説明

位置検出装置及びシフトレバー装置

【課題】故障対応のために重系をとっても、検出手段の個数を少なく抑えることができる位置検出装置及びシフトレバー装置を提供する
【解決手段】2重系の第1位置検知MR素子11a,11bと、同じく2重系の第2位置検知MR素子12a,12bとを設けて、シフトレバーの操作方向を検出する。また、これら素子の中間位置に、1つの移動検知MR素子13を設けて、シフトレバーの移動有無を検出する。これにより、2重系の下、シフトレバーの位置を上中下の3位置で検出する。移動検知MR素子13は単にシフトレバーの移動有無を検出できればよいので、単なる1つのMR素子1で済む。よって、位置検出装置5を2重系3位置検出としても、従来のところMR素子1が6個必要であったのが、合計5個で済み、MR素子1を1つ削減することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部材の位置を検出する位置検出装置及びシフトレバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品が移動した際の位置を見る位置検出技術(特許文献1,2等参照)が種々開発されている。この種の位置検出装置としては、検出素子として例えば磁気センサや光センサを使用し、これら検出素子から出力されるセンサ信号がHレベル又はLレベルのどちらをとるのかを見ること、つまりその時々のセンサ信号自体がどのような値をとっているのかのみを見ることにより、物品の位置を検出する。
【0003】
また、この種の位置検出装置では、検出素子が故障しても継続して位置検出が可能となるように、検出素子を複数搭載して重系にする場合がある。ところで、位置検出装置において重系数をnとし、検出可能位置をmとすると、必要となる検出素子の総数は、単純構成の場合、n×m個必要となることが知られている。よって、例えば検出素子を2重系とし、検出可能位置を3位置とすると、単純構成では、検出素子が合計6(=2×3)個必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−154868号公報
【特許文献2】特開2005−36837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、検出素子を重系に組むということは、複数の検出素子を搭載することになるので、検出素子を多数用意する必要がある。このように、検出素子が多く必要となると、その分だけ装置サイズが大型化したり、或いは装置コストがアップしたりする問題に繋がるので、検出素子の搭載個数をなるべく少なく抑えたいニーズがあった。
【0006】
本発明の目的は、故障対応のために重系をとっても、検出手段の個数を少なく抑えることができる位置検出装置及びシフトレバー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するために、本発明では、操作部材の操作位置を検出する位置検出装置において、前記操作部材を操作した際に、自身に対して動く被検出部材との間の相対位置を検出する検出手段を、前記操作部材の操作経路上に複数設けたメイン検出ユニットと、 故障対応をとるために前記メイン検出ユニットのサブとして設けられたサブ検出ユニットと、前記操作部材が動いたか否かを単に見るための1つの移動有無検出手段と、前記した2つの検出ユニット及び前記移動有無検出手段からの出力を基に、前記操作部材の位置を判定する位置判定手段とを備えたことを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、故障対応のためにメイン検出ユニットをサブ検出ユニットによって重系とし、これら対の検出ユニットにより故障の有無を見ながら、検出ユニット及び移動有無検出手段の出力を基に操作部材の位置を判定する。ところで、移動有無検出手段は単に操作部材の移動有無を検出できればよいので、検出ユニットのように重系を組む必要はなく、単に1つの検出手段で済む。よって、位置検出に重系を組む場合であっても、移動有無検出手段を単に1部材のみ用意すればよいので、位置検出を故障対応可能としても、装置として合計で用意しなければならない検出手段の個数が少なく済む。
【0009】
本発明では、前記位置判定手段は、複数の前記検出手段及び前記移動有無検出手段の出力うち、少なくとも2つが同時に変化することを確認すると、前記操作部材を操作有りと判定することを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、複数の検出手段及び移動有無検出手段の出力において、少なくとも2つ以上が同時に切り換わって始めて操作部材を操作有りと判定するので、操作部材の操作有無の判定を、より精度よく行うことが可能となる。
【0011】
本発明では、前記検出手段は、交流波形の出力信号を出力し、前記移動有無検出手段は、前記メイン検出ユニット及び前記サブ検出ユニットの前記検出手段と同じ部品種類により構成され、当該検出手段に対して出力の位相が45度傾く向きに配置され、前記位置判定手段は、複数の前記検出手段及び前記移動有無検出手段から取得する前記出力信号のH/Lの組合せから、前記操作部材の位置を判定することを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、移動位置検出手段をメイン検出ユニットやサブ検出ユニットの検出手段と同じものが使用可能となるので、これら検出手段を同一部品で済ますことが可能となる。
【0013】
本発明では、前記検出手段は、その出力が少なくとも2段階以上のレベル変化をとり、前記位置判定手段は、前記操作部材が同一方向に操作された過程で、前記検出手段の出力が、ある時間幅を満たした2段階以上のレベル変化をとることを確認すると、前記操作部材を操作有りと判定することを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、検出手段の出力が所定時間幅を満たしながら2段階変化して始めて操作有りと判定するので、単なるH/Lの変化で操作有無を判定する場合に比べて、操作有無を精度よく判定することが可能となる。
【0015】
本発明では、シフトレバーを操作してシフト位置を切り換えるシフトレバー装置において、前記シフトレバーを操作した際に、自身に対して動く被検出部材との間の相対位置を検出する検出手段を、前記シフトレバーの操作経路上に複数設けたメイン検出ユニットと、故障対応をとるために前記メイン検出ユニットのサブとして設けられたサブ検出ユニットと、前記シフトレバーが動いたか否かを単に見るための1つの移動有無検出手段と、前記した2つの検出ユニット及び前記移動有無検出手段からの出力を基に、前記シフトレバーの位置を判定する位置判定手段とを備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、故障対応のために重系をとっても、検出手段の個数を少なく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態におけるシフトレバー装置の外観を示す斜視図。
【図2】MR素子の配置パターンを示す配置図。
【図3】(a)はMR素子の回路構成を示す等価図、(b)はMR素子の出力信号を示す波形図。
【図4】位置検出装置の電気的構成を示すブロック図。
【図5】シフトレバーの位置判定時に使用する位置判定テーブル図。
【図6】シフトレバーを中位置→上位置に操作した際のセンサ出力遷移を示す表。
【図7】シフトレバーを上位置→中位置に戻し操作した際のセンサ出力遷移を示す表。
【図8】第1位置検知MR素子が電圧Hi故障した際のセンサ出力遷移を示す表。
【図9】移動検知MR素子が電圧Hi故障した際のセンサ出力遷移を示す表。
【図10】第1及び第2位置検知MR素子がともに電圧Hi故障した際のセンサ出力遷移を示す表。
【図11】(a)は別例におけるシフトレバーの操作態様を示す模式図、(b)はMR素子の配置パターンと、各位置での出力をまとめた表。
【図12】(a)は別例におけるMR素子の回路構成を示す等価図、(b)はその出力信号を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を車両の位置検出装置及びシフトレバー装置に具体化した一実施形態を図1〜図10に従って説明する。
図1に示すように、シフトレバー装置20には、装置本体2に対して移動操作可能なシフトレバー3が設けられている。本例のシフトレバー3は、一直線に延びるゲート4に案内されて直線方向(図1の矢印A方向)に沿って往復動可能に取り付けられるとともに、上位置、中位置、下位置の3位置に操作可能となっている。シフトレバー3の操作位置には、例えばパーキング位置、リバース位置、ニュートラル位置、ドライブ位置等がある。なお、シフトレバー3が操作部材に相当する。
【0019】
図2に示すように、シフトレバー装置20には、シフトレバー3の操作位置を検出する位置検出装置5が設けられている。本例の位置検出装置5は、シフトレバー3の位置を見るセンサとしてMR素子(Magneto Resistive素子)1を使用する。そして、シフトレバー3の移動位置を見るべく2重系に組まれた位置検出用の検出ユニット6,7(図4参照)と、シフトレバー3の移動有無を見る移動検知用の検出ユニット8(図4参照)とにより、シフトレバー3の位置を判定する。MR素子1は、磁気抵抗効果(MRE:Magneto Resistive Effect)によりセンシングを行う磁気センサの一種である。なお、MR素子1が検出手段を構成する。
【0020】
この場合、シフトレバー3には、シフトレバー3が操作された際に、シフトレバー3とともにレバー操作方向Aに沿って移動する磁石21が設けられている。磁石21は、シフトレバー3に取り付けられるとともに、レバー操作方向Aに沿う図2の矢印Ya方向に往復移動される。磁石21は、図2の紙面手前側がN極、紙面奥側がS極となっている。なお、磁石21が被検出部材に相当する。
【0021】
装置本体2においてレバー操作方向Aの上位置側には、磁石21の磁界を検出する第1位置検知MR素子群(以降、単に第1位置検知MR素子11と言う)が設けられている。第1位置検知MR素子11は、素子故障に対応できるように、2つの第1位置検知MR素子11a,11b、つまり1組が2重系に形成されている。これら第1位置検知MR素子11a,11bは、磁石21から放射される磁界が同じ方向で付与されるように、レバー操作方向Aの直交方向に沿って一直線上に並び配置されている。第1位置検知MR素子11a,11bは、11aがメイン位置付けの素子となり、11bがサブ位置付けの素子となっている。なお、第1位置検知MR素子11a,11bが検出手段を構成する。
【0022】
第1位置検知MR素子11a,11b(他のMR素子も同様)は、図3(a)に示すように、4つの磁気抵抗をブリッジ状に組んだ回路(ブリッジ回路)からなり、各組の磁気抵抗の中間端子同士の電位差をセンサ信号Soutとして出力する。また、図3(b)に示すように、第1位置検知MR素子11a,11bは、自身に付与される磁界の変化に伴って出力電圧が交流波形(正弦波)の変化をとるセンサ信号Soutを出力する。センサ信号Soutは、例えば1周期が180度をとる信号となっている。そして、例えばセンサ信号Soutが「0」以上の値をとれば、「H」と検出され、「0」未満の値をとれば、「L」と検出される。なお、センサ信号Soutが出力信号に相当する。
【0023】
図2に示すように、本例の第1位置検知MR素子11a,11bは、磁石21の磁界(磁界方向)によりセンサ出力のHとLとが切り換わる左右方向のラインを出力判定境界ラインLaとすると、この出力判定境界ラインLaがレバー操作方向Aと直交する向きをとるように配置されている。また、これら第1位置検知MR素子11a,11bは、出力のH/Lが同じ向きをとり、互いに対向する磁気感知面において上側が「H」、下側が「L」を向くように配置されている。
【0024】
装置本体2においてレバー操作方向Aの下位置側には、磁石21の磁界を検出する第2位置検知MR素子群(以降、単に第2位置検知MR素子12と言う)が設けられている。第2位置検知MR素子12も、素子故障に対応できるように、2つの第2位置検知MR素子12a,12b、つまり1組が2重系に形成されている。これら第2位置検知MR素子12a,12bも、レバー操作方向Aの直交方向に沿って一直線上に並び配置されている。第2位置検知MR素子12a,12bは、12aがメイン位置付けの素子となり、12bがサブ位置付けの素子となっている。なお、第2位置検知MR素子12a,12bが検出手段を構成する。
【0025】
本例の第2位置検知MR素子12a,12bは、磁石21の磁界(磁界方向)によりセンサ出力のHとLとが切り換わる左右方向のラインを出力判定境界ラインLbとすると、この出力判定境界ラインLbがレバー操作方向Aと直交する向きをとるように配置されている。また、第2位置検知MR素子12a,12bは、出力のH/Lが同じ向きをとり、本例の場合、互いに対向する磁気感知面において上側が「L」、下側が「H」を向くように配置されている。
【0026】
本例の場合、図4に示すように、第1位置検知MR素子11aと第2位置検知MR素子12aとがメイン位置付けの素子となっているので、これら2つの括りがメイン検出ユニット6となる。また、第1位置検知MR素子11bと第2位置検知MR素子12bとがサブ位置付けの素子となっているので、これら2つの括りが第1サブ検出ユニット7となる。なお、第1サブ検出ユニット7がサブ検出ユニットに相当する。
【0027】
図2に示すように、第1位置検知MR素子11aと第2位置検知MR素子12aとの中間位置には、シフトレバー3の移動有無を検出する移動検知MR素子13が設けられている。移動検知MR素子13は、位置検知MR素子11a,12aと同じ素子が使用され、位置検知MR素子11a,12aに対して角度が45度傾く向きに配置されている。即ち、移動検知MR素子13は、自身のH/Lの出力判定境界ラインLcが、出力判定境界ラインLa,Lbに対して45度の傾きで交わる向きに配置されている。また、移動検知MR素子13は、対をなすH出力検知領域の一方が第1位置検知MR素子11aに被り、他方が第2位置検知MR素子12aに被る配置向きもとっている。MR素子11〜13は、図2の紙面において十字線が乗っている面の中心、つまり紙面手前面の中心が感磁面となっている。なお、移動検知MR素子13が第2サブ検出ユニット8と同義である。また、第2サブ検出ユニット8及び移動検知MR素子13が移動有無検出手段を構成する。
【0028】
MR素子11a,11b,12a,12b、13が以上の配置関係をとることにより、シフトレバー3(磁石21)が上位置に位置すると、第1位置検知MR素子11a,11bが「H」を出力し、第2位置検知MR素子12a,12bが「L」を出力し、移動検知MR素子13が「H」を出力する。また、シフトレバー3(磁石21)が中位置に位置すると、第1位置検知MR素子11a,11b、第2位置検知MR素子12a,12b、移動検知MR素子13が全て「L」を出力する。さらに、シフトレバー3(磁石21)が下位置に位置すると、第1位置検知MR素子11a,11bが「L」を出力し、第2位置検知MR素子12a,12bが「H」を出力し、移動検知MR素子13が「H」を出力する。
【0029】
図4に示すように、車両には、各種車載機器を統括制御する車載装置23が設けられている。車載装置23には、各種車載機器に供給する電力を管理する電源24が設けられている。電源24は、車載バッテリの電圧を所定値に変換した後、同電力を各車載機器に供給する。また、電源24は、それぞれ個別のパワー線25を介して、各検出ユニット6〜8に接続されている。よって、これら検出ユニット6〜8は、電源24からそれぞれ個別に電力を取得する。
【0030】
車載装置23には、位置検出装置5のコントロールユニットとしてシフトECU26が設けられている。シフトECU26には、前述した第1位置検知MR素子11a,11b、第2位置検知MR素子12a,12b、移動検知MR素子13が接続されている。そして、シフトECU26は、これらMR素子11a,11b,12a,12b,13から入力するセンサ出力を基にシフトレバー3の位置を判定し、シフトレバー3の操作位置が必要な他のECUに、位置判定結果を出力する。
【0031】
シフトECU26のメモリ27には、シフトレバー3の位置判定の際に使用する位置判定テーブル28が記憶されている。図5に示すように、位置判定テーブル28は、各MR素子11a,11b,12a,12b,13の各々のセンサ出力と、シフトレバー3の各操作位置とを対応付けたテーブルとなっている。なお、位置判定テーブル28が位置判定手段を構成する。
【0032】
シフトECU26には、各MR素子11a,11b,12a,12b,13から求まるセンサ出力を基に位置判定テーブル28を参照して、シフトレバー3の操作位置を判定する位置判定部29が設けられている。本例の位置判定部29は、メイン検出ユニット6及び第1サブ検出ユニット7からのセンサ出力を基にシフトレバー3の操作方向を把握し、第2サブ検出ユニット8からのセンサ出力を基にレバー操作の有無を把握することにより、シフトレバー3が上中下のどの位置にあるのかを判定する。
【0033】
位置判定部29は、セレクト側MR素子10a〜10cを1つの単位としてシフトレバー3の操作位置を判定し、これら3つのセレクト側MR素子10a〜10cのうち、少なくとも2つが同時に切り換わることを確認すると、操作有りと認識する。そして、位置判定部29は、シフトレバー3を操作有りと認識した後、このときのセンサ出力を位置判定テーブル28で確認して、シフトレバー3の位置を判定する。ここで言う同時とは、若干の時間差も広義として含むものとする。なお、位置判定部29が位置判定手段を構成する。
【0034】
次に、本例の位置検出装置5の動作を図6〜図10に従って説明する。
まず、図6に示すように、MR素子11〜13に故障が発生していない状況下で、シフトレバー3を中位置から上位置に操作した場合を想定する。シフトレバー3が中位置にある場合、全てのMR素子11a,11b,12a,12b,13のセンサ出力が「L」となる。よって、位置判定部29は、MR素子11a,11b,12a,12b,13のセンサ出力が全て「L」となることを確認するので、シフトレバー3が中位置にあると判定する。
【0035】
シフトレバー3が中位置から上位置に操作されると、第1位置検知MR素子11a,11bがともに「L」から「H」に変化するとともに、移動検知MR素子13も「L」から「H」に変化する。よって、位置判定部29は、第1位置検知MR素子11a,11b及び移動検知MR素子13の3出力が同時に変化することを確認するので、2つ以上のセンサ出力が同時に変化したことにより、シフトレバー3を操作有りと判定する。また、位置判定部29は、位置判定テーブル28を参照し、このときのセンサ出力のH/L組合せから、シフトレバー3が上位置にあると判定する。
【0036】
続いて、図7に示すように、シフトレバー3が上位置から元の中位置に戻し操作された場合を想定する。シフトレバー3が上位置から中位置に移動すると、第1位置検知MR素子11a,11b及び移動検知MR素子13がともに「H」から「L」に変化する。このとき、位置判定部29は、3つのセンサ出力が同時に切り換わることを確認するので、シフトレバー3を操作有りと判定する。また、位置判定部29は、位置判定テーブル28を参照し、このときのセンサ出力のH/L組合せから、シフトレバー3が中位置にあると判定する。
【0037】
続いて、図8に示すように、シフトレバー3が中位置にある際、第1位置検知MR素子11の1つに、例えばセンサ出力(電圧)がHレベルで固着する故障(電圧Hi故障)が発生した場合を想定する。ここでは、第1位置検知MR素子11aが電圧Hi故障した例を挙げる。第1位置検知MR素子11aが電圧Hi故障すると、故障が発生した時点で、第1位置検知MR素子11aがHレベルで固着する。これにより、第1位置検知MR素子11aからは、Hレベルのセンサ信号Soutしか出力されない状態となる。
【0038】
このとき、第1位置検知MR素子11では、2つの素子のうち11aが「L」から「H」に切り換わってしまう。しかし、本例の場合、少なくとも2つのセンサ出力が同時に切り換わらないとシフトレバー3を操作有りと判定しないので、第1位置検知MR素子11aが1つだけ故障しても、この故障による電圧変化では、レバー操作有りと判定されない。よって、位置判定部29は、シフトレバー3の検出位置を更新せず、そのまま中位置で維持する。
【0039】
この故障状態でシフトレバー3が中位置から上位置に操作されると、第1位置検知MR素子11b及び移動検知MR素子13には故障が発生していないので、これらMR素子11b,13がともに「L」から「H」に切り換わる。このため、位置判定部29は、2つのセンサ出力が同時に切り換わることを確認するので、シフトレバー3を操作有りと判定する。そして、位置判定部29は、このときのセンサ出力のH/L組合せから、シフトレバー3が上位置にあると判定する。よって、第1位置検知MR素子11aが故障しても、誤判定することなくレバー位置が判定される。
【0040】
続いて、図9に示すように、シフトレバー3が中位置にある際、移動検知MR素子13に電圧Hi故障が発生した場合を想定する。移動検知MR素子13が電圧Hi故障すると、この時点で移動検知MR素子13のセンサ出力が「H」に切り換わってしまうが、センサ出力がこれ1つしか変化しないので、シフトレバー3が操作有りと判定されず、シフトレバー3の検出位置が中位置で維持される。
【0041】
そして、この故障状態でシフトレバー3が中位置から上位置に操作されると、第1位置検知MR素子11a,11bはともに故障していないので、これらMR素子11a,11bのセンサ出力がともに「L」から「H」に切り換わる。このため、位置判定部29は、2つのセンサ出力が同時に切り換わることを確認するので、シフトレバー3を操作有りと判定し、このときのセンサ出力の組合せから、シフトレバー3が上位置にあると判定する。よって、移動検知MR素子13が故障しても、誤判定することなくレバー位置が判定される。
【0042】
続いて、図10に示すように、第1位置検知MR素子11a、11bの2つに電圧Hi故障が発生した場合を想定する。ここでは、シフトレバー3が中位置にある状態で、まずは第1位置検知MR素子11aが先に故障し、その後、第1位置検知MR素子11bが故障したとする。最初に第1位置検知MR素子11aが故障すると、その故障時点で第1位置検知MR素子11aのセンサ出力がHレベルで固着する。しかし、本例の場合は、少なくとも2つのセンサ出力が同時に切り換わらないとレバー操作有りと判定されないので、この故障の場合も、レバー操作有りとは判定されない。
【0043】
また、続けて第1位置検知MR素子11bが電圧Hi故障したとすると、その時点で第1位置検知MR素子11bもセンサ出力がHレベルで固着する。しかし、このときも、センサ出力が少なくとも2つ以上同時に変化する状態とならないので、この故障時もレバー操作有りとは判定されない。よって、第1位置検知MR素子11a,11bが、所定の時間差を持って故障したとしても、誤って操作有りとは判定されない。
【0044】
この故障状態でシフトレバー3が中位置から上位置に操作されると、この状況下では移動検知MR素子13のみ故障が発生していないので、移動検知MR素子13のセンサ出力のみが「L」から「H」に変化する。しかし、位置判定部29は、センサ出力が1つしか変化しないことを認識するので、シフトレバー3を操作有りとは判定せず、シフトレバー3の検出位置を、それまでの中位置で維持する。よって、MR素子1が2個故障している状態で、シフトレバー3の検出位置を切り換えてしまうことがない。
【0045】
従って、本例では、2重系をとるメイン検出ユニット6及び第1サブ検出ユニット7を設け、シフトレバー3の操作有無を見るための第2サブ検出ユニット8として移動検知MR素子13を設け、これら検出ユニット6〜8のセンサ出力から、シフトレバー3の位置を判定する。ところで、第2サブ検出ユニット8は単にシフトレバー3の操作有無を見ることができればよいので、本例のようにMR素子を1つ用意すればそれで済む。このため、位置検出に必要となるMR素子1の数が5個で済むので、従来の場合は6個必要となっていたところ必要個数が5個となり、MR素子1を1つ削減することが可能となる。
【0046】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)2重系の2つの検出ユニット6,7を設け、シフトレバー3の移動有無のみを単に見る1つの第2サブ検出ユニット8(移動検知MR素子13)を設けて、2重系3位置検出を可能とした。このため、必要となるMR素子1の個数が合計5つで済むので、従来の6個に対してMR素子1を1つ削減することができる。
【0047】
(2)シフトレバー3の操作有りの判定を、少なくとも2つのセンサ出力が同時に変化することを条件とするので、シフトレバー3の操作有無をより精度よく検出することができる。即ち、MR素子1の単なる1個故障をレバー操作有りとして判定せずに済むので、正しくレバー操作判定を行うことができる。
【0048】
(3)メイン検出ユニット6、第1サブ検出ユニット7及び第2サブ検出ユニット8は全てMR素子1から構成されるので、これら検出ユニット6〜8を全て同じ部品で実現することができる。よって、種類の異なる部品を別々のところから取り寄せずに済むので、その点で利点が高いと言える。
【0049】
(4)各検出ユニット6〜8はそれぞれ独立したパワー線25を介して個別に電源を取得するので、これら検出ユニット6〜8の1つが故障しても、他のものは継続して電源を取得することができる。
【0050】
(5)シフトレバー3が十字方向に操作可能なシフトレバー装置20に本例の位置検出装置5を採用するので、本例のようにシフトレバー3が十字方向に動く装置であっても、より正確に各方向の操作位置を判定することができる。
【0051】
(6)シフトレバー3の操作位置をH/Lの2値により判定するので、アナログ式ではなくデジタル式によってレバー操作位置を判定することができる。
(7)シフトレバー3をモーメンタリ式としたので、シフトレバー3を傾倒操作した後にシフトレバー3から手を離せば、シフトレバー3を操作前のホーム位置に自動で戻すことができる。
【0052】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・シフトレバー3の位置判定は、H及びLの1段階のみの出力変化をとるMR素子1を用いて行うことに限定されない。例えば、図11(a),(b)に示すように、センサ出力がL→M(Middle)→Hのように2段階変化するMR素子1a(いわゆる八方MRセンサとも言う)を用いてシフトレバー3の操作位置を判定してもよい。なお、図11(a),(b)に示すMR素子1aは、対称配置の関係を持って2つ設けられることにより、2重系に形成されている。
【0053】
MR素子1aは、図12(a),(b)に示すように、センサ出力の位相が互いに1/4周期(1/4波長)ずれた一対のブリッジ回路61,62からなり、これらブリッジ回路61,62の2出力がともに「H」をとれば「H」、センサ出力の一方が「H」で他方が「L」をとれば「M」、2出力がともに「L」をとれば「L」と判定される素子である。
【0054】
この場合、MR素子1のセンサ出力が2段階変化して始めて、シフトレバー3が操作されたと判定するので、例えば単にセンサ出力のH/Lの変化を見る場合に比べて、より精度よくシフトレバー3の操作有無を判定することができる。また、操作位置を誤判定する確率も低くなるので、故障対策のためにMR素子1aを重系に配置する場合であっても、素子個数が過剰に多くなることがない。さらに、MR素子1aの個数を少なく抑えることができれば、MR素子1aとシフトECU26とを繋ぐハーネスを削減することもできる。
【0055】
・移動有無検出手段は、MR素子1に限定されず、他の様々な種類のセンサが応用可能である。また、必ずしもセンサに限らず、例えばマイクロスイッチ等のスイッチでもよい。さらに、
・移動有無検出手段は、シフトレバー3自体から移動有無を判定することに限定されない。例えば、シフトレバー3に節度機構が設けられていれば、節度が切り換わる際に節度機構に生じるテンションの変化を利用して、レバー操作有無を検出してもよい。
【0056】
・レバー操作有りの判定条件は、センサ出力が少なくとも2つ以上同時に切り換わることに限定されない。例えば、シフトレバー3の往復移動に合わせて、センサ出力が「L→H→L」や「H→L→H」のように往復変化をとることとしてもよい。
【0057】
・シフトレバー3は、軸を支点に倒れる傾倒式や、レールに沿って直線方向に往復動させるスライド式など、種々のものが採用可能である。
・MR素子1のセンサ出力のH/Lの振り分けは、シフトECU26側で行うことに限らず、素子自体がH又はLの2値信号を直に出力してもよい。
【0058】
・MR素子1は、1周期が180度の交流波形信号を出力する素子に限定されず、1周期が360度や90度をとるものを採用してもよい。
・検出手段は、MR素子1に限らず、例えばGMR(Giant Magneto Registance)やホール素子としてもよい。
【0059】
・検出手段は、磁気センサに限らず、例えば光センサとしてもよい。
・位置判定テーブル28のH/Lの組合せは、MR素子1の配置向きや磁石21の磁界向きに合わせて適宜変更可能である。
【0060】
・レバー操作位置は、位置判定テーブル28を参照して操作位置を特定する方式に限らず、種々の判定方式が採用可能である。
・シフトレバー3は、十字方向に操作可能なものに限定されず、例えば一直線方向にのみ操作可能なものとしてもよい。
【0061】
・シフトレバー3の操作パターンは、小文字英字「h」を左右反転させた形式や、大文字英字「H」の形式などに応用してもよい。
・MR素子1は、2重系に限らず、3重系以上としてもよい。
【0062】
・磁石21がシフトレバー3側に取り付けられ、MR素子1が装置本体2側に取り付けられることに限らず、この組合せを逆にしてもよい。
・3つの検出ユニット6〜7は、それぞれ独立する3本のパワー線25で車載装置23に接続されることに限らず、例えば1本のみのパワー線で接続されてもよい。
【0063】
・位置検出装置5の搭載先は、シフトレバー装置20に限らず、操作部材が可動する他の機器や装置としてもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0064】
(イ)請求項1〜4のいずれかにおいて、前記メイン検出ユニット、前記サブ検出ユニット及び移動有無検出手段は、それぞれ独立したパワー線を介して個別に電源を取得する。この構成によれば、これら3つのどれか1つが故障しても、未故障の他のものに継続して電源を供給することが可能となる。
【0065】
(ロ)請求項1〜4,前記技術的思想(イ)のいずれかにおいて、前記操作部材の操作方向に並ぶ複数の前記検出手段の組は、両者の真ん中を基準として点対称の向きをとって配置されている。
【0066】
(ハ)請求項1〜4,前記技術的思想(イ),(ロ)のいずれかにおいて、前記検出手段は、磁界変化に応じて交流波形の出力信号を出力する第1検出回路と、当該第1検出回路に対して出力の位相が1/4周期ずれた第2検出回路とを備え、これら一対の検出回路の出力のH及びLの組合せにより、前記2段階以上のレベル変化をとる信号を前記出力信号として出力する。
【符号の説明】
【0067】
1…検出手段を構成するMR素子、1a…検出素子を構成するMR素子(八方型)、3…操作部材としてのシフトレバー、5…位置検出装置、6…メイン検出ユニット、7…サブ検出ユニットとしての第1サブ検出ユニット、8…移動有無検出手段を構成する第2サブ検出ユニット、11a,11b…検出手段を構成する第1位置検知MR素子、12a,12b…検出手段を構成する第2位置検知MR素子、13…移動有無検出手段を構成する移動検知MR素子、20…シフトレバー装置、21…被検出部材としての磁石、28…位置判定手段を構成する位置判定テーブル、29…位置判定手段を構成する位置判定部、Sout…出力信号としてのセンサ信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部材の操作位置を検出する位置検出装置において、
前記操作部材を操作した際に、自身に対して動く被検出部材との間の相対位置を検出する検出手段を、前記操作部材の操作経路上に複数設けたメイン検出ユニットと、
故障対応をとるために前記メイン検出ユニットのサブとして設けられたサブ検出ユニットと、
前記操作部材が動いたか否かを単に見るための1つの移動有無検出手段と、
前記した2つの検出ユニット及び前記移動有無検出手段からの出力を基に、前記操作部材の位置を判定する位置判定手段と
を備えたことを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記位置判定手段は、複数の前記検出手段及び前記移動有無検出手段の出力うち、少なくとも2つが同時に変化することを確認すると、前記操作部材を操作有りと判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記検出手段は、交流波形の出力信号を出力し、
前記移動有無検出手段は、前記メイン検出ユニット及び前記サブ検出ユニットの前記検出手段と同じ部品種類により構成され、当該検出手段に対して出力の位相が45度傾く向きに配置され、
前記位置判定手段は、複数の前記検出手段及び前記移動有無検出手段から取得する前記出力信号のH/Lの組合せから、前記操作部材の位置を判定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記検出手段は、その出力が少なくとも2段階以上のレベル変化をとり、
前記位置判定手段は、前記操作部材が同一方向に操作された過程で、前記検出手段の出力が、ある時間幅を満たした2段階以上のレベル変化をとることを確認すると、前記操作部材を操作有りと判定する
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の位置検出装置。
【請求項5】
シフトレバーを操作してシフト位置を切り換えるシフトレバー装置において、
前記シフトレバーを操作した際に、自身に対して動く被検出部材との間の相対位置を検出する検出手段を、前記シフトレバーの操作経路上に複数設けたメイン検出ユニットと、
故障対応をとるために前記メイン検出ユニットのサブとして設けられたサブ検出ユニットと、
前記シフトレバーが動いたか否かを単に見るための1つの移動有無検出手段と、
前記した2つの検出ユニット及び前記移動有無検出手段からの出力を基に、前記シフトレバーの位置を判定する位置判定手段と
を備えたことを特徴とするシフトレバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−220832(P2011−220832A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90360(P2010−90360)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】