。本発明の位相補償方法は、可視スペクトルでの使用に限定されないこともまた理解されるべきである。これは、例えば、マルチチャンネル可視および赤外線、または赤外線のみのイメージングシステムにおいて使用され得る。
【0093】
本発明について、特にそのある好ましい実施形態を参照して詳細に記載してきたが、本発明の精神および範囲内で、変更および改変を実施することができることは理解されるであろう。例えば、ビームコンバイナ40を形成し、単一パスにおいて位相差補償を提供するために使用されるダイクロイック要素の配列は、図1および4で示されるものから変化させることができ、光学プリズム、例えばX−プリズム、V−プリズム、またはフィリップスプリズムを形成するために、板ガラス表面上で形成された薄膜ダイクロイックコーティングだけでなく、ガラスまたは他の透明媒質に埋め込まれた、または浸漬された光学表面上で形成されたコーティングを含んでもよい。本発明の方法を、ビームコンバイナ40を参照して記載してきたが、同様の技術は、ビームセパレータ装置の設計のために適用することができるであろう。よって、ビームコンバイナ40は、より一般的には、ビームセパレータ、ビームコンバイナ、または両方(ダブルパス)として使用することができるマルチカラーチャンネル、マルチダイクロイックビーム指向アセンブリとして考えることができる。システム図面は、縮尺通りに描かれていないが、これら実施形態において使用される主要構成要素および原理を示すこともまた注意すべきである。
【0094】
別の実施形態では、本発明のビームコンバイナ40は、様々な型のイメージング装置のために、他の型の光分離および結合構成要素と共に使用することができる。図19の略図は、レーザまたは他の固体、狭帯域源からの多色光を、TIR(全内部反射)プリズム225、フィリップスプリズム206、および空間光変調器210(例えばDLP)を含む変調光学システム230に提供するためにビームコンバイナ40を使用するイメージング装置200の実施形態を示す。この実施形態では、カラーチャンネル12r、12g、および12bは、画像変調のための結合された多色偏光をフィリップスプリズム206に誘導するTIRプリズム225への照明を提供する。この照射偏光は、1つの画像フレームあたり、数回偏光状態を切り換える偏光スイッチング装置(図示せず)により変調され得る。照射光はまた、1つ以上ホモジナイザー(図示せず)により光学的に均質にされる。フィリップスプリズム206はその後、電子投影技術における当業者によく知られた様式で、入射多色光を分離してその成分色に戻し、各色を対応する空間光変調器210に誘導する。光は、空間光変調器210により変調され、その後、フィリップスプリズム206内で再結合され、TIRプリズム225に向かって戻され、偏光アナライザ32および投影レンズ28に誘導され、これらは光をディスプレイ表面30上に投影する。
【0095】
図20の略図は、イメージング装置200のもう1つ別の実施形態を示し、ここでは、ビームコンバイナ40がフィリップスプリズム206と同様に使用される。しかしながら、この場合、照射光は、変調光学システム230内で、偏光ビームスプリッター204およびフィリップスプリズム206を介して誘導される。偏光ビームスプリッター204はマクネイルプリズムとして示されているが、他の装置、例えばワイヤグリッド偏光ビームスプリッターを使用することができる。図21の略図は、イメージング装置200のもう1つ別の実施形態を示し、ここで、照射は空間光変調器210に、X−キューブまたはX−プリズム220を介して提供される。いずれの実施形態でも、空間光変調器210は、LCDまたはLCOS装置とすることができる。例えば、空間光変調器210からのリターダンス変化を補正するために、偏光補償器215もまた含ませることができる。
【0096】
前のように、図19、20、および21のイメージング装置は、例えば、3D映像の目的で、画像品質を改善するために、位相補償を必要とすると仮定される。そのため、イメージング光がビームコンバイナ40および変調光学システム230を通過する時に、位相差△φが減少され、または補償される必要がある。よって、本発明の位相補正設計法は、図19または20で示される、単一パス構成で使用されるビームコンバイナ40だけでなく、変調光学システム230のコーティング(ダイクロイックまたはAR)の設計にも適用することができることが理解されるべきである。例えば、フィリップスプリズム206またはX−プリズム220の光学薄膜コーティングは、位相差補償を提供するために、通過照射スペクトルの外側で適切なエッジ遷移を提供するコーティング構造を含むことができる。本発明の位相差補償方法は図19および20で示されるダブルパス構造で、プリズム、例えばフィリップスプリズム206またはX−プリズム220と共に使用することができ、ローゼンブルースらによる、前記論文「位相制御プリズムコーティングおよびバンドシフトねじれ補償器による投影システムにおけるコントラストの補正」において記載されるダブルパス対称性位相補償方法に頼ることはないことを理解すべきである。
【0097】
本明細書で記載されるコーティング設計アプローチはまた、別の実施形態におけるビームスプリッター、例えば図20の、例えば偏光ビームスプリッター204に適用可能である。ビームスプリッターは、多層薄膜スタックを有する第1表面を有し、ここで、表面は、第1の波長帯域の光を光路に沿って透過し、第2の波長帯域の光を光路上に反射するように配置される。ビームスプリッターはまた、光路に沿って配置され、第1または第2の波長帯域の外側に存在する反射性エッジ遷移を提供するように構成された、第1表面または第2表面のいずれか上に形成された位相差補償多層薄膜スタックを有する。本発明の補償方法はまた、偏光アナライザ32またはワイヤグリッド偏光ビームスプリッターの平らな(非構造化)表面に適用することができる。
【0098】
結論として、本発明は、構成要素上でダイクロイックまたはARコーティングのいずれかと組み合わされた薄膜構造、例えばノッチフィルタまたはパスエッジフィルタを使用して位相差△φ補償を提供する。薄膜構造は、構成要素を通過する光のスペクトルの外側でエッジ遷移を提供するが、これは、通過スペクトル内の位相差を補償するエッジ遷移と関連する位相差プロファイルを提供する。本発明の装置および方法は、光学的構成要素を介して、単一パスまたはダブルパスモードのいずれかにおいて適用することができる。これは、色分離および再結合のダブルパスジオメトリの対称性による位相取り消しに依存することにより、偏光解消の回転成分をまとめて除去するようにプリズムコーティングを設計することにより偏光位相差△φを補償するように試みる前の投影システムとは異なる。さらに、本発明は、主要なダイクロイック要素41の通過帯域42P内での位相補償を提供し、対象のスペクトル帯域での光効率(反射率または透過率)を不都合なほどに手放すことはない。
【0099】
本発明の装置および方法は、狭帯域レーザまたは他の固体光源により提供されるものの近くの波長で、意図的に反射性多層スタック構造を構築することに注意すべきである。このため、本発明の装置および方法は、多色白色光、例えばアーク灯からの光を、構成要素の色帯域に分離し、その後、その光を各帯域わたって変調するイメージング装置と共に使用するのに好適ではない。というのは、ブロードなスペクトル帯域では、10°以下まで位相補償を提供するのが困難であるからである。そのようなシステムは、主に投影のために可能な光を全て得るために、広帯域光を使用する。しかしながら、図19および20において示されるように、本発明の実施形態は、偏光ビームスプリッターおよびX−プリズム、フィリップスプリズムまたはプランビコン装置のいずれかを使用して従来の色分離および再結合を使用するイメージング装置アーキテクチャ、またはダイクロイック表面の配列を使用し、レーザまたは他の固体光源からの光を取り扱う他のカラーコンバイナと共に使用することができる。
【0100】
好都合なことに、本発明の実施形態は、多層薄膜コーティングを使用する従来のカラーコンバイナおよびカラースプリッター装置よりも位相差を減少させることを助ける。追加のスループット利得もまた注目されている。例えば、図4の基本的なダイクロイックフィルタ配列を使用する1つの実施形態において、緑色チャンネルにわたる位相差は、20°から±0.5°以内に減少され、青色チャンネルでは、ほぼ5°の改善があり、赤色チャンネルでは同様の改善があった。この位相差の改善は、測定可能な光効率増加を伴い、緑色チャンネルでは少なくとも5%の利得が得られ、青色および赤色チャンネルではより小さいが、有意の改善が得られた。
【0101】
本明細書で記載される本発明の例示的な実施形態は、これらの実施例においてビームコンバイナ40として示されるダイクロイックビームコンバイナの表面に追加された反射性多層膜スタックを使用している。位相差△φに対する補償は、また、光路中の様々な光学素子、例えばレンズ、ガラス板、ミラー、フィルタ、プリズム、偏光子、および他の構造上で提供することができることに注意すべきである。さらに、図19および20を参照して記載されるように、同じ補償戦略は、従来のフィリップスプリズムおよびX−プリズムカラーセパレータおよびコンバイナを使用する実施形態におけるコーティングに適用可能である。
【符号の説明】
【0102】
12r、12g、12b カラーチャンネル
22、23、24 ダイクロイック要素
22a、23a、24a 反射防止表面
22b、23b、24b フィルタ表面
28 投影レンズ
30 ディスプレイ表面
32 偏光アナライザ
40 ビームコンバイナ
41 プライマリダイクロイック要素
42 反射率プロファイル
42E エッジ遷移
42P 通過帯域
42R 阻止帯域
43、44、45 ダイクロイック要素
43a、44a、45a 反射防止表面
43b、44b、45b フィルタ表面
46L、46R、47L、47R、48L、48R、49L、49R ボックス
50、50c 位相差プロファイル
51、51c 位相テール
52 位相補償ダイクロイック要素
53r、54r、55r 反射フィルタグラフ
53t、54t、55t 透過フィルタグラフ
53φ、54φ、55φ、56φ、57φ 位相差グラフ
60、61 位相補償スペクトル帯域通過
62r、63r、64r 反射フィルタグラフ
62t、63t、64t 透過フィルタグラフ
62φ、63φ、64φ、66φ、67φ 位相差グラフ
80 光学素子
82 入射光
84 入射面
86 反射光
92、94 ダイクロイック要素
92a、94a 反射防止表面
92b、94b フィルタ表面
100、101 イメージング装置
110、111、112、113、114、115 位相差プロファイル
118 位相テール
120、122、124、130、132、134、140、142、144、146 グラフ
150、152、154、160、162、164、170、172、174、176 グラフ
200 イメージング装置
204 偏光ビームスプリッター
206 フィリップスプリズム
210 空間光変調器
215 偏光補償器
220 X−プリズム
225 TIRプリズム
230 変調光学システム
S110 初期設計工程
S120 位相評価工程
S130 第2設計工程
S140 第2位相評価工程
S150 位相補償工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ビームを1つの光路上に結合させるためのビームコンバイナであって、
第1の波長帯域の光を光路に沿って透過し、第2の波長帯域の光を前記光路上に反射するように配置され、通過光の偏光状態に位相差を与えるダイクロイックコーティングを有する第1のダイクロイック要素と、
第1および第2の波長帯域の光を前記光路に沿って透過し、第3の波長帯域の光を前記光路上に反射するように配置され、通過光の偏光状態に対し追加の位相差を累積する、ダイクロイックコーティングを有する第2のダイクロイック要素と、
を備え、
前記第1または第2のダイクロイック要素のいずれかの表面はさらに、前記表面上で入射する光に対し第1、第2、および第3の波長帯域のいずれかの外側に存在する少なくとも1つの正または負反射率エッジ遷移を提供する位相差補償多層薄膜スタックを備え、前記位相差補償多層薄膜スタックは前記第1、第2、および第3の波長帯域の少なくとも1つにおいて累積された位相差に対する補償を提供する、ビームコンバイナ。
【請求項2】
前記位相差補償多層薄膜スタックを提供する前記表面は、前記第1または第2のダイクロイック要素のいずれか上に、前記ダイクロイックコーティングの一部または前記ダイクロイック要素と結合された反射防止コーティングとして形成される、請求項1記載のビームコンバイナ。
【請求項3】
前記位相差補償多層薄膜スタックは、帯域通過フィルタまたはパスエッジフィルタの特徴として、正または負反射率エッジ遷移を提供する、請求項1記載のビームコンバイナ。
【請求項4】
前記位相差補償多層薄膜スタックは、前記第1、第2、または第3の波長帯域の80nm未満内にあるエッジ遷移を提供する、請求項1記載のビームコンバイナ。
【請求項5】
前記位相差補償多層薄膜スタックは累積位相差を±10°未満まで減少させる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記位相差補償多層薄膜スタックは、薄膜層の数、薄膜層の屈折率、薄膜層の屈折率の比、エッジ遷移のスペクトル位置、またはそれらの組み合わせを含むパラメータに基づく位相差特性が提供される、請求項1記載のビームコンバイナ。
【請求項7】
前記第1、第2、および第3の波長帯域の少なくとも1つにおける累積位相差に対する補償は、少なくとも部分的に前記位相差補償多層薄膜スタックの高調波により提供される、請求項1記載のビームコンバイナ。
【請求項8】
前記第1のダイクロイック要素の表面の入射面は、前記第2のダイクロイック要素の入射面に実質的に直交する、請求項1記載のビームコンバイナ。
【請求項9】
前記第1、第2、および第3の波長帯域は可視波長範囲にあり、前記位相補償薄膜スタックは、前記第1、第2、および第3の波長帯域を含む波長範囲の外側で反射性帯域通過フィルタまたはパスエッジフィルタを提供する、請求項1記載のビームコンバイナ。
【請求項10】
前記第1の波長帯域は緑色または赤色である、請求項1記載のビームコンバイナ。
【請求項11】
複数の光ビームを1つの光路上に結合させるためのビームコンバイナであって、
第1の波長帯域の光を前記光路に沿って透過し、第2の波長帯域の光を前記光路上に反射するように配置され、透過性通過帯域効率、反射性通過帯域効率、および通過帯域エッジ遷移と関連する特徴を有する位相差プロファイルを有し、通過光の偏光状態に位相差を与える第1のダイクロイック要素と、
第1および第2の波長帯域の光を前記光路に沿って透過し、第3の波長帯域の光を前記光路上に反射するように配置され、透過性通過帯域効率、反射性通過帯域効率、および通過帯域エッジ遷移と関連する特徴を有する位相差プロファイルを有し、通過光の偏光状態に位相差を与える第2のダイクロイック要素と、
前記光路に沿って配置された、少なくとも1つの光学表面上で形成された、少なくとも1つの位相差補償多層薄膜スタックであって、前記位相差補償多層薄膜スタックは、前記表面上で入射する光に対し第1、第2、および第3の波長帯域の外側に存在する少なくとも1つの正または負反射率エッジ遷移を提供するように構成され、前記位相差補償多層薄膜スタックのエッジ遷移と関連する特徴を有する位相差プロファイルを有し、これらの位相差は、少なくとも1つの波長帯域において、前記第1または第2のダイクロイック要素により与えられる位相差を減少させる、少なくとも1つの位相差補償多層薄膜スタックと、
を備える、ビームコンバイナ。
【請求項12】
前記位相差補償多層薄膜スタックは、薄膜層の数、薄膜層の屈折率、薄膜層の屈折率の比、エッジ遷移のスペクトル位置、前記位相差補償多層薄膜スタックの高調波の存在、またはそれらの組み合わせを含むパラメータに基づく位相差特性が提供される、請求項11記載のビームコンバイナ。
【請求項13】
前記位相差補償多層薄膜スタックを有する光学表面は、前記第1のダイクロイック要素、前記第2のダイクロイック要素、または前記第1および第2のダイクロイック要素の前後、もしくはその間に配置された光学素子上に配置される、請求項11記載のビームコンバイナ。
【請求項14】
入射光波長範囲内で入射偏光の反射を抑制し、さらに、入射光波長範囲の外側に存在する波長帯域で反射率エッジ遷移を提供し、入射偏光波長範囲内の偏光に対し位相差補償を提供する、光学表面上で形成される反射防止性薄膜コーティング。
【請求項15】
入射偏光ビームを受理するように配置された光学素子であって、前記光学素子は、入射光ビームを含む第1の波長帯域を反射または透過する表面上のダイクロイック光学コーティングを含み、前記光学素子はさらに、表面上に位相差補償多層薄膜スタックを含み、そのため前記位相差補償多層薄膜スタックは前記第1の波長帯域の外側のスペクトル領域に存在する正または負反射率エッジ遷移を提供し、エッジ遷移と関連する位相差応答は、前記ダイクロイック光学コーティングにより入射偏光に与えられた位相差を補償する、光学素子。
【請求項16】
前記位相差補償多層薄膜スタックは、薄膜層の数、薄膜層の屈折率、薄膜層の屈折率の比、エッジ遷移のスペクトル位置、前記位相差補償多層薄膜スタックの高調波の存在、またはそれらの組み合わせを含むパラメータに基づく位相差特性が提供される、請求項15記載の光学素子。
【請求項17】
前記位相差補償多層薄膜スタックと関連する重なりスペクトル領域内で起こりえる前記ダイクロイック光学コーティングの高調波、または前記位相差補償多層薄膜スタックの高調波は抑制される、請求項15記載の光学素子。
【請求項18】
前記光学素子に提供される前記入射偏光は偏光の向きが変化するように空間的にまたは時間的に変調される、請求項15記載の光学素子。
【請求項19】
入射偏光ビームを受理するように配置された光学素子であって、前記光学素子は、あるスペクトル帯域幅を有する前記入射光ビームを含む第1の波長帯域を反射または透過する表面上のダイクロイック光学コーティングを含み、前記ダイクロイック光学コーティングは、あるスペクトル通過帯域領域、少なくとも1つのエッジ遷移、および関連する位相差応答を有することにより特徴づけられ、
前記光学素子は、i)前記入射光の前記スペクトル帯域幅に対する前記ダイクロイックコーティングの前記エッジ遷移および関連する位相差応答の位置決め、ii)第1の波長帯域の外側の正または負反射率エッジ遷移および前記入射光の前記スペクトル帯域幅にまで及ぶ関連する位相差応答を有する位相差補償多層薄膜スタックを表面上で提供すること、iii)またはこれらの組み合わせを含む手段により位相補償が提供される、光学素子。
【請求項20】
複数の光ビームを光路に沿って誘導するための、マルチカラーチャンネル、マルチダイクロイック、ビーム指向アセンブリであって、
第1の波長帯域の光を前記光路に沿って透過し、第2の波長帯域の光を前記光路上に反射するように配置された第1のダイクロイック要素と、
前記第1および第2の波長帯域の光を前記光路に沿って透過し、第3の波長帯域の光を前記光路上に反射するように配置された第2のダイクロイック要素であって、前記第1および第2のダイクロイック要素は、通過光の偏光状態に位相差を与える、第2のダイクロイック要素と、
前記光路に沿って配置され、表面上で入射する光に対し前記第1、第2、または第3の波長帯域の外側に存在する反射性エッジ遷移を提供するように構成される表面上に形成された位相差補償多層薄膜スタックと、
を含み、前記反射率エッジ遷移と関連する位相差は、前記第1、第2、および第3の波長帯域の少なくとも1つにおいて前記第1または第2のダイクロイック要素により与えられる位相差に対する補償を提供する、マルチカラーチャンネル、マルチダイクロイック、ビーム指向アセンブリ。
【請求項21】
前記位相変化補償多層薄膜スタックは、その位相差特性が、薄膜層の数、薄膜層の屈折率、薄膜層の屈折率の比、エッジ遷移のスペクトル位置、フィルタの高調波の存在、またはそれらの組み合わせを含むパラメータに基づく光学フィルタを提供する、請求項20記載のマルチカラーチャンネル、マルチダイクロイック、ビーム指向アセンブリ。
【請求項22】
前記位相差補償多層薄膜スタックは、前記マルチカラーチャンネル、マルチダイクロイック、ビーム指向アセンブリが単一パスまたはダブルパス構造のいずれかで使用される場合に補償を提供するように設計され、そのため、光ビームは、それぞれ、前記アセンブリを介して1度または2度誘導される、請求項20記載のマルチカラーチャンネル、マルチダイクロイック、ビーム指向アセンブリ。
【請求項23】
前記ダイクロイック要素は、ガラス板、光学プリズム、またはその組み合わせの光学表面上で形成されるダイクロイックコーティングとして提供され、ビームコンバイナまたはビームセパレータのいずれかとして機能する、請求項20記載のマルチカラーチャンネル、マルチダイクロイック、ビーム指向アセンブリ。
【請求項24】
前記位相差補償多層薄膜スタックは、反射防止性コーティング、帯域通過フィルタコーティング、またはパスエッジフィルタコーティングを含む型の光学コーティングである、請求項20記載のマルチカラーチャンネル、マルチダイクロイック、ビーム指向アセンブリ。
【請求項25】
前記位相差補償多層薄膜スタックは、可視波長領域内の光を反射する、透過する、または反射および透過する表面上で形成される、請求項20記載のマルチカラーチャンネル、マルチダイクロイック、ビーム指向アセンブリ。
【請求項26】
前記位相差補償多層薄膜スタックは可視波長領域内で少なくとも部分的に反射性である、請求項20記載のマルチカラーチャンネル、マルチダイクロイック、ビーム指向アセンブリ。
【請求項27】
前記位相差補償多層薄膜スタックが形成される前記光路内の前記表面は、第1または第2のダイクロイック要素のいずれかの表面、あるいは前記第1および第2のダイクロイック要素の間、前、もしくは後に存在する別のガラスもしくは他の固体透明媒質上または内の表面である、請求項20記載のマルチカラーチャンネル、マルチダイクロイック、ビーム指向アセンブリ。
【請求項28】
前記第1の波長帯域の光は、緑色または赤色である、請求項20記載のマルチカラーチャンネル、マルチダイクロイック、ビーム指向アセンブリ。
【請求項29】
前記第1の波長帯域、第2の波長帯域、または第3の波長帯域の光は、変調レーザビームにより提供される 、請求項20記載のマルチカラーチャンネル、マルチダイクロイック、ビーム指向アセンブリ。
【請求項30】
多層薄膜スタックとして形成された少なくとも第1および第2のフィルタを含むビーム結合装置からの位相差を補償するための方法であって、
前記第1および第2のフィルタにより与えられた通過光の偏光状態間の累積位相差を決定する工程であって、前記通過光は少なくとも第1、第2、および第3の波長帯域の光を含む工程と、
前記第1、第2、および第3の波長帯域の1つ以上の光の経路に位相補償フィルタを追加する工程と、
を含み、前記位相補償フィルタは、帯域通過フィルタまたはエッジフィルタのいずれかであり、前記位相補償フィルタは、前記第1、第2、および第3の波長帯域の外側の波長を反射または透過し、前記第1、第2、または第3の波長帯域内の波長で位相差補償を提供する、方法。
【請求項31】
前記位相補償フィルタは多層薄膜スタックであり、前記反射フィルタを追加する工程は、前記多層薄膜スタック内の1つ以上の層の数、組成および配列を特定する工程を含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
イメージング装置により、少なくとも第1、第2、および第3のカラーチャンネルからの調光を用いる多色画像を形成するための方法であって、
前記第1のカラーチャンネルからの偏光調光を、第1のダイクロイック要素を通して、光路に沿って透過し、前記第2のカラーチャンネルからの偏光調光を前記光路上に反射する工程と、
前記第1および第2のカラーチャンネルからの前記偏光調光を第2のダイクロイック要素を通して、前記光路に沿って透過し、前記第3のカラーチャンネルからの偏光調光を前記光路上に反射する工程であって、前記第1および第2のダイクロイック要素は、前記通過偏光調光の偏光状態に位相差を与える工程と、
前記カラーチャンネルの少なくとも1つの前記光路に沿って存在する少なくとも1つの表面上に位相差補償多層薄膜スタックを提供することにより、前記与えられた位相差を補償する工程であって、前記位相差補償多層薄膜スタックは、前記第1、第2、および第3の色の前記波長とは異なる予め決められた波長で反射率エッジ遷移を提供し、前記反射率エッジ遷移と関連する位相差は、前記与えられた位相差を補償する工程と、
を含む、方法。
【請求項33】
前記予め決められた波長は、前記可視スペクトル内またはその外側のいずれかに存在する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
ディスプレイ表面上で画像を形成するためのイメージング装置であって、
各カラーチャンネルが個々の第1、第2、または第3の波長帯域にわたって変調光ビームを提供するようエネルギーを与え得る、少なくとも第1、第2、および第3のカラーチャンネルと、
前記少なくとも第1、第2、および第3のカラーチャンネル光ビームを光路上に結合させるビームコンバイナであって、
前記第1の波長帯域の光を前記光路に沿って透過し、前記第2の波長帯域の光を前記光路上に反射するように配置され、前記通過光の偏光状態に位相差を与える第1のダイクロイック要素と、
前記第1および第2の波長帯域の光を前記光路に沿って透過し、前記第3の波長帯域の光を前記光路上に反射するように配置され、前記通過光の偏光状態に追加の位相差を与える第2のダイクロイック要素と、
前記光路に沿って配置され、前記表面上で入射する光に対し、前記第1、第2、または第3の波長帯域の外側に存在する反射性エッジ遷移を提供するように構成され、前記第1、第2、および第3の波長帯域の少なくとも1つ内で起こる与えられた位相差を補償する位相差プロファイルを提供する、表面上で形成された位相差補償多層薄膜スタックと、
を含む、ビームコンバイナと、
結合された光ビームを前記光路からディスプレイ表面上に誘導するための投影レンズと、
を備える、イメージング装置。
【請求項35】
少なくとも第1、第2、および第3の波長帯域から光路上への光ビームの組み合わせとして多色照明を提供するにように配置されたビームコンバイナであって、
前記第1の波長帯域の光を前記光路に沿って透過し、前記第2の波長帯域の光を前記光路上に反射するように配置され、通過光の偏光状態に位相差を与える第1のダイクロイック要素と、
前記第1および第2の波長帯域の光を前記光路に沿って透過し、前記第3の波長帯域の光を前記光路上に反射するように配置され、前記通過光の偏光状態に追加の位相差を与える第2のダイクロイック要素と、
前記ビームコンバイナの前記光路に沿って配置され、前記表面上で入射する光に対し、前記第1、第2、または第3の波長帯域の外側に存在する反射性エッジ遷移を提供するように構成され、前記第1、第2、および第3の波長帯域内で起こる前記与えられた位相差を補償する位相差プロファイルを提供する、表面上で形成された位相差補償多層薄膜スタックと、
を含む、ビームコンバイナと、
プリズムアセンブリおよび空間光変調器が提供された変調光学システムであって、前記空間光変調器は、画像データを画像調光に翻訳し、前記プリズムアセンブリは、前記多色照明を、その第1、第2、および第3の波長帯域に分離し、各波長帯域を対応する空間光変調器に誘導し、各空間光変調器からの調光を再結合し、再結合された調光を、ディスプレイ表面上への投影のための投影レンズに向かって誘導するように配置されたカラーコンバイニングプリズムを含む、変調光学システムと、
を備える、イメージング装置。
【請求項36】
前記カラーコンバイニングプリズムは、前記光路に沿って配置され、前記表面上で入射する光に対し、前記第1、第2、または第3の波長帯域の外側に存在する反射性エッジ遷移を提供するように構成され、前記第1、第2、および第3の波長帯域内の与えられた位相差を補償する位相差プロファイルを提供する、表面上で形成された位相差補償多層薄膜スタックが提供される、請求項35記載のイメージング装置。
【請求項37】
前記前記変調光学システムは、X−プリズムもしくはフィリップスプリズムであるカラーコンバイニングプリズム、または液晶デバイスまたはマイクロミラーアレイ装置である空間光変調器が提供される、請求項35記載のイメージング装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図9】
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【図10−1】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B−1】
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【図17B−2】
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【図17C】
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【図18A】
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【図18B−1】
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【図18B−2】
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【図18C】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図10−4】
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【公表番号】特表2013−511066(P2013−511066A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538859(P2012−538859)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/055535
【国際公開番号】WO2011/059879
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】