説明

位置情報収集装置

【課題】広い範囲をカバーでき、多数の無線端末を管理可能であると共に、有用な集計データを出力可能な位置情報収集装置を提供すること。
【解決手段】位置情報収集装置は、無線通信機能を備え、ID情報を含む信号を繰り返し送信する端末装置20、無線通信機能を備え、予め下流および上流のアクセスポイント装置を記憶しており、端末装置あるいは下流のアクセスポイント装置からのデータを受信し、自IDを付加して上流のアクセスポイントに転送するアクセスポイント装置16〜19、最上流のアクセスポイント装置15から有線通信により信号を受信し、時刻情報を付加して記録するサーバ装置10とを備える。予め定められた1本道のルート25〜28に沿ってデータが転送されるので、収集データの転送によるトラフィックの爆発的増加を抑制し、多数の端末を収容して位置情報を短い周期で収集可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は無線通信を利用した位置情報収集装置に関し、特に、広範囲をカバーでき、かつ多数の無線端末を管理可能な位置情報収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信を利用した位置情報収集装置として、例えば下記の特許文献1、2に示すようなシステムが提案されている。特許文献1に示すシステムは、位置測定の対象物である無線タグと、無線タグの位置測定のための複数のアクセスポイントと、アクセスポイントと直接または間接に接続されたサーバとを含む。
【0003】
アクセスポイントは、無線タグおよび他のアクセスポイントから受信した電波から、電波の強度に関する情報を取得して、取得した情報をサーバに送り、サーバは、無線タグの位置を三角測量方式および三角形の内部に無線タグがあるかどうかにより測定する。
【特許文献1】特開2006−266859号公報
【特許文献2】特開2006−311275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば家庭内の各部屋にアクセスポイント装置を設置し、家族に端末を携帯してもらって各人の位置情報を収集する場合、高い周波数を使用することにより部屋の壁や床を通過する信号は減衰するので、部屋内にいればその部屋のアクセスポイント装置の受信信号強度が一番大きくなる。従って、アクセスポイント装置のIDを位置情報として利用可能である。しかし、部屋の壁や床により信号が減衰するので、遠くのアクセスポイント装置は直接ゲートウェイ装置と通信出来ない場合もある。
【0005】
ところが、上記した従来の位置情報収集装置においては、各アクセスポイント装置からゲートウェイ装置にどのようにしてデータを転送するのかについては詳細な説明がなく、特に他のアクセスポイント装置を経由して転送するための方法は不明である。
【0006】
なお、例えば転送回数を制限して、各アクセスポイント装置において受信データを全て再送信する方法を用いれば、遠い位置にあるアクセスポイント装置からゲートウェイ装置への転送は可能である。しかし、この方法では転送のためのトラフィックが爆発的に増加し、アクセス方式としてCSMA方式を採用している場合にはトラフィックが増加すると伝送効率が急激に悪化して、多数の端末を収容して短い時間間隔で位置情報を収集するこができないという問題点があった。また、従来の位置情報収集装置においては、収集した位置データの加工方法については開示されていない。
【0007】
この発明の目的は、上記したような従来技術の問題点を解決し、広い範囲をカバーでき、多数の無線端末を管理可能であると共に、収集した位置データを加工して有用な集計データを出力可能な位置情報収集装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の位置情報収集装置は、無線通信機能を備え、ID情報を含む信号を繰り返し送信する端末装置と、無線通信機能を備え、予め下流および上流のアクセスポイント装置を記憶しており、端末装置あるいは下流のアクセスポイント装置からのデータを受信し、自IDを付加して上流のアクセスポイントに転送するアクセスポイント装置と、最上流のアクセスポイント装置から有線通信により信号を受信し、時刻情報を付加して記録するサーバ装置とを主要な特徴とする。
【0009】
また、前記した位置情報収集装置において、前記端末装置はアクセスポイント装置を特定しない信号を送信し、前記アクセスポイント装置は、端末装置からのデータに自IDと共に受信信号強度データを付加して上流のアクセスポイントに転送し、前記サーバ装置は、所定の時差内に受信された同一端末IDの信号の内で受信強度データが最強のもののみを残し、他を削除する点にも特徴がある。
【0010】
また、前記した位置情報収集装置において、前記端末装置がまずアクセスポイント装置を特定しない信号を送信し、前記アクセスポイント装置は、端末装置からの信号に対して自IDと共に受信信号強度データを付加して当該端末装置に返送し、当該端末装置は返送信号の中で最も受信信号強度データの大きなアクセスポイント装置を選択し、当該アクセスポイント装置に対してID情報を含む信号を送信し、当該アクセスポイント装置は前記端末装置からのデータに自IDを付加して上流のアクセスポイントに転送する点にも特徴がある。
【0011】
また、前記した位置情報収集装置において、前記アクセスポイント装置は、下流のアクセスポイント装置を複数個記憶可能である点にも特徴がある。また、前記した位置情報収集装置において、前記端末装置は、送信する信号に自端末装置の電池電圧情報も含める点にも特徴がある。また、前記した位置情報収集装置において、前記サーバ装置は、収集したデータに基づき、どの端末がどのアクセスポイント装置の近傍にどの程度の時間存在していたかを集計する集計手段を備えている点にも特徴がある。また、前記した位置情報収集装置において、前記集計手段は、特定のアクセスポイント装置の近傍に特定の複数の端末が同時に存在していた時間を求める同時存在時間集計手段を備えている点にも特徴がある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の位置情報収集装置によれば、以下のような効果がある。
(1)予め定められた1本道のルートに沿ってデータが転送されるので、収集データの転送によるトラフィックの爆発的増加を抑制し、多数の端末を収容して位置情報を短い周期で収集可能である。
(2)コーディネータと直接通信できない位置でも、近傍のアクセスポイント装置経由でデータを転送可能であり、アクセスポイント装置を遠方まで配置可能となり、カバー範囲の制限が無くなる。
【0013】
(3)端末装置の消費電力を最小にすることが可能であり、電池による長時間運用が可能となる。
(4)家族の各自に端末を携帯してもらい、家の各部屋にアクセスポイント装置を設置して位置データを収集することにより、各自の導線や部屋の利用率、各部屋における特定の複数の人の同時存在時間などを集計することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。実施例においては、例えば家庭内の各部屋にアクセスポイント装置を設置し、家族各自に端末を携帯してもらって各人の位置情報を収集する場合について説明するが、本発明は家庭をはじめ、職場、工場、倉庫、介護施設などにおける人や物の位置情報収集に適用可能である。
【0015】
以下に開示する実施例1においては、情報を収集したサーバ装置において位置情報(最も近いアクセスポイント装置)を特定する例を開示し、実施例2においては、端末装置において最も近いアクセスポイント装置を特定する例について開示する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の位置情報収集装置の構成を示すブロック図である。位置情報収集装置は、PCサーバ10、コーディネータ装置15、アクセスポイント装置A16、、B17、C18、D19、複数の端末20〜22からなる。コーディネータ装置15、アクセスポイント装置A16、、B17、C18、D19、複数の端末20〜22には、予め固有のID(識別情報)が割り振られている。
【0017】
PCサーバ装置10は周知の構成のパソコンあるいはサーバ装置に後述する機能を実現するプログラムをインストールしたものである。PCサーバ10には周知のディスプレイ装置11およびキーボード12が接続されており、更に、コーディネータ装置15と例えばRS-232C等のシリアルインターフェイス回路で接続されている。
【0018】
コーディネータ装置15は最上流にあるアクセスポイント装置であり、例えば周知のIEEE802.15.4規格の2.4GHz無線通信機能を備えると共に、PCサーバ10とシリアルインターフェイス回路で接続されている。
【0019】
コーディネータ装置15を含むアクセスポイント16〜19は、例えばIEEE802.15.4規格の2.4GHz無線通信機能を備えており、端末からの信号の受信強度データも測定可能に構成されている。
【0020】
各アクセスポイント装置は自装置の上流及び下流のアクセスポイント装置IDを予め記憶しており、各アクセスポイント装置はリンク25、26、27、28によって1本の論理的なルートとして直列に接続されている。各アクセスポイント装置は例えば位置情報を収集する住宅の各部屋30、31、32、33、34にそれぞれ配置されるので、各アクセスポイント装置が論理的に隣接する他のアクセスポイント装置と通信可能な位置に配置する。
【0021】
電池で駆動する端末20〜23は、例えば家族の各人それぞれに1個づつ携帯してもらう。端末はアクセスポイント装置との通信機能を備え、後述するように周期的に自ID情報を送信する。
【0022】
図2は、本発明の位置情報収集装置において使用する端末装置の構成を示すブロック図である。端末20には、電池を含む電源回路、1チップCPU40、トランシーバ用の高周波回路を集積したRF−LSI等が実装されている。1チップCPU40は、CPU、プログラムが格納されたROM、RAM、IDやルート情報等の設定データを記憶するフラッシュメモリ、入出力インターフェイス回路等を1チップに集積したLSIである。
【0023】
1チップCPU40には入力用のボタンスイッチ41、表示用のLED表示器42が接続されているが、これらは本発明に必須の回路ではない。また、リセット端子にはパワーオンリセットを行うリセットIC43が接続されている。なお、このような1チップCPUとしては各種のチップが市販されており、一例として、例えばモトローラ社のMC9S08GT60−CFDを使用可能である。
【0024】
RF−LSI44はトランシーバ用の高周波回路を集積したLSIであり、例えば、無線標準規格ZigBee/IEEE 802.15.4用に設計されたフリースケール社の2.4GHz低電力RFトランシーバLSI、MC13193を使用可能である。このLSIにおいては、1チップCPU40とのインタフェースは4本のSPI(serial peripheral interface)信号を用いる。アンテナ46はプリント配線基板上にパターンとして形成されたアンテナあるいは市販のアンテナ用チップ素子である。
【0025】
充電池52の4.2Vの出力電圧は、定電圧回路53によって3Vに降圧されて電源として各回路に供給される。また、利用者の就寝時や外出時に充電用端子を介して外部から供給された5Vの電源は、定電圧回路50、充電回路51を介して充電池52を充電する。端末装置は携帯に便利なカード形状あるいは腕時計形状である。
【0026】
図3は、本発明の位置情報収集装置において使用するアクセスポイント装置の構成を示すブロック図である。アクセスポイント装置のハードウェア構成は、前記した端末装置から充電池を取り除いた構成であり、商用電源に接続された図示しない電源アダプタ装置から常時供給される5Vの電源により稼働する。
【0027】
図4は、本発明の位置情報収集装置において使用するコーディネータ装置の構成を示すブロック図である。最上流のアクセスポイント装置であるコーディネータ装置15のハードウェア構成は、前記したアクセスポイント装置に、サーバ装置10と通信するための例えばRS-232Cシリアルインターフェイス回路55、およびコネクタ56を付加したものである。やはり、商用電源に接続された図示しない電源アダプタ装置から常時供給される5Vの電源により稼働する。
【0028】
図5は、本発明の位置情報収集装置において使用される無線パケットのフォーマット例を示す説明図である。パケットはパケット種別データ、ルート情報、伝送内容であるデータ、エラーチェックコードからなる。パケット種別データとしては特定の宛先に送信される通常のパケットの他、宛先を指定しない放送パケットがある。
【0029】
ルート情報は伝送すべきデータの送信元ID、中継したAP(アクセスポイント)ID、宛先IDが含まれており、転送する度に中継したAP(アクセスポイント)IDが追加されていく。伝送内容であるデータには、端末電池電圧情報、アクセスポイント装置における受信強度情報等が含まれる。端末電池電圧情報は例えばサーバ装置10によって監視され、端末装置の電池残量が少なくなった場合に、サーバ装置のオペレータに当該端末の充電指示を出力(表示)するために利用される。
【0030】
図6は、本発明の位置情報収集装置の実施例1における各装置間の信号のやり取りを示すタイムチャートである。なお、各AP(アクセスポイント)には、下流からAP−D、AP−C、AP−B、AP−A、CO(コーディネータ)の順に1本の論理的ルートが形成されるように、上流及び下流のAPがそれぞれ設定されているものとする。即ち、例えばAP−Dには下流AP:無し、上流AP:AP−C、AP−Cには下流AP:AP−D、上流AP:AP−Bのように予め設定されている。なお、各APは上流AP障害時に当該APをとばして2つ以上先のAPに接続するために全てのAPリンクのリストを予め記憶している。
【0031】
端末は時間間隔Taで時刻t1において周期的に自ID情報を含む放送パケットを送信する。この放送パケットが例えばAP−D、AP−C、AP−B、AP−A、CO(コーディネータ)において受信されたものとする。なおこの放送パケットは少なくとも1つのAPにおいて受信されれば足りる。
【0032】
例えばAP−Dにおいては、端末からの信号を受信すると、信号強度を測定して当該パケットにデータとして付加すると共に、時刻t2において当該パケットを上流のAP−C宛に送信する。このパケットは、AP−C、AP−B、AP−A、COに順次無線で転送され、COからPC(サーバ10)に有線で伝送される。PCには他のAPからのパケットも転送されてくる。従って、PCは周期Taより短い所定の時間Tbだけ同じ端末から送信されたパケットが到着するのを待つ。
【0033】
その後、同一端末からのパケットの中でAPにおける受信強度データが最強のものを残し、その他のパケットを削除する。そして、残したパケットデータを受信時刻と共にDB(データベースあるいは記録ファイル)に記録する。記録情報としては、端末ID、受信APID(位置情報として使用)、中継APID、受信強度、時刻を含んでいる。
【0034】
以上のような方式によって、端末の位置情報(APID)を周期的に収集可能である。端末は自IDを周期的に送信するだけでよいので、電池寿命を延ばすことができ、装置を小型化できる。またパケットは1本道のルートに沿って転送されるので、トラフィックが少なくて済み、多数の端末を収容して短い時間間隔で位置データを収集することが可能となる。
【0035】
なお、ルートの途中のAPにおいて、下流からのパケットの受信を待ち、自APから送信するパケットと下流からの転送パケットを1つのパケットにまとめて送信するようにしてもよい。このようにすれば、トラフィックを更に減少させることができる。
【0036】
図7は、実施例1における端末装置の処理内容を示すフローチャートである。この処理は端末装置の1チップCPU40において実行される。端末の電源がオンされると、S10においては初期化を行い、S11においては、電池電圧を測定する。S12においては、電池電圧情報および自IDを含む放送パケットを送信する。S13においては、図6の周期Taを計測するタイマーをセット(起動)する。S14においては、タイマがタイムアップするまで待ち、S11に戻る。以上の処理によって端末から周期的にIDを含むパケットが送信される。
【0037】
図8は、実施例1におけるアクセスポイント装置の処理内容を示すフローチャートである。この処理はアクセスポイント装置の1チップCPU40において実行される。APの電源がオンされると、S20においては初期化を行う。S21においては、端末からの信号を受信したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS25に移行するが、肯定の場合にはS22に移行する。S22においては、受信強度を測定して、自APID、受信強度、電池電圧情報、端末IDを含むパケットを予め定められた上流AP宛あるいは上流CO宛に送信する。
【0038】
S23においては、送信が成功したか否かが判定される。即ち、相手AP(CO)からACK(受信応答)が返送されてきたか否かがチェックされ、ACKが返送されてこない場合には所定回数送信を繰り返し、所定回数送信してもACKが返送されてこない場合には不成功と判定する。そして判定結果が否定の場合にはS24に移行するが、肯定の場合にはS21に移行する。S24においては、送信するAPを一つ跳ばして、送信すべきAPをAPリンクリストの2つ上流のAPに設定してS22に戻る。
【0039】
S25においては、下流APから信号を受信したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS29に移行するが、肯定の場合にはS26に移行する。S26においては、受信データに自APIDを付加して予め定められた上流APあるいは上流COに送信する。S27においては、S23と同様に送信が成功したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS28に移行するが、肯定の場合にはS21に移行する。S28においては、送信するAPを一つ跳ばして、送信すべきAPをAPリンクリストの2つ上流のAPに設定してS26に戻る。
【0040】
S29においては、上流APから信号を受信したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS21に移行するが、肯定の場合にはS30に移行する。S30においては、受信したデータを下流APまたは端末に送信する。なお、この上流APからの信号を下流のAPや端末に転送する機能は本発明に必須の機能ではない。
【0041】
図9は、実施例1におけるコーディネータ装置の処理内容を示すフローチャートである。この処理はコーディネータ装置の1チップCPU40において実行される。COの電源がオンされると、S40においては、初期化を行う。S41においては、端末からの信号を受信したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS43に移行するが、肯定の場合にはS42に移行する。S42においては、COID、受信強度と共に、端末ID等の受信データをPCに送信する。
【0042】
S43においては、下流APから信号を受信したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS45に移行するが、肯定の場合にはS44に移行する。S44においては、シリアルインターフェイス回路を介して受信データをPCに転送する。
【0043】
S45においては、PCからデータを受信したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS41に移行するが、肯定の場合にはS46に移行する。S46においては、受信したデータを下流APまたは端末に送信する。なお、この機能は本発明に必須の機能ではない。
【0044】
図10は、実施例1におけるサーバ装置の処理内容を示すフローチャートである。この処理はサーバ装置のCPUにおいて実行される。PCの電源がオンされると、S50においては初期化を行う。S51においては、シリアルインターフェイス回路を介してCOからデータを受信したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS60に移行するが、肯定の場合にはS52に移行する。
【0045】
S52においては、PCに標準装備されている時計回路から日時情報を取得する。S53においては、受信データに記載されている端末IDを抽出し、一時記憶エリア内で同一IDを検索する。S54においては、同一IDが有ったか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS55に移行するが、肯定の場合にはS57に移行する。
【0046】
S55においては、端末IDと対応するソフトウェアのタイマをオンにする。このタイマは図6の時間Tbを計測するためのタイマである。S56においては、一時記憶エリアに端末ID、受信日時、APID、受信強度データ等を記録する。S57においては、同一IDのデータの中で受信強度が最強のデータを一時記憶エリアに残し、それ以外を削除する。
【0047】
S60においては、ID対応タイマがタイムアップしたか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS63に移行するが、肯定の場合にはS61に移行する。S61においては、端末IDをキーとして、受信日時、APID(位置情報)、端末電池電圧情報等をDBに記録する。S62においては、一時記憶エリアから対応IDのデータを削除する。
【0048】
S63においては、集計指示がなされたか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS65に移行するが、肯定の場合にはS64に移行する。S64においては、後述する集計処理が実行される。S65においては、終了指示がなされたか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS51に移行するが、肯定の場合には処理を終了する。
【0049】
図11は、図10のS64の集計処理の内容を示すフローチャートである。S70においては、初期化を行い、S71においては、メイン画面を表示する。S72においては、設定が指示されたか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS74に移行するが、肯定の場合にはS73に移行する。S73においては、端末IDと家族の名前の対応リストやAPIDと部屋の名前対応リストなどの各種情報を設定する。
【0050】
S74においては、収集データファイルのオープン指示がなされたか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS71に移行するが、肯定の場合にはS75に移行する。S75においては、オペレータが選択したデータファイルをオープンする。
【0051】
S76においては、共通時間の集計指示か否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS78に移行するが、肯定の場合にはS77に移行する。S77においては、家族全員について任意の2人の組み合わせが同一場所で過ごした積算時間の表を生成して表示する。
【0052】
S78においては、各部屋利用時間の集計指示か否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS780に移行するが、肯定の場合にはS79に移行する。S79においては、各部屋毎の各人が利用した積算時間の表を生成して表示する。
S80においては、グラフ表示の指示か否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS82に移行するが、肯定の場合にはS81に移行する。S81においては、各部屋の各人の利用率グラフを生成して表示する。
【0053】
S82においては、任意比較の指示か否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS84に移行するが、肯定の場合にはS83に移行する。S83においては、特定の2人組み合わせで同一場所で過ごした時間の表を生成して表示する。
S84においては、印刷指示か否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS86に移行するが、肯定の場合にはS85に移行する。S85においては、表示されている表あるいはグラフを印刷する。S86においては、終了指示か否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS76に移行するが、肯定の場合には処理を終了する。
【0054】
図17は、サーバ装置における集計処理の出力例を示す説明図である。図17の上部の表は、S77において生成された表の例である。この表において、例えば「人1」と「人2」は調査期間の間に「部屋1」には11時間5分、「部屋2」には2分一緒におり、部屋を特定せずに一緒にいた時間は21時間16分であったことを示している。図17の下部の表は、S79において生成された表の例である。この表において、例えば「人1」は調査期間の間に「場所1」には28時間36分、「場所2」には27分いたことを示している。
【実施例2】
【0055】
図12は、本発明の位置情報収集装置の実施例2における各装置間の信号のやり取りを示すタイムチャートである。実施例1においては、端末は単にIDを放送パケットで送信するのみであり、PCにおいて受信強度が最強のAPを特定する例を開示したが、この方式では転送するパケット数が多くなる。実施例2は、転送パケット数が実施例1より少ない方式である。各APには、実施例1と同様に下流からAP−D、AP−C、AP−B、AP−A、COの順に1本の論理的ルートが形成されるように、上流及び下流のAPがそれぞれ設定されているものとする。
【0056】
端末は時間間隔Taで時刻t5において周期的に自ID情報を含む放送パケットを送信する。この放送パケットが例えばAP−D、AP−C、AP−B、AP−A、COにおいて受信されたものとする。各APにおいては、端末からの放送パケットを受信すると、受信信号強度を測定して当該パケットにAPIDおよび受信信号強度をデータとして付加し、時刻t6において応答パケットとして当該端末宛に送信する。
【0057】
端末においては、所定時間だけ応答パケットを受信し、記憶する。そして応答パケットの内で受信信号強度の最も大きなAP(図12では例えばAP−Bとする)を選択し、時刻t7において自IDを含むパケットを当該AP宛に送信する。AP−Bにおいては、端末からの信号を受信すると、当該パケットに自APIDを付加して上流のAP−A宛に送信する。このパケットは、COに転送され、COからPC(サーバ10)に有線で伝送される。
【0058】
PCにおいては、パケットデータを受信時刻と共にDB(データベースあるいは記録ファイル)に記録する。記録情報としては、端末ID、受信APID(位置情報として使用)、中継APID、受信強度、時刻を含んでいる。
以上のような方式によって、端末の位置情報(APID)を周期的に収集可能である。端末の処理負荷は実施例1より大きくなるが、AP間を転送されるパケット数は実施例1より減少する。
【0059】
図13は、実施例2における端末装置の処理内容を示すフローチャートである。この処理は端末装置の1チップCPU40において実行される。端末の電源がオンされると、S90においては初期化が行われる。S91においては、電池電圧を測定する。S92においては、自IDを含む放送パケットを送信する。S93においては、一定時間APからの応答パケットを受信する。
【0060】
S94においては、受信した応答パケットの中から、受信信号強度データの最も大きなAPを選択する。S95においては、選択したAPに自ID、電池電圧情報を含むパケットを送信する。S96においては、Taを計測するタイマーをセットし、S97においては、タイマーがタイムアップするまで待ち、S91に移行する。
【0061】
図14は、実施例2におけるアクセスポイント装置の処理内容を示すフローチャートである。この処理はアクセスポイント装置の1チップCPU40において実行される。APの電源がオンされると、S100においては初期化を行う。S101においては、端末からのAP検索のための放送パケットを受信したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS103に移行するが、肯定の場合にはS102に移行する。S102においては、受信強度を測定して、自APID、受信強度を含むパケットを応答パケットとして当該端末宛に送信する。
【0062】
S103においては、端末あるいは下流APから転送すべきパケットを受信したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS107に移行するが、肯定の場合にはS104に移行する。S104においては、受信データに自APIDを付加して予め定められた上流APあるいは上流COに送信する。S105においては、送信が成功したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS106に移行するが、肯定の場合にはS101に移行する。S106においては、送信するAPを一つ跳ばして、送信すべきAPをAPリンクリストの2つ上流のAPに設定してS104に戻る。
【0063】
S107においては、上流APから信号を受信したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS101に移行するが、肯定の場合にはS108に移行する。S108においては、受信したデータを下流APまたは端末に送信する。なお、この上流APからの信号を下流のAPや端末に転送する機能は本発明に必須の機能ではない。
【0064】
図15は、実施例2におけるコーディネータ装置の処理内容を示すフローチャートである。この処理はコーディネータ装置の1チップCPU40において実行される。COの電源がオンされると、S110においては、初期化を行う。S111においては、端末からの信号を受信したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS113に移行するが、肯定の場合にはS112に移行する。S112においては、受信強度を測定して、自COID、受信強度を含むパケットを応答パケットとして当該端末宛に送信する。
【0065】
S113においては、端末あるいは下流APから転送すべきパケットを受信したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS115に移行するが、肯定の場合にはS114に移行する。S114においては、シリアルインターフェイス回路を介して受信データをPCに転送する。
【0066】
S115においては、PCからデータを受信したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS111に移行するが、肯定の場合にはS116に移行する。S116においては、受信したデータを下流APまたは端末に送信する。なお、この機能は本発明に必須の機能ではない。
【0067】
図16は、実施例2におけるサーバ装置の処理内容を示すフローチャートである。この処理はサーバ装置のCPUにおいて実行される。PCの電源がオンされると、S120においては初期化を行う。S121においては、シリアルインターフェイス回路を介してCOからデータを受信したか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS124に移行するが、肯定の場合にはS122に移行する。
【0068】
S122においては、PCに標準装備されている時計回路から日時情報を取得する。S123においては、端末IDをキーとして、受信日時、APID(位置情報)、端末電池電圧情報等をDBに記録する。
【0069】
S124においては、集計指示がなされたか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS124に移行するが、肯定の場合にはS125に移行する。S125においては、前述した図11の集計処理が実行される。S126においては、終了指示がなされたか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS121に移行するが、肯定の場合には処理を終了する。
【0070】
以上、実施例を開示したが、本発明には以下のような変形例も考えられる。実施例においては論理的ルートが1本である例を開示したが、論理的ルートの形状として、複数のルートを備えたスター状あるいは途中のアクセスポイント装置において分岐するツリー状の論理的ルートを設定してもよい。この場合には各アクセスポイント装置あるいはコーディネータ装置において、下流のアクセスポイント装置の数を複数設定できるようにすればよい。このような論理的ルートを使用すれば、平面的あるいは立体的に均等に分布したアクセスポイント装置を効率よく接続可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の位置情報収集装置は例えば家庭内の各人の位置情報を収集する場合に適用可能であるが、本発明は家庭をはじめ、職場、工場、倉庫、介護施設など任意の場所における人や物など任意の対象物の位置情報収集に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の位置情報収集装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の位置情報収集装置において使用する端末装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の位置情報収集装置において使用するアクセスポイント装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の位置情報収集装置において使用するコーディネータ装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の位置情報収集装置において使用される無線パケットのフォーマット例を示す説明図である。
【図6】本発明の位置情報収集装置の実施例1における各装置間の信号のやり取りを示すタイムチャートである。
【図7】実施例1における端末装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図8】実施例1におけるアクセスポイント装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図9】実施例1におけるコーディネータ装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図10】実施例1におけるサーバ装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図11】図10のS64の集計処理の内容を示すフローチャートである。
【図12】本発明の位置情報収集装置の実施例2における各装置間の信号のやり取りを示すタイムチャートである。
【図13】実施例2における端末装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図14】実施例2におけるアクセスポイント装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図15】実施例2におけるコーディネータ装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図16】実施例2におけるサーバ装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図17】サーバ装置における集計処理の出力例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0073】
10…PCサーバ装置
11…ディスプレイ装置
12…キーボード
15…コーディネータ装置
16〜19…アクセスポイント装置
20〜23…端末
25〜28…論理的リンク(ルート)
30〜34…部屋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信機能を備え、ID情報を含む信号を繰り返し送信する端末装置と、
無線通信機能を備え、予め下流および上流のアクセスポイント装置を記憶しており、端末装置あるいは下流のアクセスポイント装置からのデータを受信し、自IDを付加して上流のアクセスポイントに転送するアクセスポイント装置と、
最上流のアクセスポイント装置から有線通信により信号を受信し、時刻情報を付加して記録するサーバ装置と
を特徴とする位置情報収集装置。
【請求項2】
前記端末装置はアクセスポイント装置を特定しない信号を送信し、
前記アクセスポイント装置は、端末装置からのデータに自IDと共に受信信号強度データを付加して上流のアクセスポイントに転送し、
前記サーバ装置は、所定の時差内に受信された同一端末IDの信号の内で受信強度データが最強のもののみを残し、他を削除する
ことを特徴とする請求項1に記載の位置情報収集装置。
【請求項3】
前記端末装置がまずアクセスポイント装置を特定しない信号を送信し、前記アクセスポイント装置は、端末装置からの信号に対して自IDと共に受信信号強度データを付加して当該端末装置に返送し、当該端末装置は返送信号の中で最も受信信号強度データの大きなアクセスポイント装置を選択し、当該アクセスポイント装置に対してID情報を含む信号を送信し、当該アクセスポイント装置は前記端末装置からのデータに自IDを付加して上流のアクセスポイントに転送することを特徴とする請求項1に記載の位置情報収集装置。
【請求項4】
前記アクセスポイント装置は、下流のアクセスポイント装置を複数個記憶可能であることを特徴とする請求項1に記載の位置情報収集装置。
【請求項5】
前記端末装置は、送信する信号に自端末装置の電池電圧情報も含めることを特徴とする請求項1に記載の位置情報収集装置。
【請求項6】
前記サーバ装置は、収集したデータに基づき、どの端末がどのアクセスポイント装置の近傍にどの程度の時間存在していたかを集計する集計手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の位置情報収集装置。
【請求項7】
前記集計手段は、特定のアクセスポイント装置の近傍に特定の複数の端末が同時に存在していた時間を求める同時存在時間集計手段を備えていることを特徴とする請求項6に記載の位置情報収集装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−244722(P2008−244722A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81075(P2007−81075)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(507099066)株式会社オーエステクノロジー (5)
【Fターム(参考)】