説明

低オフガス発生ポリウレタン

リソグラフィーなどの、汚染物質を極めて低濃度に保たなければならない用途において使用するための、低排ガス発生ポリウレタンが、記載される。特に、このポリウレタンは、電子部品の製造において特定の汚染問題を示すケイ素含有種を本質的に含まない。このポリウレタンは、フィルター装置または電子部品製造環境内の他の用途におけるポッティング材料として使用可能である。この新規ポリウレタン配合物の試験は、ポリエチレン製の市販のポッティング材料よりはるかに低いオフガス発生特性を示す。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
形状が性能要件によりそのサイズダウンを余儀なくされているので、電子部品の製造および加工において、製造段階がより清浄な環境下で実施されることがますます求められている。ケイ素含有種(例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)等のシロキサン;シラン;ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等のシラザン;シラノール)、分子状有機物(例えば、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、フタル酸塩、ブチル化ヒドロキシトルエン、塩素)、揮発性塩基(例えば、アンモニア、アミド、アミン)、および揮発性酸(SOx、NOx、ハロゲン化水素、硫酸、スルホン酸、カルボン酸)等のさまざまな種類の汚染物質の存在は、所望の性能特性を有する電子部品を製造する製造者の能力に悪影響を及ぼす。
【0002】
(発明の概要)
本発明の実施形態は、新規の低オフガス発生ポリウレタンを対象としている。本発明の1つの実施形態において、低オフガス発生ポリウレタンは、ポリウレタン基質、およびケイ素含有汚染物質を本質的に含まない添加剤(単数または複数)を含む。ポリウレタン基質は、発泡させられまたは配合されて、基質がほぼ大気圧で、約50℃の温度に約30分間曝される場合、1種以上のケイ素含有汚染物質を約0.0001μg/gm/分未満の速度で放出し得る。この低ガス発生ポリウレタンはまた、カーボンブラックを含んでよい。
【0003】
低オフガス発生ポリウレタンは、電子部品の製造環境において用いられるポリウレタンに対して、製造される電子部品または工程の他の部分の品質に有害な影響を及ぼさないだけ低レベルで、汚染物質を放出することを特徴としている。特に低オフガス発生は、従来からのリソグラフィーおよび/または液浸リソグラフィー等の特定の用途を対象とし得る。
【0004】
本発明のもう1つの実施形態は、ポリウレタンが発泡している本明細書のポリウレタン基質のいずれかを含むポッティング材料を対象としている。
【0005】
本発明のもう1つの実施形態において、直前の実施形態のポッティング材料は、フィルター膜、フィルターフレーム、およびポッティング材料を含む、フィルターユニットにおいて使用される。該ポッティング材料は、フィルターユニットをフィルター膜に取り付ける。
【0006】
本明細書のとおり、通常のポリエチレン系ポッティング材料の試験は、市販の製品が、多くの電子部品製造者が所望する低オフガス発生特性を達成しないことを示す。したがって、特定の電子部品製造環境において使用するための、低オフガス発生特性を有するポリマー材料を製造する必要がある。特に、ケイ素含有種および汚染物質の低オフガス発生特性は、乾燥状態でのリソグラフィー環境および液浸リソグラフィー(LIL)環境における使用のための、ポッティング材料および基質の製造等の用途において特に望ましい。
【0007】
本発明の上記のおよびその他の目的、特徴および利点は、種々の図面を通じて特性が同じ箇所に同じ番号が付けられている添付図面において説明するとおりに、以下の本発明の好ましい実施形態のより具体的な説明により、明らかである。これらの図面は、必ずしも原寸通りではなく、本発明の原理を説明することに重点が置かれている。
【0008】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施形態は、ポリウレタン基質とケイ素含有の汚染物質または種とを本質的に含まない添加剤とを含む低オフガス発生ポリウレタンを利用する。ケイ素を含有する種または汚染物質は、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)およびヘキサメチルシクロトリシロキサン等のシロキサン;イソブトキシトリメチルシランおよびトリメチルシラン(TMS)等のシラン;ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等のシラザン;シラノール;およびシリコーンを含む。さらに、ポリウレタン基質はまた、脂肪族炭化水素;BHT;塩化ベンゼン、他の置換されているおよび置換されていないフェノール;DOP、DEP、およびDBP等のフタル酸エステル;ならびに揮発性の酸および塩基等の他の汚染物質の低オフガス発生特性を有してよい。
【0009】
添加剤は、ポリウレタンに所望の特性を付与するためにポリウレタンポリマーに添加される、いずれかの組成物または化合物である。添加剤は、平滑剤、発泡剤、抗酸化剤、流れ性または粘度の制限剤または制御剤、可塑剤、難燃剤、顔料、充填剤を含むが、これらに限定されない。本発明の目的のために、添加剤は、ケイ素の種または汚染物質のオフガス発生の低減に基づいて選択される。添加剤中のケイ素含有種の低減または除去は、本発明の低オフガス発生ポリウレタンを製造するのに望ましい。
【0010】
特に、本発明の低オフガス発生ポリウレタンは、特に低いオフガス発生率、すなわち他のポリマー基質またはポリウレタン配合物に比べ、特定の望ましくない種または汚染物質の発生が低減されることを特徴としている。該ポリウレタンの低オフガス発生特性は、リソグラフィーおよび他の電子部品製造工程等の汚染レベルが非常に低いことが要求される用途においてポリウレタンを使用する場合に、特に有利である。
【0011】
1つの特定の用途は、ポッティング材料の分野である。ポッティング材料は、ギャップを埋めるまたは2つ以上のフラグメントを一緒に接着するシーリング材として機能し、電子部品または電子装置の製造の敏感な領域において使用される。例えば、電子部品製造環境におけるガス清浄化のためのフィルターユニットの製造において、ポリエチレンおよびポリウレタン等のポッティング材料は、フィルター膜をアルミニウムのフィルターフレームに接着する接着剤として通常使用される。ポッティング材料が有機系基質からなることが多いため、基質に内在するおよび基質上の有機物および他の種のオフガス発生は、電子部品製造における主要な汚染源を示す。したがって、低オフガス発生ポッティング材料は、それらが置かれる環境に対して有害な汚染物質を発生することなく、電子用途におけるシーリング材および/または接着剤として機能することができる。
【0012】
もう1つの特定の用途において、液浸リソグラフィー(LIL)の立ち上り領域では、特定の汚染物質を相対的に含まない環境に対する必要性がある。LILは、液体の屈折率が1より大きい(例えば、水は193nmでn=1.44)液体環境中におけるリソグラフィーの実施を含む。LILは、形状のより大きな解像度およびより大きな形状のより良好な焦点深度を潜在的に可能にする。しかしながら、水等の液体の透過率が高いことは、いずれかの汚染物質の少量でも存在すれば放射光の吸収を引き起こす。LILが商業的に成功するために、汚染物質、特にケイ素含有種の濃度低減が、非常に重要である。従って、本発明のいくつかの実施形態において、低オフガス発生基質は、LILの実施に許容されるレベルで汚染物質を放出している。
【0013】
より具体的に、例えば、電子部品の製造者は、凝縮可能な有機物の濃度が約0.9μg/m未満、およびより好ましくは約0.35μg/m未満で稼動する工程を必要とする。同様に、ケイ素含有種を約0.1μg/m未満に、および特定のフタル酸エステル(例えば、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジエチル(DEP))、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、および塩素有機物の個々の量を約0.2μg/m未満に維持することは、非常に重要である。さらに、揮発性塩基を約0.2μg/m未満、好ましくは約0.07μg/m未満に、および揮発性酸を約0.4μg/mから約0.03μg/mの範囲の濃度未満に維持することも、重要である。
【0014】
1つの実施形態において、ポリウレタンが約50℃の温度に約30分間曝露される場合、ポリウレタンは、1種以上のケイ素含有種または汚染物質をポリウレタン1g当たり1分間に約0.0001μg(μg/gm/分)未満放出する。これらのオフガス発生量は、本明細書のとおりに、GC/MSを用いて種または汚染物質を分析する吸収試験を用いて測定され得る。ケイ素含有種は、本明細書に記載する特定の種を含むが、これらに限定されない。もう1つの実施形態において、ポリウレタンは、約50℃の温度に約30分間曝露される場合、約0.0018μg/gm/分未満のBHTを放出する。本発明の他の実施形態において、ポリウレタンは、約50℃の温度に約30分間曝露される場合、1種以上の低分子量(分子量がテトラデカンの分子量未満の)脂肪族炭化水素および/またはフタル酸エステルの約0.0001μg/gm/分未満を放出する。もう1つの実施形態において、ポリウレタンは、約50℃の温度に約30分間曝露される場合、約0.0005μg/gm/分未満のクロロベンゼンを放出する。特にこれらの実施形態に対して、一般にオフガス発生は、実質的に大気圧すなわち約1気圧で生じる。
【0015】
1つの関連する実施形態において、ポリウレタンは、さらにカーボンブラックを含む。このようなポリウレタン基質は、発泡させられ得る。カーボンブラックは、一般にポリウレタン基質の黄変を防止する酸化防止剤として使用されるBHTを含まないポリウレタンの経年変化による変色を除去するために使用される。カーボンブラックはまた、ポリウレタン基質と相互作用して、ポリウレタンの低オフガス発生特性を促進する助けとなり得る。ポリウレタン基質の発泡は、特定の用途に必要なポリウレタンの量を低減する助けとなり、それにより材料コストを低減する。固形のポリウレタンは、約1.4g/cmの密度を有するが、発泡したポリウレタンの密度は、約0.15g/cmである。発泡はまた、特定用途において有利であり得る特定の機械的特性(例えば、低密度)をポリウレタンに付与し得る。
【0016】
本発明の実施形態で使用されるポリウレタン基質は、ジイソシアネート:
【0017】
【化1】

を、ジオール:
【0018】
【化2】

と反応させ、ポリウレタン:
【0019】
【化3】

を得ることにより、形成される。この反応は、発熱反応でありおよび極めて迅速に進行し、約2分で完了し、約5分間で完成した材料が使用され得る。
【0020】
発泡は、さまざまな方法において実施され得る。幾分かの水が、好ましくはポリオールに加えられる。水は、ジイソシアネートと反応してアミンおよび二酸化炭素を生成し、該二酸化炭素は、材料を形成するように作用する。該アミンは、さらにイソシアネートと反応して置換されている尿素を形成し、この置換されている尿素は、再びイソシアネートと反応してイミドカルボン酸ジアミド(またはビウレット)を形成する。したがって、過剰量のジイソシアネートを加えることにより、ポリマー網目構造の硬度を高め架橋強度を増進する傾向のあるこの副反応生成物の生成を制御できる。
【0021】
あるいは、フルオロカーボンは、反応体と混合される。反応で生じる発熱により、フルオロカーボンは気化し、発泡剤として作用し発泡体を形成する。窒素も、反応体とともに使用されて、発泡を制御または調整することができる。
【0022】
低オフガス発生ポリウレタンは、反応混合物に一般的および普遍的に組み込まれる特定の添加剤を除くことで、最終的なポリウレタン製品の特定の特性を制御することにより達成される。例えば、数多くのケイ素含有種が、少量ずつウレタン基質中に組み込まれる。HMDSOの痕跡量をヒュームドシリカとともに用いて、反応混合物の粘度を制御する。同様に、シリコーンを添加して、形成される基質の表面平滑化が抗発泡剤として作用することを可能にし、発泡の際の基質のセル構造の堅さを改善することを可能にする。従って、ポリウレタン配合物におけるこれらの成分の存在の除去は、基質が所望の低オフガス発生特性を達成することを可能にする。
【0023】
非ケイ素性の他の化学種も、ポリウレタン配合物に導入され、ポリウレタン基質のオフガス発生特性に悪影響を及ぼしている。ポリウレタン製造者は、経年変化によるポリウレタンの変色および黄変の防止のため、酸化防止剤としてBHTをポリウレタン配合物中に含む。配合物へのカーボンブラックの組み込みは、この美的品質を、このような特性が重要となる程度まで低減する助けとなることができる。フタル酸エステルも、一般に可塑剤としてポリウレタン配合物に加えられて、網目構造の柔軟性を増進しながらポリマー基質のガラス転移温度を下げる。オフガス発生特性に悪影響を及ぼす可能性のある他の添加剤は、難燃剤(ハロゲン化合物を含む)、着色剤(有機添加剤)、および他の充填剤を含む。
【0024】
したがって、本発明の実施形態は、ケイ素含有種および汚染物質を本質的に含まない配合物から形成されたポリウレタン基質を利用する。他の実施形態は、ケイ素を含まない種(例えば、BHT、フタル酸エステル、および本明細書のとおりの、炭化水素および揮発性の酸および塩基などの化学種)を本質的に含まないポリウレタン配合物を含む。ケイ素含有種および汚染物質を本質的に含まない配合物は、オフガス汚染物質を生成する可能性のあるケイ素含有種を、上記のようにポリウレタンポリマーに混合される添加剤から除去するまたは排除することにより達成できる。シリコーン部分を有するポリマー等の、ポリウレタンに安定して保持されオフガスにならないシリコーン種を除去する必要はない。
【0025】
反応体または形成されたポリウレタン基質において、RおよびR’の特定の性質は、本発明の範囲を限定しない。従って、トルエンジイソシアネート(2,4または2,6異性体)、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ナフタレン1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、またはこれらの混合物の反応から形成される特定のポリウレタンについても同じである。ポリエーテルおよびポリエステルを含み、さまざまな種類のジオールもまた、使用され得る。同様に、ポリオール(2個以上の水酸基を有するもの)およびイソシアネートとの組合せはまた、ポリウレタンを形成するために使用され得る。実際、望ましくないオフガス発生成分が配合物または完成した基質生成物内に存在しない限り、当業者に公知のポリウレタン配合物の範囲が、使用され得る。特定のポリウレタンの望ましくないオフガス発生特性は、本明細書中で検討する実験方法、すなわち脱離試験およびオフガス発生フィルターユニット試験を用いて特定できる。
【0026】
低ガス発生ポリウレタンの形成は、歯車ポンプ式計量を使用する図1Aに示す重力分配システム(Ashby Cross Company社)100により達成される。配合物の各成分を、ドラム110、120内に保持し、重力を計量システム140に供給する。計量システムは、ドラムラムポンプ分配器および標準ドラムポンプを含む。重力を供給することにより、可能性のある汚染物質として作用する潤滑油が必要なポンプの使用が回避される。ピストン式計量とは異なる歯車式計量を用いて反応体の流れを制御し、ここでも汚染物質になる可能性のある潤滑油の必要性を排除する。あるいは、ポンプ供給システムをも使用され得る。成分は、図1Bおよび1Cに示すように、使い捨て混合ヘッド135を含む分配器ユニット130内で力学的に混合される。図1Cにおける使い捨て混合ヘッド135の断面図において示される、流れ妨害構造体138は、イソシアネート反応体とポリオール反応体との混合を促進する。
【0027】
低オフガス発生ポリウレタンは、本発明の他の多くの実施形態において利用される。1つの実施形態において、ポッティング材料は、本明細書のポリウレタン組成物のいずれかに合致する低オフガス発生ポリウレタンを含む。本発明のもう1つの実施形態は、フィルター膜;フィルターフレーム(例えば、アルミニウム製);およびフィルター膜をフィルターフレームに接着するために使用されるポッティング材料を含むフィルターユニットを対象にしている。一般にフィルターフレームは、空気フィルターの製造時に使われるが、他の実施形態では、フレームの代わりにフィルターハウジングが使用され、この場合、ハウジングはさまざまな種類の流体の流れ(液体または気体)に適合できる。このようなポッティング材料は、本明細書のポリウレタン組成物のいずれかに合致する低オフガス発生ポリウレタンを含む。低オフガス発生ポリウレタン基質は、ケイ素含有種および他の汚染物質等の汚染物質のオフガス発生を制限し、電子部品製造環境を清浄に保つのを助ける。本発明の他の実施形態は、本明細書のポリウレタン基質の実施形態をLIL環境等の他の用途において利用し、ケイ素含有汚染を制限する。
【0028】
市販品および新規合成品の数多くのポッティング材料について実験を行い、それらのオフガス発生特性を試験した。さまざまなポッティング材料について、2つの異なる種類の試験をおこなった。試験を、すべてほぼ大気圧でおこなった。
【0029】
試験の1つのセットは、図2に示す装置200を用いて実際のフィルターユニット(本明細書中では「オフガス発生フィルター試験ユニット」と呼ぶ)のオフガス発生量を測定するために行った。流入ガス導管210は、本質的に清浄な空気を運ぶ。流入ガス導管210は、それぞれが個々のフィルターユニット270を備えている4つの平行なフィルタートンネル230、240、250、260により、流出ガス導管220に接続されている。フィルタートンネル230、240、250、260のそれぞれにおけるバルブ280を開けまたは閉じ、流入導管210から流出導管220への気体の流路を制御することができる。例えば、4つのバルブの内の3つを閉じて、1つだけを開き、開いたバルブフィルタートンネルにおけるフィルターユニット270のオフガス発生特性を試験することができる。フィルタートンネルを通してのガス流量が、バルブを用いて制御される。あるいは、複数のフィルタートンネルに空気を流し、それぞれのバルブを調整して、それぞれのフィルタートンネル内の空気の流量を測定することができる。サンプルポート290で、フィルターユニット270と接触した後の空気の下流サンプリングが可能である。サンプリングした空気は、GC/MSを用いて分析され、全体のおよび個々の汚染物質レベルを濃度(μg/m)を単位として、種々の回数にわたり測定する。サンプラーおよびGC/MSは、2種類の異なる検知構成において湿潤させられて、汚染物質種の2種類の分子量群を捕集する。高沸点物質検知構成は、ほぼCからCまで(ほぼトルエン)を超える分子量を有する種を検知するように構成され、低沸点物質検知構成は、ほぼCからCまで未満の分子量を有する種を検知するように構成されている。低沸点物質検知構成は、サンプラーとしてカーボトラップを用い、高沸点物質検知構成は、テネックスチューブを用いる。GC/MSも、検知の間に高沸点物質または低沸点物質に重点が置かれるかにより具体的に校正される。
【0030】
試験の2つめのセットを、サンプルからポッティング材料を直接脱離させることによりおこなった(ここで、「脱離試験」と呼ぶ)。ポッティング材料のサンプル約0.2mgを、50℃の環境に30分間曝露した。Perkin−Elmer社のTurbomatrix(商標)サンプラーを用いて、加熱したポッティング材料から脱離したいずれかの材料を、捕集した。二次トラップの脱離を300℃でおこなった。二次トラップからの脱離種の分析を、Perkin−Elmer社のGC−MSを用い、DB5カラム上で50℃から320℃までの温度勾配をつけておこなった。捕集された化学種の量を、ポッティング材料サンプルの量およびポッティング材料の曝露時間により基準化する。したがって、脱離の結果は、ポッティング材料サンプル1g当たり、サンプリング時間1分当たりの汚染物質のμg数(μg/gm/分)において示される。サンプリングおよびGC/MSは、汚染物質種の2種類の分子量群を捕集するように調整されており、高沸点物質検知構成は、ほぼCからCまで(ほぼトルエン)を超える分子量を有する種を検知するように構成されており、低沸点物質検知構成は、ほぼCからCまで未満の分子量を有する種を検知するように構成されている。
【0031】
高沸点物質種用に構成されたオフガス発生フィルターユニット試験装置を用い、Extraction Systems社(現在、Entegris Corporation、Chaska市、MN)製のE3000モデルのフィルターユニットを試験した。フィルタートンネルを通る流量は、約200フィート/分でほぼ一定であった。GC/MSにより特定された汚染物質を表すグラフを、図3Aに示す。グラフ300は、GC/MS吸収カラムから特定の時間320に放出された化学種の相対アバンダンス310を示す。この特定の時間はまた、保持時間として知られている。特定の保持時間は、特定の化学種に関連付けられ得る。GC/MSの保持時間の校正には、標準としてトルエンまたはヘキサデカンを用いる。グラフ300は、空気をオフガス発生フィルターユニット試験装置を通過させた後0時間から4時間までの間の空気のサンプリングの結果を示す。信号の積分により、約54μg/mの全有機炭素の流出を得る。24時間流した後、汚染物質の下流濃度は、図3Bに示すとおりに依然として有意であり、全積分有機汚染物質量は、約26μg/mである。
【0032】
フィルター用のポッティング材料に使用したポリエチレンビーズの脱離試験で得られたGC/MSデータを図4に示す。積分脱離化学種量は、約3μg/gm/分の合計量である。
【0033】
表1に、高沸点物質を検知するために構成され、ポリエチレンポッティング材料を使用するフィルターユニットを用いておこなわれたオフガス発生フィルターユニット試験からのより詳細な種分化情報を示す。この結果は、フィルタートンネル中で起きるオフガス発生の24時間の時間後の状態に対応する。保持時間は、NIST標準ライブラリーからの可能性のある化合物と確率的に合致する。図5に、対応するGC/MSのグラフを示す。
【0034】
【表1】




【0035】
脱離試験をまた、図6および7に示すとおりに、8種類の他の市販ポリエチレンポッティング材料に関しておこなった。各例において、大量の汚染物質が、存在する。したがって、試験した市販ポッティング材料のいずれもが、汚染物質の低濃度を達成しない。
【0036】
S1と呼ばれる新規ポッティング材料は、標準的なポリエチレンポッティング材料に比べて、オフガス発生フィルターユニット試験における汚染物質量の本質的により少量を提供する。S1は、カーボンブラックを有するポリウレタン基質であり、脂肪族炭化水素を低減させてあるが、痕跡量のシロキサン、HMDSO、およびBHTを依然として含む。図8Aおよび8Bに示す高沸点物質検知構成でのGC/MSの結果が示すように、標準的なポリエチレンポッティング材料は、S1製のポッティング材料を用いるフィルター(図8B)に比べ、検知されたオフガス汚染物質濃度が個々の化学種の量および全積分汚染物質量(図8A)ともにはるかに多い。
【0037】
しかしながら、汚染物質を捕集する低沸点物質検知構成を用いると、汚染物質の積分信号がはるかに大きくなり、ケイ素含有種の存在を検知する。表2には、オフガス発生フィルターユニット試験をポッティング材料としてS1を使用するフィルターユニットに対しておこなった3日間の各々の日に連続で検知された汚染物質を示す。2つのフィルターユニットをS1を用いて試験し、トンネルAおよびトンネルBにおいて実施した試験と呼んだ。
【0038】
【表2】

【0039】
表2に示すとおりに、低沸点物質試験では、検知された汚染物質の合計量に対応する全積分信号に関して、高沸点物質試験よりはるかに大きい信号を示す。低沸点物質検知構成では、高沸点物質検知構成において検知しなかった、HMDSO、シラン、およびシロキサンの存在も検知した。この結果は、除去が必要なケイ素含有種の存在をS1が依然として含んでいることを示した。
【0040】
新たなポッティング材料S2を調製した。S2は、カーボンブラックを有するポリウレタン基質を含む。一体式の(すなわち発泡していない)ポリウレタン基質S2は、HMDSO、シラン、シロキサン、およびBHTを含まずに調製した。脱離試験を、S2のサンプルについて高沸点物質検知構成および低沸点物質検知構成の両方を用いておこなった。表3に高沸点物質検知構成での結果を示し、表4に低沸点物質検知構成での結果を示す。
【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
高沸点物質検知構成での結果および低沸点物質検知構成での結果は、両方とも汚染物質の合計量が少量であることを示す。結果はまた、この試験の検出限界内でのケイ素含有種の存在を示さない。
【0044】
もう1つのポリウレタン基質S3を、基質を発泡させて使用材料の合計量を低減するようにして調製した。表5に、ポリウレタン成分およびS3を形成する完全な混合物の特性をまとめるが、S3は、1体積部成分Aに対し2体積部成分B(または、45重量部成分Aに対し100重量部成分B)から形成される。S2と同様にS3を、HMDSO、シラン、シロキサン、およびBHTを含まずに調製した。オフガス発生フィルターユニット試験中のS3についての試験は、S2の場合と同様に、良好なオフガス発生特性を示した。
【0045】
【表5】

【0046】
本発明を、その好ましい実施形態を参照しながら具体的に示し説明してきたが、当業者には、形態および詳細のさまざまな変更を添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく実施できることを理解される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1A】本発明の実施形態に合致する、低アウトガス発生ポリウレタン製造のためのポンプ計量システムを用いる重力分配システムを示す図である。
【図1B】本発明の一実施形態による、図1Aの重力分配システムとともに使用するための分配ユニットを示す図である。
【図1C】本発明の一実施形態による、図1Bのディスペンサーユニットとともに使用する使い捨て混合ヘッドの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による、ポッティング材料のオフガス発生を含むフィルターユニットのオフガス発生を検知するために使用される装置の概略図である。
【図3A】0時間から4時間、本質的に清浄な空気の200フィート/分に曝露した後の、E3000フィルターユニットより下流の発生オフガスを分析した、高沸点溶剤を検知するための検知構成であるGC/MSカラムから得られたグラフを示す図である。
【図3B】24時間、本質的に清浄な空気の200フィート/分に曝露した後の、E3000フィルターユニットより下流の発生オフガスを分析した、高沸点溶剤を検知するための検知構成であるGC/MSカラムから得られたグラフを示す図である。
【図4】約50℃の温度に約30分間曝露した場合の、ポッティング材料として使用した市販のポリエチレンのサンプルからの脱離種を分析した、高沸点溶剤を検知するための検知構成であるGC/MSカラムから得られたグラフを示す図である。
【図5】24時間の曝露後の、市販のポリエチレンポッティング材料を用いたフィルターユニットより下流の発生オフガスを分析した、高沸点溶剤を検知するための検知構成であるGC/MSカラムから得られた、表1に示す結果に対応するグラフを示す図である。
【図6】約50℃の温度に約30分間曝露した場合の、ポッティング材料として使用した市販のポリエチレンのサンプルからの脱離種を分析したGC/MSカラムの4つのグラフを示す図である。
【図7】約50℃の温度に約30分間曝露した場合の、ポッティング材料として使用した市販のポリエチレンの別のサンプルからの脱離種を分析したGC/MSカラムから得られた別の4つのグラフを示す図である。
【図8A】市販のポリエチレンポッティング材料を用いるフィルターユニットより下流の発生オフガスを分析した、高沸点物質を検知するための検知構成であるGC/MSカラムから得られたグラフを示す図である。
【図8B】ポッティング材料としてサンプルS1を用いるフィルターユニットより下流の発生オフガスを分析した、高沸点溶剤を検知するための検知構成であるGC/MSカラムから得られたグラフを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン基質、および
ケイ素含有汚染物質を本質的に含まない添加剤
を含む、低オフガス発生ポリウレタン。
【請求項2】
ポリウレタン基質が、発泡している、請求項1のポリウレタン。
【請求項3】
ポリウレタン基質が、ほぼ大気圧で、約50℃の温度に約30分間曝露される場合、1種以上のケイ素含有汚染物質を約0.0001μg/gm/分未満の速度で放出する、請求項1のポリウレタン。
【請求項4】
さらにカーボンブラックを含む、請求項1のポリウレタン。
【請求項5】
ケイ素含有汚染物質を本質的に含まないポリウレタン基質
を含む、ポッティング材料。
【請求項6】
ポリウレタン基質が、発泡している、請求項5のポッティング材料。
【請求項7】
ポリウレタン基質が、ほぼ大気圧で、約50℃の温度に約30分間曝露される場合、ケイ素含有汚染物質を0.0001μg/gm/分未満の速度で放出する、請求項5のポッティング材料。
【請求項8】
フィルター膜、
フィルターフレーム、および
フィルター膜をフィルターフレームに取り付けるポッティング材料(該ポッティング材料は、ケイ素含有汚染物質を本質的に含まないポリウレタン基質を含む。)
を含む、フィルターユニット。
【請求項9】
ポリウレタン基質が、発泡している、請求項8のフィルターユニット。
【請求項10】
ポリウレタン基質が、ほぼ大気圧で、約50℃の温度に約30分間曝露される場合、ケイ素含有汚染物質を0.0001μg/gm/分未満の速度で放出する、請求項8のフィルターユニット。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【公表番号】特表2008−545835(P2008−545835A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513601(P2008−513601)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/019803
【国際公開番号】WO2006/127638
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(505307471)インテグリス・インコーポレーテッド (124)
【Fターム(参考)】