説明

位置決め制御システムおよび位置決め制御方法

【課題】磁気ディスク装置において、高精度のヘッド位置決めを行う。
【解決手段】ディスクに対してヘッドを移動させ、ヘッドの位置を検出し、目標位置に対するヘッド位置の誤差を表す位置誤差信号を所定時間間隔で検出し、検出される位置誤差信号をディスク回転の1周期単位で記録し、非周期外乱を検出する外乱検出ステップと、第1の回転周期において検出された第1の位置誤差信号を、第1の位置誤差信号の1周期時間前に検出された第2の位置誤差信号に基づいて補正し、補正された第1の位置誤差信号から、ヘッドの規範位置指令を計算し、1の回転周期の1周期前の第2の回転周期において非周期外乱が検出され、かつ、第2の位置誤差信号が検出されたヘッド位置の検出時点が、非周期外乱の検出時点を基準として所定時間範囲に含まれるときは、第2の位置誤差信号の振幅を抑制し、振幅抑制した第2の位置誤差信号に基づき第1の位置信号誤差を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば磁気ディスク装置においてヘッドの位置決め制御を行う位置決め制御システムおよび位置決め制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置におけるヘッド位置決め制御系においては、サーボセクターに含まれるデータの再生により求められるヘッド位置誤差信号(目標とするヘッド位置と、現在のヘッド位置との誤差を示す信号)に、ディスクの偏心等に起因する、回転周波数に同期した周期的な外乱が加わるため、この周期的な外乱を抑圧しなければ高精度の位置決めは困難である。
【0003】
近年における磁気ディスク装置のヘッド位置決め制御系はマイクロコンピュータを用いたディジタル制御系で構成されるため、磁気ディスクの回転周期長に対応した内部モデル(繰り返し制御器)をヘッド位置決め制御系のフィードバックループ内に組み込むことにより繰り返し制御を行うことが有効である。繰り返し制御器はヘッド位置決め制御系に入力する位置誤差信号を回転周期長分記録し、記録した信号を次回の回転周期にその時点での位置誤差信号に加算することで、周期的な外乱を抑圧し、ヘッドの位置決め精度を向上させるものである。
【特許文献1】特開2006−313589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、周期的でない外乱信号が、上記繰り返し制御器に入力されると、次回周期の位置誤差信号は、抑圧する相手がいない状態となり、繰り返し制御器の出力は、ヘッド位置決め制御系の性能を劣化させる外乱源となってしまう。
【0005】
例えば、ヘッドを目標トラックまで移動させるシーク制御と、目標トラックの中心にヘッドを位置決めするトラッキング制御とで同じフィードバック制御器を使用する2自由度制御系を考える。この2自由度制御系は、シーク時の移動トラック数が比較的短い短距離シークモードで一般的に使用されるが、この場合、シーク制御終了時の過渡的な位置誤差信号(オーバーシュート、アンダーシュート等)を、上記繰り返し制御器が記録すると、これが非周期的な外乱となり、トラッキング制御に移行した後、繰り返し制御の逆効果現象により、前述のようなヘッド位置決め制御系の性能劣化の問題が生じる。
【0006】
本発明は、非周期的な外乱が生じても、ヘッドの位置決め精度の劣化をできるだけ抑制するようにした位置決め制御システムおよび位置決め制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様としての位置決め制御システムは、
情報を記録可能なディスクに対して情報の記録再生を行なうヘッドを移動させるヘッド移動手段と、
前記ヘッドの位置を検出する位置検出手段と、
あらかじめ与えられた目標位置に対するヘッド位置の誤差を表す位置誤差信号を所定時間間隔で検出する誤差検出手段と、
前記誤差検出手段により検出される位置誤差信号をディスク回転の1周期単位で記録する記録部と、
前記ヘッド移動手段で発生する非周期外乱を検出する外乱検出手段と、
第1の回転周期において前記誤差検出手段により検出された第1の位置誤差信号を、前記第1の位置誤差信号の1周期時間前に検出された第2の位置誤差信号に基づいて補正する補正手段と、
補正された第1の位置誤差信号から規範位置指令を計算し、計算した規範位置指令を前記ヘッド移動手段に与えるフィードバック制御器と、を備え、
前記補正手段は、前記第1の回転周期の1周期前の第2の回転周期において前記非周期外乱が検出され、かつ、前記第2の位置誤差信号が検出されたヘッド位置の検出時点が、前記非周期外乱の検出時点を基準として所定時間範囲に含まれるときは、前記第2の位置誤差信号の振幅を抑制し、振幅抑制した第2の位置誤差信号に基づき前記第1の位置信号誤差を補正することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様としての位置決め制御システムは、
情報を記録可能なディスクに対して情報の記録再生を行なうヘッドを移動させるヘッド移動ステップと、
前記ヘッドの位置を検出する位置検出ステップと、
目標位置に対するヘッド位置の誤差を表す位置誤差信号を所定時間間隔で検出する誤差検出ステップと、
前記誤差検出ステップにより検出される位置誤差信号をディスク回転の1周期単位で記録する記録ステップと、
前記ヘッド移動ステップで発生する非周期外乱を検出する外乱検出ステップと、
第1の回転周期において前記誤差検出ステップにより検出された第1の位置誤差信号を、前記第1の位置誤差信号の1周期時間前に検出された第2の位置誤差信号に基づいて補正する補正ステップと、
補正された第1の位置誤差信号から、前記ヘッドの規範位置指令を計算するフィードバック制御ステップと、を備え、
前記補正ステップは、前記第1の回転周期の1周期前の第2の回転周期において前記非周期外乱が検出され、かつ、前記第2の位置誤差信号が検出されたヘッド位置の検出時点が、前記非周期外乱の検出時点を基準として所定時間範囲に含まれるときは、前記第2の位置誤差信号の振幅を抑制し、振幅抑制した第2の位置誤差信号に基づき前記第1の位置信号誤差を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、非周期的な外乱が生じても、ヘッドの位置決め精度の劣化をできるだけ抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
図7は、本実施の形態に係わる、磁気ディスク装置の位置決め制御システムの概略構成を示す図である。この位置決め制御システムは、磁気ディスク装置に設けられているマイクロプロセッサ(MPU:Micro Processor Unit)18を主構成要素としている。
【0012】
図7に示すように、ヘッド11はアーム12に支持されている。アーム12はボイスコイルモータ(VCM:Voice Coil Motor)13の駆動力によりヘッド11を、情報を磁気的に記録可能な磁気ディスク14の半径方向に移動させる。アーム12およびVCM13は、たとえばヘッド移動手段の一例に相当する。
【0013】
VCM13はマグネット15と駆動コイル16とを有し、パワーアンプ17から供給される電流により駆動される。
【0014】
MPU18は、計算により得た制御指令をD/Aコンバータ19によりアナログ信号に変換してパワーアンプ17に与える。
【0015】
パワーアンプ17はMPU18から与えられた制御指令を駆動電流に変換してVCM13に供給する。
【0016】
ディスク14は一枚または複数枚からなり、スピンドルモータ(図示せず)により高速回転させられる。ディスク上には同心円状に複数のトラックが形成されており、各トラックには一定間隔でサーボエリア(サーボセクター)20が設けられている。サーボエリア20にはトラックの位置情報が予め埋め込まれており、ヘッド11がサーボエリア20を横切ることによりヘッド11から読み出されたリード信号をヘッドアンプ21で増幅してサーボデータ処理回路22に供給する。
【0017】
サーボデータ処理回路22は増幅されたリード信号からサーボ情報を生成し一定時間間隔でMPU18に出力する。
【0018】
MPU18は、I/O23において取り込んだサーボ情報からヘッド位置を算出し、得られたヘッド位置と目標とすべきヘッド位置(目標位置)とからVCMに流すべき制御指令を一定時間間隔で計算する。MPU18は、ヘッドの位置を検出する位置検出手段を有している
図8は、磁気ディスク装置において従来の繰り返し制御器を含むヘッド位置決め制御系を示す。より詳しくは、図8は、位置決め制御(トラッキング)時の制御系を示す。このヘッド位置決め制御系は、制御対象を除き、たとえばMPU18にソフトウェアとして実行される。
【0019】
VCM13からヘッド位置までの伝達特性を制御対象101、フィードバック系の観測信号をヘッド位置の信号とする。
【0020】
目標トラックの中心に対するヘッド位置の誤差を誤差検出手段112においてヘッド位置誤差信号として検出し、位置決めフィードバック制御器102に入力する。ただし、ヘッド位置誤差信号には、背景技術の欄でも述べたとおり、ディスク偏心等に起因する周期外乱110が加わっており、これを抑圧するため破線で囲まれた繰り返し制御器108が位置決めフィードバック制御器102の前段に設けられている。誤差検出手段112において検出されたヘッド位置誤差信号は、加算手段111において、繰り返し制御器108から与えられる信号と加算されて周期外乱が抑制された後、位置決めフィードバック制御器102に与えられる。
【0021】
繰り返し制御器108は、繰り返し制御器108の高周波帯域でのゲインを調整するローパスフィルタ108と、遅延要素D(z)(記憶部)105とを含む。
【0022】
遅延要素105は、例えばヘッド位置決め制御系を実行するソフトウェア(ディジタル制御系を実装するソフトウェア)内で配列として確保されたメモリ領域を含み、1トラックに含まれるサーボセクター数Nと同じ列(あるいは行)数の配列によって実現される。遅延要素105は、回転周期長分の位置誤差信号(サーボセクター数N分の位置誤差信号)を、ディジタル制御系のサンプリング周期毎にメモリ領域(配列)に書き込む。回転周期が1トラックに含まれるサーボセクター数Nと等しくなるため、遅延要素105は、 (1)式のように表される。
【数1】

【0023】
繰り返し制御器108は、遅延要素105に記録した回転周期長分の位置誤差信号を、次の回転周期における対応時点の位置誤差信号(すなわち1周期後の位置誤差信号)に加算するように、加算手段111に出力する。加算手段111は、次の回転周期において誤差検出手段112から入力される位置誤差信号に対し、繰り返し制御器108から入力される位置誤差信号を加算することで、周期的な外乱を弱め、ヘッドの位置決め精度を向上させる。
【0024】
しかしながら、以上に示したトラッキング制御系が、2自由度制御の構成のためにシーク制御時にも使用されると、背景技術の欄で述べたとおりの問題が生じる。すなわち、シーク終了時のオーバーシュートやアンダーシュートが非周期外乱として加わった位置誤差信号が、遅延要素(記録部)105に保存されるため、この非周期外乱成分が、次回周期で、繰り返し制御器108により出力され、ヘッド位置決め制御系の外乱源となってしまう。
【0025】
図1は、このような従来の問題を解決するための、本発明に係るヘッド位置決め制御系の構成を示す。このヘッド位置決め制御系は、図8の繰り返し制御器108を改良した繰り返し制御器508に特徴を有する。このヘッド位置決め制御系は、制御対象501を除き、たとえばMPU18にソフトウェアとして実装されることができる。
【0026】
制御対象501、位置決めフィードバック制御器(フィードバック制御器)502、第1のローパスフィルタ504、遅延要素(記録部)505、誤差検出手段512および加算手段511は、図8における同一名称の要素と同一の機能を有するため、拡張された処理を除き、重複する説明を省略するものとする。
【0027】
繰り返し制御器508におけるシーク終了セクター番号記録部507は、シーク終了時のサーボセクター番号(各サーボセクターに割り振られた番号)を記録する。シーク終了時のサーボセクター番号は、たとえばシーク終了が検出された時点の直前に読み取られたサーボセクターの番号である。シーク終了は、たとえば既知のメカニズムによりシーク終了時に設定されるフラグを参照することで検出できる。シーク終了セクター番号記録部507は、制御対象501で発生する非周期外乱を検出する外乱検出手段の一つの形態である。
【0028】
繰り返し制御器508における遅延要素505の出力は2つに分岐し、一方は第2のローパスフィルタ506を介して切り替え処理部503に入力され、他方は切り替え処理部503に直接入力される。
【0029】
切り替え処理部503は、スイッチを含み、スイッチを端子1または端子2に切り替えることで、遅延要素505および第2のローパスフィルタのいずれかの出力を選択する。より詳細には、シーク終了セクター番号記録部507と、遅延要素(配列)505から与えられる現在のセクター番号とに基づき、第2のローパスフィルタ506および遅延要素505のいずれかを選択し、選択した方の出力を、加算手段511に通過させる。
【0030】
繰り返し制御器508と加算手段511との組は、たとえば本発明の補正手段に相当する。
【0031】
図2および図3を用いて、遅延要素505、第2のローパスフィルタ506、および切り替え処理部503についてさらに詳細に説明する。
【0032】
図2の上段は、繰り返し制御器508に記録される位置誤差信号をディジタル制御系の周期(サーボセクター間の時間間隔)毎にサンプリングする様子を表している。図2の下段は、繰り返し制御器508内の遅延要素(記録部)505を配列として実現した場合に、サンプリングされた各位置誤差信号が配列に格納される様子を表している。1トラックに含まれるサーボセクター数N分の位置誤差信号が格納され、配列は1回転周期ごとに更新される。
【0033】
サンプリングされた位置誤差信号yx(x=1,2,3,4…N)は、リードされたサーボセクターに割り振られたサーボセクター番号X(X=1,2,3,4…N)に対応づけられている。配列の1行目がサーボセクター番号、2行目がサンプリングされた位置誤差信号である。今、シーク制御が実行されシーク終了時にオーバーシュートが生じ過渡的な信号が配列に記録されたとする。このとき同時に、シーク終了時または直前にヘッドが存在したサーボセクター番号がシーク終了セクター番号記録部507に保存される。ここではサーボセクター番号5が保存されたとする。
【0034】
シーク終了時の過渡的な位置誤差信号(非周期外乱の影響を受けている位置誤差信号)はシーク終了時のサーボセクター番号を中心とした前後の列に格納されていると判断できる。つまり非周期外乱の検出時点を基準として所定時間範囲に含まれる位置誤差信号は非周期外乱の影響を受けていると考えることができる。そこで、次回周期で、配列に格納された位置誤差信号を出力する際に、切り替え処理部503は、図3の上段に示すように、シーク終了時のサーボセクター番号周辺のみ(ここでは前後2つ)、第2のローパスフィルタ506の出力を選択するように(フィルタ処理するように)、スイッチを第2のローパスフィルタ506側の端子2に接続する。これにより、図3の下段に示した破線波形のように、遅延要素505の出力に含まれる、過渡的な応答成分が減衰させられる。一方、それ以外のときはスイッチを端子1に接続し、従来の繰り返し制御器と同様、遅延要素505の出力をそのまま(加工することなく)選択し、加算手段511に与える。
【0035】
このような処理を行うことによって、シーク終了時の過渡的な応答のみを除去し、周期的な外乱の抑圧性能はなるべく保持したまま、背景技術の欄で述べた、繰り返し制御の逆効果現象を抑制することが出来る。つまり、もし遅延要素505の出力を常時、フィルタ処理すると(第2のローパスフィルタ506の出力を常時選択するようにすると)、繰り返し制御器508の周期外乱抑圧の効果が弱くなってしまう問題が生じるが、本実施形態では、サーボセクター番号を利用した局所的なフィルタ処理を行うようにしているため、周期的な外乱抑圧の効果をなるべく劣化させずに、非周期的な外乱による繰り返し制御の逆効果現象を防止できる。
【0036】
ここで、第2のローパスフィルタ506としては、遅延要素505の配列内に格納された値を次回周期で出力するという繰り返し制御の性質から、非因果FIRフィルタを用いることが出来、この非因果FIRフィルタを用いることで、第2のローパスフィルタ506のフィルタ処理に伴って位相歪みが発生せず、過渡的な応答の振幅だけを減衰させることが出来る。この非因果FIRフィルタH(z)は(2)式で表される。
【数2】

a0、a1、a2…anはフィルタ係数であり、nは次数である。これらは、過渡的な応答を十分減衰できるように適宜選択する。
【0037】
以下に本発明の有効性を、本発明者らにより独自に行った計算機シミュレーションの結果に基づいて示す。
【0038】
図4は、シミュレーションに用いる制御対象モデルと位置決めフィードバック制御器を直列結合した開ループ伝達特性(たとえば図1のヘッド位置決め制御系から繰り返し制御器508を除去して得られる開ループの伝達特性)を示す。
【0039】
これは、実際の磁気ディスク装置のVCMからヘッド位置までの伝達特性を模擬したものであり、制御対象は約3[kHz]、5[kHz]付近に共振モードを持ち、位置決めフィードバック制御器は、積分器と位相進み補償器と、共振モード安定化のためのノッチフィルタとを結合した構成とした。また、ディジタル制御系のサンプリング周波数はサーボセクター数とディスク回転数とから決定されるが、ここではサーボセクター数を132、回転数を7200[rpm](120[Hz])とした。よって、サンプリング周波数は15840[Hz]、位置誤差信号に加わるディスク偏心等に起因する周期外乱の最低次周波数は120[Hz]となり、以降この整数倍の周波数が周期外乱の周波数成分となる。また、繰り返し制御器内の記録部は132列の配列で実現されることになる。
【0040】
上記のような制御系に対し、位置誤差信号に図5に示す周期外乱を加え、従来の繰り返し制御器と本発明の繰り返し制御器との両方について、シーク終了時からトラッキング制御に移行する状態でのヘッド位置決め誤差応答(目標位置からの誤差)を比較した。この結果を図6に示す。
【0041】
図6において、図中細い実線のグラフは、繰り返し制御なしの場合(Repetitive OFF)のヘッド位置決め誤差の応答を示す。周期外乱の影響を受け振動が持続していることが分かる。
【0042】
これに対し、破線のグラフで示すように、従来の繰り返し制御を用いると(Normal Repetitive)、時間が進むにつれ周期外乱の影響が除去されていくことが確認できる。しかしながら、時間0〜0.002[s]にかけてのシーク終了時の過渡的な応答(非周期外乱)によって繰り返し制御の逆効果現象が生じ、繰り返し制御なしのとき(Repetitive OFF)に比べて、位置決め誤差が回転周期毎に大きくなってしまうことが分かる。
【0043】
これに対し、太い実線のグラフで示すように、本発明の繰り返し制御器では、この逆転現象を大きく低減出来ていることが確認できる。また、周期外乱の影響も、従来の繰り返し制御と同様に、除去できていることが分かる。
【0044】
以上のように、本発明の実施形態によれば、繰り返し制御器を用いた磁気ディスクのヘッド位置決め制御系において、シーク終了時の過渡的な外乱による位置決め精度劣化(繰り返し制御の逆効果現象)を低減することが出来る。
【0045】
なお、本実施形態では、非周期的な外乱としてシーク終了を扱ったが、本発明の対象とする非周期外乱はシーク終了に限定されず、検出したヘッド位置の信号に非周期で加わる外乱であれば、他のものでもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態としての、繰り返し制御器を含むヘッド位置決め制御系を示す図。
【図2】遅延要素の動作と、非周期外乱の発生とを示す図。
【図3】フィルタ処理と切り替え処理とを説明する図。
【図4】シミュレーションモデルの開ループ伝達特性を示す図。
【図5】シミュレーションにおいて位置誤差信号へ与える周期外乱を示す図。
【図6】本発明の繰り返し制御と従来との繰り返し制御との比較結果を示す図。
【図7】磁気ディスク装置の位置決め制御システムの構成を示す図。
【図8】従来の繰り返し制御器を含むヘッド位置決め制御系を示す図。
【符号の説明】
【0047】
501 制御対象(ヘッド移動手段、ヘッド位置検出手段)
502 位置決めフィードバック制御器(フィードバック制御器)
503 切り替え処理部(補正手段)
504 ローパスフィルタ
505 遅延要素(記録部)
506 第2のローパスフィルタ(補正手段)
507 シーク終了時セクター番号記録部(外乱検出手段)
508 繰り返し制御器(補正手段)
511 加算手段(補正手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を記録可能なディスクに対して情報の記録再生を行なうヘッドを移動させるヘッド移動手段と、
前記ヘッドの位置を検出する位置検出手段と、
あらかじめ与えられた目標位置に対するヘッド位置の誤差を表す位置誤差信号を所定時間間隔で検出する誤差検出手段と、
前記誤差検出手段により検出される位置誤差信号をディスク回転の1周期単位で記録する記録部と、
前記ヘッド移動手段で発生する非周期外乱を検出する外乱検出手段と、
第1の回転周期において前記誤差検出手段により検出された第1の位置誤差信号を、前記第1の位置誤差信号の1周期時間前に検出された第2の位置誤差信号に基づいて補正する補正手段と、
補正された第1の位置誤差信号から規範位置指令を計算し、計算した規範位置指令を前記ヘッド移動手段に与えるフィードバック制御器と、を備え、
前記補正手段は、前記第1の回転周期の1周期前の第2の回転周期において前記非周期外乱が検出され、かつ、前記第2の位置誤差信号が検出されたヘッド位置の検出時点が、前記非周期外乱の検出時点を基準として所定時間範囲に含まれるときは、前記第2の位置誤差信号の振幅を抑制し、振幅抑制した第2の位置誤差信号に基づき前記第1の位置信号誤差を補正することを特徴とする位置決め制御システム。
【請求項2】
前記ディスクは、トラックの位置情報を記録した複数のサーボセクターを有し、
前記位置検出手段は、前記サーボセクターの通過時に前記ヘッドにより読み取られるサーボ情報に基づき、前記ヘッドの位置を検出し、
前記記録部は、前記誤差検出手段により検出された位置誤差信号を、前記ヘッド位置を検出した前記サーボセクターを識別するサーボセクター番号と対応づけて記録し、
前記外乱検出手段は、前記非周期外乱の検出時点から所定時間範囲にヘッド位置が検出されたサーボセクター番号を外乱サーボセクター番号として特定し、
前記補正手段は、
前記第1の回転周期において検出された前記第1の位置誤差信号を、前記第2の回転周期において検出された同一のサーボセクター番号をもつ前記第2の位置誤差信号により補正し、
前記第2の回転周期において前記非周期外乱が検出され、かつ、前記第2の位置誤差信号のサーボセクター番号が前記第2の回転周期において特定された前記外乱サーボセクター番号に含まれるときは、前記第2の位置誤差信号の振幅を抑制し、振幅抑制された第2の位置誤差信号に基づき前記第1の位置信号誤差を補正する、
ことを特徴とする請求項1に記載の位置決め制御システム。
【請求項3】
前記外乱検出手段は、前記ヘッドのシーク制御の完了を前記非周期外乱として検出することを特徴とする請求項1または2に記載の位置決め制御システム。
【請求項4】
前記補正手段は、ローパスフィルタを用いて振幅を抑制することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の位置決め制御システム。
【請求項5】
情報を記録可能なディスクに対して情報の記録再生を行なうヘッドを移動させるヘッド移動ステップと、
前記ヘッドの位置を検出する位置検出ステップと、
目標位置に対するヘッド位置の誤差を表す位置誤差信号を所定時間間隔で検出する誤差検出ステップと、
前記誤差検出ステップにより検出される位置誤差信号をディスク回転の1周期単位で記録する記録ステップと、
前記ヘッド移動ステップで発生する非周期外乱を検出する外乱検出ステップと、
第1の回転周期において前記誤差検出ステップにより検出された第1の位置誤差信号を、前記第1の位置誤差信号の1周期時間前に検出された第2の位置誤差信号に基づいて補正する補正ステップと、
補正された第1の位置誤差信号から、前記ヘッドの規範位置指令を計算するフィードバック制御ステップと、を備え、
前記補正ステップは、前記第1の回転周期の1周期前の第2の回転周期において前記非周期外乱が検出され、かつ、前記第2の位置誤差信号が検出されたヘッド位置の検出時点が、前記非周期外乱の検出時点を基準として所定時間範囲に含まれるときは、前記第2の位置誤差信号の振幅を抑制し、振幅抑制した第2の位置誤差信号に基づき前記第1の位置信号誤差を補正することを特徴とする位置決め制御方法。
【請求項6】
前記ディスクは、トラックの位置情報を記録した複数のサーボセクターを有し、
前記位置検出ステップは、前記サーボセクターの通過時に前記ヘッドにより読み取られるサーボ情報に基づき、前記ヘッドの位置を検出し、
前記記録ステップは、前記誤差検出ステップにより検出された位置誤差信号を、前記ヘッド位置を検出した前記サーボセクターを識別するサーボセクター番号と対応づけて記録し、
前記外乱検出ステップは、前記非周期外乱の検出時点から所定時間範囲にヘッド位置が検出されたサーボセクター番号を外乱サーボセクター番号として特定し、
前記補正ステップは、
前記第1の回転周期において検出された前記第1の位置誤差信号を、前記第2の回転周期において検出された同一のサーボセクター番号をもつ前記第2の位置誤差信号により補正し、
前記第2の回転周期において前記非周期外乱が検出され、かつ、前記第2の位置誤差信号のサーボセクター番号が前記第2の回転周期において特定された前記外乱サーボセクター番号に含まれるときは、前記第2の位置誤差信号の振幅を抑制し、振幅抑制された第2の位置誤差信号に基づき前記第1の位置信号誤差を補正する、
ことを特徴とする請求項5に記載の位置決め制御方法。
【請求項7】
前記外乱検出ステップは、前記ヘッドのシーク制御の完了を前記非周期外乱として検出することを特徴とする請求項5または6に記載の位置決め制御方法。
【請求項8】
前記補正ステップは、ローパスフィルタを用いて振幅を抑制することを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の位置決め制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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