説明

位置合わせされた別々の光学要素を結合するための方法

本発明は位置合わせすなわち整合された別々の光学要素を結合する方法に関し、本発明の目的は、光学要素が位置合わせすなわち整合された状態で結合することができ、熱的及び長期間の連結が少ない骨折り及び/又は低コスト、並びに高位置決め精度で製造可能な方法を提供することである。本発明による、位置合わせすなわち整合された別々の光学要素を結合するための方法を使用すれば、光学要素に結合されるべき表面領域には少なくとも1つの薄い金属層が設けられ、該表面領域は、引き続いて、計量され且つ非接触式態様で液体半田に湿される。フラックスの無い半田が加圧下のガス流を使用してノズルを通じて結合されるべき表面領域に塗布される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置合わせすなわち整合された別々の光学要素を結合するための方法(Verfahren zum Fugen justierter diskreter optischer Elemente)に関する。
【背景技術】
【0002】
光学コンポーネントを具備する、最も多種類の物を含む装置(Unterschiedlichste Gerate)は、より小さな寸法を有するものへの需要が高まりつつあり、かつ、これに応じて提供されている。この点に関し、対応する本発明による光学要素は、特に、小さな寸法も有しているが、それにも拘わらず、極めて正確に位置決めすることができ、かつ、それから、所望の正確な位置に固定されなければならない。この点におけるこうした光学要素の固定は、長期間における全光学系の機能を保証するために、長期間安定性、温度安定性、及び放射安定性を有して構成されなければならない。使用することができる光学要素のほとんどは、それらの熱的且つ機械的特性に関して臨界的である光学的に透明な材料から少なくとも一部が製造されることを考慮に入れなければならない。
【0003】
主として、クランプ連結又は接合連結は当該用途における結合及び組立のために使用される。クランプ処理では、極めて小さな光学要素に特に悪影響を与える機械ひずみは回避することができない。他方、クランプ連結は非常に小さな寸法である結果として実現することが非常に困難であるという問題が生じ得る。
【0004】
ここで、接合は当該分野における光学要素のための結合処理として最も頻繁に使用される。この点に関して、慣用の接着剤は、しかしながら、限られた温度範囲での安定性及び長期間に亘る安定性のみを有しているのみであり、(例えば、紫外線のような)放射線に対する露出下で脱泡し得るか、変質し易く、硬化時の縮みも回避することができない。更に、接着剤の硬化は時間のかかる処理であり、この硬化の間中に、未だ材料の連続性によって連結されていないそれぞれの光学要素の正確な位置決め及び固定を維持しなければならない。
【0005】
材料の連続性によって最も多種類の物を含む部品の連結の更なる可能性は半田である。
半田は幾つかの場合には、慣用的に使用される接着剤よりも結合媒体としてより適切なものではあるが、この半田による連結処理は、従来から光学要素には容易に使用されていなかった。この低クリープ性という欠点に関して、特に接着剤と比較した半田の低クリープ性は、少なくともこの低クリープ性の欠点の影響がフラックスによって減じられなければならないという影響を有している。このため、脱ガス効果、あるいは材料の連続性によって確立された半田連結部におけるフラックス残留物のようなフラックスによって他の不利点が今度は生じる。半田連結の慣用的な製造時には、相互に連結されるべきそれぞれの表面に亘って半田の不均一な分布が頻繁に生じることとなり、この結果、結合間隙内の半田の不均一な分布が記録される。これは共に結合されるべきである部品又は要素が一緒に押圧される圧縮力を働かせることによって一部補償することができる。しかしながら、こうした圧縮力を働かせることは、特に、光学要素、極めて詳細には、小型化された光学要素は、損傷無しに又は不正確な位置決めが生じること無くして頻繁に実行することはできない。半田は、長期間、液体で維持しなければならず、この維持のためには更なる熱エネルギーが要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は光学要素を位置合わせ(すなわち、整合)した状態で結合することができ、熱的及び長期間に亘る連結が骨折り損なく及び/又は低コスト、並びに高精度位置決めすることができる方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この課題は特許請求の範囲の請求項1の特徴を有する方法によって解決される。本発明の有利な実施形態および更に展開された別の実施形態は複数の従属項に示された特徴を使用して達成することができる。
【0008】
本発明では、処理は以下のようである。すなわち、結合されるべき光学要素上の表面領域には厚い金属層が設けられる。使用することができる、半田のためのこの湿し処理は、こうした厚い金属層によって極めて改善される。この点に関して、結合されるべき表面上に単一の薄い金属層を設けるのか、あるいは表面上に積み重なるように形成された複数の金属層を設けるのかが問題点であり得る。
【0009】
液体半田は、このとき、非接触態様且つ計量された形態で以前に結合のために金属化された表面に塗布される。この点に関して、フラックスの無い半田は加圧されたガス流が通過するノズルを介して非接触態様で結合されるべき表面に塗布される。半田は、このとき、ノズル出口から結合されるべき表面までの短い経路を“自由飛翔(freifliegend)”態様で覆う。
【0010】
半田は結合のために設けた表面領域に塗布することができる。しかしながら、それは、本発明の実施の形態によれば、結合されるべき光学要素と、それぞれの光学要素が恒久的に連結されるべきである、更なる要素、あるいは更なるコンポーネントとの間に形成された結合間隙内に塗布することもできる。
【0011】
チタニウム、クロミウム、金、タングステン、及び/又は、プラチナ、並びにこれらの金属の合金もまた、複数の薄い金属層の形成のために使用することができることが好ましい。PVD又はCVD技術で、通常、使用される真空被覆処理は複数の薄い金属層を製造するために使用することができる。薄い金属層は、それぞれの位置、寸法、構成、及びそれぞれの層厚にも適用することによって、複数の薄い金属層の製造のためにこれらの処理で使用される周知の装置の手助けによって非常に高精度に製造することができる。複数の基板上又は複数のホルダ内の対応する複数の結合表面の金属化は慣用の加圧技術によって
薄い金属層として、あるいは厚い金属層として作ることができる。
【0012】
複数の薄い金属層がこうした層系を形成する場合、このとき、半田自体がその上に塗布されるべき最頂部層は、使用されるそれぞれの半田を考慮しながらも特に選択されるべきである。金はこの最頂部の薄い金属層として使用することができることが好ましい。
【0013】
それぞれの光学要素がこれによって作られる製造原材料に与える熱的悪影響を特に回避するための適切な半田として共晶を使用し得ることが好ましい。こうした共晶半田は、溶融温度が300℃よりもかなり低いものとし得る、例えば、金-錫合金、銀-錫合金、又はビスマス-錫合金とすることができる。
【0014】
実際の塗布の直前に行われる、使用される半田の溶融はレーザ放射によって達成し得ることが好ましい。それから、溶融した半田は、既に示したように、高圧下にあるガス流を使用してノズルによって生じ得、それから、このガス流は、必要に応じて、適切なカニューレの形態に作り得る、ノズルから出た液体半田を押圧する。
【0015】
それぞれの特定の半田容積が溶融され且つそれから液体状の、計量された形態で結合されるべき表面領域に塗布されるといった処理をこのように連続して行うことができる。このように、半田容積は単位表面mmあたり0.005〜1.5mmの範囲で使用されるべきである。
【0016】
液体半田の塗布はこのようにパルス形態で実行することができる。
結合されるべき複数の表面領域へ液体半田をそれぞれ塗布するための位置は個々のパルス間で(に応じて)変更することができる。この変更は、一方では、結合されるべき、より大きな表面領域を有するようにするのが好ましく、他方で、1回の塗布で複数の互いに異なる平面にも起こるようにすべきである。最後に示した実施形態では、2次元、好ましくは3次元で移動可能且つ位置決め可能な塗布具を使用するために有利である。極めて特に有利には、本発明による方法を自動化された態様で実行することができるように電気的に制御可能にすべきである。半田用塗布具の対応する移動は、しかしながら、今度は電気制御及び自動的に作動し得る、別の慣用的な産業ロボット、あるいは類似する装置の手助けによっても実行することができる。
【0017】
金属間位相又は混晶は最頂部の薄い金属層又は厚い金属層の領域に形成されるから、使用される半田による材料の連続性による連結部を製造するときに、連結部の強度を改善することができる。
【0018】
光学要素の固定は本発明の半田の直接的且つ計量された供給によって、長期間に亘って高精度且つ高強度で達成することができる。この連結は温度安定性を有し、かつ、電磁放射に対する抵抗性がある。例えば、位置合わせ(すなわち、整合)処理を通じて生じる結合間隙は使用される半田容積によって均質に塞ぐことができる。これは、光学要素の結合後に達成可能な精度に実質的に影響を与える。より小さな結合間隙は要求される半田容積をより少なくすることにより高精度に帰着し且つ同時に材料を準備するための骨折りに対する費用を減じる。
【0019】
単純な光学要素及び複雑な構成の光学要素の両方は、本発明による方法を使用して融通性に富む形態で、個々の部品、コンポーネントに、あるいは副組立体にも恒久的に且つ高精度で留めるすなわち固定することができる。
【0020】
フラックスの不利点を回避するために該フラックスの使用を容易に省くことができる。
現存する結合間隙は、本発明による方法を実行するときに規定された計量装置を実現することによって塞ぐことができる。受動的な位置合わせ(当接する構造体に対する位置決め)及び結合されるべきコンポーネントの能動的な位置合わせである整合の両方を、これにより、実行することができる。
【0021】
アクセスすることが難しい複雑な幾何形状も考慮に入れることができるように、半田を極めて融通性に富むように塗布できる可能性がある。結合連結部の形成のために同時に又は時間をずらして実行することができる他の組立ステップと組み合わせた単純な自動化も可能である。
【0022】
結合連結の強度は半田の硬化直後、すなわち、半田の塗布短時間後に達成される。その結果、接合連結で、通常、生じる不利点を回避することができる。
【0023】
例えば、予熱又は連続放射の形態をした更なる熱の入力は同様にして本発明では必要ない。
【0024】
半田供給、半田の再溶融、及び液体状態の半田の塗布は、使用されるガス流のガス圧のエネルギーの手助けによって液体半田の均一な分布を利用することができる状態で、結合箇所に直に生じる。今度は、保護ガス機能を同時に満足することができる不活性ガスはガス流のために特に有利に使用することができる。
【0025】
本発明による方法は、別々の光学要素が組み立てられなければならず、かつ、周囲の状態のような特別な状態が慣用的な接着剤を使用するうえで耐えることを考慮に入れられなければならない、実際にあらゆる種類の光学及び光電装置、並びに光学及び光電要素のために使用することができる。
【0026】
本発明は、医療工学又はリソグラフィー用のレーザ及びLED照明モジュール、光学半導体装置用の光学照明装置、又は高圧蒸気殺菌法(内視鏡)等の製造のために使用することができる。これは、特に、光学要素、あるいは、人体の組織と接触するようにすることができ、かつ、防御反応を回避するために生体互換性とすることができるこうした光学要素を具備するコンポーネントにとって特に適切である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。
【0028】
光学モジュールに関して言えば、コリメートレンズは基板上に位置する光源/レーザダイオードに対して6自由度で位置合わせすなわち整合されるべきであり、かつ、理想的な電磁放射に関する光ファイバ結合を可能にするために固定されるべきである。チタニウム、クロミウムおよび金から成り、かつ0.5μm〜1μmの全体的な層厚の層構造体を有する薄い金属層がコリメートレンズの外周に形成される。
【0029】
このために、外周が金属処理されたコリメートレンズは基板の空洞内で特別な把持具によって最大の結合程度まで動的に位置合わせすなわち整合される。引き続いて、出来るだけ小さなコリメートレンズから間隔を置いて複数の薄い金属層が設けられた基板上のレンズ側に複数の補助要素が位置づけられる。ここで、前記補助要素等は同様にして金属処理されている。特別な半田付け順序およびこれから生じる結合許容誤差を勘案すると、基板上に約1.5mmのAgSnCuの半田を使用する本発明による方法を使用して少なくとも1つのそれぞれの位置に補助要素が第1に結合される。このように、半田内の銅の割合は極めて低い。これに引き続いて、本発明の方法を使用して約1.5mmのAgSnCuによって、少なくとも1つのそれぞれの位置で、コリメートレンズが各補助要素に連結される。
【0030】
特殊な基板ホルダ及び組立ロボットを使用することによって数秒の範囲で全体結合プロセスを実行することができる。対応する処理ルーチンが動的レンズ位置合わせすなわち整合のために使用され、自動化率を高くする可能性が同時に与えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置合わせされた別々の光学要素を結合するための方法であって、
前記光学要素に結合されるべき表面領域には少なくとも1つの薄い金属層が設けられ、かつ、引き続いて、非接触の、計量された態様の液体状の半田に湿され、
融剤であるフラックスのいらない半田が、加圧下のガス流を使用してノズルを通じて結合されるべき前記表面領域に塗布されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記半田が結合間隙に塗布されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記半田は、前記ガス流によって結合されるべき前記表面領域に亘って分配されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
薄い金属層は、チタニウム、クロミウム、金、タングステン及び/又はプラチナで構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
上部の金属層であって、該金属層上に前記半田が塗布される前記上部の金属層は金によって構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
共晶合金が前記半田として使用されることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
金-錫合金、銀-錫合金、あるいはビスマス-錫合金が前記半田として使用されることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ガス流を形成するために不活性ガスが使用されることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記半田は該半田を塗布する以前にレーザ放射を使用して溶融されることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
金属間化合物または混晶が前記半田及び薄い金属層、あるいは薄い金属層の遷移領域内に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記半田の塗布はパルス状態様で行われることを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
結合されるべき前記表面領域上に塗布するための位置は前記パルス状態様の塗布に関して変更されることを特徴とする請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
半田塗布具は3次元内で移動され且つ位置づけられることを特徴とする請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記半田塗布具は電気制御されることを特徴とする請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−515939(P2010−515939A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545062(P2009−545062)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【国際出願番号】PCT/DE2008/000038
【国際公開番号】WO2008/083676
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(504174917)フラウンホッファー−ゲゼルシャフト・ツァー・フォデラング・デル・アンゲワンテン・フォーシュング・エー.ファウ. (26)
【出願人】(509194622)パクテック パッケージング テクノロジーズ ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】