説明

低ガス透過性ホース

【課題】ポリビニルアルコールの樹脂膜にて構成したバリア層による耐ガス透過性を低下させず、ガス透過を良好に抑制することのできる低ガス透過性ホースを提供する。
【解決手段】低ガス透過性ホース10を、ポリアミド樹脂の最内層12と、バリア層14と、内ゴム層16と、第1補強層18及び第2補強層22と、外ゴム層24との積層構造とする。バリア層14はけん化度90%以上のポリビニルアルコールの樹脂膜にて形成し、また第1補強層18と第2補強層22との間には中間ゴム層20を介装し且つその中間ゴム層20は、肉厚を0.3mm以下となしておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エアコンホース等の冷媒輸送用ホース、燃料電池用ホース、あるいは燃料ホースに用いて好適な低ガス透過性ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゴム層を主体として構成したホースが産業用,自動車用のホースとして各種用途に広く使用されている。
このようなホースを用いる主たる目的の1つはホースにて振動吸収することにある。
例えば自動車のエンジンルーム内に配設される配管用ホースの場合、エンジン振動やエアコンのコンプレッサ振動(エアコンホース即ち冷媒輸送用ホースの場合)、車両の走行に伴って発生する各種の振動をホース部分で吸収し、ホースを介して接続されている一方の部材から他方の部材へと振動が伝達されるのを抑制する役割を担っている。
このゴム層を主体としたホースはまた、自動車のエンジンルーム内等に配管用ホースとして用いる場合、その高い可撓性に基づいて配管レイアウトに沿った取回しや組付性にも優れている。
【0003】
ところでエアコンホース等の冷媒輸送用ホースにあっては、近年、環境保全の観点から内部流体としての冷媒のガスに対する耐透過性(低透過性)の要求が高まっており、こうした要請に対して従来のゴムホースでは十分に対応することができない。
そこで、例えば下記特許文献1に開示されているようにポリアミド樹脂の層を最内層として形成し、その最内層にて内部流体のガスに対する耐透過性を持たせるようになしたものが提案されている。
【0004】
ところで、従来からエアコンの冷媒として用いられてきたフロンは大気中のオゾン層破壊に繋がることから既にその使用が禁止されており、またこれに代わるR134a等の代替フロンも使用が制限される方向であり、そこでこれに代わる冷媒として二酸化炭素(CO)冷媒が注目され、実用化に向って研究が進められている。
しかしながら二酸化炭素冷媒は、従来から用いられている冷媒に比べてホースに対する透過性が著しく高く、冷媒のガスに対して耐透過性を持たせた従来の低ガス透過性ホースではガス透過を十分に抑制することができない。
而して二酸化炭素冷媒がガス透過によって失われて行くと、もともとこの二酸化炭素冷媒は冷媒としての能力が従来からのものに比べて低いために、エアコンの冷房能力が低下してしまう。
【0005】
冷媒輸送用ホースにおいて、冷媒に対する耐透過性を高めるために金属箔のテープをゴム層にスパイラル状に巻き付けてバリア層としたものが、下記特許文献2に開示されているが、このようにホースの断面中間位置に金属層を形成してしまうとホースとしての柔軟性が失われ、また内圧の繰返し作用によるホースの変形等によって異質の金属層が長期の間に剥離を生じ易く、而してそうした剥離が生じると耐透過性を確保できなくなってしまう。
【0006】
こうした事情の下で、本発明者らはガス透過に対する耐透過性(低透過性)に高い能力を有するポリビニルアルコール(けん化度90%以上)の樹脂膜をホース断面の中間に積層して、これをガスのバリア層となしたホースを開発し、先の特許願(特願2006−151305:未公開)において提案している。
【0007】
ポリビニルアルコール(PVOH)は材料的に炭酸ガス,窒素ガス,酸素ガス等多くのガスを通し難く、優れたガスバリア性を有していることが従来知られており、そこで本発明者らはこのポリビニルアルコールの樹脂膜をホース断面の中間位置にガスのバリア層として積層したものを案出した。
そしてこのホースは、ポリビニルアルコールの樹脂膜(バリア層)によって、二酸化炭素冷媒に対しても優れた耐透過性を有していることを確認した。
このポリビニルアルコールの樹脂膜をバリア層として有する低ガス透過性ホースは、近い将来使用される二酸化炭素冷媒の輸送用ホースとして極めて有望なものである。
【0008】
しかしながらこのポリビニルアルコールの樹脂膜をガスのバリア層として用いた低ガス透過性ホースは、新たな問題として次のような問題を内包している。
通常、ホース断面に積層される樹脂の層は押出成形にてゴム層等と積層状態に形成されるが、このポリビニルアルコール樹脂は融点が230℃に対して分解温度が270℃前後であり、融点と分解温度が近く、通常の押出成形が難しい。
【0009】
一方でこのポリビニルアルコール樹脂は、樹脂としては例外的に温水に可溶(メタノール,エタノール等のアルコールにも可溶)といった特徴的な性質を有しており、そこでこの性質に着目して本発明者らは、ホース断面へのポリビニルアルコールの樹脂膜の製膜の方法として、樹脂層を最内層として設け、そしてポリビニルアルコール樹脂の粉末を温水に溶解してコーティング液とし、そこに樹脂の最内層をディッピング(浸漬)して最内層の外面にコーティング液を塗布し、その後乾燥処理により溶剤である水を飛ばして除去し、樹脂の最内層の外面にポリビニルアルコールの樹脂膜を形成する方法を案出した。
この製膜の方法は先の特許願においても開示されている。
【0010】
ポリビニルアルコールの樹脂膜を断面中に有する低ガス透過性ホースは、その後においてゴム層の押出成形、補強層の編組形成等によって得ることができる。
尚、ポリビニルアルコールの樹脂膜は上記のディッピング以外の他の様々な塗布方法によっても形成することが可能である。
しかしながら何れにしてもこのポリビニルアルコールの樹脂膜は、水溶液等の溶液状態での塗布処理によって形成されるものであることから、実際的に形成することのできる膜厚はおのずと限られている。具体的にはこのポリビニルアルコールの樹脂膜は、通常1回の塗布処理にて得られる膜厚は10μ程度のものである。
【0011】
一方、二酸化炭素冷媒は従来の冷媒に比べて冷媒としての能力が低いことから、かかる二酸化炭素冷媒を用いたエアコンにおいては、必然的に二酸化炭素冷媒の流通する流路内圧、即ちホース内圧が従来に比べて格段と高くなる。
例えば従来、その内圧は常用圧力で1.5〜2MPa程度であったのが、二酸化炭素冷媒を用いる場合には常用圧力で15MPa程度となり、従来に比べて10倍に近い圧力増となる。
【0012】
この場合、その高い内圧の負荷によってホースが膨らみ、これに伴ってポリビニルアルコールの樹脂膜、即ちバリア層の膜厚が薄くなってしまう。
このポリビニルアルコールの樹脂膜は、もともとの膜厚が薄いものであり、従ってホースの膨れによって膜厚が更に薄くなると、ガスバリア性能の低下の度合いが大となり、場合によってはその樹脂膜の本来有するガスバリア性を十分発揮できなくなってしまう問題を生じるのである。
【0013】
以上エアコンホース等の冷媒輸送用ホースを中心として問題点を述べたが、こうした問題はガス透過を抑制すべき他のホース、例えば燃料ガスの透過が問題となる燃料ホースやその他低ガス透過性の求められる各種のホースにも共通して生じ得る問題である。
【0014】
【特許文献1】特許第3107404号公報
【特許文献2】特開2003−336774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は以上のような事情を背景とし、ポリビニルアルコールの樹脂膜にて構成したバリア層による耐ガス透過性を低下させず、その有する耐ガス透過性を十分に発揮させ得てガス透過を良好に抑制することのできる低ガス透過性ホースを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
而して請求項1のものは、(イ)内ゴム層と、(ロ)該内ゴム層の外側に積層された、補強線材を編組して成る内側の第1補強層及び外側の第2補強層と、(ハ)該第2補強層の更に外側に積層された外ゴム層と、(ニ)前記内ゴム層の更に内側に積層された、内部流体のガスに対して耐透過性を有するバリア層と、を有する積層構造の低ガス透過性ホースであって、樹脂層にて最内層を形成し、該最内層を支持層としてその外側にけん化度90%以上のポリビニルアルコールの樹脂膜を前記バリア層として積層形成するとともに、前記第1補強層と第2補強層との間には中間ゴム層が介装し且つ該中間ゴム層は肉厚を0.3mm以下となしてあることを特徴とする。
【0017】
請求項2のものは、(イ)内ゴム層と、(ロ)該内ゴム層の外側に積層された、補強線材を編組して成る内側の第1補強層及び外側の第2補強層と、(ハ)該第2補強層の更に外側に積層された外ゴム層と、(ニ)前記内ゴム層の更に内側に積層された、内部流体のガスに対して耐透過性を有するバリア層と、を有する積層構造の低ガス透過性ホースであって、樹脂層にて最内層を形成し、該最内層を支持層としてその外側にけん化度90%以上のポリビニルアルコールの樹脂膜を前記バリア層として積層形成するとともに、前記第1補強層と第2補強層との間には、それら第1補強層及び第2補強層を接着する接着剤層が介装してあることを特徴とする。
【0018】
請求項3のものは、請求項1又は2における低ガス透過性ホースが、前記内部流体として冷媒を輸送する冷媒輸送用ホースであることを特徴とする。
【0019】
請求項4のものは、請求項3における低ガス透過性ホースが、前記冷媒が二酸化炭素冷媒であることを特徴とする。
【0020】
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおける低ガス透過性ホースが、前記最内層がポリアミド樹脂を用いて構成してあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0021】
以上のように本発明は樹脂層にて最内層を形成し、その最内層を支持層として外側にけん化度90%以上のポリビニルアルコールの樹脂膜をバリア層として積層形成するとともに、第1補強層と第2補強層との間に中間ゴム層を介装し且つ中間ゴム層の肉厚を0.3mm以下となしたものである。
【0022】
断面の中間位置且つ補強層よりも内側にポリビニルアルコールの樹脂膜をバリア層として有する低ガス透過性ホースの場合、上記のように流体輸送時にホースに高い内圧がかかって、ポリビニルアルコールのバリア層が径方向外方への膨らみを生じると、かかるポリビニルアルコールのバリア層はもともとの形成可能な膜厚が薄いものであるため、膨らみによる膜厚の減少によって耐ガス透過性が低下してしまう。
【0023】
補強線材を編組して成る内側の第1補強層と外側の第2補強層とを有する補強ホースにあっては、流体輸送時にホースに内圧がかかったとき、第1補強層と第2補強層との間の径差(径方向寸法差)が大きいと、主として内側の第1補強層が、その補強効果によって補強層内側のポリビニルアルコールのバリア層の膨らみを抑えるように働き、外側の第2補強層はバリア層の膨らみを抑える働きを十分に担わない。
即ち、第1補強層と第2補強層との間の径差が大きいと、外側の第2補強層による膨らみ防止のための補強効果を十分に引き出し、発揮させることができない。
そのため内圧作用時に内側の第1補強層に主として荷重が集中して第1補強層の糸切れを引き起こし、結果的にポリビニルアルコールのバリア層の膨らみを十分に抑止することができない。
【0024】
そこで本発明では、第1補強層と第2補強層との間に介在させた中間ゴム層の肉厚を0.3mm以下の肉厚の薄いものとなし、第1補強層と第2補強層との径差を小さくしてそれらを径方向において近接させたものである。
かかる本発明の低ガス透過性ホースにあっては、ホースにかかる内圧をそれら第1補強層と第2補強層とが協働して分担してそれらの補強効果を発揮し、そのことによって、補強層の内側のポリビニルアルコールのバリア層の内圧による膨らみを効果的に抑制する。
これによりポリビニルアルコールのバリア層の膜厚の減少変化による耐透過性の低下を防止し得て、バリア層による内部流体のガスの耐透過性を良好に確保することが可能となる。
【0025】
尚本発明において、中間ゴム層の肉厚は0.1mm以上となしておくことが望ましい。
中間ゴム層の肉厚がこれよりも薄くなると、内圧の作用時に第1補強層と第2補強層との各補強線材間で擦れを生じるようになって、場合により糸切れを生じ、却ってバリア層の変形に対する抑制効果が小さくなってしまう。
【0026】
次に請求項2のものは、第1補強層と第2補強層との間に、それら補強層を接着する接着剤層を介装したものである。
請求項1における中間ゴム層は、その厚みを薄くするにしても限りがある。
そこでこの請求項2では第1補強層と第2補強層との間に接着剤層を介装したもので、この請求項2においては、第1補強層と第2補強層との径差をより小さくし得て、ホースに対し内圧がかかったときに、その内圧を第1補強層と第2補強層とでより均等に分担し得て、第2補強層による補強の働きをより効果的に引き出すことができ、補強層の内側のポリビニルアルコールのバリア層の膨らみを有利に抑制することができる。
そしてこのことによって内部流体のガスの耐透過性を良好に確保することが可能となる。
【0027】
またこの請求項2によれば、第1補強層と第2補強層との間及び各補強層における補強線材同士が接着剤層にて一体化されるため、補強線材同士の擦れも防止でき、その擦れによる糸切れ(補強線材の切れ)の問題も併せて解決することが可能となる。
【0028】
本発明のホースは、内部流体として冷媒を輸送する冷媒輸送ホースに用いて好適なものであり(請求項3)、特に冷媒として二酸化炭素冷媒を輸送するホースに適用して好適なものである(請求項4)。
【0029】
また本発明のホースは、樹脂の最内層をポリアミド樹脂を用いて構成しておくことが望ましい(請求項5)。
このことによってホース全体の耐ガス透過性をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は冷媒輸送用ホース、特に二酸化炭素冷媒の輸送用のホース等、常用圧15MPa以上で使用されるホースに用いて好適な低ガス透過性ホース(以下単にホースとする)で、樹脂層からなる最内層12と、その外側のポリビニルアルコールの樹脂膜からなるバリア層14と、その外側の内ゴム層16と、その外側の第1補強層18及び第2補強層22と、最外層としての外ゴム層24との積層構造をなしている。
ここで第1補強層18と第2補強層22との間には中間ゴム層20が介装されている。
【0031】
最内層12の材料としては各種の樹脂材を用いることが可能であるが、ここではポリアミド樹脂を用いて最内層12を構成するのが望ましい。
ポリアミド樹脂としては、例えばポリアミド6(PA6),ポリアミド66(PA66),ポリアミド99(PA99),ポリアミド610(PA610),ポリアミド612(PA612),ポリアミド11(PA11),ポリアミド912(PA912),ポリアミド12(PA12),ポリアミド6とポリアミド66との共重合体(PA6/66),ポリアミド6とポリアミド12との共重合体(PA6/12)等を例示することができ、これらを単独或いは2種以上併せて用いることができる。
なかでも層間接着性に優れることと、冷媒に対する耐透過性(低透過性)に優れることからポリアミド6を好適に用いることができる。
【0032】
またポリアミド6と無水マレイン酸変性ポリオレフィンとをアロイ化したものは曲げ弾性率が小さく柔軟性に優れ、耐熱性にも優れるので好適に用いることができる。具体的にはデュポン社製のザイテルST801,ザイテルST811,ザイテルST811HS等のザイテルSTシリーズ(何れも商品名)等、ポリアミドと変性ポリオレフィンとのブレンドも好適に用いることができる。
またその厚みとしては0.02〜2.0mmの範囲内とすることができる。
【0033】
バリア層14は、上記のようにポリビニルアルコールの樹脂膜にて形成されるが、ここではけん化度90%以上のポリビニルアルコールを用いることが必要である。
ポリビニルアルコールは、工業的にはポリ酢酸ビニルをけん化(加水分解)することによって得られ、そのけん化度は以下の化学式(化1)におけるmとnとの値によって定まる。
詳しくはこれらmとnとの値を用いて下記式(数1)によって算出される。
このけん化度は、加水分解の程度を表わす数値で、完全加水分解されたものはけん化度が100%となる。
【0034】
【化1】

【0035】
【数1】

【0036】
けん化度の大きいものは高分子中の水酸基の量が多く、これに伴って耐ガス透過性能が高くなる。
本実施形態では、けん化度が90%以上のポリビニルアルコールを用いることが必要である。
けん化度が90%未満であると、ガスに対する耐透過性が不十分であり、特に二酸化炭素冷媒に対して所望のレベルでの耐透過性能(低透過性能)を得ることができなくなる。
【0037】
このバリア層14は、厚みとしては5〜100μmの範囲内としておく。
5μm未満であると耐透過性が不十分となり、またピンホールが発生し易くなる。一方100μm超では膜硬さが硬くなり、ホースとしての柔軟性に悪影響を及ぼすとともに、割れ(クラック)を発生する恐れも生ずる。
【0038】
尚、ポリビニルアルコールの樹脂膜からなるバリア層14は、一般に最内層12に対して直接的に接着することが難しいことから、それらの間に接着剤層を形成して、その接着剤層にて最内層12とバリア層14とを接着する。
この場合においてその接着剤としてはゴム糊系,ウレタン系,ポリエステル系,イソシアネート系,エポキシ系等の接着剤を例示することができ、これらを単独で或いは2種以上併せて用いることができる。なかでもゴム糊系接着剤が、最内層12とバリア層14との層間接着性に優れることから、特に好適である。
【0039】
一方内ゴム層16,外ゴム層24としては、例えばブチルゴム(IIR),塩素化ブチルゴム(Cl−IIR),臭素化ブチルゴム(BR−IIR)等のハロゲン化ブチルゴム,アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR),クロロプレンゴム(CR),エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM),エチレン−プロピレンゴム(EPM),フッ素ゴム(FKM),エピクロロヒドリンゴム(ECO),アクリルゴム,シリコンゴム,塩素化ポリエチレンゴム(CPE),ウレタンゴム等のゴム材料を好適に用い得るが、特に内ゴム層16としては、ブチルゴム(IIR),ハロゲン化ブチルゴムが、外からの水に対する耐水性に優れていることから、特に好適であり、また外ゴム層24としては耐候性の観点からEPDMが特に好適である。
ここで各ゴム材は、通常はカーボンブラック等の充填剤や加硫剤その他各種の配合剤を適宜に配合して用いることとなる。
尚、内ゴム層16についてはその厚みを0.5〜5.0mmの範囲内とすることが望ましく、また外ゴム層24についてはその厚みを0.5〜2.0mmの範囲内とすることが望ましい。
【0040】
上記第1補強層18,第2補強層22の材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),アラミド,ポリアミド,ビニロン,レーヨン,金属ワイヤ等の補強線材を用いることができ、これをスパイラル編組,ブレード編組,ニット編組等により編組してそれら第1補強層18,第2補強層22を構成することができる。
尚、第1補強層18と第2補強層22との間の中間ゴム層20については、内ゴム層16,外ゴム層24と同様の上記例示した材料を用いることができる。
【0041】
但しこの中間ゴム層20は、その厚みを0.3mm以下の範囲内としておくことが必要である。
その厚みが0.3mmより厚くなると、第1補強層18と第2補強層22との径差が大きくなり過ぎて、ホース10に対し内圧がかかったときに、第1補強層18と第2補強層22とに対する力のかかり方が偏ってしまい、第1補強層18と第2補強層22とによって内圧が良好に分担されなくなり、ひいてはバリア層14の膨れに対する抑制効果が小となって、バリア層14による耐ガス透過の性能を十分に発揮させられなくなってしまう。
【0042】
一方で、この中間ゴム層20の厚みは0.1mm以上となしておくことが望ましい。
中間ゴム層20の厚みが0.1mm未満になると、第1補強層18と第2補強層22とが接近し過ぎて、ホースに内圧が繰返し作用すると第1補強層18と第2補強層22との間で補強線材が擦れを生じるようになって糸切れ(補強線材の切れ)が発生し、却って第1補強層18及び第2補強層22による補強効果が低下してしまう。
【0043】
本実施形態のホース10は、例えば次にようにして製造することができる。
先ず、樹脂層からなる最内層12を押出成形にて成形し、その外面に接着剤層を塗布等にて形成する。
そしてポリビニルアルコールの粉末を温水に溶解してコーティング液を調製し、そこに最内層12を例えばディッピング(浸漬)することにより最内層12の外面(詳しくは接着剤層の外面)にコーティング液を塗布し、しかる後乾燥処理を行ってコーティング液の溶剤としての水を飛ばして除去し、これによりポリビニルアルコールの樹脂膜を最内層12の外面に接着剤層を介して形成する。
但し上記のディッピングによらないでスプレー,ロールコート,刷毛塗り等他の手法を適用することも可能である。
この1回のコーティングにより得られるポリビニルアルコールの樹脂膜の厚みは10μm程度である。
樹脂膜の厚みを更に厚くするには同様の処理を何回か繰り返す、或いはポリビニルアルコール水溶液濃度を上げる。
【0044】
以上のようにしてポリビニルアルコールの樹脂膜からなるバリア層14を最内層12の外面に積層形成した後、常法に従って内ゴム層16をバリア層14の外面に積層し、更に第1補強層18の編組、中間ゴム層20の押出成形、第2補強層22の編組、外ゴム層24の押出成形を行って長尺の押出成形体を得、これを加硫処理後に所定寸法ごとに切断することによって、図1に示すホース10を得ることができる。
尚ホース10の内径は5〜40mm程度である。
【0045】
以下はホース10の各層の構成の具体例である。
最内層12
材質:PA6,厚み:0.15mm
バリア層14
材質:けん化度99%のポリビニルアルコール樹脂,厚み:10μm
内ゴム層16
材質:臭素化ブチルゴム,厚み:1.6mm
第1補強層18
材質及び編組:アラミド糸のブレード編組
中間ゴム層20
材質:EPDM,厚み:0.3mm
第2補強層22
材質及び編組:アラミド糸のブレード編組
外ゴム層24
材質:EPDM,厚み:1.0mm
【0046】
本実施形態の10にあっては、第1補強層18と第2補強層22との径差が小さく、ホースにかかる内圧をそれら第1補強層18と第2補強層22とが協働して分担して補強効果を発揮し、そのことによって補強層の内側のポリビニルアルコールのバリア層14の内圧による膨らみを効果的に抑制する。
【0047】
これによりポリビニルアルコールのバリア層14の膜厚の減少変化による耐透過性の低下を防止して、かかるポリビニルアルコールのバリア層14による内部流体のガスの耐透過性を良好に確保することが可能となる。
【0048】
上記実施形態において、第1補強層18及び第2補強層22の補強線材の編組角度を静止角度である55°となしておくことができるが、場合によって図2に示しているように第1補強層18の編組角度θを、静止角度(55°)よりも小さい角度となし、また一方第2補強層22の編組角度θを、静止角度よりも大角度となしておくことができる。
この場合、ホース10に内圧がかかったときに、その内圧の作用によって第1補強層18は、図3(ロ)に示しているように編組角度を静止角度とする方向にホース軸方向の収縮を伴って大径化する。
【0049】
一方第2補強層22は、図3(イ)に示しているように内圧の作用によって同じく編組角度を静止角度とする方向に、ホース軸方向の伸長を伴って小径化する。
その結果として、内圧の作用により第1補強層18と第2補強層22とが径方向の寸法変化を伴って互いに接近し、当初よりも近接した状態となる。
【0050】
即ち、中間ゴム層20の厚みを上記0.3mmよりも薄くすることによって、当初から第1補強層18と第2補強層22とが互いに接近した位置にあることに加えて、内圧の作用によりそれら第1補強層18と第2補強層22とが更に接近し、このことによって第1補強層18及び第2補強層22とにかかる内圧が更に均等化して、それら第1補強層18及び第2補強層22によるバリア層14の膨らみ変形に対する抑制効果がより高くなる。
【0051】
この場合において、第1補強層18については編組角度θを45°〜55°未満(より望ましくは50°〜54°未満)の範囲内とし、また第2補強層22についてはその編組角度θを55°超〜60°の範囲内としておくことが望ましい。
【0052】
図4は本発明の他の実施形態を示している。
第1補強層18と第2補強層22とを有するホース10にあっては、第1補強層18と第2補強層22とに協働して内圧を分担させるためには、それらができるだけ近接していることが望ましく、そのため第1の実施形態では第1補強層18と第2補強層22との間に介在する中間ゴム層20の肉厚を0.3mm以下としている。
但しこのように中間ゴム層20を介在させる場合には、第1補強層18と第2補強層22とを近接させるにしても、自ずと限界がある。
そこでこの実施形態ではかかる中間ゴム層20に代えて、第1補強層18と第2補強層22との間に、それらを接着する接着剤層26を介在させている。
【0053】
ここで接着剤層26の接着剤として以下のもの、即ちゴム糊系接着剤を例示することができるが、内ゴム層または、外ゴム層と同じ材質の接着剤を用いると接着が良好であり望ましい。本実施形態の場合、外面ゴム層の材質と同じEPDM系のゴム糊または、内ゴム層の材質と同じブチル系のゴム糊がより好ましい。
また接着剤層26の厚みは1〜10μmの厚みとなしておくことが望ましい。
尚他の構成については、図1に示す第1の実施形態と同様である。
【0054】
尚、ゴム材をトルエン等の溶剤に溶解してゴム糊とし、これを接着剤として用いる場合には、かかるゴム糊をフェルト等に含浸させておいて、そのフェルトにて補強線材をしごくようにして補強線材にゴム糊を付着させ、接着処理を行う。そして補強線材を編組して第1補強層18と第2補強層22を構成する。
このゴム糊は加硫処理によって自身が加硫されるとともに、第1補強層における補強線材同士,第2補強層22における補強線材同士、更には第1補強層18と第2補強層とをそれぞれ加硫接着により一体化する。
【0055】
但しゴム糊は加硫後において一定の弾性を有していることから、かかるゴム糊が第1補強層18と第2補強層22との間に介在することによって、接着剤層26が第1補強層18と第2補強層22との間で緩衝作用をなし、またその接着作用によりホース10に内圧が繰返し加わったときの補強線材と補強線材との間の擦れを良好に防止する。
【0056】
この実施形態においても、第1補強層18と第2補強層22との径差を小さくし得て、ホース10に作用する内圧を第1補強層18と第2補強層22とが協働して分担し、補強効果を発揮する。
従って本実施形態においても、補強層の内側のポリビニルアルコールのバリア層14の膨らみを抑制し、内部流体のガスに対する耐透過性を良好に確保することができる。
【0057】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば本発明の低ガス透過性ホースは冷媒輸送用ホース、特に二酸化炭素冷媒の輸送用ホースとして好適なものであるが、他の低ガス透過性の要求される各種ホースにも適用可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態である低ガス透過性ホースの断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態の低ガス透過性ホースの要部を切り欠いて示す図である。
【図3】同実施形態の作用の説明図である。
【図4】本発明の更に他の実施形態の低ガス透過性ホースの断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10 低ガス透過性ホース
12 最内層
14 バリア層
16 内ゴム層
18 第1補強層
20 中間ゴム層
22 第2補強層
24 外ゴム層
26 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)内ゴム層と、(ロ)該内ゴム層の外側に積層された、補強線材を編組して成る内側の第1補強層及び外側の第2補強層と、(ハ)該第2補強層の更に外側に積層された外ゴム層と、(ニ)前記内ゴム層の更に内側に積層された、内部流体のガスに対して耐透過性を有するバリア層と、を有する積層構造の低ガス透過性ホースであって
樹脂層にて最内層を形成し、該最内層を支持層としてその外側にけん化度90%以上のポリビニルアルコールの樹脂膜を前記バリア層として積層形成するとともに、前記第1補強層と第2補強層との間には中間ゴム層が介装し且つ該中間ゴム層は肉厚を0.3mm以下となしてあることを特徴とする低ガス透過性ホース。
【請求項2】
(イ)内ゴム層と、(ロ)該内ゴム層の外側に積層された、補強線材を編組して成る内側の第1補強層及び外側の第2補強層と、(ハ)該第2補強層の更に外側に積層された外ゴム層と、(ニ)前記内ゴム層の更に内側に積層された、内部流体のガスに対して耐透過性を有するバリア層と、を有する積層構造の低ガス透過性ホースであって
樹脂層にて最内層を形成し、該最内層を支持層としてその外側にけん化度90%以上のポリビニルアルコールの樹脂膜を前記バリア層として積層形成するとともに、前記第1補強層と第2補強層との間には、それら第1補強層及び第2補強層を接着する接着剤層が介装してあることを特徴とする低ガス透過性ホース。
【請求項3】
前記内部流体として冷媒を輸送する冷媒輸送用ホースである請求項1又は2に記載の低ガス透過性ホース。
【請求項4】
前記冷媒が二酸化炭素冷媒である請求項3に記載の低ガス透過性ホース。
【請求項5】
前記最内層がポリアミド樹脂を用いて構成してあることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の低ガス透過性ホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−248995(P2008−248995A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89646(P2007−89646)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】