説明

位置決め機能を有する吸着コンベヤ装置

【課題】 簡単に被搬送物の位置を決める位置決め機能を有する吸着コンベヤ装置を提供する。
【解決手段】 被搬送物1を吸着して走行し、走行経路の一部が水平面に対して傾斜している吸着コンベヤ装置において、前記被搬送物1を吸着する表面に走行方向に一定間隔をあけて位置決め用突起10が設けられ、かつ前記水平面に対して傾斜した箇所で吸着力を低下させて被搬送物1を自重でずらせて前記位置決め用突起に当接させる吸着力低減手段4a を備えている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、吸着コンベヤ装置に関し、特に被搬送物を搬送しながら一定間隔に位置決めする機能を有する吸着コンベヤ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】周知のように吸着コンベヤは、ベルトやネットあるいは平板体などの搬送面を形成する部材に吸引孔を設け、その搬送行程での背面側に、前記吸引孔が開口する低圧部を設け、吸引孔を覆うように搬送面に載せた被搬送物を真空吸引して固定し、その状態で搬送面を走行させることにより、被搬送物を安定的保持して搬送するように構成されている。したがって、被搬送物を搬送面に固定した状態になるので、水平方向だけではなく垂直方向にも搬送することができる利点を有する。
【0003】この種の吸着コンベヤの一例が実公平6−46890号公報に記載されており、これを図6を参照して簡単に説明すると、符号31は吸着コンベヤを示し、一方の面を開口したプレナムチャンバー32の開口側に搬送ベルト33を移動可能に設けて構成されている。搬送ベルト33は、その裏面両端をプレナムチャンバー32の両側壁に取り付けたベルトガイド34に支持・案内され、中央付近を支柱36によってプレナムチャンバー32の底壁に支持された他のベルトガイド35に支持・案内されている。
【0004】また、搬送ベルト33は、多数のベルトピース37を連結ピン39によって連結して構成され、各ベルトピース37は、連結ピン39の周りに可動できるようになっている。連結ピン39は、筒状の連結部に設けた連結ピン用孔38に挿通され、また平板状の搬送部には吸着孔40が設けられている。ベルトガイド34,35には前記連結部の外面が接しており、搬送ベルト33は連結部をベルトガイド34,35に摺動させながら走行する。
【0005】なお、搬送時には、プレナムチャンバー32内部の空気を送風機によって排出し、この空間を低真空にする。すると、各ベルトピース37に設けた吸着孔40より空気が吸引され、この吸引力によって被搬送物を吸着・保持して搬送する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記のように吸着コンベヤは、搬送面が平坦に形成されており、搬送物を載せる位置は、吸着孔を塞ぐ位置を外れていなければ特には限定されず、したがって前工程から送られた被搬送物を載置する位置の選択の自由度が高いので、前工程から吸着コンベヤへの移載が容易になるなどの利点がある。これは、言い換えれば、吸着コンベヤ上の被搬送物は、ランダムに配置されていることになり、後工程でその被搬送物の1個ずつに順次所定の加工を施す場合、その後工程の装置と被搬送物の送りとの同期を取るために、吸着コンベヤによって搬送された被搬送物を、一定の間隔に並び替える定ピッチ送り装置を必要とすることになる。結局、従来の吸着コンベヤでは、ランダムな搬送には有利であったが、被搬送物の搬送タイミングや搬送間隔を決めて搬送するラインに用いる場合には、被搬送物の間隔や位置を決めるための他の設備を必要とし、その結果、ラインの構成が複雑になり、あるいは整備コストが高くなるなどの問題があった。
【0007】この発明は、上記の事情を背景にしてなされたものであり、被搬送物を吸着した状態で搬送できるとともに、その搬送過程で被搬送物の位置を決めることのできる吸着コンベヤ装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用】上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、被搬送物を吸着して走行し、走行経路の一部が水平面に対して傾斜している吸着コンベヤ装置において、前記被搬送物を吸着する表面に走行方向に一定間隔をあけて位置決め用突起が設けられ、かつ前記水平面に対して傾斜した箇所で吸着力を低下させて被搬送物を自重でずらせて前記位置決め用突起に当接させる吸着力低減手段を備えている吸着コンベヤ装置である。
【0009】また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記傾斜している箇所が、ほぼ水平面に沿う搬送位置から上方向に向けた搬送位置に繋がる湾曲したコーナ部であることを特徴とする吸着コンベヤ装置である。
【0010】したがって、請求項1の発明および請求項2の発明では、被搬送物は走行する表面に吸着された状態で搬送される。その搬送途中の水平面に対して傾斜した箇所では、被搬送物に対する吸着力が低下させられる。その結果、被搬送物が自重で前記表面に沿ってずり落ちて位置決め用突起に当接する。すなわち、被搬送物は、送り方向に対して位置決め用突起によって位置が決められ、被搬送物同士の間隔が位置決め用突起の間隔に基づく間隔に保持される。
【0011】さらに、請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記被搬送物を吸着する表面が、多数の平板体を相互に屈曲可能に繋げた連続体によって形成されていることを特徴とする吸着コンベヤ装置である。
【0012】したがって請求項3の発明では、被搬送物を吸着する表面が水平面に対して傾斜している箇所での傾斜角度が変化すれば、隣接する平板体同士が折れ曲がった状態となり、したがって複数の平板体に跨って被搬送物が吸着されているので、被搬送物の平板体との接触部分が全周でなく部分的な接触になるため、平板体と被搬送物との間に僅かな隙間が生じ、被搬送物を真空吸着している場合には、被搬送物の内部に空気が侵入することが許容され、その結果、被搬送物の吸着力を低下させ、自重によるズレを容易に生じさせることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】つぎにこの発明を図に示す実施例に基づいて説明する。図1はこの発明の位置決め機能を有する吸着コンベヤ装置の一実施例を示す模式図であり、図2はその吸着コンベヤ装置の一部を示す平面図であり、図3は図2に示す部分の走行方向での概略的な断面図であり、図4は図2における矢視A−A概略断面図である。この吸着コンベヤ装置を組み込んだラインは、図1に示すように前工程を経た被搬送物1を、前工程コンベヤ2によってその首部をチャックして一列に並べて搬送し、前工程コンベヤ2と同期して駆動され、この発明に係る吸着コンベヤを構成しているスラットコンベヤ3に受け渡すようになっている。なお、この被搬送物1は、底部が開口しかつ先端の首部側が閉じた中空構造の半製品であり、底部の所定寸法の幅の部分が、後工程でトリミングされるようになっている。
【0014】そのスラットコンベヤ3は、吸引ボックス4と搬送ベルト5とを主体として構成されている。吸引ボックス4は、要は、中空の容器であって、搬送ベルト5の搬送面に対する裏面側であって被搬送物1を吸着保持する区間の全体に亘って配置されている。そしてこの吸引ボックス4の搬送ベルト5の裏面が接する箇所には、図2に示すように真空吸引のための開口部6が形成されており、さらにその内部を大気圧に対して低圧とするために、図示しない真空ポンプに接続されている。
【0015】前記搬送ベルト5によって形成されている搬送経路は、図1に示すように、前工程コンベヤ2から被搬送物1を移載される箇所から鉛直方向で下向きになり、ついで搬送面がほぼ水平となるように次第に湾曲し、さらにその水平部分から鉛直方向で上向きとなるように次第に湾曲した形状となっている。このように湾曲して形成された搬送経路の全体に亘って吸引ボックス4が設けられているが、被搬送物1の吸引力を搬送領域毎に調整できるようにするために、吸引ボックス4が仕切板7で複数に区分され、各区分毎に真空圧を適宜に調整されている。特に搬送方向が水平方向から上昇方向に変化する湾曲したコーナ部5a における低圧吸引ボックス4a の真空度は、そのコーナ部5a の前後両側のそれぞれにおける吸引ボックス4の真空度より低く設定されている。このように真空度を低下させてある低圧吸引ボックス4a が請求項1の発明における吸着力低減手段に相当している。
【0016】一方、搬送ベルト5は、図2〜図4に示されている一本の連続した構成のものではなく、多数の平板体8を一列に並べ、それぞれの平板体8自体がチェーンとして連結されて構成された無端軌道のベルトトップチェーンタイプのものである。その各平板体8の幅方向でのほぼ中央部には、表裏両面に貫通した開口する吸引孔9が、例えば、各平板体に2個設けられている。これらの吸引孔9の位置は、前述した吸引ボックス4における開口部6に対応する位置であり、したがって平板体8が吸引ボックス4の開口部6側のプレート11上を摺動して走行する過程では、各吸引孔9が吸引ボックス4に連通し、その吸引孔9を介して平板体8の表面側から真空吸引して、被搬送物1を吸着し、保持し、サイドガイド12、カバープレート13に案内されて搬送ベルト5は走行するようになっている。
【0017】さらに一定の間隔毎の平板体8における吸引孔9の位置に突起10が設けられている。その突起10の高さは、被搬送物1における底部の内周面に係合する高さであって、被搬送物1の底部のうちで後工程でのトリミングによって除去される部分に係合する高さに設定されている。なお、突起10が、この発明の位置決め用突起に相当する。
【0018】上記の位置決め機能を有する吸着コンベヤ装置の運転状態を説明すると、まず、図示しない真空ポンプを作動させて吸引ボックス4内の空気を吸引し、吸引ボックス4内の気圧を低下させる。すると、吸引ボックス4内には吸引孔9から外部の空気を吸い込み、この際に生じる吸引力によって被搬送物1を吸着して保持することができる。この状態で搬送ベルト5を走行させれば、被搬送物1を水平方向のみならず垂直方向にも搬送することが可能となる。そこで平板体8の突起10が、被搬送物1の底部開口の内側(走行方向側)の近い位置に入るように、前工程コンベヤ2からスラットコンベヤ3に受け渡される。受け渡されたスラットコンベヤ3上の被搬送物1が、図5に示すように、搬送ベルト5の上昇方向の湾曲したコーナ部5a まで搬送されて来ると、この部分の吸引ボックス4の真空度が低く、被搬送物1の吸引力が低下すると共に、被搬送物の底部と搬送ベルト5との接地部が少なくなるから、搬送方向が上向きになる箇所で被搬送物1が自重で容易にずれ、その底部の内周面が、一定の間隔を設けられている突起10,10の外面に当接し、その結果、被搬送物1の搬送方向での位置が突起10,10によって決められる。なお、図に示す例では、2個の突起10を1組として設けてあるから、被搬送物1の横方向(搬送方向に対して直交する方向)における位置も同時に決めることができる。
【0019】そして、コーナ部5a を過ぎると、つぎの区画における吸引ボックス4の真空度が高くなり底部全周が搬送ベルト5に接地するので、被搬送物1が再度、強固に吸引されて搬送ベルト5に保持され、その状態で垂直方向に向けて搬送されていく。垂直方向への搬送過程においても被搬送物1は前記突起10に係合して位置決めされており、また強固に真空吸引されているので、位置がずれることがなく、被搬送物1同士の間隔が一定間隔に保持され、また横方向についても位置決めされる。この状態は、搬送方向が垂直方向から水平方向に変化するとしても同様に保持される。したがって被搬送物1を一定ピッチで整列状態で次の工程に受け渡すことが可能になり、被搬送物1の間隔を調整する装置を新たに設ける必要がなくなる。
【0020】なお、上述した実施例は、スラットコンベヤに吸引ボックスを組み込んで吸着コンベヤとして構成したものを例示したが、この発明は、上記具体例に限定されるものではなく、例えば、エプロンコンベヤ、パンコンコンベヤ、バケットコンベヤなどに吸着機能を有するコンベヤでもよい。また、被搬送物の材質が、スチールの場合には、吸着機能として吸引式以外の磁力式のコンベヤの使用が可能であり、例えば吸着力低減手段として、電磁石を使用しその通電力によって吸着力を調整する様にしてもよい。そしてまた、吸引式と磁力式の両方を兼ね備えた構造とし両方で調整する様にしてもい。更にまた、搬送ベルトは金属製でもよく、あるいはセラミックス製もしくはプラスチック製などであってもよい。さらに突起は上述のように位置決め機能を有するものであればよく、その突起の突出形状や突起の数、配置は特に限定されない。
【0021】
【発明の効果】以上説明から明らかなように、請求項1の発明および請求項2の発明によれば、走行する表面に被搬送物が吸着された状態で搬送され、その搬送途中の水平面に対して傾斜した箇所では、被搬送物に対する吸着力が低下させられるから、被搬送物が自重で前記表面に沿ってずり落ちて位置決め用突起に当接して位置決めされる。すなわち、被搬送物を、その送り方向に対して位置決め用突起によって位置が決められ、被搬送物同士の間隔を位置決め用突起の間隔に基づき一定間隔に保持することができ、その結果、搬送過程で被搬送物の間隔の調整を自動的におこなわせることが可能であるから、特別な装置を新たに設けることなく、被搬送物を一定間隔毎に次工程に送ることができ、搬送ラインを簡素化、かつ低廉化することができる。
【0022】また、請求項3の発明によれば、被搬送物を吸着する表面が水平面に対して傾斜している箇所での傾斜角度が変化すれば、隣接する平板体同士が折れ曲がった状態となり、したがって複数の平板体に跨って被搬送物が吸着されているので、被搬送物の平板体との接触部分が局所的となり平板体と被搬送物との間に僅かな隙間が生じ、被搬送物を真空吸着している場合には、被搬送物の内部に空気が侵入することが許容され、その結果、被搬送物の吸着力を低下させ、自重によるズレを容易に生じさせることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の位置決め機能を有する吸着コンベヤ装置の一実施例を示す模式図である。
【図2】 その吸着コンベヤ装置の一部を示す平面図である。
【図3】 図2に示す部分の走行方向での概略的な断面図である。
【図4】 図2における矢視A−A概略断面図である。
【図5】 図1における上昇方向に向ける搬送ベルトのコーナ部分の部分拡大図である。
【図6】 従来の吸引コンベヤ装置の一部切欠斜視図である。
【符号の説明】
1…被搬送物、 3…スラットコンベヤ、 4…吸引ボックス、 4a …低圧吸引ボックス、 5…搬送ベルト、 5a …コーナ部、 6…開口部、 8…平板体、 9…吸引孔、 10…突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 被搬送物を吸着して走行し、走行経路の一部が水平面に対して傾斜している吸着コンベヤ装置において、前記被搬送物を吸着する表面に走行方向に一定間隔をあけて位置決め用突起が設けられ、かつ前記水平面に対して傾斜した箇所で吸着力を低下させて被搬送物を自重でずらせて前記位置決め用突起に当接させる吸着力低減手段を備えていることを特徴とする位置決め機能を有する吸着コンベヤ装置。
【請求項2】 前記傾斜している箇所が、ほぼ水平面に沿う搬送位置から上方向に向けた搬送位置に繋がる湾曲したコーナ部であることを特徴とする請求項1に記載の位置決め機能を有する吸着コンベヤ装置。
【請求項3】 前記被搬送物を吸着する表面が、多数の平板体を相互に屈曲可能に繋げた連続体によって形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の位置決め機能を有する吸着コンベヤ装置。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2001−335135(P2001−335135A)
【公開日】平成13年12月4日(2001.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−157040(P2000−157040)
【出願日】平成12年5月26日(2000.5.26)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【Fターム(参考)】