説明

低タンパク質チーズ様食品

【課題】タンパク質含量を低減もしくはゼロとした場合においてもチーズ特有の保形性、加工適性および食感を有する低タンパク質チーズ様食品を提供する。また、常温では切断、加工などの作業性に優れる保形性を有する一方、オーブンで加熱することにより良好に溶融し、ピザなどの最終食品に好適に使用できる低タンパク質チーズ様食品を提供する。更には、チーズに代えて油脂を添加することにより生じる加熱時の油分分離も顕著に抑制されたチーズ様食品を提供する。
【解決手段】タンパク質含量が10質量%以下と低いチーズ様食品中に、以下の成分を含有する;
(a)馬鈴薯由来であり、DE2〜5のデキストリン、
(b)カラギナン、寒天、脱アシル型ジェランガム及びLMペクチンからなる群から選ばれる1種以上、
(c)乳化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質含量を低減した低タンパク質チーズ様食品に関する。詳細には、タンパク質含量を低減もしくはゼロとした場合においても、チーズ特有の保型性、加工特性及び食感を有し、更には加熱時に良好な溶融性を示すチーズ様食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の乳原料の高騰を受け、チーズ使用量を低減させつつも、プロセスチーズ、ナチュラルチーズ等のチーズに類似した外観や加工特性、食感を有したチーズ様食品(いわゆるイミテーションチーズ)が求められている。通常、これらチーズ様食品は、チーズ使用量の低減に伴い、原料チーズに由来するタンパク質含量も低減するため、保型性が低下し、チーズ使用量を低減して調製されたチーズ様食品はスプレッド状やペースト状となりやすい。そのため、プロセスチーズやナチュラルチーズ等のチーズに類似した保型性や食感を有するチーズ様食品を製造するために、脱脂粉乳、全脂粉乳、乳清タンパク等の乳タンパク質や大豆タンパク質などの植物性タンパク質を併用する手法が用いられてきた。しかし、乳タンパク質は昨今世界的に需給が不安定な状況が続き、価格が乱高下し不安定であること、並びに腎不全患者用の低タンパク質食品への応用が検討されている現状では、タンパク質含量自体を低減させたチーズ様食品が求められている。
【0003】
タンパク質含量が低減されたチーズ様食品として、例えば水分、酸味料、親水コロイド、約15%未満のチーズ由来成分およびチーズ調味料を含有したイミテーションチーズ組成物(特許文献1)、イナゴマメガムおよびタラガムからなる群から選ばれる第1の安定剤およびキサンタンガム、カラゲナン、マルトデキストリン、ペクチン、イヌリン、デンプン、ゼラチンおよび寒天からなる群から選択される第2の安定剤を含む低タンパク質クリームチーズ(特許文献2)が開示されている。
【0004】
一方、チーズ様食品に関する技術として、チーズ様の保型性を有する固形食品にカラギナン、アラビアガム、ペクチン、加水分解デンプン等の多糖類を必要に応じて添加できること(特許文献3)、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グァーガム、カラギーナン、タラガントガム、アラビアガム等のガム質とデキストリンを含有してなる軟質チーズ類(特許文献4)が開示されている。また、特許文献5には、ガティガムを用いて油中水型乳化食品の食感を改良する方法が開示されている。しかし、これら特許文献1〜5には特定のデキストリン及び多糖類を併用することはもちろん、特許文献3〜5においては、タンパク質含量を低減させつつも、保型性を有するチーズ様食品すら何ら記載されていない。
【0005】
【特許文献1】特表2005−503136号公報
【特許文献2】特開2005−270106号公報
【特許文献3】特開昭64−85041号公報
【特許文献4】特開昭62−14742号公報
【特許文献5】特開2007−151480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、チーズ様食品はチーズ由来のタンパク質並びに別途添加する脱脂粉乳、植物性タンパク質等のタンパク質含量を高めることにより、チーズ特有の食感や保型性が保たれる。そのため、チーズ含量や脱脂粉乳等のタンパク質含量が低減すると、調製されたチーズ様食品はクリームチーズのようなスプレッド状やペースト状となりやすく(特許文献2及び4)、カット、スライス、すりおろしなどの加工適性を有するチーズ様食品を調製することは困難であった。実際、特許文献2には6.5%未満のタンパク質からなる低タンパク質チーズ様食品が開示されているが、開示されているチーズ様食品はクリームチーズに過ぎない。加えて、脱脂粉乳などのタンパク質は、タンパク質含量を低減したチーズ様食品の保形性、油分の分離抑制に大きく寄与するため、チーズ様食品におけるタンパク質含量の低減は、著しい保形性の低下や加熱時の油分分離を引き起こす。
【0007】
かかるチーズ様食品に保形性を付与する方法としては、澱粉、デキストリンやゲル化剤などを添加する方法が挙げられるが、上記特許文献4に開示されているDE7〜9のデキストリンや、特許文献1〜3に開示されているゲル化剤(寒天、カラギナン、ゼラチン、ペクチン等)を用いた場合はゼリーやプリン様の水分含量の高いゲルに近い食感や、ねばり、マーガリンに類似した伸展性のあるスプレッド状となり、カット、スライス、すりおろしなどの加工適性を有するチーズ特有の食感(ボディ感)からはほど遠いものであった。
【0008】
また、本来のチーズはオーブンなどで加熱した際に一定の保形性は保持しつつも、とろけるチーズのように良好な溶融性を有することを特徴とする。かかる点、特許文献1に開示されているチーズ様食品は、常温時に保形性を有しているものの、加熱によりチーズ様食品が溶解して液体となってしまいチーズ本来の加熱溶融性を再現することはできなかった。同様にして、特許文献1〜3に開示されているゲル化剤(寒天、カラギナン、ゼラチン、ペクチン等)を用いて調製されたチーズ様食品も、常温では保型性を有するものの、オーブンやオーブントースター等の加熱によりチーズ様食品が溶解して溶液状となり、ピザやグラタンなどに応用されるチーズ様食品として使用することができなかった。
【0009】
更に、チーズ様食品はチーズ特有の濃厚感(油脂感)を付与するために、低減したチーズに代えて油脂を添加して調製されることが多い。しかし、別途油脂を添加することにより調製されるチーズ様食品は、タンパク質の低減に伴い油脂が分離しやすくなり、特に加熱時に生じる油脂分離が、商品価値を著しく低下させることが大きな課題となっていた。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑み、タンパク質含量を低減もしくはゼロとした場合においてもチーズ特有の保形性、および食感を有する低タンパク質チーズ様食品を提供することを目的とする。また、常温では切断、加工などの作業性に優れる加工適性を有する一方、オーブンで加熱することにより良好に溶融し、ピザなどの最終食品に好適に使用できる低タンパク質チーズ様食品を提供することを目的とする。更には、チーズに代えて油脂を添加することにより生じる加熱時の油分分離も顕著に抑制されたチーズ様食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記従来技術の問題点に鑑み鋭意研究を重ねていたところ、低タンパク質チーズ様食品として、タンパク質含量を10質量%以下まで低減させた場合であっても、以下の成分を含有することにより上記目的を達成することを見出して本発明に至った;
(a)馬鈴薯由来であり、DE2〜5のデキストリン、
(b)カラギナン、寒天、脱アシル型ジェランガム及びLMペクチンからなる群から選ばれる1種以上、
(c)乳化剤。
【0012】
本発明は、以下の態様を有する低タンパク質チーズ様食品に関する;
項1.タンパク質含量が10質量%以下のチーズ様食品であって、以下の成分を含有することを特徴とする低タンパク質チーズ様食品;
(a)馬鈴薯由来であり、DE2〜5のデキストリン、
(b)カラギナン、寒天、脱アシル型ジェランガム及びLMペクチンからなる群から選ばれる1種以上、
(c)乳化剤。
項2.前記(c)乳化剤が、アラビアガム、ガティガム及びオクテニルコハク酸化澱粉からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1記載の低タンパク質チーズ様食品。
項3.(a)馬鈴薯由来であり、DE2〜5のデキストリンに加え、(b)カラギナン及び(c)アラビアガムを含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の低タンパク質チーズ様食品。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、タンパク質含量を低減もしくはゼロとした場合においてもチーズ特有の保形性および食感を有する低タンパク質チーズ様食品を提供することが可能となる。かかる低タンパク質チーズ様食品は、常温ではカット、スライス、すりおろしなどの加工適性に優れた保型性を有する一方、オーブンで加熱することにより、とろけるチーズに類似した溶融性を示すため、ピザ、グラタンなどの最終食品に好適に使用できる。更には、チーズに代えて油脂を添加することにより生じる加熱時の油分分離も顕著に抑制され、安定性の高い低タンパク質チーズ様食品を提供できる。このように、タンパク質を低減させることにより低コストでチーズ様食品を調製することができ、また、これら低タンパク質チーズ様食品は腎不全患者用の低タンパク質食品への応用も可能である。更には、チーズや乳タンパク質を不使用とすることにより、乳アレルギーフリーのチーズ様食品を提供することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の低タンパク質チーズ様食品はタンパク質含量が10質量%以下まで低減されていることを特徴とする。一方、ゴーダチーズ、チェダーチーズなどの、カット、スライス並びにすりおろしといった、加工適性を有する一般的なチーズのタンパク質含量は約20〜30質量%程度であり、本発明ではかかるタンパク質含量を10質量%以下、つまり半減させた場合においても、良好な保型性、加工適性、チーズ特有の食感並びに溶融性を満たすという画期的な効果を奏する。一方、タンパク質含量が低いチーズとしては、タンパク質含量が約8質量%のクリームチーズが挙げられるが、本発明のチーズ様食品は、カット、スライス並びにすりおろしといった加工適性を有する点で、スプレッド若しくはペースト状であるクリームチーズと相違する。なお、本発明でいうチーズ様食品中のタンパク質含量は、必要に応じて添加されるチーズ自体のタンパク質含量も含めた値である。なお、かかるタンパク質含量はチーズの種類によっても相違するが、例えばゴーダ(通常26質量%)、チェダー(通常26質量%)、エダム(通常29質量%)、エメンタール(通常27質量%)、カテージ(通常13質量%)、カマンベール(通常19質量%)、パルメザン(通常44質量%)である。以下、本明細書中において、低タンパク質チーズ様食品とは、タンパク質含量が10質量%以下であるチーズ様食品をいう。
【0015】
以下、本発明の構成要件について詳細に説明する。
(a)馬鈴薯由来であり、DE2〜5のデキストリンを含有する。
本発明で用いるデキストリンは馬鈴薯由来の澱粉から得られるデキストリンであることを特徴とする。ここで、馬鈴薯以外の澱粉から得られるデキストリンを用いた場合は、例えDEが2〜5の範囲内であるデキストリンを用いた場合であっても、チーズ特有のボディ感や濃厚感を再現することができない。加えて、食感がざらついたりなめらかさに欠ける場合や、十分な保形性を有さない場合がある。
【0016】
本発明で用いるデキストリンはDEが2〜5、好ましくは3〜4の範囲である。馬鈴薯由来であり、前記DE値を有するデキストリンを用いることにより、後述する(b)成分と共にチーズ様食品に保形性及びチーズ特有の濃厚感を付与することが可能となる。更には、オーブンやオーブントースター等で加熱した際に、チーズ様食品が液状となることなく、とろけるチーズのようにチーズ特有の溶融性を付与することが可能である。
【0017】
DEとは、一般には澱粉の分解程度を示す指標であり、澱粉を加水分解したときに生成するデキストリンおよびぶどう糖や麦芽糖等の還元糖の割合を示すものである。全ての還元糖をぶどう糖(dextrose)の量に換算し、その割合を全体の乾燥固形分に対する重量%で表わしたものである。このDEが大きい程、還元糖の含有量が多くデキストリンが少なく、逆にDEが小さい程、還元糖の含有量が少なくデキストリンが多いことを意味する。本発明ではDEが2〜5であるデキストリンを用いることを特徴とするが、DEが2未満であるデキストリンを用いた場合は得られたチーズ様食品の食感がぼそぼそとしたものになる上、チーズ様食品をスライス、カットもしくはすりおろした際にチーズ様食品がボロボロと崩れてしまう。一方、DEが5より大きいデキストリンを用いた場合は、チーズ様食品特有の保型性を付与することができず、またチーズ特有の濃厚感を付与することもできない。
【0018】
(a)馬鈴薯由来であり、DE2〜5のデキストリンは、常法に従って調製することが可能である。具体的には、馬鈴薯澱粉を含有した溶液にアミラーゼ等の酵素を作用させ、馬鈴薯澱粉を加水分解し、分解の程度がDE2〜5の範囲内で酵素を失活させることにより調製することが可能である。
【0019】
本発明の低タンパク質チーズ様食品中の上記デキストリンの添加量はチーズ様食品中のタンパク質含量や求められる物性に応じて適宜調整することが可能であるが、チーズ様食品中、1〜20質量%、好ましくは5〜18質量%、更に好ましくは7〜15質量%が挙げられる。上記デキストリンの添加量が1質量%未満となると所望の効果(チーズ特有の保型性や食感)が得られなくなる場合があり、一方で20質量%より大きくなると、チーズ様食品の調製時に高粘度を呈し、チーズ様食品を調製する際の作業性が低下する場合がある。
【0020】
(b)カラギナン、寒天、脱アシル型ジェランガム及びLMペクチンからなる群から選ばれる1種以上を含有する。
本発明で使用するカラギナンについて、一般的にカラギナンとして市販されているものは、イオタタイプ、カッパタイプ、ラムダタイプのものがあるが、本発明ではイオタカラギナン及び/又はカッパカラギナンを用いることが好ましく、更に好ましくはカッパカラギナンである。商業的に入手可能なカッパカラギナン製剤として、例えば三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「カラギニンCSK−1」を挙げることができる。本発明の低タンパク質チーズ様食品中のカラギナンの添加量としては、0.1〜3質量%、好ましくは0.2〜2質量%、更に好ましくは0.3〜1.5質量%を挙げることができる。
【0021】
寒天としては、天草、オゴノリ、オバクサ、イタニクサなどの紅藻類を原料として熱水抽出して凝固させたものを乾燥させた各種のものをいずれも使用することができる。この寒天には、糸寒天、棒寒天、フレーク寒天、粉末寒天などが含まれる。また、製造技術によりゲル強度を高めた(弱めた)もの、粘弾性を高めた(弱めた)もの、高融点化(低融
点化)したもの、低分子化(高分子化)したものなど、いずれのものも使用することができる。また、異なる種類の寒天を組みあわせて使用することもできる。本発明の低タンパク質チーズ様食品中の寒天の添加量としては、0.1〜3質量%、好ましくは0.2〜2質量%、更に好ましくは0.3〜1.5質量%を挙げることができる。
【0022】
脱アシル型ジェランガムは、Sphingomonas elodeaが産出する発酵多糖類を脱アセチル化したものである。この多糖類は、D−グルコース、D−グルクロン酸、D−グルコースとL−ラムノースの4つの糖の反復ユニットが直鎖状に結合したものである。商業的に入手可能な脱アシル型ジェランガム製品として、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ゲルアップ[商標]K−S」、ケルコ社製の「ケルコゲル」などを挙げることができる。本発明の低タンパク質チーズ様食品中の脱アシル型ジェランガムの添加量としては、0.01〜3質量%、好ましくは0.05〜2質量%、更に好ましくは0.1〜1質量%を挙げることができる。
【0023】
ペクチンは、野菜や果物に細胞壁成分として存在する、α-D-ガラクツロン酸を主鎖成分とする酸性多糖類である。ペクチンを構成するガラクツロン酸は部分的にメチルエステル化されており、エステル化度によってLM(ローメトキシル)ペクチンとHM(ハイメトキシル)ペクチンに分けられる。本発明では、エステル化度が50以下のLMペクチンを使用する。商業的に入手可能なLMペクチン製剤として、例えば三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ビストップ[商標]D−402、ビストップ[商標]D−1382」を挙げることができる。本発明の低タンパク質チーズ様食品中のLMペクチンの添加量としては、0.1〜3質量%、好ましくは0.3〜2質量%、更に好ましくは0.5〜1.5質量%を挙げることができる。
【0024】
また、(b)カラギナン、寒天、脱アシル型ジェランガム及びLMペクチンからなる群から選ばれる1種以上を併用する場合は、低タンパク質チーズ様食品中の総量が0.2〜5質量%となるように添加することが好ましい。
【0025】
本発明では、上記(a)馬鈴薯由来であり、DE2〜5のデキストリン、後述する(c)乳化剤に加え、(b)カラギナン、寒天、脱アシル型ジェランガム及びLMペクチンからなる群から選ばれる1種以上を併用することにより、低タンパク質チーズ様食品を切断した際の作業性や、加熱溶解時の保形性を付与することが可能である。特に、本発明は(a)成分及び(b)成分を各々単独で使用して調製されたチーズ様食品は、いずれもオーブン等で加熱した際に溶液状もしくは傾けると容易に流れるようなペースト状となってしまっていたところ、両成分を併用することにより、ゴーダやチェダーチーズといった本来のチーズに極めて類似した加熱溶融性を示すことを偶然にも見出して至った発明である。
【0026】
(c)乳化剤を含有する。
本発明では(a)馬鈴薯由来であり、DE2〜5のデキストリン、(b)カラギナン、寒天、脱アシル型ジェランガム及びLMペクチンからなる群から選ばれる1種以上に加え、(c)乳化剤を含有することにより、チーズ様食品を加熱した際に生じる油脂の分離を顕著に抑制することが可能である。
【0027】
本発明で使用できる乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル)、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ユッカ抽出物、サポニン、レシチン、ポリソルベート等の乳化剤や、アラビアガム、ガティガム及びオクテニルコハク酸化澱粉等の乳化力を有する多糖類が挙げられる。本発明の低タンパク質チーズ様食品中の乳化剤の添加量としては、通常0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%である。また、特にチーズ様食品の油脂100質量部に対し、(c)乳化剤を0.1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部添加することにより、低タンパク質チーズ様食品を加熱した際に生じる油脂分離を顕著に抑制することが可能である。
【0028】
本発明では、乳化剤の中でも、特にアラビアガム、ガティガム及びオクテニルコハク酸化澱粉からなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。本発明のチーズ様食品中の油脂含量は、チーズ含量や求められる物性によっても適宜調整することが可能であるが、好ましくは5〜35質量%、更に好ましくは10〜25質量%である。特に、チーズ様食品は、タンパク質含量の低減に伴い油脂の分離が顕著に発生してしまうことが課題とされていたが、本発明ではチーズ様食品中に(c)ガティガム、アラビアガム及びオクテニルコハク酸化澱粉からなる群から選ばれる1種以上を用いることにより、例えば油脂含量が25質量%以上、更には30質量%と高い油脂含量であるチーズ様食品であっても顕著に油脂の分離を抑制することが可能となった。更には、油脂分離防止以外にも、常温時の低タンパク質チーズ様食品の保型性を向上させることも可能となった。
【0029】
アラビアガムは、マメ科アカシア属植物の樹液に含まれる水溶性のヘテロ多糖である。アラビアガムの分子構造は明らかにされてはいないが、ガラクトース、アラビノース、ラムノース、およびグルクロン酸を構成糖とすることが知られており、少量のタンパク質が含まれる。また、平均分子量は200,000〜580,000であると報告されている。食品工業の分野において使用されるアラビアガムとしては、例えばアカシア・セネガル(Acacia senegal)やアカシア・セイアル(Acacia seyal)を起源とするものを挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。商業的に入手可能なアラビアガム製品としては、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ガムアラビックSD」を挙げることができる。
【0030】
ガティガムは、シクンシ科ガティノキ(Anogeissus Latifolia WALL.)の幹の分泌液を乾燥して得られる、多糖類を主成分とするガム質であり、増粘安定剤(食品添加物)として汎用されている。通常、常温〜加温条件下で、30重量%程度まで水に溶解する水溶性ガム質である。商業的に入手可能なガティガム製品としては、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ガティガムSD」を挙げることができる。
【0031】
オクテニルコハク酸化澱粉は、馬鈴薯澱粉、小麦粉澱粉、タピオカ澱粉、ワキシーコーンスターチ、コーンスターチ等の澱粉をオクテニルコハク酸エステル化処理したものが挙げられ、ほとんど粘性を有しないことが特徴の化工澱粉である。商業的に入手可能なオクテニルコハク酸化澱粉製品としては、例えば、日本エヌエスシー株式会社製の「ピュリティーガム1773」を挙げることができる。
【0032】
本発明の低タンパク質チーズ様食品中の(c)アラビアガム、ガティガム及びオクテニルコハク酸化澱粉からなる群から選ばれる1種以上の添加量は、好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは0.5〜2質量%である。また、特にチーズ様食品の油脂100質量部に対し、(c)を1〜10質量部、好ましくは2〜8質量部添加することにより、低タンパク質チーズ様食品を加熱した際に生じる油脂分離を顕著に抑制することが可能である。
【0033】
以上のように、本発明の低タンパク質チーズ様食品は、(a)馬鈴薯由来であり、DE2〜5のデキストリン、(b)カラギナン、寒天、脱アシル型ジェランガム及びLMペクチンからなる群から選ばれる1種以上、および(c)乳化剤を発明の必須構成要件とする。そして、これら構成要件を満たすことによりはじめて、タンパク質含量が10質量%以下と低タンパク質含量にも関わらず、チェダーやゴーダチーズといったチーズ特有の保型性や食感を付与することができ、更には加熱した際のチーズ特有の溶融性をも再現することが可能となった。また、本発明の低タンパク質チーズ様食品は、チーズに求められるスライスやすりおろしなどの加工適性にも優れている。
【0034】
中でも、本発明の低タンパク質チーズ様食品は(a)馬鈴薯由来であり、DE2〜5のデキストリン、(b)カラギナンおよび(c)アラビアガムを含有することが好ましい。特にこれらの構成をとることにより、極めてチーズに類似した食感および性質(常温時の保形性、作業性(きれいに切断できる、ナイフにベタベタと付着しないなど)および加熱時の溶融性、油分の分離抑制)を有するチーズ様食品となる。更に、上記構成をとることにより、通常のチーズと遜色ない冷凍耐性を有するチーズ様食品となる。
【0035】
また、本発明のチーズ様食品はタンパク質含量を低減させたものであるため、タンパク質含量が1質量%以下となると、加熱溶解時にチーズ様食品が半透明化する場合が生じる。その場合は、低タンパク質チーズ様食品にセルロースや二酸化チタンを添加することによりチーズ特有の濁りを付与することができる。加えて、本発明の低タンパク質チーズ様食品にセルロースを添加することにより(c)乳化剤との相乗効果によって加熱時の油分分離を顕著に抑制することが可能である。
【0036】
用いるセルロースとしては植物由来もしくは微生物が産生したセルロースであれば特に限定されず各種セルロースを用いることが可能であり、粉末セルロースを使用することができる。また、セルロースを加工した微結晶セルロース等を用いることも可能である。本発明の低タンパク質チーズ様食品中におけるセルロースの添加量としては、0.3〜5質量%、好ましくは0.5〜2質量%を好適な添加量として挙げることができる。
【0037】
本発明の低タンパク質チーズ様食品は、タンパク質含量が10質量%以下の範囲内において、チーズを添加することができる。本発明で用いることができるチーズには、ナチュラルチーズ(非熟成チーズ、熟成チーズ)、プロセスチーズ、チーズフードおよびチーズスプレッドが含まれる。非熟成チーズとは、一般に熟成工程を経ないで製造されるナチュラルチーズであり、クリーム、モザレラ等が挙げられる。熟成チーズとは、一般に熟成工程を経て製造されるナチュラルチーズであり、チェダー、ゴーダ、エダム、エメンタール、カマンベール等が挙げられる。本発明では、これらチーズ含量を30質量%以下、更には20質量%以下まで低減もしくはゼロとした場合であっても、チーズ特有の保形性、食感、作業性や加熱溶融性を兼ね備えた低タンパク質チーズ様食品を提供できることを特徴とする。
【0038】
本発明の低タンパク質チーズ様食品に用いられるタンパク質としては、脱脂粉乳、乳清タンパク質、大豆、エンドウマメ、カロブビーンガム等の植物性タンパク質などが挙げられる。タンパク質はチーズ様食品の保形性、油分の分離抑制に大きく寄与するため、タンパク質含量を低減させると著しく保形性が低下する、オーブンなどで加熱した際に油脂が分離して商品価値を著しく下げることが問題とされていた。しかし、本発明ではかかるタンパク質の含量を10質量%以下、更には5質量%以下まで低減若しくはゼロとした場合であっても、チーズ特有の保形性、食感、作業性や加熱溶融性を兼ね備えた低タンパク質チーズ様食品であり、加熱時の油分分離も抑制された低タンパク質チーズ様食品を提供することが可能である。更に、本発明にかかる構成をとることにより、タンパク質を不使用とした場合であってもチーズ特有の性質を付与することが可能であるため、コストの低減や腎不全患者用の低タンパク質食品への応用が可能となる。更に、チーズ及び乳タンパク質を不使用とすることにより、乳アレルギーフリーのチーズ様食品を提供することも可能である。
【0039】
本発明の低タンパク質チーズ様食品は、(a)馬鈴薯由来であり、DE2〜5のデキストリン、(b)カラギナン、寒天、脱アシル型ジェランガム及びLMペクチンからなる群から選ばれる1種以上、(c)乳化剤、並びに他成分を溶解し、冷却することにより調製することができる。
【0040】
また、本発明の効果に影響を与えない範囲内において、香料、色素、乳化剤、甘味料、調味料等を適宜添加することが可能である。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。また、特に記載のない限り「部」とは、「質量部」、「%」は「質量%」を意味するものとする。文中「*」印のものは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、文中「※」印は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを示す。
【0042】
実験例1 低タンパク質チーズ様食品の調製(1)
表1の処方に従って低タンパク質チーズ様食品(タンパク質含量2.9質量%)を調製した。詳細には水にチーズ、パーム油、クエン酸三ナトリウム、脱脂粉乳、食塩を添加し溶解後、デキストリン、澱粉、多糖類を加え、85℃で10分間加熱撹拌溶解した。さらに撹拌しながら香料を添加、混合し全量が100%となるように補正後、容器に充填、冷却しチーズ様食品を得た。なお、使用デキストリンとして、実施例1〜5、比較例3、4、6、7は馬鈴薯由来であり、DEが3.5のデキストリンを使用した。一方、比較例1はワキシーコーン由来、DE=4のデキストリンを、比較例2は馬鈴薯由来のDE=10のデキストリンを使用した。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
注1)「ガムアラビック SD*」使用
注2)カッパカラギナン 「カラギニン CSK−1*」使用
注3)「ゲルアップ※J−1630*」使用
注4)「ケルコゲル[CPケルコ社商標]*」使用
注5)「ビストップ※D−1382*」使用
【0046】
調製された実施例1〜5及び比較例1〜7の低タンパク質チーズ様食品につき、常温時並びに加熱時の物性について以下の項目に従い評価した。なお、加熱時の物性については、チーズ様食品をシュレッドし、およそ30×10×3mmのシュレッドチーズを用意し、それを10g分アルミホイルに載せて、200℃のオーブンでそれらが溶けるまで加熱した際の物性を評価した。結果を表3に示す。
【0047】
<保型性>保型性が良好なものから以下の基準で7段階評価した。
良好な保型性を有する:+++++>++++>+++>++>+(ペースト状)>±>−:保型性なし(溶液状)
<作業性>調製されたチーズ様食品をナイフでカット(切断)した際の作業性が良好なものから以下の基準で7段階評価した。
良好な作業性を有する(良好に切断可能なもの):+++++>++++>+++>++>+(ナイフにチーズがべったりと付着する、切断時に力を加えるとチーズが変形して戻らない)>±>−(保型性がなく切断等の加工が不可)
<食感>
チーズ特有の食感(歯ごたえ、ボディ感のある食感):+++++>++++>+++>++>+(プリン様、ゴム様の食感)>±>−(歯ごたえ、ボディ感なし)
<溶融性>
ゴーダチーズ(タンパク質含量26質量%)を同条件で加熱し溶融した状態に近い溶融性を示すものを○、加熱により溶液状もしくは傾けると容易に流れるような低粘度のペースト状となってしまったものを×として評価した。
<食感>
チーズ様の食感(加熱した際でもなめらかで良好な口溶けとボディ感を有するもの)に近い食感を有するものから◎>○>△>×(ざらついたり、ベタつき、糊っぽさのある食感になる)の4段階で評価した。
<油分の分離>
加熱時の油分の分離の有無を評価した。
【0048】
【表3】

【0049】
表3の結果から、(a)馬鈴薯由来でDEが2〜5のデキストリン、(b)カラギナン、寒天、脱アシル型ジェランガム及びLMペクチンからなる群から選ばれる1種以上、及び(c)アラビアガムを併用することにより、タンパク質含量が2.9質量%と低い場合であっても、通常20〜30質量%のタンパク質含量を有するチェダーチーズ、ゴーダチーズと遜色ない保型性、作業性及び食感を有するチーズ様食品を調製することができた(実施例1〜5)。更に、実施例1〜5のチーズ様食品はオーブンで加熱した場合も、油分が分離することがない上、とろけるチーズのようなチーズ特有の溶融性が再現されたものであった。
【0050】
一方、DEが2〜5の範囲内であってもワキシーコーン由来のデキストリンを用いた場合は、例えアラビアガム、カラギナンと併用した場合であっても、保型性に乏しくスプレッド状のチーズとなりチーズ特有のボディ感が劣る上、作業性でも劣っていた。さらにその食感もベタツキが目立つものとなった(比較例1)。同様にして、馬鈴薯由来であってもDEが10のデキストリンを用いた場合(比較例2)も、比較例1よりもさらに保型性に乏しく、ゆるいスプレッド状のチーズとなりチーズ特有のボディ感が劣る上、作業性でも劣るチーズ様食品となってしまった。さらその食感もベタツキが目立つものとなった。カラギナンを用いることなく調製されたチーズ様食品(比較例3)は、保型性が不十分な上、切断した際にべたついて包丁からはがれが悪いチーズ様食品となってしまった。更には、加熱した際にチーズ様食品が傾けると容易に流れるような低粘度のペースト状を呈し、チーズ特有の溶融性を付与することができなかった(比較例3)。アラビアガムを用いることなく調製されたチーズ様食品(比較例4)は良好な保型性、作業性は有するものの、調製時に油脂の分離が起こりやすく、またチーズ様食品をオーブンで加熱した際に油が多く滲み、ピザなどに使用した際にクラストの食感を悪化させてしまうものであった。デキストリンを用いることなく調製されたチーズ様食品(比較例5)は、保型性に乏しくスプレッド状〜ペースト状のチーズとなり、チーズ特有のボディ感が劣る上、作業性でも劣り、さらに食感はベタツキが目立つものであった。カラギナン等の代わりにゲル化剤として既知のゼラチンを用いた場合も(比較例6)、チーズ特有のボディ感に乏しく、食感もプリンに近いものとなってチーズ特有のボディ感が劣る結果となってしまった。同様にして、カラギナンの代わりにアルギン酸ナトリウムを用いた場合も(比較例7)、チーズ特有のボディ感に乏しく、ゴムっぽくまたざらつきのある食感となってしまった。更には加熱した際にざらつきのある液状となってしまった。
【0051】
また、比較のために、実施例1と同様のデキストリン、アラビアガム及びカラギナンを用いてタンパク質含量の高いチーズ様食品を調製した(タンパク質含量27.3質量%)。詳細には、表4の処方に従い、水にチーズ、パーム油、クエン酸三ナトリウム、WPC(乳清タンパク濃縮物)、食塩を添加し溶解後、デキストリン、澱粉、アラビアガムおよびカラギナンを加え、85℃で10分間加熱撹拌溶解した。さらに撹拌しながら香料を添加、混合し全量が100%となるように補正後、容器に充填、冷却し高タンパク質チーズ様食品を得た。
【0052】
【表4】

【0053】
しかし、調製された高タンパク質チーズ様食品は、調製時に極めて高粘度となるため作業性が悪く、更にはざらついたり、粉っぽい食感とWPC特有のホエー臭を有するチーズ様食品となってしまった(比較例8)。
【0054】
実施例6 低タンパク質チーズ様食品の調製(2)(タンパク質含量10質量%)
表5の処方に従って低タンパク質チーズ様食品(タンパク質含量10質量%)を調製した。詳細には水にチーズ、パーム油、クエン酸三ナトリウム、WPC(乳清タンパク濃縮物)、食塩を添加し溶解後、デキストリン、澱粉、ガティガムおよびカラギナンを加え、85℃で10分間加熱撹拌溶解した。さらに撹拌しながら香料を添加、混合し全量が100%となるように補正後、容器に充填、冷却し実施例6のチーズ様食品を得た。
【0055】
【表5】

【0056】
注6)「ガディガム SD*」使用
【0057】
得られた低タンパク質チーズ様食品は、タンパク質含量が10質量%と通常のチーズ(ゴーダ、チェダー等)の約半分のタンパク質含量にも関わらず、これらチーズ特有の歯ごたえ、ボディ感のある食感や良好な保型性、作業性を有していた。更には、オーブンで加熱した際もチーズ様食品が液状化することなく、ゴーダ、チェダーチーズ等が示す良好な溶融性も有していた。
【0058】
実施例7 低タンパク質チーズ様食品の調製(3)(タンパク質含量5質量%)
表6の処方に従って低タンパク質チーズ様食品(タンパク質含量5質量%)を調製した。詳細には水にパーム油、食塩を添加し溶解後、デキストリン、澱粉、アラビアガムおよびカラギナンを加え、85℃で10分間加熱撹拌溶解した。さらに撹拌しながら香料を添加、混合し全量が100%となるように補正後、容器に充填、冷却し実施例7のチーズ様食品を得た。
【0059】
【表6】

【0060】
得られた低タンパク質チーズ様食品は、タンパク質含量が5質量%であるにも関わらずチーズ特有の歯ごたえ、ボディ感のある食感や良好な保型性、作業性を有していた。更には、オーブンで加熱した際もチーズ様食品が液状化することなく良好な溶融性を有していた。この実施例7のチーズ様食品は、チーズ並びに乳由来のタンパク質不使用であるため、乳アレルギーフリーの食品としても極めて有用である。
【0061】
実施例8 タンパク質不使用のチーズ様食品の調製(4)(タンパク質含量0質量%)
表7の処方に従ってタンパク質不使用のチーズ様食品を調製した。詳細には水にパーム油、食塩を添加し溶解後、澱粉、デキストリン、寒天、粉末セルロース及びオクテニルコハク酸化澱粉を加え、85℃で10分間加熱撹拌溶解した。さらに撹拌しながら香料を添加、混合し全量が100%となるように補正後、容器に充填、冷却し実施例8のチーズ様食品を得た。
【0062】
【表7】

【0063】
得られたチーズ様食品は、チーズ、更にはタンパク質不使用にも関わらず、チーズ特有の良好な保型性、作業性を有していた。加えて、チーズ様食品の食感もプリンやゼリー、ゴム様の食感になることなく、チーズ特有の歯ごたえ、ボディ感のある食感を有していた。また、実施例8のチーズ様食品はタンパク質不使用にも関わらず、オーブンで加熱した際にチーズ様食品が液状化することなく、とろけるチーズ様の良好な溶融性も示していた。この実施例8のチーズ様食品は、チーズ並びにタンパク質不使用であるため、乳アレルギーフリーの食品としても極めて有用である。さらに、腎不全患者等のタンパク質摂取制限のある消費者にも適する。
【0064】
実施例9 冷凍ピザ
実施例1で調製した低タンパク質チーズ様食品を調製後にシュレッドし、市販の直径20cmのピザクラストに100g分を振りかけて冷凍した。その冷凍ピザを200℃のオーブンにて5分間加熱したところ、実施例1のチーズ様食品はゴーダチーズと同じような物性を示し、通常のピザと遜色ないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
タンパク質含量を低減もしくはゼロとした場合においてもチーズ特有の保形性、加工適性および食感を有する低タンパク質チーズ様食品を提供することができる。かかるチーズ様食品はオーブンやオーブントースター等の加熱によっても液状となることなくチーズ特有の溶融性を示すため、用途に限定されることなく、ピザやグラタンなどの用途にも好適に使用できるチーズ様食品である。更に、本発明の技術を用いることにより、低コストでチーズに物性が類似したチーズ様食品を調製することができ、かかるチーズ用食品は腎不全患者用の低タンパク質食品としての応用も可能である。加えて、チーズ不使用とすることにより、乳アレルギーフリーのチーズ様食品も提供することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質含量が10質量%以下のチーズ様食品であって、以下の成分を含有することを特徴とする低タンパク質チーズ様食品;
(a)馬鈴薯由来であり、DE2〜5のデキストリン、
(b)カラギナン、寒天、脱アシル型ジェランガム及びLMペクチンからなる群から選ばれる1種以上、
(c)乳化剤。
【請求項2】
前記(c)乳化剤が、アラビアガム、ガティガム及びオクテニルコハク酸化澱粉からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1記載の低タンパク質チーズ様食品。
【請求項3】
(a)馬鈴薯由来であり、DE2〜5のデキストリンに加え、(b)カラギナン及び(c)アラビアガムを含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の低タンパク質チーズ様食品。

【公開番号】特開2010−142181(P2010−142181A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324603(P2008−324603)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】