説明

位置決め装置

【課題】 被移載物の下方に挿入された被載置部材の所定位置に被移載物が載置されるように、被載置部材を簡単な装置構成で位置決めする位置決め装置を提供する。
【解決手段】 位置決め装置は、可動部と、可動部を移動方向に変位駆動する駆動手段と、一端部が可動部に連結され、移動方向に伸縮可能に延設される弾性部材と、弾性部材の他端部が連結され、可動部の変位に伴って近接方向に変位する位置決め部材とを含み、位置決め部材は、近接方向への変位によって被移載物に接触する上段接触部と被載置部材に接触し、かつ上段接触部に対し所定の位置に配置された下段接触部とを含む。駆動手段は、位置決め部材が被移載物に接触するのに必要な変位量を超えて可動部を変位させ、弾性部材は、可動部が変位するとき、上段接触部が被移載物に接触するまでは、位置決め部材を近接方向へ変位させ、被移載物に接触後は、可動部の変位に伴って伸長または収縮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被移載物を被載置部材に移載する工程において、被移載物の下方に挿入された被載置部材を、被移載物に対して位置決めする位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、冷蔵庫1の生産ラインにおける一工程を簡略的に示す図である。冷蔵庫1の生産ラインでは、フリーフローコンベアが採用されており、図9に示すように、製品として完成した冷蔵庫1を、搬送コンベア2で搬送するために用いられていたトレイ3から、冷蔵庫持上装置4を用いて持上げ、梱包材である底パッド5の上に移載する工程(以下、「底パッド移載工程」と称する)が含まれている。
【0003】
この底パッド移載工程では、生産ラインの流れ方向Aに沿って搬送コンベア2上を搬送される縦置き姿勢の冷蔵庫1を、冷蔵庫持上装置4よりも流れ方向Aの上流側の停止位置Pまで搬送して静止させ、冷蔵庫持上装置4によって、静止状態の冷蔵庫1を両側から挟持して上方へ移動させてトレイ3から離反させるとともに、流れ方向Aの下流側へ移動させて、冷蔵庫1の底部と搬送コンベア2との間隙に挿入された底パッド5の上に載置するという一連の処理が順次行われている。この底パッド移載工程では、特に、冷蔵庫1を底パッド5上に載置する際に、底パッド5上の所定の位置に位置ずれなく載置することが求められている。
【0004】
ところが、この底パッド移載工程の前工程では、作業者が、トレイ3を搬送コンベア2上で適宜移動させながら、トレイ3上の冷蔵庫1に対して作業を行う場合があり、これにより、底パッド移載工程では、移載対象の冷蔵庫1毎に、冷蔵庫1が静止する停止位置Pにばらつきが生じている。さらには、トレイ3に上載されている冷蔵庫1のトレイ3上での位置に関しても、冷蔵庫1毎にばらつきが生じている。
【0005】
そのため、冷蔵庫持上装置4によって冷蔵庫1を挟持する際の挟持位置にもばらつきが生じてしまい、従来から、底パッド5上の所定の位置に精度良く冷蔵庫1を載置するための方法として、図9に示すように、作業者が手動で挿入位置を調整しながら底パッド5を挿入する方法が採用されている。
【0006】
しかしながら、このように挿入位置を調整しながら底パッド5を挿入する作業は、作業者にとって大きな負担であり、また作業の効率も悪いという問題がある。そこで、底パッド5を自動で挿入することが求められている。
【0007】
かかる課題を解決するための一つの方法として、冷蔵庫持上装置4によって挟持させる前に、冷蔵庫1を所定の位置に位置決めして静止させるという手法が考えられるが、この場合、底パッド5を所定の位置に位置決めして挿入するための自動挿入装置だけでなく、冷蔵庫持上装置4の流れ方向Aの上流側に、冷蔵庫1を所定の位置に位置決めして静止させるための位置決め機構が別途に必要となり、装置全体のコストが著しく増大してしまうという問題がある。
【0008】
たとえば特許文献1には、車体組立ラインにおいて仮組立の完了した車体をハンガで吊持し、吊持された車体を自動溶接ラインのパレット上の所定位置に移載する方法が開示されている。この特許文献1に記載の方法によれば、ハンガにおける車体の配設位置の誤差に起因する位置ずれを防止するために、ハンガ側に複数の位置決めピンを設けるとともに、車体に各位置決めピンが係合可能な係合孔を形成し、ハンガ側の各位置決めピンを車体の対応する係合孔に係合させることにより、車体をハンガに位置決めして吊持させている。
【0009】
しかしながら、かかる方法では、被移載物に位置決めピンあるいは係合孔を設けなければならず、これらを被移載物に設けることができない場合には適用することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平4−122533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、被移載物を把持する把持装置における被移載物の把持位置に誤差が生じている場合であっても、被移載物の下方に挿入された被載置部材の所定位置に被移載物が載置されるように、被載置部材を簡単な装置構成で位置決めすることができる位置決め装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、被移載物の下方に挿入された被載置部材を、上下方向に垂直な平面に沿って、被移載物に対して位置決めする位置決め装置であって、
第1の可動部と、
前記平面に平行な第1移動方向に、前記第1の可動部を変位駆動する第1の駆動手段と、
一端部が前記第1の可動部に連結され、前記第1移動方向に沿って伸縮可能に延設される第1の弾性部材と、
前記第1の弾性部材の他端部が連結され、前記第1の可動部の前記第1移動方向への変位に伴って、被移載物に近接する第1近接方向に変位する第1の位置決め部材であって、
前記上下方向において、前記第1近接方向への変位によって被移載物に接触する位置に設けられた第1の上段接触部と、
前記上下方向において、前記第1近接方向への変位によって被載置部材に接触する位置に設けられ、かつ該第1近接方向に平行な方向において、第1の上段接触部に対して予め定める位置に配置された第1の下段接触部とを有する位置決め部材とを含み、
前記第1の駆動手段は、前記第1の位置決め部材が被移載物に接触するために必要な変位量よりも大きな変位量だけ変位するように、該第1の可動部を前記第1移動方向へ変位させ、
前記第1の弾性部材は、前記第1の可動部が前記第1移動方向へ変位するとき、第1の上段接触部が被移載物に接触するまでは、第1の可動部の変位を伝達して前記第1の位置決め部材を前記第1近接方向へ変位させ、第1の上段接触部が被移載物に接触した後は、第1の可動部の変位に伴って伸長または収縮することを特徴とする位置決め装置である。
【0013】
また本発明は、前記第1の弾性部材は、圧縮コイルばねであり、第1の上段接触部が被移載物に接触した後は、可動部の変位に伴って収縮することを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記第1の弾性部材は、引張コイルばねであり、第1の上段接触部が被移載物に接触した後は、可動部の変位に伴って伸長することを特徴とする。
【0015】
また本発明は、第2の可動部と、
前記平面に平行で、かつ前記第1移動方向とは異なる第2移動方向に、前記第2の可動部を変位駆動する第2の駆動手段と、
一端部が前記第2の可動部に連結され、前記第2移動方向に伸縮可能に延設される第2の弾性部材と、
前記第2の弾性部材の他端部が連結され、前記第2の可動部の前記第2移動方向への変位に伴って、被移載物に近接する第2近接方向に変位する第2の位置決め部材であって、
前記上下方向において、前記第2近接方向への変位によって被移載物に接触する位置に設けられた第2の上段接触部と、
前記上下方向において、前記第2近接方向への変位によって被載置部材に接触する位置に設けられ、かつ該第2近接方向に平行な方向において、第2の上段接触部に対して予め定める位置に配置された第2の下段接触部とを有する第2の位置決め部材とをさらに含み、
前記第2の駆動手段は、前記第2の位置決め部材が被移載物に接触するために必要な変位量よりも大きな変位量だけ変位するように、該第2の可動部を前記第2移動方向へ変位させ、
前記第2の弾性部材は、前記第2の可動部が前記第2移動方向へ変位するとき、第2の上段接触部が被移載物に接触するまでは、第2の可動部の変位を伝達して前記第2の位置決め部材を前記第2近接方向へ変位させ、第2の上段接触部が被移載物に接触した後は、第2の可動部の変位に伴って伸長または収縮することを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記第2の駆動手段は、第1の位置決め部材に固定されていることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記第2近接方向は、前記第1近接方向に垂直な方向であることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記第2の弾性部材は、圧縮コイルばねであり、第2の上段接触部が被移載物に接触した後は、第2の可動部の変位に伴って収縮することを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記第2の弾性部材は、引張コイルばねであり、第2の上段接触部が被移載物に接触した後は、第2の可動部の変位に伴って伸長することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、駆動手段によって可動部を移動方向へ変位させると、可動部に弾性部材を介して連結されている位置決め部材が、可動部の変位に伴って、被移載物に近接する方向に変位する。このとき、被載置部材は、位置決め部材の上段接触部が被移載物に接触する前に、下段接触部が被載置部材に接触するような位置に予め配置されている。
【0021】
弾性部材は、下段接触部が被載置部材に接触してから上段接触部が被移載物に接触するまでは、あまり若しくは全く伸長あるいは収縮することなく、可動部の変位を位置決め部材に伝達して、位置決め部材を近接方向に変位させる。これにより、下段接触部が接触した被載置部材は、位置決め部材に押圧されて近接方向へ移動する。そして、上段接触部が被移載物に接触し、位置決め部材の近接方向への変位が被移載物によって規制されると、弾性部材は、可動部の変位に伴って伸長あるいは収縮する。これにより、下段接触部により押圧される被載置部材は、上段接触部が被移載物に接触するまで移動する。
【0022】
したがって、被移載物に対して位置決めすべき位置に応じて、下段接触部の上段接触部に対する位置を予め決定しておくことにより、被載置部材を被移載物に対して容易に位置決めすることができる。
【0023】
また、上段接触部が被移載物に接触した後にさらに可動部を変位させても、弾性部材が伸長あるいは収縮することによって可動部の変位を吸収するので、上段接触部と被移載物との接触に伴って可動部の移動方向への変位を停止させる制御を行う必要がなく、そのためのセンサが不要となり、装置構成を簡単にすることができる。また、前記のように弾性部材が可動部の変位を吸収するので、被移載物に大きな衝撃荷重が作用することを防止することができ、被移載物の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】冷蔵庫の生産ラインにおいて、本発明の一実施形態に係る底パッド位置決め装置10が用いられる底パッド移載工程のラインを簡略的に示す斜視図である。
【図2】図1に示す底パッド移載工程のラインを上方から見た平面図である。
【図3】図2における矢符Bで示す方向から底パッド移載工程のラインを見た斜視図である。
【図4】本実施形態に係る位置決め装置10における第1位置決め装置11の構成を簡略化して示す斜視図であり、図2における矢符Bで示す方向から見た図である。
【図5A】位置決め装置10による位置決め動作を説明するための斜視図である。
【図5B】位置決め装置10による位置決め動作を説明するための斜視図である。
【図6A】位置決め装置10による位置決め動作を説明するための上面図である。
【図6B】位置決め装置10による位置決め動作を説明するための上面図である。
【図7】第1位置決め装置11における第1位置決め部21による位置決め動作を説明するための図である。
【図8】第1位置決め装置11における第2位置決め部22による位置決め動作を説明するための図である。
【図9】冷蔵庫1の生産ラインにおける一工程を簡略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、冷蔵庫1の生産ラインにおいて、本発明の一実施形態に係る底パッド位置決め装置(以下、単に「位置決め装置」と称する場合がある)10が用いられる工程のラインを簡略的に示す斜視図である。図2は、図1に示す工程のラインを上方から見た平面図である。図3は、図2における矢符Bで示す方向から見た斜視図である。なお、図1では、本実施形態に係る底パッド位置決め装置10を省略して示している。また、図2では、冷蔵庫持上装置4を省略して示すとともに、底パッド位置決め装置10を簡略化して示している。
【0026】
本実施形態に係る底パッド位置決め装置10は、冷蔵庫1の生産ラインにおける一部の工程において用いられ、具体的には、製品として完成した冷蔵庫1を、生産ラインでの冷蔵庫搬送用のトレイ3から、梱包材の一部をなす底パッド5の上に移載する工程(以下、「底パッド移載工程」と称する)において用いられる。底パッド位置決め装置10は、図2に示すように、第1位置決め装置11と第2位置決め装置12とによって構成されている。
【0027】
この底パッド移載工程では、以下に示す処理が順次行われている。先ず、前工程において所定の処理が行われた被移載物である冷蔵庫1が、矩形板状のトレイ3に載置された状態で搬送コンベア2に供給される。冷蔵庫1は、外形が略直方体形状であり、矩形状の底部が、トレイ3の厚み方向の一表面である上面に対向するような姿勢で、トレイ3に載置されている。搬送コンベア2は、搬送面が水平または略水平となるように設置されているものとする。搬送コンベア2は、フリーフローコンベアによって実現されている。
【0028】
搬送コンベア2に供給された冷蔵庫1は、搬送コンベア2が作動することによって、前記搬送面に平行な搬送方向A1に沿って搬送される。このとき、冷蔵庫1は、底部から垂直に立設する4つの側面部のうちの2つの側面部(たとえば、開閉扉が設けられる正面部と背面部)が、搬送方向A1に略垂直となるような姿勢で搬送される。そして、冷蔵庫1が予め定める停止位置P1まで搬送されると、搬送コンベア2の動作が停止され、これにより、冷蔵庫1が停止位置P1に静止する。以下、搬送面に平行な方向であって、搬送方向A1に垂直な方向を幅方向Xと称する。
【0029】
冷蔵庫1が停止位置P1に静止すると、停止位置P1よりも搬送方向A1の下流側に設けられた冷蔵庫持上装置4が作動し、停止位置P1に静止する冷蔵庫1が、冷蔵庫持上装置4によって把持されて、トレイ3の上面から離反する方向、すなわち鉛直上方へ持上げられる。冷蔵庫持上装置4は、たとえば冷蔵庫1の2つの側面部を挟持することによって、冷蔵庫1を把持するように構成されている。冷蔵庫持上装置4によって把持された冷蔵庫1は、2つの側面部が搬送方向A1に垂直(換言すれば、他の2つの側面部が幅方向Xに垂直)な姿勢となるように把持される。すなわち、停止位置P1に静止したときに2つの側面部が搬送方向A1に対して傾いている場合であっても、冷蔵庫持上装置4によって把持された状態では、該2つの側面部は搬送方向A1に垂直になっている。
【0030】
冷蔵庫持上装置4は、冷蔵庫1を把持して持上げると、冷蔵庫1の底部と搬送コンベア2の搬送面とを離間させた状態で、停止位置P1よりも搬送方向A1の下流側の予め定める移載位置P2まで、冷蔵庫1を移送する。一方、冷蔵庫1が載置されていたトレイ3は、作業者によって、搬送コンベア2に近接配置されている搬送コンベア7に移載され、搬送コンベア7によって搬送されて回収される。
【0031】
移載位置P2まで冷蔵庫1が移送されると、冷蔵庫1の底部と搬送コンベア2の搬送面との間の間隙に、梱包材の一部である矩形板状の底パッド5が挿入される。すなわち、底パッド5は、被載置部材に相当する。このとき、底パッド5は、厚み方向に平行な4つの側面部のうち、2つの側面部が搬送方向A1に略垂直(換言すれば、他の2つの側面部が幅方向Xに略垂直)となるように挿入される。本実施形態では、一端部が移載位置P2に隣接し、幅方向Xに沿って延設された搬送コンベア6を作動させることにより、自動的に底パッド5が挿入されるように構成されている。なお、底パッド5の挿入は、作業者が手動で行ってもよい。
【0032】
冷蔵庫1の底部と搬送コンベア2の搬送面との間の間隙に底パッド5が挿入されると、後で詳述する底パッド位置決め装置10を動作させることによって、冷蔵庫1の下方に挿入された底パッド5が、冷蔵庫持上装置4によって把持されている冷蔵庫1に対して位置決めされる。底パッド位置決め装置10による位置決め動作についても後述する。
【0033】
底パッド5の位置決めが完了すると、冷蔵庫持上装置4が作動し、把持されている冷蔵庫1が、位置決めされた底パッド5の上面に近接する方向、すなわち鉛直下方へ降下される。これにより、冷蔵庫1が、底パッド5の所定位置に載置される。
【0034】
冷蔵庫1が底パッド5に載置されると、搬送コンベア2が作動することによって、冷蔵庫1は、搬送方向A1に搬送される。これにより、底パッド5に載置された冷蔵庫1は、次工程に搬送される。
【0035】
図4は、本実施形態に係る位置決め装置10における第1位置決め装置11の構成を簡略化して示す斜視図である。図4は、図2における矢符Bで示す方向から見た図であり、位置決め動作が開始される前の状態を示している。
【0036】
第1位置決め装置11は、底パッド5を、冷蔵庫持上装置4によって把持されている冷蔵庫1に対して幅方向Xに位置決めする第1位置決め部21と、底パッド5を、冷蔵庫1に対して搬送方向A1に平行な長手方向Yに位置決めする第2位置決め部22とを含んで構成される。
【0037】
先ず、第1位置決め部21について説明する。
第1位置決め部21は、第1可動部31と、幅方向Xに第1可動部31を変位駆動する第1駆動手段32と、一端部33aが第1可動部31に連結され、幅方向Xに沿って伸縮可能に延設される第1弾性部材33と、第1弾性部材33の他端部33bが連結され、第1可動部31の幅方向Xへの変位に伴って、冷蔵庫持上装置4によって把持されている冷蔵庫1に近接する第1近接方向X1に変位する第1位置決め片34と、第1位置決め片34を保持する保持部材35と、案内レール36とを備える。
【0038】
第1可動部31は、矩形板状に形成され、その厚み方向が幅方向Xに一致するように、第1駆動手段32における可動片32aの先端部に固定される。第1可動部31には、その厚み方向における一表面であって、冷蔵庫1に臨む側の表面とは反対側の表面部31aに、第1弾性部材33の一端部33aが連結される。
【0039】
第1駆動手段32は、長尺の棒状部材である可動片32aを備え、その可動片32aの先端部が、冷蔵庫1に近接する第1近接方向X1および冷蔵庫1から離反する第1離反方向X2に移動するように、可動片32aを変位駆動する。したがって、可動片32aの先端部に固定された第1可動部31は、可動片32aの変位に伴って、第1近接方向X1および第1離反方向X2に変位する。第1駆動手段32は、移載位置P2周辺に設けられた固定台8(図3参照)に固定されて設けられる。
【0040】
このような第1駆動手段32は、たとえば複動式空気圧シリンダによって実現される。ここで、第1近接方向X1および第1離反方向X2は、幅方向Xに沿う方向である。なお、位置決め装置10による位置決め動作が開始される前の状態では、可動片32aは、第1離反方向X2に最も没入した位置に配置されているものとする。また、第1駆動手段32は、第1離反方向X2に最も没入した位置に配置された可動片32aを、距離L1だけ第1近接方向X1に突出させることができるように構成されているものとする。
【0041】
第1弾性部材33は、本実施形態では、引張コイルばねによって実現される。第1弾性部材33は、前記のように、その一端部33aが第1可動部31の表面部31aに連結され、該表面部31aから離反する方向、すなわち第1離反方向X2に延びるように設けられている。また、第1弾性部材33の他端部33bは、保持部材35における後述の第2部分40に連結される。
【0042】
ここで、冷蔵庫1の下方に挿入された底パッド5を、搬送コンベア2の搬送面上で摺動させるために必要な押圧力の大きさをf0とし、冷蔵庫持上装置4によって把持されている冷蔵庫1を変位させるために必要な押圧力の大きさをf1とすると、第1弾性部材33である引張コイルばねは、伸長方向への荷重f0の印加に対し、全くもしくは僅かにしか伸長せず、かつ、可動片32aの移動可能な距離L1だけ伸長方向へ伸長させたときに生じるばね力の大きさf2が、f1よりも十分に小さくなる(f1≫f2)ように予め選択されている。
【0043】
第1位置決め片34は、幅方向Xおよび長手方向Yの両方向に垂直な上下方向Zにおいて、第1近接方向X1への変位によって、冷蔵庫持上装置4によって把持されている冷蔵庫1に接触可能な高さ位置に設けられる板状の第1上段接触部37と、上下方向Zにおいて、第1近接方向X1への変位によって、冷蔵庫1の下方に挿入された底パッド5に接触可能な高さ位置に設けられる板状の第1下段接触部38とを含む。
【0044】
第1上段接触部37と第1下段接触部38とは互いに平行に設けられ、第1位置決め片34は、各接触部37,38の厚み方向が、幅方向Xに一致するように、保持部材35によって保持される。
【0045】
各接触部37,38は、厚み方向の一表面であって、冷蔵庫持上装置4によって把持される冷蔵庫1およびその下方に挿入された底パッド5に臨む各表面37a,38aが、それぞれ平坦に形成されている。また、第1上段接触部37と第1下段接触部38は、各表面37a,38aが、幅方向Xにおいて予め定める距離w1だけ離間するように設けられている。
【0046】
この予め定める距離w1は、底パッド5において冷蔵庫1が載置されるべき所定位置に基づいて決定される。詳細には、冷蔵庫1を前記所定位置に載置したときに、冷蔵庫1の一側面部と、該一側面部に対応する底パッド5の一側面部とが離間する距離に基づいて決定される。ここで、前記所定位置に載置された冷蔵庫1は、その一表面部が、底パッド5のいずれかの側面部に平行に配置されているものとする。
【0047】
本実施形態では、図4に示すように、第1下段接触部38の表面38aが、第1上段接触部37の表面37aに対して、第1離反方向X2に距離w1だけ離間した位置に配置されるように、第1位置決め片34が形成されている。他の実施形態では、第1下段接触部38の表面38aが、第1上段接触部37の表面37aよりも第1近接方向X1側に配置される構成であってもよい。
【0048】
保持部材35は、幅方向Xに沿って延設され、一端部39aに第1位置決め片34が固定される板状の第1部分39と、第1部分39の他端部39bから垂直に立設する板状の第2部分40とから成り、大略的にL字状に形成されている。第1部分39には、幅方向Xの中央部分に、第1可動部31を挿通可能な挿通孔39cが幅方向Xに延びるように形成されている。
【0049】
保持部材35は、この挿通孔39cに第1可動部31を挿通した状態で設置され、これにより、保持部材35の第2部分40は、第1可動部31よりも第1離反方向X2に配置される。そして、この第2部分40に、前記のように、第1弾性部材33の他端部33bが連結される。
【0050】
また、保持部材35は、幅方向Xに沿って延設される案内レール36によって、幅方向Xに沿って移動するように設置される。案内レール36は、たとえば第1駆動手段32に固定される。
【0051】
また、挿通孔39cを規定する内周面には、不図示の案内レールが幅方向Xに沿って延びるように設けられ、挿通孔39cに挿通された第1可動部31が、この案内レールに沿って摺動自在に設けられている。
【0052】
本実施形態では、第1弾性部材33である引張コイルばねは、その自然長が、前記内周面における第1離反方向X2側の端面39dと第2部分40との距離に比べて短くなるように選定されている。したがって、引張コイルばねによって連結された第1可動部31および第1部分39の第2部分40は、それぞれ互いに近接する方向にばね付勢されている。
【0053】
これにより、位置決め装置10による位置決め動作が開始される前の状態では、第1可動部31は、引張コイルばねのばね力によって、図4に示すように、挿通孔39cにおける第1離反方向X2側の位置、すなわち前記端面39dに隣接した位置に配置されている。
【0054】
このように構成される第1位置決め部21は、第1位置決め片34における第1上段接触部37と冷蔵庫持上装置4によって把持されている冷蔵庫1との幅方向Xにおける距離L3(図7(a)参照)が、第1可動部31の最大変位量L1よりも短くなるように、固定台8に固定されて設けられる。
【0055】
次に、第2位置決め部22について説明する。
第2位置決め部22は、第2可動部41と、長手方向Yに第2可動部41を変位駆動する第2駆動手段42と、一端部43aが第2可動部41に連結され、長手方向Yに沿って伸縮可能に延設される第2弾性部材43と、第2弾性部材43の他端部43bが連結され、第2可動部41の長手方向Yへの変位に伴って、冷蔵庫持上装置4によって把持されている冷蔵庫1に近接する第2近接方向Y1に変位する第2位置決め片44と、第2位置決め片44を保持する保持部材45と、案内レール46とを備える。
【0056】
第2可動部41は、矩形板状に形成され、その厚み方向が長手方向Yに一致するように、第2駆動手段42における可動片42aの先端部に固定される。第2可動部41には、その厚み方向における一表面であって、冷蔵庫1に臨む側の表面部41aに、第2弾性部材43の一端部43aが連結される。
【0057】
第2駆動手段42は、長尺の棒状部材である可動片42aを備え、その可動片42aの先端部が、冷蔵庫1に近接する第2近接方向Y1および冷蔵庫1から離反する第2離反方向Y2に移動するように、可動片42aを変位駆動する。したがって、可動片42aの先端部に固定された第2可動部41は、可動片42aの変位に伴って、第2近接方向Y1および第2離反方向Y2に変位する。第2駆動手段42は、第1位置決め部21における第1位置決め片34に固定されて設けられる。より詳細には、第1位置決め片34における前記各表面37a,38aとは反対側の表面部34aに固定して設けられる。
【0058】
このような第2駆動手段42は、たとえば複動式空気圧シリンダによって実現される。ここで、第2近接方向Y1および第2離反方向Y2は、長手方向Yに沿う方向である。なお、位置決め装置10による位置決め動作が開始される前の状態では、可動片42aは、第2離反方向Y2に最も突出した位置に配置されているものとする。また、第2駆動手段42は、第2離反方向Y2に最も突出した位置に配置された可動片42aを、距離L2だけ第2近接方向Y1に没入させることができるように構成されているものとする。
【0059】
第2弾性部材43は、本実施形態では、圧縮コイルばねによって実現される。第2弾性部材43は、前記のように、その一端部43aが第2可動部41の表面部41aに連結され、該表面部41aから離反する方向、すなわち第2近接方向Y1に延びるように設けられている。また、第2弾性部材43の他端部43bは、第2位置決め片44に連結される。
【0060】
ここで、第2弾性部材43である圧縮コイルばねは、収縮方向への荷重f0の印加に対し、全くもしくは僅かにしか収縮せず、かつ、可動片42aの移動可能な距離L2だけ収縮方向へ収縮させたときに生じるばね力の大きさf3が、f1よりも十分に小さくなる(f1≫f3)ように予め選択されている。
【0061】
第2位置決め片44は、上下方向Zにおいて、第2近接方向Y1への変位によって、冷蔵庫持上装置4によって把持されている冷蔵庫1に接触可能な高さ位置に設けられる板状の第2上段接触部47と、上下方向Zにおいて、第2近接方向Y1への変位によって、冷蔵庫1の下方に挿入された底パッド5に接触可能な高さ位置に設けられる板状の第2下段接触部48とを含む。
【0062】
第2上段接触部47と第2下段接触部48とは互いに平行に設けられ、第2位置決め片44は、各接触部47,48の厚み方向が、長手方向Yに一致するように、保持部材45によって保持される。
【0063】
各接触部47,48は、厚み方向の一表面であって、冷蔵庫持上装置4によって把持される冷蔵庫1およびその下方に挿入された底パッド5に臨む各表面47a,48aが、それぞれ平坦に形成されている。また、第2上段接触部47と第2下段接触部48は、各表面47a,48aが、長手方向Yにおいて予め定める距離w2だけ離間するように設けられている。
【0064】
この予め定める距離w2は、前記の距離w1と同様に、底パッド5において冷蔵庫1が載置されるべき所定位置に基づいて決定される。詳細には、冷蔵庫1を前記所定位置に載置したときに、冷蔵庫1の一側面部と、該一側面部に対応する底パッド5の一側面部とが離間する距離に基づいて決定される。
【0065】
本実施形態では、図4に示すように、第2下段接触部48の表面48aが、第2上段接触部47の表面47aに対して、第2離反方向Y2に距離w2だけ離間した位置に配置されるように、第2位置決め片44が形成されている。他の実施形態では、第2下段接触部48の表面48aが、第2上段接触部47の表面47aよりも第2近接方向Y1側に配置される構成であってもよい。
【0066】
また、第2位置決め片44には、各表面47a,48aとは反対側の表面部44aに、前記のように、第2弾性部材43の他端部43bが連結される。さらに、第2位置決め片44には、可動片42aが挿通可能な挿通孔44bが厚み方向に貫通して形成され、この挿通孔44bには、可動片42aが摺動自在に挿通される。
【0067】
保持部材45は、長尺の棒状部材であり、長手方向Yに沿って延設される。保持部材45は、長手方向の一端部45aに第2位置決め片44が固定される。また、保持部材45は、長手方向Yに沿って延設される案内レール46によって、長手方向Yに沿って移動するように設置される。案内レール46は、たとえば第2駆動手段42に固定される。
【0068】
位置決め装置10による位置決め動作が開始される前の状態では、第2弾性部材43である圧縮コイルばねは、自然長の状態で、第2可動部41と第2位置決め片44とを連結している。
【0069】
このように構成される第2位置決め部22は、第2位置決め片44における第2上段接触部47と冷蔵庫持上装置4によって把持されている冷蔵庫1との長手方向Yにおける距離L4(図8(a)参照)が、第2可動部41の最大変位量L2よりも短くなるように、第1位置決め部21の第1位置決め片34に固定されて設けられる。
【0070】
以下、本実施形態に係る位置決め装置10による位置決め動作について説明する。図5Aおよび図5Bは、位置決め装置10による位置決め動作を説明するための斜視図であり、図6Aおよび図6Bは、位置決め装置10による位置決め動作を説明するための上面図である。なお、図5A,図5B,図6A,図6Bでは、図解を容易にするために、第1位置決め部21の構成を簡略化して示している。
【0071】
前記のように、移載位置P2まで冷蔵庫1が移送されると、冷蔵庫1の底部と搬送コンベア2の搬送面との間の間隙に、矩形板状の底パッド5が挿入される(図5A(a),図6A(a))。
【0072】
このとき、冷蔵庫1は、4つの側面部1a〜1dのうち、側面部1aが搬送方向A1の下流側に臨み、側面部1dが搬送方向A1の上流側に臨み、側面部1bが第1位置決め部21に臨み、側面部1cが第2位置決め装置12に臨んだ状態で、冷蔵庫持上装置4によって把持されているものとする。また、冷蔵庫1の下方に挿入される底パッド5は、4つの側面部5a〜5dのうち、側面部5aが搬送方向A1の下流側に臨み、側面部5dが搬送方向A1の上流側に臨み、側面部5bが第1位置決め部21に臨み、側面部5cが第2位置決め部22に臨むように挿入されるものとする。
【0073】
また、底パッド5は、冷蔵庫1の下方に挿入される際に、その側面部5bが、冷蔵庫1における側面部1bよりも第1位置決め片34に近接して、詳細には、側面部5bと側面部1bとが、幅方向Xに前記予め定める距離w1よりも大きな距離だけ離間するように、かつ、その側面部5aが、冷蔵庫1における側面部1aよりも第2位置決め片44に近接して、詳細には、側面部5aと側面部1aとが、長手方向Yに前記予め定める距離w2よりも大きな距離だけ離間するように挿入される。
【0074】
このようにして冷蔵庫1の下方に底パッド5が挿入されると、位置決め装置10による位置決め動作が開始される。なお、第1位置決め部21は、前記のように、位置決め動作が開始される前の初期状態では、第1駆動手段32における可動片32aが、第1離反方向X2に最も没入した位置に配置され、また、第2駆動手段42における可動片42aが、第2離反方向Y2に最も突出した位置に配置されているものとする。
【0075】
位置決め装置10による位置決め動作では、先ず、第1位置決め装置11における第1位置決め部21が作動し、冷蔵庫持上装置4によって把持されている冷蔵庫1に対して、底パッド5が、幅方向Xにおいて位置決めされる(図5A(b),図6A(b))。
【0076】
図7は、第1位置決め装置11における第1位置決め部21による位置決め動作を説明するための図である。なお、図7では、図解を容易にするために、第2位置決め部22を省略して示している。
【0077】
第1位置決め部21は、動作開始前の初期状態(図7(a))から、第1駆動手段32を作動させることによって、可動片32aを第1近接方向X1へ変位させる。可動片32aが変位すると、それに伴って、可動片32aの先端部に固定されている第1可動部31、および第1弾性部材33である引張コイルばねを介して第1可動部31に連結されている保持部材35も、第1近接方向X1へ一体的に変位する。
【0078】
これにより、保持部材35に固定されている第1位置決め片34も、第1近接方向X1へ一体的に変位する。このとき、保持部材35は、引張コイルばねのばね力によって、挿通孔39cの内周面における端面39dと第1可動部31とが近接した状態を維持したまま、第1近接方向X1へ変位する。
【0079】
このようにして、第1位置決め片34が第1近接方向X1へ変位すると、先ず、第1下段接触部38の表面38aが、底パッド5の側面部5bに面接触する。第1下段接触部38が接触した底パッド5は、第1可動部31の変位に伴って、第1位置決め片34により荷重f0で押圧され、第1位置決め片34とともに第1近接方向X1に変位する(図7(b))。
【0080】
このとき、第1弾性部材33は、前記のように予め選択されているので、第1上段接触部37が冷蔵庫1へ接触するまでは、殆ど伸長することなく、第1可動部31の変位を保持部材35に伝達して、第1位置決め片34および底パッド5を第1近接方向X1へ変位させる。
【0081】
そして、第1位置決め片34が第1近接方向X1へ距離L3だけ変位すると、底パッド5を押圧しながら変位する第1位置決め片34の第1上段接触部37の表面37aが、冷蔵庫1の側面部1bに面接触する。
【0082】
第1位置決め片34が冷蔵庫1へ接触した後も、第1駆動手段32は、可動片32aが距離L1(L1>L3)だけ第1近接方向X1へ移動するまでは、可動片32aを変位させる。このとき、第1可動部31は、冷蔵庫1によって第1近接方向X1への変位が規制された保持部材35に対し、第1弾性部材33を伸長させながら、挿通孔39cに設けられた案内レールに沿って第1近接方向X1へ変位する(図7(c))。これにより、底パッド5が、幅方向Xにおいて位置決めされる。
【0083】
次に、第1位置決め装置11における第2位置決め部22が作動し、冷蔵庫持上装置4によって把持されている冷蔵庫1に対して、底パッド5が、長手方向Yにおいて位置決めされる(図5A(c),図6A(c))。
【0084】
図8は、第1位置決め装置11における第2位置決め部22による位置決め動作を説明するための図である。なお、図8では、図解を容易にするために、第1位置決め部21を省略して示している。
【0085】
第2位置決め部22は、動作開始前の初期状態(図8(a))から、第2駆動手段42を作動させることによって、可動片42aを第2近接方向Y1へ変位させる。可動片42aが変位すると、それに伴って、可動片42aの先端部に固定されている第2可動部41、および第2弾性部材43である圧縮コイルばねを介して第2可動部41に連結されている第2位置決め片44も、第2近接方向Y1へ一体的に変位する。
【0086】
このようにして、第2位置決め片44が第2近接方向Y1へ変位すると、先ず、第2下段接触部48の表面48aが、底パッド5の側面部5aに面接触する。第2下段接触部48が接触した底パッド5は、第2可動部41の変位に伴って、第2位置決め片44により荷重f0で押圧され、第2位置決め片44とともに第2近接方向Y1に変位する(図8(b))。
【0087】
このとき、第2弾性部材43は、前記のように予め選択されているので、第2上段接触部47が冷蔵庫1へ接触するまでは、殆ど収縮することなく、第2可動部41の変位を第2位置決め片44に伝達して、第2位置決め片44および底パッド5を第2近接方向Y1へ変位させる。
【0088】
そして、第2位置決め片44が第2近接方向Y1へ距離L4だけ変位すると、底パッド5を押圧しながら変位する第2位置決め片44の第2上段接触部47の表面47aが、冷蔵庫1の側面部1aに面接触する。
【0089】
第2位置決め片44が冷蔵庫1へ接触した後も、第2駆動手段42は、可動片42aが距離L2(L2>L4)だけ第2近接方向Y1へ移動するまでは、可動片42aを変位させる。このとき、第2可動部41は、冷蔵庫1によって第2近接方向Y1への変位が規制された第2位置決め片44に対し、第2弾性部材43を収縮させながら、第2近接方向Y1へ変位する。これにより、底パッド5が、長手方向Yにおいて位置決めされる。
【0090】
第1位置決め装置11によって、冷蔵庫1に対して底パッド5の位置決めがされると、移載位置P2に関して第1位置決め装置11とは反対側に設置されている第2位置決め装置12が作動する。
【0091】
第2位置決め装置12は、幅方向Xに沿って延設される第1可動軸51と、第1可動軸51を幅方向Xに変位駆動する第1駆動部52と、長手方向Yに沿って延設される第2可動軸53と、第2可動軸53を長手方向Yに変位駆動する第2駆動部54と、第2可動軸53の先端部に固定され、底パッド5の位置を調整するための位置決め部材55とを含んで構成される。
【0092】
第1および第2駆動部52,54は、たとえば複動式空気圧シリンダによって実現される。第2駆動部54は、本実施形態では、第1可動軸51に一体的に設けられている。また、位置決め部材55は、幅方向Xに垂直に設けられた板状部分である第1接触部55aと、長手方向Yに垂直に設けられた板状部分である第2接触部55bとが一体的に形成されている。
【0093】
第2位置決め装置12は、第1および第2可動軸51,53を最も突出させたときに、第2可動軸53の先端部に固定された位置決め部材55の第1および第2接触部55a,55bをそれぞれ、第1位置決め装置11によって位置決めされた底パッド5の側面部5cおよび側面部5dに接触させることができる位置に配置されて固定されている。なお、第2位置決め装置12は、位置決め動作が開始される前の初期状態では、第1および第2可動軸51,53がいずれも、最も没入した位置に配置されているものとする。
【0094】
第2位置決め装置12による動作では、先ず、第1駆動部52が作動し、第1可動軸51の第1離反方向X2への変位に伴って、位置決め部材55が第1離反方向X2へ移動する。第1駆動部52は、底パッド5が、第1接触部55aと第1位置決め片34における第1下段接触部38とによって両側から挟持されると、動作が停止される。これにより、冷蔵庫1の下方に挿入された底パッド5は、冷蔵庫1に対して、幅方向Xにおいて確実に位置決めされる(図5B(d),図6B(d))。
【0095】
第1駆動部52の動作が停止すると、次に、第2駆動部54が作動し、第2可動軸53の第2離反方向Y2への変位に伴って、位置決め部材55が第2離反方向Y2へ移動する。第2駆動部54は、底パッド5が、第2接触部55bと第2位置決め片44における第2下段接触部48とによって両側から挟持されると、動作が停止される。これにより、冷蔵庫1の下方に挿入された底パッド5は、冷蔵庫1に対して、長手方向Yにおいて確実に位置決めされる(図5B(e),図6B(e))。
【0096】
これにより、位置決め装置10による位置決め動作が完了する。底パッド5の位置決めが完了すると、前記のように、冷蔵庫持上装置4が作動し、把持されている冷蔵庫1が、位置決めされた底パッド5の上面に近接する方向、すなわち鉛直下方へ降下される。これにより、冷蔵庫1が、底パッド5の所定位置に載置される。
【0097】
以上のように、本実施形態によれば、被移載物である冷蔵庫1に対して位置決めすべき位置に応じて、第1下段接触部38の第1上段接触部37に対する位置(距離w1)、および第2下段接触部48の第2上段接触部47に対する位置(距離w2)を予め決定しておくことにより、被載置部材である底パッド5を冷蔵庫1に対して容易に位置決めすることができる。
【0098】
また、第1上段接触部37が冷蔵庫1に接触した後にさらに第1可動部31を変位させても、第1弾性部材33が伸長することによって第1可動部31の変位を吸収するので、第1上段接触部37と冷蔵庫1との接触に伴って第1可動部31の第1近接方向X1への変位を停止させる制御を行う必要がない。したがって、そのような制御を行うためのセンサが不要であり、装置構成を簡略化にすることができる。また、第1上段接触部37が冷蔵庫1に接触した後は、第1弾性部材33が第1可動部31の変位を吸収するので、冷蔵庫1に大きな衝撃荷重が作用することを防止することができ、冷蔵庫1が損傷してしまうことを防止することができる。
【0099】
本実施形態では、第1弾性部材33は、引張コイルばねによって実現され、第1上段接触部37が冷蔵庫1に接触した後は、第1可動部31の第1近接方向X1への変位に伴って伸長するように構成されているが、他の実施形態では、第1弾性部材33は、圧縮コイルばねによって実現され、第1上段接触部37が冷蔵庫1に接触した後は、第1可動部31の第1近接方向X1への変位に伴って収縮するように構成されてもよい。このように構成した場合であっても、同様の効果を奏する。
【0100】
また本実施形態では、第2弾性部材43は、圧縮コイルばねによって実現され、第2上段接触部47が冷蔵庫1に接触した後は、第2可動部41の第2近接方向Y1への変位に伴って収縮するように構成されているが、他の実施形態では、第2弾性部材43は、引張コイルばねによって実現され、第2上段接触部47が冷蔵庫1に接触した後は、第2可動部31の第2近接方向Y1への変位に伴って伸長するように構成されてもよい。このように構成した場合であっても、同様の効果を奏する。
【0101】
また本実施形態では、第2位置決め部22が、第1位置決め部21における第1位置決め片34に固定されて設けられているが、他の実施形態では、第1位置決め部21と第2位置決め部22とを独立して設ける構成であってもよい。
【0102】
また本実施形態では、被移載物である冷蔵庫1の形状に応じて、第2近接方向Y1と第1近接方向X1とは互いに垂直な方向となるように選択されているが、他の実施形態では、被移載物の形状に応じて、第2近接方向Y1と第1近接方向X1とが垂直とならないように選択されてもよい。
【0103】
また本実施形態では、被移載物が冷蔵庫1である場合について説明しているが、これに限らず、テレビや洗濯機、電子レンジなどを被移載物としてもよい。
【0104】
また本実施形態では、各位置決め片34,44における各接触部37,38,47,48がそれぞれ板状に形成され、各接触部37,38,47,48と冷蔵庫1あるいは底パッド5とが面接触するように構成されているが、これに限らず、各接触部の形状を円柱状に形成し、冷蔵庫1あるいは底パッド5と線接触するように構成されてもよい。
【0105】
また本実施形態では、第1位置決め片34は、第1上段接触部37と第1下段接触部38とが一体的に形成されているが、他の実施形態では、第1下段接触部38を、第1上段接触部37に対して、可動片32aの変位方向に位置調節するための機構、すなわち距離w1を変化させるための機構を備えていてもよい。第2位置決め片44についても同様である。このように位置調節機構を備える構成とすることによって、冷蔵庫1あるいは底パッド5の形状・サイズが変更された場合であっても、その変更に応じて位置決め片を取り替える必要がなくなるので、作業者の負担を軽減することができる。
【符号の説明】
【0106】
1 冷蔵庫
5 底パッド
10 位置決め装置
11 第1位置決め装置
12 第2位置決め装置
21 第1位置決め部
22 第2位置決め部
31 第1可動部
32 第1駆動手段
33 第1弾性部材
34 第1位置決め片
37 第1上段接触部
38 第1下段接触部
41 第2可動部
42 第2駆動手段
43 第2弾性部材
44 第2位置決め片
47 第2上段接触部
48 第2下段接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被移載物の下方に挿入された被載置部材を、上下方向に垂直な平面に沿って、被移載物に対して位置決めする位置決め装置であって、
第1の可動部と、
前記平面に平行な第1移動方向に、前記第1の可動部を変位駆動する第1の駆動手段と、
一端部が前記第1の可動部に連結され、前記第1移動方向に沿って伸縮可能に延設される第1の弾性部材と、
前記第1の弾性部材の他端部が連結され、前記第1の可動部の前記第1移動方向への変位に伴って、被移載物に近接する第1近接方向に変位する第1の位置決め部材であって、
前記上下方向において、前記第1近接方向への変位によって被移載物に接触する位置に設けられた第1の上段接触部と、
前記上下方向において、前記第1近接方向への変位によって被載置部材に接触する位置に設けられ、かつ該第1近接方向に平行な方向において、第1の上段接触部に対して予め定める位置に配置された第1の下段接触部とを有する位置決め部材とを含み、
前記第1の駆動手段は、前記第1の位置決め部材が被移載物に接触するために必要な変位量よりも大きな変位量だけ変位するように、該第1の可動部を前記第1移動方向へ変位させ、
前記第1の弾性部材は、前記第1の可動部が前記第1移動方向へ変位するとき、第1の上段接触部が被移載物に接触するまでは、第1の可動部の変位を伝達して前記第1の位置決め部材を前記第1近接方向へ変位させ、第1の上段接触部が被移載物に接触した後は、第1の可動部の変位に伴って伸長または収縮することを特徴とする位置決め装置。
【請求項2】
前記第1の弾性部材は、圧縮コイルばねであり、第1の上段接触部が被移載物に接触した後は、可動部の変位に伴って収縮することを特徴とする請求項1記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記第1の弾性部材は、引張コイルばねであり、第1の上段接触部が被移載物に接触した後は、可動部の変位に伴って伸長することを特徴とする請求項1記載の位置決め装置。
【請求項4】
第2の可動部と、
前記平面に平行で、かつ前記第1移動方向とは異なる第2移動方向に、前記第2の可動部を変位駆動する第2の駆動手段と、
一端部が前記第2の可動部に連結され、前記第2移動方向に伸縮可能に延設される第2の弾性部材と、
前記第2の弾性部材の他端部が連結され、前記第2の可動部の前記第2移動方向への変位に伴って、被移載物に近接する第2近接方向に変位する第2の位置決め部材であって、
前記上下方向において、前記第2近接方向への変位によって被移載物に接触する位置に設けられた第2の上段接触部と、
前記上下方向において、前記第2近接方向への変位によって被載置部材に接触する位置に設けられ、かつ該第2近接方向に平行な方向において、第2の上段接触部に対して予め定める位置に配置された第2の下段接触部とを有する第2の位置決め部材とをさらに含み、
前記第2の駆動手段は、前記第2の位置決め部材が被移載物に接触するために必要な変位量よりも大きな変位量だけ変位するように、該第2の可動部を前記第2移動方向へ変位させ、
前記第2の弾性部材は、前記第2の可動部が前記第2移動方向へ変位するとき、第2の上段接触部が被移載物に接触するまでは、第2の可動部の変位を伝達して前記第2の位置決め部材を前記第2近接方向へ変位させ、第2の上段接触部が被移載物に接触した後は、第2の可動部の変位に伴って伸長または収縮することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の位置決め装置。
【請求項5】
前記第2の駆動手段は、第1の位置決め部材に固定されていることを特徴とする請求項4記載の位置決め装置。
【請求項6】
前記第2近接方向は、前記第1近接方向に垂直な方向であることを特徴とする請求項4または5に記載の位置決め装置。
【請求項7】
前記第2の弾性部材は、圧縮コイルばねであり、第2の上段接触部が被移載物に接触した後は、第2の可動部の変位に伴って収縮することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1つに記載の位置決め装置。
【請求項8】
前記第2の弾性部材は、引張コイルばねであり、第2の上段接触部が被移載物に接触した後は、第2の可動部の変位に伴って伸長することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1つに記載の位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−111677(P2013−111677A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258269(P2011−258269)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】