説明

位置検出装置およびスロットル弁装置

【課題】磁界検出式の位置検出センサを有する位置検出装置において、部品を追加することなく、外乱磁界の影響を低減することにある。
【解決手段】スロットル弁装置1に組み付けられて、スロットル弁を保持するシャフトの回転角度を測定する回転角度検出装置5は、シャフトの回転角度を磁界検出により検出する位置検出センサ20と、位置検出センサ20と電気的に接続するターミナル21と、位置検出センサ20と外部環境とを隔てるセンサカバー11とを備え、ターミナル21の位置検出センサ20近傍に配される部分にはNiめっきが施されている。これによれば、Niは強磁性体であるため、位置検出センサ20近傍のターミナル21にNiめっきをすることで、ターミナル21が外乱磁界を遮断する磁気遮蔽体として機能する。つまり、別部品を追加することなく、外乱磁界の影響を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転角度や移動体の位置またはストローク量等を検出するための位置検出装置、および、この位置検出装置を有するスロットル弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、磁界の検出によって、シャフトの回転角度を検出する位置検出センサを有する位置検出装置がある。
位置検出センサとして、例えば、シャフトに固定された永久磁石と、永久磁石と非接触状態で配される磁気センサとを有するものがある。
【0003】
そして、特許文献1には、磁気センサに影響を与える外部環境からの外乱磁界を遮断するために、センサカバーとは別に磁気遮蔽板という部品を追加する技術が開示されている。
しかしながら、このような部品の追加は、コストが嵩む上、装置の体格が大きくなってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−155374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、磁界検出式の位置検出センサを有する位置検出装置において、部品を追加することなく、外乱磁界の影響を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔請求項1の手段〕
請求項1に記載の位置検出装置は、移動もしくは回動する可動体の位置を磁界検出により検出する位置検出センサと、位置検出センサと電気的に接続するターミナルと、位置検出センサと外部環境とを隔てるセンサカバーとを備える。
そして、ターミナルは、センサカバー内に配され、ターミナルの位置検出センサ近傍に配される部分にはNiめっきが施されている。
【0007】
これによれば、Niは強磁性体であるため、位置検出センサ近傍のターミナルにNiめっきをすることで、ターミナルが外乱磁界を遮断する磁気遮蔽体として機能する。
つまり、別部品を追加することなく、外乱磁界の影響を低減することができる。
【0008】
〔請求項2の手段〕
請求項2に記載の位置検出装置は、移動もしくは回動する可動体の位置を磁界検出により検出する位置検出センサと、位置検出センサと電気的に接続するプリント基板と、位置検出センサと外部環境とを隔てるセンサカバーとを備える。
そして、プリント基板は、センサカバー内に配され、プリント基板の位置検出センサ側を向く面を表面とすると、プリント基板の表面または裏面にはNiめっきが施されている。
【0009】
これによれば、Niは強磁性体であるため、プリント基板にNiめっきをすることで、プリント基板が外乱磁界を遮断する磁気遮蔽体として機能する。
つまり、別部品を追加することなく、外乱磁界の影響を低減することができる。
【0010】
〔請求項3の手段〕
請求項3に記載の位置検出装置によれば、可動体は回動するシャフトであって、センサカバーは、シャフトを収容するケースに形成される開口を塞ぐように配され、位置検出センサは、センサカバーとケースとの間に形成される空間に配されている。
【0011】
〔請求項4の手段〕
請求項4に記載の位置検出装置によれば、シャフトは、流路を開閉するバルブを保持しており、ケースは、バルブを収容し、流路の一部を形成するバルブボディである。
【0012】
〔請求項5の手段〕
請求項5に記載のスロットル弁装置は、請求項1または2に記載の位置検出装置と、内燃機関の吸気通路の一部を形成するスロットルボディと、スロットルボディに回動自在に保持される可動体としてのシャフトと、シャフトに保持されて吸気通路を開閉するスロットル弁とを備える。
スロットルボディは、開口を有するとともに、シャフトの一端が突出する空間を形成するハウジング部を有し、センサカバーは、開口を塞ぐように配され、ハウジング部とセンサカバーとの間に形成される空間に位置検出センサが配されている。
これによれば、スロットル弁装置に組みつけられる位置検出装置において、外乱磁界の影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】スロットル弁装置の全体構成を示した断面図である(実施例1)。
【図2】センサカバーを外側から見た平面図である(実施例1)。
【図3】スロットル弁装置の全体構成を示した断面図である(実施例2)。
【図4】センサカバーを外側から見た平面図である(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態の位置検出装置は、例えば、スロットル弁装置に組み付けられるものであって、回動するシャフトの回転角度を磁界検出により検出する位置検出センサと、位置検出センサと電気的に接続するターミナルと、位置検出センサと外部環境とを隔てるセンサカバーとを備える。そして、ターミナルは、センサカバー内に配され、ターミナルの位置検出センサ近傍に配される部分にはNiめっきが施されている。
【実施例】
【0015】
〔実施例1の構成〕
実施例1のスロットル弁装置1の構成を、図1、2を用いて説明する。
スロットル弁装置1は、例えば自動車等の車両に搭載されて、運転者のアクセル操作量に基づいて、内燃機関の各気筒の燃焼室内へ供給する吸入空気量を変更するものである。
【0016】
スロットル弁装置1は、内燃機関の吸気通路の一部を形成するスロットルボディ2と、スロットルボディ2に回動自在に保持されるシャフト3(可動体)と、シャフトに保持されて吸気通路を開閉するスロットル弁4と、シャフト3を回動駆動するための駆動手段と、シャフト3の回転角度を検出する回転角度検出装置5(位置検出装置)とを備える。
なお、本実施例のスロットル弁4は、運転者のアクセル操作量に応じて駆動されるバタフライ弁方式のものである。
【0017】
スロットルボディ2は、金属により形成され、吸気通路を形成するとともにスロットル弁4を収容する筒部9と、シャフト3の一端が突出する空間を形成するハウジング部10とを有する。
ハウジング部10はシャフト3の延びる方向に開口する開口を有しており、この開口は樹脂製のセンサカバー11によって塞がれて、センサカバー11とハウジング部10との間に形成される空間12にシャフト3の一端が突出している。
【0018】
なお、本実施例の駆動手段は、電動モータ15と、電動モータ15の駆動力をスロットル弁4に伝達するギヤとを有している。ギヤは、電動モータ15の出力軸の外周に固定されたピニオンギヤ(図示せず)、ピニオンギヤと噛み合って回転する中間減速ギヤ16、中間減速ギヤ16と噛み合ってシャフト3と一体に回転するバルブギヤ17である。
駆動手段は、センサカバー11とハウジング部10との間に形成される空間12に収容されており、センサカバー11は、ギヤのカバーとしても機能している。
【0019】
回転角度検出装置5は、シャフト3の回転角度を磁界検出により検出する位置検出センサ20と、位置検出センサ20と電気的に接続するターミナル21と、位置検出センサ20と外部環境とを隔てるセンサカバー11とを備える。
位置検出センサ20は、空間12内に突出するシャフト3に固定される永久磁石と、永久磁石によって磁化されるヨーク(図示せず)とからなる筒状の磁気回路部24と、磁気回路部24内に非接触状態で配される磁気検出部25とからなっている。
【0020】
磁気回路部24は、シャフト3に固定されたバルブギヤ17に設けられている。
磁気検出部25は、筒状の磁気回路部24内に配されるステータコア28と、ステータコア28を通過する磁束密度を検出するホールIC29とからなっている。なお、ステータコア28は、ホールIC29への磁束を集中させるためのものであり、例えば、有底円筒形状を呈している。
【0021】
ステータコア28は、センサカバー11にインサート成形されており、底側がシャフト側に、開口側がセンサカバー11側に向くように配されている。そして、ステータコア28内には、2つのホールIC29が収容されており、それぞれ端子31がセンサカバー11側に延びるように配されている。
【0022】
ターミナル21は、センサカバー11にインサート成形されており、ホールIC29と電気的に接続するためのターミナル21は一端がセンサカバー11から露出して、ステータコア28内に突出している。
例えば、本実施例では、ホールIC29と接続するターミナル21は4本である。すなわち、ホールIC29はそれぞれGND、電源、出力の3つの端子31を有しているが、GNDと電源を共通化しているため、ターミナル21は、GND、電源、各ホールICの出力の4本となっている。
ターミナル21の他端は、センサカバー11と一体に形成される筒状のコネクタボディ32内に突出しており、外部機器との接続のためのコネクタを構成している。
【0023】
〔実施例1の特徴〕
本実施例の回転角度検出装置5では、ターミナル21の位置検出センサ20近傍に配される部分にはNiめっきが施されている。
図2は、図1のスロットル弁装置1をセンサカバー11の外側からシャフト3が延びる方向へ見た平面図である。つまり、図2において、紙面奥行き方向がシャフト3の延びる方向(シャフト方向)である。
図2に示すように、シャフト方向から見て、ターミナル21は磁気検出部25の周囲に形成されている。そして、磁気検出部25の周囲に配されている磁気回路部24(図2には図示せず)は、ターミナル21をシャフト方向に投影した領域内に存在する。
【0024】
つまり、ホールIC29に接続する4本のターミナル21の外縁に囲まれる範囲内に、位置検出センサ20(磁気回路部24と磁気検出部25)が位置するように、ターミナル21の形状及び位置が設定されている。
そして、各ターミナル21には、Niめっきが施されている。図2では、Niめっきが施された範囲をハッチングで示している。本実施例では、ターミナル21の位置検出センサ20近傍に配される部分を含め、ターミナル21全体にNiめっきが施されている。
【0025】
〔実施例1の作用効果〕
実施例1の回転角度検出装置5によれば、ターミナル21の位置検出センサ20近傍に配される部分にはNiめっきが施されている。
これによれば、Niは強磁性体であるため、外部環境からの磁界(外乱磁界)に対して集磁効果がある。このため、位置検出センサ20近傍のターミナル21にNiめっきをすることで、ターミナル21が外乱磁界を遮断する磁気遮蔽体として機能する。
つまり、別部品を追加することなく、外乱磁界の影響を低減することができる。
また、ターミナル21にNiめっきを施すことで、耐腐食性も向上する。
【0026】
なお、本実施例では、磁気回路部24がターミナル21をシャフト方向に投影した領域内に存在するように、ターミナル21の形状及び位置が設定されていたが、磁気回路部24の一部がその領域からはみ出していてもよい。少なくとも磁気回路部24の一部がその領域に存在していることが好ましい。
【0027】
〔実施例2の構成〕
実施例1のスロットル弁装置1の構成を、実施例1とは異なる点を中心に、図3、図4を用いて説明する。
本実施例の回転角度検出装置5は、ホールIC29と電気的に接続するプリント基板34を有し、プリント基板34を介してホールIC29とターミナル21とが電気的に接続している。
プリント基板34及びターミナル21は、センサカバー11にインサート成形されている。
【0028】
プリント基板34の表面35には、銅プリントにより配線パターンが形成されており、ホールIC29の端子31及び各ターミナル21が接続している。そして、銅プリントによる配線パターンによってホールIC29とターミナル21とが電気的に接続している。
プリント基板34の裏面36には、面全体に銅めっきが施されており、スルーホールによって表面35のGND配線パターンと接続されている。
【0029】
図3に示すように、プリント基板34は、プリント基板34の表面35が位置検出センサ20側を向くように配されている。すなわち、プリント基板34が、少なくとも磁気検出部25を外側から塞ぐように配されており、図4に示すように、プリント基板34をシャフト方向に投影した領域内に、磁気検出部25が存在する。
そして、プリント基板34の裏面36には、銅めっきの上からNiめっきが全面に施されている。
【0030】
〔実施例2の作用効果〕
本実施例の回転角度検出装置5は、ホールIC29と電気的に接続するプリント基板34を有し、プリント基板34にはNiめっきが全面に施されている。
Niは強磁性体であるため、プリント基板34にNiめっきをすることで、プリント基板34が外乱磁界を遮断する磁気遮蔽体として機能する。
つまり、別部品を追加することなく、外乱磁界の影響を低減することができる。
また、ターミナル21にNiめっきを施すことで、耐腐食性も向上する。
【0031】
なお、本実施例では、プリント基板34をシャフト方向に投影した領域内に、磁気検出部25が存在していたが、磁気回路部24もこの領域に含まれていることが磁気遮蔽効果の観点から好ましい。
また、本実施例では、プリント基板34の表面35に配線パターンが形成されているため、Niめっきを裏面36に施したが、プリント基板34の裏面36に配線パターンが形成されている場合には、Niめっきを表面35に施してもよい。
【0032】
〔変形例〕
回転角度検出装置5の態様は、実施例に限定されず、様々な変形例を考えることができる。
例えば、実施例1、2ではターミナル21やプリント基板34がセンサカバー11にインサート成形されていたが、ターミナル21やプリント基板34がセンサカバー11の樹脂内ではなく、センサカバー11の内側(センサカバー11と位置検出センサ20との間)に配されていてもよい。
【0033】
また、実施例1、2の位置検出センサ20では、ホールIC29によって磁束変化を検出することで位置を検出していたが、ホール素子であってもよい。位置検出センサ20は、磁界の検出によって位置を検出するセンサであればよく、また、例えば、磁気抵抗素子によって磁気抵抗の変化を検出することで位置を検出する態様であってもよい。また、インダクティブ式の位置検出センサであってもよい。
【0034】
また、実施例1、2の位置検出装置は、スロットル弁装置に限らず、様々な装置に適用できる。例えば、アクセルペダル装置に適用し、アクセルペダルの踏み込み量を検出するのに用いてもよい。また、その他にも、様々な弁装置にも適用可能である。
【0035】
また、実施例1、2の位置検出装置は、回転角度を検出する回転角度検出装置5であったが、ストロークを検出するものであってもよい。
例えば、車両用のシフトレバーのシフト位置を検出するのに用いられる位置検出装置であってもよい。つまり、例えば、シフトバイワイヤー方式のシフトレバー装置に、本発明の位置検出装置を適用してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 スロットル弁装置
2 スロットルボディ(ケース、バルブボディ)
3 シャフト(可動体)
4 スロットル弁(バルブ)
5 回転角度検出装置(位置検出装置)
10 ハウジング部
11 センサカバー
12 空間
20 位置検出センサ
21 ターミナル
34 プリント基板
35 表面
36 裏面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動もしくは回動する可動体の位置を磁界検出により検出する位置検出センサと、
前記位置検出センサと電気的に接続するターミナルと、
前記位置検出センサと外部環境とを隔てるセンサカバーとを備え、
前記ターミナルは、前記センサカバー内に配され、
前記ターミナルの位置検出センサ近傍に配される部分にはNiめっきが施されている位置検出装置。
【請求項2】
移動もしくは回動する可動体の位置を磁界検出により検出する位置検出センサと、
前記位置検出センサと電気的に接続するプリント基板と、
前記位置検出センサと外部環境とを隔てるセンサカバーとを備え、
前記プリント基板は、前記センサカバー内に配され、
前記プリント基板の前記位置検出センサ側を向く面を表面とすると、前記表面または裏面にはNiめっきが施されている位置検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の位置検出装置において、
前記可動体は、回動するシャフトであって、
前記センサカバーは、前記シャフトを収容するケースに形成される開口を塞ぐように配され、
前記位置検出センサは、前記センサカバーと前記ケースとの間に形成される空間に配されていることを特徴とする位置検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の位置検出装置において、
前記シャフトは、流路を開閉するバルブを保持しており、
前記ケースは、前記バルブを収容し、前記流路の一部を形成するバルブボディであることを特徴とする位置検出装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の位置検出装置と、
内燃機関の吸気通路の一部を形成するスロットルボディと、
前記スロットルボディに回動自在に保持される前記可動体としてのシャフトと、
前記シャフトに保持されて前記吸気通路を開閉するスロットル弁とを備え、
前記スロットルボディは、開口を有するとともに、前記シャフトの一端が突出する空間を形成するハウジング部を有し、
前記センサカバーは、前記開口を塞ぐように配され、
前記ハウジング部と前記センサカバーとの間に形成される空間に前記位置検出センサが配されていることを特徴とするスロットル弁装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−24645(P2013−24645A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157910(P2011−157910)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】