説明

位置推定プログラム、位置推定装置、及び位置推定方法

【課題】測定誤差情報を有効に利用して、測位対象の位置をより精度よく推定する位置推定プログラムを提供する。
【解決手段】位置推定プログラムは、複数の送信機からの信号を受信して行った測位により得られる位置と該位置の測定誤差とにより表される楕円形状の誤差領域を示す誤差領域情報を出力する測位部を用いて、複数回測位を行って得られた複数の前記誤差領域情報を取得し、前記取得した各誤差領域情報により示される前記誤差領域を長軸方向へ延長し、前記延長した誤差領域同士が交差する交差領域に基づいて測定対象の位置を推定する処理をコンピュータに実行させることにより、上記課題の解決を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示の技術は、基準点から位置測位の対象までの距離を測定してその対象の位置情報を取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
位置情報を取得する方法は、例えばGPS(global positioning system)衛星を用いた全世界的な測位システムが広く利用されている。測位方法には、GPS衛星を利用する方法以外にも、例えば、地上の無線基地局を利用する方法がある。いずれの測位方法でも、電波等の到達時間や強度を利用して、位置が明確に特定している複数の基準点から測位対象までの距離を測定し、三点測量を用いてその測位対象の位置を計算する。
【0003】
このとき、基礎情報となる、測位対象から各基準点までの距離は、測位方法や測位環境等によって誤差を含む。このような誤差の発生は、例えば、次の影響が考えられる。まず、測位センサが基準電波の反射波を検出することによって、測位対象から基準点までの距離が実際の距離よりも長い距離として誤認されることが考えられる。また、測位センサを用いて基準点からの電波を受信する場合、他の同周波数を含むノイズ源のために、その電波の受信時間や強度が正確でなくなってしまうことが考えられる。
【0004】
このような影響は、最終的に、測定結果の誤差となって表れる。その結果、測位センサは、本来の位置とずれた場所を測定位置として出力する。その誤差は、たとえば数mから数kmまで様々である。そこで、測定精度を向上させる技術として、例えば、次のようなものがある。
【0005】
第1の技術として、次のものがある。まず、位置の明確な無線局Aから質問信号を送出し、位置の不明確な無線局Cが応答信号を送出する。位置の明確な無線局A及びBで基地局Cからの応答信号が受信され、質問信号の送出時刻と位置の明確な無線局Bにおける応答信号の受信時刻に基づく位置データから楕円が計算される。また、位置の明確な無線局A及びBで基地局Cからの応答信号を受信した時刻に基づく位置データの差から双曲線が求められる。それから、双曲線と楕円との2つの交点が求められる。そして、電波の到来方向より、交点の1つを位置の不明確な無線局Cの位置が決定される。
【0006】
第2の技術として、次のものがある。まず、複数の定位推定を備えた初期の1組の定位データを生成し、仕事量を所定の数の重なり合う領域に分割する。各定位推定を任意の対応する重なり合う領域の1つまたは複数に割り当てて、重なり合う領域の1つまたは複数での定位推定の1つまたは複数のクラスタを形成し、定位推定の各クラスタによって表されるオブジェクトの位置を推定する。そして、重なり合う領域におけるクラスタでの推定されたオブジェクトの位置を比較することによって、オブジェクトのいずれかが重複オブジェクトであるかどうかを判定し、各重複オブジェクトを削除する。そして、残りの推定された各オブジェクトの位置を提供して、1組の位置推定を作成する。1組の位置推定は、初期の1組の定位推定に比べて改善された1組の定位推定を表す。
【0007】
その他の技術として、構造物の撮影画像と、予め記録した当該構造物の3Dデータとの偏差から、カメラの位置・姿勢情報を修正する技術がある。これにより、基準点を多数設置せずに、測量精度を向上させている。
【0008】
ところで、GPSによって携帯端末の現在位置を測位する場合、誤差範囲を求めることができる測位センサもある。このとき、携帯端末の測位位置に対する誤差範囲は、長軸半径誤差と、短軸半径誤差と、長軸角度とによる楕円範囲によって表される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−271418号公報
【特許文献2】特表2001−512940号公報
【特許文献3】特開2003−83744号公報
【特許文献4】特開2005−249789号公報
【特許文献5】特開2008−281942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、GPSを利用して現在位置を測位して、誤差範囲を求めることができる測位センサもある。このとき、測位位置に対する誤差範囲は、長軸半径誤差と、短軸半径誤差と、長軸角度とによる楕円範囲によって表される。そのような誤差範囲は、測定時の電波状況などから見積もられている。
【0011】
しかしながら、電波状況から誤差を正確に見積ることは難しい。例えば、測位対象が実際にある位置と、測定の結果得られた測定対象の位置との差よりも小さい範囲を、誤差領域と認識して出力してしまうことも起こりうる。測位センサの出力した誤差領域内に測位対象が存在すると仮定すると、上記のように、実際の誤差が見込みの誤差より大きかった場合に、測位システムが実際の位置を誤認するおそれがある。
【0012】
一方、定点を複数回観測することで誤差の少ない測定結果を選択したり、複数回の測定結果について統計的処理を行うことにより、測定精度を高めることが考えられる。例えば、上述した第2の技術では、複数の定位データをクラスタ化して、クラスタ毎に統計処理を複数回適用して、推定位置を計算し、全クラスタで最も集中している推定位置を、最終的な測定結果とする。
【0013】
しかしながら、この技術では測位データが多く得られ、それらの測位データが集中すればするほど、測位の精度が向上するが、その分測位回数が多くなり、測位結果を得るまでの時間もかかることになる。したがって、測位センサから得られた測位結果の範囲で、より高い精度の測定結果を取得することが望ましい。
【0014】
そこで、本明細書では、測定誤差情報を有効に利用して、測位対象の位置をより精度よく推定する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
測位対象の位置を推定する位置推定プログラムは、次の処理をコンピュータに実行させる。測位部は、複数の基地局からの信号を受信して測位を行い、測位により得られる位置と位置の測定誤差とにより表される楕円形状の誤差領域を示す誤差領域情報を出力する。コンピュータは、測位部を用いて、複数回測位を行って得られた複数の誤差領域情報を取得する。コンピュータは、取得した各誤差領域情報により示される前記誤差領域を長軸方向へ延長する。コンピュータは、延長した誤差領域同士が交差する交差領域に基づいて測定対象の位置を推定する。
【発明の効果】
【0016】
本明細書で記載の技術によれば、測定誤差情報を有効に利用して、測位対象の位置をより精度よく推定する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】測位時の実際の位置と、その位置における測位結果より得られた誤差領域とを地図上にマッピングした図である。
【図2】第1の実施形態における位置推定装置の構成の一例を示す。
【図3】第1の実施形態における位置推定装置のハードウェア構成の一例を示す。
【図4】測位センサにより生成される誤差領域情報の一例を示す。
【図5】延長領域同士を合成して得られる合成領域の一例を示す。
【図6】合成領域情報の一例を示す。
【図7A】第1の実施形態における位置推定処理のフロー(その1)を示す。
【図7B】第1の実施形態における位置推定処理のフロー(その2)を示す。
【図8】第1の実施形態における統計処理の一例を示す。
【図9】第2の実施形態(実施例1)における統計処理を示す。
【図10】第2の実施形態(実施例1)で処理中の計算対象リストの一例を示す。
【図11】第2の実施形態(実施例2)における統計処理を示す。
【図12】第2の実施形態(実施例2)で処理中の計算対象リストの一例を示す。
【図13】第2の実施形態(実施例3)における統計処理を示す。
【図14】第2の実施形態(実施例3)で処理中の計算対象リストの一例を示す。
【図15】第3の実施形態における位置推定装置の構成の一例を示す。
【図16A】第3の実施形態における位置推定処理のフロー(その1)を示す。
【図16B】第3の実施形態における位置推定処理のフロー(その2)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
三点測量による測位を行った場合に、基準局から取得した位置情報に測定誤差が含まれている。このとき、取得した位置情報を中心として、その測定誤差は細長い楕円状の領域(誤差領域)で表される。誤差領域が細長い楕円状の領域となるのは、次の理由によることが考えられる。まず、各基準局からの距離を基にした3つの球の交点を求めて測定位置を特定する際、それぞれの基準局との距離が各基準局を中心とした球の半径に、距離の誤差が球面の厚みになることが考えられる。次に、ある基準局からの距離に誤差が生じた結果、一つの球面の厚みが大きくなると、3球面の交差領域である誤差領域部分が誤差の大きな球の直径方向に膨らみ、細長くなることが考えられる。
【0019】
この誤差領域を地図上にマッピングすると、楕円形状の誤差領域が得られる。楕円状の誤差領域は、三つの球の交差領域として得られる直方体の領域が地表面に接する部分の形状として得られる。ここで、もっとも大きい基地局からの誤差の長さが、直方体の長い方向を形成する。なお、直方体の領域が地表面に接する部分の形状は、直方体と地表とが交わる角度によって変化する。
【0020】
したがって、誤差領域の長軸方向は、複数の基準局から受信された距離測定用信号に基づいて得られた誤差を用いて、三つの球の交差領域として得られる直方体の領域が地表面に接する部分の形状に基づいて得られる。このとき、その得られた誤差の大きさは、実際の誤差より大きくなることが多い。一方で、誤差領域の短軸方向は、複数の基準局から受信された距離測定用信号に基づいて得られた誤差のうち、より小さい誤差に基づいて決定された結果であり、長軸方向に比べて誤差見込みの精度も高いことが多い。
【0021】
図1は、測位時の実際の位置と、その位置における測位結果より得られた誤差領域とを地図上にマッピングした図である。図1において、星印が付された位置Z(実際の位置)において、時間を置いて複数回測位を行うものとする。すると、測位の度に、測位結果として得られる位置(「×」で示す位置)と、その位置を中心とした楕円形状の誤差領域が得られる。このように、測位結果は、測位の度に異なっており、正確に、実際の位置が得られることは少ない。
【0022】
しかしながら、時間を置いて複数回位置を計測した場合に、図1に示すように、長軸誤差の方向が実際の位置の方向を向いていることが多い。
そこで、以下の実施形態では、同じ位置で複数回測位して得られる誤差領域を長軸方向に延長し、延長した領域同士が相互に重なり合った部分を新たな誤差領域とする。そして、測定により得られた誤差領域の重心と、その新たな誤差領域との重心の集合の重心を測位対象の位置と推定する。なお、同じ位置とは、測位対象が静止している場合における同一の位置をいうが、次の場合も含む。すなわち、測位間で測位対象が移動した場合であっても、その移動距離が測定誤差に対して十分短いならば、測位対象が静止しているものとして取り扱い、この場合も同じ位置として扱う。
【0023】
以下、本実施の形態について説明する。
<第1の実施形態>
図2は、第1の実施形態における位置推定装置の構成の一例を示す。位置推定装置1は、測位対象となる装置自身であってもよいし、または測位対象となる装置に含まれるものでもよい。
【0024】
位置推定装置1は、例えば、位置が明確に特定される基準局15a,15b,15cの3基準局からの距離測定用信号を受信する。そして、位置推定装置1は、受信した距離測定用信号を用いて位置推定装置1自身のある位置の測位を行う。なお、基準局の数は3に限定されない。
【0025】
位置推定装置1は、測位部2、記憶部3、位置推定部4を含む。測位部2は、基準局15a,15b,15cからの距離測定用信号を受信する。測位部2は、受信した距離測定用信号を用いて、基準局15a,15b,15c等の送信機から測位対象となる測位部2のある位置までの距離を、電波などの到達時間や強度を利用して測る。それから、測位部2は、三点測量を用いて、その測定した距離に基づいて、測位部2のある位置(測定位置)を計算する。このとき、測位部2は、測定時の電波状況などから測定誤差を計算する。ここで、「測定誤差」とは、測定位置を中心とする楕円上の領域(誤差領域)の長軸の長さ及び短軸の長さを示す。また、以下では、測定位置を、誤差領域の「中心座標」または「中心点」と称する。
【0026】
記憶部3は、測位部2で算出された中心座標及び誤差情報を、誤差領域情報として記憶する。
位置推定部4は、同一位置において複数回測位されて得られた誤差領域情報を用いて、次の処理を実行する。すなわち、位置推定部4は、誤差領域情報毎に得られる誤差領域(中心座標と誤差情報とにより表される領域)を長軸方向に延長する。そして、位置推定部4は、延長した誤差領域同士を合成し、延長した誤差領域同士が相互に交わる領域を合成領域として取得する。位置推定部4は、誤差領域と合成領域を用いて測位対象の位置を推定する。
【0027】
位置推定部4は、取得部5、延長処理部6、合成部7,面積計測部8、面積比較部9、統計処理部10を含む。
取得部5は、記憶部3から誤差領域情報を取得する。延長処理部6は、誤差領域情報により示される誤差領域を長軸方向に延長した延長領域を生成する。
【0028】
合成部7は、交差領域取得部の一例である。合成部7は、n個の延長領域から2つを選択して、延長領域同士が交差する部分(合成領域)を算出する。合成部7は、n個の延長領域から2つを選択する全ての組み合わせ(n*(n−1)/2個の組み合わせ)について、この処理を行う。
【0029】
面積計測部8は、算出された合成領域の面積を計算する。面積比較部9は、算出された合成領域の面積と閾値を比較し、閾値以下の面積を有する合成領域を選択する。
統計処理部10は、推定部として、合成領域に基づいて測定対象の位置を推定する。すなわち、統計処理部10は、対象領域(誤差領域及び合成領域)の位置を示す座標の集合について統計処理を行い、統計処理により得られた座標を測位対象の推定位置として出力する。例えば、各対象領域の重心座標を取得して、統計処理によりこれらの座標の重心(平均)、加重平均、標準偏差、加重標準偏差等を算出することができるが、これらに限定されない。
【0030】
なお、図2において、測位部2、記憶部3、及び位置推定部4は、位置推定装置1に内蔵されているが、これに限定されない。例えば、基準局からの信号を直接受信する測位部2以外の機能部は、他の集約集計機器やオンライン上のサーバなどの別の機器に実装されていても良い。その場合、適切な通信手段を用いてセンサからの情報を位置推定部4などへ送信する仕組みが別途必要となる。
【0031】
図3は、第2の実施形態における位置推定装置のハードウェア構成の一例を示す。位置推定装置1は、例えば、測位センサ21、CPU22、短期記憶部23、入力装置24、出力装置25、長期記憶部26、バス27等を含む。
【0032】
CPU(中央処理演算装置)22は、位置推定装置1全体の動作を制御する。短期記憶部23は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の、処理中のデータを一時的に格納する揮発性の記憶部である。
【0033】
測位センサ21は、測位部2の一例である。測位センサ21は、例えば、基準局15a〜15cの3基準局からの距離測定用信号を含む電波を受信する。基準局は、距離測定用信号を含む電波を送信する送信機であって、例えば、人口衛星、または地上もしくは水上等の地球上に任意に設置されている基地局等を含む。
【0034】
測位センサ21は、搬送波などの到達時間や強度を利用して、基準局15a〜15cから位置推定装置1のある位置までの距離を測り、三点測量を用いて位置推定装置1のある位置を計算する。このとき、測位センサ21は、測定時の電波状況などから測定誤差を計算する。
【0035】
誤差領域の中心座標の情報(中心座標情報)と、測定誤差の情報(誤差情報)は、誤差領域情報28として、たとえば長期記憶部26に格納される。
入力装置24は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、マイク、通信装置等の入力装置である。出力装置25は、例えば、ディスプレイ、プリンタ、スピーカ、通信装置等の出力装置である。また、タッチパネル型ディスプレイのように、入力装置、及び出力装置が一装置で実現されていてもよい。
【0036】
なお、位置推定装置1は、入力装置24及び/または出力装置25を含まないようにしてもよい。例えば、位置推定装置1は、キーボード等もディスプレイ等も持たず、単にオンライン上のサーバからの設定を受信し、測定結果をサーバ上に送信するようにしてもよい。この場合、ネットワークデバイス(通信装置)が入出力機器の役割を果たしている。
【0037】
長期記憶部26は、例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶装置である。長期記憶部26には、例えば、誤差領域情報28、設定情報29、位置推定プログラム30等が記憶される。
【0038】
誤差領域情報28は、上述の通り、測位センサ21により計算された中心座標情報と誤差情報を含む情報である。設定情報29は、後述する処理で用いる初期値情報、閾値情報等であり、予め長期記憶部26に格納されている。位置推定プログラム30は、CPU22を、位置推定部4として機能させるプログラムである。
【0039】
図4は、測位センサにより生成される誤差領域情報の一例を示す。誤差領域情報28は、「中心座標」41、「誤差」45を含む。「中心座標」41は、「緯度」42、「経度」43、「高度」44などの誤差領域の中心座標を表す情報である。「誤差」45は、「長軸半径」46、「短軸半径」47、「傾き」48などの、測位センサ21により計算された誤差領域の大きさと形状を表す情報である。ここで、「傾き」48は、経線に対する長軸の傾き(角度)を示す。誤差領域の大きさと形状の具体的な説明については、図5で説明する。
【0040】
誤差領域情報28は、さらに、「取得型」49、「取得日時」50等の情報を含んでいても良い。「取得型」49は、GPSを用いて位置測位を行ったかや、無線LAN基地局を用いて位置測位を行った等の測位方法を表す。「取得日時」50は、基準局15a〜15cからの距離測定用信号を取得して測位を行った日時を表す。
【0041】
図5は、延長領域同士を合成して得られる合成領域の一例を示す。例えば、同一地点において、位置測位を複数回行った場合に得られた誤差領域情報28のうち、2つの誤差領域情報が選択されるとする。この場合、その一方の誤差領域情報が誤差領域情報28Aで表され、他方の誤差領域情報が誤差領域情報28Bで表される。なお、以下では、説明の便宜上、図4の第1レコードで示す誤差領域情報に関係する情報には、添え字Aを付して、第2レコードで示す誤差領域情報に関係する情報には、添え字Bを付して説明する。
【0042】
誤差領域情報28Aについて、「中心座標」41A(「緯度」42A=N35.58、「経度」43A=E139.64)で示される位置が、図5において、中心座標61Aで表される。中心座標61Aを中心として、「短軸半径」47A=24(m)、「長軸半径」46A=112(m)で表される領域が、誤差領域情報28Aにより示される楕円状の誤差領域64Aである。延長処理部6は、中心座標61A、短軸幅65A(短軸半径×2)で固定して、長軸方向66Aへ延長させた帯状の領域(延長領域67A)を生成する。
【0043】
一方、誤差領域情報28Bについて、中心座標41B(「緯度」42B=N35.59、「経度」43A=E139.66)により示される座標が、図5において、中心座標61Bで表される。中心座標61Bを中心として、「短軸半径」47B=16(m)、「長軸半径」46B=120(m)で表される領域が、誤差領域情報28Bにより示される楕円状の誤差領域64Bである。延長処理部6は、中心座標61B、短軸幅65B(短軸半径×2)で固定して、長軸方向66Bへ延長させた帯状の領域(延長領域67B)を作成する。
【0044】
合成部7は、同一座標系において、延長領域67Aと、延長領域67Bとを合成する。それから、合成部7は、図5に示すように、延長領域67Aと延長領域67Bが重なる平行四辺形状の領域(合成領域68)を検出する。
【0045】
合成部7は、長軸66Aと長軸66Bの交点で表される合成領域68の中心座標69、長軸66Aの軸幅65A及び傾き、長軸66Bの軸幅65B及び傾きを、合成領域情報として取得する。ここで、長軸の傾きとは、経線に対する長軸の傾き(角度)を示す。
【0046】
図6は、合成領域情報の一例を示す。合成部7は、取得した合成領域情報70を記憶部3に格納する。合成領域情報は、「中心座標」71、「誤差」75を含む。「中心座標」71には、「緯度」72、「経度」73、「高度」74などの合成領域68の中心座標69を表す情報が含まれる。
【0047】
「誤差」75には、「軸幅1」76、「傾き1」77、「軸幅2」78、「傾き2」79の情報が含まれる。「軸幅1」76には、長軸方向66Aの軸幅65Aが格納される。「傾き1」77には、経線に対する長軸66Aの傾き(角度)が格納される。「軸幅2」78には、長軸方向66Bの軸幅65Bが格納される。「傾き2」79には、経線に対する長軸66Bの傾き(角度)が格納される。
【0048】
合成領域情報70は、さらに、「取得型」80、「取得日時」81等の情報を含んでいても良い。「取得型」80には、合成部による処理により得られたことを示す「合成」が格納される。「取得日時」81には、合成の基礎になった2つの誤差領域情報28A,28Bそれぞれの「取得日時」50の内容が格納される。
【0049】
図7A及び図7Bは、第1の実施形態における位置推定処理のフローを示す。CPU22は、長期記憶部26から位置推定プログラム30を読み出して、位置推定プログラム30を実行する。
【0050】
まず、CPU22は、測位開始時から定期的に測位センサ21を起動し、測位センサ21から位置測位結果として誤差領域情報28を取得する(S1)。この取得間隔は、所定の時間毎に取得するようにしても良いし、誤差情報の少ない時間帯には頻度を高くしたり、他のセンサから取得する情報の重要性や取得量に合わせて頻度を変更したりしても良い。CPU22は、取得した誤差領域情報28を短期記憶部23または長期記憶部26に記憶する。
【0051】
CPU22は、測定結果が基準回数分蓄積されるまで、S1の処理を繰り返す(S2)。基準回数は、設定情報29に含まれるものであり、長期記憶部26に予め記憶されている。所定の基準回数以上の測定結果が得られた場合(S2で「Yes」)、CPU22は、位置測位処理部4(取得部5、延長処理部6、合成部7,面積計測部8、面積比較部9、統計処理部10)として機能して、合成領域の作成を開始する。
【0052】
取得部5は、短期記憶部23または長期記憶部26に記憶された誤差領域情報28のうち、「長軸半径」:「短軸半径」の比が閾値R以上の誤差情報を有する誤差領域情報28を抽出する(S3)。S3の処理は次の理由のために行う。円に近い誤差領域情報は、長軸方向がはっきりせず、軸の傾き誤差も大きいために、望ましい推定結果を得ることができない場合も考えられる。すなわち、楕円形状がある程度細長い誤差領域(短軸に比べて長軸が一定割合以上長い)についてより望ましい推定結果が期待されるために、S3の処理を行う。なお、閾値Rは、設定情報29に含まれるものであり、長期記憶部26に予め記憶されている。
【0053】
なお、取得部5は、短期記憶部23または長期記憶部26に記憶された誤差領域情報28のうち、短軸半径が所定の値Smin以下で、長軸半径が所定の値Smax以上の誤差情報を有する誤差領域情報28を抽出するようにしてもよい。この場合、Smax、Sminは、設定情報29に含まれるものであり、長期記憶部26に予め記憶されている。
【0054】
S3において抽出された誤差領域情報28が1つ以下の場合、S9の処理へ進む。S3において抽出された誤差領域情報28が2つ以上の場合、延長処理部6は、図5で説明したように、抽出したn個の誤差領域情報28それぞれを用いて延長領域を作成する。それから、合成部7は、作成した延長領域同士を合成して、延長領域同士が重なりあった領域を合成領域として取得する。合成部7は、この合成処理を総当りで行い、n*(n−1)/2個の合成領域を取得する(S5)。合成部7は、取得した合成領域に関する情報を、図6で説明したように、合成領域情報70として短期記憶部23または長期記憶部26に格納する。
【0055】
ここで、S5における合成領域の計算方法が、図4及び図5を例に用いて詳述される。なお、高緯度地方の場合、緯度・経度の長さの比率の誤差が大きくなるが、以下では、緯度・経度の長さは近似していると仮定し、等しいものとして扱う。
【0056】
誤差領域64Aの中心座標(緯度,経度)=($lat1,$lng1)、誤差領域64Aの長軸の傾きを単位経度当たりの緯度の増分$tan1で表すと、図4の場合、各パラメータは以下で示される。
$lat1 = 35.582;
$lng1 = 139.642;
$tan1 = tan(129);
誤差領域64Aの延長軸66A(延長領域67Aの中心線の座標($lat_e1, $lng_e1))は、以下の式で示される。
$lat_e1 = $tan1 * ($lng_e1 - $lng1) + $lng1; (1)
【0057】
また、誤差領域64Bの中心座標(緯度, 経度) =($lat2, $lng2)、誤差領域64Bの長軸の傾きを単位経度当たりの緯度の増分$tan2で表すと、図4の場合、各パラメータは以下で示される。
$lat2 = 35.596;
$lng2 = 139.661;
$tan2 = tan(43);
誤差領域64Bの延長軸66B(延長領域67Bの中心線の座標($lat_e2, $lng_e2))は、以下の式で示される。
$lat_e2 = $tan2 * ($lng_e2 - $lng2) + $lng2; (2)
【0058】
延長軸66A,66Bの交点は、2つの延長軸の式(1)(2)に対して、$lat_e1 = $lat_e2 かつ$lng_e1 = $lng_e2となる点である。延長軸上の点が経度x, 緯度yで数式的に表されるなら、
y = $tan1 * (x - $lng1) + $lng1; (3)
y = $tan2 * (x - $lng2) + $lng2; (4)
を満たす(x, y)の解が求められる。そこで、式(3)(4)をそれぞれ$tan1, $tan2で割って差を求めると、
(1 / $tan1 - 1 / $tan2) * y = ($lat1 / $tan1) - ($lat2 / $tan2) -$lng1 + $lng2
この式の両辺を(1 / $tan1 - 1 / $tan2)で割って、
y = (($lat1 / $tan1) - ($lat2 / $tan2) - $lng1 + $lng2) / (1 / $tan1- 1 / $tan2);
が得られる。
【0059】
ここで、合成領域の緯度: $lat_cは、以下で示される。
$lat_c = y = (($lat1 / $tan1) - ($lat2 / $tan2) - $lng1 + $lng2) / (1 /$tan1 - 1 / $tan2);
【0060】
合成領域の経度$lng_cを、誤差領域64Aの延長軸の式(1)、誤差領域64Bの延長軸の式(2)に当てはめて計算すると、
$lng_c = ($lat_c - $lat1) / $tan1 + $lng1; (式(1)の場合)
$lng_c2 = ($lat_c - $lat2) / $tan2 + $lng2; (式(2)の場合)
これより、計算結果は、以下のようになる。
$lat_c = 35.5798817669958
$lng_c = 139.643715311265
算出された$lat_c及び$lng_cの有効桁を入力値に合わせる。これより、図6の「緯度」72、「経度」73に格納される値が得られる。また、「軸幅1」76には、長軸方向66Aの軸幅65Aが格納される。「傾き1」77には、経線に対する長軸66Aの傾き(角度)が格納される。「軸幅2」78には、長軸方向66Bの軸幅65Bが格納される。「傾き2」79には、経線に対する長軸66Bの傾き(角度)が格納される。すると、図6の結果が得られる。
【0061】
次に、面積計測部8は、合成領域情報毎に、合成領域の面積Seを計算する(S6)。合成領域の面積Seは、図5に示す2つの延長領域67A,67Bの短軸幅65A,65B同士の積を、交差角θから求める正弦sinθで割ることで計算できる。ここで、延長領域67Aの短軸幅65Aをsa1で表し、延長領域67Bの短軸幅65Bをsa2で表すと、合成領域の面積Seは、以下の式で表される。
Se =sa1×sa2÷sinθ
【0062】
面積比較部9は、n*(n−1)/2個の合成領域情報から、一定の面積SeMax以下の面積を有する合成領域情報を抽出する(S7)。SeMaxは、設定情報29に含まれるものであり、長期記憶部26に予め記憶されている。面積SeMax以下の面積を有する合成領域情報が抽出されなかった場合(S7で「No」)、S9の処理へ進む。
【0063】
面積SeMax以下の面積を有する合成領域情報70が抽出された場合(S7で「Yes」)、面積比較部9は、抽出された合成領域情報70を計算対象リストへ追加する(S8)。計算対象リストは、短期記憶部23または長期記憶部26に格納されている。
【0064】
さらに、面積比較部9は、S1で取得した誤差領域情報28から、閾値SeMax以下の面積を有する誤差領域情報を抽出する(S9)。閾値SeMax以下の面積を有する誤差領域情報が抽出された場合(S10)、面積比較部9は、抽出された誤差領域情報28を計算対象リストへ追加する(S11)。
【0065】
以下では、計算対象リストに追加された誤差領域情報28及び合成領域情報70は、計算対象情報と称する。また、計算対象情報により表される誤差領域及び合成領域は、対象領域と称する。
【0066】
統計処理部10は、計算対象リストに、計算対象情報が含まれているか否かを判定する(S12)。統計処理部10は、計算対象リストに、計算対象情報が1つも含まれていないと判定した場合(S12で「No」)、本実施形態による位置推定処理は行われず、当該処理は終了する。
【0067】
統計処理部10は、計算対象リストに、計算対象情報が1つ以上含まれていると判定した場合(S12で「Yes」)、次の処理を行う。すなわち、統計処理部10は、計算対象リスト内の計算対象情報の対象領域の中心座標を用いて、中心座標の集合の重心位置を計算し、計算した重心位置を位置推定結果として出力する(S13)。
【0068】
ここで、i=1〜nまでの誤差領域の中心位置ベクトルをViとした時、重心位置ベクトルVresultは、以下の式で求めることができる。
Vresult = (Σ(i=1〜n) Vi) /n
なお、重心位置を具体的に算出する方法については、図8を用いて説明する。
【0069】
図8は、第1の実施形態における統計処理の一例を示す。統計処理部10は、計算対象リストに含まれる全計算対象情報の中心座標の緯度Lat_iの総和LatSumと、経度Lng_iの総和LngSumを計算する(S1301)。
【0070】
統計処理部10は、緯度の総和LatSumと経度の総和LngSumをそれぞれ、計算対象リストに含まれる全計算対象情報の数Numで割る(S1302)。統計処理部10は、座標(LatSum/Num, LngSum/Num)を重心位置として取得する(S1303)。このとき、座標(LatSum/Num, LngSum/Num)は、次の式で表される。
【0071】
【数1】

【0072】
本実施形態によれば、位置推定装置1は、位置測定センサにより出力される誤差情報に基づいて、楕円形状で表される誤差領域を長軸方向へ延長した延長領域を作成し、延長領域同士が重なり合う領域を合成領域として検出する。そして、位置推定装置1は、誤差領域の中心と合成領域の中心の重心を算出する。これにより、複数の演算結果から得られる重心位置の中に一つ不確実な情報があったとしても、統計的に確からしい情報へと、位置が集約されて演算されることになり、位置測位の精度を向上させることができる。また、測位センサの動作を変えることなく、位置推定装置による位置推定方法を変更するだけで、位置測位結果の精度向上を図ることができる。
【0073】
なお、図7A及び図7Bのフローでは、1回の統計処理が終了すると位置推定処理全体が終了しているが、測位センサ21の起動と統計処理が定期的に継続しても良い。また、位置推定装置1は、測位センサ21の起動と統計処理の周期及び頻度が他のセンサの重要度や計算処理負荷などに合わせて変更されても良い。例えば、高い精度が求められる測位については測位処理を頻繁に行って、統計処理で処理するための計算対象情報を増やして、より精度の高い情報を取得するようにしてもよい。また、例えば、統計処理での計算負荷に比べて他の計算負荷が高い場合には、統計処理の頻度を減らして全体の計算負荷を下げるなどしてもよい。
【0074】
また、本実施形態では、誤差領域の中心と合成領域の中心を用いて、これらの位置の集合の重心を算出したが、これに限定されない。例えば、誤差領域の中心と合成領域の中心を用いて、これらの位置の集合の標準偏差、加重平均、加重標準偏差等の統計的な値が算出されるようにしてもよい。
【0075】
また、本実施形態は、たとえば、位置測定の頻度に比べて場所を移動することが少ない準固定機器の位置把握などに用いることができる。例えば大型のプリンタなどの設置場所を長期的に追跡する場合に、本実施形態が利用されるようにしてもよい。また、例えば、重機のように一定期間は同じ工事現場で利用され、工事期間が終わると別の場所で利用されるような機器を長期的に追跡するような場合に利用してもよい。
【0076】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、楕円型の誤差領域に基づいて作成した延長領域同士を合成し、延長領域同士が重なった部分である合成領域の中心座標と、誤差領域(対象領域)の中心座標とからなる集合の重心を求めて測位対象の位置を推定した。それに対して、第2の実施形態では、対象領域の面積の大きさ、種類等、すなわち、誤差の信頼度に応じて、各対象領域の中心または重心座標に重み付けを施した上で重心を計算し、測位対象の位置を推定する。各対象領域の中心座標に対する重み付けのバリエーションとしては、例えば、以下の実施例がある。
【0077】
実施例1では、より大きな面積(=誤差)を有する対象領域に対しては、より小さな重み付けを行って、精度の上で信用度が低いものとしてその対象領域を扱う。一方、より小さな面積(=誤差)を有する対象領域に対しては、より大きな重み付けを行って、精度の上で信用度が高いものとしてその対象領域を扱う。
【0078】
具体的には、統計処理部10は、最終結果を得るために重心位置を求める際に、各対象領域の中心座標をその面積で除算した際の商ベクトルを累積的に加算し、最終的に面積の逆数の和で割ることで、重心座標を正規化する。
【0079】
ここで、i=1〜nまでの対象領域の中心位置ベクトルをVi、対象領域の面積をSiで表す。すると、測定結果Vresultは以下の式で表す値となる。
Vresult = (Σ(i=1〜n) Vi/Si) / (Σ(i=1〜n) 1/Si)
【0080】
以下では、より具体的に、統計処理部10の処理について詳述する。なお、本実施形態の位置推定装置の構成は、第1の実施形態と同様であるので、同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、本実施形態と第1の実施形態とでは、統計処理(S13)以外は、同一の処理を行う。
【0081】
図9は、第2の実施形態(実施例1)における統計処理を示す。統計処理部10は、計算対象リストから1つの計算対象情報を読み出す(S1311)。統計処理部10は、読み出した計算対象情報により示される対象領域が合成領域であるか否かを判定する(S1312)。対象領域が合成領域であるか否かの判定は、例えば、計算対象情報の有するデータ項目「取得型」が「合成」か否かにより行うことができる。
【0082】
計算対象情報の有するデータ項目「取得型」が「合成」である場合、統計処理部10は、対象領域が合成領域であると判定する(S1312で「Yes」)。この場合、統計処理部10は、以下の式を用いて、合成領域(平行四辺形)の面積Siを計算する(S1314)。
Si = |軸幅1×軸幅2/sin(傾き1−傾き2)|
【0083】
計算対象情報の有するデータ項目「取得型」が「合成」以外の情報である場合、統計処理部10は、対象領域が合成領域でないと判定する(S1312で「No」)。この場合、統計処理部10は、以下の式を用いて、誤差領域(楕円)の面積Siを計算する(S1313)。
Si = 長軸半径×短軸半径×π
【0084】
統計処理部10は、S1313またはS1314で計算された面積Siを、図10に示すように、現在処理されている計算対象情報と関係付けて、計算対象リストへ書き込む(S1315)。
【0085】
統計処理部10は、計算対象リストに含まれる全計算対象情報について、S1311〜S1315の処理を行う(S1316)。
統計処理部10は、計算対象リストの各計算対象情報の中心位置の緯度Lat_iを面積Siで割った値の総和LatSumRevを計算する。また、統計処理部10は、計算対象リストの各計算対象情報の中心位置の経度Lng_iを面積Siで割った値の総和LngSumRevを計算する。また、統計処理部10は、計算対象リストの各計算対象情報の面積Siの逆数1/Siの総和SiRecSumを計算する(S1317)。
【0086】
それから、統計処理部10は、緯度/面積の総和LatSumRevと、経度/面積の総和LngSumRevをそれぞれ、面積の逆数の総和SiRecSumで割る(S1318)。
統計処理部10は、その結果得られた座標(LatSumRev/SiRecSum, LngSumRev/SiRecSum)を重心座標として出力する(S1319)。このとき、重心座標(LatSumRev/SiRecSum, LngSumRev/SiRecSum)は、次の式で表される。
【0087】
【数2】

【0088】
本実施形態(実施例1)によれば、対象領域の面積の大きさに応じて、対象領域の重心座標に重みをつけることができる。よって、対象領域の面積(誤差)がより小さいものほど、すなわち、信頼度が高いものほど、その重心座標の重みをより重くして、重心座標の計算を行うことができる。
【0089】
次に、実施例2について説明する。実施例2は、実施例1において中心点/重心点の重心を求める際に、測位センサから得た誤差領域の中心座標と、合成領域の重心座標とに対して、異なる重みを付けるようにする。例えば、測位センサから直接得た誤差情報を重視したい場合には、測位センサから得た誤差領域の面積に対して2倍の重みをつけ、合成領域に対して1倍の重みをつけて、実施例1の方法で重心を計算する。
【0090】
ここで、測位センサから取得した中心点ベクトルはVsi、誤差領域の面積はSsi (i=1〜n)で表される。また、合成領域の中心点ベクトルはVcj、合成領域の面積はScj (j=1〜m)で表される。また、測位センサから得た誤差領域の面積に対する重みはk、合成領域の面積に対する重みはlで表される。このとき、測定結果Vresultは以下の式で表す値となる。なお、k、lは任意の正実数である。
result = (Σ(i=1〜n) Vsi/kSsi + Σ(j=1〜m) Vcj/lScj)/ (Σ(i=1〜n) / kSi + Σ(j=1〜m) / lScj)
【0091】
図11は、第2の実施形態(実施例2)における統計処理を示す。統計処理部10は、計算対象リストから1つの計算対象情報を読み出す(S1321)。統計処理部10は、読み出した計算対象情報により示される対象領域が合成領域であるか否かを判定する(S1322)。対象領域が合成領域であるか否かの判定は、例えば、計算対象情報の有するデータ項目「取得型」が「合成」か否かにより行うことができる。
【0092】
対象領域が合成領域であると判定した場合(S1322で「Yes」)、統計処理部10は、以下の式を用いて、合成領域(平行四辺形)の面積Srev_iを計算する(S1324)。なお、重みl(lは任意の実数)は、設定情報29に含まれるものであり、長期記憶部26に予め記憶されている。
Srev_i = 軸幅1×軸幅2/sin(傾き1−傾き2)×l
【0093】
対象領域が合成領域でないと判定した場合(S1322で「No」)、統計処理部10は、以下の式を用いて、誤差領域(楕円)の面積Srev_iを計算する(S1323)。なお、重みk(kは任意の実数)は、設定情報29に含まれるものであり、長期記憶部26に予め記憶されている。
Srev_i = 長軸半径×短軸半径×π×k
【0094】
統計処理部10は、S1323またはS1324で計算された面積Srev_iを、図12に示すように、現在処理されている計算対象情報と関係付けて、計算対象リストへ書き込む(S1325)。
【0095】
統計処理部10は、計算対象リストに含まれる全計算対象情報について、S1321〜S1325の処理を行う(S1326)。
統計処理部10は、計算対象リストの各計算対象情報の中心位置の緯度Lat_iを面積Srev_iで割った値の総和LatSumRevを計算する。また、統計処理部10は、計算対象リストの各計算対象情報の中心位置の経度Lng_iを面積Srev_iで割った値の総和LngSumRevを計算する。また、統計処理部10は、計算対象リストの各計算対象情報の面積Srev_iの逆数1/Srev_iの総和SiRecSumを計算する(S1327)。
【0096】
それから、統計処理部10は、緯度/面積の総和LatSumRevと、経度/面積の総和LngSumRevをそれぞれ、面積の逆数の総和SiRecSumで割る(S1328)。
統計処理部10は、算出した座標(LatSumRev/SiRecSum,LngSumRev/SiRecSum)を重心点として出力する(S1329)。このとき、重心座標(LatSumRev/SiRecSum,LngSumRev/SiRecSum)は、次の式で表される。
【0097】
【数3】

【0098】
本実施形態(実施例2)によれば、さらに、計算対象情報の取得元の信頼度に応じて、対象領域の中心座標に重みをつけることができる。よって、対象領域の面積がより小さいものほど、その中心座標の重みをより重くすると共に、計算対象情報が測位センサから得られた誤差領域情報かまたは合成領域情報かに応じて重みを調整することで、重心座標の計算を行うことができる。
【0099】
次に、実施例3について説明する。実施例3では、合成領域の面積に重み付けを施す場合に、合成領域とその元となる2つの誤差領域との距離の合計が短い合成領域ほど、その合成領域の面積に付する重みを大きくする。
【0100】
ここで、測位センサから取得した誤差領域の中心位置ベクトルはVsi、誤差領域の面積はSsi (i=1〜n)で表される。また、合成領域の中心位置ベクトルはVcj、合成領域の面積はScj (j=1〜m)で表される。また、誤差領域Aの中心位置Vsiと合成領域の中心位置Vcjの間の距離と、誤差領域Bの中心位置Vsiと合成領域の中心位置Vcjの間の距離との合計はDi(Diは実数)で表される。このとき、測定結果Vresultは以下の式で表す値となる。
Vresult = (Σ(i=1〜n) Vsi/Ssi + Σ(j=1〜m) Vcj/DiScj)/ (Σ(i=1〜n) 1/Ssi + Σ(j=1〜m) 1/DiScj)
【0101】
図13は、第2の実施形態(実施例3)における統計処理を示す。統計処理部10は、計算対象リストから1つの計算対象情報を読み出す(S1331)。統計処理部10は、読み出した計算対象情報により示される対象領域が合成領域であるか否かを判定する(S1332)。対象領域が合成領域であるか否かの判定は、例えば、計算対象情報の有するデータ項目「取得型」が「合成」か否かにより行うことができる。
【0102】
対象領域が合成領域であると判定した場合(S1332で「Yes」)、統計処理部10は、以下の式を用いて、合成領域(平行四辺形)の面積Srev_iを計算する(S1324)。
Srev_i = 軸幅1×軸幅2/sin(傾き1-傾き2)×Di
【0103】
対象領域が合成領域でないと判定した場合(S1332で「No」)、統計処理部10は、以下の式を用いて、誤差領域(楕円)の面積Srev_iを計算する(S1333)。
Srev_i = 長軸半径×短軸半径×π
【0104】
統計処理部10は、S1333またはS1334で計算された面積Srev_iを、図14に示すように、現在処理されている計算対象情報と関係付けて、計算対象リストへ書き込む(S1335)。
【0105】
統計処理部10は、計算対象リストに含まれる全計算対象情報について、S1331〜S1335の処理を行う(S1336)。
統計処理部10は、計算対象リストの各計算対象情報の中心位置の緯度Lat_iを面積Srev_iで割った値の総和LatSumRevを計算する。また、統計処理部10は、計算対象リストの各計算対象情報の中心位置の経度Lng_iを面積Srev_iで割った値の総和LngSumRevを計算する。また、統計処理部10は、計算対象リストの各計算対象情報の面積Srev_iの逆数1/Srev_iの総和SiRecSumを計算する(S1337)。
【0106】
それから、統計処理部10は、緯度/面積の総和LatSumRevと、経度/面積の総和LngSumRevをそれぞれ、面積の逆数の総和SiRecSumで割る(S1338)。
統計処理部10は、算出した座標(LatSumRev/SiRecSum,LngSumRev/SiRecSum)を重心点として出力する(S1339)。このとき、重心座標(LatSumRev/SiRecSum,LngSumRev/SiRecSum)は、次の一般式で表される。
【0107】
【数4】

【0108】
本実施形態(実施例3)によれば、実施例1において、合成領域の面積に重み付けを施す場合に、合成領域とその元となる2つの誤差領域との距離の合計が長い合成領域に対して重みを小さく、短いものの重みを大きくすることができる。
【0109】
<第3の実施形態>
また、取得した合成領域のうち、合成領域とその元となる2つの誤差領域との距離の合計が閾値Dmax(Dmaxは、任意の実数)以下となる合成領域のみを、計算対象としてもよい。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0110】
図15は、第3の実施形態における位置推定装置の構成の一例を示す。図15の位置推定装置は、図2の位置推定装置1の位置推定部4に、距離計測部90を追加したものである。距離計測部90の機能については、図16A及び図16Bを用いて説明する。
【0111】
図16A及び図16Bは、第3の実施形態における位置推定処理のフローを示す。図16A及び図16Bは、図7A及び図7Bにおいて、S5の処理とS6の処理の間に、S20の処理を追加したものである。
【0112】
S5の処理後、距離計測部90は、S5で得られた合成領域情報から、元の2つの誤差領域との距離の和が閾値Dmax以下となる合成領域を取得する(S20)。すなわち、距離計測部90は、S5で得られた各合成領域情報について、以下の処理を行う。距離計測部90は、合成領域情報の中心位置と誤差領域Aの中心位置との距離Daを計算する。また、距離計測部90は、合成領域情報の中心位置と誤差領域Bの中心位置との距離Dbを計算する。それから、距離計測部90は、距離Daと距離Dbとの和Dabを計算する。距離計測部90は、Dabが閾値Dmax以下となる合成領域情報を取得する。なお、Dmaxは、設定情報29に含まれるものであり、長期記憶部26に予め記憶されている。
【0113】
それから、面積計測部8は、S20で取得された合成領域情報について、S6の処理を行う。これ以降は、図7A及び図7Bと同じなので、その説明を省略する。
なお、本実施形態のS13の処理においても、第2の実施形態で説明した重み付けが行われるようにしてもよい。
【0114】
本実施形態によれば、取得された合成領域のうち、合成領域とその元となった誤差領域との距離が一定の範囲内にある合成領域を抽出することができる。よって、より精度の信頼性の高い合成領域情報を計算対象とすることができる。
【0115】
第1〜第3の実施形態によれば、誤差の見込みと実際の誤差との差が大きいような精度の低い測位センサの出力結果から、より精度の高い位置を推定することが可能になる。このため、より精度の良い測定結果を得ること、またはより少ない測定結果で同程度の精度の測定結果を得ることができる。
【0116】
なお、第1〜第3の実施形態では、位置推定部による処理を2次元方向に対して行ったが、3次元方向についても位置推定部による処理を適用してもよい。
第1〜第3の実施形態によれば、測位対象の位置を推定する位置推定プログラムは、次の処理をコンピュータに実行させる。測位部は、複数の送信機からの信号を受信して行った測位により得られる位置と位置の測定誤差とにより表される楕円形状の誤差領域を示す誤差領域情報を出力する。コンピュータは、測位部から取得した各誤差領域情報により示される前記誤差領域を長軸方向へ延長する。コンピュータは、延長した誤差領域同士が交差する交差領域に基づいて測定対象の位置を推定する。
【0117】
このように構成することにより、測定誤差情報を有効に利用して、測位対象の位置をより精度よく推定することができる。
位置推定プログラムは、前記測定対象の位置の推定において、誤差領域と交差領域を対象領域として、対象領域の位置を示す複数の座標について統計処理を行い、統計処理により得られた座標を測位対象の推定位置として出力する。
【0118】
このように構成することにより、測位センサから得られる限られた測位結果を利用し、誤差を含む複数の位置情報から、より正確な現在位置を取得することができる。つまり、測定結果により得られる誤差領域だけでなく、交差領域も用いて、統計処理を行うことができるため、測位回数に対する統計処理のためのサンプル数が増加するので、推定位置の精度が向上する。
【0119】
位置推定プログラムは、さらに、前記取得された誤差領域情報から、前記誤差領域の長軸半径と短軸半径の比が第1の閾値以上となる誤差領域情報を抽出する処理をコンピュータに実行させる。誤差領域を延長する場合、コンピュータは、抽出された誤差領域情報の誤差領域を長軸方向へ延長する。
【0120】
このように構成することにより、楕円形状がある程度細長い誤差領域(短軸に比べて長軸が一定割合以上長い)を有する誤差領域情報を、処理の対象にすることができる。
また、前記統計処理において、コンピュータは、各対象領域の重心座標の集合の重心を計算し、該計算した重心を前記推定位置として出力する。
【0121】
このように構成することにより、対象領域の重心座標の集合の平均を求めて、推定位置を取得することができる。
また、前記統計処理において、コンピュータは、面積がより小さい対象領域ほど、対象領域の重心座標により重い重みを付与し、重みが付与された各対象領域の重心座標の集合の重心を計算する。
【0122】
このように構成することにより、各重心の面積(誤差範囲)、すなわちその重心の信頼度に応じて、その重心に重み付けを行って、推定位置を取得することができる。
上述の説明では、誤差領域を延長する説明を行ったが、必ずしも領域を延長しなくてもよい。交点を求めるためには、測位部であるGPSから出力される座標と、長軸誤差方向の角度を用いてもよい。交差領域取得部は、座標と角度のセットの情報が2つあれば交点を求められるため、推定部は、この交点から推定位置の座標を求めてもよい。また、推定部による座標の求め方は、一般的なGPSの座標演算のように、最小二乗法を用いて算出してもよい。
【0123】
最小二乗法を用いた算出とは、仮の緯度経度を用いて演算する。最小二乗法を用いた算出は、中心座標から長軸誤差方向に延長した直線と仮の緯度経度との距離の二乗した値を求め、同様にして他の直線と仮の緯度経度の距離の二乗した値を求める。そして、最小二乗法を用いた算出は、これらの二乗した値の総和を求める。最小二乗法を用いた算出は、仮の緯度経度の値を変更し、同様の演算を繰り返し行い、その総和が最も少なくなる緯度経度の値を探し出す。繰り返しの回数には上限が設けてあり、繰り返し回数が上限に達すれば演算を終了し、総和が最も少なかった緯度経度の値を算出値として出力する。
【0124】
なお、GPSで一般的に用いられる誤差情報とは、位置情報を求める際に演算される劣化情報に基づき、統計的に求めた変換テーブルを参照して誤差距離に置き換えた値であって、一般的な誤差とは意味合いが異なる。したがって、実施例ではGPS情報を扱う一般用語として誤差という用語を用いており、実施例に記載する誤差とは劣化情報と同義の不確実らしさを表す情報として記載している。
【0125】
また、誤差に変換する前の劣化情報を用いる場合は、最終的に得られた劣化情報から、変換テーブルを参照して誤差情報に変換してもよい。なお、変換テーブルは、正確な位置がわかっているGPSで位置を測定した結果から求められる。誤差情報は、GPSで測定した結果得られた位置と正確な位置との距離を算出することで求められる。求めた情報は、算出した誤差情報と劣化情報とを統計処理ができる程度の多数のデータを収集する。変換テーブルは、劣化情報ごとに分散している誤差情報の平均的な距離を求めることで、作成される。
【0126】
なお劣化情報は、時間的な劣化で説明したが、受信した基準局の幾何学的配置関係で決定する劣化情報でもよい。例えば、2つの基準局から信号を受信し、それらの基準局の方向が90度ずれている場合、または、3つの基準局から信号を受信し、それらの基準局の方向が120度ずれている場合には、幾何学的配置関係で決定する劣化情報が小さくなる。
【0127】
一方で、多数の基準局から信号を受信できても、それぞれの基準局が同じ方向に偏り、または、180度ずれた2箇所に偏っている場合には、劣化情報が小さくならない。このような場合には、幾何学的配置関係で決定する劣化情報が実施例で説明した通り長軸と短軸に分かれて算出される。この場合、基準局の方向には位置情報の不確実さが低く、短軸の劣化情報が演算される。また、基準局が無い方向には、位置情報の不確実さがひどくなり、長軸の劣化情報が演算される。
【0128】
このようにして、基準局の無い正確な情報が得られない方向の角度が広ければ広いほど、長軸の劣化情報は悪い値となる。この長軸の方向を示す角度は、短軸の劣化情報の値が良いほど、角度の精度が高いと考えられ、新たに求める座標の正確さが増す。
【0129】
なお、本明細書に開示の技術は、以上に述べた実施の形態に限定されるものではなく、当該技術の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成または実施形態を取ることができる。
【0130】
上記実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 測位対象の位置を推定する処理をコンピュータに実行させる位置推定プログラムであって、
複数の送信機からの信号を受信して行った測位により得られる位置と該位置の測定誤差とにより表される楕円形状の誤差領域を示す誤差領域情報を出力する測位部を用いて、複数回測位を行って得られた複数の前記誤差領域情報を取得し、
前記取得した各誤差領域情報により示される前記誤差領域を長軸方向へ延長し、
前記延長した誤差領域同士が交差する交差領域に基づいて測定対象の位置を推定する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする位置推定プログラム。
(付記2) 前記測定対象の位置の推定において、前記誤差領域と前記交差領域を対象領域として、該対象領域の位置を示す複数の座標について統計処理を行い、該統計処理により得られた座標を前記測位対象の推定位置として出力する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする付記1に記載の位置推定プログラム。
(付記3) 前記位置推定プログラムは、さらに、
前記取得された誤差領域情報から、前記誤差領域の長軸半径と短軸半径の比が第1の閾値以上となる誤差領域情報を抽出する処理をコンピュータに実行させ、
前記誤差領域を延長する場合、前記抽出された誤差領域情報の前記誤差領域を長軸方向へ延長する
ことを特徴とする付記1または2に記載の位置推定プログラム。
(付記4) 前記位置推定プログラムは、さらに、
前記交差領域の面積が第2の閾値以下の交差領域を抽出する処理をコンピュータに実行させ、
前記統計処理において、前記誤差領域と前記抽出された交差領域を前記対象領域とする、
ことを特徴とする付記2または3に記載の位置推定プログラム。
(付記5) 前記統計処理において、該各対象領域の重心座標の集合の重心を計算し、該計算した重心を前記推定位置として出力する
ことを特徴とする付記2から4のうちいずれか1項に記載の位置推定プログラム。
(付記6) 前記統計処理において、面積がより小さい前記対象領域ほど、該対象領域の重心座標により重い重みを付与し、該重みが付与された各対象領域の重心座標の集合の重心を計算する
ことを特徴とする付記5に記載の位置推定プログラム。
(付記7) 前記統計処理において、前記対象領域の重心座標を該対象領域の面積で割った値の総和を、該対象領域の面積の逆数の総和で割ることにより、前記各対象領域の重心座標の集合の重心を計算する
ことを特徴とする付記6に記載の位置推定プログラム。
(付記8) 前記統計処理において、前記対象領域が前記誤差領域の場合、前記対象領域の面積をm(m:任意の実数)倍し、前記対象領域が前記交差領域の場合、前記対象領域の面積をn(n:任意の実数)倍して重みを付与し、該重みを付与した対象領域の面積で割った値の総和を、該重みを付与した対象領域の面積の逆数の総和で割ることにより、前記各対象領域の重心座標の集合の重心を計算する
ことを特徴とする付記6に記載の位置推定プログラム。
(付記9) 前記統計処理において、前記対象領域が前記交差領域の場合、該交差領域の基となる2つの前記誤差領域と該交差領域との距離の合計値がより小さい前記対象領域ほど、該対象領域の重心座標により重い重みを付与し、該重みが付与された各対象領域の重心座標の集合の重心を計算する
ことを特徴とする付記5から8のうちいずれか1項に記載の位置推定プログラム。
(付記10) 前記位置推定プログラムは、さらに、
前記対象領域が前記交差領域の場合、該交差領域の基となる2つの前記誤差領域と該交差領域との距離の合計が第3の閾値以下となる該交差領域を抽出する処理をコンピュータに実行させ、
前記統計処理において、前記誤差領域と前記抽出された交差領域を前記対象領域とする、
ことを特徴とする付記2から8のうちいずれか1項に記載の位置推定プログラム。
(付記11) 測位対象の位置を推定する位置推定装置であって、
複数回、複数の送信機からの信号を受信して測位を行い、該測位により得られる位置と該位置の測定誤差とにより表される楕円形状の誤差領域を示す誤差領域情報を生成する測位部と、
前記生成された各誤差領域情報により示される前記誤差領域を長軸方向へ延長する延長処理部と、
前記延長した誤差領域同士が交差する交差領域を取得する交差領域取得部と、
前記延長した誤差領域同士が交差する交差領域に基づいて測定対象の位置を推定する推定部と、
を備えることを特徴とする位置推定装置。
(付記12) 前記推定部は、前記誤差領域と前記交差領域を対象領域として、該対象領域の位置を示す複数の座標について統計処理を行い、該統計処理により得られた座標を前記測位対象の推定位置として出力する
を備えることを特徴とする付記11に記載の位置推定装置。
(付記13) 前記位置推定装置は、さらに、
前記生成された誤差領域情報から、前記誤差領域の長軸半径と短軸半径の比が第1の閾値以上となる誤差領域情報を抽出する第1抽出部、を備え、
前記延長処理部は、前記抽出された誤差領域情報それぞれについて、前記誤差領域を長軸方向へ延長する
ことを特徴とする付記11または12に記載の位置推定装置。
(付記14) 前記位置推定装置は、さらに、
前記交差領域の面積が第2の閾値以下の交差領域を抽出する第2抽出部、を備え、
前記推定部は、前記誤差領域と前記抽出された交差領域を前記対象領域とする
ことを特徴とする付記12または13に記載の位置推定装置。
(付記15) 測位対象の位置を推定する位置推定方法であって、
コンピュータが、
複数の送信機からの信号を受信して行った測位により得られる位置と該位置の測定誤差とにより表される楕円形状の誤差領域を示す誤差領域情報を出力する測位部を用いて、複数回測位を行って得られた複数の前記誤差領域情報を取得し、
前記取得した各誤差領域情報により示される前記誤差領域を長軸方向へ延長し、
前記延長した誤差領域同士が交差する交差領域に基づいて測定対象の位置を推定する
ことを特徴とする位置推定方法。
(付記16)
測位対象の位置を推定する位置推定装置であって、
送信機から送信される信号を受信して測位を行い、該測位により得られる位置と、該位置の劣化情報と、該劣化情報の長軸方向の角度とを生成する測位部と、
前記測位部から位置と角度の情報を複数取得し、取得した複数の位置と角度の情報に基づいて特定される複数の線情報が交差する交差領域を取得する交差領域取得部と、
前記交差領域取得部が取得した交差領域に基づいて測定対象の位置を推定する推定部と、
を備えることを特徴とする位置推定装置。
【符号の説明】
【0131】
1 位置推定装置
2 測位部
3 記憶部
4 位置推定部
5 取得部
6 延長処理部
7 合成部
8 面積計測部
9 面積比較部
10 統計処理部
15a,15b,15c 基準局
21 測位センサ
22 CPU
23 短期記憶部
24 入力装置
25 出力装置
26 長期記憶部
27 バス
28 誤差領域情報
29 設定情報
30 位置推定プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位対象の位置を推定する処理をコンピュータに実行させる位置推定プログラムであって、
複数の送信機からの信号を受信して行った測位により得られる位置と該位置の測定誤差とにより表される楕円形状の誤差領域を示す誤差領域情報を出力する測位部を用いて、複数回測位を行って得られた複数の前記誤差領域情報を取得し、
前記取得した各誤差領域情報により示される前記誤差領域を長軸方向へ延長し、
前記延長した誤差領域同士が交差する交差領域に基づいて測定対象の位置を推定する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする位置推定プログラム。
【請求項2】
前記測定対象の位置の推定において、前記誤差領域と前記交差領域を対象領域として、該対象領域の位置を示す複数の座標について統計処理を行い、該統計処理により得られた座標を前記測位対象の推定位置として出力する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項1に記載の位置推定プログラム。
【請求項3】
前記位置推定プログラムは、さらに、
前記取得された誤差領域情報から、前記誤差領域の長軸半径と短軸半径の比が第1の閾値以上となる誤差領域情報を抽出する処理をコンピュータに実行させ、
前記誤差領域を延長する場合、前記抽出された誤差領域情報の前記誤差領域を長軸方向へ延長する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の位置推定プログラム。
【請求項4】
前記統計処理において、該各対象領域の重心座標の集合の重心を計算し、該計算した重心を前記推定位置として出力する
ことを特徴とする請求項2から4のうちいずれか1項に記載の位置推定プログラム。
【請求項5】
前記統計処理において、面積がより小さい前記対象領域ほど、該対象領域の重心座標により重い重みを付与し、該重みが付与された各対象領域の重心座標の集合の重心を計算する
ことを特徴とする請求項5に記載の位置推定プログラム。
【請求項6】
測位対象の位置を推定する位置推定装置であって、
複数回、複数の送信機からの信号を受信して測位を行い、該測位により得られる位置と該位置の測定誤差とにより表される楕円形状の誤差領域を示す誤差領域情報を生成する測位部と、
前記生成された各誤差領域情報により示される前記誤差領域を長軸方向へ延長する延長処理部と、
前記延長した誤差領域同士が交差する交差領域を取得する交差領域取得部と、
前記延長した誤差領域同士が交差する交差領域に基づいて測定対象の位置を推定する推定部と、
を備えることを特徴とする位置推定装置。
【請求項7】
測位対象の位置を推定する位置推定装置であって、
送信機から送信される信号を受信して測位を行い、該測位により得られる位置と、該位置の劣化情報と、該劣化情報の長軸方向の角度とを生成する測位部と、
前記測位部から位置と角度の情報を複数取得し、取得した複数の位置と角度の情報に基づいて特定される複数の線情報が交差する交差領域を取得する交差領域取得部と、
前記交差領域取得部が取得した交差領域に基づいて測定対象の位置を推定する推定部と、
を備えることを特徴とする位置推定装置。
【請求項8】
測位対象の位置を推定する位置推定方法であって、
コンピュータが、
複数の送信機からの信号を受信して行った測位により得られる位置と該位置の測定誤差とにより表される楕円形状の誤差領域を示す誤差領域情報を出力する測位部を用いて、複数回測位を行って得られた複数の前記誤差領域情報を取得し、
前記取得した各誤差領域情報により示される前記誤差領域を長軸方向へ延長し、
前記延長した誤差領域同士が交差する交差領域に基づいて測定対象の位置を推定する
ことを特徴とする位置推定方法。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図1】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16A】
image rotate

【図16B】
image rotate