位置検出システムおよび位置検出方法
【課題】外部からの電力供給により交番磁界を発生する一のマーカと、該交番磁界の周波数と同一またはその近傍に共振周波数を有する共振回路を備えた他のマーカとがともに存在した場合であっても、一のマーカの位置または方向を正確に検出する。
【解決手段】外部からの電力供給により、所定の周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数を有する第1の交番磁界を発生する第1のマーカ4と、一組の第1の位置算出用周波数に挟まれた略中心の周波数を共振周波数とする磁気誘導コイル5を搭載した第2のマーカ3と、その作動範囲の外部に配置され、第1の位置算出用周波数において磁界を検出する磁界検出部13と、検出された磁界から一組の第1の位置算出用周波数を有する一組の第1の検出磁界成分の強度の加算値を抽出する抽出部30と、抽出された加算値に基づいて第1のマーカ4の位置および方向の少なくとも一方を算出する位置方向解析部22とを備える位置検出システム1を提供する。
【解決手段】外部からの電力供給により、所定の周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数を有する第1の交番磁界を発生する第1のマーカ4と、一組の第1の位置算出用周波数に挟まれた略中心の周波数を共振周波数とする磁気誘導コイル5を搭載した第2のマーカ3と、その作動範囲の外部に配置され、第1の位置算出用周波数において磁界を検出する磁界検出部13と、検出された磁界から一組の第1の位置算出用周波数を有する一組の第1の検出磁界成分の強度の加算値を抽出する抽出部30と、抽出された加算値に基づいて第1のマーカ4の位置および方向の少なくとも一方を算出する位置方向解析部22とを備える位置検出システム1を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出システムおよび位置検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、外部からの電力供給により交番磁界を発生するマーカを体腔内に挿入し、該マーカの発生した交番磁界を体外において検出することにより、体腔内におけるマーカの位置を検出する位置検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、外部からの位置検出用の磁界を作用させ、被検者の体内に投入されたカプセル型医療装置内に配置される磁気誘導コイルにおいて発生した誘導磁界の絶対値強度を検出することにより、カプセル型医療装置の位置および方向を検出するカプセル型医療装置の位置検出システムも知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−81303号公報
【非特許文献1】徳永他7名,「LC共振型磁気マーカを用いた高精度位置検出システム」,日本応用磁気学会誌,Vol.29,No.2,2005,p153〜156
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、外部からの電力供給により交番磁界を発生する一のマーカと、該交番磁界の周波数の近傍に共振周波数を有する共振回路を備えた他のマーカとがともに存在した場合、一のマーカが発生した交番磁界により、他のマーカの共振回路から誘導磁界が発生する。これにより、該交番磁界の周波数において単に磁界の絶対値強度を検出した場合に、誘導磁界も同時に検出することになるため、検出される磁界強度が、交番磁界のみを検出した場合とは相違する。その結果、一のマーカの位置または方向を正確に算出することが困難であった。
【0005】
本発明は、外部からの電力供給により交番磁界を発生する一のマーカと、該交番磁界の周波数と同一またはその近傍に共振周波数を有する共振回路を備えた他のマーカとがともに存在した場合であっても、一のマーカの位置または方向を正確に検出することができる位置検出システムおよび位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、外部からの電力供給により、所定の周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数を有する第1の交番磁界を発生する第1のマーカと、前記一組の第1の位置算出用周波数に挟まれた略中心の周波数を共振周波数とする磁気誘導コイルを搭載した第2のマーカと、前記第2のマーカの作動範囲の外部に配置され、前記第1の位置算出用周波数において磁界を検出する磁界検出部と、前記磁界検出部で検出された磁界から、前記一組の第1の位置算出用周波数を有する一組の第1の検出磁界成分の強度の加算値を抽出する抽出部と、抽出された前記加算値に基づいて前記第1のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出する位置方向解析部とを備える位置検出システムを提供する。
【0007】
本発明によれば、外部からの電力供給により、第1のマーカから発せられた、所定の周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数を有する第1の交番磁界が、第2のマーカに搭載された磁気誘導コイルによって受けられる。磁気誘導コイルは、共振特性によっては、第1の交番磁界を受けて誘導磁界(以下、第1の交番磁界に係る誘導磁界とする)を発生する場合がある。このとき、磁界検出部は、一組の第1の位置算出用周波数において、第1の交番磁界と、第1の交番磁界に係る誘導磁界とが混合した磁界を検出する。
【0008】
ここで、第1の交番磁界に係る誘導磁界は、第1の交番磁界と同じく一組の第1の位置算出用周波数を有している。一方、第1の検出磁界成分は、一組の第1の位置算出用周波数を有する磁界成分であるため、第1の交番磁界に係る誘導磁界が発生した場合は、第1の交番磁界の情報に加えて当該誘導磁界の情報を含む。また、磁気誘導コイルの共振周波数は、一組の第1の位置算出用周波数に挟まれた略中心の周波数であるため、第1の交番磁界に係る誘導磁界は、第1の交番磁界に対する強度の大小関係が互いに異なるとともに、該強度の絶対値が略同一となる特性を有している。
【0009】
よって、抽出部の作動により、一組の第1の検出磁界成分の強度の和が演算されると、第1の交番磁界に係る誘導磁界の情報が相殺され、磁界検出部で検出された磁界から第1の交番磁界の情報のみを抽出できる。これにより、位置方向解析部は、第1のマーカから発生した第1の交番磁界の強度情報のみを用いて、第1のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出することができる。その結果、外部からの電力供給により磁界を発生する第1のマーカと、磁気誘導コイルを有する第2のマーカとが共存した場合においても、誘導磁界に影響されることなく、第1のマーカの位置または方向を精度よく算出することができる。
【0010】
上記発明においては、前記一組の第1の位置算出用周波数が、さらに前記共振周波数の近傍の周波数であり、前記抽出部が、さらに前記磁界検出部で検出された磁界から、前記一組の第1の検出磁界成分の強度の差分を抽出し、前記位置方向解析部が、さらに前記差分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出することとしてもよい。
【0011】
このようにすることで、位置方向解析部は、抽出部により抽出された加算値に基づいて、第1のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出するとともに、抽出された差分の強度に基づいて、第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出する。
ここで、一組の第1の位置算出用周波数は、共振周波数の近傍の周波数であるため、磁気誘導コイルは、第1の交番磁界を受けると誘導磁界を発生する。また、第1の交番磁界に係る誘導磁界は、前記のとおり、一組の第1の位置算出用周波数において、第1の交番磁界に対する強度の大小関係が互いに異なる特性を有している。
【0012】
一方、第1の検出磁界成分は、一組の第1の位置算出用周波数を有する磁界成分であるため、第1の交番磁界の情報および第1の交番磁界に係る誘導磁界の情報を含む。よって、抽出部の作動により、一組の第1の検出磁界成分の強度の差分が演算されることで、第1の交番磁界の情報が相殺されるので、磁界検出部で検出された磁界から第1の交番磁界に係る誘導磁界の情報のみを抽出できる。
【0013】
これにより、位置方向解析部は、第2のマーカから発生した誘導磁界の強度情報を用いて、第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出することができる。その結果、外部からの電力供給により磁界を発生する第1のマーカと、磁気誘導コイルを有する第2のマーカとが共存した場合においても、第1のマーカおよび第2のマーカの両方について、位置および方向の少なくとも一方を精度よく算出することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記第2のマーカの作動範囲の外部に配置され、前記一組の第1の位置算出用周波数を有する第2の交番磁界を発生する磁界発生部を備え、前記一組の第1の検出磁界成分が、前記第1の交番磁界の発生時に検出された前記第1の位置算出用周波数を有する磁界と前記第1の交番磁界の発生前に検出された前記第1の位置算出用周波数を有する磁界との差分であることとしてもよい。
【0015】
このようにすることで、第2のマーカの作動範囲の外部に配置された磁界発生部により発生される第2の交番磁界は、前記第1の交番磁界と同一の周波数を有するため、磁気誘導コイルは、第1の交番磁界および第2の交番磁界を受けて誘導磁界(以下、第1および第2の交番磁界に係る誘導磁界とする)を発生する。磁界検出部は、第1の位置算出用周波数において、第1の交番磁界と第2の交番磁界と誘導磁界とが混合した磁界を検出する。
【0016】
ここで、第1および第2の交番磁界の発生時に第1の位置算出用周波数において検出される磁界は、第1の交番磁界、第2の交番磁界、および第1および第2の交番磁界に係る誘導磁界の情報を含む。
一方、第2の交番磁界のみ発生している場合、磁気誘導コイルは、第2の交番磁界を受けて誘導磁界(以下、第2の交番磁界に係る誘導磁界とする)を発生する。このとき、第1の位置算出用周波数において検出される磁界は、第2の交番磁界、および第2の交番磁界に係る誘導磁界の情報を含む。
【0017】
よって、第1の交番磁界の発生時と発生前におけるそれぞれの磁界情報の差分を第1の検出磁界成分とすると、各周波数における第1の検出磁界成分は、第1の交番磁界の情報、および第1の交番磁界に係る誘導磁界の情報のみを含むこととなる。
したがって、抽出部の作動により、一組の第1の検出磁界成分の強度の和が演算されると、第1の交番磁界に係る誘導磁界の情報が相殺されるので、磁界検出部で検出された磁界から第1の交番磁界の強度の情報のみを抽出できる。
【0018】
また、一組の第1の検出磁界成分の強度の差分は、上述した理由と同様の理由から、第1の交番磁界および第2の交番磁界の情報を含まず、第1および第2の交番磁界に係る誘導磁界の情報のみを含む。
よって、抽出部の作動により、一組の第1の検出磁界成分の強度の差分を演算すると、第1および第2の交番磁界に係る誘導磁界の情報のみを抽出できる。
【0019】
これにより、位置方向解析部は、第1の交番磁界の強度の情報のみを用いて、第1のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出し、第2のマーカから発生した誘導磁界の強度情報を用いて、第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出することができる。
【0020】
その結果、外部からの電力供給により磁界を発生する第1のマーカと、磁気誘導コイルを有する第2のマーカとが共存した場合においても、第1のマーカおよび第2のマーカの両方について、位置および方向の少なくとも一方を精度よく算出することができる。また、第1の交番磁界に加えて第2の交番磁界も、第2のマーカから誘導磁界を発生させているので、誘導磁界の強度を大きくすることができる。
【0021】
また、上記発明においては、前記第2のマーカの作動範囲の外部に配置され、前記共振周波数の近傍であって前記第1の位置算出用周波数と異なるとともに、前記共振周波数を挟み前記共振周波数に対して所定の周波数だけ離れた一組の第2の位置算出用周波数を有する第2の交番磁界を発生する磁界発生部を備え、前記磁界検出部が、さらに前記第2の位置算出用周波数において磁界を検出し、前記抽出部が、さらに前記磁界検出部で検出された磁界から、前記一組の第2の位置算出用周波数を有する一組の第2の検出磁界成分の強度の差分を抽出し、前記位置方向解析部が、さらに前記差分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出することとしてもよい。
【0022】
このようにすることで、第2のマーカの作動範囲の外部に配置された磁界発生部が発生する第2の交番磁界の一組の第2の位置算出用周波数は、共振周波数の近傍の周波数であるため、磁気誘導コイルは、第1の交番磁界を受けて第1の交番磁界に係る誘導磁界を発生するとともに、第2の交番磁界を受けて一組の第2の位置算出用周波数を有する誘導磁界(第2の交番磁界に係る誘導磁界)を発生する。磁界検出部は、一組の第1の位置算出用周波数において、第1の交番磁界と、第1の交番磁界に係る誘導磁界とが混合した磁界を検出し、一組の第2の位置算出用周波数において、第2の交番磁界と、第2の交番磁界に係る誘導磁界とが混合した磁界を検出する。
【0023】
そして、抽出部の作動により、磁界検出部で検出された磁界から、一組の第1の検出磁界成分の強度の加算値が抽出されるとともに、一組の第2の検出磁界成分の強度の差分が抽出される。さらに、位置方向解析部の作動により、抽出部により抽出された加算値に基づいて、第1のマーカの位置および方向の少なくとも一方が算出されるとともに、抽出された差分の強度に基づいて、第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方が算出される。
【0024】
ここで、第2の交番磁界に係る誘導磁界は、上述した理由と同様の理由から、一組の第2の位置算出用周波数において、第2の交番磁界に対する強度の大小関係が互いに異なる特性を有している。一方、第2の検出磁界成分は、一組の第2の位置算出用周波数を有する磁界成分であるため、第2の交番磁界の情報および第2の交番磁界に係る誘導磁界の情報を含む。よって、抽出部の作動により、一組の第2の検出磁界成分の強度の差分が演算されると、第2の交番磁界の情報が相殺されるので、磁界検出部で検出された磁界から第2の交番磁界に係る誘導磁界の情報のみを抽出できる。
【0025】
これにより、位置方向解析部は、第2のマーカから発生した誘導磁界の強度情報を用いて、第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出することができる。その結果、外部からの電力供給により磁界を発生する第1のマーカと、磁気誘導コイルを有する第2のマーカとが共存した場合においても、第1のマーカおよび第2のマーカの両方について、位置および方向の少なくとも一方を精度よく算出することができる。
【0026】
また、上記発明においては、前記第2のマーカの作動範囲の外部に配置され、前記共振周波数を有する第2の交番磁界を発生する磁界発生部を備え、前記磁界検出部が、さらに前記共振周波数において磁界を検出し、前記抽出部が、さらに前記磁界検出部で検出された磁界から、前記共振周波数を有するとともに前記第2の交番磁界の位相に対してπ/2ずれた位相を有する第2の検出磁界成分を抽出し、前記位置方向解析部が、さらに前記第2の検出磁界成分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出することとしてもよい。
【0027】
このようにすることで、第2のマーカの作動範囲の外部に配置された磁界発生部が、第2のマーカに搭載された磁気誘導コイルの共振周波数を有する第2の交番磁界を発生する。磁気誘導コイルは、第1の交番磁界を受けて第1の交番磁界に係る誘導磁界を発生するとともに、第2の交番磁界を受けて第2の交番磁界に係る誘導磁界を発生する。磁界検出部は、一組の第1の位置算出用周波数において、第1の交番磁界と、第1の交番磁界に係る誘導磁界とが混合した磁界を検出し、共振周波数において、第2の交番磁界と、第2の交番磁界に係る誘導磁界とが混合した磁界を検出する。
【0028】
抽出部は、磁界検出部で検出された磁界から、一組の第1の検出磁界成分の強度の加算値を抽出するとともに、第2の検出磁界成分を抽出する。位置方向解析部は、抽出部により抽出された加算値に基づいて、第1のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出するとともに、さらに抽出された第2の検出磁界成分の強度に基づいて、第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出する。
【0029】
ここで、第2の交番磁界に係る誘導磁界は、第2の交番磁界に対して、同一の周波数を有するとともに、π/2ずれた位相を有する。一方、第2の検出磁界成分も、第2の交番磁界に対して、同一の周波数を有するとともに、π/2ずれた位相を有する磁界成分であるため、第2の交番磁界の情報を含まず、第2の交番磁界に係る誘導磁界の情報のみを含む。よって、抽出部の作動により、第2の検出磁界成分を抽出すると、磁界検出部で検出された磁界から第2の交番磁界に係る誘導磁界の情報のみを抽出できる。
【0030】
これにより、位置方向解析部は、第2のマーカから発生した誘導磁界の強度情報のみを用いて、第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出することができる。その結果、外部からの電力供給により磁界を発生する第1のマーカと、磁気誘導コイルを有する第2のマーカとが共存した場合においても、第1のマーカおよび第2のマーカの両方について、位置および方向の少なくとも一方を精度よく算出することができる。
【0031】
また、上記発明においては、前記磁気誘導コイルを含む共振回路が、前記第1の位置算出用周波数において、以下の関係式を満たすこととしてもよい。
【数2】
【0032】
このようにすることで、各周波数における同一のセンスコイルにおいて検出される第1の交番磁界に係る誘導磁界の検出強度を等しくすることができる。その結果、一組の第1の検出磁界成分の強度について簡単な加算演算を行うことにより誘導磁界の情報を相殺させて、第1の交番磁界の情報のみを抽出することができる。
【0033】
また、上記発明においては、前記第1のマーカが、複数設けられ、複数の前記第1の位置算出用周波数が、互いに異なる周波数であることとしてもよい。
このようにすることで、複数の第1のマーカを識別することができる。
また、上記発明においては、前記第1のマーカが、内視鏡の先端部に設けられていることとしてもよい。
【0034】
また、上記発明においては、前記複数の第1のマーカが、内視鏡の挿入部の長手方向に沿って設けられていることとしてもよい。
また、上記発明においては、前記第2のマーカが、カプセル医療装置に設けられていることとしてもよい。
【0035】
また、上記発明においては、前記第2のマーカが、さらに磁界作用部を備え、該磁界作用部に作用させる推進用磁界を発生させる推進用磁界発生部と、前記位置方向解析部により算出された前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方に基づいて、前記推進用磁界の強度および方向を制御する推進用磁界制御部とを備えることとしてもよい。
【0036】
このようにすることで、推進用磁界発生部により発生された、第2のマーカの磁界作用部に作用させる推進用磁界の強度および方向が、推進用磁界制御部の作動により、位置方向解析部により算出された第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方に基づいて、制御される。これにより、第2のマーカの位置または方向に基づいて、第2のマーカの推進を制御することができる。
【0037】
また、本発明は、外部からの電力供給により、第1のマーカが所定の周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数を有する第1の交番磁界を発生する磁界発生ステップと、磁気誘導コイルを搭載した第2のマーカが前記第1の交番磁界を受けて誘導磁界を発生する誘導磁界発生ステップと、前記第1の位置算出用周波数において磁界を検出する磁界検出ステップと、検出された磁界から、前記一組の第1の位置算出用周波数を有する一組の第1の検出磁界成分の強度の加算値を抽出する抽出ステップと、抽出された前記加算値に基づいて前記第1のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出する位置方向解析ステップとを有する位置検出方法を提供する。
【0038】
上記発明においては、前記抽出ステップが、検出された磁界から、前記一組の第1の検出磁界成分の強度の差分を抽出するステップを含み、前記位置方向解析ステップが、さらに抽出された前記差分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出するステップを含むこととしてもよい。
【0039】
また、上記発明においては、前記磁界発生ステップが、前記一組の第1の位置算出用周波数を有する第2の交番磁界を発生するステップを含み、前記誘導磁界発生ステップが、前記第2のマーカが前記第2の交番磁界を受けて誘導磁界を発生するステップを含み、前記一組の検出磁界成分が、前記第1の交番磁界の発生時に検出された前記第1の位置算出用周波数を有する磁界と前記第1の交番磁界の発生前に検出された前記第1の位置算出用周波数を有する磁界との差分であることとしてもよい。
【0040】
また、上記発明においては、前記磁界発生ステップが、前記一組の第1の位置算出用周波数の近傍の一組の第2の位置算出用周波数を有する第2の交番磁界を発生するステップを含み、前記磁界検出ステップが、さらに前記第2の位置算出用周波数において磁界を検出するステップを含み、前記抽出ステップが、検出された磁界から、前記一組の第2の位置算出用周波数を有する一組の第2の検出磁界成分の強度の差分を抽出するステップを含み、前記位置方向解析ステップが、さらに抽出された前記差分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出するステップを含むこととしてもよい。
【0041】
また、上記発明においては、前記磁界発生ステップが、前記共振周波数を有する第2の交番磁界を発生するステップを含み、前記磁界検出ステップが、さらに前記共振周波数において磁界を検出するステップを含み、前記抽出ステップが、検出された磁界から、前記共振周波数を有するとともに前記第2の交番磁界の位相に対してπ/2ずれた位相を有する第2の検出磁界成分を抽出するステップを含み、前記位置方向解析ステップが、さらに抽出された前記第2の検出磁界成分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出することとしてもよい。
【発明の効果】
【0042】
本発明に係る位置検出システムおよび位置検出方法によれば、外部からの電力供給により交番磁界を発生する一のマーカと、該交番磁界の周波数と同一またはその近傍に共振周波数を有する共振回路を備えた他のマーカとがともに存在した場合であっても、一のマーカの位置または方向を正確に検出することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る位置検出システム1について、図1〜図6を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る位置検出システム1は、体腔内に挿入される挿入部2aを有する内視鏡装置2と、体腔内に投入されるカプセル医療装置3とを含むシステムであって、内視鏡装置2の挿入部2aの先端位置に備えられるマーカコイル(第1のマーカ)4と、カプセル医療装置3に備えられる磁気誘導コイル(第2のマーカ)5と、マーカコイル4の位置を検出する位置検出装置6と、これらを制御する制御部7と、位置検出装置6による検出結果を表示する表示装置8とを備えている。
【0044】
内視鏡装置2には、図2に示されるように、制御部7からの指示信号を受けて、マーカコイル4に第1の交番磁界を発生させるマーカ駆動回路9が設けられている。マーカ駆動回路9は、マーカコイル4により発生する第1の交番磁界の磁界波形を記憶する波形データメモリ10、D/A変換器11および増幅器12を備えている。
前記マーカコイル4は、マーカ駆動回路9により駆動されることにより、後述する入力装置から入力された共振周波数f0を挟み、該共振周波数f0に対して略等しい周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2を有する第1の交番磁界を発生するようになっている。
【0045】
カプセル医療装置3には、前記磁気誘導コイル5を含み、前記一組の第1の位置算出用周波数f1,f2に挟まれた略中心の周波数を共振周波数f0とする共振回路が備えられている。磁気誘導コイル5は、外部からの第1の交番磁界を受けて誘導磁界を発生するようになっている。
【0046】
前記位置検出装置6は、内視鏡装置2およびカプセル医療装置3が挿入される被検者の体外に配置され、マーカコイル4および磁気誘導コイル5から発生される磁界を検出する磁界検出部13と、磁界検出部13により検出された磁界に基づいて内視鏡装置2およびカプセル医療装置3の位置および方向を算出する位置計算部14とを備えている。
【0047】
前記磁界検出部13は、複数のセンスコイル13aと、各センスコイル13aからの出力信号を受信する受信回路13bとを備えている。
センスコイル13aは、空芯コイルであり、内視鏡装置2の挿入部2a先端およびカプセル医療装置3の作動空間に面して、9個1組が正方配列されている。
【0048】
受信回路13bは、内視鏡装置2の位置情報を含む交流電圧に含まれる高周波成分を取り除くローパスフィルタ(LPF)15、高周波成分を取り除かれた交流電圧を増幅するアンプ(AMP)16と、増幅された交流電圧の所定周波数帯域のみを通過させるバンドパスフィルタ(BPF)17と、バンドパスフィルタ17を通過した交流電圧をデジタル信号に変換するA/D変換器18とを備えている。これにより、磁界検出部13において検出された磁界は、デジタル信号からなる磁界信号として出力されるようになっている。
【0049】
前記位置計算部14は、磁界検出部13の受信回路13bから出力された磁界信号を記憶する第1のメモリ19と、該磁界信号を周波数解析処理するFFT処理回路20と、磁界信号の周波数解析処理結果から所定の磁界情報を抽出する抽出部21と、抽出された磁界情報に基づいて内視鏡装置2およびカプセル医療装置3の位置および方向を算出する位置方向解析部22と、算出された内視鏡装置2およびカプセル医療装置3の位置および方向を記憶する第2のメモリ23とを備えている。また、位置計算部14には、前記受信回路13b内の全てのA/D変換器18と位置計算部14とを同期させるためのクロック信号を発振するクロック32が備えられている。
【0050】
前記抽出部21は、マーカ駆動回路9が発生した信号の周波数成分である第1の位置算出用周波数f1,f2を制御部7から受けて、磁界信号の周波数解析処理により得られた磁界情報のうち、第1の位置算出用周波数f1,f2を有する磁界情報を抽出する周波数選択部24と、該周波数選択部24により抽出された第1の位置算出用周波数f1,f2における一組の磁界情報を記憶する第3のメモリ25と、マーカコイル4および磁気誘導コイル5の位置計算を行うための各センスコイル13aの信号を抽出する抽出計算部30とを備えている。
ここで、第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界情報とは、第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界の絶対値である。
【0051】
前記抽出計算部30は、第3のメモリ25に記憶されている、前記周波数選択回路により抽出された第1の位置算出用周波数f1における磁界情報(第1の検出磁界成分)の強度と、第1の位置算出用周波数f2における磁界情報(第1の検出磁界成分)の強度との加算値と差分とを算出するようになっている。
【0052】
前記位置方向解析部22は、前記抽出計算部30において算出された一組の磁界情報の強度の加算値に基づいて内視鏡装置2のマーカコイル4の位置および方向を算出し、一組の磁界情報の強度の差分に基づいてカプセル医療装置の磁気誘導コイル5の位置および方向を算出するようになっている。
【0053】
前記制御部7は、各種入力を行う入力装置26と、該入力装置26により入力された磁気誘導コイル5の共振周波数に基づいてマーカコイル4から発生する磁界波形を計算する波形データ生成部27と、入力された共振周波数に基づいて第1の位置算出用周波数を設定し、波形データ生成部27へ転送する制御回路28とを備えている。また、制御部7には、所定のクロック信号を発生するクロック29と、クロック信号に基づいてトリガ信号を発生するトリガ発生器31とが備えられている。
【0054】
制御回路28は、トリガ発生器31に対し、マーカ駆動回路9へのトリガ信号を発生させるようになっている。また、前記波形データ生成部27は、生成した磁界波形をマーカ駆動回路9の波形データメモリ10に転送するようになっている。
【0055】
このように構成された本実施形態に係る位置検出システム1を用いた内視鏡装置2の先端およびカプセル医療装置3の位置検出方法について、以下に説明する。
本実施形態に係る位置検出システム1により内視鏡装置2の先端およびカプセル医療装置3の位置および方向を検出するには、内視鏡装置2の先端のマーカコイル4およびカプセル医療装置3内の磁気誘導コイル5の位置および方向を検出する。
【0056】
まず、マーカコイル4から発生する磁界波形を生成し、マーカ駆動回路9の波形データメモリ10内に記憶する。磁界波形の生成は、図3に示されるフローに従って開始される。まず、入力装置26から磁気誘導コイル5の共振周波数f0を入力する(ステップS1)。制御回路28は、入力された共振周波数f0を挟み、該共振周波数f0に対して略等しい周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2を設定する(ステップS2)。そして、制御回路28は、設定された第1の位置算出用周波数f1,f2を波形データ生成部27へ転送する(ステップS3)。これにより、磁界波形の生成が開始される。
【0057】
波形データ生成部27においては、送られてきた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2に基づいてマーカコイル4から発生する磁界波形が、下式(1)を用いて算出される(ステップS4)。そして、算出された波形データがマーカ駆動回路9へ転送されて、波形データメモリ10内に記憶される(ステップS5)。
【0058】
Bm1=B1×sin(2πf1t)+B2×sin(2πf2t) (1)
ここで、B1、B2は、センスコイル13aの特性に合わせて設定され、センスコイル13aで周波数f1,f2の磁界成分を検出した際に同レベルの信号強度になるように設定されている。(センスコイル13aが理想的コイルであるならば、B1×f1=B2×f2となるように設定する。また、センスコイル13aの周波数特性をあらかじめ測定しておき、その特性に合わせてB1、B2を設定してもよい。)
【0059】
次に、図4〜図6に示されるように、体腔内に内視鏡装置2およびカプセル医療装置3が挿入配置された状態で(ステップS11)、入力装置26において実測定の開始が指示されることにより開始される(ステップS12)。
制御回路28は、トリガ発生器31にマーカ駆動回路9へのトリガ信号の発生を指示し、トリガ発生器31がトリガ信号を発生する(ステップS13)。
【0060】
マーカ駆動回路9は、波形データメモリ10内に記憶されている波形データに基づいて、磁界発生駆動信号をクロック信号に同期しながら順次生成し、マーカコイル4に出力する。マーカコイル4は入力された磁界発生駆動信号により第1の交番磁界を発生させる(ステップS14)。
【0061】
受信回路13bは、各センスコイル13aで検出したマーカコイル4からの第1の交番磁界に係る磁界信号をローパスフィルタ15によるローパスフィルタ処理、増幅器16による増幅処理およびバンドパスフィルタ17によるバンドパスフィルタ処理を行った後に、クロック32のクロック信号に同期してA/D変換を行う(ステップS15)。
【0062】
A/D変換された磁界信号は、位置計算部14の第1のメモリ19に記憶される(ステップS16)。そして、周波数解析処理を行うのに必要なデータ数が第1のメモリ19内に蓄積されたか否かが判断され、蓄積された場合にはFFT処理回路20が、位置計算部14の第1のメモリ19から磁界信号データを読み出して周波数解析処理が行われる(ステップS17)。その後、この周波数解析処理が全てのセンスコイル13aからのデータに対して行われたか否かが判断され(ステップS18)、全てのセンスコイル13aからのデータが処理されていない場合にはステップS13〜S17が繰り返される。
【0063】
全てのセンスコイル13aからのデータの周波数解析処理が行われた場合には、図5に示されるように、その処理結果に基づいて、周波数選択部24は、マーカコイル4から発生させた第1の交番磁界の第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界情報のみを抽出し、第1の位置算出用周波数f1,f2と対応づけて第3のメモリ25に記憶する(ステップS19)。この処理は全てのセンスコイル13aからの磁界信号に対して行われる(ステップS20)。
【0064】
抽出計算部30においては、磁気誘導コイル5の位置計算を行うための各センスコイル13aの信号を以下の計算式により抽出する(ステップS21)。
Vm21=Vf1−1−Vf2−1
Vm22=Vf1−2−Vf2−2
・・・
Vm2N=Vf1−N−Vf2−N
【0065】
ここで、Vf1−Nは、N番目のセンスコイル13aにより検出された第1の位置算出用周波数f1における磁界強度の絶対値を示し、Vf2−NはN番目のセンスコイル13aにより検出された第1の位置算出用周波数f2における磁界強度の絶対値を示す。また、Vm2Nは、N番目のセンスコイル13aにより検出した磁界強度の絶対値に基づき算出された、磁気誘導コイル5の位置計算を行うための信号を示す。
この場合において、Vm21からVm2Nの計算式の第1項は、第1の位置算出用周波数f1における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm21の計算式の第1項、すなわち周波数f1の1番目のセンスコイル13aによる検出信号には、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界の周波数f1の信号とともに、磁気誘導コイル5がマーカコイル4からの第1の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f1の信号が含まれている。
また、Vm21からVm2Nの計算式の第2項は、第1の位置算出用周波数f2における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm21の計算式の第2項、すなわち周波数f2の2番目のセンスコイル13aによる検出信号には、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界の周波数f2の信号とともに、磁気誘導コイル5がマーカコイル4からの第1の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f2の信号が含まれている。
【0066】
ここで、磁気誘導コイル5の共振周波数f0は、一組の位置算出用周波数f1,f2に挟まれた略中心の周波数であるため、第1の交番磁界に係る誘導磁界の周波数f1,f2の信号は、第1の交番磁界に対する強度の大小関係が互いに異なるとともに、該強度の絶対値が略同一となる特性を有している。一方で、第1の交番磁界の周波数f1,f2の信号は、前述したように、磁界波形の生成過程のステップ4において、センスコイル13aで周波数f1,f2の磁界成分を検出した際に、同レベルの信号強度となるように設定されている。これにより、Vm21からVm2Nの計算式の第1項と第2項との差分、すなわち一組の第1の検出磁界成分の差分を演算することにより、第1の交番磁界の信号は相殺され、第1の交番磁界に係る誘導磁界の信号は相殺されずに残る。
このようにして、共振周波数f0を挟み、該共振周波数f0から略等しい周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界強度の絶対値の差分を演算することにより、第1の交番磁界の信号を相殺することができる。その結果、第1の交番磁界により発生した誘導磁界の信号を容易に抽出することができる。
【0067】
位置方向解析部22は、抽出計算部30で求めたVm21、Vm22、・・・Vm2Nより磁気誘導コイル5の位置および方向を算出する(ステップS22)。
算出された磁気誘導コイル5の位置および方向のデータは制御回路28に送られ、表示装置8に表示される(ステップS23)。そして、算出された位置および方向データは第2のメモリ23に蓄えられる(ステップS24)。
【0068】
次に、抽出計算部30においては、マーカコイル4の位置計算を行うための各センスコイル13aの信号を以下の計算式により算出する(ステップS25)。
Vm11=Vf1−1+Vf2−1、
Vm12=Vf1−2+Vf2−2、
・・・
Vm1N=Vf1−N+Vf2−N
ここで、Vm1Nは、N番目のセンスコイル13aにより検出した磁界強度の絶対値に基づき算出された、マーカコイル4の位置計算を行うための信号を示す。
【0069】
この場合において、Vm11からVm1Nの計算式の第1項は、第1の位置算出用周波数f1における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm11の計算式の第1項、すなわち周波数f1の1番目のセンスコイル13aによる検出信号には、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界の周波数f1の信号とともに、磁気誘導コイル5がマーカコイル4からの第1の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f1の信号が含まれている。
また、Vm11からVm1Nの計算式の第2項は、第1の位置算出用周波数f2における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm11の計算式の第2項、すなわち周波数f2の2番目のセンスコイル13aによる検出信号には、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界の周波数f2の信号とともに、磁気誘導コイル5がマーカコイル4からの第1の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f2の信号が含まれている。
【0070】
ここで、第1の交番磁界に係る誘導磁界の周波数f1,f2の信号は、第1の交番磁界に対する強度の大小関係が互いに異なるとともに、該強度の絶対値が略同一となる特性を有している。これにより、Vm11からVm1Nの計算式の第1項と第2項との加算値、すなわち一組の第1の検出磁界成分の加算値を算出することにより、第1の交番磁界に係る誘導磁界の信号は相殺され、第1の交番磁界の信号は相殺されずに残る。
このようにして、共振周波数f0を挟み、該共振周波数f0から略等しい周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界強度の絶対値を加算することにより、第1の交番磁界に係る誘導磁界の信号を相殺することができる。その結果、第1の交番磁界の信号を容易に抽出することができる。
【0071】
位置方向解析部22は、抽出計算部30で求めたVm11、Vm12、・・・Vm1Nよりマーカコイル4の位置および方向を算出する(ステップS26)。
算出されたマーカコイル4の位置および方向のデータは制御回路28に送られ、表示装置8に表示される(ステップS27)。そして、算出された位置および方向データは第2のメモリ23に蓄えられる(ステップS28)。
【0072】
そして、入力装置26において位置検出終了の指示が入力されたか否かが確認され(ステップS29)、入力された場合には、トリガ発生器31からのトリガ信号の発生を終了させ、位置検出システム1の動作を停止する(ステップS30)。一方、終了の指示が入力されていない場合には、ステップS13に戻り、位置検出動作を継続する。
【0073】
この場合において、磁気誘導コイル5およびマーカコイル4の位置および方向の繰り返し演算における初期値としては、前回に算出され第2のメモリ23に記憶されている磁気誘導コイル5およびマーカコイル4の位置および方向の計算結果が利用される。これにより、繰り返し演算の収束時間を短縮し、位置および方向を迅速に算出することができる。
【0074】
このように、本実施形態に係る位置検出システム1およびこれを用いた位置検出方法によれば、マーカコイル4からの信号と磁気誘導コイル5からの信号とを、両方の信号の位置情報に基づいて完全に分離することができる。その結果、マーカコイル4および磁気誘導コイル5の位置および向き、すなわち、体腔内に挿入した状態の内視鏡装置2の挿入部2aの先端およびカプセル医療装置3の位置および方向を正確に求めることができる。
【0075】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る位置検出システム40について、図7〜図14を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る位置検出システム1と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0076】
本実施形態に係る位置検出システム40は、図7に示されるように、医療装置誘導システム100に備えられている。医療装置誘導システム100は、被験者の口部または肛門から体腔内に投入される内視鏡装置2およびカプセル医療装置3と、位置検出システム40と、検出された位置および方向ならびに施術者の支持に基づきカプセル医療装置3を誘導する磁気誘導装置101と、カプセル医療装置3から送信された画像信号を表示する画像表示装置102とを備えている。
【0077】
磁気誘導装置101は、図7に示すように、カプセル医療装置3を駆動する平行な外部磁界(回転磁界)を発生させる3軸ヘルムホルツコイルユニット(推進用磁界発生部)71と、3軸ヘルムホルツコイルユニット71に供給する電流を増幅制御するヘルムホルツコイルドライバ72と、カプセル医療装置3を駆動する外部磁界の方向を制御する磁界制御回路(推進用磁界制御部)73と、施術者が入力したカプセル医療装置3の進行方向を磁界制御回路73に出力する入力装置74とを備えている。
【0078】
なお、本実施形態では、3軸ヘルムホルツコイルユニット71と標記したが、ヘルムホルツコイルの条件を厳密に満たすものでなくてもよい。例えば、コイルは円形でなく、図7に示されるように略四角をしていてもよく、また、対向するコイルの間隔も本実施形態の機能を満たす範囲でヘルムホルツコイルの条件から外れていてもかまわない。
【0079】
3軸ヘルムホルツコイルユニット71は、図7に示されるように、略矩形形状に形成されている。また、3軸ヘルムホルツコイルユニット71は、互いに対向する3対のヘルムホルツコイル(電磁石)71X,71Y,71Zを備えるとともに、各対のヘルムホルツコイル71X,71Y,71Zが、図7のX,Y,Z軸に対して略垂直となるように配置されている。X,Y,Z軸に対して略垂直に配置されたヘルムホルツコイルを順にそれぞれヘルムホルツコイル71X,71Y,71Zと表記する。
【0080】
また、ヘルムホルツコイル71X,71Y,71Zは、その内部に略直方体状の空間Sを形成するように配置されている。空間Sは、図7に示されるように、カプセル医療装置3の作動空間(作動空間Sとも言う。)になるとともに、被検者が配置される空間にもなっている。
【0081】
ヘルムホルツコイルドライバ72は、それぞれヘルムホルツコイル71X,71Y,71Zを制御するヘルムホルツコイルドライバ72X,72Y,72Zを備えている。
磁界制御回路73には、後述する位置検出システム40からカプセル医療装置3の現在向いている方向(カプセル医療装置3の長手軸Rの方向)データが入力されるとともに、施術者が入力装置74から入力したカプセル医療装置3の進行方向指示が入力されるようになっている。そして、磁界制御回路73からは、ヘルムホルツコイルドライバ72X,72Y,72Zを制御する信号が出力されるとともに、表示装置8にカプセル医療装置3の回転位相データが出力され、また、各ヘルムホルツコイルドライバ72X,72Y,72Zに供給する電流データが出力されるようになっている。
【0082】
また、入力装置74としては、例えば、ジョイスティック(図示略)を備え、ジョイスティックを倒すことによりカプセル医療装置3の進行方向を指示するようになっている。
なお、入力装置74は、上述のようにジョイスティック方式のものを用いてもよいし、進行方向のボタンを押すことにより進行方向を指示する入力装置など、他の方式の入力装置を用いてもよい。
【0083】
カプセル医療装置3は、図8に示すように、その内部に各種の機器を収納する外装110と、被検者の体腔内管路の内壁面を撮像する撮像部120と、撮像部120を駆動する電池130と、後述する磁界発生装置41により交流磁界を発生させる誘導磁界発生部140と、磁気誘導装置70で発生する外部磁界を受け、カプセル医療装置3を駆動する永久磁石(磁界作用部)150とを備えている。
【0084】
外装110は、カプセル医療装置3の長手軸Rを中心軸とする赤外線を透過する円筒形状のカプセル本体(以下、単に本体と略記)111と、本体111の前端を覆う透明な半球形状の先端部112と、本体の後端を覆う半球形状の後端部113とから構成され、水密構造で密閉されたカプセル容器を形成している。
【0085】
また、外装110の本体111の外周面には、長手軸Rを中心として断面円形の線材を螺旋状に巻いた螺旋部114が備えられている。
磁気誘導装置70で発生させた回転する外部磁界を受け、永久磁石150が回転させられると、本体111とともに螺旋部114が長手軸R回りに回転させられる結果、螺旋部114により本体111の長手軸R回りの回転運動が長手軸Rに沿う方向の直線運動に変換され、管腔内でカプセル医療装置3を長手軸R方向に誘導することができるようになっている。
【0086】
撮像部120は、長手軸Rに対して略垂直に配置された基板120Aと、基板120Aの先端部112側の面に配置されたイメージセンサ121と、被験者の体腔内管路の内壁面の画像をイメージセンサ121に結像させるレンズ群122と、体腔内管路の内壁面を照明するLED(Light Emitting Diode)123と、基板120Aの後端部113側の面に配置された信号処理部124と、画像信号を画像表示装置102に発信する無線素子125とを備えている。
【0087】
信号処理部124は、電池130に電気的に接続されているとともに、イメージセンサ121およびLED123と電気的に接続されている。また、信号処理部124は、イメージセンサ121が取得した画像信号を圧縮して一時的に格納(メモリ)し、圧縮した画像信号を無線素子125から外部に送信するとともに、後述するスイッチ部126からの信号に基づきイメージセンサ121およびLED123のオン・オフを制御している。
【0088】
イメージセンサ121は、先端部112およびレンズ群122を介して結像された画像を電気信号(画像信号)に変換して信号処理部124へ出力している。このイメージセンサ121としては、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やCCDを用いることができる。
また、LED123は、基板120Aより先端部112側に配置された支持部材128に、長手軸Rを中心として周方向に間隔をあけて複数配置されている。
画像表示装置102は、カプセル医療装置3から送られてくる画像データを受信する画像受信回路81と、受信された画像データを表示する表示装置8とを備えている。
【0089】
永久磁石150は、信号処理部124の後端部113側に配置されている。永久磁石150は、長手軸Rに対して直行方向に磁化方向(磁極)を有するように配置または着磁されている。
永久磁石150の後端部113側には、スイッチ部126が備えられている。スイッチ部126は赤外線センサ127を有し、信号処理部124および電池130と電気的に接続されている。
【0090】
また、スイッチ部126は長手軸Rを中心として周方向に等間隔に複数配置されるとともに、赤外線センサ127が直径方向外側に面するように配置されている。本実施形態においては、スイッチ部126が4つ配置されている例を説明するが、スイッチ部126の数は4つに限られることなく、その個数がいくつであってもよい。
【0091】
無線素子125の後端部113側に配置された誘導磁界発生部140は、中心軸が長手軸Rと略一致する円柱形状に形成されたフェライトからなる芯部材(磁性体コア)141と、芯部材141の外周部に配置された磁気誘導コイル5と、磁気誘導コイル5と電気的に接続され、共振回路を形成するコンデンサ(図示略)とから形成されている。
また、芯部材141はフェライトの他、磁性材料が適しており、鉄、ニッケル、パーマロイ、コバルトなどを使用することもできる。また、磁気誘導コイル5が磁性体コアを有しない空芯コイルで構成されていてもよい。
【0092】
本実施形態に係る位置検出システム40は、図7および図10に示されるように、磁気誘導コイル5の作動範囲の外部に配置され、前記第1の交番磁界と同一の周波数および位相を有する第2の交番磁界を発生する磁界発生装置41および磁界発生装置駆動回路42を備える点および位置方向解析部22における演算処理において、上述した第1の実施形態に係る位置検出システム1と相違している。図10中、符号43は波形データメモリ、符号44はD/A変換器、符号45は増幅器である。また、図7中において、符号46は磁界発生装置41を選択するセレクタ、符号47はセンスコイル13aを選択するセンスコイルセレクタである。
【0093】
図9および図10に本実施形態に係る位置検出システム40を簡略化して示す。
本実施形態に係る位置検出システム40により、内視鏡装置2の先端のマーカコイル4およびカプセル医療装置3内の磁気誘導コイル5の位置および方向を検出するには、発生する第1,第2の交番磁界の波形データを生成して波形データメモリ10,43に記憶し、カプセル医療装置3が作動範囲内に存在しない状態で、キャリブレーションを行う。
【0094】
マーカコイル4から第1の交番磁界を発生するのみならず磁界発生装置41からも第2の交番磁界を発生するので、生成された磁界波形データは、マーカ駆動回路9および磁界発生装置駆動回路42の波形データメモリ10,43にそれぞれ転送される。
波形データ生成部27においては、送られてきた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2に基づいてマーカコイル4から発生させる磁界波形が、下式(1)を用いて算出される。
Bm1=B1×sin(2πf1t)+B2×sin(2πf2t) (1)
【0095】
また、波形データ生成部27においては、送られてきた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2に基づいて磁界発生装置41から発生させる磁界波形が、下式(2)を用いて算出される。
BG=B3×sin(2πf1t)+B4×sin(2πf2t) (2)
【0096】
そして、算出された磁界波形Bm1のデータがマーカ駆動回路9へ転送されて、波形データメモリ10内に記憶される。さらに、算出された磁界波形BGのデータが磁界発生装置駆動回路42へ転送されて、波形データメモリ43内に記憶される。
なお、マーカコイル4および磁界発生装置41から発生する第1,第2の交番磁界は、磁気誘導コイル5の共振周波数f0を挟み、該共振周波数f0から略等しい周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2に一致し、かつ同一の位相を有している。
【0097】
キャリブレーションは、図11および図12に示されるように、内視鏡装置2の挿入部2a先端が体腔内に挿入され、カプセル医療装置3が体腔内に投入されていない状態で、入力装置26からキャリブレーションの指示が入力されることにより開始される(ステップS31)。制御回路28は、磁界発生装置駆動回路42に対してトリガ信号を発生するようにトリガ発生器31に指示を与える。これによりトリガ発生器31からトリガ信号が発せられる(ステップS32)。
【0098】
トリガ信号を受けた磁界発生装置駆動回路42は、波形データメモリ43内に記憶されている波形データに基づいて、磁界発生駆動信号をクロック29からのクロック信号に同期して順次生成し、磁界発生装置41に出力する。磁界発生装置41は、入力された磁界発生駆動信号により第2の交番磁界を発生する(ステップS33)。
【0099】
受信回路13bは、各センスコイル13aで検出した磁界発生装置41からの第2の交番磁界に係る磁界信号を受信して、ローパスフィルタ処理、増幅処理およびバンドパスフィルタ処理を行った後に、クロック32からのクロック信号に同期してA/D変換を行う(ステップS34)。
【0100】
A/D変換された磁界信号は、位置計算部14の第1のメモリ19に記憶される(ステップS35)。そして、周波数解析処理を行うのに必要なデータ数が第1のメモリ19内に蓄積されたか否かが判断され、蓄積された場合にはFFT処理回路20により周波数解析処理が行われる(ステップS36)。
【0101】
周波数解析処理の結果に基づいて、周波数選択部24は、マーカコイル4から発生させた第1の交番磁界および磁界発生装置41から発生させた第2の交番磁界の第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界情報のみを抽出し、周波数f1,f2と対応づけて第3のメモリ25に記憶させる(ステップS37)。
【0102】
このとき、記憶された各第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界情報の信号強度をV0f1―1、V0f1―2、・・・V0f1―N、V0f2―1、V0f2―2、・・・V0f2―Nとする。ここで、上付きの添え字f1,f2は周波数成分を示し、その後の添え字、1,2,・・・,Nはセンスコイル13aの番号を表す。また、磁界情報とはFFT処理結果の絶対値である。そして、この第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界情報がキャリブレーション値として第3のメモリ25に記憶されることになる。
【0103】
ここで、全てのセンスコイル13aで検出された周波数f1の信号強度と、周波数f2の信号強度を補正する。
具体的には、まず、全てのセンスコイル13aで検出された周波数f1の信号成分の和Σ(V0f1―N)と、全てのセンスコイル13aで検出された周波数f2の信号成分の和Σ(V0f2―N)を求める。次いで、信号成分の和の比Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)を補正係数として求める。
【0104】
そして、求められた補正係数を用いて、V0f2―1,V0f2―2,・・・,V0f2―Nを次のように置き換えて第3のメモリ25に上書き保存する。
V0f2―1を、V0f2―1×Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)に置き換える。
V0f2―2を、V0f2―2×Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)に置き換える。
・・・
V0f2―Nを、V0f2―N×Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)に置き換える。
また、補正係数Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)も第3のメモリ25に保存しておく(ステップS38)。
【0105】
これにより、第3のメモリ25に保存されているV0f1―1と、V0f2―1(置き換えられたことによりV0f2―1×(V0f1―N)/Σ(V0f2―N))はほぼ等しい値を持つ。言い換えれば、各センスコイル13aの周波数f1の信号に対するゲインと、周波数f2の信号に対するゲインをほぼ等しくする操作を行ったことになる。
【0106】
次に、実測定は、図12〜図14に示されるように、体腔内に内視鏡装置2およびカプセル医療装置3が挿入配置された状態で(ステップS41)、入力装置26において実測定の開始が指示されることにより開始される(ステップS42)。
制御回路28は、トリガ発生器31にマーカ駆動回路9および磁界発生装置駆動回路42へのトリガ信号の発生を指示し、トリガ発生器31がトリガ信号を発生する(ステップS43)。
【0107】
マーカ駆動回路9は、波形データメモリ10内に記憶されている波形データに基づいて、磁界発生駆動信号をクロック信号に同期しながら順次生成し、マーカコイル4に出力する。マーカコイル4は入力された磁界発生駆動信号により第1の交番磁界を発生させる(ステップS44)。
また、磁界発生装置駆動回路42は、波形データメモリ43内に記憶されている波形データに基づいて、磁界発生駆動信号をクロック信号に同期しながら順次生成し、磁界発生装置41に出力する。磁界発生装置41は入力された磁界発生駆動信号により第2の交番磁界を発生させる(ステップS45)。
【0108】
受信回路13bは、各センスコイル13aで検出したマーカコイル4からの第1の交番磁界および磁界発生装置41からの第2の交番磁界に係る磁界信号をローパスフィルタ処理、増幅処理およびバンドパスフィルタ処理を行った後に、クロック32からのクロック信号に同期してA/D変換を行う(ステップS46)。
【0109】
A/D変換された磁界信号は、位置計算部14の第1のメモリ19に記憶される(ステップS47)。
そして、周波数解析処理を行うのに必要なデータ数が第1のメモリ19内に蓄積されたか否かが判断され、蓄積された場合には、FFT処理回路20は第1のメモリ19から信号データを読み出して周波数解析処理を行う(ステップS48)。その後、この周波数解析処理が全てのセンスコイル13aからのデータに対して行われたか否かが判断され(ステップS49)、全てのセンスコイル13aからのデータが処理されていない場合にはステップS43〜S48が繰り返される。
【0110】
全てのセンスコイル13aからのデータの周波数解析処理が行われた場合には、図14に示されるように、その処理結果に基づいて、周波数選択部24は、マーカコイル4から発生させた第1の交番磁界および磁界発生装置41から発生させた第2の交番磁界の第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界情報のみを抽出し、周波数f1,f2と対応づけて第3のメモリ25に記憶する(ステップS50)。この処理は全てのセンスコイル13aからの磁界信号に対して行われる(ステップS51)。
【0111】
抽出計算部30では、磁気誘導コイル5の位置計算を行うための各センスコイル13aからの信号を以下の計算式から抽出する(ステップS52)。
Vm21=(Vf1−1−V0f1―1)−(Vf2−1× Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)−V0f2―1)
Vm22=(Vf1−2−V0f1―2)−(Vf2−2× Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)−V0f2―2)
・・・
Vm2N=(Vf1−N−V0f1―N)−(Vf2−N× Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)−V0f2―N)
【0112】
この場合において、Vm21からVm2Nの計算式の第1項は、第1の位置算出用周波数f1における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm21の計算式の第1項(Vf1−1−V0f1―1)のうちVf1−1、すなわち第1の交番磁界の発生後かつカプセル医療装置3の体腔内への投入後における周波数f1のセンスコイル13aによる検出信号には、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界および磁界発生装置41から出力された第2の交番磁界の周波数f1の信号とともに、磁気誘導コイル5が第1の交番磁界および第2の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界・第2の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f1の信号が含まれている。
【0113】
また、V0f1―1、すなわち第1の交番磁界の発生前かつカプセル医療装置3の体腔内への投入前における周波数f1のセンスコイル13aによる検出信号には、磁界発生装置41から出力された第2の交番磁界の周波数f1の信号が含まれている。
よって、これらの差分(Vf1−1−V0f1―1)を算出することにより、第2の交番磁界の周波数f1の信号が相殺される。したがって、Vm21からVm2Nの計算式の第1項(第1の検出磁界成分)には、第1の交番磁界の周波数f1の信号とともに、第1の交番磁界に係る誘導磁界および第2の交番磁界に係る誘導磁界の周波数f1の信号が含まれることになる。
【0114】
また、Vm21からVm2Nの計算式の第2項は、第1の位置算出用周波数f2における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm21の計算式の第2項(Vf2−1× Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)−V0f2―1)のうちVf2−1× Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)、すなわち第1の交番磁界の発生後かつカプセル医療装置3の体腔内への投入後における周波数f2のセンスコイル13aによる検出信号には、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界および磁界発生装置41から出力された第2の交番磁界の周波数f2の信号とともに、磁気誘導コイル5が第1の交番磁界および第2の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界・第2の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f2の信号が含まれている。
【0115】
また、V0f2―1、すなわち第1の交番磁界の発生前かつカプセル医療装置3の体腔内への投入前における周波数f2のセンスコイル13aによる検出信号には、磁界発生装置41から出力された第2の交番磁界の周波数f2の信号が含まれている。
よって、これらの差分(Vf2−1× Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)−V0f2―1)を算出することにより、第2の交番磁界の周波数f2の信号が相殺される。したがって、Vm21からVm2Nの計算式の第2項(第1の検出磁界成分)には、第1の交番磁界の周波数f2の信号とともに、第1の交番磁界に係る誘導磁界および第2の交番磁界に係る誘導磁界の周波数f2の信号が含まれることになる。
【0116】
ここで、第1の交番磁界に係る誘導磁界の周波数f1,f2の信号は、第1の交番磁界に対する強度の大小関係が互いに異なるとともに、該強度の絶対値が略同一となる特性を有している。一方で、第1の交番磁界の周波数f1,f2の信号は、前述したように、各センスコイル13aの周波数f1の信号に対するゲインとf2の信号に対するゲインをほぼ等しくする操作がなされているので、同レベルの信号強度を有している。これにより、Vm21からVm2Nの計算式の第1項と第2項との差分、すなわち一組の第1の検出磁界成分の差分を演算することにより、さらに第1の交番磁界の信号は相殺され、第1の交番磁界に係る誘導磁界および第2の交番磁界に係る誘導磁界の信号は相殺されずに残る。
【0117】
このようにして、共振周波数f0を挟み、該共振周波数f0から略等しい周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界強度の絶対値の差分を算出することにより、第1の交番磁界の信号および第2の交番磁界の信号がそれぞれ相殺される。その結果、第1の交番磁界および第2の交番磁界により発生した誘導磁界(第1および第2の交番磁界に係る誘導磁界)の信号を容易に抽出することができる。
【0118】
位置方向解析部22は、抽出計算部で求めた、Vm21,Vm22,・・・,Vm2Nから磁気誘導コイル5の位置および向きを繰り返し演算により算出する(ステップS53)。
算出された磁気誘導コイル5の位置および方向は、制御回路28に送られて、表示装置8により表示されるとともに(ステップS54)、第2のメモリ23に記憶される(ステップS55)。
【0119】
また、抽出計算部では、マーカコイル4の位置計算を行うための各センスコイル13aからの信号を以下の計算式から抽出する(ステップS56)。
Vm11=(Vf1−1−V0f1―1)+(Vf2−1× Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)−V0f2―1)
Vm12=(Vf1−2−V0f1―2)+(Vf2−2× Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)−V0f2―2)
・・・
Vm1N=(Vf1−N−V0f1―N)+(Vf2−N× Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)−V0f2―N)
【0120】
この場合において、Vm11からVm1Nの計算式の第1項は、第1の位置算出用周波数f1における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm11の計算式の第1項(Vf1−1−V0f1―1)、すなわち周波数f1のセンスコイル13aによる検出信号には、前述したように、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界の周波数f1の信号とともに、磁気誘導コイル5が第1の交番磁界および第2の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界・第2の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f1の信号が含まれている。すなわち、磁界発生装置41から出力された第2の交番磁界の周波数f1の信号が相殺されている。
【0121】
また、Vm11からVm1Nの計算式の第2項は、第1の位置算出用周波数f2における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm11の計算式の第2項(Vf2−1× Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)−V0f2―1)、すなわち周波数f2のセンスコイル13aによる検出信号には、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界の周波数f2の信号とともに、磁気誘導コイル5が第1の交番磁界および第2の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界・第2の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f2の信号が含まれている。すなわち、磁界発生装置41から出力された第2の交番磁界の周波数f2の信号とが相殺されている。
【0122】
ここで、第1の交番磁界に係る誘導磁界および第2の交番磁界に係る誘導磁界の周波数f1,f2の信号は、第1の交番磁界に対する強度の大小関係が互いに異なるとともに、該強度の絶対値が略同一となる特性を有している。これにより、Vm11からVm1Nの計算式の第1項と第2項との加算値、すなわち一組の第1の検出磁界成分の加算値を算出することにより、さらに第1および第2の交番磁界に係る誘導磁界の信号が相殺され、第1の交番磁界の信号は相殺されずに残る。
【0123】
このようにして、第1の位置算出用周波数f1における磁界強度のうち、第1の交番磁界の発生時に抽出された磁界強度の絶対値と、第1の交番磁界の発生前に抽出された磁界強度の絶対値との差分と、第1の位置算出用周波数f2における磁界強度のうち、第1の交番磁界の発生時に抽出された磁界強度の絶対値と、第1の交番磁界の発生前に抽出された磁界強度の絶対値との差分との加算値を算出することにより、第2の交番磁界の信号と、第1および第2の交番磁界に係る誘導磁界の信号とが相殺される。その結果、第1の交番磁界の信号を容易に抽出することができる。
【0124】
位置方向解析部22は、抽出計算部30で求めたVm11、Vm12、・・・Vm1Nよりマーカコイル4の位置および方向を算出する(ステップS57)。
算出されたマーカコイル4の位置および方向のデータは制御回路28に送られ、表示装置8に表示される(ステップS58)。そして、算出された位置および方向データは第2のメモリ23に蓄えられる(ステップS59)。
【0125】
そして、入力装置26において位置検出終了の指示が入力されたか否かが確認され(ステップS60)、入力された場合には、トリガ発生器31からのトリガ信号の発生を終了させ、位置検出システム1の動作を停止する(ステップS61)。一方、終了の指示が入力されていない場合には、ステップS43に戻り、位置検出動作を継続する。
【0126】
この場合において、マーカコイル4および磁気誘導コイル5の位置および方向の繰り返し演算における初期値としては、前回に算出され第2のメモリ23に記憶されているマーカコイル4および磁気誘導コイル5の位置および方向の計算結果が利用される。これにより、繰り返し演算の収束時間を短縮し、位置および方向を迅速に算出することができる。
【0127】
このように、本実施形態に係る位置検出システム40およびこれを用いた位置検出方法によれば、外部からの電力供給により磁界を発生するマーカコイル4を有する内視鏡装置2と、磁気誘導コイル5を有するカプセル医療装置3とが共存した場合においても、内視鏡装置2およびカプセル医療装置3の両方について、位置および方向の少なくとも一方を同時に精度よく算出することができる。また、第1の交番磁界に加えて第2の交番磁界も、磁気誘導コイル5から誘導磁界を発生させているので、誘導磁界の強度を大きくすることができる。
【0128】
なお、本実施形態においては、磁気誘導装置101が回転磁界を発生させることとしているが、この方式に限らず、磁気誘導装置101が勾配磁界を発生させ、該勾配磁界によりカプセル医療装置3の永久磁石150に生じる磁気引力を利用して、カプセル医療装置3を誘導することとしてもよい。
【0129】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る位置検出システム50について、図15〜図19を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る位置検出システム40と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0130】
本実施形態に係る位置検出システム50は、図15に示されるように、磁界発生装置41から発生する第2の交番磁界の周波数が、第1の交番磁界の周波数f1,f2とは異なる一組の第2の位置算出用周波数f3,f4である点において、第2の実施形態に係る位置検出システム40と相違している。
【0131】
本実施形態に係る位置検出システム50により、内視鏡装置2の先端のマーカコイル4およびカプセル医療装置3内の磁気誘導コイル5の位置および方向を検出するには、発生する第1,第2の交番磁界の波形データを生成して波形データメモリ10,43に記憶し、カプセル医療装置3が作動範囲内に存在しない状態で、キャリブレーションを行う。
【0132】
入力装置26から磁気誘導コイル5の共振周波数f0が入力されると、制御回路28は、マーカコイル4から発生する第1の交番磁界の周波数として、入力された共振周波数f0を挟み、該共振周波数f0に対して略等しい周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2を設定する。また、制御回路28は磁界発生装置41から発生する第2の交番磁界の第2の位置算出用周波数として、周波数f1,f2とは異なる周波数で、共振周波数f0を挟み、該共振周波数f0に対して略等しい周波数だけ離れた一組の周波数f3,f4を設定する。そして、制御回路28が、設定された第1の位置算出用周波数f1,f2および第2の位置算出用周波数f3,f4を波形データ生成部27へ転送することにより、磁界波形の生成が開始される。
【0133】
マーカコイル4から第1の交番磁界を発生するのみならず、磁界発生装置41からは第2の交番磁界を発生するので、生成された磁界波形データは、マーカ駆動回路9および磁界発生装置駆動回路42の波形データメモリ10,43にそれぞれ転送される。
波形データ生成部27においては、送られてきた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2に基づいてマーカコイル4から発生させる磁界波形が、下式(1)を用いて算出される。
【0134】
Bm1=B1×sin(2πf1t)+B2×sin(2πf2t) (1)
ここで、B1,B2は、センスコイル13aの特性に合わせて設定され、センスコイル13aで周波数f1,f2の磁界成分を検出した際に同レベルの信号強度になるように設定されている。(センスコイル13aが理想的コイルであるならば、B1×f1=B2×f2となるように設定する。また、センスコイル13aの周波数特性をあらかじめ測定しておき、その特性に合わせてB1,B2を設定してもよい。)
【0135】
また、波形データ生成部27においては、送られてきた一組の第2の位置算出用周波数f3,f4に基づいて磁界発生装置41から発生させる磁界波形が、下式(2′)を用いて算出される。
BG=B3×sin(2πf3t)+B4×sin(2πf4t) (2′)
【0136】
そして、算出された磁界波形Bm1のデータがマーカ駆動回路9へ転送されて、波形データメモリ10内に記憶される。さらに、算出された磁界波形BGのデータが磁界発生装置駆動回路42へ転送されて、波形データメモリ43内に記憶される。
【0137】
キャリブレーションは、図16に示されるように、内視鏡装置2の挿入部2a先端が体腔内に挿入され、カプセル医療装置3が体腔内に投入されていない状態で、入力装置26からキャリブレーションの指示が入力されることにより開始される(ステップS71)。制御回路28は、磁界発生装置駆動回路42に対してトリガ信号を発生するようにトリガ発生器31に指示を与える。これによりトリガ発生器31からトリガ信号が発せられる(ステップS72)。
【0138】
トリガ信号を受けた磁界発生装置駆動回路42は、波形データメモリ43内に記憶されている波形データに基づいて、磁界発生駆動信号をクロック29からのクロック信号に同期して順次生成し、磁界発生装置41に出力する。磁界発生装置41は入力された磁界発生駆動信号により第2の交番磁界を発生する(ステップS73)。
【0139】
受信回路13bは、各センスコイル13aで検出した磁界発生装置41からの第2の交番磁界に係る磁界信号を受信して、ローパスフィルタ処理、増幅処理およびバンドパスフィルタ処理を行った後に、クロック32からのクロック信号に同期してA/D変換を行う(ステップS74)。
【0140】
A/D変換された磁界信号は、位置計算部14の第1のメモリ19に記憶される(ステップS75)。そして、周波数解析処理を行うのに必要なデータ数が第1のメモリ19内に蓄積されたか否かが判断され、蓄積された場合にはFFT処理回路20により周波数解析処理が行われる(ステップS76)。
【0141】
周波数解析処理の結果に基づいて、周波数選択部24は、磁界発生装置41から発生させた第2の交番磁界の第2の位置算出用周波数f3,f4における磁界情報のみを抽出し、周波数f3,f4と対応づけて第3のメモリ25に記憶させる(ステップS77)。
【0142】
このとき、記憶された各第2の位置算出用周波数f3,f4における磁界情報の信号強度をV0f3―1、V0f3―2、・・・V0f3―N、V0f4―1、V0f4―2、・・・V0f4―Nとする。ここで、上付きの添え字f3,f4は周波数成分を示し、その後の添え字、1,2,・・・,Nはセンスコイル13aの番号を表す。また、磁界情報とはFFT処理結果の絶対値である。そして、この第2の位置算出用周波数f3,f4における磁界情報がキャリブレーション値として第3のメモリ25に記憶されることになる。
【0143】
ここで、全てのセンスコイル13aで検出された周波数f3の信号強度と、周波数f4の信号強度を補正する。
具体的には、まず、全てのセンスコイル13aで検出された周波数f3の信号成分の和Σ(V0f3―N)と、全てのセンスコイル13aで検出された周波数f4の信号成分の和Σ(V0f4―N)を求める。次いで、信号成分の和の比Σ(V0f3―N)/Σ(V0f4―N)を補正係数として求める。
【0144】
そして、求められた補正係数を用いて、V0f4―1,V0f4―2,・・・,V0f4―Nを次のように置き換えて第3のメモリ25に上書き保存する。
V0f4―1を、V0f4―1×Σ(V0f3―N)/Σ(V0f4―N)に置き換える。
V0f4―2を、V0f4―2×Σ(V0f3―N)/Σ(V0f4―N)に置き換える。
・・・
V0f4―Nを、V0f4―N×Σ(V0f3―N)/Σ(V0f4―N)に置き換える。
また、補正係数Σ(V0f3―N)/Σ(V0f4―N)も第3のメモリ25に保存しておく(ステップS78)。
【0145】
これにより、第3のメモリ25に保存されているV0f3―1と、V0f4―1(置き換えられたことによりV0f4―1×(V0f3―N)/Σ(V0f4―N))はほぼ等しい値を持つ。言い換えれば、各センスコイル13aの周波数f3の信号に対するゲインと、周波数f4の信号に対するゲインをほぼ等しくする操作を行ったことになる。
【0146】
次に、実測定は、図17〜図19に示されるように、体腔内に内視鏡装置2およびカプセル医療装置3が挿入配置された状態で(ステップS81)、入力装置26において実測定の開始が指示されることにより開始される(ステップS82)。
制御回路28は、トリガ発生器31にマーカ駆動回路9および磁界発生装置駆動回路42へのトリガ信号の発生を指示し、トリガ発生器31がトリガ信号を発生する(ステップS83)。
【0147】
マーカ駆動回路9は、波形データメモリ10内に記憶されている波形データに基づいて、磁界発生駆動信号をクロック信号に同期しながら順次生成し、マーカコイル4に出力する。マーカコイル4は入力された磁界発生駆動信号により第1の交番磁界を発生させる(ステップS84)。
また、磁界発生装置駆動回路42は、波形データメモリ43内に記憶されている波形データに基づいて、磁界発生駆動信号をクロック信号に同期しながら順次生成し、磁界発生装置41に出力する。磁界発生装置41は入力された磁界発生駆動信号により第2の交番磁界を発生させる(ステップS85)。
【0148】
受信回路13bは、各センスコイル13aで検出したマーカコイル4からの第1の交番磁界および磁界発生装置41からの第2の交番磁界に係る磁界信号をローパスフィルタ処理、増幅処理およびバンドパスフィルタ処理を行った後に、クロック32からのクロック信号に同期してA/D変換を行う(ステップS86)。
【0149】
A/D変換された磁界信号は、位置計算部14の第1のメモリ19に記憶される(ステップS87)。
そして、周波数解析処理を行うのに必要なデータ数が第1のメモリ19内に蓄積されたか否かが判断され、蓄積された場合には、FFT処理回路20は第1のメモリ19から信号データを読み出して周波数解析処理を行う(ステップS88)。その後、この周波数解析処理が全てのセンスコイル13aからのデータに対して行われたか否かが判断され(ステップS89)、全てのセンスコイル13aからのデータが処理されていない場合にはステップS83〜S88が繰り返される。
【0150】
全てのセンスコイル13aからのデータの周波数解析処理が行われた場合には、図18に示されるように、その処理結果に基づいて、周波数選択部24は、マーカコイル4から発生させた第1の交番磁界および磁界発生装置41から発生させた第2の交番磁界の第1の位置算出用周波数f3,f4における磁界情報のみを抽出し、周波数f3,f4と対応づけて第3のメモリ25に記憶する(ステップS90)。この処理は全てのセンスコイル13aからの磁界信号に対して行われる(ステップS91)。
【0151】
抽出計算部30では、磁気誘導コイル5の位置計算を行うための各センスコイル13aからの信号を以下の計算式から抽出する(ステップS92)。
Vm21=(Vf3−1−V0f3―1)−(Vf4−1×Σ(V0f3―N)/Σ(V0f4―N)−V0f4―1)
Vm22=(Vf3−2−V0f3―2)−(Vf4−2×Σ(V0f3―N)/Σ(V0f4―N)−V0f4―2)
・・・
Vm2N=(Vf3−N−V0f3―N)−(Vf4−N×Σ(V0f3―N)/Σ(V0f4―N)−V0f4―N)
【0152】
この場合において、Vm21からVm2Nの計算式の第1項は、第2の位置算出用周波数f3における磁界情報(第2の検出磁界成分)に相当する。また、Vm21からVm2Nの計算式の第2項は、第2の位置算出用周波数f4における磁界情報(第2の検出磁界成分)に相当する。
このようにして、共振周波数f0を挟み、該共振周波数f0から略等しい周波数だけ離れた一組の第2の位置算出用周波数f3,f4における磁界強度の絶対値の差分を算出することにより、第2の交番磁界の信号を相殺することができる。その結果、第2の交番磁界により発生した誘導磁界(第2の交番磁界に係る誘導磁界)の信号を容易に抽出することができる。
【0153】
位置方向解析部22は、抽出計算部で求めた、Vm21,Vm22,・・・,Vm2Nから磁気誘導コイル5の位置および向きを繰り返し演算により算出する(ステップS93)。
算出された磁気誘導コイル5の位置および方向は、制御回路28に送られて、表示装置8により表示されるとともに(ステップS94)、第2のメモリ23に記憶される(ステップS95)。
【0154】
また、抽出計算部では、マーカコイル4の位置計算を行うための各センスコイル13aからの信号を以下の計算式から抽出する(ステップS96)。
Vm11=Vf1−1+Vf2−1
Vm12=Vf1−2+Vf2―2
・・・
Vm1N=Vf1−N+Vf2―N
【0155】
この場合において、Vm11からVm1Nの計算式の第1項は、第1の位置算出用周波数f1における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm11の計算式の第1項、すなわち周波数f1のセンスコイル13aによる検出信号には、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界の周波数f1の信号とともに、磁気誘導コイル5が第1の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f1の信号が含まれている。
また、Vm11からVm1Nの計算式の第2項は、第1の位置算出用周波数f2における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm11の計算式の第2項、すなわち周波数f2のセンスコイル13aによる検出信号には、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界の周波数f2の信号とともに、磁気誘導コイル5が第1の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f2の信号が含まれている。
【0156】
ここで、前述したように、マーカコイル4から発生させる磁界波形の算出過程において、B1,B2が、センスコイル13aで周波数f1,f2の磁界成分を検出した際に同レベルの信号強度になるように設定されている。よって、第1の交番磁界に係る誘導磁界の周波数f1,f2の信号は、第1の交番磁界に対する強度の大小関係が互いに異なるとともに、該強度の絶対値が略同一となる特性を有している。これにより、Vm11からVm1Nの計算式の第1項と第2項との加算値、すなわち一組の第1の検出磁界成分の加算値を算出することにより、第1の交番磁界に係る誘導磁界の信号を相殺することができる。
このようにして、共振周波数f0を挟み、該共振周波数f0から略等しい周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数f1における磁界強度の絶対値と、第1の位置算出用周波数f2における磁界強度の絶対値との加算値を算出することにより、第1の交番磁界に係る誘導磁界の信号を相殺することができる。その結果、第1の交番磁界の信号を容易に抽出することができる。
【0157】
位置方向解析部22は、抽出計算部30で求めたVm11、Vm12、・・・Vm1Nよりマーカコイル4の位置および方向を算出する(ステップS97)。
算出されたマーカコイル4の位置および方向のデータは制御回路28に送られ、表示装置8に表示される(ステップS98)。そして、算出された位置および方向データは第2のメモリ23に蓄えられる(ステップS99)。
【0158】
そして、入力装置26において位置検出終了の指示が入力されたか否かが確認され(ステップS100)、入力された場合には、トリガ発生器31からのトリガ信号の発生を終了させ、位置検出システム1の動作を停止する(ステップS101)。一方、終了の指示が入力されていない場合には、ステップS43に戻り、位置検出動作を継続する。
【0159】
この場合において、マーカコイル4および磁気誘導コイル5の位置および方向の繰り返し演算における初期値としては、前回に算出され第2のメモリ23に記憶されているマーカコイル4および磁気誘導コイル5の位置および方向の計算結果が利用される。これにより、繰り返し演算の収束時間を短縮し、位置および方向を迅速に算出することができる。
【0160】
このように、本実施形態に係る位置検出システム50およびこれを用いた位置検出方法によれば、外部からの電力供給により磁界を発生するマーカコイル4を有する内視鏡装置2と、磁気誘導コイル5を有するカプセル医療装置3とが共存した場合においても、内視鏡装置2およびカプセル医療装置3の両方について、位置および方向の少なくとも一方を同時に精度よく算出することができる。また、磁気誘導コイル5の作動範囲の外部に配置された磁界発生装置41から発生する第2の交番磁界の出力を大きくすることは容易であるので、第2の交番磁界に係る誘導磁界の強度を大きくすることができる。
【0161】
なお、本実施形態においては、内視鏡装置2が単一のマーカコイル4を有する場合について説明したが、これに代えて、互いに異なる複数組の第1の位置算出用周波数を有する第1の交番磁界を発生する複数のマーカコイル4を有する場合には、以下のように取り扱うことができる。
【0162】
すなわち、この場合には、波形データ生成部27が、複数のマーカコイル4から発生させる磁界波形を計算する。発生させる磁界は、以下の通りである。
第1のマーカコイル4:
Bm11=B11×sin(2πf11t)+B21×sin(2πf21t)
第2のマーカコイル4
Bm12=B12×sin(2πf12t)+B22×sin(2πf22t)
・・・
第nのマーカコイル4
Bm1n=B1n×sin(2πf1nt)+B22×sin(2πf2nt)
【0163】
ここで、B11、B21は、センスコイル13aの特性に合わせて設定され、センスコイル13aで周波数f11,f21の磁界成分を検出した際に同レベルの信号強度になるように設定されている(センスコイル13aが理想的コイルであるならば、B11×f11=B21×f21となるように設定する。また、センスコイル13aの周波数特性をあらかじめ測定しておき、その特性に合わせてB11、B21を設定してもよい。)。以下、B12,B22,f12,f22の関係、・・・、B1n,B2n,f1n,f2nの関係についても同様になるように設定する。
【0164】
また、実測定においては、抽出計算部30は、第1〜第nのマーカコイル4の一計算を行うための各センスコイル13aの信号を以下の計算式から抽出する。
Vm111=Vf11−1+Vf21−1,Vm112=Vf11−2+Vf21−2,…,Vm11N=Vf11−N+Vf21−N
Vm121=Vf12−1+Vf22−1,Vm122=Vf12−2+Vf22−2,…,Vm12N=Vf12−N+Vf22−N
・・・
Vm1n1=Vf1n−1+Vf2n−1,Vm1n2=Vf1n−2+Vf2n−2,…,Vm1nN=Vf1n−N+Vf2n−N
【0165】
また、位置方向解析部22は、抽出計算部30で求めた、Vm111,Vm112,・・・,Vm11Nより第1のマーカコイル4の位置および方向を計算し、Vm1n1,Vm1n2,・・・,Vm1nNより第nのマーカコイル4の位置および方向を計算することにすればよい。
また、単一の内視鏡装置2内に複数のマーカコイル4を備える場合に代えて、複数の内視鏡装置2内にそれぞれ異なる複数組の第1の位置算出用周波数を有するマーカコイル4が備えられる場合においても同様の処理を行うことで対応することができる。
【0166】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態に係る位置検出システム60について、図20〜図26を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第2の実施形態に係る位置検出システム40と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0167】
本実施形態に係る位置検出システム60は、図20に示されるように、内視鏡装置2の先端に設けたマーカコイル4に代えて、第1のカプセル医療装置61内に配置されたマーカコイル62を採用している点、該第1のカプセル医療装置61への信号の送信部63を備える点、磁気誘導コイル5を第2のカプセル医療装置3′内に配置している点、磁界発生装置41の発生する第2の交番磁界の周波数が異なる点、および位置計算部14における演算処理において、上述した第2の実施形態に係る位置検出システム40と相違している。
【0168】
また、本実施形態に係る位置検出システム60においては制御部7内に、クロック29のクロック信号に基づいて周波数解析に用いる磁界信号の読出しタイミングを位置計算部14のFFT処理回路20に指示する読出タイミング生成器67を備えている。
【0169】
第1のカプセル医療装置61は、図21に示されるように、第1の位置算出用周波数f1,f2を有する第1の交番磁界を発生するマーカコイル62と、該マーカコイル62を駆動するマーカ駆動回路64と、クロック65と、受信部66と、図示しない電源とを備えている。マーカ駆動回路64は、送信部63から無線送信され、受信部66で受信された指令信号に応じてマーカコイル62に第1の交番磁界を発生させるようになっている。
前記磁界発生装置41は、第2のカプセル医療装置3′内の磁気誘導コイル5の共振周波数f0を有する第2の交番磁界を発生するようになっている。
【0170】
本実施形態に係る位置検出システム60により、第1のカプセル医療装置61内のマーカコイル62および第2のカプセル医療装置3′内の磁気誘導コイル5の位置および方向を検出するには、発生する交番磁界の波形データを生成して波形データメモリ10,43に記憶し、第2のカプセル医療装置3′が作動範囲内に存在しない状態で、読み出しタイミングの設定を行う。
生成された磁界波形データは、第1のカプセル医療装置61内のマーカ駆動回路64および磁界発生装置駆動回路42の波形データメモリ10,43にそれぞれ転送される。
【0171】
磁界波形の生成は、図22に示されるように、入力装置26から磁気誘導コイル5の共振周波数f0を入力することにより開始される(ステップS111)。制御回路28は、入力された共振周波数f0をはさみ、該共振周波数f0に対して略等しい周波数だけ離れた一組の周波数f1,f2を、第1のカプセル医療装置61内のマーカコイル62から発生する第1の交番磁界の第1の位置算出用周波数f1,f2として設定する。また、制御回路28は、共振周波数f0を磁気誘導コイル5から発生する第2の交番磁界の第2の位置算出用周波数f0として設定する(ステップS112)。
【0172】
制御回路28は、設定された周波数f0,f1,f2を波形データ生成部27へ転送する(ステップS113)。
波形データ生成部27においては、送られてきた第1の位置算出用周波数f1,f2に基づいて、マーカコイル4から発生する磁界波形が計算される。発生させる磁界は、下式(1)により算出される(ステップS114)。
Bm1=B1×sin(2πf1t)+B2×sin(2πf2t) (1)
ここで、B1,B2は、センスコイル13aの特性に合わせて設定され、センスコイル13aで周波数f1,f2の磁界成分を検出した際に同レベルの信号強度になるように設定されている。(センスコイル13aが理想的コイルであるならば、B1×f1=B2×f2となるように設定する。また、センスコイル13aの周波数特性をあらかじめ測定しておき、その特性に合わせてB1,B2を設定してもよい。)
【0173】
また、波形データ生成部27は、磁界発生装置41から発生させる磁界波形を計算する。発生させる磁界は、下式(2″)により算出される(ステップS115)。
BG=B3×sin(2πf0t) (2″)
【0174】
波形データ生成部27において生成された磁界波形Bm1のデータは、制御部7に設けられた送信部63から第1のカプセル医療装置61に設けられた受信部66へ送信される。受信部66で受信された磁界波形データは、波形データメモリ10に記憶される(ステップS116)。また、磁界波形BGのデータは、磁界発生装置駆動回路42の波形データメモリ43に記憶される(ステップS117)。
【0175】
次に、読出タイミング生成器67における読み出しタイミングの設定について、図23を参照して以下に説明する。
第1のカプセル医療装置61が体腔内に投入され、第2のカプセル医療装置3′が体腔内に投入されていない状態で、入力装置26から読み出しタイミングの設定の指示が入力されることにより開始される(ステップS121)。
【0176】
制御回路28は、磁界発生装置駆動回路42および読出しタイミング生成器67に対してトリガ信号を発生するようにトリガ発生器31に指示を与える。これによりトリガ発生器31からトリガ信号が発せられる(ステップS122)。
トリガ信号を受けた磁界発生装置駆動回路42は、波形データメモリ43内に記憶されている磁界波形BGのデータに基づいて、磁界発生駆動信号をクロック29のクロック信号に同期して順次生成し、磁界発生装置41に出力する。磁界発生装置41は入力された磁界発生駆動信号により第2の交番磁界を発生する(ステップS123)。
【0177】
受信回路13bは、各センスコイル13aで検出した磁界発生装置41からの第2の交番磁界に係る磁界信号を受信して、ローパスフィルタ処理、増幅処理およびバンドパスフィルタ処理を行った後に、クロック29のクロック信号に同期してA/D変換を行う(ステップS124)。
【0178】
A/D変換された磁界信号は、位置計算部14の第1のメモリ19に記憶される(ステップS125)。そして、周波数解析処理を行うのに必要なデータ数が第1のメモリ19内に蓄積されたか否かが判断され、蓄積された場合にはFFT処理回路20により周波数解析処理が行われる(ステップS126)。
【0179】
周波数解析処理の結果に基づいて、周波数選択部24は、磁界発生装置41から発生させた第2の交番磁界の周波数である第2の位置算出用周波数f0の磁界情報(第2の検出磁界成分)のみを抽出して第3のメモリ25に記憶する(ステップS127)。ここで、磁界情報は、周波数解析処理の結果の虚数部の値である。
【0180】
制御回路28は、第3のメモリ25に記憶された磁界情報を読み出し、虚数部の値を内部メモリに記憶する(ステップS128)。そして、制御回路28は読出タイミング生成器67において生成する読み出しタイミングを1クロック分遅らせる指示を読出タイミング生成器67に送る(ステップS129)。
【0181】
その後、ステップS122〜S129を繰り返しながら、制御回路28は、第3のメモリ25に記憶された磁界情報の虚数部と、内部メモリに記憶されている虚数部とを比較する。そして、制御回路28は、ステップS128で記憶する周波数解析処理結果の虚数部の値が最もゼロに近くなる読み出しタイミングを実測定に使用する読み出しタイミングとして読出タイミング生成器67に設定する(ステップS130)。
以上により、読み出しタイミングの設定が完了する。これにより、周波数解析処理結果の虚数部には、磁界発生装置41からの磁界情報がない状態を実現できる。
【0182】
次に、実測定は、図24に示されるように、体腔内に第1,第2のカプセル医療装置61,3′が配置された状態で(ステップS131)、入力装置26において実測定の開始が指示されることにより開始される(ステップS132)。
制御回路28は、トリガ発生器31にマーカ駆動回路64、磁界発生装置駆動回路42および読出しタイミング生成器67へのトリガ信号の発生を指示し、トリガ発生器31がトリガ信号を発生する(ステップS133)。
【0183】
マーカ駆動回路64は、波形データメモリ10内に記憶されている波形データに基づいて、磁界発生駆動信号をクロック信号に同期しながら順次生成し、マーカコイル62に出力する。マーカコイル62は入力された磁界発生駆動信号により第1の交番磁界を発生させる(ステップS134)。
【0184】
また、磁界発生装置駆動回路42は、波形データメモリ43内に記憶されている波形データに基づいて、磁界発生駆動信号をクロック信号に同期しながら順次生成し、磁界発生装置41に出力する。磁界発生装置41は入力された磁界発生駆動信号により第2の交番磁界を発生させる(ステップS135)。
【0185】
受信回路13bは、各センスコイル13aで検出したマーカコイル62からの第1の交番磁界および磁界発生装置41からの第2の交番磁界に係る磁界信号をローパスフィルタ処理、増幅処理およびバンドパスフィルタ処理を行った後に、クロック29からのクロック信号に同期してA/D変換を行う(ステップS136)。
【0186】
A/D変換された磁界信号は、位置計算部14の第1のメモリ19に記憶される(ステップS137)。そして、周波数解析処理を行うのに必要なデータ数が第1のメモリ19内に蓄積されたか否かが判断され、蓄積された場合にはFFT処理回路20は、読出タイミング生成器67からの信号に基づき、位置計算部14の第1のメモリ19から信号データを読み出して、周波数解析処理を行う(ステップS138)。
【0187】
その後、この周波数解析処理が全てのセンスコイル13aからのデータに対して行われたか否かが判断され(ステップS139)、全てのセンスコイル13aからのデータが処理されていない場合には、ステップS133〜S138が繰り返される。
【0188】
全てのセンスコイル13aからのデータの周波数解析処理が行われた場合には、図25に示されるように、その処理結果に基づいて、周波数選択部24は、マーカコイル4から発生させた第1の交番磁界の第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界情報のみを抽出し、周波数f1,f2と対応づけて第3のメモリ25に記憶する(ステップS140)。
また、周波数選択部24は、磁界発生装置41から発生させた第2の交番磁界の第2の位置算出用周波数f0における磁界情報のみを抽出し、第3のメモリ25に保存する(ステップS141)。この処理は全てのセンスコイル13aからの磁界信号に対して行われる(ステップS142)。
【0189】
位置方向解析部22は、第3のメモリ25に記憶されている磁界情報のうち、周波数解析処理結果の虚数部(第2の検出磁界成分)を読み出し、該虚数部に基づいて磁気誘導コイル5の位置および方向を算出する(ステップS143)。
周波数解析結果の虚数部は、第2の交番磁界に対してπ/2だけずれた位相を有しているので、これを抽出することにより、第2の交番磁界により発生した誘導磁界の信号を抽出することができる。
算出された磁気誘導コイル5の位置および方向は、制御回路28に送られて、表示装置8により表示されるとともに(ステップS144)、第2のメモリ23に記憶される(ステップS145)。
【0190】
抽出計算部30では、マーカコイル4の位置計算を行うための各センスコイル13aの信号を以下の計算式から抽出する(ステップS146)。
Vm11=Vf1−1+Vf2−1
Vm12=Vf1−2+Vf2−2
・・・
Vm1N=Vf1−N+Vf2−N
【0191】
この場合において、Vm11からVm1Nの計算式の第1項は、第1の位置算出用周波数f1における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm11の計算式の第1項、すなわち周波数f1の1番目のセンスコイル13aによる検出信号には、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界の周波数f1の信号とともに、磁気誘導コイル5がマーカコイル4からの第1の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f1の信号が含まれている。
【0192】
また、Vm11からVm1Nの計算式の第2項は、第1の位置算出用周波数f2における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm11の計算式の第2項、すなわち周波数f2の2番目のセンスコイル13aによる検出信号には、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界の周波数f2の信号とともに、磁気誘導コイル5がマーカコイル4からの第1の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f2の信号が含まれている。
【0193】
ここで、第1の交番磁界に係る誘導磁界の周波数f1,f2の信号は、第1の交番磁界に対する強度の大小関係が互いに異なるとともに、該強度の絶対値が略同一となる特性を有している。これにより、Vm11からVm1Nの計算式の第1項と第2項との加算値、すなわち一組の第1の検出磁界成分の加算値を算出することにより、第1の交番磁界に係る誘導磁界の信号は相殺され、第1の交番磁界の信号は相殺されずに残る。
このようにして、共振周波数f0を挟み、該共振周波数f0から略等しい周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界強度の絶対値を加算することにより、第1の交番磁界に係る誘導磁界の信号を相殺することができる。その結果、第1の交番磁界の信号を容易に抽出することができる。
【0194】
位置方向解析部22は、抽出計算部30で求めたVm11、Vm12、・・・Vm1Nよりマーカコイル4の位置および方向を算出する(ステップS147)。
算出されたマーカコイル4の位置および方向のデータは制御回路28に送られ、表示装置8に表示される(ステップS148)。そして、算出された位置および方向データは第2のメモリ23に蓄えられる(ステップS149)。
【0195】
そして、入力装置26において位置検出終了の指示が入力されたか否かが確認され(ステップS150)、入力された場合には、トリガ発生器31からのトリガ信号の発生を終了させ、位置検出システム1の動作を停止する(ステップS151)。一方、終了の指示が入力されていない場合には、ステップS133に戻り、位置検出動作を継続する。
【0196】
この場合において、磁気誘導コイル5およびマーカコイル4の位置および方向の繰り返し演算における初期値としては、前回に算出され第2のメモリ23に記憶されている磁気誘導コイル5およびマーカコイル4の位置および方向の計算結果が利用される。これにより、繰り返し演算の収束時間を短縮し、位置および方向を迅速に算出することができる。
【0197】
このように、本実施形態に係る位置検出システム1およびこれを用いた位置検出方法によれば、マーカコイル4からの信号と磁気誘導コイル5からの信号とを、両方の信号の位置情報に基づいて完全に分離することができる。その結果、マーカコイル4および磁気誘導コイル5の位置および向き、すなわち、体腔内に挿入した状態の内視鏡装置2の挿入部2aの先端およびカプセル医療装置3の位置および方向を正確に求めることができる。
【0198】
なお、本実施形態においては、第1のカプセル医療装置61に設けられたクロック65と制御部7に設けられたクロック29とは同期するように制御されているので、マーカ駆動回路64が無線で制御される場合であっても、マーカコイル62から発生する第1の交番磁界と磁界発生装置41から発生する第2の交番磁界との位相の関係を維持することができる。
【0199】
また、上記各実施形態における磁界波形の生成の際に設定する位置算出用周波数f1,f2は、図27および数3の関係になるように設定されることが好ましい。
【数3】
【0200】
この場合、磁気誘導コイル5から発生する誘導磁界の強度信号は、周波数f1,f2では同じ強度で極性が逆の信号となっている。このため、実測定においてVf1−1とVf2−1とをそのまま加算することにより、マーカコイル4からの信号成分を残して、磁気誘導コイル5からの信号成分を除去することができる。
【0201】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る位置検出システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1の位置検出システムの詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】図1の位置検出システムを用いた位置検出方法における波形生成動作を説明するフローチャートである。
【図4】図3の位置検出方法における実測定動作の前半を説明するフローチャートである。
【図5】図4の続きの実測定動作を説明するフローチャートである。
【図6】図5の続きの実測定動作を説明するフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る位置検出システムを備える医療装置誘導システムを説明する全体構成図である。
【図8】図7の医療装置誘導システムに用いられるカプセル医療装置の一例を示す縦断面図である。
【図9】図7の医療装置誘導システムに備えられる本実施形態に係る位置検出システムの全体構成を示すブロック図である。
【図10】図9の位置検出システムの詳細な構成を示すブロック図である。
【図11】図9の位置検出システムを用いた位置検出方法におけるキャリブレーション動作を説明するフローチャートである。
【図12】図11の位置検出方法における実測定動作の前半を説明するフローチャートである。
【図13】図12の続きの実測定動作を説明するフローチャートである。
【図14】図13の続きの実測定動作を説明するフローチャートである。
【図15】本発明の第3の実施形態に係る位置検出システムの全体構成を示すブロック図である。
【図16】図15の位置検出システムを用いた位置検出方法におけるキャリブレーション動作を説明するフローチャートである。
【図17】図16の位置検出方法における実測定動作の前半を説明するフローチャートである。
【図18】図17の続きの実測定動作を説明するフローチャートである。
【図19】図18の続きの実測定動作を説明するフローチャートである。
【図20】本発明の第4の実施形態に係る位置検出システムの全体構成を示すブロック図である。
【図21】図20の位置検出システムの詳細な構成を示すブロック図である。
【図22】図21の位置検出システムを用いた位置検出方法における波形生成動作を説明するフローチャートである。
【図23】図22の位置検出方法における読出しタイミングの設定動作を説明するフローチャートである。
【図24】図22の位置検出システムを用いた位置検出方法における実測定動作の前半を説明するフローチャートである。
【図25】図24の続きの実測定動作を説明するフローチャートである。
【図26】図25の続きの実測定動作を説明するフローチャートである。
【図27】各実施形態における位置算出用周波数の設定方法を説明するための磁気誘導コイルを含む共振回路を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0203】
f0 共振周波数(第1の位置算出用周波数)
f1,f2 第1の位置算出用周波数
f3,f4 第2の位置算出用周波数
1,40,50,60 位置検出システム
2 内視鏡装置(内視鏡)
2a 挿入部
3 カプセル医療装置(第2のマーカ)
3′ 第2のカプセル医療装置(カプセル医療装置、第2のマーカ)
4,62 マーカコイル(第1のマーカ)
5 磁気誘導コイル
6 磁界検出部
24 周波数選択部(抽出部)
22 位置方向解析部
30 抽出計算部(抽出部)
41 磁界発生装置(磁界発生部)
61 第1のカプセル医療装置(カプセル医療装置)
71 3軸ヘルムホルツコイルユニット(推進用磁界発生部)
72 ヘルムホルツコイルドライバ(推進用磁界制御部)
100 医療装置誘導システム
150 永久磁石(磁界作用部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出システムおよび位置検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、外部からの電力供給により交番磁界を発生するマーカを体腔内に挿入し、該マーカの発生した交番磁界を体外において検出することにより、体腔内におけるマーカの位置を検出する位置検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、外部からの位置検出用の磁界を作用させ、被検者の体内に投入されたカプセル型医療装置内に配置される磁気誘導コイルにおいて発生した誘導磁界の絶対値強度を検出することにより、カプセル型医療装置の位置および方向を検出するカプセル型医療装置の位置検出システムも知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−81303号公報
【非特許文献1】徳永他7名,「LC共振型磁気マーカを用いた高精度位置検出システム」,日本応用磁気学会誌,Vol.29,No.2,2005,p153〜156
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、外部からの電力供給により交番磁界を発生する一のマーカと、該交番磁界の周波数の近傍に共振周波数を有する共振回路を備えた他のマーカとがともに存在した場合、一のマーカが発生した交番磁界により、他のマーカの共振回路から誘導磁界が発生する。これにより、該交番磁界の周波数において単に磁界の絶対値強度を検出した場合に、誘導磁界も同時に検出することになるため、検出される磁界強度が、交番磁界のみを検出した場合とは相違する。その結果、一のマーカの位置または方向を正確に算出することが困難であった。
【0005】
本発明は、外部からの電力供給により交番磁界を発生する一のマーカと、該交番磁界の周波数と同一またはその近傍に共振周波数を有する共振回路を備えた他のマーカとがともに存在した場合であっても、一のマーカの位置または方向を正確に検出することができる位置検出システムおよび位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、外部からの電力供給により、所定の周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数を有する第1の交番磁界を発生する第1のマーカと、前記一組の第1の位置算出用周波数に挟まれた略中心の周波数を共振周波数とする磁気誘導コイルを搭載した第2のマーカと、前記第2のマーカの作動範囲の外部に配置され、前記第1の位置算出用周波数において磁界を検出する磁界検出部と、前記磁界検出部で検出された磁界から、前記一組の第1の位置算出用周波数を有する一組の第1の検出磁界成分の強度の加算値を抽出する抽出部と、抽出された前記加算値に基づいて前記第1のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出する位置方向解析部とを備える位置検出システムを提供する。
【0007】
本発明によれば、外部からの電力供給により、第1のマーカから発せられた、所定の周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数を有する第1の交番磁界が、第2のマーカに搭載された磁気誘導コイルによって受けられる。磁気誘導コイルは、共振特性によっては、第1の交番磁界を受けて誘導磁界(以下、第1の交番磁界に係る誘導磁界とする)を発生する場合がある。このとき、磁界検出部は、一組の第1の位置算出用周波数において、第1の交番磁界と、第1の交番磁界に係る誘導磁界とが混合した磁界を検出する。
【0008】
ここで、第1の交番磁界に係る誘導磁界は、第1の交番磁界と同じく一組の第1の位置算出用周波数を有している。一方、第1の検出磁界成分は、一組の第1の位置算出用周波数を有する磁界成分であるため、第1の交番磁界に係る誘導磁界が発生した場合は、第1の交番磁界の情報に加えて当該誘導磁界の情報を含む。また、磁気誘導コイルの共振周波数は、一組の第1の位置算出用周波数に挟まれた略中心の周波数であるため、第1の交番磁界に係る誘導磁界は、第1の交番磁界に対する強度の大小関係が互いに異なるとともに、該強度の絶対値が略同一となる特性を有している。
【0009】
よって、抽出部の作動により、一組の第1の検出磁界成分の強度の和が演算されると、第1の交番磁界に係る誘導磁界の情報が相殺され、磁界検出部で検出された磁界から第1の交番磁界の情報のみを抽出できる。これにより、位置方向解析部は、第1のマーカから発生した第1の交番磁界の強度情報のみを用いて、第1のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出することができる。その結果、外部からの電力供給により磁界を発生する第1のマーカと、磁気誘導コイルを有する第2のマーカとが共存した場合においても、誘導磁界に影響されることなく、第1のマーカの位置または方向を精度よく算出することができる。
【0010】
上記発明においては、前記一組の第1の位置算出用周波数が、さらに前記共振周波数の近傍の周波数であり、前記抽出部が、さらに前記磁界検出部で検出された磁界から、前記一組の第1の検出磁界成分の強度の差分を抽出し、前記位置方向解析部が、さらに前記差分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出することとしてもよい。
【0011】
このようにすることで、位置方向解析部は、抽出部により抽出された加算値に基づいて、第1のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出するとともに、抽出された差分の強度に基づいて、第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出する。
ここで、一組の第1の位置算出用周波数は、共振周波数の近傍の周波数であるため、磁気誘導コイルは、第1の交番磁界を受けると誘導磁界を発生する。また、第1の交番磁界に係る誘導磁界は、前記のとおり、一組の第1の位置算出用周波数において、第1の交番磁界に対する強度の大小関係が互いに異なる特性を有している。
【0012】
一方、第1の検出磁界成分は、一組の第1の位置算出用周波数を有する磁界成分であるため、第1の交番磁界の情報および第1の交番磁界に係る誘導磁界の情報を含む。よって、抽出部の作動により、一組の第1の検出磁界成分の強度の差分が演算されることで、第1の交番磁界の情報が相殺されるので、磁界検出部で検出された磁界から第1の交番磁界に係る誘導磁界の情報のみを抽出できる。
【0013】
これにより、位置方向解析部は、第2のマーカから発生した誘導磁界の強度情報を用いて、第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出することができる。その結果、外部からの電力供給により磁界を発生する第1のマーカと、磁気誘導コイルを有する第2のマーカとが共存した場合においても、第1のマーカおよび第2のマーカの両方について、位置および方向の少なくとも一方を精度よく算出することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記第2のマーカの作動範囲の外部に配置され、前記一組の第1の位置算出用周波数を有する第2の交番磁界を発生する磁界発生部を備え、前記一組の第1の検出磁界成分が、前記第1の交番磁界の発生時に検出された前記第1の位置算出用周波数を有する磁界と前記第1の交番磁界の発生前に検出された前記第1の位置算出用周波数を有する磁界との差分であることとしてもよい。
【0015】
このようにすることで、第2のマーカの作動範囲の外部に配置された磁界発生部により発生される第2の交番磁界は、前記第1の交番磁界と同一の周波数を有するため、磁気誘導コイルは、第1の交番磁界および第2の交番磁界を受けて誘導磁界(以下、第1および第2の交番磁界に係る誘導磁界とする)を発生する。磁界検出部は、第1の位置算出用周波数において、第1の交番磁界と第2の交番磁界と誘導磁界とが混合した磁界を検出する。
【0016】
ここで、第1および第2の交番磁界の発生時に第1の位置算出用周波数において検出される磁界は、第1の交番磁界、第2の交番磁界、および第1および第2の交番磁界に係る誘導磁界の情報を含む。
一方、第2の交番磁界のみ発生している場合、磁気誘導コイルは、第2の交番磁界を受けて誘導磁界(以下、第2の交番磁界に係る誘導磁界とする)を発生する。このとき、第1の位置算出用周波数において検出される磁界は、第2の交番磁界、および第2の交番磁界に係る誘導磁界の情報を含む。
【0017】
よって、第1の交番磁界の発生時と発生前におけるそれぞれの磁界情報の差分を第1の検出磁界成分とすると、各周波数における第1の検出磁界成分は、第1の交番磁界の情報、および第1の交番磁界に係る誘導磁界の情報のみを含むこととなる。
したがって、抽出部の作動により、一組の第1の検出磁界成分の強度の和が演算されると、第1の交番磁界に係る誘導磁界の情報が相殺されるので、磁界検出部で検出された磁界から第1の交番磁界の強度の情報のみを抽出できる。
【0018】
また、一組の第1の検出磁界成分の強度の差分は、上述した理由と同様の理由から、第1の交番磁界および第2の交番磁界の情報を含まず、第1および第2の交番磁界に係る誘導磁界の情報のみを含む。
よって、抽出部の作動により、一組の第1の検出磁界成分の強度の差分を演算すると、第1および第2の交番磁界に係る誘導磁界の情報のみを抽出できる。
【0019】
これにより、位置方向解析部は、第1の交番磁界の強度の情報のみを用いて、第1のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出し、第2のマーカから発生した誘導磁界の強度情報を用いて、第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出することができる。
【0020】
その結果、外部からの電力供給により磁界を発生する第1のマーカと、磁気誘導コイルを有する第2のマーカとが共存した場合においても、第1のマーカおよび第2のマーカの両方について、位置および方向の少なくとも一方を精度よく算出することができる。また、第1の交番磁界に加えて第2の交番磁界も、第2のマーカから誘導磁界を発生させているので、誘導磁界の強度を大きくすることができる。
【0021】
また、上記発明においては、前記第2のマーカの作動範囲の外部に配置され、前記共振周波数の近傍であって前記第1の位置算出用周波数と異なるとともに、前記共振周波数を挟み前記共振周波数に対して所定の周波数だけ離れた一組の第2の位置算出用周波数を有する第2の交番磁界を発生する磁界発生部を備え、前記磁界検出部が、さらに前記第2の位置算出用周波数において磁界を検出し、前記抽出部が、さらに前記磁界検出部で検出された磁界から、前記一組の第2の位置算出用周波数を有する一組の第2の検出磁界成分の強度の差分を抽出し、前記位置方向解析部が、さらに前記差分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出することとしてもよい。
【0022】
このようにすることで、第2のマーカの作動範囲の外部に配置された磁界発生部が発生する第2の交番磁界の一組の第2の位置算出用周波数は、共振周波数の近傍の周波数であるため、磁気誘導コイルは、第1の交番磁界を受けて第1の交番磁界に係る誘導磁界を発生するとともに、第2の交番磁界を受けて一組の第2の位置算出用周波数を有する誘導磁界(第2の交番磁界に係る誘導磁界)を発生する。磁界検出部は、一組の第1の位置算出用周波数において、第1の交番磁界と、第1の交番磁界に係る誘導磁界とが混合した磁界を検出し、一組の第2の位置算出用周波数において、第2の交番磁界と、第2の交番磁界に係る誘導磁界とが混合した磁界を検出する。
【0023】
そして、抽出部の作動により、磁界検出部で検出された磁界から、一組の第1の検出磁界成分の強度の加算値が抽出されるとともに、一組の第2の検出磁界成分の強度の差分が抽出される。さらに、位置方向解析部の作動により、抽出部により抽出された加算値に基づいて、第1のマーカの位置および方向の少なくとも一方が算出されるとともに、抽出された差分の強度に基づいて、第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方が算出される。
【0024】
ここで、第2の交番磁界に係る誘導磁界は、上述した理由と同様の理由から、一組の第2の位置算出用周波数において、第2の交番磁界に対する強度の大小関係が互いに異なる特性を有している。一方、第2の検出磁界成分は、一組の第2の位置算出用周波数を有する磁界成分であるため、第2の交番磁界の情報および第2の交番磁界に係る誘導磁界の情報を含む。よって、抽出部の作動により、一組の第2の検出磁界成分の強度の差分が演算されると、第2の交番磁界の情報が相殺されるので、磁界検出部で検出された磁界から第2の交番磁界に係る誘導磁界の情報のみを抽出できる。
【0025】
これにより、位置方向解析部は、第2のマーカから発生した誘導磁界の強度情報を用いて、第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出することができる。その結果、外部からの電力供給により磁界を発生する第1のマーカと、磁気誘導コイルを有する第2のマーカとが共存した場合においても、第1のマーカおよび第2のマーカの両方について、位置および方向の少なくとも一方を精度よく算出することができる。
【0026】
また、上記発明においては、前記第2のマーカの作動範囲の外部に配置され、前記共振周波数を有する第2の交番磁界を発生する磁界発生部を備え、前記磁界検出部が、さらに前記共振周波数において磁界を検出し、前記抽出部が、さらに前記磁界検出部で検出された磁界から、前記共振周波数を有するとともに前記第2の交番磁界の位相に対してπ/2ずれた位相を有する第2の検出磁界成分を抽出し、前記位置方向解析部が、さらに前記第2の検出磁界成分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出することとしてもよい。
【0027】
このようにすることで、第2のマーカの作動範囲の外部に配置された磁界発生部が、第2のマーカに搭載された磁気誘導コイルの共振周波数を有する第2の交番磁界を発生する。磁気誘導コイルは、第1の交番磁界を受けて第1の交番磁界に係る誘導磁界を発生するとともに、第2の交番磁界を受けて第2の交番磁界に係る誘導磁界を発生する。磁界検出部は、一組の第1の位置算出用周波数において、第1の交番磁界と、第1の交番磁界に係る誘導磁界とが混合した磁界を検出し、共振周波数において、第2の交番磁界と、第2の交番磁界に係る誘導磁界とが混合した磁界を検出する。
【0028】
抽出部は、磁界検出部で検出された磁界から、一組の第1の検出磁界成分の強度の加算値を抽出するとともに、第2の検出磁界成分を抽出する。位置方向解析部は、抽出部により抽出された加算値に基づいて、第1のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出するとともに、さらに抽出された第2の検出磁界成分の強度に基づいて、第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出する。
【0029】
ここで、第2の交番磁界に係る誘導磁界は、第2の交番磁界に対して、同一の周波数を有するとともに、π/2ずれた位相を有する。一方、第2の検出磁界成分も、第2の交番磁界に対して、同一の周波数を有するとともに、π/2ずれた位相を有する磁界成分であるため、第2の交番磁界の情報を含まず、第2の交番磁界に係る誘導磁界の情報のみを含む。よって、抽出部の作動により、第2の検出磁界成分を抽出すると、磁界検出部で検出された磁界から第2の交番磁界に係る誘導磁界の情報のみを抽出できる。
【0030】
これにより、位置方向解析部は、第2のマーカから発生した誘導磁界の強度情報のみを用いて、第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出することができる。その結果、外部からの電力供給により磁界を発生する第1のマーカと、磁気誘導コイルを有する第2のマーカとが共存した場合においても、第1のマーカおよび第2のマーカの両方について、位置および方向の少なくとも一方を精度よく算出することができる。
【0031】
また、上記発明においては、前記磁気誘導コイルを含む共振回路が、前記第1の位置算出用周波数において、以下の関係式を満たすこととしてもよい。
【数2】
【0032】
このようにすることで、各周波数における同一のセンスコイルにおいて検出される第1の交番磁界に係る誘導磁界の検出強度を等しくすることができる。その結果、一組の第1の検出磁界成分の強度について簡単な加算演算を行うことにより誘導磁界の情報を相殺させて、第1の交番磁界の情報のみを抽出することができる。
【0033】
また、上記発明においては、前記第1のマーカが、複数設けられ、複数の前記第1の位置算出用周波数が、互いに異なる周波数であることとしてもよい。
このようにすることで、複数の第1のマーカを識別することができる。
また、上記発明においては、前記第1のマーカが、内視鏡の先端部に設けられていることとしてもよい。
【0034】
また、上記発明においては、前記複数の第1のマーカが、内視鏡の挿入部の長手方向に沿って設けられていることとしてもよい。
また、上記発明においては、前記第2のマーカが、カプセル医療装置に設けられていることとしてもよい。
【0035】
また、上記発明においては、前記第2のマーカが、さらに磁界作用部を備え、該磁界作用部に作用させる推進用磁界を発生させる推進用磁界発生部と、前記位置方向解析部により算出された前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方に基づいて、前記推進用磁界の強度および方向を制御する推進用磁界制御部とを備えることとしてもよい。
【0036】
このようにすることで、推進用磁界発生部により発生された、第2のマーカの磁界作用部に作用させる推進用磁界の強度および方向が、推進用磁界制御部の作動により、位置方向解析部により算出された第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方に基づいて、制御される。これにより、第2のマーカの位置または方向に基づいて、第2のマーカの推進を制御することができる。
【0037】
また、本発明は、外部からの電力供給により、第1のマーカが所定の周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数を有する第1の交番磁界を発生する磁界発生ステップと、磁気誘導コイルを搭載した第2のマーカが前記第1の交番磁界を受けて誘導磁界を発生する誘導磁界発生ステップと、前記第1の位置算出用周波数において磁界を検出する磁界検出ステップと、検出された磁界から、前記一組の第1の位置算出用周波数を有する一組の第1の検出磁界成分の強度の加算値を抽出する抽出ステップと、抽出された前記加算値に基づいて前記第1のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出する位置方向解析ステップとを有する位置検出方法を提供する。
【0038】
上記発明においては、前記抽出ステップが、検出された磁界から、前記一組の第1の検出磁界成分の強度の差分を抽出するステップを含み、前記位置方向解析ステップが、さらに抽出された前記差分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出するステップを含むこととしてもよい。
【0039】
また、上記発明においては、前記磁界発生ステップが、前記一組の第1の位置算出用周波数を有する第2の交番磁界を発生するステップを含み、前記誘導磁界発生ステップが、前記第2のマーカが前記第2の交番磁界を受けて誘導磁界を発生するステップを含み、前記一組の検出磁界成分が、前記第1の交番磁界の発生時に検出された前記第1の位置算出用周波数を有する磁界と前記第1の交番磁界の発生前に検出された前記第1の位置算出用周波数を有する磁界との差分であることとしてもよい。
【0040】
また、上記発明においては、前記磁界発生ステップが、前記一組の第1の位置算出用周波数の近傍の一組の第2の位置算出用周波数を有する第2の交番磁界を発生するステップを含み、前記磁界検出ステップが、さらに前記第2の位置算出用周波数において磁界を検出するステップを含み、前記抽出ステップが、検出された磁界から、前記一組の第2の位置算出用周波数を有する一組の第2の検出磁界成分の強度の差分を抽出するステップを含み、前記位置方向解析ステップが、さらに抽出された前記差分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出するステップを含むこととしてもよい。
【0041】
また、上記発明においては、前記磁界発生ステップが、前記共振周波数を有する第2の交番磁界を発生するステップを含み、前記磁界検出ステップが、さらに前記共振周波数において磁界を検出するステップを含み、前記抽出ステップが、検出された磁界から、前記共振周波数を有するとともに前記第2の交番磁界の位相に対してπ/2ずれた位相を有する第2の検出磁界成分を抽出するステップを含み、前記位置方向解析ステップが、さらに抽出された前記第2の検出磁界成分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出することとしてもよい。
【発明の効果】
【0042】
本発明に係る位置検出システムおよび位置検出方法によれば、外部からの電力供給により交番磁界を発生する一のマーカと、該交番磁界の周波数と同一またはその近傍に共振周波数を有する共振回路を備えた他のマーカとがともに存在した場合であっても、一のマーカの位置または方向を正確に検出することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る位置検出システム1について、図1〜図6を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る位置検出システム1は、体腔内に挿入される挿入部2aを有する内視鏡装置2と、体腔内に投入されるカプセル医療装置3とを含むシステムであって、内視鏡装置2の挿入部2aの先端位置に備えられるマーカコイル(第1のマーカ)4と、カプセル医療装置3に備えられる磁気誘導コイル(第2のマーカ)5と、マーカコイル4の位置を検出する位置検出装置6と、これらを制御する制御部7と、位置検出装置6による検出結果を表示する表示装置8とを備えている。
【0044】
内視鏡装置2には、図2に示されるように、制御部7からの指示信号を受けて、マーカコイル4に第1の交番磁界を発生させるマーカ駆動回路9が設けられている。マーカ駆動回路9は、マーカコイル4により発生する第1の交番磁界の磁界波形を記憶する波形データメモリ10、D/A変換器11および増幅器12を備えている。
前記マーカコイル4は、マーカ駆動回路9により駆動されることにより、後述する入力装置から入力された共振周波数f0を挟み、該共振周波数f0に対して略等しい周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2を有する第1の交番磁界を発生するようになっている。
【0045】
カプセル医療装置3には、前記磁気誘導コイル5を含み、前記一組の第1の位置算出用周波数f1,f2に挟まれた略中心の周波数を共振周波数f0とする共振回路が備えられている。磁気誘導コイル5は、外部からの第1の交番磁界を受けて誘導磁界を発生するようになっている。
【0046】
前記位置検出装置6は、内視鏡装置2およびカプセル医療装置3が挿入される被検者の体外に配置され、マーカコイル4および磁気誘導コイル5から発生される磁界を検出する磁界検出部13と、磁界検出部13により検出された磁界に基づいて内視鏡装置2およびカプセル医療装置3の位置および方向を算出する位置計算部14とを備えている。
【0047】
前記磁界検出部13は、複数のセンスコイル13aと、各センスコイル13aからの出力信号を受信する受信回路13bとを備えている。
センスコイル13aは、空芯コイルであり、内視鏡装置2の挿入部2a先端およびカプセル医療装置3の作動空間に面して、9個1組が正方配列されている。
【0048】
受信回路13bは、内視鏡装置2の位置情報を含む交流電圧に含まれる高周波成分を取り除くローパスフィルタ(LPF)15、高周波成分を取り除かれた交流電圧を増幅するアンプ(AMP)16と、増幅された交流電圧の所定周波数帯域のみを通過させるバンドパスフィルタ(BPF)17と、バンドパスフィルタ17を通過した交流電圧をデジタル信号に変換するA/D変換器18とを備えている。これにより、磁界検出部13において検出された磁界は、デジタル信号からなる磁界信号として出力されるようになっている。
【0049】
前記位置計算部14は、磁界検出部13の受信回路13bから出力された磁界信号を記憶する第1のメモリ19と、該磁界信号を周波数解析処理するFFT処理回路20と、磁界信号の周波数解析処理結果から所定の磁界情報を抽出する抽出部21と、抽出された磁界情報に基づいて内視鏡装置2およびカプセル医療装置3の位置および方向を算出する位置方向解析部22と、算出された内視鏡装置2およびカプセル医療装置3の位置および方向を記憶する第2のメモリ23とを備えている。また、位置計算部14には、前記受信回路13b内の全てのA/D変換器18と位置計算部14とを同期させるためのクロック信号を発振するクロック32が備えられている。
【0050】
前記抽出部21は、マーカ駆動回路9が発生した信号の周波数成分である第1の位置算出用周波数f1,f2を制御部7から受けて、磁界信号の周波数解析処理により得られた磁界情報のうち、第1の位置算出用周波数f1,f2を有する磁界情報を抽出する周波数選択部24と、該周波数選択部24により抽出された第1の位置算出用周波数f1,f2における一組の磁界情報を記憶する第3のメモリ25と、マーカコイル4および磁気誘導コイル5の位置計算を行うための各センスコイル13aの信号を抽出する抽出計算部30とを備えている。
ここで、第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界情報とは、第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界の絶対値である。
【0051】
前記抽出計算部30は、第3のメモリ25に記憶されている、前記周波数選択回路により抽出された第1の位置算出用周波数f1における磁界情報(第1の検出磁界成分)の強度と、第1の位置算出用周波数f2における磁界情報(第1の検出磁界成分)の強度との加算値と差分とを算出するようになっている。
【0052】
前記位置方向解析部22は、前記抽出計算部30において算出された一組の磁界情報の強度の加算値に基づいて内視鏡装置2のマーカコイル4の位置および方向を算出し、一組の磁界情報の強度の差分に基づいてカプセル医療装置の磁気誘導コイル5の位置および方向を算出するようになっている。
【0053】
前記制御部7は、各種入力を行う入力装置26と、該入力装置26により入力された磁気誘導コイル5の共振周波数に基づいてマーカコイル4から発生する磁界波形を計算する波形データ生成部27と、入力された共振周波数に基づいて第1の位置算出用周波数を設定し、波形データ生成部27へ転送する制御回路28とを備えている。また、制御部7には、所定のクロック信号を発生するクロック29と、クロック信号に基づいてトリガ信号を発生するトリガ発生器31とが備えられている。
【0054】
制御回路28は、トリガ発生器31に対し、マーカ駆動回路9へのトリガ信号を発生させるようになっている。また、前記波形データ生成部27は、生成した磁界波形をマーカ駆動回路9の波形データメモリ10に転送するようになっている。
【0055】
このように構成された本実施形態に係る位置検出システム1を用いた内視鏡装置2の先端およびカプセル医療装置3の位置検出方法について、以下に説明する。
本実施形態に係る位置検出システム1により内視鏡装置2の先端およびカプセル医療装置3の位置および方向を検出するには、内視鏡装置2の先端のマーカコイル4およびカプセル医療装置3内の磁気誘導コイル5の位置および方向を検出する。
【0056】
まず、マーカコイル4から発生する磁界波形を生成し、マーカ駆動回路9の波形データメモリ10内に記憶する。磁界波形の生成は、図3に示されるフローに従って開始される。まず、入力装置26から磁気誘導コイル5の共振周波数f0を入力する(ステップS1)。制御回路28は、入力された共振周波数f0を挟み、該共振周波数f0に対して略等しい周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2を設定する(ステップS2)。そして、制御回路28は、設定された第1の位置算出用周波数f1,f2を波形データ生成部27へ転送する(ステップS3)。これにより、磁界波形の生成が開始される。
【0057】
波形データ生成部27においては、送られてきた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2に基づいてマーカコイル4から発生する磁界波形が、下式(1)を用いて算出される(ステップS4)。そして、算出された波形データがマーカ駆動回路9へ転送されて、波形データメモリ10内に記憶される(ステップS5)。
【0058】
Bm1=B1×sin(2πf1t)+B2×sin(2πf2t) (1)
ここで、B1、B2は、センスコイル13aの特性に合わせて設定され、センスコイル13aで周波数f1,f2の磁界成分を検出した際に同レベルの信号強度になるように設定されている。(センスコイル13aが理想的コイルであるならば、B1×f1=B2×f2となるように設定する。また、センスコイル13aの周波数特性をあらかじめ測定しておき、その特性に合わせてB1、B2を設定してもよい。)
【0059】
次に、図4〜図6に示されるように、体腔内に内視鏡装置2およびカプセル医療装置3が挿入配置された状態で(ステップS11)、入力装置26において実測定の開始が指示されることにより開始される(ステップS12)。
制御回路28は、トリガ発生器31にマーカ駆動回路9へのトリガ信号の発生を指示し、トリガ発生器31がトリガ信号を発生する(ステップS13)。
【0060】
マーカ駆動回路9は、波形データメモリ10内に記憶されている波形データに基づいて、磁界発生駆動信号をクロック信号に同期しながら順次生成し、マーカコイル4に出力する。マーカコイル4は入力された磁界発生駆動信号により第1の交番磁界を発生させる(ステップS14)。
【0061】
受信回路13bは、各センスコイル13aで検出したマーカコイル4からの第1の交番磁界に係る磁界信号をローパスフィルタ15によるローパスフィルタ処理、増幅器16による増幅処理およびバンドパスフィルタ17によるバンドパスフィルタ処理を行った後に、クロック32のクロック信号に同期してA/D変換を行う(ステップS15)。
【0062】
A/D変換された磁界信号は、位置計算部14の第1のメモリ19に記憶される(ステップS16)。そして、周波数解析処理を行うのに必要なデータ数が第1のメモリ19内に蓄積されたか否かが判断され、蓄積された場合にはFFT処理回路20が、位置計算部14の第1のメモリ19から磁界信号データを読み出して周波数解析処理が行われる(ステップS17)。その後、この周波数解析処理が全てのセンスコイル13aからのデータに対して行われたか否かが判断され(ステップS18)、全てのセンスコイル13aからのデータが処理されていない場合にはステップS13〜S17が繰り返される。
【0063】
全てのセンスコイル13aからのデータの周波数解析処理が行われた場合には、図5に示されるように、その処理結果に基づいて、周波数選択部24は、マーカコイル4から発生させた第1の交番磁界の第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界情報のみを抽出し、第1の位置算出用周波数f1,f2と対応づけて第3のメモリ25に記憶する(ステップS19)。この処理は全てのセンスコイル13aからの磁界信号に対して行われる(ステップS20)。
【0064】
抽出計算部30においては、磁気誘導コイル5の位置計算を行うための各センスコイル13aの信号を以下の計算式により抽出する(ステップS21)。
Vm21=Vf1−1−Vf2−1
Vm22=Vf1−2−Vf2−2
・・・
Vm2N=Vf1−N−Vf2−N
【0065】
ここで、Vf1−Nは、N番目のセンスコイル13aにより検出された第1の位置算出用周波数f1における磁界強度の絶対値を示し、Vf2−NはN番目のセンスコイル13aにより検出された第1の位置算出用周波数f2における磁界強度の絶対値を示す。また、Vm2Nは、N番目のセンスコイル13aにより検出した磁界強度の絶対値に基づき算出された、磁気誘導コイル5の位置計算を行うための信号を示す。
この場合において、Vm21からVm2Nの計算式の第1項は、第1の位置算出用周波数f1における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm21の計算式の第1項、すなわち周波数f1の1番目のセンスコイル13aによる検出信号には、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界の周波数f1の信号とともに、磁気誘導コイル5がマーカコイル4からの第1の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f1の信号が含まれている。
また、Vm21からVm2Nの計算式の第2項は、第1の位置算出用周波数f2における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm21の計算式の第2項、すなわち周波数f2の2番目のセンスコイル13aによる検出信号には、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界の周波数f2の信号とともに、磁気誘導コイル5がマーカコイル4からの第1の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f2の信号が含まれている。
【0066】
ここで、磁気誘導コイル5の共振周波数f0は、一組の位置算出用周波数f1,f2に挟まれた略中心の周波数であるため、第1の交番磁界に係る誘導磁界の周波数f1,f2の信号は、第1の交番磁界に対する強度の大小関係が互いに異なるとともに、該強度の絶対値が略同一となる特性を有している。一方で、第1の交番磁界の周波数f1,f2の信号は、前述したように、磁界波形の生成過程のステップ4において、センスコイル13aで周波数f1,f2の磁界成分を検出した際に、同レベルの信号強度となるように設定されている。これにより、Vm21からVm2Nの計算式の第1項と第2項との差分、すなわち一組の第1の検出磁界成分の差分を演算することにより、第1の交番磁界の信号は相殺され、第1の交番磁界に係る誘導磁界の信号は相殺されずに残る。
このようにして、共振周波数f0を挟み、該共振周波数f0から略等しい周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界強度の絶対値の差分を演算することにより、第1の交番磁界の信号を相殺することができる。その結果、第1の交番磁界により発生した誘導磁界の信号を容易に抽出することができる。
【0067】
位置方向解析部22は、抽出計算部30で求めたVm21、Vm22、・・・Vm2Nより磁気誘導コイル5の位置および方向を算出する(ステップS22)。
算出された磁気誘導コイル5の位置および方向のデータは制御回路28に送られ、表示装置8に表示される(ステップS23)。そして、算出された位置および方向データは第2のメモリ23に蓄えられる(ステップS24)。
【0068】
次に、抽出計算部30においては、マーカコイル4の位置計算を行うための各センスコイル13aの信号を以下の計算式により算出する(ステップS25)。
Vm11=Vf1−1+Vf2−1、
Vm12=Vf1−2+Vf2−2、
・・・
Vm1N=Vf1−N+Vf2−N
ここで、Vm1Nは、N番目のセンスコイル13aにより検出した磁界強度の絶対値に基づき算出された、マーカコイル4の位置計算を行うための信号を示す。
【0069】
この場合において、Vm11からVm1Nの計算式の第1項は、第1の位置算出用周波数f1における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm11の計算式の第1項、すなわち周波数f1の1番目のセンスコイル13aによる検出信号には、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界の周波数f1の信号とともに、磁気誘導コイル5がマーカコイル4からの第1の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f1の信号が含まれている。
また、Vm11からVm1Nの計算式の第2項は、第1の位置算出用周波数f2における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm11の計算式の第2項、すなわち周波数f2の2番目のセンスコイル13aによる検出信号には、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界の周波数f2の信号とともに、磁気誘導コイル5がマーカコイル4からの第1の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f2の信号が含まれている。
【0070】
ここで、第1の交番磁界に係る誘導磁界の周波数f1,f2の信号は、第1の交番磁界に対する強度の大小関係が互いに異なるとともに、該強度の絶対値が略同一となる特性を有している。これにより、Vm11からVm1Nの計算式の第1項と第2項との加算値、すなわち一組の第1の検出磁界成分の加算値を算出することにより、第1の交番磁界に係る誘導磁界の信号は相殺され、第1の交番磁界の信号は相殺されずに残る。
このようにして、共振周波数f0を挟み、該共振周波数f0から略等しい周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界強度の絶対値を加算することにより、第1の交番磁界に係る誘導磁界の信号を相殺することができる。その結果、第1の交番磁界の信号を容易に抽出することができる。
【0071】
位置方向解析部22は、抽出計算部30で求めたVm11、Vm12、・・・Vm1Nよりマーカコイル4の位置および方向を算出する(ステップS26)。
算出されたマーカコイル4の位置および方向のデータは制御回路28に送られ、表示装置8に表示される(ステップS27)。そして、算出された位置および方向データは第2のメモリ23に蓄えられる(ステップS28)。
【0072】
そして、入力装置26において位置検出終了の指示が入力されたか否かが確認され(ステップS29)、入力された場合には、トリガ発生器31からのトリガ信号の発生を終了させ、位置検出システム1の動作を停止する(ステップS30)。一方、終了の指示が入力されていない場合には、ステップS13に戻り、位置検出動作を継続する。
【0073】
この場合において、磁気誘導コイル5およびマーカコイル4の位置および方向の繰り返し演算における初期値としては、前回に算出され第2のメモリ23に記憶されている磁気誘導コイル5およびマーカコイル4の位置および方向の計算結果が利用される。これにより、繰り返し演算の収束時間を短縮し、位置および方向を迅速に算出することができる。
【0074】
このように、本実施形態に係る位置検出システム1およびこれを用いた位置検出方法によれば、マーカコイル4からの信号と磁気誘導コイル5からの信号とを、両方の信号の位置情報に基づいて完全に分離することができる。その結果、マーカコイル4および磁気誘導コイル5の位置および向き、すなわち、体腔内に挿入した状態の内視鏡装置2の挿入部2aの先端およびカプセル医療装置3の位置および方向を正確に求めることができる。
【0075】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る位置検出システム40について、図7〜図14を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る位置検出システム1と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0076】
本実施形態に係る位置検出システム40は、図7に示されるように、医療装置誘導システム100に備えられている。医療装置誘導システム100は、被験者の口部または肛門から体腔内に投入される内視鏡装置2およびカプセル医療装置3と、位置検出システム40と、検出された位置および方向ならびに施術者の支持に基づきカプセル医療装置3を誘導する磁気誘導装置101と、カプセル医療装置3から送信された画像信号を表示する画像表示装置102とを備えている。
【0077】
磁気誘導装置101は、図7に示すように、カプセル医療装置3を駆動する平行な外部磁界(回転磁界)を発生させる3軸ヘルムホルツコイルユニット(推進用磁界発生部)71と、3軸ヘルムホルツコイルユニット71に供給する電流を増幅制御するヘルムホルツコイルドライバ72と、カプセル医療装置3を駆動する外部磁界の方向を制御する磁界制御回路(推進用磁界制御部)73と、施術者が入力したカプセル医療装置3の進行方向を磁界制御回路73に出力する入力装置74とを備えている。
【0078】
なお、本実施形態では、3軸ヘルムホルツコイルユニット71と標記したが、ヘルムホルツコイルの条件を厳密に満たすものでなくてもよい。例えば、コイルは円形でなく、図7に示されるように略四角をしていてもよく、また、対向するコイルの間隔も本実施形態の機能を満たす範囲でヘルムホルツコイルの条件から外れていてもかまわない。
【0079】
3軸ヘルムホルツコイルユニット71は、図7に示されるように、略矩形形状に形成されている。また、3軸ヘルムホルツコイルユニット71は、互いに対向する3対のヘルムホルツコイル(電磁石)71X,71Y,71Zを備えるとともに、各対のヘルムホルツコイル71X,71Y,71Zが、図7のX,Y,Z軸に対して略垂直となるように配置されている。X,Y,Z軸に対して略垂直に配置されたヘルムホルツコイルを順にそれぞれヘルムホルツコイル71X,71Y,71Zと表記する。
【0080】
また、ヘルムホルツコイル71X,71Y,71Zは、その内部に略直方体状の空間Sを形成するように配置されている。空間Sは、図7に示されるように、カプセル医療装置3の作動空間(作動空間Sとも言う。)になるとともに、被検者が配置される空間にもなっている。
【0081】
ヘルムホルツコイルドライバ72は、それぞれヘルムホルツコイル71X,71Y,71Zを制御するヘルムホルツコイルドライバ72X,72Y,72Zを備えている。
磁界制御回路73には、後述する位置検出システム40からカプセル医療装置3の現在向いている方向(カプセル医療装置3の長手軸Rの方向)データが入力されるとともに、施術者が入力装置74から入力したカプセル医療装置3の進行方向指示が入力されるようになっている。そして、磁界制御回路73からは、ヘルムホルツコイルドライバ72X,72Y,72Zを制御する信号が出力されるとともに、表示装置8にカプセル医療装置3の回転位相データが出力され、また、各ヘルムホルツコイルドライバ72X,72Y,72Zに供給する電流データが出力されるようになっている。
【0082】
また、入力装置74としては、例えば、ジョイスティック(図示略)を備え、ジョイスティックを倒すことによりカプセル医療装置3の進行方向を指示するようになっている。
なお、入力装置74は、上述のようにジョイスティック方式のものを用いてもよいし、進行方向のボタンを押すことにより進行方向を指示する入力装置など、他の方式の入力装置を用いてもよい。
【0083】
カプセル医療装置3は、図8に示すように、その内部に各種の機器を収納する外装110と、被検者の体腔内管路の内壁面を撮像する撮像部120と、撮像部120を駆動する電池130と、後述する磁界発生装置41により交流磁界を発生させる誘導磁界発生部140と、磁気誘導装置70で発生する外部磁界を受け、カプセル医療装置3を駆動する永久磁石(磁界作用部)150とを備えている。
【0084】
外装110は、カプセル医療装置3の長手軸Rを中心軸とする赤外線を透過する円筒形状のカプセル本体(以下、単に本体と略記)111と、本体111の前端を覆う透明な半球形状の先端部112と、本体の後端を覆う半球形状の後端部113とから構成され、水密構造で密閉されたカプセル容器を形成している。
【0085】
また、外装110の本体111の外周面には、長手軸Rを中心として断面円形の線材を螺旋状に巻いた螺旋部114が備えられている。
磁気誘導装置70で発生させた回転する外部磁界を受け、永久磁石150が回転させられると、本体111とともに螺旋部114が長手軸R回りに回転させられる結果、螺旋部114により本体111の長手軸R回りの回転運動が長手軸Rに沿う方向の直線運動に変換され、管腔内でカプセル医療装置3を長手軸R方向に誘導することができるようになっている。
【0086】
撮像部120は、長手軸Rに対して略垂直に配置された基板120Aと、基板120Aの先端部112側の面に配置されたイメージセンサ121と、被験者の体腔内管路の内壁面の画像をイメージセンサ121に結像させるレンズ群122と、体腔内管路の内壁面を照明するLED(Light Emitting Diode)123と、基板120Aの後端部113側の面に配置された信号処理部124と、画像信号を画像表示装置102に発信する無線素子125とを備えている。
【0087】
信号処理部124は、電池130に電気的に接続されているとともに、イメージセンサ121およびLED123と電気的に接続されている。また、信号処理部124は、イメージセンサ121が取得した画像信号を圧縮して一時的に格納(メモリ)し、圧縮した画像信号を無線素子125から外部に送信するとともに、後述するスイッチ部126からの信号に基づきイメージセンサ121およびLED123のオン・オフを制御している。
【0088】
イメージセンサ121は、先端部112およびレンズ群122を介して結像された画像を電気信号(画像信号)に変換して信号処理部124へ出力している。このイメージセンサ121としては、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)やCCDを用いることができる。
また、LED123は、基板120Aより先端部112側に配置された支持部材128に、長手軸Rを中心として周方向に間隔をあけて複数配置されている。
画像表示装置102は、カプセル医療装置3から送られてくる画像データを受信する画像受信回路81と、受信された画像データを表示する表示装置8とを備えている。
【0089】
永久磁石150は、信号処理部124の後端部113側に配置されている。永久磁石150は、長手軸Rに対して直行方向に磁化方向(磁極)を有するように配置または着磁されている。
永久磁石150の後端部113側には、スイッチ部126が備えられている。スイッチ部126は赤外線センサ127を有し、信号処理部124および電池130と電気的に接続されている。
【0090】
また、スイッチ部126は長手軸Rを中心として周方向に等間隔に複数配置されるとともに、赤外線センサ127が直径方向外側に面するように配置されている。本実施形態においては、スイッチ部126が4つ配置されている例を説明するが、スイッチ部126の数は4つに限られることなく、その個数がいくつであってもよい。
【0091】
無線素子125の後端部113側に配置された誘導磁界発生部140は、中心軸が長手軸Rと略一致する円柱形状に形成されたフェライトからなる芯部材(磁性体コア)141と、芯部材141の外周部に配置された磁気誘導コイル5と、磁気誘導コイル5と電気的に接続され、共振回路を形成するコンデンサ(図示略)とから形成されている。
また、芯部材141はフェライトの他、磁性材料が適しており、鉄、ニッケル、パーマロイ、コバルトなどを使用することもできる。また、磁気誘導コイル5が磁性体コアを有しない空芯コイルで構成されていてもよい。
【0092】
本実施形態に係る位置検出システム40は、図7および図10に示されるように、磁気誘導コイル5の作動範囲の外部に配置され、前記第1の交番磁界と同一の周波数および位相を有する第2の交番磁界を発生する磁界発生装置41および磁界発生装置駆動回路42を備える点および位置方向解析部22における演算処理において、上述した第1の実施形態に係る位置検出システム1と相違している。図10中、符号43は波形データメモリ、符号44はD/A変換器、符号45は増幅器である。また、図7中において、符号46は磁界発生装置41を選択するセレクタ、符号47はセンスコイル13aを選択するセンスコイルセレクタである。
【0093】
図9および図10に本実施形態に係る位置検出システム40を簡略化して示す。
本実施形態に係る位置検出システム40により、内視鏡装置2の先端のマーカコイル4およびカプセル医療装置3内の磁気誘導コイル5の位置および方向を検出するには、発生する第1,第2の交番磁界の波形データを生成して波形データメモリ10,43に記憶し、カプセル医療装置3が作動範囲内に存在しない状態で、キャリブレーションを行う。
【0094】
マーカコイル4から第1の交番磁界を発生するのみならず磁界発生装置41からも第2の交番磁界を発生するので、生成された磁界波形データは、マーカ駆動回路9および磁界発生装置駆動回路42の波形データメモリ10,43にそれぞれ転送される。
波形データ生成部27においては、送られてきた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2に基づいてマーカコイル4から発生させる磁界波形が、下式(1)を用いて算出される。
Bm1=B1×sin(2πf1t)+B2×sin(2πf2t) (1)
【0095】
また、波形データ生成部27においては、送られてきた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2に基づいて磁界発生装置41から発生させる磁界波形が、下式(2)を用いて算出される。
BG=B3×sin(2πf1t)+B4×sin(2πf2t) (2)
【0096】
そして、算出された磁界波形Bm1のデータがマーカ駆動回路9へ転送されて、波形データメモリ10内に記憶される。さらに、算出された磁界波形BGのデータが磁界発生装置駆動回路42へ転送されて、波形データメモリ43内に記憶される。
なお、マーカコイル4および磁界発生装置41から発生する第1,第2の交番磁界は、磁気誘導コイル5の共振周波数f0を挟み、該共振周波数f0から略等しい周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2に一致し、かつ同一の位相を有している。
【0097】
キャリブレーションは、図11および図12に示されるように、内視鏡装置2の挿入部2a先端が体腔内に挿入され、カプセル医療装置3が体腔内に投入されていない状態で、入力装置26からキャリブレーションの指示が入力されることにより開始される(ステップS31)。制御回路28は、磁界発生装置駆動回路42に対してトリガ信号を発生するようにトリガ発生器31に指示を与える。これによりトリガ発生器31からトリガ信号が発せられる(ステップS32)。
【0098】
トリガ信号を受けた磁界発生装置駆動回路42は、波形データメモリ43内に記憶されている波形データに基づいて、磁界発生駆動信号をクロック29からのクロック信号に同期して順次生成し、磁界発生装置41に出力する。磁界発生装置41は、入力された磁界発生駆動信号により第2の交番磁界を発生する(ステップS33)。
【0099】
受信回路13bは、各センスコイル13aで検出した磁界発生装置41からの第2の交番磁界に係る磁界信号を受信して、ローパスフィルタ処理、増幅処理およびバンドパスフィルタ処理を行った後に、クロック32からのクロック信号に同期してA/D変換を行う(ステップS34)。
【0100】
A/D変換された磁界信号は、位置計算部14の第1のメモリ19に記憶される(ステップS35)。そして、周波数解析処理を行うのに必要なデータ数が第1のメモリ19内に蓄積されたか否かが判断され、蓄積された場合にはFFT処理回路20により周波数解析処理が行われる(ステップS36)。
【0101】
周波数解析処理の結果に基づいて、周波数選択部24は、マーカコイル4から発生させた第1の交番磁界および磁界発生装置41から発生させた第2の交番磁界の第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界情報のみを抽出し、周波数f1,f2と対応づけて第3のメモリ25に記憶させる(ステップS37)。
【0102】
このとき、記憶された各第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界情報の信号強度をV0f1―1、V0f1―2、・・・V0f1―N、V0f2―1、V0f2―2、・・・V0f2―Nとする。ここで、上付きの添え字f1,f2は周波数成分を示し、その後の添え字、1,2,・・・,Nはセンスコイル13aの番号を表す。また、磁界情報とはFFT処理結果の絶対値である。そして、この第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界情報がキャリブレーション値として第3のメモリ25に記憶されることになる。
【0103】
ここで、全てのセンスコイル13aで検出された周波数f1の信号強度と、周波数f2の信号強度を補正する。
具体的には、まず、全てのセンスコイル13aで検出された周波数f1の信号成分の和Σ(V0f1―N)と、全てのセンスコイル13aで検出された周波数f2の信号成分の和Σ(V0f2―N)を求める。次いで、信号成分の和の比Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)を補正係数として求める。
【0104】
そして、求められた補正係数を用いて、V0f2―1,V0f2―2,・・・,V0f2―Nを次のように置き換えて第3のメモリ25に上書き保存する。
V0f2―1を、V0f2―1×Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)に置き換える。
V0f2―2を、V0f2―2×Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)に置き換える。
・・・
V0f2―Nを、V0f2―N×Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)に置き換える。
また、補正係数Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)も第3のメモリ25に保存しておく(ステップS38)。
【0105】
これにより、第3のメモリ25に保存されているV0f1―1と、V0f2―1(置き換えられたことによりV0f2―1×(V0f1―N)/Σ(V0f2―N))はほぼ等しい値を持つ。言い換えれば、各センスコイル13aの周波数f1の信号に対するゲインと、周波数f2の信号に対するゲインをほぼ等しくする操作を行ったことになる。
【0106】
次に、実測定は、図12〜図14に示されるように、体腔内に内視鏡装置2およびカプセル医療装置3が挿入配置された状態で(ステップS41)、入力装置26において実測定の開始が指示されることにより開始される(ステップS42)。
制御回路28は、トリガ発生器31にマーカ駆動回路9および磁界発生装置駆動回路42へのトリガ信号の発生を指示し、トリガ発生器31がトリガ信号を発生する(ステップS43)。
【0107】
マーカ駆動回路9は、波形データメモリ10内に記憶されている波形データに基づいて、磁界発生駆動信号をクロック信号に同期しながら順次生成し、マーカコイル4に出力する。マーカコイル4は入力された磁界発生駆動信号により第1の交番磁界を発生させる(ステップS44)。
また、磁界発生装置駆動回路42は、波形データメモリ43内に記憶されている波形データに基づいて、磁界発生駆動信号をクロック信号に同期しながら順次生成し、磁界発生装置41に出力する。磁界発生装置41は入力された磁界発生駆動信号により第2の交番磁界を発生させる(ステップS45)。
【0108】
受信回路13bは、各センスコイル13aで検出したマーカコイル4からの第1の交番磁界および磁界発生装置41からの第2の交番磁界に係る磁界信号をローパスフィルタ処理、増幅処理およびバンドパスフィルタ処理を行った後に、クロック32からのクロック信号に同期してA/D変換を行う(ステップS46)。
【0109】
A/D変換された磁界信号は、位置計算部14の第1のメモリ19に記憶される(ステップS47)。
そして、周波数解析処理を行うのに必要なデータ数が第1のメモリ19内に蓄積されたか否かが判断され、蓄積された場合には、FFT処理回路20は第1のメモリ19から信号データを読み出して周波数解析処理を行う(ステップS48)。その後、この周波数解析処理が全てのセンスコイル13aからのデータに対して行われたか否かが判断され(ステップS49)、全てのセンスコイル13aからのデータが処理されていない場合にはステップS43〜S48が繰り返される。
【0110】
全てのセンスコイル13aからのデータの周波数解析処理が行われた場合には、図14に示されるように、その処理結果に基づいて、周波数選択部24は、マーカコイル4から発生させた第1の交番磁界および磁界発生装置41から発生させた第2の交番磁界の第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界情報のみを抽出し、周波数f1,f2と対応づけて第3のメモリ25に記憶する(ステップS50)。この処理は全てのセンスコイル13aからの磁界信号に対して行われる(ステップS51)。
【0111】
抽出計算部30では、磁気誘導コイル5の位置計算を行うための各センスコイル13aからの信号を以下の計算式から抽出する(ステップS52)。
Vm21=(Vf1−1−V0f1―1)−(Vf2−1× Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)−V0f2―1)
Vm22=(Vf1−2−V0f1―2)−(Vf2−2× Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)−V0f2―2)
・・・
Vm2N=(Vf1−N−V0f1―N)−(Vf2−N× Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)−V0f2―N)
【0112】
この場合において、Vm21からVm2Nの計算式の第1項は、第1の位置算出用周波数f1における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm21の計算式の第1項(Vf1−1−V0f1―1)のうちVf1−1、すなわち第1の交番磁界の発生後かつカプセル医療装置3の体腔内への投入後における周波数f1のセンスコイル13aによる検出信号には、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界および磁界発生装置41から出力された第2の交番磁界の周波数f1の信号とともに、磁気誘導コイル5が第1の交番磁界および第2の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界・第2の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f1の信号が含まれている。
【0113】
また、V0f1―1、すなわち第1の交番磁界の発生前かつカプセル医療装置3の体腔内への投入前における周波数f1のセンスコイル13aによる検出信号には、磁界発生装置41から出力された第2の交番磁界の周波数f1の信号が含まれている。
よって、これらの差分(Vf1−1−V0f1―1)を算出することにより、第2の交番磁界の周波数f1の信号が相殺される。したがって、Vm21からVm2Nの計算式の第1項(第1の検出磁界成分)には、第1の交番磁界の周波数f1の信号とともに、第1の交番磁界に係る誘導磁界および第2の交番磁界に係る誘導磁界の周波数f1の信号が含まれることになる。
【0114】
また、Vm21からVm2Nの計算式の第2項は、第1の位置算出用周波数f2における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm21の計算式の第2項(Vf2−1× Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)−V0f2―1)のうちVf2−1× Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)、すなわち第1の交番磁界の発生後かつカプセル医療装置3の体腔内への投入後における周波数f2のセンスコイル13aによる検出信号には、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界および磁界発生装置41から出力された第2の交番磁界の周波数f2の信号とともに、磁気誘導コイル5が第1の交番磁界および第2の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界・第2の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f2の信号が含まれている。
【0115】
また、V0f2―1、すなわち第1の交番磁界の発生前かつカプセル医療装置3の体腔内への投入前における周波数f2のセンスコイル13aによる検出信号には、磁界発生装置41から出力された第2の交番磁界の周波数f2の信号が含まれている。
よって、これらの差分(Vf2−1× Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)−V0f2―1)を算出することにより、第2の交番磁界の周波数f2の信号が相殺される。したがって、Vm21からVm2Nの計算式の第2項(第1の検出磁界成分)には、第1の交番磁界の周波数f2の信号とともに、第1の交番磁界に係る誘導磁界および第2の交番磁界に係る誘導磁界の周波数f2の信号が含まれることになる。
【0116】
ここで、第1の交番磁界に係る誘導磁界の周波数f1,f2の信号は、第1の交番磁界に対する強度の大小関係が互いに異なるとともに、該強度の絶対値が略同一となる特性を有している。一方で、第1の交番磁界の周波数f1,f2の信号は、前述したように、各センスコイル13aの周波数f1の信号に対するゲインとf2の信号に対するゲインをほぼ等しくする操作がなされているので、同レベルの信号強度を有している。これにより、Vm21からVm2Nの計算式の第1項と第2項との差分、すなわち一組の第1の検出磁界成分の差分を演算することにより、さらに第1の交番磁界の信号は相殺され、第1の交番磁界に係る誘導磁界および第2の交番磁界に係る誘導磁界の信号は相殺されずに残る。
【0117】
このようにして、共振周波数f0を挟み、該共振周波数f0から略等しい周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界強度の絶対値の差分を算出することにより、第1の交番磁界の信号および第2の交番磁界の信号がそれぞれ相殺される。その結果、第1の交番磁界および第2の交番磁界により発生した誘導磁界(第1および第2の交番磁界に係る誘導磁界)の信号を容易に抽出することができる。
【0118】
位置方向解析部22は、抽出計算部で求めた、Vm21,Vm22,・・・,Vm2Nから磁気誘導コイル5の位置および向きを繰り返し演算により算出する(ステップS53)。
算出された磁気誘導コイル5の位置および方向は、制御回路28に送られて、表示装置8により表示されるとともに(ステップS54)、第2のメモリ23に記憶される(ステップS55)。
【0119】
また、抽出計算部では、マーカコイル4の位置計算を行うための各センスコイル13aからの信号を以下の計算式から抽出する(ステップS56)。
Vm11=(Vf1−1−V0f1―1)+(Vf2−1× Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)−V0f2―1)
Vm12=(Vf1−2−V0f1―2)+(Vf2−2× Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)−V0f2―2)
・・・
Vm1N=(Vf1−N−V0f1―N)+(Vf2−N× Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)−V0f2―N)
【0120】
この場合において、Vm11からVm1Nの計算式の第1項は、第1の位置算出用周波数f1における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm11の計算式の第1項(Vf1−1−V0f1―1)、すなわち周波数f1のセンスコイル13aによる検出信号には、前述したように、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界の周波数f1の信号とともに、磁気誘導コイル5が第1の交番磁界および第2の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界・第2の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f1の信号が含まれている。すなわち、磁界発生装置41から出力された第2の交番磁界の周波数f1の信号が相殺されている。
【0121】
また、Vm11からVm1Nの計算式の第2項は、第1の位置算出用周波数f2における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm11の計算式の第2項(Vf2−1× Σ(V0f1―N)/Σ(V0f2―N)−V0f2―1)、すなわち周波数f2のセンスコイル13aによる検出信号には、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界の周波数f2の信号とともに、磁気誘導コイル5が第1の交番磁界および第2の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界・第2の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f2の信号が含まれている。すなわち、磁界発生装置41から出力された第2の交番磁界の周波数f2の信号とが相殺されている。
【0122】
ここで、第1の交番磁界に係る誘導磁界および第2の交番磁界に係る誘導磁界の周波数f1,f2の信号は、第1の交番磁界に対する強度の大小関係が互いに異なるとともに、該強度の絶対値が略同一となる特性を有している。これにより、Vm11からVm1Nの計算式の第1項と第2項との加算値、すなわち一組の第1の検出磁界成分の加算値を算出することにより、さらに第1および第2の交番磁界に係る誘導磁界の信号が相殺され、第1の交番磁界の信号は相殺されずに残る。
【0123】
このようにして、第1の位置算出用周波数f1における磁界強度のうち、第1の交番磁界の発生時に抽出された磁界強度の絶対値と、第1の交番磁界の発生前に抽出された磁界強度の絶対値との差分と、第1の位置算出用周波数f2における磁界強度のうち、第1の交番磁界の発生時に抽出された磁界強度の絶対値と、第1の交番磁界の発生前に抽出された磁界強度の絶対値との差分との加算値を算出することにより、第2の交番磁界の信号と、第1および第2の交番磁界に係る誘導磁界の信号とが相殺される。その結果、第1の交番磁界の信号を容易に抽出することができる。
【0124】
位置方向解析部22は、抽出計算部30で求めたVm11、Vm12、・・・Vm1Nよりマーカコイル4の位置および方向を算出する(ステップS57)。
算出されたマーカコイル4の位置および方向のデータは制御回路28に送られ、表示装置8に表示される(ステップS58)。そして、算出された位置および方向データは第2のメモリ23に蓄えられる(ステップS59)。
【0125】
そして、入力装置26において位置検出終了の指示が入力されたか否かが確認され(ステップS60)、入力された場合には、トリガ発生器31からのトリガ信号の発生を終了させ、位置検出システム1の動作を停止する(ステップS61)。一方、終了の指示が入力されていない場合には、ステップS43に戻り、位置検出動作を継続する。
【0126】
この場合において、マーカコイル4および磁気誘導コイル5の位置および方向の繰り返し演算における初期値としては、前回に算出され第2のメモリ23に記憶されているマーカコイル4および磁気誘導コイル5の位置および方向の計算結果が利用される。これにより、繰り返し演算の収束時間を短縮し、位置および方向を迅速に算出することができる。
【0127】
このように、本実施形態に係る位置検出システム40およびこれを用いた位置検出方法によれば、外部からの電力供給により磁界を発生するマーカコイル4を有する内視鏡装置2と、磁気誘導コイル5を有するカプセル医療装置3とが共存した場合においても、内視鏡装置2およびカプセル医療装置3の両方について、位置および方向の少なくとも一方を同時に精度よく算出することができる。また、第1の交番磁界に加えて第2の交番磁界も、磁気誘導コイル5から誘導磁界を発生させているので、誘導磁界の強度を大きくすることができる。
【0128】
なお、本実施形態においては、磁気誘導装置101が回転磁界を発生させることとしているが、この方式に限らず、磁気誘導装置101が勾配磁界を発生させ、該勾配磁界によりカプセル医療装置3の永久磁石150に生じる磁気引力を利用して、カプセル医療装置3を誘導することとしてもよい。
【0129】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る位置検出システム50について、図15〜図19を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第1の実施形態に係る位置検出システム40と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0130】
本実施形態に係る位置検出システム50は、図15に示されるように、磁界発生装置41から発生する第2の交番磁界の周波数が、第1の交番磁界の周波数f1,f2とは異なる一組の第2の位置算出用周波数f3,f4である点において、第2の実施形態に係る位置検出システム40と相違している。
【0131】
本実施形態に係る位置検出システム50により、内視鏡装置2の先端のマーカコイル4およびカプセル医療装置3内の磁気誘導コイル5の位置および方向を検出するには、発生する第1,第2の交番磁界の波形データを生成して波形データメモリ10,43に記憶し、カプセル医療装置3が作動範囲内に存在しない状態で、キャリブレーションを行う。
【0132】
入力装置26から磁気誘導コイル5の共振周波数f0が入力されると、制御回路28は、マーカコイル4から発生する第1の交番磁界の周波数として、入力された共振周波数f0を挟み、該共振周波数f0に対して略等しい周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2を設定する。また、制御回路28は磁界発生装置41から発生する第2の交番磁界の第2の位置算出用周波数として、周波数f1,f2とは異なる周波数で、共振周波数f0を挟み、該共振周波数f0に対して略等しい周波数だけ離れた一組の周波数f3,f4を設定する。そして、制御回路28が、設定された第1の位置算出用周波数f1,f2および第2の位置算出用周波数f3,f4を波形データ生成部27へ転送することにより、磁界波形の生成が開始される。
【0133】
マーカコイル4から第1の交番磁界を発生するのみならず、磁界発生装置41からは第2の交番磁界を発生するので、生成された磁界波形データは、マーカ駆動回路9および磁界発生装置駆動回路42の波形データメモリ10,43にそれぞれ転送される。
波形データ生成部27においては、送られてきた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2に基づいてマーカコイル4から発生させる磁界波形が、下式(1)を用いて算出される。
【0134】
Bm1=B1×sin(2πf1t)+B2×sin(2πf2t) (1)
ここで、B1,B2は、センスコイル13aの特性に合わせて設定され、センスコイル13aで周波数f1,f2の磁界成分を検出した際に同レベルの信号強度になるように設定されている。(センスコイル13aが理想的コイルであるならば、B1×f1=B2×f2となるように設定する。また、センスコイル13aの周波数特性をあらかじめ測定しておき、その特性に合わせてB1,B2を設定してもよい。)
【0135】
また、波形データ生成部27においては、送られてきた一組の第2の位置算出用周波数f3,f4に基づいて磁界発生装置41から発生させる磁界波形が、下式(2′)を用いて算出される。
BG=B3×sin(2πf3t)+B4×sin(2πf4t) (2′)
【0136】
そして、算出された磁界波形Bm1のデータがマーカ駆動回路9へ転送されて、波形データメモリ10内に記憶される。さらに、算出された磁界波形BGのデータが磁界発生装置駆動回路42へ転送されて、波形データメモリ43内に記憶される。
【0137】
キャリブレーションは、図16に示されるように、内視鏡装置2の挿入部2a先端が体腔内に挿入され、カプセル医療装置3が体腔内に投入されていない状態で、入力装置26からキャリブレーションの指示が入力されることにより開始される(ステップS71)。制御回路28は、磁界発生装置駆動回路42に対してトリガ信号を発生するようにトリガ発生器31に指示を与える。これによりトリガ発生器31からトリガ信号が発せられる(ステップS72)。
【0138】
トリガ信号を受けた磁界発生装置駆動回路42は、波形データメモリ43内に記憶されている波形データに基づいて、磁界発生駆動信号をクロック29からのクロック信号に同期して順次生成し、磁界発生装置41に出力する。磁界発生装置41は入力された磁界発生駆動信号により第2の交番磁界を発生する(ステップS73)。
【0139】
受信回路13bは、各センスコイル13aで検出した磁界発生装置41からの第2の交番磁界に係る磁界信号を受信して、ローパスフィルタ処理、増幅処理およびバンドパスフィルタ処理を行った後に、クロック32からのクロック信号に同期してA/D変換を行う(ステップS74)。
【0140】
A/D変換された磁界信号は、位置計算部14の第1のメモリ19に記憶される(ステップS75)。そして、周波数解析処理を行うのに必要なデータ数が第1のメモリ19内に蓄積されたか否かが判断され、蓄積された場合にはFFT処理回路20により周波数解析処理が行われる(ステップS76)。
【0141】
周波数解析処理の結果に基づいて、周波数選択部24は、磁界発生装置41から発生させた第2の交番磁界の第2の位置算出用周波数f3,f4における磁界情報のみを抽出し、周波数f3,f4と対応づけて第3のメモリ25に記憶させる(ステップS77)。
【0142】
このとき、記憶された各第2の位置算出用周波数f3,f4における磁界情報の信号強度をV0f3―1、V0f3―2、・・・V0f3―N、V0f4―1、V0f4―2、・・・V0f4―Nとする。ここで、上付きの添え字f3,f4は周波数成分を示し、その後の添え字、1,2,・・・,Nはセンスコイル13aの番号を表す。また、磁界情報とはFFT処理結果の絶対値である。そして、この第2の位置算出用周波数f3,f4における磁界情報がキャリブレーション値として第3のメモリ25に記憶されることになる。
【0143】
ここで、全てのセンスコイル13aで検出された周波数f3の信号強度と、周波数f4の信号強度を補正する。
具体的には、まず、全てのセンスコイル13aで検出された周波数f3の信号成分の和Σ(V0f3―N)と、全てのセンスコイル13aで検出された周波数f4の信号成分の和Σ(V0f4―N)を求める。次いで、信号成分の和の比Σ(V0f3―N)/Σ(V0f4―N)を補正係数として求める。
【0144】
そして、求められた補正係数を用いて、V0f4―1,V0f4―2,・・・,V0f4―Nを次のように置き換えて第3のメモリ25に上書き保存する。
V0f4―1を、V0f4―1×Σ(V0f3―N)/Σ(V0f4―N)に置き換える。
V0f4―2を、V0f4―2×Σ(V0f3―N)/Σ(V0f4―N)に置き換える。
・・・
V0f4―Nを、V0f4―N×Σ(V0f3―N)/Σ(V0f4―N)に置き換える。
また、補正係数Σ(V0f3―N)/Σ(V0f4―N)も第3のメモリ25に保存しておく(ステップS78)。
【0145】
これにより、第3のメモリ25に保存されているV0f3―1と、V0f4―1(置き換えられたことによりV0f4―1×(V0f3―N)/Σ(V0f4―N))はほぼ等しい値を持つ。言い換えれば、各センスコイル13aの周波数f3の信号に対するゲインと、周波数f4の信号に対するゲインをほぼ等しくする操作を行ったことになる。
【0146】
次に、実測定は、図17〜図19に示されるように、体腔内に内視鏡装置2およびカプセル医療装置3が挿入配置された状態で(ステップS81)、入力装置26において実測定の開始が指示されることにより開始される(ステップS82)。
制御回路28は、トリガ発生器31にマーカ駆動回路9および磁界発生装置駆動回路42へのトリガ信号の発生を指示し、トリガ発生器31がトリガ信号を発生する(ステップS83)。
【0147】
マーカ駆動回路9は、波形データメモリ10内に記憶されている波形データに基づいて、磁界発生駆動信号をクロック信号に同期しながら順次生成し、マーカコイル4に出力する。マーカコイル4は入力された磁界発生駆動信号により第1の交番磁界を発生させる(ステップS84)。
また、磁界発生装置駆動回路42は、波形データメモリ43内に記憶されている波形データに基づいて、磁界発生駆動信号をクロック信号に同期しながら順次生成し、磁界発生装置41に出力する。磁界発生装置41は入力された磁界発生駆動信号により第2の交番磁界を発生させる(ステップS85)。
【0148】
受信回路13bは、各センスコイル13aで検出したマーカコイル4からの第1の交番磁界および磁界発生装置41からの第2の交番磁界に係る磁界信号をローパスフィルタ処理、増幅処理およびバンドパスフィルタ処理を行った後に、クロック32からのクロック信号に同期してA/D変換を行う(ステップS86)。
【0149】
A/D変換された磁界信号は、位置計算部14の第1のメモリ19に記憶される(ステップS87)。
そして、周波数解析処理を行うのに必要なデータ数が第1のメモリ19内に蓄積されたか否かが判断され、蓄積された場合には、FFT処理回路20は第1のメモリ19から信号データを読み出して周波数解析処理を行う(ステップS88)。その後、この周波数解析処理が全てのセンスコイル13aからのデータに対して行われたか否かが判断され(ステップS89)、全てのセンスコイル13aからのデータが処理されていない場合にはステップS83〜S88が繰り返される。
【0150】
全てのセンスコイル13aからのデータの周波数解析処理が行われた場合には、図18に示されるように、その処理結果に基づいて、周波数選択部24は、マーカコイル4から発生させた第1の交番磁界および磁界発生装置41から発生させた第2の交番磁界の第1の位置算出用周波数f3,f4における磁界情報のみを抽出し、周波数f3,f4と対応づけて第3のメモリ25に記憶する(ステップS90)。この処理は全てのセンスコイル13aからの磁界信号に対して行われる(ステップS91)。
【0151】
抽出計算部30では、磁気誘導コイル5の位置計算を行うための各センスコイル13aからの信号を以下の計算式から抽出する(ステップS92)。
Vm21=(Vf3−1−V0f3―1)−(Vf4−1×Σ(V0f3―N)/Σ(V0f4―N)−V0f4―1)
Vm22=(Vf3−2−V0f3―2)−(Vf4−2×Σ(V0f3―N)/Σ(V0f4―N)−V0f4―2)
・・・
Vm2N=(Vf3−N−V0f3―N)−(Vf4−N×Σ(V0f3―N)/Σ(V0f4―N)−V0f4―N)
【0152】
この場合において、Vm21からVm2Nの計算式の第1項は、第2の位置算出用周波数f3における磁界情報(第2の検出磁界成分)に相当する。また、Vm21からVm2Nの計算式の第2項は、第2の位置算出用周波数f4における磁界情報(第2の検出磁界成分)に相当する。
このようにして、共振周波数f0を挟み、該共振周波数f0から略等しい周波数だけ離れた一組の第2の位置算出用周波数f3,f4における磁界強度の絶対値の差分を算出することにより、第2の交番磁界の信号を相殺することができる。その結果、第2の交番磁界により発生した誘導磁界(第2の交番磁界に係る誘導磁界)の信号を容易に抽出することができる。
【0153】
位置方向解析部22は、抽出計算部で求めた、Vm21,Vm22,・・・,Vm2Nから磁気誘導コイル5の位置および向きを繰り返し演算により算出する(ステップS93)。
算出された磁気誘導コイル5の位置および方向は、制御回路28に送られて、表示装置8により表示されるとともに(ステップS94)、第2のメモリ23に記憶される(ステップS95)。
【0154】
また、抽出計算部では、マーカコイル4の位置計算を行うための各センスコイル13aからの信号を以下の計算式から抽出する(ステップS96)。
Vm11=Vf1−1+Vf2−1
Vm12=Vf1−2+Vf2―2
・・・
Vm1N=Vf1−N+Vf2―N
【0155】
この場合において、Vm11からVm1Nの計算式の第1項は、第1の位置算出用周波数f1における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm11の計算式の第1項、すなわち周波数f1のセンスコイル13aによる検出信号には、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界の周波数f1の信号とともに、磁気誘導コイル5が第1の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f1の信号が含まれている。
また、Vm11からVm1Nの計算式の第2項は、第1の位置算出用周波数f2における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm11の計算式の第2項、すなわち周波数f2のセンスコイル13aによる検出信号には、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界の周波数f2の信号とともに、磁気誘導コイル5が第1の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f2の信号が含まれている。
【0156】
ここで、前述したように、マーカコイル4から発生させる磁界波形の算出過程において、B1,B2が、センスコイル13aで周波数f1,f2の磁界成分を検出した際に同レベルの信号強度になるように設定されている。よって、第1の交番磁界に係る誘導磁界の周波数f1,f2の信号は、第1の交番磁界に対する強度の大小関係が互いに異なるとともに、該強度の絶対値が略同一となる特性を有している。これにより、Vm11からVm1Nの計算式の第1項と第2項との加算値、すなわち一組の第1の検出磁界成分の加算値を算出することにより、第1の交番磁界に係る誘導磁界の信号を相殺することができる。
このようにして、共振周波数f0を挟み、該共振周波数f0から略等しい周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数f1における磁界強度の絶対値と、第1の位置算出用周波数f2における磁界強度の絶対値との加算値を算出することにより、第1の交番磁界に係る誘導磁界の信号を相殺することができる。その結果、第1の交番磁界の信号を容易に抽出することができる。
【0157】
位置方向解析部22は、抽出計算部30で求めたVm11、Vm12、・・・Vm1Nよりマーカコイル4の位置および方向を算出する(ステップS97)。
算出されたマーカコイル4の位置および方向のデータは制御回路28に送られ、表示装置8に表示される(ステップS98)。そして、算出された位置および方向データは第2のメモリ23に蓄えられる(ステップS99)。
【0158】
そして、入力装置26において位置検出終了の指示が入力されたか否かが確認され(ステップS100)、入力された場合には、トリガ発生器31からのトリガ信号の発生を終了させ、位置検出システム1の動作を停止する(ステップS101)。一方、終了の指示が入力されていない場合には、ステップS43に戻り、位置検出動作を継続する。
【0159】
この場合において、マーカコイル4および磁気誘導コイル5の位置および方向の繰り返し演算における初期値としては、前回に算出され第2のメモリ23に記憶されているマーカコイル4および磁気誘導コイル5の位置および方向の計算結果が利用される。これにより、繰り返し演算の収束時間を短縮し、位置および方向を迅速に算出することができる。
【0160】
このように、本実施形態に係る位置検出システム50およびこれを用いた位置検出方法によれば、外部からの電力供給により磁界を発生するマーカコイル4を有する内視鏡装置2と、磁気誘導コイル5を有するカプセル医療装置3とが共存した場合においても、内視鏡装置2およびカプセル医療装置3の両方について、位置および方向の少なくとも一方を同時に精度よく算出することができる。また、磁気誘導コイル5の作動範囲の外部に配置された磁界発生装置41から発生する第2の交番磁界の出力を大きくすることは容易であるので、第2の交番磁界に係る誘導磁界の強度を大きくすることができる。
【0161】
なお、本実施形態においては、内視鏡装置2が単一のマーカコイル4を有する場合について説明したが、これに代えて、互いに異なる複数組の第1の位置算出用周波数を有する第1の交番磁界を発生する複数のマーカコイル4を有する場合には、以下のように取り扱うことができる。
【0162】
すなわち、この場合には、波形データ生成部27が、複数のマーカコイル4から発生させる磁界波形を計算する。発生させる磁界は、以下の通りである。
第1のマーカコイル4:
Bm11=B11×sin(2πf11t)+B21×sin(2πf21t)
第2のマーカコイル4
Bm12=B12×sin(2πf12t)+B22×sin(2πf22t)
・・・
第nのマーカコイル4
Bm1n=B1n×sin(2πf1nt)+B22×sin(2πf2nt)
【0163】
ここで、B11、B21は、センスコイル13aの特性に合わせて設定され、センスコイル13aで周波数f11,f21の磁界成分を検出した際に同レベルの信号強度になるように設定されている(センスコイル13aが理想的コイルであるならば、B11×f11=B21×f21となるように設定する。また、センスコイル13aの周波数特性をあらかじめ測定しておき、その特性に合わせてB11、B21を設定してもよい。)。以下、B12,B22,f12,f22の関係、・・・、B1n,B2n,f1n,f2nの関係についても同様になるように設定する。
【0164】
また、実測定においては、抽出計算部30は、第1〜第nのマーカコイル4の一計算を行うための各センスコイル13aの信号を以下の計算式から抽出する。
Vm111=Vf11−1+Vf21−1,Vm112=Vf11−2+Vf21−2,…,Vm11N=Vf11−N+Vf21−N
Vm121=Vf12−1+Vf22−1,Vm122=Vf12−2+Vf22−2,…,Vm12N=Vf12−N+Vf22−N
・・・
Vm1n1=Vf1n−1+Vf2n−1,Vm1n2=Vf1n−2+Vf2n−2,…,Vm1nN=Vf1n−N+Vf2n−N
【0165】
また、位置方向解析部22は、抽出計算部30で求めた、Vm111,Vm112,・・・,Vm11Nより第1のマーカコイル4の位置および方向を計算し、Vm1n1,Vm1n2,・・・,Vm1nNより第nのマーカコイル4の位置および方向を計算することにすればよい。
また、単一の内視鏡装置2内に複数のマーカコイル4を備える場合に代えて、複数の内視鏡装置2内にそれぞれ異なる複数組の第1の位置算出用周波数を有するマーカコイル4が備えられる場合においても同様の処理を行うことで対応することができる。
【0166】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態に係る位置検出システム60について、図20〜図26を参照して以下に説明する。
本実施形態の説明において、上述した第2の実施形態に係る位置検出システム40と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0167】
本実施形態に係る位置検出システム60は、図20に示されるように、内視鏡装置2の先端に設けたマーカコイル4に代えて、第1のカプセル医療装置61内に配置されたマーカコイル62を採用している点、該第1のカプセル医療装置61への信号の送信部63を備える点、磁気誘導コイル5を第2のカプセル医療装置3′内に配置している点、磁界発生装置41の発生する第2の交番磁界の周波数が異なる点、および位置計算部14における演算処理において、上述した第2の実施形態に係る位置検出システム40と相違している。
【0168】
また、本実施形態に係る位置検出システム60においては制御部7内に、クロック29のクロック信号に基づいて周波数解析に用いる磁界信号の読出しタイミングを位置計算部14のFFT処理回路20に指示する読出タイミング生成器67を備えている。
【0169】
第1のカプセル医療装置61は、図21に示されるように、第1の位置算出用周波数f1,f2を有する第1の交番磁界を発生するマーカコイル62と、該マーカコイル62を駆動するマーカ駆動回路64と、クロック65と、受信部66と、図示しない電源とを備えている。マーカ駆動回路64は、送信部63から無線送信され、受信部66で受信された指令信号に応じてマーカコイル62に第1の交番磁界を発生させるようになっている。
前記磁界発生装置41は、第2のカプセル医療装置3′内の磁気誘導コイル5の共振周波数f0を有する第2の交番磁界を発生するようになっている。
【0170】
本実施形態に係る位置検出システム60により、第1のカプセル医療装置61内のマーカコイル62および第2のカプセル医療装置3′内の磁気誘導コイル5の位置および方向を検出するには、発生する交番磁界の波形データを生成して波形データメモリ10,43に記憶し、第2のカプセル医療装置3′が作動範囲内に存在しない状態で、読み出しタイミングの設定を行う。
生成された磁界波形データは、第1のカプセル医療装置61内のマーカ駆動回路64および磁界発生装置駆動回路42の波形データメモリ10,43にそれぞれ転送される。
【0171】
磁界波形の生成は、図22に示されるように、入力装置26から磁気誘導コイル5の共振周波数f0を入力することにより開始される(ステップS111)。制御回路28は、入力された共振周波数f0をはさみ、該共振周波数f0に対して略等しい周波数だけ離れた一組の周波数f1,f2を、第1のカプセル医療装置61内のマーカコイル62から発生する第1の交番磁界の第1の位置算出用周波数f1,f2として設定する。また、制御回路28は、共振周波数f0を磁気誘導コイル5から発生する第2の交番磁界の第2の位置算出用周波数f0として設定する(ステップS112)。
【0172】
制御回路28は、設定された周波数f0,f1,f2を波形データ生成部27へ転送する(ステップS113)。
波形データ生成部27においては、送られてきた第1の位置算出用周波数f1,f2に基づいて、マーカコイル4から発生する磁界波形が計算される。発生させる磁界は、下式(1)により算出される(ステップS114)。
Bm1=B1×sin(2πf1t)+B2×sin(2πf2t) (1)
ここで、B1,B2は、センスコイル13aの特性に合わせて設定され、センスコイル13aで周波数f1,f2の磁界成分を検出した際に同レベルの信号強度になるように設定されている。(センスコイル13aが理想的コイルであるならば、B1×f1=B2×f2となるように設定する。また、センスコイル13aの周波数特性をあらかじめ測定しておき、その特性に合わせてB1,B2を設定してもよい。)
【0173】
また、波形データ生成部27は、磁界発生装置41から発生させる磁界波形を計算する。発生させる磁界は、下式(2″)により算出される(ステップS115)。
BG=B3×sin(2πf0t) (2″)
【0174】
波形データ生成部27において生成された磁界波形Bm1のデータは、制御部7に設けられた送信部63から第1のカプセル医療装置61に設けられた受信部66へ送信される。受信部66で受信された磁界波形データは、波形データメモリ10に記憶される(ステップS116)。また、磁界波形BGのデータは、磁界発生装置駆動回路42の波形データメモリ43に記憶される(ステップS117)。
【0175】
次に、読出タイミング生成器67における読み出しタイミングの設定について、図23を参照して以下に説明する。
第1のカプセル医療装置61が体腔内に投入され、第2のカプセル医療装置3′が体腔内に投入されていない状態で、入力装置26から読み出しタイミングの設定の指示が入力されることにより開始される(ステップS121)。
【0176】
制御回路28は、磁界発生装置駆動回路42および読出しタイミング生成器67に対してトリガ信号を発生するようにトリガ発生器31に指示を与える。これによりトリガ発生器31からトリガ信号が発せられる(ステップS122)。
トリガ信号を受けた磁界発生装置駆動回路42は、波形データメモリ43内に記憶されている磁界波形BGのデータに基づいて、磁界発生駆動信号をクロック29のクロック信号に同期して順次生成し、磁界発生装置41に出力する。磁界発生装置41は入力された磁界発生駆動信号により第2の交番磁界を発生する(ステップS123)。
【0177】
受信回路13bは、各センスコイル13aで検出した磁界発生装置41からの第2の交番磁界に係る磁界信号を受信して、ローパスフィルタ処理、増幅処理およびバンドパスフィルタ処理を行った後に、クロック29のクロック信号に同期してA/D変換を行う(ステップS124)。
【0178】
A/D変換された磁界信号は、位置計算部14の第1のメモリ19に記憶される(ステップS125)。そして、周波数解析処理を行うのに必要なデータ数が第1のメモリ19内に蓄積されたか否かが判断され、蓄積された場合にはFFT処理回路20により周波数解析処理が行われる(ステップS126)。
【0179】
周波数解析処理の結果に基づいて、周波数選択部24は、磁界発生装置41から発生させた第2の交番磁界の周波数である第2の位置算出用周波数f0の磁界情報(第2の検出磁界成分)のみを抽出して第3のメモリ25に記憶する(ステップS127)。ここで、磁界情報は、周波数解析処理の結果の虚数部の値である。
【0180】
制御回路28は、第3のメモリ25に記憶された磁界情報を読み出し、虚数部の値を内部メモリに記憶する(ステップS128)。そして、制御回路28は読出タイミング生成器67において生成する読み出しタイミングを1クロック分遅らせる指示を読出タイミング生成器67に送る(ステップS129)。
【0181】
その後、ステップS122〜S129を繰り返しながら、制御回路28は、第3のメモリ25に記憶された磁界情報の虚数部と、内部メモリに記憶されている虚数部とを比較する。そして、制御回路28は、ステップS128で記憶する周波数解析処理結果の虚数部の値が最もゼロに近くなる読み出しタイミングを実測定に使用する読み出しタイミングとして読出タイミング生成器67に設定する(ステップS130)。
以上により、読み出しタイミングの設定が完了する。これにより、周波数解析処理結果の虚数部には、磁界発生装置41からの磁界情報がない状態を実現できる。
【0182】
次に、実測定は、図24に示されるように、体腔内に第1,第2のカプセル医療装置61,3′が配置された状態で(ステップS131)、入力装置26において実測定の開始が指示されることにより開始される(ステップS132)。
制御回路28は、トリガ発生器31にマーカ駆動回路64、磁界発生装置駆動回路42および読出しタイミング生成器67へのトリガ信号の発生を指示し、トリガ発生器31がトリガ信号を発生する(ステップS133)。
【0183】
マーカ駆動回路64は、波形データメモリ10内に記憶されている波形データに基づいて、磁界発生駆動信号をクロック信号に同期しながら順次生成し、マーカコイル62に出力する。マーカコイル62は入力された磁界発生駆動信号により第1の交番磁界を発生させる(ステップS134)。
【0184】
また、磁界発生装置駆動回路42は、波形データメモリ43内に記憶されている波形データに基づいて、磁界発生駆動信号をクロック信号に同期しながら順次生成し、磁界発生装置41に出力する。磁界発生装置41は入力された磁界発生駆動信号により第2の交番磁界を発生させる(ステップS135)。
【0185】
受信回路13bは、各センスコイル13aで検出したマーカコイル62からの第1の交番磁界および磁界発生装置41からの第2の交番磁界に係る磁界信号をローパスフィルタ処理、増幅処理およびバンドパスフィルタ処理を行った後に、クロック29からのクロック信号に同期してA/D変換を行う(ステップS136)。
【0186】
A/D変換された磁界信号は、位置計算部14の第1のメモリ19に記憶される(ステップS137)。そして、周波数解析処理を行うのに必要なデータ数が第1のメモリ19内に蓄積されたか否かが判断され、蓄積された場合にはFFT処理回路20は、読出タイミング生成器67からの信号に基づき、位置計算部14の第1のメモリ19から信号データを読み出して、周波数解析処理を行う(ステップS138)。
【0187】
その後、この周波数解析処理が全てのセンスコイル13aからのデータに対して行われたか否かが判断され(ステップS139)、全てのセンスコイル13aからのデータが処理されていない場合には、ステップS133〜S138が繰り返される。
【0188】
全てのセンスコイル13aからのデータの周波数解析処理が行われた場合には、図25に示されるように、その処理結果に基づいて、周波数選択部24は、マーカコイル4から発生させた第1の交番磁界の第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界情報のみを抽出し、周波数f1,f2と対応づけて第3のメモリ25に記憶する(ステップS140)。
また、周波数選択部24は、磁界発生装置41から発生させた第2の交番磁界の第2の位置算出用周波数f0における磁界情報のみを抽出し、第3のメモリ25に保存する(ステップS141)。この処理は全てのセンスコイル13aからの磁界信号に対して行われる(ステップS142)。
【0189】
位置方向解析部22は、第3のメモリ25に記憶されている磁界情報のうち、周波数解析処理結果の虚数部(第2の検出磁界成分)を読み出し、該虚数部に基づいて磁気誘導コイル5の位置および方向を算出する(ステップS143)。
周波数解析結果の虚数部は、第2の交番磁界に対してπ/2だけずれた位相を有しているので、これを抽出することにより、第2の交番磁界により発生した誘導磁界の信号を抽出することができる。
算出された磁気誘導コイル5の位置および方向は、制御回路28に送られて、表示装置8により表示されるとともに(ステップS144)、第2のメモリ23に記憶される(ステップS145)。
【0190】
抽出計算部30では、マーカコイル4の位置計算を行うための各センスコイル13aの信号を以下の計算式から抽出する(ステップS146)。
Vm11=Vf1−1+Vf2−1
Vm12=Vf1−2+Vf2−2
・・・
Vm1N=Vf1−N+Vf2−N
【0191】
この場合において、Vm11からVm1Nの計算式の第1項は、第1の位置算出用周波数f1における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm11の計算式の第1項、すなわち周波数f1の1番目のセンスコイル13aによる検出信号には、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界の周波数f1の信号とともに、磁気誘導コイル5がマーカコイル4からの第1の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f1の信号が含まれている。
【0192】
また、Vm11からVm1Nの計算式の第2項は、第1の位置算出用周波数f2における磁界情報(第1の検出磁界成分)に相当する。ここで、Vm11の計算式の第2項、すなわち周波数f2の2番目のセンスコイル13aによる検出信号には、マーカコイル4から出力された第1の交番磁界の周波数f2の信号とともに、磁気誘導コイル5がマーカコイル4からの第1の交番磁界を受けて発生した誘導磁界(第1の交番磁界に係る誘導磁界)の周波数f2の信号が含まれている。
【0193】
ここで、第1の交番磁界に係る誘導磁界の周波数f1,f2の信号は、第1の交番磁界に対する強度の大小関係が互いに異なるとともに、該強度の絶対値が略同一となる特性を有している。これにより、Vm11からVm1Nの計算式の第1項と第2項との加算値、すなわち一組の第1の検出磁界成分の加算値を算出することにより、第1の交番磁界に係る誘導磁界の信号は相殺され、第1の交番磁界の信号は相殺されずに残る。
このようにして、共振周波数f0を挟み、該共振周波数f0から略等しい周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数f1,f2における磁界強度の絶対値を加算することにより、第1の交番磁界に係る誘導磁界の信号を相殺することができる。その結果、第1の交番磁界の信号を容易に抽出することができる。
【0194】
位置方向解析部22は、抽出計算部30で求めたVm11、Vm12、・・・Vm1Nよりマーカコイル4の位置および方向を算出する(ステップS147)。
算出されたマーカコイル4の位置および方向のデータは制御回路28に送られ、表示装置8に表示される(ステップS148)。そして、算出された位置および方向データは第2のメモリ23に蓄えられる(ステップS149)。
【0195】
そして、入力装置26において位置検出終了の指示が入力されたか否かが確認され(ステップS150)、入力された場合には、トリガ発生器31からのトリガ信号の発生を終了させ、位置検出システム1の動作を停止する(ステップS151)。一方、終了の指示が入力されていない場合には、ステップS133に戻り、位置検出動作を継続する。
【0196】
この場合において、磁気誘導コイル5およびマーカコイル4の位置および方向の繰り返し演算における初期値としては、前回に算出され第2のメモリ23に記憶されている磁気誘導コイル5およびマーカコイル4の位置および方向の計算結果が利用される。これにより、繰り返し演算の収束時間を短縮し、位置および方向を迅速に算出することができる。
【0197】
このように、本実施形態に係る位置検出システム1およびこれを用いた位置検出方法によれば、マーカコイル4からの信号と磁気誘導コイル5からの信号とを、両方の信号の位置情報に基づいて完全に分離することができる。その結果、マーカコイル4および磁気誘導コイル5の位置および向き、すなわち、体腔内に挿入した状態の内視鏡装置2の挿入部2aの先端およびカプセル医療装置3の位置および方向を正確に求めることができる。
【0198】
なお、本実施形態においては、第1のカプセル医療装置61に設けられたクロック65と制御部7に設けられたクロック29とは同期するように制御されているので、マーカ駆動回路64が無線で制御される場合であっても、マーカコイル62から発生する第1の交番磁界と磁界発生装置41から発生する第2の交番磁界との位相の関係を維持することができる。
【0199】
また、上記各実施形態における磁界波形の生成の際に設定する位置算出用周波数f1,f2は、図27および数3の関係になるように設定されることが好ましい。
【数3】
【0200】
この場合、磁気誘導コイル5から発生する誘導磁界の強度信号は、周波数f1,f2では同じ強度で極性が逆の信号となっている。このため、実測定においてVf1−1とVf2−1とをそのまま加算することにより、マーカコイル4からの信号成分を残して、磁気誘導コイル5からの信号成分を除去することができる。
【0201】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る位置検出システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1の位置検出システムの詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】図1の位置検出システムを用いた位置検出方法における波形生成動作を説明するフローチャートである。
【図4】図3の位置検出方法における実測定動作の前半を説明するフローチャートである。
【図5】図4の続きの実測定動作を説明するフローチャートである。
【図6】図5の続きの実測定動作を説明するフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る位置検出システムを備える医療装置誘導システムを説明する全体構成図である。
【図8】図7の医療装置誘導システムに用いられるカプセル医療装置の一例を示す縦断面図である。
【図9】図7の医療装置誘導システムに備えられる本実施形態に係る位置検出システムの全体構成を示すブロック図である。
【図10】図9の位置検出システムの詳細な構成を示すブロック図である。
【図11】図9の位置検出システムを用いた位置検出方法におけるキャリブレーション動作を説明するフローチャートである。
【図12】図11の位置検出方法における実測定動作の前半を説明するフローチャートである。
【図13】図12の続きの実測定動作を説明するフローチャートである。
【図14】図13の続きの実測定動作を説明するフローチャートである。
【図15】本発明の第3の実施形態に係る位置検出システムの全体構成を示すブロック図である。
【図16】図15の位置検出システムを用いた位置検出方法におけるキャリブレーション動作を説明するフローチャートである。
【図17】図16の位置検出方法における実測定動作の前半を説明するフローチャートである。
【図18】図17の続きの実測定動作を説明するフローチャートである。
【図19】図18の続きの実測定動作を説明するフローチャートである。
【図20】本発明の第4の実施形態に係る位置検出システムの全体構成を示すブロック図である。
【図21】図20の位置検出システムの詳細な構成を示すブロック図である。
【図22】図21の位置検出システムを用いた位置検出方法における波形生成動作を説明するフローチャートである。
【図23】図22の位置検出方法における読出しタイミングの設定動作を説明するフローチャートである。
【図24】図22の位置検出システムを用いた位置検出方法における実測定動作の前半を説明するフローチャートである。
【図25】図24の続きの実測定動作を説明するフローチャートである。
【図26】図25の続きの実測定動作を説明するフローチャートである。
【図27】各実施形態における位置算出用周波数の設定方法を説明するための磁気誘導コイルを含む共振回路を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0203】
f0 共振周波数(第1の位置算出用周波数)
f1,f2 第1の位置算出用周波数
f3,f4 第2の位置算出用周波数
1,40,50,60 位置検出システム
2 内視鏡装置(内視鏡)
2a 挿入部
3 カプセル医療装置(第2のマーカ)
3′ 第2のカプセル医療装置(カプセル医療装置、第2のマーカ)
4,62 マーカコイル(第1のマーカ)
5 磁気誘導コイル
6 磁界検出部
24 周波数選択部(抽出部)
22 位置方向解析部
30 抽出計算部(抽出部)
41 磁界発生装置(磁界発生部)
61 第1のカプセル医療装置(カプセル医療装置)
71 3軸ヘルムホルツコイルユニット(推進用磁界発生部)
72 ヘルムホルツコイルドライバ(推進用磁界制御部)
100 医療装置誘導システム
150 永久磁石(磁界作用部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの電力供給により、所定の周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数を有する第1の交番磁界を発生する第1のマーカと、
前記一組の第1の位置算出用周波数に挟まれた略中心の周波数を共振周波数とする磁気誘導コイルを搭載した第2のマーカと、
前記第2のマーカの作動範囲の外部に配置され、前記第1の位置算出用周波数において磁界を検出する磁界検出部と、
前記磁界検出部で検出された磁界から、前記一組の第1の位置算出用周波数を有する一組の第1の検出磁界成分の強度の加算値を抽出する抽出部と、
抽出された前記加算値に基づいて前記第1のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出する位置方向解析部とを備える位置検出システム。
【請求項2】
前記一組の第1の位置算出用周波数が、さらに前記共振周波数の近傍の周波数であり、
前記抽出部が、さらに前記磁界検出部で検出された磁界から、前記一組の第1の検出磁界成分の強度の差分を抽出し、
前記位置方向解析部が、さらに前記差分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出する請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項3】
前記第2のマーカの作動範囲の外部に配置され、前記一組の第1の位置算出用周波数を有する第2の交番磁界を発生する磁界発生部を備え、
前記一組の第1の検出磁界成分が、前記第1の交番磁界の発生時に検出された前記第1の位置算出用周波数を有する磁界と前記第1の交番磁界の発生前に検出された前記第1の位置算出用周波数を有する磁界との差分である請求項2に記載の位置検出システム。
【請求項4】
前記第2のマーカの作動範囲の外部に配置され、前記共振周波数の近傍であって前記第1の位置算出用周波数と異なるとともに、前記共振周波数を挟み前記共振周波数に対して所定の周波数だけ離れた一組の第2の位置算出用周波数を有する第2の交番磁界を発生する磁界発生部を備え、
前記磁界検出部が、さらに前記第2の位置算出用周波数において磁界を検出し、
前記抽出部が、さらに前記磁界検出部で検出された磁界から、前記一組の第2の位置算出用周波数を有する一組の第2の検出磁界成分の強度の差分を抽出し、
前記位置方向解析部が、さらに前記差分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出する請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項5】
前記第2のマーカの作動範囲の外部に配置され、前記共振周波数を有する第2の交番磁界を発生する磁界発生部を備え、
前記磁界検出部が、さらに前記共振周波数において磁界を検出し、
前記抽出部が、さらに前記磁界検出部で検出された磁界から、前記共振周波数を有するとともに前記第2の交番磁界の位相に対してπ/2ずれた位相を有する第2の検出磁界成分を抽出し、
前記位置方向解析部が、さらに前記第2の検出磁界成分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出する請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項6】
前記磁気誘導コイルを含む共振回路が、前記第1の位置算出用周波数において、以下の関係式を満たす請求項1から請求項5のいずれかに記載の位置検出システム。
【数1】
【請求項7】
前記第1のマーカが、複数設けられ、
複数の前記第1の位置算出用周波数が、互いに異なる周波数である請求項1から請求項6のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項8】
前記第1のマーカが、内視鏡の先端部に設けられている請求項1から請求項6のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項9】
前記複数の第1のマーカが、内視鏡の挿入部の長手方向に沿って設けられている請求項7に記載の位置検出システム。
【請求項10】
前記第2のマーカが、カプセル医療装置に設けられている請求項1から請求項9に記載の位置検出システム。
【請求項11】
前記第2のマーカが、さらに磁界作用部を備え、
該磁界作用部に作用させる推進用磁界を発生させる推進用磁界発生部と、
前記位置方向解析部により算出された前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方に基づいて、前記推進用磁界の強度および方向を制御する推進用磁界制御部とを備える請求項2から請求項10のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項12】
外部からの電力供給により、第1のマーカが所定の周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数を有する第1の交番磁界を発生する磁界発生ステップと、
磁気誘導コイルを搭載した第2のマーカが前記第1の交番磁界を受けて誘導磁界を発生する誘導磁界発生ステップと、
前記第1の位置算出用周波数において磁界を検出する磁界検出ステップと、
検出された磁界から、前記一組の第1の位置算出用周波数を有する一組の第1の検出磁界成分の強度の加算値を抽出する抽出ステップと、
抽出された前記加算値に基づいて前記第1のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出する位置方向解析ステップとを有する位置検出方法。
【請求項13】
前記抽出ステップが、検出された磁界から、前記一組の第1の検出磁界成分の強度の差分を抽出するステップを含み、
前記位置方向解析ステップが、さらに抽出された前記差分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出するステップを含む請求項12に記載の位置検出方法。
【請求項14】
前記磁界発生ステップが、前記一組の第1の位置算出用周波数を有する第2の交番磁界を発生するステップを含み、
前記誘導磁界発生ステップが、前記第2のマーカが前記第2の交番磁界を受けて誘導磁界を発生するステップを含み、
前記一組の検出磁界成分が、前記第1の交番磁界の発生時に検出された前記第1の位置算出用周波数を有する磁界と前記第1の交番磁界の発生前に検出された前記第1の位置算出用周波数を有する磁界との差分である請求項13に記載の位置検出方法。
【請求項15】
前記磁界発生ステップが、前記一組の第1の位置算出用周波数の近傍の一組の第2の位置算出用周波数を有する第2の交番磁界を発生するステップを含み、
前記磁界検出ステップが、さらに前記第2の位置算出用周波数において磁界を検出するステップを含み、
前記抽出ステップが、検出された磁界から、前記一組の第2の位置算出用周波数を有する一組の第2の検出磁界成分の強度の差分を抽出するステップを含み、
前記位置方向解析ステップが、さらに抽出された前記差分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出するステップを含む請求項12に記載の位置検出方法。
【請求項16】
前記磁界発生ステップが、前記共振周波数を有する第2の交番磁界を発生するステップを含み、
前記磁界検出ステップが、さらに前記共振周波数において磁界を検出するステップを含み、
前記抽出ステップが、検出された磁界から、前記共振周波数を有するとともに前記第2の交番磁界の位相に対してπ/2ずれた位相を有する第2の検出磁界成分を抽出するステップを含み、
前記位置方向解析ステップが、さらに抽出された前記第2の検出磁界成分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出する請求項12に記載の位置検出方法。
【請求項1】
外部からの電力供給により、所定の周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数を有する第1の交番磁界を発生する第1のマーカと、
前記一組の第1の位置算出用周波数に挟まれた略中心の周波数を共振周波数とする磁気誘導コイルを搭載した第2のマーカと、
前記第2のマーカの作動範囲の外部に配置され、前記第1の位置算出用周波数において磁界を検出する磁界検出部と、
前記磁界検出部で検出された磁界から、前記一組の第1の位置算出用周波数を有する一組の第1の検出磁界成分の強度の加算値を抽出する抽出部と、
抽出された前記加算値に基づいて前記第1のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出する位置方向解析部とを備える位置検出システム。
【請求項2】
前記一組の第1の位置算出用周波数が、さらに前記共振周波数の近傍の周波数であり、
前記抽出部が、さらに前記磁界検出部で検出された磁界から、前記一組の第1の検出磁界成分の強度の差分を抽出し、
前記位置方向解析部が、さらに前記差分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出する請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項3】
前記第2のマーカの作動範囲の外部に配置され、前記一組の第1の位置算出用周波数を有する第2の交番磁界を発生する磁界発生部を備え、
前記一組の第1の検出磁界成分が、前記第1の交番磁界の発生時に検出された前記第1の位置算出用周波数を有する磁界と前記第1の交番磁界の発生前に検出された前記第1の位置算出用周波数を有する磁界との差分である請求項2に記載の位置検出システム。
【請求項4】
前記第2のマーカの作動範囲の外部に配置され、前記共振周波数の近傍であって前記第1の位置算出用周波数と異なるとともに、前記共振周波数を挟み前記共振周波数に対して所定の周波数だけ離れた一組の第2の位置算出用周波数を有する第2の交番磁界を発生する磁界発生部を備え、
前記磁界検出部が、さらに前記第2の位置算出用周波数において磁界を検出し、
前記抽出部が、さらに前記磁界検出部で検出された磁界から、前記一組の第2の位置算出用周波数を有する一組の第2の検出磁界成分の強度の差分を抽出し、
前記位置方向解析部が、さらに前記差分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出する請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項5】
前記第2のマーカの作動範囲の外部に配置され、前記共振周波数を有する第2の交番磁界を発生する磁界発生部を備え、
前記磁界検出部が、さらに前記共振周波数において磁界を検出し、
前記抽出部が、さらに前記磁界検出部で検出された磁界から、前記共振周波数を有するとともに前記第2の交番磁界の位相に対してπ/2ずれた位相を有する第2の検出磁界成分を抽出し、
前記位置方向解析部が、さらに前記第2の検出磁界成分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出する請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項6】
前記磁気誘導コイルを含む共振回路が、前記第1の位置算出用周波数において、以下の関係式を満たす請求項1から請求項5のいずれかに記載の位置検出システム。
【数1】
【請求項7】
前記第1のマーカが、複数設けられ、
複数の前記第1の位置算出用周波数が、互いに異なる周波数である請求項1から請求項6のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項8】
前記第1のマーカが、内視鏡の先端部に設けられている請求項1から請求項6のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項9】
前記複数の第1のマーカが、内視鏡の挿入部の長手方向に沿って設けられている請求項7に記載の位置検出システム。
【請求項10】
前記第2のマーカが、カプセル医療装置に設けられている請求項1から請求項9に記載の位置検出システム。
【請求項11】
前記第2のマーカが、さらに磁界作用部を備え、
該磁界作用部に作用させる推進用磁界を発生させる推進用磁界発生部と、
前記位置方向解析部により算出された前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方に基づいて、前記推進用磁界の強度および方向を制御する推進用磁界制御部とを備える請求項2から請求項10のいずれかに記載の位置検出システム。
【請求項12】
外部からの電力供給により、第1のマーカが所定の周波数だけ離れた一組の第1の位置算出用周波数を有する第1の交番磁界を発生する磁界発生ステップと、
磁気誘導コイルを搭載した第2のマーカが前記第1の交番磁界を受けて誘導磁界を発生する誘導磁界発生ステップと、
前記第1の位置算出用周波数において磁界を検出する磁界検出ステップと、
検出された磁界から、前記一組の第1の位置算出用周波数を有する一組の第1の検出磁界成分の強度の加算値を抽出する抽出ステップと、
抽出された前記加算値に基づいて前記第1のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出する位置方向解析ステップとを有する位置検出方法。
【請求項13】
前記抽出ステップが、検出された磁界から、前記一組の第1の検出磁界成分の強度の差分を抽出するステップを含み、
前記位置方向解析ステップが、さらに抽出された前記差分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出するステップを含む請求項12に記載の位置検出方法。
【請求項14】
前記磁界発生ステップが、前記一組の第1の位置算出用周波数を有する第2の交番磁界を発生するステップを含み、
前記誘導磁界発生ステップが、前記第2のマーカが前記第2の交番磁界を受けて誘導磁界を発生するステップを含み、
前記一組の検出磁界成分が、前記第1の交番磁界の発生時に検出された前記第1の位置算出用周波数を有する磁界と前記第1の交番磁界の発生前に検出された前記第1の位置算出用周波数を有する磁界との差分である請求項13に記載の位置検出方法。
【請求項15】
前記磁界発生ステップが、前記一組の第1の位置算出用周波数の近傍の一組の第2の位置算出用周波数を有する第2の交番磁界を発生するステップを含み、
前記磁界検出ステップが、さらに前記第2の位置算出用周波数において磁界を検出するステップを含み、
前記抽出ステップが、検出された磁界から、前記一組の第2の位置算出用周波数を有する一組の第2の検出磁界成分の強度の差分を抽出するステップを含み、
前記位置方向解析ステップが、さらに抽出された前記差分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出するステップを含む請求項12に記載の位置検出方法。
【請求項16】
前記磁界発生ステップが、前記共振周波数を有する第2の交番磁界を発生するステップを含み、
前記磁界検出ステップが、さらに前記共振周波数において磁界を検出するステップを含み、
前記抽出ステップが、検出された磁界から、前記共振周波数を有するとともに前記第2の交番磁界の位相に対してπ/2ずれた位相を有する第2の検出磁界成分を抽出するステップを含み、
前記位置方向解析ステップが、さらに抽出された前記第2の検出磁界成分の強度に基づいて前記第2のマーカの位置および方向の少なくとも一方を算出する請求項12に記載の位置検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2008−284303(P2008−284303A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134643(P2007−134643)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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